平成25年10月21日(月曜日)15時~17時
文部科学省 3階 3F1特別会議室
小柳主査,秋山委員,天野委員,石川委員,宇川委員,加藤委員,喜連川委員,小林委員,関口(智)委員,善甫委員,高田委員,富田委員,中島委員,中村委員,平尾委員,牧野委員,松尾委員,松岡委員,村上委員,室井委員,渡邉委員 (HPCI計画推進委員会)土井委員 (説明者) スーパーコンピューティング技術産業応用協議会/株式会社日立製作所日立研究所 佐々木主管研究長, 特定非営利活動法人バイオグリッドセンター関西 志水理事・事務局長, 理化学研究所計算科学研究機構 佐藤チームリーダー
吉田研究振興局長,山脇審議官,生川振興企画課長,下間参事官,川口計算科学技術推進室長,遠藤参事官補佐
川口計算科学技術推進室長より資料1に基づいて説明。意見交換は以下の通り。
【小柳主査】 まずは,1の「スーパーコンピュータ利用の促進」を議論したいと思います。
「利用に係る課題と促進方策」の2番目の丸のところですが,ここでは,飽くまでHPCIの共同審査体制に基づく利用を議論しています。最初は「京」に注目が集まって,他の資源に必ずしも十分な応募がなかったということなのですけれど,読みようによっては,ほかのセンターが余り利用されていないというように誤解される危険があるので,その点を注意して報告書には書いていきたいと思います。
【松岡委員】 「京」を利用する場合,普通の人はHPCI経由でしか使えないので,HPCI経由で使う。基盤センターの資源は,HPCIで使う必要はなく,一般利用として利用いただいています。使われていない理由はHPCIの体制の問題であって,基盤センターが使われていないような印象を与えるのはよくないと思います。HPCI経由での利用のどういうところに問題点があるかというと,無償でアロケーションがあるということはいい点ではありますが,例えば審査が年に1回しかないとか,早く使いたくない場合が多いにもかかわらず,早く使えと言われるといったことがあげられます。年のある程度までは実験をやって,アロケーションを確保しておいて,後半の方に使いたいというグループにとっては,年に1回しかアロケーションがないので,早く使うことはできないわけです。このような,しゃくし定規的なHPCIの運用体制のために使われないという側面もあると思います。
【牧野委員】 今のところですが,「我が国のスーパーコンピュータ資源を効率的に活用していくためには,HPCI共用資源全体が」と書いてあると,日本のスーパーコンピュータ資源というのは,HPCI共用資源しかないように見えてしまいます。それは違うので,そこは違う書き方をしていただきたいと思います。基盤センターや,特に,国研の方はユーザーコミュニティを持っていて,その中で,かなり時間をかけて適切に利用できるシステムを作ってきているので,その辺を一切触れない形でこのように書くのは問題で,そうではないところがあるということを書いていただきたいと思います。
【小柳主査】 中間報告の文章を見ていただくと,それについて現状分析をして述べています。御指摘のように,この点は,文案を作るときに,十分注意して,全体像をはっきりさせた上で記述することが必要だと思います。
【松岡委員】 これまでの基盤センターのスーパーコンピュータを用いていた人たちにとっても,HPCIを使うことは,まだハードルになっています。「用いてこなかったものにとって」にハードルがあることは仕方のないことですが,そのハードルを克服していくことが大切であって,利用率が低いことの原因究明をしないまま,このように文章が独り歩きするというのはよくないと思います。
【小柳主査】 HPCIコンソーシアムとして,何かコメントございますでしょうか。
【宇川委員】 皆さんがおっしゃっていることは,それぞれに妥当な御意見だと思います。それらには賛成したいと思います。一方でHPCI自体というのは,それぞればらばらに運用されてきたものを,全体的に統一して運用していこうということなので,現在のところでは, HPCIに提供されている資源が大部分になってはいないですけれども,次第に増えていくでしょうし,そこがうまく利用されていくということも非常に大事だと思っております。ですから,コンソーシアム側としては,そういった整備を進めていくべきであるというスタンスではあるだろうと思います。そのときに,松岡さんのおっしゃった,HPCI自身の現在のシステムが情報基盤センターにとっても,ハードルが高いというのは事実で,そこは下げていかないといけないと思います。
【松岡委員】 ポジティブなことを申しますと,例えば共有ストレージというのは,複数のスーパーコンピュータを連携させるために管理するということで,そこがようやく動きだしたというのが現状だと思います。ですので,それがきちんと動き出さないと,その先の利用率が増えないわけで,HPCIを使うことのメリットを,HPCIコンソーシアム及び情報基盤センター側がより積極的に打ち出していくことによって,利用率が増えるのではないかと思います。そういうメリットをより強く押し出して,同時にハードルを下げていくということが重要ではないかと思います。
【小林委員】 この部分について,私のところは従量制なので問題ないですが,定額制で資源をキープしておかなければいけないような状況で,ジョブが入らないときもあるという状況を言っているのだと思います。ですから,課金のシステムとか,利用のパターンがうまく合っていないのかなというのが印象です。
【小柳主査】 そういったテクニカルな問題もいろいろありますが,細かい議論に入らないで,全体としての利用体制について御指摘があった点は,現実の問題でもありますし,今後の将来計画にとっても重要な問題だと思います。
2の「産業利用の促進」について,サブワーキンググループの報告を含めていろいろとありましたが,この点について何かございますか。
【善甫委員】 ここには,産業利用の一般的なことが書いてあります。ここを読んでみて,インパクトに欠けるというのは何かなと思って考えていたのですけれども,それは,産業は競争だということです。先端を走っているものは,それで勝てたわけではなくて,後ろからひたひたと来る音にものすごくおびえながら先端を走らないといけないし,後ろはもう少ししたら追い付けると思って頑張ります。何事にも(サービスを提供するところも),そうした競争ができるかどうかというところが大事です。それが,ひいては国際競争力ということになるのです。それをもう少し広い意味で考えたときに,例えばアプリについても,どこの情報基盤センターの使い勝手がよいかなどといった競争についてのことが書かれていないと思います。登録機関や情報基盤センター等にも競争原理をいれて,その競争がうまく実現できるようなことが書かれると,大きなインパクトになると思います。この資料は,現在あるものをうまく回していくかということだと思いますけれども,もう一つステップを進めるということでは,利用支援やアプリケーションのテストベッドとありますけれども,ここにも競争という状況を,どういうふうに実現するかという観点が抜けているのではないかなと感じます。
【秋山委員】 利用の在り方に対する資料の最初に,「産業競争力の強化」ですとか,「特に,産業利用は」と書いてあることから,2の部分はかなり重要性が高いと認識しております。新たな提言に当たるところとしては,このテストベッドを設けなさいという部分が,議論の中で非常に重要だったはずだと私は認識しております。このテストベッドは,国プロアプリだけでなくて,重要だけれども,いろいろ問題があるという議論をした市販ソフトについても対象となるところです。テストベッドを設けなさいという文言は残っているのですが,その環境を早急に整える必要があるとか,公開に先立ってというようなお話が出ていたと思います。これでは,新しいマシンができてから,半年,1年たってからテストベッドが出てくればいい,と読めてしまうので,難しいところだとは思いますが,もう少し前向きな速度感を残していただけないかというのがお願いです。
【渡邉委員】 今のテストベッドに関して,テストベッドと言う言葉が3か所に出てきますが,いずれも「新しいハードウェアを開発するときは」となっています。今の秋山先生のお話もありますけれども,早急にということが,すごく強かったです。ですから,今ある「京」や,基盤センターでやっているHPCIのほかの資源でも,今すぐに,そういうテストベッドを,それもお試し期間みたいに短い期間ではなく,資源量としては多くは要らないけれども,長期的に,いつでも使えるような状態を作るべきだと思います。
【小柳主査】 これは,一応次期計画への提言なので,そういうニュアンスが強くなっているということはあると思いますけれども,テストベッドの重要性というのは,おっしゃるとおりだと思います。ただ,いつでも新しい計算機を作るときに,テストベッドを独立しておいて欲しいということと,一部を使えばいいのではないかという議論が出てくるということはあります。
【高田委員】 「産業利用に係る課題と解決方法」の3つ目の丸に,「乗換えコストばかりが際立ってしまうことが考えられる。しかし,国プロアプリ等については,市販ソフトウェアにはない画期的・先導的な機能を有する点で,スーパーコンピュータの産業利用の促進及び高度化には不可欠なもの」と書いてありますが,産業界が国プロのアプリに期待していることは,必ずしも,既存の市販のソフトの置き換えだけを期待しているというわけではないです。もちろんそれを期待していることもあるのですが,むしろ,戦略プログラム等で開発されているような,今までにない新しい機能が産業競争力に不可欠な要素であると思っていますので,そういう新しいものに非常に期待しているということを強調していただいたらいいのかなと思います。産業界としても,その新しい機能の部分を現場で使わせていただくということだと思っています。
佐々木主管研究長より資料2-1に基づいて説明。次いで,志水理事・事務局長より資料2-2に基づいて,佐藤チームリーダーより資料2-3に基づいて説明。質疑応答は以下のとおり。
【中村委員】 産応協の佐々木様の発表ですけれども,技術的なことの教育ではなくて,もうちょっと上の立場でものを考える人材が必要であるということは印象的だったのですが,ただ,具体的にどういうような形でそういう人が育てられるだろうかということを考えると,例えば場所は大学なのか,企業内でやるのか,あるいは教える人は一体どういう人が担うのかということのイメージがわかないです。どういうことを考えておられるのでしょうか。
【佐々木主管研究長】 それはCOCNの研究会の中でも議論しているのですけれども,現役の企業の方をお呼びするのは難しく,リタイヤされたシニアの方が経験豊富なので,シニアの方を臨時にお雇いして,ある場でそういうことをディスカッションするとか,そういうのが一番やりやすいのではないかという意見があります。現役の方は情報を持ち出せないなどの問題があるので,フリーな方々が,大学の学生さんと,典型的な問題でいいので,製品のものづくりにおいて全体を俯瞰しないと解決しないような問題を例題として議論するといったことを日々やっていくと,若手の方は伸びるのではないかなと思っています。
【中村委員】 成熟した技術であればシニアの方の活用は非常によいと思いますが,こういうスパコンの技術の場合,先ほどもありましたように成功例が余りないということもあるので,そこが少し心配かなと思っています。
【佐々木主管研究長】 最初にスパコンということを考えると先に行かないと思います。まず,シミュレーション技術がものづくりに使われるという成功事例を作ってからスパコンというものがあるわけで,スパコン使った成功事例が出る前に,いろんな解析技術でいっぱい成果を出すことが先かなと思います。最初から大規模な環境を作ろうということは無理があるかなと思います。
【村上委員】 佐々木さんの御発表に関してなんですけれども,お話を伺っていて,データサイエンティストもほとんど同じような状況かなと思います。データがシミュレーションデータなのか,センサーとか業務データなのかという違いであって,要求されている機能要件,人材に対する要求仕様というのはほとんど一緒だと思います。それから,データサイエンティストに関しては,マスコミ等でも25万人必要だとかいう数字が言われていて,ようやく動き始めているような気もします。そういった人材の育成のプログラムは,走っていると思いますが,問題は,データサイエンティストにしても,シミュレーションサイエンティストにしても,それをきちんと教える大学の学部,学科,研究科というものが不足していると言うことが,大きな問題なのかなと思います。ですから,先ほどのシニアの方を活用するというのは一つの手かもしれませんけれども,大学の方でもいろいろな新しい学問領域にチャレンジする枠組みを活用して,きちんとカリキュラムを作って若い人を育てなければならないということを言ってもらわないと,なかなか動かないのかなという気がしております。
【中島委員】 佐々木さんの御発表,志水さんの御発表ともにそう思ったのですけれども,「京」や,その先のエクサフロップスという話が当然あるわけですが,そこにターゲットをフォーカスしてしまうと,かえって不幸になるなという印象があります。どうしても,「京」やエクサフロップスというのは,ある一つの課題を解くためのシミュレーションを載せること自体が難しく,方法論も超並列の何百万コアとか何千万コアを活用しないといけないという縛りがどうしても出てくるわけです。ですので,バイオの話にせよ,もう少し一般的な佐々木さんの話にせよ,ボトムアップに考えた方がいいのではないかと思います。わざわざ難しいマシンを選ばなくても,HPCIはほかにもたくさんあるので,特に,人材育成絡みで使うのであれば,大学のマシンは比較的お使いいただきやすい。大学と「京」の違いの一つとして,大学は直接的な製品開発に使ってもらいにくいという制度的な問題がありますので,研究開発などにフォーカスを当てているのですけれども,人材育成の話だとすると,有償になりますが,比較的受け入れやすいのではないかと思います。例えば,バイオグリッドセンターで「京」のアロケーションがあるわけですけれども,500万ノード/時間ということで,Flopsにすると,大体100 TFlops/年というぐらいのオーダーの計算パワーかと思いますけれども, 100 TFlops/年ぐらいは,何百万円の真ん中あたりのコストですので,キャパシティー的にも値段的にも,大学の方でできるような時代になってくるわけですから,そういうところから始められる方が健全ではないかなと思います。
それから,佐々木さんのお話ですけれども,製造設計の現場でコンピュータを使った,いわゆるCAEというものが普及していないというようにも聞こえたのですが,どうなのでしょうか。
【佐々木主管研究長】 当たり前に使われていると思います。
【中島委員】 例えば,私がメーカーに勤めていた30年前には,回路設計でシミュレーションをするということを日常的にやっていたのですが,使っていると,その資源の計算パワーの不足というのもすぐ分かるわけです。このシミュレーションに何でこんな時間が掛かるのかということを考えて,それによって物事を解決していくということもあるのではないかと思います。つまり,計算パワーが不足していることの解決策として,いきなり大きなスパコンに移ると言うことではなくて,例えば国プロで作ったアプリを使って,それを多少なりとも解決するという方向でやっていくのが健全なのではないかと思いました。
【佐々木主管研究長】 CAEは,企業でも当たり前に使われていますけれども,重要なのは,使ったソフトウェアの精度が限界を分かって使うというのが大事だということです。もう一つは,言われたとおり計算している人が多く,自分でシミュレーションを使って,こうすれば解決できるというところまで言える人材が少ないのかなと思うので,そういうところまで含めた人材育成ということが必要なのかなというのが私の考えです。
【小柳主査】 そういう幾つかの問題点に関して,企業全体から見れば進んだ部類に入ると思われる製薬やバイオの分野では,どうなっているのでしょうか。
【志水理事・事務局長】 薬を作るのにいろんな工程がありまして,まずは蛋白質の動きを解析するために,化合物がどこにはまるのかという場所を探そうかとか,どういう形で結合しているか,初期構造をどうやって見つけるのかとか,あるいは,大きく動く場合は,ある程度ポケットにはまっている状態でスタートして,少しの動きであれば解析できるけど,蛋白質が大きく動いてしまう場合は別のツールを使わないといけないといったように,いろんな局面で,多種多様のアプリケーションを使い分けています。それらがうまく連携して使っていけるとよいのですが,それぞれはそれぞれのところで解析して終了してしまい,次にこんなことをしたいとなったときに,そのアプリとアプリとの連結なんかが必要となってくるという問題があります。
【小柳主査】 佐々木さんのプレゼンの中に,現場でやっている若手層よりも,中堅,若しくはもっと上の層の理解や,あるいはその養成が必要だという話がありましたが,バイオの分野ではどうでしょうか。
【志水理事・事務局長】 「京」を非常に宣伝していただいているので,製薬会社の経営トップ層から,「京」を使っているのかということを尋ねられたのに対して,トライアルで使っていますよと言えたという意味では,上の教育は大事かなとは思います。
【秋山委員】 今までのバイオグリッドセンターの活動を改めて見まして,IT企業をかなり巻き込んでパイプラインを作っていて,非常に貴重な活動で,是非途切れないようにということは,非常にポジティブに思いました。ただ,ここで使っているプロトコルは,今,世界中の,日本中の創薬企業が使っているプロトコルと違います。京大とか阪大の研究成果を持ってきて,試しにやっているからこそ「京」に載っているという面もあります。そこで疑問なのは,最初の方のプロジェクトは,極めて限られたベンチャー創薬しか使っていなかったところから,今のHPCIに入って,メジャーも含めて11社,名前が連なっていますけれども,どのぐらいが製薬の人たちを招き入れられているのですか。
【志水理事・事務局長】 様子を見ようというところと,実際に「京」を使ってみようというところが,大体半分半分で,半分ぐらいは,蛋白質の一部の計算を「京」を使ってやって,習熟したら自社で,産業利用の有償枠を使ってやっていきたいという思いです。
【秋山委員】 このプロジェクト自身は奥野先生のものや,藤谷先生のものを使ってみようという,非常にチャレンジングなものですけれども,それを通して製薬会社が「京」になれて,その後,業務で使っているソフトウェアを使おうというふうになっていくと期待すればいいですか。
【志水理事・事務局長】 どちらかというと,MP-CAFEEなりCGBVSを自分たちのターゲットとしての蛋白質に使ってくださいということです。
【秋山委員】 ただ,それが業務のラインに入ってくるということはほとんど考えられなくはないですか。
【志水理事・事務局長】 現在,実験結果と計算結果が合うかを試すサンプル計算を行っているところです。蛋白質3個か5個については,非常に実験値と計算結果が合うということが見えてきたので,今度は自分たちの持っている蛋白質についてやってみたいということになってきています。それによって,多分来年度ぐらいからになると思いますけれど,MP-CAFEEを使えるようにしていきたいと思っています。
【秋山委員】 分かりました。どういうふうに本当に創薬の方が使っているのかということを,今後とも聞かせていただければと思います。
【志水理事・事務局長】 分かりました。
【室井委員】 理研の取組で教えていただきたいのですけれども,ハードのマシンの開発,エクサを使いこなす人材育成,利用支援に対して,非常に具体的な取組をして,多くの方が参加されているということはよく分かりました。使いこなす人材育成について,今後もスクール講習会及びインターンシップ等ということで取り組んでいくとのことですが,4日間,5日間,あるいは一週間程度のスクールでは,なかなか使いこなすところまで難しいのではないかと思います。今後のこういった取組について,今までの取組で手応えを感じておられるのでしょうか。私は,もう少し拡張して,例えば1か月間くらい泊まり込みにするといったように,もう少し拡充されてもいいのではないか思うのですが,お考えがありましたら教えていただけないでしょうか。
【佐藤チームリーダー】 よいアドバイスをありがとうございます。機構が始まって3年たつわけですけれども,ようやくスクール等がルーチンで動くようになりました。この先,サマースクールは初心者向けの計算機の話が多いのに対して,上級者コースとしてモデリング,あるいは数値計算法というところにフォーカスを当てた取組をやっていきたいと思っております。それで,もう少し長期的なものにした方がいいということは,神戸大学の連携,あるいは大学機関との連携において,インターンシップみたいなものを拡充したらいいかというアイデアは出てきております。来年あたりから,学生さんを引き受けるような試みについては,単位認定というもことも含めて,インターンシップを制度化していきたいと考えております。
【関口(智)委員】 人材育成ということは非常に難しい問題で,コンソーシアム等でも議論させていただいていますけれども,どのような人たちを,どのプロセスで作っていくのかというところを明確にしないと,それぞれが人材育成という枠の中で活動されて,お互いが結びつかないという問題になってくるのではないかと思います。例えば,佐藤先生がお話しされたターゲットとされているようなところと,佐々木さんがお話しされたところというのは,きょうの時点では多分リンクができていないところがあると感じます。マルチソースでマルチターゲットがある中を,マルチプロセスでやることを,きちんと整理していかないと,今後のHPCの在り方ということが,そこでの民間さんで必要とされているところと,例えば大学といった教育機関,研究機関での育成とが,すり合わせできないことにつながると思います。先ほど,室井先生からも御提案のあったような,1か月という形でどこかの研究機関に入るということが,本当にそれで民間さんのニーズに応えられるのかなと思います。例えば,1か所で長期間やるということと,いろんなスキルをいろんな場所で学びながら,ある一つの人材としての能力形成をやっていただくということを,全体で考えていくという枠組みが必要なのではないかなというのが,前回私がこの場で話をさせていただいたときの考え方で,今日のプレゼンも少しそういうヒントになるのかなと思いました。
【松岡委員】 アプリケーション分野に関する人材育成に関しての,種々の御提案及び問題点に関しては,全然異議がないところでございますが,情報側・作る側の人間の人材育成の話がない。というのは,具体例で申し上げれば,私どものところで博士,修士,学生がたくさんおりますけれども,彼らがどこにインターンシップに行くかというと,大体,DOEの研究所に行ったりするわけです。国内では,理化学研究所計算科学研究機構に行くことはできるのですが,ただ,理化学研究所計算科学研究機構しかない。特に,スパコン大規模技術というのは,今後のIDCだとか,ビッグデータにも非常に意味があるところですが,情報系の学生がインターンシップで行くとすると,アメリカの会社になってしまいます。ですから,情報系のビッグデータやIDCも含む大規模システムの情報系の人材も育成していく必要があるのではないかと思います。もちろんハードウェアの部分だけではなくて,ソフトウェア,アルゴリズムなども含めてです。喜連川先生が最近ビッグデータのプロジェクトをやられていますけれども,それらときちんと連携した,上方側の人間の人材育成ということをやっていくことが,今後の我が国にとって必要なことではないかと思います。
石川委員,牧野委員より資料3に基づいて説明。質疑応答は以下の通り。
【小柳主査】 フラッグシップとしての位置づけですけれど,中間報告によれば,かなり広い分野をカバーするとしていて,網羅するとは書いてない。だから,カバーされていないものは補完的なシステムで,ということも考えるということですので,あんまり網羅性を強調すると,大変になるのではないかと思います。
【石川委員】 網羅を目指した結果として,どの部分はほかでということはあると思います。
【秋山委員】 資料6ページの線表について確認の質問ですが,一番下の方に,「汎用部,加速部の割合検討」というものがありますけれど,線表で見ると2014年の3月ぐらいまでで線が終わっています。一方で,加速部の性能推定,特に,オフロードモデルの性能推定は5月ぐらいまで掛かっていますけれども,それとの関係はどのようになっているのでしょうか。
【石川委員】 これは間違いです。
【秋山委員】 分かりました。では,2014年の5月ぐらいまでに,汎用部と加速部の割合の提案が出てくると思ってよろしいでしょうか。
【石川委員】 それは概念設計レベルにおける割合であって,最終的には基本設計か,その後の詳細設計のところにならないと,最終的な割合は決まらないと思っています。
【中島委員】 今の話にも関連するのですけど,概念設計はいろんなアプリケーションを使って,予備的な性能評価をされています。その立場で,これが汎用部と加速部のベストコンビネーションだということは,決めるのですか。それとも,例えば,製造コストや,運用コストといういろんなファクターも加味して,汎用部と加速部の割合を決めようとしているのですか。
【石川委員】 ある程度,そういうところは出てくると思っています。かつ,ネットワークのトポロジーの都合から,簡単にあと2台増やそうということはできないですので,それは基本的にどうやって決めていくかということも含めて,ストラテジーも考えていかなければいけないと思っています。
【中島委員】 希望としては,開発主体で,できるだけ総合的な観点で,あらかじめ考えていただく方がよいと思います。
【石川委員】 そうですね。メモリサイズ的な観点もあるので,それによってカバーするアプリの数が変わってくる場合もあります。そういうことも含めて,いろいろな視点から検討していかないといけないと思っています。
【喜連川委員】 3ページの,基本的考え方の将来動向の2つ目で,メモリの容量はさほど増えないと書いてありますけれども,いわゆる旧サンマイクロなんかもジャイガンティックなメモリ搭載マシンを出してきたりしています。大きなデータを扱う人にとってみると,全部のノードを大きくしてくれとは申し上げないですけれど,かなりメモリに対するニーズ観は変わってくると思うのですが,将来もそのようなものが不要と書かれている背景を御教示いただけると有り難いです。
【石川委員】 デバイス技術,半導体の技術,2.5次元実装等が変わっていくと,また変わりますけれども,ノードの演算性能が上がって,それでメモリバンド幅をそれなりに提供しなければいけないといったときに,メモリ容量がどこまで上げられるかというところで,現状,特に,HPCでメモリバンド幅のことも考えると,メモリ容量は今と余り変わらないような状況になるのではないかなというところを言っております。
【喜連川委員】 1ページ目に書いておられるビッグデータコンピューティングということとのバランスで,メモリCPU間のトレードオフということが変わってくるのではないかと思いますので,その点は御検討いただければと思います。
【石川委員】 はい,分かりました。
【小柳主査】 これは要求の方の議論であって,今考えているシーズでどの部分を実現するかということは,また少し別のことかと思います。
【牧野委員】 補足ですけども,非常に大きな容量のメモリスケールというのは,電力消費だけから見るとできないわけではなくて,それに比例してメモリバンド幅を増やせと言われるとできないという,結構はっきりしたトレードオフが出てきてしまいます。だから,Byte/Flopが低くてもいいからたくさんメモリが欲しいよという,方向のニーズがあるという話が出てくれば,それは今までの検討とは別の方向として検討することは必要だとは思います。
【喜連川委員】 今の方向は,大体そういうニーズだと思います。
【牧野委員】 そういったものは少し別に考えないといけない。それは,プロセッサチップの設計には余り影響しなくて,メモリインタフェースだけになりますので,フラッグシップではないところに検討したくなる話だと思います。
【小林委員】 それに関連して,Power 8はバンド幅と容量を増やしてノードを作ろうという方向性も出しているので,どう使うかだとは思います。
【秋山委員】 先ほど,質問の形で発言しましたけれども,汎用部と加速部の割合ということについては,アプリケーション側の委員の一人として非常に強い関心を持っています。我が国で加速部についてすばらしい技術が出てくることを望んではいますけれども,今までの実績ということを考えると,CPUに関しては,「京」をはじめとして様々なプロジェクトがあるわけですけれども,加速部に関していうと,例えばGRAPEに関係するプロジェクト,その他,十数億円とか,せいぜい数十億円ぐらいのプロジェクトしか日本はやってきてないわけです。それが非常に大きなポーションで出てきたときに,アプリケーションがほとんどポーティングできない,若しくはポーティングできるけれども極めて時間が掛かって,きょうの前半で議論したような産業応用みたいなことが極めて遅れるということを懸念しますので,早めに割合検討の議論をオープンにしていただきたいと思います。かなり影響が高いのではないかと思って意見を言わせていただきました。
【牧野委員】 その懸念はよく理解できますし,そういうようなソフトウェアの問題とか,あるいはそもそも加速部の開発自体がうまくいくかといったことに対するコンテンジェンシーということももちろん考えないといけないので,比率に関しては早い段階で決めるのは難しい。ある程度できたところで,この演算加速は使えないので減らそうとか,そういうことも考えないといけない,あるいは非常に極端な場合としては,リスクヘッジとしては演算加速部の部分を全く使わないとか,あるいはそこの部分だけ外国から買ってくるとか,いろんなオプションがまだあるわけです。ですので,早い時期に決めることは難しいのではないかと考えます。
【平尾委員】 最初に石川チームリーダーからお話がありましたように,これは飽くまで, Science drivenでやるということが基本になっているわけです。同時に,将来のHPCの動向を考えたときに,加速部ということも全くこれから先には無視できない,新しい技術ですので,我が国としても,それも是非やりたい。ですけれども,飽くまでScience drivenでやるというのが基本でございますので,そういう観点から最終的には比率に関しても,総合的な観点から判断をしたいと思っています。
【村上委員】 投資収益率という観点から言いますと,ハードウェア資源としての投資もありますけど,研究開発の投資という観点で見ると,加速部の開発,それから汎用部の開発ということで,人材が分かれるわけですよね。そこで,ただでさえ少ない我が国のこの分野の開発人材を,果たしてそういうふうに2つに分けることが,トータルで見たときの投資収益率として有利なのですかという判断が要るのかなとは思います。もちろん,昨今のトップ10に名前が出てきているようなシステムというのは,汎用・加速というヘテロジーニアスな構成をとっていますけれども,果たしてそれが,実際のサイエンスにどれだけ貢献しているのか,あるいはソフトウェアの生産性という観点でどれだけメリット,デメリットがあるのかといったところの調査ということを十分に行う必要があるかなと思います。ここは重要な分岐点ではないかなという気がしておりますので,十分な検討をお願いしたいと思います。
【小柳主査】 今後も議論を進めていきたいと思いますが,理化学研究所におきましては,今出された御意見を参考にして,引き続き御検討をお願いしたいと思います。
遠藤参事官補佐より,今後の開催予定を報告。
小柳主査より閉会発言
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