資料2 リーディングマシンの定義、必要性について(取りまとめ)

1.リーディングマシンの定義

【共通認識】
以下の2つの要件を満たし、国の戦略的リーダーシップに基づき我が国の計算機科学及び計算科学全体を牽引するとともに、科学技術の新たな展開を切り拓いていくシステム。
・  世界トップレベルの高い性能をもったシステム
・  最先端の技術を利用し、新たに開発されたシステム

【論点1】
「多くの分野のユーザが利用できる汎用的なアーキテクチャ」とし、数も限定的とするか、「分野ごとに異なる複数のアーキテクチャ」とするか。もしくはその両者を含むものか。
(主な意見)
○  科学技術全般にわたるcomputingの重要性から、狭い分野や課題に限るのではなく、ある程度幅広い領域をカバーするマシンが望ましい。(宇川委員)
○  複数の(できるだけ多数の)カテゴリのアプリケーションに対して、世界最高クラスの(できれば世界最高の)性能および計算規模を有するマシン。(中島委員)
○  開発費も巨額になり、これまでと同じように特定分野向けのスパコン開発は理解が得られにくい。多くの分野のユーザが利用可能なアーキテクチャを2台持つことが望ましい。(平尾委員)
○  大規模計算のニーズを満たし、効率的にリーディングマシンの役割を担うためには、汎用であることが必要である。(室井委員)
○  単一のリーディングマシンが存在する必要はなく、分野(あるいはアプリのタイプ)ごとにあれば良い。(青木委員)
○  日本の科学研究、技術開発、産業利用を牽引し、それぞれに特徴をもつ2~3台の高性能コンピュータとなる。(小柳主査)
○  分野や解法毎に要求される計算機スペックが異なるため、リーディングマシンは汎用性の高いものになるとは限らない。(加藤委員)
○  一つのアーキテクチャで全てを効率的に実行することは困難なため、アプリケーション分野に合せて多様なシステムを用意すべき。(小林委員)
○  研究分野によって計算アルゴリズムが異なることから、1台だけではなく複数台あり得る。(渡邉委員
○  国内のHPCインフラの構成が階層的なピラミッド型となり、その最上層が1~2台の「リーディングマシン」となる。(秋山委員)
○  個別分野や学術的課題の解決に応えるマシンについても、その位置づけと予算措置の規模・種類等を明確にし、国として開発するマシンと併せ、総体として科学技術におけるcomputingのロードマップを策定して進めることが必要。(宇川委員)

【論点2】
「世界トップレベルの高い性能」の考え方。
(主な意見)
○  世界で最高速級の計算機(必ずしも最高速(1位)である必要はない)で、1世代前の「リーディングマシン」よりも10倍から100倍程度速い計算機。(青木委員)
○  世界的に見てもトップ級と言える性能を有するマシン(LINPACKに限定しない)。(秋山委員)
○  リーディングマシンは国内で最大規模のマシンであり、同じ時期に情報基盤センター群が設置可能なマシン規模の一桁以上の性能を有する必要がある。(石川委員)
○  必ずしも世界一の性能を有する必要は無いが、少なくとも、世界一の性能を有する計算機に準ずる性能を持つことは必要。(加藤委員)
○  アプリケーションからのニーズに応えるシステムとなっていれば、LINPACK的な視点でのシステム規模やレベルが世界的にどの位置にあるかは問題ではない。(小林委員)
○  特定の計算向けのマシン(汎用マシンでなくてもよい)であり、開発された時点で世界トップレベルのスピード(Linpackであっても他の評価指標でも良い)を示すマシン。(高田委員)
○  必ずしも演算速度ばかりが指標ではないが、TOP500の少なくともトップ10に入るシステムでなければリーディングマシンとは言えないであろう。(平尾委員)
○  価格性能比や電力あたり性能といったコスト面で国際水準を上回り、それが実際のアプリケーションで実現されるものでなければならない。(牧野委員)
○  FLOPSのような計算パワーだけでなく、メモリ量・メモリバンド幅・ネットワーク速度・ストレージ量および速度などの(複数の)パラメタで、他の多くのスパコンを凌駕するトップクラスのマシン。(松岡委員)

2.リーディングマシンの必要性

【共通認識】
我が国の計算機科学及び計算科学を発展させ、世界における当該分野の優位性を維持し、それにより我が国の科学技術の発展や産業競争力の強化に貢献することが出来る。

【その他の意見(開発の必要性など)】
○  開発することにより、国内メーカにおけるハードウエア、システムソフトウエア、運用技術などを高めるための刺激になる。(秋山委員)
○  新たに開発することにより、市場の既存技術のトレンドでは実現不可能な計算性能を得ることが出来る。(宇川委員)
○  国内で開発することにより、アプリケーション開発者と計算機開発者との密接な連携によりスパコンの性能を十分に発揮できるようになる。(加藤委員)
○  海外からの購入では、アプリとシステムのミスマッチにより研究開発の生産性が低下し、国際競争力を失いかねない。(小林委員)
○  新しい最先端の技術開発の集約により、今後のスパコンの技術トレンドを先取りしリードすることが出来る。(松岡委員)
○  大規模なシステムを整備することにより、その運用の効率化を図ることが出来る。(秋山委員)

3.開発の在り方(関連する項目を含む)

(1)国産技術の活用等
○  ハードウエアだけでなく、優れたコンパイラやジョブスケジューラなどがないとリーディングマシンの実効的な能力が確保できないため、過度に国産技術にこだわる必要はない。(秋山委員)
○  企業の製品開発計画や性能、使用電力量が不確かな中では中長期的視野での計画が立てられないため、国の科学技術計算の基盤整備計画として、中長期的に実現可能性を有するマシン開発を考えるべき。(石川委員)
○  リーディングマシンへの投資に関し、開発された要素技術で我が国の企業が利益を上げ、市場の拡大、投資の回収がされることを求めるか、それは考えずにHPC分野の発展や産業競争力の強化のために実施するのかを明確にする必要がある。(加藤委員)
○  国力に応じた適正の投資という観点から、国際協力による開発が重要な視点になると思う。(高田委員)
○  リーディングマシンの国内開発にあたっては、そこでの技術開発が日本のコンピュータ産業の将来にとって有益であり、開発に要した投資をコンピュータ産業として回収できるという長期的展望が必要ではないか。(常行委員)
○  我が国は高性能プロセッサを開発できる数少ない国の一つであり、計算機産業や計算科学技術の一層の発展のためには、何らかのプロセッサ開発を継続すべき。それにより、システムソフトウエアの開発やネットワークの開発研究も加速される。(平尾委員)
○  開発された技術はスパコンだけではなく、他のIT分野にも適用されるものであり、開発されたマシンが国内はもとより国際市場でも高い競争力とシェアを持つ必要がある。(松岡委員)
○  リーディングマシンの開発に当たっては、計算科学とデータ科学の融合の促進に必要となるユーザが求める機能を有するシステムかという点や、社会インフラとしてHPCIの核としてオンラインリアルタイムシミュレーション等を可能とするシステムかという点も視野に入れて進めるべきではないか。(村上委員)

(2)アプリケーション開発
○  大学の一研究室等で汎用的なアプリケーションソフトウェアを開発することはもはや不可能であり、コミュニティが共用する「基盤的なアプリケーションソフトウェア」を開発していく必要がある。(加藤委員)

(3)運用
○  リーディングマシンは超大規模計算を可能とするものであるが、通常時の運用において、全系や半系を用いるような超大規模計算だけを優先する考えは避けるべき。(秋山委員)
○  利用者を著しく限定せず一定のスキルがある利用者については、課題数を限定せずリーディングマシンへのアクセスを開放すべき。(秋山委員)

(4)人材育成
○  研究者や技術者の裾野を広げることは分野の発展に不可欠であり、特に若手研究者が比較的自由にリーディングマシンを使えるようにしたほうがいい。(加藤委員)
○  研究者・技術者の裾野を広げるためには、使いやすい数値計算ライブラリを予め開発、提供するとともに、ハードの専門家と連携できる仕組み作りが必要。(加藤委員)

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