資料5 事前ヒアリングにおける主な意見と今後の調査・検討課題の整理

1.国内外の動向

【今後の調査・検討課題】

○国内外における計算科学技術に係る状況、利用や技術の動向はどのようになってきているか。

 
【主な意見】

○ 計算科学技術の利用としては、従来のシミュレーションに加え、大量のデータをどう処理していくかが重要になってきている。 

○ コンピュータやプロセッサ企業が10年後にどうなっているかが不透明になってきており、今後とも外国の技術でシステムを作れば安く良いものができるとは言いづらくなってきている。

○ 従来は大型計算機の技術をコモディティーに活かすスピン・アウトが主流だったが、今は市場の大きいコモディティの技術をスパコンの技術に活用するスピン・インが主流になってきている。

○ 米国や韓国はHPC法があり、国として継続してHPCの研究開発するシステムになっている。

2.計算科学技術の利用状況、今後の必要性

【今後の調査・検討課題】

○科学技術分野で計算科学技術がどのように利用されてきているか。また、今後の必要性はどうか。

○計算科学技術の産業利用の状況や、今後の必要性はどうか。

 
【主な意見】

○ 工学や科学が何を目指していて、その中で計算科学がどのように貢献するのかを考えることが必要。

○ 基礎的な科学や気候・気象の分野では計算科学技術が不可欠のものとなっている。

○ ライフサイエンスの分野では、大量のゲノム情報の解析という点からスパコンの利用が重要になってきている。

○ 「京」やHPCIを利用するのはトップレベルの一握りの研究者に限られており、ほとんどの研究者はサーバーレベルで研究をしている。そういう研究者を取り込んでいかないと、「京」やHPCIが社会の納得を得られないのではないか。

○ 産業界では、トップマシンの100分の1から1000分の1の規模のスパコンを利用するのが主流である。

○ 産業界においても、業種によりスパコンの利用状況やスパコンに求めるものは相当に異なる。

○ 産業界でも、まだまだ大規模計算へのニーズがある。計算資源が大きくなれば、その分だけやることはある。

3.将来の我が国における計算科学技術システムのあり方

【今後の調査・検討課題】

○必要な計算資源はどの程度か。また、どのような能力のスパコンをどのように配置するべきか。

○スパコンの運用に関し、大学基盤センター、附置研、独法の役割はどうあるべきか。

○リーディングマシンの必要性についてどう考えるか。

○汎用システム・専用システムを含め、どのようなシステムを整備・運用すべきか。

 
【主な意見】

(1)配置のあり方

○ スパコンを基盤という見方だけではなく、最先端の研究のための装置として、成果創出という観点からその配置等を検討すべき。

○ 1台だけ突出した性能のマシンがあり、それを6,7年ごとに更新ということでは使いにくく、そうしたマシンが複数台、地理的にもバランスよく配置され、全体で見れば数年で更新されていくという体制が望ましい。

○ 最先端と基盤のバランスが大切であり、基盤は基盤として使えるスパコンが必要。

○ 日本全体で見ると多くのスパコンがある。各基盤センターで役割分担をした上で、そこを核にある程度集約することも考えられるのではないか。

○ 現在はネットワーク全体がコンピュータ的になっており、ネットワークに分散化したような次世代マシンという考え方もあるのではないか。

(2)基盤センター等の役割

○ 電力やスペースの制限から大学基盤センターに入るスパコンが小粒になってきており、そうした状況変化等を踏まえて、基盤センターの役割やあり方、機能強化について検討するべき。

○ 大学は教育機関として基盤的なシステムは持っておくべき。また、基盤センターは新しいユーザの開拓や人材育成などに力を入れるべき。

○ 分野内の評価が低くても、新しい芽としてやるべき研究も行えるよう、料金を払えば誰でもスーパーコンピュータが使えるという仕組みは残しておくべきと考える。

○ 附置研はその分野での幅広い利用を支え、独法はミッションオリエンテッドな利用が中心となるのではないか。

(3)リーディングマシンについて

○ リーディングマシンについては、サイエンスの課題解決や、計算科学技術全体の底上げにつながること、技術の蓄積が図れること等から必要ではないか。

○ リンパックの性能だけではなく、計算機科学として新しいものがないとリーディングマシンにはならないのではないか。

○ ユーザーにとっては、待ち時間が長いリーディングマシンよりは、多少能力が低くても、比較的自由に使えるマシンの方が研究を進める上では役に立つ。

(4)システムのあり方

○ ユーザ層の広がりや将来的な技術の展開等を考えると、トップマシンや基盤センターはやはり汎用システムであることが必要ではないか。

○ 専用システムは開発費も低く、分野によっては非常に有効なので、二者択一ではなく役割分担も含め、両方を視野に入れて開発を進めるべきではないか。

○ 汎用システムか、専用システムかというより、何をターゲットにしたシステムを整備するのかが重要と考える。

○ユーザから見れば、自分のアプリが速く動き、また、利用環境も整備されており、成果が出せるのであれば、どのようなシステムでもいい。

4.計算科学技術に係る研究開発の方向性

【今後の調査・検討課題】

○今後の計算科学技術に係る研究開発をどのように進めていくべきか。

○ハードウェアについて、どのような要素技術に我が国として重点を置くべきか。

○今後のアプリケーション開発のあり方についてはどう考えるか。

 
【主な意見】

○ 米国のように、今後10年程度を視野にどのようなマシンをどの組織に配置していくかの計画を立てるべき。

○ HPCを国の研究開発として位置づけ、長期的に研究開発を進めていくことが必要ではないか。

○ 今後の計算科学技術の推進に当たって、計算科学と計算機科学、工学と理学の連携を進めることが重要。

○ ある先端のハードやアプリが開発されてから、それをどう普及させて、5年、10年後にどういう成果が広がっているか、全体を見据えた長期的な検討が重要。

○ HPC技術の主導権を持つためには、ハードウェアとソフトウェアと両面の研究開発をしていくべき。

○ 当面はアーキテクチャーよりも、計算科学などの計算機を活用した研究に投資し、リーディングマシンの開発としては京の次の次くらいを考えた方が良いのではないか。

○ スーパーコンピュータの開発動向を把握するためにも、また、国家安全保障的な観点からも、CPUの設計技術は自国で持つべき。また、CPUはミドルソフトウェアの開発にも関連しており、その意味からも重要。

○ スパコンは総合技術でありCPUの技術のみにこだわる必要はないのではないか。

○ どのような技術を自国で持つかは、その技術がコモディティレベルでどう展開できるかによって決めるべき。CPUについても、そうした展開ができないのであれば、自国で開発する意味はないのではないか。

○ 最近はスカラー型CPUでもベクトルの技術を使うようになってきており、日本の優位性を失わないためにもベクトル技術の継続的な研究開発が必要ではないか。

○ CPU以外で今後重要となる要素技術としては、インターコネクト、ネットワーク、システムソフト、コンパイラなどがあり、CPUの国内開発が困難な場合であっても、これらの技術を国際競争力のある技術として育てる必要はある

○ 2018年から2020年にスパコンがどうなっており、アプリはどのように開発すべきかとの共通認識を持った上で、今後のアプリの研究開発のあり方を検討すべき。

○ 今後ハードの並列化が進んでいくと、アプリ開発が大変になるので、今からでも基盤となるアプリケーションソフトウェアの整備や人材育成を図る必要があるのではないか。

○ 高度なアプリを開発する人材を育成に取り組み、そうした人材と分野の研究者が共同で開発する体制の構築するべき。

○ 日本で作られたソフトが世界で使われていないのは問題。これを変えていくには、グローバルなオープン開発のようなことを考えていくべきではないか。

5.利用のあり方(利用環境、産業利用促進等)

【今後の調査・検討課題】

○スパコンの利用を促進し、成果の創出を図るために、運営や利用環境のあり方はどうあるべきか。

○産業利用の促進を図るために必要なことはどのようなことか。

 
【主な意見】

○ スパコンの運営に当たっては、責任主体をはっきりさせるとともに、透明性を持った形で運営することが重要。

○ 申請手続きの簡素化、ユーザーサポート、待ち時間の短縮化など利用しやすい環境があればもっと多くの研究者がスパコンを使うようになるのではないか。

○ 大学のアプリがメンテナンスが上手くできてないことや、産業界がオープンソースのアプリを使うことに抵抗感があることが、スパコンの産業利用を阻害しているのではないか。

○ 大学の先生がやっているトップレベルの計算科学技術と産業利用との間を埋めないと、産業利用は進まないのではないか。

6.その他

【今後の調査・検討課題】

○将来を見据え、計算科学技術に関する国際協力や人材の育成をどのようにしていくべきか。

 
【主な意見】

○ 日本が強い分野は日本で行い、米国が強い分野は協力して開発するべき。そのためにも自国で技術ポテンシャルを持つことは重要。

○ 分野を越えて、高度なアプリケーションが書ける人を育成する必要があるのではないか。

○ 若い人を育てるために、数千コアを使わせる経験をさせることが必要。また、「京」で若手のコンペをするのも有効ではないか。

お問合せ先

研究振興局情報課計算科学技術推進室

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(研究振興局情報課計算科学技術推進室)