今後のHPCI計画推進のあり方に関する検討ワーキンググループ 産業利用アプリケーション検討サブワーキンググループ(第2回) 議事録

1.日時

平成25年9月3日(火曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省 15階 15F1会議室

3.出席者

委員

加藤主査,秋山委員,天野委員,伊藤委員,奥野委員,笠委員,塩原委員,常行委員,善甫委員,吉村委員,渡邉委員
(説明者)
トヨタ自動車株式会社 梅谷主幹
住友ゴム工業株式会社 白石部長,岸本主査

文部科学省

遠藤参事官補佐

4.議事録

(1)前回の議論について

 加藤主査より資料1-1に基づいて説明。質疑応答は以下のとおり。

【秋山委員】  3の下から2行目に「精度検証のための実験費」という言葉を入れていただいています。これは幾つかの意味があったような気がしていまして,シミュレーションだけを単独でやるという現場は少なくて,実際の実験と計算というものが車の両輪のような形になっている。そうすると,シミュレーションだけを入れかえられてしまうと,実実験の方もいろいろ組み直さないと全体としてのプロトコルができ上がらないので,アプリケーションの方だけを簡単に入れかえるわけにはいかないという意味が含まれていたと思ったのですが。
【加藤主査】  シミュレーションと実験を両方使ってものづくりをしているので,シミュレーションの部分だけを簡単には入れかえられないという意味じゃないかと思うのですが。
【秋山委員】  アプリケーションソフトウェアも,ほとんど同機能であっても,検証のプロトコル全体の組みかえになるので,アプリケーションが変わるというのはとても大変なことだというのをこのサブWGでは認識に加えたらどうかと思いますが。
【梅谷主幹】  当然シミュレーションの方は実験と違ってノウハウが入りますので,いろいろ検証しなければいけないということになると思います。もともと実験でのテスト手法というものが基準になって,シミュレーションのツールに関係なく変わらない。アプリケーションソフトウェアの特徴によって,使用上のノウハウというのが変わる可能性があるのでいろいろ検証をしなければいけないのですが,その検証に使う実験データそのものというのは,ソフトウェアにかかわらず同じデータを使うということになると思います。
【加藤主査】  わかりました。ということは,実験ベースでものづくりをしているときに,ある基準がある。その基準を満たすようにシミュレーションを変えようとすると,どうやれば実験で定めていた基準と同じような評価ができるかというノウハウの積み上げも含めてかなりのコストがかかるという意味ですね。
【梅谷主幹】  はい。
【加藤主査】  だから,必ずしも秋山さんが今言ったように,実験とシミュレーションの両方をやっているからという意味ではないとはわかりました。
【吉村委員】  すみません。国の関与であるとか,あるいは国の支援をどういうふうにするかということで書いてありますけれども,お金だけ出せば済むと言うだけではなく,国が民間とタイアップする中での国の支援というのがどうあるべきかという,あるいは国が民間の活動をどういう形でうまくプロモートするかというところもこの国の支援の中には入っているということでよいですね。
【加藤主査】  それは当然皆さん同じ認識を持っていると思っているのですが,パートナーシップというかギブ・アンド・テークというか,国としては何をやる,産業界側では何をやるということは当然言外の意味には含めています。

 加藤主査より資料1-2に基づいて説明。共通認識が確認された。

(2)産業界におけるスーパーコンピュータの将来的な利用方法に関するヒアリング

 天野委員より資料2に基づいて説明。質疑応答は以下のとおり。

【塩原委員】  プレ・ポスト処理の話は重要だと思っていまして,「京」が利用開始されてからちょうど1年がたって,すごく大量のデータが蓄積されてきたとか,可視化というような支援ニーズが出てきています。Solverだけじゃなくて,プレ・ポスト処理のハード,ソフトウェアの環境も併せてエクサに向けて検討の中に入れるべきだと考えます。
【加藤主査】  わかりました。
 私からもお聞きしたい点があります。4ページですが,精度と解析期間に関してですが,精度は200倍にして時間は4分の1にしたいから1,000倍程度の能力が必要だということだと思うのですが,時間に関する満足度の方がまだ精度よりは高いと理解していいのですか。
【梅谷主幹】  そういう意味では,どちらもという感じです。実際の開発現場では,解析期間が制約になって精度が決まっているという側面が強いように思います。ただし,加藤先生が先ほどおっしゃったように,1日でできればその設計手法そのものは変わるので,かなり画期的なことになるとは思います。
【加藤主査】  わかりました。それから,主な将来的な適用分野は,流体と,それから強度と衝突と振動と考えていいのですか。例えば,パワートレインとか通信とか制御とかITSとか,そういうキーワードはここに入っていないのですが。
【天野委員】  おっしゃるように,僕らは安全と言っていますけれども,ITSも含めた,この絵の外側に社会とのかかわりや環境といったところが増えてくるのではないかと思っています。
【加藤主査】  そうすると,主に時間でリミットがかかっている精度を飛躍的に向上させたい。ただ,同じ時間でやりたい。そのときに,1つの問題として大きなデータのハンドリングが1つのボトルネックになっているというのが参考の2枚目に書いてあることと解釈すればいいですか。
【梅谷主幹】  当然Solverが流れないと話にならないですけれども,設計に反映させるところまでのトータルのデータのハンドリングというのが非常に重要になると思います。
【加藤主査】  それから,計算機そのものに関しては,例えばトップエンドの大体10分の1の価格の50億円ぐらいの計算機で実証して,それでうまくいったら数年後に5億,10億の計算機を自分のところで回すということに関しては,特段問題はないですか。
【梅谷主幹】  過去の事例でいうと,地球シミュレータのときに,精度の向上のためにはメッシュを細かくするという方向性だというのがわかりました。あれから7年,8年たって,あのときにやった規模の8割ぐらいのメッシュ数に今なっていると思います。そういう意味では,方向性ははっきりしたので,それに近づいていこうということで年々投資をしていくという形で実際には進んでいます。
【加藤主査】  わかりました。
【渡邉委員】  僕は,ポスト処理よりも,数値を,モデルをつくるところのプリ処理でものすごく苦労されたと思います。プログラムそのものというよりもプリ処理の部分がこの何十年全然変わっていないような気がします。これをやはり開発すべきだなと思います。
 それから,性能出なかったけれども,それを度外視して,これやらざるを得ないねということで運用上目をつむってやっていただいた。そういう面でもフレキシビリティーがないとできなかったので,運用ということも考えないと駄目だと思います。

 笠委員より資料3に基づいて説明。質疑応答は以下のとおり。

【加藤主査】  ちょっと勝手に要点をまとめさせていただくと,2020年ごろには,今の「京」の50分の1から10分の1倍のハードウェアを入れて,市販ソフトウェアも数百から1,000ぐらいまでであれば対応しているのではないかと思われる。それ以上になると国プロ開発アプリケーションやOSSが中心になると思われるけれども,CADを国産でやっていない限りはいずれにしても使えないのではないかというふうに聞こえたのですが,そういう認識でいいですか。
【笠委員】  そうです。CADとオープンソフトウェアなり何なり,Solverの部分がうまくつながらないということです。
【善甫委員】  加藤さんがまとめられた以外に,影響の及ぼす範囲というのがあると思います。例えば,オープンソースソフトウェアというのがうまくいくのだったら,それに伴って市販のソフトウェアを並列化が進むといったことです。
【加藤主査】  そういう意味では,OSSとか国プロ開発アプリケーションが市販ソフトウェアになっている可能性もある。
【笠委員】  そうですね。
【常行委員】  今のオープンソフトウェアと市販ソフトウェアの関係がよくわからないのですが,基本的には市販ソフトウェアであることが望ましいということでしょうか。
【加藤主査】  市販ソフトウェアであることが望ましいというわけではなくて,まず現状は市販ソフトウェアの利用が最も多いということをよく聞きます。それから,企業から見ると,きちんとしたサポートがないといけないのですが,オープンソースや国プロには一般的にサポートがない。しかも精度が検証されていないものは使えないという御意見をよく聞きます。
【吉村委員】  先ほどの天野さんの講演と今の笠さんの講演とで共通しているところで,かつ理解を共通にするという意味で認識しておかなければいけないなと思うことですけれども,ものづくり系の,あるいはCAEで使われているソフトウェアのベースとなっているアルゴリズムによって,並列化に向いているものと向いていないものとで分かれていますし,必要となるいわゆるメッシュ規模もまた全然違うので,そのあたりをきちっと分類して議論をしないと誤るところがあるかなと思います。
 もう一点ですが,可視化に関しては,これまで,新しいマシンを作ると必ずその上で使える可視化コードを開発してきていて,それが資産として順番に継続されて今に生きているという話を聞いたことがない。ですから,可視化ソフトウェアがなぜマシン環境が変わったときに継続できないのかのネガティブ要因を分析した上で何をするかということを考える必要があるということを考えます。
【加藤主査】  わかりました。

 住友ゴム工業株式会社白石部長より資料4に基づいて説明。質疑応答は以下のとおり。

【加藤主査】  ナノメートルからメートルまでのいろんな解析をやられていますが,これは主に市販のアプリケーションでやられているのですか。それとも大学との共同研究等によって開発したアプリケーションでやられているのですか。それとも純粋なインハウスですか。
【白石部長】  現状では市販のアプリケーションです。
【奥野委員】  生命科学系ではマルチフィジックスが遅れておりますが,現状ではまだマルチフィジックスに対応したアプリケーションはない状態なのでしょうか。今後どういった利用をイメージされているのでしょうか。
【白石部長】  現状では個別に解いて連結させているような状況ですけれども,それを全部含んだような形でいろいろ便利にできるようなツールがあったらいいかなという,そんなイメージです。
【常行委員】  定番市販ソフトウェア等の差別化できる性能機能というのでイメージされているのは,精度とか速度という問題でしょうか。それとも,今までにできなかったシミュレーションができるとか,そういうイメージなのでしょうか。
【白石部長】  例えば計算時間が極端に短くなるというのも一つのメリットですし,違う現象を連成してできますというのもメリットだし,これはいろいろ見方によって変わってくると思います。
【善甫委員】  私も実はここを聞きたかったのですけれども,例えばスピードについていうと,2割速くなっただけでは交換しないと思います。だけれども,4割,5割速くなったらこれは変えてもいいかなと感じでいるのですけれども,いろんな実験とのすり合わせとかいろんな手間を考えると,そのような性能のよさでは置きかえないというのが普通ではないかなと思うのですけれども,いかがですか。
【岸本主査】  どんどん今材料とかも変わっていく中で,どこがキーポイントなのかと知りたいときには,シミュレーションの誤差が大きいと,その方向性がかなり誤る場合も多分にあります。そういった意味では,時間だけではなくて精度,大規模な計算で,いろんな現象を踏まえた上での取り組みだとか,必要かなと思います。
【加藤主査】  口を挟むと,質問と答えが少し食い違っていると思います。どれぐらいの効果があれば置きかえますかという,その辺の感覚を知りたいというのが質問だったと思うのですが。
【白石部長】  10分の1になったら確実に変えます。
【加藤主査】  3分の1はどうですか。
【白石部長】  開発の需要というのがありますよね,それと照らし合わせて,そこに来なければ全然役に立たない,使えないよということであれば変えます。
【加藤主査】  ですから,数割じゃ変えない。少なくとも数倍というのがお答えですね。
【白石部長】  逆のケースもあります。今このぐらいの期間でやっていて,それで十分だという分については,そんな速度は必要ないということになります。
【加藤主査】  関連してお聞きしたいのですが,アプリケーションが今後どういうふうになるとお考えですか。例えば,このまま市販ソフトウェアが大規模化されて,ライセンスの問題も解決されて更に普及するのか,それとも,市販ソフトウェアでは限界があるから国プロ開発アプリケーションとかOSSになるのか,という辺りのことはどうお考えですか。
【白石部長】  研究的なシミュレーションというのは,できるだけ詳細にといったところで,実際にどんなことが起こっているかということを理解するというようなところがございますよね。そこから,簡略化したような計算とかに置きかえ,企業内のコンピュータで実用化というようなところを考えていくようなステージに入ると思います。
【加藤主査】  ハードウェアはわかりました。ソフトウェアはどうなっていくとお考えですか。
【白石部長】  ソフトウェアについては,基本的には同じものをやはり使いたいというのが我々としての当然の要望だと思います。信頼できるソフトウェアというのは非常に重要だと思いますので,それをわざわざ変えるというようなことは,よほどの理由がない限りしないと思います。
【吉村委員】  企業でなぜ市販コードを使うかというと,1つのコードでいろんな解析機能を持っているということだと思っています。企業内の目的に合致して汎用的につける機能があって,それがそこそこのマシン環境で動くのであれば,それをまずは優先していて,ある特定の解析機能で,すばらしい性能が出る,なおかつ,それしかできないとしても,それを部分的でも使おうとするには,ものすごい産業利用上のメリットがないとそちらに動いてくれない。そこの部分が大きな隘路じゃないかなと感じています。

(3)シミュレーションの産業利用に関する調査報告の紹介

 伊藤委員より資料5に基づいて説明。質疑応答は以下のとおり。

【塩原委員】  現在,「京」の利用者として採択された方というのは,それなりに自社でISVソフトウェアを動かしてきた人なのですが,「京」の利用は結構苦労されている。今,伊藤さんがおっしゃったようなクラウドシステムや自律的成長システムとか,非常に絵としてはきれいなのですけれども,こういうところにはまだ至っていないというのが現実です。
【常行委員】  結局シミュレーション環境とかサービスが重要であるということを,なるほどと思って伺ったのですが,アプリケーションを国で開発,国内で開発することの意義とか重要性というのはどれぐらいの位置づけになるのでしょうか。
【伊藤委員】  開発者側と先行的な利用者側が一緒になって回るという仕組みが極めて重要というふうに思っています。

(4)(2),(3)に関する意見交換

 意見交換は以下のとおり。

【伊藤委員】  企業だと研究開発部門と事業部門がかなり違うと思います。それを一緒にして企業としてしまうと話がごちゃごちゃになるかなという気がしています。というのは,私の経験だと,地球シミュレータが出て2年後に,私がいた会社の事業部門には地球シミュレータの倍の計算機が入っていました。多分自動車会社も,現場の方では恐らくかなりの大きいものを持って使っているはずです。そこに対する議論ではなくて,そこの前の段階に対する議論をした方がいいのではないかという気がしているのです。
【加藤主査】  後の方に言ったのは,企業では2年ぐらいでトップエンドよりも大きいものを入れる場合があるという話でしたが,そういうものを使って研究開発もやられているけれども,むしろ実務で使われているアプリケーションに限定した方がいいのではないかという意味ですか。
【伊藤委員】  非常に大きな計算機を入れるのは事業部門です。そこでは動いているソフトウェアはある種レガシーコードになっていて,そのかわり本数も少なく,がんがん回っている。ここで議論するのはそこではなくて,研究開発部門とか技術開発部門でやっているものかなと思うので,そこら辺を分けて議論した方がいいのではないかということです。
【加藤主査】  それは,議論の進め方の1に書いていますが,両方を私は想定しています。
【伊藤委員】  両方だけれども,色合いが違う部分があるから,そこのアプローチを少し分けないといけないと思います。
【加藤主査】  それはもちろん分けた上で両方を議論する。
【伊藤委員】  了解です。
【善甫委員】  研究開発部門と事業部門とが違うというのは,企業のサイズによっていろいろ違うので,今,加藤さんがおっしゃったように全部含めて考えた方がいい。ただ,伊藤さんおっしゃることもよくわかるので,どういう場合に非常に大きい場合になるかということを同時に考えながら議論すればよろしいかと思います。
【加藤主査】  わかりました。いずれにしても両方議論するということでよろしいですか。
【伊藤委員】  いいです。
【加藤主査】  まず市販ソフトウェアに関して,今後,例えば2018年とか2020年ごろに,ユーザから見たらどうなっている,どうなっていてもらいたいと思いますか。では,まず梅谷さんから。
【梅谷主幹】  今の市販ソフトウェアの方向性として,やっぱり高並列に向かっていくというのは間違いないと思います。今回,「京」スパコンの方に構造系の,余り高並列に向かないような市販ソフトウェアを載せたのですけれども,ベンダはわりと協力的でした。それは,Intelの方針が多コアに向かっていくので,将来的にはそっちの方に向かっていかなければいけないけれども,ということだと思います。
【加藤主査】  先ほど吉村先生から,実は高並列に向かうとしても,本当にできるのはアルゴリズム的に限られているのではないかという話がありましたが,そのあたりはどうですか。
【吉村委員】  今,梅谷さんがおっしゃった衝撃解析コードに関しては,効率を度外視すればいずれにしてもアルゴリズム的には並列化に向いていますし,いわゆる接触関係も,詳細はわからないですけれども,やっぱり並列化に向けた研究開発かなりこれまで進んでいるので,そういう流れに多分ベンダも乗ってきてくれるのかなと思います。なおかつ,国内にそれに対抗するようなオープンソースや国産アプリケーションがないので,そことタイアップするのだったらするという戦略しかないかなというように感じました。
【梅谷主幹】  あと困るのが,吉村先生がおっしゃるとおり,いわゆる並列がきかないところで,精度を上げようとか適用範囲を広げようとかというと,それは性能というかスパコンの性能にかかわるところがあって,なかなか難しいところです。そういう意味では,そういう市販ソフトウェアでできないところをやっていただけないかというところはあると思う。
【加藤主査】  ちょっと議論を先に進めて,高並列に向かえるものはどのぐらいあると思いますか。もうちょっと突っ込んだ聞き方をすると,天野さんの資料の7ページに分野ごとに使用されているアプリケーションの中で,OpenFOAMとFront Flowと,それから,ADVCはADVENTUREですが,それ以外は全て市販で,しかもSCRYUを除けばこれは全部海外製ですよね。このうちの何本ぐらいはそういう方向に行って満足するだろうと思いますか。
【梅谷主幹】  並列性能を上げようという方向に向かうのは,衝突,流体のソフトウェアは全てのソフトウェアベンダだと思います。
【加藤主査】  全てですか。ただし,それより右側はちょっと難しいところもあると思いますが。
【梅谷主査】  例えば振動・強度でいうと,ADVCは高並列ですけれども,そのほかのソフトウェアは並列化に苦しんでいるという感じです。
【加藤主査】  結論を急ぐようですが,そういう状況の中で国はどうすべきだとお考えですか。
【梅谷主幹】  民間にできない,シミュレーションの世界で画期的な何か,というものを国に期待したいと思っています。
【加藤主査】  企業としてはできないことをできるようにしたいということですが,そのために国はどういう環境なりを提供すべきと考えていますか。具体的に言うと,例えば,早めにチップセットを提供してベンダに性能のプロファイリングをとってもらうとか,あるいは共同研究を早めに着手するといったことですが,どう思いますか。
【伊藤委員】  それに関しては,既にでき上がっている市販ソフトウェアなので,これを次のマシンで動くかどうかというテストベッドを早めに用意してあげて,そこで移植をさせるということができるような場をつくってあげることだと思います。
【加藤主査】  その場合の支援としては,リソースの提供以外に何かありますか。
【伊藤委員】  そこはソフトウェアごとに変わってくると思っていて,つまり,いろんな人を入れて支援されることを嫌うソフトウェアも当然あるはずなので,最低限まずできることは,そういう場をまずつくることだと思います。
【梅谷主幹】  伊藤さんのおっしゃるとおりで,いわゆる「京」とかエクサの設計段階でアプリケーションの性能を上げるためには,こういうアーキテクチャーに変えるともっと速くなるよという話までしていただければ言うことないです。
【笠委員】  今,伊藤さんがおっしゃったテストベッドというのは,それはそれで私も賛成ですが,ユーザが見極めたいのは,2020年に向かって本当に行ってくれるのかということだと思います。それができるだけ早く出てくれば何をやらなければいけないということがより明確になるという意味で,産業界のユーザとしてもメリットがあるのではないかなと思います。
【加藤主査】  確認すると,白旗上げるのであれば早く上げてくれということですか。
【笠委員】  それは吉村先生がおっしゃったことも含めてです。
【加藤主査】  でも,白旗を上げる人はなかなかやってくれないのではないですか。
【笠委員】  それは不戦敗ということも含めてです。
【加藤主査】  そこまで強制力はないですよね。
【笠委員】  そうですね。
【加藤主査】  でも逆に言うと,そういう場を提供したときに,自分から積極的にそこに来る人はそもそも白旗を上げる意思はないというか,自分たちはできると思ってくるし,そこに来ない人は,ビジネス的に来ないか,あるいは来ても勝てないと思うから来ない。それができたら,そこでは,市販ソフトウェアの限界というか市販がカバーするのは大体この分野ということがわかって,それがカバーできないところとして,国プロ開発アプリケーションなりOSSがどういうカバーをしていくかということがある程度明確になりますね。
【吉村委員】  市販コードのメーンのユーザというのは,「京」とかエクサよりももう少し中規模のマシンで中規模の計算をするユーザなわけです。ただ,「京」とかエクサを使いたいという一部のユーザが先導的にそこで使えるソフトウェアを欲しいわけなので,「京」とかエクサの部分に一緒についてきてくれるところは,もう少し国からサポートをしたり協力をしたりして,そちらもウイングを広げてもらう。それについてこないところがあったとしても,その人たちはその人たちでちゃんと次のフェーズにおけるHPCの担い手なので,いずれノウハウとしてはきちっと伝わりますから,そんなに引け目に感じなくてもいいかなと思います。
【加藤主査】  ビジネスというのは全部がHPCでもないということですけれども,この市販ソフトウェアに関してほかに何か御意見ありますか。
【吉村委員】  材料関係のMDは,アルゴリズム的には並列化に向かないはずがないので,市販ソフトウェアと国プロ開発アプリケーションに大きな差別化が出るのは,パフォーマンスの話なのか,データベースであるとか,ノウハウであるとか,そのあたりというのはクリアにしておいた方がいいのかなと思うのですが。
【奥野委員】  生命科学系で言いますと,まだ評価をできるレベルにまで来ていない。恐らく,その会社に入ったときにそのツールが入っていた,あるいは学生のころからそのツールを使っていたといった状況ですので,これからの段階でそういう価値観の違いが出てくるのではないかなと思っています。
【秋山委員】  製薬でよく使われているドッキングの市販ソフトウェアがありまして,CPU若しくはスレッドの数に比例してライセンス料を払わないといけないです。そういうところの虚を突いてオープンなソフトウェアが伸びるようなチャンスがあるような気はしますけれども,あっという間にポリシーを変えられたら,高並列できることは確実なソフトウェアが幾つもあります。
【善甫委員】  私がやった経験では,無機のMDは比較的簡単に合わせ込みができるのですけれども,有機物となると自分で合わせ込むのはほぼ無理です。だから,有機物をどうするかというと,やっぱりそれなりのプロが合わせ込んだものじゃないと使えなくなる。そうすると必然的にその合わせ込んだものを使えるものというのがだんだん限定されてくる。だから,そういったところを合わせ込むことができるようなものがあればもっと広がると思います。
【秋山委員】  今日のニーズ側からのヒアリングで,このワーキングじゃないと拾い切れないような話が1個出たと思っています。それはジョブを入れたときのターンアラウンドの話なのですが,ターンアラウンドがよくならないと産業応用の実証研究のプロモーションにつながらないのではないかなというのを感じましたので,非常にマイルドな形でもよいので,このサブWGの最終報告のどこかでちょっと御検討いただけないでしょうか。
【加藤主査】  わかりました。それは十分認識しています。

(5)その他

 遠藤参事官補佐より,第3回は9月17日,第4回は9月30日に開催予定である旨を報告。

 加藤主査より閉会発言

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