東北メディカル・メガバンク計画検討会(第3回) 議事録

1.日時

平成24年4月25日(水曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 16階 16F特別会議室

3.議題

  1. 東北メディカル・メガバンク計画案について
  2. 提言に向けて盛り込む事項について
  3. その他

4.出席者

委員

豊島主査、赤林委員、岡部委員、春日委員、門脇委員、桐野委員、清原委員、久保委員、祖父江委員、高木委員、中釜委員

文部科学省

吉田研究振興局長、田中総括審議官、森本大臣官房審議官(研究振興局担当)、菱山振興企画課長、板倉ライフサイエンス課長、岡村研究振興戦略官、岩本情報課長、鈴木先端医科学研究企画官、釜井ライフサイエンス課長補佐、根津ライフサイエンス課係長

オブザーバー

東北大学:山本東北MM機構長、八重樫副病院長、栗山教授、中山教授
岩手医科大学:祖父江副学長、小林医学部長、酒井病院長、人見リエゾンセンター長 
岩手県:野原保健福祉部医療推進課総括課長
宮城県医師会:桜井副会長

5.議事録

 東北メディカル・メガバンク計画検討会(第3回)

平成24年4月25日

【豊島主査】  それでは定刻となりましたので、まだお着きでない方もございますが、ただいまから第3回東北メディカル・メガバンク計画検討会を開会いたしたいと存じます。
 本日はご多忙の中、お集まりいただきまして、どうもありがとうございます。
 本日は金岡委員、小原委員、末松委員、高井委員、成宮委員、松本委員がご欠席と承っております。それから、嘉数委員からご欠席というご連絡をいただいておりますが、宮城県医師会からは桜井副会長にオブザーバーとしてご出席いただいております。さらに、岩手県からもオブザーバーとして野原保健福祉部医療推進課総括課長にご出席いただいております。
 それでは、本日の議事を進めるに当たりまして、議事及び配付資料の確認をお願いいたします。

【釜井ライフサイエンス課長補佐】  本日の議事でございますけれども、お手元に配付してございます議事次第にありますとおり、「東北メディカル・メガバンク計画案について」、「提言に向けて盛り込む事項について」、「その他」でございます。
 本日の資料は、資料1から資料5、参考資料1から参考資料4でございます。落丁等がございましたら、事務局までお申しつけください。
 以上でございます。

【豊島主査】  ありがとうございました。よろしゅうございますか。
 それでは議事に入らせていただきます。
 議題1の「東北メディカル・メガバンク計画について」でございますが、本日はまず第1回、第2回の東北メディカル・メガバンク計画検討会におきまして議論のあった他のコホートとの知見を活用するための東北大学内の体制整備につきまして、東北大学から、今までの先行コホートの連携やワーキンググループの今後の整備に向けた考え方等について、簡単に補足説明をお願いいたします。
 どうぞよろしくお願いします。

【山本東北メディカル・メガバンク機構長】  それでは説明させていただきます。
 まず、本日はご多忙のところを計画検討会にご参集いただきまして、どうもありがとうございます。よろしくお願いします。
 まず、資料2-1をごらんいただきたいのですが、私どもが国内のゲノムコホートとの連携を進めるに当たっての基本的な考え方を若干申し上げたいと思います。ゲノムコホートの基本的な計画に関しては先行するゲノムコホートの経験を踏まえながら、被災地のために役立つ、そして学問的に意義のあるプロトコルを作成していくことが重要と考えております。
 資料2-2にお示ししますように、国内の主要なゲノムコホートとの連携の準備状況をご説明させていただきます。国立がん研究センター、それからながはま研究、J-MICC研究、山形分子疫学コホート、バイオバンクジャパン、久山町研究などより、これまで情報提供をいただいています。今後、これらのゲノムコホートと連携してワーキンググループ、このワーキンググループは後ほど資料2-3で簡単にご説明させていただきますけれども、ゲノムコホート連携推進ワーキンググループを設立して、密接な意見交換を行ってゲノムコホート基本計画を磨き、質問項目、包括同意書、ゲノム解析方法などで連携体制を構築していくことが大切と考えております。平成25年度のパイロット研究開始を視野に入れますと、平成24年度の半ばを目途に、数回のワーキングを重ねながらコホート設計を行ってまいりたいと考えています。
 なお、これまでの連携実績として、国立がん研究センターからは計画研究についてのご教示を受けております。また、山形分子疫学コホートやながはま研究の実務担当者の方にはご講演いただき、さらなる情報提供を受け、討論を実施してまいりました。
 住民コホートについては、特定健診相乗り型で実施するのが現実的と考えていますが、この点で山形分子疫学コホート研究は相乗り型で順調なリクルートを達成していますので、参考にさせていただく予定です。
 今後の検討すべき課題ですが、我が国で先行して実施されているゲノムコホートのそれぞれの長所を取り入れさせていただいて、さらに広範な連携を目指していきたいと考えています。また、他のコホートとの連携は非常に大切なのですが、特に三世代コホートについては環境省・エコチル調査との連携も視野に入れていきたいと考えています。既に実施中のコホート、それからパイロット・計画段階のコホートとの連携を進めるに当たっては、パイロット段階のもの、計画段階のものについては生体試料の種類や質問項目などを共通化して実施することが重要と考えています。一方、既に実施されているコホートについては、解析段階でのメタアナリシスなど、別の連携のあり方を考えてまいりたいと思います。
 今の説明の中でも若干申し上げましたが、国内の主なゲノムコホートとの連携状況を資料2-2に示しております。このようなゲノムコホート、それからバイオバンクジャパンは疾患コホートなのですが、連携していきたいと考えています。
 資料2-3なのですが、私どもはここに向けて、まだこれは学内を中心にした段階なのですが、そこにありますような5つのワーキンググループを立ち上げ、さらに先ほど申し上げましたゲノムコホート連携推進ワーキンググループを準備中です。これらのワーキンググループはそれぞれに難しい課題を抱えておりますので、毎週開催したり、2週間おきに開催したりして、急ピッチで準備を進めています。下に少し書きましたけれども、これらのワーキンググループには、今後、外部有識者の方を広く、積極的に招聘する予定です。また、今後も必要に応じて新たなワーキンググループを立ち上げていく予定です。
 最後に資料2-4をごらんいただきたいのですが、資料2-4で、前回の会議でゲノムの解析のところで日本人の遺伝子の多型カタログ情報をつくりたいということを申し上げました。これは私ども東北メディカル・メガバンクで健常人3,000人のシーケンスを行いたいということをこちらでご報告したのですが、国内の全ゲノムシーケンスを行う研究機関とも、ここのところは連携できると考えていますので、連携をしながら全ゲノムシーケンスを行い、日本人の遺伝子多型カタログの情報をそろえていくことで、今後行われる各種のコホート解析の基礎資料、基盤資料ということで、大きく我が国のゲノム医学の基盤を支えるようなデータをつくり上げたいと考えています。
 1枚めくっていただきますと、次世代医療や次世代予防へのパスということで、私どもは前向きコホートという形で設計をしているわけですが、既にこの領域では疾患コホートとしてバイオバンクジャパンが大きな成果を上げてきています。バイオバンクジャパンは、今まではGWAS解析を中心にコモンバリアントの同定から次世代型個別化医療の実現に向かっての成果を上げてきているわけですが、今後、この疾患コホートでも全ゲノムシーケンスを行っていくと聞いています。私どもは疾患コホートであるバイオバンクジャパンと、前向きコホートであるメディカル・メガバンク、さらに他の全ゲノムシーケンスを行う予定のあるゲノムコホートと協力して、大きな全ゲノムシーケンスのデータベースをつくっていき、レアバリアントを同定することによって、次世代型の個別化医療、それから次世代型の個別化予防につながるような成果を上げていけたらいいと考えています。
 このような連携体制については、私どもは密接な連携を実現していきたいと考えているのですが、ここに名前を挙げさせていただいたバイオバンクジャパンの久保先生からも何かご意見をいただけたらと思います。

【豊島主査】  どうもありがとうございました。どうぞお願いします。

【久保委員】  理化学研究所の久保です。本日はバイオバンクジャパンを取り上げていただきまして、ありがとうございます。
 バイオバンクジャパンはもともと2003年にスタートして、オーダーメイド医療を実現するための医療基盤情報をつくるということで患者をベースにしたバイオバンキングをやってまいりましたけれども、バイオバンクジャパンだけでは最終的に個別化予防まではなかなかたどり着くことができませんので、今回、メディカル・メガバンクさんからこのようなお話をいただいたことを大変うれしく思っております。
 我々は患者集団を20万人持っておりますし、メディカル・メガバンクさんはこれから15万人の地域住民を中心にしたコホートをつくっていかれるということですので、役割はそれぞれありますけれども、お互いが協力していくことで病気の遺伝子を網羅的に見つけることができるでしょうし、そこから環境要因を含めた解析を通じて、実際の医療または予防につなげていきたいと思いますので、ぜひ積極的に検討させていただければと思います。
 細かいところはまたいろいろありますので、解析の方法等はまた後日、一緒に検討させていただければと思います。よろしくお願いします。

【豊島主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、今の2人のお話につきまして、ご質問あるいはご意見がございましたら、どうぞお願いいたします。
 前回のご討論の後でまたご意見をいただいた先生方もございましたし、そういうこと全体に対するお答えの中間段階のお答えとして、今日は具体的な、どういうふうに進めているかというお話をいただいたと思います。それで、かなり具体的な方向性が見えてきたのではないかなという気もいたしますが、このことに関しまして何かご意見をいただけましたら。
 どうぞ。

【春日委員】  今、いろいろなほかのゲノムコホートとの連携という話があったと思うのですが、結局、健常人といっても、かなりストレスを受けた方のゲノムコホートですよね。ですから、やはりそういう意味では、他のコホートとの連携ということでほんとうの意味でのコントロールがとれるかというのは非常に心配で、それぞれのコホートはそれぞれの方法でやっていらっしゃるでしょうし、特にそういうストレスに対する急性期の反応をこの東北メディカル・メガバンクではごらんになると思うのですが、そういうのを普通のコホートではごらんになっていないと思うのです。ですから、やはり理想的には全く別の同じような全く正常のゲノムコホートを立ち上げるべきだと思いますが、それがいろいろ難しいのであれば、かなりそこをよく考慮されて、普通の連携ぐらいでは、十分なうまいコントロールがとれないのではないかと思うのです。

【豊島主査】  どうぞ。

【山本東北メディカル・メガバンク機構長】  貴重なご意見、ありがとうございます。
 おっしゃるとおりと考えます。できるだけ質問項目を共通化する、それから集める資料等を共通化する、さらに解析項目についても共通化できるところは共通化していくというようなことで、連携というところをかなり強い連携に持っていくようなデザインを考えていきたいと考えています。

【豊島主査】  よろしゅうございますか。
 どうぞ。

【門脇委員】  私、前回、他のコホートとの連携についてご意見を申し上げまして、また、バイオバンクジャパンのような疾患コホートと、東北メガバンクのような地域住民コホートとのそれぞれの役割の違いと連携という問題について意見を述べましたけれども、今回出された資料あるいは先ほどのご説明を伺っていますと、その点、非常によく取り入れていただいて、これは具体的な検討をさらに進めていく大枠の出発点となるすばらしい提案ではないかと思いました。ありがとうございます。

【豊島主査】  どうもありがとうございました。
 ほかに。どうぞ。

【中釜委員】  資料2-4で、バイオバンクジャパンとの連携を強化して、次世代医療・次世代予防を構築するとありますけれども、次世代予防に関する連携の具体的な進め方が見えにくいのですが、もう少し具体的に説明いただければと思います。

【山本東北メディカル・メガバンク機構長】  どうもありがとうございます。説明が足らなくて申しわけありません。
 やはり、私どもが目指して、バイオバンクジャパンの大きな疾患コホートに関する実績に加えて、今度、私たちがつけ加えることができるのは、前向きコホートとして環境の因子が十分に追いかけられているものに、さらに全ゲノムシーケンスを組み合わせるという1つの新しい基軸が出ていると思います。この成果が個別化医療をさらに前に進めるような予防的なところにまで進めていけるのではないかと期待して、このように書きました。個別化予防というのは、今後、世界中でこのような研究が発展していくものと考えていますので、こういうふうに書かせていただいたのですが、細部については先ほどの話にもありましたように、さらに詰めていきたいと考えています。

【中釜委員】  そうしますと、解析を進めながら同時に前向きなコホートも進めていくという理解ですね。

【山本東北メディカル・メガバンク機構長】  お話のとおりです。

【豊島主査】  いかがでしょうか。
 どうぞ。

【春日委員】  こういうゲノムコホートの場合には、環境要因とジェネティックな要因とのインターアクションとかそういうのが、多分疾患コホートよりももう少し解析しやすいということだろうと思うのですが、実際には、ただ、環境要因のデータの収集が非常に難しいと思うのです。例えば食事にしろ、運動にしろ、その方がどういう食事をされているかという情報の今のとり方は、ご存じだと思いますけれども不十分といいますか、なかなかいい方法がないし、その人のエネルギー消費もせいぜい万歩計をつけるくらいなのです。ですから、そういう意味でかなりテクニカルに環境要因の解析が、アンケートとかそういうことで多くはなされていて、ほんとうに科学的な検証に耐え得るような環境要因の解析が実際にはなされていないというのが現状だろうと思うのです。
 私はせっかくのこういうチャンスなので、ワーキンググループの中に1つそういう環境要因をどうやってとらえていけば、今後、いろいろなコホートで何かそういう点で進歩があれば、それを今度いろいろなところで使えるようになると思うので、そういうのもぜひ研究されて、環境要因の情報をどうやってとるかを少し検討していただければありがたい。

【山本東北メディカル・メガバンク機構長】  貴重なご意見、ありがとうございます。
 先行する国内のゲノムコホートの成果やご意見等もお伺いしながら、今、春日先生からのご指摘にあるようにワーキンググループを立ち上げて、このコホートでどういう質問項目や調査をとったらいいかというのを、全国の皆さんからのいろいろなアドバイスをいただきながら決めていきたいと考えています。ワーキンググループ、立ち上げていく方向で検討させていただきたいと思います。

【祖父江委員】  前回、私、欠席したものですからタイムラグがございますが、非常によく進歩が見られている感じは受けましたけれども、2つお聞きしたいと思ったのですが、バイオインフォマティシャンが現在7名おられて、最終的に20名にされるということなのですが、おそらく私どもも含めてなのですが、こういう疾患コホートでもそうですが、全ゲノムシーケンスでもってきちっとそれをやっていくというところになると、現在、日本でバイオインフォマティシャンはものすごく不足していて、実際にそれを動かすだけの、ほんとうに7人おられて20人も集められるのか、実際の運用というか公算というか、その辺の具体的なところを教えていただきたいというのが1つ。
 それからもう1つは、バイオバンクジャパンときちっと組まれるのは大変すばらしいと思うのですが、疾患によっては、例えば神経の疾患とか、がんはこの中に入ってこないのではないかと思うのですが、慢性の疾患ですと経過とか予後が非常に重要な要素になってくるので、発症にかかわる遺伝子だけではなくて、予後を決定する、あるいは経過、あるいは動機を決めていくというような、細かい話になりますが、非常に重要な疾患もありますので、その辺のデザインといいますか、そういうものをどう組み込まれようとしているのかをお聞きしたいと思ったのですが。

【山本東北メディカル・メガバンク機構長】  よろしいでしょうか。
 最初のバイオインフォマティシャンのところは、ほんとうにご指摘のとおりだと思います。今、私どもが考えていることを。即戦力として、日本もしくは世界からリクルートしてきて集めるというのは第一のストラテジーだと思います。もう1つは育てていくという視点を持たないと、おそらく小さなパイの取り合いになってしまいますので、人材育成というところ、骨子案のところに触れさせていただいたのですが、やっぱりゲノム解析が本格化してくる平成26年、平成27年に向かって、今から急ピッチで人材育成を始めたい。そういう目的で、東北大学には情報科学研究科がございますので、そこの亀山研究科長にお願いにいこうかと、ちょうどアポイントをとったりしているところで、そういう形でリクルートしてくるのと育てていくのを両面でいきたいと考えています。
 それから2つ目のところは、これもまたすばらしいご意見で、2つの角度からお話をさせていただきたい。1つは、追跡は非常に大切だと思います。どういう形で追跡していくか。発症してしまった方の追跡は、今、私ども宮城県と一緒に努力している地域共有型の電子カルテを使う形で、ICTを活用して追いかけていくことをしないと、質問票とか手紙とか文書で追いかけていくだけでは追いかけ切れないのではないかと考えています。
 それからもう1つは、悪くなっていくというようなときに、例えば最初に全ゲノムを決めてあって、もう1度、全ゲノムをやるという、いわゆる複数全ゲノムをやるようなことで後天的な変異が見られるようなことが、そんなことがどこまでできるのかこれから詰めてみたいと思うのです。考え方の上では複数、連続した全ゲノムができるようになると情報量が増えていくのではないかと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。

【豊島主査】  よろしゅうございますか。
 先ほど2度ほど春日先生からお話がありました。1つはやはりこの場合のコントロールのとり方はかなり難しいということと、それから後のどういう調査をしていかなければいけないかという、これは両方ともものすごく重要なことと思うのです。ただ、やっぱり今の日本のような状況でこれだけ大きな災害に対してそれをきちっとコホートで見ていくというのは、世界的に全くない情報を提供することになると思いますので、ぜひその辺を意識してよろしくお願いしたいと思います。特に、連携していろいろコホートの議論をされるときに、これからどういうふうにしていったらいいかというモデル構築を意識しながらやっていただけると、将来のためにも非常にいいのではないかと思います。
 それからもう1つ、今のバイオインフォマティクスの祖父江先生がおっしゃったことですが、結局フォローアップがものすごく大切になってくると思うのです。ということは、やはり疾患統計をどこまできちっと、これは日本で一番これから整備しなければいけないポイントになると思うのですが、それも1つの問題はやはり倫理委員会にもかかわると思いますので、その辺のフォローアップのことの倫理関係のポイントもできるだけ早くから議論していただいて、将来に備えていただければと思います。どうぞ、その辺よろしく。

【山本東北メディカル・メガバンク機構長】  貴重なご指摘、ありがとうございます。

【豊島主査】  ほかによろしゅうございますか。もしよろしければ、次に岩手医科大学からのご説明もいただきたいと思うのですが、よろしゅうございますか。
 それでは、よろしくお願いいたします。

【板倉ライフサイエンス課長】  すみません、よろしいでしょうか。
 まず、岩手医科大学さんの前に一言、この資料3の位置づけについて事務局からコメントさせていただきたいと思います。実はこの資料3は非常に岩手医科大学さんに大車輪で検討していただきまして、昨日の夜中までご作業いただいて、私どもには本日いただいた計画でございます。非常に敬意を表したいと考えておりますが、今後、この岩手医科大学さんの計画につきましては、一番大きいところでは、私ども限られた予算ですので、その制約の中でどう進めていくのか、それから事業全体の効率性、整合性を岩手医科大学さん、東北大学さんと議論していかなければならないと考えておりまして、そういう作業の前ではございますが、今、岩手医科大学さんで構想されている原案といいますか、そういうものではございますけれども、先生方のご意見もぜひ承りたいと考えておりますので、そういう位置づけという前提のもとでご議論いただければと思います。よろしくお願いいたします。

【祖父江副学長】  岩手医科大学副学長の祖父江でございます。座って説明させていただきます。時間が限られておりますので、かなりはしょって説明させていただきますが、お手元の資料の2ページから話をさせていただきます。まず2ページの後半でございますが、ゲノムコホートを構築する意義は一般住民・地域を対象とするところにあり、被災地に限定する意義は薄いと考えられます。また、被災地域の住民にその趣旨を説明し、協力を求めても理解を得ることは、負担がかかっている住民にさらなる負担を強いる可能性もあり、社会通念上妥当といえるかどうか疑問の余地が残ると考えられます。しかし、被災住民の「こころと身体の保全」に向けた健康調査を実施することで、ゲノムコホートが副次的に構築できるのであれば、将来、「健康寿命」を享受できる可能性も被災地に届けることができ、夢あるプロジェクトになると考えております。この意味でも、本事業は、今後我が国で同様の大災害が起こった際のモデル事業としても意義が大きいと考えております。
 具体的にどのような形で進めていくかということについて、ご説明させていただきます。その下でありますが、以上の理由によりまして、岩手県内で「東北メディカル・メガバンク」のコホート調査は、2段階に分けて行いたいと思っております。まず第1段階でありますが、これは広域健康調査事業を実施し、大型の一般コホートを構築する。これは先ほど山本先生もご説明になりましたように、各種健康診断がございますから、それに相乗りする形でやっていくことになります。その際、介入が必要な事例に関しましては、適切な医療機関で適切な健康指導を実施いたします。広域健康調査では、同時にゲノムコホートへの参加を求め、二次医療圏中核病院のメガバンク・サテライトでICを実施、ゲノムコホートへのリクルートを行います。本事業を2段階で実施することで、地域医療支援と地域住民ゲノムコホートの構築を両立させることが可能になると考えております。これらにより、きめ細かい地域医療ネットワークの構築を実現することが可能であり、これら事業を担当する人材として、地域の住民を積極的に育成・採用し、地域の雇用創出にも貢献したいと思っております。
 三世代ゲノムコホートにつきましては、もう既に東北大学の山本先生から何度もご説明がございまして、我々もそれを一緒にやっていくスタンスでございます。
 次、4ページにまいりますが、実施内容であります。大規模岩手県民コホート研究の実施でありますが、これは現在までに厚労省をはじめとした幾つかのコホート事業が始まっておりまして、これを統一的な形にしてやることが大事であろうと考えております。我々としては、先ほど来、いろいろご意見がございました中で、沿岸地域の被災地域と、もう1つは内陸部にございます二戸中部というところまでの対象としてコホートを形成していきたいと思っております。これは1つには、内陸部がストレスを受けなかったわけではないのですが、1つの沿岸地域との対照ということで考えております。健康調査を予定している6つの医療圏の人口は合計で、3月現在、約55万人であります。大規模のベースライン調査を行うことで、人類史上これまでにない震災ストレス後の大規模コホート調査が可能になると考えています。この際のエンドポイントは、精神疾患、うつ病、不安障害、PTSDなどの感情障害と、脳卒中、心疾患、がんを予定いたしております。
 次に2段目の地域住民ゲノムコホートであります。先ほど申しましたように、大規模一般コホートのベースライン調査を実施する際に、ゲノムコホートへの協力を依頼し、同意を得られた住民に対して、基幹病院に設置したサテライトでゲノムコホートへのリクルートを実施いたします。こういう形で、ゲノムコホートを形成してまいりたいと思っております。これまでの私どもの経験からいたしますと、岩手県民コホート同意者の30~50%がゲノムコホートに参加していただけると考えています。したがいまして、岩手県内で数万人規模のゲノムコホートを構築することが可能であろうと考えています。実数につきましては、今後、文科省、東北大学と調整してまいりたいと思っております。
 三世代ゲノムコホートでありますが、これも我々は遠野、大船渡、釜石と宮古地区にネットワークを持っておりますので、その地区を中心にリクルートを行ってまいりたいと思っております。具体的なリクルート目標数につきましては、これも文科省、東北大学と調整をしてまいりたいと思っております。
 次でありますが、9ページ目に行かせていただきたいと思います。生体試料、診療情報の集約、解析とそれらのデータの共有化であります。いわて「東北メディカル・メガバンク」では、ジェノタイプのみならず、発症前診断につながるdiagnostic testである「中間形質」(エピジェネティクス・テロメア、オミックス)の解析を重点化して実施いたします。発症前診断・予防治療法の開発基盤を確立することで、被災地住民はもとより、より多くの国民の健康保全に貢献することを目的といたしております。そのために研究基盤、岩手医科大学バイオバンク研究センターを大学内に新設いたします。本事業は地域住民・三世代大規模ゲノムコホートであると同時に、類例のない「震災ストレスコホート」でもあります。平成24年3月から開始した「こころのケア」チームの活動で、約1カ月間とありますが、約5,000人の被災者の36%に不眠、29%に不安恐怖と、9%に抑うつ症状を確認いたしております。岩手医科大学では、パイロットスタディーとしまして被災地住民の健康への影響を解析、さらにその研究を発展させてまいりたいと思っております。
 収集した生体試料は東北大学のバイオバンクに管理保管しますが、同時に岩手医科大学バイオバンクバックアップ施設、これは仮称でございますけれども、規模と機能は各方面の助言に従いますが、こういうところでも管理保管すると考えております。岩手医科大学で生体試料から得られたゲノムとオミックス情報と、健康情報・診療情報は、東北大学と共同して国内外と共通するシステムを構築する予定であります。
 次に10ページをごらんいただきたいのですが、「疾患関連アレルの探索」でございますが、これは東北大学と協力してやってまいりたいと思っております。具体的な研究対象、C.でございますが、生命情報科学的な解析、特にストレス関連遺伝子についてであります。震災ストレスに関連した大規模ゲノム研究はこれまでに例がなく、本事業が最初のものとなります。ストレス関連遺伝子には、ストレスにより直接応答する遺伝子群と、二次、三次的に応答する遺伝子群があり、候補遺伝子は総計で500以上にのぼります。ストレス関連遺伝子群の代表例でありますグルココルチコイド受容体1つをとりましても、数種類のプロモーター領域を持っておりまして、エクソンに限らずイントロンにも多くのSNPの存在と、多種類のスプライシングにより、多種類のグルココルチコイド受容体の出現と発現変化が知られております。ジェノタイプとストレス反応性との関連は不明でありますが、ストレス応答性には個人差が非常に大きいものがあります。本事業では、これらストレス関連遺伝子の多型を解析することで、個人レベルのストレス応答性のジェノタイプを解析してまいりたいと思っております。
 次に、オミックス・テロメア解析でありますが、ストレスなどの外的環境要因による遺伝子変化・修飾に関しましては、エピジェネティクスとテロメアに関する解析の報告が非常に多くございます。両者ともに外的環境要因により著明な変化を受け、疾患発症に至る例が数多く知られております。
 まず、「エピジェネティクス」であります。エピジェネティクス制御異常と生活習慣病、精神神経疾患、ここに挙げておりますのは感情障害、薬物中毒、統合失調症、自閉症などがありますが、と、心疾患、がん、自己免疫疾患との関連が報告されております。また、ストレスに伴うエピジェネティクス制御に関しましても、多くの例が知られております。パイロットスタディーを実施いたしまして、ストレス関連遺伝子のエピジェネティクス制御異常と上記疾患発症との相関を解析し、候補遺伝子を絞り込む予定であります。特に三世代ゲノムコホートによるゲノム解析は、体質・素因の遺伝子伝搬解明に重要な意義を持つと期待されております。しかしながら震災ストレスコホートとして見るとき、周産期に被災した親から出生した児が、成長後に次世代の児を出産することで、初めて世代を経た、いわゆるtransgenerationalな震災ストレスのゲノムレベルでの痕跡伝搬を解析することが可能になり、経世代的ゲノム解析は大きな意義を持つことになります。事実、動物モデルにおきましては数種類の遺伝子でこのエピジェネティクス制御異常、特にDNAメチル化でありますが、経世代的な伝搬が行われていることが明らかになっております。この意味では、本研究は30年余にわたり継続されて初めてゲノムコホートとしての重要性が認識されるものと考えられます。また、その意味で本事業では将来の経世代的ゲノムコホート研究への基礎データを集積することにしたいと思っております。
 あと、「テロメア解析」でありますが、テロメアは細胞分裂ごとに短縮することが知られており、細胞老化、加齢のマーカーとされております。このテロメア短縮化と心血管障害、精神疾患、糖尿病、肥満、がんとの発症の相関については、これまで多くの知見が得られております。また、ストレスホルモン曝露により、テロメア短縮化の増強が明らかにされております。ただし、これらの報告は比較的少数例の解析あるいは動物モデルでの解析であります。染色体別のテロメア脆弱性の解析も限られております。そこで本事業ではパイロットスタディーを立ち上げ、テロメア短縮化と上記疾患発症との関連、さらに染色体別の脆弱性テロメアと疾患発症との相関を解析し、疾患別にテロメア脆弱性を示す染色体を同定し、疾患発症と関連するテロメア短縮化に関与する遺伝子を探索してまいります。このテロメアといいますのは、TTAGGGの繰り返し配列がありまして、現時点ではテロメア長の正確な解析は次世代シークエンサーによる解析対象とはなりにくく、TRF法あるいはSTELA法に依存しております。これらテロメア長解析の2法に加えて、新たな簡便解析法の開発も行う予定であります。あわせて染色体別のテロメア解析により、上記疾患発症予測の可能性を検討し、発症前診断法の確立を目指してまいります。
 12ページでございます。「マイクロRNA解析」ですが、これは慢性ストレスの場合、感情障害の原因となるだけでなく、免疫、血管、代謝系など種々の生体機能に影響を及ぼしますが、さらに高血圧、糖尿病といった生活習慣病の原因ともなっておりますけれども、この中で、例えば血管イベントにマーカーとして、血中マイクロRNAに着目いたしております。つまり、このマイクロRNAが細胞障害により血中に存在することは脳卒中・心血管疾患で報告されております。そこで、血中に存在するマイクロRNAを測定することで、脳卒中・心血管疾患の診断や予後予測が可能であると考え、解析を進めてまいりたいと思っております。
 それから、「がん関連遺伝子解析」でありますが、これも血中にがん細胞から漏出いたしましたDNAが存在することは知られております。これをかなり感度のいい次世代シークエンサーを用いまして、がん関連遺伝子の変異検出を行おうというものであります。対象は、がんの好発年齢は70歳でございますが、がんの発育期間が20~30年と推定しますと、40~50歳以降を主な対象とすることになろうかと思います。ただし、がんにつきましては、詳細なゲノム解析は第2段階から本格的な検討を開始する予定であります。
 以上であります。

【豊島主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、今の岩手医科大学の説明内容につきまして、ご質問あるいはご意見がありましたらお願いいたします。
 基本的には詳細なご説明をいただいたのは初めてでございますので、今日はいろいろご説明いただいたと思いますが、これを全部やるとものすごいことになりますね。それでおそらく、やはり東北大学とうまく関連していただけると、全く違ったコホートで集めたデータの検証ができますので非常にうまく動く可能性は十分あるわけですが、これを全部一遍にやることになるとちょっと大変だなと。今、読ませていただいてそういう感じがしたのですが、やはり重点的にやられる順番とか、あるいはいろいろなインフォメーションあるいはデータに関するものとかいうのをうまく両地域で打ち合わせながら、協調してやっていただくことが非常に大切かと思うのですが、よろしくお願いいたします。

【祖父江副学長】  よろしゅうございますか。ありがとうございます。
 先生がご指摘のとおりでございまして、私どもは、1つは患者さんからいただく生体試料のとり方につきまして若干ニュアンスの違ったとり方をさせていただくという、そこが1点でございます。
 それともう1つは、どんな解析をしていくかということでございますが、先生がご指摘のように、幾つか出しておりますが、最初にストレス関連遺伝子の変化を見ていきたいと。これは、結局は全シークエンスを次世代シークエンサーで読んで、もちろんその後でキャピラリーシークエンサーで確認しという、いろいろな操作をして見ていったものの中からストレス関連遺伝子をピックアップするやり方でございますので、これも東北大学の先生方とご一緒させていただきながらやっていこうと思っております。

【豊島主査】  いかがでございましょうか。

【清原委員】  お話をお聞きしまして、計画がより具体化されて全体的にゲノムコホートを立ち上げる研究体制は非常によくなったと思います。しかし、このことがこのプロジェクトの最大の目的であります地域の復興にどうつながるのかイメージがあまりわかないというか、その結びつきがまだ弱いのではないかと危惧いたします。本来、コホート研究、ゲノムコホート研究の成果が出るのは10年、20年、ひょっとすると30年も先である可能性があります。一方、今現在傷ついている地域を復興し、傷ついている人たちの健康管理をいかに行うかというかなり差し迫った課題があります。現時点のゲノムコホート研究プロジェクトの計画と地域復興がいま一つまだ結びつかないのですが、このことについてどのようにお考えでしょうか。
 私はこのプロジェクトは大きな意味があることだと思っています。このコホート研究では、最初に被災した地域で健診によるスクリーニング調査を行って、いろいろな疾病を持っている方々を洗い出すわけです。前にそういう方々に対して介入するとおっしゃっていましたけれども、介入という言葉は使わないほうがいいと思います。コホート研究と介入は相入れない言葉で自己否定につながります。介入ではなくケアという言葉などがよいと思います。健診で病気を持っている人たちを洗い出して、ケアすることは大きな意味があります。コホート研究は本来、疾病を持っていない集団を追跡してその発症を観察するわけですから、スクリーニングをやって疾病を持っている人を洗い出して、その人たちをケア・治療をすることはコホート研究でもやってもよいと思います。そうすることによって地域の復興につながっていくと考えられるわけですが、そのような視点、考えをもう少し前面に出されたほうがよいのではないでしょうか。

【山本東北メディカル・メガバンク機構長】  ほんとうに貴重なご指摘をありがとうございます。
 まず、地域の復興との関連ということで本日ご説明したところ、前回もそうなのですが、ゲノムコホートの説明になっていました。最初のときにご説明したように、私ども、この計画は車の両輪になっていて、地域医療の復興、それから地域の保健支援体制を強化していくこと、さらに地域共有型の電子カルテ網、ICT網の確立を応援、支援していくことが合わさってこのゲノムコホート事業ができていくと考えています。キーワードだけ簡単に申し上げますと、循環型の医師派遣体制を確立したい、それから地域共有型のICT網を確立したい、そういうことがやはり地域の医療支援に、それから復興につながっていくのではないかと考えて、もう1点はこういう形で最先端の研究拠点をつくっていくことによって、やっぱり産業振興や雇用創出を視野に入れて大学が活動していくこともまた重要な側面ではないかと考えまして、地域支援の側面ではそこもお話をさせていただいています。
 それから、介入という言葉について、介入と使わずにケアという言葉で、まさにほんとうにそのとおりだと思うのですが、やはり丁寧な健康調査とリクルートに向かってやっていくことが、震災で傷ついた方を長期に見守っていく視点につながっていくのではないかと考えており、それを車の両輪にしてやっていきたいと考えています。
 ほんとうに貴重なご意見をありがとうございます。

【豊島主査】  どうもありがとうございました。
 どうぞ。

【小林医学部長】  震災直後から、僕もずっと現在に至るまで医療支援等々やってきましたが、現時点で被災地では何が困っているかというと一番大きいのは健康状態の把握と治療への誘導なのだと思います。そういう現時点、それから中期、長期、さらにその将来という位置づけで考えると、次世代医療への展開を目指すこのメガバンク構想は長期、それから将来に位置づけられるものであって、現時点で一番必要なのは健康それからもう1つ、メガバンク事業に付随する直近の雇用の創出・被災地の方々の人材育成というところであろうと思います。山本先生が、そういうところもおっしゃいましたけれども、そういう連綿と長期にわたる計画という中で支援をしていくところが本事業の骨子であろうと、我々は考えています。

【豊島主査】  どうぞ。

【祖父江委員】  今、詳しいご説明は岩手医科大学からお聞きしまして、どうもありがとうございました。非常にしっかりされた内容かと思ったのですが、1つお伺いしたいのは、東北大学のときも発言させていただいたのですが、今も地域復興とか将来計画というキーワードが出てまいりましたけれども、教育とか将来に向けての人材育成が非常に大きな柱になると思うのですが、そこの部分があまりないように思います。これはゲノムコホートそのものをディスクライブする意味かという感じもしましたけれども、最後のページに人材育成というのは5行くらい書いてありますけれども、その具体的な人材育成をどうお考えになっているのかはもうちょっと発言していただけるといいなと思いましたが、いかがでございましょうか。

【小林医学部長】  ほんとうに近々の課題は雇用というところで、例えば岩手沿岸、全体も含めて高校生の雇用が半減しているのです。ですから、我々の構想の中ではまだここに記載するほど計画が煮詰まっていませんけれども、例えば卒業した高校生をこういう事業に参入できるようにすること、つまり調査とかコーディネーターとか、そういう教育をしながら、例えば看護のライセンスであるとか臨床検査のライセンスであるとかそういうものが取得できるコースを設定して、その中から、今、ほんとうに岩手県でも看護師さんは足りないし、検査技師も足らないしという状況でございますので、そういうところを本事業のサイクルの中で、岩手県内、さらには日本全国に人材を育成していくような事業を並行して進めるようなことがメガバンク事業の一環として必要であろうと思っています。

【豊島主査】  どうぞ。

【桐野委員】  確認したいのですが、岩手医科大学のバイオバンクと東北メディカル・メガバンクとの相互関係なのですが、これは東北メディカル・メガバンクが言わば基幹施設で、岩手医科大学が協力施設のようなものか、それともそれぞれが独立して事業というか研究を行われるものなのかというのがよくわからない。
 それからもう1つ、これは全体の議論の仕方にも関係するのですが、非常に大きな事業でありますし、このメディカル・メガバンクには事業としての側面とサイエンスの側面があって、サイエンスについてもかなり議論されておりますし、それはもちろん非常に重要だろうと思うのですが、サイエンスの部分は10年、20年というタイムスパンから考えるとどのように変わるか全く予測がつかないですし、やっぱり事業の部分、つまり持続できる事業であり、かつオープンな事業であることをどうするかということに、やはり相当時間をかけて議論していただきたいと思います。
 前者は質問です。後者は意見です。

【板倉ライフサイエンス課長】  よろしければ私からご説明したいと思います。
 東北メディカル・メガバンクについては、今の岩手医科大学のご説明あるいは東北大学の説明でも、バンクは一体化していなければ意味がなくなると思いますので、バンクとしては東北大学の中にマスターバンクをつくっていくことになります。また、調査も、調査項目などが違っていますと当然一体的な運用ができないので、そこは整合性をとっていただくことになろうかと思います。しかし一方、それぞれの県の状況に応じたリクルートの方法など、あるいはその後のケアの方法などはそれぞれの状況に応じてやっていただくという整理で考えておりまして、両大学でも具体的にこのご議論をいただいているところでございます。そういう意味では、一体的に進めていくことで両大学に検討をお願いしているところでございます。

【豊島主査】  よろしゅうございますか。かなり全体的な動きのことに入ってきました。岩手医科大学もどうぞうまく連携をとりながら進めていただきますよう、よろしくお願いしたいと思います。
 続きまして、「提言に向けて盛り込む事項」が今の議論の中でもそれに近いところがかなり出てきておりますので、そちらに進ませていただきたいと存じます。
 事務局と相談の上、今後取りまとめる提言に向けて、いろいろ盛り込む事項の案をつくっておりますので、事務局からご説明をお願いいたします。

【板倉ライフサイエンス課長】  それでは資料4をもとにご説明をさせていただきたいと思います。今まで2回の計画検討会のご議論で先生方からいただいたご意見をもとにいたしまして、提言に向けてこういったものを盛り込んでいけばよいのではないかという、いわゆる目次的なものをご用意させていただきました。
 まず、全体構成としては、「はじめに」を設けまして、それから2.といたしまして「東北メディカル・メガバンク計画全体について」のご提言を取りまとめてはいかがかと思っております。その後、3.といたしまして「各論」でそれぞれ今までご議論いただきましたことについて、より具体的に整理いたしまして、最後のページでございますが、4.といたしまして「将来的に検討が必要となる課題」について、ここで挙げさせていただいてございます。
 また1ページに戻っていただきまして、こういう全体構成の中で具体的な内容でございますが、まず「2.東北メディカル・メガバンク計画全体について」でございますが、事業計画についてのご提言、それから(2)といたしまして「推進体制について」のご提言をいただければと考えております。推進体制もこのプロジェクト全体の体制、それから東北大学、また今日、岩手医科大学のご説明もありましたが、実施機関における推進体制に関するご提言をいただければと考えております。
 それから続きまして「3.各論」でございますが、まず「(1)健康調査、コホート調査、バイオバンク構築」の項目でございます。これは主に第1回でご議論いただいた項目でございますが、この中でも健康調査、コホート調査につきましては6つほどの論点があったかと思います。1つは医療体制の復旧と、この調査の整合性をしっかり確保するべきという論点が1つ。また、地方自治体との連携体制。また、過度な負担をかけないようにというご議論もありましたが、この連携体制についてのご提言をいただければと思います。3点目は先行コホートの知見の活用、また、その先行コホートの、例えば疾患コホートの検証のための連携といったようなコホート間の連携について論点としてあろうかと思います。4点目といたしまして、他のコホートと連携を可能とするために調査項目を検討していくことが挙げられるかと思います。また、5点目といたしまして、震災影響の評価のためのコントロールコホートの重要性があろうかと思います。また、言葉の問題はまた検討が必要かと思いますが、介入を前提とした効果的な調査・研究方法の検討が論点としてあろうかと思います。
 それから2ページ目でございますが、「生命倫理、インフォームド・コンセント」についてですが、こちらも先行コホートの知見の活用、また、その連携を可能にするためのインフォームド・コンセントの検討、それから製薬会社なども含めた幅広い機関が研究に活用できるようなインフォームド・コンセントの取得、また、形式のみならず、インフォームド・コンセントが実質的になるようにすべきという論点があったかと考えております。
 また、次の丸でございますが、「住民への広報、リクルートに当たっての留意点」でございます。こちらにつきましては、ゲノムの提供あるいはバイオバンク構築が住民あるいは人類社会全体に対してメリットがどうあるかということをしっかり説明していく点が1点目でございます。また、実際に現場で協力者の方と接するメディカルスタッフが本事業の意義をしっかり理解しているということの重要性が2点目としてあろうかと思います。3点目といたしまして、サイエンスコミュニケーション能力のある人材の活用ということを挙げさせていただいております。
 それから一番下の丸でございますが、生体試料、それから生体情報の取り扱いにつきましては、そのバックアップ体制の構築あるいは他の機関への提供のあり方について検討が必要かと考えています。
 次の3ページでございますが、「(2)ゲノム情報・診療情報等の集約、解析研究」の項目でございます。これは第2回で主にご議論いただいたところでございますが、解析研究の手法につきましては、まず疾患の発症機序を解明するための研究がこのゲノム研究に加えて必要ではないかというご指摘。また、オミックス研究についてはさまざまな機関で研究がなされておりまして、成果も出されておりますので、そういった成果の活用と、どこを重点的にやるのかというターゲット設定をしっかり行うという論点があろうかと思います。また、リクルートが想定通りに進まなかった場合でも解析研究をしっかり行い、成果を出すためのバックアッププランも検討が必要ではないかというご指摘もいただいております。
 それから次の丸、解析結果の協力者への回付でございます。これにつきましては前回、東北大学さんからは基本的には解析結果は回付しないということでございましたが、例えば重篤な疾患が明らかになった場合、どうするのかといったさまざまな難しい問題があろうかと思いますので、こういったことについて慎重な検討が必要ではないかという論点があろうかと思います。
 また、次の丸、「解析研究から得られた成果の共有について」でございますが、こちらも成果の共有をどうしていくのかについて提言に盛り込むべきかと考えております。
 それから、次の「(3)本事業に携わる人材」の面の項目でございます。まず医師の育成、それから循環型医師派遣制度についてですが、循環型医師派遣制度につきましては、東北大学からご説明いただいた研究機関に8カ月、それから現地に4カ月ということも、その状況を見て柔軟に行うべきではないかという観点があったかと思います。また、現場のニーズを踏まえてお医者さんの専門性なども考慮した人材配置が必要ではないかという論点もあったかと思います。それから、この事業期間、10年にとどまらず長期的な医師の育成方策につなげていく仕組みもしっかり考えるべきというご指摘もあったかと思います。
 続きまして4ページ、「コメディカルスタッフ、バイオインフォマティシャンの育成」でございます。こちら、今日もご議論がありましたが、項目といたしましては多様なキャリアパスの具体化でございますとか、あるいはバイオインフォマティクスの人材育成においては、そのデータ収集を行う仕事と解析研究を行う仕事の間での循環する仕組みの検討が必要ではないかという論点があろうかと思っております。
 それから「(4)産学連携、知的財産」でございますが、その産学連携のあり方、あるいはそれに関連いたしまして知的財産に関する方針をしっかり検討すべきではないかという論点があろうかと思います。
 それから最後の「4.将来的に検討が必要になる課題」といたしまして、我が国全体のコホート研究、ゲノム等の解析研究のあり方を議論する場が必要ではないかということ、それから今日も一部ご説明いただきましたが、住民コホートと疾患コホートが両輪となるような次世代医療の実現に向けた研究のグラウンドデザインといったことについても論点としてあったかと思います。
 以上、現在までのご議論を踏まえまして整理をさせていただいた資料でございます。

【豊島主査】  どうもありがとうございました。
 今の提言に向けて盛り込む事項につきまして、ご意見をいただけたらと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

【赤林委員】  意見はございませんので、先に生命倫理、インフォームド・コンセントのことで一言だけ申し上げておきますと、つけ加えていただきたいのは、ゲノム指針あるいは疫学指針等、関連省庁の指針をちゃんと遵守していただきたいということを提言に書き加えていただきたいと思います。
 もう1つは、インフォームド・コンセントについての、これは私のお願いといいますか、包括同意の問題ですね、この問題はゲノムコホート以外のほかの一般の研究全体にも影響を及ぼしますので、普通のほかの研究ですね、臨床研究とかです、包括同意を含めたインフォームド・コンセントのあり方については、ぜひワーキンググループ等でもんでいただいて、日本の1つのスタンスをしっかりとつくれるような形でひな形を出していただきたいと思っております。
 以上です。

【桐野委員】  今のご意見にちょっと関連するのですが、解析結果の開示について慎重な検討が必要だと書いてあって、もちろんそうだと思うのですが、これはなかなか複雑で、例えば、言ってみれば連結不可能匿名化をしたゲノムがこっちにあって、こっち側に名前のついたゲノムがあって、こっち側で詳しく解析したら非常に重大なインシデンタル・ファインディングがあって、これはだれのものかわからないのだといって済まされるかというと、ほんとうはこっちの配列と対照してコンピューター解析をすれば多分すぐわかってしまうのだろうと思います。これはさかのぼれるということになりますが、それは全部開示するのか。じゃあ、何を開示するのかという問題になって、おそらく開示するべき問題点のリストみたいなものをあらかじめ持たないで開示すると言ってしまうと、収集がつかなくなる可能性があると思います。その辺のところは普通の、例えばラボデータだと血液の検査の結果なんかの開示とは少し性格が異なって非常に難しいように、私はゲノム配列については素人ですからわかりませんけれども、かなり深刻な問題を起こす可能性がある。だから、一度開示すると言ってしまったときに、それは倫理的には大変いいのかなと思いますけれども、じゃあ、何を開示するのかという問題があって、そこを慎重な検討と言っても非常に難しいので、これもやっぱり専門の先生方のご議論が相当必要ではないかという気がします。

【豊島主査】  よろしゅうございますか。
 多分、今のことは赤林先生が言われたゲノム指針などを慎重に検討するようにというのをつけ加えてほしいということと密接に関係してくると思うのですが、そのあたりで慎重にやるとともに、これから先どうするかということをかなり考えていただかなければいけないと思います。
 それから基本的にはこれはやはり連結可能匿名化になるわけですね。匿名化した後は基本的にはもとへ戻れないことになります。ですから、社会へ出ていく情報は戻れないことになりますから、これは個人情報とは切り離されることになっていくと思います。
 それからもう1つ、これの社会での利用ですが、今、新しい薬品などの、あるいは既存の薬品もそうですが、認可あるいは既存の薬品のこれからのグレードアップのためには、コンパニオン診断薬の話まで非常に進んでおりまして、これがFDAでも日本でもだんだんそれをつけるようにという方向性に来ていますから、どういう薬を使うときにはどういう人には効くけれども、この薬はこういうバックグラウンドの人には効かないとか、あるいは逆に、こういう薬はこういうバックグラウンドの人には副作用が増えるので気をつけろとか、そういうことを薬を出すとき、あるいは出した後につけなければいけない時代が目の前に来ていると私どもは思っていますので、連結不可能匿名化にした後はぜひ社会に開示していただいて、これをどの企業でも利用できるようにという形にしていただかないと、将来問題としてはいけない。その方向のためにメガバンクが動いているというのが基本的な考え方だと思いますし、これが社会に対する一番大きな将来の貢献だと思います。
 それから現時点での貢献は、こういう今回の東日本大震災のような大きい出来事はめったにないし、あっては困ることなのですが、それがこうやって違うコホートで検証できる形で世の中にきちっと報告されることになると、将来どういう対策を考えておかなければいけないかということに対して、非常に大きな1つの指針として使い得るようなものが出てくるのではないかと。ぜひ、このことを意識しながら組み上げていっていただきたいと考えているのですが、その辺をよろしくお願いしたいと思います。
 どうぞ。しゃべり過ぎましたが、ご意見をいただけましたら。まだ時間はございますので、これから提言をまとめていくために、できるだけ今のうちにいろいろなご意見をいただいておいたほうがと思いますので、ぜひよろしくお願いします。

【高木委員】  今、豊島先生がおっしゃったことの繰り返しになるかもしれませんけれども、私、バイオのデータベースのプロジェクトにかかわったり、あるいは人のゲノムの解析にかかわったりしているわけですが、その場合どうしても、どういうインフォームド・コンセントがとってあればどういうふうにデータを共有していいのか、どこまでを一般にオープンに公開していいのかとか、さまざまな問題が今、現場でいろいろ皆さん混乱しております。私どももいろいろな人由来のデータが入っているデータベースをどう管理して、どこまで見せればいいのか、見せても可能なのか、どの部分はコントロールド・アクセスにするべきなのか、なかなか難しいことがいっぱいありまして、今、そういうルールづくりを進めておりますけれども、私の知っている範囲では日本全国でそういう問題が起きておりますので、単に東北メディカル・メガバンクの問題ではなくて、これは日本全体のルールと言いましょうか、ガイドラインをつくっていくという姿勢でぜひやっていただきたいと思いますし、文科省あるいは国でそれを日本全体のルールにしていく方向で考えていただければと思います。

【祖父江委員】  今の流れとコンテクストが一致するのですが、多分これはテクニカルな各論はずっと入っていて、粛々と変えていただければという感じはしますが、一番大事なのはやっぱりはじめにというか、なぜこういう国家的プロジェクトをやるのかというところが、書きぶりがやっぱり問われるのではないかと思っておりまして、やっぱりほかの大学も何とか協力したい、それからぜひ国民全体がサポートしたいというような中身にしていただけるといいなと思っております。ですから、例えば今の倫理の問題にしても、いろいろな全国的に混乱というか、いろいろ意見があるのを、一つ、パラダイムを提示する感覚をぜひ盛り込んでいただきたいと思いますし、それから先ほど来、出ている人材育成ですとか、次世代の医療はどうあるべきか、これをもって日本の産業にどう結びつけるのか、我が国全体のゲノムコホートのあり方はどうあるべきか、というような10年後、20年後を見据えたものの書きようというのか、そういうのをぜひ非常に高揚感のある書きぶりにしていただけるとありがたいと思っておりますのでぜひよろしくお願いします。

【中釜委員】  3ページ目の「ゲノム情報・診断情報等の集約、解析研究」のところで、解析研究の手法について、疾患の発症機序を解明するための研究の必要性、これは医科学研究等でやられた成果を検証に持っていくための、さらには前向き検証に持っていくために必要なことだと思うのですが、やはりここでも限られた資源を有効に使うという意味では研究課題を選択し、集中して行うことが重要だと思います。さらにはそのための評価体制をきちっと議論した上で進めていかないと、ただ単にこれが漠然と広がっていく印象も受けるので、このところもぜひ盛り込んでいただければと思います。

【豊島主査】  いかがでございましょうか。
 かなりいろいろご提言も出て、出尽くしたというと幾らでもあると思うのですが、それでは基本的には今いただきましたご提言なども踏まえて、これからどういう提言にまとめていくかという作業を進めさせていただきたいと存じます。
 それで、もし今日お帰りになった後で、もう1度書類を精査されたときにお気づきの点がございましたら、どうぞご遠慮なく事務局までいただけましたら盛り込ませていただきたいと考えますので、ぜひその点もよろしくお願いしたいと存じます。
 よろしゅうございますか。よろしゅうございましたら、今後のスケジュールにつきまして。

【板倉ライフサイエンス課長】  まず、この項目に対しまして、今日ご発言いただかなかったご意見がありましたら、できましたら作業の都合上、今週末くらいまでにいただけると非常にありがたいと考えておりますので、ご協力いただければと思います。
 それから今後の予定でございますが、資料5でございます。今日、第3回ということで、東北大学、岩手医科大学からそれぞれ説明、補足説明をいただきまして、提言に向けて盛り込む事項についてご議論いただきました。これを踏まえまして、次回、第4回では提言案のたたき台をご提示いたしまして、ご議論いただきたいと考えてございます。その後、第4回の議論の状況によりますが、可能であれば第5回には取りまとめをいただくという方向で進めさせていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

【豊島主査】  よろしゅうございますか。
 少し時間が早いですが、よろしゅうございましたら、これで今日の会議を閉じさせていただければと思います。
 どうもありがとうございました。


―― 了 ――

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