X線自由電子レーザー利用推進戦略会議(第3回) 議事要旨

1.日時

平成23年5月24日(火曜日)10時~12時30分

2.場所

文部科学省16階 特別会議室

3.議題

  1. X線自由電子レーザー利用装置提案課題の選定について(案)
  2. 登録機関における検討状況について
  3. 利用研究の重点分野について
  4. SACLA利用研究の位置付けの整理について
  5. ユーザーコミュニティについて
  6. 成果の公表及び普及・啓発活動について
  7. 他施設等との連携について
  8. 今後の整備方針について
  9. 検証・評価と利用推進計画の見直しについて
  10. その他

4.出席者

委員

石川委員、岩田委員、上田委員、太田委員、大野委員、腰原委員、坂田委員、下村主査、妹尾委員、西島委員、濡木委員、若槻委員、山田委員

文部科学省

倉持研究振興局長、戸渡審議官、柿田基盤研究課長、藤吉量子放射線研究推進室長

5.議事要旨

議題1 X線自由電子レーザー利用装置提案課題の選定について(案)

石川委員より、資料2に基づき説明の後、主な質疑は下記のとおり。

  • 課題の絞り方が中途半端ではないか。
  • 課題をそれぞれ要素ごとに分けて再構成するとどのくらいになるのか。
  • 全部が4~5個の課題に再構成される予定。
  • 課題の再構成を行うのであれば、課題を実施する担当者が分かるようなコメントを付すことが必要。
  • 既にコメントを伝えており、おおよそ理解してもらっている。
  • 装置提案は単年度で終わるわけではないので、しっかり取り組んでほしい。

議題2 登録機関における検討状況について

大野委員より、資料3に基づき説明の後、主な質疑は下記のとおり。

  • 支援要員には技術支援要員も含まれているのか。
  • 含まれている。
  • 半期の間に複数回の実験が行えるような選定方法は考えているのか。
  • 選定課題の有効期間についてはどう考えているのか。ドイツFLASHでは1年間有効であり、米国LCLSでは半期1回5日間だけとなっている。
  • 複数回の課題選定を含め色々なケースを検討したい。SPring-8の時も2年くらいかけて制度を作り上げた。SACLAについても試行錯誤をすることになると思う。
  • 選定体制に関して米国LCLSの場合は、当初の2回は委員全員で選定を行い、3回目に分科会方式となったが批判が出たため、4回目でやり方を改善している。
  • 選定委員会は初めからSPring-8向けとSACLA向けに分ける必要があるのか。両者の上に親選定委員会を置くことも考えられるのではないか。
  • 当面2年くらいはこのようなやり方で進めたいと考えている。

議題3 利用研究の重点分野ついて

岩田委員より、資料4に基づき説明の後、主な質疑は下記のとおり。

(生体分子の階層構造ダイナミクスについて)

  • 「光感受性タンパク質にポンプ-プローブ法を適用した動的構造解析」は他のテーマと比較して記載内容が細かいのではないか。
  • 「光感受性タンパク質にポンプ-プローブ法を適用した動的構造解析」は「ピコ・フェムト秒ダイナミックイメージング」のほうに入れてもいいと思う。だが、後者のほうで求める時間分解能のスケールが2桁以上大きくなると思う。
  • 「ピコ・フェムト秒ダイナミックイメージング」でも「ポンプ-プローブ」を掲げているので、「生体分子の階層構造ダイナミクス」に「ポンプ-プローブ」の文言を入れてしまうと、二つのテーマで重複してしまう恐れがある。
  • 「生体分子の階層構造ダイナミクス」の掲げる「細胞全体及びその部分の生きた状態でのイメージング」は、現在電顕でも行われているので、SACLAで行うことにメリットがあるのか。
  • 電顕では試料の一部しか見えないが、SACLAでは試料全体を見ることができる。電顕とSACLAを組み合わせて利用することによって相乗効果を得ることが狙い。
  • 電顕を利用した感染症の研究者からは、SACLAを利用してウィルスが細胞にDNAをインジェクトする様子を捉えたいという話を聞いている。
  • 電顕よりもSACLAのほうがpenetrationが深いので深部を見ることができる。この研究テーマについては測定のためのハード開発も合わせて行う必要がある。
  • 「細胞全体及びその部分の生きた状態でのイメージング」は真空中に放り込むのか。
  • そのとおり。
  • 課題のうち(1)、(4)、(5)は具体的だが、(2)、(3)は方法論。
  • 「スパコンを活用」とあるが、計算機には通常の分子動力学計算(MD)をさせるのか、それとも新しいアルゴリズム開発といったことを目指しているのか違いを分かるようにしたほうがよい。
  • 私もそう思う。新しい位相回復プログラム・アルゴリズム開発の要素を盛り込みたい。

坂田委員より、資料5に基づき説明の後、主な質疑は下記のとおり。

(ピコ・フェムト秒ダイナミックイメージングについて)

  • 掲げたテーマのうち「極端条件下の超高速過程」と「動的X線分光科学」は、測定手法の開発に重きを置いている。特に後者については、新しいXAFSなどの解析手法の基盤となるだろう。
  • SACLAがシード化されて、エネルギーがきちんと決まるようになればXAFSが重要な研究テーマになるだろう。生体分子でもspectroscopyをやっていきたい。
  • 現行プロトタイプ機でもspectroscopyを行うことができる。ところで、これら重点テーマのライフタイムは何年程度を考えているのか。10年では長すぎると思うが。
  • 「生体分子の階層構造ダイナミクス」では3~5年を想定している。
  • 全ての課題を5年のうちに終わらせることはできないかもしれないが、達成された課題については徐々に新しい課題と入れ替えることもあると思う。
  • 「生体分子の階層構造ダイナミクス」に溶液散乱、小角散乱を入れてほしい。また、「ピコ・フェムト秒ダイナミックイメージング」の「極端条件下の超高速過程」については説明ぶりに工夫が必要ではないか。
  • 「ピコ・フェムト秒ダイナミックイメージング」の資料全体から見たところ、全て可視化できるように書いてあるが、基本的には「光化学反応」しか捉えることができないと思うので、この表現は少し言い過ぎではないかと思う。

議題4 SACLA利用研究の位置付けの整理について

事務局より、資料6に基づき説明があり、特に異論はなかった。

議題5 ユーザーコミュニティについて

事務局より、資料7の該当部分について説明の後、主な質疑は下記のとおり。なお、議題2においてJASRIより要検討事項として挙げられた海外研究者等の利用については、修正案1「国内研究者がコンタクトパーソンを務めることとする」となった。

(海外研究者等の利用について)

  • ヨーロッパの放射光施設では、どこからでも利用課題の申請ができる。ただ、EU内の研究者については旅費支援があり、アメリカや日本の研究者には旅費支援無しという、旅費面での敷居があるくらい。
  • ヨーロッパの放射光施設との比較よりも、米国施設であるLCLSのことを考えていくべき。共同研究というのは成果の配分等の問題があり、非常に難しいのではないか。国際協調的な観点からも、案1が良いと思う。
  • LCLPFではコンタクトパーソン制を採用している。
  • これからFELについては、アメリカ、ヨーロッパ、日本でハードウェア競争となる。海外利用者に対して積極的に日本の技術を発信していくといった観点も重要。
  • 日本側研究者がうまくサポートして海外ユーザーに使ってもらえる体制を作れたらいいと思う。
  • 稼働当初は、SACLAの使い勝手が海外ユーザーには分かりにくい可能性や言語の違いも考慮し、国内研究者がコンタクトパーソンを務めるとする修正案1の方が適切である。

(ユーザーコミュニティについて)

  • ユーザーコミュニティとしてSPring-8の利用者懇談会のようなものを想定しているのか。同懇談会ではJASRIが事務局として大きな役割を果たしている。
  • 現行のSPring-8で行われている「利用者懇談会」は少し組織のあり方を変えようと思っている。これまでお金を払った人だけをユーザーコミュニティとしていたが、これからは利用者全てに自動的にコミュニティに入ってもらうことを検討している。
  • SACLAのコミュニティについても最初から事務的な機能をしっかりと持たせておくことが必要。なお、お金を全く払っていなければ、コミュニティの総会には誰も出て来ないのではないか。
  • SACLAは供用開始直後から全てのユーザーをコミュニティに取り込むようにしてもらいたい。日本に唯一の装置であるにもかかわらず、コミュニティの組織率が全ユーザーの1~2割程度となるようなものにはしてほしくない。批判的な意見も出てくることが重要。
  • SACLAの利用については学術界のみならず産業界も積極的に連携する必要があり、ユーザーコミュニティについては、学会と産業界で分けることなく一緒に入ってほしい。

議題6 成果の公表及び普及・啓発活動について

事務局より、資料7の該当部分について説明の後、下記のとおり発言があった。

  • 講習会や見学会を現地で行ってもらいたい。「なるほど、これならいい成果が出そうだ」と実感してもらうことが重要。

議題7 他施設等との連携について

事務局より、資料7の該当部分について説明の後、主な質疑は下記のとおり。

  • ヨーロピアンXFELはいつから供用を開始する予定なのか。
  • 2016年からと聞いている。
  • プロタイプ機のSCSSはもっと活用していくべきではないか。
  • 法律的にSCSSが供用施設としての条件は満たしているか分からないが、もしそのような供用化に向けての要望があるならば、これから検討していきたい。
  • 「京」を使うには何が必要か。
  • 両者を結ぶ専用線とデータの圧縮技術が必要。

議題8 今後の整備方針について

事務局より、資料7の該当部分について説明の後、主な質疑は下記のとおり。

  • SACLAのサイエンティフィックアドバイザリー会議(SAC)は設けないのか。
  • SACは理研で一度行った。今後、施設が出来上がった段階でSACを行ったらどうかと検討している。

議題9 検証・評価と利用推進計画の見直しについて

事務局より、資料7の該当部分について説明の後、下記のとおり発言があった。

  • 今後開催されるSACの結果を踏まえて、次の展開をこの戦略会議で議論していくという位置づけと理解。

議題10 その他

  • 第4回は6月27日(月曜日)13時20分より、SACLAのある独立行政法人理化学研究所播磨研究所で行う。(事務局)

お問合せ先

研究振興局基盤研究課量子放射線研究推進室

電話番号:03-5253-4111(内線4336)

(研究振興局基盤研究課量子放射線研究推進室)