HPCI計画推進委員会(第41回) 議事要旨

1.日時

令和元年9月11日

2.場所

霞が関ナレッジスクエア

3.出席者

委員

伊藤公平委員,上田委員,梅谷委員,大石委員,小柳委員,喜連川委員,田浦委員,土井委員,中川委員,藤井主査代理,安浦主査

文部科学省

村田局長,増子審議官,原課長,橋爪参事官,坂下室長,根津参事官補佐,大野室長補佐

4.議事要旨

議題1 第6期科学技術基本計画に向けた今後のHPCIの方向性に関する意見交換


資料1-1、資料1-2、資料1-3、資料3について事務局より説明。

資料2-1について伊藤(公)委員より説明。


質疑応答は以下の通り。


【喜連川委員】  分類問題と幾つかシンプルなものを御紹介いただいたんですけれども、あれのコンパイレーションというのは、現状どういうふうにやっているのでしょうか。
【伊藤(公)委員】  完全に手作業ですね。
【喜連川委員】  手作業ですよね。
【伊藤(公)委員】  はい。慶応大学レベルでは手作業です。ですからそれは今後の問題です。ただ、私達が利用している量子コンピュータを開発している米国IBMではコンパイラの開発を強力に進めています。
【喜連川委員】  そこが全てで、最後に書いてある量子ソフトウェアの開発で、データサイエンティスト、AI人材よりも、むしろコンパイラをどうデザインするかという、むちゃくちゃ頭のいい人間をどうやって引っ張ってくるかがグローバルに全てで、最後に書いてあるところはこんなの関係ないんじゃないですかね。
【伊藤(公)委員】  結局ですから、今までのQ-LEAPのスタートの時点でこういうことを言っているので、実際にこのままの話を引きずってはいるんですけど、実際やっていることは、喜連川先生のおっしゃるとおり、もう、今必要なのはコンパイラの問題ですよね。
【喜連川委員】  そうですよね。それでもう一個だけ、この前か前かな、さきがけの何か一番難しいやつが、超電導というスライドがあったかと思うんですけども。
【伊藤(公)委員】  Flagshipのこれですね。
【喜連川委員】  そうそう。
【伊藤(公)委員】  これは理化学研究所の中村泰信教授が、ハードウェアですね。
【喜連川委員】  だから、何か我々も東工大の細野先生が超電導の神様みたいな感じじゃないですか。この話と、それが合っているのかどうか、今分からずに聞いているんですけれども、超電導が起こるかどうかという話で言うと、全ての金属は原則起こると。だけど何度で起こるかというのは、いまだに理論もなけりゃ、勘しかないという話があって、そういうところに量子コンピュータのエクスポラレーションが効くと、いわゆるマテリアルゲノムとして極度の面白い領域になってくるんじゃないかなと思っているんですけれども、このFlagshipというのは、そういうことをするものでもない?
【伊藤(公)委員】  ないです。これはハードウェアの開発ですね。
【喜連川委員】  単なるハードウェア開発ですか。
【伊藤(公)委員】  ただこれは、今後はそういうものと組み合わさっていくと思うんです。いわゆるコデザイン的な意味では、可能性としてはあると思います。
【喜連川委員】  どうもありがとうございます。
【安浦主査】  ほかに何かございますか。どうぞ、小柳先生。
【小柳委員】  よく議論されていることですけど、量子状態にはいわゆる雑音がつきもので、エラー訂正みたいなものが、その重要性はもちろん問題によっていろいろ違うと思うんですが、その辺について見通しとか何かございますでしょうか。
【伊藤(公)委員】  ですからこれは、エラー訂正を含めたハードウェアの長期的な実現を目指すということは入っています。それに対して、例えばノイズだらけでも、検算ができるようなものとか。
【小柳委員】  そうですね。ショアのアルゴリズムとか。
【伊藤(公)委員】  そういうものであれば、答えさえ出てくればいいということで。
【小柳委員】  あるいは最適化だったら。
【伊藤(公)委員】  そう、最適化とかですね。そうなんです。
【小柳委員】  確率的最適化と思えばいいわけですね。
【伊藤(公)委員】  だからその辺とのバランスで、ノイズがあっても使える、ソフトウェアと言うとあれですけれども、計算方法の確立というのが今、1つの中心課題になっています。
【安浦主査】  ほかに何かございますか。私からよろしいですか。2点ありまして、1点目は、これは第6期の議論をしているのですが、Q-LEAP、量子飛躍が起こるのは第6期の目標と掲げていい話なのか、もうちょっと先の話なのかというのが1点。
 それから、もう一つは量子の計算結果というものを、自然科学者は全てのもののある種の確率分布で物を考えることになれていますけど、社会のいろいろなデシジョンというのは、結局選挙と同じで、1か0かで決定するというのが社会のベースにあるわけですね。それとどう計算結果をなじませていくかという問題はどう考えるかと。その2点をお聞きかせください。
【伊藤(公)委員】  まず前半は、HPCI推進委員会とはまた別の議論でよろしいですか。
【安浦主査】  はい。
【伊藤(公)委員】  となると、やはり量子コンピュータは一部の補完技術として重要なものになっていくと私は考えております。世界がこれほど、安全保障とか、様々なことで、中国やアメリカは力を入れているわけですけれども、これだけ世界が力を入れて、しかも企業が投資をするというのは、光コンピュータとか、うまくいかなかった例もありますけども、でもそこに何かを、やはり可能性を強く見出しているということで、それに関しては、そこに、私も可能性を感じています。ということで重要だと思っています。
【安浦主査】  第6期でも、Q-LEAPが起こるということを前提に……。
【伊藤(公)委員】  つまりあれですね、量子飛躍ですよね、今。量子飛躍の、結局は、定義が難しいですね。一部の不可能が可能になったといったときに、それを正確に、科学的に証明するのはなかなか難しいので、それが、そういう意味では、皆さんQuantum、超越性が起きると思ってやっていますし、何らかを私は示せると思っていますが、現実は、科学者としては、超越性というのを示すのは難しいと思っていますが、使いやすさとか、ああ、これを使っているといいなということは起きると思います。
 後半の方ですけれども、0、1の厳密解を必要とするといっても、例えば車のナビゲーションが厳密解は与えていませんよね。ですから0、1と言われたときには、何か0か1を知りたいんですが、これが最短経路ですと言われたときには、結構それを信じていくわけであって、それが最短経路ではないわけですから、そういう意味では、私は、これが一番いいですと言われたとき、意外と人間は信じてしまうんじゃないかなと思っております。
【安浦主査】  ありがとうございました。ほかに何か御質問、御意見、ございますか。
【伊藤(公)委員】  信じてしまうというと悪い言い方です。信じてしまうと、何か悪いことをして、記録に信じてしまうと書かれたら、信じる、よい結果が得られるだろうとかですね。
【喜連川委員】  でも、済みません、伊藤先生のような物理の先生が御説明されるには、若干曖昧模糊的なところあったと思うんですけれども、Quantum-Leapとは何が起こったときのLeapだというような定義は、コミュニティの中でなされておられるわけではないんですか。ちょっとそこがよく。Q-LEAPという言葉が、日本がこのプログラムのために声にしたというか、作り出した言葉なのか、グローバルワードなのか、何かちょっと聞いていてよく分かっていなかったんですけど。
【伊藤(公)委員】  もともと量子飛躍というのは、例えば量子トンネルとか、例えば突き抜けられないものを一気にトンネルするとか、量子力学的に、普通の古典的には考えられない飛躍をするということで、そもそも個別にはもちろん、我々、Quantum-Leapということを定義ができているわけですが、これを量子コンピュータに当てはめたときにどうなるのかというのは、実行している計算によってまた変わってきますよね。そうなってきたときに、それは物理の世界だけではなくて、計算機科学的な意味で、本当に今の古典に勝っているのかということになると、どんどん、どんどん、例えばHPCIの性能が上がることを考えたら、実は量子が勝ってないんじゃないかとか、いろいろなことが入ってくるので、物理の世界だけでは語れないので、定義が、私たちは難しいということだと思います。
【喜連川委員】  難しいと思っているものの言葉をお使いになると、何か世の中的に、いろいろ、勝手にハレーションのようなものが起こると、ちょっと困ることもありますよね。
【伊藤(公)委員】  それはそうですね。
【喜連川委員】  先生がそういうことを誘導しているとか、そんなことは全然申し上げていないんですけど。
【伊藤(公)委員】  そうですね。
【喜連川委員】  何か難しいとは思うんですけど、みんなで、何をゴールにしたLeapをというのは、もうちょっと丁寧な定義が今後必要になってくるんじゃないかなという印象を受けました。
【伊藤(公)委員】  そうでしょうね。実際にそれが議論されているところで、おっしゃるとおりだと思います。これから、恐らく私の予想では1年、2年の間で、Quantum-Leap、量子超越性を発表してくる海外の会社とか出てくると思います。それがほんとに、彼らの定義では、量子超越性だということになると思うんですけど。よくある話が、それを厳密に見ていると、そうじゃないんじゃないかということもありますし、それがこれから出てくるであろうというのも間違いないと思います。
【安浦主査】  今のポイントは非常に重要で、第6期の中に、人間中心と書いておきながら、人間が理解できない判定基準で、何かある種の答えが出てきて、それに従って社会が動くとか、いろいろな決定がなされるという、そのこと自身に対する、一般市民の誤解というのが、これがやはり、非常に大きな問題になってくると思います。
【伊藤(公)委員】  実際、量子という言葉が、余りにも強いので、それで全く別物、部分的に別物だけであって、結局は今の計算機科学の枠組みの中で、どう活用するかというだけのものでありますので、そういうことで強調していけるといいなと思っております。
【安浦主査】  ありがとうございました。ほか、よろしいでしょうか。どうも、伊藤先生ありがとうございました。



資料2-2について中川委員より説明
質疑応答は以下の通り。


【小柳委員】  真中辺りに出てきたと思いますが、HPCの利用形態が、結局集中的な利用がメインだというお話です。そういう利用法が非常に大きな位置を占めていることはもちろん確かですけれども、最近のいろいろな、特に大規模データと関連した研究なんかを考えると、やはり世界中に分散した計算資源を活用して統合するというような、割合、分散的な利用もだんだん大きくなってくるような気がするんですけど、そういう点はいかがでございましょう。
【中川委員】  先ほどの例えば故障予知の場合には、製品が世界中で使われている場合にはおっしゃるとおり、分散したデータを統合した分析が必要になります。それに関して言えば、それは必要です。ただ、新しい技術が必要でしょうかといったときに、今ある技術でかなりできているなと考えます。もちろん、5Gですとか、あるいはもっと速い通信だとか、そういうものは必要になると考えますが、むしろリアルタイム予測ということを考えますと、基本的なモデルはそういった大規模データを分析するんですが、そのとき、その場所で起こっていることをどう反映させるのかがむしろ重要になってくるのかなと。要はストリーム的なデータの分析で、そのモデルをどう改変するか、運用、オペレーションをどう変えるのかという、多分そのとき、その場所でどういう対応をするのかといった、例を出しますが、例えばブラックアウトなんていうのは、正にそういうのが必要なシミュレーションになるのかなと思います。
【安浦主査】  ほかに何か。どうぞ。
【喜連川委員】 安浦先生の委員会でこういうヒアリングをやってくださるのは、非常に素晴らしいことだと思っています。文部科学省から見たときのHPCのワンセグメントは、Quantumにあるだろうとか、なる可能性があるということを1つ示唆されたと解釈できるわけで、そうすると残りをどう見るかといったときに、産業セクタとアカデミアのセクタにおいて、ここの議論はHPCなんですね。HPCがどうペネトレートしていく、してきて、今後していくであろうかが題目だと思うんです。
 この御説明で、最初におっしゃられたことは、日立の研究開発部門のというお話をされたんですけれども、多分、ここでの興味のあることは、民全体の空間の中で、HPCがどうドリフトしていくだろうかというポイントです。例えば私は、当方の総長の五神先生もGoogleに行く、誰かさんがGoogleに行くというと、Googleでスパコンを使っているというファクトがあるかどうかを必ず聞いてくれというのを言うんですが、少なくとも今までの中では、Googleの本体の中でHPCを使うという話は聞いたことがないというのが事実です。そうすると、いわゆるネットカンパニーの中でのHPCのペネトレーションは、そんなには大きくないということは厳然たる事実でありまして、だけども、いわゆるインファレンシング、ラーニングのところのGPUユーセージはべらぼうに大きなマーケットからも使いこなしているというような感じです。
 日本のHPCは、原則もうトヨタです。要するにクラッシュ・アナリシスが日本のHPCを引っ張ってきたという厳然たる事実の中で、今後、産業母体として見たときに、日立さんの研究開発部門というよりも、日本の産業そのものの中でHPCがどう使われているか。これは何度も何度も坂下さんに、この前も申し上げまして、喜連川の感覚では1兆、松岡さんは5兆、どこで使われているんですかと。それのドリフトを見ていくことは、次のスパコンをデザインするのに極めて重要なわけですよね。そういう視点からごらんになられて、今までのHPC。メインフレームとかiPhoneなんかどうでもよくて、HPCがどうなっているかを何か、中川さんから俯瞰していただくと、どんな感じでしょうか。
【中川委員】  GoogleでまずHPCは使われていない、それは私の観点から言うと彼らは、もちろんGoogleカーとかありますけれども、彼らは部品から設計をしているわけではないですね。そういう意味で言うと、実際にプロダクツを設計するときにHPCは絶対に必要な武器であって、これは変わらないと思います。
 そういう意味で言うと、先ほども申し上げましたけれども、製品ライフサイクルシミュレーションというのは、物を作っている、設計開発をして、それを販売、あるいはそれをサービスとして提供するといったような事業者は必ず必要になるので、そこで、ここで書いてありますが、運用時のデータで、実際にプロダクツのパフォーマンスを推定する。これは絶対必要になると考えています。
 その市場規模がどうかというところに関しては、分類が非常に曖昧になってきていると感じます。つまりHPCと、じゃあGPUクラスタですね、AI学習用の。それは後者をHPCの分類に入れるんですか、入れないんですか、これは多分、何でしょう、マーケティング会社によって違うんじゃないでしょうか。
【喜連川委員】  いやいや、非常にいいことをおっしゃっていただいて、だから何か、そういうことをもう少し丁寧な土俵に上げていただけるといいんじゃないかなという気がするんですね。誰もここにいる人が、ものづくりを否定している人はいないわけですけれども、ものづくりの今後という世界と、それからデジタルのワールドで、例えば広告会社に云々のところもマシンラーニングを圧倒的に使いますし、医学の画像診断でもそうですし、ありとあらゆるところで今、DNNが沸騰してきているような状況のときに、従来のような64ビットのスパコンの空間よりも、これと、いわゆる深層学習系のアクセラレーションと、どっちが大きくなっていくんですかという話を考えなきゃいけないんですね。
 私はここの委員会で、議事録にちゃんと載っていると思いますけれども、何をしなきゃいけないかということの、最初に言っていたことは、「富岳」を作るときに、その時点で64ビット系のトラディショナルなスパコンというのは重要だと。それはもう分かるけれども、どう考えても分野感からすると、ラーニング系の方にどんどんドリフトしていきますよと。そこはどうお考えになるんですかと。「富岳」のときには諦めるので構わないかもしれないけど、そこは頭に入れておく必要があります。そこで松岡先生が来られて、ちょっとだけラーニング系のファンクションが入れられたということで、これは非常にいいことで、私はこの委員会がずっと言っていたことの1つの成果だと思っているんですね。
 今度作るときに、64ビットとアプロキシメイトのマシンラーニングを、どんぶり勘定でスーパーコンピュータなんて言うなんていうのも、少なくとも文部科学省の会議でやるべきでは絶対ないわけで、企業がおっしゃるようなことは可能なんですが、だからそうすると、トラッドなスパコンの領域というものと、マシンラーニング系がどう動いていくかというのは、圧倒的にこっちの方が大きいんじゃないのか。
【中川委員】  そうですね。現状を申し上げますと、後者のニーズに関しては、前者の、世代開発的なものの10倍以上、必要な状況になっております。
【喜連川委員】  そうですよね。
【中川委員】  理由は、マシンラーニングが使われているというのもございますし、従来の流体設計、構造設計みたいなところ、あるいは材料設計で。それだけではなくて、新しい分野で使われるようになっているからです。例えば医療系ですと、例えば医療カルテですとか、あるいはカルテに書いてあるいろいろな画像情報、テキスト情報、こういったものをマシンラーニングすることによって、医療費の削減だとか、治療の最適化というんですか、それは今までHPCの分類ではなかったわけですが、それが入ってきている。適用分野が広がることによってニーズが広がって、よってもって、投資としては、そこに投資をしなくてはいけない状況になっております。
【安浦主査】  ありがとうございます。
【中川委員】  かなり我々の企業グループの状況でございますけれども。
【安浦主査】  非常にこの委員会の本質的な議論に入ってきましたけど、進行の関係もございますので、中川委員の御発表はここまでにさせていただきます。
【中川委員】  どうもありがとうございます。
【安浦主査】  ありがとうございました。今、喜連川委員から御質問のあった市場規模等については、机上資料という形で最後に、資料の最後に1つの調査会社のデータを付けておりますので、それを参照して、また後半で議論していただきたいと思います。

 


資料2-3について田浦委員より説明
質疑応答は以下の通り。


【安浦主査】  どうもありがとうございました。大学を中心とした、日本の研究のための計算基盤、あるいは情報基盤がどうなっているかを非常に的確に概観していただいたかと思います。何か御質問ございますでしょうか。
【喜連川委員】  ちょっとJAMSTECだけは目的志向っぽいところも少しあるとは思うんですが、その他をアグリゲートすると、この図が何を見せているかというと、多分ピーキーに「京」みたいなのがちょこんと出るんだけれども、それが番茶も出殻になってからは、ずっとJHPCNが圧倒的にサポートしている構図のように見えるんですね。そうすると、ユーザーサイドから見ると、ときどきピーキーなものがぴゅっと出るというよりは、連続的に上がっていくようなサービスの方が、実は使いやすいんじゃないのかなという気がしなくもなくて、例えば、今回はちょっとピーキーな、ちょっとというか、大分ピーキーなのを東大に置きます、次は京大に置きますみたいな、いろいろなことも考えられるような気がするんですが、インプリケーションとしては、私は何かそんなふうに感じたんですが、それはいかがかというのが1点です。
 もう1点は、海外のビジターを含めて、みんな日本の先生も聞くと、全員、原則GPUばっかり買っているんですよね。これを今年はIJCAIの50周年というのがあって、上田さんなんかは情報をつかまえておられるかもしれないですが、要するに何をやっているのかというと、大局から見ると、ニューラルネットワークエンベディング、マシンラーニングエンベディングというのを、出てきたものを、ここでやろうか、ここでやろうか、ここでやろうかというのを、みんなエンベッドしているだけというのが、多分50年後、100年後、振り返ると、やっていることは似たようなことなんだけれども、場が違うので、そこの中では面白いというのがうわーっと今、広がっているような感じがするんですね。
 そうすると、やっぱりさっきの中川委員からの御発表にもちょっと関連するんですが、やっぱり基盤センター、これからはABCI++みたいな、ああいうもののポーションを、中川さんは圧倒的にそっちの方が、10倍以上、市場が大きいとおっしゃられたわけですが、今は64ビット系が多いので、そのアプリケーションがドミナントに見えるように見えるんですが、何か大学の中で統計をとると、結構、NVIDIAばっかりたくさん買っているんじゃないかなという気がして、それを何かちょっと反映するような図を描くと、もう少しクリサリスなユーザーデマンドが見えるんじゃないかなという気がするんですけど、この2点をちょっとお伺いしたいんですが。
【田浦委員】  まず1つ目は、ときどきドンというのと、これとどっちがいいか。その方向に持っていくために、別に必ずしもこの絵を描いたわけではないんです。本当のユーザーはころころ、ころころ変わるのも嫌だという面もあると思いますので、てんでにあっちこっちと新しいマシンが入ったから、すぐに移れるかというと、そんなこともないと思いますので、どっちがいいかというところは、両方あっていいんじゃないかと。ただ、要するにこういうことは実際に起こることで、Flagshipというのが容量的な意味でFlagshipでいられる期間というのは、そんなに実は長くないということは、それは共通認識として持っておくべきだとは思います。
 もう一個、GPU。
【喜連川委員】  GPU買いまくっていますよね。
【田浦委員】  そうですね、これは非常に乱暴なFLOPSだけの絵なので、HPCIの第2階層でも、アプリケーションと合っているアーキテクチャとのマッピングをちゃんとやった上で、この手のことをやっていかないといけないという話はしておりまして、そういう中の一環として、例えばAIだったらGPUに非常にピシッと吸収できるとか、AIだけというわけではなくて、全体を見た上で、どういうワークロードに対する供給がどのくらいできているのかという全体像を出そうという話はしております。
【安浦主査】  ほかに何かございますか。よろしいですか。後でまた全体議論の中で個別に御質問頂ければと思います。
 では、田浦先生、ありがとうございました。
 今日話題提供ということで、今、お三方からそれぞれのお立場のお話をいただきましたけど、この後、第6期の科学技術基本計画について、HPCI計画推進委員会として、どういう意見を出していくのか、これがこの委員会のミッションではございますので、それについて、各委員の御意見を頂きたいと思います。
 先ほど、産業界の話で、データの話も出ましたが、まず梅谷委員から、何か御意見ございますか。
【梅谷委員】  今後の喜連川先生の先ほどの御質問に対して、産業界というか、自動車会社のHPCを今後どうしていくかは、従来方式でない、従来のHPCの使い方でなくなるのは間違いないので、新しくどうしていくか、悩みながらやっています。従来の使い方、いわゆる試作をなくして、開発費用をなくしていく、開発コストの下げをしていきましょうというところは間違いなく続くと思っています。
 実際に軽くて強い材料を使われるだけで、シミュレーションが必要とするコンピュータの性能が増大します。それは今後、材料開発が進めば、今までと似たようなシミュレーションをするだけで、HPCのコンピュータ性能が要求されるということです。
 また、環境法規もまだまだ厳しくなる方向で、そうなってくると、従来の使い方でもHPC、性能に対するニーズがふえてきます。
 もう一つは、従来の使い方だけではなくて、開発手法そのものを変えるような使い方、中川先生が先ほどおっしゃられた、シミュレーションをまずかけて、どういう車を作るとバランスがいい車になるかを、このデザインを上流工程で検討する、下流の工程になってから失敗したみたいなことをなくすことにシミュレーションを使えるよう技術開発を進めていくことになると思います。車両開発の初期段階で、例えば衝突性能がこのデザインの場合にどうなるかみたいなものを予測して、こういう方向性で設計しましょうみたいな開発手法に今後変えていかなきゃいけないと。多分それに対して、マシンラーニングみたいな手法が使えそうだと考えています。
 そう考えると、学習データを蓄積するのに学習データが大量に必要になりますので、HPCの容量が大量に必要になる。実は学習時間は、開発期間の中でやればいいので、リアルタイム性は余り追及されないんじゃないかなと。
 あと、もう一つは、先ほど従来型のところで言ったんですけど、やっぱり昨今、燃費もカタログ燃費じゃなくて、実用燃費でいろいろ社会的に、実際の燃費とカタログ燃費が違うじゃないかみたいな話があって、お客様の要請も、社会的な法規の面も、実用にどんどん近づいていきますので、そういう意味で、いろいろなパターンで性能を評価しなきゃいけないというようなところがありますので、量としてはどんどんふえてくるところがあります。
 じゃあ、どんなコンピュータが必要になるかと考えたときに、従来型で性能を出すというのは非常に難しくなってきているので、我々の使い方だとか、ソフトウェアも含めて、もうちょっと高速化をする工夫をしていかなきゃいけないと。どちらかというと、汎用化というよりも、衝突シミュレーション向けのコンピュータだとか、いわゆる空力計算系のコンピュータだとか、そういう材料開発用のコンピュータだとか。
 今までのように、汎用コンピュータを1個入れれば自動車シミュレーションが全てできるという、我々にとって非常に楽な時期というのは実はもうほぼ終わっていて、今後はそういう専用コンピュータみたいな方向に我々、進んでいかないと立ち行かないんじゃないかという気がしています。
【安浦主査】  どうもありがとうございました。あと機械学習、AIという話もたくさん出ましたけど、上田委員、いかがでしょうか。
【上田委員】  皆さん御承知のとおり、今、深層学習というのが使われていて、やり方としては、大量のデータをエンド・ツー・エンドで学習するという、それがGPUマシンに非常に親和性がいいので、みんなGPUマシンを買うという、これが今の時代感だと思うんですね。どんな分野もそんなふうにやっている。だけど、この時代はそんな長く続かなくて、我々が今、少数データから学習するというような方法を考えたりしているので、これからはずっと、データが増え続けるというわけでは多分ないと思います。
 それからもう一つは、機械学習の分野でも、確かに今、NeurIPSとかICMLで、7割くらいは深層学習と強化学習の論文が多いんですけれども、必ずしもそれだけじゃなくて、今、いわゆるサイエンスで使われているような、いろいろな物理・統計モデル、それをベースにして、そのモデルの中で非線形関数の代替としてニューラルネットを使うというアプローチがあります。そういう方向にも徐々に研究がシフトしています。
 そうなったときに、HPCがどれだけ便利かということで、今、ニューラルネットをエンド・ツー・エンドだけじゃなくて、部分的に使う場合でも、やはりテンソルフローだとか、そういうライブラリは極めて便利なんですね。それをHPC上で作ろうとするのはなかなか大変。多くの研究者は、わざわざHPCを使う必要があるのかなという認識を持っているんですね。ただ、「富岳」は松岡先生も多少意識されて、深層学習における積和演算でデータを転送するのに、そこに非常に時間がかかってはいけないので、そういうところはかなりケアされているだとか、あるいはコンテナを入れて、Pythonが動くようにするだとか、ユーザーインタフェースを変えているだとか、そういう工夫をされていると思います。
 だからちょっと、先ほど喜連川先生の御指摘あったように、HPCが量子と違う部分で残ったときに、機械学習とか、そういう情報科学の人が、何かやる気になって使いたくなるような、何というんですか、環境といいますか、そういうような状況を整えないと、シミュレーションではさんざんやるんだけども、帰納的な学習といいますか、そういう領域に使われるようになるには、少し別の面でも工夫が必要になるかなという印象を持っています。
【安浦主査】  どうもありがとうございます。
 HPCI側と言うか、藤井先生、何か御意見どうぞ。
【藤井主査代理】 世の中にたくさん出ているという話と、この先何をすべきかというのは少し違うわけですよね。そこはちょっと区別して考えなきゃいけなくて、やっぱり先端的な計算機というのは、それはそれで、何というか、どれだけたくさん出るかというのと違った観点であっていいと思うんですね。ただ、それがどういうものであるか。皆さんの今の意見を聞いていると、非常に多用なものでなきゃいけないというのが、多分1つはあると思うんです。その辺の姿を皆さんで議論するというのがいいんじゃないかなと感じました。
【安浦主査】  大石先生、数値解析的な側面。
【大石委員】  私、サイエンティフィックなコンピューティングを中心に日頃考えているんですが、「富岳」までは従来型のアーキテクチャで来たというので、だからメモリが非常に大きくて、ハイスピードで並列計算できるというような形のときに、ピークの結果を出すために使うという感じだったんですけど、次の世代のアーキテクチャは大きく変わるんじゃないか。
 だから喜連川先生なんかもいろいろ言われているけれど、そのような方向で、みんなが、自分が何か目的に対して、何か自分用のスーパーコンピュータができたように感じられるシステムを作っていくのかどうか。だから、ここで大きな変わり目で、だからバーチャルネットワーキングもあると思うんですが、ネットワークの中に、個人が1台、自分のやりたいことができるスーパーコンピュータがあって、それを必要なときに使うというようなアーキテクチャになっている。だから自分がふだん使えるコンピュータの1個の中に、HPCが、スーパーコンピュータがあって、ふだん使っているやり方で、ただ、非常に高度な計算を必要なときにやる。
 それから産業界だと、日常的に使うんだとすると、それがどのくらいのコストを払うと、さっき言われたトヨタの材料研究からいろいろな研究のときに、違う種類のスーパーコンピュータが必要なんだけど、それが個人にとってはバーチャルにそういうものがあるんだけれど、基本はどういうふうに作るか。
 だから多分、ネットワークの中で解決していくような話になって、そういう中で、HPCというのをどうとらえていくかという、ちょっと哲学的な階層が次の世代では必要になるんだと思うんですね。だから今まえは従来どおり動いてきちゃったので、そこの断絶が今度起きるということで、若手なんかが次世代のスーパーコンピュータはどうあるべきかという議論をされているんですけど、その中にいい論点がたくさん出てきているんだけれど、そういう点を酌みとって、ここで大きく思想とか哲学を変える時期になっているんだと思います。
【藤井主査代理】  大石先生が言われたことが、そういう理解でいいのかという確認なんですけど、ユーザーから見ると、スーパーコンピュータであるとかないとか、よく分からないんだけど、あることをやろうとしたときに、それぞれ適したマシンがあって、それがそれぞれに応じて使えるような環境、そういうイメージのことをおっしゃっている?
【大石委員】  そうですね。だから、それがネットワークの上に、どこかにあって。
【藤井主査代理】  上に乗っかっていて。
【大石委員】  ユーザーはどれを使うとか、余り意識しないで。
【藤井主査代理】  ということですね。
【大石委員】  必要に使えるという。
【藤井主査代理】  巨大な規模1個ではないということですかね、そうなると。
【大石委員】  どうするんですかね。巨大な1個ではないんじゃないかという気がします。
【安浦主査】  土井委員、どうぞ。
【土井委員】  アーキテクチャとしてどうするかということではないのですけれども、今までは環境とか、地震とか、そういうのの予測をするというところで、結構HPCI使われてきていますけれども、最近のように、激甚災害が多い中では、やはり災害が起こった後、どうしていくか、災害時にどう避難するかというようなことも、きちんと扱っていくことが求められてきているのではないかなと思います。
 そういう意味では、Society5.0もある意味、人間もIoTの中の1つのアイテムとして入った中で、どう交通網とかいろいろなところを制御していくかという、大きなシステムを対象としているので、そういうことが扱えるような系にならないといけないかなと思います。
 あともう一点は、先ほどの中川委員のお話の中で、Human in The Loop simulationというお話がありましたけど、人間自身がどういう行動をするかというのがちゃんとシミュレーションできるようにならないといけないし、それが本当に正しいのかどうかを、ただ単にデータ学習をさせて、その結果を見るというだけではなく、オープンワールドを扱わないといけないので、常に人間の今まで持ってきた見地とどこまで整合しているのかということをフィードバックをしながらやっていくような、そういうシミュレーションということも必要になってくるのではないかなと、先ほど皆さんのお話、中川委員のお話などを聞いて思いました。
【安浦主査】  予定の時間になってしまいましたけれども、何か、どうしてもここでもう一言言っておきたいということがございましたら。小柳先生。
【小柳委員】  最初に坂下室長から概算要求の話がありました。私も重点のワーキンググループの主査なので、いろいろ関係はしているのですが、次年度が端境期ということで、成果創出の予算がかなり削減されたことについて、重点のいろいろな関係者から、抗議というか、文句が出ています。それも当然だと思うんですが、特に指摘されたことは、人材養成、育成というのを大変重視されてきたわけだけれども、今回こういう端境期で研究費が減ると、結局、せっかく育成した人材を継続して育成できなくなるということで、大変将来のこの分野の損失ではないかという意見を言われまして、確かにそういう面はあると思って、いろいろ関係者は御苦労されたことではあると思うのですが、そのことを一言、ここでお話ししておきたい。
【藤井主査代理】  追加でいいですか。
【安浦主査】  どうぞ。
【藤井主査代理】  今言われたこと、もちろん私の方にもいろいろ来ていまして、3分の1、半分くらいのポスドクの人たちがもしかしたら職を失うかもしれない。実際、恐らくこれまでの戦略、重点等の例えば単純で言うと、論文で見た場合に、ファーストオーサーが雇用されたポスドクというのはかなりあると思うんですね。今度は利用の、成果創出の段階になって、成果創出をする人たちがいなくなってしまうということになってしまうので、そこはぜひ、どういう形で補えるのか分かりませんが、何らか工夫する努力をもう一回頑張ってやっていただけると有り難いなと思います。
【安浦主査】  どうぞ。
【伊藤(公)委員】  全く同じ路線なんですけども、量子コンピュータも結局は人材があって全てでありまして、「京」それから「富岳」に関しても、そもそも行政レビューのときも、結局、科学的な成果が出るということが、まず一番大きなこととしてあって、科学的成果を出すのはコンピュータ単体ではなくて、人ですので、そういう意味では、3分の1になるというのは、少し減って、一部の方が減られるというのは仕方ないと思うんですね。でも3分の1というのは、やはり物すごく劇的なことで、継続性という、人材育成という意味では相当なことだと思いますので、私もその懸念をお伝えしたいと思います。
【安浦主査】  ありがとうございました。次年度予算についての話は、これはまた事務局の方で、いろいろ工夫をしていただくということで、できればいろいろな形で、この委員会からも、人の雇用に絡むということで、意見は出していきたいと思います。
 第6期の科学技術基本計画は、それよりももうちょっと長期の話になるわけでございますけれども、きょうの御議論の中で、思い切り、HPCIの今までの流れが変わる時期に来ているという認識は、皆さんお持ちであったのではないかと思います。そこの先にあるのが伊藤先生からお話があった量子計算みたいなものも、その一部としてありますし、AIとか、機械学習に専用化したもの、あるいは先ほどの梅谷委員からありましたように、それぞれのアプリケーションごとに、ある種の専用化が必要だということで、そういうものをバーチャルに作れないかという大石先生の御意見もございました。
 そういうことを、技術的に、余り無茶なことも書けませんけども、何らかの方向でまとめて、何らかの意見創出はしていく必要はあると思いますので、きょう出ました御意見等をベースに、事務局と相談させていただきまして、この情報委員会に報告をさせていただきたいと思います。10月18日が情報委員会ですので、それまでに文案を作って、またメール等で御意見を伺うということもあるかもしれませんけど、そのときには御協力のほど、よろしくお願いいしたいと思います。
 


安浦主査より閉会


お問合せ先

研究振興局参事官(情報担当)付計算科学技術推進室

電話番号:03-6734-4275
メールアドレス:hpci-con@mext.go.jp

(研究振興局参事官(情報担当)付計算科学技術推進室)