HPCI計画推進委員会(第62回) 議事要旨

1.日時

令和7年3月31日(月曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 17階 研究振興局会議室(傍聴はオンライン会議にて参加)

3.出席者

委員

合田委員、伊藤公平委員、伊藤宏幸委員、上田委員、梅谷委員、小林主査代理、田浦委員、館山委員、中川委員、福澤委員、藤井主査、朴委員、棟朝委員

文部科学省

塩見局長、松浦審議官、国分参事官、栗原室長、福野参事官補佐、森専門職

オブザーバー

(アドバンスソフト株式会社)松原代表取締役社長、富塚副センター長、高橋課長
(理化学研究所計算科学研究センター(R-CCS))松岡センター長、近藤チームリーダー、原室長、嶋田室長代理

4.議事要旨

議題1:HPCIに係る国際情勢等について
資料1についてアドバンスソフト株式会社から説明があった。
 
【藤井主査】 ただいまのご報告についてご質問やご意見をよろしくお願いします。
【朴委員】 中国のデータがどれぐらい正確なのかですが、例えばOceanLightのLINPACK性能はピークの94%って、絶対違うと思うのですね。どこからこのデータは出ているのでしょうか?
【高橋課長】 これは2つ見ていまして、1つは報道のベースのやつと、あとはSC2023の中国側の発表の論文です。
【朴委員】 それはMXPですよね? MXPの値は参考になりません。なぜおかしいかというと、その前のTaihuLightは75%なのですよ。それで、OceanLightはこれのコア数を大体1.5倍にしたプロセッサーなので、94%いきなり出るってちょっとあり得ない。Tianhe-3にしても、アクセラレータですから、92%は随分高過ぎるので、マシンがすごくあるわけじゃないから、大勢にそんなに大きい影響はなりませんけど、トップマシンがアメリカとほぼ同じというところはちょっと違うかなと思いました。
【高橋課長】 一応、どこから情報を取っているかというのは報告書のほうに記載していますが、中国側の発表なので。
【朴委員】 去年の後半からデータ出始めたのは知っていますけれども、これは違うかな。
【高橋課長】 それが技術的にそこまであり得るのかというところは検討していません。
【藤井主査】 報告書は修正できますか。
【栗原室長】 事務局でございますけれども、こちらは報告としてその年度内に頂いているものでございます。一方で、今のご審議いただいた朴先生のご質問等は、われわれ政府として受け止めまして、今後使用する際等には注意をしたいと思います。

【藤井主査】 他いかがでしょうか。
【合田委員】 米国の状況、GPUの状況を見ると、NVIDIA以外のものもかなり使われているということで、NVIDIAで使われているアプリケーションの、NVIDIA以外のマシンの上でのポータビリティーについて、教えていただきたい。例えば、NVIDIAの上で開発されたものがそのまま動くのか、かなりセンターさんが努力されて移植されているのか。
【高橋課長】 米国に関しては、AMDのCPUとGPUが乗ったシステムの数が多いと思うのですけども、今回の調査の中では開発環境について比較するということを行っていなくて、利用されているという事実だけは分かってはいるのですけども、それが従来CPUをメインに使っているアプリケーションがどこまでAMDの加速機を使えているかというところまでは今回の調査の中では調べてないので、今のところ、答えを持っていない状況です。
【合田委員】 分かりました。
【藤井主査】 大事なポイントですけど、調査の範囲もありますので、ご了解いただければと思います。とはいえ、これから先の議論では必要になってくる話だとは思います。
 他いかがでしょう?
 アメリカの情報にNASA関係は入ってないのですね?
【高橋課長】 いや、NASA関係のセンターも調査対象に入っています。
【藤井主査】 説明の中に特になかったのですが、数字には見えてこないのですか。
【松原代表取締役社長】 アプリケーションのところでは含めております。
【藤井主査】 ハードウエア的には、規模が小さくなってしまったのでしょうか?
【高橋課長】 そうですね。ハードウエア、スパコンが入っているシステムの例えばトータルのリソースという意味では、大きくありません。
【藤井主査】 わかりました。他いかがでしょうか。

【伊藤(公)委員】 トランプ政権の方針というのは、どのように調査結果に影響を起こすのでしょうか。
【松原代表取締役社長】 全く予期できないところがあるのですが、今のところ、予算が削減されたといった情報はありません。イギリスでは、政権が変わってスパコンの計画が中止されたものはありますので、注視して見る必要があるかなと思っております。
【伊藤(公)委員】 それによって日本がそれほど左右されてはいけないと思うので、粛々と進めるということに関して私は賛成なのですけど、ただ動向調査なので、どういう影響を受けるのかというのは興味があります。
【藤井主査】 委員の皆さん恐らく非常に興味のあるところだと思います。ただ、今の段階ではなかなか難しいかもしれないですね。
 他いかがでしょう?

【上田委員】 35ページのスライドですが、調査数が海外・国内となっていてAIだけ違うカテゴリーなのですけれども、スパコンがAIでどれくらい使われているかということがもう少し見える形にならないでしょうか? また、AI、24というのは、この中のどれかが24のどこかに入っているという意味でしょうか?
【高橋課長】 そうではなくて、調査としては、スパコンセンターのユーザー向けの案内のページ等を見まして、これが使えますというふうに、AI関係ですと、どういうフレームワークが利用できると掲載されているかという、そのような情報です。あと、ライブラリーとか、そういうのを選んで、こういうものがスパコンセンターで使われているというような集計をしています。
【上田委員】 つまり、AIっていろんな分野にも……
【高橋課長】 そうですね、いろんな分野のものがあるので、それぞれが個々にどういう処理をどういう性能でやっているかというところまでは調べてはいません。
【藤井主査】 データとして横断的なところがあるから、見えづらいですね。
 他いかがでしょう?

【松岡センター長】 まず、3点ありまして、さっきの朴さんの発言ですけども、全くそのとおりで、「富岳」、効率だとMXPはほぼ99%以上ですね。 LINPACKは80%ぐらいなので。だから、MXPは全く違う、ピボットがない分、効率が変わるので。そこがちょっと不正確でした。
 2番目に、DOEの場合、多分OLCF-6がもう出ているはずなのですね。ここのコールが。それは含めないと、まだターゲットは出てないですが、OLCF-6は絶対含めるべきだと。
 3番目、非常に重要なのは欧州と、米国は比較的、予算はステーブルなのですけども、欧州が(全体の予算が)最近落ちてきているのは、まさにフラッグシップ2020から新しい今のフレームワークになって、EuroHPCができて、予算がものすごく増えたというよりは、マシンに予算を付けるようになったのですね。今までEuropean Commissionは、マシンには予算を付けなくて、これは各国政府がやるべきことだ、マシンはですね。ソフトウエアとか人にはお金を付ける。ところが、EuroHPCになって、マシンにもお金を付けだしたわけですね。ここが非常に大きな違い。しかも、EuroHPCの予算がむちゃくちゃでかく、要するに何千億円という予算を投じられているので、それとマシンのケーパビリティーの増加というのが、どういう相関があるのかというのが分かると、わが国もやっぱりお金をかけないとこの分野は伸びないのだということが明確になってくるのではないかというふうに思います。それはぜひ調査のほうで、それらの資料を用意していただくとありがたい。

【藤井主査】 他いかがでしょうか。
 アプリに対する資源というのが継続的に維持されているというページがあったと思うのですが、そんな印象ですか? 日本はアプリに対する基盤的な経費の継続的な維持がなかなか難しくて、上がったり下がったりするので、アプリの人たちにはなかなか厳しいところがあるのですが、そこはいかがでしょう?どんな印象ですか。
【松原代表取締役社長】 途中で23ページに示したように、今、藤井先生からおっしゃられたような視点でまとめたのですが、ハードウエアのところは青系統の部分ですね。
【藤井主査】 右の図でいいですか?
【松原代表取締役社長】 右側も左側も同じ色使いでやっております。これから見ると、ハードウエアの部分が半分ぐらい、それ以外が半分ぐらいというような予算の割合になっているかと思っております。
【藤井主査】 逆に言えば、アプリの予算がそれなりに継続的に投資されているということでいいですか。
【松原代表取締役社長】 そうですね、EuroHPCの数年間のプロジェクトでCentres of Excellenceという形で進められておりますので、数年が安定してというのかどうか分からないけど、一応、数年のスパンで1つのアプリケーションに対する投資が行われていると、こういう状況かと認識しております。
【藤井主査】 それが継続的にあるかどうかが多分大事だと思います。
これは報告書の問題ではないのですが、最終的にわれわれが理解する時に、日本も一緒にデータが載っているといいですね。そこは文科省にぜひお願いしたいと思います。
【栗原室長】 これから活用して、ご審議いただく際、また次の第8期のHPCI計画推進委員会等も見据えて、そのように議論進めていければと思います。
【藤井主査】 質問は切りがないように思いますが、短い時間の説明でしたので、今後も資料を読んだ上で、ご議論いただければと思います。
 

議題2:HPCIに係る政府の動向について
資料2-1および資料2-2について事務局から説明があった。
 
【藤井主査】 ご意見、ご質問等よろしくお願いします。
【館山委員】 13ページの今後の委員会のところの特にアプリのところに質問が多いのですけども、研究開発プログラム推進ワーキンググループ、次年度中に新規設置という書き方をしていて、一方で右側の公募プログラムは、現在の成果創出加速プログラムはR7年度で終わって、R8年度からということなので、ここら辺をどういう形でつながるイメージを持てばよろしいでしょうか。
【栗原室長】 その次の16ページのところに、今後の次年度に向けた議論について、また新しい現状の課題推進ワーキンググループをどのようにするかということについて書いてございますが、同時並行で次年度予算要求に向けた議論をするということで、「領域総括会議やHPCI計画推進委員会 他」という書き方をしております。
 一方で、課題推進ワーキンググループを随時開催しながら、R7年度末よりも研究開発プログラム推進ワーキンググループに移行予定とこちらの図の中で書いていますので、漸次推移していければと思っております。途中で新規発展をして、新しく重複することも可能でございますし、それらも含めて、新年度以降のHPCI計画推進委員会でもご審議いただければと思っています。
【館山委員】 分かりました。

【藤井主査】 途切れることのないようには進めていただけると。
 15ページにあるHPC・AI開発支援拠点の運営というのは、先ほどの13ページの研究開発プログラム推進WGとも関係するようなイメージでつくられると、そう思えばよろしいですか。
【栗原室長】 おっしゃるとおりでございます。こちらにありますとおり、15ページには、加速部やAIを活用した計算手法により、新しい計算科学の発展を推進するためのHPC・AI開発の次世代の技術支援を実施するというふうに書いております。これらが、一番下の図にございますが、公募型研究開発プログラムとの連携ということでも書いてございます。それらの中には、新しいそういった公募型の研究開発プログラムが行えるのであれば、そことの連携ということが重要な点になると思います。
【藤井主査】 よくわかりました。
 それでは、次の議題に移らせていただきます。
 

議題3:次世代計算基盤を見据えた今後のHPCIの運営に係る検討ワーキンググループについて
資料3について事務局から説明があった。
 
【藤井主査】 ご質問、ご意見等あればよろしくお願いします。
【田浦委員】 何回か前のこの委員会で非常に大きい問題提起があって、それでこういうWGつくっていかないといけないということで、この案、かなり活発にざっくばらんに議論を行いました。この文言で結構きちんと表現されているかどうかちょっと分からないのですけども、かなり踏み込んだ議論を行いました。
 私としては、これは問題提起で、本当に具体的にどういうところに着地していくのかというのは、まだいろいろと時間かかるところだと思うのですけども、先ほどのご説明にあったような整備計画調査研究とか、あとはこの次世代HPC・AI開発支援拠点運営委託という、こういう事業案をつくっていただいたので、そこにこれまでの登録機関に限らず、全体をよくしようという意思がある人々が参画できて、新しい体制づくりが発起をするように、そういう事業に、先ほど説明していただいたようなものをやっていただければなと思っています。

【梅谷委員】 「富岳」とか「京」を使っていて、運用メンバーの現場の権限がわれわれ民間の運用メンバーに比べてとっても小さいと感じていて、運用の課題は運用現場を見ている人が一番知っている。そういう意味では、問題意識がすごくあるのですけど、なかなか動きにくいものがあります。という感じがしていまして、われわれ民間企業もいろいろ協力させていただきたいと思いますので、必要があれば聞いていただいて、もうちょっと一人一人の運用メンバーが動きやすい感じになれば、とてもよくなると思うのです。参考にしていただければと思います。
【藤井主査】 今、運用メンバーと言われているのは、R-CCSさんのほうを意味しているのでしょうか、登録機関のほうを意味しているのでしょうか。
【梅谷委員】 R-CCSさんのほうです。
【田浦委員】 何かいろんな要望とかを上げても、その場ではなかなかという感じになるということですね。だから、そういう全体としてのいろいろと意思決定が遅い、というところに関わる話だと思います。現場だけでなかなか決められない。
【梅谷委員】 はい。そういう意味では、不特定多数が使っているので、われわれと環境が全く違うというのがあると思うのです。トヨタで言えば、今どんな車が開発されていて、どんなペースでどこの部署が忙しいかというのは大体分かっていますので、それでいろいろやりくりできるみたいなところというのが、やっぱりわれわれのほうが、恵まれている。顔が見えないとか、いろんな方々を相手にしなきゃいけないので、その分やっぱり難しさ、民間に比べて格段に難しいものになっていると思うのですけれども。でも、それでも何かまだ工夫、もう少し工夫ができるのではないかなと感じています。
【藤井主査】 まだこのワーキンググループではあと何回か議論が続きます。われわれワーキンググループのメンバーにお話しいただくのでもいいので、何らか情報提供していただいて、この議論に乗せていければと思います。

【伊藤(宏)委員】 産業の観点からD3、D4の辺りについて、1つは、海外ビジネスへの適用をどう扱うかということもありますが、次世代の産業構造の構築とか再構成に向けて、業界全体で普遍的な、もう少し広く使えるような、挑戦的な技術をこういった公的な高速計算施設を使って開発していくべきであろうということがございます。有償利用の話に関しては、近未来の、例えば設計開発における高度な計算機利用についての可能性については追求しているわけですけれども、必ずしも個別の商品開発に使用しているわけではなく、またWTOルールの下での利用に留めるべきとの考えから、自ずと限界があります。従って、このカウントの方向をもう少し細分化するなりして、有償利用の金額だけにいつもこだわっていただくと困るという印象です。
【藤井主査】 産業利用の中身を見て分類してほしいと。産業利用はこれから先も十分考えていかなければいけない議題ですので、そこは委員の皆さまからも意見を聞いて、先ほどのワーキンググループに反映していただければと思います。
 他いかがでしょうか。
 先ほど田浦委員から、着地点も含めて議論しているという話がありましたが、最終的に「国は」とか「登録機関は」とか「R-CCSは」とか、そういう形でいつまでにどういうことをやらなければいけないかみたいな形で整理されていると思ってよろしいですかね?
【田浦委員】 いつまでというのは、なかなか難しい。
【藤井主査】 長期的なものとか短期的なものとか、この中にはいろいろ入っているということですね。期が変わるので交代される委員の方もいますが、議論は進み続けているので、次期委員会の中でこれに対する報告を受けて、継続して議論を進めていただければと思います。
 

議題4:理化学研究所における次期フラッグシップシステムの検討状況について
資料4について松岡センター長から説明があった。
 
【藤井主査】 近藤さん、何か補足はありますか。
【近藤チームリーダー】 4月、明日から、次世代計算基盤開発部門、部門長をやらせていただく近藤と申します。今後、特にR-CCSだけではなくて、他のコミュニティーの皆さまとの連携がとても重要になってくるプロジェクトだと認識していますので、ぜひともご協力をお願いしたい。また、そのためのお力添えをいただければ幸いに思っています。よろしくお願いします。

【藤井主査】 それでは、委員の皆さまからご意見とかご質問があればどうぞ。
【朴委員】 これ、私は理解しているのですけど、8ページに文言が読みづらいところがあって、例のシミュレーションとAIの融合に向けたうんぬんという。下の赤字で、まずHPCアプリというのは恐らくFP64、ベクター性能ベースで50倍というのは分かるのですけども、AI処理、ゼタスケールのピーク性能、これ改行して50EFLOPSというのは、だからAI性能の実効50EFLOPSという意味だと思いますけど、ちょっとここは何か読みづらい。だから、HPCアプリと、カンマの後はAI性能のことなので、この上の表を見て、加速部の例えばFP8行列600EFLOPS以上と言っているから、数千台のノードでやればゼタに行くというのは計算上出ると思うのですけども、このゼタスケールのピークと50EFLOPS以上の実効性能というAIの実効性能が、例えば推論のことを言っているのかLLMのことを言っているのかというので解釈が広くなってしまう。LLMだとメモリバンド幅が相当効くし、その辺のスケール感、つまりゼタから50エクサという20倍ぐらい違うところは、どのように見積もられているのですか。
【松岡センター長】 そうですね、50EFLOPSというのは、この報告書の出てきた時のLLMのトレーニングにおける、当時想定していた数兆パラメーター級のLLMのトレーニングをするのに必要なのが50EFLOPSになります。だから、先ほど申し上げたように、LLMではなくて、例えば科学データを、例えばBERTトランスフォーマーをトレーニングするということをやると、実は50エクサでは全然足りないというのが最近よく分かってきたりして、そのためにも、やはりこのゼタスケールが必要というのが第1点。
 第2点目で、さらに最近の研究開発で、やはり従来の非AIのアプリケーションを加速するためにも、実は低精度演算というのがかなり活用できるのが分かってきた。そうすると、先ほどの例えばFP64だとか、メインメモリバンド幅の構造が5倍から10倍なので、例えば「富岳」から「京」に至るような数十倍から100倍の性能向上を得るためには、これらの非AIのアプリケーションでも、これらの機能を活用していかないといけないというところで、そのキャパシティー全体を考えるのですね。やっぱりエクサ、数十倍という、非AIアプリケーションの性能を達成するのがゼタスケールのAI性能が必要だというところで、50エクサというのは報告書から出てきた数字なので、LLMに限って出てきた数字なので、実際必要なのは、ゼタスケールと思っております。
【朴委員】 もう一ついいですか。これコメントなのですけれども、当然、マトリックス演算性能と、それから整数、8ビットとかの演算性能から、尾崎スキームというのは非常に注目されているのですけども、先日ちょっとジャック・ドンガラと立ち話をしていて、彼らは尾崎スキームを非常に高く評価している一方、精度と特にダイナミックレンジの保証というのが必ずしも完璧じゃないと。それができればもう尾崎スキームでもマトリックスやればいいという話になっちゃうので、何かLINPACKを尾崎スキームだけでストレートに計算できないような初期値のルーティンというのを考えていると言っていました。ですから、FP64ベクターが強いマシンはどんなに振られても大丈夫なのだけれども、尾崎スキームだけで計算しようとすると、単純にそれでHPLが何十エクサ出ますというような枠組みになるのは不公平だと。逆に、マトリックス演算だけで全て解決するとやると、HPCアプリケーションが困るので、HPLを少しそのように拡張するというプランがあるそうです。
【松岡センター長】 私もHPL、今度TOP500はACM傘下になるのですけども、今まではISCがやっていたのですが、今度、ACM SIGHPC傘下になって、そこの委員に巻き込まれているので、よくそのあたりの状況は把握しております。
 これはまだ決着はついてなくて、ジャック・ドンガラ先生の指摘ももっともなところがあるのですが、2つわれわれはやっていて、1つは尾崎スキームの改良を今やっています。これ、尾崎さんとうちの今村リーダーがやっていて、彼らに言わせると、ドンガラの懸念はなくすことができるということを言っています。実際これはNVIDIAと共同研究している。NVIDIAはもっとクラシカルといっていてマトリックスの性質で分かる。データディペンデントですね。今まではLINPACKというのはデータインディペンデントだったのですが、データディペンデントなのです。そこで行列のデータを見て、もしやばそうだったらデフォルトで計算するみたいなのをNVIDIAはつくっているのですけど、今村さんたちによると、そんなことしなくても大丈夫で、かつさらに速くなるよと彼が言っているので、それは今度、Supercomputing 25向け論文を書いているから、書いたら公表しますと言っているので、期待をしています。
 2番目に、実際にそういう行列、ジャックが心配しているような行列が実アプリケーションに出てくるかどうかというのが大事で、これに関しては、われわれとNVIDIAがそれぞれやっていて、われわれの検討では今のところ大丈夫。量子計算、量子化学計算、例えばBig-DFTとかに適応した論文を書いたのですけども、特にFP64でマトリックスが必要なのは、量子化学計算が比重として最も大きいわけです。今のところ、いろんなベンチマークで大丈夫だとか、精度をかなり落としても大丈夫だという状況が出ていて、ただこれはやっぱり今後、基本設計の時に検討していかなきゃいけない、いろんなアプリケーションで検討していかなきゃいけない。
 ですから逆に、先ほど申し上げた非常に広いコミュニティーにそういう開発プラットフォームを早期提供するというのは、ぜひそのコミュニティーの先生方、例えば常行先生というところで、われわれと一緒にご検討いただいて、本当にこれは使えるのか、本当はどういう問題が生じ得るのか、もしくは生じないのか、どのくらいの加速を得られるのかというのを早期に検討し、そういう問題を早期に洗い出すような開発体制を敷いていきたいと思っています。
【朴委員】 最後のコメントは、だから尾崎スキームがうまくいきますといった時に、じゃあダイナミックレンジとか、それからスティッフな、スティッフ性の高い演算は難しいですとか、そういうアプリケーションそのものの数字の幅というのをちゃんと見極めるということも追加で増えてくると思うのですよ。一層コデザインが重要だなと思っています。
【松岡センター長】 おっしゃるとおりだと思います。なので、前回9つのアプリでコデザインをやるというのは、そういうところ、カバーできなかったわけで。ですから、今回、非常に広い、コミュニティーを巻き込んだコデザイン体制とするというのは、やっぱりそうしないと、コミュニティー全体がどういう問題を抱えていて、どういうふうにそれを対処していくかというのがどうしても遅れちゃうわけですね。ですので、今回は早期からそういう問題を洗い出して、多くの場合はアルゴリズムの改変によって解決するわけですけれども、それを解決すると、改変していくと。もちろん、それはアルゴリズムレベルでやる話もありますし、マニュアルなコーディングの部分というのは、むしろAIとかの、人手でやるよりはAIを使ってのプログラム変換を行っていくと。それらいろんな手法を勉強させていただいて、いろんな手法をうまく選んで、かつそれを継続的に改良していくと、Continuous、CI/CD/CBで改善していくという体制をつくり上げたいと思っています。
【藤井主査】 ですから、11ページのところを実際にポスト富岳が動く前にどれだけ進められるか。
【松岡センター長】 そうですね。それはわれわれだけではできないので、やっぱり今、大学の基盤センターで既にGPUを持っているところと密に連携して行っていきたい。
【藤井主査】 特に、その尾崎スキームでどこまでカバーできるのか、問題点があれば、それを一緒になって解決していくということですね。
【松岡センター長】 例えば、MDに尾崎スキームは使えないので。距離計算というのは効率が3分の1になってしまうので。だから、これはむしろ混合精度演算を使わなきゃいけないとかいろんな、尾崎スキームも万能ではないです。
【藤井主査】 その辺を明確にして、問題点があれば、解決できるものは解決していくという形でしょうか。
【松岡センター長】 そうです、はい。
【藤井主査】 ここに書いてある先ほどの数字以上のものをFP64的な性能で出せるようにする、そういうことでいいかと思います。
【松岡センター長】 例えば、逆に疎行列系でも、係数行列のレンジが狭められれば使えるとか、
【藤井主査】 この議論は切りがないので、この点はここまでとしていいでしょうか。
【朴委員】 そういった割と高いレベルでの話も、先ほど文科省からあった次世代HPC・AIの支援拠点というのはやっぱりターゲットしなきゃいけないのだなと思います。
【藤井主査】 はい、大事なところだと思います。
 すいません、長くなりました。他のご意見を聞きたいと思います。

【中川委員】 今出ているページ、11ページの「富岳NEXT」テストベッドと書いてある図と、13ページの図が似ていて、同じ図に見えるのですけど、この整備予定のAI for Science計算環境? これ同じものなのですか。
【松岡センター長】 理化学研究所として整備しているテストベッドというのは、「富岳」およびわれわれが手持ちのマシンから理研として供出できるもので、その中にこのAI for Scienceのテストベッドが含まれるというものです。
 ただ、これだけではなくて、各基盤センターのマシンというのも当然ながらテストベッドとしてご提供いただいて、全体でのテストベッドを構築するというのをもくろんでおります。というのは、例えばAI for Scienceのマシンというのは、そうはいっても理研のプロジェクトとしてのコアグラウンドのミッションがあるわけで、われわれのAI for Scienceのマシンというのは一つのステッピングストーンだと思っていますので、そのアーキテクチャは、今まさに調達、今度、公示が出たのですけども、富岳NEXTを多少は意識したものになっている。最終的にどういうマシンが入るかは落札しないと分かりませんが、そういうものが出てきます。
 ハードウエアだけじゃなくて、ソフトウエア面においても、富岳NEXTに向けたオープンな開発をこのマシンでテストする予定なのですが、それらのエフォートというのはわれわれだけに限るのではなくて、先ほどのフィージビリティスタディでも、運用のフィージビリティスタディというのは今回できたわけですけども、そこでやっぱりソフトウエアの統一だとか、ソフトウエアの運用自動化だとか、そういうのは各基盤センターで大きな課題として上がってきているのですね。ですので、それらをなるべく今後統合していって、運用のコストを下げつつ、ユーザーにとっても同じような環境で研究開発ができるようにしようと。そういう中で、テストベッドというのは一つの契機となって、われわれも、理化学研究所も各基盤センターも、統合した形でその環境をつくっていって、その上で各コミュニティーのプレーヤーが開発を進めて、富岳NEXTができたら、もうそのまま横滑りして富岳NEXTに行けると、そういう体制をつくっていくことが今回大事だと思っております。
【中川委員】 ご説明ありがとうございます。非常に広い構想だということがよく分かりました。ぜひ民間利用の枠も少しそこに置いていただけるとありがたいです。よろしくお願いします。
【松岡センター長】 むしろ民間企業もぜひご提供いただけると、ないしはテストしていただけると大変ありがたく。ぜひよろしくお願いいたします。

【藤井主査】 伊藤公平委員、どうぞ。
【伊藤(公)委員】 富岳NEXTの開発推進体制についてちょっと確認をしたいのですけども、19ページの中心にいるのが「次世代計算基盤研究部門」になっていて……
【松岡センター長】 これ間違いで、「開発部門」。
【伊藤(公)委員】 分かりました。研究部門というのはどこにあるのか全然見えなかったので。
【松岡センター長】 研究はセンター全体なのですけども。
【伊藤(公)委員】 はい。ということは、次世代研究開発基盤、開発部門の近藤さんが中心となって富岳NEXTを。一応確認したかっただけです。その時に、じゃあ今度は21ページでいくと、それぞれのユニットが富岳NEXTを開発しながら、さらに次世代の開発要素も開発するということが書いてあるのですけども、それはどういうバランスで行っていくのか。まずは富岳NEXTを開発するだけでも大変なのに、さらにその先、次世代も見据えたことも、さらにその先のこともやるというのは、何かすごく欲張っている感じがするのですけど、その辺のところはどういうバランスでおやりになるのか教えていただけますか。
【近藤チームリーダー】 まず、この部門のユニットの中に、1つ、先進的計算基盤技術開発ユニットという名前のユニットがありまして、ここは主にさらなる新しい技術をというところを担うということで、部門全体として、他のユニットは全て富岳NEXTのほうに集中するということと、あとやはり次の富岳NEXTにおいても、常に新しい技術をもしかすると使えるかもしれませんので、そこをウオッチしていくことは重要だと思って、本体制にしております。
【松岡センター長】 あと、先ほど申し上げたように、こちらだけがやるのではなくてセンター全体として貢献していく。
【伊藤(公)委員】 中心、推進する場所。
【松岡センター長】 そうです、マネジメントをしっかりしないと、国プロというのは動かないので、ここが一番マネジメントの中心の工程管理、もちろんやったりだとか、情報集約したりとか、あとベンダーとのダイレクトの中心になると。それはここが担うことでございます。
【藤井主査】 そのためには、今回のFSの進め方は非常によかったですよね。幅広い人たちが入っているので。
【松岡センター長】 おっしゃるとおりで、R-CCSだけで行うのではなくて、実際、他の基盤センターの方々や国研の方々には客員としての身分を付与させていただいて、理研の肩書き持ってFSに当たっていただいたのですけど、今回の基本設計でもこれは継続する予定ではございます。

【藤井主査】 他いかがでしょうか。
【上田委員】 大変基本的な質問なのですけが、NEXT富岳でCUDAを使えるのでしょうか。
【松岡センター長】 そこはまだ分かりません。どのベンダーが選定をするかによります。
【上田委員】 ご説明にAIというキーワードがたくさん出てきまして、AIを駆使されているということで、非常に私も素晴らしいことだと思うのですけれども、ご存じかもしれませんが、今ディープラーニング使う人の9割5分、AIの研究している人は9割、NVIDIAのGPUが使われるという構図ができているのですね。もちろん、CUDAに代わるような新たなソフトウエア基盤ができれば、それはそれで市場を席巻できるかもしれないので素晴らしいことだと思うのですけれども、今AIが盛り上がっている過渡期の時にCUDAが使えないとなると、AI研究者はまずそのスパコンを使わないです。現在、NeurIPSなどのAIのトップ国際会議論文では、プログラムのコードが公開されCUDAありきです。これにより研究者が論文掲載手法の再現性を確認できるのですが、CUDAが使えないとなると、そのスパコンはそれだけ不利になるという点で気になるので質問しました。
【松岡センター長】 これはいろんな議論があるので、説明すると非常に長くなってしまいますが、国のプロジェクトとして、特定のプロプライエタリなプラットフォームに依存するというのは避けなくてはいけない。これは原則として、特にオープンコミュニティーというところで。AIでも実際、Tritonとか、もちろんAMDだとHIPをしていると。
 ただ一方、おっしゃるように、要するにCUDAという言語というよりは、そのNVIDIAの環境が一歩リードしているという現実ももちろんございます。やっぱり最新のいろんなアルゴリズムというのは、NVIDIAのハードウエアに合わせてきている。ですから、CUDAというよりは、だからNVIDIAの全体AI環境、これがやっぱり常に一歩出ている、現状では一歩リードしていると。それを一生懸命、他のメーカーが追いかけていると、そういう状況でございます。
 このあたり、非常に難しい問題なのですが、少なくとも、アメリカの大規模なAIの研究開発においては、AMDもかなり追っているし、IntelもAMDほどではなくても頑張っているという状況もございまして、われわれはNVIDIAの環境をマストにするということはできないのですけども、今回のベンダー選定に当たり、どこまでどういう環境はロバストにサポートされていくかというのは、当然視野に入れなきゃいけないと思っています。
【上田委員】 この点は、われわれAI研究者に大変重要な論点なので、ぜひご検討いただきたい。
【藤井主査】 現状の研究者といった時に、今の「富岳」の利用者だけではなくて、AIを非常に利用している人たち、別の意味でも利用している人たちも含めてサポートするという点ですね。
【松岡センター長】 AIのサポートがきちんとあることは、非常に重要なファクターであると言えると思います。
 
【田浦委員】 前回の「富岳」の話を振り返った話を聞く時に、一度決めた目標を変更するのは難しかったと聞きます。これから5年の間にいろんな変化が起こると思うのですけど、前回の時よりもさらにどういう変化が起こるのか読めないというところがあると思うので、今後5年間の間にいろいろと修正が利くというか、そういう方法については。
【松岡センター長】 おっしゃるとおりで、だから今回、その委員会というか、理研としては他のセンターやベンダーを含めた研究開発体制を敷きますけども、おっしゃるように、じゃあそれをちゃんとステアリングしていくようなメカニズムで、その目標というのはターゲットがもちろん非常に移るわけで、例えばAIで言えば、こんなに早くリーズニングモデルが出てくるとみんな誰も思ってなかったわけですよね。これが例えば2年前だったら、10兆パラメーターぐらいのモデル、20兆パラメーターモデルつくると言っていたのが、リーズニングモデルが出てきて、DeepSeekが出てきて、方向性が変わってしまった。例えばそういうことがあるわけで。きちんと目標を常にウオッチ、世の中の状況をウオッチしていって、それによって究極的にはアプリケーションやサイエンスを進めることが目標ですけど、それにはどういうことをやらないといけないのかということを目標の修正も必要に応じて行って、しかもそれをきちんと裏付ける、そのようなステアリングを行っていく組織立てが確かに非常に重要だと思います。ですので、今、内部的にも、文科省のほうにもいろいろ体制を検討いただいていますけども、これらの特に両委員会の一番大事なところは、まさにそれかなと思いますので、ぜひそのような体制にしたいと思います。
【藤井主査】 大切なところだと思います。
 それでは、この議題終わらせていただきます。
 

議題5:その他
第7期で退任される委員からのご挨拶、研究振興局 塩見局長からの挨拶ののち、事務局より事務連絡を行い、藤井主査により閉会。

お問合せ先

研究振興局参事官(情報担当)付計算科学技術推進室

電話番号:03-6734-4275
メールアドレス:hpci-con@mext.go.jp

(研究振興局参事官(情報担当)付計算科学技術推進室)