HPCI計画推進委員会(第55回) 議事要旨

1.日時

令和5年12月18日(月曜日)10時00分~12時00分

2.場所

オンライン会議

3.出席者

委員

合田委員、伊藤宏幸委員、上田委員、梅谷委員、小林主査代理、田浦委員、館山委員、
中川委員、福澤委員、藤井主査、朴委員、棟朝委員

文部科学省

塩見局長、奥野審議官、嶋崎参事官、国分室長、谷本参事官補佐、関口専門職

オブザーバー

(東京大学 大学院理学系研究科)藤堂教授
(理化学研究所 生命機能科学研究センター)泰地副センター長
(東京大学 情報基盤センター)塙教授
(慶應義塾大学 理工学部情報工学科)天野教授

4.議事要旨

議題1:HPCを巡る国際動向及び次世代計算基盤の取りまとめに向けた検討について
 資料1-1、資料1-2について、事務局より説明があった。
 
【藤井主査】  ありがとうございました。
 まず前半の国際動向についてです。委員の皆さんでよりいろんな情報を持っている方もいらっしゃるかもしれません。補足でも構いませんし、コメントや質問でも構いませんので、よろしくお願いします。
 朴委員、どうぞ。
【朴委員】  筑波大の朴です。2つ話があって、1つはAuroraなんですけれども、Auroraはもともとdouble precision 2exaflopsオーバーと言っているので、今回出てきたのは多分半分しか動いていないということで、これがマックスではないというのは記憶しておいたほうがいいと思いました。
 とはいえ、ECP、エクサスケール・コンピューティング・プロジェクトの三大マシンのうち、ようやく2台目が出てきて、恐らく6月には最後のEl Capitanが出て、そのときにはAuroraも性能をよりアップするのではないかなと予測されます。
 もう一点は、中国なんですけれども、そのNew Sunwayという触れられたものが、初めてゴードンベルではなくて、SCのテクニカルペーパーとして出てきたんですけれども、相変わらずLINPACKの性能は出さないで、mixed precision LINPACKの性能だけ出すというので、ちょっと会場で物議を醸していて、私、座長だったんですけど、このコンピュータ、そもそもどこにあるんだみたいな信じられない質問から始まって、やっぱり世の中の注目を浴びていますが、New Sunwayは動いているんだろうと。恐らくオーバーエクサだろうと。
 それから、つい最近、もう一つ、Tianhe-3という、天河2の後継の3というのがどうも動き出したらしいという、かなり未確認の情報が来ています。もう一件あるんですけれど、それについては、今、全く情報が出ていないという、そんな状況です。
 以上です。
【藤井主査】  ありがとうございました。
 中国は電力についてはどんなふうに考えているのでしょう、朴先生、ご存じでしょうか。
【朴委員】  いや、全然分からないですね。ただ、彼らは多分、電力は相当食ってもいいという見方をしていると思いますけれども。
【藤井主査】  それも含めて、なかなか情報は出ないということですね。
【朴委員】  はい、そうです。
【藤井主査】  ありがとうございました。
 ほかの方はいかがでしょうか。御質問でも構いません。
 よろしいですか。それでは、後半の次世代計算基盤の話です。項目で大きく抜けているとか、記載の意図とか、御質問などあればお願いします。
 伊藤(宏)委員、どうぞ。
【伊藤(宏)委員】  特に生成AIの話は、この前も説明していただきましたし、この中の項目にも入っているんですけれども。これが、例えば、この次の次世代のフラッグシップができた頃には、また違うことが出てくるのではないかと思っているんですが。この辺りの急速な変化というところ、今、何が起ころうとしているということが含まれていると考えていいんでしょうか。
【藤井主査】  ここは、まず文科省から回答願えますか。
【国分室長】  国分です。よろしくお願いします。
 御指摘のとおりだと考えていまして、今のこの「富岳」の時代に生成AIが出てきましたけれども、同じように、次の2030年代のどこかとかで、また我々の今知り得ないような新しいイノベーションが起きないとも限らないというか、起きると思っていたほうがいいと思っていまして、そういう将来の技術革新にもきちんと対応していくことは必要だと思っていますので、そういうことも書き込んでいこうというふうには想定しています。
 以上です。
【伊藤(宏)委員】  ありがとうございます。
【藤井主査】  よろしいですか。
 ほか、いかがでしょう。
 よろしいですか。私は大枠で大切なことは書かれているような印象を持ちました。先ほど事務局からもありましたが、何か抜けているといった話や気になることがあったら、直接メールで構いませんので、文科省へ連絡していただければと思います。
 特に御質問がなければ、この議題はここで終わりにさせていただきますが、よろしいでしょうか。これから議論になっていくと思いますので。
 では、次の議題に移らせていただきます。どうもありがとうございました。
 
議題2:計算科学ロードマップについて
 資料2について、藤堂教授より説明があった。
 
【藤井主査】  ありがとうございました。
 御説明に関して御質問等あったら、お願いします。いかがでしょうか。
 中川委員、どうぞ。
【中川委員】  日立の中川です。御説明ありがとうございました。
 先ほど御説明がありましたスペック的なところで、3つ大きな方向性がありますという御説明があったかと思うんですけれども。演算性能、それから、総演算数というか、これは、要はスケールアップとスケールアウトの構成だと思うんですが、これ以外に、データ科学ですとか、そういったものがHPCの本来のシミュレーションとかと組み合わせて使いますという、アプリ間の連携等を考えると、やはりストレージ容量とか、どういったレーテンシーというんですか、シミュレーション・データ科学融合といったときに、どういうつなぎにするのがいいのかといったようなところも、大きな意味で、このロードマップで見えてくるのではないかと思うんですが、その辺りはどうでしょう。項目として何か設けられるような構想がありますでしょうか。
【藤堂教授】  要求性能表には必要なストレージ量という欄もありまして、データサイエンスに関連する、特に大きな容量を必要とするようなものについては書き込まれていると思います。すみません。私、まだそこまで全部確認できていないんですけれども、そういう情報も盛り込まれる予定です。
 それから、特に、これまでのロードマップでは、そういうところがうまく表現できていなかったというのがありますので、それが今回2.12節で、そういう節を加えて新たにロードマップを拡充しようという考え、そういう流れでやってきているということで、そういうところがきちんと入ったものができてくると考えています。
【中川委員】  ありがとうございます。
 各分野だけではなくて、やはり横連携みたいなところも出てくるときに、ストレージ容量だけではなくて、そのストレージ間の連携ですとか、そういったスループット的な要求、そういうところも重要かと思いますので、ぜひ盛り込んでいただきたく、よろしくお願いいたします。
【藤堂教授】  ありがとうございます。
【藤井主査】  よろしいですか。
 朴委員、どうぞ。
【朴委員】  実は聞きたいことはいっぱいあるんですけれども、時間がないので2点だけ。
 1つは、このサマリーでメモリバンド幅の要求というのが出ていないんですね。フロップスとメモリ容量、メモリ容量というのは計算するデータの総量でしょうから、どこかにバイトパーフロップの想定というのがないと、バランスがどうなっているのか全然分からないというのが1つ。だから、メモリバンド幅についてどう議論されているのかが1つ。
 もう一つは、ミックスプレシジョンについて議論がなされたかということについて。2点お願いします。
【藤堂教授】  バンド幅についても、先ほどのストレージ容量と一緒で、要求資源量の欄にはきちんと書かれています。すみません。今回数字を持ってきていなかったんですけれども、もちろんバンド幅が必要なもの、バイトパーフロップスというのが物すごく必要だというものもありますし、計算の工夫によって比較的抑えながら計算を進める新しいアルゴリズムというのも出てきているという状況で、それに関しては、全体像をきちんと来週の公開版で参照していただければと思います。
 ミックスプレシジョンに関しては、これは特にこれまでのスタンダードな計算手法というよりも、それを機械学習と混ぜて考える場合であるとか、そういう場合に特に有効になるのではないかと私個人としては考えています。それについても、もう一度、AI for Scienceの章も含めて確認したいと思います。現時点では、お答えが用意できていません。すみません。
【朴委員】  ミックスプレシジョンに関しては、AI for Scienceでも多分重要な話などが出てくると思うんですけれども、実はシステムにとって重要なのは、そのミックスプレシジョンの中で、どういう演算の組合せが要求されているかというのが重要で、実は「富岳」はそこは不十分だったんですよね。ですので、LLMに十分精度で対応できないというような問題が今起きていて、その辺もやっぱり重要な課題だと思うので、引き続き検討をよろしくお願いします。
【藤堂教授】  ありがとうございます。
【藤井主査】  今のお二人の意見は、AI的なものが計算科学の中に入ってきたような形に変化しているので、演算性能以外の部分というのがより重要になってきて、今までの考え方と状況が変わりつつあると、それをちゃんと入れてほしい、そこが議論されているのかという質問だったと思います。
 あとお二人手が挙がっているので、まず館山委員、どうぞ。
【館山委員】  ありがとうございます。私は、技術的なほうではなくて、11ページ目の方に対して質問したいと思っております。
 私、「富岳」の成果創出加速の代表もやっていますので、まさしく耳が痛いというか、同じようなことを考えているわけなんですけれども、これはどの分野もやはり同じような状況なのか、あるいは、その分野はうまくいっているとか、そういうところを参考にさせていただくような分野とかはあるのかといったところについて教えていただければと思います。
【藤堂教授】  もちろん分野によっていて、例えば、物質科学は比較的うまくいっているほうだと思います。あるいは、基礎科学の分野ですね。素粒子、核物理、宇宙に関しても、もともと比較的きちんとしたコミュニティがあって、そういう機能しているところもありますけれども、そうではないところというのもあって、分野によって差が大きいというのが問題だと思っています。
 それで、全体として、こういう活動も含めて、計算科学全体として取り組むことができていないというような状況に結局なってしまっているというのが私が感じていることです。
【館山委員】  こちらの方の提案もこの後お待ちしていますというか、出るようですので期待しております。よろしくお願いします。
【藤井主査】  参考になる分野があるかという館山委員の質問だと思いますが、そこはどうですか。
【藤堂教授】  すみません。
【藤井主査】  より参考になる分野が何かあるかという御質問もあったと思うのですけど。すごくうまくいっているのは材料、物質科学で、そこは比較的うまくいっているという話があって、ほかはみんな駄目ですかね。
【藤堂教授】  少しずつ動きは出ているんですよね。気象の分野に関しても、そういうものを立ち上げてやっていこうというのはあるんですけれども。やっぱりかなりばらばら、結構温度差があるとは思っています。
【藤井主査】  分かりました。
 全体がまとまっていればいいと思うのですが、そうでないところは、議論する人たちが固定化してしまうと、取り残される人たちがたくさん出てきてしまうので、そういう人たちを取り込むということも多分必要になってくるのではないかという気はしますね。うまく大きな集まりをつくれれば一番いいのですけど。ありがとうございました。
 館山委員、よろしいですか。
【館山委員】  大丈夫です。ありがとうございます。
【小林主査代理】  小林です。先ほどの朴先生の御質問、コメントにも関係するんですけれども、やっぱりシステムの評価軸としては、メモリと演算、さらにはネットワーク、あるいはファイルI/Oと、いろいろ評価軸があると思いますので、そこら辺のバランスをどう見せていただけるかということが重要かなと思っておりました。
 あと、以前藤堂先生が御紹介されたときには、量子計算とか量子計算シミュレーションといったようなキーワードもあったような気もしたんですが、今回は表には出ていないようですけど、そこら辺はどういうふうにお考えなんでしょうか。
【藤堂教授】  そうですね。節として、特に量子計算というのは設けていないんですけれども、例えば、分野としては、ナノサイエンスデバイスの分野とかに量子多体系のシミュレーションという文脈で量子コンピュータのシミュレーションというのが入っていたりという、そういう感じですね。
【小林主査代理】  例えば、人工知能とかは、一つ計算モデル的なものが挙がっていますけど、そこに量子計算とか量子シミュレーションとか、あえて立てる必要まではないという感じですか。
【藤堂教授】  そこは5年後、10年後のロードマップがどうなっているかというのが、我々としてもまだ全然分からないというか、かなり基礎研究的なアルゴリズムそのものも含めて、量子コンピュータ、ハードウェア自体もどうなっていくか分かりませんし、なかなか難しいかなというのが我々の現時点での感想ですが、そこはこの後、天野先生がいろいろおっしゃっていただけるかもしれません。
【小林主査代理】  分かりました。ありがとうございます。
【藤井主査】  棟朝委員、どうぞ。
【棟朝委員】  どうも御説明ありがとうございます。
 第二階層とも関係してくるかと思いますけれども、3つの方向性のうち、より高い演算性能、これはフラッグシップでというところは当然かと思うんですが、ケース数が多い場合、単純にスケールアウトする場合でケース数ということであれば、1台のフラッグシップではなくて、複数台でやったほうが経済的であるという可能性もありますけれども、経済性の観点のどういうのがいいのかという検討は、ここには含まれていないということでしょうか。
【藤堂教授】  そうですね。もちろん計算量としては、1台にまとまっている必要はなくて、分散していてもいいということだと思うんですけれども。もちろん、そういう場合には、先ほど御指摘があったストレージをどうするかであるとか、あるいは、いろんな環境にまたがったものをシームレスに使えるかというような、そういう課題、運用面の課題というのもいろいろあると思います。
 その辺については、特に今HPCIコンソでまとめている提言書の中でも、そういう点についてはかなり強調されると思いますので、よろしく御検討いただければいいかなと思います。よろしくお願いします。
【棟朝委員】  どうも御説明ありがとうございます。
【藤井主査】  よろしいですか、棟朝委員。
【棟朝委員】  はい。全体的な検討かと思いますので。ありがとうございます。
【藤井主査】  計算科学ロードマップからは、これを見て、どういう要求が次世代計算機のハードで必要だとか、こういうふうに考えなければいけないみたいなことが生まれてくると思うので、あくまでこれはその材料を提供するところだと思うんですよね。ですから、そこから何を予測するかは、コンソの報告書とか、そういうところで見ていただくことになるのかなと思います。このロードマップはそこに対して非常に大事なデータを提供するので、皆さんの言われているところはぜひ書き込んでいただければと思います。
 ほかはよろしいですかね。時間になっていますので、藤堂先生、ありがとうございました。
【藤堂教授】  どうもありがとうございました。
 
議題3:AI for Science について
 資料3について、泰地副センター長より説明があった。
 
【藤井主査】  ありがとうございました。
 ここまでの御説明に対して御質問等あったら、どうぞ。
 よろしいですか。
【泰地副センター長】  この間、横田さんが大分計算の話はされたというので、計算量等の話は省略して話させていただきました。
【藤井主査】  そうですね。
 理研の中でいろんな検討をされているということで、例えば、AIの杉山さんのグループでしたか、そういうところとも連携してやられているのですか。
【泰地副センター長】  杉山さんのところとはいろいろ話をしているところで、ライフ系の応用のチームの一部がちょっと協力してやろうかなという話にはなっております。
【藤井主査】  分かりました。
 先ほどのスライドで幾つか挙げられていたのですけど、今までと全く違ったさらなる新しい使い方というのは何か見えてくるといいかなと思うのですが。
【泰地副センター長】  そうですね。
【藤井主査】  計算プロセスの代替とか、幾つか先ほど例を挙げられていましたけど。AIを進化させる枠組みというのがそれに相当するのかもしれないけど、また違うものが生まれてくるといいと思いますが、そういうことを見つけていただけるとありがたいなと思います。
【泰地副センター長】  まずは全体をAIで回すというところが一つできればなと思いますね。
【藤井主査】  なるほど。ページ8のループのところですね。幾つか新しい話もあったので、皆さんの参考にはなったと思います。
【上田委員】  すみません。
【藤井主査】  上田委員、どうぞ。
【上田委員】  泰地先生、どうもありがとうございます。ちょっと身内で言うのも何なのですけれども。
 一つは、LLMによる仮説生成というスライドがあったと思うのですが、タンパク質だとか、そういう発見を効率的にやるというのだといいと思うんですけど、やっぱりLLMというのも基本的にはデータなので、ウェブから取ってきた既知のデータなので、新しい仮説というのは基本的にLLMでというような割と楽観的な意見も多いのですが、個人的には否定的で、やはりそこに新しいものを生み出す何らかのものがないと、探索という観点での仮説はあり得ても、やはり本当の科学でいう新発見というのは難しいので、何かそういう考え方のバイアスを入れておかないといけないかなというのが1点です。
 もう一つは、これは手前味噌ですけれども、深層学習、LLMというのは当然目立っていますけれども、今、物理深層学習というような枠組みで、いわゆる偏微分方程式のソルバとしての役割というのも結構重要なのですね。これはデータがなくてもいいので、従来のいわゆる有限要素法だとか、そういうのに取って代わるようなアプローチもあるので、そういう情報も共有しておいたほうが、サイエンスの人には有用かもしれません。
 ちょっと2点、補足でした。
【藤井主査】  泰地先生、コメントありますか。
【泰地副センター長】  ありがとうございます。
 2点目の方は、上田先生のおっしゃるとおりだと思っていて、材料科学のいろんなAIモデルのところは割とシミュレーションの世界とは相性がいいので、そういうものを活用するということになろうかなと思います。
 1点目の方は、僕はちょっと違った考え方を持っていて、こういうLLMとかにもいろいろな確率的な要素を入れて、探索的なことは可能なので、例えば、我々、化合物の生成モデルをやっていますけれども、化合物生成モデルでは、世の中にないような化合物というのも当然出てくるんですよね。もちろん合成可能性とか、いろいろ問題はあるんですけれども。やはりそういう形で、いろいろ乱数を振っていくことで、ある程度仮説の幅というのを広げていく可能性というのはあるのではないかなと思っております。
【上田委員】  もちろん化合物は、先ほど言いましたように、あり得ると思うのですけど、一般にサイエンスの仮説というのは、必ずしもそういう類いのものだけではないのでというような面で。
【藤井主査】  そこは発展していく様子を見ながら、どっちが正しいかということになるのかもしれないですね。
 同じような意味で、ここに非線形性の複雑システムってありますけど、内挿ではなくて、外挿で、さらにそこに非線形性が加わったときに、どこまで迫れるかというのは、私は見ていきたい気はします。いかがでしょう、泰地先生。
【泰地副センター長】  そうですね。今、藤井先生が外挿とおっしゃった意味は。
【藤井主査】  データの外で何か出していく。
【泰地副センター長】  データの外にですね。実は我々の方も、すごく狭い例だけど、化合物のモデルとかも、既知の化合物間をつなぐと、そこには割と滑らかにつなぐことができたりするんですけど、今度、外側の方でどうなっていくかというところが結構大事で、そこで範囲を広げていくというほうを今後見ていこうというふうに考えています。
【藤井主査】  上田委員、よろしいですか。
【上田委員】  はい。ありがとうございます。
【藤井主査】  ぜひ頑張ってほしいと思います。
 2つ目のところで、上田委員にむしろ質問したいのですが、よろしいでしょうか。先ほど言われた後半のところというのは、PINNsみたいなものではなくて、もっと何もないところから方程式をつくるような話なのでしょうか。
【上田委員】  いや、PINNsは、御承知かと思いますけれども、方程式と初期条件、境界条件ですよね。ただ、あれ自身は、言ってみれば特殊解なのですね。初期条件、境界条件が変わると、また全部学習し直さなければいけない。
【藤井主査】  そのとおりですね。
【上田委員】  非常に効率悪いですね。それに対して、今、オペレータラーニングというスキームが提案されていまして、これはデータを使うのですけれども、データを使って、その背後にある物理を学習するので、これは一般解を求めることに相当するわけです。
【藤井主査】  なるほど。それは面白い。
【上田委員】  これは偏微分方程式の業界だとか、非常に有力だと個人的には思っていまして。PINNをオペレータラーニングと合体させるようなピノ(PINO)というのも出てきたりして、結構この分野、AIをエンドトレンドでLLMという分野も依然非常に論文は多いんですけれども、一部こういう新しい潮流が、特に物理屋さんが中心に研究していて、機会学習の重要国際会議NeurIPSとかにも論文がいくつか出てきています。
 なので、そういうようなところとか、あと、御承知かもしれませんけれども、NVIDIAがMPL-mixerというTransformerに代わる新たなアテンション機構のモデルを提案し、気象予測分野で非常に良い成果を出していて、NVIDIAなどは結構ウオッチしておく必要があるかなと思います。
 そういう意味で、いろいろ新しいモデルが出てきているので、全てLLMでというような考え方ではないなということを申し上げたいだけです。
【藤井主査】  そこはいいポイントですね。
 かなりのデータは使われるのですね、結果、そこでも。
【上田委員】  そうですね。ただ、LLMみたいに膨大なデータというわけではないので、そこが非常に効率面で良いはずです。
【藤井主査】  分かりました。教えていただいて、ありがとうございます。
 すみません。話がそれてしまいましたけど、皆さん、泰地先生の発表についてよろしいでしょうか。
 ぜひ継続して研究を進めていただきたいと思います。よろしくお願いします、泰地先生。
【泰地副センター長】  ありがとうございました。
 
議題4:「次世代計算基盤に係る調査研究」における検討状況(運用技術、新計算原理)について
 まず、資料4-1について、塙教授より説明があった。
 
【藤井主査】  どうもありがとうございました。
 とても大事なことを幾つか言われたような気がしますが、委員の皆様から御質問をどうぞ。
 棟朝委員、どうぞ。
【棟朝委員】  御説明ありがとうございます。
 再エネの関係ですけれども、カーボンニュートラルにするということで、再エネは結構地方の方にあるので、最近地方に再エネのデータセンターを造るという話も結構出ていますけれども。もちろん、今ある「富岳」のデータセンターを移すというのは現実的ではないですけれども、HPCI全体としては、そのようなものを考えていかないといけないかなと個人的には思っていますけれども、その辺り、なかなか難しい話ではありますけれども、今回の話は、あくまで送電網を使って買ってくる、そういう想定ですよね、基本的には。
【塙教授】  ここはフラグシップシステムの観点で、今の「富岳」から何ができるかという観点で考えたというところなので、HPCIの第二階層全体としては、そういった最適化というのも考える余地はあるのではないかとは思っております。
【棟朝委員】  そうですね。
 あと、この増強する場合、同じ場所で増強するのが本当に最適かどうかというのはあるかもしれないなと思いました。
 以上です。ありがとうございます。
【藤井主査】  ありがとうございます。
 朴委員、どうぞ。
【朴委員】  これは質問というよりコメントで、この中身については、既にFSの方で伺っていますので、14ページが今日の資料の中で非常に重要だと思っていまして、要するに、そもそもフラグシップマシンを、今までは7、8年から最大10年というレンジで入れ替え続けてきたわけですよね。例えば「京」から「富岳」までは9年かかっていますし、「京」に至るまでの地球シミュレータは2004年とか。
 つまり、非常に長いスパンで1,000億円単位のものを投入して、がんと作って頑張って9年、10年使うというスタイルが何サイクルかあって、これはHPCとかスーパーコンピュータの技術を見ている人間から見ると、明らかに無理があるわけで、ここにも書かれていますように、計算機システムの寿命は導入からせいぜい6年と。今、多くの国立大の第二階層でも、5年とか、延ばして6年というのでやって、それが限界なのに、それを9年、10年で、「富岳」に至っては、また2030年まで引っ張るということになると、10年という単位で。
 やっぱりこれは後半無理して使っていたり、後半は明らかに電力性能比とかが見劣りするようなところをつくらなければいけなくて、じゃ、本当にそれで10年で世界最高レベルが一旦ぽんとできて、その後でしぼんでいくというのが、果たしてユーザの視点から見てそれは最適なんだろうかというと、恐らくそうではないという議論があります。
 ここは塙先生とか運用技術のチームに考えてもらうにはあまりにも重たい話なので、今後、文科省とか我々のFSのPDも全部含めて、みんなで知恵を絞ってやっていって、大きく考えなければいけない部分ではないかと思います。
 コメントだけですけど、以上です。
【藤井主査】  塙先生、よろしいですか。
【塙教授】  はい。どうもありがとうございました。
【藤井主査】  利用を継続的に進めるサステナブルな方法を考えなければいけないということだと思います。
【塙教授】  はい。
【藤井主査】  第二階層の提供できる資源量という意味も含めてですけど、先ほどの話をまとめると、「京」と「富岳」のような形で隙間を空けることはまずできない。これが一つのメッセージで、もう一つが、先ほどの14ページの下の年表で言うと、これだと、予算的にどうなるか分かりませんけど、導入したときには、半分ぐらいの規模に一旦ならざるを得ないことを我慢しなければいけないかもしれない。
【塙教授】  個人的には、完全なリスタートにはならずにずっと継続できれば、必ずしも半減にはならないで済むのではないかと、やや楽観的かもしれませんけど、思っているところだと。
【藤井主査】  それは継続利用するという意味ですか。
【塙教授】  いや、継続利用というよりも、体制が毎回リスタートになるということを考えると、ある程度継続して研究開発できるという意味では、必ずしも半分にはならずに済むかなというところです。
【藤井主査】  でも、最初の段階では一度そうならざるを得ないですよね。今、そこの話をお話ししているつもりでした。
 あとは、後半のところで、どういうシステムのイメージかは分かりませんけど、前半入れたシステムは少し古くなってしまうので、新旧が共存するようなことも起こり得ることが問題なようにも感じました。
 ただ、全体としては、それは悪いことではなく、反対しているわけでは全くありません。幾つかそういう課題も考えなければいけないなと思った次第です。
特になければ先に進ませていただきたいのですが、よろしいでしょうか。
 塙先生、どうもありがとうございました。
 
続いて、資料4-2について、天野教授より説明があった。
 
【藤井主査】  ありがとうございました。
 皆さんから御質問等お願いいたします。
 合田委員、どうぞ。
【合田委員】  どうも御説明ありがとうございました。
 素人質問になってしまったら申し訳ないんですが、先ほど通信性能はコヒーレンス時間を考慮しなければならないという話をされていましたけれども、同じようなことが、スケジューラに相当する機能にも必要なのではないかというふうに、ちょっと素人ながらに思ったんですけれども、その辺は何か御意見等ありますでしょうか。
【天野教授】  これは、どのレベルでどれぐらいのパフォーマンスが必要になるかというお話に依存すると思います。
 今ここで考えているのは、これ、IBMの提案している図なんですが、QPUに対しては、直結してControllerとPrimitiveというコンピュータが、これも従来型のコンピュータが接続されています。これらは密結合されて、同じサイトに置かれているというのが前提です。
 強力に接続されていて、コヒーレンス時間内で、このQPUの量子ビットを制御するパルスを発生します。例えば、量子コンピュータを使うには、今のコンピュータのコンパイラより、トランスパイラといって、量子コンピュータの現状にダイナミックに対応して処理を変えるという機構が必要になってきます。また、マイグレーションやエラーコレクションなんかを行うためには、QPUと密接に接続されて、コヒーレンス時間内にいろんな処理を行って戻すというシステムが必要です。
 ただ、これはスパコンであるよりは、もうここに密着したQPUのControllerの一部拡張の部分だというふうに考えることができます。この上のレベルでアルゴリズムを実行して、従来型のアルゴリズムと量子コンピュータのアルゴリズムを行ったり来たりして行う。今のハイブリッド計算というのを行うための、この部分がどれぐらいの遅延で必要か、また、同じところに置く必要があるのか、どれぐらいのパフォーマンスが必要なのかというのは、意見が分かれております。
 僕がいろんな人にインタビューした結果、つまり、量子コンピュータを使っている人たちにインタビューをしている結果は、あまりそういうことは考えていないと、スパコンとか要らないんじゃないという人が割と多かったです。一方で、理研のRQCの人たちなんかは、いや、もうこれ、絶対同じサイトに置いたほうがよくて、スパコンとこういう融合環境ができれば、新しいアルゴリズムがどんどん出てくる可能性があるよというふうに考えていらっしゃる人もいます。この辺は、ちょっと僕には判断がつきかねるところです。
 以上です。
【合田委員】  どうもありがとうございました。
【藤井主査】  ありがとうございました。
 ほか、いかがでしょうか。
 先ほどの3つの段階で言うと、今議論している次世代の導入時期は、いろんな試行をしてみるというこの図の一番左側の段階になるのですかね。もちろん、そこで構いませんけど。
【天野教授】  はい。僕は、この段階を早めに実現することが重要かなと思います。
 なぜならば、今、量子コンピュータは、例えばToshikoにしろ、独立のクラウドに接続されてしまうか、あるいは、AWSクラウドか、Fixstarsでもいいと思うんですが、商用のクラウドに入ってしまいますと、そのクラウドの範囲内のコンピュータしか使えなくなりまして、スパコンとは独立してしまいます。あるいは、セパレートされてしまっていると言っていいと思います。なので、そうすると、本当のハイブリッドの計算をうまくやっていくのが大変になります。
 あるいは、これ全部、例えば、AmazonのAWS Braketでいいじゃないかという話はあるんですけれども、そうすると、スパコンではない種類のコンピュータとのハイブリッドになりますので、やっぱりちょっと貧弱なんですよね。特に量子コンピュータのシミュレーションの部分が貧弱です。
 あと、お金がたくさん要るわけです。だから、研究を行うという点では、これが実現できれば非常にありがたいなと思います。
【藤井主査】  ありがとうございました。
 ほか、いかがでしょうか。
 特になければ、お時間も来ていますので、先に進ませていただきたいと思います。
【天野教授】  ありがとうございます。
【藤井主査】  天野先生、ありがとうございました。
 それでは、これで議題は全て終わりになります。全体を通して御質問とかコメントがあったら、よろしくお願いします。もしないようでしたら、事務局から事務連絡をしていただくことにします。いかがでしょう。よろしいですか。
 では、事務局にお返しします。
 
事務局より、次回の開催予定について連絡を行い、藤井主査により閉会。

お問合せ先

研究振興局参事官(情報担当)付計算科学技術推進室

電話番号:03-6734-4275
メールアドレス:hpci-con@mext.go.jp

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