HPCI計画推進委員会(第54回) 議事要旨

1.日時

令和5年10月16日(月曜日)10時00分~12時00分

2.場所

オンライン会議

3.出席者

委員

合田委員、伊藤公平委員、伊藤宏幸委員、梅谷委員、小林主査代理、田浦委員、館山委員、中川委員、福澤委員、藤井主査、朴委員、棟朝委員

文部科学省

塩見局長、奥野審議官、坂下課長、嶋崎参事官、国分室長、谷本参事官補佐、長澤係長、関口専門職

オブザーバー

(東京工業大学 学術国際情報センター)横田教授
(スーパーコンピューティング技術産業応用協議会)廣畑企画委員長、池田施策提言WG主査、松本HPCロードマップ主査、川本HPCロードマップ・機械系SWG主査、野津HPCロードマップ・建設系SWG主査、三上HPCロードマップ・材科化学系SWG主査
(理化学研究所 計算科学研究センター)松岡センター長、佐藤副センター長
(理化学研究所 計算科学研究推進室)原室長

4.議事要旨

冒頭、8月より研究振興局に着任した塩見局長、研究振興局参事官(情報担当)に着任した嶋崎参事官、9月より計算科学技術推進室に着任した国分室長の紹介と挨拶を行った。その後、各議題の報告を行った。
 
議題1:令和6年度概算要求、次世代計算基盤の検討の進め方について
資料1について、事務局より説明があった。
 
【藤井主査】説明ありがとうございました。ここまでの説明について御質問等があったら遠慮なく、委員の皆さん、よろしくお願いします。館山委員、どうぞ。
【館山委員】フラッグシップマシンのこの検討ポイント(p10)の中ですけれども、基本的に世界的にはGPUが導入されていて、多分このFSでもGPU関係の話はあるかと思うんですけれども。ここは基本的にフラッグシップマシンは国産でいくのか、そうでないところでいくのかという、多分2ポツに相当するのかもしれないですけれども、我が国独自の技術をどこに当てはめていくのかに関して、どういうふうな動きがあるのかを今の段階で教えていただければと思います。
【藤井主査】また説明の機会はあるかもしれませんが、今の時点でという館山委員の質問ですので、文科省から何かできますか。
【谷本補佐】文科省事務局でございます。
 まず国産か否かというところですけれども、FSのチーム、特にシステム研究の一つである理化学研究所のチームの中では、富士通をはじめ、AMDやIntel、NVIDIAなど、国内外の企業が参画して検討を進めておるところでございます。館山先生がおっしゃるとおり、2ポツ目の、我が国が独自に確保すべき技術はどこであるかというところも含めて、国内外の企業を交えて検討を進めているところでございまして、ここがこうというものが今定まっているものではございませんで、ここは年度末に向けて検討を加速していければと思っておるところでございます。
【館山委員】ありがとうございます。追加でもう1個だけ、軽い質問をさせていただいていいですか。
【藤井主査】はい。
【館山委員】令和6年度の予算ですけれども、「富岳」の運営等で161億円とあるんですが、この中で成果創出加速プログラムはお幾らなのか。見えていないので、もしよければ金額が分かれば教えていただければと思ったんですけれども。
【谷本補佐】文科省事務局でございます。
 成果創出加速プログラムは今年度と同額の予算を要求しておりまして、総額で約6億円を要求しておるところでございます。
【館山委員】増えてない、同額ということですね。
【谷本補佐】はい、今年度と同額です。
【館山委員】承知しました。ありがとうございます。
【藤井主査】最初の御質問に関して、PDお二人、多分委員に入っていらっしゃいますけれども、何かコメントはありますか。よろしいですか。どうぞ。
【田浦委員】基本的には文科省から言っていただいたとおりで、そのところは非常に大事なところとして、各社の提案などを今、特に個別のチームと打合せをして、検討していっているところです。
【朴委員】朴です。
 先生と全く同じで、基本的には文科省と、それから全体で来年度前半くらいまでにはいろいろ決めなければいけないと思うんですけれども。現状では必ずしも純国産であることだけを目標にはしていなくて、ですから特に理研チームなんかは米国の仕様、GPUも含めてですね、そういうところを含めての調整をやっていますので。これは最高性能で実用に十分2030年で適用できるような技術をきちんと見極めていくことが重要な課題ですので、必ずしも国産でなければ駄目ということでは現状動いていないという御報告になります。
【藤井主査】ありがとうございます。
【中川委員】日立、中川ですけれども。
【藤井主査】どうぞ。
【中川委員】中川でございます。
 FSの進め方がここのページの中心になっているんですけれども、一方でTRIPですとかTRIP-AGISといった新しい取組が令和6年度から始まったりするわけですが、それとFSの関係は当然出てくると思います。
 というのは、HPCIは「富岳」NEXTだけではなくて、それ以外の大学情報基盤センターのマシン、それからクラウドの利用等も含めた全体のインフラということだと思いますので、量子計算機ですとか、あるいは生成AI用のラージランゲージモデルを擁するパブクラですとか、そういうところの連携も視野にHPCIを考えていくことになると思うんですが。先ほどの日程表であまりTRIP系との連携の話が入っていなかったと思うんですが、実際には取り込んでいきながら検討していくほうがベターではないかと思うんですが、その辺りの動きはどうなっているんでしょうか。よろしくお願いします。
【藤井主査】これは事務局、よろしくお願いします。
【谷本補佐】文科省事務局でございます。
 中川先生の御指摘のとおり、TRIPまたTRIP-AGISから出てきた取組の状況、あるいは取組の成果だとかは次世代計算基盤の検討の中に当然入っていくものだと認識してございます。先ほどお見せした線表は来年度2024年度までで切れておりますので、なかなかそこの反映状況については図示できていないですけれども、それ以降、例えば基本設計だとかのところでTRIPまたTRIP-AGISの取組状況を適切に検討の中に盛り込んでいきたいと考えておるところでございます。
【中川委員】ぜひ委員と評価委員が共有できるようなベースをつくっていただくと、議論をするときに視野が広がるかと思いますのでよろしくお願いいたします。
【藤井主査】おっしゃるとおりだと思いますね。ぜひそういう機会をちゃんとつくることも含めて、文科省で進めていただければと思います。
 ほかはよろしいでしょうか。今の話と似た話になるんですけれども、全体で見るべきなので、第2階層の状況がどんな状況で今後どうなるのかということも、当然意識してやられているとは思いますけれども、そこら辺も併せて検討の中に入れていただくことが必要かと、私は聞いていて思いました。
 特に御質問がなければ次の議題に移らせていただきます。よろしいでしょうか。
 
 
議題2:「富岳」成果創出加速プログラムの中間評価について
冒頭、中間評価案の議論にあたっての利害関係者の範囲について確認し、藤井主査、朴委員、館山委員、福澤委員が利害関係者に当たることを確認した。藤井主査が利害関係者にあたるため、本議題の議事進行を小林主査代理に交代し、藤井主査、朴委員、館山委員、福澤委員においては本議題での発言を控え指名があったときのみ発言していただくよう主査代理から指示があった。その後、資料2について、事務局より説明があった。
 
【小林主査代理】ありがとうございました。それではここまでの説明について御質問等はございますか。挙手ボタンあるいはお名前をおっしゃっていただければと思います。
 どうぞ、合田先生。
【合田委員】御説明ありがとうございます。後半のところで、研究データのマネジメントのところでデータマネジメントプランを作成するというようなお話があったんですけれども、ここは私、不勉強で、もうちょっと詳しくというか、どういう形で進められているかを教えていただけると助かるんですが、いかがでしょうか。
【谷本補佐】事務局でございます。
 まず、記載内容を簡単に触れさせていただきます。19ページ目の(4)、事前評価結果時の指摘事項とその対応状況についてのところです。指摘事項として、データマネジメントポリシーについて、「研究データリポジトリ整備・運用ガイドライン」、平成31年に内閣府の科学技術・イノベーション担当が策定したものですけれども、これに沿ったものとなっているかを確認することが指摘されております。その対応状況が1ポツ目に記載しておるところですけれども、それぞれの実施機関においてこの「研究データリポジトリ整備・運用ガイドライン」に沿ったデータマネジメントプランを作成することといたしまして、課題が終了した際に行う外部有識者による評価の際に、各課題のデータマネジメントに関する取組状況を確認している旨を記載しているところでございます。
【合田委員】分かりました。ありがとうございます。
【小林主査代理】ほかにございませんか。いかがでしょうか。
【中川委員】では日立、中川から簡単な質問をよろしいでしょうか。
【小林主査代理】中川委員、どうぞ。
【中川委員】8ページに成果創出加速プログラムに採択された課題の一覧の表がございます。それを見ますと、例えば令和3年度の3課題は5年で実施するのに対して、令和5年度の17課題は3年で実施というような、課題によって実施期間が違うように見えるんですけれども、これはなぜでしたっけ。すいません、基本的な質問で。よろしくお願いします。
【谷本補佐】事務局でございます。
 御指摘のとおり、令和3年度に採択した課題と令和5年度に採択した課題で実施期間に差がございます。これは、次世代計算基盤の検討を進めていく中で、アプリケーションに関する取組もまた新しく行われるであろうというような想定もしておるところです。そうしたときに、この成果創出加速プログラムの実施年度について、令和3年度に採択したものは令和7年度で終了するなかで、令和5年度に採択した課題の終了年度がずれるところについて、ほかのFS関係、次世代計算基盤のアプリ支援の関する取組も含めた施策全体の検討として、まずこの成果創出加速プログラムに関する支援は終期をそろえようというところで、令和7年度で一通りの課題を終了する形で設定したところでございます。
【中川委員】 基本的な考え方ですね、3か年実施するのか5か年実施するのかというのは、課題の性質ではなく、募集する側の、要は文科省殿の基本的な全体計画の中で決まってくるという理解でよろしいですか。課題が5年かかるから5年に設定しているとかそういうわけではないということでしょうか。
【谷本補佐】御指摘のとおり、施策の検討の段階ではこの令和5年度採択のものを3年にするのか5年にするのか、また1課題の課題規模をどうするかといったところの検討も含めて行ってございました。その中で、次世代計算基盤全体も含めたアプリ開発に対する支援という検討も見据え、この成果創出加速プログラムについては令和7年度で一通り全課題を終了する形で期限を切ったところでございます。
【中川委員】なるほど。令和7年度が一つの次世代計算基盤の検討という意味で、一旦この成果創出加速プログラムの成果をまとめてほしいという運営側の要求によって7年度というゴールがあって、それに対して5年だったり3年だったりという期間が設定されたということですね。
 それに対して、実際にプログラムを実施されている研究者の方からそれでいいんだろうかというか、もっと長くしてほしいとか、どうでしょう。そういった意見も、まだ事後評価は先になると思うんですけれども、今後の運営に生かす意味では考えたほうがいいんではないかと思いました。
 理由は、フラッグシップというのは、「京」にしてももちろん「富岳」にしても、利用するときにないと困るリソースだということは分かるんですけれども、HPCI全体として見たときには、先ほど合田先生から御質問があったデータマネジメントですとか大規模実験設備でありますとか、それからもちろん第2階層もございますので、次世代計算基盤のFSに合わせてという辺りが、研究をされている、実際に実施されている、このプログラムを利用されている方がどう見ているのかというところは考慮したほうがいいのかと思いました。よろしくお願いいたします。
【小林主査代理】ありがとうございます。棟朝委員、どうぞ。
【棟朝委員】ありがとうございます。棟朝です。
 AIやデータに関する取組ということで、その融合ということで大変興味深いと思っておりますけれども。その成果やそこで得られたノウハウについて、他の研究課題と横展開するといった取組は何かございますか。
【小林主査代理】事務局側からいかがでしょうか。
【棟朝委員】いかがでしょうかね。データとかAI関係とかでいろいろな取組をされて、そこでいろいろノウハウ等蓄積されたものとか、ほかの課題に展開するとさらに活性化していくのかと思うところではあるんですけれども、いかがでしょうか。
【関口専門職】成果の横展開に関しましては、本事業の課題が一堂に会する研究交流会というものを企画しておりまして、そちらで成果の横展開等を図っていきたいと考えております。
【棟朝委員】ありがとうございます。まあ、これからというところでもあるかとは思いますけれども、ぜひその辺ですね、共通するノウハウや知見等いろいろあるかと。特にAI関係とかあるかと思いますので、よろしくお願いいたします。
【小林主査代理】ありがとうございます。ほかにございますか。いかがでしょうか。
【松岡センター長】今の点、理化学研究所から申し上げてよろしいですか。
【小林主査代理】では松岡先生、よろしくお願いします。
【松岡センター長】センター長、松岡でございます。
 今の棟朝先生の御発言は大変重要で、それぞれの領域におけるHPC、かつての「富岳」におけるフィージビリティースタディーという、やや重点課題においても縦の展開、それぞれの領域におけるシミュレーション、技術の展開だけではなくて、その横展開が非常に大事で、それが計算科学ロードマップという形で形成され、それが今、当然ながら開発につながったわけですし、その後も東京大学の藤堂先生や本センターの富田さん、チームリーダー等の活躍もありまして、それらがアップデートされてきていると。そういう状況であります。
 AIに関しましても、特にAI for Scienceにおきましても同様のアクティビティーが必要だということが強く認識されておりまして。まだ正式なアクティビティーではございませんが、自主的にそのロードマップの委員会、つまり藤堂さんや富田さんや私ども等が中心になって、今度はもう少し若手をリクルートして、今、AI for Scienceのロードマップというものもつくっていこうと。
 そのために、まずは既存の計算科学ロードマップにそのような形でのAI for Scienceのセクションを、まず第1段階としてはその章を加えて、分野間、それぞれの分野でどのような形でAIがサイエンスの進展に生きてくるのか、特にハイエンドのAIですね、スパコンもありますし、それがさらに将来どう発展していって、どういうふうなブレークスルーが期待できるのかを示していくということを計画しております。
 既にそのボランティアとして100名以上の執筆者が名を上げていただいていて、今後、本年度、最初のドラフトが上がってくると。行く行くはこのアクティビティーが何らかの形でのより正式な、何らかのプログラム下での正式なアクティビティーとして認められて、今後それがアップデートされていく体制をつくっていきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。
【小林主査代理】松岡センター長、補足ありがとうございます。
 ほかにございますか。よろしいでしょうか。それではいろいろ頂きました御意見を踏まえて、事務局は情報委員会での審議に向けての評価票の修正案の作成をお願いいたします。
 
 
議題3 「富岳」を活用した生成AIの研究開発について
 資料3について、東京工業大学 横田教授より説明があった。
 
【藤井主査】ありがとうございました。
 ここまでの御説明に対して委員の皆様から御質問はありますでしょうか。伊藤公平委員、どうぞ。
【伊藤(公)委員】とても重要なプロジェクトだと私も実感しております。
 その上で、今までのHPCIのプロジェクトであれば、様々なユーザー側のサイエンティストたちがこのような形で時間が、マシンタイムが振り分けられてというふうに行われているんですが。私の素人の印象では、学習の膨大にかかる時間とかいろいろなことを考えると、プロジェクトの数というんですかね、相当プロジェクトを、サイエンスとしての重要度を考えながら選んでいかなければいけないのではないかと、このマシンが実現したときにはという印象を受けているんですが。その辺はいかがなものでしょうか。
【横田教授】国内での取組などでも様々な企業とか大学とかで現在ばらばらにやっている状況が非常に非効率でして、これを少しでも統合していこうということで、我々は企業各社とLLM勉強会と今回の「富岳」の取組と産総研の間でできるだけ情報共有をしながら現在進めております。
 これがAI for Scienceに話が移った場合には、そちらにおいても大規模なモデル、生成AIの一番大きな学習に時間のかかる部分をやる際には、できるだけこういう冗長性を排除して、現在一番よいと分かっている方法を皆さんが使えるようなプラットフォームをつくる必要があるだろうと。かなり現時点ではまだ試行錯誤の段階なので、冗長性があるのは必ずしも悪いことではないですけれども、だんだん知見がたまってきておりますので、その辺は来年AI for Scienceに本格的にこれを導入する際には、できるだけ一番よいと分かっているものを多くのAI for Scienceの実際のドメインサイエンティストの方々に提供していく枠組みが必要になるかと思います。
【伊藤(公)委員】追加でよろしいでしょうか。今のお話は私、ある程度理解するんですけれども、そうなっていったときに、AI for ScientistとAI for IndustryとAI for National Securityといったことが、国全体としてはそれぞれのマシンタイムがどうなるのかといったようなことが今後議論になっていくのではないかと思うんですね。その時に、文科省が力を入れるAI for Scienceとほかのところが力を入れているものを、フラッグシップのAIマシンとしてどういうふうに使っていくのか。あくまでもAI for Scienceに向けたHPCIの枠組みの中でのAIですかね、という質問です。
【横田教授】あくまでHPCIの枠組みの中でやるサイエンスのためのものと、あとインダストリーで例えば経産省などが主導するような部分で目標が多少違ったりしていて、その部分はどうしても統合できない部分はあると思うんですね。
【伊藤(公)委員】統合できないわけですね。それでしたらいいんですけれども。全部統合したときにどうなるのかということですけれども。
【横田教授】なるほど。それができれば一番大きいモデルを学習できるとは思うんですが。必ずしも今何がよいかというのが一本まだ分かっているわけではなくて。
【伊藤(公)委員】分かります。
【横田教授】なので、その部分に関しましては、二、三本走っていること自体は無駄にはならないのではないかと。
【伊藤(公)委員】そうだと思います。ありがとうございました。何か統合されるようなことをおっしゃったので、それはどういうふうになるのかと思っただけなので。分かりました。
【横田教授】なるほど。あまり何百とあるのはさすがによくないと思うので、少しは統合しようということですね。程度問題です。
【伊藤(公)委員】ありがとうございました。
【藤井主査】館山委員、どうぞ。
【館山委員】すばらしいLLMモデルの取組をありがとうございました。
 私、今日お話を聞いていて、基本的にFP8、FP16の精度ベースの話をおっしゃっていると思うんですけれども、一方で我々、基本的に計算シミュレーションでは倍精度、FP64を欲しいという感じになるところで。
 横田先生の意見としては、この2つは将来的に両立しながらそういうフラッグシップマシンを1個つくるべきなのか、あるいはAIはAIで特化したものをつくって、横田先生の印象だけでいいんですけれども、倍精度に関しては両立していくべきなのか、そこら辺の御意見は何かやっていてありますか。
【横田教授】これまでにも例えばGPUによるアクセラレータが載ったスパコンを設計する際に、どうしてもGPUで速くならないアプリケーションもサイエンスのほうにはたくさんあるということで、その辺の判断が大分難しかった部分はあると思うんですけれども。それが今回さらにGPUに移行できたものの中でもさらに低精度演算が使えないものがさらに振り分けられてくると思うんですけれども。
 多くの、例えば量子化学計算ですとか大規模な行列演算などを、特に小さい密行列のバッチ処理みたいなものに落とし込めるアプリケーションは相当数あるようなので、今それは実際に「富岳」でもいろいろ検討が行われているようですけれども、こういった低精度演算器をいかに従来のシミュレーション技術に生かせるかということも並行して検討する必要があると思います。
 必ずしも全部のアプリケーションがこちらに移行できるわけではないので、そういったアプリケーションの場合は単純に未来のプロセッサで性能がそれほど向上しないことになるんだろうと思いますが。どのみちそういったアプリケーションに対してはメモリバンド幅のほうも上げていくので、そちらのほうで大分速くはなるだろうということで、ここ(p14)の一番下にも書いてありますけれども、従来のHPCアプリが速くなるようなメモリ帯域の向上と今回のこのFP8が速くなる話は必ずしも相反する設計要件ではないので、この両方が載っているものをつくればどちらも速くなると見込まれますので、特に最近のGPUで速くなっているアプリはたくさんありますので、その傾向がどんどん進んでいくのではないかと思います。
【館山委員】ありがとうございました。
【藤井主査】朴委員、どうぞ。
【朴委員】横田先生、ありがとうございます。大体、最後のほうで横田先生がおっしゃったことに賛成ですけれども。本当に重要なのは、もちろん生成AI、LLM等の話、それから従来のディープニューラルネットワークのオーソドックスな話と、何よりもポスト「富岳」では次のサイエンスをどうやるかという全部のバランスが重要なわけですけれども。おっしゃるように確かにメモリバンド幅は全てに共通するから、そこを増強するのはAND条件で問題ないですけれども。
 片や、次のナショナルフラッグシップをつくった際に、全てを追いかけようとすると一兎も得ずという状況もあり得るわけで、バランスだけではなくて、ある程度の取捨選択というか、ここでやるのはここまでと。特に生成系AIに関してはもう世の中全体で必要とされているので、それをたった1台のポスト「富岳」に全部任せましょうという話は、最初のほうにもありましたように、伊藤先生のお話にもありましたように、じゃあリソースをどうやって振り分けるのかといったときに、はっきり言うとオーバーフローにならざるを得ないと思うんですよ。そうすると、オーバーフローでみんなが三方一両損みたいなことになるよりは、政策的にある程度のAI関係のことはまた別の方策を考えるとか、国策としてですね、そういうことも含んでやっていかないと多分立ち行かなくなるんじゃないかと。
 言いたいことは、オール・オア・ナッシングで全部違うマシンにやらせましょうということではないんだけれども、このマシンでやる目的はここまでで、そこはどうしても例えば米国産GPUに太刀打ちできないので、そこはこういうソリューションでいきましょうというような、全てをポスト「富岳」に押し込めるのは果たして得策なのかということは非常に危惧を感じています。
【横田教授】ありがとうございます。私もそのとおりだと思います。
【藤井主査】とても大事なポイントをここに指摘していただいたと思っています。そういう点も含めて、横田先生にはぜひ考えていただければと思います。
 ほか御質問等あるでしょうか。いかがでしょう。手は挙がっていませんが。よろしいですかね。
 先ほどのライブラリは一般的な、Transformerを利用するような例えば分析や何かの利用の仕方でも使えるようなライブラリになるんですか。
【横田教授】そうですね。全ての「富岳」ユーザーが使えるようなライブラリになることを想定しています。
【藤井主査】なるほど。そこは汎用性というか、使いではあるところですね。ありがとうございます。
 ほかになければこの議題を終わりにしたいと思いますが、いかがでしょうか。
 横田先生、ありがとうございました。
 
 
議題4 産応協HPC技術ロードマップについて
 資料4について、スーパーコンピューティング技術産業応用協議会 廣畑企画委員長より説明があった。
 
【藤井主査】ありがとうございました。ここまでの御説明に対して御質問等があったらどうぞ委員の方々から。いかがでしょうか。産業界の方から補足はありますか。
【梅谷委員】梅谷ですけれども、特に補足はありません。
【藤井主査】ありませんか。分かりました。委員の先生方から何か御質問があればお願いします。福澤委員、よろしくお願いします。
【福澤委員】全体像が分からない中で申し訳ないですけれども、今、産応協から材料・化学分野あるいは建設・機械分野に関して要望をまとめていただきまして、非常に参考になったんですけれども。一方でバイオとか健康とか、その辺りに関しては産業界からこういった情報を提供いただくような仕組みはこのHPCIの中であるのでしょうか。分かっていなくて、質問になります。
【廣畑企画委員長】申し遅れましたけれども、産応協は産業界全体をカバーしているわけではなくて、偏りがあります。そういった面ではメンバーの多くは建設系とか機械分野、プラント系。昨年度までは製薬会社さんが1社いらっしゃったんですけれども、今退会されまして、創薬・バイオ分野はぽっかり穴が空いた状態です。そういった意味でお声がけですね、ぜひこういう産応協に入らないかという、メンバー企業を増強する活動は継続しておりますけれども、現状は産業界全体ではなくて、ある一部分の偏った面からの要望という形で今回まとめております。
【福澤委員】ありがとうございます。産応協さんのことはそれでよく分かったんですが、ほかに産業界から情報を頂くような仕組みはHPCIの中で、これは文科省さんへの質問になるかもしれないですけれども、あるのでしょうか。
【藤井主査】事務局からお願いします。大事なところですね。
【谷本補佐】文科省事務局でございます。
 機械的に産業界の皆様からの声を頂く場面があるわけではないですけれども、まさに今回の産応協さんのようにアドホックにお声がけをして例えばこの委員会にお呼びするであるとか、あとは兵庫県と神戸市などが共同出資して設立されている財団であるFOCUSにて産業利用の促進に関する活動も行っていただいておりますので、FOCUSを経由した活動といったことが挙げられるかと思っております。
【福澤委員】ありがとうございます。またそういったところからも意見を伺う機会を頂ければと思います。
【藤井主査】どうぞ、梅谷委員。
【梅谷委員】今の御質問でいうと、自動車は自動車コンソーシアムという業界的団体で「富岳」に対する要望とかを上げていますので、多分そういう業界団体が個別にいろいろあるんじゃないかと思います。自動車でいうと日本の自動車会社、全自動車会社が入っている形でやらせていただいている状況です。
【福澤委員】そうすると製薬協とかになりますかね。
【藤井主査】一つはそういうことなんでしょうね。
【福澤委員】はい。
【梅谷委員】製薬は製薬でたしかあったと思いますけれども。
【藤井主査】ただ、それをきちっとした形で吸い上げるのは、機会をなかなか持てているかどうかは、製薬は多少あるかもしれませんけれども、それ以外の分野もあるので、そこら辺は注意していかないといけないかと、今の御質問を聞いていて思いました。
【梅谷委員】梅谷です。おっしゃられるとおり、課題としてはそれがあると思います。
【藤井主査】これは産応協さんで、今のメンバーの枠組みを超えた情報を集めるのは難しいんでしょうかね。
【廣畑企画委員長】そこはなかなか難しいところで、先日もHPCIコンソーシアムで産応協の活動を紹介させていただいたんですけれども、同じように、先ほど梅谷さんからあった自動車工業会とか、あと創薬絡みにもHPCIコンソからヒアリングされていましたので、その辺りは文科省さんでちゃんと分野を広く吸い上げられているだろうとは思います。補足でした。
【藤井主査】今だともう社会的課題も含めて、非常に幅広い産業の利用が考えられているので、「京」が始まったときは割とものづくり的なことが中心になっていたと思うんですけれども、かなりそこが広がっているので、私たちもそこは注意して考えなければいけないと、今の議論を聞いていて思いました。産応協さんでもできるところはぜひやっていただきたいと思いますし、情報だけでも提供していただけるといいのかもしれません。福澤委員、そんなところでよろしいでしょうか。
【福澤委員】ありがとうございました。
【藤井主査】ほかいかがでしょうか。
【松岡センター長】理化学研究所からよろしいでしょうか。
【藤井主査】はい、松岡センター長。
【松岡センター長】今のことに関連しまして、本センターはいろいろコンソーシアム、企業コンソーシアムをセンターとして抱えておりまして、その中で創薬に関してはLINCというコンソーシアム、これは我が国の創薬関係企業18社がやっておりますが、そのようなコンソーシアムを、京大と我々が形成いたしまして、今、創薬のプラットフォーム等を形成しております。
 それ以外に土木系のコンソーシアムや燃焼系のコンソーシアム、これも京都大学でやっておりますが、それら幾つか、本センターが中心となったり、本センターが中心的に参加しているコンソーシアムがございますので、ぜひそれらと産応協でタイアップさせていくのにお手伝いさせていただければ大変幸いかと思います。
【藤井主査】ありがとうございます。分野的に落としているところがないかということと、それぞれ出てきたものがちゃんと連携して皆さんで議論の場にのせられることができているか、この2つがしっかりしていないといけないんだと思いました。
【松岡センター長】特にLINCに関しては「富岳」のSociety5.0枠、産業枠、こちらの枠も獲得して、今、創薬プラットフォームを形成しております。
【藤井主査】創薬はそうですね。
【松岡センター長】はい。そのような形で連携させていただければ大変幸いです。
【藤井主査】ほかいかがでしょうか。よろしいですか。
 それではこの議題は終わらせていただきます。廣畑委員長、どうもありがとうございました。
 
 
議題5 HPCと量子コンピューティングの連携に向けた取組状況について
 資料5について、理化学研究所 計算科学研究センター 佐藤副センター長より説明があった。
 
【藤井主査】ありがとうございました。ここまでの説明に対して御質問等はありますか。委員の皆様、よろしくお願いします。朴委員、どうぞ。
【朴委員】佐藤先生、どうもありがとうございます。この辺のことは大変重要だと思っていますし、多分今年の終わりかあるいは来年ぐらいにいろんな国際会議やHPC系でも取り上げられる議題になると思います。
 それでこのTRIPで理研で進めている話と、それから今、ポスト「富岳」FSでやっているQC・HPC連携、これも佐藤さんももちろんインボルブされていて。
【佐藤副センター長】はい。
【朴委員】それとの連携とか関係はどんな感じで進められているのでしょうか。
【佐藤副センター長】関係というのは、あちらは調査研究ですので、調査の一つの形として、我々のやっているものもこういう形があるんだよという提案をさせていただくという話なんですけれども。特に提言としては、ここにありますように、「富岳」NEXTの開発に関してどのような影響が与えられ得るかという観点からは、現時点のこの2030年までの量子コンピュータを見ますと、GPUのように後ろに接続する形はなかなかないんではないかと。むしろ、現在開発がどんどん進められている超伝導型とかイオントラップにつきましては、設置環境が非常に制限されるし、ある程度まだまだ高価なリソースになりますので、それをシェアするようなインフラなりソフトウエアなりの整備をする必要があるという提言を、私からはFSの報告でもう少し具体性を持って提言させていただこうかと考えております。
【朴委員】分かりました。ありがとうございます。
【藤井主査】よろしいですか。伊藤公平委員、お願いします。
【伊藤(公)委員】私は量子コンピュータ側の立場ですので、スパコン側の方からこういうお話が出てくるのは非常に、ある意味ここまで来たかという感想を持っているところであります。
 量子コンピュータ側から見ると、今のスパコンと量子コンピュータの距離感はまだ非常に離れていて、特に量子コンピュータサイドの人からは、私たちの慶應義塾における研究、量子コンピューティングセンターでもそうですけれども、どのように具体的にAIとつなげるかとか、今のシリコン半導体の相当よいコンピュータとつなげるかということは実際に行っているところであり、そのフラッグシップという形で恐らく今回HPCIと量子コンピュータがつながるということなのかと思っていますので。地道に、量子コンピュータ側の人がどのように今のコンピュータとつなげていけるかという研究を進めない限りは、そこのところをしっかりしなければいけないので、これ実は、この情報課というか完全に量研室の話ですので、そっちは量研室の範囲でやりますので、こちらでやるべきだという思いは私はしないですけれども、そことの連携はしっかり続けていただきたいというのが私からのお願いであります。
【佐藤副センター長】何度も強調して申し上げたいのは、具体的な量子コンピュータのアプリケーションという段階になれば、普通のHPCのプログラムを動かして、その中から量子コンピュータを利用するのは割と自然な形ではないかと思っていて、今、量子コンピュータと言っていますけれども、フロントエンドでPythonでプログラムを書いて動かしてみましたというのは、もうそろそろ100キュービットとか1,000キュービットになると、次の段階に入らなくてはいけないのではないかと感じております。
【伊藤(公)委員】あくまでも中心は今のコンピュータであり、量子コンピュータは今のスパコンの……
【佐藤副センター長】いやいや、そうは思いませんけれども。
【伊藤(公)委員】ごく一部の不可能が可能になるんですけれども、そのごく一部の不可能が可能になるということで、補完的に参加できていくものでありますので、そういう意味ではそのごく一部の不可能ができるようにするためには、今のスパコンでの不可能のたくさんの不可能をリストしながら、これがもしかしたら量子コンピュータでできるかもしれないということを挑んでいくのが今の私たちの研究ですので、それの実態を私たちは知っているだけに、その辺のところを上手に理解していただきながら進めていただければと思います。
【佐藤副センター長】はい、了解しました。
【藤井主査】棟朝委員、お願いします。
【棟朝委員】棟朝です。
  私はどちらかというと最適化のアルゴリズムの専門家としての質問ですけれども、今回  どういうアルゴリズム的な想定とか、そのアルゴリズムの関係の研究者等々との連携体制はどういうふうになっているのか教えていただけるとありがたいです。
【佐藤副センター長】まず、このNEDOのプロジェクトに関して言いますと、一応有効性を検証しなさいというところのお題がありまして、我々も非常に検討しました。その中でこれだったらいけるだろうというものは量子ダイナミクスの計算で、それは最適化というよりも、量子コンピュータのユニタリ変換を使って、中にモデル的に量子状態をつくってダイナミクスを計算するという形で、それであれば真面目に計算すると無限大の計算がかかるのに、量子コンピュータでやると十何時間でできるとか24時間でできることは大体目に見えていますけれども。具体的にNISQマシンですので、できるところは棟朝先生の領域では我々はQAOAという、バリエーションのようなアルゴリズムとして量子最適化解を求めていくのが中心となっておりまして、トラベリングセールスマンとか因数分解とか、あっちの非常に期待されている量子コンピュータのアプリケーションはNISQマシンだとかなり難しいところなので、それはもう少しFTQCが出てこないとそこまでは行かないかという状況かと思います。
【棟朝委員】どうもありがとうございます。引き続き御検討をよろしくお願いいたします。
【藤井主査】ほかいかがでしょうか。残り時間も僅かになってきましたが、よろしいですか。
【松岡センター長】追加でよろしいでしょうか。
【藤井主査】どうぞ。
【松岡センター長】今、幾つか伊藤先生のお話とかございましたが、まずは今回量子コンピュータの実機だけではなくてシミュレータも導入。これは「富岳」上のソフトウエアシミュレータ、及びGPUベースのシミュレーションマシンを導入することも予定しています。これはアルゴリズムの開発が非常に大事というところで、かつ、今回はソフトウエアやプラットフォーム開発が主眼であって、量子コンピュータ自身をつくろうということではないので、そのソフトウエアやアプリケーションが産物となると。産物となったものはあまねく、HPCIのシミュレータを含めてHPCIのプラットフォームとして将来供給できるといいんじゃないかと思っております。
 最後になりますけれども、アプリケーション分野で、さっき量子ダイナミクスとありましたけれども、一番期待されるのは、それからさらに発展して量子の最適化を含めて量子化学に対するアプリケーションが一番期待するところです。これは実は先ほどスパコンの64ビットの演算がどうかという話がありましたが、これが疎行列だと別に1対1で演算ユニットは要らないので別にどうでもいいんですけれども、メモリバンド帯域さえあればハードウエア的にどうでもいいんですけれども。唯一あるのは量子化学における密行列の64ビットを高精度演算しなければいけない領域です。これがワークロードの今1割を占めるので、しかしここがまさに量子コンピュータで加速されることが一番期待されているところですね。
 ですので、もし今回このような話がうまくいきますと、将来64ビットの演算器のオキュパンシーを将来のスパコンから大分減らして、要するに流体とかはそれで十分必要な程度しか必要ないのでそれまで減らして、量子化学、物性の量子化学のアプリケーションを量子コンピュータでアクセラレーションする世界が将来展開するんじゃないかという期待も込めております。
【藤井主査】短期的な話から長期的な将来まで、かなりいろんな議論をしなければいけないので大変だと思いますけれども、ぜひ佐藤副センター長、よろしくお願いします。
【佐藤副センター長】よろしくお願いします。
【藤井主査】それではこの議題は終わりにさせていただきます。どうもありがとうございました。
 時間になっていますけれども、全体として委員の皆様から何か言いたいことが最後にあればお聞きして、事務局にお返ししたいと思います。特にないでしょうか。よろしいですか。
 それでは事務局にお返ししたいと思います。
 
 
事務局より、次回の開催予定について連絡を行い、藤井主査により閉会。
 

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