HPCI計画推進委員会(第53回) 議事要旨

1.日時

令和5年5月31日(水曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省17階研究振興局会議室(傍聴はオンライン会議にて参加)

3.出席者

委員

伊藤公平委員、伊藤宏幸委員、梅谷委員、小林主査代理、田浦委員、館山委員、中川委員、福澤委員、藤井主査、朴委員、棟朝委員

文部科学省

森局長、奥野審議官、坂下課長、工藤参事官、河原室長、谷本参事官補佐、関口専門職

オブザーバー

(理化学研究所 計算科学研究センター)松岡センター長、渡邊副センター長、井口副部門長
(理化学研究所 計算科学研究推進室)原室長、深萱室長代理、伊藤副主幹、嶋田調査役、岩崎副主幹、河林主査、細川主査
(海洋研究開発機構 海域地震火山部門・地震津波予測研究開発センター)堀センター長
(高度情報科学技術研究機構 神戸センター)森常務理事・センター長、塩原副センター長、斉藤部長、河合部長、齊藤部長、草間部長、内山部長、杉本室長

4.議事要旨

冒頭、研究振興局 森局長より挨拶があったのち、各委員から自己紹介があった。その後、各議題の報告、審議を行った。今期の委員については、参考資料1-1を参照。
 
 
議題1:「富岳」、HPCI 関係の最近の取組状況について
資料1について、事務局より説明があった。
 
【館山委員】  今回の「富岳」の次世代のところについてですが、量子コンピューティングもターゲットに入っているように見えるのですが、量子コンピューティングについてはこちらが主戦場として取り組まれるということでしょうか。それとも別の事業が何か走っていながら、こちらもやっているという感じでしょうか。
【河原室長】  量子コンピューティングについては、御案内のとおり理研で国産の実機を開発していたり、あるいはQ-LEAPというような国の事業なども走ってございますので、そういう意味では、研究開発部分については別の枠組みの中で進めています。
 今回この調査研究の中で量子コンピュータを取り上げているのは、将来のHPCとの接続の可能性がどの程度あるのかとか、実際に接続する際にソフトウェアを含めてどういった環境整備が必要なのかといったところを調査するというのが主眼になっております。
【館山委員】  ありがとうございます。
【藤井主査】  よろしいですか。ほか、いかがでしょうか。
【梅谷委員】  今回の説明にはなかったんですけど、大規模問題というんですか、「富岳」全体で1プロジェクト、1テーマ計算するみたいなことというのはどれぐらいやられているんでしょうか。
【河原室長】  年間数課題程度、ゴードン・ベル賞の前等に「富岳」全系計算というのを行っております。毎年定期的に募集をしているものと承知しています。
【梅谷委員】  4課題というふうに書かれているのは、全系でやるもののことを書かれているんですね。大規模連携課題。これはまた別で。
【河原室長】  はい。これはまた別の、成果創出加速プログラムの中で実施している事業として、分野間連携等を念頭に置いた大規模連携課題というもの新しく採択していることを私からは御紹介しました。
【梅谷委員】  でも、毎年4プロジェクトぐらいは全系で計算するものはある。
【松岡センター長】  もうちょっと。6ぐらい。あと半系とか3分の1系は常時やっていて。半系は毎月やっておりますので、かなり。
【梅谷委員】  かなり、そういう大規模プロジェクトというのもあるんですね。
【松岡センター長】  はい。
【梅谷委員】  分かりました。ありがとうございました。
【伊藤(公)委員】  先ほど量子との関係というのを説明いただいたので、私からも補足をしたいんですけども、私は現在、文科省の――内閣府ですね、これは正確には。内閣府の量子技術イノベーション会議の座長をしております。
 私の前の座長は、今、理研の五神真さんなんですけども、そこでは量子技術ということで、そこにフォーカスした研究の在り方というのを議論して、それが国の政策に反映されているわけですけども、基本的にその中で出てきている議論が、量子だけで単独でやっていても国の役には何も立たないということで、我々からも、あるときにスパコンの方々にラブコールを送り、できればスパコンの方々も量子の状況はフォローしていただきたいということで、あるときに、もしかしてスパコンの中の世界で、HPCIの世界で、シリコンチップの世界の中で、量子がもし役に立つことがあれば、それをどの国よりも早く採用していただければということでありますので、基本的に主戦場は、私の理解では内閣府等でついている量子技術イノベーション会議の下だというふうに私は思っております。
 量研室長の、前室長の河原さんもいらっしゃいますし、工藤さんも、そちらお顔が見えないですけど多分いらっしゃるんですよね。工藤さんや河原さんに聞いていただければ、それが正しいかどうか分かると思うので、よろしくお願いいたします。
【藤井主査】  補足ありがとうございました。
 
 
議題2:「富岳」・HPCIの運営について
資料2-1について、高度情報科学技術研究機構 森センター長より説明があった。
 
【中川委員】  丁寧な御説明ありがとうございます。産業利用が非常に進んでいるんだなというのを数値として実感できました。
 質問させていただきたいのは、先ほどファーストタッチオプションから有償課題に至る4段階の御説明がございましたけれども、222社のうち大体の割合というんですかね、この緑色の部分にとどまっている会社数、企業数、それから、有償課題まで進めた会社数というのがある程度分かりましたら、御教示いただけますでしょうか。
【森センター長】  今、即答出来かねます。御入用でしたらまた確認をして、後日御連絡差し上げたいと思いますが。
【中川委員】  はい。先ほどの説明で、有償課題は数社、1社とか6社とかという数字だったのに対して、222というのが非常に多いものですから、皆さんどの辺の段階でとどまっているのかなというのをお聞きしたかったということです。
【森センター長】  定量的なお話ではないんですけれども、ファーストタッチオプション、試行課題というものは、かなりパーセンテージとして大きな数値を占めているというふうに記憶してございます。
【藤井主査】  ということは、なかなか先に進んでいないという回答と思ってよろしいですかね。
【森センター長】  先に進んでいないというよりは、これから先に進んでいただけるのかなというふうに考えています。
【中川委員】  なるほど。弊社の場合にも、聞いてみると割に申請書の手間を障壁として挙げる研究者が多いものですから、先ほどの簡素化するというのは非常に歓迎されるというふうに思います。
【森センター長】  付け加えますと、ファーストタッチオプションというのは昨年の初めの頃から始めてございます。
 なので、そういった意味で昨年度かなりファーストタッチオプションを利用されている方は増えていて、それが試行課題であるとか、機動的課題というのに今後進んでいただけるのかなというふうには期待してございますが、そこら辺は様子を見る必要があるかと思っています。
【中川委員】  ありがとうございます。
【藤井主査】  そろそろ始まるんじゃないかと期待したいというところですかね。
【小林主査代理】  このクラウド利用、ユーザーの裾野を広げるという意味では大変結構だと思うんですけど、現状ではどういう形でリソースを確保されているんでしょうか。文科省の御説明にあったような棒グラフの中のどこか特定のエリアが、このクラウド利用に割り当てられるというイメージになるんですか。
【森センター長】  このクラウド事業者がどういった利用者を集めて、現行のどの課題の枠組みを使って進めるのが適切なのかというのを判断して、それにアプライをしていただくということで考えています。
 なので、定期募集の課題に応募される場合もあるでしょうし、比較的規模が小さな課題で随時利用したいということであれば随時募集課題にアプライしていただく、試行課題とかファーストタッチオプションにアプライをしていただく、または、随時性はやや薄れますけども機動的課題といったようなことに応募していただくということは、事業者が利用者と相談して申請いただくということになります。
【小林主査代理】  じゃあ、これまでの使い方の上の、インターフェースの部分を変えるというイメージですか。
【森センター長】  そういったことです。あくまでも現行制度の中でできるやり方ということで進めてございます。
【小林主査代理】  なるほど、分かりました。そうしますと、今のユーザーに対する利便性を高めるというイメージなんですね。新しく何か開拓するというより。
【森センター長】  はい。このクラウド事業者が、自社が持っている例えばアプリであるとかいったものを使いやすい形で「富岳」にインストールをして使わせるといったようなことも含めて、利用者にとって利便性の高いサービスが提供できる機会を提供しているというふうに理解しています。
【小林主査代理】  ありがとうございます。分かりました。
【藤井主査】  クラウド的利用というともっといろいろ幅広い考え方があると思うんですけど、ここでは共用法の枠組みの中でということで、こうなっているんだと思います。
 また、クラウドについては今後議論が多分出てくると思いますけれど、何かあればどうぞ。
【棟朝委員】  こちら、クラウド的利用というのを説明していただいて、大変優れた取組かなというふうに認識しております。
 もちろん、クラウドサービスといいますと多岐にわたるサービスが、膨大なものがございますので、その中でどこに絞って提供するか、すなわち共用法の制約下、並びに「富岳」の特色という観点で考えて、今回進めていらっしゃるということで、個人的には妥当かなと思いますけれども、もちろん今後どのように展開するか、これは予算も限られているので、何でもやるというわけには当然まいりませんので、その辺りを絞って、利用者並びに今後の研究開発の進展に最も役に立つ部分から進めていくということなのではないかなと理解しております。
【藤井主査】  ありがとうございます。
 クラウド以外も含めて、いかがでしょうか。
【田浦委員】  今映していただいているスライド(9ページ)の4ポツ目のところなんですけども、ちゃんとこの言葉で理解できたか分かりませんが、要するに問題になっているのは、資源を一括購入したいと言っている意味は、事業者が一回、このぐらいの支援が必要ですというノードアワーを割り当てて、個々の利用者は申請書とかを書かなくても、その事業者が利用者を決め事業者経由ですぐに使えるというようなことをしたいということだけれども、それは問題があるという話でよろしいですか。
【森センター長】  はい、そういうことです。
【田浦委員】  でも、利用を広げるとか敷居を低くするという意味では、その意見は分からないではないと思うんですけど、今推進したいと思っている、例えば理研さんとかは推進したいと思っているのか、その辺は。
【松岡センター長】  クラウドは、さらに今回広いことをやっているので、クラウドというのはこれだけというふうに思っていただきたくはないというのがありますので、より広いスキームでやっているというあたりは後ほど御説明したいと思います。
 というのは、このスキームはRISTの御指摘のとおり、これだけでは問題が多いので、それを回避というよりは、よりクラウドの積極的な展開というのは、後ほど御説明したいと思います。
【藤井主査】  今後大事な議論の対象になってくるのではないかなというところですか。
【松岡センター長】  これ自身もですね。つまり、これは共用法とも絡むので、どこまでこういう形態の利用を許すかというのは、いろいろ、むしろこのような委員会で御議論いただくのが大事ですから。
 ただ、申し上げたいのは、ほかのいろんなクラウドの話もあるので、それらと総合的に考えていただければ大変幸いかと思います。
【藤井主査】  ほか、いかがでしょうか。よろしいですか。
 私から一つ二つ。4ページですかね、HPCIの利用の拡大で、一般的な話ですけど、大きな意味で、「京」の時代と比べて、「富岳」の今の状況で、この利用の割合って何か大きく変化した部分はありますか。それとも、大体同じような割合で推移してきているのでしょうか。ざっとした話で。
【森センター長】  分野別の割合のことでしょうか。
【藤井主査】  そのとおりです。
【森センター長】  右側の円グラフのことですね。
【藤井主査】  そのとおりです。円グラフの割合の話です。
【森センター長】  分かりました。これについては、そう大きな変化は「京」のときからないというふうに理解しています。
【藤井主査】  分かりました。いいことでもあるし、何か変化がないのも残念な気もしますけど。何となくライフが増えたかなという気もするんですけどね。そんなことないですかね。
【松岡センター長】  ただ、企業ユーザーが入っているケースというのは、「京」の時代は4割以下だったんですけど、今は6割以上、68%ですかね。
【藤井主査】  企業も参加している課題が多いということですね。
【松岡センター長】  ということです。
【藤井主査】  ありがとうございました。
 あとは、マシンが替わったときの最初のところの利用が、どうしてもなかなかすっと入らないので、次のマシンになったときも、そこをうまく考えていかないといけないかもしれないですね。あらかじめ準備してかからないといけないような印象は、先ほどの5ページですかね、ここの説明で何となく感じました。
 
 
資料2-2について、理化学研究所 計算科学研究センター 松岡センター長より説明があった。
 
【藤井主査】  ありがとうございました。
【棟朝委員】  どうも御説明ありがとうございます。
 AI for Scienceというところで非常に重要かと思うんですけれども、その場合、既存のシミュレーション的なワークロードとAIとの連携について、多分幾つかの考え、シナリオがあると思うんですけども、統合的に「富岳」もしくはポスト「富岳」の中で一緒に実施する場合、実行する場合、もしくはシミュレーション的なものは「富岳」で、AI的なものはAIスパコン的なもので、HPCIで密に連携したものでやると。
 疎結合の場合は、極論すると例えばパブリッククラウドのAPI等を相互連携して使っていく。特にサロゲートモデルであれば、タイムスケールがそれぞれのワークロードで全然違いますので、その辺をどうコントロールしていくかも含めて全体を考えていく必要があるかなと思っておりますけれども、現状どういうふうに考えていらっしゃるか。
【松岡センター長】  おっしゃるように、いろんなケースがあると思うんです。実際、今日御紹介した何十倍もそういう事例はありまして、AIと、ハイエンドのAIがサイエンスに適応、AI for Scienceの事例というのは我々は20も30も持っていまして、今日は二つ三つしか御紹介していませんけども、それぞれにおいて様々な形態がございます。
 こちらのAI for Scienceを、総合的に、今、俯瞰しなくてはいけないと申し上げているのは、サイエンスのコミュニティーからそういう事例というのがボトムアップにいろいろ出てきているんです。それでもちろんいろんなAIもあるし、いろんなシミュレーション、AIだけの場合ももちろんあるわけです。例えば生成AIでどんどんやっていくという話もありますし、シミュレーション、サロゲートでくっつくとかいろんなタイプのものがあって、それによっていろんなマシンの使い方だとか、いろんな分野でいろんなことを考えている。
 そういうのは全部、しかしボトムアップに今できているんです。どんどんイマージェントで出てきています。実際にすごい成果が出てきているので、そろそろそれをきちんとトップダウンに、逆にいろんな分野でこういうグランドチャレンジ問題があって、AIを適用したらどうなるか、それによって、今、棟朝先生がおっしゃったように、どういう形でどういうAIがどういうインフラの上で適用されていくかという、そのシナリオをずっと同定していく。その作業が非常に大事だというふうに思っています。
 ですから、まさにそういうことを行っていくというのが、AI for Scienceを我が国が推進していくときに、今最も重要な時期じゃないかというふうに思っております。
【棟朝委員】  ありがとうございます。今後、HPCI全体、「富岳」に限らず、その計画に影響するかと思いますので。
【松岡センター長】  はい。もちろん「富岳」だけじゃなくて、そうですね、HPCI、こちらの計算ロードマップもHPCI全体の作業でしたので、もちろん、全体でやっていくべきだと思います。
【棟朝委員】  ありがとうございます。
【中川委員】  今の質問にも若干絡むんですけれども、メインには、AI for Scienceってやっていくためには、クラウドと「富岳」的なもののハイブリッドというのが絶対必須になるんじゃないかと。
 例えばLLMに関しても、既に世の中に定評のあるLLMはたくさんあって、それを調整することで自分たちの研究に生かすというようなことが、結構もう盛んに行われています。
 だから、LLMもゼロから「富岳」でつくりますというのももちろんチャレンジングでいいと思うんですけれど、そういう意味でいうと、ハイブリッドでデータも流通できますとか、LLMもどこからでも持ってきますというふうな、そういうプラットフォームが望まれるんじゃないかなと思うんです。
 15ページを見ると、最初にSaaSでバーチャル「富岳」を開始しますというふうな御計画で、これはこれで非常に期待が持てるんですけど、こういったところに、そういったAI for Science的なアプリケーションというのをいち早くSaaS的に出していただけると、すごく産業界としては、LLM、結局みんな今、日本リージョンでほとんど使えないので、外に、海外のリソースを使いに行っているんです。
 なので、そこのところが解決されるので、すごくデータの海外移管みたいなことがなくなるのでいいんじゃないかなと思うんですが、いかがでしょうか。
【松岡センター長】  まず前半の話ですけど、このGPT Fugakuというのは、もちろんスクラッチからもトレーニングするような能力を獲得する必要は、もちろんそれなりに大事なんですけども、実際にLLMの形成過程というのは、まずはプリトレインドモデルをつくって、さらにそれを特定のデータセットでファインチューニングをする。さらにそこに、例えば人間も含めた強化学習を行うとか幾つかのフェーズがあるわけですが、特にサイエンスだとか産業応用で今話題になっているというのは、その2番目のフェーズから3番目のフェーズなわけです。
 つまり、例えばLLaMAみたいなパブリックモデルがあって、それに対して、例えば日立なら日立がお持ちのデータセットでやる。そうしないと、日立がそういうオープンAIみたいなところでやると、どんどんオープンAIに全部漏れちゃうから、だだ漏れになっちゃうからという話ですよね。
 ところが、そこの過程、つまりプリトレインドモデルをゼロからつくるのと、途中から追加学習するというのは、結局同じことをやる。結局同じなんですよね、やることは。
 なので、大規模な学習する能力というのをそもそも持っていないといけないというのがあるので、スクラッチからつくることはいたしますけれども、多分フォーカスするのはどちらかというと、結局同じことですから、追加学習を効率的に行って、その後の工程も有効に行えるということも含めてのGPT Fugakuです。
 それで、我が国がそういう技術すら欠けているというのが現状の問題意識でありまして、それが我々を含む日本が獲得していくと、今度それをさらに展開していくと。それはもちろん「富岳」だけではなくて、クラウドだとか、よりそれに適したマシンだとか、そういうインフラストラクチャーが日本でもよりロバストに、広範にできてきて、そういうところで学習が行えると。それは研究レベルではもちろん公的なものが必要ですし、民間の場合は民間がやると。
 重要なことは、そういうときに、また囲い込みだとか、環境が全然違うとか、そういうのはよくないので、なるべくクラウド技術や仮想化技術や、「富岳」の環境を生かしながら、なるべく日本の場合は特定のクラウド業者とかオープンAIとかにbar inするのではなくて、なるべく共通化した環境をつくっていくというのが一番大事だと思っていますので、それはまさに民間とスパコンセンターとか公的機関が協働して、そのようなプラットフォームをつくっていくのが非常に大事だというふうに思っています。
 我々は、そのいろんなところを幾つかの、バーチャル「富岳」もそうですし、この話もそうですし、いろんなところをやっていて、民間とも積極的にやっていくというところであります。
【中川委員】  ありがとうございます。まず、プリトレインドではなくてフロムスクラッチでというところは、筋力をつけると。筋力をつけたら、いろんなところにプリトレインド、ファインチューニングだけとか、そういったカスタマイズにも効いてくるから、そういうところをまずやっていきますと、そういうお話かと理解いたしました。
【松岡センター長】  そうですね。カスタマイズはプリトレインドと基本的には同じ能力を持っていないとできないので。
【中川委員】  そうですね。非常にそういった、「富岳」だけではなくて第2階層を含む、そういったところと連携して、日本ならではのLLMができるとすごくいいかな。日本のサイエンスに向いたLLMができるといいかなというふうに思います。
【松岡センター長】  そうですね。今の大規模な、例えば将来、もし1兆規模のモデルが出てくるとすると、メモリーだけで、要するにテラバイト級になるわけですよね。
 テラバイト級の並列トレーニングをしなきゃいけないというのは、これは非常にアルゴリズム的に難しい。目方もあるんですけど難しいので、そういう技術というのがちゃんと日本が獲得していかないとできないし、それに適したマシンが、「富岳」もできるんですけど、ほかにもそういうインフラができていくのは非常に大事だと思います。
【中川委員】  ありがとうございます。
【小林主査代理】  私も、古典という言葉は嫌いなんですけど、古典と量子のハイブリッドというのをやっているものですから、これに興味があるんですけども、これは国産古典スパコン、国産量子コンピュータということで多くの方が興味を持っていると思うんですけど、これ、一般公開的な利用はできるんですか。
【松岡センター長】  はい。その方向で考えてございます。ですので、幾つかの量子コンピュータと、幾つかのシミュレーターと、あともちろんクラシカルというか、HPCのスパコンと全部合わせて、かつ、これが先生のおっしゃるように、それが我が国にプラットフォームとして普及して、アルゴリズムを開発している方々とか実験をされる方々に広く提供されると。それはまさにスパコンがふだん提供したのと同じモデルですので、そういうものをつくって広く公開するのが目的です。
【小林主査代理】  ぜひいろんな人に使ってもらって、面白い成果が出てくることを期待しています。
【松岡センター長】  難しいですが頑張ります。
【小林主査代理】  国産量子コンとか、興味ありますので。
【松岡センター長】  国産も何種類か入る可能性が高いので、そうなると、国産もあるし外国産もあるという感じになると思います。その場合は。
【小林主査代理】  この「古典」という言葉は、松岡先生的にはオーケーですか。私はいつもこの「古典」という言葉に引っかかるんですけどね。古典力学と量子力学のあたりから来ているんだろうと思うんですけど。
【松岡センター長】  いや、おっしゃるとおり僕も嫌いで。つまり、量子コンピュータはすごく得意なところと非常に不得意な部分があるので、むしろ全体のワークフローで見れば不得意なところが多いわけですよ。
 だから我々は「ハイブリッド」という言い方を極力するようにしています。
【小林主査代理】  そうですよね。私もそう思います。すみません。
【梅谷委員】  それに関連して。これ、量子コンピュータのところに行くと、もうほとんどの人が未経験だと思うので、それこそファーストタッチだとか教育だとかというところがなければ、使ってみようにも、興味があっても使えない。ハードルが高過ぎるというところがあると思うんですけど、そういうことも併せて用意されるということですか。
【松岡センター長】  それはおっしゃるように、実は我々だけではなくて、例えば幾つかの今、量子系のプロジェクトがございますし、理研の中でもほかのセンターもございますし、我々がそういうアクティビティにも関わっておりますので、コミュニティーとして、おっしゃるようなトレーニングとかチュートリアルだとかそういうものもつくっていて、コミュニティーとして活動していくような体制をつくっています。
【梅谷委員】  今ちょうどいろいろある、大阪大学とかいろいろあるコミュニティーが中心となってやっていただくみたいなことになっているんですか。
【松岡センター長】  はい。当然阪大とも。あと東大とか、幾つかございますが、そういうところにも実際にかなり深く絡んでいるので、そういうところと一緒にやっていきたいというふうに思っております。
【梅谷委員】  分かりました。
【藤井主査】  「富岳」・HPCIの運営というテーマですので、一応それぞれ、RISTさんと理研さんの活動についてはこういう方向で進めてよろしいということで、皆さん反対はないかと思いますが、よろしいですね。
 
 
議題3:「HPCIシステムの今後の在り方」に関する調査検討(中間報告)
資料3について、「HPCIシステムの今後の在り方」に関する調査検討WG 堀主査より説明があった。
 
【藤井主査】  ありがとうございました。
 中間報告ということですが、委員の皆様から何か意見があればお聞きしたいと思います。いかがでしょうか。
【伊藤(宏)委員】  今書いてあることはもっともなことが書いてあるんですけど、例えば検索エンジンが実用化に至って普及するスピードに比べると、例えば生成AIなんていうのは、もうこの数年の間にそういったレベルに達しているということになると、大規模な計算環境を考える上では、次とか、あるいは次の次とか、またその次ぐらいのことを検討しておかないと時代遅れになるのではないかなという懸念があるんですが、その点いかがでしょうか。
【堀WG主査】  まさにおっしゃるとおりですね。そういったところをどうやって検討していくか。そういう意味ではFSのヒアリングだけではなくて、もっと広いところでの検討等をしていかなきゃいけないということですね。
 その辺は、すみません、これまでまだ全くそこまでの検討をしてきていなかったので、どういった形でそういったところを検討していくのがいいか、もしサジェスチョンをいただけるとありがたいなというところですけど。
【松岡センター長】  ただ、一つだけ申し上げると、例えば2017年にトランスフォーマーとしてバートが出てきてから、今の例えばGPT-4までに、5年強で大体100万倍ぐらいになっているわけです。その間、HPC、スパコンのトップの計算パワーというのは十数倍ですので開きがあるんですけど、でも、じゃあそれが続くかというとそうではないわけですよね。
 というのは、今は実はもうどこも、グーグルだろうがオープンAIだろうか、みんな実はトップスパコンを持っているわけですよね。例えばグーグルは2万6,000GPU、H100だとか、みんな同じようなトップスパコンを持っていて、これからは実はトップスパコンの進化にみんな律速されるんですよ。なのでGPT-5は出てこないって言われているんです、そう簡単に。
 ですので、実はHPCの、我々の予測していた予測法というのが、これからむしろAIのほうがそれに従わなきゃいけなくなるので、我々の予測技術というのはそんなに外れないというので、自信を持ってよいかとは思います。
【藤井主査】  その辺もコンソで議論いただければと思います。
 長期的なところというのは確かに大事ですね。
【松岡センター長】  そうです。今、多分AIトレーニングマシンとして世界最高性能を持つのは、今度アルゴンヌで上がる「オーロラ」ですね。あれがFP16、16ビットのトレーニングに使える演算精度ですと50エクサぐらいなんです。なので、それだと何ができて、どう進化していくかというのは一つの基準になるとは思います。
【堀WG主査】  ありがとうございます。
【藤井主査】  ほか、よろしいですか。
【朴委員】  まずロジスティックスの確認ですけども、私も理事長のときにこの提言の取りまとめを副理事長の方に依頼して、議論に参加したんですけれども、今お話しされたのは令和5年度の方針なので、令和4年度の提言というのは、この間の総会で承認されて文科省に渡されているんですか。
【堀WG主査】  いえ、一番最初に冒頭に申し上げたとおりでして、提言のまとめのところまで至らなかったんです、令和4年度に関して。ですので今回、報告書の中間まとめとして御報告したという。
【朴委員】  ということは、今回は令和4年度、5年度に。
【堀WG主査】  併せたもので。
【朴委員】  併せて令和5年度の、終わって実際には令和6年度の初めに手交するという、そういうことなんですね。
【堀WG主査】  そうなります、はい。
【朴委員】  分かりました。実はそれはあまり責められる話ではなくて、というのは、結局マシンをつくって、例えば「富岳」をつくるとかというときの提言にはいろんなことが入るんですけれども、今はある意味端境期みたいな状態に恐らくなっていて、そうするとかなり一般的な話を取りまとめているというところで、そういう流れなのかなというふうに理解はします。やった身としては、そこは理解できます。
 それで質問は、9ページにコデザインのことを書かれていて、コデザインはもちろん一番重要な項目の一つですけれども、「富岳」のときに絞り込み過ぎたんじゃないかということをおっしゃった気がするんですけども、逆に「幅広いアプリ」というのが赤字になっていますけれども、いろんなアプリケーションをやみくもに突っ込むと、コデザインって成り立たない。
 つまり、コデザインというのは、ハードウエアから見たら最低限、特に重要なソフトウエアのどこを拾い上げるから、これは死守しなきゃいけないパラメータラインであると。ソフトウエアから見ると、もうハードウエアの限界がここにあるので、それに合わせなければ、あるいはアルゴリズムからも考え直さなければ駄目だということを突きつけられるという、私はコデザインって忍びの場だと思っているので、「幅広いアプリを対象に」にというのは、もちろん、「富岳」は9大アプリ、9つの重点分野があって、9大アプリありきで話しましたからああいう形になって、そうすると当然、手が回らないところが出てきたわけですけども、結局はコデザインをやるときに絞り込みはせざるを得なくて、最初のスタート地点をまずいきなり重点分野で9つのアプリということじゃなくて、もうちょっと広く、まず絞り込みの候補を考えましょうということであればいいんですけれども、その辺はいかがなんでしょうか。
【堀WG主査】  ありがとうございます。おっしゃっていただいたとおりで、このFSの段階ではあまり絞り込まずにというところの意味で、ここでは書いています。
【朴委員】  ただ、今、FSのPDとして見ていますけれども、結局だから、「富岳」よりさらに一段進んだ厳しさが待っているわけです。FSの段階で絞り込まないということになると、FSは最終的にこういったデザインのものでこういうようなパートナーとつくっていくんだというのを、最終的に取りまとめてやるので、今年度はそれだけど、来年度はやらなきゃいけないという話なら分かるんですよ。来年度はFS最後に報告書をつくらないといけないので。
 ですから、最後までオープンにしておきますということだと、FSの最終形とかみ合わない気がして心配ですが。
【堀WG主査】  分かりました。そういう意味では、ここできちんと書けてないんですけども、結局トレードオフがいろいろあって、性能が出やすい、出にくい、いろいろアーキテクチャによってもアプリの組合せであると思うんですけども、それが実際問題、ハードウエアとしてはもう「富岳」のときでも厳しい状況になっているというのは、アプリの方々もある意味覚悟はしているところですので、むしろ、こういうアプリの場合にはこの部分で工夫が必要になるとか、そういったことをできるだけ、ここは難しいですよということも含めて明確に出していただきたいという意味で、このアプリに対してはとにかく全部性能出ますよ、みたいなことを決して求めているわけではなくて、むしろできるだけ幅広いハードウエアの検討もされた上で、ここの部分はいろんな理由でこういう範囲の中に絞られて、そうすると、その範囲だとこの系統のアプリだったら性能が出るけども、この系統のアプリではこういう部分で難しいところが出てくるので、ここはもう根本的にアルゴリズムを考えなきゃいけないとか、そういったことの検討が必要なんだということの明確化をやっていくとありがたいなと。
【朴委員】  おっしゃるとおりだと思います。
 最後に一言は、キーワードは計算科学ロードマップだと思うんですよ。つまり、やみくもに、もっと10倍の性能が欲しいですというだけじゃなくて、何をやるから、ここのところだけは犠牲にしない、こういうパラメータがないとこのチャレンジができないんだというような、かなり突っ込んだところでアプリケーションってやり合わないと、何となくシャンシャン的な話でまとまって、あまり主張とか厳しい部分が見えないような甘い話になりがちなので、その辺はぜひ頑張っていただければと思います。
【堀WG主査】  ありがとうございます。ロードマップに関して一言だけ。こちら、それこそ私も直接関わっているところですけど、まとめが遅れているんですけれども、FSで実際関わっているアプリの方々とも協力をして、新しいほうのロードマップをまとめるということで今進めていますので、そういったところで。
【朴委員】  はい。ぜひ、計算科学ロードマップに期待していますので、よろしくお願いします。
【堀WG主査】  ありがとうございます。
【藤井主査】  今日の情報は、次世代のFSのディレクターが3人ともメンバーに入っておられるわけですが、この辺の情報は既に皆さんにも入っていると思ってよろしいですか。
【朴委員】  各チーム、特にシステム側の2つのチームから来ているアプリの話はあるんですけど、それと、HPCIコンソがまとめているこの提言とかロードマップとかと、必ずしもまだすり合わせができていないという印象ですけれども。
【藤井主査】  先ほどあった、どこかでタイミングがありますね。そこで議論していただくということでよろしいですかね。
【堀WG主査】  そうですね。今後、今年度そういった議論の場をしたいという話をしているところです。アプリの取りまとめをされているFSの方と、しっかり協力していきたいと。
【小林主査代理】  私もこの調査検討WGにもいますし、PDにもいるんですが、結局のところ、先ほどのAIのお話じゃないですけど、システムが結局はアプリケーションのサイズを決めていくような時代に入るわけで、ですので、アプリケーションドリブンにするかアーキテクチャドリブンにするかというところが、非常にいつも対立軸として議論に上がっているわけですので。
 HPCIコンソーシアム的には、いろいろアプリケーションの方がたくさん参画しておりますし、それぞれ期待しているところがあるので、なるべく多くのアプリケーションがうまく動くようなシステムをということになるかと思います。
 その一方でFSでは、技術的な制約でつくれるものしかつくれないじゃないですけど、どうしてもそこに制約が出てしまう。
 ですので、もし可能であれば、設計空間というかパラメータを振っていただいて、どういうマップでアプリケーションがうまく動くかというような、トレードオフを見せるような絵を示していただけると、例えばここは国で、今のフラッグシップでやるけど、ここの部分はもっと違う予算でつくってみようかとか、そういうデータ的な価値が上がるんじゃないかなというふうに思って、FSを見ております。
 そんなところです。
【藤井主査】  周辺情報というか、付加情報みたいなものがきちっと出されているということが大事ですね。
【小林主査代理】  そうですね。ピンポイントじゃなくて、広がりを持ってフィージビリティスタディーをしていただくと、アプリの人も納得するんじゃないかなと。
【藤井主査】  はい。なかなか、希望はね、幾らでも出ちゃうので。ありがとうございました。
【堀WG主査】  どうもありがとうございました。
 
 
議題4:HPCI 計画推進委員会における検討事項について
今期のHPCI計画推進委員会における検討事項について、質疑応答があった。
 
【藤井主査】  この委員会で検討する事項について、最初のお話の中に資料がありましたが、これに加えて、何かここはぜひ議論すべきだということがあればお聞きして、この議題4は閉じたいと思います。いかがでしょうか。何かありますか。大分網羅されている気がしますけど。
 見ていただいて、ここに書いてあることに対してコメント等あればお聞きしてもいいと思いますが、いかがでしょうか。
【松岡センター長】  AI for Scienceというのが、もしあれば。
【藤井主査】  ここには何という書き方……AI系のところは何と書いてあるか。
【松岡センター長】  明示的にないので。
【藤井主査】  確かに書いてないか。
【松岡センター長】  理研からの希望でございますが、もしよろしかったら。
【藤井主査】  はい。どうでしょうか。よろしいですか。
 これ、委員の皆さんに聞かなきゃいけないんですけど、入れるということでよろしいですかね。大事なところではあるので。
【河原室長】  中身的には政策枠の中で大規模言語モデルの取組も新しく開始していますし、これまでのHPC分野での蓄積や今後の発展もありますので、それらの中で具体的な取組を取り上げられればよいかと思います。
【藤井主査】  よろしいですか。
【小林主査代理】  ちなみに、今のは現行の「富岳」の利用拡大ということ。
【松岡センター長】  そうですね。FSという観点からすれば、もちろん将来に対応するマシンを、より対応するマシンをつくっていかなきゃいけない。ただ、今の課題でもありますので、両方ですかね。
【藤井主査】  よろしいですか。ほかになければ、議題4はこの方向で、今回の計画推進委員会は以上にさせていただきます。
 
 
議題5:その他
全体を通しての質疑応答があった。
 
【藤井主査】  全体を通して御質問、コメント等あればお聞きして、なければ事務局からの事務連絡に移りたいと思います。
 特によろしいですか、その他として何か。
【河原室長】  1点だけ。先ほど中川委員から御指摘ありました産業界の利用件数の内訳についてですが、産業試行課題ファーストタッチオプションについては、今調べた限りでは昨年度33件で、今年度が12件となっています。昨年1月からこの制度をスタートしていますので、今年度はまだ始まったばかりで12件ですが、着実に件数は伸びています。
 ただ、企業の重複もありますので、具体的な数字の内訳については後ほどRISTに確認しまして、改めて委員の皆様に御提供したいと思います。
 ファーストタッチオプションから実際に試行課題等に移行するようなところも出てきていますので、そういったところも見える形でお示ししたいと思います。
【藤井主査】  よろしくお願いします。どうぞ。
【小林主査代理】  先ほど電気代が大変だということで3分の1止めたとかいう話でしたけど、これは今年度は改善されるんですか。
【松岡センター長】  今年度は多分大丈夫だと思っております。
 細かいことをやっているんですけど、基本的に今年度は。ただ、また電気代がさらに倍になったら別ですけど。
 今の状況、実は理研はそういう電気代の予測なんかもやっていまして、SPring-8とかですね。そういう予測を全部合わせますと、今年度は何とかなる。
【小林主査代理】  予算的な手当もあるというような。
【松岡センター長】  そうですね。ただ、再来年それがそうなるかというと、そういう保証はないので。
【小林主査代理】  ユーザーの皆さんはそれを覚悟して課題申請するとか、そういう状況にあるんですか。
【松岡センター長】  今年はインセンティブを、要するにエネルギーを節約していただいたユーザーの方々にはインセンティブを与えるという方向性で、今やっています。つまりプライオリティが上がるとかですね。
 そういう、だんだんユーザーも省エネの癖をつけていただくということをやって、コミュニティーとしてカーボンニュートラル目指していくという方策がまず第一に。予算とかももちろんございますけど。
【小林主査代理】  頑張ってください。
【藤井主査】  最後、事務局から事務連絡をよろしくお願いします。
 
 
事務局より以下の連絡をしたのち、藤井主査により閉会。

  • 本日の議事について議論が足りない点やご意見がある場合にはメールにて事務局まで寄せていただきたい。
  • 次回日程については、別途調整を行う。

 

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