HPCI計画推進委員会(第32回) 議事要旨

1.日時

平成29年4月26日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省17階研究振興局会議室

3.出席者

委員

西尾主査,伊藤(公)委員,伊藤(宏)委員,梅谷委員,大石委員,小柳委員,喜連川委員,小林委員,土井委員,中川委員,中村委員,藤井委員,安浦委員

文部科学省

関研究振興局長,原参事官,工藤計算科学技術推進室長,澤田参事官補佐

オブザーバー

(理化学研究所計算科学研究機構(AICS))
平尾機構長,岡谷副機構長,庄司運用技術部門長
(高度情報科学技術研究機構(RIST))
関理事長,平山センター長

4.議事要旨

原参事官より挨拶

(1)「京」を中核としたHPCIの今後の在り方について
事務局より資料1-1に基づき説明。
RISTより資料1-2に基づき説明。
AICSより資料1-3,1-4に基づき説明。
質疑応答は以下の通り。

【西尾主査】  先ほど室長から御説明がありましたように,資料1-1で,評価項目1が科学的意義,社会的意義,評価項目2が「京」の必要性,評価項目3が計画及び体制の妥当性等ということで3つの柱がございます。
 この柱がこれで妥当なのかということについては,平山センター長からもそれなりの評価をした御報告がございました。その上で,例えば科学的意義と社会的意義が1つの項目の中に入っていることで,本当に十分な評価ができるのかということ,また,評価項目ごとのウエートがほぼ均等になされていますけれども,それで良いのか。特に,新規ユーザーをどう増やしていくのかということや,日本におけるHPCIの利用をどう拡大していくのかということに関しては評価項目と密接に関連しており,いろいろ御意見等を頂けたらと思っております。その上で,今後,早急に反映したいと思っています。
 評価項目だけでなく,今,御説明いただいたことに関しての御意見や御質問もありましたら,よろしくお願いいたします。ただし,RISTの方から説明がありました新たな計算アーキテクチャの対応なのですが,これは後半の課題のところで関連するプレゼンテーションしていただいた上で議論を深めたいと思います。御意見等ございますでしょうか。
【小柳委員】  今の評価項目でございますけれども,私も初代の課題評価委員をやらせていただきました。そのときは「京」の必要性という点では,「京」でできるでは駄目で,「京」でなければできないというのに高い点を付けるというふうにやってまいりました。その理由は,初期には「京」が日本における最高性能のマシンであったわけで,従ってそれを細切れにして小さなジョブに分けたのでは「京」を作った意義が十分発揮されないということで,そういう方針でもありました。ただし,先ほどからお話があるように,現状まで来ますと,この項目の考え方を少し考え直さなければいけない。となると,例えば先ほどから議論にありますように,「京」の特長を生かしているかと。例えばバンド幅とかユニフォームなアーキテクチャとかそういうことをやって,少しこの部分については,審査する場合でも,あるいは申請書を書く方へのガイドラインとしても,この辺を十分新しい時代に合わせていく必要があるんじゃないかと思っております。
【西尾主査】  今の御指摘は非常に大事なことかと思います。むしろ特長を生かすというところを今後考えていくということですが,そのような方向性を出していくということでよろしいですか。
 ほかに御意見等ありますでしょうか。どうぞ。
【大石委員】  この選定の方針というのは,かなり運用された上で出てきているので,当然引き継いでいくということの上で,1つは,科学技術を推進するときに,日本のステータスみたいなものがどう出てくるか。先ほどの利用報告書の引用件数というのがそれに当たるとは思いませんけれども,世界からどのぐらい注目されるアプローチをしているかというのだと,やはり今,小柳先生おっしゃったように,新しいサイエンスを作るというようなこと,あるいは社会基盤の中に十分溶け込んだシステムを作るとか,世界でやっているということの中で日本の特徴をどういうふうに出すかという面も若干あった方がいいような気がします。割と後追いが多くて,データ同化とかというのも日本の中で出てきたキーワードなのかとか,AIといっても日本がブームを作ったのかとか,そういう観点から見ると,そういう先進性とか,あるいは社会基盤を作る中での先進性でもいいんですけれども,そういう観点が若干は入ってくる必要があるんじゃないかと。
【西尾主査】  それは特に「京」においてでしょうか。
【大石委員】  「京」も含めてという形になると思います。
【西尾主査】  それに対して何か御意見ございますか。平山センター長あるいは平尾先生,いかがですか。
【平尾機構長】  発言させてもらってよろしいですか。今,評価項目が3つございますが,これまでどちらかというとかなりイコールウエートで選定されてきたんだろうと思います。私は個人的には,1の科学的な卓越性とか,あるいは社会的なインパクトがどれだけあるかということを非常に大きく,それを中心として選ぶべきだと思っています。同時に,これだけHPCが発達して,発達したことによって出てくる新たな分野がやっぱりあるわけです。例えば非線形な現象とかケイオティックな問題も扱えるようになってきた。そういうものは萌芽的なものですが大事にする,そういうことが重要じゃないかという気がします。
【西尾主査】  それは大石先生のお考えと方向性には一致しているということでよろしいですね。
【大石委員】  社会的意義ということで,天気予報とか,十分社会の中に機能しているというのがすごく重要なので,今までの方針はとてもいいと思うんですけれども,やはり追求していく中で新しいものが出てくるという,社会的意義の追求でもいいんですけれども,そういう成果を上げながら本当に世界から注目されるような実績を上げていく時期になるのかなと思うので,そこのところを十分に配慮するようにする。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。
【安浦委員】  今のお話とつながるのですけれども,今,平尾機構長がおっしゃったように,科学的意義を追求するのは非常に大事なことだと思います。平尾機構長の資料1-3の最初のページに,ビッグコンピューティングで演繹的・帰納的という形で書かれて,データ同化という話に次に持っていってあるのですけれども,今のデータ同化というのは,あくまでも観測データを演繹的シミュレーションの中にそのデータの値を放り込んで修正していくということであって,決して演繹のベースになる方程式とか計算原理を修正していくというところまでは今の場合は行ってないわけですよね。本来は,演繹的と帰納的をいかに融合していくかというところが我々計算科学が目指すべき極めて大きなポイントになってくるんだと思うのですけれども,そういう視点での何か新しい取組みたいなものが生まれる可能性はございますでしょうか。
【平尾機構長】  今のところはこういう天気予報のことのデータ同化の経験ですけれども,もちろんビッグデータ,そういう観測データを取り入れることによって,次の推論をどうするかというアルゴリズムまで変える形で発展しております。ですから,単にもともとあったアルゴリズムそのものを,その推論にデータを活用するという形ではなくて,もっと積極的に両者が一緒になって新しいアプローチになっていくというのが現状でございます。
【安浦委員】  だから,そこのところをやはり一般の人にも分かるように説明するということが非常に重要で,これは科学的手法自身が変わるんだということなので,是非そこのところを強調していただければよろしいと思います。逆にそういうところを目指す研究に「京」をしっかり使っていっていただくというのが重要じゃないかと思います。
【平尾機構長】  ありがとうございます。
【西尾主査】  科学の方法論で第3が計算科学,第4がデータ科学ですけれども,更にその次に,それをベースとした新たな科学の方法論を日本が先導して提案していくということは,安浦委員おっしゃっているように大事なことだと思います。そのようなことを「京」をベースに展開していただくことをよろしくお願いします。
【平尾機構長】  分かりました。
【中川委員】  日立の中川でございます。「京」に関しての選択基準でちょっと気になりますのが,評価項目3aのソフトウェア準備状況のところでございます。ここに関しては,ある程度並列でちゃんと性能が出るということが十分に準備されていないと多分採択されなと思うのですけれども,産業系の利用者にとっては,要は,「京」で本当に性能が出せるかというところを事前に検証するところは結構敷居が高くて,そこのところが,どこか別のFOCUSとかであったと思うんですけれども,トライアルとかそういうところが充実してくると,新規利用者がもう少し増えるのかなと思います。
 ですので,この3aに関しましては,先ほどの「京」の特性を生かすというのが具体的にこの評価基準の中に,例えばXeon-Phiだったらどれぐらいの並列性が出るとか,何か手元で試せるプラットフォームでこういう特性のものがこれですよという具体的な指標ができてくれると,じゃ,「京」も使ってみようかと。今々ですと,やはり「京」というのは,入っていくのに,自作プログラムを扱っている研究者にとってもちょっと敷居が高くて,どうしても規模が欲しい,コア数が数万というふうなところが欲しいというのでチャンレンジという感じでちょっと障壁に見えておりますので,そういったところの御配慮もいただけると,産業界からの利用者が出るかなと思います。
【小柳委員】  今の産業利用のことですが,産業利用については最初から随時募集のトライアルユースという制度をやっていまして,今,中川委員のおっしゃったようにある程度気軽にテストできるような道を用意していました。その上で本格利用の方に進んでいただきたいということです。たしか最近は一般利用でもそれを始めております。これは,一般利用者からは,何でもっと早くやらないんだと大分文句を言われたんですが,産業界の方に重点を置くという意味で最初産業利用で始めた。そういうような,スーパーコンピュータを取っ付きやすくするというのは,産業界に限らず重要なことだと思っています。
【平尾機構長】  実はこの基準は,最初,「京」ができたとき,そして,スタートしたときの基準なんです。当初は,「京」ができて,やっぱりすぐさま本当に成果を上げようというところで3のような項目が入ったんですが,それからもう数年たちまして,日本の計算機というかHPC,本当に超並列の環境に皆さんもユーザーも慣れてきていますので,「京」でなければというか,むしろ3に相当するところは少し考え直して,新たに今の段階で現状を踏まえて基準を考えてもいいんじゃないかという気がしています。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。中川委員のご意見に関しましては,今までそれなりの配慮はされているものの,今後より重点的に考えることによって,産業界の新規ユーザーを増やすことをより強化していくことが肝要と思います。今,平尾機構長の方からおっしゃっていただきましたように,この項目については種々検討していくということでお願いします。
 どうぞ。
【梅谷委員】  産業利用の話が出たものですから。現行の選考基準はとてもバランスが取れた良い基準だとまず思います。基本的に必ず成果が出るような基準項目が全部バランス取れて入っている。ですから,ここから落とすということは,それに対する仕組みがやっぱり併せて必要になると思います。中川先生がおっしゃったソフトウェアの準備状況ということで,準備ができてなくても,やっぱり新規性とかがあれば参入できるということであれば,ここの部分を手厚くしなければいけないというのを併せて考えていただきたい。
 先ほどの御説明で,例えば産業界でよく使われている10個のソフトウェアのサポートは十分できているみたいな御説明があったんですけれども,僕は逆だと思っています。正にそれがこのソフトウェアの準備状況で,RISTで整備していただいたソフトウェアは使えるので応募できますが,準備できていないものが使えないので,結果的に利用の10大ソフトみたいなものがサポートできているという話になっていると思いますので,そこはやっぱり新規のソフトウェアの対応をどうするかという仕組みを是非考えていただきたいなと思います。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。では,その点,今後御配慮のほどよろしくお願いいたします。
【伊藤(宏)委員】  同じく産業界の話なんですが,先端サイエンスの部分で「京」をもって新しい知見が得られることは非常に喜ばしいことでございます。また,防災等で社会的意義が高いところを評価していただくのも非常にすばらしいことだと思うんですが,我々産業界が直面している問題ですと,例えば今のデータ活用とか計算機利用のミッシングリンクを自動化するというようなテーマがございまして,これによって産業競争力が強化されたり,あるいは産業構造が変革されるという場合がございます。そういったところにもこの評価項目1が十分生かされますようにお願いしたいと。そうしないと,産業界からは,なかなか新しいものは出てこないんじゃないかなと思います。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。その点いろいろ配慮をしていただきたいと思います。
【平山センター長】  平山でございます。アプリの整備の件について若干補足させていただきます。梅谷委員の御指摘は全くそのとおりでございます。ただ,例えば10ページの下のところに脚注で書いてございますが,現在,「京」あるいはHPCI全体で今後使っていかなければいけない,また非常にニーズが高いであろうというアプリケーションの洗い出しの作業を今進めております。これは有識者の皆様の御協力を頂き,また各基盤センターさん,理研さんの協力も頂いて進めている最中でございます。ここで特に産業利用のニーズの高いアプリケーションを幾つか新たに選び出して,それを先行的に整備していくという計画を今進めているところでございます。
 あともう1点,選定基準のところでこれも若干補足させていただきます。個別評価項目に関しましては,レビューワーの先生方はまず個別項目を評価していただきますが,その合計点をもって最終的な選定,採択にしているわけではございません。そういう個別の評価に基づいて,採択すべきか否かという総合評価をレビューワーの先生方にしていただいていると,これが現状でございます。
【西尾主査】  そうしますと,レビューワーにとっては,3つの項目でレビューワーごとにどこに重点を置いたかということが個別的に分析できるようになっているという解釈でよろしいですか。
【平山センター長】  はい,できます。それが先ほどの相関の分析でございます。
【西尾主査】  相関の分析でそうなってくるということですね。
【平山センター長】  はい,それが見えてきたということでございます。
【西尾主査】  よく分かりました。
【喜連川委員】  大石先生が冒頭おっしゃったことは非常にそのとおりだと思っております。今年の最初に笠原先生がその次のスパコンについてのワークショップをされて,結局面白くて,3日間連続して行ってしまったぐらい非常にエキサイティングでした。
 何が言いたいかといいますと,先ほど安浦先生が御指摘になった,このレベルのぼやっとした話といいますか,観念論的なレベルはもはや大分過ぎているんじゃないのかなという気がしています。DOEもNIHもかなり具体的なプランと,どういうライブラリセットを今,僕たちは開発しているんだみたいなお話があって,もうちょっと何か具体的なステップをグローバルには検討しているんじゃないのかなという気がひしひしと感じてまいります。日本は日本なりの固有のアプローチで全然問題ないと思うんですけれども,大石先生おっしゃったみたいな,資料の中に一定程度海外比較みたいなものがあると分かりやすいのかなと。決して今がいけないとか何かじゃなくて,そういうこととの立ち位置みたいなものが分かるといいかなという気がいたしました。
 それと関連しますのは,このクォーターなんですけれども,このパーセンテージを見ると,要するに,半分以上が実際の利用ではないというか,理研さんというかマネジメントサイドに取られているわけですよね。このパーセンテージは全然妥当な数字だと思うんですけれども,この部分が一体どう使われているのかという説明は余りないような気がいたします。多分,今議論しているような次世代のアプリに対してシステムサイドがどういう研究を開発しているのかということが今後のHPCを考える上では非常に重要になってきているんだと思います。先ほどのライブラリのようなものとか,ビッグデータといっても,結局のところ,IPCが異常に悪くなるわけですから,こんなもの本当にHPCでやるべきかどうかというような根源的な議論はどこでやるかという話があるんじゃないかなと。
 それから,最後,3つ目は,今,NSFも含めて,土井先生もおいでになっていますけれども,いわゆるデータマネジメントプランを付けるというのを,日本ですとAMEDもJSTも全部エンフォース掛けてきているわけで,これ,スパコンの場合はデータがばかみたいに大きくなってしまうときに,そこをどういうふうに今後ユーザーに対して適用していくかという話が今回一切なかったんですけれども,御検討いただければ有り難いと思います。
【工藤計算科学技術推進室長】  1つ,今,喜連川委員から御質問あったうちのクォーターの点についてなんですけれども,今,RISTさんの資料の1の「京」の資源配分の中に,一般利用採用枠は45%で,他方,ポスト「京」研究開発枠が40%ございます。これはポスト「京」を完成させるに当たって,同時にアプリケーションの開発を今行っております。この点につきましては,基本的には各分野,重点9分野と,それから,萌芽的課題の4分野,こちらの方のアプリケーションを開発していただくということに割いております。他方,ライブラリその他につきましては,「京」調整高度化枠,こちらの方でAICSさんの方に対応させていただいているので,その辺の部分についてはAICSの方から説明をお願いしたいと思います。
【西尾主査】  最後のデータマネジメント関係のことはいかがでしょうか。
【工藤計算科学技術推進室長】  これも選定するサイドにおいて,どういうマネジメントでやっていくか。もしよろしければ,これは選定基準とか,アプリケーションがどれぐらい体制ができているかという項目がございますけれども,こちらの中にもしかしたらどうお考えになっているか,RISTさんの方でこちらの部分,何か分かることがあれば御説明いただければと思います。
【平山センター長】  シミュレーション結果のデータのマネジメントという意味ですか。分かりました。シミュレーション結果のデータに関しましては,東西2か所に共有ストレージサーバーという大きなものが用意してございまして,そこに必要な方がデータを保管していると,そういう状況です。ただ,利用できる期間は原則2年程度ということになっておりまして,それを超えては利用ができないと,そういう制約等もございます。
【西尾主査】  特に先ほどの喜連川先生の後意見として,そういうことをどう有効に使っていくのかということも評価の中で考慮されているのか,ということだったと思いますけれども,現状ではそれは評価をしてないということなのでしょうか。
【平山センター長】  はい,評価しておりません。
【喜連川委員】  というよりも,質問は,それを書かせているかということです。多分通じてないので,国際的には今そこを皆やっていますので,少しお勉強いただければと思います。
【西尾主査】  それは事務局の方からもきっちり後で伝えてください。
【喜連川委員】  それから,最初の戦略プログラムとか何か書いてあるところ,この絵がよく分からないんですけれども,この大きい赤枠の左に,一般利用枠の横に戦略プログラムと書いてあって,ということは,一般利用枠は戦略性がないということなんですか。
【工藤計算科学技術推進室長】  そういうことではございませんで,これは昨年度終了したプログラムなんですけれども,重点5分野を決めて,その枠の中で「京」で大規模並列のプログラムを走らせるためのアプリケーションを開発いただいたプログラムでございます。一般の方はむしろオープンに各一般の研究者の方に応募していただく枠として用意したものということでございます。
【喜連川委員】  ですから,平尾先生がるる御説明いただきました,次の領域というような御議論だったと思うんですけれども,それがこの赤く囲んである外であるのであれば,それはそれでいいんですけれども,だったら,そこのデコンポジションを何か一定程度分かるような資料があるといいなという意味で申し上げさせていただいています。
【工藤計算科学技術推進室長】  分かりました。こちらのポスト「京」研究開発枠と重点課題の資料につきましては,また御用意させていただきたいと思います。「京」のライブラリとかその辺の話でございましたらば,むしろ,その更に左に15%の枠がございますので,そちらは理研さんの方から御説明いただければと考えています。
【西尾主査】  喜連川先生から,3つの観点から御質問いただいた点は大変重要な点ばかりです。特に最後の御指摘等も,シミュレーションで得られたデータをどのように有効に再利用するのかという観点から非常に重要であり,評価の中でもそこが何か問われることは大事と思います。
 それで,時間がちょっと押しておりますので,今回いろいろ頂きました評価項目に関する御意見は,次回までに事務局で整理していただきます。その上で方向性を更に議論をして,今後の評価基準の中にきっちりと反映をしていきたいと思っておりますので,どうかよろしくお願いいたします。

(2)新たな計算機アーキテクチャへの対応について
中村委員より資料2-1に基づき説明。
東京工業大学の松岡教授より資料2-2に基づき説明。  

質疑応答は以下の通り。

【藤井委員】  中村先生にお聞きしたいんですけれども,ノード固定がありますよね。Reedbushだけかもしれませんが。こういう試みは,情報基盤センター一般にやられているところはあるんでしょうか。これ,実はリアルタイムの将来の使い方とかそういうことを考える上で是非推奨するようなことを。先ほど「京」のところで言おうと思ったけれども,「京」に特有ではないので言わなかったんですけれども,いかがでしょう。
【中村委員】  ほかのセンターはよく分かりません。東大でも別に初めてじゃなくて,T2Kのときにありましたので,ほかのセンターでもやっているのかもしれません。うちのセンターでは2回目です。
【小林委員】  我々のセンターでは,リアルタイムの津波シミュレーションを実運用しているので。通常はアカデミックユースをするんですけれども,地震が7.1になると瞬時に変えて,ノード固定でシミュレーションを走らせる。
【藤井委員】  なるほど,そういう状況に応じてノード固定をする。
【小林委員】  はい。そういうことでやっております。
【藤井委員】  そこはHPCIの資源に提供いただいているところでしょうか。
【小林委員】  そうですね。相乗りなので,私どもの場合は相乗りさせているので,ジョブだけ切り替えているだけです。
【藤井委員】  分かりました。繰り返しますけれども,ノード固定にしていただくと,リアルタイムの試みがいろいろ,新たに試すことができるということと,あと,ちょっと全然違う,先ほどの評価の観点と違うんですけれども,人材育成の観点で何か,何も科学的に新しいことではないんだけど,若い人たちにわっと使わせてみて,手元と全然違うんだよというのを理解してもらうような試みをすると裾野が広がると思うんですが,何かそんな使い方をするときにこのノード固定はいいんじゃないかなと思って申し上げた次第です。
【中村委員】  どのセンターも,各センター,我々の国内1位のマシンも教育には使いますので。必ずしもノード固定が必要な場面とそうじゃない場面がありますけれども,使っていますので,そういうことには広げていこうと思っています。
【喜連川委員】  若干繰り返しになるかもしれないんですけれども,早稲田でやったワークショップのときに,日本に対して御意見をおっしゃったのは,ヨーロッパ,アメリカから見たときに,次のこの領域に対しての日本のグランドビジョンがどこからも見えないというような御意見が出ました。つまり,適切な表現かどうか分からないですけれども,ポスト「京」ぐらいのところまでというのは大体もうプレディクタブルで,ここは余り動かすような方向観というのは難しいだろうとみんな理解しているわけです。問題は,新しいドメインが出てくると。つまり,全体観から見ると,今のスパコンのマーケットよりも,ディープラーニングを中心にしたNVIDIAのマーケットの方が圧倒的に大きくなるということを目の前にしたときに,そこに対して日本はどういうメッセージを吐くんですかということがかなりミッシングじゃないかということを,ワークショップの後の限られた人間の中での議論の場で随分出てきた気がいたしています。
 そういうことに向けて,今,松岡先生は非常に多様な新しい領域を模索していただいていますし,ちょっとしかおっしゃらなかったんですが,結構JSTがお金をここに,まだありますとかおっしゃって,これからが重要な時期だと思っているんですけれども,御発言は注意していただかないといけないんですが……。
【松岡教授】  是非継続していただければ。
【喜連川委員】  やっぱりその新しい領域に対してアメリカは,本当にかなりのパーセンテージをつぎ込んでNIHとタッグを組んでいる,つまり,バイデンのキャンサームーンショットをターゲットにするみたいな話を随分やっていると思いますので,私はこの領域をもう少し丁寧に育てていく,丼勘定のビッグデータという言葉よりも,本当に次のアプリケーションをどう見据えるかということを是非何か日本としてもしっかり考えていく必要があるんじゃないのかなという気がいたします。
【西尾主査】  本当に大局的な観点からの重要な御指摘ありがとうございました。そのグランドビジョンを出していく上でこの委員会が正にその役割を果たしていかなければならないということだと思います。ただし,この委員会も開催回数的にも限られていることもありますので,後で事務局から説明いただきますけれども,この委員会の下にワーキンググループを設けたいと考えています。そこで新しいパラダイムへ向けての議論を展開していただいて,この委員会に上げていただき,さらに議論を深めていきたいと思います。今,そのような議論の時期を逸すると国際的に戦っていけないと,私は考えておりますので,委員の皆様,よろしくお願いいたします。
【大石委員】  私も今の喜連川先生と同様の発言をしたかったのですが,最初の質問で予告しましたが,さっきICOTという言葉が出たんですけれども,あそこまでは日本のスーパーコンピュータって見えていたんです。世界に見えていたと。全く見えなくなっているような感じがして。今の例えば技術の中に例えば単精度とか半精度とか倍精度というのもあるんですけれども,例えば半精度を2つ組み合わせると単精度の演算ができたりするという技術は事実は我々は開発していて,それからあと,ライブラリでいえば,もう最後の桁まで正しい答えが出るようなアルゴリズム,数学的な理論とかもあって,そういう細かい技術で,細かいというか,きちんとしたサイエンティフィックに踏んでいくと,次の世代のスーパーコンピュータをデザインできるところになっているので,アメリカがビッグデータと言ったりAIと言ったらそっちの方向のキーワードを引っ張ってきてやるというのではなくて,方針が立つ,こういうコンピュータを日本が作りますというポリシーをやっぱりちょっと議論すべき時期になっていると。
【西尾主査】  ありがとうございました。地に足が着いた形での議論をきっちりしていく必要があるということだと思います。どうもありがとうございました。
 安浦委員,どうぞ。
【安浦委員】  ちょっと視点が違うかもしれませんけれども,きょうの中村先生,松岡先生のお話の中でも,アプリケーションとしてリアルタイムの応答を要求するようなアプリのイメージの部分と,それから,とにかくリアルタイムじゃなくてもいい世界の話と両方が垣間見えたような気がするんですけれども,リアルタイムのものというのは,結局は,いろいろなところで使われるということになれば,スケールダウンして安くしてばらまかれるという,そういう出口をある程度やらないと,がん治療の重粒子線みたいな,そこに行かないと治療が受けられないとかそういうものになってしまうと,余り経済性としてうれしくないと思うんです。
 一方で,一般的なファクトとか理論を作り上げるためのベーシックなデータを作り上げて科学を作っていくための計算というのは,天文学とか気象学や医学でもいろいろな分野であると思うんですけれども,そちらの話との切り分け,それによって随分将来の出口のイメージというのは変わってくると思うんですけれども,その辺は何かお考えをお持ちでしょうか。
【松岡教授】  エッジの統合に関しては非常にいろいろなところで言われていて,例えばどこで推論をやるのかとか,どこでトレーニングやるんだかとか,リアルタイムでデータ推移もどういうふうにマネジメントするとか,それが非常に大きな問題で,ちょっとここで語り切れるものではないんですけれども,でも,エッジコンピューティングの方がそれなりに強力にならなければいけなくて,そのためにいろいろな技術がここで語り切れないぐらいいっぱいありますが,同時にバックエンドの方も強力にならなくてはいけないと。かつ,データの移動というようなことが非常にスムーズに行われないと,物すごいデータストリームやって来ますから,とてもそれが扱い切れないというふうになると思っています。
 1つは,先生おっしゃるように,コモタリゼーションというのは,多分エッジのところだけではなくて,データセンターの方もいわば機械学習やビッグデータが使えるところのコモタリゼーションというのは起こらなくてはいけない。より高性能なものが起こらなくてはいけない。ところが,例えばスパコンセンターは別として,今の日本のデータセンターとかに行くと,我々の目から見るとほとんど全然駄目なわけです。全くそのような,例えばTSUBAME3のような,これは非常に機械学習に適したマシンですけれども,こういうマシンを入れられる余地が全くないですね。特にサーマルの点で全く駄目だと。
 ABCIの1つの目的というのは,それを,TSUBAME3みたいなマシンをいかに日本のデータセンターに,まあ,世界でもいいんですけれども,いかにデータセンターに入れていくかというところが非常に大きな役割であります。そのために,例えば60Kのサーマルのをどうやってデータセンターに入れればいいのかという設計を例えばやっていたりします。
 それとともに,例えばソフトウェアスタックなんかも,高性能な,学習用のソフトウェアスタックと,シミュレーションソフトウェアスタック,あと,ビッグデータソフトウェアスタックとクラウド用のソフトウェアスタックが融合しなければいけないんですね。これは世界中でみんな右往左往していますけれども,我々のコントリビューションとしてもそういうものをちゃんとやっていくというのが2番目です。
 更に言えば,HPCの目から見ると,これらをちゃんとやっていくにはシステム全体の設計,いわゆるエンジニアリングメトリックがきちんとできてないといけない。ところが,今の例えばマシンラーニングとか,例えばICMでもIEEEでもそういう論文を見ても,性能評価とかぼろぼろなわけです。これは例えばHPCで例えばポスト「京」とかやるときは,アプリケーションをただ単に列挙するだけじゃなくて,それに関するリクワイアメントアナリシスを我々と理研と2年間かけてやったわけです。そのための性能モデリングとかそういう手法もいろいろ使うんだと。
 今,我々がやっているのは,例えばABCIの調達のベンチマークは,HPCのやつを一切排除して,全部ビッグデータとAI系のベンチマークにしています。ただ,AI系のベンチマークといっても,普通の例えばLinpackベンチとか持ってこられなくて,やっぱり全然駄目なんですね。きちんとしたメジャラブルなメトリックを作る,あと,例えばAIの性能モデルを作る,そういうことを我々はやっていて,例えば某社とか某社とか某社とか某研究所とかやっていて,そういうふうな技術的な積み重ねをきちんとやっていくことで初めて普及が可能になるというふうに思っております。それで,そういう活動を一部やっております。
【中村委員】  実は非常に鋭い指摘で,実は我々がアプリケーションの人に聞いて,そもそもスパコンはリアルタイムデータを扱えないので,それができると何がいいこと,得意ではないので,何ができるかといろいろ聞いてみて,防災の人だとか漁業の人に聞いてみると,あるんだけど,やっぱりそんな大きいデータじゃないんですね。なので,きょうは私,リアルタイムと書きましたけれども,必ずしもそれが大きいかどうかはまだクエスチョンだと思います。クエスチョンというか,マーケットとしてです。学術的には大事かもしれないけれども,すごく,例えばユーザー5割がそうなりますという世界が来るかどうかはちょっと分からない。
 一方で,大量データ,やっぱり計算資源は計算が得意なわけですね。そうしたときにある程度データがそろったときに,オフラインかもしれないけれども,大量のデータを扱うというところにはまだ非常に学術的な余地があると思っています。そういうことが扱えるようなインフラであり,そういう開発できるようなソフトウェアスタックも含めてやっていく必要があるんじゃないかと。そこに新しいユーザーが増えていくというのは非常に実感しています。そんなところでよろしいですか。
【小林委員】  松岡先生の発表を聞いて,我々も数年前,三,四年前にFS(将来の HPCI システムのあり方の調査研究)をやって,データ処理能力の重要性を訴えてきたわけですが,そういう仲間が増えて非常にうれしく思います。いずれにしましても,やはりこれからは1つのマシンで全てをカバーできるというような時代ではないので,今,八ケ岳時代だとか言いますけれども,次,ポスト「京」ができて,ある瞬間的にはまたピラミッドができるのかもしれませんが,今まで以上に短い間隔で八ケ岳形式になると思っています。
 そういったときに,アプリケーションスペシフィックなアーキテクチャじゃなくて,ある程度ドメスティックなアーキテクチャを作ることによって,それを全体として,仮想化し,アンサンブル化して第1階層的なものを作っていくというようなことにならざるを得ないんじゃないかなと思っています。ですので,今,重点課題とか戦略分野とかありましたけれども,そういったところでアーキテクチャ設計を是非Co-designしながら,新しい時代の新しいシステム,アプリケーションの在り方を検討する時期と考えています。
【土井委員】  きょうは新しい方向性ということでいろいろ教えていただきまして,ありがとうございます。今のお話もそうだと思うのですが,やはりリアルタイム性とか,きちんとどういうデータを扱うんだということを基にしたデータ駆動型というお話で,さらに,データも,ここにあるからみんなで使いましょう的な,データを共有しつつ計算資源も共有しつつという,そういう新しいHPCIという,そういうネットワークになっていくのかなと思います。だとすると,ネットワークも併せて議論していかなければいけないというところがやはり今後大きな課題になっていくのかなということを本日感じました。ありがとうございます。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 それでは,議論はまだ尽きないところですけれども,いろいろ御意見を頂きましたことを踏まえて,新たなアーキテクチャに対応したアプリケーションが,どうあるべきかということをはじめとする議論を展開していく必要があると思います。
 資料2-3のところで,そのことに関わるワーキンググループの開催ということを今後考えていきたいと思っております。きょうの議論を踏まえまして,趣旨等に関しましても,ここに書いてあることに加えて,先ほど御指摘いただいたようなことを盛り込んで,ワーキンググループできちんと議論していただき,この委員会に上げていただくというような方向性をとらせていただきたいと思いますが,その方向性に対して何か御異議とかございませんでしょうか。よろしいですか。
(「異議なし」)
【西尾主査】  それで,調査項目が,その他を含めまして4つございますけれども,これらに今日頂きましたような意見等も踏まえて更なる検討をした上でワーキンググループを立ち上げます。このことに関しては,主査に一任いただければと思いますが,よろしいでしょうか。
(「異議なし」)
【西尾主査】  それで,構成及び運営等に関しましても,ここに書かれているとおり,このワーキンググループは研究振興局長の私的諮問機関として設置することにさせていただきたいと思っております。
【工藤計算科学技術推進室長】  選定基準につきまして,最終的に選定基準を改定する際には,HPCIコンソーシアムの意見を聞かなければいけないというのがございます。この委員会で御議論いただいた内容は,方向性という形でまとめさせていただきますので,より詳細については,コンソーシアムにお話しさせていただいた後ということになりますので,そこの部分御了承いただければと思います。

西尾主査より閉会発言


お問合せ先

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電話番号:03-6734-4275
メールアドレス:hpci-con@mext.go.jp

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