100年に一度と言われる金融経済危機の下、世界規模での価値観の変革が進行しており、また世界経済はG8からG20に移行している。こうした状況において、我が国としては、持続的発展を図るととともに、科学の知見に基づいて人類の未来に貢献するため、国是として科学技術創造立国を再認識し、国家の最重要戦略として科学技術の振興に社会総がかりで強力に取組むことが必要である。 特に、基礎科学は、真理の探求により人類の根源知としての文化的価値を生み出し、人類の存続に係る諸課題を解決・低減するとともに、イノベーションにより新たな価値を創造し社会経済の発展の源泉として大きな役割を果たすものであり、その強化は21世紀型の科学技術振興において極めて重要である。 このため、初等中等教育における理数教育の充実を含めた人材育成をはじめ、大学院の抜本的改革に取組むとともに、施設設備整備や企業との連携等の研究環境の整備、さらには研究風土の醸成とその徹底までを包括した総合的かつ体系的な基礎科学力強化策の展開を図ることが必要である。 |
基礎科学の意義は、「人類の英知の創出と蓄積」と「イノベーションの創出」の二面性がある。それぞれの特質、両者の関係を踏まえた具体的な推進方策を検討することが重要である。 |
基礎科学の進展には正統的研究の継続とともに、他方、既成概念との決別、そのための前衛的な個人の発想などが不可欠である。一般に高度に専門性が高く、検証に長い年月を要するなど成果が見えにくいなどの特徴があり、そうした特徴を十分に踏まえた推進が必要である。 また、基礎科学は新しい発見や価値を生み出すことから、科学者には高い「志」が不可欠であり、同時に高い責任感、倫理観を持つことが必要である。 |
個性的で豊かな創造性を有し、挑戦し「やりぬく力」のある基礎科学を担う人材の養成は、その出現を単に待つのではなく、能力を見いだす機会を提供することにより、「出る杭を最大限に伸ばし育てる」ことを基本として取組むことが重要である。 特に、頭脳流出問題を解決し魅力ある国とするための一環として、人材養成については、創造性を伸ばす新たな人材養成システムに転換することが必要である。 新たな人材養成システムにおいては、大学及び企業等の研究人材は博士号取得者であることを基本とし、博士課程における教育研究の在り方を検討し、真に創造的な研究人材を養成する。また、大学における人員構成をピラミッド型に改善し若手研究者のポストの確保に努めるとともに、企業へのキャリアパスについては、企業のニーズを踏まえ、修士課程修了後、博士課程修了後、ポスドク後の各段階で柔軟に就職できるシステムを構築する必要がある。 |
アジア諸国は博士課程を中心に大学院生の抜本的拡充を図っており、大学院の国際競争力の強化は必要不可欠。我が国の将来を支える人材を育成するため、大学院の役割は極めて重要であり、その責任も重い。修士、博士課程の在り方を含め、「学生の立場に立った」抜本的な大学院改革を進めるとともに、必要な大学側の意識改革、国の財政支援の抜本的拡充を目指す必要がある。 |
小学校から大学まで各教育段階における理数教育等の充実を図るとともに、それぞれの取組みを全体で関連づけて創造性豊かな人材を育成する仕組みを構築すべき。また、創造性豊かな人材を育成するためには、社会で科学技術に関する関心が共有されていることが重要であることから、科学技術に関する社会のリテラシーの向上を図ることが重要である。 |
100年に一度という未曾有の経済危機のなか、経済危機だからこそ未来への投資として高等教育への公的投資をはじめとし、基礎科学を含めた科学技術への政府研究開発投資の抜本的拡充が必要である。また、資金配分について、研究者を優先した柔軟性のある制度改善が必要である。 また、研究費について、年度をまたぐ予算執行、評価や提出書類の簡素化による研究者の負担軽減等の研究経費の執行の柔軟化を図ることが必要であり、特に競争的資金については制度の趣旨や目的に応じて、基金化を図ることを検討することが必要である。 |
研究者への支援機能が欧米と比べ著しく劣っており、研究支援機能の抜本的強化が必要。オープンイノベーションが進む中、基礎科学分野における大学等と産業界との連携を抜本的に進めることが必要。大型研究インフラの整備、研究ポテンシャルの糾合など研究拠点の整備、また、真に優秀な外国人研究者を呼び、定着させるなどグローバル化が必要である。 |
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研究振興局振興企画課学術企画室