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次世代スーパーコンピュータ戦略委員会(第7回) 議事録

1.日時

平成21年2月26日(木曜日)9時58分~11時53分

2.場所

文部科学省16F特別会議室

3.出席者

委員

土居主査、伊東委員、宇川委員、小林委員、寺倉委員、中村委員、平尾委員、矢川委員、小柳委員

文部科学省

舟橋情報課長、飯澤学術基盤室長、井上スーパーコンピュータ整備推進室長、中井課長補佐

オブザーバー

筑波大学大学院数理物質科学研究科教授 青木慎也、東京大学大学院理学系研究科教授 初田哲男、千葉大学大学院理学研究科教授 松元亮治、名古屋大学大学院工学研究科教授 金田行雄

4.議事録

【土居主査】

 おはようございます。定刻より2、3分前ですけれども、おそろいになっておられますので、始めさせていただきたいと思います。
 きょうは4人の先生方に朝からお忙しい中お出かけいただきまして、どうもありがとうございます。ここの戦略委員会の主査を仰せつかっております土居でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 それではまず、本日の配付資料につきまして、事務局から確認をお願いできますか。

【事務局】

 それでは、お手元の議事次第と照らし合わせて、資料のご確認をお願いいたします。本日の配付資料は、資料、戦略分野について、「計算基礎科学による素粒子・原子核・宇宙のグランドチャレンジ」という題で、後ほど青木先生からお話しいただくものがございます。次に、「原子核物理学分野 第一原理に基づく元素の起源と極限物質の解明」という題で後ほど初田先生にお話しいただく資料がございます。その次に「宇宙物理学分野 第一原理に基づく宇宙進化と物質の起源の解明」、後ほど松元先生にお話しいただくものがございます。それと「流体分野」、後ほど金田先生にお話しいただく資料でございます。
 また、前回までの配付資料につきましては、机上のファイルにとじております。配付資料に欠落等がございましたら事務局までお知らせください。以上です。

【土居主査】

 よろしいでしょうか。
 それでは、また何か足りないところがございましたらそのときにおっしゃっていただければと思います。
 それでは、早速議事に入らせていただきたいと思います。例によりまして、戦略分野についてという1つしか基本的にはないのですが、本日は素粒子・原子核・宇宙分野につきましては、筑波大学の青木先生、東京大学の初田先生、千葉大学の松元先生、それから流体分野につきまして、名古屋大学の金田先生にそれぞれ戦略分野としてふさわしい課題につきましてお話をいただくことになっております。お話しいただく流れといたしましては、青木先生、初田先生に続けてお話しいただいた後、質疑応答させていただきまして、その後松元先生、金田先生のお話の後に、それぞれ質疑応答、それから、最後に全体の質疑応答という形にさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 まず初めに青木先生でございますが、素粒子理論をご専門とされ、アメリカのブルックヘブン国立研究所、ニューヨーク市立大学ストニーブルック校等で研究に従事され、現在は筑波大学大学院数理物質科学研究科教授でいらっしゃいます。また初田先生は、原子核理論をご専門とされ、ニューヨーク州立大学、ワシントン州立大学、筑波大学、京都大学などで教育・研究に従事され、現在は東京大学大学院理学系研究科教授でいらっしゃいます。
 それでは、どうぞよろしくお願い申し上げます。

【青木先生】

 筑波大学の青木です。よろしくお願いします。私は、「計算基礎科学による素粒子・原子核・宇宙のグランドチャレンジ」という話なのですが、そのうちの素粒子部門とその連携ということに関してお話しさせていただきたいと思います。
 まず、素粒子・原子核・宇宙ってどういうものかという定義みたいなものですが、初めの素粒子・原子核のほうは日本学術会議物理学委員会での文章なのですが、「物質を構成する究極の要素は何か、その究極の要素を支配する物質法則は何か、そしてその物理法則と時空はどう関係するかを説明する科学」と。宇宙のほうはそういう文章はないのですが、考えてみると、物理法則に基づいて、宇宙の進化や銀河・恒星などのさまざまな天体で発生する諸現象を解明する科学、そういうふうに定義されていますが、模式的に下に物質、宇宙の進化の図をまとめてみたのですが、こういう見方ですると、実は素粒子、原子核、宇宙というのは、現象が相互に密接に関連していることが最近だんだん認識されつつあります。
 その中で、素粒子物理と計算科学の、初めは順序が逆かもしれませんが、最近の結果について少しお話しさせていただきたいと思います。詳細については後でまたもう少し詳しい話をする部分もあるのですが、まず1つ目は、昨年ノーベル賞を受賞した自発的対称性の破れ。南部先生が提唱された自発的対称性の破れという考えがあるのですが、それを、後で説明しますが、格子QCDという数値計算の方法によってそれを証明というか、確認することができています。最近ではそれの自発的対称性の破れの結果であるHiggs粒子の探索というのも実験で始まっています。そういうふうにいろんな分野が関係している。
 さらに2番目の例としては、今ある物質を非常に温度を高くしたらどうなるか。新しい層に入ると思われています。物質の新しい存在形態、クォーク・グルーオンプラズマと呼ばれているものがあるのですが、そいつを探そうというのが、2000年から高エネルギー重イオン衝突実験というのが行われています。
 じゃあ、実際なぜそんなことが起こると予想されたかというのを計算した例の1つが、格子QCDによる状態方程式です。ちょうどここの、低温から温度を上げていくと、相転移が起こって非常に違った状態に行く。これが違った物質の状態の層だろうということを示唆しています。これが数値計算による結果です。
 3番目は、これも去年のノーベル賞ですが、素粒子の精密実験と小林・益川理論。小林・益川理論では、CP対称性の破れを予言していますが、それを実験で行ったのがKEKのB-Factoryという加速器です。これと小林・益川理論がほんとうに対応しているかどうかを調べるには、ある種の計算が必要なのですが、それもやはり格子QCDによって計算がなされています。
 4番目は、これは非常にチャレンジングな話ですが、我々は究極の理論、さらに今ある理論の背後にもっと統一理論と呼ばれているものがあると考えています。それの候補の1つが超弦理論と呼ばれている理論なのですが、その超弦理論によるブラックホールの内部構造が計算できるはずなのですが、実際にそれを数値計算で計算したという最近の結果がありまして、それとブラックホールのふるまいとの比較がされております。
 このように素粒子物理と計算機科学というのは非常に密接に関係しているのですが、もうちょっと詳しく、じゃあ、どういう素粒子物理の大規模計算が行われるかという話についてちょっと触れたいと思います。どういうことが挑戦課題かというと、我々が考えている粒子、ハドロンと呼ばれているものなのですが、それは実はクォークと呼ばれているものの束縛状態であるということが認識されているのですが、その束縛状態をつくる第一原理である量子色力学、これは英語ではQCDと言いますが、そいつから導けるかというのが問題です。これは何でこんなに難しいかというのをこれからご説明したいと思うのですが、量子色力学というのは、クォークとそれを結びつけるグルーオンの力学。非常に大事で、ほかの分野と非常に異なるところは、これは完全に決まっています。だから、そこをいじって何か結果を左右するということはできません。これは真剣に解く以外に方法がないというのが非常にほかの分野と違うところです。
 例えばハドロンといいまして、陽子と言われている粒子がクォーク3つでできていると考えています。そいつが動こうとすると、ここから飛んでいくのですが、クォーク3つ飛ぶのですが、そいつがハドロンであるためには、お互いグルーオンを飛ばして、一緒に飛びながら、束縛されながら飛んでいく。こういう非常に複雑な構造、ふるまいをしながら飛んでいきます。こいつを計算しなきゃいけないというのが我々の課題です。
 実際、なかなかこのままでは計算できないので、新しい方法論として、格子QCDという方法を使います。これは時空格子、空間を点々々に分けて、その上でQCDを定義する。こうすることによって、モンテカルロ法を使った数値計算が可能になって、このような複雑なものが計算できるようになります。
 これは例えば一辺の長さLの空間を格子点で切ります。格子の間隔をaとします。点の上にクォークとかグルーオンとかを置きます。こうすると自由度が有限になるので計算機の上に載せることができて、モンテカルロ法を使うと、Uの確率分布というのが何かこういうUの関数として与えられる。特にこの部分は大規模行列式が出てきます。この大規模行列式というのは実はクォークの質量によっている。
 これを見てわかるように、点の数というのは、Lとaに依存します。あるべきで依存します。したがって、計算コストはこのような、ある種のべきで、Lを増やしたり、aを減らしたりすると、大きくなっていくのですが、特にクォーク質量を減らしていくと非常に計算が難しくなります。したがって、今までは実際ほんとうは軽いクォーク質量で計算したく、それが難しかったのですが、最近、計算機及びアルゴリズムの発展で、だんだんそこが計算できるようになってきました。
 それの1つの計算結果が格子QCDによるハドロン質量の計算です。これは筑波大学計算科学研究センターにある高性能超並列クラスタPACS-CSを使って計算したのですが、ここで注目してほしいのは、先ほど理論が決まっていると言いましたが、そのときに自由にとれるパラメータは3つしかありません。相互作用の強さ、結合定数とある種のクォークの質量、2種類のクォークの質量、それぞれ。だから、3種類しかパラメータがありません。こいつがそのパラメータを決めるために使ってしまっているのですが、残りの10個は全く、パラメータも全部決まったので、完全に予言になっています。この赤い点が我々の計算の予言であって、この黒い横棒が実験結果です。これを見てわかるように、非常に高い精度で実験を再現しています。ただし、この計算は、先ほどの格子のサイズが2.9fm、fmというのは10の−15乗メートルです。格子間隔は0.09。先ほど言ったクォーク質量に対応するのはパイオン質量で換算するのですが、それが160MeVまで計算しています。実際、実験値は135ということを知っていますから、160から135まで理論的に外挿して得られた結果がこれです。これを見てわかるように、ほぼ現実のクォーク質量に迫っています。昔の計算はここが300とか400とか500とか、非常に重いところでしか計算ができませんでした。
 じゃあ、どういう国際的な位置づけというか、国際競争があるかということを説明します。世界全体の研究者が大体1,000人ぐらいだと。そのうち日本は100〜150人。これは大学院生とかも含まれている数です。
 それで、どういう拠点があるかというと、大ざっぱに言って、日本とアメリカとヨーロッパというふうに3つの大きな勢力があります。日本の場合は、中心になるのは筑波大学とかKEK。アメリカは広いので、コロンビア、ブルックヘブンとか、シカゴにあるフェルミラボとかJラボとか、そういう研究所です。ヨーロッパではドイツ、イギリス、イタリアで盛んに研究されています。
 日本の特徴は、計算機科学者らと協力して、計算機をつくり、研究もやるというスタイルが確立して、例えばQCDPAX、CP‐PACS、PACS‐CSという流れがあります。
 アメリカでも、QCDSPとかQCDOC、ヨーロッパではAPEとかいうように、計算機開発をする歴史と実力があります。
 最近は計算資源の面でアメリカとかヨーロッパに若干押され気味で非常に苦戦しています。例えばヨーロッパの研究成果、これは最近出てきた研究成果なのですが、我々と同じような規模の計算がかなりできるようになってきている。
 競争だけじゃなくて、国際協力も行われていて、物理での共同研究は非常に多く行われています。例えばアメリカとイギリスとか、ヨーロッパ内とか、日本、台湾とか、そういう国際的な研究が行われています。
 あと、それから先ほどグルーオンの配位Uと言いしましたが、そいつは非常に計算が大変なので、そいつを蓄積して公開しようと。で、みんなが使えるようにしようという試みをやっています。それをInternational Lattice Data Gridと言いますが、これがそのネットワークで、日本とヨーロッパとアメリカで、各サイトにいろんなデータを置いて共有しようという試みがあります。
 じゃあ、素粒子のグランドチャレンジで、どういう計算で、どれぐらいの計算規模が必要なのだろうかというのをちょっと評価したのですが、我々が結局やりたいのは、先ほど言った量子色力学、QCDを数値的に解いてしまおうと。例えば1つの目標では、QCDを使って重陽子とかヘリウムとかいう軽い原子核までつくってしまおうということを目標にしています。現在の計算規模だと、大体今、我々が使っているのは、4Tflops/yearぐらいの計算時間を使っていますが、挑戦的課題にする場合には、パイオン質量はほんとに物理的なところ、それから、体積も原子核をつくるために大きくしなきゃいけないので、非常に大きな体積で計算している。というので、大体これで評価すると、1.2Pflops/yearぐらいは必要となります。
 これとは別に素粒子の標準理論の精密検証とそれを超える物理の探求。この場合には少し計算方法をより精密に計算できるような方法でやるために時間がよりかかります。現在だと、非常に重いところでやって、大体0.5Tflops/yearぐらいかかっていますが、挑戦的課題では、それを軽くして、大きな体積でやると、1Pflops/yearぐらいかかります。
 そのほかにも、QCDの先ほど言った相転移の研究とか、あと、QCD以外では、ヒッグス粒子の話とか超対称性、超弦理論という話も視野に入っています。
 先ほど言ったように、やる計算がある程度決まっているので、世界中がこの規模の計算を目指して競争しています。これは端的に言って計算機能力によって非常に左右されるので、競争に勝つには次世代スパコンの有効利用が必要です。ただし、それだけだと単にスケールアップするだけでおもしろくないので、さらに質的な飛躍のためには、これからお話しする分野連携が不可欠だろうと考えています。
 その分野連携の1つの成功例として、計算科学による素粒子・原子核連携の話をします。これは格子QCDを用いた世界初の核力の導出。核力というのは原子核同士に働く力です。それによって原子核が構成されているのですが、左側はいろんな実験結果からこのようなポテンシャルになっているだろうと。これは横軸に陽子とか中性子の間の距離で、縦軸がポテンシャルのエネルギーです。それによってこういうような形をしているだろうと予想されたのがこの線です。これが2007年に我々が計算した格子QCDを用いて核力を計算した、この赤い点がその結果です。非常に似たようなふるまいを示しています。この研究はネイチャー誌の2007年リサーチハイライト21論文、年間論文の1つに選ばれています。
 その成功のポイントは、まず1つは、素粒子と原子核理論の研究者の連携がとられたこと。もう一つは、スケールの違いを乗り越えるだけの能力を持つ計算機による計算科学の発展ということが背後にあった。これがなければできなかった研究です。
 これはそんな難しいのかという疑問があると思いますが、もちろん束縛状態の間に働く力という意味では、原子とか分子の間に分子間力とか分子結合力というのがあるのですが、この場合は、原子とか分子の質量というのはほぼ、原子核と構成要素の質量の和に等しい。つまり、束縛エネルギーがそれほど大きくなかったわけです。ところが、核子の場合は、クォーク3つでできているのですが、実は質量の和というのは、格子の質量のほんの数%しかありません。それ以外は何から出るかというと、相互作用エネルギーでつくられます。この質量をつくり出す機構が南部先生のカイラル対称性の自発的破れです。ですから、非常に強い相互作用をしている系の間のさらにまた力というものを計算しなきゃいけないというので、先ほど書いた図の複雑なものを計算しなきゃいけないので難しくなっております。
 分野融合ということをさらに意識して、我々は今年度から科研費として新学術領域にアプライして採択されます。それは素核宇宙融合による計算基礎科学に基づいた重層的物質構造の解明。これはさまざまな階層での物質の性質・構造・起源を、クォークから元素合成までという流れの中で、異なった専門分野の研究者が計算科学という新しい手法を基盤に、共同で解明していくという新しい研究領域の構築を目指すというものです。
 これはちょっと長いのですが、どういうことをやりたいかというと、格子QCDを使って、これは理論が決まっていますから、これでバリオン間相互作用、核力とかを計算します。それに基づいて原子核とかの構造とかを決めて、それによって中性子星の内部構造とか超新星爆発の現象とか重元素合成の理解をしていこうと。そういう一連の流れで、みんなが一緒になって連携して、研究していこうという研究分野です。これは実験とか理論と絡んでいます。
 我々は分野連携・融合が国際競争に勝つためのポイントだと考えています。これはアメリカの次期というか、次々期計画ですが、DOEのScientific Grand Challenge through Extreme Scale Computing Science。これは実はExascale Projectというものに対応するんですが、これは全部で7分野あります。そのうちで素粒子と原子核というのは別の分野として既にこの中に入っています。だから、非常に素粒子、原子核のプレゼンスは高いのですが、逆にこの2つに分かれているということは、彼らはある意味協調してはやらないという体制になっています。これは予算の関係とかということもあると思うのですが。我々は逆に素粒子、原子核、さらに宇宙を含めた分野連合を図って、次世代スパコンで分野連携を行い、次々世代も含めて、分野融合をなし遂げることで、国際競争に勝ち抜くような戦略を考えていきたいと思っています。これは学問的にも非常に将来がある考え方だと思います。
 今の新学術は学問的な話でしたが、それを支える拠点、分野融合を促進する拠点として、ちょうど今週の月曜日に立ち上げのシンポジウムがあったのですが、計算基礎科学連携拠点をつくろうという構想が立ち上がりました。これは高エネルギー加速器研究機構、自然科学研究機構国立天文台、筑波大学という3者が一緒になって、主に各アプリや計算機科学のスクールなどを通じた人材育成とか、次世代スパコンの戦略拠点の形成とか、次々世代を見据えた計算機とアプリの共同研究などを目指しています。
 それをさらにもっと大きな組織というか、これは集まりなのですが、計算基礎科学コンソーシアムというのを昨年立ち上げました。これは同好会の集まりみたいなものなのですが、現在は素粒子、原子核、宇宙の会員が主ですが、物性、生物などの方々にも参加していただけるような組織を目指してやろうとしています。この3者が3つ集まって、新学術が研究のエンジンとして、さらに計算基礎科学連携拠点がそれを支える組織として、分野融合を図っていこう。これ全体を計算基礎科学コンソーシアムという形でまとめていこうと考えています。
 多分この話を聞いて、素粒子の研究というのはあまりおもしろくないじゃないかという気がしますが、構造としてこのような形になっています。我々は、QCDは決まっているので、そこで頑張って、すべてのものの下支えをして、それを学問的に支えていく。その上に原子核があって、構造、反応、状態方程式。さらに宇宙になるともっとおもしろい現象がたくさんあります。それを一続きに理解していこうというのが我々の考え方です。
 次は原子核のほうにいきましょう。

【初田先生】

 東京大学の初田と申します。よろしくお願いします。次の15分間で、原子核物理分野を中心に、素核・宇宙というのは非常に関連が深いので、特にどこだけと切り離して考えることはできないのですが、特にここにウエートを置いて、先ほどの青木さんの真ん中のレイヤーのところら辺の話を中心にお話をしたいと思います。
 これは漫画で、物質の階層構造、宇宙の始まりから始まって、最後は超ひもに至るような、そういう階層構造があるわけですが、それらがお互いにつながっていると。それは素粒子や原子核を土台にしてつながっている。特に階層構造がある場合には、その間の階層をつなぐというところで大きな計算資源が必要だということが一般的な現象ですが、実際に我々の場合にもそういうことが起こっています。
 じゃあ、素粒子・原子核・宇宙、特に原子核を中心とした場合の挑戦的な課題、例えば5年とか10年とかの間、これから挑戦的な課題は何かということをお話ししたいのですが、哲学的に言うと、我々はどこから来てどこへ行くのか、それが挑戦的課題です。つまり、宇宙はどのように始まって、どのように我々の体をつくっている元素ができて、最後その元素はどこに行ってしまうのか、そういう一連の流れを基礎物理学、つまり量子論、量子力学と相対性理論を基礎にして理解する。それが素粒子、原子核、宇宙の物理の課題なわけですけれども、その中でも特に最近注目を浴びているものとして、1つは宇宙初期にどういう状態があったのか。先ほど少し話が出ましたが、クォーク・グルーオンプラズマ。ビッグバンのときの物質の状態、温度としてはこれぐらい高い温度ですが。
 それから、我々の周りのほとんどの物質はヘリウムと水素、宇宙の物質はそうなのですが、鉄よりも重たい元素、例えば金とかプラチナとかウランとか、そういうものはどこで宇宙でつくられたのかという重元素の期限の問題、これが実は未解明です。実はこの問題は、星が最終的に死んでいくときの極限物質の性質と非常に関係していて、そこで中性子星とかクォーク星とかブラックホールという問題と関係してきます。
 きょうは時間の関係上、特に後半の2つに話を限定してお話ししたいと思っています。それがどういうふうに計算物理と関係しているか。
 これは、約1000年前、1054年に爆発した、かに星雲の超新星爆発の残骸で、直径が11光年ぐらいありますけれども、真ん中に中性子星が存在します。これは大きな星が最終段階に爆発を起こして、真ん中に中性子星を残して、周りにものが吹き飛ぶ。その吹き飛んだ大爆発のときに重たい元素が合成されたのであろうと予想されています。
 しかし、実際にそれがどれくらいの割合でどうできたのか、鉄がどれくらいの割合でできたのか、プラチナがどれぐらいの割合でできたのかということは、実際にこういう爆発のシミュレーションを行って、その中で元素がどうつくられるかという原子核物理のインプットを入れて初めて理解できることです。これはまだ理解されていません。
 まず第一にその理解のために必要なことは、どういう原子核が星の大爆発のときに存在したのか。そういう存在している原子核の性質をきちっと数値計算を通して調べていくということです。これは核図表と言われている中性子の数と陽子の数を横軸と縦軸にとったもので、原子核というのは要するに陽子や中性子が数個から場合によっては数百個集まって結合状態をつくっている陽子系ですけれども、現在我々が知っている原子核というのは大体300種、この黒いところにあります。鉄がこのあたりで、鉛がこのあたりで、ウランがこのあたりです。実験してつくられる原子核というのは3,000種ぐらいありまして、このちょっと黄色いライン。未知の原子核は膨大にありまして、7,000種以上の未知の原子核が存在するけれども、しかし、知られていない。ところが、こういう超新星爆発の場合に、元素がつくられるときには、こういう未知の原子核を通って実際の元素がつくられていくということが予想されていて、したがって、実験的にも理論的にもこういうところを調べていくということが非常に重要な問題になっています。
 具体的にどういうふうに数値計算と絡めて話が進んでいるかといいますと、現状を言いますと、宇宙物理ではもちろん超新星爆発の観測がありますが、それと同時に、超新星爆発がどうして起こるかという大規模シミュレーションというのが一般相対論とニュートリノ輻射などを考慮して行われています。
 一方、原子核物理では、ここで存在する元素というのを実際つくってやろうと。これがいわゆるRIビームファクトリーですけれども、これは既に2007年から日本で走っていますけれども、世界に先行して走っていますが、そこでつくって、その性質を調べる。また、その性質を理論的に調べるということが現在行われています。
 最終的には、原子核物理のこういう計算と宇宙物理のシミュレーションをあわせて、爆発の背景の中で元素がつくられるという約5,000種以上の原子核を、反応ネットワークを解くという、そういうプロセスを経て最終的に我々が重元素の起源を理解したということになりますが、実際はまだ……。例えば1つ例を挙げると、超新星は爆発未遂です。今のところまともに爆発した超新星はコンピューターの上ではまだありません。これが5年間の間に多分機構が解明されて、10年後には現実的なシミュレーションができ、原子核物理の成果とあわせて、実際に我々が何かを理解するというところになっていくのであろうと思います。
 これは少しおもちゃの計算ですが、理研の望月さんの提供してもらったもので、実際にどのように元素が爆発過程でつくられていくかということを、約5,000種の原子核のネットワークを解いて、シミュレーションしたものです。軽い原子核から出発して、そしてだんだんと、これは1秒ぐらいの間ですけれども、1秒ぐらいの間にものがずっと、原子核が燃えていって、核融合反応を起こし、または核分裂を起こし、そして最終的にこういう原子核がつくられるということをあらわした図です。これがほんとうに現実的なシミュレーションになっていくのはこれから5年、10年後の話です。
 先ほど言いましたように、実験的にはRIビームファクトリーでこういうところをつくろうということが進んでいます。じゃあ、理論的にこの原子核を理解するための計算というのはどのように進んでいるかといいますと、いろんな手法があるのですけれども、特に日本発の手法が幾つかあるのですが、こういう原子核を第一原理的に解く。先ほど青木さんが言われた核力をもとにして第一原理で解くという手法がこの10年間非常に発達してきています。典型的なこういう計算のスケールというのは現在1テラフロップスを1カ月または1年使う。そういうスケールの計算が現在行われています。
 例えば例を挙げますと、これは量子系ですから、計算が単なる典型と違って、ものすごく難しいのですけれども、例えば我々がよく知っている炭素ですね。炭素というのは、もちろん人類をはじめ、地球上の生物はすべて炭素生命体ですが、そいつは星の中でつくるのが非常に難しい。ホイル状態と言われている中間状態、炭素、陽子が6つ、中性子が6つですが、それが4つずつ、α粒子、ヘリウムにクラスタライズして、それが緩く結合しているというホイル状態と言われている状態を通して、初めて炭素が合成されるということを昔ホイルという人が予言して、それが実験的に確認され、ノーベル賞が発見した実験のほうに出たのですけれども。
 その構造はこれは実は漫画でしかなかったのですが、やっと過去10年間、または5年間の間に、数値計算の進展によって、特にこれは京都大学のグループの量子分子動力学、しかも粒子の統計性を考慮した反対称化量子分子動力学という計算によって初めて、炭素生命体の起源となっているところのこういう状態の性質が確かにこういうものであるということが第一原理シミュレーションによってわかってきて、しかもそれを拡張することで、こういうものが数珠つなぎになったようなこういう状態というものも存在するのじゃないかということが計算の上でわかってきて、これはこれから実験で観測されるのではないかと思われている状況にあります。
 これが第1テラフロップスで、100時間から1000時間の間の計算になります。
 これは時間がないので飛ばさせていただきますけれども、それ以外に核反応のシミュレーションで、単に原子核の性質を調べているだけじゃなくて、応用、原子炉や核変換シミュレーションの基礎データとしても使えるような計算がありますが、もう一つ計算の上でお話ししたいのは、モンテカルロシェルモデルによる次元圧縮という問題です。原子核の場合には、大体10の28乗次元、10の28乗中の28乗ぐらいの大次元ハミルトニアン行列というものを対角化するということが必要になる場合が多々あります。そういう場合に、これを生のそのままでやろうとすると、せいぜい10の10乗次元ぐらいまでしかいけないのですけれども、しかし、最近東京大学の大塚さんたちのグループが開発した方法によると、これを非常に小さい次元に圧縮して、エフェクティブに10の28乗次元の計算ができるようになってきています。これもやっぱり1テラフロップス、100時間、1000時間ぐらいの計算でこういうことができるようになってきていますので、将来的に1ペタフロップス級にいきますと、先ほどの核図表の広い範囲の原子核がこれでカバーできるようになってくるだろうと思われます。
 2番目の話は、極限物質の解明で、先ほど超新星爆発の、この前の話をしていましたけれども、真ん中に実は中性子星というものが存在する、できているということが既にかに星雲の場合には存在することがわかっています。1秒間に30回ぐらい回転するような非常に高速のパルサーが見つかっていますが、場合によってブラックホールのようなものができる場合もあります。例えば小柴さんがノーベル賞をもらったsupernova1987Aというのは、真ん中に中性子星かブラックホールか、どちらができているかわからない状態なのですけれども、ひょっとするとブラックホールかもしれない。こういうものを観測する手だて、それから、こういう高密度、高温の状態を観測する実験というのが世界中で行われています。
 中性子星というのはこういうものですけれども、半径10キロぐらいで、重さは太陽ぐらいで、中心密度が10の12乗kg/cm3。一番我々が今わかっていないことは、表面付近は固体なのですけれども、ここは液体で、その一番中にハイペロン物質またはクォーク物質と言われているような、よくわからない未知の状態が存在すると思われていますが、それを実験的・理論的に解明するということがこれから5年間、10年間の大きな課題で、特に理論で大規模数値シミュレーションをやってここのところを理解する。それが理解できると、実は宇宙物理と連携して、中性子星の構造論が展開できて、実際に観測と比べることができる。これがまさしく今起こりつつあることで、5年から10年の間にこれができるのであろうと。「+5」「+10」というのはそういうことを書いています。これから起こり得るであろうものを書いた年数です。
 じゃあ、実際にこういう中性子星というのは、中に行って、入って見てくるわけにいきませんから、実際どうやってそれを研究するかといいますと、ミニ中性子星をつくる。つまり、それは何かというと、原子核というのは小さい中性子星のようなものですから、逆に言うと中性子星というのはでっかい原子核なのですが、その中に、先ほど言いましたように、ハイペロンというような変わったものがまざってくるはずで、そういうものをむしろ実験してつくってやろうということが実際行われていて、これは先ほどの核図表ですが、こういうハイペロンという変わったものを入れていくという実験が実際行われて、それが見つかっています。見つかっているものの半分以上は日本で観測されたものですが、これから2009年、ことしから、ハイパー核、こういうものの生成実験がJ-PARCで始まって、それと理論の大規模計算とか精密計算と相まって、最終的にはハイペロンと言われている粒子と他の粒子との相互作用、性質がわかってくる。わかってくると、中性子星の中心部がわかってくる。そういう構造になっています。
 特に核力とハイペロン力というのは、これはもともと核力というのは、先ほど青木さんの話にもありましたけれども、湯川先生が1935年に予言されて、65年にそれの一番基礎になるQCDというのを南部陽一郎先生が提唱されたのですが、97年に南部陽一郎さんの一般向けの本の中で、現在でも核力の詳細を基本方程式から導くことはできない。要は、複雑な高分子の性質をシュレーディンガー方程式から出発して決定せよというようなものであると。これは無理な話であると。南部先生というのは10年先を予言するということで有名な先生ですが、残念ながらこのときは10年後、当たったか、当たらないかよくわかりませんが、2007年に実はそれができるということがわかりました。それがまさしく理論の発展と同時に、数値シミュレーションが大きな役割を果たしたということになります。
 これは既に見せられたものですが、こちらは実際に存在する、知られている核力を再現できる、物質の安定性を解明できるということ。もう一つは、今さっき言いましたように、未知のハイペロン力を予言できる。数値計算、数値シミュレーションのいいところはそういう予言力があるということですね。
 こういう核力がわかってきますと、そうすると、精密な原子核計算を行うことによって、実際の実験と理論の予言とを比べることで、ハイペロン力の性質をより精密に決めていくということができます。これも大きな大規模計算の1つです。
 もっと想像をたくましくしますと、超新星爆発が起こって、ものが吹き飛ぶ。そのときに実は時空のさざなみであるところのアインシュタインが予言した重力波というものが出ます。その波形が今や計算できるようになっていまして、爆発が起こったときに出る重力の波形、それから、爆発が起こったときに出るニュートリノを精密に計算して、もちろんその精密計算のためには、ここの中の性質がよくわかってないといけないのですけれども、それをスーパーK、スーパーカミオカンデとか、それから、現在既に建設されているLIGO、重力波検出器、ほかにも幾つかありますけれども、そういうもので観測することで、むしろ重力波とかニュートリノの観測から数値シミュレーション、大規模シミュレーションで予測される爆発の性質や物質の性質を調べるということが10年後にはできる。もちろんこれは銀河の中で爆発してくれないと困りますけれども、そういう準備が今整いつつあるところです。
 最後に、大規模計算の現在と未来ですが、大ざっぱに、格子QCD計算、モンテカルロ計算、時間依存密度汎関数法計算で、大体現在の計算は1Tflops/YEARぐらいですが、次世代になると、より広い範囲での原子核の計算ができるようになりますし、次々世代になりますと、これはほとんどこの段階で、我々が極限物質や重元素起源の解明をするのに十分なだけの原子核の理解が得られるだろうと思います。
 国際的位置としては、原子核の場合には、日本、アメリカ、ドイツが世界の3大拠点で、日本発の手法が多くあります。素核宇宙の連携というのは非常に日本独自のものですが、残念ながら計算資源という意味では、アメリカは既にジャガーとかロードランナーとか1Pflopsのマシーンに突入していますので、その部分で少しおくれをとっている。それを強化しないといけない。実験では日本が明らかに先行している。
 最後、これから5年から10年ですが、今言いましたように、素粒子、原子核、宇宙というものをつないで、大規模計算をそのつなぎ目としてつながっていくということがこれから5年、10年で起こることで、我々、日本の場合に非常にいいことは、それをサポートできる実験体制が整っているということです。
 これは青木さんが見せられたように、こういう計算基礎科学連携拠点をもとにして、各大学、特に素粒子、原子核、宇宙の場合には、京都大学の基礎物理学研究所をはじめとして、いろんなセンターや研究所がありますので、そこをコアにして、各大学とも協調しながら、一緒になって研究をこれから5年、10年、数値計算を中心に進めていくという意欲が盛り上がっているというのが現在の段階です。
 以上です。ありがとうございました。

【土居主査】

 どうもありがとうございました。ここで切らせていただきまして、ご議論いただくのは、この後松元先生のお話を伺った後にさせていただきたいと思うのですが、とりあえず青木先生、初田先生のただいまのお話に対して、ご質問等ございましたらと思うんですが、いかがでしょうか。

【平尾委員】

 原子核物理のほう、初田先生のお話の中に出てきた、いろんなシミュレーションがございますが、私なんか、アメリカなんかに行っていますと、原子核物理の人と原子分子をやっている方々とも非常にコラボレーションが最近特に活発になってきていて、お互い共通するような理論を使っていますので、もちろんそれは特有の課題があるのですけれども、私なんかも、全く違う分野から呼ばれたりするのですが、日本はまだそこまでコラボレーションがなくて、もう少しこれから先いろんな形で2つの分野が融合すると、もっといい成果が上がるのじゃないかなという気がしているのが1点です。
 それからもう1点は、最後にあった重力波の件でございますけれども、これ、実験的にもできるだけ早く重力波を観測しようということで、建設計画なんかも立てているわけですが、さっき先生のおっしゃったのでは、10年後にはシミュレーションがきちっといくということだったのですが、10年ではちょっと遅くて、もっと早く何とか5年ぐらいで観測ができるような形にならないのでしょうかという、その2点です。

【初田先生】

 1点目に関してはまさしくおっしゃるとおりで、カップルドクラスターメソッドというのは、もともと原子核で開発されて、それが量子科学で非常に発展して、それが今もう一度原子核に戻ってきているという状況にあって、世界的にも、特にアメリカ、ヨーロッパでは、わりと両方の研究者が交流するということが非常に盛んに行われています。残念ながら日本では、確かにおっしゃるように、そういう交流がまだあまりないので、ぜひそれは進めていかないといけないと思います。
 それから、2番目の重力波に関しては、計算という意味では、10年後にならないと何も計算できないというわけじゃなくて、徐々に徐々に計算は進展していきますから、現在でも、これは現在の計算、これは現在こういう波形が出るであろうということを数値計算で示したということなので、それをどんどんインプルーブしていくという意味で、10年後にはわりと精度のいいもの、信頼できるものが出てくるのじゃないかという意味ですので。一方で、観測器のほうは、ある意味では重力波の検出器とかはアメリカ、ヨーロッパを中心に非常に建設が進んでいますし、これはもちろん日本のお家芸ですので。キーポイントは、銀河内で超新星が爆発してくれないといけないので、小柴さんは非常にラッキーでしたけれども、何とか爆発してほしいというのは天に祈るしかないというとこです。

【土居主査】

 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。

【寺倉委員】

 格子QCDの話なのですけれども、次世代スパコンが始まったときに、ターゲットアプリとかという調査があって、そのときも幾つかのところから同じ課題が共同して出されたと思うのですけれども、諸外国との競争とかもあって、これは例えば解き方に非常にユニークなところがあるとか、あるいは、どこかが1つやっちゃったらそれで終わりになるという問題ではないですか。ターゲットが絞られ過ぎているという印象があって、それ1個しかないのだったらという……。

【青木先生】

 私のプレゼンが悪かったのかもしれませんが、方法論が絞られているというか、理論は1つです。だから、やることは決まっているのですが、それをやって何を計算するかは千差万別です。だから、ある意味、計算機を使ってどういうおしろいものを計算するかというのが非常に重要になってきて、例えば1つの先ほどの例が、核力の計算というのは、今までだれもそういうことをやっていなかったのですが、そういうほうに発展していく。できればそれもさらに原子核との協調を強くしていきたいというのが我々の戦略で、そういう戦略はほかのところはとっていないと思います。

【寺倉委員】

 ヨーロッパの成果と筑波大でやられた成果の比較がありましたね。あれは基本的には同じことをやっていて、何かお互いに特色があるのですか。

【青木先生】

 先ほどの格子QCDというのは、最終的に正しいようにするためには、格子間隔をどんどん小さくしなきゃいけないですね。それを小さくしていくやり方はいろいろ、それはグループによって違うので、ある意味1つのところが出したからといって、ほんとうに正しいかというのは、今の場合、実験があるから正しそうに見えるけど、ほんとうに正しいかということに関しては、幾つかのグループでお互い比較しないと何も言えない状況です。信頼性を高めるためには幾つかのグループがやらなきゃいけない。そういう意味で、先ほどの計算、同じレベルの計算が日本、ヨーロッパ、アメリカでできるような段階に今来ているというところです。ちょっと前までは日本がかなり先行していたのですが、残念ながら最近は計算機能力の関係で大体同じぐらいのレベルになってきたということです。

【土居主査】

 この後の松元先生のお話をちょうだいしてから、3先生の話題に関しまして、ご議論していただくことにいたしたいと思います。松元先生は宇宙物理学をご専門とされておられまして、千葉大学、テキサス大学のオースティン校等で教育・研究に従事され、現在は千葉大学大学院理学研究科教授でいらっしゃいます。それでは、松元先生、どうぞよろしくお願いいたします。

【松元先生】

 ご紹介いただきました千葉大学の松元です。宇宙分野ということでお話しさせていただきたいと思います。
 宇宙がビッグバンで始まったわけですけれども、その後揺らぎが重力相互作用によって成長いたしまして、銀河が形成され、星、さらに惑星というふうに次々と構造が形成されてまいりました。
 現在すばる望遠鏡が銀河形成期に迫る観測を次々と発表しておりますけれども、南米で建設中の次世代の電波望遠鏡ALMAによっても、銀河形成期についてこれから次々と新しい情報が得られてくるものと考えられております。
 また、今年度には、宇宙初期の揺らぎをより精密に測定する、Planck衛星なども上がることが予定されております。
 こういったいろんな衛星観測、あるいは地上の観測機器による観測によって、宇宙は思いもよらなかったような活動性に満ちているということが次々と明らかになってまいりました。例えば星が生まれるときにはこのような形でジェットが噴き出しますし、またX線で非常に激しいフレア現象、爆発現象が起こるということもわかってきています。
 また太陽よりも重たい星が最後を迎える際には、超新星爆発を起こしまして、その結果として重元素を星間空間に飛散させる。また、ガンマ線バーストという、ガンマ線で非常に強い放射が出る現象というのは、長年にわたってその原因がなぞとされておりましたけれども、最近になりまして、いろんな観測から、これはブラックホールが形成される過程を見ているのではないか。その途中で起きているのではないかということが明らかになりつつあります。それを観測するようなSwift衛星だとか、あるいはガンマ線衛星Fermiという衛星が次々と打上げられております。日本で打ち上げました2005年から活躍しておりますSUZAKU衛星は、X線を放射する例えばブラックホールだとか銀河団だとか、そういったような天体の観測で成果を上げております。今年には、スペースステーションの日本のモジュールのところにMAXIという装置を取りつけまして、全天のX線のモニター観測が始まる予定です。
 宇宙の中には非常に激しいジェットを噴出するような、そういう天体があります。その典型例が活動銀河中心という銀河の中心に巨大なブラックホールがあると考えられている天体です。2012年度に日本で打ち上げが予定されております次世代の宇宙電波望遠鏡ASTRO-Gでは、従来よりもはるかに分解能の高い観測を行って、このようなジェットが噴出する領域をとらえよう、そういうふうな観測が計画されておりますし、同時期には、ASTRO-HというX線天文衛星も日本から打ち上がるということが予定されております。
 このような電磁波分野の観測以外にも、先ほどご紹介がありました重力波望遠鏡、あるいはニュートリノ望遠鏡といった違ったチャンネルの観測も始まっております。
 このように宇宙科学というのは、観測のほうにリードされながら、観測と理論シミュレーションが車の両輪として発達を遂げていっております。
 その課題としては、第1の課題が、宇宙が誕生して、惑星形成に至るまでの歴史を解明するということ。第2の課題は、先ほどありましたような超新星爆発のような天体活動現象の原因を解明するということにあります。
 その対象といたしましては、銀河の形成、その中での星の形成、その星の内部での元素合成、物質進化、さらに超新星爆発やブラックホール形成などのような高エネルギー現象といったものがあります。
 銀河形成とかを扱うためには、宇宙の重力の大部分を担っているダークマターのダイナミクスを解くということが必要になります。元素合成の際には原子核反応等を扱うということが必要になりますし、超新星爆発、ブラックホールのような計算におきましては、高密度状態での状態方程式だとか、一般相対論の効果を取り入れた計算が必要になります。
 計算手法といたしましては、大きく分けて粒子法とメッシュ法がありますけれども、メッシュ法としては、流体計算、あるいは磁気流体計算というものが行われております。また、速度空間の分布関数まで考えましたボルツマン方程式を解く方法、ブラソフ方程式を解く方法なども採用されておりますし、輻射とかニュートリノの輸送を解く際には、輸送方程式を解くということが必要になります。
 最も広く行われております流体系のシミュレーションの分野では、計算領域を格子に分割して、差分化することによって、時間発展を解いていくわけですけれども、その演算量は、1次元方向のメッシュ数をNとしてNの3乗に比例するということになって、現在3次元のシミュレーションというのが本格的に実施されている段階です。
 輻射と流体との相互作用を考えるという、宇宙分野で非常に重要になってくるテーマですけれども、それを扱う際に、従来よく行われていたのは、輻射輸送を拡散近似を用いて近似するというやり方でしたけれども、もう一つのやり方として、より正確に輻射輸送方程式を解くという方式があります。この場合には、光子線の方向の次元が2次元加わりますし、それに振動数の次元が加わりますので、6次元問題となりまして、ペタフロップス級の計算資源を必要とする課題になっております。
 ダークマターの運動を解く際には、ダークマターは重力以外の相互作用はほとんどないような物質ですけれども、そのダークマターが宇宙の初期の構造形成において決定的な役割を果たしているということで、その進化を解くというのは非常に重要な課題になっているわけですけれども、現在とられている方法はダークマターを粒子としてあらわして、その粒子間に働く相互作用の計算を行うということで行っております。直接計算を行う場合には、粒子数の2乗に比例する計算量が必要になりますが、もう一つのやり方として、格子上の重力ポテンシャルを計算して、そのポテンシャルを使って粒子を発展させる。そういうやり方で若干計算量を減らすことができます。
 そのような方法で行われましたシミュレーションの例ですけれども、初期の揺らぎが成長して、重力の作用によってダークマターがいろんな構造をつくっていっているという様子がシミュレートされております。右側に示しましたのが、それの並列効率ですけれども、横軸にコア数、縦軸に計算時間をとります。一番上の線が、10億個の粒子をとった場合ですけれども、この場合には1000コア使った場合でも、コア数に比例するような性能が得られております。
 宇宙分野の計算コミュニティの大きさなのですけれども、日本では宇宙シミュレーションに携わっている人口は約100名余りということで、多くの人たちは国立天文台の計算機を使っております。また、それ以外に、重力多体専用計算機を開発するというGRAPEプロジェクトが続けられてまいりました。
 それ以外のプロジェクトといたしましては、筑波大学のFIRSTプロジェクト、国立天文台の天の川創成プロジェクト、地球シミュレータ共同プロジェクト、宇宙天気予報などのプロジェクトが走ってまいりました。
 大規模な数値計算例を幾つかご紹介したいと思います。一番左にありますのは地球シミュレータを用いて行いました銀河形成のシミュレーションです。この計算は、1000の3乗gridを使って、流体計算で行ったものですけれども、ムービーがありますので、お見せしたいと思います。初期状態は原始銀河がたくさんあるという状態で、これはガスの密度分布をあらわしております。今、次々と超新星爆発が起こりまして、重元素をばらまきながら、ガスが集まっていっているという様子がシミュレートされております。このような非常に複雑な形状のガス分布を伴いながら銀河が形成されていく、そういったのがシミュレートできております。
 このシミュレーション結果をもとにいたしまして、ライマンα線という輝線で、どのような強度分布をするかというのを計算したのが右側の図です。左側はすばる望遠鏡で観測いたしました形成期にあると考えられる銀河の画像です。観測されている画像のさまざまな特徴というのがシミュレーションでよく再現されていることがわかります。この成果はネイチャー誌に掲載されました。
 真ん中にありますのは太陽のシミュレーションなのですけれども、太陽表面に磁気ループが浮上していく様子を3次元の磁気流体コードを用いてシミュレートした結果です。これも地球シミュレータを用いて行った結果です。磁場が浮き上がってくるにつれて、冷たくて重たいガスを上に持ち上げます。そこでレイリー・テーラー不安定性という不安定性が成長しまして、ガスがフィラメント状に分裂して、磁力線に沿って落下していくという、実際の太陽の観測をよく説明できるような結果が得られております。これもネイチャーに結果を報告した研究です。
 右側の図は、天文台の計算機を使ってシミュレートしたものですけれども、ブラックホールの周りに形成されるガス円盤からこのようなジェットが噴出していくという、そういう3次元の磁気流体シミュレーションを行った例になっております。
 ここに示しましたのは筑波大学を中心として行われましたFIRSTプロジェクトのスライドです。宇宙が膨張して、温度が次第に減少していく。それによって電離していたガスが中性化いたします。そういった中性化したガスの中で、構造がどんどん成長していって、最初の世代の星が誕生していく。そういうシミュレーションが行われました。その時代というのは、ビッグバンから38万年後に宇宙が晴れ上がってから、数億年の期間を対象としております。
 これはダークマターがつくっている重力場の中で、ガスが次々と集まっていって、その中でも特に密度の濃い部分が星を形成していく、宇宙最初の星ができていくという過程のシミュレーション結果です。
 この先にありますのは、できた星によって周りの中性化されたガスが照らされて、及びイオン化されていく、そういう過程を計算する必要がありますけれども、そのためには、原子と光とダークマターを含めた計算が必要になります。
 ということで、先ほど少しお話ししました輻射流体力学の計算を行う必要があります。これを拡散近似等は用いずに光線をちゃんと解いていくという方式で行いますと、Nの6乗の負荷がかかってまいりますので、ペタフロップス級の計算量になるテーマになります。
 次世代のスーパーコンピュータで宇宙分野でどういうふうな挑戦的な課題があるかということをリストいたしました。その1つが今紹介しました輻射流体力学を用いた宇宙再電離過程の計算ということです。それから銀河形成というのも大きなテーマになります。先ほど原子核分野等でお話がありました超新星爆発、さらにブラックホール形成といったテーマ。ブラックホールができた後でそこに物質が落下していく際にどのような放射スペクトルが得られるか、またジェットがどのようにして出てくるか、さらに太陽ダイナモといったものも大きな課題として挙げることができます。
 銀河形成のシミュレーションに関しましては、国立天文台で現在天の川創成プロジェクトという形で研究が進んでおります。この研究では、ダークマターは粒子として扱いますし、また流体のほうも、スムーズドパーティクルハイドロダイナミクスという粒子法を用いて計算を行っております。これは実際の観測です。観測されているような渦巻き銀河を計算機の中につくるということです。そのシミュレーションの例をお見せいたします。
 これはダークマターの集団、ダークマターがつくっている重力場の中でガスが集まって、あるいはダークマターの固まりが相互作用をしながら構造をつくっていくという過程を例としたものです。
 だんだんと構造が大きくなりまして、それらが衝突を繰り返して、銀河を形成していきます。最終段階のほうに近づいてまいりますと、このような形で、渦巻きの腕があらわれてまいります。さらに時間が経過すると、このような渦巻き銀河が形成されていく。現在は300万個程度の粒子を用いた形でこのようなシミュレーションが可能になっており、下の図にあらわしましたのはシミュレーション結果から導いたガス密度分布ですけれども、よく銀河の腕の構造などが再現されていることがわかります。
 ただ、星団や星形成領域といった銀河の進化を考える上で非常に重要なものを分解するためには、まだあと粒子数を3けた増やす必要があるということで、ペタフロップス級の計算が必要になってまいります。
 宇宙分野の戦略的なターゲット、挑戦的ターゲットとして非常に重要な課題というのが、先ほど原子核のほうからもありましたブラックホールや中性子星の誕生過程をシミュレートするという課題です。ブラックホールや中性子星や超新星爆発、あるいはガンマ線バースト。ガンマ線バーストは最近超新星爆発と関連しているということも言われておりますけれども、こうした宇宙最大の爆発現象をシミュレートするということが必要になってまいります。ところが、先ほどの原子核の話にもありましたように、計算機の中で超新星を爆発させるということは、今まで何十年間にもわたって努力が続けられてきたにもかかわらず、まだ成功しておりません。爆発未遂に終わっております。これをちゃんと爆発させるためには、原子核反応、高密度の物質の状態、それに加えて、さらに磁場、あるいは回転といった要素、それからニュートリノの輸送といったようなものを取り入れていく必要があると思われます。そのような計算は、ペタフロップスコンピューターを使って初めて可能になるものです。
 ガンマ線バーストと呼ばれる現象に関しまして、これは非常に重たい星が重力崩壊を起こしまして、つぶれていって、中心にブラックホールを残したときに、つぶれ残った物質が周りを回転する円盤をつくりまして、その円盤から物質が落下していく際にジェットを噴出する。このジェットが星の外層を突き破るときに、強いガンマ線を放射するのだというモデルが提唱されています。ただ、これもまだ想像段階にすぎず、実際にシミュレーションでこの全ストーリーを再現していくというのが今後5年から10年にかけての宇宙分野、あるいは素核分野と連合して行うべき非常に大きな課題です。
 このような計算を行うためには、ブラックホールの形成というものを扱わないといけませんので、アインシュタイン方程式、一般相対論の方程式を解く必要があります。このような一般相対論的な方程式を解くという数値相対論という分野で、日本は過去20年以上にわたって世界の研究をリードしてまいりました。素核、宇宙連合で今年度から始まりました新学術領域のメンバーである柴田大さんがそのキーパーソンになっておりまして、京都大学の中村卓史先生と共同で、現在世界標準となったアインシュタイン方程式の定式化を完成させました。それを用いまして、世界初の連星中性子星の合体からブラックホールが形成されるような過程のシミュレーションに世界で初めて成功しております。ただ、先ほど申しましたような、非常に高密度状態での原子核反応、電子捕獲反応、ニュートリノ輸送といった微視的な過程を十分な分解能で取り扱うには現在のテラフロップスコンピューターでは不十分です。ということで、ペタフロップスコンピューターを使うことによって、その微視的過程を取り入れた、さらに磁場も取り入れた、そういう計算によってブラックホールができる過程、それがガンマ線バーストあるいは超新星爆発に至るような過程を計算するということが初めて可能になってまいります。
 また、連星中性子星合体から重力波が出てくるという計算も、より正確な計算、3次元計算が行えるようになります。
 ブラックホールが一度形成されますと、それに落下してくる物質によって、その周りを回転する円盤が形成されます。その円盤からX線が放射されまして、それがSUZAKUだとか、いろんなX線衛星で観測される。そういう観測結果を説明するためのシミュレーションということが必要になってまいります。
 日本のグループは、こういうブラックホールの周りに形成されるガス円盤、降着円盤のシミュレーションで、世界を先導してまいりました。この上に示しましたのはそのシミュレーション例ですけれども、白いのは磁力線なのですが、磁場を含めた計算を行うことで、磁気乱流の成長、それからそれによる角運動輸送によって、周りを回っているプラズマが角運動量を失って落下していく。その際にこういう円盤を形成するという、この過程を再現することが3次元磁気流体シミュレーションによって可能になってまいりました。これはその計算例の動画ですけれども、ブラックホールの周りを回転しているプラズマ円盤が、渦を巻きながら中心に物質が落下していっている様子が再現されております。
 このシミュレーション結果をもとにしまして、それをいろんな方角から観測したらどう見えるかということを相対論的なレイトレーシングを用いて計算したのがこの図です。数字は回転軸方向と視線方向のなす角度で、これは赤道面に近い方向から見た場合なのですけれども、回転に伴って、変光のような現象ですね。光度の変動のようなものも見られております。また、こういうシミュレーションから、ジェットが噴出するという結果も得られております。
 ジェットというのは、活動銀河中心、それからマイクロクエーサー、銀河系内のブラックホール候補などで観測されておりますけれども、このジェットをより高い分解能で、現在はブラックホールの半径の100倍ぐらいのサイズのところの分解能しかないわけですけれども、それよりも6倍高い分解能で観測するというのが2012年度に打ち上げられる予定のASTRO-Gという日本の天文衛星です。それをにらんだシミュレーションコードの作成なども行っております。
 日本の強い分野は何かということをここに挙げているのですけれども、磁気流体のシミュレーションは日本で先導的に始まったシミュレーションなのですけれども、世界各地で現在いろんなコードが作成されて、激しい競争状態にあります。数値相対論の分野も日本がリードしてまいりました。現在、他国に1、2年分のリードがありますけれども、他の国でもコード開発が進んでおりますので、それらのコードが完成すれば、高速計算機を使えるようなグループが勝利するのではないかということを危惧しております。
 これはちょっと飛ばしますけれども、以上、今までお話ししてきましたように、宇宙分野では、ここに挙げましたような幾つかの挑戦的なターゲットがあります。いずれも0.1PF・yrから1PF・yrというのを必要とするような大規模な計算になります。
 最後に、宇宙シミュレーション分野の体制についてお話ししたいと思います。現在、宇宙シミュレーションの分野は、先ほどお話ししましたように、国立天文台を中心として、さまざまな大学、自然科学研究機構に所属する分子科学研、核融合科学研究所などとも連携しながら、シミュレーションが進められております。また、衛星計画を担っているJAXAとも強い連携を保っております。
 この国立天文台が、先ほど紹介のありました計算基礎科学連携拠点、この3拠点の一翼を担うことによって、素粒子、原子核とも連携しながら、超新星爆発、ブラックホール形成なども含めたシミュレーションをこれから実施していきたいと考えております。
 以上です。どうもありがとうございます。

【土居主査】

 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの松元先生のご説明だけでなく、その前の青木先生、初田先生のご関係も含めて、ご質問、あるいはご議論いただければと思います。

【矢川委員】

 粒子法で10億粒子を用いて、コア数に比例した効率が得られるということでございましたけれども、これは大変チャレンジングな成果だと思いますけれども、10億粒子ぐらいまでいきますと、相当いろんなバリアが出てくると思うのですけれども、どういう新しい工夫で、10億重度で、そのコア数に比例した効率を得られるようになったのでしょうか、教えていただければと思います。

【松元先生】

 今示しました計算というのは、実際パーティクル・パーティクルとパーティクル・メッシュという、その2つの方法を組み合わせたような方法で行っております。パーティクル・パーティクルの部分の計算量というのがかなり大きいわけなのですけれども、そこの並列効率はかなりよくて、そのためにパーティクル・メッシュ部分の効率のほうが粒子数が大きくなるとだんだんと悪くなってくるのですけれども、それは10億粒子ぐらいの、むしろ粒子数が多いほうが、ですから1,000個ぐらいのコア数の場合には並列効率が高くなりますので、その点で今の精度が実現されているということで、個数効果で、むしろ多いほうが効率がよくなるということです。

【矢川委員】

 それはネットワークの速度との関係ですよね。だけど、トータルな時間もかなりいいということになりますか。それが一番問題ですよね。

【松元先生】

 粒子数の大体1.3乗ぐらいに比例してトータルな時間が増えていくということになります。

【平尾委員】

 さっき伺ったポアソン方程式なんかは、並列が非常に効率がいいと思うのですけれども、それ以外の計算で、格子かgridを切ってやっていますよね。それ以外の計算のアルゴリズムの並列化というのはどの程度なのでしょうか。

【松元先生】

 流体計算の部分については、エクスプリストな計算方法を用いておりますので、並列効率は非常に高いです。ただ、輻射輸送で散乱を含めたような場合とか、マトリックスを反転するようなことが出てきたところでは並列効率が落ちますので、そこではいろんなほかの分野で開発されている効率の高い方法を組み合わせながら効率を高めていっているというところが現状です。

【寺倉委員】

 GRAPEの利用の話をされましたけれども、次世代スパコンとGRAPEのようなアプローチとの関係のことが1点と、もう一つは、計算とは関係ないのですけれども、いい成果がネイチャーに出たという話をよく出されるので、物理学会では物理学会誌をプロモートしようというアクティビティーがあるので、ちょっと引っかかるのですがね。いい成果もできるだけ日本の物理学会誌に出して、それがいかに世界中で注目されたかという話をしていただけると非常にうれしいと思うのですけど。

【松元先生】

 GRAPEはパーティクル・パーティクルの計算に非常に向いている。その部分を高速化する、そういう計算機ですので、特に衝突効果が重要な場合、球状星団だとか、そういったものを扱う際には非常に有効な手段だと思います。
 きょうお見せしましたようなダークマター等を扱う場合には、無衝突系ということは重要ではありませんので、そういった分野では、パラレル系の並列計算機でも十分な効率が得られていると思います。
 論文をどこに出版するかということで、実は天文分野というのはあまり物理学会誌のほうに出さずに、日本天文学会誌のほうにいい成果、特に衛星プロジェクトなどの成果は出しなさいという形で進んでおりますけれども、こういうシミュレーション分野の成果につきましても、天文学会誌のほうで特集号を組んでもらうということもあると思いますし、あるいは、素粒子、原子核と共同で行っているような研究の場合には、物理学会誌のほうにどんどん投稿していくというふうにしたいと思います。

【寺倉委員】

 物理学会誌でなくてもいいのですけど。

【中村委員】

 少し組織的なことをお伺いしたいのですけれども、今もそこに三角形の計算基礎科学の拠点のお話がありましたけれども、2つ質問があるのですけれども、1つはソサエティーとしてどれくらいの研究者がおられるか。先ほどQCDのほうですと、日本では100人とか150人ということでしたが、全体としては天文も含めるとどれくらいの人数なのでしょうか。

【青木先生】

 聞いた人数を合わせると400〜500人ぐらいということだと思います。

【中村委員】

 もう一つ質問で、私、生物のほうから出ているのですが、連携拠点の分野間融合ということで、生物も将来含めるということだったのですけれども、生物のほうでの第一原理といいますと、第一原理としては原子、分子ぐらいになっていて、まだ原子核とか素粒子とか、そこまでは大分距離があるなと思っているのですけれども、そこで、生物のほうも将来は加わってほしいということは、サイエンスとしての連携なのか、あるいは、もうちょっとテクノロジー的な連携なのか、そこはどういうふうにお考えでしょうか。

【青木先生】

 計算基礎科学コンソーシアムというのは、分野として一緒になるわけではなくて、計算機を使った基礎科学の分野でお互い情報交換したり、対外的に宣伝したりとか、そういう連携だと考えています。

【中村委員】

 どちらかというと、テクニカルなということですか。

【青木先生】

 そうです。

【土居主査】

 ほかにはいかがでしょうか。

【小林委員】

 組織の話で、先ほど3つ合わせて400人ぐらいというお話だったのですが、世界のほうもそうなのですか。1,000人、1,000人、1,000人で、3,000とか4,000とかいうオーダーなのでしょうか。

【松元先生】

 宇宙物理学分野はほぼ1,000人だと思います。

【小柳委員】

 大体そんなもんですか。

【青木先生】

 同じです。やっぱり3,000からぐらいということだと思います。

【小林委員】

 10%ないし15%。

【青木先生】

 ええ。

【小林委員】

 それから、松元先生にお伺いしたいのですが、超新星の爆発、未遂に終わっているという話で、ペタクラスのコンピューターが出たら成功するだろうとおっしゃったのですが、それは背景としてはちゃんとしているのですか。それとも、まだするだろうという段階なのでしょうか。

【松元先生】

 幾つかの有望な可能性が出てきております。1つは、流体力学というのはプロセスだけでも、音波の反射を2次元、3次元を使って計算していくと、従来なかったような不安定性が出てきて、ひょっとしたらそれで爆発するかもしれないという研究が今、非常に活発に行われております。それ以外の可能性といたしまして、磁場と回転の効果を含めますと、ジェットが出るということで、それによって爆発を誘起する、そういうふうな可能性もございますので、磁場とか、多次元効果を含めたような、そういう3次元、2次元以上の大規模シミュレーションによって、おそらく5年以内には爆発すると思っております。

【宇川委員】

 超新星はほんとうに爆発してほしいのですけれども、この問題は随分長い歴史があって、もちろん日本でも随分やられてきたと思いますけれども、アメリカでも例えばイリノイとかサンディエゴとか、随分と力を入れてやっているわけですね。そのあたりの、ヨーロッパもあると思いますが、日米の強み、弱みの比較をもう少し踏み込んでいただけるとよかったかと思いますが、コメントをお願いします。

【松元先生】

 日本の強みというのは2点あります。1つが数値相対論です。数値相対論の分野で世界をリードしてきたということで、一般相対論的な時空構造の変化まで含めたようなシミュレーションということでは、まだ世界の先を走っている。それから、磁気流体の分野で非常に日本が強いということが挙げられます。ということで、超新星の計算に必要な相対論的効果を取り入れるというところ。それから、相対論的な磁気流体力学計算によって、従来なかったメカニズムで爆発ができるのではないか、そういったところを計算できるというところで日本の強みがあると思っております。

【宇川委員】

 私が伺いたかったのは、日本の強みはわかったのですが、逆にアメリカの強みはないのかと。アメリカの強みもあるはずで。

【松元先生】

 アメリカの場合は、シカゴ大学でフラッシュというプロジェクトで、非常に大規模な多くの計算科学の人たちも加わった形で、超新星爆発を計算するような、それは細かい計算が必要なところではメッシュを細かくするというアダプティブメッシュリファインメントという、そういう手法のシミュレーションコードが多くの人材を投入して開発されておりまして、そういう点では、そのMRコードというところは日本が今追っかけているところですね。

【平尾委員】

 僕は専門外でよくわからないのですけれども、超新星の爆発というのは、非常に非線形な現象ですので、言ってみれば、単にシミュレーションの時間を長くするとか、グリッドを細かくするとか、そういうことももちろん関係するかもしれませんけれども、それ以外のファクターのほうが多分効いてくるのだろうと思うのですね。何が効くかというのを見つけるのはなかなか大変じゃないかという気がするのですが、その点はいかがですか。

【松元先生】

 ただ、従来の計算というのが主に1次元だったのですね。球対称型でやっていたために、いろんなところが見落とされていたということが言えると思います。先ほど言いました音波の非線形な反射による負担・不安定性なんていうのも、つい2、3年前までだれも思いつかなかったことなのですけれども、これが今、超新星爆発させる1つの大きな可能性として浮上してきているということで、多次元化した計算を行うことによって、いろんな可能性が現在生まれてきているという段階だと思います。

【小柳委員】

 コンソーシアム全体についてお伺いしたいのですが、3つの研究所を中心に日本中が連携すると大変すばらしいことだろうと思うのですが、この際、コンピューター技術というか、コンピューターサイエンスの意味での連携といったことをどのように行うご予定なのかということについて、もう少し説明をいただければと思います。筑波大の中でやっていることはもちろん私もよく存じ上げておりますが、これが日本全体のレベルでどのように今後進められ、そういう点で、異分野が計算科学という意味で連携し得るのかという、その点について少しお話を伺えればと思います。

【青木先生】

 構造が2つあるので説明しにくいのですが、1つは計算基礎科学連携拠点の場合なのですが、この場合には、エクスプリストにアプリと計算機が密に、今まで筑波大でやっていたのを3拠点に波及させようと。さらに各分野でのスクールなどを通して、計算機科学の手法だったり、そういうものを交流しようというのが1つです。これはわりと体制的にそういうふうに進めようと。
 もう一つの、これはある意味、中でいろいろ意見交換をしようという、実際にどこが主導権をとるかということがない組織なので、情報交換の場として計算基礎科学コンソーシアム。これには、例えばベンダーさんにも入っていただいて、いろんな情報交換をする、そういう組織が今までなかったので、そういうものをつくろうという、二重構造になっているのですが、これは緩いけど、わりと大きめにとっている組織です。ですから、先ほど言った素粒子、原子核以外にも入っていただいて、ここでいろいろ意見交換なり、情報交換なり。その中からどういうのが立ち上がってくるかというのは、これからの我々の努力次第というところもあるのですが、これでよろしいですか。

【小柳委員】

 どうもありがとうございます。私の限られた経験からいうと、こういうシンポジウムとかワークショップ等を開きますと、皆さん、発表者は自分がどんな成果を得られたかという、各分野での成果は強調されるのですが、そのためにどのような計算技術を開発したか、あるいは他の分野と連携して進んだかとか、そういう側面があまり語られないということは大変残念。これは土居先生のいろんなプロジェクトも、矢川先生の昔の未来開拓でも似たようなことがありますが、そういう点をもっと改善して、ほんとうにこういう連携ができるような体制にしていただければと思っております。

【青木先生】

 特にこの場合は、ちょっと見えないのですが、3つのAというのがあって、アルゴリズム、アーキテクチャー、アプリケーションと、計算機の部分が2つ軸になっているという、目指しているものはかなり計算機中心で、現在は筑波大の計算機工学の方に中心になってもらいますが、将来的にはそれをいろいろ広げていきたいと考えています。

【土居主査】

 ぜひお願いいたします。
 それでは、金田先生のお話をここで伺わせていただきたいと思います。そして、その後、また個別に金田先生に対する質疑応答をさせていただいた後、全体の議論をさせていただければと思います。金田先生は流体をご専門とされておられまして、東京大学、名古屋大学で教育・研究に従事され、現在は名古屋大学大学院工学研究科教授でいらっしゃいます。それでは、金田先生、よろしくどうぞお願いいたします。

【金田先生】

 ご紹介ありがとうございます。流体分野について説明させていただきます。
 まず最初に、なぜ流体分野かについて。次世代スパコンコンピューティングの資料に次世代スーパーコンピュータに開発による我が国の社会の広範な分野への貢献と題して、こういう資料がありましたので、これに従って説明いたします。
 ここには目標1、2、3、4、5、6と述べてあります。まず第1、「飛躍知の発見・発明〜未来を切り拓く多様な知識の蓄積・創造」ということですが、釈迦に説法になるかもしれませんが、お許しください。流れは、皆さんご存じのように、古来、知的興味の対象であります。例えばこういう芸術作品に見られるように、多くの興味を持たれています。芸術的才能がなくても、コンピューターグラフィックスでこういうのはかけるのですが、もっと才能のない人がデザインすると、例えばこうなっているのですが、私がデザインした絵なのですが。ここで言いたいのは、流れというのはユビキタスといいますか、いつでも、どこでもあります。その証拠に、例えば日常概念の中にも深く入り込んでいます。例えば言葉、「流派」、「一流」、「二流」、「流れを読む」、あるいは「乱流」、「乱世」、「乱れ髪」、「心の乱れ」。私は流れという概念は、特に日本人の感性に合っているのじゃないかと偏見を持っております。日常概念だけではなくて、科学概念で、例えばみんな片仮名ですが、ソリトン、カオス、フラクタル、これは流体力学、特に計算科学が密接なサポートをして発展してきた概念です。
 飛躍知の発見・発明に関しては、例えば自然の探求に関して、今、松元さんからもお話ありましたように、宇宙において質量密度、ダークマターの分布、あるいは降着円盤、惑星レベルでは木星の大接近、太陽コロナ、太陽風、地球レベルでは地球ダイナモ、地磁気の反転、ぐっと下がって、量子では、superfluid乱流に興味が持たれています。
 また、原理については、強い非線形の非常に多くの自由度を含んだ開放系の示すコレクティブなものの示す秩序、あるいは無秩序についての法則性がいまだにわかっていません。乱流は特に古典物理における未解決な最重要問題の1つとして知られています。また、数学分野においては、クレイの数学研究所が選んだミレニアム7問題の1つとして、ナビエ・ストークス方程式の解の存在と一意性、スムースネスが挙げられています。この7問題に関しては、ポアンカレ予想が解かれたことはよく知られていますが、流体の問題に関しては、おそらく近未来には解かれないだろうと言われています。
 また、実応用に対しては、さまざまな応用分野で莫大な自由度をどのように減らすか。その減らし方の信頼性、評価はどうするかというのは大きなチャレンジになっています。
 流体力学のおもしろいところは、このような探求があり、チャレンジだけじゃなくて、今のお話にありましたが、素粒子から宇宙はいいのですが、この点々々のところにこそ、もしかしたら真骨頂があるかもしれません。それはなぜかといいますと、これは仮にこの中間領域をメゾスケールといいますと、これは我々の身の丈のスケールの問題です。ですから、我々の生活に直結しています。このことは目標2から6を見ることによってもわかることができると思います。
 例えば目標2には、「科学技術の限界突破〜人類の夢への挑戦と実現」とあります。その例として新型ロケットエンジン、次世代航空機、核融合の開発とあります。ちょっと先かもしれませんが、気象コントロールがあり得るよと学生によく発破をかけていますが、こういう絵を借りてきました。
 それから、目標3、「環境と経済の両立〜環境と経済を両立し持続可能な発展を実現」。その課題には地球温暖化の解明、大気海洋汚染、自然エネルギー、例えば風車の利用があります。これらは絵で直感的にわかりますように、すべて流体力学が密接なかかわりを持っています。
 さらに、「イノベーター日本〜革新を続ける強靱な経済・産業を実現」。省エネルギー、これは油の輸送だと思います。いかにコストを低くして、油を輸送するか。あるいは低公害車な新幹線、あるいはものづくり。この絵は昆虫ロボットだと思います。
 それから、生涯はつらつ生活、健康な日本を実現。医療においては、血流、例えば脳梗塞、あるいは肺の気管支の流れ、花粉の飛散、あるいは血流にドラッグをどのように効率的に運ぶか。あるいはマイクロバブルで腎石、胆石を破壊するとか、これもすべて流体力学が深くかかわっています。
 最後に、安全が誇りとなる国、世界一安全な国を実現。そこの課題としては、防災、津波、爆発・火災事故、噴火、熱流体、地球環境としては台風、集中ゲリラ、竜巻、ヒートアイランド。原子力はどこにくくっていいかわかりませんが、原子力も非常に広範なテーマですが、流体が密接に関係しております。
 このような目標と流体のかかわりを見ますと、おそらく流体力学が各応用分野において重要なことはおそらくあまり異論がないと思われます。そこで、問題として、じゃあ、応用分野ごとでいいのかという質問があるかと思います。それに答えるには、まずさまざまな流れの特徴を考える必要があるかと思います。
 またこの絵を持ってきました。さまざまな流れのコアのダイナミクスは流体力学であります。流体力学の中では、最も大事なパラメータとして1つレイノルズ数という概念があります。これは、特徴的な速度に比例し、粘っこさに逆比例します。流体力学の教えるところによりますと、レイノルズ数が大きくなるほど流れは層流、乱れない流れから乱流になる。一般のここにありますような、我々の身の丈の周りの現象のほとんどはレイノルズ数が非常に大きくて、特徴的な長さと計算上一番必要とされる小さなサイズの比が、レイノルズ数のラフには4分の3乗に比例することが知られています。3次元ですので、自由度は4分の9乗に比例する。これがどれぐらいの値かということを見積もってみました。私の計算によりますと、例えば木星の大赤斑では、自由度はアボガドロを優に超えます。また飛行機の周りの流れでは、10の21乗。もうちょっと小さなスケール、自動車においては10の14乗ぐらいです。しかるに、今の我々の最大の扱える自由度は、以前地球シミュレータに実現しました、大体この程度の大きさになっています。すなわち、まっ正直な、あるいは第一原理的な直接数値シミュレーション、DNSとこれから呼びますが、これは非常に難しいということがわかります。
 してみると、疑問は、それぞれの分野で、現象に応じた理解、あるいはモデル化をするしかないのかということが考えられますが、一方、流体力学の我々の立場では、おそらくそうではないと。見かけの違いにもかかわらず、本式な共通性があるのではないかと。
 いろんな絵を見繕ってきましたが、この絵を見ます。まず木星の大赤斑、これはアリューシャン列島か、ちょっと忘れましたが、空から見た流れの模様です。これは実験室です。これは小さな実験の系です。直感的に何か非常に似たところがあります。
 これをもう少し定量的に見る例が、例えばエネルギースペクトルという概念がありまして、乱流というのはいろんなサイズの渦からなっています。各サイズがどれぐらいの強さを持っているか。横軸にサイズの逆数を入れまして、端数をとっております。大気乱流、あるいは粗面、あるいは滑らかな面、格子を過ぎる流れ、物体の後ろのような流れ、ジェットの流れ、境界層の流れ、いろんなものをデータでとってみますと、高波数、すなわち小さなスケールではいろんな流れがオーバーラップしている。これはおそらく何らかの普遍性があるということを示唆しています。これが現代の乱流理論の中核になっているKolmogorovの普遍性の考え方です。これはまたこれから主流になると思われる乱流のLarge Eddy Simulationモデルの理論的骨格になっている概念です。
 特に訴えたいのは、これまで計算資源の制約から、乱流のシミュレーションはほとんど現実からかなり低いものしかできなかったのですが、最近、現実に近いレイノルズ数のシミュレーションができるようになりつつあります。ただし、先ほど言いましたように自由度が非常に大きいので、ほとんどの現実的な細かなところまで入れたシミュレーションは不可能です。ですから、1つの考え方として、共通的な本質に的を絞った規範的な乱流DNSを行って、より高いレイノルズ数を実現する。計算資源の選択的集中によって、分散化や重複を防ぐべきである。次世代スパコンならではのより高い、より速いDNSを追求すべきである。それがひいてはモデルの開発・検証につながってくる。
 例えば乱流境界層、新幹線、砂漠、現象としては全く別ですが、乱流境界層の立場から見れば、あるいはこれは実験ですが、ほぼ共通性を持っていると考えられています。
 そのようなカノニカルな問題の例として、ざっとリストしました。例えばよく注目される周期境界条件下の乱流、これからBox乱流と呼びます。そのほか、たくさん、カノニカルなチャレンジすべき問題がありますが、時間の関係で省略します。
 ただ1つ直感的なアナロジーとして紹介したいのは、カノニカルな乱流というのは、ある意味で陸上競技みたいなものじゃないかと時々考えます。特にBox乱流、1番目の境界のない乱流は、ある意味100メートル走で、すべての運動競技に共通した本質だと。余計なことをすべてはぎとった結果がカノニカルの極限、Box乱流かと思います。これはルールが非常に単純で、パラメータが1個しかありません。ローカルではない。つまり現象によらない。あるいは、それだけに国際的なターゲットにもなっています。カノニカル乱流を追求することによって、もう60年前になりますが、フォン・ノイマンがあるところで述べたフレーズがあります。乱流のこれまでの従来の方法によるアプローチの難しさを述べた後で、これらの条件下では、「there might be some hope to break the deadlock by extensive,but well-planned,computational efforts.」これは60年前に言っているのですが、今我々はちょうど現実的な乱流のレイノルズ数のレジームに入ってきて、60年来の夢がかなうのじゃないかという期待をされております。
 それでは、それを担う国内外の状況について簡単にご紹介します。まず国内では、幸い、流体力学の横断的な組織、世界的にもユニークなものがあります。そこでは、定期的に数値流体シンポジウムが開かれておりまして、例えば去年の12月の実績では200件以上の発表があります。この共催団体からわかりますように、非常に横断的な内容になっています。日本は特にカノニカルな乱流には、航研にありましたNWT、あるいは地球シミュレータによって非常に実績があります。我々は地球シミュレータをもとに流体力学会で呼びかけまして、乱流コンソーシアムをつくって、幾つかの実績を出しております。
 例えばBox乱流についてご紹介します。より高いレイノルズ数の追求として、Box乱流自体はスペクトル法でOrszagによって、1970年代にされましたが、こっちはロングスケールで、一番大きなシミュレーション、我々が最近やったものですが、いずれも、赤で書いたのがゴードンベルを受賞しております。これは実は6年ほど前にやったものですが、いまだに世界記録としてキープしていますが、それは後でまた。
 さて、アメリカでは、日本の流体力学会みたいなものはありませんが、アメリカ物理学会流体部門が流体力学会と同じくいろんな分野から横断的に参加しています。そこで、このときに小さなシンポジウムがありました。そこで、例えばさっきのBox乱流の我々のアチーブメントは多分影響を与えたと思いますが、4,096の3乗が我々の記録ですが、2011年までに1万2,000程度が、ちょっと微妙な言い方で、することが可能になるという言い方でプロポーザルを書いています。
 ここの主催者のPKさんに日本はどうしますかと聞かれたときに、首を傾げていて、難しいかなとか言っていたら、こういうリポートがあるからと教えてくれました。NSFのリポートですが、そこでは、例えばモデルプロブレムの中に3つ例がありまして、ここのBox乱流のシミュレーションとQCDとMDが挙げられていました。最近TeraGrid Science Highlights brochureを見ますと、PKさん、例えばある文章を書いていまして、「turbulence is a part of our daily lives.It is also one of the supreme challenges of science.」これはとてもいいことを言ってくれています。ここに「the Earth Simulator in Japan has challenged U.S. strength in large-scale turbulence studies.」ここは認めてくれたのはいいのですが、彼らは「re-establish U.S. leadership」と書いてくれています。このままいくと我々もリーダーシップをアメリカに譲る。Blue Waters ProjectもBox乱流をやると思われます。
 ヨーロッパでは、これもニュートリノ研で去年乱流プログラムが4カ月あったのですが、そこでBodenschatzさん、ヨーロッパでこういう横断的な組織をつくろうとしているリーダーで、実験系だけじゃなくて、コンピューターやシェルも含んだところなのですが、この3つのグループを束ねて、ハイパーストラクチャー、共通のものをつくろうとしている人に話をしていたときに、やはり日本のことを気にして、「日本はどうなりますか」と言われて、「個別分野ではおそらく次世代スパコンが使えるのだろうけど、基礎分野ではなかなか厳しい」と言ったら、彼はおもしろいものがあるから見せてあげると。長い文章で、それを抜粋してきました。ヨーロッパでも、分野横断的にカノニカルな問題を追求しようという動きがあります。また、ある文献、Wissenschaftsrat、これはドイツの学術会議か学振に相当するものだと思うのですが、そこでInstallation of European Supercomputersのリコメンデーションレポートを出していまして、そこでリサーチエリアに流体力学をちゃんと含んでくれています。
 最後に、期待される成果、チャレンジ、課題、現状と成果について、簡単にご説明します。まず先ほど述べましたBox乱流、これは先ほど述べましたように、世界記録を今でも、実はアメリカでは8,000の3乗がやられつつあると聞いていますが、公式文書ではまだ見てないので、まだ1位かなと。次世代を用いると、横川さんの試算では16384の3乗というのができるのじゃないかと。これは非常にけた違いなのですが。期待される成果としては、特に乱流中のエネルギーカスケード機構、あるいはミレニアム問題に関連して、解の微細構造が解明されるのじゃないかと。それがモデルの開発・検証に役立つはずです。
 もう一つカノニカルなものとして、チャネルがあります。これについても日本は非常な実績を持っていて、ここに具体的なデータがあるのですが、今、5年程度のところで一番チャレンジングな課題は、壁近くの構造と遠くの構造がどのように相互作用しているのかと。あるいは、抵抗を少なくするためにポリマーを入れたりするテクニックが今実用化されつつありますが、それの解明に貢献すると期待されます。
 それから、乱流燃焼、これも非常にチャレンジングな課題ですが、これも世界初、世界最大のDNSが日本で実行されています。この赤線でいくと、この辺に到達できる。これはBox乱流とチャネル乱流と燃焼乱流の過去の履歴と日本の貢献をプロットしたものですが、ちょっと細かくなりますので、省略します。
 火を操るという人類の根源、乱流燃焼物理の解明。これ、特におもしろいのは、ここ5年、10年程度でおそらく現実的なエンジンレベルのレイノルズ数のDNSが可能になってくるだろうと思われます。ただ、エンジンそのものがそのままできるかといいますと、何とも私はよくわかりませんが、少なくともレイノルズ数領域が到達できると予想されます。
 最後の例として、まだたくさんあるのですが、これも非常にチャレンジングな課題で、最近乱流というのは、これまで非常にでたらめに見えるので、統計的なアプローチが主流でしたが、力学系の観点から見ようと。周期軌道を見つけようという試みが日本を先頭にして非常に注目を浴びています。もし乱流中に周期軌道があると、原理的には、いわゆるインバリアントメジャーといいますか、統計力学のカノニカル分布に相当する、あるいはマイクロカノニカルに相当する不変集合に対する知見、学問的には非常にチャレンジングですが、一方、現実的にも、境界層などでバッファーレアという、壁に近いところは既にわかってきましたが、周期解があるということは、いつ何が、どこら辺で起きるかとか、どこを突つけばコントロールしやすいかに知見が得られるということです。
 最後にまとめ。なぜ流体分野か。さまざまな貢献が期待できますと。
 応用分野ごとでいいか。ノー。カノニカル乱流のDNSに集中して、次世代スパコンの能力でなければできないことに集中したい。それによってより高いレイノルズ数を追求する。
 国内外の状況。これまで確かに日本はトップランナーでした。これからも十分なポテンシャリティーは持っています。ただし、それが実現するかどうかは、次世代スパコンが使えるかどうかに大きくかかわっています。
 期待される成果。先ほど述べました、たくさんあります。
 以上です。

【土居主査】

 どうもありがとうございました。それでは、まずはただいまの金田先生のご発表に対しまして、ご質問、あるいはご議論等をしていただければと思いますが、いかがでしょう。

【宇川委員】

 一番てっぺんの応用分野ごとでよいかというところに関する質問なのですけれども、例えばカノニカル乱流DNSをとれば、Box乱流のシミュレーションをやるわけですね。一方で、分野といったときには、かなりの分野の幅と時間的な成長というのですか、そういった観点から大きく1つくくろうという考え方じゃないかと思うのですね。それに対してカノニカル乱流DNSというのは、ある意味、計算すべきものはわかっていて、なるべく幅広い波長領域にわたって、乱流の性質をわかるようなカノニカルな例をつくるということだと理解すると、かなり限定的なテーマではないかと思うのですけれども、そこに関する理解は、私は間違っているかどうかということを1つお聞きしたいのですね。
 それからもう一方で、一番下のほうに書いてある乱流燃焼とか、そういったものになりますと、もちろんものづくりとか、さまざまな問題に関係してくるので、非常に幅が広がると思うのですが、逆にそれぞれの分野における、要素技術の1つといったような観点がむしろ重要になるのじゃないか。その2点に関してお伺いしたいと思います。

【金田先生】

 カノニカル、例えばBox乱流は非常に限定的じゃないかということに関しては、すみませんが、答えは簡単に言いますと、違うと。なぜかといいますと、乱流の特徴は、幅広い波長領域がある。多くのモデルは、エネルギーカスケードにかかわるのですが、あるサイズから小さなサイズ、親から子、子から孫、カスケードしているというのが一般の描像ですが、それが今のシミュレーション範囲では約10世代ぐらいしかないのです。実際にはこれは非常にたくさんの世代があって、その中で、一番先祖と子孫はおのおのある特殊な条件があって、だめだと。この慣性小領域と言われる中間世代が長いことが現実の乱流で非常に特徴なわけです。慣性小領域が十分長いという前提でいろんなモデルがつくられているわけです。ただ、シミュレーションではそれがほとんど実現できてなかった。これが実現できるようになった。カスケードがきっちりとられると何がうれしいかというと、先ほど言いましたが、普遍性の概念がありまして、すべての乱流とは言いませんが、ほとんどの乱流に共通に持った慣性小領域の構造がわかれば、すべての乱流に共通するモデル化ができるということです。ですから、Box乱流を知りたいのが目的ではなくて、すべての乱流の背後にある構造を知りたい。ですから、Box乱流が目的では全然ないのです。すべての乱流に共通する性質が知りたい。
 例えば2つ目のご質問の燃焼に関していいますと、燃焼というのは、これもおもしろいチャレンジングな問題で、小さなスケールで激しいことが起きます。そうすると、カスケードの行き先が、カスケードと燃焼との関係がもろに問題になってきまして、カスケードをどうモデル化するかで、燃焼のシミュレーションも随分変わってきます。ですから、乱流燃焼に今言ったBox乱流が非常に密にかかわってきます。
 ですから、Box乱流というのは決してBoxだけやりたいのでは全然なくて、むしろ逆で、Boxに限らないすべてを。例えばスポーツの例でいいますと、野球選手で100メートル競争はあまり興味ないかもしれませんが、すべての運動競技には走るということが基礎にあると思います。走るメカニズムを解明して、うまく走れれば、すべての競技にある。ただ、応用分野にいきますと、例えばサッカーなり野球は、もっとローカルな、サッカーだけで成り立つルールがたくさんあり過ぎるので、100メートルには興味がないかもしれない。だけども、すべてのスポーツの基礎である。ちょっと例が悪いかもしれませんが。

【小柳委員】

 今のお話、私の理解では、金田さんのおっしゃりたいことは、乱流が関係するいろんな現象が応用分野にたくさんある。というか、ほとんどの分野が乱流に関係している。しかし、そういうような現実の計算には10ペタフロップスは要らなくて、もうちょっと下の1ペタフロップスぐらいで十分である。だけども、カノニカル乱流こそは、次のレベルの計算機ではなくて、トップの次世代スパコンでやるべきことであるとおっしゃっているのだと理解しましたが、よろしいでしょうか。

【金田先生】

 はい、ありがとうございます。しかも、もう一つつけ加えさせていただきますと、現実的なレイノルズ数領域に直にモデルなしで入れるフェーズに今入りつつある。ということで、アメリカでも、ヨーロッパでも……。ただ、ヨーロッパは1国では資源が足りないので、連合してやりましょうと。アメリカも資源を集中していきましょうという動きがあるように聞いていますし、日本も非常に気にされていますが、若干不安です。各応用分野に分断されますと、大変苦しいかなという気がしております。

【矢川委員】

 私は、宇川先生と今の小柳先生のちょうど中間ぐらいで、宇川先生からああいう意見が出るとはちょっと驚きだったのですが、大体理学系の方は、こういうことをお好きで、我々みたいな典型的に工学系の人は、宇川先生のようなお話が大体好きなので、きょうのお話を聞いていて、100メートル競争で、世界トップを維持しながら、それがだんだん波及することによって、エンジニアリングなんかにどんどんそれが波及していって、いいものづくりに役立つということは非常に大事です。しかし、こういう研究所だけでこういう集団だけでやっていると、外が見えなくなって、先ほども議論ありましたけれども、外との連携がだんだん薄くなって、それだけが目的になっちゃうというのを恐れるのですね。だから、その中間的な何かいいソリューションがあればいいなと感じていました。

【金田先生】

 その意味で、小林先生もご存じかと思いますが、流体力学会はとても適した仕組みかと思っております。

【土居主査】

 小林先生、何かありますか。

【小林委員】

 最も適しているかどうかと言われると……。今お3方の意見を聞いていて、そうだと思うのですがね。特に矢川先生がおっしゃったように、私も工学ですから。コルモゴロフのマイクロスケールとか、慣性小領域とか、そういう懐かしい言葉が出てきて。ただ、それをDNSをやることによって、例えばLESなんていうのはものすごくモデルのところで情報を得ているわけですね。それは既に何年か前から、1990年代から、あるいは1980年代の後半から既にそういう議論はされていて、DNSの結果がどうやって生きてくるかということを皆さん議論をされていた。その時点では、さっき矢川先生がおっしゃったように、DNSとLES、ランスあたりの交流はあったように思うのですよ。今ほとんどなくなっちゃっているという感じを私も持っていて、これは問題だなという気は確かにしております。しかし、大きな組織になるのかなというあたりについては、少し疑問を持っています。例えば流体力学会の中でDNSをやっておられる方というのはどのぐらいですかね。

【金田先生】

 それは数え方によるかと思うのですが、1つの指標として、発表件数を整理してみました。数値流体シンポでは、12月の時点で200件以上の発表がありました。

【小林委員】

 それはDNSに限ってないでしょう。

【金田先生】

 そうです。シミュレーション全体です。

【小林委員】

 ですよね。DNSに限ると10分の1とか、そのぐらい?

【金田先生】

 10分の1まではいかないと思うのです。

【小林委員】

 そこまでいきませんかね。だから、DNSだけを表面に出されると、すごく狭い領域という感じを持たれてしまう。

【金田先生】

 逆にあまり広がりますと分散化になるのじゃないかと。実際その悩みがありまして、乱流コンソーシアムを流体力学会で呼びかけましたときも、若干悩みました。最終的には、5件程度、5つのチームとして動いていました。これは私、予想してなかったのですが、きょうお呼びいただけるということで、何人かの方に声をかけました。皆さん快く資料を提供していただきました。

【土居主査】

 時間も迫ってまいりましたのであれですが、さきの3先生の話題も含めて、全体的にご質問、あるいはコメントがあればと思いますが、いかがでしょう。

【中村委員】

 今の金田先生のDNSの話の続きなのですけれども、ゴードンベル賞をとった2002年の4,096の3乗のもの以来、地球シミュレータ以上のスパコンが世界中でできているのですけれども、それをまだ超えてないというのはコードに理由があるのか、あるいは、実はDNSはそれほど世界的にはやってないのか、何かそういうことがあるのでしょうか。

【金田先生】

 ありがとうございます。実は言い忘れたことがあります。アメリカDFDでPKさんが主催してやったときに、既にかなりのブルージーンの扱いが出たのです。5万程度のプロセスを扱ってやっていると。スケーラビリティーがとてもいいと。性能もすごいマシーンである。とっくに地球シミュレータを超しているかと思ったのですが、どうもいろいろカウントするとおかしく、性能が出ていない。もう1個の話ですが、ニュートリノ研でも今言われていました小林先生の懸念もありまして、乱流プログラムをやったときに、応用分野との関係もあったのですが、そこで、乱流研究におけるハイパワースコンピューティングのワークショップを開きました。何人かの方に来ていただいて、私、オーガナイザーをやっていたので、やったときに、最後にディスカッションセッションをつくりまして、そこでぜひ言ってくださいと言われたメッセージがあります。ベクトルをなるべく存続させてくださいと。流体分野にとってはベクトルが非常に大事である。政策立案者に機会があったら訴えてくださいと言われたのですが、その立場でもないかなと思って黙っていたのですが、おそらくアーキテクチャーによってかなり使い勝手が悪い。ただ、うわさではロードランナーは実力派だとは聞いています。ブルージーンはよくないといううわさは聞いています。ちょっと無責任ですが。ですからそれをまっすぐパラレルで性能を出すのは簡単じゃなくて、皆さん四苦八苦しています。ですから、逆に計算科学の方たちと共同してやっていかないといけないという気運はアメリカでもひしひしと感じます。
 もう一つ問題を言わせていただくと、先ほどおっしゃいました、どんどんスパコンを使う人数が限られてきて、分散しないために分散していきますと。もう一つの懸念として議論されたのは、人口が減っていくのじゃないかと。もっと応用分野に直結したたくさんの人たちがいるのをどうリンクしていくかということで、データ共有なり、使いやすさをどんどんして、すそ野を広げないといけない。そういう議論もされました。

【土居主査】

 アメリカもクレイを残していますよね。

【金田先生】

 日本に特に期待されていました。

【宇川委員】

 多分このあたりは小柳先生あたりから言っていただいたほうがいいのかもしれないし、主査から言っていただいたほうがいいかもしれませんが、どのみち、計算性能を上げようと思うと、超並列なのですよね。スカラーとかベクターとか言っていますけれども、実はそれほど、次期世代機は差があるわけじゃないわけで、むしろマッシブリーパラレル、マッシブナンバーコアーズというところが肝心なので、申し上げたいことは、「ベクトルよ永遠に」とおっしゃる以前に、じゃあ、計算法なり、アルゴリズムなりの改善を並行してやっていかないと、どのみち、もう既に頭打ちになっている。

【金田先生】

 全く同じ、似た議論がありまして、その席で、オークリッジのサカーリャーさんは、似たことをおっしゃいました。議論が紛糾しましたが、我々としては、カノニカルには特にFFTがキーになっているのですが、FFTはおそらくもう無理だろうと。そうしたら、アルゴリズムを抜本的に変えていくのかという議論もあって、ただ、今のレベルでは、まだ捨てがたい。やはりアルゴロは考えないといけないと思っています。

【小柳委員】

 今、宇川さんがほとんどおっしゃったことなのですが、地球シミュレータが最後だといのがある意味で象徴的で、地球シミュレータというマシーンは確かにすばらしいマシーンでしたけど、ある意味であれほどぜいたくなマシーンもなかったわけで、そのぜいたくが続くかというと、これはほとんど無理であろう。地球シミュレータ2というのが今度動き出しますが、ベクトルではありますけれども、地球シミュレータとは全然違う。ましてや次世代のほうのベクトルパートというのは、地球シミュレータのスケールアップであると思ったら大間違いで、だから、今、宇川先生がおっしゃったように、アルゴリズムの開発をやっていかないと、今後の利用はできないのではないかと思っています。

【土居主査】

 ロードランナーも、先生ご存じのように、9つありますけれども、1つはコントローラーですから、8コアですよね。ですから、8コアのやつのマッシブパラレルになっているわけですから、コアをどう活用するかという点におきましては、なかなか今後ともアルゴリズムをうまく開発していかないといけないという点がありますので、流れとしましても、頑張っていただかなければ。

【平尾委員】

 私もまさにそのとおりだと思いまして、私たちの分野でも、理論開発というか、アルゴリズム開発をまずやりましょうというので、さっきFFTの話がありましたが、もうあんなのはマッシブパラレルは使えないのですね。だから、それをいかにして避けて、だけども、もっと効率のいい方法の理論を開発したり、アルゴリズムの開発という方向に、世界中ではいっていますので、多分流体の分野でも、ぜひそういう方向でやっていただくと。これも別に分野だけではなくて、あらゆるところがそうだと思います。

【土居主査】

 ほかには何か。よろしいでしょうか。
 それでは、どうもお忙しい中、4名の先生方、お越しいただきまして、ありがとうございました。また今後とも我々として検討していく段階で、またお話を伺わなきゃいけないということも出てくると思いますので、またその節にはどうぞよろしくお願い申し上げます。
  それでは、次回は、今までずっといろいろな先生方にお越しいただいて、お話を伺ったわけですけれども、これを踏まえまして、戦略分野の設定になりますので、先生方、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 それでは、最後になりますが、何かございますか。よろしいでしょうか。
 それでは、事務局から連絡事項をお願いできますか。

【事務局】

 次回の戦略委員会の開催日につきましては、追ってご連絡をさせていただきますので、よろしくお願いします。机上に配付しております資料は、もしお持ち帰りいただく場合にはお知らせください。

【土居主査】

 よろしいでしょうか。
 それでは、これをもちまして本日の戦略委員会、閉会させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

— 了 —

お問合せ先

研究振興局情報課計算科学技術推進室

(研究振興局情報課計算科学技術推進室)

-- 登録:平成22年03月 --