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先端計測分析・技術開発に関してニーズ志向で開発していく場合の、分野、体制についての議論が必要である。 |
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機器メーカーと研究者との協力体制は大変重要であり、基礎研究から応用研究、開発研究という全てを通して、ニーズとシーズを結び付けたトップレベルの開発研究が期待される。 |
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まず現状の課題、従来の問題点というところから議論を始めていただきたい。 |
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研究現場のニーズの把握と整理ということは非常に良いポイントである。今はできないけれど、こういう計測ができたら良いというニーズは多くある。例えば、ナノスケールでの物性計測、化学プロセスを時間分解して計測するという技術がある。既にある設備、装置の機能を上げていくことも大事であるが、全く新しい計測技術を開発していくという視点が大事である。 |
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開発という言葉には2つの捉え方があり、1つはニーズに対する計測分析技術・機器の開発から入って、その分野の研究を活性化、高度化しようという捉え方である。もう1つは、まさに先端の計測分析技術・機器を開発するということである。 |
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応用物理の計測を専門とする立場からは、原理的な開発、つまり全く新しい発想の原理に基づいた開発をしたいと思う。 |
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機器開発には、新しい原理に基づく全く新しい機器の開発レベルから、応用分野に対応するための複合化のレベル、既存機器の改良技術的なレベルと様々なレベルがある。この開発のレベルについて、基礎から応用等を含めた内容を少し整理しておく必要があると考える。 |
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ノーベル賞を獲得するような研究の基盤として先端計測分析技術・機器開発に取り組むという意味では、長期的な問題であると思う。人と場所、技術、知識の蓄積があって成果が出てくるものであり、人材育成ということも含めて長期的な開発プログラムということを考慮に入れる必要があると考える。 |
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この検討会で検討するプロジェクトにおいて、若い大学院クラスの学生たちが夢を持って開発に取り組むというようような視点を入れていただきたい。人材育成という視点からは、文部科学省でないとできない課題である。 |
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例えば、ハヤブサが4年後に小惑星から持ってかえってくるサンプルの分析について、今の分析技術を1桁上げて対応するとか、画期的な分析法を開発して分析するというようなターゲットを定めることが重要であると考える。そのような夢を与えて、産学官が力を合わせることができれば、4年で機器開発はかなりできると考える。さらに4年間、分析と機器開発を行えばかなりの成果が出せるであろう。 |
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国産の計測分析機器で唯一勝っているのは電子顕微鏡である。電子顕微鏡の開発では、戦時中に8年かけて産学官の若手を集めてほとんどの基盤を確立したところに要因がある。その時、方向性を示す司令塔がしっかりしていたということと、研究者を束ねる名伯楽がいたという人材の要因が大きかった。 |
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若い人たちが夢を持って開発に取り組むというテーマということに賛成である。夢のあるテーマは、ハヤブサ以外にもナノデバイス、ナノバイオなどいろいろある。夢のあるターゲットを決めて、どのような計測技術を開発すべきかということを議論すべきと考える。 |
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先端計測分析技術・機器の開発には、産業育成という目標が1つにあるが、もう一方で基礎的な学術振興のための開発という面がある。この検討会ではこの両面を扱うことが必要であり、先生方ご指摘のような人材育成をキーワードとするような中期的計画や、少し息の長い夢のあるターゲットの顕在化ということも非常に大事なことであると考えている。 |
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○ |
機器の開発とともに、技術の開発、つまり手法の開発という両方を取りあげることが非常に重要である。産業育成ということを考えると、良い性能の機器開発はもちろんのこと、その手法を開発して特許を取るということが絶対に必要になる。さらに、前処理技術、試薬や消耗品までを入れた開発ということを検討していただきたい。 |
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ご指摘のとおりで、システム化するときには試料の前処理は非常に重要である。本体の改良で性能を桁違いに上げるというのは大変であり、周辺の技術のレベルアップが鍵になる場合が多くある。 |
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もう一つとして、データハンドリングやソフト技術のようなシステム全体をまとめ上げるコンピュータシステム技術が重要である。ライフサイエンス分野で海外勢が市場で有力なのはシステム技術のウェイトが高く、その点が海外製の方が優れているためではないかと考えている。 |
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このような本体だけでなく、周辺の技術というものがシステムの評価に大きな影響を与えている。この部分をユーザーとメーカーが協力し合って、格段に良いものを作れるかというが非常に大切なところであると考える。 |
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○ |
日本の製品は使い勝手というところが少し遅れており、海外製品の方が使いやすくなっているために、海外製品が市場で優勢になっていると思う。 |
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我々が開発した分析装置で性能は出ているにもかかわらず、ほとんど売れなかったという経験がある。それは、ユーザーと一緒に研究するという最後のアプリケーションということをせずに製品にしてしまったために、おそらく使い勝手が悪くて売れなかったのではないかと考えている。作った装置を使ってもらい、使いやすくしていかないと使ってもらえない。使い勝手の良い装置を作るために、研究者と機器メーカーが協力することに賛成である。 |
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ライフサイエンス分野は開発が非常に急速で、国内企業も技術を結構持っているけれども、アメリカの企業はシステムが最初から最後までそろっており、そこが日本企業はかなわない。実際には国内製品を使った方が、小回りが利くので良いに決まっている。しかし、システムとして一部分でも欠けたら最後の結果が出ない。そのためにアメリカ製品を使わざるを得ない状況である。 |
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国内メーカーと共同開発するときに困ることは、なかなかプロトタイプを出してもらえないことである。ある程度評判を気にしているのか、メーカーはなかなかプロトタイプを出さず、共同研究がうまくいかないところがある。 |
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アメリカでは研究現場と一緒というより、研究現場が作っているという状況である。そこに、メーカーが入ってプロトタイプ機を作って改良していく。そのようなところからシステムとして使いやすいものになり、世界標準になっている。このような機器開発、研究のシステムから考える必要がある。 |
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ライフサイエンス分野では、データ集中的な状況になっており、使い勝手というところから情報処理の分野に踏み込まないと勝てない状況になってきている。要素技術の1つとしてIT関連の高度な専門家と融合して開発していかねければならない。 |
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メーカーがプロトタイプをなかなか出さないという点については、メーカーとしては事故を恐れるために、そのような状況になってしまう。早い段階でプロトタイプを出して改良していく環境の醸成ということが非常に必要であると感じている。 |
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画像診断、医療、バイオの分野ではアメリカで標準化していくという作業がどうしても必要である。国内での評価が世界標準に結び付くような体制作りが必要であると感じている。 |
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日本市場は確かに大きいけれども、世界市場に比べるとやはり小さい。企業として汎用品を取り扱っていくには、市場の規模ということも要因になっているのではないか。 |
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バイオ、医療分野はグローバルで勝負しないと勝てない。そのために、まずアメリカ市場で評判を取ることが重要となる。しかし、アメリカでセールスチャネルを作るということは非常に難しい状況にある。 |
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世界にないオンリーワンの機器開発に特化していくべきと考える。そのためには、研究現場に行きメーカーも大学も知恵を絞って世界最高のものを作っていく必要がある。 |
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これまで、サクセスストーリーが参考として示されるが、フェーラーストーリーを一度きちんと整理する必要があると思う。日本でも良い仕事があったのに、その仕事がどうしてうまく開花できなかったのかというところから学ぶことがあると考える。 |
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日本では伝統的に技術・機器開発が軽視されており、技術開発をしている人の評価が低いという問題がある。 |
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日本には優秀な人材はいるが、司令塔と名伯楽がいない。 |
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環境の立場からいうと、測定の基盤、研究の基盤となる日本標準というものがない、あっても統一的に管理されていないところに問題がある。長期的な研究という視点に立って、このような周辺体制も配慮に入れていただきたい。 |
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また、大学、研究機関においてスペース不足ということも問題になっている。 |
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企業の立場からすると、新しいものを開発、商品化するものづくりの場は自社内が基本であると考えている。大学の場で開発するのであれば、研究段階や最先端の部分というような大学で行う意味のあるものが良いと考える。 |
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1つの学問あるいは科学全体の方向性が示され、それに沿った研究ニーズというものが出ると良い。日本では半導体とか個体系の分野では結構うまくいっているし産業界も強い。しかし、液体系や化学分野ではうまくいっていない部分がある。 |
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機器のことがわかり、十分に使える人が大学側のスタッフに少なくなってきているために、メーカーとしては装置をしっかり作り上げて確実に動くようにしなければならず、プロトタイプをなかなか出せないという側面がある。海外の大学では、テクニシャンやかなりレベルの高いワークショップがあり、そのような人たちのサポートがいざとなると受けられるということがある。このような環境面についても少し注目していただきたい。 |
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最新鋭の装置を大学が導入して、その後のフォローアップや使い方、応用開発に対して大学がかかわって開発するという取り組みがどんどん少なくなってきていると感じている。 |
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大学の中で、技術が重視されないという雰囲気がむしろ広がっている。このようなマインドを改めないと、装置開発にいくら資金をつぎ込んでも日本の学術の基盤を強化する意味に直結しないという懸念がある。 |
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今回のプロジェクトでは、装置を作る開発側と使う側が最初から一緒に研究開発体制を作るという点が非常に重要であると考えている。さらに、スキームの中ではプロトタイプの段階から研究面で世界トップレベルの研究をしている有力なユーザーに積極的に使ってもらい、さらに磨きをかけるということを視野に入れていることが非常に大事なポイントであると考えている。 |
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装置全体のシステムも大事であるが、例えば光源、検出器、発振器というようなコアとなる要素技術の開発も重要であると考えている。 |
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プロトタイプを使うというような企業と大学との交流が少なくなってきている。 |
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コアとなる要素技術をレベルアップするということはご指摘のとおり、大変重要であるものの、大変難しい課題でもある。技術的にも大変であるし、ある程度の研究投資がないとできない。 |
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具体論として、機器開発について3年ないし5年で完成する研究開発計画を立てなければならない。ニーズ重視の機器開発という考え方は大変良いが、ポイントは適切なシーズがあるかということである。提案公募型でこの仕組みを動かすわけであるが、ニーズの提案だけではダメで、一般的な漠然とした技術の提案でも不十分である。ニーズとシーズが適切に組み合わさった提案が欲しく、それがどれだけ提案されるかということが問題になってくる。 |
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提案の中からセレクトして実際に研究開発を進めるものに重点投資をしていくという段階では、ニーズとシーズの適切なコンビネーションがあり、世界のトップレベルに到達できるかという発想による選択が必要となる。ここで、技術の評価、将来の見通しが的確にできる能力を持つ審査員が必要になる。検討委員の先生方には、この評価、選択の在り方についても今後の会議の中でご検討いただきたいと考えている。 |
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基本的には提案公募型で良いが、一部で良いので将来の技術、研究状況を見通すことができる優れたリーダーによるトップダウン的な機器開発という体制も取り入れていただきたい。 |