審議会情報へ

研究開発成果の取扱いに関する検討会

2002/03/25議事録

研究開発成果の取扱いに関する検討会(第4回)議事録


研究開発成果の取扱いに関する検討会(第4回)議事録


1. 日  時  平成14年3月25日(月)    10:30〜12:30
2. 場 所  文部科学省別館大会議室
3. 出席者
 
(メンバー) 小原、牧野、井邊、斎藤、隅藏、高田、長井、羽鳥、馬場、藤川、山地、各メンバー
(事務局) 遠藤研究振興局長、山元科学技術・学術政策局長、井上科学技術・学術政策局次長、坂田研究振興局審議官、田中ライフサイエンス課長、加藤研究環境・産業連携課長、磯谷技術移転推進室長、吉住研究環境・産業連携課専門官
4. 議  題
 
(1) 研究開発成果の帰属のあり方
    
(2) 研究開発成果の研究開発の場での広い利用のあり方
    資料2、3等に基づき事務局より説明後、自由討議が行われた。
その内容は以下のとおり
   
  (○・・・メンバー、△・・・事務局の発言)
   
 
事務局より資料2について説明があり、これについて以下の討議が行われた。
   
 
  研究開発成果について、原始的にその創作者に帰属させる。これは無体物については特許がそうなっている。最も価値が高いと思われるものがそうであるならば、それ以外のものも全部そうだろうと考えられる。ここの研究開発成果の中に有体物がもし含まれているならば、これはきちんと最初から議論しないといけない。無体物については創作者に帰属させる。これは法律上全部そうなっている、著作権についてもそう規定されている。
  有体物については、研究者に帰属させるという話になると例外が出てくる。例えばSPring−8のような加速器について、それが最初からつくった人の所有であるとは通常考えられない。SPring−8は、研究者が知恵を絞ってつくったもので、建設過程で特許なども出ているが、でき上がったものは研究者の所有では明らかにない。したがって、有体物と無体物をまずきちんと分けて議論する必要があるだろうと思う。
  私の所属する研究所はこの4月から無体物については基本的に創作者のものであって、その取扱いは職務発明規程やその他の規則に従って、雇用関係のもとで研究所に帰属させることとしている。一方、有体物は、できた瞬間に研究所のものというように規定を変える。特にその中で生物系の有体物は自己増殖するので、他の化学物質とか個体とかというのとは取扱いを若干分けようと考えている。基本的に有体物と無体物とに研究成果を分け、有体物については、できた瞬間に機関の帰属にしようと考えている。
  大学が一番問題で、MTAの問題等、大学の事務の負担を軽くするという考えでこの案になっているのではないか。当面は現状のまま行くというのは仕方がないことだろう。法人化をにらんで、どういう方策を編み出したらいいかということが議論になるだろう。

  事務局の案では、研究開発成果については無体物か有体物であるかを問わず、あくまで創作した人に原始的な権利があると考える。ただ、有体物である研究開発成果物について、なぜに最終的に機関に帰属するかというと、まさに契約とか勤務規則に基づいて所有権が移転するものであると考える。以上のことから、先ほどの委員からの指摘については、おそらく結果としては事務局の考えと同じであって、先の例でも、契約とか勤務規則に基づいて、創作された瞬間に機関のものとなると考えられる。

  今の有体物の議論だが、資料には原始的な帰属については法令等による明確な定めがないとあり、これは確かにそのとおりだろうと思う。そうすると、それが創作者に原始的に帰属するという法令上の根拠というのは、法律の原則のようなところから導き出すということになるのか。それとも、そこは明確に規定を置くということを考えているのか。

  原始的に帰属させる法令の根拠は何かということについては、前回までに他の委員からプレゼンテーションがあったように、民法の246条第1項のただし書きに根拠を求めている。著しく価値が高いものであれば、加工した人が所有者になるという民法の246条第1項のただし書きの規定を拡大解釈というか、論理解釈してその根拠としている。今までにない新しい知的な価値をつけたのだから、その価値を付加した者に所有権を帰属させるのが適当であると考えている。

  資料の1と2の関係が明確でないので、もっと明確に記述するべきだと思う。原始的にどこに帰属して、それを別途契約で処理をするという考え方を明確に記述すべきだと思う。
  また、現在、特許法でも非常に問題になっている点だが、契約で帰属を変更するときに、創作した個人への補償をどうするかということが問題となっている。少なくとも特許では現在非常に問題になっており、ここで扱う有体物である研究開発成果についても共通する問題なので、どういう考え方をとるべきかということについて触れる必要があるのではないか。
  特許法が規定しているのは特許についてだけなので、特許以外の研究開発成果についてはその規定は当然には適用されないだろう。

  無体物と有体物と仮に分けると、特許に代表される無体物については、原始的に研究者、発明者に権利がある。これは特許を受ける権利という権利としてである。そしてその後、職務発明規程等により機関に承継される。我が研究所においても職務発明規程を置き、全職員がこれに従う。従わないというオプションはなく、それは企業と同じだと思うが、職務発明規程に全員が従い、特許を受ける権利は機関のものにしている。
  その場合に、対価的なもの、補償的なものはどうするのかという問題がある。2つあり、1つは登録報償金、これは特許出願した後特許庁で審査され、特許になった際に登録報償金というものを研究者に出す、これが対価の1つ目。2つ目は、特許等が実施されたら、実施料が入ってくる。これはいわゆる実施料だけではなく、公開前の特許について企業に開示し対価を得る情報開示料なども含めた実施料を意味するが、その実施料の25%を研究者に還元するというものである。これらは、研究者が発明を機関に帰属させることの反対の対価ということができると思う。
  それから、有体物、これはMTAという形で外部に出ていくものについての議論である。有体物については、我が研究所では、その成果物が発生した段階から何ら登録とか申請とかを要せずに研究所に帰属するのものとしている。その関係を成果物取扱規程で規定し、昨年の11月16日から実施している。
  その後、問題になったのが、すなわち学会の著作物となる論文の取扱いの問題である。ここで学会に対して、個人から譲渡するのか、研究所が機関として譲渡するのかという問題がある。その点は、あいまいなままで来た経緯があるが、半分は研究所も法人著作権として持っているし、学会のほうも著作権を持っているのではないかと考えている。
  あとは、それ以外の研究成果物については、運用上はすべて発生した段階で機関のものとしている。その結果、特許と取扱いの違いが出てきた。特許については特許法35条に相当の対価を発明者に支払う旨の規定がある。特許に対しては実施料に対応した相当の対価が発生するのに対して、有体物については相当な対価が発生しない傾向がある。もともと機関のものだから対価を与える必要がないという議論もある。一方、実施料に相当する収入があった場合は、報償金ではなく、補償金と言うのか、そういう形で特許と同様に25%は還元するという解決の仕方を試みた経緯がある。

  横長の資料で成果物の実質的な管理は教官が行うと書いてあり、その理由として、教官帰属のところで、保存方法等を熟知する教官等が行うため適切な管理が可能であると書いてある。これ自体は合理的でいいと思う。
  しかし、例えば前回提起された糖尿病マウスのような動物成果物等の管理というものについては、こうした系統を純粋に確立していくことが学術的に非常に価値があるし、また、動物モデルを使った研究成果が価値を持つためにはその成果が標準化されていく必要があるが、現場の先生方個人にこれを管理させることは、極めて困難なことだと思う。そういう過程では、管理のための体制とか予算の支援とか、そういった制度、システムもきちんと整備していかないといけない。教官の個人的な管理にただ任せるというのでは限度がある。これは国立大学、あるいは研究機関等だけの問題ではなく、実は企業についても共通する問題である。企業から生まれたこうした成果物についても、結局企業内にあっては、あの人が趣味でやっているんだから、あのネズミと一生過ごせばいいんだという感じで軽視され放置されてしまう傾向がある。
  結局は系統の維持管理に持ちこたえられなくて、ほかの研究機関からの要請等に応じて提供したものが徐々に世界中に広がっていってしまい、オリジナルな成果物であるにもかかわらず、標準化されたときには別の国のものになってしまっているという状況が生じる。だから、やはり企業は企業としてやるべきであろうが、まず範を示すのは国であって、国のような研究機関でこういう成果物が出た場合にどのようにしてフォローしていくのかという仕組みをぜひ考えてもらいたい。そういうことが基礎研究の最も重要なインフラではないかと思う。

  今の意見は2つあって、基本的な帰属をどちらにするかということと、実質的な面ではこうした国からの支援、あるいはシステムをきちんと整備した上で、実質的な管理は教官等、あるいは専門家が行うということだと思う。後のサポート体制はまた本検討会の議論とは別の問題であると思うので、意見は意見として伺っておきたい。

  1ページ目の(2)の2のb、国立大学の著作物について、原則個人に帰属という説明であったが、これは民間企業の場合には原則個人帰属とすると問題がある。企業の場合には、こうした職務に基づいて成した著作は職務著作になり、企業に帰属する。企業帰属でなく個人帰属にすると利用を促進する上で問題が生じることとなるのではと危惧する。
  例えば企業では、データベースにしろ、コンピューター・プログラムにしろ、チームでつくって、長い期間かけてずっと改良を積み重ねていく。その際に個人に権利を帰属させると、その個人の許諾を得ないと以後改良ができなくなってしまいうことから、複雑かつ大きな問題をはらむことだと思う。

  プログラム著作については、我々の研究所では発明と同じように扱おうとしている。ただ、著作物であることから、補償金ではなく報償金であるとか、細かな違いはある。プロジェクトの中で、例えばゲームのソフトをつくった場合、著作権は創作した人にできた瞬間に帰属することから、著作権に限っては法人著作という概念がある。我々の研究所ではVCADという大きなプログラムをつくるプロジェクトを進めているが、職務発明規程に従って理事長が指定したプログラム著作については法人著作を適用するという規定があり、その規定に従って法人著作としている。
  もちろんその前提となる考え方として、雇用契約の中で理研の職務発明規定に従う旨を宣誓しているので、それが適用されて、そこから得られるプログラムはすべて法人著作であるとの考え方がある。ただ、一身専属性で、創作した人に最初から生ずる権利として、著作者人格権というものがある。この著作者人格権は研究所に対して行使しないということを宣誓した上で、プロジェクトがやっとスタートできる。公的機関でも企業と同じように、著作物については法人著作にすると最初から決められるようにしておけば、基本的には問題がないと思う。

  有体物に関する原始的帰属というのは、先にあった研究所の場合でも実は原始的には個人帰属だが、運用上は規程等により即機関に帰属するというようにとれる思うが、いかがか。

  発明については特許法に原始的に発明者に帰属する旨記述があり、後は、雇用関係でその権利をだれが承継するかということは個々の法人が決めればいいことと思う。有体物については法令上何ら取り決めがない。ただ、先ほど言ったように、SPring−8はつくった人のものだとだれも思わないという関係がある。
  これは決めの問題であり、税金を使ってつくられていることから、アイデアはその人のものとしても、できた瞬間にそのもの自体は機関のものとするように我々の研究所では取り決めた。急には決められないので、本年4月1日に契約制職員ないし全員の契約更改があることから、その時に研究所の規則を変更し、契約にサインした者には4月1日から創作した有体物については全部できた瞬間に研究所のものとすることで進んでいる。

  SPring−8について、発明者の帰属としないのは確かにそう思うが、DNAの場合は限りなく発明に近いという印象を実際に研究を行う者としては持つが。

  それは資料の2番にあるとおり、流通を促進するという観点が非常に重要なのだと思う。
  無体財産の場合は特許のライセンスとかその他は個人でできる話ではないので、法人がきちんと面倒を見る。
  有体物についても、非常にこれから普及するであろうものは、先ほど話しがあったように公的なバンクをつくって、そこに寄託して流通を促進するということも大事であろう。まだそこまでに至らないものについては、研究所として何らかの方法でその材料を広く普及する、あるいは商業用に使ってもらうということを、組織として創作者をサポートするということが大事であろう。それ故に、組織としてこれを自由にハンドリングできるようにするために、組織の権利にするという方向で、すなわち、流通促進とか、商業化とか、産業界へのトランスファーということを念頭に置いて、個人帰属よりは機関帰属が適切ではないかと考えている。

  先ほどの例で、「サインをして承諾を得た方については」という留保があった。これを斟酌すると、有体物についても原始的には研究者に帰属するが、研究所の規程に基づいて承諾した者については、そこから直ちに法律的には無償譲渡で機関に所有権が移転するという考え方で説明はつく。

  事務局から、この2段階にしてあるという点に関して何か意見はあるか。

  我々はSPring−8を念頭に置いて成果物を考えていない。あまり極端な例を事例として挙げて議論すると議論が拡散してしまうのではないか。
  また、原始的に研究者に帰属させるという考え方をとったのは、特許等の無体財産権との整合性をある程度とったほうが後々流通のためによいのではないかという考え方が根底にあった。

  資料2ページのcの次のところについて事務局に確認したい。研究開発成果については、「原則として契約、勤務規則等により公的研究機関の帰属とするのが適当である」とあり、私の理解ではこの記述を、原始的には個人に帰属するが、それを契約や勤務規則などによって別途機関に移転させるという文脈で理解したのだが、いかがか。

  そのとおり。

  資料の1番の原始的帰属で個人ということは、将来権利化されたところでその教官、あるいは関係者にその原始的な権利というものを発揮させるという意味も含まれているのか。最初から原始的に機関帰属であるとしてしまうと、発明、あるいは開発した個人というのは一切かかわりがなくなってしまう。この点はどうか。もし原始的に最初から帰属は機関であるとしてしまうと、開発した人の権利というのは未来永劫ないということになるのではないか。

  ここの原始的な帰属というのは、何を対象としているのか。有体物の所有権ということか。

  所有権を対象としている。

  先ほどの加工の理論について、この理論で全部加工者に帰属するということは説明しにくい場面が出てくると思う。もしそうであるなら、やはり法令の根拠を定めておくほうがいいと思う。そうしないと、仮に契約で機関等に移すといっても、移す元の権利がその研究者に発生しておらず、別の人に帰属している場合だと、機関への移転というもの自体も無効になってしまう。その辺は、やはり何らかの法令上の根拠が必要だという感じがする。

  法令上、根拠がなかったらどうなるのか。今は明確な法令上の根拠はないということか。

  民法上の加工の規定が確かに一番の手がかりだと思う。ただ、それですべてまかなえるかという問題は前回の検討会でも指摘されており、その辺の手当てをやっておかないと、後でトラブルが生じたときに困るのではないかと思う。

  資料の2番以下のことにもかかるので、1番に関しては何らかのコンセンサスが要ると思うが、もう少しご意見を。

  先ほど原則として契約、勤務規則等により公的研究機関の帰属とするのが適当であるという文言についての確認があった。原則、有体物についても、原始的にはそれを発明した人、創った人に帰属する意見と有体物はできた瞬間に機関帰属となるとの意見があった。そこのところがまだ明確になっていないが、いかがか。

  有体物にもいろいろなものがある。通常の有体物、例えばこうしたスピーカーとか文房具のようなもの、これはもともと売り主に所有権があって、企業でいうとそれを購買部が買ったときに買い主である企業に所有権が移転されると、民法で規定されていると思う。
  ただ、今議論している場で有体物といって問題になるのは、微生物のように自己増殖していくものについてだと思う。いわゆる通常の有体物を購買経由で伝票で買うというのではなくて、それが知的思考の成果であり、かつ自然と増殖する性質を有する場合が問題となる。リアル・ワールドで言っている商取引の世界で言う有体物という概念できれいに整理されるのか、そこに議論の余地がいろいろとあるところだと思う。
  専門家でないのでよくわからないが、有体物はどこまで含むのかという境界がグレードアップすると非常に問題が複雑化すると思う。しかしながら、1つの考え方として研究成果物である有体物について、原則は個人に帰属して、それを後ほど機関にトランスファーするという考えは成り立つと思う。ただし、指摘があったように、そもそも何が有体物かというところに実は議論があって、グレー・エリアがあり、もう少し議論を深める必要があるかと思う。

  有体物の中で、生物系とそうでないものを分ける必要があるのではないか。例えば植物新品種などは、種苗法上で基本的に創作者に帰属すると規定されている。原始的帰属は研究者ということになる。それで、生物系であるものとそうでないもの、そういう分け方も可能ではないかと思う。

  我々の研究所では、生物系の試料について、一体どこの研究室にどういうものが幾つあるか、その生物系試料がいつどこに出ていって、あるいはどこからいつそれが来たのかということを、全部きちんとして把握しておこうというのが元々の発想だった。そのためには、研究者が自分で権利を持っているということは自分で自由に処分できるということだから、だれにでもあげてしまう、あるいは誰からでももらえるということになれば、一体どれだけのものが研究所の中にあるのかということを把握できない。だから、全体を研究所として把握する必要があるとの発想にたった。また、研究所が新たな価値をつけ加えた生物試料をさらに普及させるためには、研究所が研究者をサポートすることが非常に重要なのだという考え方にたっている。
  いままで決まりがないので、決めてやってみる。具合が悪ければ、また直していけばいい。研究者にとっては無体財産は最初から研究者のもの、一方、得られた有体物については研究所のもの。両方セットで動くこともあるだろうし、そうでない場合もあるかもしれない。少なくとも、例えば炭疽菌のような生物試料の場合、研究所に研究者が持ち込んで研究していることについて、研究所は一切知りませんというわけには絶対にいかないだろうと思う。

  今の議論について、DNAとかマウスといった研究成果は、有体物であっても限りなく知的資産、無体物に近いものになると思う。私の考えとしては、特にそれを原始的に研究者に帰属させて、勤務契約によってそれを研究所のほうに帰属するという形にする、と考えている。先の研究所の考え方と大きな違いはないと思うが。どういった状況を想定しているのか。

  そのとおり大きな違いはないとも言える。元々は研究者のもので、それを研究所が100%譲り受けるということであって構わないが、幾つかあるうちの一番大きな問題は、先ほどのSPring−8の例のように有体物のうち研究者の帰属に帰さないとのカテゴリーに入るのはどこまでかという、ミシン目を明確に引けないという問題点がある。例えば、生物試料は全部かというと、牛などの場合はどうなるのか。また、無機物で言うとダイアモンドのモノクロメーターというものがあり、これはすぐ壊れてしまうが、300万もするもので、消耗品に分類されているが、こうしたものを研究者が自由に処分して構わないかという問題もある。
  有体物のうち生物系試料のうちここら辺までは研究者に帰属させて、それを雇用契約又は規則に従って研究所が譲り受ける。一方、ここから先のものは、最初から研究所のものだというミシン目を一体だれが、どのように考えるかとことは、この場で議論して結論が出ることではないだろうと思う。

  その点が、先ほども話にあった民法の加工の規定の解釈の関連するところで、元々の価値を加工によって極めて高い価値にしたか否かということが判断基準になるのではないか。それを判断するのにどういう具体的な指針が必要かという議論はあるだろうが、1つの基準として切り分けることができるのではないかと思う。むしろ、どういった場合に加工によってかなり価値が高くなったかということを指針として議論することが必要なのではないかと思うが、いかがか。

  今、無体物か有体物かというカテゴリーで論議が進んでいるが、無体物であろうと有体物であろうと、知的財産権という発想でこれは考えるべき問題だと思う。特許の対象になる、あるいは特許として権利化されるか否かにかかわらず、創作の成果という形で整理しないといけないのではないか。新しい知的財産権のあり方という観点で発想を変えないといけないのではないか。
  マテリアルのトランスファーの観点から発想していくということになると、有体物、無体物というカテゴリーが出てくると思うが、研究の結果あるいは、企業活動の結果、創作の成果として出てきたものを広く知的財産権という形でとらえるというのが、今の流れだと思う。まさに理化学研究所の研究員がアメリカの経済スパイ法で起訴されたということは、広く創作の成果を知的財産権としてとらえる概念を米国は確立しており、そうした論拠に基づいた法の執行によって起訴されたものと言えることから、国際的に競争するためにはそうした考え方に立って日本も法整備をしていかないといけないのではないかと思う。
  これは、この検討会でやるべき問題からは少し外れるかもしれないが、やはり、例えば知的財産権の保護強化についての世界の産業史的な視点で見ていくと、ほとんどの新しい特許の概念、あるいは知的財産権の概念というのはアメリカが先導している。例えば微生物を特許として認めるとか、ソフトウエアを認めるとか、あるいはトランスジェニック・アニマルを特許の対象にするとか、科学研究の先端の成果を特許として認める新しい概念はアメリカが全部先導してきている。それを、今回、経済スパイ法というのは特許の対象になるかもしれない研究創出の成果、そういうものまで知的財産権として位置づけた概念で法律を運用して、執行することとなったものだろう。
  そうした経緯で、理化学研究所の研究員は起訴されたことから、日本も広く特許であろうとなかろうと、創作の成果というのは知的財産権という権利が生じているんだという観点に立つ必要があるのではないか。それを特許の場合は研究者に帰属させるのが原始的帰属であると言うならば、特許であろうとなかろうと創作のすべては研究者に帰属させる。その後で、機関に帰属させるかどうかは契約の問題であると考える。そういう観点で整理しないと、現在の知的財産の流れには合わないのではないかと思う。

  かなり時間がたちましたが、いかがでしょうか。おそらく、今、委員が話された内容が答えではないかと私も思う。開発成果というのをどこまでをもって創作と言えるかどうかという点は、先に他の委員から指摘されたところではないかと思う。研究を行う際は必ずものを買って始めるわけだし、買ったものそのもの自体は購買した機関のものである。そこから加工を加えるわけだが、どこまで加えれば、それが新しい創作物になるのかという点、これはまさに特許と同じようなことが言えるのではないかと思う。
  そこの線引きは非常に難しいが、買ったものはその時点では研究者のものではない。それに加工を加えて創作すれば、原始的にはそれは研究者のものだというのが理屈だと思う。その後、ほぼ自動的に機関に移管するというのは、運用の問題である。そうした場合に法的根拠がないとまずいのではないかというのが他の委員から指摘されたところだが、この件に関してはいかがか。

  そうすると、例えば糖尿病ラットをつくった場合は、契約上、その権利は全部所属する大学に帰属するということになる。新しいトランスジェニックのネズミでも、新しい微生物でも、つくったものを雇用契約に従って機関に譲渡することになる。そうでないと流通しないことから結果において妥当と考えるが、その法的根拠が雇用契約であってよいのか。機関に譲渡したことに対する補償などの問題も関連する。その法的根拠が明確でないと、研究者にもともと帰属しているものを機関が取り上げるということ自体が、公序良俗に反し、日本中で裁判が起るような気がするのだが、いかがか。

  法的には、今の話しのようなことが起るおそれは十分にある。確かに、創作の成果物というのはその創作者に原始的に帰属するというのは非常に望ましい方法であるし、理念的にはそうであろうと思う。法的な処理として、それではそれを明記するかということになると、先ほど申したようにさまざまな有体物について、加工の規定が適用されるものと、そうでないものとが生じる。
  法的な処理としては、有体物については最初の材料等の所有権は研究機関にある。それに加工を加えた場合、研究者と機関との2者だけの法律関係なので、それは2者間の合意をあらかじめ職務規定でも何でもいいのだが、予め2者間で取り決めておけば、どちらかの所有権が発生することから、それは両者で研究機関のほうに帰属させるという合意をしておけば、あいまいな部分がクリアされるだろうと思う。

  有体物という議論をしてしまうと、生物的なものからSPring−8みたいなものまで幅広いものが対象となる。研究開発の成果に知的な部分と、一方で何百億、何千億、あるいは何十億というお金、その両方があって1つの成果が出てきているだろうと思う。そこで研究のアイデアとか考え方とか、研究者が貢献した部分、そこだけを切り出して、それについての帰属はと言われたら、それは原始的に研究者という感じはする。
  ところが、その考え方で実際に出てきたものの所有権そのものまでを研究者の帰属だと言われると、一方で結構なお金が投入をされているのに、全部研究者にアイデア的なところのみならず、ものの所有権まで帰属させると言われると、疑問に思うが。
  
  そこが民法の加工の規定と関係するところで、今話しがあったように、少しでも知的貢献があれば、すぐ研究者のものになってしまうというものではない。
  例えば、DNA、あるいは特許と考えるとわかりにくいので、ある芸術家で芸大で先生になっている人が、購入された絵の具とキャンパスを使って絵をかいたということを想定するとわかりやすいのではないか。絵の具、材料代は国から出ているとしても、かいたその絵というのはものとしてだれに帰属するかという問題になると、原始的にはその絵をかいた人に帰属するということが適当で、それと同じように考えるとよいのではないかと思う。
  これは創作活動をしたことによって、価値が絵の具の材料代よりもかなり大きく変わっていることによる。価値を少しでもつけ加えると自動的に研究者のものになってしまうというよりも、価値が材料だけの価値よりも大きく上がったようなものについて考えていくとよいのではないかと思う。民法の加工の規定でも、価値が大きく上昇したようなものという書き方がされていたと思う。むしろ、加工で価値が大きく上昇したもの、それが知的貢献になるわけだが、その知的貢献の大きさというものをどういうふうに判断していくかということを判断基準として議論していったらよいのではないかと思う。

  どこを想定すればいいのか。生物資源だと、かかった費用は非常に莫大であっても、できたもの自身の価値というのは非常に少ないので、むしろ絵と同じような形が多いと思う。一方、SPring−8のような工学的なものであれば、価値そのものが残ることから、それを研究者のものだと言うと少し違和感がある。

  私なりに考えを整理して言うと、どのように研究費を投与してものをつくったとしても、その人間とそのアイデアがない限りは成果が出ない。その限りにおいてはどっちに権利があるのだというと、鶏・卵の論議と同じようになってしまう。そういう環境と研究費を投与した人なのか、それとも、そういうものを応用して考え出した人なのかということになりがちだと思う。
  そこのところを整理して考えると、結局は、私はやはり頭脳を使って考え出した人間に原始的には帰属させる。ただし、できてしまったものを即研究者の帰属とさせることに甚だ不合理だと感じるときがある。そこで、その後の契約、勤務規則等においてそれを解決するという方法をとれば、つまり生まれてきた成果の評価、その観点に基づいて契約で処理するという考えに立てばこれは解決できることと思う。
  従来の知的財産権のあり方の延長線で考えても解決できない問題であって、これは全く新しい知的財産権の概念を我々が今解決していくのだという発想に立つべきだと思う。したがって、こうした有体物の場合も原始的には発明者に帰属する。それは、契約上、規則上でその扱いについてはきちっと取り決めをしておくというようにする。そういうルール、あるいは法的なルールを確立することが重要ではないかと私は思う。

  通常の有体物について所有権というと、基本的には処分する権利である。あるいは借りた有体物を返すと、自分の手元にはなくなってしまうというのが通常の有体物の特徴である。ところが、微生物については事情が違う。例えば100万個の微生物を借りてきて、それを200万個にした場合、100万個返せば、もとの貸してくれた人は同じ状態に戻るわけだが、残りの100万個については借り手側に残ってしまう。そこが通常の有体物と違うところだと思う。いわゆる無機質の有体物を頭に置いて所有権を議論すると、これはかみ合わないのではないかと思う。ぜひ専門家の方に、その辺について所有権という考えをどう適用させるといいのか、知恵を拝借できればと思う。

  これは非常に難しい問題である。子孫が生まれる、増えていくということは、法律上一種の天然果実ということになり、それはその時に収取する権利を有する者の所有に帰するということになる。やはり所有権で考える限りは、そういう考え方しかとれないだろうという気がする。
  この場合に適切な解決法として、成果物自体が一種の知的財産権として保護されるべき創作物だということにすれば、それについての基本的な帰属というのは法律の世界で法令によってきちんと決めておくべきことであり、またそれは法律で決められることだろうと思う。例えば、著作権法上の法人著作だと原始的に法人に帰属するけれども、特許の場合は特許を受ける権利がまず発明者に発生して、次に使用者のほうに帰属させるという構成で法的には取り扱うことにしている。その辺の法的な取り決めというのは、法律ならできることである。
  確かに法律で定めるとした場合、その目的物をどう定めるかというのが非常に難しいところはあるが、原則的な規定を置くべきだろうと思う。そうしないと、後で法的な混乱が生ずるような気がする。その辺はもう少し整理させていただきたいと思う。

  原始的帰属に関してはかなり重要な問題であるが、いままでの議論で理念は理念としてかなり合意はできていると思う。それが運用として法的にも大丈夫なのかというところは、宿題として残るのではないか。これは一旦これで置かせていただく。
  もう一つの議題として、研究開発の場での広い利用のあり方ということでまとめがある。そちらを説明をいただき、両方まとめて議論を進めていきたいと思う。

 
事務局より資料3について説明があり、これについて以下の討議が行われた。

 
  大半は賛成だが、資料の2ページ目でリーチスルーとか提供価格に関しての記述がある。これは、相手先が公的研究機関だけではなく、民間企業の研究機関も意図されていると思うが、その場合については、必ずしも提供価格を実費を上限と決め打ちしなくて、ケース・バイ・ケースでいいのではないか。
  我々の研究所で現在進行中のテーマで、相手が民間企業研究機関で、そこに我々が試料を提供し、有償のMTA契約を締結するものがある。その場合に、その提供した試料から発生した知的財産の帰属をどうするかについては、我々はケース・バイ・ケースだと思っている。単に評価系で使う場合は、我々が権利を主張することはほとんどないと思うが、試料が変化し一定の有益な形になり、それを相手企業が特許出願するような場合は、我々の研究所の貢献が何%であるかは別として一定の持ち分があってもいいのではないかと思っており、こうした場合にはケース・バイ・ケースの交渉力を持つという方向で調整している。
  その際に、例えば1,000万、2,000万といった高額で譲渡を受けた場合にはもう買い取りという見方もあるのではないかという相手側の意見が出た。特許でも同じことだと思うが、単に実施許諾というのもライセンシングの1つであるし、譲渡というのも1つの技術移転の形である。譲渡してしまう場合には、我々の方には特許権も何も残らない。その後どう発明等が発生しようが、すべて向こうのものになると思う。
  それと同じように、マテリアルの場合も、高額で移転されたら、もうそのときにはそこからどう特許等が発生しようがみんな向こうのものだという見方もできるであろうし、そこはケース・バイ・ケースの弾力的な運用でいいのではないか。

  基本的には契約だから、個別で合意すれば、別にそれはそれで問題はない。
  あと、ここでいう価格というのは、あくまで研究開発目的で使うということを想定している。産業利用する場合は想定してない。

  もし何らかのガイドライン、あるいはルールという形で国の一定の方針を出す場合は、価格、リーチスルーに関してあまり決め過ぎると、逆に産業創出上どうかという問題がある。
  特に大学からベンチャーを創出するという現在の大きなトレンドの中で、例えばTLOからベンチャーに対してはリーチスルーも何もなしで、エクイティーだけでライセンスをしたとする。そのベンチャーが成功すればTLOももうかるという仕組みが組めたとしても、では、例えばバイオ・ベンチャーが大手製薬企業と大きな取引を結ぶという場合になると、必ずそこにはリーチスルーの契約が出てくることになるのではないか。実態上、ここで仮にリーチスルーの権利を押さえたとしても、必ず後で問題が出てくる可能性はある。そこはむしろケース・バイ・ケースで、ベンチャーは市場原理にのっとって契約をすればいいし、TLOの場合は大学としての立場に立って適正なライセンスのあり方ということをケース・バイ・ケースで判断をすればよいと考えている。
  また、研究教育目的のライセンスと商業目的のライセンスを明確に区分して議論する必要があるかと思う。説明された資料に関しては、主に研究者間でのアカデミアの利用ということが前提に書いてある。そこにもう一つ、商業目的のライセンスに関しても、やはり適正な産業をどう育成するかという観点に立っての検討が必要ではないかと感じている。
  もう一点、1つ前の資料2(2)2のcについて、当面、国立大学等において研究成果をどのように取り扱うかということに関しては、特に有体物について提案では国に帰属させると書いてある。資料3の説明にあったように、実体上知的財産権と有体物が1セットになってライセンスされるというパターンが非常に多い。例えば、国立大学が法人化するまでの期間の運用として、特許は先生個人に帰属して、例えばTLOが取り扱うこととなっている。しかしながら、例えば特許に関連するネズミのほうは国に帰属してしまって、では国からどうやって譲渡を受けるかという問題が生じる。無償の譲与であるとか、低額の場合は随契で譲渡できるということがあったが、トランスジェニック・マウスなどは価値として考えると1匹50万円以下では譲渡しにくいものだと思う。その辺のところで国立大学が法人化するまでの間は、現場で動いている人間としては、有体物も発明と同様の帰属の仕方とすることが最も効率的に動けると思う。

  先ほどの意見は全くごもっともで、本来的に言えば同じ扱いにするのが一番便利であろうと事務局でも考えている。先ほど話しがあったうちの1点は、発明委員会方式みたいな形でやるのがいいのではということだと思う。あともう一つは、商業目的の譲渡の話であろう。
  商業目的のほうは、この会計令の書き方を見ると、「小額である場合その他政令に定める場合」とあるのは、あくまで並列事項であることから、額の縛りはないと解釈している。
  それから、あともう一点の発明委員会方式がいいのではないかという点は、我々も考えてみたが、何点か理由があって難しいと思っている。
  その理由のまず1点は、例えば発明等にかかる成果物だけを国の所有に属する動産とするという場合は、前回のプレゼンテーションにあったように、発明等の帰属が決まらないと成果物の帰属は決まらない、即ち発明の生じる前はだれの帰属になる成果物か分からないという問題点がある。発明の生じる前、仮にその教官帰属であるとすると、発明が生じた後に、事後的に国に帰属するということもあり得るということになり、その理由をどう説明するのか。発明が出た時点で帰属が変わるという話になって、それでいいのかという点が1点。
  もう1点は、国が特別に措置した費用や装置を用いて得られた成果物を発明委員会にかけるというのも、1つのやり方ではあるが、これは、日々生まれる成果物が膨大であることからすると、すべて発明委員会で裁くのは実質難しいのではないか。また、事務にとっても負担になるのではないかと考えられる。
  またもう一つは、もしもこのやり方をとると、財務省の協議が実際必要になってくるが、これは直ちに了承していただけるかどうかはまだ難しいところがあり、当面の解決策としてはなかなか難しいのではないかと考えている。

  知的財産の保護との調整の(3.1)の四角の中の2ですが、当該事業が収益を目的としている場合となっている。これはどういうものを想定しているのか。

  これは例えば、もとのデータなり生物遺伝資源を公的研究機関が所有しており、それを、ある民間の事業者に委託等して、その民間事業者が生物遺伝資源なりデータなりを体系的に保持して、それらを収益目的で販売している場合などを想定している。公的機関でなくいわゆる業者が販売する場合を想定している。

  商業目的か研究目的かと観点で確認させていただきたい。我々の機関も研究機関なので、基本的にものの生産は行わない。企業にマテリアルをトランスファーするときも、相手企業が研究目的で使うということがベースになっている。それを商業目的と言うのかどうか。つまり企業が研究目的で使うときは、それを研究目的といっていいのか。  
  もう一つは、我々の研究所では標準関係の研究を結構やっており、例えば精密な長さとか重さをつくる装置を試作した場合について、このような装置は1台あるとあちこちで使用することができ、それを提供したらたった1台でもいたる場面でコマーシャル・ベースで利用することができる。この場合は商業目的になるのか、その辺りを確認したいが。

  1点目の企業の研究開発目的の提供、これは、この資料では研究開発目的と認識している。
  あともう一点の、いわゆる特別に開発した装置、標準をはかる機械の例は商業利用と考えられる。

  (1)の枠内のh、それと(3)の(3.3)との整合性について説明いただきたい。

  流れの順序からいうと、まず先に(3.3)が来ると思う。その後に、(1)のhが来るのではないかと思う。まず、この(3.3)は、出てきた成果であって秘密にすると価値があるものをどう扱うかという、振り分けの問題である。それと(1)のhというのは、例えば機関で既にノウハウと認識されているようなものを研究開発の場に出すことについてはどうするかという問題である。

  今の点に関連してだが。まず、(3.2)で知的財産権と言っているのは、文脈からすると営業秘密を含まない営業秘密以外のものという意味だと思う。そして(3.3)が特許や著作権を除いた不正競争防止法で保護の対象となる営業秘密、トレード・シークレット、ノウハウについてのみ書いてあると認識している。
  (3.3)のところで、秘密とされることにより価値が生じるということと、aの広い利用を図るということとの関係があいまいだと思うが。広い利用を図るということは、秘密を保持しないというニュアンスだと思う。一方、1行目には秘密とされることにより価値が生じると書いてあるので、そこの整合性があまりよくないのではないか。

  これは、秘密とされることにより価値が生じる性質を持ち、かつ、研究開発の場で広く使ってもらうことにより、科学的、学術的な価値を生じるもの、その2つの性質を兼ね備えている研究開発成果物を対象に記述してある。

  いわゆる営業秘密とはまた違うものか。

  単なる営業秘密ではない。

  例えば、習慣性のないモルヒネの薬物を簡便につくる製造方法を研究現場でつくったとする、こうした薬物は医療上特に終末医療では非常に要求されているものであるが、簡単にそれを公開すると、あちこちで習慣性のないモルヒネをつくってしまうというおそれがある。そうした場合、これは特許にも出願できず、トレード・シークレットとして持っているよりほかにないということになる。そうした場合の扱いはどうか。

  その点については、おそらくここのbに該当する。これは秘密にして産業利用を図るということで、トレード・シークレットと同じ扱いになるのではないか。

  今の点、(3.3)に関連してだが。ここのaに関連する事例として思いつくのは、例えば生物関係の解析に非常に役立つあるソフトウエアを開発した場合があげられる。そこが研究戦略の一環として、そのソフトウエアの中身は公開しないが、共同研究をしたところとだけはそのソフトウエアを使わせ、そして共同で論文を発表する場合などが思いあたる。これは別に商業利用ではないが、学術研究の戦略としてそうした戦略をとって、その人たちの業績を増やしていこうとするものである。それを善しとするか悪いとするかについては、また議論があるところだと思うが、a考え方に立つと、もうそういうのはやらせない、させないということになると思う。

  やはりこの(3.3)のaについては、秘密と言っているから、研究開発の場での広い利用を図ってしまったら秘密でなくなるのが目に見えているので、やはりバッティングしてしまうのではないかという気がするが、いかがか。

  これに関連して、事務局は、aのほうは知の創造を目的とする基礎研究、bのほうは実用化を目指す研究開発、というように意図的にa,b二つに分けたと思う。研究の現場での実際問題として、本来はこれは非常に囲われた秘密にしておいたほうがいいというようなものについて、事務局案のように二つに分離できるのかどうかという問題を含んでいるのではないか。むしろ、実際の研究現場でこのように分離できるかについて伺いたいと思うが。

  秘密になったら価値が生じるか云々というのは、使う側の立場によって全く違ってくると思う。基礎研究の中で出た非常によい成果でも、使う側の立場によって違うのではないか。おそらく、このように分けるのは、研究現場から見るとぴんとこない。
  私のところはNMRを持っており、あるもののたんぱく質の構造なんかを決定したりするが、この成果は製薬会社が使うときと、大学などのバイオの先生が使うときとで、その価値も扱い方も違ってくる。

  この研究開発成果を広く使うためのあり方は、煎じ詰めて言ったら公表するかライセンスするかということだと思う。
  研究者に対して論文発表に制限を加えるというのは、基本的にあってはならないことだろうと思う。その上で、先ほど来議論になっているように、最終的に機関に帰属する知的財産権を、アカデミック・パーティーと非アカデミック・パーティーにどういうふうにライセンスするかが問題になるのではないか。そのときのライセンスの条件が違うということだけだと思う。ちなみに我々の研究所の場合は、営利の法人の行う研究開発は企業活動であり、産業利用という位置づけにしている。

  企業の基礎研究について全く同じ議論が成り立つ。アメリカの例だと、結構企業の研究所で基礎研究をやっているところがあり、そういう企業の研究所から研究成果物の請求が来たりする。研究開発目的か産業利用かということは、その主体が民間企業であるとないとにかかわらずケース・バイ・ケースで判断されるものと思う。
  (3.3)が一番問題となったが、ほかにないか。

  今回、事務局が提示した案では、MTAを基本的に締結するという内容にしている。MTAを基本的に結ぶことは、基本的に今までの手続よりもプラスアルファとなるもので、大学の事務局なり研究者の方なりに直接かかわることになると思うが、この点も含めて議論していただければと思う。

  資料2の(2)以降のところで、当面現状と同じだが、MTAをきちんと取り交わすというのがおそらく事務局の案だと思う。(2)以降の、特に国立大学等における当面の帰属、やり方、そのあたりに関して議論いただければと思う。
  それから、国立大学が独立行政法人になるかどうかはまだ決まっておらず、大学法人というのはいわゆる独立行政法人とはかなり違う性格となる可能性がある点も留意が必要ではないかと思う。

  資料の中で独立行政法人化前とあるのは、法人化前というのが正確な表現である。訂正させていただく。

  資料の2以降で、特に大学等における帰属の扱い、実際の運用の仕方というところに関していかがか。イメージとしてはMTAをきちんと取り交わすという点が現状と変わるだけと思うが。

  そのとおり。大学や研究所内でMTAを取り交わし、MTAを取り交わしたことを大学等の事務局がしっかり管理をするということ。ただし、手続的には非常に件数が多くなることが想定されるので、なるべく簡素な方法でそれができるようにしたいと考えている。

  MTAに関してはシンプル・レター・アグリーメントというものを念頭に置いていると考えていいのか。これは、やり出すと切りがないということもあるが。

  極めて簡単なシンプル・レター・アグリーメントのようなものを考えていて、書かれる項目も資料の2ページ目にあるような5点ほど書けばいいのではないかと考えている。

  MTAの条件はこの程度のことでいいと思う。1点だけ留意点を述べたい。外国の民間企業からサンプルをもらうときに、書いてあることをよほどよく見ないといけない。今後研究所で行われるこのサンプルに関連した研究の成果は一切共有とする旨を条件としている場合が多く、注意が必要である。そこのところをきちんと大学の事務局の人が見きわめないといけない。教官1人がサインして、手続として事務局の人がOKだと言った結果、その後何年もその企業にやられ放題ということは十分あり得る。だから、よほど契約内容をきちんと見て、怪しそうなやつは怪しいとわかるぐらいの事務屋さんをまず育てて、弁護士のところに聞きに行くという体制をとらないと、特に弁護士の数だけは非常に多い国には絶対に勝てないと思う。

  資料3の2ページ目の研究材料提供契約に規定すべき事項の例について。例だから漏れていてもいいのかもしれないが、提供後の試料に基づいて発生した知的財産の取り扱いについての項目があってもいいのではないかと思う。

  これに関連して、私どもも、年間10件ぐらいMTAの契約をやっているが、やはり一番神経を使うのが新権利の取扱いについてである。状況によって共有にしたり、あるいは事後協議にするケースもあるが、ここはかなり重要な事項だと思う。

  シンプル・レター・アグリーメントの段階で必要なのは、その商業化、あるいはライセンス化のときに別途協議するという1行だけではないか。この段階のMTAで具体的に規定すべき事項というのはあるのか。配付資料の利用目的に関する事項というところに必要な条件が入っているのではないかと思うが。

  提供後の知的財産の取扱いに関する契約事項を設けることに事務局としても問題があると思っているわけではない。

  いわゆるシンプル・レター・アグリーメントというのは非常に簡単なことしか書いていない。それを今想定しているから、逆に簡単な事項の取り決めだけでいいのかというのが質問の趣旨だと思うが。

  今申し上げた事項は、相手側との間で一番重要な項目であり、提供条件の例に入っているほうがよいのではないかと考えた。現実に、相手企業に我々の研究所の試料を提供する際に何が問題かというと2点ある。1つは研究目的をどうするか、もう1つは提供した試料に基づいて発生した知財の帰属をどうするかである。それを協議事項にするのか、共有にするのか、全部相手企業にやってしまうのかが問題となる。そういう意味で申し上げた。

  ここに掲載した事項は、基本的には研究者同士の間のやりとりということを前提として考えている。相手側が企業であったりした場合に、追加でそうした条項をつけ加えることについては何ら問題がないと考えている。

  このシンプル・レター・アグリーメントを含めての実際の運用に関することだが、これを、例えば国立大学に対してはどのように周知徹底させるのか。想像しただけで大変な気がするが、その辺はどのように考えているか。特に、法人化前の段階としてどうか。

  あくまで1つのイメージであって正式に詰めた議論はまだしていないが、例えば特定の成果物については、国立大学等で一括して譲与を承認しておいて、その範囲内であれば教官が単独で提供できるようにすることが考え方の一つとして挙げられるのではないか。あるいは簡単な手続、例えば申請書みたいなものをホームページに載せておいて、それで簡単な形でできるようにすることが考えられる。今のところは、そのぐらいのイメージで考えている。どこまでこれが実際の大学で機能するかというのは、まだ具体的に手続を詰めていないので明確な答えは出ていない。

  質問の趣旨は、こういうことを決めた後に大学関係者にどういうふうに知らしめるかということだと思う。基本的には文書をつくって大学の事務局に流す、あるいは説明会等を開いて大学の事務方に集まってもらって周知徹底を図るとか、そういうことまで考えたいと思っている。

  先ほどのそもそものマテリアルの帰属をどうやって決めるかということに関連して、いきなりすべて国のものであるというように決めてしまうか、あるいは私が提案しているように発明委員会で決めるという形にするかということに関して言うと、どちらに転んでも非常に手間がかかる話だと思う。
  そのときに気になるのが、すべて国に帰属したときに、どのような形で例えば民間企業なりTLOなりにそのマテリアルを譲渡する、あるいは移転することができるかという点である。その実態の手続のところをどうやって実務として成立させるかが大変気になる。それは譲渡の価格の決め方1つとってもそうなので、そのあたりのところを十分に考慮する必要があるのではないか。

  資料の表であったが、簡易な随意契約によって有償譲渡する、基本的にはここの話だと思う。これを現段階では大学の事務がやるということになるだろう。TLOに任せるということではなく、大学事務としてこれを随意契約で譲渡することになるわけだが、これはすぐにできることか。

  今の問題は、帰属がもともと明らかでなく、だれが渡していいかもわからないという混沌とした問題があり、まず、その帰属を明らかにして、だれがカウンター・パートとして責任を持って相手方になるかということを決めるということであり、その相手を大学の事務局でやるということだと思う。

  原始的帰属がどうかについてはともかくとして、基本的に機関に帰属させることが適当であろうということになっており、そうすると現段階では大学の事務局がこれをやるということになるだろう。根拠としては、随意契約ができるという根拠があり、法人化前については、そういう仕組みで行かざるを得ないというのがこのまとめの趣旨だと思うが。

  そのとおり。

  ということであり、あと発言等ありますか。
  最初の原始的な帰属ということに関してはかなり議論があり、これは法的にも何らかの裏づけがないといけないところだろう。原始的な帰属が個人だと、逆に譲らないということを言う可能性もあり、その辺の整合性はとらないといけないということであろう。そこはもう少し検討しないといけないところだと思う。
  一方、にもかかわらず、実際の運用としては機関に帰属させて、なるべく簡単な措置で広く利用が図られるようにしようというのが、この事務局案の骨子だと思う。それはそれでいいのではないかと思う。
  ただ、細かいところでは技術的な問題点が多々あり、これに関してはもう少し詰めないといけないだろう。細かい点やまだ色々な意見があるかと思うが、これは事務局へ投げていただいたらよろしいかと思う。
  もう時間が参りましたので、本日の検討会はこれで閉会させていただきたい。
   
5. 今後の日程
      次回は4月19日(金)午前10時半からここ文部科学省別館大会議室で開催することとしたい。
   
  (文責:研究振興局研究環境・産業連携課)



(研究振興局研究環境・産業連携課)

ページの先頭へ