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研究開発成果の取扱いに関する検討会

2002/02/04議事録

研究開発成果の取扱いに関する検討会(第2回)議事録


研究開発成果の取扱いに関する検討会(第2回)議事録

1. 日時  平成14年2月4日(月)    10:00〜12:00
   
2. 場所  文部科学省別館大会議室
   
3. 出席者
(メンバー) 小原、井上、斎藤、隅藏、高田、長井、羽鳥、馬場、平井、藤川、牧野、森下、山地、和田、各メンバー
(事務局) 遠藤研究振興局長、山元科学技術・学術政策局長、井上科学技術・学術政策局次長、坂田研究振興局審議官、土屋基盤政策課長、田中ライフサイエンス課長、加藤研究環境・産業連携課長
   
4. 議題
(1) 第1回検討会における出された意見の整理
  事務局側から前回の検討会で出された主な意見を説明し、その内容を確認した。
(2) 検討会メンバーによる研究開発成果の取扱いに関するプレゼンテーション
  以下の検討会メンバー等から研究開発成果の取扱いに関するプレゼンテーションが行われ、その後自由討議を行った。
理化学研究所  斎藤部長
産業技術総合研究所  羽鳥部長
大学院大学  隅藏助教授及び東京大学先端科学技術研究センター  新保研究員
(株)先端科学技術インキュベーションセンター  高田取締役副社長

自由討議の内容は以下のとおり。
  (○・・・メンバー、△・・・事務局の発言)

大学から持ち込まれるものに関しては許可が必要であり、大学側の方の書類がないことから、理研サイドの試料として理研のものになるという話があったが、例えば前の大学である先生が発見したものを同じような手続で持ってきて、そこからもう一度理研から外へ出すとき、その場合はどちらのものという規定で取り扱われるのか。要するに、持ち込んだものに関しては許可を得ている以上本人のものなのか、それとも、許可の時点で一旦理研に帰属するからもう理研のものとして取り上げてしまうのか。
   
理研がその材料をいただくときに条件がつく。どうぞご自由にお使いくださいという形が一番理研にとってはありがたいが、この材料は第三者に提供してはいけないとか、この材料を使って行われた研究成果は共著にしましょうとか、いろいろ条件がつく。それでもその条件が妥当であれば、その条件をのんで理研が受け取ることから、理研が外に出してはいけないという条件をのんでいたら外に出さないということになる。
   
持ってきた個人の研究者が次の大学へ移る場合はどうなるのか。
   
そこが今まであいまいだったが、今後は個人の研究者が理研に採用されたときに一緒に持ってくるものはないと想定している。個人の研究者が自分で開発した材料であっても、それは、例えば某大学の材料であるので、某大学と理研との間でマテリアルトランスファーに関する合意をした上で、そこに条件がつけば、その条件に従って理研のものにした上で理研が外に出すことになる。
   
それでは、例えば次の大学に移るときは、その某大学がその先生に帰属しているとみなした場合は、そのままその先生が理研から出た場合は持っていくということか。
   
理研のものであり、先生のものではないので、その先生が某大学に出ていったときには、その大学がまた理研にこの材料をくださいということになる。
   
一回理研で見つけたものは理研のものでよいが、前の大学で見つけたものをそのまま理研に入れるというのは、要するに、理研に入る場合、全部自分の成果を取り上げられるということになる。前の大学は別に承認をしてないわけで、研究者のサイドからみれば、例えば自分が発見した遺伝子はその人に帰属するとされ、理研に移った時点ですべて理研に取り上げられて、次に出るときは無一文で出ていくのかという話になると思うが、それはそういう理解でいいのか。要するに、一回理研に入ったものはすべて出さないということになるのか。
   
そのとおり。ただ、そんなにしゃちほこばって考えようと思っておらず、その材料をその人が欲しいと言えば、きちんと文書で確認した上でどうぞお持ちくださいと、こういう話になる。ただ、その人がつくったからといって、その人のものではないということをきちんとしておく趣旨。
   
そこでもし理研のものとしておけば、理研に当然権利が残る。例えば理研とそのA先生の両方に使う権利がある、という理解でよいか。要するに、一回理研を経ると、出るときに持って出れるというのはわかるが、理研のほうに残った権利も、勝手に理研が使えるということになるのか。
   
そうなるだろう。ただ、おそらく理研そのものはその材料を使わないので、その研究者があるいは他の研究者が使うことになる。
   
他の研究者が使いたいと言ってきたときに、本来の発見者の意向と関係なしに理研が使えるということになるのではないか。
   
最初につくった人の意向は反映される。
   
とすると、その先生がだめだと言えば、理研サイドとしては使えないということになるのか。
   
最初に、大学の先生が理研に移る際に大学から材料を持ってきた場合、大学としての取り決めが全くないから、結局全部理研の側のルールでやることになる。大学の側にもしあれば、大学側のルールに従うということか。
   
大学側のルールに従う。
   
だから、大学でルールをつくらないとしょうがない。今は過渡期だが。
   
つくらないといけない。理研に行くと全部取られるという意味に普通、研究者の方は感じると思う。
   
もし理研との契約で、例えばあるA大学から理研のほうにいった成果があるとする。その成果を理研の中で使って、何か実際にロイヤリティーが生じるような発明をしたとする。その場合の成果というのは理研に所属するのか、それとももとのA大学に所属するのか。
   
マテリアルトランスファーのときの合意に従って処理される。理研としてはどうぞご自由にと、理研から出すものについても基本的にはどうぞご自由に、としたい。だが、開発者の意向であるとか、そのサンプルの相対的に決まる価値とかによって、この結果得られたものについては、発明が生じたら協議しましょうとか、そういう条件がつく。それは互いにその材料の移転に関して合意していれば、それに従ってすべて処理される。
   
実験ノートに関してはどちらに帰属するとしているのか。
   
実験ノートは情報だから、それはつくった人のもの。無体財産は、基本的に日本の法体系ではつくった人のもの。それが雇用関係に従ってどれだけ研究所に譲渡されるかということが決まってくる。
   
アメリカの場合、おそらく実験ノートは研究所の帰属。我々は全部ノートは置いて帰る。そこのところは日本的なシステムということか。
   
ノートは、著作物になるのでは。
   
アメリカでは、最初の契約時にサインをしてノートは全部置いていく。
   
今の議論に関連して、例えば研究者が移った場合、サンプル等を理研が管理するが、そのときの変質などの責任は、誰の責任になるのか。
   
とても難しい問題。基本的には税金を使ってつくられたものだから、物品と同じ。したがって、研究所が管理しなければならない。ただ、クローン一個一個、微生物一匹一匹まで研究所が管理できるはずがないので、それはつくった人に基本的に管理をゆだねるという考え方をとっている。日常的な管理は研究室にゆだねるというのが一番現実的であり、それが変質したからといって、だれだれの責任だというようなことは追求しても意味がない話だと思う。
   
細かなところは別として、持っている問題意識はよくわかる。例えば、私も今、研究しているのでよくわかるが、とにかくスピードが速い。2週間後には例えばこのクローンが欲しいとか、あるいは来春にはこれをイギリスの大学に送る必要があるとかの案件が日々発生する。例えば自分のやっているチームの仲間が半年後には別の大学に行き、半年向こうに行ってまた帰ってきたりとか、共同研究がずっと続いているとか、そういうことが日常的に起きる。あまり詳細にきちんとやろうとすると、だんだんその実行可能性がなくなってきがちになるのではないかという懸念がある。
  この資料の中にも、『マテリアルトランスファーの契約は詳細に定め』と書いてあるが、詳細に定めるといいのかという問題があると思う。結局、理研の問題が起きたのは非常に残念なことで、ある意味、マテリアルトランスファーの議論が理研の問題から始まったのは、日本の残念なところだと思うが、それがトラウマになって、ディフェンシブにがちがちにやろうとすると、研究サイドが実際上動かなくなるのではないかという気がする。これまでの質問は、その辺が全部バックグラウンドにあると思う。実際ほんとうにフィージブルなシステムは何だろうというところだと思うが、その辺はいかがか。
   
マテリアルトランスファーのひな形というのを用意した。あとは、各研究者が何を要望するか、個々のマテリアルで少し特徴が違うからどういう条件で先方がもらいたいと言っているか、といった交渉で決まることが幾つかある。
  ひな形の条件は4つだけ。まず、この材料はこういう目的に使ってくださいというのが1点目。2点目は、第三者に、特に生物材料は複製可能なので、増やして第三者にあげるのは勘弁してくださいということ。3点目は、使った結果で論文を書いたら理研からもらったと書いてくださいということ。最後に、何かあっても理研に対して訴訟を起こさないでくださいということ。そのほかにもし知的財産あるいは発明が得られたら、その取扱いについて協議しましょうというのをさらに追加する等、先生方の意向や、あるいは各推進部やセンターごとの材料による特徴によって、条件を追加したり、しなかったりということになるが、今の4つだけが基本条件なので、基本的に理研のサンプルは広く皆さんに使っていただいて、新しい付加価値をつけていただくというのが一番重要なことだと思っている。ただ、何もルールなしでやってしまうとこういう問題が起こるということなので、最低限守るルールだけを明らかにしていこうということである。それで、研究者にとってあまり面倒でなく、材料の流通が阻害されるような条件はなくす、という方向で考えている。
  ただ、そうするといっても、その材料は研究者のものなのか、研究所のものなのか、今現在雇用契約上はっきりしてない。そこで、この4月から基本的に全部研究所のものにすると取り決めた。管理、いわば文書の手続は研究者ではなく、事務屋がきちんとやるということを明らかにした上で今のような手続を進めていこうとしている。
   
今、管理は事務屋との発言があったが、前回の会議で、帰属は研究所に、管理は先生に、中間的なパターンをとるという発言があったと思う。その管理という問題が大事だと思う。帰属は重要な問題ではない。要するに、だれが実際マネージできるのかということが重要。事務屋さんが管理するというのは、事務屋さんが判断して、書類を作成して全部やるということなのか。
   
基本的には、このマテリアルは共同研究で渡そう、あるいは単にマテリアルトランスファーで渡そうというのは研究者が判断すればいい。その価値を一番よく知っているからである。そのときに書類を一々つくってどうこうというのは研究者にとっては負担であろうから、それは事務局がお世話をしましょうということである。事務局としては、いつどこに何が行ったという記録はきちんと研究所に残さなければならないので、その部分は事務局でやろうということである。
   
この問題は5月に発生してから、ずっと私どもも一緒に対応してきた。そのときに一番明確にしなければいけないと思ったのは、理化学研究所が持っているそれぞれの試料がどこから入ってきたのか、いつ入ってきたのか、そして、理化学研究所から出していくときにどこに出したのかということをきちんと把握している必要があるのではないか、それを書類、書き物として残しておく必要があるのではないか、という点である。
  当時、理化学研究所はそれぞれの研究室でいろいろなところからいろいろな試料を持ってきたわけだが、基本的には大体どこから持ってきたのかはわかっていたのだが、その資料のフォーマットが統一されてなかったことから、いつ入ってきたのかとか、あるいは入ってくるときにその機関からきちんと承認を得てもらってきたのかということがはっきりとしていなかった。したがって、それをはっきりしようという認識でいろいろフォーマットを整えた。特に大学の方々からいろいろな試料をいただくと、そういうときに基本的なフォーマットを統一する。そして、その契約関係というのか、もらうときの条件もそれぞれごとにきちんと決めていく。それは、理化学研究所のように手続を持っているところには相手方のフォーマット、あるいは相手方の考え方ということを第一とする。ただ、持っていない場合は個別に判断することになるが、それは理化学研究所のフォーマットというか、考え方とかいうことに基づいてやる、ということになった次第である。
  したがって、先ほど指摘されたように、理化学研究所に一度入って、それから出ていくというときも、基本的にはいつ入って、いつ出ていくのか、それぞれについては理化学研究所と出していく機関、あるいは受け入れる機関の契約に基づいて決めていく。そういうことになった次第で、理研に入ってきたら全部理研のものになってしまうとか、そういうところまでは必ずしもはっきりしているということではなく、それぞれの機関ごとの考え方に基づく。ただ、手続とか、どういう考え方でその契約がなされたのかということをはっきりしようという認識でフォーマットを整えようということだった。
   
一般的にアメリカの大学では、おそらくその入ってきた時点で、これは持ち込んで私のものだから私のものというのを認めてもらい、それ以外のものをその後研究所のものとして帰属させるというケースが多いと思う。おそらく最初の時点で、どこまでが自分の持ち込みで、どこから先が新しいのかを判断するケースが多いという印象がある。私も日本からアメリカへ行ったときは、自分が持ち込んだものは、これは私のですということを最初の時点で了解を得ているケースが非常に多いので、今の話を聞いておそらくそういう感じではないかと思った。もう一つは、研究所で管理するのはいいが、事務量が膨大になるのではと思う。我々のケースだと、例えば一つの実験をするのに新しい遺伝子を場合によっては20とか、30とかもらうケースが結構ある。それを各研究所がやるとなると、おそらく遺伝子が2万とか3万とか、すぐそういう単位になってくると思う。それを全部管理するのはほんとうに可能なのか。中間物とかさまざまなものがあって、考えただけでもぞっとするものがある。
  逆に言えば、書類上はやっていることになっていても、実際にはそれ以上のもの(書類にはあらわれない部分)がたくさんあって、結構そこに大事なことがあって、それが思わぬことになるというような懸念がある。
   
今、理研に入ってくるもの、それから、出ていくものはよくわかったが、理研の中で生まれたもの、全く無価値なものが非常に価値のあるものになったというのは、いつの時点で理研は把握することになるのか。また、その取扱いはどうなるのか。
   
理研は伝統的な主任研究員制度というのがある。契約制のセンターにもそれに相当するグループディレクターという方がいる。基本的には、この人たちがどうするかということを判断する。理研の中で、例えば膨大なマウスのクローンがあったとする。理研はバンクを持っているので、そういうものはできるならばバンクに移して、そこから広く普及するという方向をとりたいと思っている。その際も開発した研究者がいつオープンにしたいのかということが尊重される。ただ、物によっては相当の政府資金を投入しているため、世界に広くかつ迅速に公表することが大事である、とか、あるいはしばらく内緒にして知的所有権について全部洗い出してから公開するといったように、色々なケースによって取扱いが違う。それは開発した研究者が一番よく知っていることから、その点を尊重して、あとは理研の中のバンク事業が対応していくというように考えている。
   
日本は契約社会ではないので、契約をもっと重要視するという方向へいくのは私はいいことだと思う。ただ、先ほど来出ているフィージビリティーを頭に置く必要があると思う。その辺のフィージビリティーを見た上でルールを決めるべきだと思う。
  それに関連してなのだが、基本4条、4つ程度というのは、私はリーズナブルだと思うが、どうしろという結論を書くよりも、どういうことについて契約で決めなければいけないというふうにするほうが私はいいのではないかと思う。例えば理研に所属するというように決めるのではなくて、所有権がどうなるかについて必ず契約書の中で記述しなさいというような、そういうルールの決め方でいいのではないか、ということが一つある。
  それからもう一つは、生き物でない有体物と生き物とは少し違うところがあるのだろうと思う。バイオとか、植物、新技術とかそうなのだが、造語のように増えていったりするので、そういう特性を頭に置いてルール決めが必要ではないかと思う。例えば(1)で譲渡と書いてあるのだが、譲渡がいかなる意味か、何か通常の所有権のトランスファーというだけでは済まないのではないかと思う。例えば貸与が含まれるのかどうか。貸してもとへ戻ってきたらそれでいいのだというわけにはいかないのだろうと思う。貸している間に先方で増えて、持ち出したのと同じ量が戻ってきたら、それで全てがなかったと同じことというわけには多分いかないと思う。だから、非常に特殊性、難しさがあるので、フレキシブルに耐えられるようなルールを決めておかないと、多分破綻するのではないかという気がする。
   
例えば微生物の学会での流通というのはもう伝統的に長い。その中で譲渡という言葉が日本語に訳されて使われている。そこでのルールをこの問題が起こったからといって、変える気は全くない。これはクローンでもおそらく一緒のことだが、従来から、ある論文に出せばその論文に載った当該微生物が保持され、必ずみんなに分譲できるような形でなければ、論文がアクセプトされない関係がある。それ故、理研のほうでマテリアルトランスファーを結ぶときも、そういう科学社会で慣習になっているルールを曲げる気は全くなく、複製物であるがゆえに、複製可能であるがゆえにそのルールにのっとって渡せば、そこから先は制約をつけないようにしていこうと考えている。それが今までの慣習だし、科学社会のルールであると考える。一方、商業的価値が出てくるものについては、個別に見きわめていかなければと思っている。
  それから、所有権の話だが、今まで個人のものなのか、機関のものなのかが、特に有体物について、はっきりしていなかったので、この4月から、それは全部機関に帰属する、ということをまず大前提にして、その上でこうしたルールで外に出したり、もらったりする、ということを明らかにしていこうと考えている。
   
この説明の3ページ目、研究者へのインセンティブというところで、実施料の25%を研究者に還元とあるが、この25%という料率はどういう根拠で25%になったのか。
   
幾つかポイントがあるが、やはり一番大きいのは、だれがこれをそれぞれ支配していくかということに関係している。25%は研究者だが、次の25%は研究ユニット、次の25%は産総研の組織全体、最後の25%がTLOというような、4者のシュアリングといったことが一番大きかった。それと、あと一つ注意しなければならなかった点は、国有のときの実施料よりも下がらないようにすること。国のときは、額によって50%だったり、何%だったり、幾つかあったと思うが、それよりも決して下がらないようにする、この2点が留意点だった。
   
7ページの一時負担金の中身だが、これは特許の管理費的な意味合いなのか、それとも企業が工業化する場合の研究開発費も含まれるのか、このあたりがいつもポイントになるような気がするが、これはどちらの意味なのか。
   
弁理士さんに払う費用と特許庁に払う費用のみ。
   
企業論理からすると、特許の実施権だけもらって工業化できるものではなく、さらに製品化するためには、人件費、あるいは開発費などの企業が負担する費用が生じている。このあたりの費用はもう一切含まれないということなのか。企業によってはその点を強く主張して、ほんとうの利益が上がってきてから特許料としてバックしますということをよくいうが、それはこれだけ(特許費用の負担のみ)で通るのか、企業に納得してもらえるのか。
   
この管理費用は、出願のための管理費用という意味で、弁理士さんの費用、それから特許庁の費用としては、産総研は旧国研であり、日本特許庁には費用は払う必要はないので、それ以外の例えばアメリカ特許庁に払ったら、そのときの費用も含むという意味。それらの費用を後で回収するということ。
   
今、産総研の研究者と共同研究を行っているが、共同で特許を出願するときに、産総研の成果はすべて組織に帰属するとした場合、例えば特許を出したときに、その寄与の仕方で発明人にしか、産総研の研究者が加わらない場合、出願人はほかの人になってしまうといったケースは認められることになるのか。
   
共同研究の場合に貢献度に応じて持ち分を決めるというように、共同研究契約書には書かれている。仮に産総研の貢献度がゼロであれば、同じ共同研究でやった成果としても、企業だけの出願というケースはある。ただ、その場合にはおそらく発明者としても産総研の研究者は載らないはず。
   
発明人には加わるケースで、出願人に入らない場合も生じるかもしれないが、それはないということか。
   
おそらくないと思う。
   
あと1点、秘密保持義務を職員の身分を失った後も適用というのは、これは期限はやはりある程度定まったものか。例えばアメリカの企業やベル研究所等では、何年間はその秘密を保持しないとだめだが、それ以後は構わないという、そういう契約になると思うが、この点はどうか。
   
5年ということになると思う。共同研究契約においては5年と定めており、また秘密保持契約を結ぶ際にも5年と定めている。
   
産総研にも基礎研究をやっている先生方がたくさんいると思うが、大学にいる者とすると、特許に近いものは特別として、それよりずうっと離れているが、ポテンシャルのある物を研究する場合がたくさんある。そういう場合の帰属について、我々も基礎研究の場合に気軽に産総研、旧工業技術院の人と物をやりとりしたことがあるが、その際にすべてこの共同研究契約というものを結んでいるのか。基礎研究というと、線を引きにくい部分はあると思うが。
   
共同で研究する場合には共同研究契約を必ず結んでいただく。幾つかオプションはあるが、共同研究契約を結ぶか、受託研究契約を結ぶか、あるいは技術研修という形で行うか、何らかの形態に該当するように産総研では、産総研外とのコラボレーションにおいて定めている。
  それも何かを始めるときにその契約がないとそこから何も動けないのかというと、そうではなく、もっと弾力的に考えており、後日、共同研究の契約を結んで、日にちをさかのぼらせるとか、そういった弾力的な運用も可能だと考えている。
   
先ほどの話は、かなり大学の実情に近い話だと思うが、CRADAを活用するというのは非常にいいアイデアだと思う。
  内容そのものに対するコメントは特にないが、TLOを当てにするというのは難しいのではないかと思う。既存のTLOというのは各大学に1TLOではない。産総研とか、私立大学は1TLO体制だが、国立系の場合は複数の大学で一つのTLOであったり、あるいはTLOがないところも相当数ある。特に関西圏だと、関西TLOと大阪TLOと兵庫TLOと3つあるが、これは一つのTLOが50大学余りを担当している。そうした場合TLOが50大学の管理ができるかといったら不可能ではないかと思う。今、言われている話は、各大学が一TLOを有する、TLOが大学に一対一に対応するという条件で初めて成り立つ話だと思う。それ以外の条件では、おそらくTLOに任せるというのは無理だと思う。産総研とか、理研のような、それぞれのところが一つのTLOを持つような研究機関は大丈夫だが、それ以外の国立大学に関しては、TLOそのものを少し考え直さないと、TLOに任せるということは無理だと思う。
  もう一つは、TLO自身の形態が非常に複雑な点。財団法人があり、株式会社があり、それからNPOに近いようなタイプがあるということで、それぞれのTLOで、できることとできないことが非常にばらばらである。例えば財団方式のところでは、先ほど言ったようなものの理解はほとんどなく、特許を出すことしかできないとか、あるいはそこでベンチャー企業の応援もできないとか、いろんな問題が出てくる。今のTLOを巡る背景は複雑であり、一対一対応ではないTLOで管理を全て担ってもらうというのは無理だろうと思う。そこの議論をしない限り、管理をTLOに任せるという議論は残念ながらできないのではないか。では、大学ができるかというと、事務方の大幅な増員がない限り、実際上は不可能ではないかと思う。アイデアとして、TLOを活用するというのは非常にいいと思うが、既存の大学の中では今は無理だというのが実情ではないかと思うが。
   
そのとおり。東京大学などを見ていると、頼もしいCASTIが存在するので、そのようなTLOをすぐに想定してしまうが、確かに一つのTLOが50大学も見ているというところでは難しいと考える
   
今の話に関連して、TLOがマテリアルトランスファーの一つ一つまで管理した場合、その事務量は実質的に膨大なものとなる。私もいろいろアメリカの大学のTLOの人に会うたびに聞いたりしているが、MTAを全部管理しているのかと尋ねると、それはもう研究者に任せているという返答が多い。ただ、ルールだけは決めている、フォームだけは決めている、といったケースが多い。中には年間二千数百件のMTAを全部管理しているという、頼もしいところもあるが、それが全米の大学すべてて行われているかどうかというとよくわからない。というより、もっと現実的な方法論はあるのだろうと思うし、何もかもすべてTLOということは少し極論的なものかもしれない。
  そこで、私もこの後話しをしたいが、NIHのやり方は、比較的手間をかけずにスマートにやっている例ではないかと思っている。それに関するコメントは後ほどまたさせていただく。
  それから、先ほどの発表の中で、現行でも、TRPは随意契約で譲渡できるのではないかという指摘があった。法的に可能であるという根拠はいろいろと示しているが、実務上、一旦国に帰属すると、国に帰属したものを各大学のTLOが譲渡を受ける際にいろいろと問題がある。もちろん譲渡を受けるものはすべてのマテリアルに関してではなくて、商業目的でライセンスをするものが前提となるが、そういったものに関してTLOが国から譲渡を受けるということに関しては、随契ができるというご提案されているものの、実務上どこまでほんとうにスピーディーに対応が可能だろうか、という懸念がある。私どもCASTIが現状持っている認識とその実務感覚からすると、一時的に国立大学が独法化するまでの間について、既存の発明委員会でマテリアルの帰属を決め、個人に帰属したものはTLOが譲り受ける価値があると思えば譲り受ける、そこで国に帰属したものというのは、それはそれで考えるほかしようがない、と思う。発明委員会で帰属を決めて、それで取扱いをスムーズにするようにしないと、今後、例えば独法化が早くて2年後とすると、2年間のマテリアルトランスファーのブランク期間が日本の国全体にできてしまうということになる。これが一番看過できない状況ではないかと考えている。いろいろ申し上げたが、私は、発明委員会で当面のマテリアルの帰属も決めていただければ大変ありがたいと考えている。
   
マテリアルの帰属がまさに問題だと思うが、これは個人に帰属するとできるのか。今、発明に関しては発明委員会で研究費の種類によって個人帰属あるいは国帰属ということになっているが、この研究途上のいわゆるマテリアルについては、この点は今どうなっているのか。
   
発明委員会では、現状は特許しか扱わない。
   
最近例があって、しばらく検討していたが、それは発明委員会で扱えないということになって、宙ぶらりんになっている。(マテリアルは)基本的にはすべて国有財産ではないか。
   
実態上は研究者が扱っているということになっていると思うが、国有財産という考えもあり、その辺のルールが明確化されていないということが、この問題意識の発端であると考える。
   
次回の委員会で少し発表させていただく機会があると思うが、基本的に国有財産であることは、この情報を見ていくと間違いないと思う。問題は、要するに、国の財産だが、処分するためには、例えば文科省の場合だと、文科省の一定のところまで権限がおりてきており、事務方のどこかで裁断して、契約をするシステムになっている。しかしながら、すべてのマテリアルについてこれをやることは不可能ではないか。要するに、法律上システムはないことはないが、それは多分動きにくい、ほとんど動かないものではないか。実際に今までそういった契約がされたことは一例もないという現実があり、現行でも法律上可能であるということは、確かに理屈上はそうかもしれないが、それを書くことはあまり意味がない。今まで動いていない、一件も出ていないということをまず前提にして、それでは一件でもつくるためにどうしたらいいのかということが議論の出発点だと思う。そういう意味で、先に委員が発言したことは、新システムとして発明委員会を活用したらどうかということだと思う。そのためには一枚法律をかまさなければできないかもしれない。
   
この点、文部科学省から何かコメントはあるか。
   
法律上、こういう研究成果物がどういう扱いになっているかということを、事務的に調べているが、結局のところ、実態的にはもう研究者の方が要請に応じて研究レベルで物の譲渡を許可しているという事実がある。それを物品管理法上どういう扱いにしているかという点はまだ明確にだれも判断してないというのが現状。その辺も含めて今後どういう扱いにするかということを判断していく必要があるのではないか考えている。
   
まず1点、きょうの発表を伺い、一つ流れがあると思う。一つの考え方として、なるべくきちんと契約なり、ルールを適用して、一つ一つのマテリアルの移転を把握しようという流れ。それと帰属を決めて、管理をする仕組みをどうつくっていくかという流れ。
  そういう方向を非常に推奨すべきだと思うが、議論の多様性という意味も含めて、反対から一言。この問題は、法の支配というのをアカデミアの世界にどこまで及ぼすかということだと思う。つまり、法律がどこまで入っていっていいのか。最後に法律が絶対入っちゃいけない部分があると思う。そこから先は法律は手を出してはいけない、もう研究者に任せましょう、という世界があっていい。問題は、そこの境界線をどこにつくるかという話。例えば考え方として、マテリアルについてはいろんなマテリアルがある、例えば小さな微生物もあれば、大きな半導体基盤の材料もある。片や価値にしたら1円ぐらいで、片や価値にしたら100万ぐらいかもしれない。これを全部法の支配を及ぼすのではなくて、例えば基本的にマテリアルのトランスファーについては研究者で管理する、記帳する、記帳すれば、組織はもう関与しない。そのかわり、もし研究者がこれはやはり組織に入ってもらったほうがいいと判断したら組織に報告する。そうしたら組織として契約書をつくる。そういう非常にアカデミアの自主性を生かしたような形というのはあっていいと思う。そういう考え方があると思うし、それが一つ法の支配の徹底というのと対立されるのではと。その中でころ合いのいいところを定めていくことが大事ではないか。
  それから、もう一つだが、NIHでは非常に自由な流通を認める方向にいっている。これはすごくうがった見方だが、例えばアメリカというのはもう基盤があり、バイオ産業も研究組織ももうかなり力をつけている。今の時点において、アメリカとして、例えばマテリアルについては自由流通を認めたほうがNIHとか、アメリカの研究機関に自由に材料が集まってくる。それをもとにしてアメリカの研究機関はよりよい早い研究をして、いい特許をつくって、それを特許化してライセンスすれば、アメリカの国益がより強くなる。そういうふうに判断して、実はマテリアルについては自由流通を認めているのかもしれない。そうすると、考えようによっては、日本の知的財産戦略としてどうしたらいいのか。マテリアルについて自由流通を認めるのではなくて、むしろ、マテリアルについても知的財産というのを強く認めていったほうがいいのではないか。そういう国家的な戦略の位置付けというのも場合によってはあり得るかもしれない。これは非常にうがった見方で、こういう確証があるわけではないが、そういうふうに考えているアメリカ人がいてもおかしくないのではないか。その辺も少し議論したほうがいいのではないか。
   
一つ先ほど来、少し話が錯綜しているのは、パテントとマテリアルはきっちり分けて議論しなければいけないということである。このNIHガイドラインにおける非独占の移転でベンチャー企業の起業者とかTLOで一番問題になるのは、非独占のパテントを移転されると、これはもうあまり商売にならないので困るということ。一方、マテリアルを非独占でもらうというのは、(その後排他的なパテントを取得することにより)自分たちの商売につながる可能性がある。そういった意味で、あくまでもパテントとマテリアルをきっちり分けて話をしなければというのが一つある。
  それから、さきほどの話で、確かにアメリカにそういう考えの人は、あるかもしれない。ただし、学問の世界は日本独自ということを言うともう日本は弱くなってしまう。やはりサイエンスというのは英語と一緒で、ある意味では公用語だというところですべて成り立っているので、公用語じゃないサイエンスをした場合は、おそらく日本は逆に弱くなって、もう相手にされなくなる。あくまでも意図はどうであれ、やはりサイエンスとしてヨーロッパとアメリカが一致しているものは日本は従わざる得ない。ただ、それとプロパテント政策をとるかどうかというのはまた別問題。
  もう一つは、今の話でリーチスルーを課さないという話が出たが、これは実は非常に重要。先方がもしリーチスルー、要するに、自分たちが見つけたパテントの権利の一部もとるというケースに関しては、最初からそのようなマテリアルはもらわないという対処がある。例えば遺伝子であれば、その遺伝子を先方からもらわないで自らそれを作製又は入手してそれで特許を出すという対処がある。それは二度手間になるが、リーチスルーを課している場合の逃げ道としてそういう対処ができる。ただし、自分たちで作製や入手ができないようなものであれば、結局あきらめてしまうケースもある。
  リーチスルーを課さない、要するに、そこから先の権利は発生しませんよという条件であれば、NIHのケースは非常に簡単に入手できるし、そこからまた新しいパテントが出た場合それは自分たちのものになることから、そういった意味で、産業を起こすとか、次へ広げるという面を考えれば、リーチスルーを課さないほうがこれは明らかにプラスだと思う。
  リーチスルーをほんとうは欲しくて、そこから先使ってもらうと困るというものであれば、実はもう一の手段があり、論文を書かないというケースがこれにあたる。論文を書くと、今の学会ルール、あるいは論文のルールというのは、(希望者に)提供しなければならない。要するに、論文を書くということによって公知になり、必ず欲しいと言った人に提供しなければならない義務が生じる。それをしないと、これ以降は学会誌に載せないとか、あるいは学会でその人たちを排除するという方向が出てしまうので、論文を書いてしまえばもう出さなければならないという前提をもとに話が進んでいる。もし、そこから先の権利を自分たちが欲しいということであれば、もう論文を出さずにすべて学問的なものは、あきらめてしまって、そのかわり産業として頑張るという形の選択肢がとれるので、やはりそこのところは、ある程度学者の立場としても区別ができるのではと思う。全部オープンにして何もかも自分たちが欲しいという議論は成り立たなくて、ある程度犠牲にするものが出てきた中で、そこから先の話をしなければいけないのだろうと思う。
   
確認として、先ほどの帰属の問題は、理研と産総研はもう研究者側の意思には関係なく、すべて機関帰属なのかどうか。それから、大学側の説明の中では、機関のほうに帰属できるという表現があり、ということは、逆に研究者側に判断の自由があるのかどうか。
   
理研は有体物についてはもう得られた瞬間に研究所のもの、という方針を明確にする。4月から雇用契約の中でその点を明確にする。
   
産総研は既に11月16日付から理研と同じような、つまり、発生した段階から組織のものとみなす。登録も何も不要で、発生した段階から組織に自動的に帰属するとみなすこととした。これは既に発効している。
   
大学は今、どうなっているかというよりは、これからどうすべきかという話。大学の場合には、原則的に個人に帰属しつつ、各大学でポリシーを決めて、今の理研や産総研と同じようにすることもできるし、各個人に帰属して、そのケースごとに重要なものだけを大学に移転するということも、制度設計としては可能だと思う。実際的には各大学で契約のもとに一括して扱ったほうが効率もいいと思うが。
   
研究資源という面では機関帰属としてもいいわけだが、大学というのは非常に多様性がある。例えば工芸大学とか、芸術大学で何か先生がつくった絵だとか、絵画についてまで大学に機関帰属というのはあり得ないというか、普通考えられない。その辺は大学は非常に多様性を持っているので、多様性を持ったルールが必要だろうと考えている。
   
今、大学に関して、規定はあるのか。
   
規定はないと思う。
   
我々としてはすべてマテリアルは自分たちが持っていて、一方でそれは大学のお金でやっていることなので、そこのところを意識しながら動いているだけであって、おそらく教授会に帰属の問題を提出しても、おそらく判定しないというのが今の結論だと思う。
   
特許に関しては一応のルールはあるが、マテリアルに関してはない。
   
先ほど話があったが、物品管理規程がある。文部省の省令によれば、一切合切国のもので、使いたいときはその譲与の手続を受ける必要がある。
   
大学の研究室には私物というのはあり得ないということだから、そういう意味では確かにそうなる。
   
次回以降話に出るかもしれないが、今の物品管理規程の話として、その中間的な選択として、消耗品として扱って、ある程度自由にやりとりできるようにするという選択は大学においてもあるかもしれない。その点を次回以降の議論のポイントとして挙げておきたい。

5.今後の日程
  次回は3月4日午後5時から文部科学省別館大会議室で開催することとした。

(文責:研究振興局研究環境・産業連携課)




(研究振興局研究環境・産業連携課)

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