今後の産学連携の在り方に関する調査研究協力者会議(第8回) 議事要旨

日   時: 平成12年12月15日(金)10:30〜12:30
場   所: 虎ノ門パストラル   桐の間
出席者: 阿部(座長)、井口、今田、清水(勇)、清水(啓)、末松、千野、野依、の各協力者
  遠藤学術国際局長、井上学術国際局担当審議官、河村研究助成課長、磯谷研究協力室長、柴田研究協力専門官、他関係官

<質疑>
「審議の概要(案)」の内容について
  (○:協力者、△:事務局、□:オブザーバー)
【特許等の還元について】
   国有特許の実施料収入の大学等への還元とあるが、現在の国有特許で実施化に結びついた場合、大学に還元されているのか。
   国有特許が実施され、実施料収入が上がると、国立学校の特別会計の収入となり予算として活用されるが、今まではその発明をした先生が所属する大学に対して明確な形で配分がされていなかったため、今年度から実施料収入1/2相当額を当該大学に対して配分するという仕組みを設けた。
   
【特許等に係る諸経費について】
   国立大学の場合、国有特許を出しても特許料は不要だが、独立行政法人化するとどうなるのか。
   国立試験研究機関が今年の四月から独立行政法人化されることになっているが、その場合の特許料については免除ということで扱いは従来どおりである。大学の場合もそのようになるのではないか。
   独立行政法人となっても特許料は免除になるということだが、公立大学や私立大学も知的資産の形成という意味では国家的使命を持っているわけであり、それらの大学に関して優遇措置はないのか。
   特許料については、産業技術力強化法により3年間1/2減額措置が講じられている。
   特許出願及びそのライセンシングまでにかかる弁理士費用やメンテナンスのための費用が最も大きいわけだが、将来的に独法化までいった場合に、これに関するTLO活動の財源については、現時点ではどのように考えているのか。
   今後の公的支援・公的負担の在り方については、現在の国有特許の特許出願経費を特別会計予算で措置するような扱いをどのような形で続けていくのかという問題になると思われる。
   特許を申請する場合、費用の大部分は弁理士にいくわけだが、特定の財源というよりは研究費などで手当が出来るようになれば、あまり問題がなくなるのではないか。
   弁理士費用等はどうすべきか、ということについては、一つはTLO活動において、現在、助成金の対象になっていないということは検討の余地があるのではないか。それから、仮に国立大学が法人化された場合どうするかについては、大学組織管理体制に向けての公的支援・コスト負担等の在り方という問題となろう。
   国立研究所では、独立行政法人化に伴い個人帰属から組織帰属へと帰属の方針を変える予定であり、独立行政法人で一括管理し、基本的に独立行政法人の中で特許申請の費用を負担するということを現在検討している。
   独立行政法人については、そのような方針が確立すればそれで良いと思うが、私立などはそのような財源がないわけであり、結果的に特許を出さなくなってしまうのではないか。ゆえに研究費をたくさん持っている研究者は、研究費の一部を特許出願に使えるようになれば、どんどん特許を出せることになるのではないか。
   
【利益相反について】
   就業規則・国家公務員倫理法の両者の中間的なところに利益相反があるという位置付けの方が適当であると考える。
   
【国有特許等の随意契約による譲渡等について】
   国有特許の活用の促進に関して、国単独、あるいは国・企業有特許の随意契約による譲渡の検討とあり、管理方式が変わったとしてもTLOに譲渡となっているが、これは認定TLOを何らかの形で動かすことを念頭において検討する方向なのか、そうでなくて別ルートで検討する方向なのか。
   認定TLOについては既に法的な枠組はあるが、これまで実績がない。国有財産の処分手続の問題等がクリアされれば、認定TLOの基準等について検討しなければいけないと考えている。今回の御提言は、認定TLOを動かすためというよりもTLOが一括して国有特許を扱えるようにして、組織的管理の方向へ進める趣旨と受け取っている。事務局としては、どのような場合に国有の特許等をTLO等に随意契約で譲渡できるかの整理について関係省庁と検討中である。
   
【私立大学における特許等の取扱いについて】
   私大等では特許等の維持・管理についてはあまり問題がないようにも読める書き方がされているが、実態は国立大学に比べてずっと遅れている。
     また、「私立大学等では学校法人として管理することになるが学内外のTLOを活用するなど積極的に対応している大学等もある」という文についても少し言いすぎであり、実際のところ学校法人として管理するという方向を出せない大学が多いため、「学校法人として管理することをはじめ学内外のTLOを活用するなど、積極的に対応している大学等もあるものの多くの大学では個人有特許の扱いに関して課題を抱えている」といった趣旨に修正すべきでは。
   
【特許等の帰属について】
   権利の帰属やその活用の問題になぜ取り組むかというと、大学から出てきた成果の対価を大学に還元し、大学の研究をより活発化していくということを目的としているためと思われる。個人の発明に対する対価を確保すべきことなどについては十分書かれているが、大学の研究を活性化する意味での大学自身に対する還元の充実も、もう少し分かる形で書いた方が良いのでは。
   今後、特許が組織有原則になったとき、大学教官が研究費をもらわないで個人的に発明をした場合にはその帰属はどうなるのか。例えば概念的な発想などはどうなるのか。やはり勤めているという因果関係から大学帰属ということになるのか、科研費など資金との関係で区別するのか。
     発明を考えついたりすることと科研費との因果関係がよく分からない。実験などについては、たしかに研究費を使用しているが、色々な思いつきや常日ごろ考えているものの方がウエイトが重い。そういう場合、帰属はどこになるのか。
   職務発明の整理など法律的な検討については、この会議でそこまで詳細の議論はしていない。ただ、仮に組織帰属の方針に実際なった場合には、どこまでが職務発明かについてきちんと個人と組織との間で契約することなども必要になってくるのではないか。外国の例を参考にして今後検討していく必要が出てくるかと思われる。
   研究者にとって、発明が出た場合にそれがお金によって発明が生じたと言われるのは甚だ心外だ、との思いがある。たしかに、そこには研究費が費やされていることは疑いないわけだが、やはり研究費と関係がないコントリビューションが非常に大きいと思われる。
   それは基本的な考えとして特許の帰属先とは個人なのか大学なのか国なのか、どうなのかという根源的な問いである。多分、その回答が難しいために発明委員会が機能しづらくなってしまっているのではないか。大変難しい問題であるから、ある程度特定の集団が発明者と相談をして判断せざるを得ないのではないか。
   学術の衰退をもたらさないためには、やはり個人の発想や精神活動を尊重することが一番大事なことである。あなたは大学の使用人だから発明するのは当たり前、という考え方では学術を衰退させることになると思われる。
   利益相反の原点はそこにあると思われる。例えば、ある自然科学の先生がそれに関連したところで何か発明をして、それをたとえ寝床の中で考えても客観的に見て各種の公的な助成等を基にそのような発明が行われたのであろうと思われる。ところが、もし「流通分野」のことを考えついた場合などは、客観的に見ても職務とは関係しない、と思われる。
   時間の問題もある。あることを研究しており、10年前に考えていたことが今、発明として具現するということもあり得る。必ずしも、ある一定のお金をもらっているからこの発明が出たということにはならない。
   先生の言っていることは誰も否定できないが、大学に特許権を帰属させるということは、発明者を保護するために大学に帰属させた方が良いという視点に基づいているのではないか。
   
【今後の目標について】
   今後の数値目標、期待値はどのくらいあるのか。今日の提言に基づく方策により大学、例えば東京大学でも京都大学でも東北大学でもいいが、どのくらいの成果が期待されると考えているのか。
   実際にTLOをやっている立場から言えば、数値目標をきちんと決められれば良いと思うが、現在の目標は、産業基盤整備基金からの助成金がなくてもやれるようになること、人員、技術移転のマネージャーなどを独自で雇用できるようになること、そして成果として発明者、大学に利益が還元している姿を見せることである。全体の利益が上がっていないので、まずはここ1、2年で大学への還元が始まるというのが現在の目標である。
   制度を改善して大学の自主的な取組を支援することを考えており、特に数値目標は想定していない。
   このような大学と産業界の連携を強くしようとしているのは、TLO側から見て短期的にやりたいことを提言しているのではなく、元々、日本がこれだけ活発にやっていても「技術貿易」としてはアイデア、あるいは特許等が入超になっているという問題があると思われる。アメリカは現に、非常に多くの技術を輸出しており、それと比較してお粗末である日本の状況を打破するにはやはり、産業界、大学、国研等が連携・協力して日本からたくさん知的なプロダクトを出していく必要がある。特別な大学、企業、国研個々の問題ではなく国全体で活力が出るかどうかということが重要である。
   
  (文責:学術国際局研究助成課研究協力室)

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