今後の産学連携の在り方に関する調査研究協力者会議(第7回)議事要旨 |
今後の産学連携の在り方に関する調査研究協力者会議(第7回)
議事要旨
日 時: | 平成12年12月5日(火)14:00〜16:30 |
場 所: | 虎ノ門パストラル 桜の間 |
出席者: | 阿部(座長)、井口、今田、大滝、川合、菊本、清水(勇)、清水(啓)、末松、千野、野依、安井の各協力者 |
溝上学術調査官 | |
井上学術国際局担当審議官、河村研究助成課長、磯谷研究協力室長、柴田研究協力専門官、中西科学技術庁研究基盤課長、谷通商産業省産業技術課長、他関係官 |
<質疑> | |
・ | 「審議の概要(案)」の内容について |
(○:協力者、△:事務局、□:オブザーバー) | |
【技術移転について】 | |
○ | 大学の技術をどのように社会に生かすか、どう技術移転していくかが最大の問題ではないか。その過程における一つの問題として、特許の帰属の問題があると理解しているので、記述の順序としては、最初に帰属の問題がこない方がよいのではないか。 |
□ | これまで国有特許を扱うTLOがなく、TLOが大学における特許を統一的に扱うシステムが整備されていないとあるが、これは、システムが整備されていないから国有特許を扱うTLOがないのか、それとも認定TLOなどシステムは整備されているけれども、結果として国有特許を扱うものがないということなのか。 |
△ | 既に認定TLOの法的枠組はあるが、実際は動いていない。TLOに対してスムーズに国有財産を処分できるようにしないと、認定TLOの運用は困難であると考えている。 |
【特許化への財政的支援について】 | |
〇 | TLOの活動の支援について、財政的にはどうするのか。科学研究費補助金を使って出願することが可能になるのか。権利が大学有になった場合に、科学研究費補助金で行った研究の成果を補助金のオーバーヘッドのような経費により出願することが可能になるのか。 |
△ | 特許に関する費用負担の問題は、来年度から導入される間接経費の使い道の一つとして、組織有特許に関する費用をどこまで出せるかということと関連すると思われる。 |
また、個人有特許の費用について、直接経費そのものから出せるのかについては、議論の分かれるところではないか。 | |
〇 | 例えば科学研究費補助金で特許が出せるということになると、TLOを通さずして特許を出す道が出来ることになるが、これではTLO支援にならないのではないか。 |
△ | 国立大学であれば国有、私立大学であれば組織有になったものを対象に、科学研究費補助金の間接経費を当てることも考えられるのではないかということである。 |
【特許等の帰属の在り方について】 | |
〇 | 案の1)というのが、いったん国有にするという案であるが、いきなり個人帰属を解消するというのは個人有特許を実際に企業に譲渡するなどして活用している一部の研究者にはかなり抵抗があるのではないか。 |
【発明委員会を含めた技術移転の在り方について】 | |
〇 | 審議の実施が困難なために発明委員会が形骸化しているのではなく、大学の先生が発明委員会を意識していないというところに問題があるのではないか。 |
○ | 発明委員会に対する認識が先生方によって異なる。発明委員会を大学教員の発明の届出窓口のような位置付けに限定するのか、それとも技術移転の可能性の判断など実質的な審議というものを発明委員会に期待するのか、何を目的とするかがポイントである。 |
△ | 現状のシステムでは実質的な評価というのは発明委員会に多くは期待されていない。ただし、今後、技術移転を効果的に進めるためには実質的な判断というものが必要になってくるのではないかという議論がある。 |
〇 | 発明委員会の活性化とあるが、現状では、届出がきちっと行われていないということが一番の問題点である。まず届出をした上で発明委員会がその帰属の判断をするということが、長期的には原則組織帰属への考え方への移行という前提を考えても、重要なポイントである。 |
〇 | 単に利益相反だけでなく、いわば国の財産という技術的資源、あるいは研究費を一番国民のために有効に使うという意味から望ましいという観点から、組織帰属が独立法人化後は望ましいという一つの方向性が出されている。それを受けて、独法化以前までに原則国有でいくのかそれとも今までどおり原則個人有かということになっている。 |
原則国有になっても、原則個人有になっても発明に係る権利等がTLOに収束していけば、活用を進める観点からは結果は同じである。なるべくTLOが特許を扱いやすくするよう、発明委員会への届出についてある程度書き込んだ方がよい。 | |
○ | 研究費あるいは職員というのが多様化しており、特許の帰属を判断すること自体が非常に難しいと思われる。そのため、大学と研究者との間の契約について留意する必要がある。 |
○ | 発明委員会においては、大学で生じた発明が、国のどういう研究資金を用いてなのかについて研究者としっかり議論する必要がある。発明の予備評価などが重要である。ただ、個人に十分還元するという制度だけは必ず作っておく必要がある。 |
○ | 「産業活力再生特別措置法」においては、国が資金を出しても国に帰属させないことを可能としており、その基本的な考え方というのはおそらく金を払った人は誰か、努力した人は誰なのか、という観点ではないのか。 |
□ | 行政サイドの考え方としては、有用な特許をいかに多く生み出すか、社会への還元をマキシマイズするか、という観点から政策判断をしている。 |
○ | アメリカでの研究大学では、大学への研究資金の配分から成果の活用まですべてセットになって、政策がパッケ−ジ化されており、結果として組織有にすることが合理的となっている。 |
○ | 将来型としてはやはり大学有が望ましい。現状の国の方針案を見ていると、色々な規制を緩和して、より自由度を高める方向で色々な所にインセンティブをうまく作って、とにかく産業活力に有効な特許が多く出るようにするという考え方だと思われる。 |
○ | 実際にTLO活動をしていて、個人のインセンティブを非常に重要視している。発明者に対しては実施料収入の半分を還元することにしている。また、既存の特許についても民間企業がTLOの存在を意識し始めると、教員もTLOを介して技術移転先と契約するということを望んできている。TLOを利用するという方向が徐々に出てきており、それは契約上発明者、出願人も権利保持者もインセンティブを確保しているという形で進んでいる。 |
○ | 文部省の(協力者会議の)ペ−パ−であるから、やはり学術研究を推進するということを記述することが重要であり、その上で、研究成果を社会的に十分に活用するという筋道でいくべきである。色々な研究者の発見・発明は、その研究者がどこに所属しているのか、あるいはどういうサポートがされているかということと基本的に関係ない問題である。自然科学者のそういった創造性が踏みにじられないよう、その尊厳をまず認めた上で、どのように活用していくかを考えるべきではないか。 |
○ | 国を活性化させるものの一つの資源として大学があるという考え方も必要ではないか。 |
△ | 大学の中で生じた発明の件数を大学がすべて把握できていないという現状がある。大学が一元的に把握できるようにするため、発明委員会に届け出ることを徹底するよう、方針案として書くべきか、それから、発明委員会とTLOとの連携・協力についても提言すべきか。 |
○ | この報告書の提言全体が実際に機能するようになれば各大学が自発的に発明委員会の方針を決めるのではないか。 |
発明委員会とTLOとの連携協力の件については、研究者から見たときにTLOを使用した方が有利だと思えるようになるのが良い。 | |
○ | 技術移転という仕事を始めたときに、日本は、特にアメリカと比べて統計的な数字が整っていなかったので、なんと不備な国だろうと痛感した。また、届出の件数だけではなくて、特許が個人帰属のものも含めて、その後どうなったかまで調べる必要があるのではないか。 |
○ | 海外特許を出していいのかどうかを発明委員会が判断することになっているが、実際には出来ない。外部の専門家の登用による連携・協力が必要ということでは問題があるので、できれば帰属の判断と評価は別に記述してほしい。帰属の判断をするのは学内委員会ということにし、その他に評価を行うことがあれば別途運営するようにした方がよいのではないか。 |
○ | 帰属の判断に対して、場合によってはTLOが適切なアドバイスをした方が良いのではないか。 |
△ | 技術評価のみとすると誤解を招くが、必要に応じて外部専門家と連携をとりつつ技術評価をするということは提案してもよいのではないか。「登用」とすると必ずそうしなくてならないと取られるかもしれないので、連携を保ちつつという表現にすればよい。 |
発明委員会に届け出る前に、企業に発明に関する権利を譲渡するということは今後も起きてくると思われる。将来の組織有を可能にするために今どこを改善するのかを明確にし、移行期間としては発明委員会にかかる前に外部に特許等が流れないようにしなければならないのではないか。 | |
TLOという透明な組織を通して評価をしてもらい、それを還元して更に次の研究に結び付ける必要がある。 | |
○ | 基礎的な研究をやっている人間にとって一番の問題点は、自分のやっていることが発明に値するのか、発明になっているのかいないのかということがわからないことである。もっと根本から我々の行っていることが発明に値するかどうかを迅速かつ効果的にジャッジする機関が必要になる。例えば、生物の研究者がある研究をやっていて、全く産業的な意味はないと考えている場合に、物理、応用物理の分野では実用化に結びつくということで逃している研究、発明というものが非常に多い。研究プロセスのすべてが国益という観点でセットであれば、その成果を公表するときに全部網をかけることには賛成である。ただしそういう目利きの能力を持った人がいるかどうかが問題である。 |
○ | TLOの関係で大学の研究者にインタビューをし、どういうことを研究しているかを詳しく聴いていくうちに、必ずしも私は専門家ではないがシーズとニーズが結びつきそうだと考えることができた。専門家の審査は意見が異なると、お互いの批判に終わるということもあるので、ある程度その分野の知識のある人材で十分対応できるのではないか。 |
○ | 企業が研究成果をいち早く見つけてその先生の所に行って大体10万か20万の研究費を出してすべてを取ってしまおうとすることが実際起きている。これについて先生方を非難するのは酷な話だ。大学に相談相手がいれば必ずそういうことに対して的確な対応ができるはずである。非常にインパクトのある発明をやる研究者はほとんど応用を無視して自分の創造力に基づいて研究しているので、誰かが相談役にいることで随分参考になることがある。我々もそういったことを心して、決して単に儲けるだけのためにサービスを行わないよう十分注意していきたい。 |
(文責:学術国際局研究助成課研究協力室) |
(研究振興局研究環境・産業連携課)