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今後の産学連携の在り方に関する調査研究協力者会議(第5回)議事要旨 |
今後の産学連携の在り方に関する調査研究協力者会議(第5回)
議事要旨
| 日 時: | 平成12年11月17日(金)10:30〜12:30 |
| 場 所: | 文部省別館 特別会議室202・203 |
| 出席者: | 阿部(座長)、井口、今田、大滝、川合、菊本、清水(勇)、清水(啓)、末松、千野、野依、紋谷、宮島、安井の各協力者、溝上学術調査官 |
| 井上学術国際局担当審議官、河村研究助成課長、磯谷研究協力室長、柴田研究協力専門官、中西科学技術庁研究基盤課長、谷通商産業省産業技術課長、他関係官 |
| (○:協力者、△:事務局) | |
| 【共有特許の取扱いについて】 | |
| ○ | 資料2において、共同研究の結果としての国と企業との共有特許の場合に、国の持分をTLOが扱えないとなるとほとんど機能しない。TLOで扱えるようになっていないのは何故か。 |
| △ | 国と企業との共有の場合は、第一義的には当該企業がすぐに実施できる状態にあると仮定できるので、そういう整理をした。むしろ共有特許についてもTLOが一括的に取り扱って、企業との交渉の窓口に立つべきという御意見であれば、充分踏まえて検討する。 |
| ○ | 相手の企業が戦略として実施しないということがある。また、共有の場合は、大学が特許を実施しないという特殊性を加味して、相手方企業が実施した場合、ロイヤリティが得られるとか、実施しない場合には、大学は第三者に許諾できるとか、そういう観点を入れる。 |
| ○ | 前回は、大学が、国有財産の信託的譲渡を受けて管理権を行使することが一つの選択肢としてあったが、今回なくなった理由は何か。 |
| △ | 前回は、大学で生じた研究成果を国有・個人有に関係なくTLOで一括管理する案を書いていたが、特許庁に相談したところ、特許法上の規定では、あらかじめTLO有に指定するのは難しいだろうということであったので、外させてもらった。 |
| ○ | 職務発明の場合、予約承継は特許法上規定があるので難しいが、一旦国に属した後に管理権を取る、あるいは個人に属した後に管理権を取ることは可能である。 |
| ○ | 資料3について、「実用化の効果が低いと思われる発明」は個人有にしていいとあるが、実用化の効果が低いものは特許にする意味がないはずである。発明委員会で国有特許としては採用しないと決定した発明という理解でよいか。 |
| △ | 発明委員会では職務発明か否かの判定をするが、特許になる可能性のあるものを全て特許にしていくのは難しいため、国有特許として採用しないと判断したものを個人有とすることにした。 |
| ○ | 大学と企業との共同出願について、国立大学の独法化後の共同研究の場合、TLOを介するとなっているが、今の日本の特許法の解釈だと難しいのではないか。大学がTLOを通すということは第三者に技術を移転することであり、相手側企業の同意が必要となる。 |
| △ | 独法化していれば、あらかじめ契約等で企業と折衝し、それについて了解を得る、という趣旨である。また、独法化時は、TLOの中には学内組織になるものもあると思われる。 |
| ○ | 共同出願の相手企業が実施しない場合、大学が他の企業(第三者)へ実施許諾するには相手企業の同意が必要であるが、実際上は、同意を得ることが困難である。共同出願でも、大学は不実施であるという特殊性を考慮した上で、企業と共有する場合は、ガイドライン等に基づいてTLOでも扱えるようにし、相手が実施しない場合にはTLOが他企業に実施許諾をするといったものを考える必要がある。 |
| ○ | 質問であるが、一点目は、国有特許はTLOに移すことが可能か。 |
| 二点目は、弁理士費用も含めて特許申請に対して研究費が使えるのかどうか。 | |
| 三点目は、共同研究には、教員に企業が資金を出して一緒に行うものと、企業が教員を一日か二日か雇って行うというものとの二通りあって、それを混在して議論をしているように思える。前者であれば大学で持つのが当然であり、後者の場合は企業が持つという方向がよいと思う。 | |
| △ | 一点目については、国有特許は原則、競争入札の手続を経ないと処分できないが、それを随意契約でTLOなどに移せるか検討している。 |
| 二点目については、個人有の特許の場合は、個人の権利であるため研究費から費用が出せない。国有特許には、国立学校特別会計から国有特許出願経費を支出している。独法化後については、具体的にどうなるかは議論が固まっていない。 | |
| 三点目については、兼業で企業へ行って研究をやる場合は、勤務時間外であり、相手機関の手続に従った帰属の形になると思われる。公務としての共同研究の場合は、企業関与度は共有の持分の問題である。 | |
| ○ | 外国の大学だと契約などにより全部大学が出願するが、日本だと大学は不利になる。大学が主体でやっているのに、企業から多少の資金が入っているくらいで共有になるというのは、大学にとって共同研究は非常にやりにくいものになる。 |
| ○ | 共同発明では、法律上は共有になるが、特許を受ける権利を事前に任意の契約で大学側に移転するようにすれば、出願する権利は大学側が全部持つことになるので権利は国に帰属することになる。したがって、それは内部契約で対応できる。 |
| ○ | 共同研究には、企業の研究者が大学に来て行う共同研究と、大学の研究者が相手先で行う共同研究の2つがある。兼業により企業に行く場合と、共同研究で企業に行く場合との区別をはっきりさせないと混乱する。 |
| ○ | 共同研究で大学と企業が共同で権利を持ち、それをTLOで扱うことが透明化とアカンタビリティを高めることになり、一番重要である。大学あるいは研究者と企業とのオープンでフラットな関係、コントラクト・リサーチでいくことを明確にしたい。グローバルな権利主張のベースにもなる。 |
| ○ | 現状の日本における大学と企業との役割分担からいくと、企業側から見て十分なインセンティブが働かない状態になっている。大学と共同研究をやることによって、企業側にどういうメリットがあるのかということを抜いた議論が行われている。 |
| ○ | 企業側がのってこなかったら机上の空論になる。実際に米国のハーバードやスタンフォードに何故企業が次々と申し込んでいるのかというと、流れの問題だけではなく、現実には企業のニーズをきちんと大学側が知って、かつ、きちんと大学側からも、どういうスケジュールで、どういう実験をして、それに対してはどういう人間を当てはめて、その時の秘密はどのように守って、それで実際にはどのようなレポートを出すのかまで書式が決まっており、非常に簡単にプロポーザルを出せる。それにより秘密が守られ、権利関係に関しても問題が起きず、企業も安心して大学側に共同研究を申し込めるという形ができている。 |
| 日本の場合は基本的な仕組み自体ができあがっていない。企業側から見たときに、大学毎に手続が全部違っていたり、大学毎の窓口が何処かわからず、その上権利関係についても何%寄与したのかと言われると、日本の大学よりも米国の大学にお金を出すということになってしまう。 | |
| 企業あっての産学連携なので、その点を考えながら、できるだけフレキシブルな仕組みを作り、また、外から見た時にわかりやすい仕組みなど、独法化後も何処の大学に行っても同じシステムで共同研究ができるような形に何とかまとめられないか。 | |
| ○ | 企業が実施してリターンが還ってくればよいが、大学の成果が実施されずに死蔵化されてしまうのではという問題意識がある。共同出願の規定に関しては、米国と日本のルールは違う。米国はそれぞれ自由にできる場合とできない場合とが決まっているが、日本は、それ以外に、他の第三者に実施させる場合は両者の了解が必要だというルールがある。したがって、共同出願の場合、大学等の場合については例外を設けるといった規定を入れてもらえば全部解決するのでは。 |
| ○ | 大学の研究というのは、ワールドクラスの研究をするのが一番大事である。その点を踏まえた上で、企業や社会のニーズを加味した研究が行われる環境を整備するということになるのではないか。 |
| 米国をイメージして議論してきたが、日本の参考になるのは英国ではないか。グラスゴー大学では、研究事業部を作り、知的所有権のライセンスも含めて産学連携に関することを全てそこで担当している。研究事業部は企業と同じ環境に置かれており、企業の価値観を大学の中に持ち込んでいる。グラスゴー大学は英国でもあまりトップクラスでないが、それでも研究事業部には50人も職員がおり、そのうち博士号の称号を持つ者が10人近くいる。 | |
| ○ | 研究資金がどこから出たのかということと職務発明とは全く違う問題だということを前提とした整理が必要ではないか。 |
| △ | 52年答申は職務発明をどこで線引きするのかということを結論づけておらず、応用開発を目的とするものは、おそらく確実に職務発明といえるであろうから、国有にするという線引きをしている。それを今まで踏襲しているから、資金の種目で切っているのではなく、共同研究、受託研究、科研費において応用開発を目的とするか否かのメルクマールで切っているというのが現状である。 |
| 【発明委員会について】 | |
| ○ | 発明委員会にどの程度の機能を持たせるのか等について今後ここで議論してよいか。それとも、発明から特許活用までの流れを作るというのが先決なのか。 |
| ○ | 発明委員会というのは、なかなか機能しないところで、ほとんど動いていない。グラスゴー大学の研究事業部のようなものなどを早く立ち上げることが大事ではないか。 |
| ○ | 研究者の立場からすると、様々な発見をいかに発明までまとめあげるかということが非常に大事である。間違ってポリアセチレンというものができて、白川先生はそれを発見した。ただフィルムができたというだけでは発明にならない。別の米国の研究者がそれを加工し電気を通らせることによって、初めて発明価値が認められた。このように失敗でいろいろな新しい事が見つかるという状況は大学ではしばしばあり、応用を目的とはしていない。発明というのは技術的な意味があるという価値を認めることであり、事実の発見の中から発明につながる技術的な意味を見つけられる人がどれくらいいるのか。できるだけ規制緩和をして、大学の研究者と企業あるいは応用を目的とした研究者との交流を盛んに行い、そこで価値を見いだすということが一番大事である。 |
| ○ | 米国の大学と白川先生の大学がどのように対処したかというのを比較すると、米国の場合、研究者がいわゆるTLOという組織で守られているため、その権利は起業化まで進んでいる。一方、白川先生も国有特許を数件出して権利保持をしていたが、日本の企業が50数件の関連特許を出して、実現する方向にはいかなかった。これは、大学の研究者が研究成果を出した時にそれを有効に使うというのは、研究者の判断だけでは非常に難しく、ある種のスペシャリストが間に入らないといけないということの非常に良い例である。TLOというのはリエゾンを含めて、単なる特許を出願してそれを売買する機関ではほとんどワークせず、最終的にリエゾン機能その他を入れ込むという形にならざるを得ないのではないか。 |
| ○ | 産業界も含めた方が、もっとスムーズにいくのではないか。 |
| ○ | 資料4の今後のイメージ案どおりの組織ができた場合、知的所有権の取扱いについて契約時に決定可能とあるが、発明委員会の存在を否定していることにならないか。 |
| △ | 米国でもそうだと思われるが、発明委員会の意味というのは、当該発明が職務発明にあたるかどうかというスクリーニングと、特許までもっていく技術評価の二つがある。帰属の問題をどうするかということではない。 |
| ○ | 組織帰属にしても、大学内に発明委員会もしくは研究を全学的に考える組織がないと、大学有の発明が膨大な数になり、かえって特許が活用されない。その点で、結果的に発明委員会の機能をどうするかということが非常に大事ではないか。 |
| ○ | 届出件数も増えてきており、認識が高まっているため、今、発明委員会をなくすのは得策ではない。ただ発明委員会がほとんど判断できていないのは確かである。問題になっているのは受託研究と科研費が応用を目的とするかしないかで分かれる点であって、受託研究と科研費に関して区分を明確化すれば発明委員会の判断は非常に楽になるのではないか。 |
| ○ | TLO活動を始めた時の一番の問題は、大学の発明者がほとんど大学に届けないため、何処へアプローチしたらいいかわからないということであった。大学で出た成果を届け出て明るみに出す点で、発明委員会はTLOが大学の情報を得るためには必要不可欠なものである。最終的な段階になって、TLOに研究マネジメント機能が備われば、発明委員会は自然消滅する話だと思う。 |
| 【今後の方策について】 | |
| △ | 先生方に確認したいことが二つある。 |
| 一つは、独法化後の大学で生じた発明の中で、原則組織帰属ということについて異論があるかないか、という点である。 | |
| また、資料3で原則組織帰属でも個人帰属が残っているとの指摘があったが、教員が個人で持っていたいから残すというわけではなく、原則組織帰属で大学が持つこととするが、技術移転の観点から見て市場価値が低いなど組織で維持しなくてもいいものがあるのではないかということで個人帰属を残している。 | |
| もう一つは、独法化までの過程を今の帰属のルールでいくのか、それとも原則国有でいくのがよいのかという点である。 | |
| ○ | 組織帰属にしても、研究者がA大学からB大学、C大学に移った場合、その特許出願の際にどの大学の所属にするのかなどいろんな場合がある。特許は個人に帰属することを確認した上で、コンベンショナルに、どういうふうにすれば良い発明が生まれ、社会のためになるのかという問題になる。その確認なくして、国のものであるとか出願時の大学にあるとかファンドがどうだったとかいうのは本末転倒だと思う。 |
| ○ | 発明というのは個人がなすことは確かだが、比較法的に見ると、企業に属するとしている国が多い。日本は個人に帰属させて職務発明であれば企業がとれるという形になっている。理論的に考えると、誰が発明したのかという問題と、誰に特許を受ける権利を認めるかという問題は別である。したがって、誰に特許を受ける権利を認めるかというのは政策的な問題である。 |
| ○ | A大学で長年働いた後、B大学に移って、そこで発明が出た場合はどうなるのか。 |
| ○ | その場合、発明が完成した時点をとらえる。出願時点がどうのということではない。発明がA大学で完成したことになると、発明の完成と同時に特許を受ける権利が生じる。要するに完成時が問題になる。したがって、一般の企業では、よその企業の似たような研究所に何年間勤務しないとか合理的な範囲で契約をしている。あるいは、よそに移っていて、そこで研究を完成させる場合があるので、トレーディングクローズでその発明を取り寄せるような形を取る企業もある。いつ発明がなされたかで決まるということが比較法的に見ても多くの国で行われている。 |
| ○ | 個人に対するリターンは移動した時にどうなるのか。 |
| ○ | 発明の対価であるため、個人に全部還元することになる。 |
| △ | 発明者に対する充分な還元は組織有と裏腹な問題として重要である。 |
| ○ | 個人帰属が出るのは、発明委員会からTLOまで含めた一つのユニットとして考えて、そこにおいて組織としてペイしない場合は個人に返還するなど判断すべき。 |
| ○ | 権利を組織に帰属させても、発明者は発明という権利を持っているので、契約が必要になってくる。今後、国際化ということになり、いろいろな人達が大学に入ってくるので、入ってきた時点で、これについては大学に従うという契約がないといけないのではないか。 |
| ○ | 発明者の保護の問題は現在、一番重要な問題と認識している。元来特許法上では発明者経済権と称して条約上は権利になっている。対価をもらうということに関して、日本の国立大学の場合、頭打ちがある。本来の特許法の精神からすると無効であり、この会議で検討できるものであれば、考えてほしい。 |
| △ | 発明補償金の上限については、是非撤廃してほしいと関係省庁と相談しているところ。 |
| ○ | 独法化後の組織帰属については、大方の委員の反対はないものと思われる。発明・発見は非常に個人的なものであることははっきりしており、コンベンショナルに制度として権利を帰属させ、管理を担当させていくのかということである。また、発明委員会というのを従来の形ではなく、TLOなどを含めた大学全体としての総合的な判断をする組織に改め、そこで帰属の判断をすれば非常にすっきりした形になるのではないか。 |
| 今、独法化前に原則国有と大幅に帰属のルールを変えるのは、国民感情から難しいのではないか。もし、そうするのであれば、よほど個人に対するインセンティブが増すようなフィードバックシステムを整備するなどのかなり大幅な改革をなさねばならない。それよりは発明委員会などをもう少し改革してTLOとか大学全体としてどうするかという組織に近づける形にし、独法化までやっていくのがよいのではないか。 | |
| ○ | 将来、組織帰属になるのであれば、独法化前でも原則国有とするのが一番近道ではないか。今の帰属のルールのままでは方向性が見えなくなる。 |
| ○ | 技術移転、特許化、国有特許をどうするか、現実に扱っている立場からすると、やはり今のルールを運用上最大限活用しつつ、仮に、独法化前に原則国有とすることが可能であれば検討すればよいのではないか。現状を明確にし、運用上どうすれば企業も使え、TLOも動きがとれて、大学の先生方の発明が本当に活用されかという方向性を決めていただきたい。なお、TLO協議会からの要望事項を次回の会議の前に示したい。 |
| (文責:学術国際局研究助成課研究協力室) | |
(研究振興局研究環境・産業連携課)