今後の産学連携の在り方に関する調査研究協力者会議(第2回)議事要旨 |
今後の産学連携の在り方に関する調査研究協力者会議(第2回) 議事要旨 日 時:平成12年9月4日(月)10:35〜12:50 場 所:通商産業省別館 833号会議室 出席者: 阿部(座長)、井口、池上、大滝、川合、菊本、清水(勇)、清水(啓)、千野、野依、紋谷、安井の各協力者 山本(鰍bASTI社長)、高田(鰍bASTI副社長)、中村(関西TLO叶齧ア)、藤川(JST技術展開部長)の各説明者 井上学術国際局担当審議官、河村研究助成課長、磯谷研究協力室長、柴田研究協力専門官、中西科学技術庁研究基盤課長、谷通商産業省産業技術課長、他関係官 <ヒアリング> 鰍bASTI、関西TLO梶AJST(日本科学技術振興事業団)の各担当者から各技術移転機関等の現状と課題について説明。 <質疑> (○:協力者、□:説明者、△:事務局) 【TLOの経営戦略について】 ○ 実施料収入のみでやっていけるのか。今後、特許の維持費や仲介に要する費用が増えていくのではないか。 □ ロイヤリティ収入で経営が成り立つのが理想的であるが、収益があがるまでアメリカを例に見ても10年ぐらいかかる。CASTIの場合、スタートアップ時の苦肉の策として、一部会費で収益を安定させている。 ○ 特許出願件数が増えたら、今後行き詰まるのではないか。 □ CASTIの場合、代理店と提携しており、案件ごとに契約して対価をいただいている。それで出願経費はまかなえる。 ○ CASTIの同友会(先生方による持株会のような団体)の会員にはどういうリターンがあるのか。 □ 今は、現実的なリターンはなく、先生方のシンパシーによって入会していただいている。 ○ なぜ株式会社という形態をとったのか。ビジネスプランは検討しているのか。 □ 設立当初、比較的自由で機動的な組織が必要であると考えて、株式会社を選択した。 米国のリサーチ・コーポレーション・テクノロジー、英国のブリティッシュ・テクノロジー・グループなどをビジネスモデルとして考えている。 広く先生方の特許の橋渡しをしたいと考えているが、独法化後の国立大学とどういう連携を図っていくかで舵取りが変わっていくと思われる。 TLOが事業として成り立つのか、ということに関しては、確かにアメリカなどのTLOの中で成功しているのは、いわゆるビッグヒットがあるところだけだが、我々にも成功する可能性はあると思っている。 ○ 公益法人ではビジネス展開できにくいから株式会社としたのか。 □ 会費収入以外に、我々のノウハウを生かしたコンサルティングなどをやって収入を得ており、ニーズに応じてそうした企業努力ができる。日本の産学連携においては依然サービスが不足している部分があるので、そこのところを我々が一部担い、対価を正当にいただくことができればよいと思う。企業努力により自由に事業展開できるということが株式会社の大きなメリットだと考えている。 ○ 大学の発明でビッグヒットになりそうなものはTLOに行く前に、企業が買ってしまうのではないか。 □ 実感としては、その点はクリアーしていると考えている。当初、日本の大学に企業がお金を出して買うような研究成果があるのか、企業と一部の上位校の間にはパイプがあり、そこに第三者が入り込む余地があるのか、技術移転のノウハウがTLOに身に付くのかなどいくつかの疑問があった。しかし、実際は、TLOができて以来、日本の大学の研究成果は数多く技術移転され、全国のTLOで30件ぐらい企業とのライセンスが成立している。 また、これまで企業と直接取り引きしてきたことについてわずらわしさを感じていたり、企業に発明を譲渡し実施化されても全く見返りがなかったと感じている先生が多い。TLOは研究者の「エージェント」であり、大学に軸足があることを先生方にも感じてもらっているようだ。 さらに、透明性のあるスキームにより業務を実施するという点や契約手続きなど先生方の苦手な部分をフォローできるという点が評価されて、TLOをどんどん活用してもらうという流れにすでになっていると認識している。 ○ 関西TLOの場合は、実施料収入のみでやっていく見込みがあるのか。 □ 我々の経営収支の件について、昨年度は黒字を一応計上した。しかし、実際には人件費の50%程度を出向元が負担するなどしているので、そういったものを全てTLOで負担するとなると、赤字になる。収入は企業からの会費、助成金、ロイヤリティ収入、あっせん料の収入でやりくりしている。ロイヤリティの額はまだ低いが、件数は少しずつ増えている。5年以内に、国からの助成金(3千万円)以上のロイヤリティ収入を確保できるように努力したいと考えている。 ○ 両TLOとも、特許の維持費、人件費の負担が大きく、経営基盤としては、今の会費や助成金、出向元の援助で支えながら、ビッグヒットをねらっていく状況のようだ。 □ 補足であるが、国家プロジェクトとして行われている研究には相当なシーズが含まれている。その場合、この部分は派生物であるから個人有で、この部分はテーマそのものの成果に対するものだから国有でということになると、せっかく生まれた知的所有権を一元的にマネジメントすることができず、権利の帰属はバラバラになり、権利の取り扱いが煩雑になってしまう。そういったところをTLOで一元的に取り扱えるように検討していただきたい。 【TLOの設立状況について】 ○ 複数の大学の協力により成立しているTLOもあれば、一つの大学が主体となって立ち上げたTLOもある。一つの大学が主体となっているTLOの場合は、今後もその形は変わらないかと考えてよいか。TLOができたことで他大学への影響はあるのか、あるいは他大学でもTLOを作ろうという動きはあるのか。 □ CASTIでは、東京大学以外の案件も一部扱っている。こちらから積極的な営業活動をしたというよりは、よその大学に移った先生から話が持ち込まれ、受けていたり、TLOがない大学から相談されたりというのが実態である。我々はオープンポリシーであり、ノウハウを活用してもらえるならば、よその大学の案件も扱わせてもらう。しかし、現状では東京大学内でも全ての先生方の案件を充分に扱えていない。最近では学生の発明も出てきており、東京大学内だけでマスターやドクターの研究者は1万人以上いる。それらの案件を考えると、まだまだ当該大学の中でやらなければいけないことがたくさんある。 □ 関西TLOは広範囲の地域を対象に立ち上げて、複数の大学を対象にしているが、後から、県ごとや大学ごとのTLOが設立されてきており、今後もいくつか設立されてくると思っている。その場合、お互いに競争していこうという構えであるが、共倒れしないよう専門分野ごとに分けてはどうかなどといろいろと検討している。先生方はその地域のTLOができたからそれだけしか利用できないというわけではないので、複数のTLOを利用しようと考える先生方も多い。そうなると、実施化率が高いTLO、サービスがいいTLOなどで評価されるのではないか、と思っている。 ○ 今後、設立されるTLOは急増する見込みか。 △ 急増するということではないが、現在もいくつか相談を受けている。 【TLOの今後の在り方について】 ○ ビッグヒットが出るまで現状を維持するというが、5年も経てば非常に多数の案件が出てくるはずで、財政的に全ては特許化できないと思われるが、どんなポリシーで選択するのか。ライセンス化できない特許を何年ぐらい維持するのか。係争をどれくらい想定しているのか。また、防衛特許についてはどうするのか。 □ 特許のマーケタビリティの評価に関しては、我々は、これまでの約1年間で経験によって評価眼を養ったきたと考えている。例えば、ある企業に案件を複数持って行ったとき、その企業が何を選ぶのかはTLO側が予測できることがある。我々は、発明者以上にはその原理がわからないし、企業以上にはその収益性がわかっていない。どこの企業がどんな案件に興味を持ってくれるかがわかっていれば我々のマーケティングは十分だと思っている。 特許を何年保持するかについては、案件によって異なる。我々が今預かっている案件についても、もしかしたら10年後ぐらいには、市場に出回ってくるのではないかという技術がある。例えばIT関係で言えば、今は将来の技術に思えても、業界自体がドッグイヤーで進んでいるため、可能性がある限りそういう技術は持っておこうというのが我々のスタンスである。ただし、可能性がないものについては、早めに先生方にフィードバックする。企業は、先生に対しては、直接言えないような問題点を率直にTLOには話してくれるので、そういった企業の声を先生にフィードバックすると、それが次のより市場性の高い研究テーマになるということがある。 侵害については、アメリカのTLOではダブルチェックがなされている。一つは契約によって、TLOあるいは大学の研究者ではなくライセンス先の企業に全ての責任をもってもらう。もう一つが、損害保険で、万一侵害訴訟が起こったとしても得たロイヤリティは保険で払える。我々もライセンシーに責任を持ってもらうという契約をしているし、損害保険については保険会社にお願いしているところである。先生方に最低限迷惑がかからないというスキームができると思っている。 防衛特許については、現状では認知できない。我々が保有していることでどちらかの企業がメリットを得ているかもしれないが、それがわかれば、その企業に売り込むなど何らかのアクションを起こす。 □ 当初は持ち込まれた案件の特許化について断りづらかったが、最近では全体の件数が増えてきており、断る案件も出てきた。評価は難しいが、最終決定は、経験によって備えつつある勘に頼っている。特許化案件の保持については、審査請求の期限までに企業と結びつかなければ案件を発明者に返すつもりである。防衛特許についてはそこまで考え及んでおらず、今後検討したい。 【共同研究等のあっせん業務等について】 ○ 技術移転を進めていく上で、TLOが共同研究のあっせんなどを行うが、それはビジネスとして考えているのか。技術移転の附帯的業務として考えているのか。次に、JSTに対しての質問だが、JSTから資金を援助してもらっているものはJSTに帰属するが、特許の扱いについてJSTとTLOとの関係はどうするのか。 □ 技術移転事業とは大学のナレッジの橋渡しであると捉えている。共同研究や受託開発といったものも積極的に扱っていきたいと思っている。ただし、多額のマージンをもらえば共同研究の予算自体を減らすことになるし、将来的に発明が生まれて企業にライセンスをすることがあり得るので、利益というよりも間接的な付加価値を期待してお手伝いさせてもらっている。 □ 技術移転を行う過程で、大学に研究委託を頼んでほしいという企業の要望があるため、対応している。あっせん料を10%いただいているが、事務手続きなどで費用がかかるのでペイできていない。あくまでもTLO事業を円滑に進めるための補完的事業と考えている。 □ JSTが関与している特許の扱いと、外から預かっている特許の扱いとに分けて考えたい。まず、戦略基礎研究や創造科学などJST主体の事業についてはJSTが独自で実施化していくことになると考えている。共同出願についても、JSTが何%か関与していればJSTが実用化を進めることになる。有用特許化事業の場合は、一時的にはJSTの特許であるが、それをTLOで扱うことになったといえば、返すこともありうる。 【研究成果の活用に関するTLOの役割について】 ○ TLO或いはその他の活動を利用して大学と企業が新しい成果を生み、その権利がどこに帰属されるのか、経済的な成果がでた場合、どう還元するのかが大事であると思う。多くの有力な研究者は国から大きな援助を受けているので、そこから生まれた権利が国に帰属されるのは結構であるが、それを柔軟に扱って企業で実施するということが大事である。また、問題は、研究成果を企業で活用するための「目利き」人材は日本よりも外国にいるということである。我が国の有力な研究者のところには外国の「目利き」が先に釣りにくることが多い。大学の研究者自身が発明と考えていないベーシックな段階のものに対しても、外国の企業は、応用開発を考えて共同研究を申しこんでくる。私は文部省から多額の援助をいただいて研究をする立場、国家公務員の立場としてこういった時にどういう風に身を処すか苦慮する。大学には相談する相手もいず、大変困ることもあるのだが、どうしたらよいのか。 □ 「目利き」のノウハウは、アメリカの方が先行している。特許にすべきかどうか、マーケタビリティがあるのかないのか評価する際に、会議を開いているが、海外の専門家のネットワークを使い、そのノウハウを得ながら実行している。海外の企業が早く先生方のもとにくるのは、我々よりも早い場合は仕様がないものと思っている。 ○ 「目利き」というものは買う側が行うものであり、売る側が行うものではない。 □ ある研究成果について、どの企業に持っていけば関心を持ってもらえるかを把握することがTLOの要諦である。 □ できれば国有特許をTLOに譲渡してほしい。ただ一般競争入札は避けてほしい。それが難しければ最低限でも、国有特許について譲渡オプション付きの専用実施権を与えていただきたい。入札という形になってしまうと最初からお手伝いしたTLOが扱えなくなる可能性がある。 □ 国有特許については入札では具合が悪いので随意契約で譲渡してほしい。価格の決定については前払いではなく、延べ払い、成功報酬にしてほしい。 【JSTとTLOとの関係について】 ○ JSTは国有特許、個人有特許の両方を扱い、運営は国家予算で賄われており安定している。TLOは崖っぷちで一生懸命やっている。 □ TLOとしては大学の案件を一義的に扱えればそれが望ましいが、JSTとの関係でいけば棲み分けは可能と考える。全ての大学はTLOを持ち得ないと思うので、そういう大学についてはJSTが入り、産学連携を進めていけばよいと思う。特許化、ライセンス化において両者の事業がバッティングするのは事実であるが、プロトタイプを作るというJSTのスキームは我々も使わせてもらっていることがあるので、そういった連携もありうると考えている。 □ ある大学では、JSTとTLOは一週間ごとに交代で相談会をやっており、特許案件を扱う機会を分けている。また、JSTは開発期間が長期にわたるものについて諸制度が整備されている。必ずしもそれで割り切れるわけではなく、棲み分けは難しいと考えるが、いろんな形で両者が協調するやり方があればいい。 □ TLOがある大学でも、例えば、10年先でないとものにならないが今は特許化しておきたいといったものの場合はJSTの出番ではないか。また、特許を基にした事業の育成、開発についてはJSTの役割と思っている。 【外国特許出願について】 ○ 外国特許の費用負担は大きな問題だが、どう考えているか。 □ 最初国内出願をし、1年間マーケティングをし、その過程でその特許について将来実用化ができるかどうかわかってくる。1年後にPCT出願の期限が来るので、その段階で海外出願をするかどうかを先生の了解を得て判断する。いきなり各国ごとには出願しない。 |