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田中課長 それでは、少し時間が過ぎておりますけれども、ただいまから「第2回今後のがん研究のあり方に関する有識者会議」を開催させていただきたいと思います。私、文部科学省研究振興局ライフサイエンス課長をしております田中でございます。よろしくお願い申し上げます。また、委員の皆様方におかれましては、ご多忙中の折、お集まりいただき本当にお礼を申し上げます。
本有識者会議は厚生労働省及び文部科学省の共同で事務局をさせていただいております。
昨年8月3日、第1回会議を開催させていただきました後、8月末の人事異動がございまして、厚生労働省大臣官房技術総括審議官に今田審議官が着任いたしました。まず、今田厚生労働省大臣官房技術総括審議官から一言ごあいさつを申し上げます。
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今田技術総括審議官 皆様こんにちは。ご紹介をいただきました技術総括審議官の今田でございます。前回、多分、去年の8月にこの会が開かれたかと記憶しておりますが、その後、ちょうど8月末に現在のポストに就任させていただきまして、若干間があきまして申しわけございませんが、これからもよろしくご指導いただきたいと思います。
また、きょうはがん研究のあり方に関します会議に、ご多忙中のところご参集を賜りまして、心からお礼を申し上げたいと思います。
ご承知のように、平成15年度には、第2期のがん克服新10カ年戦略が終了するという大きな節目を迎えるわけでありますけれども、これを期に、改めてこれまでの成果と今後の残された課題につきまして検討することが大変大事ではなかろうかと思います。
これから第3期にどう向かって進んでいくかということをご検討いただくわけでありますけれども、少なくともこれまでの10カ年の研究がどうであったのか、そして、残された課題には何があるのか、そしてその課題について、どういう取り組みをするのかといった視点に立ちまして、国民の皆様方にできるだけわかりやすく、また具体的にお示しできるようご議論を進めていただければありがたいと思っております。
第2期の10カ年があるので、引き続き第3次の10カ年というものが自明のごとくあるのではなくて、まさに必要であるという点を国民の皆様に理解いただけるような、そういう方向でお取りまとめいただければありがたい、このようにお願いをする次第であります。
簡単ではございますけれども、先生方の貴重なご意見を賜りますことを、心からお願い申し上げまして、簡単ではございますけれども私からのごあいさつにかえさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
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田中課長 それでは、まず議事に入っていただく前に、本日お配りしてございます資料につきまして確認をさせていただきたいと思います。お手元に封筒がございますけれども、その中に何点か資料がございます。まず、1枚紙でございますが、第2回の有識者会議の議事次第、有識者会議の委員名簿、そして本日の資料でございますが、資料1として「我が国のがん研究の現状について」というタイトルのものでございます。そして資料1-1、カラーのものでございますが、「大腸癌の癌抑制遺伝子APCの発見と機能解析」というのが一番上に書いてあるもの、資料1-2として「ヘリカルCTから作成した肺腺がんの三次元画像」と書いた青色のものでございます。そして資料2といたしまして「今後推進すべきがん研究に関するキーワード(たたき台)」というタイトルのついたものでございます。資料3が「がんの本態解明からがんの克服へ」というパンフレットでございます。
以上、3点が資料でございますが、もしも不十分なものがございましたら言っていただければ、お取りかえさせていただいたり、あるいは追加させていただきたいというふうに思います。
それでは、これ以降の議事につきましては、座長の杉村先生にお願い申し上げたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
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杉村座長 本日は委員の先生方並びに関係の方々、大変お忙しいところをお集まりいただきまして、まことにありがとう存じます。
昨年8月の第1回の会議では、私は急な都合で欠席をいたしまして、菅野先生に代理を務めていただきました。委員の皆様方の大変ご熱心なご議論を、後で議事録その他から拝見いたしました。大変ご迷惑をおかけいたしましたことをおわび申し上げます。
本日の議題は、まず最初にここにございます議事の2というところです。「我が国のがん研究の現状について」ということであります。資料の1です。先ほどご説明のあったとおりでありますけれども、第1回の有識者会議でご承認にもとづいて、国立がんセンターの研究所の廣橋先生と、東京大学分子細胞生物学研究所長の鶴尾先生を中心に、有識者会議の作業班として、これまでの研究の成果について、お取りまとめをいただいたわけであります。
既にこれは先生方には前もってお送りして、いろいろご意見を賜っておりますので、それを入れて修正されたものでございます。今日、これから作業班の班長の廣橋先生と、副班長の鶴尾先生にご出席願っておりますので、作業報告書について、この資料1について、ご説明をいただいたらいかがかと思いますけれど、よろしゅうございますか。では、ひとつよろしくお願いいたします。
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廣橋班長 国立がんセンター研究所の廣橋です。作業班の班長を務めております。座って説明させていただきます。
まず私から、この報告書をどのように作成したか、それから全体の構成、そしてこの概要、最初のところの内容について簡単にご説明したいと思います。
前回の有識者会議において作業班が認められまして、この資料の一番最後のページ、42ページに班員のリストがございます。さらに、一部専門委員が必要でございましたので、これを5名加えまして作業いたしました。このメンバーが、この報告書の目次にもあります6つの領域に小班として分かれまして、まずそれぞれで徹底的にこの内容について意見を交換してまとめました。その全体を私と鶴尾先生が整理いたしまして、それをまた全体で見直していただくというような過程を経まして、つくり上げたものでございます。
まず最初に、どういう分野に分けて、がん研究の現状について整理をするかということについて検討いたしました。基礎から臨床まで、公衆衛生、そして社会への接点までを含むような分野分けにしよう、それから、予防・診断・治療といった一番大事なことがきちんと出てくるような分野分けにしようということで、この一番前のページに出ております の「がん化とがん特性の生物学的基盤」から の「がん情報/社会学」までの6つの分野を分けました。
それぞれの分野の報告には、1.はじめに、2.研究成果の概略、3.主な研究成果、4.まとめという小項目がございますが、ここでは「はじめに」で、まず研究の意味と全体の流れ、「研究成果の概略」で我が国における研究成果の概略、そして「主な研究成果」の紹介のところで10課題程度、目立った研究成果を紹介する。そして最後に「まとめ」のところで外国の研究成果との比較や不十分であった項目などの評価に触れるといった内容で書いたものでございます。
この から までの各項目について、後ほど私と鶴尾先生とで簡単にOHPをお示ししながら説明しますが、その前に、さらに全体を取りまとめたものとして、最初の概要というところがございますので、そこについてご説明したいと思います。
1ページです。まず文部科学省と厚生労働省の両省庁における研究事業の経緯、重点領域の研究であるとか、あるいはがん克服戦略研究事業であるとかといったものの経緯が書かれてございます。そして最後の数行には、科学技術基本法が制定されて、基本計画が策定されて、がんが非常に重要な分野であると提起されたと記載しました。
次のページに行きまして、前回の有識者会議の指示を受けて、この作業を初めたことと、それから内容としては「対がん10カ年総合戦略」、それから「がん克服新10カ年戦略」の期間だけれども、特に最近のものを重点に、成果をまとめたことを記載いたしました。
そして、重点研究項目がどのように変化してきたかということを書いた上に、各項目、各分野の成果を3ページから 、 、 、 、 、 とまとめ、最後の6ページのところで評価についてまとめまして、最後に7ページには結びとして欧米で進められるがん対策あるいは研究事業と比較して、この事業をさらに推進したいということでまとめてございます。これが概要の説明でございます。
それでは、次に基礎の分野の方からお願いします。
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鶴尾副班長 東京大学の鶴尾でございます。6項目の中で私は 番の「がん化とがん特性の生物学的基盤」、 番目の「発がん要因とがん予防」、それから少し飛びまして 番の「がん疫学/公衆衛生」についての日本の研究の進歩ということでお話をさせていただきます。
がん化あるいは発がんでございますが、この用紙の中にも書かれていますがん遺伝子あるいは抑制遺伝子という研究が非常に進みました。ごくその1つの例ですが、日本で大腸がんのがん抑制遺伝子APCを発見した、かつその機能解析が行われたということでございます。
先生方ご存じのとおり、がんはワンステップで形成されるのではなくて、幾つかの遺伝子変化を経ましてがんになる。それが、もっと悪性化して転移を起こすという過程でございます。このAPC遺伝子は、この中で大腸がんの発生に関して、いろいろな役割をしている抑制遺伝子でございます。当然、抑制遺伝子という機能がございますので、増殖抑制とか転移浸潤抑制という機能もあるわけでございます。大腸がんの約80%にこのAPC遺伝子の変異があるということ、それから、この遺伝子はもともと家族性大腸ポリポーシスからとられたものです。
このがん抑制遺伝子という研究は、ずっと続いておりまして、これはごく最近、この一、二年の成果でございますが、抑制遺伝子は、いろんな方法で同定されております。新しいがん抑制遺伝子の候補として、いろんな遺伝子が見つかっています。例えばTSLC1というのは、マウス腫瘍形成抑制機能ということからとられた遺伝子でございます。ほかに遺伝子欠失部位からE−CAMという遺伝子がとられておりますし、MYO18Bとか、こういったいろんな遺伝子が現在とられているということでありまして、がんの基礎研究ですが、がん遺伝子、抑制遺伝子の研究も現在、依然として重要な領域として続いているということでございます。
もう一つ特筆すべき成果でございますが、ウイルスががんを起こすという証明が日本で行われました。これは成人T-cell白血病、ATLの原因ウイルスの解明ということであります。人のがんにウイルスが絡んでいるということを初めて発見した。かつ、その基礎的な成果をもとに予防に成功したということが大きい成果であります。
すなわち母乳の中にウイルスが存在する、あるいは血液中に存在するわけでございまして、母乳を与えない、あるいは輸血の検査をちゃんとするということで、現在、90%以上の感染予防が成り立つということがわかっています。
基礎的には現在、ウイルスのがん原性遺伝子でありますTaxというのがありますが、これがいろんなところでおもしろい機能をしているという基礎研究が現在も進行しております。
このデータは、細胞接着の分子機構、あるいはその異常ということであります。がんは細胞集団の中にとどまっている限り悪性のものではございませんが、いわゆる細胞集団という社会を外れてしまう、アウトローになった細胞が悪性化するわけです。したがいまして、この細胞接着という機構は正常性を保つ上では非常に重要な機構でありまして、その異常が、悪性化あるいは転移に結びつくという考えでございます。
京都大学の月田先生たちは、この接着に関係する研究、接着因子の研究をなさいまして、occludinあるいはclaudinという分子群を明らかにしています。これは非常に基礎的な研究ですが、恐らくこういったものが、これからは転移あるいは悪性化ということと密接な関係をもってくる基礎的な研究の一環でございます。
これは、がんセンターの廣橋先生たちの仕事で、同じく接着因子E−カドヘリンの研究です。カドヘリンは京都の竹市先生が見つけられたものです。細胞間の接着、先ほどの月田先生の、いわゆるタイトジャンクションと違った接着メカニズムがありまして、そこにE−カドヘリンという物質が関係しております。
この発現の遺伝子異常があった、あるいは欠失があったという場合には、非常に腫瘍が悪性化する。例えば、スキルス胃がんでは、こういった遺伝子の変位とかアリルの欠失がございます。あるいはCpGのメチル化による発現低下が、低分化がんで認められるということで、このカドヘリンの発現異常は、がん悪性化と関係するということがわかっています。
事実、このカドヘリンは転移にも重要な機能を持っているということが生物学的な研究でわかっています。最近、ここ1年、2年の成果としましては、このカドヘリンの機能を制御する新しい蛋白質が見つかった。それはディスアドヘリンという物質でありまして、これが恐らく転移とかいったことに関与するということが想像されていますが、この機能解明はこれからの研究であります。
転移は現在、非常に注目されていますが、転移にかかわります酵素の研究、これは東大医科研の清木先生たちの研究です。転移はがん細胞が血管の中に浸潤して、最終的に標的組織に浸潤していかないといけないということがございます。この浸潤の過程に、当然基底膜その他があるわけでして、がん細胞はそれを壊して浸潤しないといけない。この壊すプロセスで、いわゆるドリル役をする物質があるということがわかりました。それが組織破壊型の酵素、メンブレンタイプのマトリックス・メタロ・プロテアーゼ(MMP)というものがあるということを清木先生が見つけました。この酵素の研究に始まりまして、現在、MMPというのは10種類以上知られておりまして、それが転移にどういうふうに関係するかと言う研究、さらに阻害剤を見つけまして転移を抑える研究も国際的に盛んでありまして、既に幾つかの物質が臨床研究に入っています。
もう一つ、これも基礎的な成果でございます。報告書に書かれておりますがアポトーシスという現象がございます。これは細胞が死んでしまう現象でありますが、そのときにDNAが壊れてしまいます。そのメカニズムを阪大の長田先生たちが明らかにしたということです。
核のDNAが壊れる。当然、DNA分解酵素が作用するということはわかっています。それからアポトーシス(細胞死)を起こすときに、カスペースという蛋白分解酵素が働くということもわかっておりました。しかし、蛋白分解酵素がDNA分解につながるというプロセスの詳しいことはわからない。長田先生は、DNA分解酵素はその阻害蛋白質でありますICADという蛋白質とくっついていることを発見しました。したがいまして蛋白分解酵素カスペースは、この阻害蛋白質を壊すことによって、DNA分解酵素を活性化する。それによりましてDNAが壊れるということを見つけたわけであります。
アポトーシスは生物学の非常に基礎的なメカニズムでございますが、このアポトーシスの異常といいますのは発がんにつながります。細胞が一定の頻度で死んでくれないとがんが出てくるわけです。私は抗がん剤の研究をしておりますが、アポトーシスは抗がん剤が効かなくなるといった耐性の現象と非常に密接な関係を持っておりまして、がんと非常に関連した研究になります。
次に予防あるいは社会学というお話を最後にさせていただきたいと思います。これは予防の研究でございます。ごく最近の研究でございまして、厚生省サイドの研究であります。スナネズミを使いまして、その胃がん発症にかかわりますいろんな分子を解析した。とくにヘリコバクターというのが最近言われていますが、ヘリコバクターと食塩が胃がん発生率を有意に上げるという結果がスナネズミの実験で得られました。
まず食塩単独、ヘリコバクター単独、両方合わせたものでは、がんはほとんど出てきません。MNUは化学発がん物質でありますが、それを使いましても出てこない。その食塩との併用でも出てこない。そこにヘリコバクターと加えますと、胃がんの発生率が12%になります。かつ、そこに10%の食塩を投与していくとこの胃がん発生率が非常に上がるということでありまして、恐らくこの実験から食塩あるいはヘリコバクターというのは胃がん発生の重要な因子であるということが言えます。
予防という観点から、これは食事介入実験ですが、食塩をとらないという介入をした場合に、確かに食塩の摂取量が下がるということがございまして、恐らくこういった介入試験、あるいは啓蒙運動で食塩の量を下げるということで胃がんが下がる。最近はこのヘリコバクターの除菌をするということで下がるという考えもございますが、こういったことで日本の胃がんの頻度はこれからも徐々にずっと下がっていくということが期待されています。がんの予防の研究でございます。
最後に、これは疫学の実験でございます。疫学の研究は文部科学省で1998年から研究組織に組み入れられ支援されています。いわゆる大規模コーホート研究であります。51地域の住民12万7,000余、それから企業の構成員2万6,000人といった方を対象にして、血清の採取あるいはDNAの採取ということで、サンプルをとりまして解析したものであります。このうち、解析の時点、2002年で9,125人の方が亡くなりまして、3,653人ががんであった、約3分の1ががんでございます。
もちろん、疫学、こういったコーホート研究の利点、欠点はございますが、利点として挙げられますのは、ともかく結果の信頼性は非常に高いということが言えると思います。胃がんと肺がんでこの解析をしております。ここに肺がんの結果が書かれています。
肺がんの症例が200症例、非がん400例を比較したものですが、生活習慣と肺がん死亡リスクということで、危険因子はたばこでございます。たばこは明らかに肺がんの危険因子であるということがわかりました。それから高脂肪食の摂取、それから20歳ごろの肥満傾向が危険因子であることがこのコーホート研究でわかりました。
一方、制御因子でございますが、たばこをやめるということ、一たん吸った場合でも15年あるいは20年禁煙を続けると、制御因子になり得るということがわかっています。それから、食べ物の影響では果物、色の濃い野菜といったものを高頻度でとるほど、喫煙者におきましても制御因子になるということが、この大規模コーホート研究でわかっております。
疫学はほかにも幾つかの研究が現在進行中でございます。簡単でございますが、基礎の面からのご報告をさせていただきました。
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廣橋班長 それでは、続きまして、 「がん診断(検診を含む)」、 「がん治療」、 「がん情報」の領域の中から幾つか選んだ成果を順にご紹介いたしたいと思います。
診断の分野では、画像診断の機器の開発で大きな成果がありました。CTをらせん型に動かしながら撮影するというヘリカルCTが、この事業の中で企業との連携でつくられたという経緯がありまして、そのヘリカルCTは、非常に鮮明な画像が得られるだけではなく立体画像も得られるんですが、ヘリカルCTを検診車に載せた検診が実際に行われるようになりました。
そういたしますと、ヘリカルCT導入前に見つかった肺がんの病期、 期から 期までの肺がんですが、その割合を示してありますが、それと比べてヘリカルCTが導入された後は明らかに早期の肺がんの比率がふえているということがわかります。その結果として見つかった肺がんは、導入後にはきわめて予後がよくなっているということがございます。この結果そのものは、決してまだ肺がんの死亡が本当にこれで下げられるかどうかという結論にはなっておりませんけれども、今後、研究を進めることによって大きな成果が期待されます。
そういうヘリカルCTの検出器をさらに横に多数並列に並べることで、さらに多くの情報量を短い時間で得られるようになっておりまして、これは決して造影をした写真ではないんですけれども、進行下行結腸がんに関して、従来のX線像と非常によく似たような画像が三次元CT像として得られる。あるいは右側は早期胃がんを内視鏡で検出しておりますけれども、同じ病変をCTをするだけでバーチャルに内視鏡像が得られる。こういうことにより、極めて侵襲の少ない状態で診断ができるということで、非常に大きな進歩ではないかと思います。
がん研究はゲノムサイエンスの進歩にも大きな推進力になったと思います。それとは逆に、ゲノムサイエンスの進歩の恩恵を受けて、がん研究も進んでいるという状況です。
染色体物理地図の作成にも、がん研究者が大変貢献いたしまして、そういう情報をもとに白血病の病因遺伝子が本邦で見つかったということもございます。また、SSCPという点突然変異をきわめて正確に高率に検出する方法も開発されました。さらに最近では、非常に高速のシークエンス解析あるいは網羅的な遺伝子の発現解析、ゲノムの異常、そして個人の間の差も非常に大量に高速に検出できるという技術が進みまして、例えば一番右側の下には、Multiplex PCRとInvader法の組み合わせ、これは医科研の中村先生が開発された方法で、非常に高率に個人の間のSNPの違いというものを検出できるということで、今、研究に使われている方法です。このように研究が進んできています。
こういった技術、これはマイクロアレイの成果ですが、同じ中村先生の研究の成果ですけれども、がんの個性を遺伝子発現パターンで調べて、個々のがんの個性を予測して治療を選択するということが目に見えるところまで来ております。
左側は「急性骨髄性白血病に対する抗癌剤感受性予測スコア」ですが、Ara CとIdarubicinで治療して、緩解が導入された分と失敗した分がこんなにもきれいに遺伝子発現のスコアで区別ができる。右側は「子宮頸癌に対する放射線感受性スコア」ですが、これはいずれも 期、 期のものだけですけれども、それもこのように62の遺伝子の発現プロファイルを見ることできれいに区別ができるということであります。
治療の分野でも、さまざまな進歩がございますが、そのうちの幾つか選んだものをお示しします。特に患者さんへの侵襲を少なくした治療法の開発でも大きな成果を上げております。
これは、内視鏡的な胃の早期がんの切除ですが、その割合が、このようにふえてきて、早期がんはほとんど内視鏡手術で治療されていくように変わってきたということが示されております。昔は割と小さな早期がんだけしかできなかったのが、先端に絶縁体を持ったナイフが開発されたことによって、かなりの大きさ、3センチぐらいまでの大きさでも6割あるいは7割5分ぐらい、簡単にがんを残さないで切除できるというところまで来ております。
抗がん剤の開発においては、本当に効果があるかどうかということを正しく試験する臨床試験の体制がきわめて重要であります。この分野は日本でこれから力を入れてやらなくてはいけないということが言われている分野です。製薬会社が開発したものを、前臨床から単剤 相、 相、 相へと進める受託研究そのものも重要で、最近充実してきておりますが、厚生労働省のがん研究助成金におきましては、そういったものの併用療法、あるいは外科や放射線治療とのコンビネーションによる集学的治療などについては製薬企業からのサポートはないわけですので、研究費のサポートのもとに臨床試験を行うという体制をつくってまいりました。
そういう臨床試験を科学的に行うためには、データセンターが必須でございまして、臨床研究者の支援、そして試験の品質管理をここに書いてあるようないろんな観点から行い、また、第三者的な監視も含めて体制をつくって行うとことがきわめて重要です。こういう体制をつくってまいりました。これが、さらにメディカルフロンティア戦略において、より拡大して進められていくということで、こういうシステムは今後の治療開発、それからまたトランスレーショナルリサーチを推進していく上でも重要であると考えます。
旧科学技術庁の分野では、重粒子線による治療を中心に研究を進め成果を上げております。ご存じのことと思いますけれど、こういう炭素などの粒子線の照射は非常に切れ味がよい、病巣だけが照射されるという特性がございまして、敵のいる場所のみを選んでがんの治療の効果を上げられるというものでございます。既に1,000例ほどの症例について照射がされているということで、その全体的な評価、それからサイドエフェクトに関する評価はこれからだと思います。
実際に、これは仙骨の骨肉腫の症例ですけれども、治療前にこんな広がりを持っていたものが、治療後にごらんのようにきれいに消えて、5年たっても治っているという症例が出ております。
最後にがん情報のところをお話ししたいと思います。がん克服新10か年戦略では、がん情報についても力を入れてまいりました。国民への情報提供として、多くのがんについてやさしい説明をホームページに載せております。これには何と、月に40万件のアクセスがあるという状況になっております。
もう一方では、今度は医療従事者、専門家向けの問題ですけれども、中核的な拠点病院の間を高精細画像のテレビ会議システムで結び、お互いに討論して切磋琢磨してレベルを上げるという努力を行っております。
そして、専門家が使いやすい画像レファレンスデータベースの構築なども行っております。このような成果を上げてまいりました。
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杉村座長 どうも大変時間の制約があるにもかかわらず、よくまとめてくださって、また、見なくても、これを見て済むようにご説明いただきまして大変ありがとうございました。これは物すごくよくできているんです。これをつくられるご努力というのは大変だったと僕は思うんですよ。このおしまいに委員の方々が出ておられますけれども、今、第一線で、まさに世界と競争を現実にしておられる中堅将校、少佐、中佐という人がこれを書かれたのでありまして、すばらしいものだろうと思います。それを今ご説明いただきましたけれども、どうかご自由に、本日お集まりの委員の方々から、ご意見を賜れればありがたいと思います。どうぞ、ご自由に。余り難しく考えないで。
ちょっと申し添えますと、今、お話があった中でも、例えばATLの断乳による、母乳で母親がATLのウイルスを持っていると子供に伝わるというやつを、母親がウイルスを持っているとわかればブレストフィーディングをしないで、母乳を与えないで人工授乳にするということによって、全く感染を遮断するというお仕事がありましたね、ご説明に。あれは、鳥取の教授、それから愛知がんセンターのタジマ博士、それから鹿児島大学のソノダ教授でしたか、ご三方のご研究でありますけれども、ことしの高松宮妃のがん研究基金の受賞者ですね。
それから、後ほど廣橋さんのご説明にあったSSCPは、非常に日本で発展したユニークな方法でありまして、この6月に行われる学士院の学士院賞に選ばれております。以上、そういう大変ハイリガーデッドな仕事が生まれたということは、よろしいことだと思います。どうぞ、ご自由にご発言ください。先生、どうぞ。
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佐々木委員 20ページに画像診断のことがございますが。以前にご意見を申し上げるチャンスがあったのだと思います。今になって大変恐縮でございますが、ここにCT、CRのお話が出ていますが、もう一つ、機能画像診断としてのポジトロン断層撮影(PET)というのが腫瘍診断で非常に有効であります。特にこの4月からは腫瘍診断も含めてF18デオキシグルコースのPETが健保にも適用されております。この間の臨床PETの進歩は非常に目覚ましいものがあると思うのですが、それに全く触れられていません。この辺はご議論があったのでしょうか。
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杉村座長 どうぞ。これは、PETについては書いた方がいいのではというご意見だと思うんです。それは当然なんだけれど、別に入れない理由があったとか、そういうことではないんでしょう。
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廣橋班長 いえ、ございません。
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杉村座長 皆様にお願いしておきたいんですけれども、本日はこういうところが抜けているということは、そういうふうにおしゃっていただくと、これをファイナルにいたしますときに入れますので、どうぞご遠慮なく、今の佐々木委員のようなご意見を賜ればありがたいと思いますので。北島先生もありますか。
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北島委員 非常に短期間ですばらしくまとめていただいたと思います。幾つかこれを拝見いたしまして、今、私自身も悩んでいる面は、例えば、最近、ベーラー大学からネイチャーにP53のオーバーエクスプレッションのマウスをつくったところ、確かに発がんは減ったけれど、いわゆる老化というか成長抑制が起こったという報告がありました。ですから、二面的な問題があるので、むしろ私自身は遺伝子治療というよりも、さっき鶴尾先生のところでご発表があったMMCインヒビターとか、あるいはアンジオジェネティックインヒビターを使ったドーマンセラピーの位置づけというのが今後どうなるのか、その辺、非常に興味を持っています。
それから、先ほど廣橋先生から、早期がんでEMRの頻度が高くなったという報告がありました。確かに3センチの粘膜がんをITナイフ、ニードルナイフ等で我々もやっているんですが、やはり粘膜がんでも3センチになると、リンパ節転移のリスクが非常に高くなるわけですね。そこでやはり今後はセンチネルノードマッピングの概念を、やはりがん治療に導入しなければ、その辺が解決できないと思っています。
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杉村座長 今のお話、わかりますよね。これは前にお渡ししてございますので、そのときにいろいろご意見をいただいたものは、まだインテグレートしていないんですか、しているんですか。
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廣橋班長 多くはしてございます。
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杉村座長 してある。そうすると、新たに今そういうご意見がまた出るということは当然あってもよいですが。
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廣橋班長 失礼いたしました。この報告書は主に成果、結果の評価を中心にまとめましたので、ご意見の中には、むしろ今後こういうふうにしたらいいんじゃないかという、ご意見もたくさんございましたが、それは……。
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杉村座長 わかりました。また後からやるんです。そのときにお話ししてとっておく、ちょっと我慢して。気がはやるかもしれませんが。それより今、この報告そのものについて、こういう点を加えた方がいいとか、あるいは、これはちょっとオーバーランしているとかいうことがあれば、ご意見を賜りたい。
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高久委員 よろしいでしょうか。ヘリカルCTによる肺がんの検診について、最終的にはまだわからないとおっしゃったのですが、従来、肺がんの検診に関して疑問を呈する人もいたので、ヘリカルCTという、日本の得意な分野だと思うのですが、それを使って肺がんの検診の有効性が明らかになったということを、もう少し強調されてもよいのでは。先生がおっしゃったのを聞いていますと少し遠慮されているので。これは大きな成果だと私は思っています。私の専門外の事ですが。
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杉村座長 富永先生、どうぞ。
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富永委員 ヘリカルCTではなくて、従来のレントゲン検査法に基づく肺がん検診の有効性にしぼっての効果は、ここ二、三年、続々と有効であるというデータが出てまいりまして、がん検診を受けると肺がん死亡率を0.5ぐらいまで下げるということが論文になっています。ですから、ここへ入れていいと思うんですけれど、ヘリカルCTによるがん検診の方は、まだ廣橋先生がご説明になったように、非常に早期のものがたくさん発見でき、数字を見るといいんだけれども、本当に死亡率が低下するかどうかは、まだわかっておりませんので、これは将来の重要な研究課題になると思います。
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杉村座長 高久先生、つまり、少しコンサバティブに書いてある。それは、ちゃんとした論拠のある論文があるということに基づいて注意深くおやりになっているとご了解いただければいいと思います。そういう印象であることは間違いないし、事実そうだと思いますけれども、なおかつ、そういうふうにしたという意味です。
どうぞ、北島委員。
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北島委員 ヘリカルCTで確かに肺がんの発見のインシデンスは減ったんですが、コスト・ベネフィットの問題が、やはりかなりかかわってくる問題ではないかと思います。
それから、もう一つはバーチャルCTエンドスコープ、これは確かに我々もやっているんですが、あらかじめ従来の内視鏡で観察します。例えば大腸の平坦型の癌を見つけておいて画像をつくるから、今のところいい画像が出るのであって、それを飛び越えられるかというと、まだそういうレベルではないのではないかと思っているんですが。
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杉村座長 何か。
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廣橋班長 ご指摘のとおりかもしれません。ヘリカルCTの貢献というのは明らかで、ただ、それがさらに研究が進んでいる、今後さらに発展が期待されるということを、申し上げたかったのです。
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杉村座長 そうです。ですから、それが普通の従来の検査にかわっていけるかどうかという、そこがまだ一つ問題が残されている。
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廣橋委員 最後のそれは、ここではお見せしましたけれど、この報告書には入っていません。
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杉村座長 どうぞ、富永委員。
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富永委員 資料1の我が国のがん研究の現状は非常によくまとめられていて、内容はよろしいんですが、項目 から までの並べ方なんですが、 は「発がんの要因とがん予防」になっており、飛んで に「がんの疫学/公衆衛生」があります。 と は密接に関係しておりまして、 はどちらかというと動物実験などに基づいた化学予防、それがだんだんと人に応用されていくということになると思います。やはりがんの予防を目指しています。 のがんの疫学もいろいろなことをやっていますけれど、最終目標は予防なんですね。ですから、今、鶴尾先生が も一緒にご説明されましたように、 を の次へ回した方がおさまりぐあいがいいと思うんです。
それから、 のがん情報、これはがんの発生から生存等々、診断にも画像レファレンスデータベースのように から の全部に関係しますから、がん情報は一番最後に置いておいていいと思います。
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杉村座長 つまり、がん疫学というのは、がんの実態をよく知ることによって、主に結局はがんの予防というのが到達されるというべきものであるから、それは、がん要因とがん予防と書いてある、その次のところにあった方がいいというお話ですか。
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富永委員 そうです。
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杉村座長 どうですかね。がん情報とか社会学というのは、例えば、治療が完全にいったと思ってもご再発になった方とか、化学療法が何クール終わって、かなりの効果を上げたけれども、残念ながら完全には治らない。そういうために、どういうQOL(Quality of Life)あるいはどういうホスピスがよいかとか、あるいはサイコオンコロジーとか、精神的な問題もあるから、この が のところであるのはよろしいとおっしゃるのでしょう。それで を と の間に入れたらまずいかなとおっしゃるんだけど、別にどうですか、先生。
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廣橋班長 今のご提案も大変合理的なものだと思います。私たちも実は悩んだのですが、一方では疫学と情報が割と近くてオーバーラップする分野もあるということ、今までの文部省のがん特定の分類でも、がん疫学が後ろに来ていることなど、いろいろな経緯でこうしたんですけれども、今のご提案はぜひ考えてみたいと思います。がん予防の基礎的研究と、公衆衛生的な研究というものが隣にあるというのもわかりやすいかもしれません。
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杉村座長 きょうご意見をいただいて、すぐさまこういうふうにすると決めなくて、またいずれ作業部会が行われることですから、ご意見を賜っておいて、そして、いろいろな変更があるべしと御理解下さい。その変更は廣橋、鶴尾両先生と菅野先生と私で見ますか。その間に、またあるいはどなたかにお願いするということを考えておりますけれども、そういうふうにいたしますので、きょうこうするというのではなくても、そうしたらどうかというご意見を自由に賜れればありがたいと思います。どうもありがとうございます。
廣橋先生、特に女性の肺がんが脂肪摂取、あるいはここに肺がんと書いてありましたね、さっきの絵にあった、あれは扁平上皮がんではなくて腺がんの場合ですね。
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廣橋班長 はい。こういうヘリカルCTで見つかってくる初期のがんというのは腺がんです。
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杉村座長 それは、割合お太りになった女性にふえる傾向があるということでしたか。
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廣橋班長 そういう可能性についても議論はございますけれども、はっきりとした結果は出ていないと私は思います。
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富永委員 今、杉村先生のご質問は、鶴尾先生が説明されたがんのコーホート研究の結果のことで、肺がんについてのことですね。これは、まだ一括して一緒にしています。大部分、6割以上は腺がんですけれど、症例がまだ十分ありませんので一括です。
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杉村座長 そうすると、それはむしろ今後、しかと出すべきものですね。それで予防に役立てるべきものですね。どうぞ、坪井先生。
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坪井委員 前に全体を拝見して、非常に私は大変な仕事だと思ってびっくりしたぐらいなんです。ですから、先ほど杉村先生がおっしゃったように、ではこれを読んで次にどういうことがあるかという話のときに少しまた触れさせていただきますが、あえてこの中で私が今一番気になっているのは、いわゆるがん登録の問題に関して、個人情報の保護ということで、かなり多くの意見が私のところにマスコミも含めて個人からも来ます。その問題について、今回のこのレポートの中でがん登録に関しての専門家といいますか、日本のスペシャリストとしてどう考えているかという意思表示をしておかれた方がいいのか、今はまだ控えていた方がいいのか。しかし、現場ではかなり全体的な雰囲気は非常に強いです。ですから、その辺のところも、もしご配慮いただいているのであれば、その他には問題ないと思います。
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杉村座長 それは先生、すごく重要なことでありまして、今後、推進すべきがん研究に関するキーワードのおしりの方にたしかなかったかな、そういう問題が。がん予防、がん治療、がん療法社会学、ここのところにあるんですか、先生。はい、どうぞ。
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廣橋班長 がん登録についての研究も、もちろん成果としてここに書かれています。地域がん登録、そしてそれにもとにした疫学研究は疫学のところで、それから、患者さんの院内のデータを集める院内登録、病院の臨床登録については情報のところで整理してあります。今後の課題としても、これは重要であるという議論は必ず出てくると思います。同時に社会の認知をどのように得ていくかという議論が出てくると思いますが、今ご指摘の点は非常に大事だと思います。
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鶴尾副班長 がん登録を全国的な規模でやりたいという希望はございます。スライドでお示ししました2002年に一応、結果を出したんです。あれは非常にいい財産であるということで、もう一回やってほしいという希望は聞いております。ぜひ先生方の方から、そういうのを強く出していただければ動くと思います。ただ、もちろん、過去のがん登録には批判もございまして、費用に対して成果が見えないとか、いろんな批判があったのは事実です。ですから、そういうことをいかに克服して新しいシステムを選ぶかということは、ぜひ考えさせていただきたいと思います。
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坪井委員 我々からすると、これは絶対必要なことです。しかし、それがアゲンストの立場の人からすると、プライバシーの侵害など耐えられない不安になるのです。そのギャップをどうやって埋めていくか、これはやはりがんを研究している我々がやっていかなければいけない問題だと思います。ですから、ここでも拝見しますと、さらりと触れてはおられるんですが、世の中そんなものではないよという気が私にはするんですけれど。
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杉村座長 それは、世の中と一番接点が多いのは先生だから。だけど例えば、BRCAという乳がんに必ずなる女の方がおられますね。アシキナジージュウだと30%ぐらいかな。そうすると、結婚するとかしないとかいうようなことにも関係しますし、ある時期を過ぎたら手術療法を縮小するのではなくて逆なんです。全乳房切断手術をするとかしないとかいうようなことが現に問題になっていますよね。日本では幸いに頻度が少ないから、だけど絶対にないわけではありませんよね、日本でも。
だから、そういうことは非常に問題になるけれど、現在の研究の現状については、そういう点を特に対象としたジェネティックカウンセリングを含めてというのは、いろいろ進んでいるんだけれど、そこはさらりと書いてあるようですね。ですけれど、それは将来は非常に考えるべき重大な問題でありますし、そういうケースがもっとふえてくると思うんだよね。今わかっているのはBRCAとかだけど、メラノーマの家系とか、ニュージーランドにある必ず胃がんになるとは言わないけれど、胃がんに非常になりやすい家系とかいうのがありますね。そういう場合にどうするかという問題は、将来のところで検討したらいいんじゃないかと思います。どうぞ。
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廣橋班長 確かに私たちは、むしろ今後の課題として、どうやって社会の理解を得るかということを強調しようかと思ってたんですけれども、考えてみますと、現状の認識の中にも、既に問題として出てきているというところまでは記述した方がいいかなと思います。検討させて頂きます。
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坪井委員 そうしていただけると、接点の多い部分では、かなりニュアンスが違ってきますね。今は全く援護射撃がないわけですから、そうですよねというしかしようがなくなってしまうんですよね。かなり強いですものね。
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杉村座長 援護射撃しますか。
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寺田委員 僕も同じことですけれど、やはり個人情報保護法が通るか通らないかは別にしまして、そこの話と、健康増進法は既に通った状態になるかもしれないという事態とか、それから、必ずしも遺伝子だけの話ではなくて、疫学の研究も種々と状況が変わると思います。臨床的な研究を行う場合、個人に属する情報は個人がすべて持っているんだという基本的な考え方があります。それは正しいのですがこの考え方と公衆衛生のため、あるいは医学のためというのをどのあたりで折り合いをつけるかというのは、今後のがん研究、特に臨床研究に非常に大事になってくると思います。坪井先生がおっしゃったように、ちょっとここに触れておかれた方がいいと思います。過去二、三年の間に世の中が随分変わってきている途中ですし、高久先生なども随分苦労なさっていると思います。
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杉村座長 先生、どうぞ。
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高久委員 同じようなことで申しわけないのですが、厚生省で疫学的な手法を用いた研究のガイドラインを討論した時に、がん登録が問題になりました。拒否する地方自治体が出ている様ですね。個人情報保護ということで。理解不足も随分あるようですが、自治体からNOと言われると、できないということがありまして、今後の課題の中で、先ほど廣橋先生がおっしゃったように、社会に対する啓蒙ということを強調する必要があると思います。
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杉村座長 どうもありがとうございました。二村先生、何か。よろしいですか。
どうぞ、二村委員。
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二村委員 ちょっと社会的な問題が出たものですから、お願いしたいことがあります。この項目では社会学になることかもしれませんが、私は臨床なものですから、現場の話で言いますと、先ほどのがん治療の開発に関する臨床研究の多くは、特定機能病院で行われている可能性が高いんじゃないかというふうに思います。一方、最近の医療情勢を見ますと、どうも特定機能病院がターゲットになったような医療制度の改革が進もうとしておりますので、こういう研究をやってきたときの経済効果といいますか、あるいはどれぐらいの資金援助があって、こういう研究が成功してきたかとか、そういうレビューも、この社会学はどこかのところに入れておいていただきたいと思います。今後の研究のあり方のところでは、今後、医療制度が変わっていったときに、今までのようなやり方が成立するかどうかも検証しながらやっていかないといけないかもしれないなということが、ちょっと気になりまして、お願いしたいと思います。
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杉村座長 どうもありがとうございました。僕は先生と意見がいつも一致しているつもりになっているんだけど、エビデンス・ベースト・メディスンとか、ランダマイズ・クリニカル・トライアルとか、調子はいんだけれども、本当にいいのかどうかということに、若干懐疑的な人がいた方が良いと僕は思っているんですよ。
それはそれとしまして、特に先生みたいに一例一例、膵臓がんの本当に難しい手術を十何時間もやって、それでなかなか先生としてのベストを尽くす、それは先生の腕だからできることでしょう。それを簡単にほかの人とエビデンス・ベースト・メディスンだとか、ランダマイズとか一緒にされたら、心外ではないかと思うんだな。そうじゃないですか。
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二村委員 まあ、そういうこともちょっと……。
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杉村座長 そういうこともいろいろありますから、それは今後のところに。よろしいですか、先生。よく承って、そういう観点も入れておきましょう。
それでは、時間の関係もありますので、だんだんに今後の問題点というところに行かせていただきたいと思います。
その前に、これを読んで、すっかり菅野先生と僕とは感激してしまったんですよね。感激してしまったので、何だか我々は、ただこれを読むだけでは責務を果たしていないというふうに老骨は思ったのであります。それで、これの前言みたいな、元気が出るようなものを書こうと思って書き始めたんだけど、結局この資料のアブストラクトみたいな変なものができちゃったんだけども、一応それをお回ししておきますから、後から読んで、もうちょっとしっかり書けということだったら、そうおっしゃっていただければいいんじゃないかと。どうもまだ釈然たらざるものがあるんですよ。十分によく書けていないと思っておりますけれども、とにかく我々2人は怠けていたのではないという証明書だと思って、ちょっと読んでおいていただければありがたいと思いますけれど、よろしいですか、そんなことで。菅野先生、どうです。
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菅野委員 結構です。
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杉村座長 では、そういうことで、皆さん、力を合わせてやりましょう。それでは、今後の問題点というところで、資料2ですか、「今後推進すべきがん研究に関するキーワード(たたき台)」というのがございますね。これは、作業班報告書に基づいて、基本的条項よりということでございますので、現状をこれほど正確に把握された方はいないわけだから、廣橋、鶴尾両先生に、引き続き問題点をいろいろご意見も賜った上で、これから暑くなるからご苦労ですけれども、9月ぐらいに中間報告がまとまるような案配でやっていただきたいというふうに思うんです。
それで、そのときのたたき台というか、どういう問題点、例えば、今、坪井委員が言われたこととか、二村委員が言われたこととか、いろいろございますから、そういうことを踏まえながらということでございますけれども、当面、そういうためのキーワードを両先生におつくりいただきました。それのご説明をちょっとやっていただけますか。
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廣橋班長 今、お話がありましたように、座長から議論のためのたたき台として、何か用意できないかという御指示がありました。私たち、この報告書そのものでは、これまでの成果を中心に議論いたしまして、今後どうすべきかということは、まだまだ作業班の中では議論しておりません。ですので、これは十分練られたものではございません。本当にたたき台、参考までにということです。2人で作業班の報告書から抜き出したというよりは、報告書に基づいて考えたことをリストアップしてみたというようなところでございます。
1枚目には基本的事項として、最初の3つは、これからのがん研究は先端的な科学技術を導入して推進すべきである。それから、そういう基礎の成果を臨床に導入するトランスレーショナルリサーチが大事。またそういう重点研究を進めるのは大事だけれども、広く基盤研究を拡充することも大事だということを言っております。又、そういった研究の成果を予防・診療技術の確立につなげ、全国へ普及するということがやはりがん対策としては大事であり、同時に人材育成等々の支援事業を充実しなければならない。あるいはバイオリソース、データベース等の基盤が整備されねばならない。そして、国民へのがんに関する正しい知識・情報の提供、あるいは理解を深めさせることが大事である。こういった研究を実現するためには、やはり産学連携、両省の連携、総合科学技術会議による支援などが必要ということを1枚目にはまとめました。
2枚目以降は、各領域でどんな研究が重要か拾ったところです。 の「がん化とがん特性の生物学的基盤」では、がん化の本態解明に向けた基盤研究が必要で、2以降には、その具体的な項目について掲げてございます。がん特性についても同じで、がんの複雑な病態を理解するための基盤研究が必要で、転移能とか免疫とかといったことが大事だろうと書いてあります。
次の 番「発がんの要因とがん予防」のところには、発がんの外的要因と、その発がん機構、発がんリスクに関する研究が必要である。2、3、4には、外的要因の代表となるウイルス等々が書いてあり、それによる発がんの機構を掲げてあります。逆に、内的要因として、発がんの感受性を規定する遺伝子の研究も重要だろうと考えられます。
がん予防では、そういった外的、内的要因を標的とした新規がん予防法の開発が必要であるし、化学予防剤を同定して、それを臨床応用へとトランスレーションすることがが大事だと思います。4には、遺伝性腫瘍患者及びその血縁者の発がん予防研究が大事であることも掲げています。そして、こういった一次予防の取り組み、その有効性に関する評価解析研究が必要になるとしております。情報の提供についても書いています。
次に 「がん診断」にまいります。発がんのリスクから早期がん、そしてがんの個性、そして抗がん剤による副作用までといったものについての診断法の開発が必要であると考えられますし、診断用の機器はさらに開発し精度を上げ、また、同時に自動診断法を導入していくことによって有効性が高まるのではないかと思います。また、検診技術も非常に重要で、研究を進めると同時に、その有効性をきちんと評価することが大事だろうと書かれています。
番目の「がん治療」にまいります。まず、最初の方では外科を中心とした治療で機能温存手術、低侵襲で正確な手術が重要で、その開発が必要であり、一方では、難治がんに対する、新しい集学的な治療の開発が必要ですし、そういった完成された外科手技の普及も大事だと考えられます。
今度は分子標的薬剤の開発、あるいはそういったものと化学療法、放射線療法も含めて、きちんと臨床試験で評価するための体制の整備が必要です。臨床医の育成も必要だし、そういうことを受けていただく国民の意識改革も必要かと思います。それから、特にトランスレーショナルリサーチで最初に行われると思われるワクチン療法、細胞免疫療法など、免疫療法や遺伝子療法というものの開発と臨床の導入が必要であると考えております。早期がんの適時治療法の開発というのも非常に大事ではないかと考えられます。実際に患者さんは非常にふえてまいりますので、診療ネットワークをどうつくっていくかということも大事な視点かと思います。
次に 、「がん疫学/公衆衛生」では、がんを環境要因と宿主要因の交互作用という面から解明する必要があり、それを具体的に実施するためには、ゲノム情報を取り入れた疫学研究、特に大規模コーホート研究をもう一度立ち上げる必要があるという見解があります。高精度の地域がん登録システムがどうしても必要であり、また国際共同疫学研究等々も必要で、こういったものを実現するための基盤の強化が必要だと書いています。
最後に「がん情報/社会学」の分野では、今度は院内がん登録も必要であり、先ほどお示ししましたような画像を含め、専門家向けのいろんな情報の提供が必要であり、国民への情報提供も必要である。
最後に、今、そういう治療を受けて生存していらっしゃる患者さんが短期、長期合わせて250万人ぐらいですか、いらっしゃいます。そういった患者さんに対する支援も大事ではないだろうかということを今回加えさせていただきました。
これは、決して、全体を網羅しているとか、重みを考えて選んだものではございませんので、そのように御理解の上ご参考にしていただければと思います。
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杉村座長 どうもありがとうございました。鶴尾先生、何か補足されることは。
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鶴尾副班長 結構でございます。
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杉村座長 それでは、今ご説明のありました資料2について、ご意見を自由に賜るというふうにいたしたいと思います。いいですか。どうぞ。
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菅野座長代理 いずれも大変結構だと思っております。ちょっとマイナーな点ですけれども、正しい知識というのが2カ所出てくるんです。正しいというのは、正しくなかった知識を今まで何とかしたと思われても困りますので、適切なとか何とか、そういったようなことがいいのかなという感じがいたしましたので、ちょっとご検討いただければと思います。
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杉村座長 どうぞ、寺田委員。
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寺田委員 この資料2の最初のところ、全体も大変よくできているんですが、今読みますと、ちょっと気がついたのは、国際的な立場というのがちょっと少ないかなと思います。日本の中の、例えばがんの事情、世界のがんの傾向、それは疫学とかいうところで出てきますけれども、それプラス、日本の研究、世界の研究ということをやはりどこかに将来も含めていれる。それから途上国でこれからがんが随分と増えることというような事情とか、そこへ日本のがんの研究はどういうふうな貢献を国際的にできるのかという観点がちょっと入った方がいいんじゃないかなと思うのが一つです。
もう一つは、いろいろ議論があるところだと思いますけれども、先ほども話が出ましたけれども、国民といいますか患者さんも一緒にこれからがん研究をやらないと、特にトランスレーショナルリサーチというのは、そういう立場がどうしても必要だと思います。要するにがんという病気に対するステイクホルダーは患者さんですし、研究者であるし、医者であるし、パブリックの国でもあるしという、そういう立場を書くのがよいと思います。一言どこへ書いたらいいのかわかりませんけれど、最終的にまとめていかれるときには、そういう立場がこれからますます大事になってくると思いますので、先ほどの個人情報保護法とかいうことも含めましてまとめるのが良いと思います。
3番目に、雑な言い方ですけれども、やはりがん研究がいよいよ人に役に立つということになってきますと、どうしても医療制度との関係がありますから、そういうのはアメリカではこういうことで、こうやっているけれど、日本の中ではこういうふうに、できれば、難しいですけれど、それ自体が研究だと思いますけれども、そういうところの立場を書ければうれしいなというような感じがしています。多分、ヨーロッパの方が、ある程度参考になるところもあるかもわかりません。以上です。
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杉村座長 何かお答えがありますか。きょうはこれをつくられただけだから、皆さんにはリクエストだけしておいて、お答えは求めなくてもよいでしょう。
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寺田委員 雑とした話ですから。ぜんぜん要求しません。できないと思います。大変難しいと思います。
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杉村座長 だけど、それは大切ですけれどね。どうぞ、先生。
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坪井委員 この資料の2ページ目のところにヘリカルCTの肺がん検診のことがありますね。その左側の表は、この 、 、 、 はTNM分類ですか。現在のTNM分類。
少し過激なことを申し上げますけれども、私は今のTNM分類を使って、治癒率を出しても、治せる肺がんというのは恐らくこの78%が限度だと思います。国立がんセンターには、100%近いデータがあるはずです。TNM分類に則さないで、これは絶対早い。いわゆる微小肺がんという表現をしていたかと思いますが、10年サバイバルで90%以上、これは国立がんセンターだけではなくて、東京医科大学の肺がんグループにもあるんです。それをどういう表現をしているか。
ですから、この治った のこの青が多くあるところ、これをもう一遍TNMにこだわらないで分類してみて、本当に治せる肺がんというのは、ここだというのを出していただくと、かなりよくなってくる。
私は昔から外科のお医者さんたちが言っている早い肺がんというのは絶対に治らない、特に女性の肺がん後の腺がんはというふうなことで悪口を言ったことがあるんです。それは、やはりずっと積み重ねていって研究発表したりするとき、どうしてもTNM分類に完全に拘束されてしまうんです。だから、ここから先が過激なんですが、先哲のやったことを信用しないで、もう一遍やり直したらいいんじゃないかと思うのです。
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廣橋班長 ありがとうございます。今、多分先生がおっしゃっているのは、ヘリカルCTなどで非常に淡くうつる病変でして、気管支、肺胞に沿ってがん細胞がふえている段階の、いわゆる上皮内がんに相当するようながんのことと思います。そういうがんが、このヘリカルCTで見つかるものの中に確かに入っている。そういうものを分類することはできます。ただ、そういうがんを見つけることによって、肺がんの死亡を減らせるかという問題から考えますと、まだ今後の課題です。ひょっとすると、そういうのは割とゆっくり育つという面もありますので、そういう評価も含めて、これからも考えたいと思います。
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坪井委員 ただ、TNM分類だと、今、先生がおっしゃったような進展の仕方まで表現はしていませんから、結局は同じ大きさでも、病巣の萎縮があって、縮んでしまっているものもこの中に入ってしまいますから、この22%のリスクは、そういうものを相手にして損をしていることになります。もしそういうのを取り除ければ、恐らくもっとこれは……。
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廣橋班長 おっしゃるとおりで、上皮内がんにとどまっているがんは100%生存するぐらいの治療成績でございます。
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坪井委員 現実には恐らくそうなると思います。ですから、それはこれからの肺がん検診の中でのトップレベルのデータとして、絶対に出しておくべきだろう。ただ、トップレベルの検診を日本全体でやるときにはどうしたらいいのかということは、また全然別の話です。
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高久委員 よろしいでしょうか。1ページ目に「国民へのがんに対する」の所で、正しい最新情報の提供ということは非常に重要だと思います。そのことに関して、がんの予防について、適切な知識の提供と啓蒙となっていますが、治療についても同じ事が必要だと思います。新聞や週刊誌に、アガリクスなどの広告がやたらにある。物すごくむだなお金だと個人的に思っています。ですから、適切な知識と最新情報の提供は、がん医療すべての面で必要だと思います。
それからもう一つ、先ほど座長の杉村先生がおっしゃいましたが、女性の肺がんがふえているということに関係して、女性はタバコの中の発がん物質に対する感受性が高いという事が話題になりました。そういう性による相違という事も、将来重要なテーマになるのではないかと思います。
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杉村座長 どうもありがとうございました。今、大変重要なことをおっしゃったんだけど、例えばアガリクスとか、プロポリスとかいうのに対して、がんの研究者は一言も発言をしたことはないのみならず、去年のがん学会では、アガリクスの発表を寺田会長はお許しになったということもあるやに聞いておりますけれども。
例えば、週刊誌を読んだって、新聞を読んだって、効果があると書いた本の広告なんだね。そういう本を広告しているんだ。ところが、その本の内容の目次は、アガリクスがいかによく効くかということだから、その本の広告イコール、アガリクスが効くという広告になっているんだけれども違法ではない。現状は本当はおかしいのであって、我々研究者が、しっかりとちゃんとするべきものではないかと僕は思うんだけれど。
だけど、難しい面が二つあるんです。一つは本当にあと何も加療をすることができないというケースの場合に、何か頼るものがあった方がいいというサイコロジーがあるんです、ターミナルなケースの場合に。そういう人が、そういうものにすがるというようなのを否定するという権利が我々にあるのかどうかという問題が一つはある。
それからもう一つは、これはマイナスの面なんですけれど、僕の先生の中原和郎先生は、以前、牛山ワクチンというのがあったんです。そのときに、ちゃんとそれが効かないということを言うべきであるというのが吉田富三先生だったんだね。先生はきちんとやって「効かない」と言うべきであると言われた。中原先生は「そんなのさわるな」と。一匹の虫を八つ裂きにすれば、八匹の虫になることがあると言うんだ。
僕は中原先生の方に従っていて、おまけに「君子は盗賊と干戈を交えず」とかまで言われてしまって、ほうっておけと言うんだよ。自然に国民の英知あるいは研究者の良識というものが高くなれば、自然に消えるべきものであって、そういうものがあるということ自体が我々の努力、それに対する努力ではなくて、ほかにいい科学を探すという努力や成果が足りないからそういうふうになるのであって、自分を責めていた方がいいとおっしゃっていましたけれど。そういう問題がありますよ、高久先生、確かに。どうも失礼しました。
先生、何か。
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二村委員 先ほどから出ています、国民への知識の提供とか、臨床試験の問題、それからトランスレーショナルリサーチのことを考えていきますと、最終段階はやはり患者さんが絡んでくるわけなんです。そうしたときに、現在の臨床試験の方法ですと、なかなか患者さんを支援するところまでは十分行っていないんじゃないかなというふうに思います。欧米なんかで行われておりますように、参加していただく患者さんには、やはりそれ相応の経済的なバックアップをするとか、その辺をもうちょっと進められると臨床試験が進むのではないかなという気がいたします。患者支援の方法論、どこか社会学のところに入ってくるのかなというふうにも思いますが、それもちょっとお願いしたいなと思います。
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杉村座長 どうもありがとうございました。C型肝炎の場合なんか、まさにそれに関係していますよね。肝硬変から移っていく場合とか。
それから先生、全然別なんだけどいいですか。例えば今、細胞核移植とか、胚細胞由来の幹細胞とかいろいろ言いますけれども、あれの一番最初はリュッケの腎臓のがんですよね。がん細胞の核をとって、それをとっておいて、普通の受精卵の核を抜いたものに入れたら、それはがんになるとみんな思ったら、おたまじゃくしまでなったんだよ。あれは1969年ですから今から35年ぐらい前、ドリーの羊よりも何よりも、一番前の核の入れかえの実験はがん研究者が最初にやったんだよ。
キーワードには再生医学関係の言葉がないでしょう。それはどこかへ入れておくといいと思いますね。例えば、ある切除をした後も、そこをちゃんと機能を恢復させるための再生医学も必要でしょうし、場合によっては、そういう再生医学が遺伝子治療ではない細胞治療という面でも役に立つでしょうから、入れておいた方がいいような気がするんだけれど。
それから、ここに書いてあるけれども、エピジェネティックな変化というのは、非常に重要ではないですかね。それから、ストローマ、がん細胞というと、がん細胞だけが悪いと。悪いことは間違いないんだけれど、ある時期は、少なくともがん細胞のまわりの基質の状況が非常にクリティカルであって、場合によってはがんの性質が可逆的であるというようなことがありますよね。
それから、たしかグリベックだったか、がん細胞が抵抗性になっているという実体が、α1酸性糖蛋白質が宿主の中でふえるからそうなる。つまりがん細胞の抵抗性というのは、がん細胞の抵抗性ではなくてホスト由来の抵抗性というのがあるんです。だから、治療の場合の薬の抵抗性というときに、ホストの抵抗性などの問題もいろいろあるんじゃないかと思うんです。
それから、もう一つ、例えば難中の難のがんの膵臓がんみたいなものは、本当は別個に掘り出して、膵臓がんというものに対する大連合艦隊を組織して、診断から、原因論から、予防から、それから二村先生のような手術から、あるいは化学療法とか、腫瘍マーカーから、そういう特別師団をつくる必要があるんじゃないか。それは効果がきっとあるんじゃないかと思いますけれども、そういう最強のがんに対する最強のチームですよ。世界にそういう考え方がないようだから、日本ではやるというふうな方がいいと思う。アメリカでは、アメリカではというよりは。何かそういうのも考えてください、どうか。
どうぞ。
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北島委員 先ほど各論をお話しして、ああいう細かいところも今後の21世紀の治療法として、あるいは診断法としてお願いしたいということです。それから、がんの診断の成果など情報の共有という意味で、いわゆるテレメントール、テレアンドスコープとかテレパソロジーとかいうものも、やはり必要ではないかなと思います。
それから、治療の面で完成された外科手技の全国普及とキーワードにあるんですが、これもやはり外科手術指導ということで、テレサージェリーということが21世紀の一つのキーワードに入ってくると思います。それから、このがん研究に本当に関係していいのかどうかわかりませんが、がん研究、すなわち、がん治療のワクチン療法、あるいは細胞免疫療法の開発と臨床への導入、いわゆるトランスレーショナルリサーチのときに、知的資産の問題が発生してまいりますが、これは、国家プロジェクトにやるべきなのか、あるいはその施設単独でやればいいのかなということが一つ大きな問題になります。
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杉村座長 先生、最後のところは何……。
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北島委員 知的資産。
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杉村座長 わかりました。それは当然、先生、入れておくべき問題ですね、将来の。何かお答えはありますか。
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廣橋班長 それは重く受けとめたいと思います。産学連携は非常に重要で、これが実現しない限り本当の成果にはつながらないわけですけれど、その中には知的財産権をきちんとするということがなければ進まないということもあります。
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杉村座長 どうぞ、佐々木先生。
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佐々木委員 3点ほど申し上げたいと思います。一つはがんの集学的治療というのはよく言われ、また実践されているとは思うのですけれども、日常の診療の場で、一つの病院のがんの専門家が全力をあげて協力して1人の患者さんに対応しているかというと、そういうことを本当にやっているところは、きわめて少ないのではないかと思います。そういう意味で、がんのデータベースとか、あるいは院内登録ということと関連はあると思うのですけれども、そういう組織をつくってがん診療を病院を挙げて行う、あるいは、特殊な腫瘍例の場合には、むしろ広く院外の専門家も含めて治療をしていくという体制づくりが非常に大事だと思います。それが必ずしも直接がん研究に結びつかないかもしれませんけれども、そういう中で、エビデンスが出てくるとすれば、がん研究の推進にも関連してくると思います。
それと関連して、これも研究そのものではないのですが、やはりそういう意味でのクリニカルオンコロジストをどうやって育てていくかというのは、まだまだ我が国では課題なのではないかと思います。
第2点は、既に座長のお話の中にもありましたけれども、進行がんがなくなるわけではありませんので、進行がんの患者さんに、どういうふうに適切に対応するのかというのは非常に重要な課題であろうと思います。がん患者、家族支援のための方法論の確立と整備という中に入るのかもしれませんけれども、これも十分に忘れてはならない課題だと考えます。
第3点は、既に高久先生がご指摘になりましたジェンダー・スペシフィック・メディスンというのは、今後、恐らく非常に重要になってくるのではないかと思います。循環器の分野では大変に関心が持たれておりますし、私の知る範囲では、例えば原爆被災者の中のがんの発生リスクに、ある種のがんでは男女差が非常に大きいものがあったりいたしますので、恐らくがんの領域でも、病態の性差は今後大きな課題になるのではないかと思います。以上です。
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杉村座長 どうもありがとうございました。いろんな人が反省しなければいけないということはあると思うんだけど、先生のところはそんなことはないだろうけれど、ただいま、国立がんセンターは少々難しいところにあるんです、この二、三日。それは何かというと、糖尿病の専門家が1人もいなくなってしまったんだよ。ところが、がん患者さんの中に糖尿病を持っている人がたくさんいるわけね。それで、手術をする前に糖尿のコントロールをきちっとやって、それから手術をやるんですよ。だけど、今、4月の時期だから、人が入れかわるから、またちゃんとなるとは思いますけれど、きょう、この瞬間とかあしたぐらいは、入院すると糖尿病がよくわかる人がいないんだよ。だから、がんの専門家はいろいろいても、人間は全体としてほかの病気にもいろいろかかっているのだから、がんの病院だからというので、ほかの病気を粗雑にしてはいけない。我々は自戒しなければいけないね。どうも余計なことを言いました。
どうぞ、先生。
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藤野委員 先ほど寺田先生が言われましたけれど、この報告書の現状についてですけれど、これも、もうちょっと国際的な観点から、例えば、脚注でいいから、この問題はアメリカ、ヨーロッパではこうなっているというようなことがないと、結局、研究費に使ってやった仕事だけを書いているような感じを受けるわけですね。それがやはり国際的な視野はどうなのかというのは、ちょっと観点が抜けているような気がするんです。
今後のということになると、その辺が非常に大事になってくるのではないかなと。結局、国内で今まで20年間に投下された研究費に対する成果をさらにという以上に、もっと世界の現状の成果をどううまく取り組んで、それでさらに成果を上げていくかということの方が大事なような気がするんですけれど、その辺がちょっと抜けているような気がするんですね。
それともう一つ、制がん剤という観点からいったら、このごろ例えば先ほどちょっとお話が出たグリベックというのは、一つの非常に大きなインパクトを与えたわけですね。今まで我々は、創薬という観点からいくと、遺伝子の問題で起こるがんというのは、少なくとも3つぐらいの遺伝子に変化があって、それが発がん遺伝子であったり、あるいは抑制遺伝子であったりということで、3つぐらいが多分、関係するだろう。そうすると、1つぐらいを補正したところで、どうにもならないんじゃないかという、非常に悲観的だったんです。
ところが、グリベックのデータを見ていると、非常にそのうちの1つだけきちっと抑えれば、完全にがんを抑制できるというようなことが、大分はっきりしてきているわけです。実際に我々のところで現在やっているやつでも、確かに完治するのがあるわけです、動物実験では。だから、そういうことを考えますと、やはりそろそろ、かなり薬自体も変わってくる。ターゲティングがきちっとして、きちっと治療効果のあるものが出てくるというのは間違いないと思うので、この次の10年か5年か知りませんけれど、そういう研究費というのは、その辺にもフォーカスをきちっと当ててほしいなという感じがしてならないんです。
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杉村座長 多分これは、第1期の対がん10カ年、第2期の対がん10カ年の成果としてまとめるようにというのが前回の、私は欠席したからわからないんだけど、そういうのを要求されたんじゃないですか。だから、要求されたことに対して答えているということですから、今のようなことは、さらにこれを完成するときに新しくまた加えていただければいいんじゃないかと思います。
グリベックにしても、グリベックが日本じゅう受け入れられているけれど、あれは1992年に既に最初の報告が出ているんです、10年前に。それで、多数の化合物の中から出ているんです。グリベックはSTIの571ですね、STIというのは、シグナル・トランスダクション・インヒビターなんです、インスティテュートではないんです。それで、ドラッカーだったかがこの間来日して講演をしました。グリベックで副作用がないかと思っていると、浮腫が来るんですよね、首の辺へずっと。それからやはりニュートロペニーがあるんですよ。結局、標的は1つだと思っているけれど、生体の方はどっこい、標的に似たものがまだたくさんあるんですよね。だから先生、多分グリベックのような薬をたくさんの種類持つ必要があるんだと思いますね。ですから、これからますますそういうものをやっていかなければいけないという点で……。
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藤野委員 一連のチロシンカイネースみたいなものを、ずっと並べてどんどんやっていくというようなことが、これからは必要になってくるんだろうと思うんです。だから、その辺のことを、もうちょっときちっとした方がいいかなと、薬という観点からはですよ。
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杉村座長 そうですね。ですから、グリベックを発見するに至るまでに、地道な基礎研究がずっと数年あって、それから今度はランダマイズ・クリニカル・トライアルが何年もあって、出てきて、そこだけ見て、ウハウハと「なぜ日本はやらなかったか」とか何とか言っても、それはまずいんだな、専門家は違いますよ、この会議のメンバーのような方は違うけれど、やはり。基礎的な研究を充実していかなければ、ああいうものに到達しないという例として学んだ方がいいんじゃないかと僕は思うんです。
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高久委員 よろしいでしょうか。緩和療法のところに書いていますが、がん治療の中でQOLの向上が機能温存手術法だけになっていますが、精神的なサポートとか、そういう事も書かれた方が良いと思います。それから、化学療法、放射線療法、それから今話題になっている分子標的薬剤、ワクチン、細胞免疫療法、遺伝子治療とありますが、アンタイアンジオジェネシス療法は余り問題にならないのですね。今後は方向性の中で、それとも今後余り進まないと考えてよろしいんですか。
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鶴尾副班長 日本で過去に文科省にも抗アンジオジェネシス療法というのはございます。きちっとした成果がございます。ですから薬の候補も出ています。それから国際的にも薬が幾つか出ていますけれども、残念ながらこの領域の薬は今のところ全部失敗しているんです。その理由はわかりません。恐らく臨床でのトライアルの方法論がまだ成熟していないのが理由と思います。でも、次の組織をつくるときには、やはりそれは重要なおもしろい領域だと思っています。
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杉村座長 あれは、アンジオジェネシスだけじゃなくて、ストロマジェネシスとアンチストロマジェネシスとアンチリンフォアンジオジェネシスがなければだめなんですよ。それが、フォークマン博士のうまい話にみんな簡単に傾倒してしまった。批判精神を盛んにしましょう。
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鶴尾副班長 恐らくは広くは分子標的治療薬というところに入っているんですね。
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杉村座長 そう思いますね。菅野先生、いいですか。
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菅野座長代理 1つだけ。菅野でございます。やはり私はトランスレーショナルリサーチというのは非常に重要だと思うんですね。これは、金もかかるし時間もかかるし、先ほど藤野先生がおっしゃられたように大変なんだと思いますけれども、それをやらないといけないと思うんです。そうするためには、すぐれた研究者はもちろん必要ですけれども、組織をつくるということが非常に重要だと思うんです。システム化というのが、これからの大きな研究の流れの一つではないかと思うんです。
産官学連携というのが8番にありますが、そのとおりでありまして、結局この8番がうまく機能しないと、トランスレーショナルリサーチはうまくいかないのではないかと思うんです。産官学というのは、結構昔から言われておりまして、言い古されてはおりますけれども、実際はなかなか難しいことだと思うんです。やはり非常に成熟したお互いの関係というのが重要なのではないかというようなことでありまして、ですから、がんの研究が中心になって、この産官学が非常にうまく、殊に生物医学の分野でのトランスレーショナルリサーチと産官学がうまく進むというようなことになっていただきたいと思っております。
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杉村座長 どうもありがとうございました。菅野先生のおっしゃるのはまことにもっともですね。産官学協力の大切なところは、産官学のそれぞれに立派な人がいることなんだよ。時々おかしな人が産官学に出てくると、どうもおかしくなるんだ。だから、人を育てるということが、全部に一番大切です。がんとの戦のために自分を捧げる、自分の生涯を。そして、がんの患者さんのために役に立とうと思うような人が育ってくることが、共通に大切です。当然。先生、どうそ。
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寺田委員 同じようなことですが、トランスレーショナルリサーチの場合は、やはり表へ出てくるのは多くの場合トランスレーショナルリサーチという意味では企業だと思います。やはり企業といい関係を持ってやる、それから患者さんと、この2つ大きなファクターがあると思います。治験の場合、企業主導の治験をきちっと出来るためには、医師、研究者主導の治験をきちっと出来る人が大切です。JACOGみたいに国でサポートされて、治験をきちっとできる人の集団が必要です。それがないと、幾らいろんな人が集まっても、いろんな薬が来てやるだけの話になってしまって、アメリカなどのスタンダードからいってなっていないと言われることになります。少なくともそういう人たちを育てること、ここの議論からは外れますけれど、制度の問題としてそこのインフラは非常に大事になってくると思います。そういうことがちゃんとできるメディカルオンコロジストがいるとか、統計学者がいるとか、そういうインフラストラクチャーを今まで割合考えて来なかったので、育てていくということが大事です。ぽっと経験のない研究者が集まってできるものではなかなかないと、本当に思っております。
それから、そういうときに、制度のことになりますけれど、トランスレーショナルリサーチ、あるいは患者さんと国民に本当に役に立つこととなりますと、これは予防で健康食品も含めましてですけれども大切になります。やはり保険との関係とかも重要で、臨床研究は多くの場合、混合診療をやることになりますから、その場合は今は割合目をつむってくださっていますけれども、世の中が厳しくなると、そういうことも考えてやらなくてはいけないような時代になるのではないかと考えます。トランスレーショナルリサーチの話が出ましたので、大変大事だと思ったので、ちょっと外れたことも言いました。
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杉村座長 どうもありがとうございました。
では、先生、どうぞ。社会との接点の。
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坪井委員 先ほど佐々木先生がお話された一番最初のポイントで、だれがこういうリサーチの成果を国民にインフォームしてどういう実績を上げるのかというところが、今のトランスレーショナルリサーチとしていますけれども、そこで途切れてしまっている。そこから先のは研究ではなくて、地域医療の中の実業というものになってしまうから書いていないと思いますけれども、もう少し触れておいた方が成績が上がるのではないかと思います。
ですから、これは我々の仕事ですから、そんなに高級な研究ではございませんけれども、労力と金が要ることはたしかですね。ですから、そういう実働部隊みたいなものに対するトランスレーショナルなリサーチよりワークですか、そういうものをやはり体系化していくというのが必要だし、それは当然、我々がやろうとは思っておりますけれども、先ほど、援護射撃がないと言ったのはそのことなんで、そういう点での体系化が必要であるというふうに思います。
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杉村座長 それはポスト・トランスレーショナル・モディフィケーションですね。タンパクもトランスレーションが終わってから修飾されますよ。また。それでポスト・トランスレーショナルな議論を、例えば日本医師会雑誌なんかに何ページかスペースをとって下さればいいんです。それで、我々は、それに原稿料なんかもらわないで、やるというつもり、心意気でやるから、先生もそうしてよ。そういうふうにしましょう。
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鶴尾副班長 私ども、がん研究のホームページを持っています。その辺は例えば自治体、医師会のホームページとリンクするとかで、アクセスは結構あるのではないでしょうか。リンクをうまくとらえていければ情報というのはかなり伝えられるとは思います。
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坪井委員 そのとおりで、そういうことをどんどんメディアを使ったりしてやることも必要です。それから、先ほどおっしゃった一番最後のポイント、今私が言ったのは、お互いに生きている人間が話をしているときに、例えば「しょっぱいものはあまり食べ過ぎない方がいいんだよ」とか、「たばこを吸い過ぎない方がいいんだよ」と先生が直接話した方が、100冊のパンフレットよりもすごく影響があるのです。その先生がたばこを吸っていれば説得力がないですけれど。おっしゃったとおり、それはやはり我々の組織のやることです。リサーチワークではないかもしれませんけれども、そういうことの示唆ぐらいは入れていただくと励みになりますね。
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杉村座長 つまり、世界の医師会も一緒であり、産官学も一緒であり、これから新しいことをつくろうと。だから、まず一番に日本がよくなろうというふうにしようと思う。
それでは、ちょっと時間がなくなってしまったので申しわけない、司会が下手で。パンフレットの作成について、ちょっと時間が残ったので、それをやらせていただきたいと思うんですけれども、お手元の資料の3です。これは現在行われているがん克服新10カ年戦略が開始されたときのものなんです。こういうものをつくるというのではなく、これは過去のものなんです。作業班の先生方には、今後のがん研究の方向などに加えて、これまでの研究成果とか、がん研究の新しい方向のために、大変申しわけないですけれども、私どもが相談に乗りますよ、坪井先生も。パンフレットの案をいろいろご検討いただきたいと思うんです。
パンフレットをつくることに関して、大分うまくなったんだけど、外国のパンフレットの方が何となく洗練されているね、どういうわけだか知らないけれど。あれは何だろうね。字かな、漢字というものがだめなのかな、それだったら、これは永遠にだめだよね。だけども、そうではなくて何となく訴え方が非常に単純化しているのかな。いろいろご意見をいただきたいと思いますので、何かおっしゃってください、パンフレットに関して。先生どう。
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二村委員 先生いいですか。項目として今見ていてどうかなと思ったのは、臨床試験のことを国民に情報をもっと提供した方がいいような気がします。臨床試験はこうやってやるんですよとか。そうすると、参加していただく方がもっともっとふえるんじゃないかなと。ちょっとそこが今ここにないかなと。
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杉村座長 これに関してですか。
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二村委員 ええ、ここのどこか1ページに。
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杉村座長 つまり、先生のおっしゃるのは、このパンフレットという意味は、今度の第3次の克服を立て上げるためのパンフレットということでしょう。だから、そのときにも、今のようなことを入れておいてはどうかというご意見でしょう。
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二村委員 はい。参加していただく方をふやさないといけない。
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杉村座長 そういうパンフレットをつくれというんじゃないんですね。だから、どこかのところにそういうことが書いてあると、国民の皆様がわかりやすいということをおっしゃっている。それはどういうふうにするかは、また考えましょう。
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鶴尾副班長 これは、パンフレットの案ではなくて、過去の例です。
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杉村座長 そうです。
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二村委員 ええ。ですから今度のやつには。
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杉村座長 現在のものにないと言われても、困られると思います。ちょっと話が違います。
どうぞ、何かおっしゃってください。パンフレットって、簡単にできそうでなかなか難しいものですよ。厚労省、文科省の方はご意見ございますか。もうちょっと国会議員さんなどに説明するときには、もう少し簡単にせよとか。大体、字を大きくせよとか言われたな、この間僕はだれかに。みんな眼鏡を外して読むようだったらだめだと、パンフレットは。そのまま誰にでも読めるようでなければというようなお話。遠藤局長どうぞ。
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遠藤研究振興局長 できるだけ私どもも努力いたしまして、わかりやすい資料をつくりたいと思います。最近はやはり役所の説明資料もわかりづらいというので、絵とか何かを採用いたしまして、文字はできるだけ少なくしてやりましょうと。それに説明を加えれば非常によくわかるというふうなのをつくるようになってきていますので、昔から比べると多少進歩はしているかというところもありますので、努力したいと思います。
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杉村座長 どうもありがとうございます。ほかに。
では、それはまたいずれ、ご意見、お気づきのことがありましたら、廣橋、鶴尾両先生、あるいは文科省、厚労省あるいは私どもにお話しくださればお伝えいたします。
ここで最後に5時までということになっておりますので、ちょっとご相談したいんですけれども、作業班は非常に大変な事業を今後ともしていただくことになるんですけれども、委員の中から少し相談役というか、密接にご相談に乗るような方をお願いしたらどうかと、菅野先生ともご相談をしたんですけれども、幹事というような感じで、豊島先生と寺田先生にそれをお願いしたらどうかと。豊島先生は本日ご欠席でありますけれども、ご承諾をいただいておりますけれども、寺田先生にはまだお話していないんだけれど、ご承知していただけますか。
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寺田委員 やらせていただきます。どうもありがとうございます。
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杉村座長 ではそういうことでやらせていただきます。それから、いろいろきょうご意見をいただいたことによって、この報告書が変わったりいたしますけれども、それの報告に関しましては、菅野先生と私と廣橋、鶴尾両先生とご相談してつくるということで、もちろん文科省、厚労省との連絡を密にとりながらやりますけれども、それでよろしゅうございますか。お任せいただけますか。
どうもありがとうございました。
なお井村先生が、きょうは総合科学技術会議の本会議が急にあるようになったということでご欠席でありますけれども、朝お電話でお話をしました。総合科学技術会議としても、国民のためにがんはしっかりやってほしいという個人的見解を持っているということをおっしゃっておられました。
それでは、これで5時をちょっと過ぎましたので、おしまいにしようかと思いますけれども、特にご発言はございませんでしょうか。第3回目の会議につきましては、作業班の検討状況を踏まえた上で、改めて日程をご調整いただけますか。
何かおしまいに当たり、遠藤局長あるいは下田局長、審議官の方、ご意見はございませんか。何かおっしゃること、おまえたちもっと、しっかりやれというお励ましの言葉でも結構ですけれども、ございましたらどうぞ。
よろしゅうございますか。
それでは、皆さんで力を合わせてしっかりやるということで、お許しは得たことにして、本日の第2回目の会議を閉会にいたしたいと思います。
ご傍聴の方々は、ちょっと方向が悪くてスライドが見えにくいとかいうこともあったかもしれませんけれども、どうもご熱心なご傍聴、感謝申し上げます。 それでは、これで第2回の会合を閉会といたします。 |