政策評価に関する有識者会議(第58回) 議事要旨

1.日時

令和5年2月24日(金曜日)

2.場所

Web開催(Webex)

3.議題

  1. 今後の政策評価の在り方について
  2. 文部科学省政策評価基本計画(案)等について
  3. その他

4.有識者委員からの主な御意見

1. 今後の政策評価の在り方について

○文部科学省より資料1に基づき、政策評価制度の見直しについて説明を行ったのち、欠席の貞廣委員・高木委員からのコメントを紹介した。その後、質疑応答がなされた。委員からの主な意見は以下のとおり。

(林委員)
・これまでのやり方は形式化してしまっており、その簡素さゆえに何に使えるのか分からないある種の徒労感を感じる部分もあったのではないか。
・科学技術の分野の評価においては、分野別の研究開発プログラム評価を用いることで、単に指標をトレースするだけでなく、各分野の研究力や戦略的に進めるべき研究の進捗など、中身に入り込んだ評価ができるようになり、望ましいのではないか。また、文科省で行っている事業の効果をしっかり評価した上で、内閣府で行っている科学技術・イノベーション基本計画のフォローアップと連動させる仕組みづくりが非常に重要である。
 
(湯浅委員)
・これまで、行政事業レビュー・政策評価・各種基本計画での評価が別々に行われていたために、大きな政策立案とのつながりが見えにくかった。また、その評価が適切に活用される仕組みがあまりなく、事業を途中で検証や改善することが難しかったと思う。今後は、行政の仕事の中で、トライ・アンド・エラーを可能とする仕組みづくりが大切である。
・初期アウトカムから長期アウトカムに至るロジック・因果関係をきちんと作り、また、それを検証できる指標を作ることが重要。そのためには、文部科学省職員が、新しい政策評価の在り方やアウトカム・指標の設定について共通の理解をしていることが大事である。今後、どのように共通の理解の醸成を行っていくのか。
 
(金藤委員)
・刻々と変化する様々な状況に対応して、目標設定を含めて、調整、修正を重ねながら評価を実施していくという新たな評価に大いに期待したい。
・事業・施策・政策のつながりを見える化することや、EBPMのノウハウを立案のプロセス等に生かすことは大変意味がある。ぜひ実効性のある評価を行っていただきたい。
・今後、子ども家庭庁が創設されることもあり、他省庁と連携・協働の事業展開がさらに増えると考えられるので、こうした事業の評価についても、連携・協働する方法を十分に検討いただきたい。

(南島委員)
・文部科学省の政策の大きな特性として、政策実施の部分が多く、またその実施に当たっては教育委員会・学校や研究開発法人・国立大学法人・独立行政法人など多くの実施機関と連携する必要がある。このため、小刻みに政策の見直しを試行する「アジャイル型政策形成・評価」の一方で、各種基本計画期間中の安定性なども重視する必要がある。こうした文部科学省の政策特性に鑑み、政策評価の在り方を最適化することが大事である。
・実施機関等において「無謬性神話」が残っていないか、細やかに情報を取り、文部科学省と各機関とのコミュニケーションを活発化して確認する必要がある。
・国民により良いサービスを提供できるよう、文部科学省としてアンテナを高くする必要がある。現場のどこを改善すれば良いのかということを精緻に見ていき、そのフィードバックを政策立案につなげていくことが求められる。
・他の府省よりも政策実施機関が多い点に配慮しつつ、新たな政策評価がより良いものとなるよう十分に調整をしていただきたい。
 

2. 文部科学省政策評価基本計画(案)等について

○文部科学省より資料2に基づき、文部科学省政策評価基本計画(案)等について説明があった。
 

3. 政策評価結果の政策への反映状況(令和3年度)について(報告)

○政策評価やEBPM全般について、自由討論を行った。主な意見は以下のとおり。
 
(南島委員)
・文部科学省政策評価基本計画を改定するに当たっては、政府全体の政策評価の基本方針の改定を受けた修正のみならず、文部科学省としてこれまでの振り返りを踏まえて検討するべき。
・マネジメントサイクルが回るようにするためには、各種基本計画期間と政策評価期間との関係を調整することも検討課題とするべき。
・研究開発については、研究開発プログラムの評価は「総合評価方式」を追及するが、従来の研究開発に係る事前評価は「事業評価方式」で行われている。これらを大綱的指針との関係でどのように整理をしていくのかが検討課題になるだろう。
・「実績評価方式」は、事前に立てた指標等の進捗管理を行うため各種基本計画の進捗管理と親和性が高い。今後、各種基本計画の策定の際にデータ・エビデンスや合理的・体系的な計画の立案を求めていく中で政策評価の負担は軽くなるはずである。したがって、相互の連動性にも留意されたい。
 
(湯浅委員)
・文部科学省の場合は、各政策領域の特性や事情が全く異なるため、それぞれに合わせた評価の在り方を考えていくことが重要であり、政策評価に各種基本計画のフォローアップ資料を活用していくという方向性は、非常に良い。ただ、計画立案段階での精度の高さがその後の評価につながっていくので、各種基本計画について、フォローアップの在り方等について、文部科学省として、枠組みをある程度統一したほうが良いのではないか。
 
(林委員)
・これまで、政策評価において施策レベルでのアウトカムを、と言っても、実際は事業レベルのアウトプットや初期アウトカムが書かれることが非常に多かった。今後の方向性として、事業レベルではなく、基本計画のフォローアップ等を通じて施策の効果検証をしっかり行うということだったが、そうすると、現場で実際効果がどの程度上がったか調査・分析することが必要になってくることが多いのではないかと思われる。したがって、今までの政策評価の枠組みは、目標を立てて指標を測定するなど、さほど詳細な調査・分析を求められていない構造であったが、今後、対応の変更が必要になると思われる。
・この点、行政官は大変忙しく、効果の調査・分析を自ら実施する余裕はないと思われるので、事前に効果の調査・分析をするような委託予算を確保したり、文部科学省内で予算を査定する際に効果検証の観点がきちんと考えられているか確認したりするなどしないと、政策効果の調査・分析が進まないのではないのか。こうした仕組みをどのように作っていくのか。
 
(南島委員)
・EBPMは、まずしっかりしたロジックモデルの作成が重要である。ロジックモデルを活用することで、アウトカム指標の設定や政策介入の有無による違いの分析の条件が整う。中には調査費がかかるような分析が求められるケースが出てくるだろう。それが次のフェーズの課題になる。
・今回の政策評価に係る見直しでは、現場において何がボトルネックとなっていて、それをどうすれば改善できるのかという、政策立案者や現場への視点の転換が強調されている。これと、国民に対するアカウンタビリティは調和する側面もあるが、矛盾する場合もある。例えば、アカウンタビリティを重視し、EBPMの観点からさらなる追加の調査をすることで現場の負担になってしまう場合には、政策推進にかかるボトルネックに焦点を当て、次の政策形成に役立つ評価を前面に出して取り進めていかなければならない場合もある。この場合には現場とのコミュニケーションを取って調整をしていかなければいけないだろう。
 
(長我部委員)
・政策評価に係る負担軽減のためには、デジタル技術をどう使うかが鍵となる。データの信憑性の確認や前処理などそれなりに手間もかかるところはあるが、活用することもしっかり視野に入れるべき。
・パンデミックを経験した感覚からすると、社会の変化のスピードが速く、アジャイルに政策を変えるというようなスピード感覚とは、また一つ次元が違う場合がありうる。今後、安全保障や災害の激甚化など、政策・施策がドラスティックに変わるかもしれない場合に評価というのをなおざりにすると、間違った方向に行きかねない。ややリスク管理に近いが、非常に早い変化が訪れたときに、政策・施策の実施と評価を一体的にどのように推進するのかについては少し考察が必要。
 
(金藤委員)
・効果測定については、対象事業を絞っても、新たな枠組みや予算で取り組むことを視野に入れて検討すべき。

(参考)欠席委員からのコメント

(高木委員)
・これまで中期的な計画を計画通りに達成したかという観点で政策を評価していたが、数年前に作った目標を達成したから良しとしていたのでは意味がない。後追い的な評価では、世界的なスピード感からするとどんどん遅れていくことになる。これからは変化にアジャストしていくための評価も必要。次の5カ年は、社会の変化・動向を加味した政策評価に切り替えていく必要がある。例えば、社会的な変化・競合国との違いなどについて把握し、それらを明示したうえで、どの程度政策を変化させる必要があるかどうか、担当課においてしっかりと検討する仕組みが必要ではないか。
・ 特に人材育成については、従来の制度に加えて、世界的にも求められる人材がどんどん変化していることも踏まえて、秀でた人を抽出して日本を引っ張っていく人材を育成することも必要であり、中長期的な人材育成の在り方を変えていく必要がある。
・政策を進めるうえでは、他省との連携も強めて(例:経産省、厚労省)、世界で勝てる国になっていかないといけない。国を支えるのは人であり、そのベースとなる人財育成を担っているのは文科省である。
・失敗はつきものであり、その先には成長がある。Growth Mindset をもって、チャレンジングな目標をたてて実践しながら、躊躇なく新たな政策(ビジョン)へと変えていくことが必要である。アジャイルとはチャレンジを続けることであり、楽ではないが、一丸で頑張っていただきたい。
 
(貞廣委員)
・適切な政策立案に資するという観点から政策評価制度は十分であったのか、反省的に示されたのが今回の制度見直しの方向性であろう。
・例えば、各政策等を、政策評価のために作られた枠組みや資料に、場合によっては無理矢理落とし込む場合もあったように思うが、結果的に本来必要な検証がなされない等、デメリットが少なくなかった側面も否定できない。
・適切な指標が無い場合、代替指標を設定してきたが、教育という営みの評価という限界性もあることから、評価の本質に届かない指標も混在していた。そうした指標の達成をもっての評価は、本質的ではないことを評価しているのであり、むしろ政策の試行錯誤を削いでしまう場合もあったかもしれない。
・事業の成果など細分化して政策評価が行われる一方、全体を見渡した総合的な評価が十分であったのかという点も積み残されていた印象。
・これらのことを考えると、今回の見直しの方向性は、歓迎すべきものと考える。不都合な結果に向き合い、撤退ややり直しを許容し、試行錯誤ができる土壌を作るために、最小限の手間で、それぞれの政策の文脈に配慮した政策評価が実現されれば、政策評価は変わっていくと期待している。

以上

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