資料5 日本私立大学団体連合会提出意見書

 平成24年度大学入試センター試験で発生した問題点について

平成24年3月15日

日本私立大学団体連合会を代表して
日本私立大学協会
大学教務研究委員会
委員長 安井 利一

 私立大学では、入学者選抜は建学の精神を踏まえた特色ある教育の第一歩であるとの認識に立ち、これまでその改善・充実に努めてきた。大学入試センター試験(以下、センター試験)は、大学志願者の高校段階における基礎的な学習の達成度を図ることを目的に、国公私立大学それぞれの判断に基づく利用が可能な試験として普及し発展して、今日、我が国の私立大学の約85%が利用するまでに拡大するなど、私立大学の入学者選抜において重要な地位を占めるに至っている。
 こうした現状に鑑み、日本私立大学団体連合会をはじめとする各私立大学団体では、大学入試センターと緊密に連携し、その充実・発展と円滑な実施に向けて協力を行ってきたが、センター試験において発生した今回のトラブルは、甚だ残念なことであり、その早急な改善に資するため、以下に若干の意見を申し述べることとしたい。

1.今回発生したトラブルについての受け止め

○平成24年度センター試験で生じた主なトラブルは、「地理歴史」及び「公民」教科に関わる 1. 問題冊子の配布ミスと 2. 試験開始時間の遅延の2点に集約されると言って良い。
○こうしたトラブルの発生は、直接的には大学側の理解不足に原因を求めることができるが、大学入試センターからの試験運営に関する具体的内容の提示が遅かったことや、センター主催の説明会で大学側から寄せられた多数の質問や指摘に対して、付け足しの対応指示が試験直前まであったことなどにも、その原因を求めることができると考える。

2.トラブルの発生原因と改善策

(1)問題冊子の配布ミスについて

○平成24年度試験から改正が行われた「地理歴史」及び「公民」教科では、問題冊子の配布ミスが81会場で発生したが、その内容は配布すべき2教科の試験問題冊子のいずれか1冊のみしか配布されないというものであった。
○これは新聞報道で指摘されるようにセンター試験の実施方法が複雑化したことに加え、下記に示した例のように必ずしも試験に対する準備が十分とは言えなかったことにもその原因の一端を求めることができると考える。

(例)
1. 12月中旬まで、どの試験室にどの科目組合せの受験生が配置されるかわからない状態にあり、担当試験室ごとに異なる説明事項を監督者個々に周知する時間が不足していたこと。
2. 問題訂正が多く、複雑な手順に一層の煩雑さを招いたこと。
3. 解答用紙の配布に関しても、2科目受験者のトイレ退室に対する想定が甘く、連絡係等の人員配置に関する具体的指示がなかったこと 等。

○こうしたトラブルを未然に防ぐためには、センター試験は多種多様な大学が参加する全国試験という性格に鑑み、例えば問題冊子を1冊に統一して配布するなどして実施方法の簡略化を図る必要があると考える。
○一方、大学側についても試験の実施者として、学内説明会等によりその改正点や留意点等の周知を徹底させる必要性があるが、試験方法の複雑化や監督要領の肥大化などにより、私立大学にとってセンター試験の運営に伴う負担は限界に達していると言って良い。大学の負担を極力軽減し、トラブルを回避するためには、現場で行う手順の簡略化や肥大した監督要領の簡素化を行う必要がある。
○更に、大学入試センターは試験の主催者として、参加大学に対して試験実施上の留意点等について適切かつ明確な指示や依頼を行うことがトラブル回避の第一歩となると考える。
○なお、平成27年度からは、新学習指導要領に対応するため理科科目を8科目とすることが検討されているが、その際にはこの度の「地理歴史」及び「公民」のように試験の実施方法が複雑化することを避け、受験生及び試験を実施する大学にとって理解しやすい実施方法を採用されることをお願いしたい。

(2)試験開始時間の遅延について

○平成24年度センター試験では、「地理歴史」及び「公民」や、「理科」のように確認に時間がかかる配布方法に変更したことに加え、一昨年流行したインフルエンザや、昨年発生したインターネットを利用した不正受験等を踏まえた対応策も必要となるなど、試験の実施方法が複雑化する一方で、試験時間割における説明や配布の時間は必ずしも増やされなかった。
○試験時間のいたずらな伸長は当然避けられるべきではあるが、それでもなお、試験開始時間の遅滞の解消に向けて、試験問題の配布や解答用紙の回収の時間を含め、試験に対する十分な説明や注意の時間を確保することは、受験生にとって無用のトラブルを避けるのみならず、公平・公正な試験実施を期する大学にとっても有用なことと考える。

3.その他

○平成24年度センター試験においては、各大学の学生募集要項が公表される時期である6月末に、「地理歴史」及び「公民」と「理科」の2科目受験者が1科目のみを利用する大学を志望する場合に、60分1科目受験者との間で解答時間に対する不公平が生じる可能性があることから、第1解答科目の得点を採用する旨の依頼が文書で行われたが、各説明会においてはその採用については各大学の判断によるものとされていた。不要のトラブルを避ける意味から、こうした措置が平成25年度センター試験においても同様の取扱いとなるのか否かについて、センター試験利用大学に対し可能な限り早急に示し、その趣旨を徹底させる必要があると考える。

以上

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