産学協働人財育成円卓会議(第1回) 議事要旨

1.日時

平成23年7月27日(水曜日)12時20分~14時20分

2.場所

東京會舘 ローズルーム(東京都千代田区丸の内3―2―1)

3.出席者

委員

(企業側)
石原 東京海上日動火災保険株式会社取締役会長、江頭 三井住友海上火災保険株式会社取締役会長、大八木 帝人株式会社代表取締役社長、川村 日立製作所株式会社取締役会長、北山 株式会社三井住友銀行取締役会長、志賀 日産自動車株式会社最高執行責任者、篠塚 沖電気工業株式会社相談役、下村 三菱電機株式会社取締役会長、數土JFEホールディングス相談役、佃 三菱重工業株式会社取締役会長、山崎 中外製薬株式会社取締役副社長(代理)、藤吉 三井化学株式会社取締役会長、三浦 日本電信電話株式会社代表取締役社長、三村 新日本製鐵株式会社代表取締役会長、山下 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ代表取締役社長、渡辺 トヨタ自動車株式会社相談役
(大学側)
藤木 九州大学副学長(代理)、伊賀 東京工業大学学長、井上 東北大学総長、鎌田 早稲田大学総長、佐伯 北海道大学総長、真壁 慶應義塾大学常任理事(代理)、濱口 名古屋大学総長、濱田 東京大学総長、松本 京都大学総長、山内 一橋大学学長、山田 筑波大学学長、西尾 大阪大学副学長(代理)

文部科学省

(文部科学省)
髙木 文部科学大臣、鈴木 文部科学副大臣、磯田 高等教育局長、藤原大学振興課長、内藤 専門教育課長 ほか
(経済産業省)
中山 経済産業大臣政務官、小宮 大臣官房審議官、水野 産業人材政策室長、大家 産業技術人材企画調整官 ほか

4.議事要旨

鈴木文部科学副大臣からの委員紹介の後、共同座長、共同座長代理を選任。髙木文部科学大臣、中山経済産業大臣政務官からの挨拶、鈴木文部科学副大臣からの趣旨説明の後、大学側、企業側の主な意見は以下のとおり。

(大学のコメント)

  • 日本の研究者数は日本は米欧に次いで非常に多く、論文数も多いが、経済は低迷している。何が問題かと言えば、答えは人材。
  • 高度経済成長の時代には、研究開発力を有する人材の育成が求められ、大学もそれに応えてきたが教養教育が弱体化した。グローバル化以降は、グローバル人材、研究者、良き市民で経済・社会を支えることが必要になっている。中でも、グローバルリーダ ー、大きなビジョンを持つ人材の育成が必要。
  • 大学では学問が非常に細分化しているが、この先端にいる研究者だけでは日本を支えるのは困難であり、特殊化された専門知識を持つと同時に、根本の知識を統括して、「務本之学」、ファンダメンタルをしっかり理解できるような人材の育成が必要。
  • 大学に対しては、広く薄くではなく重点的投資が必要。平等と公正は違う。
  • 大学を一挙に改革するのは非常に困難。大学での地道な改善の積み重ねが必要であり、努力が出来るような体制をオールジャパンで推進していくことが必要。大学改革の自由度を増すためには、学長提案型裁量経費を集中的、選択的に配分すべき。

(企業のコメント)

【本円卓会議について】

  • 人材育成における産学の対話の場が設けられたことは、大変有意義。行動に移すことが大事。人材育成は時間がかかるが、継続して方針、施策を受け継いでいくことが必要。
  • 本会議の名称が「産学協働」となっているが、「産学官協働」とすべきではないか。産学官の役割を明確にして、体系的・計画的に、高い目標を持って、スピード感を持ってやる仕組みをこの会議で作ってほしい。
  • 国家戦略としての日本の目標、例えば環境・エネルギー、安心・安全での世界最先端、という目標を決めて、その目標達成のためにどういう人材を養成したらよいかをしっかりと固めていくべきではないか。技術開発や生産技術だけでなく、マネジメント、システムの問題も含めて、短期・中期・長期にわたる進め方について絵を描いていくべきではないか。
  • 大学、企業双方が各々の宿題をやることを前提とした産学協働でないといけない。例えば、企業は大学や学生に対し、こういう人材を求めていると主張すべき。大学は、具体的に企業との連携をどのようにやりたいのか企業に伝えることが必要。

【企業が求める人材について】

  • 企業がまず若者に求めるものは、一番は熱意・意欲、そして行動力・実行力。その次が協調力。専門知識や論理思考が大事だが、実は人間力が大事。個性ある、人間力ある人材を養成してほしい。
  • 積極性・意欲を持って、変化に対応できるような多様な人材がほしい。
  • 国籍に関わらず優秀な人材を登用しようとすると、自然に外国人が占める幹部ポストが増えてきている。  日本がどうやって強くなるか、多様性の中で、自分の意見を主張して、勝てる人材を日本で育てることに尽きる。そのための第一歩がダイバーシティ。
  • グローバルな世界でリーダーを担える人材は、今までの同質性の中のリーダーではなく、異質性、異分子の中のリーダーになれる人。異分子の中での経験、健全な競争の中で勝ち残る能力が必要。
  • 世界各国で事業展開を考えると、事業を行う地域の多様な文化、歴史、習慣、価値観の違いを理解しているリーダーの育成が重要。
  • 企業にはスペシャリストとジェネラリストがいるが、両者ともに必要な要素として、夢を描いて実現する、高い目標を設定して強い精神力で勇気と想像力を持ってチャレンジすることが必要。そのために企業、学校、国はどうするのかが重要。グローバルに活躍するには多様性が重要。色々な民族、宗教、価値観、文化の中に入って競争し、その国に馴染んでいくことができる人は、どういう要素が必要なのか、人材面でのカリキュラムを考えていくことが必要。

【大学教育について】

  • 世界的なリーダーとなる高度人材が日本に不足している。海外では、優秀な大学院で博士課程を出た人が、経営者として活躍しているが、日本では独自の狭い分野での研究をしているケースが多い。トップリーダーを育てることに重点を置き、高度な専門性だけでなく、リベラルアーツ教育も重視すべき。
  • 博士課程修了者は、大学院の専攻で専門について深く知っているのは当然として、リーダーシップ、コミュニケーション、グローバルな感覚など、深い専門と幅広い知識が必要。
  • 専門分野とともに、コミュニケーション、リベラルアーツといったベーシックな教養部分が必要。その上で専門分野が活きてくると思う。
  • 日本は教養教育の時間を削りすぎたのではないか。理系文系に関係なく、18~20歳までに、一般教養、歴史などが必要。それがなくては健全なるリーダーが育たない。

【グローバル人材の育成について】

  • 日本における内なる国際化の推進が大事。外国人留学生を積極的に受け入れることで、日本を理解し、日本に親和性を持つ外国人が増えれば、日本の学生にもよい刺激となる。
  • 欧米では多様性の文化が浸透している。日本でも社会にある資産をどのように教育に活かし、多様性を育むかということを社会全体で考える必要がある。
  • 広く世界を学べる制度設計が必要。特に大学におけるグローバル化、シンガポールやアメリカ、ヨーロッパで人材を集める工夫、一流大学との単位互換制度や、教授や留学生の招聘といった取り組み、その中で競争環境を高めていく努力が必要。
  • 9月入学は大変良いことであるが、日本を語れないでは世界に通用しない、日本文化をしっかり意識することと一対となってグローバル化があるのではないかと考える。
  • 大学のプロダクトは論文と学生であるが、企業へのアンケート等による卒業生の5年後、10年後のフォローをしていない。企業からプロダクトの品質を評価してもらうことが大きなベンチマークになる。質の保証に対して、もっとシビアな目で見ていくべき。
  • 工学部でも、現実の課題を抱えた人がそれを解決していく中で研究・教育、人材育成を行うという臨床工学的な考え方、大学病院的仕組みが必要ではないか。

【採用活動について】

  • 就職活動が早期化が問題になっているが、大学生には3年間はしっかり勉強させた上で採用するべき。
  • 採用の仕方を変えて、働き方の多様性、採用の多様性を進めることが重要。卒業後に大きな会社に入らなければ非正規の道しか残っていない、ということでは多様な人生を歩もうというところで躊躇が出る。
  • 通年で採用していいし、女性もどんどん採らないとだめだと思う。定年も、技術を大事にするのであれば、技術継承とか、固有の技術を持ってれば65歳でも70歳でも採る。健全な競争が一生続く社会を作っていくことが必要。
  • 日本の学生が内向きと言われるが、留学による就職活動の遅れに学生が不安を抱くのはもっともである。留学等によって学生時代から海外を経験したことが就職にプラスになるようにすることが必要。

【社員教育・インターンシップについて】

  • 多様性の訓練のため、新入社員全員を2週間、インド・中国に送り、大学生との交流や企業訪問を行ったが、95パーセントが、こういうところで働きたい、と言うようになった。企業の研修のあり方によっても世の中は変わってくると思う。
  • 日本化学工業協会の大学院化学系専攻を対象とした人材育成プログラムでは、トータルな支援として、支援する大学院のアピール、就職の支援、学生と会員企業の相互交流、インターンシップの活性化、カリキュラム改革への協力、奨学金など、企業側で動けるところは動いてみようということでやっている。
  • グローバル時代のトップランナーの育成のため、筑波大学と社団法人日本プロジェクト産業協議会とが共同で、50数人の官庁及び産業界の役員クラスによる3年間の講座を開始し、400~450人が集まった。このような具体的な取組を積み上げていくことが必要。
  • 海外の研究所で、毎年数十人の博士・ポスドクのインターンを3~6ヶ月受け入れ、従業員研究員とほぼ同じ時間給を支給し、WIN-WINの関係でやっている。日本の海外研究所や現地法人を活用した海外インターンシップを支援する仕組みの構築を提案したい。
  • 社内教育と大学院の長期インターンシップをマッチングをすることで、より一層効果が上がると思う。日当の支給、大学での単位付与、学生が成果をプレゼンする場の設定などをうまく体系化して、実効が上がる仕組みにしていければよいと思う。
  • 文部科学省のITスペシャリスト育成事業に経団連も力を入れてやってきており、学生、大学、企業側にとっても良い結果が出ている。産官学が協力してやれば必ず良い成果が出てくる。予算が切れると終わりとせずに、恒久的にできる仕組みが必要ではないか。
  • 経済的理由で留学できない人を減らすことも必要。経団連として、将来我が国のグローバルな企業活動に従事したいという意欲を持った学生を対象に奨学金制度を創設することとした。また、帰国留学生を対象とした合同説明会の開催等にも協力していきたい。
  • 高等教育の質の向上や人材育成のあり方に関する提言はすでに様々な団体が行っているが、大学の改革はなかなか進んでいない。ゆっくり議論している段階ではなく、行動に結びつけることが大事であり、まずはこの円卓会議に参加する企業と大学が具体的なアクションを起こすことを考えるべきではないか。
  • 経済同友会では、大学のガバナンスのあり方や企業と大学との関係の再構築について検討している。
  • 大学だけの問題だけではなく、初等教育から高等教育までトータルに考える必要がある。その中で、企業はもっと教育改革に参画するべき。

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