独立行政法人大学評価・学位授与機構が行う認証評価事業(専門職大学院の教育研究活動等の状況に関する評価)の民間評価機関による事業実施に関する検討会議(第1回) 議事録

1.日時

平成23年3月9日(水曜日)10時30分~12時30分

2.場所

文部科学省16F特別会議室

3.議事録

出席者 

(委員)
石田眞、磯村保、岡本和夫、柏木昇、河田悌一、潮見佳男、竹下守夫、永田眞三郞、前田雅英の各委員

(公益財団法人日弁連法務研究財団)
柏木昇常務理事(再掲)

(財団法人大学基準協会)
永田眞三郞法科大学院認証評価委員会幹事(再掲)

(独立行政法人大学評価・学位授与機構)
岡本和夫理事(再掲)

(事務局)
義本高等教育企画課長、中野専門教育課専門職大学院室長、佐藤高等教育企画課課長補佐

議事

(1)事務局から、会議設置趣旨及び審議事項について説明があった。

(2)座長の選任について審議が行われ、座長に河田委員が選任され、座長代理に磯村委員が指名された。

(3)事務局より、配付資料の説明があった後、法科大学院制度と法科大学院認証評価制度について説明があった。

(4)1.法科大学院認証評価実施の現状と課題、2.法科大学院認証評価から大学評価・学位授与機構が撤退した場合に考えられる影響(2.は日弁連法務研究財団、大学基準協会のみ)について、各法科大学院認証評価機関からのヒアリングを実施し、その後、意見交換が行われた。

 

【柏木委員(日弁連法務研究財団常務理事)】  

 それでは、日弁連法務研究財団からまずご報告をいたします。

 お手元にお配りされている資料5-1では項目だけになっておりますが、その内容についてご説明いたします。

 まず財政的課題でありますけれども、当財団の認証事業は赤字事業であります。評価校数が増えるに従い、赤字も膨らむという状況にあります。赤字をどうしているかというと、日弁連からの年間数千万円の援助で賄っておりますけれども、日弁連もそう豊かな財団ではございませんので、今以上の増額は不可能であります。

 次の問題が、人的問題ですが、法科大学院評価の担い手である人材の確保であります。評価員を募集いたしまして、評価員に現地調査をしていただいております。そのほか、認証評価事業の事務局員もリクルートしております。いずれも人材の供給難であります。特に評価員は、最初のころは、ほかの法科大学院を見てみようというようなことで、法科大学院の教員が多数参加してくださったんですけれども、1巡してしまうと、「ま、こんなもんか」ということになりますので、その辺のインセンティブをどう盛り立てるかということが問題であります。それから、評価員、評価委員会委員も非常に薄謝でご協力をいただいております。それから、事務局の人件費の関係でも、大分困難を感じております。

 第3番目の問題として、評価校数の年度ごとの偏りですが、多くの法科大学院が最後の2年間に集中して評価を受けております。先ほど事務局からご説明がありましたけれども、68校が初年度で、6校が次年度、合計74校がほぼ同時期にスタートしたものですから、皆さん、なるべく後に評価を受けたいというような考え方をお持ちでありまして、したがって、最後の2年間に受けたい、しかも、第2巡目で起きてきそうな問題は、前期・後期と分けて、後期に受けたいということで、最後の2年間の後期に非常に集中してしまうということになります。そうしますと、評価員のリクルートとか、評価委員会の開催の時間とか、財政的に大変大きな負担になっております。

 それから、法科大学院認証評価機関から、大学評価・学位授与機構が撤退した場合に考えられる影響といたしまして、短期的影響ですけれども、これは大変な影響があると思います。まず、2012年度から撤退すると仮定した場合でも、本来機構が行うはずだった法科大学院の認証評価を仮に半分、14校を財団が引き受けるとしましても、これは人的・財政的・物理的、いずれに点におきましても非常に困難、ほとんど不可能であります。

 それから、中長期的影響といたしまして、2016年度から始まる3巡目からであれば、以下の条件を満たせば不可能ではないのかもしれません。以下の条件ということは、まず財政的援助がなされることです。先ほど申しましたように、財政的に非常に苦しい立場にありますので、評価をやるたびに赤字が出るという状況でありますので、まず当財団に対する直接の補助金をいただくか、あるいは、評価手数料を値上げして、その値上げ分を各法科大学院に国から補助をいただくというようなことをしていただかないと、ちょっと無理かと思います。

 それから、先ほど申しましたように、評価校数の波が非常に大きいのが問題になっておりますが、この評価校数が平準化されることというのが、もう一つの条件になります。第1巡目における当財団の評価校数は、最盛期の上期で7校、下期7校、年間14校が評価校数のほぼ限界であると考えております。2008年度の後期は、たしか10校やりまして、評価委員会を午後の1時から夜の9時過ぎまで、それから、翌日のまた朝の9時から午後1時ぐらいまで開催いたしましたけれども、委員長をやっている私としては、気が抜けなくて、もうほとんど死にそうになりました。10校は、これはもう限度を超えているんじゃないかという気がいたします。

 ということで、年間14校程度、しかも、その14校も前期・後期とばらけるようにしていただければ何とか可能かなと。こういう2つの条件が満足されれば、3巡目ぐらいからは可能かなという気がしております。

 以上であります。

【河田座長】

ありがとうございます。

 それぞれご説明いただいた後にご質問を受けるのではなくて、3つまとめてという形にしたいと思いますので、それでは、続きまして、大学基準協会のほうからのご意見を、永田先生、お願いいたします。

【永田委員(大学基準協会法科大学院認証評価委員会幹事)】

 大学基準協会からでございますが、資料5-2でございます。

 求められた依頼事項についてお話しいたしますと、まず法科大学院の認証評価実施の現状と課題ということですが、まずこの認証評価の役割は、1巡目を終わりまして、ますます重要になってきているのではないかという点です。先ほど報告がありました、司法制度改革審議会の意見書、これに基づいて法科大学院が設置され、その法曹養成制度のそこで示されました制度の理念というのは、多くの法科大学院において概ね浸透していると考えられますが、しかし、以下に書きましたような問題がないわけではありません。

 この理念及び関連法令に対する十分な理解が得られていない、あるいは、制度上予定されていた司法試験の合格状況が達成されていないということが背景にありまして、司法試験の合格状況に傾斜した教育を行っているというような場合が見られます。このように大きな理念上の問題がございます。そのほか、主な問題として、社会人等、多様な学生を受け入れることが困難な状況になりつつあります。それだけではなく、定員充足そのものも困難な法科大学院が生じつつあるという状況にあります。それから、内容につきましても、科目内容の構成が適切でない、あるいは、厳格な成績評価が実施できていない、適切な専任教員が配置できていないというような、そういう法科大学院が生じつつあるということであります。

 このような状況から、法曹養成にとって重要な役割を持つ法科大学院の質の維持及び向上というのは、今後とも、より一層求められるところでございます。したがいまして、法科大学院の認証評価の役割というのは、ますます重要になると考えております。

 現在の課題でもありますが、今後の課題としては、以下の点が考えられます。

 5年に一度の認証評価では、法科大学院が準備する点検・評価の実施をしたその年度と、その翌年、それを基本的な対象とする評価実施年度の2年間、この2年間は質保証にかかわることになりますが、しかし、その余の3年間というのは、教育課程又は教員組織の重要な変更届により一定の質保証は可能であるとしても、質保証の面では懸念が残ります。これは先ほど中野室長がお話しになりました基準6のところで、そういう一定のフォローアップはあるということでありますけれども、それ以外の点ではなお問題があるということです。この点について付言しますと、基準協会では、法科大学院の認証評価において「適合認定」をした法科大学院に対しても、認証評価において指摘した事項に対する改善報告書の提出を求めます。それを検証し、その間の結果を当該法科大学院に通知するということで、評価後のアフターケアということに基準協会では努めております。

 それから、2番目ですが、法科大学院にとっては、これは負担の問題でありますが、認証評価の準備、受けること、それから中央教育審議会の大学分科会法科大学院特別委員会の改善状況調査等が実施されまして、その中で改善・改革が進むという面はありますが、これらに対する各法科大学院の負担はかなり大きいという状況にあります。

 それから、評価機関においては、各法科大学院の認証評価申請が、先ほど日弁連法務研究財団のご報告にもありますように、5年間のうち3年間、特に2年目に集中する傾向があります。効率的かつ効果的な認証評価が、そういう偏りによりまして難しくなっているという現状があります。

 それから、各評価機関の効率的かつ効果的な認証評価の実施及び各法科大学院への公的支援ということが課題となろうかと思います。これは先ほどの日弁連法務研究財団の指摘にもありましたが、認証評価というのは、多くの関係者によって支えられて実施されております。また、各評価機関では、多くの経費をかけて認証評価の実施・運営をしております。したがいまして、今後は、各評価機関及び法科大学院にとって、より効率的かつ効果的な認証評価制度が求められますが、その基盤が十分でないということです。

 さらに、各法科大学院に対する公的な支援、あるいは、各法科大学院が出捐する各評価機関の評価手数料の見直しが必要であろうと考えております。特に、必要な細目を求める省令第3条第2項によりまして、各評価機関は、認証評価を実施した以降も、先ほどの基準6でありますが、当該専門職大学院の教育課程又は教員組織に重要な変更があった場合には、必要な対応が求められていますが、現時点も、これも大きな経費はかかるわけでありますが、これに要する経費等の負担は公的には考慮されていないというような問題点があります。以上が現状と課題です。

 次に、法科大学院の認証評価から大学評価・学位授与機構が撤退した場合に考えられる影響です。

 まず第1点は、多様な評価機関の存在です。本来は、認証評価制度は、関係法令の遵守状況の評価を行うことはもとより、これに加えて、各評価機関が認定した評価基準の独自性が尊重されております。この後者の観点から明らかなように、多様な評価機関が存在すること自体が意義があると私どもは考えております。この点は、申請する大学にとっても有益であり、1機関が撤退すれば、当然のことながら、この多様性が失われる、そういう問題があるということです。

 それから、各評価機関の評価実施体制に向けた拡充ですが、これは先ほど中野室長の報告にありました、その資料にもありますとおり、第1サイクルでの各評価機関の法科大学院認証評価の申請状況は、以下のとおりでございます。こういう形で、先ほど申しましたように、平成19年度、そして20年度に、どの評価機関も、そして総数においても、大きくそこに集中しているという状況があるということを読み取っていただければと思います。

 仮に、大学評価・学位授与機構が撤退いたしまして、残る2機関にほぼ同数の申請があるとするならば、各36校程度を担当するということになります。本協会としては、こうした状況への対応は十分に可能であるとは考えます。しかし、第1サイクルでの法科大学院認証評価の申請状況を踏まえますと、認証評価の申請が1つの年度に偏ること等が想定されます。そこで、効率的かつ効果的な認証評価の実施が非常に困難であると考えられます。また、認証評価において「不適合」となった場合におきまして、本協会、それから大学評価・学位授与機構におきましては、追評価という制度があります。日弁連法務研究財団においては、再評価を実施しており、これらの制度への対応も一段と厳しくなるというふうに考えられます。

 したがいまして、この表から見ますと、19年度が22校、20年が44校でありますが、これが次の2巡目では、24年度が22校、25年度が44校という形になるわけで、これが、大学評価・学位授与機構が引き受けた分がここに加わりますと、相当な集中ということで、現在の体制というのでは、直ちには受け入れるということは難しい状況にあるということ、これは先ほどの日弁連法務研究財団のご報告にもあったとおりです。

 したがいまして、この残った2機関によりまして法科大学院認証評価を実施すると仮定しますと、認証評価制度を永続的かつ安定的な制度とするためには、少なくとも以下の点は重要です。認証評価の申請数が各評価機関に分散するということにならないと、これはかなり難しい。毎年度平均的に、ここにあるような偏りがありますと難しいわけでありますから、それらは分散するということが、この課題になる。それから、日弁連法務研究財団がおっしゃったような、人的、物的、そして財政的な背景というものにかなりの準備が要るということでございます。

 以上が大学基準協会からの報告でございます。

【河田座長】

ありがとうございました。

 では、続きまして、大学評価・学位授与機構 岡本先生からお願いします。

【岡本委員(大学評価・学位授与機構理事)】

 岡本でございます。資料5-3に基づきまして、大学評価・学位授与機構が実施している法科大学院認証評価の現状を中心に、簡単にご報告させていただきたいと思います。

 資料5-3にございますとおり、28校の評価を行ってきたということでございます。

 私どもが行う評価の特色を3点ほど挙げさせていただきますと、1番目に、教員組織調査ということで、専任教員等が担当する授業科目について、当該授業科目が担当するにふさわしい教育的業績があるかどうかを専門的に調査する「教員組織専門部会」を設置しているということです。各専門分野の第一人者、13名以上の専門家によって、この委員会が科目適合性の判断を行っています。

 2番目に、先ほど来のフォローアップということにつきましては、適格認定を受けた法科大学院について、毎年度、教育研究活動に関する重要事項を記載した年次報告書等を提出していただいておりまして、これも「年次報告書等専門部会」を設置して、分析を行っています。

 3番目に、適格認定とされなかった法科大学院に対して、追評価を実施しています。追評価の実施状況につきましては、1ページおめくりいただいた、次のところに書いています。

 その後、対象校に対するアンケート等をとっておりまして、大体数値的なものはグラフでお示ししているとおりですが、この中から、具体的にどういう点がよかったか、どういう点に課題があるかということは書いていただいています。

 次に、今度は2巡目ということですが、今までご紹介がありましたとおり、中央教育審議会の法科大学院特別委員会で、下に書いてあるような問題点が指摘されているところでございます。

 この点につきまして、3ページにまいりますと、私どもでは対応するために、そこにある1から5までの対応を行ったということでございます。これも、例えば1の「重点基準」の設置とか、1巡目の評価においては、すべての基準が満たされていなければならないとしていた適格認定を、2巡目においては、各基準の判断結果を総合的に考慮するというふうに改める等々のことを行っているということです。

 ただ、ここの3ページにあります、1、2、3、4、5の3、4につきましては、やはり課題が残っているのではないかなという認識をしております。例えば、共通的な到達目標に関する評価をどうするのかということですね。それから、その方法等について検討する必要があると思っているところです。

 2点目は、修了者の進路に関する評価につきまして、司法試験の合格状況と合格率の改善に関する取り組みについて、どのような評価を行うか、その方法等について検討するというふうに思っております。

 それで、このほか、実際、アンケート等からは、各評価を受けられた大学のほうからは、作業期間とか、そういうことについてのご意見をいただいておりますので、それは個別の検討課題に入ってくるということは認識しております。

 次に、他機関との連携及び情報交換の実施でございますが、先ほどもご紹介いただきましたが、法科大学院認証評価につきましては、いろいろな問題があるということで、実は今までも打ち合わせというような形では、相当の回数を三者で行わせていただいておりますが、先ほどご紹介があった、認証評価機関連絡協議会というものができておりますので、そういう場も利用しながら、そこに研究者の方々を融合する何か委員会をつくるとか、そういうようなことで対応していくことが可能なのではないか、そういうことを中心的にやっていきたいとは思っております。

 最後に、今後の予定ですが、これはご覧いただければと思いますが、今、意向調査等を行っていることろですが、平成23年度以降は、4ページに表をつけさせていただいておりますが、こういった予定であるということです。23年度については、もう申請が終わっておりますが、23年度は1校で、あとは、意向調査というようなことですが、大体こういった感じになっているという現状です。

【河田座長】

 ありがとうございました。

 3機関から、柏木委員、永田委員、岡本委員にご説明をいただきました。すこし下品な言葉で言えば、ヒト・モノ・カネが必要で、それの手だてもせずして仕分けしてしまうというのはおかしいんじゃないかというふうに感じられるということでございます。3人の委員のご意見によると、それぞれ3つの機関がそれぞれ独自の観点と手法によって特徴のある評価をなさっていること。そして、大学評価・学位授与機構には23校がまだ申請を予定しておられるという現実であり、あと2機関が、無理やりせよといわれれば、物理的にはやれないことはないけど、内容のある作業はとてもしんどいという、こういうことかと思います。それぞれの機関に対するご質問もあると思いますので、どうぞご自由に、なるべくたくさんお話をしていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 潮見先生、いかがでございましょうか。

【潮見委員】

 質問も若干はあるのですが。

【河田座長】

 どうぞ。

【潮見委員】

 先生方からのご報告を聞いた感じ、それから、私自身が評価の部会の委員として活動したり、あるいは評価を受ける側でお話をさせていただいたりしたことも踏まえて、若干意見を申し上げさせていただいてよろしいでしょうか。

【河田座長】

 どうぞ、お願いいたします。

【潮見委員】

 先ほどの永田先生のお話にも若干絡むところですが、こういう問題、法科大学院に対する認証評価の問題を考えるに当たっては、おそらく最初の出発点として、2つの点は必ず押さえておかなければいけないのではないかと思います。

 第1点は、法科大学院というのは教育組織ですが、しかし、法科大学院に対する評価というものは、教育面にとどまらない。当該法科大学院の背後にあると言いましょうか、取り囲むようなバックグラウンドも含めて評価をすべきであるし、また、現実に評価をしてきたのではないか。この部分は決して落としてはいけないポイントではないかと思います。

 それから、もう一つは、これが永田先生の先ほどのご発言に絡むところだと思いますが、法科大学院制度が発足するに当たって、複数の評価機関を設けるのが望ましいとされた際の論拠というものをもう一度確認して、尊重する必要があるのではないかと思います。これはいろんな理解があろうかと思いますけれども、少なくとも私自身が理解してきたところは、複数の評価機関が、それぞれの特徴を生かして評価を行うことで、評価の質の保証、あるいは質の向上というものを実現するというところに、複数の評価機関を設けるということの眼目があったのではないかと思います。このこと自体は、私自身は、今後も、どういう形になるにしても、維持すべきであろうと思います。

 さて、そのような目で見た場合に、今回問題となっている大学評価・学位授与機構の評価というものに一体どういう特徴があったのか、あるのか、それからまた、私どもの京都大学もそうですが、国立大学の多くがどうしていわゆる大学評価・学位授与機構の評価というところに流れたのか、そういうものを考えてみますと、機構の評価の特徴というもので極めて重要な部分というのは、もちろん、これは私学にも当てはまることですけれども、とりわけ国立大学法人について、十分な基礎情報といいましょうか、それを持った上で、それをもとにして国立大学法人における法科大学院の実情とか問題点を把握して評価に臨んでいるというところがあったと。まさにこれが大学評価・学位授与機構における評価の大きな特徴ではなかろうかと思います。この部分は、単に効率性とか、あるいは民間委託ということだけでは済まされない、しかも、ものだとか金というところにも尽きない特徴ではないかと思います。

 とりわけそういうことが実現することができたのは、おそらく評価委員はもとより、評価を行う際に委員と一体となって仕事をして、資料を整理したり、あるいは補充するような作業を担っておられる事務方が、国立大学法人の実情に非常に明るいというところがあろうかと思います。おそらくその背景には、さらに言えば、国立大学法人との間の人事交流というものが結構なされているように見受けておりますし、また、そういうことができるだけのインフラ整備もされているというところもあろうかと思います。

 そういうところが意味を持ってくるのは、先ほど冒頭に申し上げた第1点目にかかわることですが、国立大学法人、とりわけ大規模な国立大学法人における予算とか財政、あるいは教員数、あるいは教員の任用システムなどについて、これは法人化されたとはいえ、国立大学法人の場合には、私学と若干というか、大いに違った状況がございますので、そういう部分についての実態認識を抜きにして、適切な法科大学院評価というのはやりづらいという部分があろうかと思いまして、そういうことを考えますと、評価機構の現在のインフラというものは、決してパーフェクトとは個人的には思いませんけれども、しかし、それなりのものはあるんじゃないかと思います。

 逆に、もっと言いますと、その部分が、仮にこれが民間のほうに委託した場合に、どういうふうになるのかということをしっかりと考えて議論していただけないものかと念じてやまないところです。国立大学法人の職員との間の人事交流というものをどういうふうにするのか、あるいは、事務方について、どれだけ適切なインフラ整備をするのか、その上で、そういう人たちときちんと連携をとれた上で、いわゆる評価委員の先生方が評価をできるような環境をどうやってつくり上げるのか、この部分をぜひ真摯に検討していただいて、その上で、民間のほうにすべてを委託することが可能かどうかという結論を出していただくのが適切であろうと思います。

 先ほど3つの評価機関の方々からご意見、あるいは報告をしていただきましたが、そうした部分について、それぞれの評価機関が一体どのようにお考えになっているのか、あるいは、現状がどうなのかということをお教えいただければありがたいというところが質問にかかわることでございます。

 あわせて、特に2つの機関からは、仮に機構の評価がなくなった、撤退した場合にどうなるのかのシミュレートされ、今機構に申請をしている法科大学院がこれだけあって、その数が均等に割れたらという条件でお話をされましたが、どこを選ぶかというのは、各法科大学院の自由であって、半分に割れるということは、それは期待値ではあっても、保証はされないわけです。そうなった場合に、その半分に割れるというのが崩れるような事態が生じたときに、それぞれの2つの機関が一体どういうふうな体制で臨むことができるのかという、見通し等がもし今ありましたら、お教えいただければありがたいと思いまして、これが質問という部分の2つ目でございます。以上です。

【河田座長】

 それでは、今2つの質問が出ましたので、そういうバックグラウンドを評価していた点とか、さらに、複数の機関がそれぞれ特徴を持って評価してきたということがあるけれど、大学評価・学位授与機構としては、やっぱり国立大学というものをよく理解された上での評価がなされていたがそれに対してはどうなのかということ、あるいは、シミュレートされたらどうなのか、そういうことについて、日弁連法務研究財団のほうからご意見をいただきたく存じます。

【柏木委員】

 それでは、財団のほうから、今の潮見委員のご意見に対する意見を申し述べます。

 大体大賛成であります。機構が国立大学の事情に詳しかった、それをもし財団が引き受けるとすればどういうことになるのかと言いますと、それはそのときなりに何とか対応するんでしょうけれども、実際、例えば、事務局体制でありますけれど、当然、これは国立大学との人事交流は全くありません。大体事務局は主として弁護士さんから来ていただいております。評価委員の中には、国立大学の先生もいらっしゃいますし、昔、私も国立大学の教員をしていましたので、わかることはある程度もちろんわかりますけれども、機構のようなわけにはいかないだろうという気がいたします。

 それから、先ほど、仮に機構が評価をしている法科大学院の半分が来たらというお話をしましたけど、これは半分でとどまってくれるという保証は全くございませんことは、潮見委員がご指摘のとおりであります。万が一そういうことになりましたら、半分以上来たら、これはもうパンクしてしまうというのは先ほど申し上げたとおりで、何らかの方策で半分にとどめるということをやっていただかないと、どうにもならないと考えております。

 以上です。

【河田座長】

 ありがとうございます。

 大学基準協会の永田委員、いかがでございましょうか。

【永田委員】

 第1点ですけれども、多様性という点で、そして、機構が持つ国立大学法人の情報が多いという点からの、そういう処理の適確性というようなことが指摘されたと思うんですけれども、まず特徴としましては、やっぱりそれぞれの機関に特徴があるかと思います。基準協会について申しますと、長い間、法科大学院の認証評価、以前から評価につきましては経験があるわけで、その中で、基本的には各大学院の改善を、適否を認定するというよりも、改善を進めていくための一つの機関として進めてきたわけで、その伝統といいますか、その流れ、その背景、理念がこの基準協会の特徴であろうかと思います。結果的には、そのわりには法科大学院で不適格を出したのは一番基準協会が多いのでありますけれども、それはそれなりの事情があろうかと思います。

 それから、ピア評価という点で、これまでの経験があると。この点につきましては、どの法科大学院も、どの認証機関も同様かもしれませんけれども、自分たち専門的な知識のある者が評価しあうという、そういう特徴が基準協会より強いかと思います。

 それから、潮見委員が言われました点でありますが、国立大学法人については、機構が情報をしっかり握っているというのは、評価機関として適確に認定できるという点はありますけれども、公正にできるのかというような問題もあるわけで、第三者ということで。そういう意味で、必ずしもそれほど重要ではないかと思いますが、事務方に関しましては、やはり当然、どういう情報をもらったらいいのかというような点で、それははるかに機構のほうがすぐれていると思いますけれども、あまりこれは私は強調すべきところかどうかというのは疑念を持ちます。

 基準協会自体は、国公立私立の大学で構成されておりまして、理事会も半数近くは国立大学の学長先生方でございますので、そういう状況から見ましても、国立大学との関連、あるいは状況につきましては、教員の側からかもしれませんが、十分な情報は得られているというふうに考えております。そういう意味で、一定の潮見委員がおっしゃった点はそのとおりかもしれませんが、必ずしもそこにこだわる必要はないのではないかと思います。

 しかし、評価機関としての評価基準は相当違いますので、その違いというのは、私は評価すべき点だと思います。適格、適合の最終的な認定につきまして、若干の姿勢のばらつきがございまして、それは対外的に公表する場合の反響というような点も考慮しまして、その調整はいたしましたけれども、その他の点につきまして、先ほど岡本委員が報告されましたような問題点につきましては、それぞれ微妙な判断の違いがあり、それがそれぞれ重要な多様性、そしてまた、選択可能性の点で重要かと思っております。

 それから、最後の、ちゃんと半分に割れるのかという潮見委員の指摘は、そのとおりでありまして、まさに期待値であります。仮にそうであっても大変ですよと言っているので、そうならなかったら、それは柏木委員のように、不可能だとは言いませんが、相当調整をして、そして準備が要る、そして基盤をしっかり備える、あるいは、残った2機関が十分に協力し合いながらやるということであろうかと思います。

 1点だけ、個別な基準協会の件について。基準協会のほうは、基本的に、先ほど申しましたように、各大学が加盟して、そこでやっておりますので、最終的にそこの会費というもので赤字を補てんしている状況でございますし、それから、委員の先生方につきましては、比較的得られやすい。先生の大学、国公私立それぞれ関連を持っておりますので、そこから候補者をエントリーしていただいて確保するということは、比較的これまでもやってまいりましたし、非常にすぐれた先生方に集まっていただいているという状況にありますので、これが、これから校数が増えてきたらどうなるかということはわかりませんが、そのあたりは、基準協会としては、直ちにこれへ移行するということであれば、大変不可能に近いかもしれませんが、準備が要るということでございます。潮見先生がおっしゃったように、期待値であって、どうなるかということはわかりませんので、その点は大きな問題だと思いますが、今後少し準備期間が要るのではないかというのが私ども意見でございます。

 以上です。

【河田座長】

 ありがとうございました。

【柏木委員】

 すいません、ちょっと補足なんですけれども、財団の法科大学院の認証評価の特徴といたしましては、やはり日弁連の下にあるということで、それから、評価員、それから評価委員会委員にも弁護士の方が非常に多いということで、弁護士の方々が自分たちの後輩をどう育てるかという観点が非常に強く出ていると思っております。

【河田座長】

 ありがとうございます。

 それでは、大学評価・学位授与機構の岡本先生のほうからも、先ほどの、特に人事交流が国立大学にはある機関であって、ということで、それがもちろん客観的に行われている、公平になされているでしょうけれど、そういうことも含めまして、潮見先生の意見に対してのご回答、あるいはお考えを述べていただければと思います。

【岡本委員】

 2つのことを申し上げたいと思います。

 最初に、評価する先生方というのは、私どもは、法科大学院の評価だけではございませんけれども、例えば機関別認証評価でも何でも、各機関がそれぞれ特徴のある評価を行っていて、それに応じて大学は選んでくるわけですけれども、実際評価をする評価者というレベルで考えてみますと、これは大きな袋としては、同じ袋に入っていて、ちょっと言い方は悪いんですけれども、ある先生はこちらへある程度、でも、袋としては同じであるというふうに理解しております。

 国立大学についての情報が多いというのは、確かにそのとおりで、私も国立大学におりましたということもありますが、実際、事務の人は、むしろ国立大学のことをよく知っていて、それが公正かどうかということは問題ではなくて、むしろ評価者は、先ほど申し上げたとおり、同じ袋に入っている先生方ですから、そちらがするんですけど、確かに、やっぱりマンパワーというのですかね、その辺は確かに違っていて、だからけしからんというのか、いいというのか、ちょっと私の口からは何とも申し上げられませんが、事実として、そこの力はやっぱり多いのではないかなと思っております。

 多分、例えば先ほど出てきたみたいな協議会とか、そういう情報交換をする場とか、そういうときには我々が力を尽くさなければいけないんじゃないかなと。そういうパワーを持っているので、そういう方向で貢献していくべきではないかなというふうに思っております。

【永田委員】

 すいません、公正というのは削除してください。基本的に、やはりどの組織も、どの評価も、第三者を入れているということが重要なところで。ですから、事情に精通している者が皆評価者になるということよりも、やはり、それとともに、第三者が加わっていくということが、どの会社でも何でもございますので、第三者という点から、やはり事情精通だけではないということを申し上げたかったんですが、公正さという点では、全くそれはそういう疑念を持っておりませんので、失礼いたしました。

【河田座長】

 ほかの先生方、前田先生は、いかがでしょうか。

【前田委員】

 大きな流れとしては、要するに、事業仕分けで、ここのところ、評価に無駄がある、3つもある必要ないんじゃないかという流れで出てきたということでよろしいわけですね。それは、人・もの・金を、先ほど座長がおっしゃったように、削ってというのが、大学の側から見たら不合理だし、今までのものを変えなきゃいけない理由というのは、大学の側からはあまりないんだと思うんです。

 ただ、事業仕分けとかで、天下り禁止とか、そういう流れの中で、機構をこのまま維持して第三者評価をやってもらっていいかどうかというご議論なんだと思うんですね。やっぱりこれは公開でやるというのは、政府にだけでなくて、国民に対しても説明責任を果たさなきゃいけないということなんだと思うんですね。

 ただ、我々としては、今のご議論にありましたように、3つがあること、多様性も大事だし、ただ、ちょっと気になるのは、3つの連携をあまり強調されると、統一基準づくりを強調されるんだとすると、多様性というのとはやや矛盾するだろうと。

 ただ、3つぐらいの組織で並立してやっていかないと、1個になってしまったら、これはもうおしまいだと思いますので。十分今の状況で主張して、今のままが法科大学院全体の発展のために合理性があるということは言えると思うんですね。ただ、ヒト・モノ・カネに無駄があるのではないか、もうちょっと合理性がある、いや、もともと今のヒト・モノ・カネでは回らないぐらいきゅうきゅうだというと、ポイントはどうなってくるかというと、認証評価の仕事量を減らす。もう軌道に乗ったんだから、もうちょっと巡航にいったんだからガソリンを使わなくて飛べるような飛び方をしなさいという議論も出てくると思うんですね。

 ただ、正直言って、本来そういう根本的な議論が重要なんだと思いますけど、今回の事情を見ていますと、二、三回で年度内に決定を出すということで、年度内にきちっとした結論を出せということであれば、もうこれは急に現状を変えたら、これは非常に問題が起こる。やっぱり将来的に徐々に変えていかないといけない。ただ、その徐々に変えていく部分のご議論は、別のところで積み上げていっていただくしかないという感じはします。

 ですから、外に向けては、やっぱり現状がうまくいっていて、やっぱり今ぐらいの規模のものがあることが望ましいというか、少なくとも無駄ではないという言い方で説明するということになるんだと思います。実質論としては、もうあらゆるものを削れ削れという流れですけれども、必要なものには必要なコストをかけなければいけないということなんだと思いますね。ただ、それを正面から言いにくいご時世ですので、それをどううまく言っていくかということ。これ全部表に出ちゃうわけで、今みたいな話をここでしゃべっちゃうのはよくないのかもしれないんですけれども。

 ですから、基本的に、私は、将来的にはほかの2者で引き受けられるというご発言はありましたけれども、すぐには変えられないということもはっきりしている。3月末までしか時間がない中でとる選択肢というのは、現状を基本的に維持しながら、無駄をなくす方向で検討していくというような結論以外は、私はないのではないのかと。個人的意見としてはですね。将来的なものとして、理想的な認証機関みたいなものを幾つにして、どういうものにどう――今のものだってパーフェクトではないわけですから、どこを直していくかという議論はあり得るということで、射程で、どこでどう切って結論を出していくかということだと思います。

 まとまらない話で申しわけございません。

【河田座長】  

 ありがとうございます。

 平成13年6月に「21世紀の日本を支える司法制度」というサブタイトルを付して「意見書」を出された司法制度改革審議会の会長代理をお務めになっていた竹下先生、いかがでしょうか。

【竹下委員】

 今、前田委員のほうからは、この検討会議の直接の課題についてのご意見がございましたが、私は、法科大学院制度の創設を提言しました司法制度改革審議会の一員であったという立場から、法科大学院の認証評価の在り方という観点から意見を申し上げたいと思います。

 法科大学院の認証評価というのは、高等教育の質の保証という点から言えば、一般の大学の機関評価と異なるところがないというふうにも言えると思いますが、しかし、私は、法科大学院にとっての認証評価というのは、一般の大学機関評価とは少し違う特色があるのではないかと考えています。

 その1つは、法科大学院というのは、もう今さら申すまでもなく、冒頭のご説明にもありましたように、21世紀の我が国において司法に期待される役割を十分に果たすことのできるだけの質と量を持った法曹を養成するというために新しくつくられた、法曹養成制度の中核をなすものでございます。法科大学院の法曹養成教育の在り方は、公平性、開放性、多様性を旨としつつ、法の支配の担い手にふさわしい多様な理念を統合的に実現するものでなければならないというふうに私どもは提言をいたしました。

 そこで、法科大学院の設立についても、公平性、開放性、多様性を旨として、関係者の自発的創意を基準とし、基準を満たしたものを認可することとし、広く参入を認める仕組みとしつつ、他方、法科大学院における教育の質の確保のために、適切な信頼の置ける第三者機関による評価を継続的に実施すべきであるというふうに申したわけです。

 つまり、これからの我が国の社会の多様な法的なニーズにこたえるために、関係者の創意を生かした多様な特色のある法科大学院の参入を広く認めて、その多様な特色を尊重しながら、質の保証を認証評価に期待する、かけるという、そういう考え方であったわけです。

 もともと司法制度改革審議会意見書では、参入は広く認めろということを申しておりまして、おそらく、この考え方は、当時の政府ではそのまま容認され、現在にも引き継がれているということであろうと思います。

 ただ、認証評価の在り方は、ただいまも申しましたように、それぞれたくさん参入は結構だけれども、それぞれの法科大学院が創意工夫をして、特色を出しなさいと。特色がある、そういう法科大学院を広く認めるということが、これからの我が国の司法に対するニーズを満たすゆえんである。そういう考え方でございましたから、認証評価機関の在り方それ自体も、これは先ほど永田委員、潮見委員のほうからも話がございましたように、多様であることが望ましい。先ほど潮見委員からは、司法制度改革審議会の中ではどういう考え方だったんだろうかというお話がございましたが、私どもはそういうふうに考えていたわけです。

 そういう観点から見ますと、多様な特色のある認証評価機関というものが存在することは望ましいと思うわけです。

 ついでに申せば、これも先ほどどなたかからお話がございましたように、こういう考え方からすると、評価機関の評価基準も何か国が指導して統一化を図るというようなことが仮に起こったとすれば、それはあまり望ましいことではないということになるかと思います。

 現在の状況は、もともと大学評価を固有の事業としておられて戦後設立された大学基準協会と、それから、先ほど柏木委員も言われましたけれども、法曹が、間接的ではありますけれども自分たちの後進を養成するということにかかわる、そういう性格を持っている日弁連法務研究財団の認証評価機関の在り方、そして、大学評価・学位授与機構の場合は、これも潮見委員がご指摘になりましたように、国立大学について特に豊富な資料、あるいは理解を持っておられる、そういう認証機関という、そういう性格の違った、それぞれに特色のある3つの認証機関が今鼎立しているという状態で、これは大変バランスがよく、極めて望ましい形なのではないかというふうに思います。

 でも、今ここで大学評価・学位授与機構が法科大学院の認証事業から撤退するということになれば、もう皆さんがご指摘のとおり、現実問題としてもとてもやっていけませんし、そもそも法科大学院に対する認証評価制度の在り方という点から見ても、望ましくないというふうに思います。

 もう一つ、これは認証評価機関の在り方そのものではないんですけれども、ちょっと最近の法科大学院をめぐる状況といいますか、いろんなご議論がいろんなところでなされておりますが、認証評価との関係で、私、ちょっと懸念をいたしますのは、司法制度改革によって改革されたのは法曹養成制度全体でございまして、しかも、これをプロセスとしての法曹養成制度というふうに言っているわけですね。法科大学院は、その中核をなすものという位置づけではありますけれども、そのプロセスの一環なわけです。真の問題は、そのプロセスを通じて最後に法曹になった人の質が十分に確保されているかどうか、これが従来よりも高い質のものになっているかどうかということなのですが、それについての実証的なデータというものは、私は拝見したことがないわけです。最初のころ、とりわけ弁護士会などから言われたのは、司法修習生考試、略式で言うと「二回試験」、二回試験の不合格者が多い、あるいは、基礎的な知識がないというようなことでしたけれども、二回試験の不合格者というのは、旧試験の不合格者も含めて言われておりましたし、最近では減少の傾向にある。ですから、それをもって、新しい法曹養成制度の質が全体として悪くなったということは言えないように思うわけです。

 そうすると、何が言いたいかというと、法科大学院の在り方、それを認証評価でどのような方向に持っていくかという場合も、やはりそういうプロセスとしての養成の一環なんだという視点をぜひ見失わないでいただきたいという気がするわけでございます。

 少しはみ出したことまで申し上げましたけれども、以上でございます。

【河田座長】

 ありがとうございます。

 それでは、石田先生のほうからご意見をお願いします。

【石田委員】

それでは、法科大学院にとって認証評価機関が重要なものであるということを前提にして、2点ほど、私のほうから意見を述べさせていただきます。

 第1点は、認証評価機関の多様性という問題です。わたくしどもの法科大学院は、認証評価の第1回目を日弁連法務研究財団で受けました。財団で認証評価を受けた第1回目は、わたくしども早稲田大学と駒澤大学の法科大学院でした。

 わたくしどもは、その後どのように認証評価を受けるのかについて議論したのですが、当初は、第1回目を法務研究財団の認証評価を受けたので、次は大学評価・学位授与機構、そしてその次は大学基準協会で評価を受けようと考えていました。ところが、実際は、第2回目も日弁連法務研究財団の認証評価を受けることしました。

 当初考えていたのは、同じところで認証評価を受けるよりは、違う評価機関から多様な形で評価を受けることによって、早稲田大学の法科大学院の質が多様な形で検証されるのではないかということでした。

 しかし、そのようにせず、今回も日弁連法務研究財団でお願いするということにしたのは、認証評価を受けるに際の準備が余りにも大変であったからです。つまり、第1回目が大変であったがゆえに、次回は準備を積み重ね2年度1度ぐらいに中間的な自己点検評価を従来の項目にしたがって積み重ねておこうと考えるに至ったのです。実際、直近では、昨年の財団の従来の評価項目にしたがって自己点検をし、その結果を12月に公表しました。このような準備をしないと、次の認証評価には対応できないわけですね。非常にたくさんの資料を求められますし、たくさんの点検をしなければなりません。法科大学院の事務局も膨大な事務量をこなさなければなりませんし、認証評価にかかわる教員も大変だということになります。

 言いかえますと、第2回目に新しい機関に評価をお願いするということになりますと、もう一度異なる機関の認証評価基準を一から勉強して対応しなければならないということになります。つまり、認証機関の多様性というのは、それぞれの機関の評価基準の多様性であるということになりますと、実は5年ごとにそれぞれをぐるぐる回すなどということは到底できないということになるわけです。

 ですから、ほんとうの意味での多様性とは何かとうことになるのですが、それがタコつぼ化しないで多様性を確保する、いろんな機関から認証評価を受けるということであるとすると、認証機関相互の評価基準がある程度の統一していないと、それはできない。それぞれ特徴があってもいいと思うんですけれども、どこかでやはり基準のある種の統一性がないと多様な機関に認証評価を委ねることができないだろうというのが、私のこの多様性にかかわるところの実際の体験からくる感想的意見です。

 第2点は、個々の法科大学院にとって認証評価はどういう意味を持っているのかということです。この点、私は、第1回目の認証評価の際に、自校の自己点検評価委員会の委員長をやったのですが、教授会の構成員に認証評価の意義を次のように説明しました。1つは、認証評価を受けること自体が我々自身のファカルティ・ディベロップメントであるということです。それから、もう一つは、この認証評価によって、良い評価を受けることが重要なのではなくて、我々の法科大学院のどこに問題があるのかというのをきちっとわかるということが重要だということです。問題点がわかるということの意味はどこにあるのかというと、それは、大学本部に対して、こういうところが問題だと認証評価機関から指摘されたんで、問題点を改善するためにちゃんと予算をつけろと言えることになる。法科大学院の質を確保するためには、これぐらいのことが必要なんだと要求できる。

 つまり、個々の法科大学院にとっても、認証評価は以上の意味で大変重要なのですが、それだけに、こうした認証評価の準備を行う事務局の負担というのは、ものすごく大きいということです。アメリカのロースクールには認証評価担当の副研究科長がいるほどです。ですから、認証評価に関する事業に関して、きちっとした体制を各法科大学院がつくれるような支援と助言が必要だと思います。

 そういう意味で言いますと、今日の議論とうまく平仄が合っているかどうかわかりませんが、予算の効率的な運用ということも、この機構の在り方という今日のテーマの問題の一つであるとすると、その点は、むしろ、私立大学であろうと、国立大学法人であろうと、個々の法科大学院に対してきちっとした仕組みをつくるような支えをしていただくということも必要だろうと思います。

 以上でございます。

【河田座長】

 ありがとうございました。

 磯村先生からもお願いします。

【磯村座長代理】

 重複が多いかもしれませんので、できるだけかいつまんで意見を述べさせていただきたいと思います。

 1つは、多様性と評価基準の統一性の問題ですけれども、ちょうど中野室長からご説明をいただいた、法科大学院の認証評価についての机上資料の資料2、後ろから4枚目ぐらいのところに、中央教育審議会の提言というのがありまして、これは法科大学院特別委員会で私も関与したところですけれども、多様性が必要であるということは、もう全くそのとおりで、しかし、ここで大きく問題となりましたのは、とりわけ適合・不適合、あるいは適格・不適格の判断について、同じような大学で、ある認証評価機関と別の認証評価機関で全く違う結論が出るというのは、やはりどうもおかしいのではないか。そこで、ある種の判断についての統一性が必要な部分はあるのではないかというのが、大きな問題点として認識されておりました。

 しかし、認証評価というのは、単に適格か不適格かということだけではなくて、この法科大学院にはどういう特徴があって、どういうところが非常にいいというように判断することができるかというようなことを考えるときに、先ほど柏木委員からもご紹介がありましたように、例えば、日弁連法務研究財団では、実務家養成という観点について、非常に重点的な評価を行っておられ、それに対して、おそらく、例えば大学評価・学位授与機構等々においては、研究機関としての大学院が法科大学院を設置して、そこで実務家を養成するということで、どういう特徴があるかというように、それぞれのまさに個性を発揮するという、そういう意味での多様性というのは必ず維持される必要があるかと思います。

 それを前提として、現在の3機関体制がどうあるべきかということで、非常に長いスパンで考えたときに、この認証評価事業を必ず独立行政法人で行わなければいけないかというと、おそらく業務の性質上は、その必然性があるとは必ずしも言えないという面もあるように思います。しかし、この認証評価というのは、今日のいろんなご報告、ご質問でもありましたように、非常に手間とコストがかかって、新規参入をあんまり期待することができないような部門だと思いますが、そうすると、仮に大学評価・学位授与機構がこの事業から撤退するということを想定すると、既存の他の2つの認証評価機関がそれを受け皿として受けとめるということになるかと思います。しかし、それはおそらく、かなり中期的に見ても、それを客観的に維持できるような体制には現在なっていないというように思いますし、財政援助の問題とか、あるいは、評価を受けるための費用としての経費を値上げすることができるかというと、それはまた各法科大学院において大変なご負担になるかと思いますので、そういうさまざまな問題点というものをクリアしていけるかどうかということを検討せずに、いきなりこの2つでいけるのではないかという議論にはならないのではないかと思います。

 それから、私も認証評価にかかわったり、あるいは、文科省の調査の中でも、いろんな法科大学院の状況を見てきた経験からいっても、認証評価は、作業としては非常に大変であると同時に、ある種の継続性が必要であって、今、石田委員からは、受け手側からの継続性ということをご指摘いただいたかと思いますが、評価する側も、おそらくある種の継続的なノウハウが必要であって、しかも、現在、第2巡目がスタートするに当たって、認証評価基準の在り方というのが、重点評価基準とそうでないという形で、かなり大きく変わってきている時期にあって、いきなり2つの認証評価機関でそういう新しい認証評価制度のもとで対応ができるかというと、これも非常に難しい状況にあるのではないかというように感じました。

 したがって、今回の非常に重要なテーマである、大学評価・学位授与機構としてこういうものを継続すべきかどうかという点で、現時点でこれが撤退できるという客観的状況にはどうもないのではないかというように個人的に感じているところでございます。

【河田座長】

 ありがとうございました。

 佐藤補佐のほうからご意見。

【佐藤高等教育企画課課長補佐】

 先ほどの前田先生のお話の中で、仕分けの中で、3機関もあると無駄ではないかという指摘がなされたのかというお話がございまして、それについてすこし補足説明を。

【前田委員】

 いや、要するに、こういう事業仕分けで、横串なのかもしれないんですけれども、趣旨はそういうことだろうと。現に、3機関が無駄だという発言が事業仕分けの中であったということを認識しているという趣旨ではございません。

【佐藤高等教育企画課課長補佐】

 すいません。すこし私の受けとめ方がおかしかったのかもしれませんけれども、繰り返しになりましたら恐縮ですが、事業仕分けの中で議論されたのは、機関別のほうの評価についてでございまして、法科大学院のほうとは大分状況も異なりまして、かつ、仕分けのようにこれまで検討されたというふうな状況がございませんでしたので、今回このような検討会を設けまして、今後の在り方の方向性自体について議論していただくということでございます。

【河田座長】

 諸先生方からかなり様々のご意見を出していただきましたが、さらに伺っておくべきことがございますでしょうか。

【永田委員】

 関連で。前田委員が言われました、この事業の効率、効果ということが問題だというので、事業のほうの作業を省力化できないかという状況を指摘されましたけれど、それはもちろん、当然この問題は考えるべきだと思いますけれども、それは基準の項目を減らすとか、あるいは手続きを簡素化するということでありますけれども。

 まず第1点は、先ほど基準協会が申しましたように、まだまださまざまな問題を法科大学院は抱えているというところで、これを継続してやっていく必要があるということと、それから、法科大学院は学校教育法、それから大学設置基準、それから大学院設置基準、この中での専門職大学院の基準、それから法科大学院のその中での特殊な基準、それから連携法、そして、この評価に関する省令、項目がありますね。そういうものをクリアするということが、これが求められている。それが、社会的にそれはきちっと実現されているかということで、法令基準だけでも相当厳しいルールがある。そういうものをやはりきちっとチェックしていくということは、もう手放してもいい、ある程度省力化してもいいという状況にはないということをご理解いただきたい。むしろ、法科大学院がこれから健全に展開していくためには、先ほどおっしゃったような状況から考えますと、竹下委員がおっしゃったような当初の目標という点からしますと、なおこの評価というのは非常に重要な役割を持っていると私は思うということでございます。そういう意味で、なかなか省力化はまだできない。いずれは、それはしていくということでございます。

 以上です。

【前田委員】

 私は省力化しろというのではないですけど、おそらく外から見たらですね。それで、一番の省力化というのは、こういうときには、機関が3つあると。それで、いろんなところで2つとか、機関は減らして、ただ、結局大きな袋に入っているとさっき岡本委員がおっしゃったんですけど、教員は、我々もいろんなところでやるわけですね。そうすると、それを動かしていく組織は、なるべく少ないほうが省力化にはなるという面はあると思います。

 だから、本質的には、今永田先生おっしゃったことで、私はやっぱりロースクールの側から見ますと、ここの議論とちょっと違うかもしれないんですけれども、認証評価は徐々には楽になっていかないと、大学の側の負担は非常にきついと。それは、早稲田のように大きなところは、そういう組織をつくればというお話になるんですけど、中小大学はなかなかそれは大変だという問題を申し上げたつもりです。ただ、今すぐに省力化しろとか申し上げていない。

 やはり、ただ外に向かっては、3つ必要なんですかと。ほんとうに3つ、それが個性があって。だから、複数か単数かというのは決定的な違いだと思いますけど、3つを2つにするかという議論は、ちょっと次元が違ってくる可能性はある。ただ、さっき申し上げたように、先ほどのご議論を伺っていて、私の結論といいますか、意見としても、今すぐこれを廃止したほうがいいという議論をしているわけでは全然ないですね。

【義本高等教育企画課長】

 よろしゅうございますか。

【河田座長】

 義本課長、どうぞ。

【義本高等教育企画課長】

 この問題は、今ご議論いただいていますけれど、法科大学院の問題だけではなくて、機関評価も含めて、認証評価制度の問題にかかわる話でございまして、これも中教審の中でもご議論がありまして、多様性の確保ということと、やはり認証評価の趣旨ということから考えれば、選択をどう確保していくかという問題とあわせて、大学の負担をどうやって軽減していくのかという問題がございます。

 そういう観点から、国が一律に何か決めるのではなくて、むしろ機関間でいろんな形で情報交換とかコミュニケーションをとっていただいて、その協議の中で、例えば、多様性を確保しつつも、提出する書類であれば、そのフォーマットを少しく考えて省力化できる形にするとかいうふうな、運用の面にもいろんな形がとれることもございますので、そういうことも含めて、いわゆる協議会というような形で検討の場を設けていただいて、そういう情報交換なり、あるいはそういう環境を整えていくということが大事ではないかということも中教審でご議論いただきました。そういう観点から、冒頭ご紹介させていただいたような連絡協議会を設けて、そういうことも今後進めていこうという話になっているところでございます。

【河田座長】

 ありがとうございました。

 先生方の活発なご議論が出ましたので、私としてはちょっとまとめがたいですけど、3名の各認証評価機関の先生方のほうからは、やはり多様な認証評価の観点と手法を通じた法科大学院の質の維持とか、あるいは評価機関職員の人材確保、それから、その担い手である評価者、そういうことがやはり大変な時代だけれども、これはやはり必要である。そして、その中で大学評価・学位授与機構が認証評価機関として果たしてこられた役割は大きなものがあるし、今なおそういう多様性の中で、それが評価されねばならない、そういうご意見であったかと思います。

 ただ、評価の経費の負担の面とか、1年当たりの評価年度が集中するとか、さまざまな問題があるということで、一度にこの会議では解決できませんけれど、そういう課題をいただいたというふうに思っております。

 また、今義本課長が申しました、そういう認証評価の機関の連絡協議会というのが、そうした諸課題についても、やはりあまり統一するのはいかんという意見もございましたけれど、主体的な協議の場として、そういうものが必要であり、やはり3機関としての協議を積極的になさねばならないということかと思います。

 それからまた、評価の多様性ということについては、さまざまなご意見をいただいたと思いますし、評価基準の独自性の尊重ということも指摘がなされたかと思います。

 したがって、現行のような3機関が競い合うような形での、それぞれの特徴つまり独自の観点や方法を生かした評価体制、多様な評価機関が存在することが、今の時点ではやはりどうしても必要であろうというご意見ではなかったかと思います。特にその中で、竹下委員からは、平成13年6月に提出された司法制度改革審議会の中で主張された理念というもの、掲げられた理想というものがやはり忘れ去られてはいけないというご発言がございました。

 また、評価を受けられる大学関係の方々からも、評価に対するさまざまなご意見、評価作業というものが非常に大変であるということ、それから、フォローアップの問題もご指摘があったと思います。そういうことについてのご指摘をいただきました。

 したがいまして、これらのご意見を踏まえますと、直ちに大学評価・学位授与機構が認証評価事業から撤退するということは困難ではないか。法科大学院という日本の法曹、司法制度を維持するための大事な組織、その質をきちっと保ち、日本の21世紀の法曹界を支えるものとして、人材を養成するという立場から見るならば、その評価というものは大事であろうということで、これを直ちに撤退することはやはり困難な状況を招くであろうと私は理解させていただきました。

 いずれにいたしましても、本日先生方からいただいたご意見を踏まえながら、私、座長として、磯村先生と協力しながら、事務局と、次回、おそらく月末になろうかと思いますが、それまでに取りまとめ案をつくりまして、先生方に見ていただき、次回もう一度、年度末の押し迫った時期でありますけれど、公開の場できちっとした結論を出したいと考えております。本日はどうもありがとうございました。

 

(5)事務局から、次回の日程について説明があった。

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