大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会(第15回) 議事録

1.日時

平成22年12月22日(水曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省 東館3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. 最終報告書(案)について
  2. その他

4.出席者

委員

中山座長、菱沼副座長、倉田委員、小山委員、坂本委員、佐藤委員、高田委員、平澤委員、藤川委員、前野委員、松尾委員、宮崎委員、村嶋委員

文部科学省

新木医学教育課長、小山田看護教育専門官

オブザーバー

島田看護課長補佐(厚生労働省医政局)

5.議事録

【小山田看護教育専門官】  定刻となりましたので、ただいまより第15回大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会を開会いたします。

 委員の皆様方におかれましては、ご多忙のところ、お集まりいただきましてまことにありがとうございます。

 では、座長に議事進行をお願いいたします。

【中山座長】  皆さん、おはようございます。12月も押し迫ったところでの会議になってしまいました。今回でできるだけ終わりにということで、まとめていきたいと思っておりますので、最終報告書のほうどうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、事務局から今日の委員の出欠状況の報告と配付資料のことについて確認をお願いいたします。

【小山田看護教育専門官】  初めに、委員の出欠状況ですが、横尾委員、西澤委員、富野委員がご欠席で、また、先ほど急遽ですが、秋山委員からご欠席の連絡をいただいております。

 続いて、配付資料の確認をさせていただきます。議事次第と席次表がございまして、資料1として大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会最終報告(案)がございます。この資料1の添付資料の1として、学士課程においてコアとなる看護実践能力と卒業時到達目標について(案)。添付資料2として、その横票のものが1部。その後ろに「実践能力と到達目標」文言修正案一覧というものが2枚物ですけれども、つけてあります。最後に前回の議事録です。落丁等ございましたらご連絡ください。

【中山座長】  ありがとうございました。皆さんの資料は大丈夫でしょうか。

 それでは、今日の議題は最終報告案の検討だけですので、それに入りたいと思います。これにつきまして、事務局から説明していただき、1つ1つを検討していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【小山田看護教育専門官】  では、資料1をごらんください。1枚めくっていただいて、目次をごらんいただきまして、この目次で行きますと、前回大きな4の1)、学士課程における質保証という、こちらまでが前回一度お見せしてご検討いただいておりまして、今回新しく追加しましたのが2)、大学院における質保証と今後の課題というところになっております。準備が不十分でなかなかごらんいただく時間がなかったことをお詫び申し上げます。

 前回既にご議論いただいた部分については、最後の大学院の部分がつけ加わったことも踏まえて全体を見直して、多少の加筆、修正、また前回のご議論を踏まえた修正などもしておりますので、その部分については見え消しの状態でお示ししております。一応ずっと最初から、前半についてはどこを変えたかということと、それから後半、大学院のことについては内容について説明させていただきます。

 1ページ目は文言の細かい修正があるんですけれども、3ページ目のところで、これは昨日お送りした資料からさらにちょっと変わっているんですけれども、保健師助産師看護師法が変わったこととあわせて、看護師等の人材確保の促進に関する法律が変わった。それによる新人看護職員に対する臨床研修の努力義務が課されたという、その辺を少し明確化したということで文言を追加しております。3ページの上から2段落目になります。

 その後も、その承認のプロセスがこの報告書の仕上がりの同時並行しておりますので、少し先を見越した形で、以前は「会議で承認された」という表現ぶりだったんですけれども、「改正された」という形で、その時期を待って年月を入れるような形にしております。

 2の本報告において取り上げる課題については、一部大きな削除をしておりますけれども、中教審の議論などを少し関連するものとして盛り込んだのですが、ちょっと論旨が不明確になるといったようなことがありまして、ここでは削除しております。また、「一方」の下の段ですけれども、大学院のことが課題であるというところを少しお示しするために、一部加筆しております。

 4ページ目に行きまして、前回ご指摘いただいた「学位授与課程教育」といった表現ぶりについてわかりやすくするために「学位を授与する課程としての教育」といったものに1行目で修正しておりまして、次に5ページ目のところで、ここもわかりやすくするということで、「到達目標についての共通理解を得る」だとわかりにくいので、「到達目標についての関係者間の共通理解を得る」という形で加筆しております。

 5つの群と20の看護実践能力の一覧については、前回ご議論いただいて、青字になっていないんですけれども、アセスメントのところ、前回と違って、今回は「査定」という訳語を使っております。また、その他委員の皆様からいただいた意見に基づきまして、14番が「保健医療福祉における看護活動と看護ケアの質を改善する能力」といったように、一部修正しておりまして、また、19番を「生涯にわたり継続して専門的能力を向上させる能力」という形に修正しております。

 前回お示ししたところでの大きな変更は以上です。

 続いて、11枚目に行きまして、大学院における質保証ということで、このたび新たに加わった部分についてご説明いたします。

 まず、大学院での養成が期待される看護系人材としては、教育者、研究者、そして高度専門職業人が挙げられる。中央教育審議会のワーキンググループの調査などでは、学生の専門資格志向等が指摘され、同様の事例が検討会でも報告されているということで、修士課程数が100を超えた我が国も、修士課程は高度専門職業人にシフトする時期ではないかという意見も出されましたが、看護系大学が急激に増え、博士号を有する教員が他領域と比較して少ないという指摘がある現状において、教育・研修者養成の前段階としての修士課程における教育者養成はいまだ重要な課題であると述べます。

 教育者養成においては、多様な大学院それぞれに必要とされる教員が偏らずに育成できるよう、養成する人材像と就業先とのニーズが合致していることが重要である。一方、医療の高度化等を背景に、学士課程等では養成困難な専門職業人養成を修士課程等に期待する声も大きいということで、看護系人材においては、研究能力であるとか、マネジメント能力、将来の看護職の役割拡大に対応できるような能力の育成が期待されていると述べております。

 次、12枚目で、修士課程等の教育の質保証についてです。まず、高度専門職業人養成を目的とするコースの学生の特徴として、社会人入学が多く、動機づけの強い学生が多い一方で、学修準備状況の多様性から教育上の困難もあるなどの報告があった。そのため、入学者要件を限定する、一定の臨床経験を要求するなどの工夫が取り入れられていた。修士課程全体を見ても、社会人学生の割合は増加しており、学士課程同様、修士課程における学生の多様化も進んでいる。一方、社会のニーズを反映して、ほとんどの大学院が人材養成目的に教育、研究、高度専門職業人の養成を掲げている。

 今後は、課程数が充実してきたことや学生の多様化が進んでいること等を踏まえ、大学院が社会のニーズが入学生の状況、自大学院の教育資源に基づき、主体的に機能分化を図り、その機能に特化した教育の充実を図ることも考慮されるべきである。その際、学士課程同様、人材養成目的を明確化し、知識・技能の修得目標、そして、入学者選抜の方針を整合的に明確にし、組織全体を通して共有すること、及びそれらを社会に公開していくことが教育の質保証において重要である。

 なお、今後、臨床教員の関与や専門職学位課程が増える方策を期待する意見が出されている。また、教員の質的・量的充実を図る手段としては、大学間連携により、異なる専門性を有する教員が協働して教育を担当する方策や、臨床教員の活用を考慮していくことが提案された。

 続いて13ページで、保健師・助産師養成を行う教育課程の質保証の在り方についてというところですが、学士課程と同様、多様な課程で取得可能な資格を修士課程等で養成する場合は、職業に固有の能力に加えて、当該課程を終えた人材として求められる資質・能力も育成することが求められる。

 修士課程等で助産師養成を行っている既存の課程では、前述の要件を満たすために、平均54単位という過密なカリキュラムで教育が行われている。修士課程の修了要件単位については、何らかの形で修士課程の単位を指定規則の単位としても認定していくことで、総単位数を減じるような仕組みが必要であるという意見があり、また、学位の質保証という観点から、学士課程等でも教授可能な教育内容のみで構成された科目を修士課程の修了要件に組み込むことは避けなければならないという意見も出された。

 保健師、助産師を修士課程等で養成する場合、養成する人材像と課程修了時の到達目標は高度専門職業人にふさわしいものであるべきであり、カリキュラムは修士課程にふさわしい高度な事柄を教授するものでなければならない。また、指定規則の教育内容と学位を担保する教育内容とを別個に教授するのではなく、両者が統合された学位にふさわしい科目が開設されるべきである。そして、カリキュラムの質は分野別の第三者評価等、公的な評価の枠組みにより担保されることが望ましい。教育の質を保証するためには、入学者選抜の方針を慎重に定める、教員の質的・量的充実を図る等、多様な方策をこのほかにも考慮する必要がある。

 なお、修士課程等における保健師・助産師養成課程については、「実践能力と到達目標」の策定や、指定規則の改正に伴うカリキュラムの再構築、分野別評価の進展等の変化も踏まえながら継続的に評価を行い、望ましい在り方に向けて議論を続ける必要がある。

 最後に、今後の課題として、教育環境の充実ということと、看護学教育の質保証体制についてということで2点まとめております。

 まず、教育環境の充実については、教育の質保証において最も重要な要素は教育の質的・量的充実である。看護師等の資格や経験を有する教員の充実を図るべきという意見があった一方で、学位の質を保証する観点から、さまざまな領域の専門家が教育にかかわる体制も重要であるという意見もあった。また、臨床教員の活用が教育効果を上げるという提案がある一方で、教員が相対的に不足しているため、教員が実践に携わる体制を構築することは困難であるとの意見が多く見られた。大学、大学院においては、教育目的の明確化と、その目的に適した教員構成を実現することが求められ、文科省においても教育体制の充実に資する方策を多方面から検討していくことが必要である。

 さらに、実習環境の充実も必須であり、小児看護学領域等の実習施設の不足や、訪問看護等、小規模事業所が多く実習を引き受けることが困難な領域の存在も指摘された。実習を引き受ける施設に対する支援の在り方や、新たな条件下で効果的に実習が行える方策の検討が必要である。さらには、卒業生の経年的な就業動向を把握するなどして、教育課程の評価、改善に反映させること、そして卒業生をはじめとする有資格者が生涯を通じて看護専門職としての能力を向上させ、発揮し続けることを支援するための体制等についても今後検討するべきである。

 2番の看護学教育の質保証体制については、これまで繰り返し触れましたが、分野別評価による主体的な教育の質保証体制の構築が喫緊の課題であるという点と、指定規則について、これまで看護師等の資質の向上に大きな役割を果たしてきたが、大学教育の創造性に一定の制約を課してきた側面もあるということで、今回「実践能力と卒業時到達目標」をつくり、今後の評価を通じて、新たな看護師等の養成の質保証の在り方について検討していくことも今後の課題であるとまとめました。

 引き続きまして、添付資料のほうですけれども、一番最後につけました「実践能力と到達目標」文言修正案一覧というほうをごらんください。添付資料1と2はこの修正がかかったところが修正されているというところで、内容的には変更がありません。前回のご議論を受けて、文言の修正をした、もしくは修正をもとに戻した等の変更をしたのを一覧としてまとめておりまして、変えましたところは、まず、Health promotionというところは、前回「健康増進」としておりましたが、今回はもとに戻したということと、コンプライアンスとアドヒアランスについても、なかなかよい修正案がなかったということで、修正なしということにしております。また、ストレスコーピングについては、前回のご議論をいただきまして、「ストレスへの対処」から「ストレスへの前向きな対処」と変えました。サバイバーについては、「疾患からの回復者」というものを「生還者」と変えました。それから、アサーションについては、「自他尊重の自己表現」という形に変えております。

 そして、2枚目ですけれども、日本語としても、それから片仮名語としてもどちらにしてもなかなか一般の方から見てわかりにくい言葉については、それを限定して用語の定義をつけてはどうかということを事務局で考えまして、その一例として、査定とヘルスプロモーション、コンプライアンス、アドヒアランス、社会支援ということについて定義の案というものを出しております。ただ、この定義の案も専門家のご意見を伺ってやったものではなく、事務的に仮に置いてあるものですので、この用語の定義をすること自体ご議論いただいた上で、必要であれば、この定義についてはもっと詰めていただくというようなご議論をいただきたいと思っております。

 資料の説明は以上です。

【中山座長】  ありがとうございました。

 資料に対しての質問もあるかと思いますが、進めていく中で随時質問していただくことにして、早速議論のほうに入りたいと思います。最終報告書から入っていきたいと思います。、前回指摘されたところを直していただいているのですが、その辺を見ていただき、ここはどうなのかというところがありましたらお願いいたします。とりわけ赤くなっている3ページぐらいからはかなり修正されていますので、この辺のところからもしあれば出していただければと思います。もちろん違うところでも構いませんので、ご発言願います。小山委員、どうぞ。

【小山委員】  この「実践能力と到達目標」の呼び方が今までのこの検討会で変わってきたのですが、最終的に「実践能力と到達目標」という形になっております。実を申しますと、厚生労働省のほうでも「実践能力と到達目標」というのがそれぞれ看護師、保健師、助産師でできましたので、誤解を受けないようにするには、少し長過ぎるかもしれないのですが、「学士課程においてコアとなる実践能力と到達目標」という案ではいかがでしょうか。

 たまたま私は研究会にも入っておりましたが、こちらのほうはやはり学士課程ということを意識していますので、養成所にプラスアルファされている内容があるかと思われます。同じような「実践能力と到達目標」という表現を用いることによって誤解されないように、この報告書についてはそのようにしてはいかがかと思いました。

【中山座長】  長いものを短くしてしまったところです。4ページのところの真ん中ぐらいに、「そこで、検討会では」という、委託事業の研究成果に基づきということで、「学士課程においてコアとなる看護実践能力と卒業時到達目標」。これを(以下、「実践能力と到達目標」)としてきたのですが、小山委員からは、これは学士課程を強調してきましたので、「学士課程における実践能力と到達目標」。あるいは、「学士課程教育における実践能力と到達目標」というような形で、「学士課程」という言葉を入れたほうがいいのではないかというご意見だと思いますが、この辺はいかがでしょうか。

 少し長くになりますが、それでも学士課程のことはきちんとしておかないと、ほかとの区別がついていかないのではないかということですが。はい、どうぞ。

【小山委員】  最初のところのように、「以下、実践能力と到達目標」とする時に、その前の文章で「学士課程における」というのがある場合はいいのですが、最後の15ページの「課題等」ではもう「実践能力と到達目標」になっていますので、そのように思いました。

【中山座長】  文章の続きでは必要がない場合がありますが、文章の流れによっては「学士課程教育における」とか、「おいて」とかという言葉をつけたほうが紛らわしくないのではないかというご意見かと思いますが、いかがでしょうか。

 特に問題がないようでしたら、報告書の中ではできるだけ使い分けていくようにしたいと思います。

 ほかに何かございますでしょうか。はい、坂本委員、どうぞ。

【坂本委員】  9ページの看護実践能力の育成についてというところで、社会の期待にこたえるために、看護教員をできるだけ実践的にしていくということが今までの意見で出ていたと思います。私も臨床教員だけでなく、多様な人材活用の方策を検討すべきという意見を言わせていただいたのですが、そういうところはどこかに書いていただいているのでしょうか。9ページの上の部分なのかどうかわかりませんけれども。

【中山座長】  そこは随分議論しました。

【坂本委員】  はい。9ページの下のほうになるかというふうに思うのですが、看護教員だけではなくて教養教育にも多様な人材を入れることと、最後の課題にはなかなか難しい課題があるということは重々書かれてはいるわけなので、わかっているのですが、やはり看護は実践的な教育ですから、そういう意味ではどこかに教員の実践ということも入れていただければと。この2点です。

 それからもう1ついいですか。

【中山座長】  はい。

【坂本委員】  15ページですけれども、これは書き方の問題になると思いますが、下から2行目の「看護学教育の多様化が予測される中、指定規則による質保証の重要性が高まるという見解もあるが」というふうに続くのですが、私は「見解もある」というふうに切っていただいて、そしてその後、「実践能力と到達目標」で新たなものを探していく、検討していくということに移っていただければいいと思います。指定規則をまずはここで否定して、次に行くんだということではなくて、指定規則も大学がいろいろなことでできてきた中で、きちんと質保証してきたわけですから、「高まるという見解もある」というふうに切っていただいて、「が」をとっていただけないでしょうか。

【中山座長】  この2つは事務局のほうでもしあればコメントをいただけますでしょうか。

【小山田看護教育専門官】  いえ。

【中山座長】  先ほどの教員のところは、その前の課題のところに少し出ているようにも思うのですが、14ページの一番最初です。「最も重要な要素は教育の質的・量的充実である。教員の構成については、実践能力の育成を重視し、看護師等の資格や経験を有する教員の充実を図るべきという意見があった一方で、学位の質を保証する」というような形で書かれているのですが、これにもう少し坂本委員は強く。

【坂本委員】  具体的にということです。

【中山座長】  具体的に強くということでしょうか。

【坂本委員】  はい。

【中山座長】  「臨床教員の活用が教育効果を上げるという提案がある一方で、教員数が相対的に不足しているため、教員が実践に携わる体制を構築することは困難である」というのがあって、書き方の問題もあるかと思う。もう少しこの辺は工夫して、今、坂本委員がおっしゃったようなところの課題を明確にしておいたほうがよさそうだということですね。

【坂本委員】  それから、困難であるというふうな課題で終わらないで、構築していくべきであるというような形にしていただきたい。それからもう1点は、看護に幅広く実践家とかそういう人たちを教育として入れていくんだというようなこと、この2つを入れていただければと思います。

【高田委員】  ちょっとよろしいですか。

【中山座長】  はい、高田委員、どうぞ。

【高田委員】  今おっしゃった12ページの下の最後の2つのパラグラフのところに臨床教員の関与とか臨床の教員の活用ということが書いてありますが、これですね。

【坂本委員】  はい。ここにできるだけ具体的な部分を入れてほしい。

【高田委員】  ここに入れるのがいいのかどうかということは別にして、おっしゃることはここに多分書いてあると思います。

【中山座長】  どちらかにきちんと入れるということと、課題としても残されているので、もう少し明確になるようにしておくということですね。

【坂本委員】  はい。

【中山座長】  佐藤委員、どうぞ。

【佐藤委員】  今、坂本委員と座長の触れられた14ページの教育環境の充実に関する5行目あたりの記述なんですけれども、さまざまな領域の専門家が教育にかかわる体制も重要であるという意見もあったという。この辺、看護学科等の、看護学教育を施す学士課程において、大学としての体系的な教育課程の編成という設置基準が求めている最も基本的なところに立脚して、要するに教養教育等の充実、このことに何らか形で触れていただければと思うんです。看護実践の重要性は十分わかります。先ほどの強化するという方向性は一面において正しいんですけれども、それだけに傾斜するあまり、学士課程としてのもう少し幅の広い人間教育の視点が失われては困るという懸念があります。

 ご案内のように、設置基準は平成3年以来大綱化されて、大学も自由になっています。近年、まことに残念ながら、新設の大学などを中心にして、教養教育の体系が非常にプアな例が増えてきました。これは事実だと思います。そんなことも考えますと、例えば、前回座長もちょっと言及していただけましたけれども、総合大学から単科大学、いろいろありますから一律に論ずることは難しいんですけれども、さまざまな工夫が必要だということ。例えば単科大学であるならば、その学部学科でしか充実の方途もないわけだから、あまり選択肢がないんですけれども、それでも看護学以外の幅広い教養とか、関連諸科学の専門家を配置する等の工夫。それから、複数学部や総合大学では、他学部の教員の資源を活用して、連携して充実を図るなどの方途などを含めて、要するに大学としての幅広い、奥の深い学士課程教育の実現に向けた何がしかに言及していただければありがたいと思います。

【中山座長】  ありがとうございます。

 皆さんもお気づきかと思いますが、今回のカリキュラム、今出ました「実践能力と到達目標」ですが、これは学士力の全容が見える形のものではないので、学士力ということを強調しながら、では、学士力はどんな形でつくっていくのかということについてはいま一つ明確でないという問題があるかと思います。前回の1次報告では相当学士課程のことを強調しました。それを受けて最終報告があるという位置づけをもう少ししたほうがいいのかもしれない。これは副座長とも始まる前に少し話したのですが、1次報告でのそういった強調点が今回の報告に引き継げていないので、その辺を引き継げる形にすると、学士力の問題は少しカバーできるかと思っております。少し工夫をする形で、また皆様のお力をかりてやっていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 松尾委員、どうぞ。

【佐藤委員】  お願いします。

【松尾委員】  2点あるんですが、臨床教員というものの定義は一体どうなっていますか。というのは、14ページの、先ほど坂本委員から指摘があったところの文章の意味が全くわからないんです。例えば、もし臨床教員が、現場でやっておられる看護師さんがそういう教員として教育にかかわるという意味なのか、あるいは既に大学にいる方で臨床を専門にやる方なのか。この定義を明確にしておいたほうが、これを書くときに、要するに教員の数が足りないので、現場の人ももっと引っ張ってきて教育にかかわらせようという意味で書かれているのか。ここはどういうことなんでしょう。教えてください。

【中山座長】  小山田専門官、いいですか。

【小山田看護教育専門官】  事務局としましては、この検討会では医学部のように両方の、病院にも大学にも所属するような形で教育も実践も兼務する教員が必要ではないかというご議論がありましたので、その趣旨で、定義についても9ページにごく簡単ではありますが、「実践と教育を兼務する教員」という形で表現はしております。

 ですので、臨床で携われている方が教育にもっとコミットというのは、今現在も教育にはお力をかりていることと思いますので、そこよりは一歩踏み込んだ形の趣旨を事務局的には出しておりますが、ご議論くだされば。

【松尾委員】  というのは、例えば病院にいる看護師さんが教育にかかわったときに、いろいろな大学で工夫はされていて、例えば臨床講師とか教授とかという称号を与えている大学も結構あると思うんですが、やはり明確に資格をはっきりしてやるということも重要ではないかと思うんです。その辺を少し入れていただければと思います。

【中山座長】  そこについての議論、臨床教員ということについての定義はあまり明確ではなくて来ていましたね。確かに両方の使い方をしていた。1つの議論としては教員の臨床能力、実践能力をどのように維持していくのかということの意味で医学部のような形で実践と教育の両方ができるということがあってもいいのではないかということ。それが今の看護教員の人員配置の問題から考えると困難だというのが出て、一方で、実践現場の臨床能力の高い人たちの力をかりながら臨床教育をやるということをもっと考えなければいけないのではないかということで、松尾委員がおっしゃったような臨床講師とか臨床教授とか、役割と立場を明確にした上で実施するシステムがつくられていいのではないか。この両方が出たと思うのですが、それでもまだ坂本委員、マンパワーの問題があるから、そこがすっきりしなくて、少し中途半端でしたか。

【坂本委員】  はい。私どもの大学もそうですけれども、おそらく大学がある程度認めて、病院にいる看護師さんたちに対して、あるいはドクターに対して臨床教授とか、今は講師などという名前はつけていないですけれども、教授というような形で名前を持っていただきたい。そしてその方たちに座学、学問的なことの教育、いろいろな看護学なども教えてもらうのももちろんなのですけれども、現場に行ったときにもある程度その人たちが入れ子みたいな形でいろいろなことをサポートしてもらうという形を実践しているところが出てきています。しかし、おそらく臨床教員の定義はまだ私たちもよくわかっていないようなこともあると思います。

【松尾委員】  そういう位置づけを明確にしたほうが、修士の学生さんもそうですけれども、学士もそうなんですが、全体の教育プログラムをわかった上で、自分の役割はどういうふうかということがちょっと明確になっていなくて、学生さんが来たときにただ教えるという、それは非常に効率が悪いので、そういう意味で教員組織というんですか、そういったものの構築も含めてやはり明確にしておいたほうがいいのではないかという気がするんです。

【坂本委員】  松尾委員のご発言にあった形でいいのですが、ただそういう名前をつけてやっていくことに、少し文科省から支援していただきたい。例えば、病院がそのような位置づけとして臨床教員に名前をつけたときには何らかの形でやや公的に認められていることが見えてくるような、そこにもお金も関係するとは思いますが、そういうようなものも国として少し動いてくださればいいなという気はしていますけれども。

【中山座長】  報告書にそれを盛り込めるかどうかはわかりません。そういう課題も残しつつ、臨床教員とかそういう言葉を使うときに、どういうことを指して臨床教員と言っているのかということがわかるようにしておいたほうがいい。それは先ほど坂本委員がおっしゃったように具体的にというところが出れば、言葉の定義があいまいでも誤解を招かないような形になるかと思いました。そこは少し努力してみたいと思いますが、臨床教員の定義をきちんとできるという状況ではないようにも思いますので。

 高田委員、どうぞ。

【高田委員】  今の点、医学系の方がこれを見る時、臨床教員というと、医学の臨床系をさすと思います。基礎系と臨床系の臨床系をさすと考えるので、混乱するのかと思ったのです。臨床系の教員というと、内科とか外科とかの担当の教員の皆さんが臨床の教員になってしまうのです。

 これとはまた別に、医学系でも大学病院以外の病院の先生方を臨床教授とか、類似の形で称号を差し上げて、実際の臨床実習などでいろいろやっていただいているということは多分どこの大学でもやっていると思います。看護学のほうもだんだんこれに近い形になりかけているのではないかと思います。学部の先生方も病院へ出ていって臨床を持つとか、そういうことが私どものところも少しずつ始まっています。それから、病院のほうでの看護師の方たちにも実習等を手伝っていただくので、今、坂本先生おっしゃったような形で臨床教授というような形になっていただいています。ですから、医学関係の方が見た時に混乱しないような表現にしたほうがよろしいのではないかと思いますけれども。

【中山座長】  ありがとうございました。そこは混乱がないような表現を考えてみたいと思います。

 ほかに。どうぞ、藤川委員。

【藤川委員】  言葉のところで、コンプライアンスは法令遵守と普通認識していますから、これは何となくわかりますけれども、アドヒアランスを辞書で調べてもこういう説明はどこにも出てこないんです。だから、看護界だけで理解しているアドヒアランスというのは、世界的にも日本の中でも通用しないということを認識していただかないと、患者が治療計画の決定に積極的に参加し、決定されたセルフケア行動を遂行するというのは、いわゆる医療側が医療従事者の治療計画を説明して患者さんが認識して、それを受けとめる、支持するということですから、アドヒアランスには支持する意味がありますので、そういう意味で使っているんだろうとは思います。患者側から見れば、治療計画に従ってきちんと服薬もするし、リハビリも従うし、さまざまな治療にも参画するということですから、アドヒアランスと表現すると意味がわからない。そういうことを看護側が患者教育として実行する。これは一番最後のところに患者教育とありますから、この中にも含まれる。アドヒアランスをここに出しても、この位置づけが理解しづらいと考えます。

 コンプライアンスは法令遵守ですから、いろいろな組織の中でサービスを受ける側が法に基づいて、そこの中の規則に従うというのは当然あるべきと考えます。このアドヒアランスがちょっと理解できないかと思います。

【中山座長】 この用語についてまだ要検討ですね。こういう用語の説明集をつけたほうがいいかなということで、例をあげて出していると思います。

【藤川委員】  それはつけたほうがいいと思います。

【中山座長】  ここにつきましては、藤川委員がおっしゃったように、いろいろなことがあるので、もう一度、ここに専門家がたくさんいらっしゃいますので見ていただいて、誤解がないような用語の定義にしたいと思います。用語の定義をつけることで、中に片仮名が入ってもいいかということなんですが。

 倉田委員、それぐらいで妥協できますでしょうか。できるだけ片仮名を日本語にしたのですが、できないものについては、用語の定義を入れたりすることで、カバーできればいいのではないかと思ったんですが。

【倉田委員】  今、藤川委員がおっしゃっていたアドヒアランスなんですけれども、私はこのアドヒアランスは、医療者からではなくて患者のほうが納得して主体的というところが肝だと思うんです。ですから、その辺の解釈を入れていただけたらと思います。

 パターナリズムからアドヒアランスに変わってくるという、患者としてはここ10年ぐらいでだんだん変わってこられたと思うんです。ですから、アドヒアランスというのは、やはりその辺のニュアンスというのは私は必要だと思うので。

【藤川委員】  インフォームドコンセントと関連しますね。

【倉田委員】  はい。

【藤川委員】  だから、ここはインフォームドコンセントのキーワードを入れるなら何となくわかりますけれども、アドヒアランスと表現されると、普通の人はわからないんです。ほんとうになれている人はわかりますが、部外者は絶対にわからないんです。

【中山座長】  では、用語のことはこれで。村嶋委員、どうぞ。

【村嶋委員】  簡単なことからといいますと、まず、12ページの下に「教員の質的・量的充実を図る手段の1つとして大学間連携等により異なる専門性を有する教員が協働して教育を担当する方策や」と書いてあります。これは一見読むといいんですけれども、これが各大学の教員の削減つながらないような方策が必要だと思います。

【中山座長】  12ページですか。

【村嶋委員】  下から3行目です。ごめんなさい。大学間連携で異なる専門性を有する教員が協働して教育を担当する方策。基本的にはいいんですけれども、でも、それが個々の大学の人数削減につながらないような方策が必要です。大きな総合大学の中の弱小な看護学は常に脅かされておりますので、これだけ書くと拡大解釈される危険性が実際あります。今はシビアな面もあるので、そこにぜひご配慮いただきたいです。

 この文言が各大学における看護教員の削減につながるようであってはなりません。「各大学は各大学としてきちんやりなさい」というようなことをプラスアルファ盛りこんで頂きたいです。

【中山座長】  はい。これは国立大学が一番厳しいので、文部科学省のほうにそういう形で読まれないようにという配慮をしていただきたいと思います。

 どうぞ、藤川委員。

【藤川委員】  僕は専門医の会議に出ているんですが、1つの大学で教育できないというのは医学部でも同じです。1つの大学で教育できないから連携しよう。専門医志向のドクターが圧倒的に多いんですが、初期臨床研修も都会に集まって困っているんですが、その次の3年目からの後期研修も、専門医をどこでとるかというときに、やはり大学間の差があるわけです。東大とか予算のたくさんあるところと予算の少ない地方の大学の医学部などに格差が存在する。東京で研修したいとなると、3年で地域に戻らなくなるんです。地域の、地方の大学に戻っても都会の大学病院といろいろな病院と連携することにより地域格差を是正するというのが今専門医の研修の会議で文科省が検討しているんです。

 同じように、看護大学であってもやはり温度差というか、能力の差があると思うんです。それをある程度標準化するためには、Aという看護大学に行っても、B、C、Dの、いわゆる連携した教育が受けられるとなると、1つの大学だけで競争を皆やっているんですけれども、それにはどうしても限界があるんです。マンパワーにしても予算にしても取り合いになります。だから、そこを連携しようというアイデアで今医学部は動いていますので、看護大学も多分そういう動きになると思います。大学院とかになってくると、やはり専門医と同じ扱いになっていきますので、連携すると各大学のマンパワーを削られる、予算を削られるというリスクではなくて、前向きにとらえたらどうか。この表現は僕は非常にいいのではないかと認識しています。

【中山座長】  表現はいいけれども、そこは少し配慮して。選択的に書いてほしいということですね。

【藤川委員】  悪用されないように。

【村嶋委員】  とても危険です。

【松尾委員】  いいですか、今の。

【中山座長】  はい、松尾委員、どうぞ。

【松尾委員】  今の点に関して、14ページの先ほどちょっと問題になったところで、上から5行目のところに、教員数が相対的に不足していると、現時点では、これは絶対的に不足ですよね。将来変わるときにはそうかもしれないですが、ここはもう少し明確に書いたほうが。相対的ってどういう相対的かというのは、多分学生数に対して少ないとか、課程数に対して少ないとか、そういうことなんでしょうけれども。当面は絶対的に少ないのでというふうに直していただいたほうがいい。

【中山座長】  そうですね。ここはうまく表現しないと難しいところかと思います。、全体的に大学の数に対して教員のほうが育成されていないので足りないという問題と、この前から出ているように、設置のときに学生数に対して決められている教員の数というのが少な過ぎるという、この両方の問題が絡んでいるので、そこはうまく表現できるように工夫できればいいと思いました。相対的という言い方がよくないということだと思います。

 はい、どうぞ。

【坂本委員】  相対的のところは絶対的で賛成ですが、12ページの村嶋委員がおっしゃった「質的・量的充実を図る手段の1つとして」というところは、なかなかいい文章だと思います。危惧されるならば、「量的」というのはとるのはいかがでしょうか。私たちが意見しているのは質的な問題として交流すべきとか、いろいろなことを言っているので、量はとってもいいのではないでしょうか。

【中山座長】  こういうときに量的とすると、問題がむしろ出る。質というようにしたら。

【坂本委員】  量的に不足しているからそういうことをしているのではなくて、内容的なものとして連携したり、あとは臨床教授のことを考えたりしているわけだと思うのですけれども。

【村嶋委員】  今、思いつきました。そういうことと、それから、大学間連携の前に個々の大学の教員の質量は確保しつつとか、そんな文章を入れるといいかもしれないです。

【中山座長】 そこはあってなおかつ連携を図れということですね。

 宮﨑委員、どうぞ。

【宮﨑委員】  済みません。またちょっと別の観点なんですが、この14ページ、15ページの今後の検討課題というところの、各内容という大枠的なことに関してなんですけれども、ちょっと私の印象では、それよりも前の中で触れられていることがもう一度検討課題として繰り返されているような感じがいたしました。ここで今後の検討課題というのですから、やはり中長期的、どちらかというと長期的に検討すべき課題や、それから今回の議論で残されたもの、そういったものに限定していったほうがいいのではないかというふうに1つ思います。

 ですから、先ほどの臨床教員の活用、臨床教員の定義は別として、こういったことは既に一部の大学では積極的に取り組まれていますし、今後の課題というよりは、そういった何らかの方策を推進すべきであるということは提言の中に入れていくべきだ。今後の課題という性質かどうかというのはちょっと疑問が残りました。

 あと、5に1)の2段落目の各大学、大学院においては、教育目標を明確化して、そしてその教員を構成するということも当たり前のことですし、これは早急に各大学が整えていくべきことでありますので、ここの3行もむしろ今後の検討課題ではなくて、前のほうでこういったたぐいのことは述べられている文脈がありますので、そこにまた含めていけばいいのかというふうに思います。

 ですから、今後の検討課題にむしろ入れるべきことは、やはり教育課程の評価。それは14ページの下の段落に入っていることですとか、それから、やはり今ちょうど話題になっている教員の質的・量的充実という、その質的充実とともに量的な充実をどういうふうに政策的に確保していくのかというあたりのことはもう少し踏み込んで書いていいのかというふうに思いますし、それから、隣の15ページの2)のほうは、質評価ということについては公的な第三者の評価が重要であるということは数ページ前に既に、13ページのほうに出ているんですが、こういった枠組みづくりは今後の検討課題のほうにやはりしっかり書き込むべき内容ではないかというふうに思います。

 だから、ここの今後の課題というもののどういうところに軸足を置いて書くかということをもう一度整理していただいて、ここの議論で残されたものや、それから少し中長期的に考えていくものや、あるいは政策的にもう少し踏み込んで、国家的な政策が必要なものとか、そういうものに力点を置いていただいたほうが印象としてはいいのかというふうに思います。

【中山座長】  ありがとうございました。先ほどの補強すべきようなところは前段で言っているところでもう少し強調し、そこを推進するなり補強するなりするという形で、この課題のところは中長期的に残されて、今後も検討を十分していかなければいけないようなものにしておいたほうがいいということですか。読んで、私も気になっているのは、こういう意見もあった、こういう意見もあったと課題のところで意見があったと述べるよりは、もう少し踏み込んで検討課題であると言ったほうがいいのかという印象が残りました。課題の出し方の問題かと思いますが、この点について何かほかにご意見ございますでしょうか。はい、どうぞ、松尾委員。

【松尾委員】  よろしいですか。今の意見に関して、私もこれはせっかくこれだけやっているので、具体的な提言という格好で出せるものはまとめて明確にしたほうが、おそらくこれをどこに出されてもこういう方向でやっていったほうがいい。そうすると具体的に政策だとか予算だとかというのはどうしましょうかという話になってくるので、今言われたように、これはいろいろ意見がかなり、悪い言い方をすると羅列してあって、何が言いたいのかよくわからないという、一見すると。よく読むと何となくわかるんですが。

 ですから、そういう意味で、提言という格好にできるものはきちんと書いたほうがいいかと思います。

【中山座長】  平澤委員、どうぞ。

【平澤委員】  今、私も松尾先生がおっしゃったことと全く同じようにこれを読ませていただきました。というのは、14ページの「さらに」というところで、現実、実習環境の充実も必須であるということ、実際的になかなか実習場の確保が困難なことも指摘されたということもありまして、その下に、実習を引き受ける施設に対する支援の在り方とか、新たな条件下で効果的な実習云々と書いてありますが、「さらには」で、それを下で受けています。関係官庁や団体と協力しながら改善に向けてというところのニュアンスが、「さらには」の個所は卒業生の評価のですが、ここはもう少し、効果的な実習が行われるような関係官庁や団体と協力しての方向性が少し示せるような表現をするといいのではないかと感じました。

【中山座長】 ほかにございますか。どうぞ、藤川委員。

【藤川委員】  課題を文章で説明すると、やはり非常に表現が弱くなるんです。きちんと箇条書きにして、簡単な説明を加えるほうが、見た感じ検討課題が何であるかわかりやすいです。全部読んだ後にまた頭の中で整理して何だったかと、また戻らないといけないですね。そうではなくて、明快に、項目5つを箇条書きで挙げて、それに対して具体的にどういうふうにするのかということで、検討課題ですから、すぐに具体的な方法論は出ないかもしれませんけれども、やはりすっきりしたほうがわかりやすいかと思います。

【中山座長】  特に最後の今後の検討課題のところですね。これをもう少しめり張りをつけて、何が残された課題なのか、そしてどういう方策が考え得るかということをわかるような形で、箇条書きになりにすることで提言も含めて入れたほうがいいのではないかというご意見だと思いますが。

 ほかにございますか。はい、どうぞ、倉田委員。

【倉田委員】  14ページの一番最後のところの「さらには」から始まるところなんですが、「そして卒業生をはじめとする有資格者が生涯を通じて看護専門職としての能力を向上させ」という、その辺なんですが、それは多分55万人もの有資格者が今仕事をしていないという状況の方たちのこともここには含まれているんだと思うんですが、それをもう少し積極的に書いていただけると、今後の課題としてはいいのではないかと思っているんですが、それはいかがでしょう。

【中山座長】  イメージがもう少し。55万人というのは、大卒というか、ここで言っている大学を出た看護師だけではないのだと思うんですが。

【倉田委員】  そうですね。

【中山座長】  そのことも含めてということですか。

【倉田委員】  そうするとぼけてしまいますか。

【中山座長】  多分大学としてしなければいけないのは、フォローアップするような形の体制というのがとれていないことです。ずっと働いてくれれば少子化の状況の中でも看護職の数が足りないということは避けられる方策がとれるのではないかということも含めて、この前ご発言があったので、こんな形になっているのではないかと思います。卒業生を大事に追いながら、働き続けられるように考えていくことが人材を養成し、それを十分活用することにつながるのではないかという意味合いをここは込めていたと思うんですが。

 でも、倉田委員がもう少し違うイメージだったら、言っていただいて構いませんが。

【倉田委員】  はい。その55万人の中には、おっしゃるように大学を卒業した方、プラス今までの、ずっと養成所を出た方も含まれているというのはわかります。でも、とてももったいないことですから、また大学へ戻るとか、何か大学院のコースをつくるとか、大学の特徴として、今職を離れている人もまた戻って働いてもらうというのを特徴とするような大学があらわれてもいいのではないかと思っていたものですから。

【中山座長】  ありがとうございます。要するに、大学がずっと支援できるような教育体制を構築するということも1つの社会的な使命ではないかということですね。

【倉田委員】  そうですね。

【中山座長】  はい、小山委員、どうぞ。

【小山委員】  質問ですが、全体の報告書としてのでき上がりを見ますと、4ページの3、「学士課程教育においてコアとなる看護実践能力と卒業時到達目標のところがほんとうに紹介程度に1)で数ページ書いてありまして、そして、今度は添付資料1と2という形になるのですが、文科省から出されるこのような報告書の卒業時到達目標案は全国の看護系大学の教員たちは重視します。これが最終案だと思って使います。私は昨夜、平成16年度に出されたものと比較して見たのですが、平成16年度に出されたものは、それ1つで大学教育がどうあるべきということがわかるようになっています。これは非常に重宝して、よく使っておりますが、今回、最終的にはどういう形で出るのだろうかと思いました。ここで議論されなくてもいいですが、一応報告書は報告書で出したとしても、実践能力と卒業時到達目標が一連の意図も含めてわかるような形になっていると大変ありがたいと思います。

 そこの中には、平成16年度の場合は、きちんと1、2、3、4、5というのをうたってありまして、急いで読ませていただきますと、「保健師、助産師、看護師に共通した看護学の基礎を教授する課程である」これは今回も当然です。「看護生涯学習の出発点となる能力を培う課程である」これも当然です。創造的に開発しながらとか、それから人間関係形成過程であることや、教養教育が基盤に位置づけられた課程であること。先ほど、佐藤委員からも出ていましたが、そういうことがしっかりとうたわれた上で、内容の説明に入っていて、私たちはこれを読むときに、大学教育というのはこういうものだというメッセージを受け、それを踏まえて使っていますが、今のこの報告書で行くと、いろいろなところに散らばってはいるのですが、わかりにくいと思いました。

 卒業時の到達目標は、平成16年から社会や現場が変わったことにより、内容も変えてきました。資格も、保健師全員必須ではないということで変えてきておりますので、現場の看護教員や実習指導者たちも使えるように、一見してわかりやすいような形で、最終的にはつくっていただけると大変ありがたいと思います。

 今の添付資料ですと、実践能力の構成であって、何を大事にすべきとか、そういうことが書いてありません。検討会報告書のあちこちに散らばっております看護系大学で何を大事にするベきかということが、平成16年度の報告書にはきちんと入っておりますので、それを入れた形にしていただければと思います。

 野嶋研究会では、平成16年度の5項目は当然の前提として早い段階では出ていると思います。第11回の資料を見ましたら、そこに「平成16年度の基本的な考え方や前提を踏襲しつつ」と書いてありますので、これは非常にわかりやすくまとまっているかと思いますので、ぜひメッセージとして入れていただき、最終的な到達目標案にしていただければありがたいと思います。

【中山座長】  全体の構成でどうするかという問題かとお聞きしたのですが、この最終報告書の添付資料にしているので、このプロジェクトのメンバーからすれば、どんな意図でつくったのかとか、どのように使ってもらいたいのかという前段があるのですが、それはここに入っていません。最終的な報告書のときには、それを入れるつもりでいると思います。報告書を出すときに、小山委員がおっしゃったように、研究プロジェクトの成果の一部が添付資料という形になっているので、これだけがひとり歩きする可能性があるということですよね。

【小山委員】  はい。その意図であるとか、大学教育には先ほど言われた教養教育が基盤になっているとか、学士力であるとか、そういうメッセージは非常に重要だと思うのです。この添付資料1と2の中にはそのようなメッセージが入っていませんので、メッセージを受けながらこの内容を読むのとは全然違うかと思います。

【中山座長】  そこは添付資料をどういう形にするかという問題ですか。必ずしもこれがセットになるとは限らないので、これだけが出てしまったときにはその意図は伝わらないことの問題をどうするかということと、最終報告書は別々に歩いたときのことも考えたほうがいいということのご発言かと思いますが。

 はい、菱沼委員、どうぞ。

【菱沼副座長】  今の件と直接ではないですが、第1次報告書が相当私自身の頭からも抜けていて、第1次報告書の中で看護の状況が社会の中でどのように変わってきているか。それに合わせてもう一度この実践能力を見直すということを言っていますので、第1次報告書と今回の報告書が別々になるのであれば、第1次報告書の中でさんざん検討して基本に考えたことをもう少しこちらに入れて込んでおかないとわからなくなってしまうという危惧がございました。

 3ページの本報告書において取り上げる課題のところの書き方が、そのところをもう少し強調して、第1次報告書とのつなぎになる文章に変更していただけたらありがたいと思うことと、それから、同じことなんですが、4ページの最後の段落の1つ、学士課程で保健師と看護師云々のところですが、看護の学士課程の3職に共通する基礎の教育の課程としては、学士力の問題と、それから専門職の教育の2点が課題になって、専門職教育の中でも特に実践能力をどう担保するかが課題なんだという流れの中の今回の報告書だと思うので、私自身も第1次報告書を読み直さないとそこが思い出せなかったので、少しインテグレートした形で書いていただくか、第1次報告書を前段につけるか、何かそういったようなことをお考えいただけるとありがたいと思いました。

【村嶋委員】  私も今のこの9ページから10ページにかけての保健師や助産師の書きぶりのところですが、これだけを読むと、保健師の能力の基礎を身につけることを学士課程でやるから、しかし同時に、その下のほうに、法改正の趣旨を踏まえて、卒業時の到達目標も各大学で定めることができるような書き方がありまして、そうすると、どこまでも基礎という名でレベルを低めることができる危険性があると感じましたので、ぜひ、今菱沼委員がおっしゃったような、保助看の共通の部分を学士で身につけるんだということをもっと明確に打ち出していただかないと、この保助看法の改正がここに入っていて、保健師はこういう能力求められていて、でも、対応できる能力の基礎を身につけることがこれまで以上に期待されているというと、これがここに入るのはちょっとまずいと思います。今菱沼委員がおっしゃったような第1次報告の部分をもっと強調していただいて、ここのところは削除していただきたいと思います。保健師と助産師は。

【中山座長】  全体的には1ページの最初の本検討会の審議事項のところの第1の、学士課程における看護学基礎カリキュラムによる看護学教育の在り方。これは第1次報告書に盛り込まれたもので、法改正の問題もあって、新たな看護学教育の在り方というものが今度の報告書に盛り込まれて、その後質の保証の在り方と、それから大学院教育ということが残されたものとして載るんだと思いますが、その第1を前提にしていることがあまり入っていないから、2と3だけにされてしまうと、ひずんできてしまうという話ですね。

【村嶋委員】  この10ページの保健師と助産師のこの書きぶりだったら、基礎という名目で幾らでもレベルを下げることができるように読める反面、11ページから13ページの保健師と助産師のところは、高度専門職業人としてとても高い能力を求めるんだということをうたってあって、そうすると、同じ免許であることは確かなので、そこで片一方はすごくハードルが低い、片一方はすごくハードルが高いという、報告書としてすごく中で矛盾していると思います。

【中山座長】  わかりました。ほかにご意見、ご指摘ございますか。大学院のことについては、前回のときに検討していいただいたものを今回文章化して入れたという形になりますが、この辺は問題ありませんでしょうか。どうぞ。

【菱沼副座長】  11ページのタイトルというか目次のところに、「大学院(修士課程・専門職学位課程)」になっているんですが、大学院は博士課程は論じなかったということでしょうか。

【中山座長】  あまり論じてはいなかったですね。でも、大学院を抜くわけに行かないですね。

【村嶋委員】  修士、博士の一貫課程、博士の前期・後期課程というのはありますので、やはりそれは入れたほうがいいと思います。あとは、繰り返し言っていますが、保健師とか助産師は、そのトレーニング課程でかなり研究能力や測定能力、因果推論の能力を持つので、それはあると思います。

【中山座長】  はい、平澤委員、どうぞ。

【平澤委員】  先ほどの10ページの件なんですが、「実践能力の育成について」というタイトルの流れの中でこの10ページに来て、今回の保助看法の改正では、今の時代が何を保健師や助産師に求めているのかという課題を取り上げてのカリキュラム改正で、しかも1年以上の教育になったと私は理解しております。ですから、助産師教育の例を挙げれば、ほんとうにハイリスク化して異常分娩の増加であるとか、それから、産褥期の母親に対するケアが希薄になってしまって孤立している母子の問題等が挙がり、また医師不足にも関連しながら院内助産、助産師外来などの開設が求められるので、それに対応できる助産師の能力の育成をという解釈でこれを読みました。

 ですから、助産師の場合は学士課程において選択制を維持して質と量のバランスを考えながら教育を推進するには、今回の指定規則で特化した強化内容を加味しながら教育を推進していくという解釈でこれを読みました。看護学教育での基礎的な3職種共通な教育内容に、さらに今回示された専門の強化内容を入れるならば、従来よりも強化するという形で読ませていただいたので、私の場合はあまり抵抗なく読めました。

【村嶋委員】  私もその基礎だという意味では引っかからないんですが、でも、やはりこれをもう1回読むと、それが学士の中で教育できるみたいなふうに、ここに置かれると思ってしまいます。ですから、学士課程のこの中以外のところに、今みたいなことを置かれたほうがいいと思います。

 実践能力の育成という意味では、看護師がないのは私はおかしいというふうに思いますので、ここの学士課程のこの場所からはやはり外さないといけないと思います。

【中山座長】  学士課程の場所から保健師のことについて外すということですか。

【村嶋委員】  というか、これだけのこういうものが求められているというのは、もう少し前段のほうに入れて、そして大学における看護では保助看の共通の基礎と看護師というあたりにこれを入れていただけるのであったらそれはもっとすっきりすると思います。

【中山座長】  説明してください。

【菱沼副座長】  今の村嶋委員の提案は、法改正の説明になるので、3ページの報告において取り上げる課題の前に、こういう意図でこういう法改正があったという説明をしておいたほうがすっきりするのではないでしょうか。

【中山座長】  ここですね。2ページのところの2)の「保健師助産師看護師法および・・・」というこの改正のところの流れでもう少しきちんと書いておいたほうがいいということですね。

【村嶋委員】  そこに移していただきたいと思います。

【中山座長】  できればこの内容を移す。

 どうぞ。

【宮﨑委員】  今後の課題ということの部分なんですが、今話題に出た大学院の博士課程のことはやはり十分議論できなかったと私も今改めて認識いたしました。この報告書の中では、教員の絶対数の不足や、博士号を有する教員が他領域と比較して少ないという指摘というところで、「博士号」という文字が唯一出てきているんですけれども、この研究・教育者養成というあたりの課題は、これだけ課程数が増えてきているので、その質保証や、それから看護学という特殊な専門領域の研究というものをどういうふうに若手の研究者養成を進めていくのかというのはやはり大きな課題になってきていますので、その辺はやはり今後の課題として何か触れておくということは必要かというふうに思います。

【中山座長】  博士課程の問題は今後の課題のところにきちんと位置づけておくということですね。

【村嶋委員】  そういう意味では、大学院のところに修士・博士の一貫課程の強化みたいなことを。博士課程、前期後期課程の強化みたいなことがあってもいいのではないでしょうか。

【中山座長】  村嶋委員、今後の課題ではなく、検討課題ではなくて、その前のところですか。大学院のところですか。

【村嶋委員】  11ページの修士課程・専門職学位課程における質保証。

【中山座長】  ここに博士課程も入れるということですか。

【村嶋委員】  博士課程、前期後期課程ですか。並べるんだったら。わざわざここで修士課程・専門職学位課程と入っているので。なければ別にいいんですけれども。

【中山座長】  大学院の中の特に修士課程・専門職学位課程ということで、ここは博士課程のことではないですよというメッセージが込められていると思いましたが。

【小山田看護教育専門官】  大学院については、そもそものこの検討課題が高度専門職人養成についてということでしたので、大学院の修士課程・専門職学位課程ということで議論を絞ってきていただいたんですが、議論の中で、やはり教育者の養成が大事というところでは、当然博士課程のこともどこかでは入っていかなければいけないのだろう。ここで限った理由というのは、そもそもの出発点が高度専門職業人養成にあったというところにございます。

【中山座長】  多分あれっと思うのは、11ページの1の(1)の下の「大学院(修士・専門職学課程)、以下」となるのですが、「養成が期待される看護系人材としては、教育者、研究者、そして高度専門職業人が挙げられる」となって、ここで教育者と研究者としているんですけれども、教育者と研究者ということになると、博士課程のことも入ってくるという問題ではないかと思っています。

 米国においては教育者とか研究者というのは博士課程になっていて、修士課程では高度専門職業人養成に重点が置かれているような流れがありますので、そこから行くと、この大学院のところでは、教育者、研究者の問題とは少し違う形で置いたほうがよいのではないかという感じがしていますが。

 高田委員、どうぞ。

【高田委員】  やはり論議があまり分散するとよくわからなくなります。今どういうような看護師を養成するかというところで論議する過程の中で、教育を担当する方、どういう教育者を養成すればいいかというように話が発展してきていると思います。

 この観点からすると、ここはやはりここに書いてあるような形で、まず修士のところでどうするかという点にここは論議を絞っておいて、それで、終わりのほうの今後の課題というところで、これを教育するためのきちんとした研究者養成、博士課程をやっていく必要がある、というように切り分けたほうが論議がよくわかるのではないかと思います。どういう人材を養成するかという目的がはっきりしないところで、博士をどうするかということを論議してもますますわからなくなるだけではないかと思いますけれども。

【中山座長】  今、高田委員の発言からすると、11ページの一番上の2)はこのまま大学院で修士課程と専門職学位課程に絞ってここは論じたほうがいいということですね。

 佐藤委員、どうぞ。

【佐藤委員】  私も基本的に高田委員と意見は同じです。博士課程のことについては議論していないし、実質的な言及もないわけです。もっと言えば、専門職学位課程のことについてもないんです。ですから、ここは先ほど小山田さんの答弁の中の、とりわけ修士課程のところだけを今回は言及しているんだということにしたほうが明確ではないかと思いますけれども。

【中山座長】  近藤先生に、専門職大学院のこともプレゼンテーションしていただいているんですよね。それでここに入っているんです。どうぞ。

【佐藤委員】  そういう場面はあったんですけれども、この中に記述がないので、その記述のキャプションのところに専門職学位課程と入れても中身が伴っていない。

【中山座長】  あまり意味がないと思われる。坂本委員、どうぞ。

【坂本委員】  要するに、修士課程において保健師、助産師のこともわかってきてどうしていくかということもまだ課題はあると思いますが、やはり1つの突破口として、私は意見言わせていただきました。専門職大学院のことも考えていくということは、困難なこともありますけれども、今後の課題の中には入れていただきたい。

【中山座長】  今後の課題。

【坂本委員】  はい。

【中山座長】  何か落ち着いたようです。専門職学位課程のことは今後の課題として位置づけておくということですね。

 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【村嶋委員】  細かいことですが、11ページの上から4行目の「学生の専門資格志向や研究を志向する学生が減少していることが指摘され」。引用文献なのでそのままなんでしょうけれども、「減少している」がどこに係るのか。研究を志向する学生だけなのか、その前なのかというのがちょっとわかりにくいと思いました。単に言葉の問題です。

【中山座長】  これはいいですか。小山田専門官、表現の問題だということですが、事務局と相談してここは直したいと思います。

 ほかに何か基本的なことで抜けていることはありますか。藤川委員、どうぞ。

【藤川委員】  9ページのところの学士力の養成のところです。「学士力」という言葉はあまり聞き慣れない言葉だと思いますので、欄外のところに「学士力」とはということで説明を、文科省の造語で19年ぐらいから使われている言葉であるということを書かないといけませんね。医学部では学士力という表現はあまりしないんです。だから、やはり一般に広めるのであれば、きちんと注釈を書いたほうがいいのかと考えます。

【中山座長】  はい、小山委員、どうぞ。

【小山委員】  9ページの(2)と(3)では学士力の育成と看護実践能力の育成を分けています。しかし、内容を見ますと学士力の後半には教育方法的なことが書いてあり、学士力の育成のところの中ぐらいには「学士力と看護実践能力の育成は本来相補うものである」と書いてあります。私たちがここで検討してきたのは、「学士力を育成するには」ではなくて、看護系の大学人として、職業教育と学士力を統合させた形で議論を進めてきたかと思いまして、このように分けていることに少し違和感を覚えました。

 具体的によくよく見てみますと、内容的にかなりダブっています。ですから、(2)を「学士力と看護実践能力の育成について」として、ダブりを少し抜く方が良いのではないかと思いました。

 そうしますと、例えば(3)の上の3行はあちこちで何回か出てきたかと思いますので、削除していいのと、「学士力の育成」の後半の部分と「看護実践能力の育成」の部分が教育方法で相当ダブるかと思いました。最終的に仕上げるときに、そのような構成でいかがでしょうか。

【中山座長】  要するに、学士力とこの看護実践能力とは切り離せないということですね。看護実践能力の育成を通して学士力もつけていくという側面もあるということからすると、ここは分けないほうがいいのではないかというご意見ですが、佐藤委員はそこは分けたほうがいいという意見かもしれないと思い、振ってみましたが、ご意見ください。

【佐藤委員】  はい、ありがとうございます。その前に、藤川委員ご指摘の学士力の解説ですけれども、そのとおりだと思うんです。まだ学士力そのものは熟しておりませんし、中教審の1つの答申で新しい言葉として提言された。実はこれは第1次報告のところでは脚注に言及しています。

 だから、そうなると、先ほど菱沼委員が言われた第1次報告とこの最終報告との関連性というものについて少し練る必要があるかな。両方あわせて読まなければ理解できない、全体像について誤解されるというような報告書のつくり方はもう少し細工をしたほうがいい。場合によってはドッキングか。必要なところは第1次報告の表現を修正することによって、第1次報告の目次の1とか2の次に続く3がここでの第2次の本文かなという、そういう関連性を感じました。

 ところで、その学士力と看護実践能力は別なものか同じものかという議論がまだ煮詰まっていないところです。ただし、学士力を提案したときに4つのフェーズに分けておりましたね。知識の体系、それから汎用的能力、態度志向性、最後に総合的な能力云々という。必ずこの看護学の学士を授与する者については当然看護実践能力のことも含めた総合的な能力ですので、全く離れているとは言えないと思いますし、そうかといって、看護実践能力のことだけがあまり肥大化してしまうと、毎度申し上げているように、本来の学士力から離れてしまうというところで、不即不離の関係だと思います。

【松尾委員】  よろしいでしょうか。

【中山座長】  はい、どうぞ。

【松尾委員】  8ページの学士課程における質保証のところなんですが、(1)のところは今意見が出たように、やはりかなり俯瞰的な立場からちょっと整理して書いていただきたいと思うんです。というのは、その次のページの真ん中に、例えば学士力を育成するとありますね。これは教養教育と看護実践能力の育成を通じて学士力を育成するというふうになっていて、例えばこれは基礎看護のカリキュラムとどういう関係にあるのかとか、言葉がかなりいろいろ出てきて、どれとどれを足すとどれになるのかとか、読んでいて整理がなかなかできないので、(1)番のところでやはりそれを俯瞰する格好で整理して書いていただいて、(2)以下のところではそれらを1つずつといいますか、順番に解説していってほしいというふうに思うんです。

【中山座長】  全体構成が悪いですか。もう少し構成をし直したほうがいい。

【松尾委員】  1番のところでもし総論を書くのであれば、もう少し整理していただきたいということです。それから、(1)のところの一番下のところに、先ほどの臨床教員の話が出てくるんですが、これは提言として後でまとめて、これも含めて書いていただくといい。提言が結構あちこちにちりばめられていて、なかなか統一されていないのかという気がしますので。済みません。

【中山座長】  逆に、提言の部分、検討課題の部分は何が残されているのかというのを先ほど藤川委員から出たように、めり張りをつけて記述し、そちらに持っていけるものは持っていき、、重複しているところは削除してまとめていくという作業がまだこの最終案では必要だということだと思います。

 松尾委員の考え方としては、臨床教育とか、臨床の中での教員の問題というのはまだ課題としてあるので、それは検討課題に残しておいてもいいということですか。

【松尾委員】  そうですね。ですから、これは学士課程における質の保証を考えるときに、これとこれとこの要素が必要だというのをぜひ(1)で明確に書いていただいて、それぞれについてやはりやる。はっきりしないところはもう検討課題あるいは提言という格好で出していただくというふうにすると読みやすい。

【中山座長】  ほかに何かご意見ございますか。どうぞ、高田委員。

【高田委員】  今、学士力といいますか、学士課程で看護学を学んだ人材養成ということで、その中での学士力ということで話が来ているわけです。その中での、ここでやった添付資料にある1と2です。これらと今回のこの最終報告との出し方で、学士力といいますか、教養教育との関係もあるかと思いますけれども、よくよくそこの関係をうまくまとめてわかるようにしていただかないと、こちらの方に「学士課程におけるコアとなる看護実践能力と卒業時到達目標について」という名前がついているので、これだけやれば学士課程が全部終わったというような認識を持たれてひとり歩きしてしまう可能性があるかと思います。でも、これは実はそうではないですね。

 ふと思ったのが、医学部のコアカリキュラムが、今回つくったこの到達目標のモデルになったと思います。この前の福田先生のお話からもわかるように、あれは医学専門教育のところだけに限ったものです。しかもミニマムリクアイアメントのようなものなので、実はあれ以外にも準備教育のコアカリキュラムというのも当然ありますし、それから、それ以前にさらに6年間でやる教養教育的なものも全部含めて医学士という形で世の中に送り出しているわけです。ですから、今回のこれもそういう枠組みの中でのこういう到達目標だということを明確にしておかないと、名前だけでひとり歩きしてしまうということをちょっとおそれています。

 どなたかおっしゃった、これだけあると、これだけやればいいんだろうという形になってしまう。そこだけでひとり歩きしてしまうということは避けないと、やはり学士課程の教育ということにはならないと思いますので、よろしくお願いいたします。

【中山座長】  小山委員が言ったこととそこは共通することですね。この位置づけもきちんとしておかないと、ひとり歩きしたときに、部分であって、全体ではないということがわかるような形にしておかないと、誤解を招くことになるのではないかということだと思います。そこは出し方として工夫できるのではないかと思います。

 ほかに何かありますか。前野委員はもしご発言ありましたらどうぞ。

【前野委員】  全員が発言しないといけませんよね。この最終報告書案を拝見いたしまして、各委員の考え、主張をうまく取り入れた内容だというふうに思いました。ただ、それがある意味では、総花的になっていて、もう1つ根本になるメッセージが、果たして十分伝えられているかという感じはいたします。

 たとえば、14ページの教育環境の充実に関してという部分で、1行目に最も重要な要素は教員の質的・量的な充実である。これはもちろんそうですけれども、それだけではないのではないか。これからの急速な少子超高齢社会に向けて、わが国の形が大きく変わっていく中、医療現場も当然変わっていく。そのような近未来に対して、こたえられていくような形での発想。それは看護教育現場での発想とか、教育内容、教育方法の転換というのが問われているけれども、それがどれくらい盛り込まれているのか。

看護の役割がどんどん拡大している中で、質、量の充実は必要ではあるが、あわせて従来の考え方も変えていかないと、ただただ肥大化するだけではないか。それではいけない。しかし、そぎ落とす部分があまり感じられない。それぞれの職務も拡大、拡大という形ばかりしているような面が見受けられないでしょうか。これまでの看護が担ってきた領域を看護ではないところに役割をゆだねるというようなことも含めて、新たな骨組みを変えていくというような発想が感じられない気がします。

 医療、看護、介護全体からこれから変わっていかなければいけないときに、それに即応した形で、これからの看護教育がそれを実践する指導的な人材を輩出しなければいけないが、現状認識がまだ弱いかという感じがいたします。前回も申しましたけれども、根本的に看護系大学を出た卒業生たちの能力が前より弱くなっているという声がよく聞かれます。私の聞いているのは一部にすぎませんが、かなり一般的な実情だと思います。それを踏まえた形での、この現状を改めていかなくてはなりません。実践能力をどうやったら身につけられるのか、教育現場の先生方が再認識した上に立っての報告書でないと、臨床現場に即したものには、なかなか難しいのではないか。失礼な言い方になりましたけれども、外部から見ると、そういう感じがいたします。

【中山座長】  第1次の報告書では大きな転換点として、学士課程の中で今まで保健師の教育課程と看護師の教育課程は両方入っていたものが保健師教育のほうを選択にするということがあり、それが社会的にもメッセージとして送られたというのがありました。今回の最終報告で何を一番メッセージとして送るのかというところがいま一つ明確でないという問題があると、前野先生から言われたという感じがしました。多分今回出ているのが質保証ということで、質保証の一環として、実践能力と到達目標もつくっているわけですから、200校になろうとする看護系大学が質保証のために何をすべきかというメッセージがもっと盛り込まれているほうがいいということかと受けとめました。その辺のところで何か。坂本委員、どうぞ。

【坂本委員】  前野委員が言われたとおりで、そしてそのためにおそらく指定規則もあるのだけれども、コアカリキュラムというのは大学の人たちが必要と思ってやっているわけではなくて、一応現場というか、臨床的なところは何を望んでいるのか、ニーズがあるのかというようなところを踏まえて、法改正ももちろんしたということ。法改正はニーズがあってやったわけですし、そして到達目標もそれに基づいてこういう学生を育成していくんだという流れがあって、そしてそれをつくっていく。だから、それがすべてではありませんけれども、到達目標が1つの支えになっていくというようなことをきちんと報告書に書くということなのではないでしょうか。

 私たちはやはり国民が求めるニーズをきちんととらえて、それをいつも発展させていくということをやらなければいけないわけですから、やはりそれをきちんと書いていって、そして学士力のことも含めて網羅させていく。そして、それを教える教員が現場といいますか、臨床的に今求められていることを理解しているかどうか。大学だけに閉じこもっていないかということも意見言われたわけですから、それはそのままということではなくて、これからも発展させていくんだというストーリーで書かれれば前野委員が言われたことが入っていくのではないかと思いますけれども。

【中山座長】  はい。小山委員も発言ありそうですので、どうぞ。

【小山委員】  3ページ2番の「本報告において取り上げる課題」のところにそのことも書くべきだと思いながら見ましたら、最後に書いてありました。学位を授与する課程としての教育の質保証と質の高い看護という意味は書いてあるのですが、坂本委員のご意見を伺って思ったのですが、3番の学士課程教育においてコアとなる、ここのところの言葉で質保証というのは文章の中に埋もれてしまいます。

 ですから、「以上の論点より、この時代にあって大学の質保証のための教育の内容」という文章をもう少し前に出すと良いのかと思うのですが。

【坂本委員】  よろしいですか。

【中山座長】  はい。

【坂本委員】  全くそのとおりで、私たちはずっと長い間この検討会を続けてきたのは、質を上げていくということですから、やはりそれを明確に打ち出すべきだと思います。ただ文章で書いたではなくて、実施して、そして、実施していることを認めることと、実施していかなければいけないことと、それから、すぐにはできないけれども課題であることがある。それはやはり国民のニーズに合った方法であるということを明確に書かないと、どなたかも言われていましたけれども、項出しして、そしてきちんと章立てしてそこのことは書くということ。それから、意見も出された、意見も出されたと11ページにあるのですが、やはりこれも意見を出されたではなくて、こういうふうに期待されているとか、こういうふうにする時期であるとか、明確に出していいのではないかと思います。

【中山座長】  ありがとうございます。たくさんの意見をもらいまして、どう取りまとめていくのかということで、座長としましては、頭の中で少し混乱しているところもあるんですが、皆さんのご意見をできるだけ踏まえて、全体的な構成ももう一遍考え直さなければいけないと思っています。あと何かご意見ございましたら、出していただいて。はい、どうぞ。

【坂本委員】  先ほど大学教育にかかわっている人たちが、やはりこれをある程度はきちんと読んで支えにすると言われたので、今回のこの検討会は明確にやはりニーズに合った状況を打ち出していった、それをきちんとメッセージとして送ってほしいと思います。

【中山座長】  要するに、教員がきちんと読んで、自分の自己点検、自己評価も含めてやりながら、教育において挑戦してほしいということですね。

【坂本委員】  変わっていくということを理解してほしい。

【中山座長】 そういうようなメッセージが入ったものにしたほうがいいということのご意見が今出されました。できるだけ今までの到達目標みたいなものを、看護の中だけでわかればいいと言っていたものを臨床の方、それからケアを受ける立場の方々、そういった方々にもわかるようにするという新たな努力をして、それがどう評価されるかはわかりませんが、フィードバックをもらうという形になったほうがいいと思っています。そこは前回とは違う形での努力をしたところだと思います。アセスメントという用語では苦労いたしましたし、先ほどの片仮名読みはまだ相当ありまして、私も相変わらず、サバイバーを生還者とするのはいかがなものかと悩んでいます。そういったことも含めてまだいろいろな議論はあるかと思います。大きなところで何かもしありましたらお願いいたします。

 よろしいですか。残している人はいませんか。

 1つだけ確認しておきたいのは、1次報告とのつながりを明確にすることで、この討論の中で大事にしてきたことは踏襲できるような形にするということがあったかと思います。それから、添付資料になっている研究プロジェクトの成果の位置づけを明確にして、これだけがひとり歩きしたとしても誤解を招かないような形の添付資料にしたほうがいいというご意見がありました。その辺も含めて修正していかなければならないのではないかと思います。

 タイムリミットの問題もあるので、今後のスケジュールを教えていただけますか。

【小山田看護教育専門官】  今後ですけれども、この報告書の変更と、今同時並行で進められております指定規則の改正の手続を受けて、全大学が来年にはカリキュラムを改正するということで、説明を早目にしていきたいという趣旨から、1月24日に説明会を開く予定にしております。ですので、そこまでにはこの報告書についても完成形を整えたいということを考えておりますので、冊子体にすることを考えると、1月中旬までには整えていただきたいと思っております。

【中山座長】  ということで、年末年始がどうなるかと心配になるぐらいのスピードで整理していきたいと思います。委員の皆様には、随時でき次第、送ってはコメントをもらっていくという形になります。先生方もご専門ご専門がありますので、特別のところについては、この部分についてはこの先生、この委員のにお願いしたいということもあるかと思います。ご協力いただきまして、何とか1月の中旬までで終えるように取りまとめていきたいと思います。

 まだ言い残している方がありましたらどうぞ。よろしいですか。

 それでは、今日の議題はこの最終報告案を取りまとめるということで、ご意見をたくさんいただきましたので、これをもとにもう一度練り直して皆様のほうにお送りするという形にしていきたいと思います。

 どうもほんとうにありがとうございました。

 事務局のほうから連絡事項ございますでしょうか。

【小山田看護教育専門官】  では、一応予定といたしましては、本日が最終回で、今後は文書としてご意見をいただく形でご意見を集約させていただくということになるかと思いますので、一言事務局からごあいさつさせていただきます。

【中山座長】  新木課長、よろしくお願いいたします。

【新木医学教育課長】  本日は年末のお忙しいところ、大変熱心にご議論いただきましてありがとうございました。おかげさまで最終報告につきまして、めどを立てていただけたと感謝しております。

 思い返せば、去年の3月に第1回目を行って以来、15回、大変お忙しいところ、ほんとうにご熱心にご討議いただきましたことを改めて感謝申し上げます。3月に立ち上げて以来、保助看法の改正がまだ前政権のもとで超党派でなされまして、それを受けての保健師課程の選択制等の第1次報告。また、今回、それを含めての第2次最終報告がめどが立ちましたこと、ほんとうにありがたいことだと思っております。

 ここでもご議論がありましたとおり、大変質的にも、また量的にも変化拡大している医療の中核である看護職を大学としてどう育てていくのか。現在もまた今後とも大変重要な課題でありますし、質の高い人材の供給こそが我々の使命だというふうに思っております。

 そういう意味では、今日残された課題も大変多くご指摘いただきましたが、まだまだ検討会で推進していかなければならない課題がたくさんございます。引き続き先生方のご協力、ご指導をお願いいたしまして、簡単ではございますが、お礼のごあいさつとさせていただきます。ありがとうございました。

【中山座長】  どうもありがとうございました。多分15回でこの検討会を締めることになるかと思います。私はつたない座長で、いろいろ困るとすぐ皆さんの顔を見て振るという、皆さんにはいい場合だけではなかったかと思いますが、活発なご意見をいただきまして、実りある、ここに来ると新しいアイデアが浮かぶというような検討会にできたのではないかと思っております。お忙しい中をずっと参加くださいました委員の方々のお力が大きかったと思っています。

 最後の取りまとめを菱沼副座長と私と、事務局という形になるかと思います。先ほど言いましたように、どうできるかにつきましては、心配もあるのですが、委員の皆様のお力をかりるということで、いい報告書ができるように取りまとめていきたいと思いますので、今後ともどうぞよろしくお願いします。ほんとうにありがとうございました。そして、多分これで終わりになると思うので、よいお年をとお伝えしたいと思います。ありがとうございました。

【坂本委員】  ちょっといいですか。

【中山座長】  どうぞ。

【坂本委員】  報告書はもう一度まとめていただいて、回ってきて、それで、メールで確認するということになるんですね。

【中山座長】  万が一何かのこともあれば、もう1回ぐらい招集があるのかもしれませんが、取りまとめを皆さんのところに送って、何とかこれで行けるのではないかということでしたら、終わりにしたいということです。緊急招集が絶対かからないとは私は保証できないのですが、できればこれで取りまとめの方向でと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

【村嶋委員】  1月13日に予定されていたように思うんですが、これは今のところなしということで。

【中山座長】  事務局のほう、13日は。

【小山田看護教育専門官】  予備日として押さえにしておりましたので。

【中山座長】  万が一のときには13日になると思いますが。このままで行けば、13日なしと思っております。取りまとめの作業の中で、皆さんのご発言をどう盛り込んでいくかというところで、もう1回集まって確認したほうがいいようなことができたときには13日と思っています・できるだけ13日、このお忙しい先生方に集まっていただかなくても済むように座長としては頑張っていきたいとは思っています。絶対13日はありませんとは村嶋先生、言えませんので、申しわけございませんが。何かのときにはよろしくお願いいたします。

【中山座長】  では、終わりたいと思います。ほんとうにありがとうございました。

 

── 了 ──

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