大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会(第10回) 議事録

1.日時

平成22年6月24日(木曜日)17時30分~19時30分

2.場所

文部科学省 東館17階 17F1会議室

3.議題

  1. 新たな看護学基礎カリキュラムについて
  2. 大学院における看護系人材養成に関する意見交換
  3. その他

4.出席者

委員

中山座長、菱沼副座長、秋山委員、倉田委員、小山委員、坂本委員、佐藤委員、高田委員、富野委員、西澤委員、平澤委員、村嶋委員

文部科学省

加藤審議官(高等教育局担当)、新木医学教育課長、唐沢課長補佐、小山田看護教育専門官

オブザーバー

野村看護課長(厚生労働省医政局)

意見発表者
野嶋佐由美意見発表者(高知女子大学看護学部長)

5.議事録

大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会(第10回)

平成22年6月24日

 

【小山田看護教育専門官】では、定刻をちょっと過ぎましたけれども、これより第10回大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会を開会させていただきます。委員の皆様方、お忙しいところお集まりいただきましてありがとうございます。本日、ごらんのように小さなお部屋でしてマイクがございませんので、声は大きめにご発言いただけますと幸いです。では、早速、座長に議事進行をお願いいたします。

【中山座長】それでは、始めたいと思います。今日は、議事次第にありますように、1つ目はモデル・コア・カリキュラムの、そういう名前がいいのかどうなのかという議論もあるのですが、委託研究としてやっております進捗状況につきましてご報告いただくことです。委託事業も進んでおりますので、委員会の先生方から意見をいただきまして、最終的なものを8月の末か、9月初めぐらいまでに出せるように進めていただきたいと思っています。

 大学のカリキュラムの見直しの参考になるように、コアカリという名前も含めましてご議論いただきたいと思っております。もう一つが、前回に引き続きまして大学院教育に関する意見交換の時間を取っておりまして、大体半分、半分ぐらいの時間がこれに使えればいいかなと思っております。始める前に、事務局からきょうの委員の出席状況の報告と、大分厚い配付資料がございますので、そのことにつきまして確認をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【小山田看護教育専門官】初めに、委員の出欠状況ですが、本日は藤川委員、前野委員、宮崎委員、松尾委員、横尾委員がご欠席でございます。出席者としては、モデル・コア・カリキュラムの委託研究事業の研究班から高知女子大学の野嶋教授にご出席いただいております。オブザーバーとして厚生労働省医政局看護課の野村課長にご出席いただいております。事務局は審議官の加藤、医学教育課長の新木、そしてちょっと遅れてまいりますが、課長補佐の唐澤と私です。続いて、配付資料の確認をさせていただきます。まず、座席表がございまして、その次に資料1として、看護系大学におけるモデル・コア・カリキュラム導入に関する調査研究班の中間報告資料があります。資料2として「大学院における看護系高度専門職業人養成の在り方に関する論点及びこれまでの意見等」というものがございます。参考資料1-1が「医療系ワーキング・グループにおける検証結果について」の概要版が1枚、そして参考資料1-2が同じ報告の本体がついております。そして、1-3として、同じ報告の中で検証に使われたデータ等の資料がついております。参考資料2として「特定看護師養成調査試行事業について」という資料がございまして、参考資料の3が前回の議事録でございます。不備等がございましたら、お知らせください。

【中山座長】ありがとうございました。それでは、議題の1に入りたいと思います。新たな看護学基礎カリキュラムについての議論ということで検討していただきたいと思いますが、初めに、議題が新たな看護学基礎カリキュラムとなっており、資料1では看護系大学におけるモデル・コア・カリキュラム導入に関する調査研究という形になっています。これは先生方にも少し事前にお話ししていただいていますが、医学教育や歯学教育の中で使われているモデル・コアとは違う形になっていることにつきまして、多少、違和感があったのではないかと思っています。

 新たな看護学基礎カリキュラムというのは、大学における看護学教育においては最低限教授されることが望ましい教育内容を入れるということでつくってまいりましたが、ご存じのように看護学の教育では保健師、助産師、看護師法に基づきます指定規則の問題がございますので、そういったこととの兼ね合いで、これまでもコア・カリキュラムという形ではなくて、平成16年度のものも看護系大学卒業時の到達目標、看護実践能力がどこまで到達したらいいかという形の卒業時の到達目標で出されてきました。そういったことを踏まえまして、今日、野嶋先生から提示されたときに、この辺の議論があるかと思います。これをコア・カリキュラムとするのがいいのかどうなのかという問題が一つあるかなと思っております。

 それから、昨年8月、ちょうど1年前になりますが、第1次報告で各大学、今までは看護師の国家試験の受験資格と保健師の国家試験の受験資格が入るような形で大学教育の質保証をしてきたという経緯がございますが、保健師の教育課程が選択性になったときに、看護学の学士課程として何を最低限必要なものとして保証するのかという問題がありまして、そのことも含めて新しい看護学の基礎カリキュラムをきちんとしていきたいということで始めた事業でもあったかと思います。

 今回、モデル・コア・カリキュラムの委託研究事業で、私たちが問題にしてきたことがどういう形ではめ込まれるのかということで、研究を行ってきていただいております。

 これまでの経過報告を野嶋先生からお話しいただきまして、これはコア・カリキュラムではなくて違う名前にしたほうがいいとか、もしコア・カリキュラムにするならこういう点はどうなのかとさまざまな皆さんのご意見があると思いますので、その辺のご意見をいただきまして、研究事業は研究事業としてこれで終結していくことになるかと思いますが、この検討会の新たな看護学基礎カリキュラムをどのようにしていくのかのまとめの方向を少し見出していければいいなと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。それでは、野嶋先生に今日、来ていただいておりますので、資料1の説明をしていただきます。よろしくお願いします。

【野嶋発表者】ありがとうございます。看護系大学におけるモデル・コア・カリキュラム導入に関する調査研究班として、途中経過を発表させていただきます。

 モデル・コア・カリキュラムの導入に際しては、看護学士課程における保健師、助産師、看護師に共通する基盤となる看護実践能力、卒業時到達目標、教育内容を抽出するための調査を行ってまいりました。この調査に先駆けて、前回ここに参加させていただきまして、皆様方から卒業時の到達目標を明確にすることと、あるいは教育内容ももう少し明確にする必要があるのではないかというご助言をいただきまして、看護実践能力、そして卒業時到達目標、教育内容を抽出するという作業を行ってまいりましたので、今回はそのことに関して発表させていただきます。

 ここに至るに当たって、3つほどの調査をいたました。第1次ヒアリング調査、ページ2です。日本看護系大学協議会の加盟校に参加を呼びかけ、35校が参加してくださいました。このときに看護実践能力、卒業時到達目標、教育内容等について、調査票に基づいて意見をいただきました。その調査を終えた後、これらの大学に対して書面で再度、調査を行い、その結果を踏まえ修正し、第3次書面調査を行いました。この第3次書面調査に関しましては、現時点で193校の中で114校が参加してくださいました。非常に熱心に参加してくださいまして、さまざまな意見をいただきました。

 調査では、看護学士課程を修了する看護学生が展開する看護実践にはどのようなものが必要であるかということで、ヒューマンケア、根拠に基づいた看護、特定の健康課題に対応する看護、看護ケアの環境を整え改善していくこと、あるいは専門職としての研さんしていくことが不可分に統合されていると考えております。すべての看護ケアにこれらの5つの要素が入っている。そして、私たちは、大学におきましては、学士力を基盤として、さらに看護学の知識と技術を融合し、統合させていくような教育が必要であるだろうと考えております。

 今回、調査に当たって提案させていただいているものに関しましては、基本的には統合された看護実践を目指しているわけですけれども、教育に当たっては、20の看護実践能力の養成ということで焦点化しております。この能力の習得に関しましては、順序性だとか、優先性をあらわしているわけではなくて、すべての要素が重要であり、目前の現象に応じてどの要素が強調されるかということは異なってきますけれども、どの実践にもこれらの5つの要素は必要であると考えております。さらに今後ともこれらのことが実現できるようなことを考えていかないといけないのではないかなと思っています。

 次のページですが、ヒアリングに当たりましても、書面調査に当たりましても、これらのことはご相談、提示しておりますが、各大学が独自の教育理念や目的に応じて教育課程を編成し、かつ社会に対して必要不可欠な看護実践にかかわる教育の質を保証する。また、平成16年度の基本的な考え方を踏襲しつつ、社会や医療、看護の変化に対応するために平成16年度のものを変更すること、そして国際的な視野でということで、「Essentials of Baccalaureate Education for Professional Nursing Practice」の考え方を取り入れたこと、さらに看護学士課程卒業者の看護実践の要件として、1、2、3、4、5、これらのことがあるということ、このようなことを前提としつつ進めさせていただきました。これらのことに関しましては、多くの大学の加盟校からもご賛同いただいております。

 次のページ、別添1ですが、私たちは平成16年度のものを修正し、改善し、そしてエッセンシャルズを参考にしていくこと、2つのことを重視しながら、今回の看護実践能力、卒業時到達目標、そして教育内容の例示を抽出してまいりました。

 別添資料に提示させていただいておりますものは、平成16年度からどのようなところが変わったのかということを出しております。これは1月にもご説明させていただいたものとほぼ同様な内容になっております。

 そして、別添の2ですが、具体的に看護系大学におけるモデル・コア・カリキュラム導入に関する調査研究班で、今どのようなものができているかということを中間報告としてご説明させていただきたいと思います。

 別添3は、現時点での研究班の考え方を看護実践能力として5つの群と、20の能力に関して述べさせていただいております。調査に当たりましては、これらの考え方を添付し、各大学に送らせていただき、回答を得ました。

 別添2の中間報告として出させていただいているものは、114校の大学からいただいた調査結果に基づき、それを修正して現時点でのものということで、114校の大学のご意見を反映させていただくよう努力をしてまいりました。

 現時点では、看護実践能力としては20を挙げておりまして、卒業時到達目標に関しては67、具体的な教育内容、これは例示ですけれども、271の例示を挙げさせていただいております。それらに関して、例えば能力に関しましては、1番目の能力は「対象の尊厳と権利を擁護する能力」。卒業時の到達目標としましては「人間の尊厳及び人権の意味を理解し、擁護に向けた行動をとることができる」。2番目の卒業時の到達目標は「人間や人の健康を総合的に捉え理解することができる」。3番目といたしましては「多様な価値観・信条や生活背景を持つ人を尊重できる」というふうに提示しております。それに関連する教育内容として14挙げております。

 114校からのご意見の中で、1番目のところに、人間のとらえ方、あるいは健康のとらえ方というのはヒューマンケアのところで、非常に重要ではないかということで、第2次調査のときにはなかったのですけれども、ご意見をいただき、追加いたしました。そのような形で、さまざまな大学からいただきました御意見に基づいて修正いたしましたのが本日皆様に提示しているものです。

 具体的に一つ一つご説明するというよりは、全体としてどのような意見があったかということで、ご説明させていただきたいと思います。「会員校からの代表的な意見」ということで、ページ25です。1「全体に対する意見」で、いただいた意見として多かったのは抽象度が高いということ、難易度の問題。教育内容が抽象度が高いということに関しましては、幾つかの背景がありまして、1つは、書かれている概念が広過ぎて、もう少し細部項目を入れたらどうでしょうかという意見、具体的な内容が含まれていないとか、評価の仕方が難しいのではないかということで、抽象度が高いというようなことをおっしゃられている学校がございました。

 目標に関して難易度が高過ぎるといようなご意見がたくさんありました。この難易度に関しましては、今回、皆様方に提示いたしましたのは修正してございます。難易度に関しましては、「理解できる」と、「説明できる」、あるいは「提案できる」という、知識を具体的に活用できるという意味で「説明できる」にするか、あるいは「提案できる」にするかで随分迷った結果、「提案できる」にいたしましたが、「提案できる」というのはレベルが高過ぎるので、「理解できる」、あるいは「説明できる」のほうがいいのではないかという多くのご意見をいただきまして、今回提示させていただいておりますものは「説明できる」に修正しております。

 重複に関しましては、確かに重複もございましたけれども、それぞれの20の能力において欠かせないものもございますので、一定の重複はやむを得ないのではないかと考えました。

 あとの4から後のコメントに関しましては、数はたくさんございませんでしたが、重要なご意見として4、5、6、7、8がありました。例えば今回20の看護実践能力を提示させていただいておりますが、それらの構造はどのようになっていますかというようなご意見がありました。私たちといたしましては、これらの看護実践能力20は理念的にはすべての看護実践の中に融合し、統合体として活用されていくものであり、優先順位、あるいは重みづけは目の前の看護現象によって違ってくると考えておりますけれども、看護実践能力の構造化に関しましては今後、検討が必要かなと考えております。

 非常に少数の意見でしたけれども、単位数を明示したらどうか、あるいは量的なものを明示したらどうかというようなご意見がありました。これに関しましては、養成所指定規則では比較的細かな単位数が規定されておりますので、今回、私たちのところでは単位数に関しましては提示をしない方向で現時点では考えております。

 あとは、評価ができるかということですけれども、教育課程の評価、カリキュラム評価、あるいは分野別臨床評価につなげることができますかという意味合いで評価ということをおっしゃっている方々と、学生の学習成果として見えますかというご意見が2つありました。カリキュラム評価、あるいは分野別臨床評価に関しましては、別添の5で「エッセンシャルズ」を挙げておりますけれども、エッセンシャルズには9つありまして、アメリカではエッセンシャルズの9つに基づいて分野別臨床評価を行っておりますので、あちらのお話などを伺いましたところ多分、20の看護実践能力で分野別臨床評価はできるであろうと私たちは考えております。

 また、3月末に、看護系大学協議会の評価機関検討委員会で提示させていただきまして、参加されている会員校のご意見としても、評価できるのではないかという肯定的なご意見をたくさんいただきました。

 学生の学習成果に関しましては、これらの20の能力に関しましては、各大学の授業シラバス等々を見せていただきましたところ、かなり各教科の学習目標と一致しているところがございますので、学生の学習成果としても十分提示できるのではないかなと思っております。

 あと、発達レベルではなく健康レベルに転換されたのではないかというようなご意見がありました。私たちは転換したというよりは、発達レベルを踏まえた健康レベルを考えていくということですが、ご指摘としてはそれらの考え方を普及させることが必要であるというご意見でした。

 あと、保健師教育。卒業時到達目標は保健師教育に関連しているので、到達目標に関してはもう少し理解できるレベルに変えられたらいかがでしょうかという具体的な提案をいただきました。

 このように114校からは幾つかのご意見をいただき、検討し、さらに修正させていただいたものが今日ご提示させていただいております実践能力と卒業時到達目標と、教育内容の例示になります。

 今後の課題といたしましては、幾つか指摘されておりますように、今後の教育方法の開発、教育環境の開発、そして20の看護実践能力を養成するための学内演習のあり方、実習のあり方を検討していくことが必要であるということが今後の課題かなととらえております。以上が、私たち研究班が行っている今現時点での中間報告です。以上です。

【中山座長】ありがとうございました。質問、その他いろいろあるかと思います。どこからでも結構ですので、先生方からご意見をいただきたいと思います。先ほど、私、きちんと言いませんでしたが、平成16年度のものは「看護実践能力育成の充実に向けた大学卒業時の到達目標」ということで、このときも、医学ではコア・カリキュラムをつくっていたわけですが、看護学の場合はこの「看護実践能力育成の充実に向けた大学卒業時の到達目標」を置くことで、コア・カリキュラムにかえるものにした経緯がございまして、今回の研究班もその流れをくんで、まとめの方向に行っているということが言えるかと思います。先生方、見ていただいて、特に富野先生も見ていただいて、医学部と違ったものでご意見があるのではないかと思います。どうぞご意見を出していってください。

【富野委員】モデル・コア・カリキュラムというのは、卒業するまでにどこまで習得すべきかという総合的な知識、技能、それから態度、こういったものを一般目標と到達目標として挙げて、1冊のものに仕上げていくというのが医学部でこれまでやってきたモデル・コア・カリキュラムで、19年に改訂版も出ています。ですから、一般目標がまずあって、そして卒業までにどういった点に到達できるか。そして、何々することができる。説明することができるとか、そういうような書き方にしているわけです。そして、それを行うために、その到達目標はかなり具体的な内容になっていて、教える側にとってみれば、その1冊を見れば何をやればよいのかというのがすぐに、一目でわかるような形になっていると思っています。しかし、今のこの案を見せていただくと、到達目標は一応、何々することができるとありますけれども、右側の教育の内容は、内容というよりもキーワードを挙げているにすぎない。これをぱっと教員が見たときに、さあ、どうしましょうということになるのではないかと、僕は医学部の教育をしてきた経過からそう思いました。

【中山座長】その辺のところで何かコメントはありますか。高田先生、どうぞ。

【高田委員】医学のコア・カリキュラムは、コア・カリキュラムというものの医療関係の中で最初につくられたもので、これを参考にして次に歯学とか、薬学とかが作られてきた流れがあるかと思います。医学のコアカリは、今お話があったように、かなり具体的ですね。具体的なというのは、医学の体系といいますか、実際の医療の体系では、まず出口があって、それに到達するためにどうするかという実際の現場に即した形、現場で行っていることに即した形にできていると思います。特に臨床の方面では臓器別、あるいは疾患別のところがまずあって、それをどういうふうに学んでいくかという形になっています。ですから、必ずしもいわゆる従来の医学の体系そのものではないわけです。看護学のコアカリの場合、看護学の体系というのがあって、それに即してこういう形になっているかなという気はします。

【富野委員】医学とは違うことは違うと思います。確かに違うとは思います。

【高田委員】当然そこは違うわけであって、それはそれでいいと思うのですけれども、今お話があったように、これで看護の先生方はひょっとしたらわかるのかもしれないし、そこは私はよくわかりません。

【富野委員】そう、そう。僕もこれを見たときにはわからなかった。

【高田委員】これを見て、一体何ができるようになって卒業するのかというところがいま一つよくわからないというところがあります。理念的には非常に良いことがいっぱい書いてあるのですけれども。実際に教育される先生方がこれでわかり、これで良いのかどうか。この点がわからないです。

【中山座長】ということで、いいですか、野嶋先生。

【野嶋発表者】確かに先生方がおっしゃられることもそうなのですけれども、すべてではないかもしれませんが、114校の中では。例えば「看護系大学におけるモデル・コア・カリキュラムを見させていただきまして、十分に洗練がされており、看護学教育の視点で学士課程における教授すべき教育内容が明確化できました。特に卒業時の到達目標並びに教育の内容の記載が具体的であり、日々の授業に組み立てがイメージでき、無限可能であると思われました」とかいうご意見も非常にいただいております。

【高田委員】医学部のモデル・コア・カリキュラムがつくられた背景の一つは、従来の医学教育の問題点があります。例えば内科学、外科学、基礎だと解剖、生理、生化等々と、それぞれの独自の学問体系なるものがあって、それをばらばらに教育をしていたわけです。そうすると、6年間の教育を受けて、医師になってみたら何だかバランスがとれていないし、現場のニーズに合わない点もあって何か変だねというところから始まってきたのだと思います。ですから、せっかく今回、看護のコアカリをつくるわけですから、もう一回原点に立ち返って、卒業したときの看護師、もちろん国家試験に受かって、実際に現場に出る方がいるわけなので、そこでどういう能力が要求されて、何ができることが必要なのかという、ここのところをコアカリに書くべきであって、看護学の真髄を必ずしも書くところではないと思います。医学のコアカリもまさにこうなっています。私は基礎医学だったのですが、最初このコアカリを見て愕然としました。基礎医学の先生方はみんな愕然として、これは一体何だと思ったわけです。つまり、基礎医学の学問体系とは全く違うということでかなり抵抗感が最初あったのは事実です。

【中山座長】わかりました。西澤先生も見てくださったんですよね。先生、どうぞ。ご意見ありましたら。

【西澤委員】大体同じで、結局、何ができるかというあたりが、前も言いましたけれども、見えないと。つくったのは、もっと基本的なものだとは言われましたが、ただ、我々にしてみると何ができるかというのがもう少し見えるものがあってもいいのかなと思いました。

【中山座長】小山先生、何かご意見はありますか。

【小山委員】質問ですが、何ができるかというのは、例えば卒業時の到達目標に書いてあるこのレベルのもっと下位レベルを何ができるかということでしょうか。

【富野委員】例えば14ページをごらんになって、我々がやっている「慢性疾患及び慢性的な健康課題を有する対象を援助する能力」がありますね。

【小山委員】はい。

【富野委員】「慢性的な健康課題をもたらす病態や疾患・治療が理解できる」。これと同じような意味で、右側にある慢性疾患による合併症を理解することができるとか、慢性疾患の診断、検査の概要を理解することができる、それから慢性疾患の診察・診療に伴う技術を習得することができるとか、こういう右側にあるところがもう少し細かに何々することができるというふうにしたのが医学部のコア・カリキュラムなわけです。というのは、こういうふうに四角の中で挙げられていても、これを見た大学の先生たちは、各大学独自のやり方でこの四角のところをとらえていくだろうと思うわけです。ですから、共通したものにするのであるならば、ここのところは例えば「症状をとらえマネジメントすることができる」とかいうことにしてあげないと、使うほうは使いにくいのではないかなと思いました。

【小山委員】わかりました。ありがとうございます。例えば症状をとらえ、マネジメントできるというレベルでもいいのでしょうか。慢性疾患といいますとたくさんありますので……。

【富野委員】いや、いや、それは……。

【小山委員】そこは書かなくてもいいという……。

【富野委員】医学部は書いてありますよ。全部あります。

【小山委員】それを書くとほんとうにすごい量になるかなと……。

【富野委員】医学部は何から何までありますから。

【村嶋委員】東大の場合も、これを若い人たちが見て、このカリキュラムだと育つ看護師がおぼつかないのではないか、心もとないのではないかという意見が多かったです。メジャーな疾患に関しては、少なくとも入れておかないといけない。症状をとらえ、きちんと観察ができて、そのメカニズムをきちんと説明できて、そしてポイントを押さえてマネジメントできるというところを入れるべきだと思います。東大では若い教員たちが大変、危惧しておりました。

【富野委員】例えばここに家族会とか、患者会というのがありますけれども、これ、どうするのと。

【中山座長】キーワードが書いてある。

【富野委員】キーワードが書いてありますけれども、これをどうやって到達目標に持っていくんですかという疑問があります。

【中山座長】教育内容だから、そこのところの視点ではそろえているわけではないですね。

【野嶋発表者】そうです。

【中山座長】でも、例としてはそのぐらいの下位のレベルまでということがないと、具体的にこれを使って行動するということはできないのではないかというのが今のご意見だと思いますけれども。

【富野委員】ですから、「コア・カリキュラム」という名前にするのだったら違和感があるのですけれども、最初のタイトルの「看護学基礎カリキュラム」ということにするのであれば、まだいいのかなという感じはしました。

【中山座長】そうですね。そこのところはすごく悩むところであって、私もこのメンバーに入っているのですが、やはり「モデル・コア・カリキュラム」という名前にはそぐわないので、野嶋先生はじめこの研究事業のメンバーは特にコア・コンピテンシーという「コンピテンシー」、実践能力に焦点を当てましたので、看護学士課程で育成するコア・コンピテンシーの要素とか、基本的なことだとか、そういう名前のほうがいいのではないかとか、あるいはアメリカの「エッセンシャルズ」にならって、専門職としての実践能力を育成する看護学士課程のエッセンシャルズとしたほうがいいのではないかとか、でも、片仮名の「エッセンシャルズ」にしても、「コア・コンピテンシー」にしてもなじみがないから、日本語にならないのかというと、「コア・コンピテンシー」は「看護実践能力」にしかならないし、「エッセンシャルズ」というのは「主要要素」だとか、「基本」だとかいうことにしかならないので、そこのところが落ち着かないでいるのですけれども。

 平成16年度から新たに入れた考え方があるとすると、アメリカのエッセンシャルズと言われている、皆さんのお手元の最後に載っている資料なのですが、こういう形で評価もできるというのもあると、看護学はこのぐらい大まかなもので、認証評価までやるほうが自由度は高くていいのかなというような考えもあります。その辺を少し取り入れた形になっているのではないかなと思ってはいるのですが。いいですか。ほかにご意見、あるいはご質問はございますか。坂本先生、どうぞ。

【坂本委員】3ページの「看護学士課程卒業者の看護実践の要件」というのは、どこからこの5つが出てきたのですか。

【中山座長】これは平成16年の到達目標に書かれているものです。

【野嶋発表者】それはそうなのですけれども、基本的には看護の定義だったり、看護の……。

【中山座長】ごめんなさい。下のところですね。すみません。

【野嶋発表者】そうですよね。3-4ですよね。

【坂本委員】そう、4)。

【中山座長】4)ですね。ごめんなさい。

【野嶋発表者】基本的に看護の定義あたりからとらえてきています。日本看護協会のものもかなり参考にさせていただいています。

【中山座長】ここはまだ十分な検討ではないところですね。

【野嶋発表者】これからの検討事項ではありますが、基本的には個人、家族、集団、地域を対象とするのが看護であり、看護実践としては、卒業生は個人、家族、集団、地域を対象とする看護を学んでいることが重要であろうと考えておりますし、「あらゆる年代の人々」、「多様な場で」というあたりは看護協会の定義であったり、「エッセンシャルズ」の考えであったりします。「健康-疾患の連続性を踏まえて」とか、あるいは「ヘルスプロモーションや予防」は「エッセンシャルズ」の考えでもあります。

【中山座長】これを検討していかないといけない。

【坂本委員】検討していかないといけないですよね。

【中山座長】ずっと昔の1967年のカリキュラム改正を見ても、comprehensive nursingの考え方が入っていて、ほとんどその要素に近いものではあるとは思うのですけれども。多分そこからずっと踏襲されているものではあると思うのですが、それにエッセンシャルズのものも加えてという形で来ているものかとは思いますが。

【坂本委員】おそらくこの「看護学士課程卒業者の看護実践の要件」がコア・カリキュラムの中心になるので、私はここの根拠を明確にする必要性があると思います。何を参照したにしろ、みんなで研究、ディスカッションした中でこういう形をつくったか。ここをきちんと核として置かないといけないと思います。もう1点は、今回、文科省の中でモデル・コア・カリキュラムというところで動いたわけです。国民、医療を受ける人たちに対していろいろなことをしていかないといけないという背景があって、これをつくろうとしたわけです。ですから、教育者だけで変えるというか、こういう形のほうがいいだろうという話ではなくて、現場がどのような人を望んでいるかということを中心にしてやっていかないといけないと思います。変化が起こっている状況に対して大学としてはどのような教育をしていくかということですので、そこは明らかにして、あまりぶれないで私はやっていただきたいなと思います。名称を変えたり、コンピテンシーにしてみたりということではなくて、きちんと本当にコアをつくるということ。現場でできる形を明確にしながら、200近くある大学がそろって同じような教育をする必要はないと思うけれども1つの指標を持つということが新しいことではないでしょうか。概念的なものはいっぱい出ていると思いますが、もう少し具体的にということに対して、私は富野先生がおっしゃったようなところをきちんと入れていくべきだと思います。

【中山座長】今の坂本委員の話ですと、もう少し前提となるどういう看護職をつくるのかというところでの実践能力みたいなところがぱっと見えるほうがいいということですね。

【坂本委員】要するにわかりやすく。だれが見ても、受ける人たちも、教える人たちも、臨地実習の場にしろ、それから大学の先生にしろ、わかることのほうが大事です。一生懸命エネルギーをかけてやったにもかかわらず、これ、何を書いてあるのかわからないねというものではなくて、使われるものであり、わかり合うものであるということが私たちの到達目標であると思います。

【中山座長】それからするともう少し洗練されてもいいと。すっきりと。

【坂本委員】わかりづらいところは、整理してよろしいのではないでしょうか。

【中山座長】もう少し。

【坂本委員】はい。

【中山座長】もっとシンプルにという。

【野嶋発表者】もっと抽象度を上げてということですか。

【坂本委員】もっと具体的に。

【野嶋発表者】具体的にですか。整理をするというのが具体的ですか。

【坂本委員】教育にも現場の人たちが入ってくださっているから、一緒になって教えていくときに、具体的であるべきだと思います。そこには要素がいっぱいあって、単に具体的なものができたらいいということではなくて、いろいろなものが絡んでいることは重々承知です。そのためにはこの5つが大変重要なのだと思います。

【中山座長】この5つがね。

【坂本委員】はい。

【中山座長】ここをもう少し。

【坂本委員】はい。

【小山委員】質問よろしいでしょうか。坂本委員のもっと具体的にとおっしゃっていることと、先ほど医学系の先生方がおっしゃったことは、教育内容のところをもう少し述語をつけて、「何ができるという形で具体的に」と受け取ったのですが、坂本先生のご意見も同じと受け取っていいでしょうか。同じでいいですか。

【坂本委員】一緒ですよ。例えばインフォームド・コンセントと教育内容に書いていても、インフォームド・コンセントという単語だけでは看護師は何をしたらいいのということがわからないわけです。できればここには、例えばインフォームド・コンセントに参加して、インフォームド・コンセントの意味が理解できるということであるならば理解できますが。いろいろな要素が絡んでナースはケアをすると考えるので具体的に書くことを看護界は恐ろしがるのだけれども、具体的なものがなければそのいろいろな要素は絡んでいかないので、やはり出しておくほうがいいと思います。

【中山座長】教育内容ではなくて、もう一つ下位の到達目標が要るということですね。行動レベルの。

【坂本委員】そうです。「することができる」という形で。すべてに置かなくてもいいと思いますけれども、主要なものなどはこの中から抽出して出していくほうがいい。語るときも語りやすいと思います。

【中山座長】ほかに何か。村嶋委員、どうぞ。

【村嶋委員】それには全面的に賛成です。もう少し具体的に出していただきたい。例えば3ページの4)の1から5に関しても、「個人-家族-集団-地域を対象とする看護実践」。今回は保助看共通のコアをやると言っているので、地域に触れるのも賛成なのですが、保助看共通のときに個人、家族に対して学士課程レベルで身につける看護実践能力と、地域を対象としたときに身につける看護実践能力はレベルが違うと思います。個人、家族だと、ある程度働きかけることができる。だけれども、地域そのものに対して働きかけるのは、学士課程レベルでは難しいと思います。そこは分けて書いていただきたいと思います。理解するのはもちろん大事です。それから、もう一つ、先ほど実践の方が入っていらっしゃるということだったのですが、メンバーを見ますとお一人だけですね。病院の副院長さんだけですので、これをもっと現場の看護師たち、看護師長クラス、実習を引き受ける方たちがこれを見てどういうふうに考えられるだろうかと心配します。今回、意見を聞かれたのは大学の教員だけのように見受けられまして、そこはどういうふうになっているのかなと思います。

【中山座長】これは見てもらっていますか。婦長さんレベルとか、教育担当の方とか。意見聴取していますか。

【野嶋発表者】プレテスト的には意見をいただいて、一度ヒアリングをさせていただいています。

【村嶋委員】ぜひ現場の意見をもらっていただきたいと思います。

【平澤委員】3群の特定の健康課題に対応する実践能力に関しては、他の群と統合しながら実践を行いますが、この領域は内容的に非常に圧縮された表現になっているように感じます。特定の健康問題として小児、母性、老人、精神保健とか特定の健康問題をかなり縮小された表現になっているので、これで大学において看護学を学習する特定領域をすべて満たされるのかという疑義が、学内のディスカッションの中で出てまいりました。

【中山座長】12ページ。

【平澤委員】12ページに示された内容です。

【中山座長】ということで、ほかに何かもしご意見があれば出していただきまして、まとめの方向で反映できることは反映していただく形になるかと思いますが。

【坂本委員】右の教育内容のところに例題をつくって、それを少し整理されたらいかがですか。例えば根拠に基づいた看護を提供するというところには、エビデンスを使ってケアしているところが理解できるなど。これだけ出ているのだから、具体的にはすぐできるような気がするのですけれども。

【中山座長】多分あえてしなかったのだと思うのですけれども、どうぞ、野嶋先生。

【野嶋発表者】大きな流れの中で、次の段階だと私自身は考えておりまして、教育の内容に関して、これからの課題のところで、例えば20の能力を育成するためにどのような演習をしているだとか、あるいは講義の中で教育の内容はどのようなことをしているのかというあたりに関しましては、もう一度、各加盟校に呼びかけをいたしまして、前と同じような形での調査をしながら、もう少し具体化する、あるいは洗練化していくというプロセスに入りたいなと思っております。これから先の進めぐあいとしては、皆様方のご意見をいただいたところで修正できるところは修正し、そしてこれを具体的に各大学で演習、あるいは実習でどのようにしているかを調査していきたいなと思っています。実は第1回目のヒアリングに参加してくださいました大学に関しましては、既にどのような学内演習をなさっていますかという調査を行っていまして、20の実践能力を育成するためにさまざまな努力、学内演習をしているというデータまではいただいております。坂本先生のおっしゃるように具体的に例示という形で、20の能力をどのようにプラスをしたり、あるいはどのような演習をしたり、実習でどのようなことをしているかということを把握して、それを皆様方にお見せできればと、次のステップとして考えております。ありがとうございます。

【中山座長】きょうの委員の先生方のご意見としては、看護系大学は今年190を超え、200を超えていく状況の中で、各大学がこれを使うことによって、社会に対してある一定のレベルの看護専門職を出していく保証になるかどうかということが気になっていて、そのためにはもう少し具体的なほうがわかるのではないかというご意見と考えてよろしいのでしょうか。その辺の問題が残るということでしょうか。あまり抽象度が高いのは、もちろん各大学で自由度があっていい面もあるけれども、新たにできる大学にもう少し質を上げてほしいというときにも役立つような、これが新しいカリキュラムになるときに条件として加わるようなことも含めてお聞きしたのですが、そんな理解で大丈夫でしょうか。

【富野委員】今のご意見だと、これをまず第1弾として出して、その後に続く形でより実践的なわかりやすいコア・カリキュラムをつくる計画にあるやに聞こえたのですけれども、違うのですか。

【中山座長】それはどうでしょうか。何かこれに対して……。

【富野委員】あるいはまた別の厚労省マターでやっていることとドッキングさせるんだとか、それはどうなのですか。

【中山座長】養成所指定規則の改定も今やっていますので、その辺もにらんで、もう少し具体化できるのかというご意見ですけれども、そこはいかがでしょうか。

【野嶋発表者】5つの要素と、20の能力はほとんど変わらなくて、全員の方が賛成してくださっています。あとは、卒業時の到達、あるいは教育内容になるのかなと思いますが、それに関してはもう少し具体的にというふうになりますと、看護は実践の科学ですので、演習の中で、あるいは実習の中で、これらのニーズをどのような形で保証できる教育を行っているかということをイグザンプルとして出しながら、そしてその過程の中で修正することがあれば修正していくという形で、あと8カ月ぐらいで進んでいきたいなと思っております。

【中山座長】どうぞ、西澤委員。

【西澤委員】これは大学の到達目標ですが、養成所の到達目標というのは僕の記憶では逆にすごく具体的過ぎて、大学は違うんだということで何とかわかりますが、少なくともこの中には養成所の到達目標が包括されているのではないかなと。だから、無理かもしれないけれども、僕から見ると、養成所ので書いてあった到達目標はここのところにこのように入っていますよとか、マッピングみたいなものがあると、あっ、それはきちんと含まれていて、しかも大学は更にこういうこともプラスでやっていて違うのだなと見えるので、そのようなものを出していただくと理解しやすいと思います。それから、最後に出たように、例えば1つの項目でいいのですが、どこでもいいのですが、、例えば12ページの11)の急激な健康何とかと書いてあって、教育の内容で、「救命救急時の処置」と書いてあるのですけれども、具体的に処置というのは何かというのを書いてくれると我々はわかるので、今言った評価のところでは、教育でこういう処置ができるということを多分○、×があるのでしょうけれども、そういうものも見せていただくと理解できるという気がします。

【中山座長】やはり具体例が提示されて、イメージしたいということですね。

【西澤委員】そうです。だから、あまり具体的に書き過ぎると、それさえやればいいんだろうということになるとだめなのは非常にわかりますが、あえてそれを危惧するがゆえに逆にわからなくなったのではないかと思います。それだけではないということさえしっかり確認すれば、いいのではないかと思います。

【坂本委員】私も賛成です。とにかく2回目にこうしますではなくて、今回の検討でそこまで行っていただけるのですよね。

【野嶋発表者】あと8カ月。

【坂本委員】あと8カ月。(笑)

【中山座長】どうぞ。

【小山委員】今、西澤委員がおっしゃられたことを私どもは大変危惧しておりまして、ここのところを具体的に何々ができるというふうにしますと、それだけとは思われたくないというのがあります。左側の到達目標のこのレベルは非常に複雑な要素が入っていまして、実習の場ではそれらのことを丁寧に、ディスカッションしたり、指導しながら持っていくものですから、ここに「何々ができる」となると、それだけを教育すればいいというふうに思われたくない。漏れるものがたくさんあるものですから、それは大変危惧するところです。

【西澤委員】わかりました。そう思って、今まで発言を控えていたのですが、大学が増えていますよね。皆さん方も懸念しているとおり、今までの大学はおそらくかなりいいところだと思いますが、これからどんどん参入してきた場合にどうなのかということを考えると、逆になければ、これぐらい最低してもらいたいということすらできないことも考えられる。書いたからといって、それだけではないということを徹底すれば、これだけは最低限だよというものがあったほうが現場はやりやすいし、大学の一つのレベルの水準は守れるのではないかなという気はします。

【高田委員】そもそもこれはコア・カリキュラムなので……。

【富野委員】コアですから。

【高田委員】これだけやっていればいいなんていうことは全くないわけで……。

【富野委員】これは核になるわけだから。

【高田委員】学習指導要領をつくっているわけではないんですね。あくまでコアなんです。これは。

【小山委員】そういう意味ではコアという言葉を残したほうがメッセージとしては。

【富野委員】そうです。

【坂本委員】だから、コアをつくっているんですよ。

【中山座長】全部を包括するわけでなくて、最低限という、核になるものということで。

【小山委員】あと、もう一つは、なかなかここのところができないというのは、今までアウトカム志向ではなかったものですから、もちろん各学校での到達目標は設定していましたけれども、それを日本全国のコンセンサスを得るというのが結構大変な作業です。だから、この研究メンバーだけでいいのかとか、それこそ看護系大学協議会で野嶋先生がいろいろな意見を聞くようにされていますけれども、ここまで出したときには本当にいろいろな意見があるだろうなということは予測されます。

【坂本委員】それについては、提案ですけれども、1回これを出しますね。そして、いつも改善していく。そういうことはぜひ予算をとっていただいて、やっていただくという形は継続的にしていただきたいなと思います。だから、いつも怖がって出しませんけれども、出して、みんなから意見をいただいて、何回も、何回も直していったらいいのではないでしょうか。

【中山座長】アウトカムも見るにはどうしたらいいかということなども含めて、少し時間をかける。1回だけの打ち上げ花火ではなくて、ずっと継続して。

【坂本委員】だって、医学も直していっているんですよね。

【西澤委員】そうです。何度も、何度も改定しています。

【中山座長】秋山委員、何か、臨床の視点から見るといかがですか、これは。

【秋山委員】先ほどから伺っていまして、この卒業時の到達目標の部分が私は確かに賛成です。教育内容については、どこまでというあたりは、これから発展形ではないかなと思いながら見ているという状況です。それで、最初に坂本委員が看護実践の要件の3ページの4)のこの5つをきちんと展開できていればということなのですが、これとこちらの20がうまく合わさってはいるのですよね。

【野嶋発表者】基本的には要件の5つを踏まえて20が出てきているという考え方ですので、卒業した人たちはあらゆる年代にとか、これができるように、5つを基盤として20ありという考え方です。

【秋山委員】それが4ページの平成16年と、現在のところとのすり合わせで、減ったところと増えたところがあって、20項目になってこちらにおりてくるといったときに、先ほどから少し落ち過ぎたものがあるのではないかとか、危惧されたその議論について研究班ではきちんと既に議論も終えてということですよね。

【野嶋発表者】はい。

【秋山委員】では、この時点でその次の教育内容の細かいところをどこまでというあたりは、表現のこととかはやはり気になるので、あまり細かくし過ぎても逆に、時代とともに変わる部分もきっとあるに違いないと思いますので、変化に応じて変えていくような柔軟な形でぜひ次の8カ月で出していただきたいなと思いました。

【中山座長】いろいろ注文がたくさんつきましたけれども、一番の問題は教育内容の四角の中にずっと羅列しているところのようですので、ここをもう一工夫して、どういう提示の仕方をすると、特に他の領域の方々、あるいは社会的に看護専門職はどんなことをする人なのかということがもう少し明確になるようにとかいった視点からを考えていただいく。あまり細かくなり過ぎると縛られてしまうし、抽象度を上げれば具体化がイメージできない。この辺のところをどういう工夫で補っていけるのかということを少しご検討いただいて、大きな方向性としては今、秋山委員も言われましたけれども、5つの領域の関連がもう少し明確になれば、何とかそこの部分はご了解いただけるのかなと思ったのですけれども、それでよろしいでしょうか。ほかにご意見はございますか。それでは、次回の検討会ぐらいのときにほぼ最終に近いものが出されるということでいいですか、小山田専門官のほう。大体そんなことになりますかね。

【小山田看護教育専門官】はい。

【中山座長】ただ、研究会そのものは今年度いっぱい続いていきますけれども、この検討会に出されるものは、次のときぐらいに修正案が出てくるといいかなという感じですね。どうぞ。

【村嶋委員】先ほど、量的なものは示さない、単位は示さないとおっしゃいました。医学のほうは、机上の閉じ込み資料11の医学のカリキュラムの例えば60ページに「臨床実習の量的提示」ということで、このぐらいの単位はするんだということが出されているいます。指定規則があるから出さない。一方で、指定規則はなくしたいというご意見を言う方もいらっしゃいまして、ある程度、量的なものは入れるべきだと思うのですが。

【中山座長】そこはいかがでしょうか。

【野嶋発表者】研究班としては、これからの能力は統合体であるということと、先ほど、多分、出せるとしても何時間とかいう単位で出すということは、指定規則との関係性もあり、現時点では考えておりません。考えるとしたら、なかなか難しいところではありますけれども、例えば20の能力を指定規則で言われているところとどう関係性があるかというマトリックスは出せるとは思いますが、でも、それも実際的には各大学が結構、例えば倫理の第1番目のところに関しては、基本的には基礎看護学と統合の領域で多分なさるでしょう。ただ、大学によってはその2つだけではなくて、各論で私の大学は小児でしますとか、精神でしますとかいう形にもなり得るわけで、指定規則との関係性は多分、大まかなところは一緒なのでしょうけれども、幾つかのところになりますと各大学の独自性も反映してくるかなと思いますが、基本バージョンという形では出せるかなとは思います。指定規則のところとは。

【坂本委員】指定規則との関連性は別に出す必要はないのではないですか。それは大学が厚労省から出たものとここで指し示すものを見ながら考えていくということでいいと思います。

【野嶋発表者】それはあまりいいことではないと私自身は思っています。

【坂本委員】余計、縛ってしまいますよね。

【野嶋発表者】はい。私は坂本委員の意見はとてもありがたいなと思います。

【中山座長】示そうと思えば示すことはできるだろうが、あえて示すかどうかは議論の余地がありということですね。

【坂本委員】慎重にしたほうがいいですね。

【野嶋発表者】各大学がすることだと思います。

【中山座長】そうですね。やらないと困るので、各科目との関連。厚生労働省の国家試験の受験資格がなくなってしまいますので、それはもちろんやるわけですが、もう一つ残る問題としては、コア・カリキュラムをつくって質保証ができた段階で、指定規則と大学のカリキュラムはどういう関係にあるのかということの問題が次には出てくるかと思います。小山田専門官、まだこの時点でその議論はしなくてはいいということでいいですね。まだ厚労省の指定規則の方向性もまだ検討中ですね。

【小山田看護教育専門官】はい。検討中です。

【中山座長】その方向性が出て、大学の質の担保がきちんとした段階で、そういう議論はあるかと思いますが、今日はそこのところは触れないでいきたいと思います。よろしくお願いいたします。それでは、コア・カリキュラムと呼んでいいかどうかわかりませんが、一応モデル事業はそうなっていますので、モデル・コア・カリキュラム導入に関する調査研究班の報告につきましてはこれでよろしいでしょうか。佐藤委員、何も言いませんでしたが、大丈夫でしょうか。心配になりました。

【佐藤委員】心配になるところ、いいですか。こもごもおっしゃったとおりだと思っております。非専門家でもわかるページはないかなと思って見ていたところです。例えば9ページ、屋上屋を架すような意見ですけれども、私なども隣接の科学で理解できそうなキーワードが並んでおります。生活だとか、家族だとか、社会だとか。だから、看護学というのは関連する科学を糾合した総合科学だと伺っています。そうすると、同じ「生活」と言っても、例えば社会学がとらえるそれと、家政学がとらえるものと、文化人類学がとらえるものと、それぞれまちまちですから、これに基づいて具体的な教育課程を展開する立場の者がどんな科学に立脚しているかによってそのとらえ方が変わってきてしまう。その危惧をものすごく感じました。ですから、この先、私はうまく表現できませんけれども、より具体的な到達課題、あるいは到達したかどうかを判定する指標などは読み取れるような展開が欲しいなというふうに思っている次第です。

【中山座長】ありがとうございました。倉田委員、何かありますか。

【倉田委員】今、皆様方がおっしゃっていたように、やはり具体的にもう少しと思います。そのほうが到達したきにどれほどのという評価の糧にもなりますので。もう少し具体的に書いていただけると。学生がこれを見たときにも、どこまでできているのだろうかというのがわかることも必要だと思います。

【中山座長】コアだと、最低限だと、だれもがどうしてもここだけは必要だと絞っておいてくれれば、もっと自由度は大きくなるから、それを焦点化してもいいのではないかというご意見だったと思います。ありがとうございました。

 それでは、次の議題に行きたいと思います。前回に引き続きまして、大学院における看護系人材養成に関する意見交換ということで、事務局が資料を用意してくださいましたので、その説明から入りたいと思います。小山田専門官、どうぞよろしくお願いいたします。

【小山田看護教育専門官】では、この議論については3つの資料を用意しております。まず資料2をごらんください。前回からお示ししております3つの論点に従って、過去2回のヒアリングや、委員の先生方の意見交換の内容の中で、論点に関連があると判断したものをピックアップしまして、それぞれに列挙しているのがこちらの資料でございます。

 論点というのは、1「社会が求める看護系高度専門職業人について」、それから、2で「大学院で養成される看護系高度専門職業人の特質について」、そして、一番後ろのページに3として「教育・研究者養成の推進について」ということで、今回拾ったところ、2番目の論点についてはかなりたくさんのデータが入りましたので、こちらで5つの小見出しをつけてまとめています。「人材像」、「学生の状況」、「必要な教育」、「教育の質保証について」、それから「資格取得教育と大学院教育との関係」という見出しをつけて、今までいただいている情報を拾ったところです。簡単に、どんな内容を拾ったかというところをご説明しますと、1の「社会が求める看護系高度専門職業人について」では、専門看護師等はニーズが高いのですけれども、なかなか数が増えないというところで、多様な機会が与えられるといいのではないかということですとか、高度専門職業人はチーム医療の中でさまざまな専門家や患者、家族の動きを俯瞰的に見られて、ケアが提供できる立場であってほしいとか、従来の看護師の業務とは違った自立したナースプラクティショナー的な制度が検討されるべしといったようなご意見が出ていました。

 2の「大学院で養成される看護系高度専門職業人の特質について」は、「人材像」としては、前回から少し拾っておりますが、高度専門職業人という定義ですとか、特定看護師の定義、それから専門看護師の要件といったものを拾って、あと助産師、保健師、ヒアリングでプレゼンをしていただいた先生方のスライドから拾ったりしております。

 「学生の状況」としては、次のページですけれども、大学によって学生のレディネスが多様であるとか、学部からストレートに進学するとか、養成課程によって多少学生の状況にばらつきがあるということがわかりまして、あと社会人入学は専門看護師では大変多いといったご報告がありました。

 「必要な教育」については、いろいろなことが出されておりましたけれども、例えば大学院で助産師を養成するときの単位数、諸外国の例では50から60単位であるということですとか、専門看護師では実践力やサブスペシャリティの強化、医師による専門教育の充実が必要であるといったようなことが言われていました。また、EBMを基盤にした実践変革力、職業人としての品位と強靱性、自立して実践開業する基礎力というものが助産師の大学院の中で言われていましたが、そういったものは高度専門職業人全般に必要だろうといった意見が出されていました。あとは、専門教育のほかには幅広い素養を養うことが必要であるとか、教育と管理に関する科目は高度実践家養成にはコア科目にするべきであるといった意見がありました。

 「教育の質保証について」という枠のところでは、学士、修士、博士という学位ごとの水準に加えて、専門分野ごとの学習成果を明確にしていく必要があるですとか、第三者機関による質の保証が重要であるといったことが出されていました。

 また、「資格取得教育と大学院教育との関係」については、保健師、助産師を大学院で養成される高度専門職業人に位置づけるべきというご意見と、それには反対であるというご意見があったり、学士課程と修士課程で養成される資格は学位レベルの水準の違いなのか、内容の違いなのか、あるいは両者を関係づけて考えなければいけないのかということを検討していく必要があるとか、そもそも今回の議論は修士課程教育に論点を絞るべきであり、資格取得等は考えずに議論していくべきであるといったご意見が出されていました。

 最後のページで、「教育・研究者養成の推進について」ということで、こちらはまだデータはそんなに豊富ではないのですけれども、実践コース、修士論文コースでは、東京女子医科大学については実践コースの人気が高いですとか、米国では修士課程は研究者養成ではなく高度実践家養成にシフトしており、研究者養成は博士課程であるといったことで、日本でも博士課程が54課程も出てきた中では、修士課程は高度専門職業人養成に焦点を当ててもいいのではないだろうかといったご意見が出されていまして、最後に、よい大学院教育のためにはよい教員が不可欠であるといったあたりも議論になるかと思うのですけれども、こういったご意見や情報が今まで出されていました。漏れはあると思いますので、適宜、追加いただければと思います。 続いて、次の資料3ですけれども参考資料1をごらんください。参考資料1-1、1-2、1-3と分かれますけれども、中央教育審議会で行っている多くの検討の中で、今回の私どもの大学院教育に関する報告が最近出されましたので、この検討会の議論に資するものとして情報提供させていただきます。説明は課長補佐の唐沢からさせていただきます。お願いいたします。

【中山座長】よろしくお願いいたします。

【唐沢課長補佐】医学教育課の課長補佐をしております唐沢です。よろしくお願いいたします。恐縮ですが座ってご説明申し上げます。

【中山座長】どうぞ。

【唐沢課長補佐】今ご説明ありましたように、参考資料1-1から1-3に沿ってご説明申し上げます。経過を簡単にご説明申し上げますが、中教審大学分科会大学院部会におきましては、平成17年9月に中教審から答申された「新時代の大学院教育」について検証を行うべく、医療系のみならず、人社系、理工農系、専門職学位課程の4つのワーキングを設置し、昨年秋から検証作業をしておりました。医療系ワーキング・グループにつきましては、具体的には、医学、歯学、薬学、さらにはこの検討会とも関係する看護学の4分野を対象として、本検討会の副座長でもあります菱沼先生にも委員としてご参画いただき、昨年10月1日から検討を開始しております。なお、本件につきましては、本検討会においても昨年10月16日に開かれました第6回の会合におきまして、当時の補佐である樋口より検討が開始された旨ご報告申し上げたところでございますけれども、今般、去る5月28日に開催されました中教審の大学院部会におきまして、同ワーキング・グループの座長であります国立国際医療センター総長の桐野先生より、その概要の報告がなされましたので、この場で私からその内容についてご報告申し上げます。なお、資料の性格でございますけれども、参考資料1-1と1-2がございますけれども、参考資料1-2という十数枚の資料が報告本体になります。参考資料1-1は両面刷りになっておりますが、その概要になります。さらに、参考資料1-3につきましては、参考資料1-1及び1-2は先ほど申しましたように医学、歯学、薬学、看護学、4つの分野を包括したような答申になっておりますけれども、今年3月5日に開かれました第2回医療系ワーキング・グループにおいて分野ごとの検証結果をまとめたものが参考資料1-3になります。

 まずは、参考資料1-2、十数枚のページになりますけれども、こちらをご覧ください。1ページ目の下から2段落目にございますように、医療系ワーキング・グループにおきましては、検証のために実際にはワーキング・グループ自体は計3回開催しておりますが、そのほかに医学、歯学、薬学、看護学の4分野から抽出した78の大学院に対する書面調査を行いました。なお、そのうち看護系の大学院は18の大学院に対して書面調査を行っております。さらに、ヒアリング調査と訪問調査をそれぞれ4大学院、8大学院から実施しております。そのうち看護系につきましては、ヒアリング4大学院のうち1大学院、また訪問調査8大学院のうち2大学院でございます。

 この報告書の構成ですけれども、少し分厚くなっておりますが、5ページからが具体的な検証結果になります。5ページ、6ページは医療系大学院の現状、そして7ページから11ページにかけまして具体的な検証結果が記載されております。先ほど申しましたようにこの検証結果は医学、歯学等も含めた内容になっておりまして、量的にやや大学院数の多い大学等の現状を中心に書かれた部分もございます。今回の検討会は看護学分野でございますので、参考資料1-3、横長の資料、先ほど申しましたように3月5日に開かれました医療系ワーキング・グループにおいて、看護学分野についての検証結果をまとめたものを配付しておりますので、こちらに基づきまして検証結果について簡単に概要をご報告申し上げます。両面で合計9ページございます。まず、資料の構成といたしましては、項目ごとに検証項目、具体的には平成17年の中教審答申でこういうことを改善すべきという提言、それについて具体的に看護系分野の大学院ではどういう傾向なり、検証がなされたかという構成になっております。

 1ページ目の第1点「大学院教育の実質化のための取組」ということで、「人材養成目的の明確化等」という点でございます。右側をごらんになっていただくとわかりますように、今回の調査によっては人材養成目的については、調査したすべての大学院において学則等に規定。修士、博士ともに高度専門職業人、研究者・教育者の養成をともに明記する大学が多い。傾向としては、修士は高度専門職業人養成、博士は研究者養成に力点を置くものが多かったという点。また、大学院答申以降、約3割の大学院において講座組織の再編などの教育組織改編の取り組みが見られたという傾向がございました。その一方、こうした取り組みの中、修得されるべき知識や能力につきましては、人材養成目的を具体化した規定になっていない等々、人材養成目的は明確になっているけれども、それを踏まえた知識、能力目標の設定が待たれるという状況でございました。

 続きまして、「体系的な教育課程の編成・コースワークの充実等」についてでございますが、大半の大学院において多様な領域の内容を履修する機会を設けるなど、複数教員による指導体制の充実などにより、幅広い視野の醸成に努めようとしているという状況が見受けられました。

 恐縮ですが、1枚おめくりいただいて、2ページ目をごらんください。アドミッション・ポリシーに関しましては、約半数の大学院において、大学院答申以降、規定を変更し、明確化を図る取り組みが見られました。他方、アドミッション・ポリシーは明確になっているものの、先ほど申しました人材養成目的と同様の内容になっているなど、具体的に設定されていない大学院も一部に見られ、今後、多様な背景、養成目的の学生を受け入れていく実効性ある取り組みが求められるという傾向が見受けられました。

 また、単位の実質化につきましては、多くの大学院がカリキュラム改革の一環として、シラバス等で到達目標や自己学習内容等を提示するという動き、また大学院生一人一人の院生カルテを作成し、指導の充実を図る大学院も見受けられました。一方、約3割の大学院で修士論文のかわりに特定の課題についての研究など、学修成果を修了要件に認めているという傾向も見受けられました。

 また、最後の3行でございますけれども、看護系大学院の傾向といたしましては、日常業務のある社会人大学院生が多い、また単科大学院が多いことなどの理由により、答申の中では主専攻、副専攻、ジョイントディグリーなどの導入が提言されたわけでございますけれども、そういった点についての取り組みは極めて少ないが、こうした取り組みを行う大学院や学生の評価は比較的高いという報告が出されております。

 続いて、3ページをご覧ください。「円滑な博士の学位授与の促進」ということでございますが、修業年限内での学位取得率を見ますと、5割を下回る大学院が約半数見受けられました。また、次のパラグラフでございますが、すべての大学院において円滑な学位授与に向けた組織的な取り組みがなされており、約7割の大学院で複数教員による指導体制の充実、博士論文提出段階の審査等々の取り組みが図られていることがわかりました。

 続いて、4ページをご覧ください。「学位授与プロセスの透明性の確保等」につきましては、約7割の大学院で、論文審査結果要旨の公表や口述試験の公開など学位審査の公開性に取り組み、半数近い大学院で学外審査委員を登用できるようにしている等の取り組みが見られる。他方、看護系大学院においては専任教員数が少ないということもあり、指導教員がその学位審査の主査等を兼ねる大学院も半数以上あり、今後、透明性の確保のための一層の努力が求められるというような状況にございました。

 また、すべての大学院において成績評価基準の明示が行われ、答申以降におきましては半数近い大学院において基準の明確化が図られているという状況でございます。

 下段に行きまして、「教育体制の整備及び教員の教育・研究指導能力の向上」につきましては、看護系大学院はそもそも開設が新しく、大学院教育に対する教員の意識も高いことが見受けられました。一方で、取り巻く状況変化に対応するべく、さらなる教員の意識改革、共通認識の形成が必要と考える大学院も多いという状況です。

 また、下段でございますが、助教制度につきましては、約半数の大学院で助教が授業に参加するようになったという傾向も見受けられました。

 引き続いて、5ページに移らせていただきます。上段で、「教育研究活動の評価の実施と活用・反映」につきましては、約半数の大学院で教員の教育活動の評価、手当、昇進等の取り組みは見受けられ、そのことが教員の動機づけに役立つとの評価がある一方で、評価疲れとの指摘もあり、システムと業務量との兼ね合いなどの工夫が今後求められるという状況もございました。

 続きまして、「産業界等と連携した人材養成機能」という提言に対する検証結果でございますが、まず、看護系大学院の学位授与修了者に占める就職率につきましては、修士課程で83.6%、博士課程で80.3%。看護系大学院の学生は現役看護師等の実務経験者が多く、今回、調査した中では産業界との連携はほとんど見られないという状況でございました。他方で、7割以上の大学院で専門看護師など高度実践看護師等の資格と関連した取り組みがなされているという状況も見受けられました。ただし、個々の教員の取り組みとしては行っているものの、実効性ある協働体制の構築が今後の課題ではないかといったご意見も見受けられました。

 続いて、6ページをごらんください。「学生に対する修学上の支援及び流動性の拡大」についてでございますが、まず、「学生に対する修学上の支援」については、すべての大学院で学生に対する経済的支援の取り組みが見受けられ、在学者に占める延べ受給者は修士課程で48%、博士課程で42%。さらには、今回の調査をした大学院の中で、外部資金による経済的支援を行う大学院は約3割ございました。加えて、社会人学生の割合につきましては、今回の調査の対象大学院につきましては、修士課程で57.8%、博士課程に至っては約3分の2に当たる67.7%という状況でございました。

 さらに、こうした社会人が学ぶための環境整備という観点では、8割以上の大学院で、夜間、土日開講を実施、さらには長期履修制度の適用のある大学院も7割に上り、社会人学生の学習機会の確保に向けた取り組みも見受けられましたが、一方で、教員数が少なく、業務量の増大を危惧する指摘もございました。

 続きまして、下段、「若手教員の教育研究環境の改善」という点ですが、看護系大学院の急増に伴う教育者・研究者の不足から、博士課程在籍者に看護教員として従事している者が多いという特殊性から、若手教員の教育研究環境の改善に向けた取り組みはあまり進んでいないという状況が見受けられました。

 また、「教員・研究者の流動性の拡大」という点では、比較的新しい大学院が多いということもあり、ほとんどの大学院で既に公募制や任期制が導入されている状況でございました。

 続いて、7ページ下段の「国際的な通用性、信頼性の向上のための方策」という点に関連しまして、大学院評価の状況につきましては、看護系大学院の中には開設から間もないものの、半数以上の大学院が研究科レベルで自己点検評価を行っており、4割の大学院で専門分野別の自己点検評価を実施しているという回答が見受けられました。続いて、8ページをご覧ください。自己点検評価につきましては、先ほど申しましたような状況でございますけれども、教育活動改善サイクルの中で効果的に機能していると評価する大学もある一方、先ほども申しましたが、作業量の増大に伴う評価疲れ等々の指摘もあり、今後は教職員の業務量を考慮しながら、教育の質向上のサイクルとしての実効性ある評価の工夫が課題との指摘がございました。

 最後に、「大学院の教育研究を通じた国際貢献・協調」につきましては、看護系大学院における留学生の占める割合は、修士課程では0.9%、博士課程では2.6%とかなり低く、国立大学院では5%未満のところが多いという状況でございまして、これは平成17年答申以降それほど大きな変化は見受けられず、また、グローバル化に対応した大学院教育の展開につきましては、協定を結んでいる大学院も多いけれども、留学生の受け入れ態勢は進んでいないという状況等もございました。

 9ページは今申し上げたことが総括的に記載されていますので、説明は割愛させていただきます。

 最後に、今申し上げましたような分野ごとの検証結果を踏まえたものが、冒頭申し上げた参考資料1-2でございます。本ワーキング・グループにおきましては、こういった検証結果を踏まえまして、今後、検討されるべき改善方策につきまして、3ページから4ページにかけまして、大きく8点ほど今後の改善方策についての提言が記載されております。文章が羅列されているような関係でやや見づらいかと思いますので、恐縮ですが、参考資料1-1の1枚紙をごらんください。こちらは、先ほど申しましたように参考資料1-2の概要でございまして、両面になっておりますが、裏面をご覧ください。今申しましたワーキング・グループでの検証結果を踏まえ、今後検討されるべき改善方策の概要を取りまとめたものでございます。

 本ワーキング・グループでの検証全体を通じて、いろいろな取り組みがなされる中、今後ともそうした取り組みを促進していくには、まずもって教員の補充を含めた基盤的経費を確実に措置すべきであるということと、あわせて競争的資金のさらなる充実が不可欠ということを冒頭にうたいつつ、大きく5つの観点からの提言がされております。1点目が「人材養成目的に沿った入学から卒業まで一貫性のある大学院教育の確立」。ディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシー、アドミッション・ポリシーを整合的に明確化し、組織全体で共有すべき。さらには、そういったものを対外的に公開し、開かれた大学院教育を推進することが必要との指摘がございました。

 続きまして、2点目の「産業界、地域社会等多様な社会部門と連携した人材養成機能の強化」という観点では、今後、高度化、多様化する医療の動向等を見据え、他の医療機関、研究機関等々と有機的に連携し、面的に広がりのある大学院教育を推進することが必要との指摘。

 また、3点目の「学修・研究環境の改善」につきましては、今後、大学院修了者のキャリアパスの明確化、さらには経済的支援の充実等が急務であるとの指摘。

 4点目の「大学院評価による質の確保」という観点では、既に実施されているところでございましたが、今後とも自己点検や外部評価を促進することが必要。さらには、こうした評価というのは、看護だけではなく、医学、歯学等も含めた医療系共通のものでございますけれども、医療系大学院は保健医療分野における職業人養成の性格が強く、今後は国内のみならず国際的に通用する職業人を養成するという観点から、標準的なレベルが確保されているかという視点も重要ではないかといった指摘。

 また、「大学院教育を通じた国際貢献・協調」という視点からは、アジア等の機関との強固な連携・交流を基盤とする国際的な教育研究拠点の形成の推進が必要との指摘がございました。以上、簡単ではございますが、私からの報告とさせていただきます。

【中山座長】どうもありがとうございました。看護系の大学院のことについて話していただきましたが、どうぞ。

【小山田看護教育専門官】もう一つの資料ということで、看護に関する最近の動向として、厚生労働省で特定看護師に関する検討に進展があったということで情報をいただきます。参考資料の2でして、これについては野村看護課長よりご説明をお願いします。

【野村オブザーバー】参考資料2でございます。特定看護師養成調査試行事業がこの6月から厚生労働省で募集を開始したところでございます。これは、前回だったと思いますが、チーム医療の推進に関する検討会の報告書に基づいて、それを具体化すべき内容について検討しているものでございます。1つが、この目的にありますが、従来よりも幅広い医行為を実施できる専門的な臨床実践能力を有する看護師、これを仮称「特定看護師」という名称で言っておりますが、こういった方々を養成していくものを試行事業としてとらえるというところでございます。この養成の中身は3種類に分かれていまして、1つは修士課程。こちらでご議論いただいている修士課程の事業、それから、研修で行うような部門もあるだろうということ。3番目が養成課程ですけれども情報収集、現在、特定看護師の養成を行ってはいないが、今後行う予定があるといったものについてこちらに応募していただいて、情報収集をさせていただくという事業、この3本柱になっております。それで、(A)の修士課程については、どのような教育内容であるかということを実施基準の中に入れておりまして、2つ目の○にありますように、臨床実践能力を習得する科目を必修としていることや、演習・実習科目、それから実習場所を確保していること、また教員や指導者に相当数の医師が含まれていること。そして、実習に関しては安全管理体制が整備されていることという基準ですけれども、こういった基準に該当し、特定看護師を養成するところにつきましては、今年8月までを申請期間とし、来年3月までを実施期間とする事業になっておりますので、この申請期間中に出していただければと思っております。現在、厚生労働省のホームページに詳細が掲載されております。2ページ以降が具体的な細かい実施要綱になっておりますし、また後ろのほうには申請書を添付してございます。現在、こういった養成をしておられる大学院、また今後こういったことに取り組むという、今伺っているものですとCNSの教育をしているところがプラスの教育をしていただいて、こういった特定看護師の養成を開始するところもあるやに聞いております。そういったところについても、ぜひこういった事業に応募していただき、教育をあわせて検討させていただければと思っておるところでございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【中山座長】ありがとうございました。今、事務局からご報告いただきましたけれども、何か質問はございますか。

 そうしましたら先ほど論点整理をしていただきました3つの論点がありますが、資料2ですね。これまでずっと検討してきました「社会が求める看護系高度専門職業人」ということと、「大学院で養成される看護系高度職業人の特質」、それから、これはまだ十分、議論がされ尽くしていないのですが、「教育・研究者養成の推進」、看護の質を高めるためには特に看護学教育を担う者の育成の問題はどうなのかということも何度も出されてきたと思いますが、この辺のところを踏まえまして、皆様から少しご意見をいただければと思いますが。先生、もしあったら、どうぞ。

【富野委員】すみません。前回の最後のところで僕が申し上げたのは、4ページ目の最後のところです。大学院においてどういう人材を育成するかということについては今までいろいろ議論されてきていますね。これは前半のところにかなり出ているわけですが、それを教える側の教員は十分に足りているのかということと、その人たちを今以上にレベルアップしていくための方策はどのように考えていっているのかということを少し議論してほしいというのが前回の最後のところでした。ですから、まず、入る人は希望を持って入ってもらいたいのだけれども、それを教える側のレベルアップと人員は十分に足りているのかということを話してもらいたいというのが僕の希望だったわけです。そんなところで。すみません。

【中山座長】わかりました。多分、今日の唐澤補佐から出たところにも多少は入っていましたね。まだ教員そのものが大学院に行っている場合だとか、教員の数の不足の問題というのは大学院では特に見られるようなことの報告もこの中に盛り込まれたように思いますが、その辺のところで何かご意見はございますでしょうか。どうぞ、中教審の。

【菱沼副座長】大学数が今年で190を超えて、来年には200ぐらいまで行くだろうと言われています。看護系の大学は国公私立の割合が1対1対1対でスタートしまして、ほかの学問領域とは全くバランスの違うやり方だったわけです。国公立がこれ以上増えないというところまで来ますと、あと増えていくのは私立大学。7割、8割を私立が担うというぐらいの一般の現象と同じところまで看護も行くとすると、まだ私立大学は増える計算になると思います。1つの大学ができていきますのに20人から30人の看護学の教員が必要だとしますと、今200としましても4,000、5,000の看護の教員が要るという計算になります。しかしながら、看護系の大学の中で博士課程ができたのは1988年でございますから、博士が一体何人輩出できたかと考えますと、4,000、5,000を補うほどの数は当然できていない。皆さんの自助努力で、他の領域やほかの方法で博士を持っている方は結構いらっしゃると思うのですけれども、まだまだ教員の不足というのは否めないと思います。今、養成所から短期大学へ、短期大学から大学へという流れの中で、教員もそのように移動してきているということがあり、教員の質の確保というのは本当に大きな問題で、そこが保証されませんと、大学の養成所化ということが起こりかねない状況が看護界の教育界にあるという危惧があるので、大学院の修士課程で高度実践家を育成することも医療の現場を上げていくためには必要なのですが、博士課程で教員を育成していくこともしていかなければいけないのではないかと思います。他の学問領域では、教員の移動をすべしというわけです。1カ所のところにずっといないで、教員が移動することは価値があると言われているのですが、看護学の中ではもう少し落ち着いてそこの大学で仕事をしてくれと言わなければならないような状況が起きている。それをいつまでも教員不足のせいにエクスキューズしていてはいけないのではないかと私は思っていますので、博士課程の充実と、教員育成というのは非常に大きな課題だと思っています。

【富野委員】例えばコンソーシアムを組んで、ある地域、地域で、教員がそこをローテーションするなり、シェアしながら教育を行うというようなことは考えにくいですが……。

【菱沼副座長】まだなされていないですね。

【富野委員】医学部でもそういうことはないのですけれども、そういうことはどうなのかな。すみません、先生、これで失礼いたします。

【中山座長】はい。どうぞ。

【菱沼副座長】多分、1人の教員があっちの大学院へも、こっちの大学院へも、そっちの大学院へも出かけていって、教えているということはあるわけですよね。

【中山座長】改善はされているようですけれども、大学の数が増えているので、改善はされていませんね。多分、この10年ぐらいの間にもう少し状況としてよくなるのかなと思ったのですけれども、実感としては先生方も感じていると思いますけれども、そんなにいい状況ではないのだと思いますが。

【村嶋委員】きのう、東大で出ていた話は、看護系大学はポスドクが少な過ぎると。ポスドクのポジションが少な過ぎるので、東大も生産はしているのですけれども、みんな、博士を修了すると、羽が生えたように出ていってしまう。

【菱沼副座長】そうですよね。ポスドクなんて成り立たない現状ですね。

【村嶋委員】きちんと看護学の研究をやっていくためには、ポスドクを確保できるだけの研究費を確保しないといけないのではないか。でないと、学問として育っていかない。昨日、東大の中で、助教以上で話し合ったのですけれども、助教から随分そういう意見が出ました。

【中山座長】要するに研究者として大事に育てられるプロセスはほとんどないと。博士を持ったら、今の看護界の状況では、教育も人手不足だということもあって、ポスドクをやっているという経済的余裕もないけれども、人的にも、いろいろな意味での余裕がないというのが状況でしょうか。

【村嶋委員】優秀な人たちが博士を取った後、もう少し溜めることができているともう少し研究を生産していけるのですが、それがなくて、直ぐに売れていってしまいます。就職先でほとんど生産を上げられないというのが問題として上がってきておりました。

【中山座長】生産が上がらないというのは、とにかく研究時間を確保するような状況には置かれないということなんですね。

【村嶋委員】結局、教育の義務が大きいためではないかと思います。

【中山座長】わかりました。東大もうそういう状況があるということですね。

【村嶋委員】はい。

【中山座長】ほかに何かありますか。今まであまり上がってこなかった、博士課程の問題、修士課程まではこの間から高度専門実践家の育成ということでずっと議論になっていたのですが、博士課程の問題はほとんど取り上げられてこなかったのですが。

【村嶋委員】もう一ついいですか。

【中山座長】はい。どうぞ。

【村嶋委員】あと、東大の中でシンポジウムをやったときに、NPの話をしたのですが、米国でNPを養成するときには、理論を教える方など、研究の方以外に、NP養成者のための実践能力のある教員の両方が必要であると。東大は人数が少ないので、本当は研究者養成と実践者養成のどちらかに絞っていかないといけなくて、そういう実践者養成は無理なのではないかということと、一方で、実践者として質の高い人たちがきちんとトレーニングして輩出されていかないと、結局、研究と実践とが乖離してしまう。実践の質が上がらないと、いい研究もできないのではないかと。だから、免許を与えるときに、質の高い研究のトレーニングもして現場に出す必要があります。研究というのは現象が見えるように、その方法論をつかむということだと思うのですが、それをトレーニングしてから出さないと、結局、現場に行ったときに、現場の現象が見えて、蓄積できるようにならないのではないかということを危惧しております。

【中山座長】それはちょっと待ってください。臨床家が研究のできる臨床家を育てるということですか。そうではなくて。

【村嶋委員】自分の見ている現象をきちんと記述したり、ある程度統一的に説明できるような、努力をするような臨床家が高度実践看護師だと思います。

【中山座長】そういう意味では高度実践能力を持つ臨床家たちがもう少し研究にきちんと参与できるように。研究に参与するためには自分の臨床なり、現象なりをきちんと論理的に説明できるし、研究によってきちんと裏づけられたものを持つしという、そういう能力を持った人材が大学院教育の中に参与すると、もう少し違うのではないかということなのでしょうか。

【村嶋委員】1つは、そういうNPをつくるようなときには、臨床実践家としてのプライドがあって、きちんと修士の学生に対してトレーニングできるような人を一定数大学院で確保する必要があるという点です。もう一つは、質のいい臨床家を現場に一定数置くことによって、実践の質が上がりますし、その人たちが、自分が見ている現象を科学の目で見ながら蓄積していける。そういう雰囲気や人材が現場の中であることが、私たちが研究するときも大事ではないかということです。

【中山座長】わかりました。どうぞ、高田先生。

【高田委員】今、村嶋先生が非常にいいことをおっしゃったのですけれども、現実問題として、看護は今、教員が非常に足らないという状況があって、学位を取るとすぐに教員になってしまうというようなお話があったのですけれども、日本のほかの分野の大学院教育、特に理系とか科学関係のところというのは実は、私の見るところ、あまりうまくいっていなくて、というのは、どういう人を育成するかということと、それの受け皿となるところとがうまくマッチしていなくて、従来ずっと、自分がやっている学問の後継者をつくると言ったらおかしいのですけれども、特に博士を中心としてずっとそういう教育がなされていて、その受け皿がないままどんどんやってきてしまったという反省が多分あるのだろうと思います。今回、看護の大学院でどういうことをやるかということで、私、前回出ていなくてあれなのですけれども、修士のところでは高度専門職業人という形で高度な看護師なり、助産師なり、保健師なりをやるというようなお話だったと思うのですけれども、そうなってくるとそれを教える教員も少し性格が違ってくるのではないかなと思います、これから。今お話があったような形で。そうすると出口を少し、まだ教員が足らないわけだから、どういう教員をどれだけ養成したらいいかということまで考えて博士課程をうまくデザインしておかないと、博士を取ったはいいけれども、出て実際に現場といいますか、教員になってみたら、実は必要とされるのは高度専門職業人を養成するような、例えが悪いですけれども、教育関係だと教職大学院というところとは随分違いますよね、教員の構成なども。そういう人たちがたくさん必要とされていて、需要と供給のミスマッチが起きると非常にまずいので、そこら辺、需要と供給の関係がいまいち私はよくわからないのですけれども、研究者だけではなくて、今お話があったように現場もわかるような方、本当にそんな方がたくさんできるのかどうかというのはわからないですけれども、よく考えておかないと、教える場合、大学院での高度専門職業人の育成自体がうまくいかなくなる可能性もあるのではないかなと思います。

【中山座長】多分、私どもの日本看護系大学協議会も把握はしていないのですけれども、専門看護師という形ではなくて修士課程、博士課程を終えた方がかなり今、臨床に出ている。特に今日、報告がありましたように働きながら大学院を出ている看護師もかなり多いので、そういう方々がずっとそのまま臨床を続けているのだと思うのですが、そういう方々が今どういう仕事をしているのかというのは見えていないところもあって、そういう方々が、今、村嶋先生が言ったような形で、もう少し教育もできるような力をつければ、臨床家であり、また臨床での教育もそこでできるというようなことが考えられていくのだと思うのですけれども、そこもまだ十分、看護界の中では把握できていない状況ではあると思いますが。どうぞ。

【西澤委員】最近あまり現場のことはわかりませんが、医師の場合は教員イコール臨床をやっていますが、今の看護大学において臨床をやりながら教育をやっているという人たちはどのぐらいいるのですか。

【中山座長】その臨床ということが……。

【西澤委員】現場で働きながら。

【中山座長】医師のような形ではなくて、ほとんどの教員たちが実習という形で、年間の3分の1の半分ぐらいは現場に出るという形になっている場合が多いのですけれども、医師の個別に患者さんを診るという臨床とは違う形があって、そこにほかの先生の発言があると思うのですが、看護学教育の中で臨床と教育をどういうふうに結びつけるのかという課題があり、医学教育との違いがあるかなと思っているのですが。

【西澤委員】すみません、、確かに実習に行ったときについているだけというのと、そこで働きながら教えるというのは全く違うので、そろそろそういうことをしないと、今のいろいろな悩み、言っていることは解決しないのではないかなと。我々、医師の立場からすると、どうしてもそのように見えてしまうのですが。

【中山座長】そこがね。その辺は。坂本委員。

【坂本委員】西澤先生がおっしゃるとおりなのですが、私も大学に入っていないときはそのように考えていました。大学に入ってみたら、とにかく忙しい。何でこんなに忙しいのというぐらい、看護大学の先生は忙しい。一般大学も持っているので比較しているのですけれども、看護大学の先生は忙しいです。うまく時間管理をしてようやく研究ができる先生もいらっしゃるけれども、実習指導の時間や実習準備、委員会などがあり、すごく忙しいなと思います。それで、いろいろな人たちと話をすると、おそらく教員の数が少ないのではないかというのが1つです。だから、もう少し数が増えてくれば、臨床側に出て、一緒にユニフケーションできるような状況をつくれるのかなと思う。今そこに少しとりかかっているのだけれども、まだ時間的なものがあって入れないというところがあります。

【西澤委員】忙しいのは医師も同じです。結局、同じ人数で、例えば教員が10人いて、臨床現場で働く人が10人いれば、シェアし合えば同じわけですから、どこかで実験的にそういうことをやってみたほうがおもしろいと思うのですが。

【坂本委員】実験的にやっているところはありますよね。聞いたところによると、臨床側に臨床教授で来てというと、臨床もまた忙しくて、教えになんか行けないという話になって、なかなかうまくいかないですよね。

【中山座長】数の問題はずっとここでの検討事項になっていまして、それは圧倒的に医学の場合と違いますので、その問題が一つ残っていることと、そのことも含めて多分、今回の新しいカリキュラムの中で教育方法を少し変えていくことで、教育方法を変えると、看護教員の数と能力の問題が問われてくるのだとは思います。その辺の検討は次の段階としては考えていかないと、今までのような教育で実践能力が育つ学士課程の学生を育成することは非常に困難。学生の持つ生活能力そのものが違ってきている状況の中で、教育方法も変えていかざるを得ないという現状にぶつかっているのではないかと思いますが、その辺のところで何かご意見はございますか。どうぞ。

【菱沼副座長】直接の今の関連ではないのですけれども、先ほど、医学部の教員数の多さというのは、医学部は、附属病院を持たねばならないということになっていますから、そこに人員がいるわけですね。その方たちでシェアできる状態なわけですが、看護学部あるいは看護学科はそういう現場を持たねばならないということになっていません。それを現実化していくのはとても大変なことだとは思いますが、看護が持てる現場を大学が附属で持てるようになりますと、そこの現場に教員がいる。そこに学生が実習に来るということが可能になるのだと思います。病院を持っていないところは依頼をし、そこで実習させてもらう現状です。

【西澤委員】それはわかるのですが、高田先生はご存じだと思いますが、医者の場合は教員が多いからと言うけれども、大学の医者は教育よりも臨床のほうに時間を使われているので、トータルの数は多いけれども、実は教育の面ではそんなに多くありません。極端なことを言えば、今、大学病院の附属の病院の各病棟の師長さんとか主任さんを全部、教員にしてしまったのが、今のもしかしたら医師教育の姿かもしれないですね。

【菱沼副座長】そうですね。

【西澤委員】だから、そういう発想でばんとやれば教員も一気に数が増えるわけですし、その方がやっている仕事の中で、教育はこれだけで、臨床はこれだけですよとするだけだと思うので、あまり最初からガードしないで、できるのではないかと思います。

【坂本委員】文科省がガードしています。教授や講師になる人たちの履歴をすごく重視します。現場でやっている人でいいですねという話にはならない。そういう問題もあるので、もう少しそのあたりをラフにやったらいいのではないかという話になってくると、もしかしたら教員の数は増えるかもしれません。ただ、それでいいのかという疑問はありますけれども。でも、新しいものはつくり上げる必要がありますよね。

【村嶋委員】大学病院の中では、看護職は技官であって、教育職として位置づけられていないです。この問題は大きいと思います。だから、せめてそこに教育職が、助教でも何人か配置基準としてあれば、そことローテーションできます。

【中山座長】でも、それも附属病院が同じキャンパスの中である、同じ組織の中であるところはできますが、看護系の大学の多くは附属病院を全然持っていないわけですから、その違う組織との関係をどうするかという問題もまた出てきますし、そこはそう容易ではない。そういう意味では国立大学は全部、附属病院を持っているので、そういったところから手がけていく、モデルをつくるというのはあり得るとは思いますけれども、すべての大学でそうなってくるかというと、またいかないという問題が出てくると思います。どちらにしても多分、野嶋研究班のほうでもどういう教育の展開をするかによって、教員の数の問題、あるいは臨床とどういう連携を組んだほうが濃い教育が展開できるかというのは、示していただける感じですか。

【野嶋発表者】どうなのでしょう。各大学に、このような20の能力を育成するためには何が問題かと。特に教員サイドの問題だとか、教育環境で何が問題ですかということで問題の抽出をし、それに基づいて何かができればと思いますが、今、私たちの研究班で少し話題になっているのは単位の実質化というところで、実習の単位の実質化とは何なのかというあたりが少し話題にはなっています。つまり、どの程度、学生数に対しての教員数だとか、フェース・トゥー・フェースの指導とかいうあたりをどのようにカウントしていくかというあたりが一つのかぎかなと。本当に単位の実質化になっていますかというところはかぎかなとは思っています。

【中山座長】わかりました。ありがとうございます。大体時間になりましたが、どうしてもという方、発言をどうぞ。どうぞ。

【坂本委員】「看護系高度専門職業人」という名前がありますね。どこかで「上級」と使ってみたりしていますね。私は臨床にいたのでよく見ているのだけれども、臨床で働いている看護師から見れば、この人たちが高度で、私たちは低度という、低いというふうな考え方をすることもあります。、この名前は今まで使われてきたので変えることはできないのかもしれないですが、私は今回の特定看護師も、専門看護師も、ある一定の特定の分野に対して秀でているという感覚です。ジェネラリストのナースが一番患者さんを側で見るという状況においてそこは重要なので、名前を変えてほしいという提言はできませんけれども、ちょっと疑問があります。

【高田委員】高度専門職業人というのは一般的な用語と違いますか。看護系に限らず、ほかのいろいろなところで使われていて、その中での看護系という意味ではないかなと思うのですけれども。

【坂本委員】そういうふうにとればとれないこともないなと思うのですけれども、時々、文章を見ていると「上級」という言葉が出てきます。今いろいろな言葉があるんですよね。

【中山座長】そうですね。

【坂本委員】上級実践コースとか出てくるので。でも、やはり患者さんの側にいるナースがある一定のきちんとした上級であると思うので、そのあたりは気にしないといけないのかなという気がします。

【中山座長】「Advanced」ということをどういうふうに訳すかというのも相当いろいろなところで議論されているのですけれども、あまりいい訳はなくて、「高度」と使う人と、「上級」と使う人といろいろあるのではないかなと思っていますが。

【坂本委員】これからもっと高齢化になってきたときに、一番近くでケアしている人たちが一番高度になっていくと思います。いろいろなところで、その人たちをベースにして上にのぼっていくという雰囲気はよくないと思います。これをジェネラルとしてとるのだというふうにおっしゃっていただければ、それはそれでいいと思いますけれども。

【中山座長】何かありますか、これは。中教審のほうでも「高度専門職業人」というのは使っているのですよね。

【菱沼副座長】私が勤めている大学では「上級実践コース」と言っていて、それは今深く反省をしています。修士論文コース、上級実践コースに分けているのですが、学生たちが、あっちは上級で、自分たちは低級だからということを冗談で言う雰囲気ができるということが非常にまずいなと反省しています。コース名を変えたいと思っています。

【中山座長】多分、専門職大学院の兼ね合いもあって、高度というのを使っていますかね。

【小山田看護教育専門官】そこは「スペシャリスト」とか、「ゼネラリスト」とかいう意味ではなくて、大学院で養成される職業人養成というのは高度専門職業人ということで、これまでも報告書の中で使われてきましたので……。

【中山座長】そうですよね。

【高田委員】一般的に、ほかのいろいろな職業でね。

【小山田看護教育専門官】ええ。そういう意味で、その中でも幅広に、いろいろな分野に高度専門職業人はありますが、ここではあくまで看護系大学で養成される高度専門職業人養成という意味で「看護系」とつけたというだけの趣旨でして……。

【坂本委員】この後につく名詞ではないということですね。

【小山田看護教育専門官】そうです。

【坂本委員】わかりました。

【中山座長】多分、職業人の場合は6年やって専門職という形が国際的な流れでもあって、その流れをくんでいるかなと私も受けとめてきたのですが、それを「専門職業人」、あるいは「高度専門職業人」という形になっていて、学歴との兼ね合いが多少あるのではないかと思っています。

【坂本委員】はい。

【中山座長】それをゼネラリストで本当に高い能力と技術を持っている看護師を区別する言葉ではないのだと思います。

【坂本委員】はい。わかりました。

【中山座長】ほかに何か。よろしいですか。ありがとうございました。少し時間を超過してしまいましたけれども、きょうの議題は大体これで終わりまして、結論が出せないままの委員会ではございましたけれども、次回は委託研究事業の最終報告を受けて、今後、新たな看護学基礎カリキュラムの内容をどんなふうに持っていくのか、あるいはこの検討会としてどういうような方向でまとめるのかということを出していくことになるかと思いますので、よろしくお願いいたします。それでは、事務局に戻しますので、連絡事項、その他をお願いいたします。

【小山田看護教育専門官】遅くまで熱心にご議論いただきましてありがとうございました。現在、次回の会議日程は調整中でございますので、決定次第、開催案内をお送りいたします。以上でございます。

【中山座長】ありがとうございました。お疲れさまでした。

 

―― 了 ――

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