大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会(第9回) 議事録

1.日時

平成22年5月20日(木曜日)15時30分~18時30分

2.場所

文部科学省 東館3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 大学院における看護系人材養成に関する有識者からのヒアリング
  2. 大学院における看護系人材養成に関する意見交換
  3. その他

4.出席者

委員

中山座長、菱沼副座長、秋山委員、倉田委員、小山委員、坂本委員、佐藤委員、富野委員、西澤委員、平澤委員、藤川委員、前野委員、松尾委員、宮崎委員、村嶋委員、横尾委員

文部科学省

加藤審議官(高等教育局担当)、新木医学教育課長、小山田看護教育専門官

オブザーバー

野村看護課長(厚生労働省医政局)

意見発表者
田中美恵子意見発表者(東京女子医科大学看護学部長)
山内豊明意見発表者(名古屋大学教授)
川嶋太津夫意見発表者(神戸大学教授)

5.議事録

 大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会(第9回)

平成22年5月20日

 

 

【小山田看護教育専門官】それでは、定刻となりましたので、まだご到着でない先生もおられますけれども、これより第9回大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会を開会させていただきます。委員の皆様方、また、意見発表者の先生方におかれましては、ご多忙のところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。では早速、座長に議事進行をお願いいたします。

【中山座長】それでは、進めていきたいと思います。今日は3時間という長丁場になっておりまして、くたびれるかもしれませんが、できるだけ手際よくして、実りある会議にしていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。前回に引き続きまして、今回も大学院教育に関するヒアリングを、4人のプレゼンターの方に来ていただきまして、することにしております。とりわけ大学院で高度専門職業人の育成といいますか、高いレベルの臨床家たちを育成するためにはどうしたらいいかという問題に、この検討会もずっと取り組んでまいりましたので、その現状と課題を今日、受けまして、そして、諸外国の大学院教育のほうも報告をいただくことになっておりますので、それも含めまして、大学院教育がどうあったらいいかということを中心に検討していきたいと思っております。先ほど言いましたように、十分な意見交換の時間はございますので、いい議論ができればと思っております。それでは、今日の資料と出席状況につきまして、事務局のほうからお願いいたします。

【小山田看護教育専門官】初めに、委員の出欠状況ですが、本日は高田委員からご欠席のご連絡をいただいております。また、今回から新しくご参加いただいております委員の方をご紹介させていただきます。日本医師会常任理事の藤川謙二委員でございます。

【藤川委員】日本医師会の藤川です。よろしくお願いします。

【小山田看護教育専門官】よろしくお願いいたします。続いて、本日の意見発表者としてご出席をいただいております先生方をご紹介いたします。左側から、東京女子医科大学看護学部長の田中美恵子先生でいらっしゃいます。

【田中発表者】田中でございます。よろしくお願いいたします。

【小山田看護教育専門官】それから、名古屋大学教授でいらっしゃいます、山内先生でいらっしゃいます。

【山内発表者】山内でございます。よろしくお願いします。

【小山田看護教育専門官】神戸大学の教授でいらっしゃいます、川嶋太津夫先生でいらっしゃいます。

【川嶋発表者】川嶋でございます。よろしくお願いいたします。

【小山田看護教育専門官】また、本日は村嶋委員のほうからもプレゼンテーションをいただけるということになっております。最後に、オブザーバーとして、厚生労働省医政局看護課の野村課長にもご出席をいただいております。

【野村オブザーバー】よろしくお願いします。

【小山田看護教育専門官】事務局ですけれども、加藤審議官は、出席予定なのですけれども、ちょっと遅れておりまして、また、後ほど途中退席をさせていただく予定となっております。申しわけございません。また、新木課長も途中一度退席をする場面がありますけれども、ご承知おきください。続いて、配付資料の確認をさせていただきます。本日の配付資料は、議事次第と席次表、それから委員名簿ということで、藤川委員が新しくお入りいただきましたので、改めて委員名簿をお配りしております。それから、4人の先生方のプレゼンテーションの資料で、資料1が田中先生の資料、資料2が村嶋先生、資料3が山内先生、資料4が川嶋先生です。そして資料5として、「大学院における看護系高度専門職業人養成の在り方に関する論点及びこれまでの意見等」という資料をつけております。参考資料として、前回の議事録がございます。あと、机上配付だけなのですが、『保健の科学』という雑誌があります。こちらは村嶋委員のプレゼンテーションの補足資料ということで配付させていただいております。あと、今日は厚いファイルが2つありまして、薄いほうのファイルは、これまでの大学院に関する資料が含まれる、第7回と第8回の検討会の資料を入れておりますので、議論の際には参考にしていただければと思います。不備等ございましたら事務局までお知らせください。

【中山座長】ありがとうございました。それでは、本日の議題(1)になりますが、「大学院における看護系人材養成に関する有識者からのヒアリング」ということで、入っていきたいと思います。4人の意見発表者の皆様には、20分ぐらいずつで発表いただきたいとお願いしております。4人になりますので、田中先生、村嶋先生、2人続けてやっていただいた後、少し討論しまして、そして山内先生、川嶋先生と入っていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。それでは、田中先生のほうから、お願いいたします。

【田中発表者】それでは、資料に沿ってご説明させていただきます。

 本日、私に与えられた課題は、「高度専門職業人の養成の実際と課題について」ということで、現在、専門看護師教育課程というのは日本看護系大学協議会のほうで認定をしておりまして、その中の専門看護師教育課程認定委員会というところが主に認定作業を行っております。この認定委員会の、現在、私が、任期制なんですが、委員長をしている関係で、本日の発表を仰せつかったのかと思います。それともう一つ、現在、東京女子医科大学の大学院で専門看護師の育成を、私は精神看護学の分野でやっておりますので、その両方についてお話をということで伺っておりますので、それに従ってお話しさせていただきたいと思います。

 次の資料ですけれども、今、日本看護系大学協議会のお話をさせていただきましたが、そこに常置委員会ということで、専門看護師教育課程認定委員会がございます。そこで教育課程の基準・認定規程等が整備されておりまして、それにのっとって、認定委員会と、その下に専門分野ごとに11の専門分科会がございまして、それによって各大学からの申請に基づいて審査をしているというのが現在の状況でございます。ご存じの先生も数多くいらっしゃるかと思いますが、一応お話しさせていただきます。次の資料でございますが、これは周知のとおりのことなんですが、大学数、修士課程数、博士課程数が年次ごとに増えているということで、修士課程が2009年度では119課程ということで伺っております。

 それに伴いまして、その次の資料ですが、看護系大学院生数もどんどん増えておりまして、現在、修士課程の学生数は2009年で1,964人というふうに伺っております。

 こういう中で、専門看護師の検討がだんだんと進められてきたわけなんですが、その次の資料で、専門看護師の検討の経緯、推移ですけれども、1989年に大学協議会で検討を開始しまして、それを受けて日本看護協会がCNS制度の試案を発表しました。1993年に、『看護教育』という雑誌の誌上に検討案が発表されまして、1995年から、日本看護系大学協議会のほうで教育課程の基準案を発表して、96年から認定を開始しております。2007年では、10年ごとの更新申請という形になっておりますので、10年目を迎えて認定の更新というものも行っております。

 次の資料でございますが、「専門看護師とは」ということで、これは日本看護協会のほうの規程から抜粋しているものですが、現在の定義は、「複雑で解決困難な看護問題を持つ個人、家族及び集団に対して、水準の高い看護ケアを効率よく提供するために、特定の専門看護分野の知識及び技術に関して大学院教育を受けた看護師」というような形で定義されております。

 次ですが、同じく日本看護協会のほうの規程からとっておりますが、専門看護師の役割として、ある特定の専門看護分野において「卓越した看護実践能力」を有することが認められた者として、その役割として、そこにお示ししてあります6つの役割が規定されております。実践、コンサルテーション、調整、倫理調整、そして教育、研究ということ、この6つの役割が課せられております。

 その次のスライドですが、ざっと全貌をお示しするという意味ですが、今のところは学士相当の者、それから看護系大学院の専攻教育課程を、今、私が務めております日本看護系大学協議会の専門看護師教育認定委員会で審査をして、その後、臨床経験、昨年から、前は1年でしたが、半年の臨床経験を積んだ者がCNSの認定申請をしまして、日本看護協会のもとでCNS認定審査試験等でCNSが誕生するというのが最も一般的なルートで、そのほか、下にお示ししてあります、個人認定ということで、認定された教育課程を出ていない方でも、科目履修等々をして個人認定で申請をすることができるというのが現在のシステムでございます。

 その次ですが、特定されている教育課程の認定数、今年の3月現在で、そこにお示ししてあります教育課程が、全体で、大学数では60大学、そして専門看護分野は、154課程が専門看護師の教育課程として認定されております。数は、がん看護が一番多いという形になっておりますが、そのほか、慢性、母性、小児、老人看護、精神看護等々という形で専門分野が現在存在しております。

 その次のスライドですが、これは累計推移ということで、21年、昨年のところで、160の課程がそれぞれの専門分野ごとにどのようになっているかということを示したものです。

 次に、これは、1年間かけて教育課程を認定しておりまして、昨年度の認定状況です。申請数が38専攻教育課程、そのうち新規の申請が37教育課程、更新が1教育課程ありました。その38に対して、昨年は認定数が35、そのうち新規が34、更新が1ということで、それぞれの専門分野別の合格のパーセンテージをグラフにお示ししております。

 次のスライドですが、登録されている専門看護師数ということで、2010年3月現在451名で、各分野別の認定者数はそこにお示ししてあるとおりで、がん看護が193名ということで、現在、一番多い認定を受けております。

 その次、教育課程のお話をもう少しさせていただきますと、現在の教育課程で基準として示されておりますのが26単位ということで、その構成は、ここにお示ししましたように、共通科目8単位の上に各専攻分野ごとの共通科目、そして専攻分野ごとの専門科目、どの領域にも実習科目が6単位ということで基準が定められております。

 その内訳ですが、次のスライドで、共通科目は看護教育、看護研究、看護理論、管理、倫理、政策、コンサルテーションなどの科目が指定されておりまして、その中の8単位を取ることが学生に課せられております。そのほか専攻分野の共通科目として、各分野ごとの専門的な内容が共通と専門に分かれて12単位、そして実習が、卓越した判断・実践能力を養うということで6単位設けられて、全体で26単位になっております。

 次ですけれども、いろいろな動きを受けて、日本看護系大学協議会のほうでも専門看護職のいろいろな検討を行っておりますが、2002年には、先ほどのことともダブりますが、専門看護師教育課程の検討委員会等が立ち上がりまして、順次検討して案を立ててまいりました。2005年には高度実践看護師制度検討委員会というものが発足しまして、そこでまた専門看護師の基本的能力等の検討をして、それを発表したりしております。ずっと高度実践看護師の検討委員会が引き継がれまして、2009年5月には、日本看護系大学協議会の提案として、高度実践看護師の育成は38単位ということでいかがかということで、内容等が声明として発表されております。また、それを受けて、2009年12月にも高度実践看護師に関する声明というのが発表されておりまして、これらは日本看護系大学協議会のホームページにアップされております。2010年現在ですけれども、同じく高度実践看護師の制度推進委員会という形で、今後、専門看護師の教育をさらに充実させていくための単位数・移行計画について、認定委員会とは別の委員会で検討中でございます。

 次ですが、高度実践看護師養成の教育課程のあり方に関する提案ということで、先ほどの2009年の段階で提案がありましたものは、現行カリキュラムに対して強化すべき点が、まず、共通科目の強化ということで、advancedフィジカルアセスメント、advancedな生理学・病態生理学、advancedな薬理学ということで、これが共通科目に、現在の科目にプラスして強化したほうがいいというふうに提案されたものです。また、専門分野の教育内容もさらに強化する必要があるということと実習の強化ということも提案されております。これらを総合して、現在の26単位から38単位を目指すのが望ましいのではないかということがその時点で提案されております。

 次のスライドは、その具体的な提案内容をお示ししたものですが、先ほどの強化したほうがいいということで、共通科目Bのところにadvancedなフィジカルアセスメント等が6単位追加、そして専門分野のところでは、それぞれの専門分野もさらにサブスペシャルティーといいますか、さらにまた専門がありますので、そういうサブスペシャルティーを強化したほうがいいという提案がありまして、12単位から14単位、実習は10単位、そしてダイレクトケアの事例数を増加させて、実習の時間のおおむねの目安として500時間以上ということが提案されております。

 現在、そういう形で検討段階ということなんですけれども、今、私が務めております専門看護師教育認定委員会のほうは任期制でありまして、今のところ、2年で交代ということで、事務局、委員長等が持ち回りでやっております。昨年1年間やりまして、今年が2年目ですので、まだ昨年1年、委員長を務めたという段階でのお話なんですけれども、これは私の私見ですけれども、現在の認定制度の課題としては、今言いましたように、看護系大学協議会に所属している各大学、その委員が交代で、持ち回りで委員長を務めているという形ですので、事務局も持ち回り制になっております。そして、先ほどお示ししましたように、申請する大学も年々増えているというのが現状で、昨年ですと38課程の審査ということを分科会の作業をもとにして行ったわけなんですけれども、いろいろな意味で、持ち回り制度のやり方には限界があるんじゃないかということが1つあります。

 ですので、教育課程を認定していくのには、第三者の認定機関を設立することがぜひ必要じゃないかというのが1つあります。その認定機関ですけれども、できれば教育課程の認定とその評価、事後の評価ということも機能の中に含めたほうが望ましいのではないかと思っております。あわせて専門看護師の資格認定ということも、その第三者機関で行われたら望ましいと思っています。

 それから、現在の教育課程の認定は、大学が専門看護師の教育と予定されているものを実施して、2年目に看護系大学協議会のほうに申請することができるようになっております。ですので、学生を募集する段階、それから学生が1年生の段階は、まだ専門看護師教育課程として認定されるかどうかは不確かな形で教育が行われているというのが現状でございます。ですので、学生にとっては、万が一認定されなかった場合の不利益ということもありますし、教育機関のほうにとりましても、予定で学生を公募せざるを得ないということで、ここら辺が運用上も、いろいろな意味で課題があるかと思います。ですので、できれば教育課程を計画段階で申請しまして、そのかわりに、今、実施後の評価体制というものがございませんので、実施後の評価体制をして教育の質を担保していくのが望ましいのではないかと思っております。

 次ですけれども、今、38単位ということで、さらに専門看護師の教育内容を充実させようということで動いておりますけれども、その移行に伴う具体的、実際的な課題としては、教育課程への移行措置の明確化ということがあるかと思います。いろいろな大学、今、160課程が開かれているということで、また、移行措置に伴って各大学のほうでもかなり混乱する可能性もありますので、移行措置をきちっと明確化していくということがあるかと思います。

 それから、既に451名の専門看護師の方が資格を取得して、実践の場で活躍されておりますので、この方たちが、専門看護師の資格がもう少し単位を要求するようになった場合に、不足単位などをどういうふうに履修していくか。各大学の大学院が科目等履修制度等を開講するなどして、そういう対応が必要かと思います。

 こういうこともあわせていろいろなことを考えるには、今、教育課程を認定しているところ、それから専門看護師を認定しているところ、学会等も含めて、足並みをそろえてやっていく必要があると思います。

 時間が押せ押せで申しわけないんですけれども、女子医科大学の精神看護学の場合ということで簡単にお話しさせていただきます。設置の趣旨とか教育目的はそこにお示ししてあるとおりですので、読み上げませんが、基本的には、高度な専門職業人の育成と看護研究者の育成という2本立てで、目標にして教育をしております。

 現在、博士前期課程では2つのコースを開いておりまして、修士論文コースと実践看護コース。幾つかの専門看護分野を女子医科大学で持っておりますが、私のところは精神看護を開いております。入学要件は、そこにお示ししたように、看護系大学を卒業した者、それに相当する者という形です。

 修了要件は、修論コース、実践看護コース、両方とも30単位以上で、研究が修論コースの場合は、特別研究、実践看護、CNSのコースは課題研究という、研究のところに差がございます。

 カリキュラムの実際が、次にお示ししたとおりですが、これだけだとわかりづらいかもしれないですが、今このような内容でやっておりまして、部分的に海外講師を入れたり、また、医師の方にも教えていただいたりという形でやっております。規定どおりの26単位プラス課題研究という形で進めております。

 女子医科大学の入学者実績なんですが、2002年に1回生を迎えまして、それ以後、ここにお示ししたような形で、実践看護コースに入った方が28名、修論コースに入った方が2名ということで、人気としては圧倒的に実践看護コースの方が高いです。今年の3月までで30名の方が入ってきて、29名の方が修了しています。

 入学者の背景ですけれども、今まで入ってきた方では、臨床経験が3年から20年ということで幅があります。私のところでは、臨床経験が10年程度の30代前半の方が主体です。臨床経験がないと入れないというふうな規定にはなっておりませんが、実情として、私のところでは臨床経験がない方は今までに入ってはおりません。精神科の臨床経験がある方が26名で、精神科以外での臨床経験がある方が4名という形です。

 そのほか、どのように学士号を取得してきたかという経緯ですけれども、4年制看護大学をストレートに出てきた方というのも最近は少しずつ増えていますが、そういう方は9名で、ほかは編入学とか、科目等履修とか、放送大学等で学士号を取得して、仕事をしながら学士号を取得したりという形で、苦学しながら大学院に進んできている方が多いです。中には海外で学士号を取得してきた方もいらっしゃいます。現在入っている学生は、社会人入学が今まで16名で、約半数ということです。最近は看護部長等の理解があって、修了後にCNSのポジションを確保することを約束されて入学してくる方も少しずつ増えています。

 ただ、いろいろな背景ですけれども、このような感じなんですけれども、私の一般的な印象としては、大学院に入ってこられる方は非常に意欲が高くて、問題意識を持っていて、現場を改革していこうという動機づけのとても強い方が多いように思っております。

 修了者の進路ですが、今まで入ってこられて修了した方は、就職は100%です。さっきの入学者の数で見ております、実際、今年3月までに修了した方の数は27名ですので、100%ということになります。CNSコースを出た方25名のうち、臨床に行かれた方が21名、教育が3名ということで、修論コースの方は教育のほうに行っています。専門看護師の資格取得者というのが実際、私のところはまだ多くないので、あんまり胸を張って言えないんですが、現在のところ4名で、今までの修了者の中の約2割です。リエゾン精神看護の領域が2名で、狭義の精神の領域の人が2名です。ただ、現在、職場でポジションを得て、プレ専門看護師として活動中の人が8名いますので、ここ二、三年のうちに数が半分ぐらい増えていくのかなと思っています。専門看護師教育をしていて感じる課題ですけれども、今までの場合ですと、職場におけるポジションの獲得までに、ある程度時間がかかったということがあります。それから、資格試験のハードルの高さということも感じました。そういうことで、資格がないとポジション獲得が困難で、ポジションを獲得しないと活動がしづらいということで、悪循環があるように思いました。またもう一つ、実際、修了後にポジションを得てから経験することで伸びていく側面というのがかなりあって、ここら辺がいろいろなジレンマということも感じます。

 対応策として、修了後のフォローアップとしまして、事例検討会を大学のほうで開催したり、資格試験前の相談対応とか、また、職場でのポジション獲得のためにさまざまな支援をしているというのが実情でございます。

 専門看護師資格取得上の教育の課題ということですが、今言ったような背景の学生が多いですので、入学者の背景が、少なくとも私のところは多様で、レディネスが一定ではないということがあります。特に入学前の臨床経験の差がかなり影響していて、経験が少ない方は、修了後にある一定の経験がどうしても必要になってきます。

 なので、解決策というか、提案ですが、資格認定というのはminimum requirementということとして、教育課程をさらに充実させる一方で、認定後の継続的な教育研修を確保するということで、修了時点ではこれだけのものを修めていればよいというような考え方で、修了後の研修を充実させるというやり方も一案ではないかなと思っています。

 それから、リエゾン分野の場合、私のところですと、精神と身体と両方にまたがるような場合に、一般科の経験のほかに精神科の経験が必要となるということで、資格認定までにどうしても時間がかかるということがあります。それから、私のところでは社会人入学の学生が多いので、学生にどうしても負荷がかかって、実習等を圧迫するということがあります。

 もう一つ、研究ということも課しておりますので、課題研究にかなりの時間と労力がかかるということがあります。ただ、ここら辺がジレンマなんですが、実際、就職したときに、研究力というのが現場で期待されているということが大学院を出ますとありますし、また、その研究指導の役割を臨床でとっていく中で、そのほかの専門看護師としての役割獲得ができるという意味で、役割獲得の戦略になるようなところが研究にある。そういうところがジレンマを感じますが、また一方で、研究によって論理的な思考力が高まるというような利点も感じております。

 それと、いろいろな背景の方がいらっしゃいますし、専門看護教育のほかに、幅広い素養というのを大学院の中で養っていただくということが、単に専門的に特化した内容だけじゃなくて、専門看護師として必要なリーダーシップとか、コミュニケーションとか、さまざまな能力に影響するということで、そこら辺をどうバランスをとってやっていくかということが課題だと思っています。

 ただ、大学院教育の効果ということでは、一般教養的なもの、それから専門分野ともに幅広い視野とか系統的な知識を獲得するということで、私の主観的な印象ですが、実践力も格段に向上するというのが印象としてあります。そのほか専門職意識の向上とかもございまして、現場からの評価は非常に高いと思いますし、修了生もいろいろな場で、臨床現場、職能集団、学会等で活躍してくれているように思っています。

 特に精神医療、保健医療の分野で考えますと、さまざまな精神保健問題がありますので、これらに、修士課程、専門看護師課程を修了した方は貢献してくれるように思っておりますが、今の専門看護師だと医療チーム内での活動ということが主体ですので、対象者に対する1対1での活動ということが今後開かれますと、さらに精神保健医療の分野で貢献してくれる可能性があるのではないかと思います。

 教育上の課題として、実践力の強化ということがありますので、先ほどの38単位の提案のように、直接的なケアの力の強化というところと実習単位数の増加、サブスペシャルティーの強化ということが課題としてあるかと思います。そして、看護の高度専門職業人のコアコンピテンシーを明確化していくこと、それから専門看護師の質を担保することとある一定の量の人材を輩出するかという、この2つのバランスをどうとっていくかということ、それから、専門的な実践力と幅広い素養とのバランスをどう教育課程の中でとっていくか、そして、先ほど申し上げましたような実践能力と研究能力のバランス、そして一方では、研究者を育てていくことも課題ですので、このあたりをどう考えるかというのが自分自身もジレンマとしてございます。

 また、大学院の教育をしていく中で、教育者を確保すること、それから実習フィールドを確保していくこと、また、広い目で見ますと、大学院教育も地域格差がかなりありますので、単位数を増やしていったときに、一大学がそれを担っていくだけの教育的な人材を確保できるのかというあたりも課題かと思います。先ほども申し上げました、教育・資格認定システムの問題、それから修了後のフォロー体制、こういうあたりを課題と感じております。時間が延びましてすみません。以上でございます。

【中山座長】田中先生、ありがとうございました。多分、もう少し時間が欲しかったところを、少しはしょっていただいたのではないかなと思っております。質問の時間のときに、少し説明を加えていただくという形で補足していただければと思いますので、続けまして、村嶋先生からのプレゼンテーションに移りたいと思います。村嶋先生は、東京大学大学院医学系研究科の修士課程「保健師コース」ということで、これを試みて、開設から4年間たつわけですが、その報告をしてくださることになっておりますので、よろしくお願いします。

【村嶋委員】今日はお時間をいただきまして、どうもありがとうございます。

 資料2、東大の「保健師コース」開設の意図と4年間で分かったことをご説明します。

 最初に、下のページ、2枚目ですが、現在、保健師が携わっている主な健康政策について掲げました。医療費適正化を含む生活習慣病予防、自殺対策を含むメンタルヘルス等、これらはいずれも、いまだ社会が遭遇したことのない新しい課題です。保健師は社会との接点で働きますから、これら社会が初めて直面する新しい健康課題を持つ人々に対応します。同時に、その問題の原因・広がり・深刻さを探索しながら解決していきます。その際、複雑困難な事例への対応能力と地域社会・職場全体に働きかける能力を用います。

 未知の「社会への脅威」に立ち向かう力をつけるのが修士課程での教育です。具体的には問題探索力、分析力が挙げられます。これには、疫学・統計学・社会調査法などの量的探索方法と事例の共通点から原因を探る質的探索方法があります。解決に向かうためには、ケアを提供する看護の力と種々の情報を統合する力が求められます。当事者自身に働きかけて治癒力を引き出すとともに、グループの治癒力も活用します。必要に応じて資源を用いますが、地域で活用可能な資源があるかを評価し、不足の資源はつくり出します。このような分析と統合を螺旋的に繰り返しながら地域社会の健康度を高め、社会への脅威に立ち向かうのが保健師の活動方法です。かなり研究能力も必要としますし、この能力を付与するのは従来の学士課程での保健師教育では不可能ですので、修士課程で保健師教育を始めたいと考えました。

 保健師の活動方法をさらに詳しく説明します。方法には大きく3側面あります。右のイラストは、外側の輪が地域や企業全体、中の小さな人の顔が個人・家族、中ぐらいの円が集団をあらわしております。保健師は、まず、A、対象集団内の個人・家族にケアを提供して支えます。また、B、対象集団内で問題を抱える人々を集め、その共通点・理由を探し出し、改善を働きかけます。それからC、ケアや活動の継続性、資源配分の公平性を担保するために施策化し、予算を獲得します。保健師としての基本的能力、物の見方、考え方は、個人の健康問題と地域全体の健康課題を結びつけ、両方に働きかけながら、両方の解決を図ることにあります。

 この考え方を取り入れたのが、日本公衆衛生学会が発表した、保健師の「コアカリキュラム2005」です。パブリックコメントも経ていますので、東京大学の修士課程保健師コースではこれをカリキュラム構築の基本に据えました。

 開設は平成18年度です。教育の基本方針は、1、保健師として自治体・産業に勤める人材の育成。2、実践を変革していく調査研究能力を磨く。3、臨地実習を重視する。の3点です。実習は、A、継続的家庭訪問実習、B、地域診断・活動展開実習、C、地域看護管理実習を行います。入学資格は、大学卒業、看護師資格があること、そして、この時点では学士課程でしか保健師免許を与えることができませんでしたため、保健師国家試験受験資格があることです。履修要件は、東大の修士修了要件に従い30単位(うち実習8単位)プラス修士論文です。

 入学試験の概要です。右側が保健師コースになっております。目的は、修士課程で分析力と統合力を備えた保健師を育成すること。受験の条件は、保健師としての勤務経験がないことです。

 「保健師コース」には、平成18年から22年度の5年間で37名が受験し、17名が合格し、12名が入学しました。そのうち9名は大学卒業後ストレートの進学です。平成22年3月までに修了した6名は、全員が保健師として就職をしています。

 スケジュールです。講義と演習、それから実習A、B、Cが1年目にはすき間なく入っています。2年目には、修士論文と採用試験に専念いたします。

  主な講義科目です。看護学だけでなく社会学や疫学、予防保健の実践、評価方法なども学びます。

 順次、各実習についてご説明申し上げます。まず、A、継続的家庭訪問実習(2単位)です。目的は、一、二家族を受け持ち、毎月継続的に家庭訪問することにより、事例を通してケアマネジメント・地域のケア資源整備を学ぶことです。地域のハイリスクな事例として在宅重症心身障害児を選び、訪問看護師とともに毎月一、二例を訪問いたします。

 その下は、学生Sの実習例です。寝たきりの2歳5カ月の児を8カ月間訪問する中で、児に必要なサービス、社会資源を評価して不足部分を導入するとともに、導入されたサービスを有機的に連携させる方法を学びました。また、8カ月間、児と母親、家族にかかわる中で、彼らが困難にめげずに成長する姿や家族単位で支援することの重要性を学んでいます。

 次に、B、地域診断・活動展開実習でございます。目的は、地域診断に基づき、地区特性に応じた活動を立案・遂行・評価する力を養う。方法は、大きく事前準備、本実習、まとめの3パートから成ります。事前準備として、実習地の既存情報を分析し、問題点や課題を明確にしてテーマを決めます。本実習では、そのテーマについて、特性の異なる3地区、例えば、うまくいっている地区といっていない地区などを3地区選択し、地区踏査、事業参加をします。また、3地区おのおので10件ずつ、計30件程度、家庭訪問をし、関係者や保健師からも情報を得ます。これらの情報を統合して地区ごとの課題を明確にし、対策を提案します。それがまとめでございます。

 その下から、昨年度の実習例です。学生は事前準備の中で、人口9,000人の町に行ったんですが、透析患者さんが40人いて、その医療費と経済損失を計算したところ年間2億円になり、歳入が22億円のこの町にとって透析は大きな問題であることを事前準備で明確にしました。これが顕在化した問題でございます。そこで本実習では、透析にかかわる潜在的な問題に焦点を当てました。

 まず、基本健診の検査データから、クレアチニンを用い腎機能低下者を把握しました。健診受診者641人中、透析予備軍とも言える中等度の腎機能低下者、図の濃いブルーのところですが、これが285人もいること、つまり顕在化した透析患者40人の7倍に当たる予備軍がいること、潜在的な問題があることを見出しました。

 町内の12地区ごとにその発現割合を比較しました。この図は横棒1つが1地区ですが、濃いブルーで示した透析予備軍の発生率は地区間で差があることがわかりました。右側の黒い棒で示した透析患者数も地区間で差があります。そこで、透析患者も予備軍も多いc地区、少ないa地区、中間のb地区の3地区を選定し、集中的に家庭訪問をしました。

 家庭訪問をする中で、c地区の典型的な家庭を選んで訪問し、高カロリーなものを好んで食べる食習慣など、地区特性・文化の問題が浮かび上がってきました。

 同じ町でありながら、a、b、c地区は、腎機能低下者の割合も、健診受診率も、健康教室を開いたときの申し込み状況やその効果も全く異なることがわかってきました。このため、各地区の特性に応じて活動展開の方法を変えていく必要があります。そこで学生は、各地区の社会環境である労働、家庭、近隣社会、また地理的な制度を考慮した活動方法を、a、b、cのおのおのの地区に対して具体的に提案いたしました。

 この地域診断・活動展開実習で重視していることは、①一つの健康事象や保健行動を複数地区(3地区)で比較し、その発現の違いと地区特性の違いとの関連性を理解することです。これにより地区特性を把握する重要性とその視点がわかります。②地区を比較する際に、量的なデータ(健診結果等)と質的なデータ(事例・関係者からの間き取り)を組み合わせて理解する。これにより個人と集団や地域の関係性を理解することができます。③各地区ごとに約10件ずつ(計30件)の単独家庭訪問を行います。これにより、家庭訪間が怖くない、就職後もすぐに家庭訪問ができるようになります。

 これを通した基本的な考え方は、手を動かしながら頭を鍛えることです。保健師としての物の見方、考え方を身につけさせるためには、単に説明を聞いたり見学したりするだけではだめで、自分の手と頭を両方動かして主体的に行動することが必要です。

 公衆衛生看護管理実習(2単位)は、管理的立場の保健師につき、地域の資源配分について検討し、地域の将来を展望するものです。2週間行いますが、詳細は省略します。

 実習指導をした保健師からは、保健師活動の原点である地区を大切にすることを改めて思った、実習を受け入れてよかったと喜ばれました。また、多くの保健師から、こんな実習だったら受け入れたいと歓迎されております。

 2年次には修士論文を書きます。テーマ選定は実習が契機となっていることが多いです。6名中5名は、質問紙による量的調査でございます。

 今年3月までの修了者6名は、すべて自治体や企業の保健師になっています。就職後、新任期2年間でどのような活動ができたかの事例を挙げます。1期生のSさんは人口3万人の市に就職しました。修士課程の学びを踏まえ、就職後、4月からすぐに受け持ち地区の情報を収集、7、8月には地域の健康課題を抽出しました。その結果を自治会長等と共有して、調査を企画・実施しました。3月には住民へ結果を報告し、出された要望からサロンを企画し、2年目の4月から開始しております。修士課程で学んだ分析と統合を繰り返した結果が、2年目は事業の創設につながったわけでございます。

 Sさんはまた、既存事業を見直し、重複を考慮して、改善案を出してもおります。また、その傍ら、さまざまな困難事例にも対応しています。

 東京大学大学院医学系研究科における4年間の教育実践で見えてきたことです。看護基礎教育に積み上げて修士課程で2年間、3タイプ8週間の実習等を含めて保健師として教育することにより、困難事例に寄り添い、向き合う力と姿勢を持つ。集団の健康課題を、統計的にも、事例からも見出し、解決策を提案できる。未知の脅威に立ち向かうスキル(分析力・情報収集力・覚悟)を持ち、分析と統合を繰り返しながら成果を出すことができる。地域と所属組織の動向が視野にあり、広い視点で活動できる。こういう時代と地域の要請に応えられる保健師、免許の質を担保した保健師を育成することができます。

 最後のスライドをお願いします。今の学士課程における保健師教育で保健師免許の質は担保できるでしょうか。大学卒業のみで保健師として就職した人がさまざまな問題を持っているというのが、昨年来、この検討会で報告されてきたところでございます。このスライドのブルーの部分は、保看統合化カリキュラムによって大学卒業時に保健師免許を取得した人数です。年々増加していますが、実際に保健師として就職するのは、えんじ色の部分、全国で600人程度です。養成数の14分の1にしかすぎません。これは2007年時点ですが、今年の保健師国家試験の合格者は1万1,000人に達しており、需要と養成数の乖離が年々拡大しています。その教育負担は実習受け入れ施設に大きくのしかかってきております。保健師教育を看護基礎教育に積み上げ、修士課程で行えば、一人一人の実習を含む教育を充実させ、社会が求める「保健師」を育成できます。

 お配りしました冊子『保健の科学』4月号には、今回取り上げた実習事例や修了生の活動が掲載されておりますので、参考にしていただければ幸いです。どうもありがとうございました。

【中山座長】村嶋先生、どうもありがとうございました。時間内におさめていただきまして感謝いたします。それでは、今、2人、田中先生と村嶋先生からプレゼンテーションがありましたので、10分ぐらい討論をしまして、次のプレゼンテーションに入りたいと思います。何か質問はございますでしょうか。佐藤先生、どうぞ。

【佐藤委員】お二人の先生方、ありがとうございました。門外漢にも非常にわかりやすくご説明いただいた気がします。

 これからのディスカッションのための基本的なことを確認で、ちょっと教えていただきたいと思います。田中先生には、もう既にこの領域の方々には周知の事実かもしれませんけれども、CNSからAPNへの移行という言葉が何回か出てまいりました。移行のプログラムもお考えのようですが、要するにこれは、新しいAPNのほうに統合していくということが先生方の協会では既定方針として決まっているのかどうか。その1点だけ。

【田中発表者】それこそ今、検討中で、来週、総会とか開かれますので、まだ検討段階ということですが、今までの専門看護師にプラスの教育をして、高度実践看護師、名称はまだ確定しておりませんが、そういうものにレベルアップをしていきたいというのが大方の方針というふうに理解しております。ただ、まだ総会等の承認を得ていませんが、方向性はそういうふうに思っております。

【佐藤委員】ありがとうございます。

 村嶋先生に、よろしいですか。ちょっと私も誤解しているかもしれませんけれども、学士課程において保健師を切り離して、大学の選択にゆだねるという話があって、この先に、保健師の教育は修士課程でというのがご持論ですよね。

【村嶋委員】はい。

【佐藤委員】東大の場合にはこの30単位の中でおさめるということは、よく見たら、入学者が既に受験資格を持っているということで、保健師の受験資格を取るための基礎的な教育はこの院の中では行わないということなんですよね。

【村嶋委員】本当は行いたいんですが、現時点では、もう既に入学者が免許を持ってきている人しかおりませんので、そういうことができなかったということでございます。昨年のこの検討会の報告や保助看法の改正がございまして、枠が自由になってきましたので、そこから先は、移行に向けて何らかの行動を起こしていきたいと考えています。

【佐藤委員】その場合には、今度、修士の所要要件の30単位にはおさまり切らない可能性もあるということですよね。

【村嶋委員】そこは、それこそ厚生労働省やこの委員会でどういうふうに決めていくかということが大事なんだと思いますが、私は、保健師の教育の内容自体はかなり修士課程の教育内容とかぶるものがあると考えております。ですから、30単位プラス、現行23単位ですが、53単位とするのではなく、何らかの形で修士課程の単位を保健師教育の単位としても認定していくような仕組みが必要ではなかろうかと、個人的には考えております。

【佐藤委員】そのことがこれからの議論の一つの中心になりそうですね。

【村嶋委員】はい。していただければと思っております。

【佐藤委員】ありがとうございました。

【中山座長】田中先生、少し補足していただかないとだめかもしれません。今の専門看護師、認定されるには臨床経験が必要でしたね。臨床経験のことをあまり話していただけなかったんですが、5年間の臨床経験のことをご説明いただけますでしょうか。

【田中発表者】臨床経験全体で5年が必要で、そのうち専攻分野、精神看護学なら精神看護領域で3年以上の臨床経験、そして、5年のうちの半年は大学院修了後で、資格の、看護協会への認定試験のための申請ができるというのが現状でございます。

【中山座長】専門看護師の場合は、修士課程を出るだけではだめで、臨床経験が5年必要になってくる。修士を出てから、今は半年だけれども、全体的には5年と、3年の専門領域での臨床経験がなければ、専門看護師の資格の申請ができない、受験資格ができないということになっていますので、その点をちょっと補足していただきました。藤川先生、どうぞ。

【藤川委員】村嶋先生の最後のところで、以前から気になっていたんですが、大学卒業数と新卒の保健師就業者数が非常に開きがありますよね、8,615と600と。これは、「学士課程の保健師教育で、需要の14倍も、実践力の乏しい「保健師」を出してしまっている(2007)」と書いてあるんですが、これは結局、市町村の保健師の就職先以外に保健師の活躍する場所がないということですか。

【村嶋委員】いえ、保健師は、市町村や保健所だけでなく産業、病院、学校等に就職をしています。それを全部合わせた数が600人でございます。

【藤川委員】そんなに少ないんですね。ということは、残りの8,000人というのは普通の医療機関で看護師をやっているということですか。

【村嶋委員】大部分はそうだと考えられます。

【中山座長】どうぞ。

【富野委員】今のに関連しているんですけれども、実践力が乏しい保健師さんがいっぱい出ているということですが、それから先生たちがやっておられる大学院を出て保健師さんをやっているのと、ほんとうにその実力が明らかに違うというエビデンスといいますか、それに対する社会の評価、会社側や病院側や勤めている先の評価、そういうもののデータがあるんでしょうか。

【村嶋委員】まだまとまった調査はしておりません。それは、こういうコースが少ないからでございます。ですから事例を出させていただきました。昨年、大卒で5年たった段階の方がプレゼンをしてくださいました。どちらも事例でございますが、その5年間ないし2年間の間にどういう能力を獲得し、また発揮しているかということは、事例としてご推測いただければと思います。

【富野委員】実際問題として、大学院を出た方というのは合計で何名ぐらいいらっしゃるのですか。ここの、601の別枠ですか。

【村嶋委員】601は大卒でございます。きちんとした統計を持ってきていないんですが、東京都とかは、就職する人の2割か3割ぐらいは修士号をもっていると。それは、保健師コースと特化しているわけではなく、卒業して一般の修士課程に行って、それから入職しているということです。大阪大学なんかも結構、卒業生で保健師になる人はそのような形が多いというふうに聞いております。

【中山座長】松尾先生、その次に坂本先生へ行きますので、ちょっとお待ちください。

【松尾委員】簡単に質問しますが、専門看護師の種類といいますか、今10個あるんですが、この人たちは、451名いて、ちょっと質問の仕方が悪いかもしれないんですが、医療の現場で、いろいろな分野があって、どのような人がどのような分野をカバーしているのか。逆に言うと、この451名の方が実際にとられた後、現場でどのような役割を果たして活躍されているのかというのがわかれば教えてほしいということと、もう1点、今、例えば医学系の学会で、糖尿病だと糖尿病専門療養指導士のコースだとか、一方でいろいろやられていますね。ですから社会の中では混乱しているのかもしれませんが、そういったものとの整合性といいますか、その辺をどのようにお考えか教えていただきたいんです。

【田中発表者】きちっとしたデータは持ってきていないので、経験的なことからのお答えになるかと思いますけれども、例えばがん看護の専門看護師の方でしたら、病院の中で、がん看護の専門看護師、CNSとしてのポジションを得て活動している方が多いかと思いますけれども、がん看護のスペシャリストとして病棟横断的に、さまざまながんの治療とか、また治療過程でのメンタルな問題とかに関して患者様に直接的なケアをする場合、それから、病棟でがん患者様に対して看護しているスタッフ、ナース等が、臨床上ではいろいろな難しい問題にたくさん遭いますので、そういうときに専門看護師に相談してくると、専門看護師が相談してきた看護師個人にコンサルテーションをする場合もありますし、必要に応じて、病棟のチーム全体に介入したほうがいいというふうに考えられる場合は病棟のチーム全体に介入する場合もありますし、また、医師とかほかの専門職との間の調整といいますか、コーディネーションが必要な場合にはコーディネーションをしたりとか、例えば、ある疾患とかある技術の部分だけのスペシャリストという形ではなく、がんならがんという疾患にまつわるさまざまな問題を、スタッフ、患者様、場合によってはご家族、それから医療チーム全体に関して働きかけて柔軟に動くというような働き方で、ある特殊な技術だけに特化してできるというよりは、もう少し幅広く、組織横断的に動いているというのが専門看護師の、今はがんを例に挙げましたが、がんに限らず、専門看護師の活動の、特定の技術に関しての資格認定を持っている方とは、認定のような形とはちょっと違う点かと思います。

 ただ、いろいろな専門看護師の資格を持ちながら、同時に糖尿病の療養指導の認定をお持ちの方とか、そういうふうに両方お持ちの方もいらっしゃるかと思います。ただ、全般的に、今言ったような、難しい患者様への看護とか治療上の困難が生じているような患者様への直接的なケア、それと看護に当たるスタッフを中心とした人たちへのコンサルテーション、それからチームの橋渡し。先ほどの6つの役割ということが、具体的にはそういうことになるかと思います。そういう点が特色かと思います。

【中山座長】ありがとうございました。

【坂本委員】田中先生に質問させていただきたいんですが、教育のことと、また高度実践看護師を育成していくという方向性は見えて、それから教育の課題もお話を伺って、よくわかるんですが、専門看護師や高度実践看護師の人たちが、ニーズがあるわけですよね。成果を出しているからですよね。ただ、その人たちがコスト的に認められているのかどうか、どういうことを希望されているかどうか、そういうふうな状況というのは把握されているでしょうか。

 ただただ教育を受けて、そして現場に実践を、効果を出していっているんですが、それでずっとよしとするのか、それとも、やっぱり認められていくという道筋は、どのようなことを考えながら教育をしていられるかというようなことのデータとか、希望とか、本人たちのニーズとか、そういうものが見えるようなものがありましたらぜひ教えていただきたいんです。

【田中発表者】教育を修了した方ですか。それとも、専門看護師資格を取った方のほうですか。

【坂本委員】専門看護師資格の人たちが現場でどのように認められ、制度の中に入れられて、費用的にも給料等が上がったり、役職等がどのように彼女たちを担保していっているかということと、現実的に、働いている人たちがそれをもっと認めてほしいというようなニーズが表現されているかどうか。

【田中発表者】私の場合は今、日本看護系大学協議会の教育課程の認定のところですので、むしろ専門看護師を認定されている看護協会のほうでそういうデータをお示しいただいたほうがありがたいなというのが正直なところでございますが、教育課程の認定に関して言えば、きちっとしたデータを今、準備していないので申しわけないんですが、もちろん専門看護師を目指して入ってくる方たちはすごく高い志を持っていますし、それに相応したポストというのを獲得しようと思ってみんな奮闘しているわけで、それを、こちらの教育課程のほうでもいろいろな形でバックアップしているわけです。

 ただ、専門看護師という資格そのもので報酬がアップするとか診療報酬に直結するということは、現在の制度ではございませんので、そこら辺でいろいろな形で苦労することが多いわけなんですが、ただ、感触としてですが、看護部長さんたちとか看護管理者の方たちが、やはり専門看護師、大学院を出て、そういう方が勤めると活躍の幅とかそういうものが非常に違うと。なので、実際、病院経営の収支に直結した形で数字的には出なくても、貢献度が非常に高いということで、だんだんとそういうことを条件にして、修了したら専門看護師としてのポジションを約束して、大学院のほうに休職制度で送ってくれるような病院等も確実に増えているという感じです。

 ちなみに、私のところの女子医科大学でも、専門看護師教育課程、教育を何年かしてまいりましたので、病院のほうにも、うちの大学院を修了して戻っていく学生がおりますので、そういう人たちが、精神に限らずなんですが、病院の中で専門看護師としてのネットワークを使って、総合病院ですので、いろいろな科の連携をしながら役割開拓をしていくというようなことで、また、病院のほうもそういう成果を評価してくれて、看護管理側もバックアップしてくれているというのが現状の動きでございます。

【中山座長】ありがとうございました。多分、話は尽きなくなっていくと思うんですが……。

【坂本委員】一言だけ。看護協会と言われましたので、ちょっと田中先生のほうからも援護射撃してほしかったわけですが、看護協会もそういうふうに、形としては、診療報酬等で認められつつありますけれども、教育については、やってきた人たちが成果を出していれば、やっぱりいろいろなところで、この会議でもいろいろなことで、ぜひそれを提言していっていただきたいなというふうに思います。

【田中発表者】わかりました。ありがとうございます。

【中山座長】ありがとうございました。それでは、もう2つのプレゼンテーションを受けましてから、また討論したいと思います。山内先生、お願いいたします。

【山内発表者】お手元の資料3でございます。私に課せられました課題としましては、国外、特に米国においてどのような看護系の大学院教育が展開されているかということを紹介しろということでございます。ほかにヨーロッパ圏とか幾つかありますが、なかなか十分に、オープンになっていない面もあり、さらに特に今、EUはかなり変動しているところもありますので、アメリカの、これは一つの、あくまでそういう物の考え方、一つの国の考え方の例としてアメリカの場合でありますが、そちらをご紹介して会議の資料とさせていただきたいと思います。

 1枚目のスライドは、今までもございましたように、入門課程というものが、一つの資格を取るに当たって非常に多数あるということで、これは日本でよく言われていることであります。

 次のスライドは、英語のものですけれども、我が国の免許を取るに至るまでこのような複数の教育パスがあるということが、このようにして外国にも紹介されるようなことがありました。しかし実は、このように免許を取るまでの教育パスが複数あることは我が国に必ずしも特異的なことではなくて、次のスライドにもございますが、免許を取る教育パスについては、米国においても複数あります。RN、いわゆるRegistered Nurseとは、もともと自然発生的に看護という仕事がありましたが、それを登録という形でしていたところからRegisteredと始まりました。Registered Nurseというものは、我が国で言う看護師という資格に相当します。

 それから、LPNとか、州によってはLVNというように言われますが、Licensed Practicing NurseとかLicensed Vocational Nurseということがありまして、これは州によっては、既にこの免許資格がなくなっている州も2つほどございます。しかし現在、まだほとんどの州でこの資格も残っております。日本と1対1に結びつけられませんので、日本の准看イコールとは言えませんが、看護の免許でありつつ、かつ、多少、job discriptionや職務権限が分かれております。

 そのほかにもう一つ、我が国でよく(看護)助手と言われる方がおられますが、その方に関してはきちんと認定、Certifiedという、短いところで数カ月、長いと半年間ぐらいの教育を経て、試験を受けて、Certified Nurse Aideという、このようなものが入門のレベルであります。

 そこに至るまでの教育課程は、先ほど申し上げたように、我が国だけではなく、米国においても非常に教育課程がさまざまでありまして、伝統的にはDiploma School、すなわち看護学校というところでありますが、3年教育です。これがかつてほとんどでありましたが、1950年代に『看護教育は本来4年制にするべきである』というブラウン・レポート(Brown Report)が出て、それから五、六十年の中で、今、3年課程は100校を切っております。

 そのかわりにBSN、4年制課程が増えておりますが、もう一つ気をつけなければいけないのが、AD Program、Associate Degree Programというのがありまして、この教育期間は2年間でございます。コミュニティーカレッジのようなところでトレーニングを受けますので、日本に対応させようとすると非常に難しくて、時折「短期大学課程」のように訳されてしまう可能性があります。しかし、このAD Programはむしろ従来の3年よりも短い教育です。背景的には、ベトナム戦争が行われたときに医療従事者を短期間に大勢養成しなければならないということで、どのぐらい短い時間で教育できるかということから、ニュージャージー州立のラトガーズ大学で実験的な教育プログラムの運営をしたら2年間でRNを養成できました。そのような経緯から始まっております。米国における教育というコストは非常に高いですので、同じ免許を取るならば、できるだけコストを安く免許を取りたいという根強いニーズもありまして、そのニーズの数もかなり多いものです。これはアメリカの中でも、果たして2年でよいのであろうかという議論もあります。従ってこのAD Programを日本の短大とつなげてはいけない、ひっかかってはいけないところかと思います。

 今回の大学院教育に関しては、米国にもマスターとドクターがございます。従来的にマスターは2年、ドクターは5年でありますけれども、日本では博士課程前期、後期というふうに2つに、5年間の課程の前半、後半のような分け方をしていることが多いのですが、米国の場合は、大学院というのは博士課程が基本でありまして、修士という学位は、場合によっては成績不十分で博士課程を中途で終えざるをえなかったときに、Ph.D.まで終わっていないが、すなわちPh.D.が授与されなかったけれども、それなりの教育を受けた、訓練を受けたという人にMaster of Scienceなどが出るような側面もあります。

 このようにもともと大学院教育というもののスタンスが米国では我が国とは異なり、積み上げ式というよりも、本来は研究者養成は博士課程であると。あとは、Advanced Practiceとか、特殊な技能、能力に関しての教育という形で2年、あるいは5年の途中の2年というような扱い方が主であります。

 米国看護において初めて大学院教育が出たときの大学院教育の博士の課程は、Doctor of Education(Ed.D)という、教育実践者の中で博士レベルの能力、行動、技術を示す学位がありまして、そちらでした。その中での教育分野に一つとして看護というものが置かれたという出だしの歴史もあります。ニューヨーク大学、New York Universityでは、看護学の専攻科はもともと教育学部の中にあったというふうな背景もあるように、もともとの大学院というもののとらえ方が多少違うというような背景がございます。

 米国の教育機関というのは非常に早くニーズに合わせて変遷しますので、既にかなり変わっていってしまいます。日本と違いましてライセンスを出すのは州の単位で、国がやることは軍事と外交だけですので、それぞれの州のレギュレーション、規制や運用が多少違いますし、それを統一しているというものがなく、教育機関の変遷について常にアップデートされている組織があるわけではなく、常に動きつつあるところでありますけれども、比較的近いデータではこのスライドのようになっております。

 配布資料3ページ目の一番下にありますが、そのような教育課程がさらに非常に複雑に絡んでおりまして、我が国のシステムは非常に難しそうに見えますが、米国では我が国よりさらに複雑かと思われます。高等学校を卒業してからの教育でございますので、Diplomaに当たる免状課程、あるいは、今40%程度のポピュレーションを占めております、Bachelor of Science in Nursingという看護学士課程、それから、必ずしも看護学ではないけれども、学士を取って、編入学の形で看護学を終えるというふうな形がまずエントリーレベルでございます。その先に修士というものがあります。我が国も変わってまいりましたが、必ずしも学士課程を経ずとも、Diplomaを終えて、それ相応の経験等を認定されれば修士課程に入っていくというコースも随分以前より沢山あります。

 それから、看護学の入門レベルは、BSNではない、学士ではなくて修士であるというような、マスターリエントリーという考え方もありまして、そのようなところでは、いわゆるプロフェッショナルスクールのような感じでありまして、一般の学士を終えた者が直接3年間なりの教育に入ってくるというところがございます。例えばカリフォルニア大学サンフランシスコ校などは、看護学に関してSchool of Nursingはありますが、そこで看護学士は出しません。入門の学位が看護学修士であります。そこでの修士課程が免許を取る最初の教育課程であるということです。このように、修士というもので初めて免許を取るというふうな扱いでも大学院がとらえられているところもあって、非常に多様でございます。

 その上に展開いたします博士課程に関しては、いわゆる研究者養成でありますPh.D.、Doctor of Philosophyと、それから高度専門職の学位でありますN.D.、Doctor of NursingとかD.N.S.、Doctor of Nursing Scienceなどがあります。昨今、これらをさらに統合整理してDNP、Doctor of Nursing Practiceというような形に変遷しつつあります。例えば普通の学士を終えてから、いきなりDoctor of Nursingに入るというコースすら存在いたします。その途中の段階で、ある程度の単位数がたまったところで免許を取って、卒業する段階では免許資格を持っておりますし、かつ高度実践の博士号も持っているという、非常に複雑な絡みであります。

 ですから、大学院教育を一言で語るにしても非常に複雑化していて、さらには非常に変遷が早ようございます。先ほど申し上げましたように、教育というのは、やっぱり学びたい人と、それから、社会の要求に合わせてかなり早く姿を変えますので、受講者というか、受験者がいなくなればそのコースを閉じてしまうというようなことは平気で行われておりますので、数年前にあったプログラムがなくなっているとかそういうことは非常によく行われていることであります。

 次のページの日本のことに関しては、今日このご紹介があることは存じ上げておりませんでしたので、一般的なこととして、このように挙げておきました。

 その下の米国では、基本的には修士課程というのは、日本で言う専門職大学院というように明確に位置づけされております。博士課程においては、研究者養成及びさらに高度な専門職養成というようなことがありまして、修士を終えて研究をする、研究者になるという発想は基本的にないというふうに考えていただいて結構だと思います。

 私も、個人的には米国で学士、修士、博士を学生として学んでまいりましたが、3つの教育段階とも研究法という科目がございました。しかしながら、それぞれのミッションが明らかでありました。学士課程では、どのような研究方法があるのかを知るということを非常に重視されましたし、修士課程の際には、その研究が果たしてそのまま大丈夫なのかという、要するにクリティカルシンキングがちゃんとできるかどうか、書いてあるものをうのみにしないという力を求められましたし、博士課程では、現実の課題を研究課題とすることができ自力で研究を進めることができるか、あるいは研究成果物を臨床現場に応用することができるかというようなところにはっきりと、同じ研究という科目であったとしても、すみ分けがなされていたように思われます。

 米国におけますAdvanced Practice Nurse、いわゆるAPNとよく言われるもの、これが2年間の、日本で言う修士課程に相当するところで展開されているものでございますが、Clinical Nurse Specialist、CNSというものとNurse Practitionerというものがあります。、それから助産に関しては、米国でもまだ3種類の資格がございます。日本でいうところのかつての「産婆規定」は米国ではまだ残っており、産婆さんという資格もかすかながら残っております。しかし助産業務のほとんどは現在、修士レベルのCertified Nurse Midwifeによってなされています。それから、Certified Registered Nurse Anesthetist、麻酔の領域です。これが現在、Advanced Practice Nurseというものの中身です。これらは免許は、国統一の基準で発行されるものではなくて、基本的には免許というものは州で出しますので、それぞれの州の基準があります。しかし教育課程を認定して、一応その教育課程を終えた人たちが、教育課程を終わっているけれども大丈夫かどうかという認定の試験は、全国統一の試験がございます。これはANCC、American Nurses Credentialing Centerという、American Nurses Associationの下にあります独立した機関で、看護師の、特に卒業後の資格認定を行っている機関であり、教育課程を終えそこで行われる試験の合格ということをもって、それぞれの州で免許が下されるというのが、例えばNurse Practitionerであったり、あるいはCRNAであったりということであります。

 CNSは、かつては非常に数が多うございましたけれども、先ほどのご質問にもありましたように、経済的な裏打ちはどうなのかということも、非常に難しい問題がありまして、CNSは、ある意味で頭打ちのような状況が起こっております。CNSが幾らのお金を直接生むのかとかいうものがなかなか難しかったうえに、米国の働き方ですと、認定とか免許を持っていますと、それなりの給与とか待遇がついてくるのが当然というふうに思われておりますので、それだけの付加価値の給料を払ってどれだけの貢献をしたのかということで、CNSがそれをうまく示せなければ、下手をすると、逆にCNSゆえに首を切られてしまうというふうな非常に厳しい時代がありました。

 一方で、もう一つのページでありますが、Nurse Practitionerというものは、我が国でも話題になっていると思いますけれども、米国のNurse Practitionerの場合は、独立して、診療報酬に相当します報酬を得たりするという可能性があります。そういうことが業務範囲に入っている資格でありますので、非常に増えております。この数もどんどん変わっていきますので、いつでゴールになるか、いつのものをお示していいかというのは切りがないような状況でありますが、このようにして、主に今、米国の修士課程としては、Advanced Practiceの専門家をつくるということにかなり特化しておりまして、その中でも、CNSが少し頭打ちでNPが非常に伸びてきている。それから麻酔看護師等は、人気はありますけれども、需要との関係でNPほどの増え方ではありませんが、根強く人気はございます。そのようなことが現在の大学院教育、米国で行われていることであります。

 もう一枚、最後に同じスライドを出しましたが、先ほどちょっと申し上げました、博士課程のところも、必ずしも1つではありませんで、PhD、Doctor of Philosophyという、看護学の学問や学術体系をどう展開していくかというところを中心にするという博士課程と、それからDoctor of Nursing Practiceという、高度専門職でも、Nurse Practitionerぐらいになってくると、やはり卒業後、免許を取ってから4年程度の特殊な高度な教育訓練を積んだ者でないといけないのではないかということで、今までNurse Practitionerは2年というのが最低の、ミニマムリクワイアメントでありましたけれども、それをもう少し長い、それから深い教育を必要とするのではないかということで、高度専門職の博士レベルとして、DNPという形で、今までいろいろな名称であったものを少し整理するという形の動きになっております。

 どちらも基本的には実践がベースにありますが、DNPのほうのプログラムは、実際の臨床場面にある課題をどうやったら研究課題に持ってこられるのかとか、それから研究課題、研究として得られたものをどうやったら臨床に反映することができるのかというようなところも重点を置いたようなプログラム等が、少し余計に比重がそちらにかかっているようなところがあります。

 ですので、必ずしもプラクティスだけではないですが、プラクティス、すなわち実践をどうやったら高度化していけるかという方法論を整理するというようなところも、むしろこれは、実践家、プラクティスをする人たちの実践レベルを鍛え上げるところがむしろ修士課程であって、それをメタのレベルで整理をしていくというところに高度専門職の博士レベルがあると、そのようなとらえ方だと思います。ですので、Ph.D.の下につく研究者の仮免というような位置づけの修士というものは基本的に米国には存在しないというようにお考えいただけたらよろしいかと思います。説明が不十分であったかもしれませんが、以上でございます。

【中山座長】山内先生、ありがとうございました。ご質問があるかと思いますが、続けて、川嶋先生のプレゼンテーションのほうに移らせていただきます。川嶋先生、お願いいたします。

【川嶋発表者】川嶋でございます。私も全くこの分野の門外漢でございますが、今日は、高等教育全体の立場で、質保証というのが現在、非常に大きな課題になっておりますので、多少なりともこの検討会の議論の参考になればと思いまして、資料を用意させていただきました。

 今、高等教育につきましては、ここに書きました左側にありますように、ユニバーサル化とか、グローバル化とか、知識基盤社会等という、高等教育を取り巻く大きな環境変化の中で、高等教育の質を、それぞれの国あるいはそれぞれの大学がいかに保証していくかというのは、どの国でも、我が国を含めまして喫緊の課題になっているところであります。

 ところが、これは我が国だけではございませんけれども、いろいろなところで高等教育の質保証は重要だというふうに議論はされているのですが、高等教育の質、Qualityとは一体何なのかということについては必ずしも明確になっておりませんし、識者の間でいろいろ考え方の違いもございますので、ここを明確にしていく必要があるというのが現在の状況だろうと思います。

 例えばここに挙げましたのは、「我が国の高等教育の将来像」という、2005年に出された中教審の答申ですけれども、「高等教育の質」とはということで、教育課程、学生、教員、研究者、教育・研究環境、管理運営方式、さまざまなものが質というふうにとらえられておりますけれども、ここを見る限り、これは必ずしも質の定義ではなくて、どういう観点から質をとらえるべきかという提示でありますし、それらの提示も、どちらかというとインプットとプロセスの観点が非常に強いというふうに考えております。

 次は、そこで、Qualityとは何かということを整理したものでございます。一つのとらえ方は、質、Qualityというのは非常に卓越したもので、ExcellenceというものをQualityととらえる。これは、例えば高等教育のエリート段階にはこういうことがQualityの意味するところだっただろう。例えばケンブリッジ、オックスフォード、東京大学しかなかったときは、高等教育の質といえば、だれもが認める卓越性であっただろう。

 次のマス段階になりますと、これはむしろ卓越性ではなくて、それぞれの大学がミッションを持っておりまして、そのミッションがきちんと実現されているかどうか、Fitness for PurposeということでQualityというのを考えていこうという段階です。

 最後に、現在のような、ユニバーサル段階ですと、これは国としても、あるいは個々の大学としても、最低限のある一定の質を保証していこう。そういう意味で、Standard、標準といった意味でのQualityが大きな課題になっているというふうに考えます。

 このような議論がいろいろなところでされているわけですけれども、中教審の大学分科会の中で、中長期的な大学教育の在り方について、今、審議が行われているところですが、その中で、昨年出されました第1次報告の中で、質につきましては、「最終的に保証されるべきは、学生の学びの質と水準である。その保証は、それぞれの大学が責任を持つことが大前提である」ということで、高等教育の質、保証すべきは学生のラーニングとその内容と水準であると。ここでもまた「質」というふうに出てきているわけですけれども、少なくとも保証すべきは学生の学び、これが重要であるということが示されたわけです。

 先ほどご紹介しました2005年の中教審答申の中では、改めて、学位とは何ぞやということが示されております。学位というのは、例えば学士ですと124単位、修士ですと30単位以上を修得した者に、それぞれ学士、あるいは修士が授与されるのではなくて、中世に大学が出現して以来、学位、Academic Degreeというのは、それを授与された人がどういう能力や知識を持っているのか、その能力や知識の証明書という意味で国際的に考えられてきたのだということであります。すなわち、学生がどのような能力や知識を修得したということですから、大学が保証すべきは、先ほどの第1次答申にありましたように、学生の学び、あるいは成長、変化というものを大学がいかに保証していくのか、それが非常に重要なQualityを考える際のフォーカルポイントになってきているということであります。

 したがいまして、今、国際的に高等教育改革で中心的な考え方になっておりますのは、大学教育のインプットとかプロセスも、質を保証する際に非常に重要な要素でありますが、むしろアウトカム、成果ですね。4年間あるいは2年間学んで、学生がどう変化したのか、どう成長したのか、何を学び取ったのかということ、それを、一定の水準以上のものを、国あるいは各大学で保証していくということが質の保証の重要な取り組みになるのではないかということで、学習成果に基づくさまざまな質保証の枠組みが、国際的にも今、議論されたり、あるいは実施されているところであります。

 次の図は、アメリカのUnited Way of AmericaというNPO、さまざまな社会福祉関連の事業をしております機関が出しております、「質」というものをどうとらえるのかということについて整理した図をご参考までに示させていただきました。例えばこれまで、すぐれた大学、つまり質の高い大学というのはどういう大学かといいますと、左側にあるインプットですね。たとえば偏差値が高い学生が入ってきている大学がすぐれた大学、質が高い大学なんだ。あるいは教員につきましても、最高学位を持っている教員の比率が高い大学ほどいい大学ではないかというような質の考え方だったわけですけれども、今はむしろそうではなくて、一番右側にありますアウトカムですね。学生が4年間でどう変化したのか、成長したのか、どういう能力や知識を身につけたのか。教員で言えば、単にPh.D.を持っている教員がたくさんいるというのがすぐれた大学ではなくて、研究活動で生み出した論文、それも数だけではなくて、書いた論文がいかにそれぞれの学会に影響力を及ぼしたのかというアウトカム、あるいはインパクト、影響というものの観点から質をとらえていこうというふうに変わってきているわけです。

 そこで問題は、学生の学び、学習成果、学位、これを保証するのはだれかということであります。これは当然、学習機会を提供している大学でありまして、大学の自主性、自律性を尊重して、最終的に質の保証をするのは大学であるということは、繰り返し我が国の答申等でも述べられているところでありますし、これは国際的にも合意されているところであります。

 しかし、先ほど述べましたように、高等教育がユニバーサル化、グローバル化しますと、個々の大学だけで、果たして本当に学生の学びとか学位が保証できるかどうかというと、これは甚だ不十分だろうということで、大学が学生の学びを保証する営為努力に対して、何らかのサポートする仕組みが必要だろうということであります。

 現在、我が国の「公的」な質保証の枠組みは、そこにありますように、どのようになっていますかといいますと、1つは設置認可基準です。これは質の最低基準というふうに言われております。それから設置審査。これは設置時に審査をピアレビューで行うということであります。それから、学校教育法で各大学が毎年自己点検・評価をするということで、自分たちの教育を、質が保たれているかどうかを自らが点検・評価する。もう一つは認証評価で、7年ごとに国が認証した第三者評価を受けるという仕組で、本年度が最初のサイクルの終わりの年ということになっております。

 しかし、このような公的な我が国の質保証の中でも、私が考えるところ、学位の水準と、それぞれ分野ごとの質保証の基盤が弱い、あるいは存在していないのではないかということであります。

 ここへ持ってきましたのは、法律を少し並べましたので退屈かもしれませんが、我が国でどういうふうにそれぞれの学位がとらえられているかということをご理解いただくために持ってまいりました。

 まず、「学士」という学位についてであります。学校教育法では、「大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開することを目的とする」というふうに書かれています。

 これを受けまして、大学設置基準第19条の第2項では、「教育課程の編成に当たっては、大学は、学部等の専攻に係る専門の学芸を教授するとともに、幅広く深い教養及び総合的な判断力を培い、豊かな人間性を涵養するよう適切に配慮しなければならない」というふうに書かれています。

 それから、同じく設置基準第32条では、「卒業の要件は、大学に四年以上在学し、百二十四単位以上を修得することとする」というふうに書かれています。ちなみに、次に述べます修士課程ですと、先ほどからもご指摘がございましたように、30単位以上を修得することによって修了とするということになっています。

 では、「修士」はどのように考えられているかといいますと、大学院設置基準第3条で、「修士課程は、広い視野に立って精深な学識を授け、専攻分野における研究能力又はこれに加えて高度の専門性が求められる職業を担うための卓越した能力を培うことを目的とする」というふうに書かれています。

 修了要件は、先ほども申しましたように、30単位以上、かつ、「必要な研究指導を受けた上、当該修士課程の目的に応じ、当該大学院の行う修士論文又は特定の課題についての研究の成果の審査及び試験に合格すること」というふうに書かれています。

 次は、「博士」という学位についてでありますが、これは大学院設置基準第4条で、「博士課程は、専攻分野について、研究者として自立して研究活動を行い、又はその他の高度に専門的な業務に従事するに必要な高度の研究能力及びその基礎となる豊かな学識を養うことを目的とする」というふうに書かれております。

 修了要件は、次のスライドにありますように、30単位以上、研究指導を受けて博士論文の審査及び試験に合格するということになっています。

 それから近年、もう一つ新しく学位がつくられまして、「専門職学位」というのがございます。これは、学校教育法99条第2項の中で、「大学院のうち、学術の理論及び応用を教授研究し、高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を担うことを目的とするものは、専門職大学院とする」。専門職大学院設置基準第2条では、「専門職学位課程は、高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培うことを目的とする」というふうに書かれておりまして、次のスライドにありますように、修了要件としては、「三十単位以上の修得その他の教育課程の履修」ということで、研究ということは一切出てきておりません。

 そこで、これらを先生方、読んで、あるいは見ていただいて、学士と修士と博士の学位の違いは一体どこにあるのかということがおわかりになりますでしょうか。私自身はなかなか理解しかねるというのが現状だろうと思います。制度上といいますか、法律上の規定では、「高度」とか「深い」とか「卓越」というふうに書かれているんですが、何をもって高度であり、深い学識であり、卓越した能力というふうに考えるのかということは全く法律上、明確にされていないわけです。

 ちなみに、先ほど山内先生のほうからもご発表がございましたように、同じ研究という科目であっても、それぞれ学位ごとに目的が違うということでしたけれども、例えばここに、イギリスの「Framework for Higher Education Qualifications」というものがあるんですけれども、それぞれ学士と修士と博士は、どういう能力を持った人に与えられるのか、そして何ができるのかということの違いがかなり具体的に示されているわけです。

 例えば学士ですと、一番上のマル1のところ、オーナーディグリーですけれども、「最小限の最先端の研究分野」について云々かんぬん。ところが修士になりますと、「多くの最先端の学術研究を含め」、博士になりますと、「オリジナルの研究や他の先行研究を通じて」、「最先端の研究を含み」というような形で、能力・水準の差異をきちんと書き分けられているということであります。

 こういう仕組みは我が国では欠けておりまして、佐藤先生もお見えになりますけれども、設置審査のときに、とりわけ大学院大学として、いきなり修士課程とか専門職学位課程が申請されますと、果たしてこれは学士課程と、内容的にもレベル的にも、どこがどう違うのかというのはなかなか明確に判断しがたいという現状があるわけです。

 先ほどお話ししましたように、大学がまずは質保証システムに責任を持つわけですから、大学が内部質保証システムをしっかりつくっていくということがまず第一でございますけれども、しかし、それだけでは、国際的に見て、我が国の大学が授与している学位が果たして世界から信認されるかという点については甚だ心もとないということで、国レベル、あるいは分野別の何らかのコンセンサスをこれからつくっていく必要があるだろうということでございます。

 そのために、これは、先ほど山内先生はアメリカの例でしたけれども、イギリスとかヨーロッパの例をご紹介したものです。国レベルで質保証するための合意として、例えば先ほどご紹介したように、学位の水準とか学習成果ということにつきましては、Framework for Higher Education Qualificationsというのがございます。それから、内部質保証システムについてはきちんとガイドラインがつくられております。認証評価基準、これは我が国でも行われているところであります。それから、きちんと成果を測定するために、大学が活用できるようなさまざまな点検・評価ツールというのも開発されて、こういうものを使って、学位ごとの学びの質の水準を保証していくということになります。

 もう一方で、分野ごとの質保証につきましては、イギリスではSubject Benchmark Statementsといいまして、各分野ごとに、学士課程であれば何ができるようにならなければいけないのかということが一つのガイドラインとしてつくられております。これにつきましては、日本では学術会議が今、検討中でございます。

 結局、質保証していくためには、今後、水準と専門性ということを明確にしていく必要があるだろう。図を縦にみて行けば学士、修士、博士、それぞれ分野は違っても、学士に共通な能力とか身につけさせるべき能力、知識は何なのか、修士であれば、分野は異なっても修士という学位を授与されるためには何ができるようにならなければいけないのかという、学士、修士、博士という学位ごとの水準を明確にしていくということが必要でありますし、一方、横にみれば、分野ごとの学習成果を明確にしていく必要があるだろう。当検討会の議論に関連づけて言えば、先ほどから看護師と保健師ということが出てきておりますけれども、それが学位のレベルの水準の違いなのか、それとも内容の違いなのか、あるいは両者を関係づけて考えていかなければいけないのかということを検討していく必要があるのではないかと思います。

 次は、簡単な今のアウトカムを重視した考え方を示したもので、各大学でまずどんな人材を育成するのか、それぞれの大学の理想的な卒業生はどういう卒業生であるべきか、あるいは職業に関連づけていけば、看護師とはどういう人材なのかということを明確にしていく必要があるということでございます。

 それを考える際に、3つの観点があるだろう。1つは知識や理解の領域、2つ目はスキルの領域、3つ目は価値や態度、どんな学生であるべきかというような観点から、アウトカムを考えていくということであります。

 このスライドは、それをまとめたもので、Bloomという人が、3つの領域で身につけさせるアウトカムを整理してはどうかということを提案していることのご紹介です。

 したがって、大学でさまざまな教育課程、カリキュラムを考える際には、まずは大学のミッションや教育目標、教育理念がございますので、その教育理念を具体化するということ、それから一方で、社会や労働市場からの要求も時々刻々変わっております。そういうものを勘案しながら、学生は卒業後、社会でどのような能力を必要とするのかという観点から、大学として、4年間の学士課程なり2年間の修士課程で学生に身につけさせようと期待する学習成果を考える。それをさらに学部、学科、課程ごとの教育プログラムの学習成果に落としていく。この際、分野によっては専門職団体が要求するアウトカムというようなものもございます。それから、先ほどご紹介しました、日本学術会議で検討しておりますような、物理学なら物理学ということを学んだ人に身につけさせるべきアウトカムもございますので、そういうものを参照しながらプログラムの学習成果を考えていくという考え方でございます。

 当検討会の場ですと、高等教育と職業資格をどう考えていくのかということが非常に大きな課題だろうと思いますが、このスライドは、イギリスのBarnettという高等教育研究者が整理したものを修正したものですけれども、身につけさせるものをだれが考えるのかといいますと、上のほうは、大学が学問的な立場から考える。下側は、労働の世界、あるいは職業の世界からの要請ということであります。

 看護のことについて、私は全く門外漢ですけれども、先ほどお聞きしていると、日本でもアメリカでも、さまざまな課程を通じて同様の看護師の資格を得られるということです。学士課程では、大学である限りは、単にCのところの職業に固有のコンピテンスだけではなくて、AとかBの学問的なコンピテンス、あるいは学問分野にかかわらず、学士課程あるいは修士課程を終えた人材として共通に求められるようなコンピテンス、こういうものを育成するということが求められているんだろうと。Cの部分だけですと、専門学校ということになってしまうということではないかと思います。

 質を保証する考え方として、コアカリキュラムをつくっていくのか、あるいは共通の学習成果というものをつくっていくのか。インプット、プロセス、アウトプット、アウトカムという観点を参考にしますと、今はさまざまな意味で、入ってくる学生は多様でございます。コアカリキュラムというのは、ある意味で、プロセスを一定のものにしていこうという考え方です。

 しかし、そうしますと、アウトプットとかアウトカムというのは必ずしも同じではないということであります。他方、学習成果の考え方からしますと、入ってくる学生も多様で、各大学なり学部が提供するカリキュラム、教育法も非常に多様であるけれども、一定の成果、アウトプットとかアウトカムは一定のものになるだろうという前提で物を考えていくということであります。

 我が国におけるアウトカムを重視した高等教育の質保証の一つの取り組みの具体例としまして、これは2008年12月に出ました、中教審の「学士課程教育の構築に向けて」の中で出ました、「学士力」というものでありまして、学士課程を修了した、いわゆる学士を授与された人は、分野にかかわらず、ここに挙げたような能力を身につけているべきではないかということを一つの参考指針として、中教審としてお示ししたものであります。

 ただ、これをざっと見ていただいてもわかりますけれども、先ほどご紹介したイギリスのフレームワークのような形で、レベル設定はされておりません。能力要素を挙げているだけですので、今後もし、学士課程と修士課程、博士課程でどう違うのかといったときに、例えばコミュニケーション・スキルといっても、学士課程修了者と修士課程修了者と博士課程修了者で何が違うのかという議論は必要だろうと思います。

 最後は、質を保証するために、大学が学習成果を中心としてマネジメントしていく考え方を図式化したものでございます。以上、早口でご紹介しました。ありがとうございました。

【中山座長】ありがとうございました。それでは、10分ぐらい、山内先生、川嶋先生のプレゼンテーションに対しますご質問を受けまして、全体討論に入りたいと思いますが、お二人の先生に何かありますか。藤川委員、どうぞ。

【藤川委員】今の川嶋先生のお話を聞いて、頭が少し整理されたような気がいたします。今、看護師の、専門的にグレードアップしていくときに、名前が先行して、さまざまな専門的な名前が出てきてちょっと混乱しているところがあって、名前だけではどういう看護師なのかというのが理解できないというのが多分、大方の医療関係者もそうだし、もちろん国民にとってもわからないだろうと思います。修士とか博士、学士、我々も、医学部を卒業して医師国家試験を通っても、医学士の資格しかもらえませんけれども、実際は一般の国民は知らないんですね。

 だから、こういう言葉は、私の世代ぐらいまでは頑張って医学博士号を取ろうとしましたが今の若い世代は専門医の時代なんですね。博士号は取らなくても、6年で専門医を取って臨床をやりたいという医師が多いですね。非常に医学博士の価値観が落ちているというのが、現在の医師の世界でのあり方ですね。

 看護師のレベルで専門看護師とか高度実践看護師というのが出てきていますけれども、例えばアメリカに留学するとかイギリスに留学したりして、ナースの最先端を行く人たちがこういうのを取るのはいいんですが、今、地域で求められている、最先端の医療をするにしても、地域の医療をするにしても、全体的な、どういうプロセスであっても、ある一定のところまでは看護の質が維持できているというのが求められているし、現在の日本の看護制度のいいところだと思っているんですね。

 アメリカがどうであれ、イギリスがどうであれ、日本の医療というのは、今回の新型インフルエンザでも証明されましたけれども、やっぱりトップレベルなんですね。だから、そろそろ看護界も誇りを持って、あまり外国の制度を物まねする時代は卒業していただいて、もっと日本らしい、ジャパニーズナースのすばらしさを出していかれれば、日本人に理解のできる、そして、ほんとうの意味で求められている世界に誇れる日本の看護制度ができるのではないかと思います。

 実際、医療制度も、アメリカが日本をまねしないとアメリカの国民を救えないというぐらいに今、変わってきています。看護界も、医療界も自信を持って日本型の制度を、世界にシステムを輸出していくような、プライドを持って頑張られたらいかがかなと思います。何もすべて明治維新のように、何でもイギリスやアメリカをまねしなくても、十分情報として入るわけですから、参考にはされていいけれども、そういうシステムを無理やり法制化して入れていく必要はないのではないか。日本医師会だけではないですが、都道府県医師会レベルでもよくそういう議論がされていますので、ご紹介しておきます。

【中山座長】ありがとうございました。ほかに。今、全体的なことのご発言を医師会のほうからいただいたんですが、もし特になければ、この後に全体的な問題が残っていますので、そちらのほうに入っていこうかと思うんですが、大体2時間のところで、休憩があったほうがいいでしょうか。それとも続けて大丈夫でしょうか。

【前野委員】入れたいですね。

【中山座長】わかりました。それでは、今のお二人のプレゼンテーションへの質問は一たん置いておいていいですか。では、秋山委員から、お願いします。

【秋山委員】山内先生に、アメリカの教育の仕組みというか、そこでCNSよりもNPが主流という感じで受けとめましたけれども、その点と、保健師、パブリックヘルスナースについては、米国の看護教育課程のところではどのように考えたらいいのかなと思って、そこを説明していただけたらありがたいです。

【山内発表者】まず、最初のご質問で、CNSとNPでありますけれども、非常に現実的でありまして、かなりがNPにプログラムを変えているというふうなところです。場合によっては、NPをベースにして、ある特定分野のスペシャリストも、ダブルディグリー(複数学位)というか、ダブルメジャー(複数専攻)として持っているというふうなことがあって、CNSだけというものが非常に厳しくなっているというのが現実です。

 それは、先ほど申し上げましたように、非常にストレートでありますけれども、どれ位のバリューを生むかとか、そのあたりがすごく厳しく行われているところです。私が学生であった頃のことです。ウンドケア、褥瘡ケアのCNSがいて、院内の褥瘡はみんなその人たちが直接ケアをするという時代があったのですけれども、むしろその人たちが教育的なリソースになることによって、ほかの人たちもみんなウンドケアができるようになればいいというような、一皮むけたような状居に変遷していった段階に至りました。そうすると、直接ケアを提供するCNSはこんなに数は要らないではないかということで大量の解雇がありました。CNSが非常に大事にされても、それが普及効果を及ぼして、今度は受難の時期を迎えたというのを目の当たりに見ていたので、やはり社会情勢によってかなり変わっていて、そういう意味では、直接お金というか、いろいろな見えるものの形を生み出すNPのほうに移行しているというのが現実だと思います。

 もう一つの保健師でありますが、米国には保健師という免許資格はございません。基本的に健康教育、あるいはそのようなものは、当然、Registered Nurseの基礎能力であるという考え方でありますので、Registered Nurseを取る教育課程の中で、日本でいいますと地域に相当するような教育課程は終えておりますので、別立ての免許資格、あるいは教育課程にはなっておりません。以上であります。

【中山座長】村嶋先生、短く、どうぞお願いします。

【村嶋委員】確かにBNS看護学(学士課程)の中で入っていることは確かですが、それだけでは、パブリックヘルスナースとしての能力は不足だということで、アシュネ(ACHENE)という、地域看護の教員団体がありますが、そこではパブリックヘルスナースの修士課程のコアコンピテンシーだとか、プログラムを開発し出版しております。

 それから、米国ではありませんが、英国では、スペシャリストコミュニティーパブリックヘルスナース(SC-PHN)が免許登録制になっておりますし、スウェーデンやアイルランド、その他幾つか保健師の免許として確立している国がございます。

【中山座長】ありがとうございました。ほかに何か。藤川先生、どうぞ。

【藤川委員】今、アメリカのほうでは保健師という制度はないということをおっしゃったんですが、日本の場合、今まで半年ぐらいで、今度1年になると言っていますが、看護師の免許を取った後に、保健師の学習をして保健師の国家試験を受けて資格をとる。現実には看護師として働いている人が多いということからすれば、専門看護師の中に、例えば母性看護とか地域看護とかありますけれども、その中に保健師や助産師の専門的なカリキュラムを入れれば、保健師制度や助産師制度というのを廃止して、専門看護師の中に含まれるということはないんですか。

 そうすれば、法的に、純粋に看護師を特化していって、保健師もできる、助産師もできる。そうしたら内診の問題もそんなにこだわらずに、いいのではないかということになる。我々からすれば、ベテランの看護師さんが産婦人科に5年でも10年でもいれば、何ら問題ないところで、助産師の問題も起こりましたけれども、やはり専門特化してくれば当然、保健師教育や助産師教育を専門看護師の中のカリキュラムに入れていけば、アメリカにないような制度を日本に残しておく必要はないのではないかというのを今はっと気づいて、そういう発想もいいなと思いました。日本の昔からの伝統を残して、最先端の外国の制度を導入しようとすると、どうしてもそこに整合性がなくなってくるんですね。

 だから、我々医師もさらに専門職になってきましたけれども、看護師も専門職になろうとするならば、制度を根本的に革新するぐらいの勇気を看護界も持たれたらいかがかなと思います。

【中山座長】ありがとうございます。

 全体の討論の問題に行きそうですので、宮﨑委員、どうしても言いたい。どうぞ。

【宮﨑委員】ただいまのご発言に対して、確かにそういう考え方も一つあると思います。ですけど、現在の社会を見たときに、確かに卒業直後は保健師として就職する人は一部です。ほんとうに一部です。ですけどそれは、やはり就職場所が乏しい、あるいは社会が、ほんとうは保健師の活動を必要としている領域があるにもかかわらず、まだ受け皿が十分にできていない。そういう部分が私は非常に大きいと思います。

 ですから、専門看護師のように一部のスペシャライズされた方へ何か資格を授与するというよりも、保健師として働ける人を、ある程度の数を確保しておくという部分の教育というのは非常に必要ではないかというふうに思っております。

【中山座長】ありがとうございました。これはまた続きそうなので、10分間、休憩を入れて、次の討論に入りたいと思います。それでは、休憩に入りたいと思います。

( 休憩 )

【中山座長】全員揃ったようですので、始めたいと思います。これまで2回、発表を受けました。前回、助産師の教育課程のことだったんですが、大学における看護系人材養成について議論いただいてきましたので、この議論に当たりまして、事務局のほうでまとめていただきましたので、その資料を説明していただき、それから全体の討論のほうに入っていきたいと思います。小山田専門官、よろしくお願いいたします。

【小山田看護教育専門官】では、資料5についてご説明いたします。

 「大学院における看護系高度専門職業人養成の在り方に関する論点及びこれまでの意見等」ということで、ここに3つの論点を挙げておりますけれども、このうち1番と2番については、第7回のときに、こういう論点でご議論いただきたいということでご提案をさせていただきました。そして、そのときに、高度専門職業人だけではなく教育・研究者の養成についても議論してはいかがかというご意見をいただいて、今回、3番目の論点も挙げさせていただきまして、この3つの論点について、先生方のご意見をいただきたいと思っております。

 過去2回、ヒアリングやこちらから提示した資料などの中から、関連するご意見だったりデータだったりということを、全然網羅していないんだと思うんですけれども、拾っているものが黒丸で挙げているものでして、まず、1番の社会が求める看護系高度専門職業人についてということでは、ヒアリングの中で、医師と対等にコミュニケーションがとれる人材であるとか専門領域の深い知識を持った人材というような意見が出ておりました。また、前回、厚生労働省の検討会の動きということでご紹介いただいた中で、特定看護師というものがどうしても大学院教育を前提とした議論になっているようですので、そこではどんな人材が議論されているのかということで挙げておりますが、従来、一般的には「診療の補助」に含まれないと理解されてきた一定の医行為を、医師の指示を受けて実施できる人材というのが、報告書の中から拾った文言です。

 2番目の論点としては、大学院で養成される看護系高度専門職業人というのはどういうものかという論点を挙げておりましたが、これは、拾った中で、2つに分けたほうがいいなと思いまして、1)として人材像、2)として必要な教育ということで、今まで出てきたデータを分けてみました。

 人材像としては、高度専門職業人ということで、中教審の答申の中にもありますし、前回、佐藤委員のほうからご紹介いただいたように、深い知的学識、国際的に通用する専門知識・能力、職能団体等により職業的専門領域の基礎が確立している職業に就く者といったデータがありました。また、上と同様に、特定看護師については、一定の医学的教育・実務経験を前提に、専門的な臨床実践能力を有する看護師といったものが出ておりました。

 必要な教育については、チームで共通の判断ができるための教育といったことがヒアリングの中では述べられておりまして、特定看護師については、基礎医学、臨床医学、薬理学等の履修や特定の医行為に関する十分な実習・研修といったものが出されておりました。

 前回、そして今回のヒアリングの内容等が網羅されておりませんし、そのお話を受けて先生方がどのようにお考えになるのかということを、今日はお聞かせいただけたらと思っております。

【中山座長】ありがとうございました。主に今日は、教育研究者養成の推進のことについてはまだ残っておりますが、1の社会が求める看護系高度専門職業人とは、あるいは、大学院で養成される高度専門職業人はどういう特質を持つのか、主にこの1と2を中心に、皆さんと意見を交わしていきたいと思っております。どなたからでも結構です。村嶋委員、どうぞ。

【村嶋委員】今日、保健師のことを述べさせていただきました。前回は助産師のことがございました。昨年に出されましたこの検討会の報告のまとめのところも、今後の大学における看護系人材養成の在り方の2)大学における保健師及び助産師教育の在り方の中に、「学士課程、大学専攻科、大学院等それぞれの役割や教育理念を踏まえて、社会のニーズに応じた保健師や助産師教育の充実を図る」というのが既に昨年の段階で出ておりますので、高度専門職業人と特定看護師の間に、「○」として保健師と助産師を入れていただきたいと思います。

【中山座長】2のところに、高度専門職業人の中にということでもいいんですね。

【村嶋委員】いえ。

【中山座長】別にですか。

【村嶋委員】高度専門職業人と特定看護師の間に。わざわざここで特定看護師を出す理由が私はわからないんですが、この中に全然、保健師も助産師も入っていない、大学院の議論をするときに。それはやっぱりおかしいと思います。何らかの形でこの中に文言を入れていただきたいと思います。

【中山座長】これは一応、論点整理なので、ということで書いていて、別に全部を網羅ということではありませんね。

【小山田看護教育専門官】はい。

【中山座長】要するに、今の村嶋委員の主張としましては、高度専門職業人と特定看護師、その間に、保健師とか助産師というのも、大学院で養成される看護系高度職業人の特質ということの中の並びに入れるということが妥当ではないかというご意見ということでよろしいですか。

【村嶋委員】はい。

【中山座長】ということですが。小山委員、どうぞ。

【小山委員】村嶋委員に質問なんですが、もしそのようにしてしまいますと、先ほどの藤川委員からご意見がありましたように、いわゆる基礎教育は看護職で、大学院のスペシャリストコースの一つになってしまう可能性もありますが、それでいいんでしょうか。

【村嶋委員】そんなことはないと思います。免許教育としてあるわけですから、一つとして、ちゃんと特定看護師と並んで、保健師や助産師についてここに明記して、実際に考えていただければと思います。

【小山委員】今は、大学院におけるというふうな、大学院ということで議論していますので、今、養成所でも大学でも、一般の保健師、助産師の受験資格がありますので、ここの会でここに入れるというのは、(村嶋)として入れるのはいいと思うんですが、全員一致の意見としてはちょっと反対でございます。(村嶋)では、どうぞ入れてくださっていいと思いますが。

 大学院のことについて話をするときに、大学院の修士課程と博士課程を分けて考えないと、議論を一緒にすると非常におかしくなるかなと思います。ここに書いてあるのは、今のところ、修士課程を中心にということでよろしいでしょうか。

【中山座長】今日は藤川委員に相当あおられまして、あまりアメリカのまねをするなというようなメッセージを送られた気もするんですが、日本の場合も、修士課程、6年の教育が高度専門職業人の育成ではないかというのは、国際的な水準として考えております。今回の議論は修士課程でのということで、アメリカが博士課程で、高度専門職業人の育成を始めていますが、日本の今の現状から考えますと、主として修士課程ということでよろしいのではないかと思いますが、小山田専門官もその認識で一致していますでしょうか。

【小山田看護教育専門官】はい。

【中山座長】大丈夫ですか。では一応、修士課程を中心にということで、もちろん先ほど言った、教育研究者の養成とかいろいろなことになりますと、博士課程の問題は当然出てきますし、もっと高度ということになれば、博士課程での養成ということもあるかと思いますが、一応ここでの今日の議論は、修士課程のところを中心にというふうに思っております。

【小山委員】そうしましたら、今日の田中委員の資料のスライド3をごらんになっていただきますと、大学院の数は過去20年で圧倒的増加しました。このデータを見ながら、私たちは社会での看護学教育における大学院の役割ということを考える必要があるかなと思います。今、大学院の博士課程が54課程、出てきた中では、修士課程は相当高度実践能力のある人に焦点を置いていいのかなと思います。

 ただ、そうするには、現在の修士課程は、ずっと早くからできたところは研究能力ということを重視しておりましたので、修士論文コースとCNSコースというのがあったりしまして、先ほどの村嶋委員のプレゼンテーションにもありましたように、2年目はほとんど修士論文を書くのに費やす大学院が結構多うございます。ところが、そろそろ高度専門職業人ということに切りかえてもいいのではないかと考えますと、それに必要な内容に変えて、大学院の修士論文ではなくて課題研究を中心にして、もっと必要な内容を詰めていく必要があるかと思います。

 その必要な内容の一つは教育に関する科目だと思います。「教育」と「管理」は、CNSを取る人たちはコアとして取らねばいけないということになっておりますが、論文コースの卒業生は、多くが大学の教員になるにもかかわらず教育関連科目を勉強しないまま教員になるということもあります。

 看護が扱う現象は、非常に複雑な現象をどうやって教材化して、学生にわかりやすく伝えるかとか、教育プログラムをどのようにつくっていくかとか、カリキュラムの作成のことであるとか、教育方法であるとか、いろいろなことの最低限のことは、どの人であれ知っていたほうがいいかなと思いますので、修士論文コースであっても、高度専門職業人のコアとしてぜひ入れていただきたいなと思います。同様に、管理能力についても同じです。マネジメント能力というのは非常に重要ですので、どのコースであれ必要ではないかなと思っております。

【中山座長】どうぞ。

【坂本委員】質問なんですけれども、ちょっとわからなくなってきたんですが、高度専門職業人というのは、例えば私どもの大学では、看護マネジメントということで大学院の修士課程をやっているんですが、そういう人も言うんですか。大学院を出た、大学院における看護系人材養成のことを言うんじゃないですか。それがなぜ看護系高度専門職業人という名前になるんですか。

 例えばCNSだったらわかりますよ、そういう名前が。だけど、例えば経営マネジメント看護関係のものを出た人も大学院を出ていますよね。その人の呼び方はどういうんですか。同じですか。

【中山座長】高度専門職業人と座長は思っておりましたが……。

【坂本委員】そういうことですね。全部まとめて入るということですね。

【中山座長】要するに、専門職ということであれば全部、マネジメントも同じだと思っています。

【坂本委員】ということは、村嶋委員がおっしゃったように保健師を入れてくれ、助産師を入れてくれというのは、全部包括されているととらえればいいわけですね。

【中山座長】そうです。

【坂本委員】わかりました。

【中山座長】多分、これは座長個人的な考えですが、助産師と保健師の問題は、助産師、保健師という資格そのものが高度なのか、あるいは、助産師とか保健師でも新人から高度までいるということから考えると、ある一定の能力を持つと高度になるのか、そういう議論があると思います。村嶋委員は、保健師と助産師というのはそのものが専門職業人なんだから、大学院でという主張ですよね。

 そこのところはいろいろと意見が錯綜しているかと思いますが、坂本委員の発言と、今、不一致はありません。

【坂本委員】わかりました。

 それからもう1点ですけれども、医師と対等にコミュニケーションがとれる人材というふうにここに書いていますけれども、何で高度看護専門職業人が医師と対等にコミュニケーションがとれて、あとはとれないのかという、何というのかな、そういった話ではないんじゃないでしょうか。

【中山座長】これは、どの看護職でもとれなければ困りますよね。そのことでは表現が十分ではないかというふうに思います。では、菱沼副座長、どうぞよろしくお願いします。

【菱沼副座長】今お話があって、少しすっきりしたかなと思っているんですが、大学院で養成される看護系高度専門職業人は、大学院修士課程におけると修士課程に区切っていただいたほうがいいということが1つで、そう考えてまいりますと、先ほど小山委員のご発言のところは、教育研究者養成のほうには非常に課題になるかもしれないんですが、高度専門職業人というイメージの中で、ご発言の内容が必須であるかどうかというのは1つ論議があるかなと思いました。

 先ほど村嶋委員のほうから東大の修士課程のカリキュラムのご紹介をいただいたんですが、この31単位でやっていらっしゃるプログラムと、看護系大学協議会がCNSあるいはAPNとして提案しているカリキュラムの単位と、内容的には大きな差があるようには思えなかったんですね。看護師の能力の中に、保健指導をすることは含まれているという意見の一致は既に得ているのではないかと思っておりますが、そうしますと、その上に積み上げるという意味では、CNSあるいはAPNということと、今回ご紹介いただいた東大でやっていらっしゃる保健師コースとは、私から見ると、同じレベルかなと思ったんですが、CNSとしては置かないというご意見なんでしょうか、村嶋先生の保健師コースというのは。

【村嶋委員】CNSとしては置きません。どうしてかというと、もっとポピュレーションに対する洞察だとか疫学や政策論みたいなものが、非常にプラスで必要になるからでございます。CNSとしては、田中委員の14ページを見たときに、このような実習の仕方、CNSはある程度、臨床の能力があってからおやりになることをお考えになっているんだと思うんですが、今回の場合は、これから保健師という専門分野にきちんと入っていく学生に対して、本来だったら免許として付加しなければいけないような、ポピュレーションを見る能力を付加するということでございまして、そのための実習を3タイプ8単位分やらなければいけないことで、CNSの枠には入らないというふうに考えております。

【菱沼副座長】これは看護系大学協議会のほうで今、提案というか、実践しているCNSのコースなわけですけれども、今後、大学院における高度専門職業人の養成ということを考えたときに、このCNSプラスアルファになるかもしれないし、特定看護師との関係で、ここがどういうふうに変わっていくかというのはまだ含みがある状態ではないかと思っています。しかし村嶋委員からの、保健師コースの考え方は、田中先生のほうからご発言いただいたCNS、あるいはAPNのコースと共通するのではないのかなと私は思いました。

【田中発表者】高度専門職業人としての大学院の教育内容ということと、イコール免許制度というのを同時に議論するということは、すごく混乱しやすいような感じがするんですね、私の理解ですけれども。例えば、既に助産師課程を大学院で、専門看護師コースとうたわなくても、開いている大学というのは幾つかございますね。それは認められているわけなんですけれども、それは助産師の国家試験の受験資格も得られるコースであるけれども、ただ、それのみじゃなくて大学院の、先ほど大学院のレベルというのをどういうふうに見るかということも、厳密にはいろいろとあると思うんですが、ただ助産師資格を取るという意味だけじゃなくて、大学院を修了するだけの教育内容というものをそろえている、両方のことなんだと思うんですね。

 だから、保健師という免許資格はすべて大学院資格が相当だと考えるのか、保健師というものと、プラス大学院の教育が必要と考えるのか、そこを整理しないと混乱するのかなというのが1つです。

 それから、それは教育の枠組みの話ですが、需給のバランスでいったときに、例えば助産師にしても保健師にしても、今度、免許の問題だけで考えていった場合に、すべてが大学院でなければならない資格であるというふうになると、圧倒的に養成数が足りなくなってしまうのは目に見えていると思うんですね。でも、保健師、助産師もそうであるように、資格も取れるけれども、プラス大学院の内容を加味するというコースを開くというのは別段、助産師で行われているわけで、問題ないと思うので、そのあたりを整理していただきたいなと思います。

【中山座長】今日、9回目になるのですが、ずっとこの議論の問題がここに集約されているような気もします。村嶋委員も厳密に精選してプレゼンテーションしてくださったんですが、助産師の場合もそうですが、看護師課程の中に母性看護学というのがあって、どういうふうに母性なり助産なりというのはやるのかということを、オリエンテーションを受けて助産課程を選ぶという形がある。保健師の場合は、村嶋先生のところの12人ですか、非常にうまくいっているのは、学部のときに保健師の実習も受けて、保健師のライセンスも持ってという、そこで強い動機づけがあるのではないか。私の学部でも、村嶋先生のところで卒業生を学ばせてもらっているんですが、保健師をやってみて、もう一度学びたい、あるいは、保健師の学習をしてみたら、どうしても大学院できちんと学んでから保健師になりたいとか、動機づけがものすごく、学部のレベルである学生たちが今、行っているわけですね。

 そういうことを考えると、そこの動機づけがないまま大学院に行って、今にような教育の展開ができるかどうかというところは実証のしようがないので、そこは苦しいところではないかなと思っています。その辺がまだ課題として残るかなと思っています。

【坂本委員】今日の話は、さっきから副座長に整理していただいたように、修士課程ということにおいて、看護大学の修士課程についてどのような資質、能力を必要とするかということを絞って話をしていただきたいんですね。それに、保健師の教育をどうする、助産師の教育をどうするというのは、この前の看護系大学協議会、いろいろなところで話し合われて、ある程度、法的な整備もできつつ、発信もされているわけですので、それを持ってくると、修士課程のどのようなことを求めるんですかというものが消えてしまうので、そこに論点を絞っていただきたいなと思います。

【中山座長】ということで、今、坂本委員から整理していただきました。そこに焦点を絞ってお願いします。

【村嶋委員】焦点を絞ることは別に私もいいです。ただ1つだけ、今、中山委員が、学部でかなり地域看護の教育を受けているからというふうにおっしゃいましたけれども、だから、看護師に母性看護学が基礎学問としてあり、助産師に助産学が基礎学問としてあるように、看護師に地域看護学が基礎学問としてあり、保健師のほうは公衆衛生看護学があるとしていくのが望ましいと考えております。

 それから、ヘルスプロモーションの考え方は、実は基礎看護学の中に結構ございます。多様な場で働く看護職という形で入っておりますので、そこら辺は整理していただければと思います。以上です。

【中山座長】松尾委員、どうぞ。

【松尾委員】我々のところも専門看護師をもっと欲しいなと思っているんですが、田中さんの資料のスライドの8枚目のところで、坂本委員も言われましたが、修士課程における教育を考えるときに、我々のところも専門看護師をもっと欲しいなと思っているんですが、非常にハードルが高くてなかなか増やせないという現実があるんです。現状では全部、大学院に何らかの形で行っていないと専門看護師は取れないというスキームと理解していいんですよね、この絵は。

【中山座長】いいです。

【松尾委員】そうですよね。例えばドクターの世界だと、専門医を取るのはほとんどオン・ザ・ジョブで取っているんですね。認定は看護師で取っているということで、このプレゼンの中にもあったように、将来的には、第三者の認証機関があって専門看護師を認定していくということなんですが、この議論の前提として、これは将来にわたって、大学院で一定のプロセスを経ないと認定しないのかどうか、その辺がどうしても理解できないんです。

【中山座長】田中先生、どうぞお願いいたします。

【田中発表者】外国のまねをしないでというようなお話もあったんですけれども、ただ、国際的なスタンダードとして、アメリカに限らず、そしてこれが最先端のものではなくて、アメリカでは50年以上前から修士課程のCNS教育は始まっておりますし、EU各国でも足並みをそろえて、イギリスも含めこういう制度は、また東南アジア、お隣の韓国とかでも、CNSとかNPとか、NPが中心かと思いますが、韓国は大学院教育でやっておりますので、これは最先端ではないことと、グローバルスタンダードということで考えますと、どう考えても大学院教育がグローバルスタンダードですので、今後つくっていくときにはそういうふうにしなくちゃいけないということもあります。

 ただし、先ほどもお話ししましたが、社会人とか長期履修制度で、働きながらの方の場合は、3年間で終えるというコースとか、多様なコースをいろいろな大学が用意しておりますので、仕事を完全にやめないと取れないかというわけではないと思います。

 ただ、今後、カリキュラムをもっと単位数を増やしていったときにそこをどう考えるかとか、養成数をもっと飛躍的に増やすにはどうしたらいいかということは、いろいろ考えなくちゃいけない点がいっぱいあると思います。

【松尾委員】専門医と専門看護師との違いという点で考慮されるべき点というのは結構あって、例えば医師の場合だと医局があったり、診療科が確立しているので、専門家をどんどん育てていきやすいという環境はあるんですね。多分、看護師さんの場合はないので、当面、コアの人材育てるときには当面そういう制度は必要かなという感じはするんですが、ただ、将来にわたってずっとこのようにすると、養成も非常に少なくなるし、例えば慢性疾患の専門家の人は数がものすごく少ないですよね。ところが、現実には患者さんはものすごく多くて、ニーズも高い。

 このような状況で、量的にもほんとうに確保できるのかなというところもあるので、その辺のところは少し議論が必要かなと思います。

【藤川委員】医師の場合、学位を取るのにも、卒業してすぐ4年間大学院に行く場合と、2年間研修して、それから行く場合と、もちろん5年ぐらいたってから、専門医を取得してから、学位だけを取得するために勉強するという、いろいろなタイプがあるんですね。だから、修士課程を取るのを画一化すると、今、いろいろなプロセスで看護師さんになれるように、ある程度そういうことをしないと、、女性の場合には結婚があるんですね。特に看護師さんの場合は。出産もありますので、すべてそれを一律にはできないけれども、制度が後からできてくると、前に卒業した人たちは宙ぶらりんになって困りますから、、やっぱり途中からでも取れるようにしておくことが大切です。

 例えば専門医制度がはじまったときには、既得権として専門に外科系の手術を担当する医師は、ある程度緩和された条件で専門医を取得しています。看護師さんたちでも十分、大学院を卒業してきた人よりもできる現場では働いている看護師さんはたくさんいるわけですから、その人たちをきちっと受け入れる制度もつくらないと、この制度は広がらないのではないかなと思います。

【中山座長】菱沼副座長、何かありますか。

【菱沼副座長】今の先生のご意見も、職を考えるときには考えなければならないご意見かと思うんですが、今日のテーマが大学院における教育ですので、そこにまた別に考えるべきことと思います。

【藤川委員】新卒だけですか。

【菱沼副座長】新卒とは限りません。既卒ももちろんですけれども、大学院教育に絞った議論というところで……。

【中山座長】富野委員、どうぞ。

【富野委員】今の田中先生の8ページのところなんですが、私も松尾先生と同じような考えで見ていたんですけれども、やっぱりこれは社会人大学院入学というのをかなり広げていかないと、実践で現場で働いている人たちが夜間の大学院に行って、このコースをとって、どんどんCNSの資格を取っていくために、門戸を広げておくことは必要だろうと思いました。

 それからもう一つは、第三者機関をつくろうというのは、中立性とか公正ということを考えると当然、重要なポイントなんですね。現在、医学界、我々のところでも、専門医制度を各学会が、自分たちがつくって自分たちが認定してということがあって、第三者機関がそれを検討しようというレベルになっているわけです。しかし、それは学会というものとタッグマッチを組まないとかなり難しいですね。できないと思います。実際問題、問題を作成するにしろ何にしろ。

 そうすると、ここの2つの大学協議会と看護協会のところに、第三者機関の何を入れるといったことも考えておく必要があると。

【田中発表者】ご意見ありがとうございます。まず、社会人入学の受け入れということで、現在も社会人入学をかなりの大学院で受け入れている現状で、14条の特例を利用して、土日とか夏休み期間中の特別集中講義なども利用しているんですが、ただ、さらに、先生がおっしゃってくださったように、そういうのを強化していかないと、養成数、それからいろいろ工夫の余地がまだあるかと思います。

 それから、もちろん医師の方にも専門教育などを強化していただくことを助けていただくということも、専門的な医学的な内容の人材というのは看護の中ではまだまだ少ないと思いますので、医師の方々のご協力をいただけたら、より養成が早く進むと考えられるところもたくさんございます。

 それから、資料の私のスライドの19ページにお書きしたんですが、これは私が個人的に考えているわけではなく、いろいろな機関の中からこういう声が上がっているわけなんですけれども、先生が今おっしゃってくださったように、今、私は日本看護系大学協議会の立場で、本日は発言させていただく機会をいただいたんですけれども、基本的には学問的な内容に裏づけられた高度専門職業人ということになると思いますので、看護系の学会の協議会というのもございまして、私もそちらのほうの活動もしておりますけれども、ぜひ第三者機関の認定のときには学会が積極的に関与していきたいということがありますので、こちらのほうにもそれをお書きしたような次第です。今、そういうことを検討段階でございます。

【富野委員】そうですか。ありがとうございました。

 それからもう一つ、資料5の2の1)の特定看護師というところに、チーム医療の推進に関する検討会報告書のところがあるんですけれども、これは、どこでどのように、何かプランはあるのでしょうか。

【中山座長】これは、今日、野村看護課長が来ていますので、野村さんに振っていいですか。特定看護師の問題は、厚生労働省の主導でやっていると思いますので、お願いいたします。

【野村オブザーバー】チーム医療の推進に関する検討会の報告書は、今年の3月に出されました。その報告書を受けまして、この5月12日にそれを実現すべく、チーム医療推進会議という別の組織をつくりまして、多くは関係団体が中心となっているものですけれども、そういったものを立ち上げました。そこに2つぐらいのワーキンググループを設けて、実際の細かい議論はワーキンググループで詰めていくような仕掛けにしております。まだワーキンググループのほうは動き出しておりませんけれども、順次準備をしつつ、報告書に書かれたことを進めていくというようなことになっております。

【中山座長】ありがとうございます。こういった問題も含めまして、今日のテーマであります、大学院で看護系の人材の育成をどうするのかという問題ですが、1つは、松尾委員からも先ほど出ましたように、私も日本看護系大学協議会の会長をしているんですが、ちゃんと掴めていないんですが、修士課程を終えてから専門看護師とかそういうことではなくて、とにかく修士号を持って臨床に出ているナースたちはかなりいるんですが、それがどのぐらい、どういうふうにしているのかと実態はちょっとつかめていないんですが、要するに専門看護師の養成は、かなりの自習時間ということで、仕事をストップしてしかやれない場合が多いので、働きながら修士課程で学んでいるナースたちは、それをとらないで普通のコース、レギュラーの修士課程を終えて、そして夜間学びながら臨床でずっと続けているという方々が相当数、多くなっているんじゃないかと思いますが、その実態が私のほうもちゃんとつかめていませんので、いずれそういったことも必要かなと思っています。

 それは多分、藤川委員や医師会の方々もおられるんですが、ナースが全部、専門職として修士課程を出ることがいいのか、ジェネラルナースのエキスパートみたいなのがいて、その人たちが修士号を持つという道もあるんじゃないかということのご意見も聞かれていますので、そういったことも含めて、看護師が、大学院で人材育成をどうするのかという問題があって、今日の山内先生、それから田中先生のプレゼンテーションとも関係すると思うんですが、CNSという形じゃなくて、むしろAdvanced Practice Nurseという形で、APNという形にして、もっと池を大きくして、何でも、高度というか、専門性の高い看護師たちをくくるような枠組みというのはできないものかというのも議論の一つとしてはあるのではないかと思っています。多分、田中先生、APNにかえていくというところも、そこもあるんですよね。CNSということがかなり固定しているので、もうちょっと幅広くという。

【田中発表者】そうですね。CNSという言葉になっているので誤解があるかもしれないんですが、米国で言うClinical Nurse Specialistというものではなく、日本で言っているときの専門看護師というのはCertified Nurse Specialistの略で、もともとの最初に看護協会で考えられた段階で、臨床的なClinical Nurse Specialistだけではなくて、広い意味での地域で動くような、NP的な概念に近いようなものも包括した概念として考えて、そこは既に日本独自の発想で始まったと思うんですが、それを今後、さらにどういうふうに発展させていくか、また質を向上させていくかという議論ということだと思います。

【中山座長】坂本委員、どうぞ。

【坂本委員】先ほどから大学院で養成されていく看護師の話も出ましたけれども、やっぱり全体には、国民に還元できる看護というのを提供できるようなことが最終ゴールでありますから、一般というか、専門とか大学院を出ていない看護師に対しても、大学院で養成される看護師に求められるスキルとして、そういう人たちに対しても質を上げていくための影響を与えていくようなスキルを、ぜひ、どのようなことが在り方で必要なのかというところに加えていただければというふうに思います。

【倉田委員】社会が求める看護系高度専門職業人についてというのがありますが、医療の受け手の一人として、どういうふうに思い、何を期待するかということについて、ちょっとお話ししたいと思うんですが、今日、田中先生のご発表の中の資料で、27ページの一番最後の、専門看護教育のほかに、幅広い素養を養うことも肝要であるというふうに書かれておりまして、非常にこれは、医療の受け手にとっても、特にお願いしたいと思うことです。

 チーム医療の中で、医師やほかの医療者たちが専門的に動かれていますけれども、それを俯瞰的に見られるというふうな立場の人があまりいないと思うんですね。それをこういう専門の方にしていただけると、患者や患者の家族としても非常にありがたいと思います。特に、素人ですと医学のことはよくわからない。おろおろしてしまうときに、一番相談に乗ってくれるのは、私は看護師さんだと思っていて、その看護師さんたちの中でも、やはり俯瞰的に見ていて、患者がどの程度理解し何に悩んでいるかというのを、上から見ながら、専門家医療者たちの動きとともに、患者の心や気持ちがどういうふうに動いているか、家族が何を悩んでいるか、患者と家族の間でも意見の違いがあったりもしますから、それをどういうふうにサポートできるかみている方がいてくださると、非常に助かると思います。それと安全対策の面からも、危機管理の面からも、やはりそういう方がいていただけるとありがたいと思いました。

 それから保健師のことなんですが、たまたま私の身近にいる人たちの話を聞いたんですが、東京都のある市の対策なんですけれども、乳幼児の家庭訪問というのがありますね。その家庭訪問を受けたときに、かなりの時間を使っていろいろな聞き取りをされたようです。例えば新米のお母さんに対して、心配事があったりしたときに相談できる人がいるのか、夫のサポートがあるのか、それから、産後うつ病と言われることを非常に心配してのことだと思うんですけれども、眠れているのか、食事はちゃんととれているのか、食欲はあるのかというようなことを聞かれたそうです。

 そこの東京都のある市というのは、そのお母さんたちがもともと小さいときから生まれ育ってそこにいるのではなくて、結婚して、夫の職業だとかそういうことによってたまたま東京に転勤してきて、そこで子供もできて、生活を始めているという感じで、核家族ということですよね。そうすると、相談したくてもできなかったりということを心配して、保健師さんたちは、1人かな、複数か、それはちょっとわからないんですが、産後うつ病のことも心配し、新米お母さんたちが意見交流をできるような機会というのを設けていて、月に2回ぐらいの頻度でそういう集まりを開いているというふうに聞きました。

 私は、そこでベビー体操とか、情報交換とか、それだけをしているのかなとも思いましたけれども、今後、ワクチンのことですとか、今、話題になっておりますHibワクチンや子宮頸がんワクチンの話なども、そういう場でやってほしいと思いますし、普通の医療のかかり方、かかりつけ医師から始まり救急医療のかかり方の話なども、そういう場でやっていただけるといいのじゃないかなというふうに思いました。

 それと、別にもう一つなんですけれども、これは東京都の23区のある保健所でのことなんですが、友人が最近発熱をしまして、それも39度から40度の高熱が出て、日に何回も上がったり下がったりというような状況だったので、それと海外から帰ってきたばっかりなものですから、私たち飛行機をおりたときに、空港で、発熱とか、おなかの調子が悪かったり、何か異常を感じた場合は保健所に連絡をするようにという紙をもらったり、掲示物があったりして、それを見ます。彼女もそれを思って、上海から帰ってきたもので、そこでたくさん蚊に刺された。それがひょっとしたら日本脳炎じゃないかなと。その可能性は非常に低いのかもしれないけれども、でも、海外から帰ってきて、蚊に刺されて高熱が出た。

 これは、どこだったら日本脳炎かもしれない検査を受けられるのかなと思って、保健所に電話をしたそうなんです。そうしましたら保健所では、今、発熱に関する相談はやっていないのでお答えはできないみたいな感じだったそうなんです。彼女は何日間か後に、高熱が下がらないもので、また医療機関を受診したときに、肺炎だということがわかったんですけれども、それを保健所のほうでは、もう既にあなたはお医者さんにかかっていらっしゃるんですから、そこで指示を受けてくださいというような感じで終わってしまったらしいんですが、私としては、どこにお住まいのどういう方で、医療機関に行って、その後どういうふうだったかを報告してくださいというふうに言うべきだと思って、この話を聞きました。社会というか、私1人だけの意見なんですが、こういうふうに思い、やはり期待するところであります。

【中山座長】ありがとうございました。あっという間に、今日は3時間の時間が迫ってまいりましたが、発言していない委員の方で、ぜひという方、お願いいたします。前野委員と目が合いましたが、どうぞ。

【前野委員】私は、いわゆるNurse Practitionerに関心があります。NPの日本版を現実化させる方向はないのかなと常々思っております。昨今、医療崩壊の要因として医師不足が社会問題化しています。医師不足を背景に非常に多忙な医師たちが、医師にしかできない業務に専心させるためにも、従来の看護師の業務とは違った自立したNurse Practitioner的な制度が検討されるべきですし、それは社会的な要請ではないかと考えます。

 検討会の中にそのような点が検討される余地があるのでしょうか。近年、ドクターの専門医がある種のブームですが、専門医自体も、従来は必ずしも技量の質が伴わない。内部の顕彰的な制度に近いようなものも少なくないようです。看護師の分野にも、そのような面がないのか、ちょっと心配です。

 先ほどの山内先生のお話の中で、アメリカではCNSの人気が頭打ちで、方向性はNPの方にあると指摘されました。これから議論を深めていくためには、実践に即した高い質を身に着けることを第一に重視していただきたい。また、特定看護師のモチベーションを上げるには、医療現場において、職場の受け皿となるポジションも必要ですし、新設もしなくちゃいけないでしょう。それらを総合的に考えていくことで、アメリカのCNSの実情、課題を学んでいくべきではないかなと思いました。

 特定看護師が、Nurse Practitioner的なものを指向するのか。これは厚労省等で議論がされていくのでしょうが、こちらの検討会も、そことの整合性といいますか、総合的に考えて進めていく必要があります。それぞれ別個な形で行われずに、患者・医療者、社会のニーズに応える形で進めてもらいたいと願います。

【中山座長】ありがとうございました。平澤委員、どうぞ。

【平澤委員】いろいろご意見を伺いながら、私もいろいろ考えてみましたが、やはり社会が看護職に、どのような能力を持って、何ができるのかというニーズと期待が根底にあるのではないでしょうか。だから、専門領域をさらに発展させて、そのサービスのため必要な学力を培い、実践能力を高めることで、期待される内容ができることで、高度専門職業人という観点が発展してきている実態を各先生方のご意見を伺いながら感じました。

 それぞれの専門領域においては、コアコンピテンシーズを持って活動しなきゃならないと考えます。助産の領域では、2009年に、日本の助産師のコアコンピテンシーズを作成しております。これらのコンピテンシーズに向けて、教育機関の形態は其々違いますが、コアになる能力をそれぞれの教育機関で培いながら教育しております。前回も専門職大学院と看護系大学院で報告させていただきましたが、今、国民に求められているニーズにどうこたえるか、この観点が一番大事であると認識し、助産師教育を修士課程で行うようにしたのです。本日の先生方のプレゼンテーションで、川嶋先生からの提出資料の中で、専門職育成の質保証の重要性を、先生が系統立ててわかりやすくご紹介いただいたので、自分の頭が整理しやすくなりました。また山内先生からの、アメリカの場合の専門職についてご紹介いただき参考になりました。アメリカではCertified Nurse Midwifeと、もう一つ、助産師のダイレクトエントリーの教育も行われておりますが、両者の教育に関し、卒業生をフォローした時に、能力差がなかったというような実態も報告されております。これら、先進国の後追いをするわけではありませんが、最先端を行っている教育を日本の中にどう取り組みながら、日本らしい教育を行うかは大事なことであると再認識しました。お二人の先生方の資料はこれからすごく参考にさせていただけるかなと思っています。ありがとうございました。

【中山座長】どうぞ、西澤委員。

【西澤委員】頭の整理がついたというか、逆に混乱したというか、ちょっとはっきりしないんですが、要するにいろいろ議論をしてきましたが、高度専門職業人を教育するということで議論してきたんだろうと。ただ、今回は修士課程教育に論点を絞って、資格取得等は考えないということで、そのような議論で進めていくこともあるなと。

 それと、今日は川嶋先生のお話を伺って、質保証、学位の質保証基盤というこの定義ですね。この定義と今までの議論が若干ずれているのではないかと感じたので、今後の議論の中でそれを合わせていく必要があると思います。

 それから、やはり医師との違い。松尾先生がおっしゃったように、医師の場合、専門医資格は本当に現場で仕事をしながらであって、教育課程ではない。それとこの専門看護師とか、あるいは今度の特定看護師とか、どのように考えていくのか、いろいろな視点が今回見えたのかなと、そのように思っています。

【中山座長】藤川委員、どうぞ。

【藤川委員】一番医師会側が心配しているのは、先生が今言われましたけれども、境界をしっかり、どこまでがどうなんだと。同じことをやって、医師の包括指示の下とはいうものの、もし失敗をしたときに、国民が不満を言った、家族が不満を言ったときに、いや、医師の包括指示の下ですから医師の責任ですよということになります。これは責任問題が一番、医師会側としては気になっています。

 もう一つは、専門化して高度化していくことは全然問題ない。質を高めることは問題ないんだけれども、名前が多過ぎる。わかりにくい名前をいっぱい、アメリカの表現を日本版に一生懸命直すのはいいんだけれども、それが世間には受け入れられない。日本社会から受け入れられない。いわゆる看護界だけでのキーワード。CNSといったら、我々はCentral Nervous Systemですよ。中枢神経ですよ。それをCNS、CNSと言うと、米国のニュースセンターのことかなと誤解される。

 いろいろジャンルによってキーワードを略語で使い過ぎると、わからないんですよ。言葉を選んで使われないと難しいかなと思います。

【中山座長】わかりました。多分、佐藤委員のほうから、学位の問題と専門職業人の育成の問題が、発言があると思います。どうぞ、先生。

【佐藤委員】私、混乱しちゃったんですけれども、私どもがまとめた第1次報告のところで、確かに保健師については、今後、専攻科であるとか、あるいは大学院において高度専門職業人の養成を目指した教育を実施する等々、出しているんですけれども、ずっと私、頭の中にこんがらがっているのは、保健師教育という言葉は、そもそも保健師の資格を取らせるための教育のことを含んでいるのか、それとも、保健師のさらに高度な知識、技能等を身につけさせるところのことを指しているのかによって、随分、大学院としての扱い方は違うと思うんです。私は、前者であるなら、これは大学院の修了要件の単位数に絶対含めちゃいけないというふうに思っております。

 東大の大学院を拝見しますと、既に資格取得のための要件を備えた人たちですから、これは大変すばらしい保健師の高度な教育ということで、素人でもほんとうによくわかるんですけれども、資格取得のためのほうもこの修士課程の中に組み込むということは、先ほどの川嶋先生のお話のように、学位の質保証という観点からも絶対それは許されるはずはないんです。その辺のことをもう少し率直に、次の機会に議論できればいいなというふうに思っておりました。

【中山座長】ありがとうございます。

 横尾委員、何かありますか。

【横尾委員】1つ、やっぱり学位の質保証をどうするか、そこのところにもう少し焦点を合わせないと、大学あるいは大学院教育にならないというふうに思います。

 それともう1点は、こういうふうな魅力あるカリキュラムをつくらなければ学生たちは来てくれないということ、学生が何を望んでいるのか、そこのところももう少し考慮が要るのかなという。以上の2点でございます。

【中山座長】ありがとうございました。

 宮﨑委員、いいですか。

【宮﨑委員】私も、専門職の冠に「高度」というふうについたときに、ある狭い領域に特化していくという、それだけでは高度とは言えないんじゃないか。奥行きと広がりという言葉がありますけれども、さっき坂本委員がおっしゃったように、私も同感なんですね。特に看護職の場合は、自分自身がスペシャリストとして、何か優秀な技能を身につけるというだけではなくて、組織によい変革、よい影響を及ぼせる人、もしかしたらそれは看護職だけじゃなくて、専門職と言われる人たちの中に共通する素養かもしれませんけれども、特に看護職、医療人の中でも母集団が大きいという特質がありますので、そういった能力が、高度というところには必須かなというふうに思います。

【中山座長】ありがとうございました。これで討論を打ち切りたいと思いますが、いいですか。帰るに帰れない先生がもしいらしたら。富野先生、いいですか、大丈夫ですか。

【富野委員】はい。

【中山座長】わかりました。厚生労働省の、先ほど言いました特定看護師の問題といいますか、チーム医療推進会議のワーキンググループも進みますし、また、保健師、助産師のカリキュラムの見直しといった議論も始まっているかと思います。こういったことを抜きには、この検討会も進んではいかないんですが、今日残された課題は、修士課程あるいは修士号を出すということは、学位の意味を含めて、質を担保するのか、このことと免許資格の問題が絡んでくる、これをどうするかということが残された課題かなと思っております。

 このことを頭に置きながら、6月にもう一度予定をしておりますので、そのところでの討論に持っていきたいと思っています。次回は、もう一つの課題であります、モデルコアカリキュラムが大分進んでいますので、そのプレゼンテーションも受けながら、この討論を続けていきたいと思います。先生方のほうで、もし何か、今日の議論を受けまして、提案がしたいということがありましたら、また出していただければと思いますが、どうぞ。

【富野委員】先生、やっぱり育てる側の教育側の人材はどうなっているのかということが問題です。そこを抜きにしては、幾ら大学院でやっても、教える側が少なくてレベルが低ければどうしようもない。そこも考えようということです。

【中山座長】今日は川嶋先生のプレゼンテーションにも入っていました。教員の質の問題が入っていまして、これは抜けないということですね。今日の3の問題ですね。今日は3を置きましたけれども、3の問題は組み入れて、大学院教育をどうするかということをきちっと議論するということでよろしいでしょうか。

【富野委員】そうだと思います。それがないとできないと思います。

【中山座長】わかりました。

 それでは、小山田専門官のほうに返したいと思いますが、よろしいでしょうか。

【小山田看護教育専門官】今日は長い間ありがとうございました。事務局的には、審議官が結局来られませんで、課長も途中退席のままになってしまいまして、まことに申しわけございませんでした。

 次回は、座長のおっしゃったように、モデル・コア・カリキュラムのことについて一定のお時間をいただきまして、引き続き大学院のご検討をいただきたいと思っております。日にちが近いのですけれども、6月24日17時半から、今度は2時間で予定をさせていただいております。また別途ご案内をいたしますので、よろしくお願いいたします。事務局からは以上です。

【中山座長】本当に長い時間、先生方、ありがとうございました。3時間にわたりましたけれども、過ぎてみるとあっという間の時間であったように思います。これで閉会といたします。ありがとうございました。

 

―― 了 ――

 

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