令和7年9月26日(金曜日)14時00分~16時00分
ハイブリッド(対面・Web)開催 ※傍聴はWebのみ
(座長)小路明善座長
(座長代理)平子裕志座長代理
(委員)石川正俊、伊藤公平、大野博之、大森昭生、尾花 正啓、角田雄彦、田村秀、鶴衛、中村和彦、福原紀彦、村瀬幸雄、両角亜希子の各委員
小林私学部長、三木私学行政課長、田畑私学助成課長、柿澤参事官(学校法人担当)、篠原参事官付室長、菅谷私学行政課長補佐
(発表者)須賀晃一早稲田大学副総長、井原奉明昭和女子大学副学長、今井章子昭和女子大学教授、永井悦子玉川大学リベラルアーツ学部長、髙橋道和放送大学学園理事長、加藤和弘放送大学副学長、相良博典昭和医科大学病院長
(関係省庁)幸寺経済産業政策局産業人材課課長補佐
【小路座長】 お一人まだですけれども,定刻となりましたので,ただいまより第5回「2040年を見据えて社会とともに歩む私立大学の在り方検討会議」,これを開催させていただきます。
引き続き座長を務めさせていただきます小路と申します。よろしくお願いいたします。
本日の検討会議も対面・オンラインの併用によりまして,公開で開催させていただきます。
それでは,本日の議事等につきまして,早速ですが事務局より御説明をお願いいたします。
【三木私学行政課長】 本日の議事及び配付資料は次第の1枚目に記載のとおりでございます。
なお,7月28日に御議論をいただきました中間まとめ案につきましては,その後,その日にいただいた御意見をできる限り踏まえまして,座長と事務局で御相談をさせていただき,座長一任ということでしたので,8月29日付で案を取れたものとして公表させていただいております。本日の参考資料の1から3にて配付をさせていただいておりますので,御覧ください。その他過不足等あれば事務局までお申しつけください。
なお,本日は議題2のヒアリングの関係で,須賀晃一学校法人早稲田大学副総長,井原奉明昭和女子大学副学長,今井章子昭和女子大学現代ビジネス研究所所長,永井悦子玉川大学リベラルアーツ学部学部長,髙橋道和放送大学学園理事長,加藤和弘放送大学副学長,及び相良博典昭和医科大学病院長の7名にも御参加いただいてございます。
座長,お願いします。
【小路座長】 7名の方,改めて御参加いただきまして御礼を申します。よろしくお願いいたします。
それでは,早速ですが議事に入ります。まず議題1,令和8年度の概算要求及び税制改正要望に係る報告について,事務局から冒頭お願いいたします。
【三木私学行政課長】 資料1を御覧ください。この会議で先ほど申し上げました中間まとめをまとめていただいておりますけれども,その内容のうち,すぐに実行に着手し,予算や税制等で対応できるものにつきましては,平成8年度予算の概算要求でありますとか,税制改正要望に盛り込んでおりますので,中間まとめで御提言いただいた内容に関連する部分を中心に御説明をさせていただきたいと思います。
ページをめくっていただきまして,ページの1ページを御覧いただければと思いますが,令和8年度予算の概算要求における私学助成,私立大学関係の全体像でございます。私学・私大振興のため,基盤的経費の拡充として,近年にない増額の幅で要求をしております。
また,御提言を踏まえ,私学助成のめり張り,重点化を図り,一般補助のところを御覧いただきたいと思いますけれども,2つ目の丸に記載のとおり,地域経済の担い手やエッセンシャルワーカーの育成を行う地方中小規模大学,その次の丸の理工系人材の育成に対して,それぞれ補助の単価をアップし,重点的に支援をするとともに,教育研究の質の向上に向けたST比に着目した配分を強化した要求を行っております。
右の特別補助のところを御覧いただき,中間まとめにおいて,国際競争力の強化に向けた御提言をいただいておりました。イノベーション創出に向けた教育研究環境整備支援として30億円を計上しております。こちらについては次の2ページが詳しい資料ですので,そちらを基に御説明をいたします。
研究力の高い私立大学へ,施設設備と経常費を一体的に,重点的に支援するように,来年度10大学を念頭に,日本の競争力を高める私立大学の拠点機能を強化しようとするものでございます。
続きまして,3ページを御覧ください。私立大学の経営改革支援の予算をまとめてございます。1ポツのメニュー1のキラリと光る教育力を生かした経営改革を行う大学でありますとか,メニュー2,複数大学の連携を通じた経営改革について拡充した支援の要求を行っております。
4ページ目を御覧いただければと思います。中教審の答申も踏まえつつ本会議でも御議論いただいておりましたけれども,この4ページの真ん中,左側部分でございますが,大学や地方公共団体,産業界等が一堂に会して地域の人材需要を踏まえた人材育成を行うとともに,高校から大学の一体的な改革が進められるよう,関係者が主体的,継続的に議論を行う協議体として,地域構想推進プラットフォームの構築を支援するモデル事業の予算と,あとこの右側部分でございますが,都市と地方の大学の連携を通じた国内留学促進のための予算を新規に要求してございます。
5ページを御覧ください。こちらは大学の共同研究を支援する予算要求でございます。個々の大学の枠を超えて,大型・最先端の研究設備や,大量・希少なデータ等を研究者が共同利用・共同研究することが可能となることを目指しております。4つのメニューがございますけれども,右下が新規事項といたしまして,大規模なオートメーション,クラウドラボの形成による新たな共同利用サービスを実現するための先導プログラムへの支援などを行うよう予算を要求しております。AI時代にふさわしい先端研究の集積,自動・自律化,遠隔化といったことを共同利用できることを目指してございます。
6ページを御覧いただければと思います。こちらは税制改正要望でございます。現在,私立学校につきましては,御案内のとおり,企業等からの学校法人への寄附は私学事業団を経由した受配者指定寄附金制度により,企業の寄附を全額損金算入できる制度がございます。この制度の充実・簡素化について2つのことの見直しを要望してございます。
右側,青色で塗られた部分を見ていただければと思いますけれども,1つ目は,一定要件を満たす学校法人は事業団を経由する手続を不要としまして,寄附者と学校法人間の手続のみで寄附を受けられるようにする見直しでございます。
2つ目は,現在,配付時に事業団と学校法人間で行われております個々の寄附についての審査につきまして,事前の包括的審査を実施することで,個々の配付時の審査を不要とする手続の簡素化の要望をしてございます。
この指定寄附金制度の充実や手続の簡素化によりまして,企業から私立学校への資金の流れが一層拡大し,私学の教育研究の振興が図られるようにしたいと考えておりまして,このような要望を行っておるところでございます。
私からは以上でございます。
【小路座長】 多分,専門分野の方たち皆さんお集まりなので,まだ要求要望の段階ですけれども,御覧いただくと,多分いろんな意見が出てくると思うんです。今日この意見を集約していると,ほかの議題が全くできなくなってしまうので,できますれば,座長としては,これはこのように聞きおいていただいて,もし何かありましたら事務局のほうにメールをいただければと思いますので,そのように取扱いをさせて御報告とさせていただければと思いますけども,よろしくお願いをいたします。
それでは,引き続きまして,議題2「教育の質の向上について」に移らせていただきたいと思います。この議題2では,産業構造の変化に対応する文理横断,また文理融合教育の推進と,また私立大学の附属病院の,これは今日初めてですけど,支援の在り方,新たな評価の在り方の2つのパートに分けて議論をさせていただければと思っております。
それでは,まず事務局より1つ目のパートについて御説明をお願いいたします。
なお,事務局の説明,そしてその後のヒアリングに関する御質問については,時間の関係上,意見交換の際にまとめてお願いしたいと思いますので,よろしくお願いいたします。では,よろしくお願いいたします。
【三木私学行政課長】 資料に基づいて御説明をさせていただきたいと思います。本日の議論は,教育研究の質の向上という幅広いテーマでございますので,本日御用意いたしましたのは,本日のヒアリングでお話しいただく内容に関連するデータや施策について御用意しておりますので,御説明をさせていただきます。
3ページ目を御覧ください。これは6月の第3回の本会議におきまして,経済産業省の産業人材政策課から御提供いただいた資料を再度掲載してございますけれども,今後の産業構造の転換を踏まえた2040年の労働需要といたしまして,事務や販売等の従事者が余剰し,多くの産業で研究者・技術者が不足傾向で,AIロボットの活用人材が不足するリスクが示されてございます。
次のページ,4ページでは,理系人材の不足と大卒文系人材の余剰が推計されてございます。
5ページ目も,これも第3回にも見ていただきましたけれども,現在,我が国の大学進学者のうち,理工系入学者の割合は諸外国よりも大幅に低い状況でございます。
6ページは,入学者の選考別の推移をまとめてございます。保健・その他が増加する一方で,工学・理学の入学者数は減少傾向にあります。ただ,これは2020年のデータでございますので,直近の最近の理系転換等々の進捗自体のデータまではこれに反映できていないという部分については御留意いただければと思っております。
7ページを御覧いただければと思います。大学入試共通テストにおいて,数①を験した生徒は約35万人,数②を受験した者は約30万人,それぞれ総受験者の中で75%,68%程度となってございます。
8ページ,次のトピックになりますけれども,ダブルメジャーやダブル・ディグリーに取り組む大学のデータでございます。分野横断し,複数専攻を進める大学は近年増加傾向にございまして,導入している大学は4割程度です。海外大学とのダブル・ディグリーを実施する大学は,下のほうのグラフですけれども,3割程度となってございます。
どんどんトピックが変わって恐縮ですけれども,9ページは,文部科学省の行っております数理・データサイエンス・AI教育プログラムの認定制度でございます。右下にブルーと紫色で書いてございますけれども,基礎的な能力を養成するリテラシーレベルと,実践的な能力を育成する応用基礎レベル,2つの認定を個々の大学の教育プログラムについて文部科学省が行っております。応用基礎レベルが360件ほど認定され,25万人が受講可能となっており,リテラシーレベルが590件ほど,55万人が受講可能となってございます。
10ページ,こちらは関連する文科省の施策でございますけれども,数理・データサイエンス・AIを活用した文理横断・融合教育の強化を目指した事業でございます。教育カリキュラムに数理・データサイエンス・AI教育プログラムを卒業要件に位置づける教育改革を進める大学を支援し,他大学への横展開を図ろうとするもので,来年度新規の予算要求を行っております。
どんどん進んで恐縮ですけれども,11ページを御覧いただければと思いますが,社会的ニーズの高い成長分野を牽引する大学や高専の機能強化を目指したものでございます。令和4年の補正でつくられました3,002億の基金の拡充を求めるものでございます。
具体的な内容は,真ん中の2つの真ん中から下に書いてあります2つの取組内容を御覧いただければと思いますけれども,1つ目は,成長分野への転換として,大規模大学を含めて文理横断の学部再編を対象にした支援枠を新設しようとするものでございます。2つ目は,高度情報専門人材の確保に向けまして,国公私立の高専で情報系分野を対象にしまして,基金による支援の受付期間を原則令和10年度まで延長しようとするものでございます。
次に,リカレント教育関係の資料でございます。13ページを御覧いただきまして,御案内のとおり,労働生産性を各国比較したものでございますが,仕事関連の成人の学習参加率の高い国ほど労働生産性が高い傾向にございます。
14ページでは,企業の人材投資と個人の学習についてまとめたものでございまして,日本企業の人材投資の低い状況や,個人で見た場合,社会学習・自己啓発を行っていない人の割合で見ると,日本は諸外国と比較しても学習啓発をする割合が低い状況が見てとれると思います。
15ページは,リカレント教育に係る現在の文科省の課題認識と対応の方向性をまとめているものでございます。
飛ばして恐縮ですけれども,16ページは,その関連施策といたしまして,文部科学省では,リスキリングにつきまして,令和6年度の補正予算を基に,これまで産学官の連携体制の構築やプログラム開発を行ってきておりますけれども,令和8年度予算におきましては,新規事業といたしまして,個人目線ではアドバンストエッセンシャルワーカーの養成,就職氷河期支援,企業の処遇改善や大学の全学的経営改革につながるような現下の課題に対応した教育プログラム開発の支援でありますとか,伴走支援の予算を要求してございます。
次に,プロジェクト型学習に関しての資料でございます。18ページでございますが,企業が大卒者に求める力としまして,「課題設定・解決能力」,「論理的思考力」,「創造力」,文系・理系の枠を超えた知識・教養を求めているという状況が分かるアンケート結果でございます。
19ページは,企業が考える教育改革の内容として,課題解決型の教育プログラムの充実や,IT教育やAIリテラシーの教育の推進を多く挙げられている状況がうかがえるアンケート結果でございます。
20ページでも,同じくこれはアンケート結果でございますけれども,オンラインの活用により,国内外の大学との連携事業を期待する企業の声が多いことが見てとれます。
最後の21ページでございますけれども,これまでの検討会で御紹介のありました大森委員のところの前橋国際大学でありますとか,金沢工業大学の実践事例につきまして,事務局のほうでまとめたものでございます。
私からの説明は以上でございます。よろしくお願いします。
【小路座長】 ありがとうございました。
それでは,先ほど申し上げましたように,引き続きヒアリングに移りたいと思います。ヒアリングを数名の方にやっていただいた後,御意見なり御質問等,討議をさせていただきたいと思います。では冒頭,まず早稲田大学の須賀副総長より御発表よろしくお願いいたします。
【須賀副総長】 早稲田大学の須賀でございます。よろしくお願いいたします。
資料の次のページをお願いいたします。このようなお題をいただきまして,早稲田大学に関係がありそうなところを大分まとめてまいりましたが,かなり分量がありますので,要点だけお話をして,あとは資料をお読みいただくという形で進めさせていただければと思います。
次の4ページのところに飛んでいただきたいと思います。最初は入学者選抜に関して,早稲田大学で,特に政治経済学部で数学を必須化したというところで,よくお話しいただくのですが,学部全体として必須化したのは政経学部のみで,ほかのところでは,それぞれの領域に応じて数学を必須化するといったようなことが進んでいることを見ていただければと思って,このような資料を作ってまいりました。
数学を必須にしなければいけなかった理由は,大学に入ってからの授業にきちんとついてこられるようにすることが極めて重要だということで,政治経済学部の場合には,政治学・経済学において,数的な思考,あるいは数量的な分析の方法が共通に取り入れられておりますので,それについてこられるような力を高校時代に養っておいていただきたいというところから必須化したということでございます。
そのほかの学部においては,データサイエンスがかなり広く使われるようになってまいりましたけれども,全ての領域で使うというところまでいっていませんので,いろんな方式で,それぞれの領域に応じた形で数学の必須化のようなものがなされております。
次のページを御覧ください。早稲田大学では,必ずしもこれまで数学を必須化してこなかったのですが,その代わり授業の中ではそういったものも必要だということから,Global Education Centerを利用いたしまして,全学に共通の基盤教育,リベラルアーツ教育,人間的力量育成の教育,言語教育といったものを提供してまいりました。とりわけ基盤教育のところが重要なものだと思っております。
次の6ページには,この基盤教育における5つの学びについて書かれております。日本語のほうですが,学術的文章の書き方を教えるアカデミック・ライティング,それから数学的思考の有無,それからデータ科学,そして情報,それから英語となっておりますが,英語のほうは発話を中心として,4人の学生に対して1人のチューターでそれを行うチュートリアル・イングリッシュと,それからAWADEと呼んでおりますが,Academic Writing and Discussion in Englishによって構成されていて,この5つが一般の社会に出たときにも,知的職業につく限りは役に立つであろうような基盤になるということで基盤教育と考えております。
その次,9ページを御覧ください。特に,ここで文理融合・文理横断という観点でどうしても柱になりますのがデータ科学の教育だろうと思います。データ科学につきましては,ここでお示ししているような形の,A群でデータ科学の入門的なもの,それからB群でそれに必要な数学やプログラミング等,それからC群で,それぞれの領域で必要な,もう少し上級のデータ科学,さらにD群では,データ科学を使う,あるいはデータサイエンティストとして仕事ができるようなレベルといったものを想定として考えております。
具体的なカリキュラム,科目の中身は,次の10ページにございます。データ科学のαからかδまでの4つでございますが,そのうちの2つまでが,後ほど述べます認定制度に関わってくるところでございます。
次のページを御覧いただきますと,どれくらいの学生が受講しているかというところで,1万8,000人以上の学生が履修をしております。1学年がおよそ9,000人ぐらいでございますので,1人が3科目ぐらい平均でデータ科学関連の科目を履修するということになります。
次のページ,12ページでは,データ科学の認定制度をつくろうということで,内容の紹介がございます。これが2021年に設置したものでございますが,その次のページに,文部科学省の認定制度との関連が書かれておりまして,データ科学のα,β,あるいは統計リテラシーα,βとなっていますが,統計リテラシーのほうは,データ科学を導入しないで学部独自で同じレベルのものを使う際に,統計リテラシーα,βと呼んでおります。これがリテラシー級に対応して,さらにそれにデータ科学のγ,δといったものを履修することによって,応用基礎レベルというところと対応するような形になっております。
さらに,C群の部分はそれぞれの学問領域に必要なデータ科学ということになっておりますが,このC群を履修することによって中級のレベルに達します。,中級のレベルは自分の専門とする学問領域でデータ科学が使えるレベルということになります。それ以上のものが上級(データサイエンティスト)ということでございます。
次の14ページには,データ科学認定者数が書かれております。2021年から24年までの4年間で,中級・上級の数を見ていただきますと,およそ600名です。600名ということは,1年当たり150名ですので,データ科学学部をつくったのと同程度の成果が出ていることを示す数字だと我々としては理解をしているところでございます。
さらに,それよりも上のレベルを,データ科学者をつくるためにということで,次のページには,データ科学研究力養成プログラムというものをつくって,これの提供を始めたところでございます。
その次のページには,データセンターが提供しているそれぞれのレベルの科目,これが学部生から4年生・大学院生,そして研究者・ポスドクまで,それぞれに対応する形で科目の提供がなされているということがお分かりいただけるかと思います。
同じようなことを今度はAIについてもやろうということで,先ほど基盤教育の中に情報という部門がありましたが,その情報の中に今度はAI関係のものをつくるということです。飛んでいただきまして24ページになりますが,24ページには,今年度から始めましたAIプログラミング基礎という1年生向けの科目が示されています。この後,その上級の科目も設置していくことになりますが,データ科学センターと同じような形で,AI研究教育センターを来年の4月から設置する予定で準備を進めているところでございます。
内容については飛ばさせていただき,28ページのところを御覧いただきますと,大学教育の出口といたしまして,アントレプレナー,起業というものがございますので,起業に関しましても科目を設置して,それを提供しています。中身を,ここに書いてありますので御覧いただければと思います。
ほとんど予定の7分が過ぎてしまいましたので,残りについてちょっとだけ触れさせていただきます。私立大学連盟で文理横断教育の推進検討プロジェクトというのを行いましたが,そこに私も参加させていただきました。私立大学はどこに困っているかということですが,情報が必修化されてきたことに関してです。情報をもしそれぞれの大学が試験科目に出さなければならないとなったら,それは可能なのかというと,大学内にはほとんどそういう人材はいないということで,大学入学共通テストを使わせていただかないと無理なのではないか。そのことがプロジェクトの中でも非常に重要なこととして議論されておりましたので,この場を借りてお伝えさせていただきました。
それから3番目としまして,リカレント教育,リスキリングの説明がございますが,これはほとんど述べる時間がございませんので,読んでいただきたいと思います。
それで,早稲田大学は,早稲田講義録といったものを日本語で学問を講義するというのが早稲田の特色としてほかとの比較が出てきた,比較率が出てきた部分でございます。それが創立から4年後に始まり,さらに,それをもって巡回講話をしたということで,日本中の若者に早稲田の講義を伝えるというようなことをやってまいりました。そこからずっとリカレント教育,あるいはエクステンションといったようなものが展開されてきたんだということをお伝えして,具体的な中身については見ていただくということで終わりにさせていただきます。どうもありがとうございました。
【小路座長】 ありがとうございました。短い時間で大変申し訳ございません。
では,次に昭和女子大学の井原副学長,引き続きまして今井所長より御発表をお願いいたします。
【井原副学長】 それでは,昭和女子大学からは,教育研究の質の向上に関してプロジェクト型学習について,その観点から主にお話をいたします。本日2名で御説明いたします。
次のスライドをお願いいたします。昭和女子大学は世田谷に位置しておりまして,創立105年を迎えた女子大学です。6学部15学科3研究科10専攻を用意しておりまして,在学生数はおよそ6,500名の中規模大学です。建学の精神といたしましては,「世の光となろう」を掲げております。
次お願いいたします。本学の目指す人材像をここに掲げましたが,10年ほど前に教育目標を見直しました。学習者中心の視点,それから学知,コンピテンシーということを意識して,このようなものを掲げております。キーワードとしては,グローバル社会,主体性,挑戦,協働,社会貢献,こういったところが必要だということで掲げました。
次お願いいたします。そのような人材像を育成するために何が必要かということで,研究組織であったり,それから環境であったり,方針であったり,いろんなことを考えましたが,学問的知識,スキル,それと実践力,これを相乗効果で掲げていかなければいけないだろうということから,近年ではグローバル教育,キャリア教育,それからプロジェクト型学習の価値を認めて有効性を生かそうと考えております。
グローバル教育は学生の送り出しだけでなく,それが実践,体験になるわけですが,キャンパスをグローバル化したり,それから留学生を受け入れていくということにも注力しておりますし,キャリアに関してはインターンシップで送り出すだけでなく,学内で社会人のお話を聞けるように社会人メンター制度というものを創設いたしました。本日,プロジェクト型学習については御説明いたします。
次から3つのスライドは,グローバル,キャリア,それから,その次がプロジェクト型学習というところの具体的なものとなっておりますので,割愛させていただきまして,その次のスライドに参ります。
これが仕組みであったり,方針であったり,具体的に整備をしているところですけれども,この中で専門の学科とプロジェクト型学習というところを今日は置きまして,全学で行っているものに関し,上の2つの全学共通教育センター,それから現代ビジネス研究所の考え方や取組を御紹介いたします。
次お願いいたします。私たちが考えたものが全学共通教育というもののコンセプトを明確にして,先ほど申し上げた人材育成に向かっていこうということですが,下の4点,これが重要であると考えました。ということで,教養教育,外国語を扱う全学共通教育センターにおいては,コンテンツよりもディシプリンを重視していこうということ。それは,その下に書いてある分野横断的な学びともありますけれども,学生が専門と合わせて文理にまたがる複数の学問体系・方法をきっちり身につけられるようにする,そういう仕組みをつくろうということです。
また,専門を異にする学生たちが学び合うという観点から,アクティブラーニングを重視し,1年から4年まで楔形で履修できるように設計いたしました。これは専門・教養,それから体験・実践の相乗効果を上げるために,らせん状で学生が学習していくことを意識した上でこのようにしたものです。
では,次お願いいたします。なぜ専門的な学知とプロジェクト型学習と両輪のようにしなければいけないのかということについて私たちが考えたことがこのスライドです。プロジェクト型学習のよさというものは,問い,アプローチ,推論,解答までの道筋が決まっていない。それを学生たちが考えていくというところにあるわけですが,問いの立て方やアプローチ,推論に関して,むやみに,やみくもに試みるのではなく,徒弟制でなく大学の意義として,ディシプリンを基にしてアカデミックな方法・内容を使って課題に取り組んでほしいということを考えたからです。そのためにはディシプリンが不可欠だろうと考え,全学共通教育をそのように設計したということです。このための仕掛けというのが,先ほど申し上げた4点ということになります。
次お願いいたします。プロジェクト型学習を推進してこのような力を身につけさせようということですが,学生に社会参加や社会貢献の意識を持たせ,何かをつくり出すことによって,よりよい社会に向けて創造できるという経験を積ませ,一人よりも大勢で協働できるということ,このような学習機会を提供することが重要だと考えております。
では,次のスライドから今井にスイッチいたします。
【今井所長】 ここからは,現代ビジネス研究所所長で教員の今井が御説明いたします。
本学のPBLの枠組みは2系統ございます。一つは学科専門学知とひもづく,CPやDPとひもづく形で実施するもので,24年度,140件展開いたしました。もう一つが,学外の企業や組織と連携し,全学科の学生が参加することができる社会実装型のPBLで,これは現代ビジネス研究所という学内組織が主導し支援しております。24年度現在,28件展開いたしました。延べ285名の学生が参加いたしました。
今年度展開中のプロジェクト一覧については巻末に記載いたしました。地域再生型のものとそれ以外のものを色分けし,提携先についても,また担当教員についても御覧いただけます。
次お願いします。プロジェクト学習の流れはこうなっております。交渉設計から成果報告まで,この一連のプロセスを現代ビジネス研究所,通称ビジ研がサポートいたします。プロジェクト実施期間は,短いものですと3か月程度,長いものは10年に及ぶものもあります。交渉設計の段階で気をつけていることは,企業,学生,大学,そして社会の4者にとってウィン・ウィンとなる価値を見いだせるかどうかでございます。したがいまして,例えば,女子大学生が1日店長を務めますといったような申し越しは,学生が主体的に学ぶ機会が薄いと考え,お断りしております。
この段階で顧問教員を決定いたします。審議を行うのは教員で構成するビジ研運営委員会,ここでも成功することが確実なプロジェクトのみならず,もしかすると失敗するかもしれない,あるいは軌道修正を余儀なくされるかもしれないというものも積極的に承認しています。これはレールの上を正しく歩けたねということではなくて,自分たちでレールを直す,あるいは仕切り直すという経験をしてほしいからです。
学生公募を経まして,実施に当たりましては,進行管理,予算,目標設定,広報,全て学生が行います。連携先との報・連・相も学生が行います。担当教員の役割は,これら全体を俯瞰しまして,PDCAが回っているか,学んだことや経験をきちんと継承・伝承できているかという質の面での指導に当たります。成果報告の段階では,連携先の担当者も含め全員が集まりまして,ベストプラクティスを共有し,また問題点の洗い出しを行います。
次お願いします。1例を御紹介いたします。
次お願いします。地元のアパレル企業,株式会社三恵との共同プロジェクトで,小学生が初めて着ける女性用下着の商品開発を行いました。2018年から22年まで延べ59名の学生が参加し,教員は5名が担当いたしました。企業側のニーズとしては,商品の訴求先であり購買層である女性が多く集うところということで,私どもとの連携を期待してくださいました。こちらのディシプリンとのスパイラルといたしましては,経営学,会計学,被服造形化学,メディア論,ジェンダー論との親和性を模索いたしました。
次お願いします。実際のプロジェクトはこのように進行しました。学生が量的調査として市場調査を地元の小中学校で行いました。また,市販品を使って性能を科学的に検証する実験も学内で行いました。こうしたことを経て,生地を選定し,サンプル案を作り,今度はそれを実際に地元の小学生の方に試着していただく質的調査,モニター調査を経て商品化いたしました。商品は,このように進んでいくわけで,実にこれは2年間かかっておりまして,株式会社三恵のプロたちの合格が出るまで何度も繰返しいたしました。
次のスライドをお願いします。これが学科の学知と,それから学生たちの活動とのリンクを示したものです。
次お願いします。学生たちの声です。社会人になって自分の仕事の位置関係が分かったなどの声があります。
次お願いします。こちらは教員がまとめた学習効果です。検証項目いずれにおいても,プロジェクト型学習に参加した学生のほうが,有意に効果があったことが示されました。
次お願いします。次のスライドは連携先担当者の声です。大きく分けて3つあります。学生との連携でありながら,自社の若手の人材育成につながったというお声,2番目は,大学との点と点でのパートナーシップで始まったものが,今や地元自治体や小中学校,経済界ともつながった面の活動に発展したというもの。最後が,営利企業ですが,社会的には非常に高い活動に参加しているという実感を社員たちが感じることができたというお声でした。これらは最初の目標の共有がうまくいったことによるコレクティブインパクトではないかと考えております。
私からは以上です。
【小路座長】 井原さん,今井さん,ありがとうございました。今井さんは多分海外から御参加いただいたのではないかと思いますけど,ありがとうございました。
【今井所長】 ありがとうございました。
【小路座長】 それでは,時間が過ぎておりますので,引き続きということで,玉川大学の永井学部長より御発表をお願いいたします。
【永井学部長】 玉川大学の永井でございます。オンラインで失礼いたします。本日は,本学部のダブルフィールド制の取組についてお話をさせていただこうと思います。
次のページに上げましたような流れで資料を作っております。主には,学部単位のことでございますので,具体的に学部のカリキュラムの中で,どのようにカリキュラムを設計して,具体的に授業設計をどのようにしたかという,その現場の中で見えてきた課題についてお話をさせていただければと思います。幾つかお話しできない点もあるかと思いますけれども,その辺りはまた時間のあるときに見ていただけるとありがたく存じます。
次に,本学の概要についてまとめました。本学は小原國芳が1929年に創立した玉川学園が母体でございます。現在,大学は8つの学部と7つの研究科で構成されております。6,000人規模の東京郊外にある中規模大学でございます。
本学が目指すところは一貫いたしまして,次のページにございますように,「全人教育」でございます。人格的に調和の取れたものを伸ばすという教育でございます。その中で大事にしているものは,創立当初から「労作」と呼ばれる体験学習が何よりも大切にされているものとなっております。
その大学にありまして,私たちの学部についても少し御紹介できればと思い,次のページにまとめました。本学部は2007年度からスタートした学部でございまして,もうすぐ20年目を迎えます。今日御紹介するダブルフィールド制は2年前から導入いたしまして,現在3期目でございます。今の3年生まででして,まだ完成していない中途の状態での御報告になるということを御了承いただければと思います。我々のビジョンでございますが,もうこれは玉川大学の教育理念をぎゅっと凝縮したような全人教育,そして体験的学習を主軸とした教育方針を持っております。
続きまして,2年前から導入しましたダブルフィールド制についてです。こちらは4年間の流れ,学部の流れを右の図に示させていただきました。ダブルフィールド制についてですが,もしかしたら皆様が期待されているものと少しずれているかもしれません。文学部が理工学部と融合して何かをするという学部間融合ではありませんで,リベラルアーツ学部でございますので,学部内に様々な分野の教員がおります。それら学部で学べる分野を4つのフィールドに分け,そしてそのフィールドの中を学生が2つ任意に選んで,その2つを関連させながら,意識しながら学んでいくというカリキュラムになっております。
2023年より前はメジャー制というのを敷いておりまして,7つのメジャー,理系から文系,様々なメジャーの中を幅広く学び,そしてその中から1つ2つを選んで深く追究していくというカリキュラムを取っておりましたが,そういうカリキュラムですと,学際的に学ぶ,学際的な視野を持つとか,文理融合した授業を開くとかということがとても難しいと我々は反省いたしまして,それで,そういった学生に学際的な意識づけをするという意味でも,カリキュラムの形からそういうものに切り替えたほうがいいのではないかと考えてこういうカリキュラムにいたしました。
次のページからは,具体的に,この文理融合を学生に意識させるために,現場でどのような授業設計,どのような課題を感じているかというところについてお話をさせていただければと思います。
まず学際的な学び,そういう意識を学生に定着させたいと考えておりますが,1年生の段階からではとても難しいということを我々の学部では考えております。そのため,1年生のときには,その準備段階として多様な学問分野を意識するような授業を設定して,そこから学び始めるとしております。そして,次のページにございますような他分野との融合を意識するような授業は,2年生から取得していくような形で考えております。
今日,一つの事例として御紹介するのは,ポピュラー音楽と情報学を融合した授業の実践をお聞きいただこうと思い,用意いたしました。こちらの科目の一つの特徴は,ポピュラー音楽の研究者である教員と,教育工学を専門とする教員がもともと共同研究をしておりました。その共同研究をしている地盤のある2人が授業をつくったらどうなるかというところからお願いをしてやっていただきました。
あと,もう一つの特徴としては,この授業の中で培われた力が将来的なキャリアとどのように接続するのかということを授業の中で意識づけるということを狙いの一つとしてやっていただくというところがポイントになっております。そして,具体的にどのような形で授業が進んだかというところが次のページになります。
軸となりますのはラジオ番組の制作になります。手順としては左側の枠に順を追って示してございます。ラジオ番組と申しましても,楽しい話をするとか,すてきな音楽をかけるという番組ではなくて,自分たちの身近にある問題,課題を自分たちで集めてくる。アンケートであるとか様々な手法で取り出してくる。そしてそれを,データ分析をして,その背景であるとか要因であるとか,あるいはそれを緩和するためにはどういう対策が必要かというようなことをそれぞれが考える。そして,それを自分たちで台本化して,電子化した音声をつけて,そこに音楽をつけるというデジタル的な制作をする。まず,社会学的な課題から出発して,データサイエンス的な取組をして,デジタル制作をするという幾つかのものを融合した授業になっております。
右側が学生のコメントになっております。ほとんど私たちの学部を志望してくるのは文系学生でありますが,この授業は容易に取り組むことができた。授業設計によっては難しさを感じないで取り組むことができるということが分かりました。
次のページ,そしてその次のページは,そのほか本学部で取り組んでおります文理融合の取組になります。御覧いただければと思います。
そして最後のページに,我々が現場で感じている課題,授業設計等の中で感じている課題を最後にまとめさせていただきました。3点ございます。
一つは,非常に,こういった学びを学生に定着させていく上では,カリキュラム設計が何より大事であるということ。しかし,そのカリキュラム設計には,そちらに4点ほど挙げてありますような背景があり,とても難しいものがある。カリキュラムだけでなく授業を構築することもとても難しいということを感じております。
それとの関わりもございますが,教員の側にも課題がございまして,専門分野,細分化した中で研究をしている教員が一面においては学際的他分野と関わる,社会と関わるというところに関しては,教員のほうのトレーニングも必要であるということは感じておりまして,こうしたところへの支援をいただけるととてもありがたいなと思っております。
あと,先ほど最初の冒頭にもありましたように,社会,企業はこうしたPBL型の学習を積んだ学生を求めているというところ,承知いたしましたが,我々の学部としましては,就職活動の段階でどうしても専門性のなさを指摘されて落ち込む学生がとても多くございます。こういった学生に自分たちの学びをきちんと認識させて,いかにキャリアとして重要なのかということを意識させたキャリア指導がこれからも大事になっていくと考えております。
急ぎ足になりましたけれども,現場で抱えておりますいろいろな課題につきましてお聞きいただきました。ここまでで,私の発表とさせていただきます。ありがとうございました。
【小路座長】 ありがとうございました。それでは,討議をする前の最後になりますけど,放送大学学園の髙橋理事長と加藤副学長より御発表お願いいたします。
【髙橋理事長】 理事長の髙橋です。本日はこのような機会を設けていただき誠にありがとうございます。次のスライドは目次ですので,さっと見ていただいてその次のスライドをお願いいたします。
放送大学の概要を簡単に御説明します。本学は,放送大学学園法により設置されており,他大学との連携による日本の大学教育の改善を設立目的に掲げております。スライド右上ですが,授業科目は文理幅広く400科目以上を開講し全国の国公私立大学等の実績ある教員の方々の幅広い御協力で,あらゆるレベルの質の高い一流の授業の提供が可能となっております。
左下ですが,多様な授業形態のうち,放送事業,オンライン授業はインターネットで全ての授業の学習,単位認定試験が完結して,時間と場所にとらわれない柔軟な学びが可能となっております。
そして右下ですが,全都道府県に学習センターが設置されております。このうち19センターは,各地域の大学等で形成されている大学等連携推進法人を含むコンソーシアム等のメンバーになっているところです。
次ページ以降の取組については,教務担当の加藤副学長から御説明いたしますので,次のスライドをお願いします。
【加藤副学長】 それでは,ここからは加藤より説明申し上げます。
放送大学は国内の国公立・私立大学417校と単位互換協定を結んでおります。年間4,000人ほどの学生さんが特別聴講学生として本学の授業を受講しております。しかし,大学設置基準の授業科目自ら開設の原則の下,本学の授業の利用には限度があるというのが現状でございます。
今回,本検討会議中間まとめで御提言いただきました,放送大学との連携の具体的な推進方策につきまして,放送大学が私立大学・短期大学にどのような形でお役に立てるのか,検討いたしました。
次のページをお願いいたします。教育課程等に係る特例制度を活用し,私立大学・短期大学と放送大学のそれぞれの強みを生かして連携することで教育の高度化を目指します。具体的には,私立大学・短期大学の強みを持つ分野であるとか,地域との連携といったところに,放送大学の幅広い開設科目ですとか,時間と場所の制約なくできる教育を組み合わせることで,私立大学・短期大学が,強みを持つ専門分野に資源を集中しつつ,自学だけではカバーできない情報分野等,新たなニーズへの対応,そういった教育の高度化を図れるのではないかと考えます。
活用の例を4つ御提案申し上げます。最初の3つの例では,特例制度の活用により放送大学を利用する部分については,自学での科目の開設を行わないことを想定しております。
御覧の例1では,社会の情報化に伴う,デジタル人材の需要への対応ということでスキームをつくっております。人文・社会科学等の専門分野に強みを持つ大学が特例制度を活用し,情報関連科目の開設や,そのための組織改編などを行わなくても,放送大学と連携して,数理・データサイエンス・AIの基礎的な知識と技術を持った人材の育成が可能になる,そういったことになるのではないかと考えております。
また,放送大学の授業の活用により,学生,教員の双方に生まれる時間を生かして,グループワークや実践的な演習・実習などを深めることで,各大学が強みを持つ分野における教育の一層の高度化が期待できます。
次のページをお願いいたします。2番目の例は,地域産業人材の育成への対応となります。私立大学・短期大学による地域における実践的な学習プログラムを放送大学の幅広い教養科目や理工系科目等と組み合わせます。各大学で供与される専門知識や実践を通じた体験を,本学が提供する基礎的な科目の学習を通じて学生自身が体系化できるようになり,幅広い視野を持ち,地域を牽引できる人材の育成につながるものと考えます。放送大学の授業の活用により,学生,教員双方に生まれる時間を生かした新たな取組が可能になることは,さきの例と同様です。
次のページお願いいたします。3番目の例は,グローバル化に伴う多言語対応人材の育成への対応です。放送大学の語学科目を基礎科目として取り入れていただき,これに各大学の必要に応じた発展的な授業,例えば専門性を考慮した少人数による実践的な対面授業などを組み合わせることで,教育の高度化を図るといったことなどが考えられます。
次のページをお願いいたします。4番目の例は,社会人を対象とする地域のニーズに合ったリカレント教育プログラムです。放送大学の科目群履修認証制度や,資格に関連した座学科目を御活用いただくことで,地域社会の課題解決のためのリカレント教育プログラムを提供しやすくなるのではと考えたところです。
最後のまとめは髙橋理事長より行わせていただきます。次のページをお願いいたします。
【髙橋理事長】 これまで説明したように,教育課程等に係る特例制度の活用により,例えば,学生にとっては時間割の自由度の向上,幅広い知識の習得など,教学面では,教員のカリキュラムマネジメントの負担軽減など,また経営面では,大学のブランド力の向上や経営改革の推進,こういった様々な効果が期待できるのではないかと思います。
このような特例制度を積極的に活用するためには,まず,小規模でも地域に不可欠な私立大学などが申請しやすいように,手続や要件等への配慮が重要と考えます。また,こういった取組を後押しするために,国による財政支援もぜひ御検討いただきたいと考えております。
各大学がこの特例制度の活用を計画する際には,学生に授業料等の追加の経済的負担を生じさせない仕組み,あわせて,学生をサポートする学修支援体制や質保証体制の考え方を整理する,こういったことも必要ではないかと思います。
本日は説明を省略いたしましたが,これに関連する資料を巻末に添付しておりますので,御参照いただければと思います。
冒頭御説明いたしました放送大学の設立目的を踏まえ,高等教育の地域アクセス確保などの重要課題に,教学・経営系一体となって今後も取り組んでまいりたいと思いますので,どうぞ御理解,御支援を賜りたいと思います。本日は御清聴,誠にありがとうございました。
【小路座長】 大変御丁寧な説明をいただきましてありがとうございました。大変参考になりました。
それでは,意見交換に移りたいと思います。3時半ぐらいまで30分強ということでやらせていただければと思います。御覧いただいたようにかなりのボリュームがございますので,ポイントを絞ってということで御発言いただくと大変ありがたく存じます。大きく,産業構造の変化に対応する文理横断・文理融合教育の推進と,それからプロジェクト型学習の推進等の手厚い教育指導体制の構築ということになります。
意見交換に先立ちまして,資料10が,この下にA4縦のワード資料がありますので,これを御覧いただければと思います。意見交換,あるいは討議のポイントを,実は意見交換に先立ちまして,伊藤委員と大森委員,平子委員にまとめていただきました。この中をさっと御覧いただきまして,できますれば少し,非常にきれいにまとめて,きれいというか簡潔に要領よくポイントをまとめていただいていますので,御覧いただきながら,これに沿ってでも結構ですし,これ以外でも結構ですけれども,時間も30分しかございませんので,意見交換をさせていただき,また御質問があれば御質問も併せて出していただければと思いますので,よろしくお願いいたします。
これは皆さん御覧になっていただいていますよね。事前に御覧いただいているということを前提に,御質問,御意見ございましたら,挙手をいただきましてお願いいたします。いかがでしょうか。石川さん。
【石川委員】 いろいろと御説明ありがとうございます。この資料10も含めてですけれども,今日御発言の中で社会と大学の関係をうまく密接にしていこうというお話と,それから大学に入ったときの基礎学力のところをどうしていくかという話があったと。私は後者の基礎学力のところに関して意見を述べたいと思っています。
基礎学力のところは,早稲田の須賀先生から入試に数学を入れるというお話があったんですけど,入試で何を問いただして,大学で何をやるかというところのうまい接続がまだできていないのではないかと思っていまして,そこを,うまい接続をどうしたらよいかというのをもう少し,例えば資料10の中にも組み込んでいただいて。
具体的に言いますと,共通テストをどうにか改良して,文系の中の数学とか,文系の中の情報というのは,競争試験じゃなくても,資格試験でいいと思うんですよね。ところが,共通テストは資格試験じゃなくて競争試験になりがちなので,資格試験のようなもの,これだけは覚えて入ってくださいというような入試をやると。
それから,年内入試との兼ね合いがあって,年内入試が問いただしている能力と,それから共通テストが問いただしている能力というのに少しずれがありますので,これはずれていたほうがいいとは思うんですが,年内入試向けの共通テストのようなものがあるといいのではないかなという気がいたします。
私が前に御説明しましたけど,入試のときの成績と大学卒業時,社会人になるときの成績はあまり相関がないです。その代わり,資格試験,ある程度の基礎学力がないとその相関がない領域に到達しないので,基礎学力があれば,そこから先は別な視点で入試をするといったことが今日お話しになったような,大学と社会との関係に対して一番いい入り口を設定できるのではないかと思っています。ぜひとも,須賀先生にその点の観点で御発言いただけるとありがたいと思います。
【小路座長】 須賀先生,お願いします。
【須賀副総長】 私が数学を導入した際に一番考えておりましたのは,先ほど若干申し上げましたが,政治学と経済学で同じような数理的な手法を使わざるを得なくなった。それまでに学部の中でも十分に数学関係の科目は提供していたんですが,数学を忘れて入学してきた子に対しては,幾ら頑張って教えてあげてもなかなか合格点に達しないということがあったので,入試に入れることによって,こういったことが大学に入ったら必要だということを教えるようにした。
ただ,それだけで終わっているわけではなくて,むしろ共通テストは,最低限の学力があるかどうかということを見るため,つまり,大学に入って授業についてこられる学力があればいい。むしろ我々としては,それぞれの学部の中に入ってから,政治学,経済学とあるんですが,そういうところで学ぶものに対してどれくらい親近感を持っているかというところで,それまでの2月のテストのところでは,記述式の問題を出しております。
最初にサンプル問題を作ったときには,日本語のほうは政治哲学の文章を読むということで,それで記述式で回答いただく。英語のほうの問題は,数量分析とか統計学の関連の文章を読んでもらうというようなことをやりました。つまり,両方とも大学に入ってから,本当に自分が読むであろうような文章が,どれぐらい興味を持って入試で対応できるかというようなことを考えたというところです。
ですから,今度は大学に入った後に,先ほどおっしゃったような,大学を卒業した後に自分が何をするのかというところまできちんと考えて科目を履修してくれるとなれば,卒業後まで見据えたということになるだろうと思いますが,まだそこまでの準備は我々のほうでまだできておりません。
以上です。
【小路座長】 それでは,せっかくですので,伊藤先生,大森先生,平子さん,まとめていただきましたので,ワンコメントでなくてもいいですけども,御発言いかがでしょうか。伊藤先生から。
【伊藤委員】 これは,大きな意味で私立大学は日本社会全体の発展にどのように寄与していくかという枠組みで,私だけの意見ではなく,皆様の意見がまとまっているものであります。急激に進む少子化,それから急激に進むデジタル化,その中で人間らしく,人間が判断していく部分をどうやって確保していき,また人間の創造力に基づく様々な企業の発展を支えていくかということの中において,今,産業構造的に単純に言ってしまえば,経産省の試算では,理系人材がこれだけ足りなくなっていくという産業界と,今,我々私立大学を中心に出しているメジャーとのミスマッチが生じるということです。
それは私もよく理解していて,実際そうなる可能性が高いと思っているんですけども,社会の動きはもっと早く,また予想外の展開を,生成AIがさらに進んだときにどうなるかということを見せるので,最終的には学部ごとに,かちかちっと身動きの取れない体制を取るよりも,いかに柔軟に,先ほど石川委員がおっしゃったように,いかに柔軟に大学に入ってきた人たちを育てるかという体制をつくっていかなければいけないと。
さらには,要はそこで学んだことがすぐ,もう陳腐化するというのはよくあることですので,デジタルといったものに集中すると。学び続ける力をどうやってつけていくのかという観点で,大きな視点で議論がされたというところであります。あくまでも私立大学の全体に対する貢献ということを考えたときに,国立大学もあり,公立大学もあるという中において,今日御発表いただきました様々な新しい取組,特徴的な取組というのは,本当に工夫だと実感をしたところでございます。
ですから,そのような工夫をしやすい仕組みをつくっていき,特徴のあるものがどんどん出てくる。そのときに,教員の都合ではなく,学生たちの将来の発展のためのプログラムをつくっていくために,ダブル・ディグリーとかいろいろ書いてありますけど,私はそこら辺の柔軟化を率先して進めていくのが私立大学の役目じゃないかなと思って,もう少し,細かいことじゃないですが,大きい意味では,これを皆さんの意見も含めて,自分の意見も含めて読んだところでございます。
【小路座長】 ありがとうございます。大森先生,いかがですか。
【大森委員】 大森でございます。今日はオンラインで失礼いたします。ありがとうございます。
今,伊藤先生から,大きな視点からお話をいただきましたので,私は少し具体的なところですけれども,この数理・データサイエンス・AIといったようなものを全ての学生が学んでいけるような環境というのは,これから絶対必要だなという認識には立っているというところです。
例えば本学でも,超文系小規模大学ですけど,今10単位,卒業までに必修で数理・データサイエンス・AIを受けないと卒業できないというような設定にしています。これは学生たちのその先の未来の幸せということを考えたときに,この社会にどういう力が必要かということで。恐らく全ての大学で,例えば英語という授業はほぼ全部やっていると思うんですけれども,それと同じようなことになってくると。
ただそのときに,本学はたまたま情報系のコースを持っていて,教員がそろっていましたけれども,本当に文系の関わっているような大学さんだと,情報の先生が1人とか,あるいはいないとか,そういった大学もある中で,そういった大学でもしっかりというところに支援をどうしていくかということ。それから,今日すばらしい御発表をいただいた放送大学さんとの連携,そういったことができていくと,そういう未来もつくっていけるんじゃないかということが一つです。
同じようなことで,地域に出ていって,あるいはそのPBLを展開するというのは,これからの学生たちにとって,もう理論だけでは生きていけない時代ですから,理論と実践を往還しながら学んでいく。これも,先ほど本当に昭和女子大学さん,すばらしい御発表がありましたけれども,相当にしっかりと手をかけてされていらっしゃる。そういった体制を組んでいこうとしたときに,どこの大学に行ったかでそれが,体験格差じゃないですけれども,そういうことじゃなくて,多くの大学でそれができていくということが望ましいときにと考えています。
今日は私学のことを話し合う会議体なので,私学に対して特にそういうサポートや体制や仕組みをつくっていくのは大事だよねというお話で,これはまとめさせていただいていますけれども,これは実は国公立でも同じことになる,日本全体でも取り組まなければいけないことだろうなという理解をしています。
あと,玉川大学さんのお話に質問があったんですけど,また,もし時間があったら後ほど手を挙げさせていただきます。
以上です。
【小路座長】 ありがとうございました。それでは平子さん,お願いします。
【平子座長代理】 ありがとうございます。今でさえ日本は少子高齢化,人手不足という難問に立ち向かっている中で,2040年の時点での職種間のミスマッチの予測が本当なら,日本の国際競争力はもっと落ちてしまうんのではないかと考えています。このミスマッチをどのように防ぐのかという観点が今の大学の教育とか研究の出発点ではないかなと考えています。
伊藤先生もおっしゃいましたように,AIは日進月歩の勢いで進化しておりますが,量子コンピューターが離陸しますと,AIの進歩の速度は今の比ではないと言われています。そのような状況で,人間とAIがどう共存していくのかがこれからの大きな課題になってきます。
例えばアメリカイリノイ州では大学と産業と地域の自治体が連携して例えば量子エコシステムを達成するためにどのような人材を育成すればいいのかという具体的テーマを掲げて取り組んでいます。そのために,イリノイ州にある大学はリスキリング,アップスキリングのための教育をリードしています。
ほとんどの大学が企業連携オフィスを持ち,逆に多くの企業も大学連携オフィスを持っていますので,産学連携の仕組みが既に整っているわけです。最終目的が地域住民の教育やウエルビーイングの向上で,大学は,学生とか教師の利益だけではなくて,人材と企業を地域に誘致することに貢献し,そこを拠点にする企業は他の企業と連携して雇用機会を提供することで,その地域のアイデンティティーや価値を高めていくことに貢献しているという話をつい最近聞きました。
ですので,本日いろいろなお話をお聞きする中で,パートナーシップを組むのは,それが何のためなのかという最終目的を共有することが非常に重要だということを共有させていただきます。
以上です。
【小路座長】 ありがとうございました。伊藤先生。
【伊藤委員】 伊藤です。先ほどのペーパーの中に私立大学附属病院の支援の在り方というのが書いてあるんですけども,これに関しましては,特に地域において,全体として医師の4割を私立大学が輩出しているということであって,そうなったときに地域に医療体制がつくっていけるという意味で,私立大学の役割は非常に大きい。
その一方で,機能としては,例えば最先端の医療をひたすら追求する私立大学も,ひたすらじゃないですね,追求をする,急性期病院を有する私立大学もありますので,そこら辺の役割を一つ一つしっかりと見ながらも,結果的には,私たち最終的には自分の家族の健康,友人の健康というのは非常に大事になってきますので,ここのところで私立大学も国立大学と同じようにしっかりと応援されていく,ただ単に支援してくださいというか,応援されていく仕組みをつくらないと,日本全体で今後厳しくなっていくんじゃないかなと感じているところです。これも付言させていただきます。
【小路座長】 ありがとうございます。附属病院についてまた,次の項目で。
【伊藤委員】 この後の項目に入って。
【小路座長】 はい,させていただきます。
それでは,大森先生,さっき御質問がおありになるとおっしゃっておりましたので,よろしかったらどうぞ。
【大森委員】 ありがとうございます。本当にそれぞれすばらしい御発表を聞かせていただいて,ありがとうございます。
玉川大学の取組で,永井学部長先生にお尋ねをしたい。細かい御質問になろうかと思います。ページでいうと資料の5ページというページ番号がついているところの仕組みの部分ですけれども,何点かあるんですが,御質問申し上げたいポイントは,専門性とリベラルアーツみたいなことを最後にお話しいただいたそこのポイントになるんですが,一つ仕組みとして,このダブルフィールドを選択するときに,例えばヒューマンとソサエティーを選択しようと思った学生さんということになると思うんですが,例えば仮にヒューマンとソサエティーばかりが選択されるというようなことが起こったときに,定員みたいなことがどうなのか,アカデミックアドバイスみたいなことで学生の関心と選択みたいなことがうまくされているのかということが1点。
それから,その選んだフィールドの中で,その先にリベラルアーツセミナーがありますけれども,このセミナーは比較的専門性みたいなことを研究としてされていくのかということ。そして最後におっしゃった出口のところで,今求められているものは,まさにこういう学びだと私は理解しているんですけど,学生さんの出口はかなり専門の知識や技能を求められるような就職先が多くて,そこでそごが生じてしまっているという,その現実のところをもう少し教えていただければなと思いました。3点でございます。お願いします。
【小路座長】 それでは,玉川大学さんから。お願いいたします。
【永井学部長】 御質問いただきましてありがとうございます。まず,1つ目の定員に関してですけれども,こちらに関しては,今まで幸いにも偏るということはあまりありませんでした。あと,偏っていたとすると,これまでは理系分野,理系メジャーが,ITメジャーがすごく少なかったんですけれども,その分,開いている科目も少なかったので,志望者がいなくても,そんなに履修上のことで問題は起きなかったということがあります。
ただ,ダブルメジャーにしてから,スティームメジャーの履修をする学生が急増しておりまして,そうなってくると,今,情報とか環境とかという教員の数が非常に少ないので,これからどうしていこうかというところを今ちょうど悩んでいるところでございます。
1年生のときに全ての分野をひとまず学ぶということがあるので,あまりどこかに偏るということは,幸いにも今のところはないというところですが,御指摘のとおり,何かアドバイスシステムを取ったりとかということも,確かにそういうところも取り入れたら履修上も問題が少ないかもしれないなということは今,気づかせていただきました。
2つ目に関してですけれども,今まだ3年生ですので,まだ卒業プロジェクトまでには進んでいないですけれども,実は私どもは卒業論文と言わずにプロジェクトと呼んでおりまして,例えばそれは,最後のほうのページでちょっとだけ触れました,地域に出ていく活動ですけれども,例えばそういう地域のために何かをするとか,何かを構築するとか,例えばその地域の子供の何かのためにITで何かを作るとか,というようなことも卒業プロジェクトにしていいということになっておりまして。
なので,できればこの3年生からは,そういう専門性も深めてほしいけれども,4年生までの授業で培ったようなものを利用して,例えば地域の問題を解決する何かをつくる,何かを研究するというような,いろいろな分野を融合した,卒業までの研究をしてもらえたらいいなと今のところそう指導していく予定でおります。
3つ目の就職に関するところでございますけれども,これは我々の日頃のキャリア指導も十分ではないというところがあります。なかなかそういう,もしかしたら企業の方は,そういう課題解決型の課題を出して採用されているのかもしれませんけれども,どうもそういうところにまだまだ食いついていけない学生が多いとも言えるかもしれません。多い少ないという量は取っておりませんけれども,なかなか専門的なテストであったり,そういうところをクリアできなかったりとか,そういうようなことはよく聞いております。
【小路座長】 ありがとうございました。大森先生,よろしいでしょうか。
【大森委員】 ありがとうございます。
【小路座長】 それでは,あとお二方ぐらいにして,次に移りたいと思います。田村さん,どうぞ。
【田村委員】 田村です。放送大学のお話を聞きまして,これはまさに私立大学もそうだと思うんですが,公立大学にとっても非常にありがたいというか,参考にすべきだなと思いました。直接放送大学に対する質問ではないですが,そこで小規模大学にとってこういう支援が必要であると。翻ってこの会議では,今まで大規模大学とか中規模大学のリーディングプロジェクト,いろんな事例を勉強させていただいているんですが,私立大学でも小規模大学がいっぱいありますよね。あと特に大都市部とか単科系大学と。そういう話があまりこれまで聞いていなくて。これは今後そういう話があるのかどうか,そこを確認したかったので,この際。要は,すばらしいところのプロジェクトを勉強させていただいているんですが,むしろ数としては,かなりの割合を占める小規模なところのいろんな声とか取組とか,そういうことは今後学ぶ機会があるんでしょうかという質問です。
【小路座長】 それは事務局のほうから。
【三木私学行政課長】 正直申し上げまして,十分そこまで考えが及んでいなかったので,今日の御指摘を踏まえて,今後の議論の中で考えていきたいと思います。
【小路座長】 全国大体650ぐらいですかね,私学はそのぐらいあるので,何かもし声を聞くのだったら,地方と都市部と整理をしてお話を聞くような形にされたほうがよろしいかなと。村瀬さん,どうぞ。
【村瀬委員】 少し観点が違うかもしれませんが,ちょうどこの令和8年度の私学の概算要求の中でも,地域・地方の大学についての予算も大変大きく言っていただいたということで感謝申し上げておりますが,地域の私立大学の人材貢献は決してエッセンシャルワーカーを配置するだけとか,地方の産業の人材輩出という,ある意味,現状維持的なものだけでなく,実は地域もいろんな,地域でいろいろと特色のある経済圏をつくっていく,産業脱皮をしていくというようなことをやっておりますので。
できれば,これは私どもも中部地域の大学,私学の学長先生方からお聞きしますと,我々金融機関ですと,財務省に東海財務局があったり,経産省ですと中部経済産業局という地方部局が全国10ぐらいあって,地域のことは画一ではないと思いますので,できればぜひ文科省の皆さんにも,地方のことを知ってもらえる窓口をと思っておるんですが,私自身,今さら組織を肥大化して,文科省さんが地方部局をつくって組織を肥大化するというのも現実的ではないと思うんですが。ただ地域は決して東京で動いているほど画一的ではないと思っておりますので,ぜひ地域の声は現場で見ていただくようなことをぜひともお願いしたいと思っております。
【小路座長】 ありがとうございます。御意見として承っておきます。
最後,もうお一方ぐらいいらっしゃったらと思いますけど,手を挙げていらっしゃるのは。
【両角委員】 両角です。オンラインです。大丈夫でしょうか。
【小路座長】 両角さん,どうぞ。
【両角委員】 ありがとうございます。両角です。貴重なお話ありがとうございました。本当にどれもすばらしい取組だなと思って聞いておりました。今の話と関連してくるのかもしれないですが,質の向上といったときにもちろん各大学でディプロマポリシーがあってカリキュラムを組んでされているのですけれど,大学間でも,もう少し連携していくというような,そういう必要性のようなところはどのように感じていらっしゃるのかなというのを,もし差し支えなければ,それぞれの事例について,一言ずつもしあればお聞きできればと思いました。
以上です。
【小路座長】 それでは,全員というわけにいきませんので,今の御質問について,須賀先生。
【須賀副総長】 データ科学の認定制度のようなものをつくったと申し上げましたが,データ科学を東京女子大に提供しておりまして,なぜそういうことができているかというと,全てがオンデマンドの形で授業を提供するということができているということから,そのような他大への展開を考えております。その中で要望があったのは,認定制度のようなものを学内以外で使えないかということで,デジタルバッジのようなものを発行するということをやっております。企業さんにも同じような形で提供していて,そういう,他大や企業との連携というのは,データ科学のような領域でやるとやりやすいのかなという印象を持っております。
以上です。
【小路座長】 ありがとうございました。どうぞ。
【髙橋理事長】 先ほどの説明と少し重複しますが,放送大学が互換協定を結んでいる大学は全国において非常に多く,年々増えてきています。
【小路座長】 ダブル・ディグリーということ。
【髙橋理事長】 単位互換協定です。しかしながら,履修学生数はむしろ微減していて,協定を結んでも各大学等うまく使い切れていないというのが実情です。さきほど御説明したように,自ら開設といった一種の制限があり,そこがネックになっている面があるのかと思います。この点については,現在,文科省において弾力化に向けていろいろと検討いただいていると伺っておりますので,ぜひ制度を使いやすくすることをお願いしたいと思います。私どもとしては使いやすさをPRしていくことによって,大学間の連携が進む余地は非常に大きいと思っておりますので,しっかり取り組んでいきたいと思っているところです。
【小路座長】 ありがとうございました。井原さん,どうぞ。
【井原副学長】 先ほど伊藤先生からのお話にもあったんですけれども,大学連携ということに関して,私どものほうでいろいろ考えてきているんですけれども,4年間で学位取得を目指す,そういった学生を成長させるだけでなく,社会に出てからの人たちの教育機関でもあるべきであると。柔軟に急速な社会変化に対応するという観点から,マイクロクレデンシャルについては真剣に考えております。
そういったことを考えたときに,設置基準上の問題とか様々にありますけれども,一大学で,いろいろな科目,必要な科目,それから望ましい科目を用意して,教員まで用意していたら,なかなか本当に大変なところがありまして。マイクロクレデンシャルの推進に当たっても,大学間連携が柔軟に進めば,よりうまくいくのではないかと考えているところです。
【小路座長】 ありがとうございました。それでは,最後に尾花さん,挙手をされていますので,尾花さん,どうぞ。
【尾花委員】 今日のテーマとそれるかも分からないですけれども,地方での理工系人材の育成と確保について提案させていただければと思います。
地方都市には世界的にも需要があって,高い技術を持ったグローバルニッチ企業,また大手企業の工場や併設される研究機関などが存在しているところも多くなっています。例えば和歌山市は製造業が盛んな地域ですけど,繊維の分野ではホールガーメントといわれるような無縫製横編機,つなぎ目のない編機ですけれども,世界で初めて開発した機械メーカー,また化学工業でも高い技術が求められる航空機に使用される製品を市内の複数の化学メーカーが生産しています。
生産額など統計データを見ても,これらの企業の重要性というのは非常に高くて,今後もさらに成長,さらにはイノベーションを遂げていくことで,地域経済の発展,競争性にもつながってまいります。こうした都市は,多分地方にはいろんな共通課題を抱えているところがあると思います。本市では,先ほど挙げたような企業にヒアリングする中で,研究職をはじめとする理工系人材が地方で不足しており,人材確保に苦労しているとの声が多く聞かれます。地方における理工系人材の不足というのは,ぜひ必要だと思っています。今後,地方創生を実現し,地域の持続的な発展につなげていくためにも,地方において技術革新を推進する理工系人材の育成と確保というのは急務になっています。
そこで,地方における理工系人材を育成していくためには,先ほど放送大学さんの話もあったんですけど,例えば地方において理工系のオンライン授業を活用したサテライトキャンパスの設置の推進など,地方の技術発展につながるような施策をぜひお願いできればと思いますので,どうかよろしくお願いいたします。
【小路座長】 ありがとうございました。たくさん意見を頂戴しまして参考になりました。これで打ち切りたいと思いますが,私もたくさん申し上げたいことがあるので,キーワードだけ2つ申し上げたいと思います。
既に世界では,例えばGoogleなんかは,Googleの人事部に物理学博士を採用して入れたと。また,理工系の中枢の高度人材ですけども,そういう人間が人事制度をつくるとどういう人事制度をつくるのかと。結果はまだあまりオープンにはなっていないですけど,非公式の状況で聞くと,非常に論理的な,納得性の高い制度ができたと。それだけ論理的思考力が非常に強いというところで,世界はもうそのようになってきているんだなということ。
それから,地方という言い方がいいのか,地域と私は言っているんですけれども,地域の産学連携は当然ですが,経済団体のある一つの大きな団体では,道州制を政府に提言しています。今の47都道府県を前提にした産学連携だと,どうしても地域によっては非常に厳しい状況で無理があると。道州制も賛否があるんですけども,行政単位,経済地方単位をもう少し大きくして,そこの単位から産学連携をどうしていこうかということで,そういった道州制なんかも並行して検討しつつ,地域大学,あるいは地域大学の産学連携を考えていくということも非常に重要かなと思いますので,御参考ということで申し上げておきたいと思います。
それでは,時間が過ぎましたので,1つ目の問いについては,ここで打切りをさせていただきたいと思います。様々な御意見をありがとうございました。
では,次に私立大学の附属病院の支援の在り方,それから新たな大学の評価につきまして,このパートに移っていきたいと思います。事務局から説明をお願いいたします。
【日比医学教育課長】 医学教育課長の日比でございます。資料7に基づいて御説明をさせていただきます。
まず,大学病院の概要でございます。制度上の位置づけですけれども,大学病院というのは医学部または歯学部の教育研究に必要な附属施設として大学設置基準上の位置づけがございます。併せまして,医療法上の特定機能病院として高度な医療の提供や医療技術の開発などを行う病院とされております。
実際の使命・役割といたしましても,真ん中にあるたくさんの機能がございます。医学部生の臨床教育や卒後の初期・専門研修を行うということのほかに,新しい診断・治療法の開発,難治性疾患の研究等を行っております。
また,診療面では,臓器移植をはじめとした高度な診療を行っているとともに,地域貢献といたしまして,地域の医療機関に大学から医師の輩出・交流を行っているという状況でございます。
左下に病院数の一覧がございますけれども,医系大学病院の本院で見ますと全国で81ある中で,私立大学病院は31を占めております。また,私立大学の特徴といたしまして,分院もたくさんございまして58と。また歯系大学病院も17ございます。
2ページ目を御覧ください。全国で8,000ほどの病院がございますけれども,その中で,左上の円グラフについて,私立大学病院は,分院を含めまして1.4%という割合でございますが,左下の常勤換算医師数で見ますと,国立8.7%に加えて私立大学病院は10.1%を占めているということで,病院の中でたくさんの医師を抱えているというのが特徴でございます。
次の3ページを御覧ください。このような多様な機能を備えている中で,病院の経営状況は大変厳しくございます。国公立の大学病院とともに私立大学につきましても,御覧のとおり,近年,診療のウエートを増やしていって収益を上げている一方で,損失も出ている,費用もかかっているということで,損益で見ますと,令和5年度に赤字に転落しているという厳しい状況にございます。
こちらは,これも国公立と同様ですけれども,大学病院は高額な医療機器であるとか材料費等もかかっているということで,物価高騰,人件費の高騰に対して,それに対応する診療に対する支援が追いついていないというのが主たる要因と捉えております。
次の4ページを御覧ください。これは国公私立を通じた病院長会議の調査の結果でございますが,医師のエフォート率の年度比較でございます。令和4年度と6年度を比較しておりますけれども,診療時間が全体として増える傾向にある中で,特に若手の職位の方については,真ん中の緑,診療時間が非常に多い傾向にございます。特に助教あたりでいきますと,71.7%の時間を診療に充てていて,教育で9.4%,研究では12%にとどまっているという状況にございます。
5ページを御覧ください。教育面でいきますと,近年,学生の実習にかかる負担も増えていると考えております。特に,高い臨床能力を有する優れた医師の養成を行うために,診療参加型の臨床実習の充実という取組を進めていただいております。その中で多くの診療科を一定期間回って,実際の実習の指導をしていただいているということでございます。
また,下にございますように,実習期間につきましても,近年,長期化をしております。こちらは医学教育の国際団体が求める医学教育の水準というものを背景といたしまして,臨床実習期間を増加する取組を進めていただいておりまして,2009年では50週弱であったものが,2023年は68.7週という形で20週程度増えているということでございます。
つづいて6ページでございます。一方で,医師の働き方改革というものも昨年度から新制度がスタートしております。医師の長時間労働,適正な労務管理という観点から,一番下に表がございますとおり,基本的に水準Aというものでいきますと,一般労働者と同程度,時間外労働時間の一年間の上限時間が960時間という仕組みが始まっております。2035年度までの期間は,連携BやBといった形で1,860時間というものも認められておりますが,10年後に向けて,このAの水準を満たしていくというための取組が必要になっているという状況でございます。
次の7ページにつきましては,このような背景を踏まえまして,各大学病院におきまして,改革プランというのをつくっていただいて,運営,教育・研究,診療,そして財務・経営といった4つの観点で改革を進めていただいているところでございます。その中で,自院の役割・機能の再確認から教育・研究機能の強化,また(4)番にありますような収入増とコストカットの取組ということも努力をしていただいている状況でございます。
8ページですけれども,国といたしましても,文科省と厚労省が連携をいたしまして,大学病院に対する各機能に対する支援を進めさせていただいております。基盤的な経費と,それから国公私立を通じた補助金等の支援をさせていただいているということでございます。
9ページを御覧ください。それでもなお,現状さらに経営が厳しいという状況がございます。この資料の一番上の1行,国立大学病院の状況を示しておりますが,昨年度決算,現時点で公表しているのは国立のために国立を示しております。285億円の赤字と急激に悪化をしておりますが,私立大学病院も同様の傾向にあると捉えております。そういう状況の中で,さらなる取組が必要であろうということを示させていただいております。
改めて大学病院が医師の養成をはじめとした特別な機能を有していること,今後も地域医療の中で人材と技術の拠点となることが期待をされるという状況の中で,真ん中の図でございますけれども,右側の厚労省からの診療報酬をはじめとした診療に対する支援,これが大学病院の経営の多くを占めているわけでございますが,これに加えまして,教育・研究を支援する文科省といたしまして,真ん中の大学病院の機能,教育・研究,診療,地域貢献,これらの機能を果たし続けるための安定した経営基盤を強化する,このための支援を文科省として取り組むべく,来年度の概算要求で,左下に小さく書いておりますが,60億円という新規の補助金を要求させていただいております。これは私立大学病院も対象として考えております。
ここにおきましては,単なる赤字補填ということではなくて,現在の増収減益,赤字構造の改善であるとか,教育・研究機能の充実といったようなことに向けた大学病院運営の構造転換に取り組む,その大学病院を支援するということで考えております。
今後の方向性といたしましては,下の右側ですけれども,マネジメント体制の構築や診療規模の適正化,教育研究へのシフト,地域の医療機関との役割分担と連携といったような方向性で取り組んでいただくということを各大学病院と共に進めていきたいと考えております。
10ページ以降は,これらの議論の前提となる医学教育に関する検討会と,その直近の7月の第三次取りまとめの概要をおつけしておりますので,御参考までということでございます。
説明は以上です。
【小路座長】 では鈴木さん,お願いいたします。
【鈴木大学設置・評価室長】 大学設置・評価室の鈴木でございます。私から資料8「教育・学習の質の向上に向けた新たな評価の在り方ワーキンググループ 議論の整理」について御説明させていただきます。
この本ワーキングにつきましては,本年2月に出された「知の総和」答申において,教育・研究の質のさらなる高度化を図るために,新たな質保証,高次システムの構築,認証評価の見直しが提言されたことを受けまして,第5分科会の下に質向上・質保証システム部会をつくりまして,その下にこのワーキングがつくられて,5月12日から関係者からのヒアリングを通じて,現時点での議論の整理をまとめたものとなってございます。
まず,この議論の整理でございますけども,第1部,第2部と分かれておりまして,まず,第1部のほうから御説明させていただきたいと思いますけども,1部は基本的な考え方ということで,1つ目,左上のほうでございますけども,認証評価制度の現状と課題ということで,認証評価は20年経過しましたけども,まだまだ,当然,内部保証システムは導入がかなり進んでおりますけれども,課題はいろいろな課題が指摘されているところでございます。
要は,社会の期待は,大学の教育の質を明らかにすべきだというところであるんですけども,それがなかなか十分ではないのではないかという,社会的機能の再確認の必要性。丸2といたしましては,評価の負担感,徒労感というところに対して,どのような,そういう負担とかインセンティブの不足があるのではないかと。丸3といたしましては機関の改革,高等教育機関の改革につながりましたけども,カリキュラムの改善,学生の学びに寄与するような形にまで至っていないのではないかというのが課題として指摘されたところでございます。
その上で,「知の総和」答申で,「知の総和」の向上等を図っていくのであれば,教育の質を不断に見直して,教育改革・改善をしていくことが必要だと。それを内部質保証と,現行の認証評価制度の見直しを通じた第三者評価を確認する新たな評価にドライブをかけていこうということがうたわれたところでございます。
その上で,どういう方向性で検討していくかということが改革の方向性でございまして,(1)でございますけども,学習者本位の教育を引き出す評価制度を構築すべきであろうと。3つのポリシーを基盤とする教育成果によって,学生が在学中どのくらい成長したかと。それが学生自身の成長実感,ステークホルダーによる評価によって可視化されて,それが教育改善にきちんとつながっているかという点を評価すべきじゃないかということ。
(2)につきましては,高等教育機関はこれまで以上に教育活動に対して社会の理解,支持を得る必要があるので,社会に理解しやすい形で質保証・質向上が公表される仕組みが必要ではないかというのが2つ目。
(3)でございますけども,先ほど言いましたように,徒労感・負担感の解消ということで,効果的・効率的な評価の実現を図る,こういう方向性を持って具体に検討していこうということでございます。
具体的にどういう今,方向性で議論しているかということですけども,それが第2部でございます。1つ目の評価の主体でございますけども,これは今もピア・レビューという形で評価しております。これは引き続き維持しつつ,産業界とか高校関係者の参画を促していってはどうかということ。このピア・レビューについては,今,認証評価機関が複数存在する中で,評価の基準観点にばらつきがあるということで分かりにくくなっているんじゃないかという指摘を踏まえて,調整組織の設置を検討してはどうかということ。
評価機関に対しても,文部科学大臣が認証を与えて,文部科学大臣が,ちゃんとそれが適切にできているかどうか確認するシステムが必要ではないかということが評価の主体でございます。
2つ目の評価の対象でございますけども,これまでは高等教育機関で評価しておりますけども,これからは学位の分野に基づく,学部・学科,研究科ごとの教育の質の評価を重視する制度設計に向けて,引き続き検討していくべきじゃないかということでございます。
3番の評価の視点,何を評価していくかでございますけども,今の認証評価につきましては,財務とかマネジメントとか,かなりもろもろありますけども,新たな評価制度につきましては,養成すべき人材像,DPに照らして,学生が必要な学習成果が上げられているかという点を重視していくということであれば,この観点を評価の中心に据えて,注力を図っていくような評価制度にすべきじゃないかということ。
このワーキングの一つのゴールといたしまして,こういう学習成果の可視化と教育の改善ということについて,どういう項目,指標かということでございますけども,それを共通化できるような,具体的な評価基準,項目,指標等のモデルを示すことがこのワーキング中で一つのゴールとしているところでございます。
あわせて,学習成果の可視化については,直接評価とか間接評価をうまく組み合せながらやっていきましょうということと,新たな評価制度を導入するに当たっては,各高等教育機関が掲げるディプロマポリシーの再検証をして,その評価に当たる,しっかり目標となるようなDPを構築してもらう必要があるんじゃないかということが言われているところでございます。
4ポツの評価の手続でございますけども,これにつきましては,今まさに大学をはじめ,高等教育機関につきましては,偏差値とか,立地とか,必ずしも各高等教育機関の教育の質とは直接関係のない価値判断で社会的評価とか,進路選択がされていることが現状ですので,こういうことを打破するために,教育の質を分かりやすく評価・発信することであったりとか,各高等教育機関が高く評価された先進的取組とか課題を把握・共有するために,段階別の評価の導入を検討してはどうかということでございます。
さらに,評価の手続の効率化のため,データベースの構築とか,実地調査の在り方についても見直しを図っていくべきじゃないかということが言われているところでございます。
最後,5ポツでございます。評価結果の公表・活用でございます。社会に分かりやすくということでございますので,評価結果を一元的に公表して,公表内容はフォーマットを統一していくことを検討したらどうかということと,徒労感,何のために評価しているのかというところが指摘されているところございますので,評価の結果について,資源配分等の国の政策に活用することとか,段階別評価においては,高い評価機関については受審期間の延長とか,そういうインセンティブを与えてはどうかということが今指摘されているところでございます。
もちろん,これはまだ8月の段階で,議論の今の段階でまとめたものでございまして,これは秋以降,さらに第2部のそれぞれの論点について深掘りして議論を深めていきたいというところでございます。
以上でございます。
【小路座長】 ありがとうございました。それでは,ヒアリング,それから御発表ということで,相良病院長より御発表をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【相良病院長】 ありがとうございます。昭和医科大学病院長の相良でございます。
先ほど日比課長からお話がございましたけれども,私立医科大学の現状は非常に厳しいということでございます。国立大学病院のほうの285億円の赤字ということでよく出ています。私立医科大学の大きな違いは自助努力をかなりやっています。例えば土曜日の週日化を含めて,いろんな形での自助努力がかなりそこのところをカバーしている。結果的にはそれが,なかなか国立と違って赤字が見えにくいというところもあります。そういう中で,一つは,我々がどういう形で貢献してきているのか等々を踏まえて話をさせていただきます。
まず1枚目,これに関しては,コロナにどれだけ我々が対応してきているのかということです。これは令和6年の7月のデータです。9万5,010名を診療として診ています。
次のスライドお願いいたします。こちらは,どれぐらい患者を受け入れてきたのかに関しての割合です。これで見てみますと,国公私立の中で64%が,私立がコロナの対応をしていたということです。
次のスライドをお願いいたします。こちらのほうは被災地への医師派遣等々の状況であります。これも同じように国立,それから公立,私立という形で出していますけれども,1大学当たりの医師等の派遣人数に関しましては,私立が143.5,国立が110ということで,多くの派遣を行っています。
それから,その次のスライドが,これは能登のこの間の地震に関してのデータでありますけれども,ここに関しましても,私立医科大学からの派遣はかなり多くの人数を派遣しています。
その次のスライドを開けていただきますと,これは先ほど特定機能病院の一つの要件になる医師派遣の問題です。当然ながらここのところは全国の医師少数県,あるいは医師少数地区等々を踏まえて,非常に多くの医師を派遣しています。全体で1万3,543病院で4万3,000人を派遣して対応しています。
その次のページに掲げてありますけれども,そういう面では地域医療の貢献,それからあとは,同時に複合的な疾患に対しての対応ができる各診療科の連携体制を確立しているんだということです。
したがって,診療だけじゃなくて教育・研究,それから卒前卒後の教育,それから生涯教育の拠点として,我々は多くは分院を持っていますので,本院と分院で連携をして,他分野を含めた大学病院群という形で高次機能の役割を果たしているということです。
その中で,次のスライドからですけれども,これは令和5年度の財務関係の調査の中から,これは医学部プラス附属病院の合算値で,1大学平均になりますけれども,かなり減益になってしまっています。
その次のスライドも,これは本院プラス分院の平均であります。これは分かりやすく下のほうに書かれてありますけれども,令和4年度の収支のプラスは19校で,収支マイナスが11校であったところが,令和5年度では収支プラスが10校で,収支マイナスが20校に増えてしまっています。
その次のスライドですけれども,こちらは同じ30学校の法人の平均です。この令和4年度,それから令和5年度に関しましても,収支マイナスが非常に増えてきてしまっているというのが現状です。
その次のスライドを出していただきますと,これは年度ごとの医療収入とそれからあとは支出の科目の経年推移です。増収,減益という形での推移が続いています。
次のスライドをお願いいたします。こちらは電子カルテの費用に関するアンケートの回答の結果です。非常に多くのコストがかかっています。そもそもバージョンアップするだけでも大体30から40億かかります。ですから,初期投資に関してもかなりかかるわけですが,バージョンアップするだけでもそれだけかかってくるということです。これに関しましては,保守費用等と,それからあと運用支援業務の委託費を踏まえた中で,1大学当たり8億1,200万円の費用がかかってしまっているということです。
その次のスライドを出していただきまして,こちらは,国立大学に関しましては運営費交付金が出ております。私立大学に関しましては経常費補助金が出ていますけれども,運営費交付金とそれから経常費補助金の差がかなりある,あり過ぎるということです。したがって,そういう面では,自助努力をしながらこのところを補填していかなければいけないのが私立医科大学の非常に大きなところです。
その次のスライドです。こちらは給与の支給額です。これは国公私立で大体同じですが,教育職員という形で働いている中で,そういう面では給与体系が非常に低い。ここは少し給与をアップしなければいけないかなと思いますけれども,大きな問題点としましては,若手の医師が大学をどんどん離れていってしまっているということです。給与体系が低い,それから労働環境が悪い,その中でどうしても診療にエフォートが行ってしまっているというのが現状です。そういうところから,教育・研究に対してのエフォートが非常に下がってきてしまっていますので,それを非常に問題視しているところです。
当然ながら大学病院ですので,営利目的の病院になってはいけないとは考えておりますけれども,どうしても運営ということを考えますと,営利目的の病院にならざるを得ないところもございます。したがって,そういう面では,そういう診療のエフォートのところをなるべく教育・研究のほうに注ぎたいと考えています。
当然ながら高度先進医療を担う本来の使命を維持しつつ,地域医療における最後のとりでとして医療提供体制の整備をやっていますけれども,そういう面では多職種の連携,あるいはそういう意味での多職種の確保,あるいは病院医療の適正化,それからあとは効率化が重要な課題になってきているわけです。そういうところを踏まえて,ぜひ御意見をいただければと思います。ありがとうございました。
【小路座長】 よろしいでしょうか。ありがとうございました。
それでは,もう時間が五,六分しかなくなってしまいまして,御意見の御発表は一,二名ということで御容赦いただければと。都市部で附属病院をお持ちの,先ほど伊藤先生がお話しされましたので,伊藤先生,御意見がありましたら。
【伊藤委員】 もう相良院長のおっしゃったとおりでございます。私が申し上げたいことは相良院長がもう極めて丁寧にまとめてくださいました。ありがとうございました。
【小路座長】 あとは地方というか,地域のほうで附属病院をお持ちで,何か御意見がある方はいらっしゃいますか。特にいらっしゃらないでしょうか。分かりました。大変参考になりました。私は素人ですけど,特に。中村さん,どうぞ。
【中村委員】 山梨大学の中村でございます。山梨大学も附属病院がございまして,今,御発表になられたのと全く同じ非常に厳しい状況で,私立も国公立も厳しい状況だと思います。山梨大学もそうですが,高度先進医療を行っている地方の国立大学の附属病院は,かなり医師の派遣とか,あるいは研究グループも実施している中で,どんどん赤字になっていくという。このままいくと本当に地方の医療が崩壊してしまうという状況にありますので,ぜひこの部分は御認識いただいて,それなりの援助をお願いしたいと思っております。
以上でございます。
【小路座長】 ありがとうございました。まだまだ皆さんから御意見がおありになると思いますけど,御予定もそれぞれの皆さんおありになって,私の進め方がまずくて時間がなくなってしまいました。
私も一言言わせていただきますと,大学では唯一,実経営を行っているというのが病院経営かなと思いまして。私学の場合は,病院経営,収支を含めたそれをどうしていくのかということと,それからおっしゃった教育と研究,経営と教育と研究をどうバランスを取っていくかと。もう一つは都市部と地方の格差による影響,この辺をどう克服していくか。非常に難問が山積していると。しかもそれが簡単に解決できる問題ではないと見ております。
この辺はまた,どこかで時間をお取りいただけるようでしたら,少し今日,意見交換できませんでしたので,どちらかで20分ぐらい,御意見の場を取りたいと思いますので。多分伊藤先生もおっしゃりたいことはたくさんおありになるかと思います。時間を取りたいと思いますので,今日はこの辺で打ち切りたいと思います。相良先生,どうもありがとうございました。大変状況がよく分かりました。
ありがとうございました。4時ということで予定の時間になりましたので,今回の会議についてはこれで終了させていただきます。活発に短時間で御意見をいただきまして,大変ありがとうございました。
次回につきまして,事務局から会議の今後の予定等につきまして御説明をお願いいたします。
【菅谷私学行政課課長補佐】 次回,第6回検討会議につきましては,追って日程を調整の上,御連絡をさせていただきます。よろしくお願いします。
【小路座長】 よろしいでしょうか。それでは,第5回の会議をこれで終了いたします。本日,御多忙のところ御参加いただきまして,ありがとうございました。また,御発表の先生方,大変ありがとうございました。
―― 了 ――
高等教育局私学部私学行政課