令和7年6月18日(水曜日)15時00分~17時00分
ハイブリッド(対面・Web)開催 ※傍聴はWebのみ
(座長)小路明善座長
(座長代理)平子裕志座長代理
(委員)阿部守一、石川正俊、伊藤公平、大野博之、大森昭生、尾花正啓、角田雄彦、田村秀、鶴衛、中村和彦、日色保、福原紀彦、村瀬幸雄の各委員
浅野私学部長、奥野審議官、三木私学行政課長、田畑私学助成課長、錦参事官(学校法人担当)、石橋大学振興課長、板倉学術研究推進課長、菅谷私学行政課長補佐
(意見発表者)村上元芝浦工業大学学長、小原学校法人名城大学専務理事、今里経済産業省産業局産業人材課長、川上経済産業省イノベーション・環境局大学連携推進室長
(関係省庁)橋本総務省地域力創造グループ地域政策課長
【小路座長】 それでは,定刻少し前ですけれども,皆さんおそろいになりましたので,第3回目の「2040年を見据えて社会とともに歩む私立大学の在り方検討会議」を開催いたします。
本日,6月とも思えない,先ほど見ましたら32度ありまして,大変暑い中,多くの方に御参加いただきまして,改めて御礼申し上げます。
本日の検討会議も対面・オンラインの併用によって公開で開催させていただきますので御承知おきください。
まず,本日の議事等について事務局から説明をお願いいたします。
【菅谷私学行政課課長補佐】 本日の議事及び配付資料は次第のとおりとなっております。過不足等ございましたら事務局までお申しつけください。
なお,本日は議題1に係る説明の関係で,今里経済産業省経済産業政策局産業人材課長,また川上経済産業省イノベーション・環境局大学連携推進室長に,またヒアリングの関係で,村上雅人・元芝浦工業大学学長,小原章裕・学校法人名城大学専務理事の5名にも御参加いただいております。
【小路座長】 ありがとうございます。
それでは早速,議事に入りたいと思います。お手元を見ていただきまして,まずは本日の議題でございますけれども,本日は議題1「国際競争力の強化に向けた私立大学の役割や関係者との協働の在り方について」,これがメインの議題で,あとは「その他」ということになりますので,これについて十分,皆さんから御意見を賜りたいと思います。
本議題は,国際競争力の向上に向けた私立大学の研究力の強化,及び日本の産業を支える理工農系,農学系ですね,理工と農系人材の育成の2つのパートに分けて,本日議論を進めていきたいと思います。
まず,事務局より1つ目のパートについて御説明をお願いいたします。
【菅谷私学行政課課長補佐】 それでは,資料1を御覧ください。本日の議題に関係するデータや現行制度を簡単に御紹介させていただきます。
まず2ページでございますけれども,2ページは,私立大学が科学技術・イノベーションに果たす役割の概略をまとめたもので,理・工・農系の学部生の6割は私学の学生であり,理系分野の分厚い層を,私学が人材を育成しているところでございます。また,真ん中右側にございますように,世界に伍する研究や成長分野,地域の課題解決等にも貢献していただいております。また,理系分野への転換も109の私立大学が進めているという状況にございます。
また3ページ目でございますけれども,3ページは世界大学ランキングをまとめたもので,世界の大学のうちトップ6.1%をこの図にまとめておりまして,いわゆる旧帝国大学以外の国立大学と同様に,多くの私立大学がこのトップ6.1%の中に位置しており,これらの大学が切磋琢磨していくことが期待されます。
次に,4ページを御覧ください。私立大学におきましては,国立大学同様に,多くの大学発ベンチャーの立ち上げが見られており,特に近年,増加率というものも非常に高くなっているというところでございます。
次に,6ページを御覧ください。6ページは,科研費の獲得状況と,基盤的経費の配分についてのデータとなっております。私立大学に対する基盤的経費による支援,緑色の部分が基盤的経費による支援になりますけれども,オレンジの部分が科研費の獲得の部分でございますが,私立大学と同程度に科研費を獲得している国立大学に対する支援と比較すると,緑に当たる基盤的経費の部分については少ない状況となっているところでございます。
次に7ページでございますが,こちらは私学団体,私立大学連盟でまとめていただいたデータになりますけれども,国立大学と私立大学の財政支出に関する比較となっております。学生1人当たりの経常費補助について,私大は国立大学の11分の1程度,そして施設設備費ではその差がさらに大きく,私学は国立の22分の1程度となっているところでございます。
8ページは,私大の学生1人当たりの施設関係収支の差額の比率となっております。特に理工系において,収入に対して大きく支出が上回っているという状況が見て取れます。文系よりも方向差がかかっているというところでございます。
次に10ページ以降になりますけれども,10ページ以降は,我が国の研究力に関するデータをまとめております。特に10ページは,諸外国と日本の論文数の経年比較となっております。日本の論文数が,一番左の総数になりますけれども,2010年代半ばから増加傾向にありますが,Top10%補正論文数,真ん中のグラフになりますけれども,Top10%の補正論文数については,日本は下げ止まりの傾向となっております。
そして次の11ページには,論文数の国際順位をまとめてございまして,総数についての順位は低下傾向。引用数の高い論文数は,より順位が下落傾向。これが鮮明になってございます。
12ページを御覧ください。12ページは,それぞれの国の研究者が参画する研究領域の数をまとめたものでございます。2004年と2020年の状況を比較しておりますが,この間,研究領域の数が世界的に増加しておりますが,日本の参画する領域の数の伸びは少なく,また日本の参加領域を見た場合に,相対的に成熟した領域が多く,新興領域が少ない状況となっております。
13ページを御覧ください。13ページは,アメリカにおける国際共著相手国の現状となっておりまして,矢印の始点が2009年から2011年の日本の順位,矢印の先,青色の部分になりますけれども,これが現在の順位となっております。総じて矢印が右に伸びておりまして,順位の低下傾向が見られるところでございます。
14ページを御覧ください。14ページは,大学グループ別の論文産出数となっております。論文数シェア別に大学グループを4つに分け,それぞれのグループが自国内でどの程度論文を出しているかというのが見て取れるわけですけれども,英国・ドイツにつきましては,青色の第1・第2グループに分類される大学の論文数が比較的大きく,日本は論文について全体像で見た場合,第1から第4までが同程度の論文数規模を持っており,これらの幅広い大学の研究者のポテンシャルを上げていくことが重要と見て取れます。
次の15ページでございますが,15ページは,Top10%の論文数に絞って比較した場合,トップ層の大学についてイギリスと日本ではまず大きな開きがございますが,ドイツとは同水準になっております。ただ,上位に続く層の厚さに,イギリス・ドイツの水準よりも大きく下回っている,青色の矢印の部分でございますけれども,こうしたところに差があるというのが見て取れるところでございます。評価の高い論文について,トップに次ぐ層の厚みを日本は底上げしていく必要性が見て取れるというところでございます。
続きまして16ページでございますが,16ページは,修士課程や博士課程に進学する理工農系分野の卒業生の割合について,日本が諸外国に比して低いことが見て取れ,優秀な若手研究者の確保の点で課題となっております。
また,次の17ページでございますが,大学の年齢構成を表したものとなっておりますが,設置者を問わず60歳以上が占める割合が上昇傾向となっておりまして,様々なイノベーションの源泉となるような39歳以下の若手が占める割合というのが減少傾向となっております。
また,次の18ページでございますが,これは日本と英国,米国とを比較した,研究者の平均給与の比較となっております。特にアメリカと比較しますと,研究者の平均給与は低くなっているという状況が見て取れます。
次に,私立大学の研究力向上に向けた事業や制度の幾つかを参考に御説明させていただきます。
まず20ページでございますが,20ページは私立学校の施設・設備の整備に関する予算,そして次の21ページにつきましては「共同利用・共同研究拠点」制度と,次の22ページにはその拠点の一覧を載せさせていただいております。
次に24ページでございますが,先日,委員の方々に御視察いただいた早稲田大学の視察の概要を載せさせていただいております。文科系や理工科系のそれぞれの先端研究や,文理融合や産学連携による推進の現場を見せていただくとともに,全学の学生を対象としたデータ科学教育プログラム,また地域貢献の取組,そして他大学にも裨益する大学事務の戦略的アウトソーシングや,大学の業務に学生が意欲を持って働いているといったところを視察させていただきました。視察中の大学の研究者の方々や学生の方々との質疑応答の様子も,概要として掲載させていただいておりますので,また資料を御覧いただければと思います。
私からは以上でございます。
【小路座長】 お願いします。
【板倉学術研究推進課長】 それでは続きまして,文部科学省学術研究推進課長の板倉から科研費について,資料2に基づいて御説明をさせていただければと思っております。主として,この説明では私立大学の関係をピックアップして説明したいと思っております。
まず科研費でございますが,人文学,社会科学から自然科学まで全ての分野を対象としているということ,またピア・レビューであり,独創的・先駆的な研究を採択するものでございます。こういった研究の多様性を確保することで,イノベーションによる新たな産業の創出や豊かな国民生活の実現に貢献するものという性格でございまして,この中で今,全体像の数値が下に載ってございますが,新規応募,新規採択等,大体,私立大学が3分の1程度を占めているというところでございます。
そして,2ページ目をお願いいたします。科研費の全体的な役割でございますが,大きく言いますと,まず下に「若手研究者の支援」というのがございまして,研究費を取ってきた者が,上の金額が大きい基盤研究であるとか,あるいは学術変革研究の種目を取る形になってございます。私立大学に関しましては,若手研究においては30%弱,そして比較的金額が少ない基盤研究Cでは37.4%を占めているという役割を果たしているところでございます。
次のページをお願いいたします。科研費の予算額でございますが,近年はおおむね横ばいというところでございますが,現在2,379億円の予算で行われているものでございます。
次をお願いいたします。こちらはトレンドでございますが,私立大学と国立大学の比較を,トレンドを見たものでございますけれども,配分状況のグラフ,下を見ていただければ一番分かりやすいと思うのですが,私立大学に関しましては,採択件数,配分額とも横に上がってきているというところ,国立大学に関しましては,配分額はほぼ横ばいで採択件数が増えて,やや採択するものが少額化しているという傾向がございます。私立大学の採択件数は約3割を占めるという形でございまして,2004年から2024年の間,おおむね8%伸びているといったところでございます。
また,科研費の上位20機関の配分額割合,これはトップのところがどこまで,独占しているかという数字でもございますが,これに関しましても,より小規模の大学が取るような傾向が出てきているというところでございます。
次のページをお願いいたします。こちらは,私立大学の新規応募件数・採択件数・採択率の状況でございますけれども,科研費の特徴としましては,629の私立大学のうち524の大学が,何らかの形で科研費を取得している研究者を抱えているという状況でございます。私立大学の科研費の新規採択率が24.1%で,全体平均が27で,若干平均よりは下回るのですが,確実に取っていただいているという形でございます。
ここで下のグラフを御覧いただければと思うのですが,研究機関別の新規応募件数・新規採択件数・新規採択率の推移を御覧いただければと思うのですけれども,もともと国立大学と私立大学は応募件数に関しては倍ぐらい違ったのが,今,4対3程度に縮まってきております。その当時,新規採択率の差も8%あったのですが,今,新規採択率の差も6%まで縮まってきているという状況でございます。
また,下の四角でございますけれども,これは研究機関の新規採択率でございまして,これは言ってみれば,より高い割合で採択率がある大学が,Top10でどのぐらいあるか,Top30でどのぐらいあるかというところでございますが,過去10年間,10大学のうち3大学弱が,私立大学が今,取っているということでございまして,そのランキングにも13大学,入っているというところでございます。過去10年間に,上位30機関のうち私立大学が,平均すると10.2大学入っておりまして,上位大学の中の3分の1を占めているということでございます。また,一度でもランクインしたことがある大学が延べ29大学あるというところでございます。
次のページをお願いいたします。次は学問分野に着目した私立大学の現状でございますが,上は人文・社会科学系でございまして,こちらに関しましては全ての分野,10機関の中に入っておりまして,社会学のような,6大学も入っている学問分野もございます。また,下がそれ以外の自然科学系等でございますけれども,そちらに関しましても,上位10機関のうちに,55分野のうち29分野において私立大学が入っているというところでございまして,自然科学系でも私立大学が大きな役割を果たしていることが分かるかと思います。
そして最後,7ページでございますが,科研費における若手研究者の現状というところでございますが,今,科研費に関しましても,若手研究の種目もございますし,採択率自体はこのとおり,40歳未満が高い状況になっております。一方で,大型種目に関しましては参画状況が低いという数字がございまして,やはり若手のうちからこういった大型プロジェクトに参加していくということが大変大事だと,我々としては考えているところでございます。
以上でございます。
【小路座長】 よろしいですか。ありがとうございました。
それでは,ただいまの資料1と科研費2につきまして,皆様から御質問があればお受けさせていただきたいと思いますけれども,いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは引き続きまして,議題1につきましてヒアリングというものに移っていきたいと思います。伊藤委員,また石川委員,村上・元芝浦工業大学の学長から,それぞれ本日御発表いただいた後,意見交換に移りたいと思います。
それでは,まず伊藤委員から御発表をお願いいたします。
【伊藤委員】 伊藤です。よろしくお願いいたします。資料3を御覧ください。
まず資料3の左側は,Clarivate Analytics,Web of Scienceというデータベースですけれども,そこが毎年発表しているHighly Cited Researchers,要は引用の多い研究者というのが毎年,賞として発表されるのですけれども,2024年は日本からは76名が選出されています。この76名がノーベル賞候補とよく言われるわけでありますけれども,そのうち私立大学からは13名が選出されています。ここに書いてある,選出されている人数ですけれども,昨年の場合,2024年の場合,1位は京都大学の8名,2位は慶應義塾大学の7名,2位同立が理化学研究所の7名,東京大学は6名みたいな形に,順番になっています。これだけの人数が,黄色で書いてある慶應及び近畿大学が,今ここには私立として出ているわけですけれども,実際に右側のコラム,国立大学がどれだけの運営費交付金額を受け取っているか,または私立大学がどれだけ私立大学経常費補助金額を受け取っているかというと,1位の京都大学の場合は565億円,受け取っているのに対し,慶応の場合は88億円というような形で,近畿大学は45億円ということで,御覧になってのとおり,国からの補助というのは桁違いに違うわけですけれども,その中においても,このような形でトップレベルで研究で成果を上げている私立大学もあります。
また,右側ですけれども,先ほど菅谷さんが,資料1で説明があったとおりですけれども,Times Higher Educationランキングで,Top6.1%の三角の部分,ピラミッドの部分を切り取ってみると,日本の大学は119校入っているのですけれども,その上位は,私立大学はその中に50校入っているということで,基本的には,このようなピラミッドの中においても,国立大学と私立大学というものは同じような形で,研究力という意味では貢献しているということが言えるかと思います。
次のページをお願いいたします。これは,ある1例を,それぞれの例を4つの大学に示したものですけれども,様々な私立大学が様々な形で高度な研究に取り組んでいます。この高度な研究をどのようにして実施しているかというのが一番大きなポイントであって,最終的には次のページでお示しするのですけれども,どのように実施しているかというところで,これは最終ページになります。
次のページをお願いいたします。上の枠の黒いところで書いてあるところを読みます。国立大学に比して,私立大学への施設設備関係補助は極めて低く,競争的資金等により研究費を確保したとしても,その間接経費のみでは十分とは言えず,また,学納金を研究施設に充当することも困難であるため,高度研究推進の基盤となる施設設備費の確保が非常に,いつも挑戦的であるということをお伝えいたします。これも基本的な資料集にありまして,最初の資料1でも説明いただいたものですけれども,過去14年間の,左側の図の青いところのバーが,教育・研究装置等の整備,これは私立大学です。それからオレンジの部分が私立大学等教育研究活性化設備整備事業であるわけですけれども,このバーの高さを御覧になっていただければ,一番左が平成22年度,そして一番右が令和6年度,昨年度ですけれども,実に私立大学に対する教育・研究装置,設備等の予算は,この14年間で118億円から53億円へと55%減少しています。また,このとき物価の上昇,建築費の上昇等がありますから,これだけ減った上に,私立大学はさらなる実質的な減少を経験しているところでございます。
右に書いてありますのは,先ほど説明がありましたとおり,特に一番右側,学生1人当たりの施設・設備関連補助金というのは,私立と国立では21.5倍の差があるということであります。そのような中で,私立大学がどのように研究施設を担っていくのか。国の8割の学生が,大学の8割の学生が通うのが私立大学であります。また,ボリュームゾーンを支えているのも私立大学であります。その中において,では一番下のところを読みます。我が国における研究の高度化を推進する上で,WPI等の高度な研究拠点を有する私立大学や,特筆すべき研究成果を上げている私立大学,または特色的な取組を行っている私立大学などに対しては,国立・私立といった設置形態にかかわらず,国立と同一の設備投資や特別補助,研究者へのインセンティブの提供など,十分な支援が行われることが必要だと考えます。
以上でございます。
【小路座長】 ありがとうございました。
それでは,続きまして石川委員から御発表いただきたいと思います。石川委員,よろしくお願いいたします。
【石川委員】 東京理科大学の石川でございます。
今日,東京理科大学の石川ということではございますが,前職,東京大学の理事等もやりましたので,国立大学の役員をやり,それから間でベンチャーの役員や,大手企業の顧問などもやっていますので,国立大学,私立大学,企業の3者とも一応経験しているという意味で,なるべく客観的にお話しさせていただきますが,一部,主観が混じっていることをお許しいただければと思います。
2ページ目に移っていただきたいのですが,これはいつも,国際競争力のような高度な科学技術の展開において,社会の変化としてこの程度のことは御存じでないと議論がかみ合わないということで,いつも出しているものです。科学技術が真理の探求のみを追求していた過去に比べて,真理の探求と価値の創造というものに変わってきているということを理解していただかなくてはいけない。例えば,もはや大学が基礎で,企業が応用の時代ではない。あるいは,ブレークスルーとイノベーションを混同した議論がまかり通るというのはよくない。それで,要素還元主義といって,部分さえどうにかすれば全体がうまくいくのだという妄想に取りつかれて……,そういったものが延々と書いてあります。ぜひとも後でお読みいただければと思います。
ページをめくっていただきまして,次,理科大のことも少し話をしないといけないのですが,理科大は明治の時代,明治14年に,東京大学の物理学科を卒業した学生と,ほかの学生を含めた21名が創設した大学でございまして,明治時代,理学を教えていた大学は,東京大学と,前身であった物理学校だけでありまして,京都大学にできるのに16年かかっている。この間,東京大学や理化学研究所,あるいは,当時は何と言っていたのでしょう,文部科学省ではなくて文部省でしょうか。そこからかなりの支援を受けていた。2校しかありませんので,支援を受けていたということがあります。
それから,私立大学に在籍した経験のある人でノーベル賞を取ったのは,大村先生という方1人でございまして,今日御出席の中村先生のところの学部を卒業して,修士を理科大でやった。それで,理科大で修士をやったときに,日本で1台しかないNMRの装置を使えたということが,後のノーベル賞のきっかけとなっている。これは,そういった装置を使える機会があるということが価値になります。その機会を喪失するような環境整備はよくないということであります。
それから,右側に移っていただきますと,理科大は日本で理工系の人数としては随一の人数を誇っているということで,ちょっと日大のほうが多いのですけれども,大きな人数を,ボリュームゾーンという言い方に当たるかどうか分かりませんが,やっていると。それで,大学院進学率がどんどん増えております。ですから,我々の大学は大学院にかなりの重点が移るような兆候が見られます。
それからランキングなのですが,ランキングはあまり好きではないのですが,先ほど伊藤先生が出されたランキングもあるのですが,これはどんなランキングでもよくて,言いたいことは伊藤先生と同じで,脇に経常費補助金というのをつけると話は違いますよということで,伊藤先生の数字と違うのは,伊藤先生は経常費補助金のピュアな部分だけの数字で,私は,それ以外の国などからの補助金を全部足した経常費等補助金でやるとこうなります。数字は概略でいいのですが,小さな数字で頑張っている大学がいっぱいあるということです。
それから,先ほど話がありましたベンチャーの創出数というのですが,これは規模に依存しますので,ベンチャーの創出数で言いますと,東大,京大,慶応大学という順になるのですが,これを補助金で割り算してもらうのです。そうすると,その右側に書いてあるように,東京理科大学,慶応義塾大学,立命館,早稲田というのはトップ4校ということになりまして,倍率たるや相当,10倍近く違うという形になります。この点を御理解いただきたい。
ページをめくっていただきますと,高度科学技術人材をどういう考え方で教育し,国際競争力のある研究力につなげていくかということなのですが,上に「サツマイモモデル」と書いてあるのは,文科省で出ているモデルなのですが,今や1つの分野で一生を終えるということはない時代になってきて,必ず,分野を展開する,方法を変える,応用分野を変えるというのをやっていきます。そのためには高等教育の内容はどうあるべきかということで,専門分野だけを教えてしまいますと,それがずれた場合にどうにもならなくなるので,専門基礎という概念を入れていきます。専門基礎という概念を入れて,分野を飛んだり方法が変わっても耐え抜ける力。全体としては,今の科学技術を先導する力と,次の科学技術を生み出す力と,科学技術の革新に適応する力。こういったものを,大学間あるいは1人の人間の中で分散させながら教育・研究を進めていく必要があると思っています。
1つ問題は,今,多くの大学で,例えば旧東工大,東北大,理科大からデータが出ているのですが,入試の成績と大学卒業時の成績が,あまり相関がないということがあります。つまり,入試が大学卒業時の能力を評価したことにはならないということであります。実は,大学1年目の成績が,大学卒業時の成績に相関が強いというデータも出ているので,大学の教育の内部と中等教育の間をリンクすることを,もう一度やり直さないといけない。このことは,大学を卒業するときの能力と,社会・企業で評価する能力にも乖離がある。この乖離もどうにかして埋めていかなくてはいけない。そういう努力を我々はして,そこを最適化することによって,国際競争力のある人材を育てていきたいと思っています。
右下に書いてある「最先端の研究の現状」というのがあるのですが,これは多分,皆さんはよく知らないことだと思うのですが,ある研究室には,実は私の研究室ですが,欧米のITの大手企業がほとんど全部来ています。CTOクラス,あるいは研究開発部長クラスが来ています。加えて,自動車会社,飛行機製造会社等々が軒並み来ているという現状があります。ところが,日本の企業は来ないんです。来ているのは二,三社でありまして,しかも,欧米はCTOクラスが来るのですが,日本の企業は来ない。つまり,何を言いたいかというと,日本の企業あるいは日本の社会がもう少し,新しい技術に対する評価を高めていかないと,幾ら支援をしてもなかなかうまくいかないという問題があります。
日本の企業が来ると,これは使えますかという質問をするのですが,欧米の企業は,将来これはどういう発展がありますかという質問になります。この違いが非常に大きくて,それが先ほど来出ている研究力の低下にもつながる1つの要因ではないかと思っています。このことをぜひとも,私立大学・国立大学を問わず,研究力のある研究室には多くの欧米の企業が来ているのだ,これはアジアの企業も来ていますので,欧米・アジアの企業が来ているのだということを理解して,そこに日本が注力していない現実があるということを御理解いただきたい。
次のページは,やはり同じように,国際競争力を持った研究力の向上に対して高等教育をどうやるべきかということで,1番目は,人口減少の対策というのが全体を下げるということと,それから分野のバランスを取るということは独立事象であるということで,右に行きますと,専門人材が専門分野の企業に行くという構図は,もう崩れつつあるというか,崩さなくてはいけなくて,それが応用の分野まで行く必要がある。これは,IT関係は高等教育の卒業生がIT企業に行くという構図では,日本の産業は守れないのです。ITの企業にも行くし,応用の銀行や商社にも行くという感覚を持ってもらわないと困る。それができていないのは,IT技術者の総数が足らないからです。ボリュームゾーンをもっと出していく大学を支援しなくてはいけないということであります。
それから,社会的評価のところに,先ほど伊藤先生も文科省の方も使ったんですけど,一軸で大学を並べるのはやめてほしいというのがありまして,これは多軸の評価をしています。特色ある大学は特色ある分野で世界のトップを走っていただきたいということで,バッテンをつけたほうは,先ほどの三角の図を否定するようではありますけれども,一軸の評価ではなくて,右側にあるように,ある分野ではA大学,ある分野ではB大学に世界のトップを走っていただきたい。全分野で世界のトップを走るなどという時代は,もう過ぎてしまっていると。新興分野に関しては新興分野を得意とする大学がどんどん出てくるような日本の高等教育が必要ではないかと思っています。
それからその下に書いてあるのは,システムシンキングという考え方を入れないと,断片的な情報だけで大学高等教育を考えるのではなくて,全体がどういうバランスを取るかというのを,システムシンキング,システムとしてどうバランスを取っていくかを考えなくてはいけないと思っている。これが足りていないような気がする。
ページをめくっていただきますと,そのときの私立大学の立ち位置なのですけれども,1)のところに財務状況がありまして,これは私からは言いづらいのですが,東京大学と理科大の比較というよりは,国立大学と私立大学の比較ではあるのですが,東京大学の運営費交付金が813億,理科大の経常費等補助金が40億なので,ここに20倍の差があります。皆さんに考えていただきたいんですけど,東京大学と東京理科大学に20倍のパフォーマンスの違いがあるかと言われますと,本当にあると言われると私は立場がなくなりますので,そこはないだろうと。それに対してどう考えるか。それで,これは授業料の補塡だというのがあるのですが,授業料の補塡をしたとしても500億と40億になりますので,十数倍違うということになります。このままでいいのかという,大きな課題であります。伊藤先生がおっしゃっていることを,違う形で申し上げていることになります。
それから,2番目のところにある収益事業の関係ですが,国立大学は今,収益事業ができるようになりました。それで,いろんな制度が,収益事業をしないことを前提とした制度がまだまだ残っております。そうしますと,収益事業を始めた国立大学が,収益事業がないものとして行っている制度を維持しているというのに対して,収益事業がもともとあるからということで,いろんな制約がある私立大学は,公平性を失っているのではないか。両方とも収益事業ができるようになったのだから,同じ運用をしていただきたいというのがあります。
その下の点々の中にはいろんなことが書いてありまして,こういうところが具体例としてありますということです。
右側に移っていただきまして,3番目として,国立大学と私立大学は本当に同じことをやるのだろうかということなのですが,タックスペイヤーに対して奉仕すべき国立大学と,授業料納付者に対して奉仕すべき私立大学は少し違うかと思います。
それから5番目に移りまして,国際競争力と教育研究の環境整備ということに関しては,環境整備に対して,先ほどの大村先生の話なのですが,機会損失がないようにしたい。ですから,整備したものが,どの大学のどの学生であっても,どうにかすれば使える状態をつくりたいとも思っております。
最後のページになりますけれども,最後のページは,共同研究ということはあるのですが,共同教育ということがあまりないので,それに関して,新しい形の共同教育の概念を入れてはどうかということであります。詳細は省きますけれども,右側にある先端科学技術人材への先行教育投資,教育投資という考え方を入れていただいて,世界トップレベルの人材を輩出するにはどういったシステムを組めばいいかというのを考えていただきたいなと思っております。質的なレベルアップと量的な拡大を両立する仕組みは何かというのを議論いただければと思います。
以上でございます。
【小路座長】 ありがとうございました。
それでは,続きまして村上元学長から御発表いただきたいと思います。村上元学長,お願いいたします。
【村上元学長】 それでは,「私立大学の研究力」について話をさせていただきますが,まず私立大学の数は多過ぎると言われていますが,海外から見た場合に,公的資金を使わずにこれだけ高等教育の拡大ができているのは日本だけなんです。ですから,私立大学は日本の高等教育の拡大に貢献しているという視点でも評価いただきたいと思います。
私は今,大学利用共同機関の情報・システム研究機構,これは国立大学法人の仲間なのですが,その監事をさせていただいていまして,国立大学の状況を見ながら,日本の研究力強化を考えています。今回は芝浦工業大学の事例についても紹介をさせていただきたいと思います。
まず,最初のページを御覧ください。大学について議論する場合には,大学の使命は何かという基本に帰るのが重要だといつも思っております。皆さんご存知のように、大学の使命は,教育研究を通して人材を育成することです。そして,この人材育成が,ひいては社会貢献につながるのだという考え方が非常に重要だと思います。ここで,大学は教育機関であって,金儲けをする機関ではないという視点が必要です。最近は,大学は稼げ稼げという話ばかりで,話がそちらに行ってしまうのですが,そうではなくて,教育研究を通して人材育成をする。ここが基本になっているということを重要視すべきだと思います。
そのためには,やはりグローバルとダイバーシティーがキーワードになっています。最近,国立大学も見ながらいろいろ思うのは,若手の研究者や女性が生き生きと働ける環境をつくることが、日本の将来にとって非常に重要だと思っています。そして,女性が働きやすい環境は,男性も働きやすい環境だという視点が重要です。
次のページをお願いします。私は日本の大学の課題として,憲法23条にある「学問の自由」がいろいろな問題を引き起こしていると思います。これは,研究・講義などの真理探究のための活動において,他者からの干渉や制限を受けない自由ですが,先生たちは,研究指導も講義も成績評価も全部,自分の自由にできると勘違いしているのです。これが学生の満足度低下の原因になっていますし,何よりも,日本の大学のグローバルスタンダードからの乖離につながっています。それは何かというと,世界では今,「学生に何を教えたか」ではなくて,「学生が大学で何を学んだか」という学修成果を大切にする教育にシフトしています。いわゆる学修者本位の教育ですが,これが日本では,まだ国立も私立もできていないというのが現状です。
日米学生調査の結果などでも,日本の学生は勉強しないと報告がなされています。その背景には,やはり「学問の自由」の履き違えによって教育が体系化されていないということが背景にあるのではないかと思います。ただし、私立大学ではかなり教育改革が進んできていると,私は見ています。逆に言うと,私立は改革しないと学生が集まらないという事情もあるからです。
次のページをお願いします。先ほど,日本の学生は勉強しないという話をしたのですが,実は例外がありまして,理工系の4年生なんです。アメリカは1週間で16.6時間に対して,日本は28.6時間と非常に長いです。これは,卒業論文研究のおかげです。日本の大学を見ますと,理工系では私立の99%が卒業論文研究を実施しております。私は,これは世界に誇れる究極のPBL学修,アクティブラーニングだと思っています。研究に基礎を置く教育は、実はドイツで生まれ,アメリカで発展し,日本で花開いたと言われています。しかし,ドイツもアメリカも,大学の大衆化とともに学生数が増えたため,衰退してしまいました。やっぱり研究を通して,教員も学生も成長します。
いろいろな調査によると,卒論研究で多くの学生が成長を実感しています。それから,大学の先生になった人たちも,卒論で研究する魅力に出会ったという人もかなり多いで。また,PROG等の汎用力調査を見ても,卒論研究後に社会人基礎力が大きく伸長したという結果が得られています。
その次を御覧ください。ただ,産業界からは,卒論研究は問題だと言われていました。教員の趣味的研究の下働きに学生が悪用されているという主張です。この背景にも,「学問の自由」の履き違えがあります。教育研究内容は全部,指導教員が決める。研究室という閉鎖的な環境の中で指導する。成績評価も全部,指導教員1人で行う。これが非難されている背景だと思います。実は,私立大学では卒論研究に関して改革が進んでいます。たとえば,複数の教員で指導しましす,産業界と連携しますということで,最近では研究テーマを産業界と協働で決める大学も増えています。何よりも,ルーブリックを作成して,学生にも分かる成績評価基準を明確化しています。このような卒論死闘の改善が研究力向上,ひいては大学院進学率の上昇につながります。
その次のページを御覧ください。基本的考え方として,私は研究と教育というのは不可分だと思います。特に理工系においては,教員は研究を通して自らを磨く必要があります。一方で,最先端研究の場で学生を鍛えるつまり教育する。これが大学の基本的指導方法だと思っています。ただ,研究としては2種類あって,ひとつは,出口を意識した研究です。これは,アメリカのERCを参考にしたものですが,組織的に支援する研究に相当します。一方で,若手の先生などに,やりたい研究を自由にやらせるということも大事です。これがイノベーション創出につながるからです。研究はまさに人であるというのが基本になります。
先ほども言いましたが,やはり若手の先生や女性が生き生きと研究のできる環境をつくるということが,大学にとって重要だと思っています。そのための1つは公正な人事,それから研究環境の整備です。卒論指導や修論指導に苦労されている新任の先生もおられるのですが,芝浦工大では安心して研究指導ができる環境をつくりましょうということで,誰もが使える共同研究施設を充実させる施策に取組みました。
研究は人に依存しますが,大学院の充実も重要です。大学院進学率は指導教員に魅力がなければ高くなりません。そのためには先生たちが魅力ある研究をすることが大事です。実は芝浦工業大学は,魅力ある指導教員をそろえようということで,グローバルマインドを持つ若手教員や女性教員を積極的に採用しました。女性教員は2013年から2021年で18名から61名まで増えました。その結果,大学院進学率が非常に向上しました。2012年25%だったものが2021年には40%,2024年は50%に増加しています。ただ,ここで問題があります。私立の場合に大学も学費が高いのです。これを何とかすべきと思います。そのための公的支援は重要です。
研究力強化には,若手の先生が競争的資金を獲得できなくとも,研究を継続できることも大事です。そこで,学生と教員が自由に使える研究共通機器センターを整備しました。また,装置の維持管理や使用方法の指導もできる技術支援員も配置しました。また,シニアの先生などは大型予算で購入した装置を持っているのですが,自分の研究室に置いて使わない場合があります。高い維持費がまかなえないからです。そういう装置も提供いただいてセンターを整備しました。その結果,9ページにありますように,大学の論文数も劇的に増え,大学ランキングも大きく向上しました。やはり大学院生を増やし,若手や女性がのびのびと研究できる環境を整備することが,今後の大学の活性化ならびに研究力強化にとっては非常に重要だと思っています。
以上です。
【小路座長】 ありがとうございました。3名の方の御発表は大変参考になりました。現状を詳しく整理いただきまして,また問題意識が非常に明瞭になったかなと。委員の皆さんに共有されたのではないかなと思います。
では,今の御発表を踏まえて,これから意見交換に移りたいと思いますが,意見交換に先立ちまして資料6を見ていただきたいと思いますけれども,ワードのA4縦,5ページありますけれども,これは,石川委員,伊藤委員,それから鶴委員,日色委員に,これから意見交換に移る,議論のための検討課題というのですか,論点整理にもなりますけれども,今まで御発表いただいた部分をある程度まとめていただいて,議論のたたき台みたいな形で作っていただきました。これは,代表いたしまして私から,事前に中身は御覧いただいているかと思いますので,ポイントのみ紹介させていただきたいと思いますけれども,1つは,我が国の国際競争力を強化していくためには,やはり世界最高水準の研究大学を実現するとともに,やっぱりリードする大学に続く,第2,第3の大学群に厚みを持たせて,全国の研究者のポテンシャルを引き出す基盤の強化を図ることが,ある意味では大変重要である,必要であると。私立大学における研究力を最大限に伸ばしまして,国立大学と切磋琢磨していくことが,我が国の成長に不可欠であるということが記載されて,4名からまとめていただいております。
それから,1ページの後段から次のページにつきまして,具体的な施策の方向性ということ,それから検討すべき具体的な施策について具体的に記載を頂いていますので,これについてもまとめますと,研究力の高い私立大学に対して,国際的に研究力で競い合う拠点となるよう,施設,それから設備の整備と基盤的な経費を,一体的,また集中的に支援する枠組みを創設すべきであるといったことや,それから世界中から優秀な研究者を確保するための取組の改善等について提示いただいております。非常にざっくりとしたポイントでございますけれども,そういったポイントを整理いただきまして,今日の意見交換,検討ということに御参考いただければと思います。
では,今までの御発表を併せまして,またこの資料6をベースに,1つ目の「国際競争力の向上に向けた私立大学の研究力強化」について意見交換を行いたいと思いますけれども,およそ25分から30分弱,取りたいと思いますので,意見のある方は挙手をお願いしたいと思います。
まず,阿部委員より冒頭,御発言があるということを伺っておりますので,阿部委員,よろしくお願いいたします。
【阿部委員】 私が,明日から県議会が始まるので,ちょっと時間がないので,最初に発言させていただいて恐縮でございます。
今日のテーマ,国際競争力の強化に向けた私立大学の在り方という部分について,これは地方の立場で,少し先生方と違った,若干,教育の観点からは素人的な発言でありますが,今,地方から見て教育がどう見えているかという観点で,お話を簡単にしたいと思います。
国際競争力の向上は,まさに私学の発展にとって重要だということと併せて,やはりこれは我が国のこれからの損益にとって極めて重要なテーマだと思います。昨年の子供の出生数が70万人を切るという,大変これは危機的な状況だと思っておりますが,そうした中で,我々,地方においてさえ,外国との交流であったり,あるいは地域に受け入れた外国人の皆さんの教育をどうするかということは非常に重要な話になっています。そういった中で,今,アメリカはトランプ大統領の影響で,アメリカの高等教育が非常にぐらついている状況にあるわけでありますけれども,やはり日本の高等教育が,世界からしっかり優秀な人材が集められるようにしていただくということが,日本の発展にとっては極めて重要だと思います。先ほどから御議論が出ているように,国立大学だけではなくて,やはり私立大学も世界から多くの有為な人材をしっかりと集めていただけるような発展をしていただくことが,これはちょっと地域ということよりは日本全体にとって大変重要だと思いますし,日本の教育がどんどん衰退,世界の中で後退していくということになれば,産業のみならず地域社会も含めて,ほとんど,諸外国から相手にされない国に成り下がってしまう危険があると思いますので,そういう意味で,教育,特に高等教育の分野については,世界の中でどういう分野で,どういう強みと特色を打ち出していくのかということについては,まずぜひ先生方でしっかりと議論をして,そして文科省においては国家的な観点で,しっかりとした支援をしていただきたいと思います。
それからもう一つ,ローカルの大学においても,先ほど申し上げたように,国際化の要請が非常に強いわけでありますが,ちょっと理工系人材の話だけお話をさせていただくと,今,どうしても地方の私大は,非常に学部が偏っている状況になっていると思っています。保健福祉系などの運営コストがあまりかからないような学部学科が非常に多くなり,そして今,実はそうした保健福祉分野,保育分野も含めてですけれども,そうしたところは賃金がなかなか上がっていかないというような状況の中で,そもそもそうした分野を志向する子供たちが減ってしまっていると。結果的に,地方の私大はどんどん元気がなくなってしまっているという状況になっています。
これは,そもそも地方で必要とされる人材を,しっかり処遇を変えていき,国全体で考えていかなくてはいけない問題であります。もう一つは,地方の私大が担うべき人材の養成分野というものも,今までどおりで本当にいいのかということをしっかり考えていかなくてはいけないと思います。特に,例えば本県であれば,製造業のウエイトが非常に高い県でありますので,いわゆる理工系人材に対するニーズは相当程度あるところでありますが,しかしながら県内には,信州大学と,それから諏訪東京理科大学に,これは今,公立化されていますけれども,限られているというような状況の中で,なかなか地域の産業・企業が求めている人材と,県内の大学が養成している人材の大きなミスマッチが起きてしまって,産業界も困っている。一方で大学側も,なかなか経営が厳しくなっているというような状況の中で,ミスマッチをどう解消していくかということを,しっかり国全体の見地で検討していただくことが重要ではないかと思います。
そういう意味では,どうしても理科系人材を育成するには,やはりいろんな設備も要りますし,あるいは教える人材もなかなか地方では,現状では集めにくいということもありますので,そうした部分をもっと国全体でサポートしていただきたいなと思います。
まず,地域のニーズをしっかり踏まえた学部学科を大学にはつくっていただけるようなサポートを,文科省にはしていただきたいと思いますし,そして地方の大学における必要な人材というものも,ぜひこれは大都市部の大学の皆さんにも協力いただいて,有為な人材が大都市だけに集中しないで,やはり地方の教育機関においても,もっともっと活躍できるようなサポートをしていただければと思います。我々としては,今,人口の地方分散も,もっともっと我々は地方の立場で進めなければいけないと思いますので,我々都道府県あるいは市町村が取り組むような施策と相まって,大学・高等教育機関の人材の分散であったり,あるいはそもそも大学自体の分散であったり,そうしたものを進めていただいて,それぞれの地域が,必要とされる人材を,地域においてできるだけ教育・養成できるような形に,ぜひ大局的には持っていっていただきたいと思っています。
1つは,日本全体のために,国際競争力が高い大学を私大でももっとつくっていただきたい。もう一つは,地域の産業界,地域の産業が求める人材と,高等教育機関の育成している人材のミスマッチの在り方をどう是正するかということを,しっかり考えていただきたい。
以上,大きく2点,申し上げておきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
【小路座長】 ありがとうございました。時間の問題があって,私のほうで御発言についてまとめることは致しませんので,御発言ということで2点,承っておきたいと思います。
それでは,時間がちょっと少なくなりましたけれども,あと,そうですね,15分,20分弱ぐらい,皆さんから御意見がありましたら,御意見を伺いたいと思います。いかがでしょうか。場合によっては,御発表いただいた方も補足的にありましたらいかがでしょうか。
どうぞ。
【大森委員】 呼び水的に。大森でございます。よろしくお願いします。
今,阿部知事のお話にも絡むところなのですけれども,今日,御発表を聞いて,改めて数字を出していただいてすごく明確になったという感じがします。やっぱり,全国の私大で理工系分野が少ないというのには訳があるなという感じはしています。今,もちろん成長分野の人材育成支援で後押しをしていただいて,全国にそういう学部設置の動きが出てきており,うちもそこに今チャレンジしているところなのですけれども,設置はしたはいいんだけど,その後,運営していかなくてはいけないというところで,そこは多少,理工系に私学助成もという話もあるわけですけれども,とてもとてもというところはあって,地方の私学で新たに手を出していけるかというと,相当に覚悟を持たないといけないということが,今日の御発表の中の公的資金の違いというところからも明確になったなというところで,何をすればいいかということがすごく明らかになったのかなとも感じています。
一方,また石川先生の御発表の中で,我々私学はすごくいつも悩みながらやっているんですけど,学生からもらった学費で,それは学生に全て還元しなくてはという思いがある中で,当然,研究と教育は一体ですから,学生に還元しない研究というのはないのだと思うのだけれども,とはいいながら,やっぱり研究費に回していくというところが,すごく悩ましい部分でもあるなとは思っていて,やっぱり日本を引っ張っていくような研究に関しては,学生からもらったお金でやらせるというのではなくて,国がということは十分にあるべきだなと感じたところです。学生に還元される研究というものもたくさんあるので,それはしっかりとやっていけばいいかなとも思いました。
それから,今日,検討課題で挙げていただいたところの中で幾つかあったのですけれども,最後のほうで,やっぱり企業の最先端の人たちとのクロアポみたいなことも,必要です。よそれで,さっき,地方ではなかなか人材が得られないという話もあったけど,地方には本当に先端的なグローバル理系企業が結構あるのですけれども,そういったところの人などとのクロアポがやりやすくなるというのは非常に重要だと思っています。ただ,うちはまだ,ちょっと文系寄りなのですけれども,そのときに,やっぱり設置の審査みたいなときに,その人たちには,業務実績をかって,来てもらいたいのだけれども,研究業績を求められるみたいなことがあると,なかなか採用に結びつかないというようなことがあります。これは,設置審に関係している先生方もいらっしゃると思うのであれなのですけれども,やっぱり,なぜその人たちに来てもらいたいかということも考えると,教員審査の在り方みたいなこともしっかりと見直して,本当に学生に還元していくための人事ができるようなということも重要なポイントになってくるのかなと感じました。
細かいことを言うと設置基準も,これは必要なのかもしれないですけど,理系は文系に比べて教員数が倍ぐらい必要なんです。なぜ学費が高いかというのは,多分そっちなんです。それは,必要だからそういう基準になっていると思うのですけれども,機材だけではなくて人という部分でも,そういうことがかなり求められていてというところで,なかなか難しい部分があるので,それも含めて,全体として私学が研究を,特に理工系をやりやすくなるような方法,これは文系も含めてですけど,研究しやすくなるような方向が進んでいくといいなと感じました。
すみません。これも意見ということで。
【小路座長】 ありがとうございました。では,意見として承りまして,ほかの方はいかがでございましょうか。
どうぞ。
【角田委員】 委員の角田でございます。ありがとうございます。
今回のテーマである研究力強化について,実際のノウハウは現実に私立大学がもうお持ちであるということで,問題はそこを裏づける財源であって,特にそこが,限られた財の公正な配分がどうであるのかという中で,今回の御報告で御指摘がありましたのが,完全に国立と私立の間に格差がある状況であると。その格差を是正するべきである,私立大学も活躍するべきである必要性については,もうかなり,あまり異論がないような形でのことがお示しいただけたと思うのですけれども,これまでずっとその格差を是認してきたわけですが,それは,国立大学を私立大学と区別して,ある意味で特殊に扱ってきているという。ただ,その前提となるような,国立大学の資金獲得における制約の側面というのは,石川委員が御指摘のとおり,前提が撤廃されてきた部分もあるにもかかわらず,格差是認はそのまま残ってしまっているということがあるかと思いました。なので,そこを,国立大学法人化して,かつ外部資金・寄附金等の獲得においても,もう規制がかなり緩和・撤廃されてきたにもかかわらず,そこには目が向けられずに格差を残しているということにメスが入る必要があるのかと,伺っていて考えておりました。
ただ,そうしますと一方で反論もあり得るわけでして,まだ学納金に関しては,国立大学には制約がかかっているぞということで,伊藤委員の御指摘が従前あったような,国立大学においても,学納金,授業料の設定の自由化のような側面というのは出てくるのかというような議論も,巻き起こす可能性もある中で考えていかなくてはいけない。そうした場合については,当然,学生の負担を軽減するために,より奨学金を充実させて,国立大学であっても私立大学であっても,奨学金によって学納金について手当てがなされることによって,その前提があることによって,公的資金の導入に関する私立と国立との格差というものを解消し,前回の視察でもありましたけれども,あくまでも設置者別ではなく,機能別に支援の在り方が進められるべきだと,そういった御意見であると感じていた次第でございます。
以上でございます。ありがとうございます。
【小路座長】 ありがとうございました。承っておきます。
ほかにいかがでしょうか。伊藤委員,どうぞ。
【伊藤委員】 伊藤です。いろいろと皆様,御意見を頂きありがとうございました。全て私は賛同するところでございます。
その上で,理工系ということでは,先ほど石川先生からも指摘がありましたように,慶應も福澤は理系をつくりたかったのですけれども,財政的に全くできないという状況で,それがつくれなかったという経緯も,1800年代後半にはありました。このような中において,これだけの私立大学が理工系,今からこれから研究力を強化していくということは,今後,第7期基本計画においても,私立大学の役割ということを,文科省や経産省の皆様も積極的に,そのようなものが入るということを私たちと一緒に御尽力いただければということが1つお願いでございます。
その上で,先ほどの村上委員のお話の資料の一番最後のページなのですけれども,科研費が1人10億円より,100人・1,000万円,1,000人・100万円のほうがよいというお話がありまして,特に私もそれに関しては異論はなく,実際にそのような形になるのではないかと思ってはいるのですけれども,ただ,1,000人・100万円の科研費の取扱いをするには大変な事務処理が必要になり,ですから,小さい科研費であればあるほど,実は間接経費というものを手厚くしていただかないと,小さな私立大学では,もう事務処理ができないわけですよね。ですから,場合によっては私立大学の規模に対して,間接経費のここまでは最低払うという,下限というのですか,それを設定するというのは,とても大切なことだと思います。また全般的に,100万円の科研費を10本扱うのと,1,000万円の科研費を1本扱うのでは,同じ額が大学に入ってきたとしても,手間は10倍違います。私立大学というのは大抵,小さいものが多いですから,それに対して,ぜひ板倉課長におかれましては,小さい科研費を小さい大学が多く取るわけですから,3割の間接経費を増やすとか,また小さい私立大学に対しては,もう少し最低限,これだけの間接経費を支給するみたいなことを考えていただけるとよいのではないか,底上げになるかと思ったところです。
以上でございます。
【小路座長】 ありがとうございました。
それでは,ほかにいかがでしょうか。石川委員,どうぞ。
【石川委員】 今のに関連してなのですが,短くしますけれども,村上先生の資料に,「選択と集中は間違い」と書いてあるのですが,これはあまり断言しないほうがいいのではないかという。「間違いに近い」ぐらいにしておいて。なぜかといいますと,選択と集中をしたほうがいい分野もあるんです。それから,分散投資したほうがいい分野も。問題は何かというと,どの分野を選択と集中にして,どの分野を分散投資にするかの判断をできる人がいないということなんです。それで,分散投資のほうがいい分野というのは,例えば情報だとか,予算があまりかからないようなところは分散投資のほうがずっといいというのはみんな分かっている。ところが,大型機器というのは集中しないといけないので,それを使うような分野はそれが必要だという。その仕分をできるセンスが,設計する側にないというのが大きな問題ではないかなと思っております。
【小路座長】 ありがとうございます。
それでは日色さん,どうぞ。
【日色委員】 産業界から1つ,ちょっと危機感といいますか。今日お伺いした話は,まさにそのとおりなのですけれども,1つ,視点として改めて申し上げたいのは,今,世界中でホワイトカラーの数というのが急速に減っています。特にアメリカは本当にすごい勢いなんですけど,AIと,いろんなテクノロジーの進歩で,信じられない速度でホワイトカラーがもう職を失っているんです。それで,多分この現象がこのまま進むと,かなりの今いわゆるホワイトカラーと言われている人たちは行き場を失うわけで,そうすると,やっぱりエッセンシャルワーカーとか,あとアドバンスド・エッセンシャルワーカーの需要がはるかに大きくなって,先ほど言われていたミスマッチというのがかなり急速に広くなると思います。そうなると,やはり理系の学生をもっと増やして,さらに修士,PhD,しかも教員にもお金をかけて,設備にもお金をかけてやらないと,このミスマッチに対応できないという中で,本当に,では全ての学校に対して教員を用意して,設備を用意してできるのかというと,限られた資金の中では間違いなく不可能だと思いますので,先ほど今,選択と集中もありましたけど,やっぱりそれぞれの地区に合わせた,全ての学校が全ての理系の学部を持たなければいけないわけでもないでしょうし,例えば熊本だったら,御承知のとおりの分野に特化するとか,そういった選択をしていく必要があると思いますし,そうしていかないと多分,コスト的に全く合わないし,人材のデモグラフィーのミスマッチに対応できないと思います。
以上です。
【小路座長】 ありがとうございました。
それでは福原委員,お願いいたします。
【福原委員】 日頃,私学事業団の責任者として,私学振興の様々な実務に従事しておる立場から,今のいろいろな御発表や御意見,本当にごもっともかと拝聴いたしました。
その中で,ひとつは、私立大学でも研究力を強化しなくてはならない必要性が痛感されました。「知の総和」の維持向上のためには,研究力をベースにしたい。「知の総和」を維持向上するための中心になるのは,やっぱり研究力なのだという認識をみんなが持たないといけないなと思います。その研究力が,要は国際競争力もそれによって果たされるのですが,そのときに今日,指標として,論文数とかTop10論文数のみならず,いろいろな指標があるぞというときに,やっぱり特許の数だとかベンチャーの設立数だとか,あるいは博士学位の授与数だとか,あるいはアカデミア,研究者をどれだけ養成しているのかという,そういった組織としての大学の力というものを,もっと見ていく必要があるのかなと思ったのが1つです。
2つ目に,では私立大学で研究力を強化していく必要性を満たすための取組で課題になっているのは何かというと,やはり国公立大学との構造的な不均衡というものがあるのですけれども,これは石川先生のペーパーの6ページの左下に御指摘いただきましたように,私立大学,私学が抱えている構造的な,制度的な制約というのがあるものですから,これを今回,ぜひ検討していかないといけないかなと思いました。公財政支援を強化するということは大事なことですけれども,もう一方で,私学というのはやっぱり独立性と多様性を確保するために,社会のいろんなリソースを教育研究に向けるための学校法人という仕組みがあるのです。この学校法人の仕組みをきちっと強化していくために,私学法をこの4月に改正して,次はこの学校法人がどのように社会のリソースをもっと活用していくかと。それは,学校法人というのは,設立時だけにファンドをつくったらいいというわけではなくて,設立後も,その時代に合わせていろんなリソースを獲得してくる,そういう役割を各学校法人が果たさなくてはいけないので,これをエンカレッジするような支援というふうに持っていくべきだと思います。
そのときにやっぱり重要なのは,学校法人の経営者です。学校法人の経営者がきちっと,研究者や教育従事者,教学の研究に対する理解を持っているかどうか。しかし,地方,地域においては定員が充足できないので,先生方の研究力の向上に予算を回すというよりは,定員の確保といったほうにばかり目を向けてしまって,そこに所属する研究者が大変悲鳴を上げているということもあろうかと思います。
そのためには,今日の御意見の中でもあったように,所属大学の枠を超えて私学に属する研究者の共同研究の場を用意するとか,これまでの個別の科研費による補助ではなくて,そういう共同研究への支援が必要です。あるいは,学校法人の経営者も,大学を卒業させるだけではなくて,ここから大学院に進学する人材をつくることが大事だというふうに,全国の学校法人の経営者の方々の意識改革を進めないといけないと思います。教学や学長がどれだけ言っても,なかなか,これはもう旨くいかない。学長と理事長を兼ねておられる慶應義塾大学だったら問題はないのでしょうけれども,そうでないところが多いので,学校法人の理事者……,すみません,この場にもいろいろ理事者の方がいらっしゃいますが,理事者の方々と日頃,御一緒していますけれども,研究力ということには理解があるところと理解がないところがあるようですので,そういったところが必要かなと思いました。
ちょっと別の角度から,今日の御意見について賛同方々,コメントをさせていただきました。ありがとうございました。
【小路座長】 ありがとうございました。
では,もう時間になりましたので次に移りたいと思いますけど,私も一言,私見ですけど申し上げたいと思いますけれども,1のテーマの国際競争力の向上というのは,やっぱり当然,大学の研究力を強化して,大学そのもの,それから大学の研究力の国際競争力の向上というものもあろうかと思うのですけれども,日本の産業界の国際競争力,人材力の国際競争力も,IMDの年間のレポートによると,かなり低下しつつあると。ですので,大学そのものの国際競争力を上げるとともに,上げた競争力が,日本の学術を含めた経済,社会,それから国民生活の向上にも役立っていくと。そういった部分での国際競争力の向上というものにもつながっていくということが必要ではないかなということを感じるのが1つでございます。
さらに2つ目は国際競争力ということについて,ここのまとめでは,国立大学と切磋琢磨と記載いただきまして,全くこれは同感です。ただ一方では,私学法改正がありましたけれども,私学としては,場合によっては国立大学と切磋琢磨しなくてもいいのではないかなと個人的に思うところがあるんです。というのは,自由度高く,未来に向けて,かつまたグローバルに,それから様々な個性と多様性があった人材を育て,学びたいことをカリキュラムとして入れていくと。ですから,アドミッションもディプロマも自由度高く掲げていくというのが,私学の特徴・個性ではないのかなと思うので,そんなところも今後検討していくことが,抽象的ですけど,必要ではないかなと思います。
それから3点目は,やはりこれからの問題ですけれども,様々な問題とか課題が今日,明確になったのですけれども,やはり産学官が問題意識を共有するということが非常に重要ではないかなと。官と学だけで問題意識を共有しても,卒業生の大半は,やっぱり民間企業へ行くということは御存じで,特に私大は全大学の7割前後あるということで,その方たちはやっぱり産業界に入っていくと。また,研究部門の人たちも,日本の場合はまだ3割から4割弱ですけれども,米国に至っては博士課程の人材が,大体半分ぐらいは企業に入っていくと。これは,産業界も,いわゆる研究者を含めた博士課程に対するキャリアプランを示せていないという問題があって,同じような問題が,大学で学ぶ人たちにも,企業として,産業界として,キャリアプランを示せていないのではないのかなと。自分が思っている学びが,ビジネスの世界に入った場合にどのように生かされ,生きていくのかということを,やっぱり産業界がきちっとこれから新しい時代に向けて示していかなくてはいけないのではないかなと。
長くなりましたけれども,そういった意味でも,産学官がやっぱり私学の様々な問題について,まず共有するということが今後必要なのではないのかなということを,今日の御説明を聞いてちょっと感じたところでありますので,冒頭,私も申し上げさせていただきたいと思います。
それでは事務局,最初のほうはこれでよろしいでしょうか。ありがとうございます。大変貴重な意見を頂きまして,ありがとうございました。
それでは続きまして,次の「日本の産業を支える理工農系人材の育成」のパートというところに移りたいと思いますけれども,まず事務局より資料の御説明をお願いいたします。
【三木私学行政課長】 1つ目の議論,論点では,文理を問わず国際的な研究力の向上について議論を頂きましたけれども,既に先ほどから少し話も出ておりますけれども,これからの議論では,理系が日本では少ないという点を議論いただきたいと思っておりまして,ベースとなる関係資料を御用意しております。資料7でございます。
スライド2を御覧いただければと思いますが,OECD諸国と比較した,学部入学生に占める理工系分野の入学者割合をまとめております。我が国では17%にとどまっており,諸外国に比してかなり低い状況です。先ほどの阿部委員のお話にもありましたし,この後,御説明いただく経産省様からの将来の就業構造の推計と現状に照らした際,日本の現在の文系偏重の状況から,将来を見据えた文系・理系の望ましいバランスを目指していくことが重要と考えております。
3ページは,設置者別の学生数を分野別にグラフ化しており,私立大学において,右側ですけれども,人文・社会系が約半数となり,大きなボリュームを占めておるところが見て取れます。
4ページでございますが,2020年までのデータですので,直近の理工農系の増設が反映されておりませんけれども,専攻分野別の入学者数を見た場合,「保健」や「その他」が増加する一方で,「工学」,「理学」などの学部の入学者数が,2020年までのところは減少傾向にあるという状況でございます。
5ページでございますが,設置者別に理工農系分野の学部の学生数を長期的推移で見たものでございます。理工農系分野の学部学生の半数以上は私学が担っており,理工農系分野の日本の人材育成の量的拡大に,この間,貢献しているというのが見て取れると思います。
6ページでございますが,私立大学の初年度学生納付金の平均額をまとめたものでございまして,国立と比較した場合,文系でも1.5倍,理系ではさらに広く,2.2倍の差があるということで,特に理系における負担の大きさが見て取れるところでございます。
8ページ以降は,理工農系分野に関する財政支援の制度について,御参考のものをまとめたものでございます。以前もこれは見ていただいたと思いますけれども,私学助成の一般補助におきまして,理工農系学部や医学部・歯学部につきましては,より高い単価を設定してございます。また,特別補助において,高度研究や産学連携などにつきまして,KPIを設定しつつ,重点支援を実施しているところでございます。
しかし,9ページを御覧いただければと思いますが,私大の経常費補助の交付状況を,分野別の補助割合をまとめてございます。文系単科と比較した場合,理系単科の教育活動支出は2倍程度となっておる一方で,補助金は1.7倍程度にとどまっており,結果としまして,この表の一番右ですけれども,大学の教育活動支出に対する補助金の割合が,理系単科大学が1.3ポイント低くなってございます。
10ページはちょっと違いますけれども,初等・中等教育関係でございますけれども,高等学校段階におけるデジタル等,成長分野を支える人材育成を進める事業についてまとめた資料でございます。情報や数学等の教育を重視するカリキュラムの実施や教育環境の整備のため,全国の公・私立の1,200校程度を支援対象とし,DXハイスクールとして,デジタル等,成長分野への大学進学をする子供の学びを支援するものでございます。
12ページは,5月末に委員に御視察いただきました,千葉工業大学の視察についてまとめたものでございます。千葉工業大学様におかれては,分厚い層の理系人材を育てる大学として,学修者本位の教育の実施とか,宇宙やロボットについて,先端的に,そして産学連携の教育・研究現場を視察させていただきました。また視察中,学生の方々とも意見交換をさせていただきましたので,その模様も資料に簡単にまとめてございます。
私からは以上でございます。
【小路座長】 ありがとうございました。
では続きまして,経済産業省の今里課長,川上室長から,御説明をお願いしたいと思います。
【今里課長】 本日は貴重なお時間を頂きまして,ありがとうございます。経済産業省産業人材課長をしております今里でございます。
資料8に基づきまして,「2040年の就業構造推計について」ということで御紹介をさせていただきます。
ページをめくっていただきまして,2ページ目でございます。経済産業省では,産業構造審議会,こちらは文部科学省さんで言えば中央教育審議会に当たる,経済産業省で最も大きな審議会でございます。その中の新機軸部会というところで,今後の産業政策を考えていく上での中長期ビジョンというものをずっと検討してまいりました。この6月の頭に取りまとめました取りまとめの中に,このシミュレーションが一部として取り込まれております。
その中では,今後,2040年に向けたGXやDXといった横断的な影響がどういうふうに産業界に及んでいくかということ。さらに,主要な15の産業分野について,それぞれ定性的にどういったことが起こっていくかということのシナリオを書いたもの,これは実は60ページほどにまとめたものでございます。今日は時間の関係もございますので,そこは割愛させていただきますが,そのシナリオを前提といたしまして,では定量的に,2040年の産業構造の姿,就業構造の姿がどうなっているかということをシミュレーションしたものでございます。
基本的な考え方といたしましては,新規軸部会の中で,今後,国内投資をより高めていくことが,日本が成長していく上で非常に重要だという議論を積み重ねてきてございまして,2040年度に200兆円,これは今年の1月に石破総理御出席の下で,経団連も含めた経済界の方々に御出席いただいた場において,2040年に向けて官民で国内に200兆円を投資するというコミットメントを出させていただきました。この200兆円の国内投資といったものが着実に実行された場合に,どういった産業の姿になるかということを計算したものでございます。
次のページを見ていただければと思います。そういった基本的な産業の今後の姿,定性的なシナリオを前提とし,さらに200兆円の国内投資といったものがなされた場合にどういった産業の姿になるかというのが3ページ目でございます。
ポイントとしては,3点でございます。1つは,やはりこういった国内投資がなされていくことによって,製造業の基盤といったものが国内に一定程度,やはり残る,必要だというのが,まず1点目でございます。ただ,こういった製造業が今の姿のまま残るということではなくて,まさにDXであるとかGXといったことと合わさってトランスフォームしていくということで,製造業Xと我々は呼んでございますけれども,製造業自身の在り方も大きく変わりながら,しかし一定の基盤が国内に残るというシナリオでございます。そこを支える情報通信・専門サービスといったところも大きく伸びるというのが,もう一つのポイントでございます。3点目は,先ほど日色委員からもお話がございましたけれども,やはり地域の現場を支えるエッセンシャルサービスといったところも,まさに省力化であるとか,AIとかロボットといったものを使いこなすことによって,賃金水準を上げるアドバンスト・エッセンシャルサービス業として残っていくと。この3点が今後の産業構造の姿として非常に重要なポイントだと考えてございます。
その上で4ページ目でございますけれども,こういった産業構造を実現したことを前提とした場合に,ではどういった就業構造になるのかといったことのシミュレーションでございます。左下でございますけれども,人材需要はまさにこういった産業構造の転換を前提とし,さらに今後,AIやロボットがどの程度それぞれの産業に入っていくかと。こちらを,RIETIの深尾理事長の国際研究も前提といたしまして,各産業ごとに,技術的にどの程度,AIやロボットが入っていくのかという技術可能性,さらに,それが現場でどの程度の費用で,どの程度,本当に投資が実現されるのかという投資の可能性です。この2つの可能性から,産業ごとにどの程度,AIとロボットが入っていくかということをシミュレーションした労働需要というものを出させていただきまして,一方で労働供給につきましては,現状のトレンドをそのまま伸ばすということで,特段何もしないと。現状のまま放置した場合に,あるべき産業構造の姿との間で就業構造にどういったミスマッチが生じるかといった分析をしてございます。
その結果が,実際,5ページ,次に6ページ目でございますけれども,具体的なミスマッチの姿として,職種と業種で整理したものがこちらでございます。こちら,1つのポイントとしては,やはりAIやロボットを担う人材といったところが,全体で300万人超,不足する可能性があるということでございます。こちらは,製造業,情報通信業,主要業種を並べてございますけれども,あらゆる産業全てにおいて不足するという数字になってございます。したがいまして,ここをどのように育てていくかということは非常に大きな課題だと考えてございます。
一方で,ホワイトカラーである事務や販売,サービスといったところについては余剰になるという数字でございます。ここのところは,現状におけるAIやロボットの進展というものを前提にしてございますけれども,さらにこういったものが進めば,よりこの余剰というものは厳しくなるということだと思ってございます。
さらに,先ほど申し上げましたように,現場に製造現場の人材が必要になるということでございますので,生産工程においても人が不足してくるという姿になってございます。
さらに,この研究会との関係で申し上げますと,次のページでございます。それが学歴に,どういった形で不足数というものが生じるかということでございますけれども,やはり大学の理系,院卒の理系といったところで非常に大きな不足が生じてくるというのが大きなポイントだと思ってございます。もう一つ,高卒や短大といったところでも不足というものが出てございます。これは,先ほど申し上げました,生産現場が一定程度残るということが前提になった上での不足でございますが,これは先ほど申し上げたように,製造業がやはり今,現状のままではなくて,さらにトランスフォーメーションしていくということになると,今のまま高卒の方をラインにそのまま入れるという産業構造ではなくなると思われますので,したがって,こういった高卒や短卒の不足というものも,本当はもっと,大学の理系であるとか高専であるとか,こういったところで実際には吸収していくという姿があるべき姿なのではないかと議論をしているところでございます。
今後,経済産業省といたしましては,こういった不足,こういった前提をもちまして,これは文科省の方々と一緒に,産業人材育成プランというものを今回の骨太の方針等に入れさせていただいておりますので,具体的な政策対応をもって対応していきたいと思ってございます。
少し時間が延びましたけれども,私からは以上でございます。どうもありがとうございました。
【小路座長】 ありがとうございました。では川上室長,お願いいたします。
【川上室長】 続きまして,大学連携推進室の川上と申します。同じ産業構造審議会の下にイノベーション小委員会というのがありまして,今年に入ってからイノベーション政策を議論いただきました。私からはその御紹介をさせていただきたいと思います。
それを1枚にまとめたのが2ページでございまして,上が冷戦期までで「リニアモデルの時代」と書いていますけれども,国家が科学に投資し,それが技術になりビジネスに,リニアにつながっていくという時代。それで,真ん中が1980年代から2000年代ということで,国家が科学に,これはインターネットが代表例ですけれども,投資するのですけれども,それが技術になった途端に,ビジネスから投資が生まれ,エコシステムが回って,どんどん投資が回っていくという,イノベーションエコシステムの時代です。
ここで富を得たGAFAが今何をしているかというのが一番下でございますけれども,今,サイエンスに投資しています。量子技術を筆頭にして,グーグルなどが巨額の投資をしていくということで,かなり科学とビジネスが近くなっているというところで,日本はどうしていくのかという問題意識でございます。
3ページをお願いします。次が,これはもう御案内のとおりなのですけれども,真ん中がTop10%論文で,一番右,アジア・オセアニアに限ってプロットさせていただいています。人口が少ないにもかかわらず,オーストラリア,韓国の伸びが目覚ましくて,ここ数年で日本が抜かれているという状況でございます。
その背景が,5ページです。左がQSランキングですけれども,こちらもアジア・オセアニアだけ取ったランキングを示させていただいております。御覧のとおり,オーストラリアと韓国のプレゼンスが非常に高まっているということと,あと韓国に限って言うと,例えば56位の延世,67位の高麗,そして98位の浦項工科ですね。私立大学も顔を出しているという状況でございます。
さらにその背景,「成長する大学」ということで,日米で比較しているのが右でございますけれども,これはバランスシートの成長率をプロットしております。ポイントは2つで,UCバークレーとUCLA,スタンフォードを取っていますけれども,州立大学・私立大学にかかわらず,アメリカの大学は非常に急速に成長しているということ。もう一つは,これは2006年から取っているので,日米で大学を比較する場合には歴史的な背景とか構造的な問題が指摘されますけれども,アメリカでは短期間で見ても非常に大きな成長を遂げている大学が存在するということでございます。
6ページをお願いします。我々経済産業省は,産学連携機能がどうなっているのかに関心があるわけですが,これはTHEランキングですけれども,「Industry」という評価項目があります。このスライドでは,この項目が100点の大学を全て網羅しているのですけれども,日本は5大学,アメリカは6,ドイツが6,中国が5,韓国が3ということで,産学連携機能に限って言うと,非常に日本はいい位置にいるということでございます。
7ページをお願いします。産学連携の投資額は,2003年から見ると,かなり伸びていて,大体4倍ぐらいになっている,着実に伸びているのですけれども,右側,大学への国内企業からの投資割合ということで見てみますと,丸で囲っているところなのですけれども,諸外国と比べて非常に低いということで,大学は産学連携を頑張っていただいているのですが,産業界,企業が払うものを払っていないということ,投資すべきものをしていないということと,裏返して言うと,大学も取るべきものを取りに行っていないのではないかという問題意識を我々は持っているということでございます。
今後の方向性ですけれども,8ページをお願いします。創発的な研究,それからボトムアップの研究,こういったことを全く否定するわけではありません。ここは,文科省さん,大学の皆様にしっかりお願いしたいんですけど,我々としては,産業政策から見て重要な戦略分野を特定して,一気通貫で研究開発から市場獲得にかけて支援できないかということを考えているということでございます。
9ページをお願いします。まず手始めにやっている分野が量子ということで,1,000億・3年で予算を確保させていただきまして,その半分を産総研のG-QuATの設立に投資させていただいておりますけれども,もちろん大学の皆さんにもしっかりと研究していただくということで,支援を進めてまいりたいと思っております。
10ページをお願いします。もう一つの方向性です。経済産業省としては「成長する大学」に集中支援できないかということです。誤解なきように申し上げたいのですが,左下の運営費交付金とか私学助成とか科研費とか授業料とか,こういったところに経産省として何か申し上げようというつもりは全くございません。我々としてコミットしていきたいのは,右側にぐるぐる回っているところです。知財収入であるとか共同研究の研究費であるとか,すなわち,企業,産業界からの投資や,あるいはスタートアップを通じて資金を獲得いただき,成長していただきたいということで,我々としては産業界と一緒になって「成長する大学」を支援していきたいということでございます。
具体的には,共同研究を大型化していくということがあります。その上で間接経費をしっかり取っていただくということと,あともう一点は,今,共同研究の単価が300万円以下という現状は変わっていないわけですけれども,これを増やすために一番手っ取り早いというか望ましいのは,人件費をしっかり取るということです。アメリカの産学共同研究では,博士学生の人件費とか教員の人件費とかを乗せてやっているので,1,000万円をすぐに越えていくわけですけれども,日本では必ずしも人件費を乗せていない。日本でもポスドクや教員の人件費をしっかり取っていけば,大型の共同研究が増加しますし,大学への投資も進むという認識でございます。
11ページですが,韓国の話ばかりで恐縮なのですけれども,韓国では人材育成も絡めて,企業が学科の運営資金を100%投じて運営しているというような事例もあります。台湾ではこれに国家もお金を出してやっているということでございますけれども,日本でどういう形なら実現できるか。例えば大学院で大型の共同研究を組織対組織でやりながら,そこで学生も育てていくみたいなことができないかということで,今,我々の中で検討していますし,大学や企業の皆さんと議論を重ねているところでございます。
以上が今後の方向性ですが, 12ページをお願いします。経済産業省としても,これまでも若手研究者の支援事業,これは令和2年から始めておりますけれども,近年,右下にありますけれども,私立大学のプレゼンスも高まってきておりまして,私立大学への支援も非常に拡充しているということでございます。
13ページをお願いします。最後になりますが,我々としても博士人材は非常に重要だと思っておりまして,民間企業での活躍に向けて,企業への手引き,大学への手引きということで,具体的なアクションをまとめさせていただいて,博士学生の民間企業への就職,活躍に向けて背中を押させていただいているということでございます。イノベーションの文脈では,誤解を恐れずに申し上げますと,これまで国立大学から進んできたということは否めないわけですけれども,私立大学は非常に意思決定や動きが速いですし,現にスタートアップ,先ほど御紹介がありましたけれども,慶応義塾大学さんはここ5年ぐらい,急速に順位を上げてこられて,資金獲得も現在3位と,本当に急速に伸びてきていらっしゃるので,我々経産省としても私立大学には非常に期待しているということでございます。
すみません。長くなりましたし,ちょっと1つ目のテーマに近いようなお話になりましたけれども,私からは以上でございます。ありがとうございました。
【小路座長】 ありがとうございました。
それでは次に,お二方の御説明を踏まえまして,ヒアリングに移りたいと思います。ヒアリングにつきましては,鶴委員,それから小原・学校法人名城大学専務理事から,それぞれ御発表いただきたいと思いますけれども,その後に意見交換に移りたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
では,鶴委員から。
【鶴委員】 それでは,学校法人鶴学園の鶴です。
これまで非常に,国際化における日本の将来のあるべき姿でありますとか,あるいは国立大学と,私から見れば大規模私立大学の間での教育とか研究の話が出ておりまして,非常に高いレベルの話と感じております。ただ私からは,地方における私立大学,特に私立理工系大学の在り方,それから人材育成などについて,改めて御理解いただきたいということでお話をさせていただきます。
それでは,次のページをお願いします。これはもう,社会課題解決の方法の変化ということで,これまでは,工学部でありましたら,例えば自動車については機械工学で学んでいればいい,それから道路や橋梁であれば土木工学で学んでいればいいということだったのですが,そこに工学というものが入ってきて,情報学を取り入れることによって,新しい情報学ということで社会課題を解決していかなければならない時代に入ってきているということで,これに基づいて我々も教育していこうということで今進んでおります。
次のページをお願いいたします。この新しい工学の教育の下,地方の私立理工系大学が担う重責といたしましては,地方産業とインフラの維持発展,すなわち地方経済を下支えし,かつ一流大手企業を支え,ジャパンテクノロジーの中核を担う人材を育てることであると考えております。2024年,広島工業大学の就職率は98.9%,それから専門職就職率が94.2%となっております。広島県内の就職率は40.2%ですが,中国・四国・九州全体を合わせますと66%,この地域に就職しております。一方で,本学の規模でも大手企業からの求人が多くありまして,関東地区への就職率は29%,近畿地区就職率が12%となっております。また,中小企業への就職率は60%ぐらいでございます。
地方企業で知名度のある大手就職先といたしまして,まずは自動車メーカーのマツダ株式会社があります。さらに,世界的なスポーツボールメーカーであり,自動車部品も供給している株式会社モルテンがあります。精密加工装置を開発し製造している株式会社ディスコもあります。そして,精米機器メーカーの株式会社サタケも広島県にあります。今の米騒動は,サタケなくしては解決できません。そして,これらの企業を支えるために,特色ある技術を持った中小企業が数多くあります。こういった企業がなければ,地域は成り立ちません。
御想像ください。本学の卒業生が,これら地方の採用枠,中小企業枠を埋めなかった場合,誰がこの枠を埋めることができるでしょうか。国立の大学院大学や,関東・関西の大規模私学でしょうか。国立大学や大規模大学の修了生・卒業生の多くは,グローバル企業や上場企業などの枠にはまっており,彼らが大挙してこれら地方企業の枠を埋めることはなかなかあり得ません。広島のものづくり産業を支えているのは広島工業大学です。
今,私がお話しした例は,本学に限ることではありません。全国各地で同様に,地域を支えている私立理工系大学はたくさんあります。ただ,私立理工系大学には,授業や卒業研究などを通して学生を育て,さらに高度な研究を取り組むということをやっておりますが,それには実はやはり大きな経費がかかるという問題があります。
次のページをお願いします。これは,広島工業大学に設置してある2軸載荷試験装置です。購入金額,補助金額,本学負担金額は,ここに書いてあるとおりでございます。この装置は,実物の建物と同じ柱やはり,壁などを用いて,建物の重さを想定した垂直的な荷重や,地震の揺れを想定した水平的な荷重を加えることで,強度を調べることができる装置です。この装置を使用することで,新しい構造システムを開発するのに必要な検証実験を行うことができます。
次のページをお願いいたします。これは,地球観測衛星からの電磁波情報を直接受信できる直径13メートルのアンテナです。1999年度の私立学校施設整備費補助金で採択されました。経費等は御覧のとおりで,かなり大きな金額となっております。このアンテナで受信したデータを画像解析いたしまして,防災・減災情報並びに環境保存のための包括的な災害・環境危機管理システムの研究開発を実施し,安全で快適な国民生活への社会的貢献をしております。ただ,このアンテナの解析処理装置は現在,故障しております。再起動の検討を進めているところです。ところが,このアンテナは,アメリカの企業により製造されているということなどもありまして,修理にはかなりの費用がかかります。そこで,再起動に向けた新たな補助金申請を,今,予定しております。
これら2つの装置で学び,研究した学生は,私たちが安全で快適な社会をつくるために欠かせない人材となって活躍しています。また,研究成果も社会の安心・安全に大きく貢献しております。ただ,こういった装置の導入は,本学単独では無理があるほどの高い金額です。補助金なしでは導入できません。年間の維持費も高額となります。私たちの生活に欠かせない人材育成と社会貢献に取り組んでいる私立理工系大学,また地方創生には欠かせない地方にある私立大学。こういった現状の一部を紹介させていただきました。私立大学に対し,これまで以上の御理解と御支援をお願いいたします。
また先ほどから,理工系人材を増やすということで,いろいろな御意見が出ておりますが,私は大学経営をやっておりまして率直な感想といたしまして,大学がこのようにいろいろ変わったとしても,初等・中等教育が大幅に今以上に変わらないと,簡単に理系人材が増えるとは思えません。初等・中等教育も併せ,現在,先ほどありましたDXハイスクールやGIGAスクール構想が出ておりますけれども,こういったものと併せて,初等・中等教育の内容も再検討いただいて,これから理工系人材を増やしていくという方向に行っていただければなと考えております。
私からのお話は以上とさせていただきます。どうも御清聴ありがとうございます。
【小路座長】 ありがとうございました。
それでは小原専務理事,お願いいたします。
【小原専務理事】 名城大学の専務理事の小原と申します。よろしくお願いいたします。この3月まで6年間,学長を務めておりまして,その間に本学で行いました理工農学系の分野の人材育成強化について,事例を報告させていただきます。
次のページを開けていただきますと,まず本学の概要でございますけれども,本学は名古屋市に位置しておりまして,1926年,名古屋高等理工科講習所を基にしておりますので,理工系に非常に強い大学ということになっております。来年の2026年に開学100周年を迎えます。学部規模としましては,10の学部,そして9つの研究科を有しておりまして,大学院生を含めて1万6千人の学生がおります。
本学は,次のページを見ていただきますと,立学の精神というのが出ておりますけれども,この立学の精神を踏まえて,来年の100周年をゴールとしますMS-26戦略プラン,そして,それ以降の新ビジョンとともに,本学は開学以来ずっと,実学の精神を重視しておりますので,それに沿ったビジョンを掲げております。
次のページをお願いいたします。そのビジョンを具現化するために,上のほうに小さい字で書いておりますけれども,様々な取組を行っておりまして,その結果,全学の学生でのアンケートによりますと,成長実感としましては,これは2020年度入学生のデータでございますけれども,入学時は47%であったものが90.8%ということで,非常に効果が出ていると理解しております。
続きまして,理工農系の分野の人材育成強化について御説明をさせていただきます。
まず情報分野でございます。これも釈迦に説法でございますけれども,産業界におきまして,情報分野の人材ニーズは非常に高い中で,2030年には先端IT人材が54.5万人不足するであろうという推計もなされております。本学でも,ここ4年間を見ますと,求人数が1.4倍に増加するという傾向がございます。
そのような産業界,社会のニーズを受けまして,次のページでございますけれども,本学が行った具体的な取組を紹介させていただきます。本学では,まず1つ目としましては,中期事業計画におきまして,「数理・データサイエンス・AI」を,重視するキーワードとして掲げて,情報分野の体制強化を推進してまいりました。また,2022年度に理工学部情報工学科を改組しまして,本学10番目の学部として情報工学部を設置しました。収容定員は,もともと600名であったのですけれども,それを720名に増やして,志願者数は右のグラフに出ておりますように,改組前の1.3倍に増加しているのが分かっていただけると思います。さらに2026年,ちょうどこの学部の完成年度に当たりますけれども,理工学研究科情報工学専攻を改組いたしまして,情報工学研究科を開設する予定にしています。こちらも収容定員を60人から90名に増加させる予定にしておりまして,この取組につきましては,大学・高専機能強化支援事業に採択していただいております。
次のページをお願いいたします。併せまして,本学は総合大学でございますが,理系だけではなく文系の学生も含めて,全てに数理・データサイエンス・AIの素養を身につけさせる必要がございますので,スライドに示しておりますように,教育のコンテンツの充実を進めております。副専攻あるいは認証を受けるなど,いろんなことを行っております。
続きまして,農学分野の人材育成強化につきまして,次のページに移らせていただきます。農学分野につきましては,私はもともとが農学部の教員で,農学部長時代に大学院の改革を主導してまいりましたので,その取組について紹介させていただきます。
まず産業界からは,こちらにつきましても,ニーズとしましては,スマート農業等の展開に向けた高等専門人材や,いわゆるグリーン人材の育成が求められております。本学の農学研究科に対する求人倍率も,右のグラフにありますように,ここ4年で1.4倍に増加しております。
一方,本学が位置します中部地区におきましては,農学研究科の数が非常に少のうございまして,主に国立大学,そして一部私立大学という状況です。そういう中で,本学は地域の高度農学人材教育拠点としての役割を担っていると自負しております。その理由としましては,笑われるのですけれども,名古屋大学さんの農学部と本学の農学部は,実は当時は文部省様でしょうか,その認可はうちのほうが早くて,愛知県下で最も古い,農学部といつも言っておりまして,それをプライドにみんな頑張っていきましょうというのを,農学部長時代,ずっと言っておりましたので,つけ加えさせていただきます。
そういう中で,実は2017年,ちょうど私が農学部長をしている最中だったのですけれども,農学研究科におきまして,奨学金制度を拡充するということを行わせていただきました。といいますのが,この時期,入学希望者がどんどん減りまして,ちょうど定員を下回るという状況になったのです。ところが結果を見ますと,他大学の大学院にたくさん進学しておりまして,大学院の進学数で見ると,それなりのパイがあるのですけれども,本学にとどまってくれないという非常に難しい問題が起こりました。そして最初は,学生の興味を引く研究をどんどん進めて,魅力ある研究を進めてくださいと号令をかけたのですが,あまり一向にそれが効果として現れないという中で,実は奨学金というものをつくろうではないかということで,ちょうど9ページになるのでしょうか,その表にありますように,国立大学の学費負担とほぼ同等になるように奨学金を与えてみたらどうだろうということで,ただ原資に限りがございますので,こちらにありますように,右端の赤いラインで示しておりますように,ちょっと差はあるのですけれども,少しそこの差額を埋めるための奨学金というものをつくり上げました。大体,奨学金としては2万円から12万円程度,成績によって少し差はあるのですけれども,国立大学との差を縮めるということを行わせていただきました。
次のスライドをお願いいたします。その結果,先ほど申しましたように,前年の定員が20名なのですけれども,19名の志願者だったところが,次の年は37名,そしてどんどん増えてまいりまして,現在では56名の志願者を確保するという状況にまでなってまいりました。
次のスライドをお願いいたします。志願者増を受けまして,今度は学長になってからですけれども,農業研究科長に,これだけ増えているのだから定員を増やしましょうということで,40名から60名に増やさせていただきました。アンケートを見ますと,進学した理由としましては,学部時代の指導教員の下で研究を継続したかったという回答が最も多いことから考えますと,やはり経済的な負担の軽減により、進学先を選ぶ先に,研究継続を優先できるようになったことが大きいと思います。あとは数行ずつですので,簡単に済ませますので,少し続けさせてください。
12ページです。こちらは本学の投資ですけれども,私がちょうど学長に就任しますとき,私立大学研究ブランディング事業に,ここにあります2つのセンターが採択されておりましたが,結局,補助が打ち切られました。さあ,どうしようということになったのですけれども,この2枚看板は本学の大切な事業なのでということで,法人の御理解を頂きまして,補助金額を大学のほうから負担することによりまして,名城大学版の私立大学研究ブランディング事業として継続させていただきました。その他,社会の要望するようないろんな研究も,どんどんプロジェクトとしてつくり上げて,チャレンジしていただいております。下のほうに出ております。
最も大切なこと。これもよく,先ほどの広島工業大学さんもおっしゃっていましたけれども,こういう教育研究を充実させるためには,施設設備への投資というのが不可欠なんです。実は理工学部だけでも,ここ2020年,2022年に,こちらにありますように,教育研究の最先端の経験をさせるということも含めて,建設を行っております。こういうことを考えましても,補助というのは非常に大切なことではないかと思いますので,ぜひいろんな面から私学に対する補助をお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
【小路座長】 ありがとうございました。
ちょっと時間が迫ってまいりまして,実は私から,先ほど資料6で4名の委員の方からまとめていただいた「日本の産業を支える理工農系人材の育成」ということで,現状と課題,それから今後の方向性と具体策をまとめていただいて,ポイントを御説明させていただこうと思ったんですけど,十分,いろんな方に御説明いただいたので,皆さんの意見を伺ったほうが時間として有効かなと思いますので,これについての私のポイント説明は省略させていただきまして,15分程度になりますけれども,「日本の産業を支える理工農系人材の育成」ということについて,皆さんから御意見を賜りたいと思いますけれども,いかがでしょうか。
田村委員,どうぞ。
【田村委員】 私も当然,理工農系の人材育成,また増やすということは大賛成でありますが,一方で,2040年に27%,学生数が減ると。そうすると,今,私立大学の半分は人文・社会科学でありますし,特に私の社会科学のところが,私立大学は9割近いんです。要は文系をどうするかというのは,要は私立の文系がどうなるのか。恐らく,三割,四割減という,ちょっと分かりませんけど,ダウンサイズの議論も当然出てくる。私立の理系を強くするということは,そこを各大学がどう考えるかですし,これをもし自由競争的にやっていくと,恐らく3大都市圏の私立文系はかなり残るけど,極端なことを言えば地方の私立文系は壊滅状態になるとなると,なかなか地方もつらい。そこは,地方の私立,文系と理系はある意味,セットの部分があります。そういうところを,文科省さんがどのような形でインセンティブとか,何らかの誘導をするのか,それとも完全に市場に委ねるのか。その辺は議論があるかと思います。以上,文系の立場で申し上げました。
【小路座長】 ありがとうございました。承ります。
ほかにいかがでしょうか。どうぞ。
【中村委員】 山梨大学の中村でございます。
先ほどからいろいろ御報告とか御意見をお聞きして,いくつか考えているのですが,1点目は,非常に思ったのは,地域によってすごく違いがあるなと。例えば私ども山梨県内では,短大を含めて高等教育機関が,12ありますが,理系を持っているのは山梨大学だけです。あとは全部,文系になります。そういった違いがあることと,もう一つの違いは,大学によって大分考え方が違うと思います。例えば,建学の精神ということがよく言われるのですけれども,大森委員のところの共愛学園などは,すごく地方創成をやっていて,とても勉強になりますが,大学によっては,地域の創生は関係ないと,はっきり言う人もいます。もっと言うと,研究はどうでもいいと言う大学もあります。でも,その大学は一生懸命,地域のエッセンシャルワーカーを育てている。その辺に,少し地域によっての違い,大学によっての違いがあるのかなと考えました。
この後,考えていかないといけないことは,やはり大学連携ということだと思います。山梨大学は山梨県立大学と大学連携等推進法人を設立していますが,国公私を超えた,連携を増やしていきたいのです。最近では,私立の中でも何大学かが連携に興味を示して,入りたいなという大学もあるのですが,そこに関して一番大事なのは,私は,地域のニーズだと思います。これは,地域のエッセンシャルワーカーをしっかり育てることと,先ほどからお話が出ているように,山梨は小さい県ですが,山梨なりの水素とか防災といった研究もありますので,そういったところをやはり伸ばしていかなくてはいけないなと思っています。
先ほどお話が出た中では,まずは課題をしっかり捉える。地域や,自治体,あるいは企業の課題を,しっかりそのニーズを捉えてシーズを変えていくということがすごく大事だと思っていまして,先ほど小路座長がおっしゃったように,やはり地域の大学では,産学官,これに金融も入れて「金」ですか,その連携を進めないといけないなと思っています。そのことをすごく今日は感じました。
そのために,私立大学の学長の皆様とお話をすると,連携推進法人の中に入って,地域の産業界あるいは地域のニーズをしっかり捉えるためには,やはりある程度,私立大学には補助が必要だということをお聞きしています。
あとは具体的に,ニーズを知ってシーズを変えるときに,スピーディーにやらなくてはいけないのです。そのためには,いろんな規制緩和,例えば設置審であるとか,あるいは今日,経産省の方が来ていますので,色々な資格とか免許をもう少し取りやすくしてあげる。リカレントやリスキリングに関しても,ただ単に修了書一枚では駄目なんです。それによってステップが上がっていくというのがすごく大事だと思っていますので,そんなことを今日は感じてお話をしました。
以上です。
【小路座長】 ありがとうございました。地域の話を頂戴いたしました。
ほかにいかがでしょうか。オンラインで平子委員,どうぞ。
【平子座長代理】 オンラインから失礼します。
先ほどの名城大学の小原先生のお話を聞いて, 2040年まで10年以上あるので,今できることと,それからロングスパンで考えていくことと,2つに分けて考えなくてはいけないのかなと思いました。
鶴先生からも,中等教育が変わらないと,簡単に高等教育で急に理系人材はできないと。この御指摘もそのとおりだと思います。まずは大学の中で文理融合教育がどこまでできるのか,一度各大学で追求してもいいののではと考えます。これは,短期的に,でもないのかもしれませんが,できる1つではないかと思いました。
そして,中長期的に考えていかなくてはいけないのは,これから10年ぐらいのスパンですが,先ほど日色委員からも御指摘がありました通り,AIによって産業構造が変わり,AIに代替される仕事は増えてくると思います。経産省からの指摘では,2040年におけるミスマッチがこれだけあるというデータがございました。将来,AIで代替する職業は出てきますので,我々人間がやるべき仕事をどう予測していくのか,ここは非常に大事です。
AIは,人間の仕事を代替する一方,人間への教育を手伝うという側面もあります。これまで文系の学問にしか興味がなかった人たちが,AIによって,少しでも理系的なリテラシーが上がり,場合によっては理系の素養が身につくようなことが今後出てくる可能性があります。そのようなことも見通しながら,学生全員の理系リテラシーを高めていくことが大事だと思いました。2040年までの中でどういうタイムラインで理系人材を育成するのか,考えていく必要があるということです。
以上でございます。
【小路座長】 ありがとうございました。
それでは,よろしいでしょうか。ちょうど時間にもなりまして,御予定があろうかと思います。
ちょっと私もよろしいですか。実は私は経団連の役員をやっておりまして,経団連でも2040年に向けて,「FUTURE DESIGN2040」という,日本のあるべき姿に向けて7つの施策をつくりまして,それを政府にも,それから世間にも公表いたしました。
日本のあるべき姿で,御参考いただければと思うんですけど,1つは最先端技術立国。人口減少と,それから資源のない日本。この中でやっぱり日本のあるべき姿としましては,最先端科学技術立国にならねばいけないと。それから2つ目は投資立国。3つ目は国際特許を含めた無形資産立国。特に最先端の科学技術というのは,どうしてもやっぱり理工系の人材がこの立国をリードしていく人材になるのではないのかなということで,我々産業界としても,こういった理工系の人材をどう増やし,それから産業界でもどう活躍してもらうかということについて,新たに2040年に向けて考えていきたいということで,今,検討しているということを申し上げておきたいと思います。
それともう一つは,これは経産省さんかと思いますが,中心になって,最先端の8分野,戦略分野,戦略的な8産業分野ですか。これについて,先端技術を持った人材をどう育てるか。それから国際ルールメーキングを日本としてどう主導していくかということを,国としても6月末から7月頭にかけてまとめると。ですから,AIとか半導体とかバイオとか,この8戦略分野に対する理工系人材をどうつくり上げていくかということも,これは国大のみならず,国公立のみならず,私大でも真剣に考えていかなくてはいけないのではないか。これがやっぱり,「金」も含めて産学官の融合にも非常に重要ではないかないうところを思うところが1つあります。
それから,先ほど山梨のお話も頂きましたように,2040年に向けて,2040年問題というのが出ているのは御存じかと思いますけど,約1,720ある市区町村の49%が消滅可能性都市と言われていると。そうなると,やっぱり特に,地方というか地域の産業政策と教育政策をどう融合させて,地域の産業を復興させていくかと。それが結果的に地元への就職率も高めていくということになって,とにかく人がいなくなると地域はもたないので,人が地域に残らないといけないので,そうすると,大学と産業政策の融合によって,産業を復興させて人をということで,こういった2040年問題も含めて,私立大学の理工系人材の在り方というのも考えていかなくてはいけないのではないかなと。
それから初等・中等教育は,私は個人的には全く同感で,昨日も,伊藤先生も入っていた経団連との産学協議会でも話が出まして,やっぱり理工系人材は,女性も含めてなのですけれども,初等,さらに言えば幼児教育も含めて初等教育から,理系に関心を持つ子供さんたちをどう,つくるという言い方はおかしいんですけど,つくっていくかということは非常に大事で,やっぱり理科,科学,物理関係の先生方が少ないので,どうしても教室での話題が理工の話題が少なくなってしまうと。ものづくりも含めてなのですけれども。そうすると,そういった先生方は,やっぱり大学の私大も含めたところで先生方ができていくわけで,そういった理系の先生方をどう,これはやっぱりつくっていくか。その先生方によって子供さんたちは影響を受けていきますので,そういった意味での先生方と,それから初等教育の中での子供さんの理系への関心をどう高めていくかということが非常に必要かなと。
最後にもう一つは,やっぱりスタートアップ。ここも日本は注目しなくてはいけないのではないかなと。裾野は広いんですけど,ユニコーンというのは日本は8社しかなくて,米国は約660かな,日本の80倍ぐらいあるんです。先ほどの論文数は落ちてはいても,引用数が極端に落ちているというところが,関連性もあるのではないのかなと。結果的に引用数が落ちることによって,場合によってはスタートアップのユニコーンなどが,なかなか裾野は広くても伸び切らないということもあるのではないのかなと。そのようなことを幾つか感じたところもありまして,少し幅広に今日は問題提起も頂いて,お話も頂いたので,今後理工系ということについては私大として考えていくということが必要かなと思います。
すみません。ちょっと余談的なことを話しました。
では,以上をもちまして,時間にもなりましたし,皆さんから大変有益な御説明と御意見を頂戴したと思います。これにつきましては事務局でまとめていただいて,次回に備えていただきたいと思います。
それでは,時間をちょっと過ぎてしまいましたけど,本日の会議については,これで閉会とさせていただきます。
最後に事務局から,今後の会議の予定等について説明をお願いいたします。
【菅谷私学行政課課長補佐】 次回,第4回検討会議は,7月28日月曜日,13時半から15時半にて開催を予定しておりますので,御参加のほど,どうぞよろしくお願いいたします。
【小路座長】 ありがとうございました。では,お疲れさまでございました。
―― 了 ――
高等教育局私学部私学行政課