2040年を見据えて社会とともに歩む私立大学の在り方検討会議(第1回)議事録

1.日時

令和7年3月10日(月曜日)15時30分~17時30分

2.場所

ハイブリッド(対面・Web)開催 ※傍聴はWebのみ

3.議題

  1. 本検討会義の運営について
  2. 私立大学に関する現状等について
  3. 有識者等からヒアリング
  4. 意見交換
  5. その他

4.出席者

委員

(座長)小路明善座長
(座長代理)平子裕志座長代理
(委員)阿部守一、石川正俊、伊藤公平、大野博之、大森昭生、尾花正啓、角田雄彦、田村秀、鶴衛、中村和彦、日色保、福原紀彦、村瀬幸雄、両角亜希子の各委員

文部科学省

藤原事務次官、伊藤高等教育局長、奥野審議官、浅野私学部長、三木私学行政課長、板倉私学助成課長、錦参事官(学校法人担当)、吉田高等教育企画課長、石橋大学教育・入試課長、井上国立大学法人支援課長

オブザーバー

橋本総務省地域力創造グループ地域政策課長、今里経済産業省経済産業政策局産業人材課長

5.議事録

【片見私学行政課課長補佐】  定刻となりましたので,ただいまより,2040年を見据えて社会とともに歩む私立大学の在り方検討会議を開催いたします。
 本日は,御多忙の中,多くの関係者の皆様に御参加いただき,誠にありがとうございます。会議の冒頭は,事務局で進行させていただきます。
 本日の検討会議は,対面,オンラインの併用で開催しています。また,冒頭から,取材,傍聴の方がおられることを御了承いただきたいと思います。
 対面で参加いただいている皆様におかれましては,iPadが置かれていますけれども,ビデオ用として利用しておりますので,発言時も含め,操作はしないようにしていただければと思います。誤って操作等をされた場合には,事務局までお申し出いただければと思います。
 また,配付資料につきましては,次第のとおりですけれども,過不足等ありましたら,事務局までお申しつけください。
 それでは,会議の開催に当たり,事務次官の藤原より挨拶申し上げます。
【藤原事務次官】  このたびは,この検討会に御参画いただきまして,誠にありがとうございます。先月,中央教育審議会におきましては,2040年の社会を見据えた高等教育の在り方に関する答申を取りまとめていただき,我が国の「知の総和」を向上させるための提言をいただいたところでございます。2040年の社会の姿を展望した際,日本の高等教育は,経験したことがない,急激な18歳人口の減少に直面しているわけでございます。このことにより,明治期に高等教育制度を創設して,戦後,今の高等教育制度を構築してきたわけでございますが,現在,大きな歴史的な転換点に立っていると,このような認識を持っているところでございます。明治期の高等教育機関は,帝国大学を中心とした官立学校が主体となっていたわけでございますが,現在は,私立大学において,我が国の学部生の8割が学んで,そして,日本の高等教育の大部分を占めているといった状況でございまして,教育,研究,地域振興において,国立大学が量的・質的にカバーできていない役割を幅広く果たしていただいているわけでございます。こうした現状をしっかりと見詰め直して,私立大学の果たしている役割に応じて,意欲的な取組を後押ししていくことが必要であると考えてございます。
 一方で,教育や研究の質の担保ができず,その役割を果たすことができない私立大学につきましては,学生の学びの継続が確保できるようにしながらも,今後,縮小,統合,撤退について,経営状況に応じて早い段階で適切に御判断いただく必要性が今まで以上に高まっていくものというふうに考えております。
 併せて,我が国の「知の総和」の向上を図るため,国公私立の大学が,国や地方公共団体,産業界など,関係者と連携しながら,人材育成や研究開発を行い,社会全体による高等教育への参画や投資が増えていくことを目指していきたいと考えております。地方においては,地域になくてはならない大学として必要な人材の輩出が行えるよう,これまで以上に緊密な連携が求められます。また,日本の経済社会の牽引力として国公立大学と切磋琢磨していくための私立大学の高度な教育研究環境を整備していくためにも,社会全体による大学への参画や投資は不可欠でございます。
 この会議においては,私立大学関係者だけではなく,地方自治体や経済界といったステークホルダーの皆様の参画を得て,総務省や経産省とも連携しながら,私立大学がそれぞれの大学の特徴や強みを生かして学生や社会の期待に応えていくことができるよう,中央教育審議会の答申を踏まえながら,私立大学の役割や具体的な施策の方向性を御議論いただきたいと考えております。どうぞ,先生方の忌憚のない精力的な御議論をお願い申し上げます。
 以上,簡単ではございますが,冒頭の御挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
【片見私学行政課課長補佐】  ありがとうございました。
 本会議の委員の御紹介につきましては,お手元にお配りした資料に代えさせていただきます。
 なお,本日は,議題3のヒアリングの関係で,名古屋大学の伊藤教授,日本文理大学の吉村副学長,大分県総務部学事・私学振興課の木部課長の3名にも,御参加いただいております。後ほど,御発表をお願いいたします。
 続きまして,本会議の座長及び座長代理でございますが,文部科学省から座長については小路委員に,また,座長代理については,座長からの御指名を受け,平子委員に,それぞれお願いし,御了解を得ておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは,小路座長に以降の進行をよろしくお願いいたします。
【小路座長】  初めまして。ただいまの御指名をいただきました,小路と申します。私は,アサヒグループホールディングスという会社の会長をしておりまして,また,経団連の副会長兼,経団連の中に教育・大学改革推進委員会という大変物々しい委員会がございまして,その委員会の委員長を仰せつかって,教育関係について,経済界を代表して仕事をしているところでございます。
 本テーマについては,御専門の有識者の皆さんが大変多くいらっしゃいますが,大変僭越ではありますが,御指名いただきましたので,私と,座長代理,横にいらっしゃる平子さんと御一緒に務めさせていただきたいというふうに思いますので,改めてよろしくお願いいたします。
 それでは,進行に移りたいと思います。議事に入らせていただきまして,まず,議題(1)の本検討会議の運営について,事務局より御説明をお願いいたします。
【片見私学行政課課長補佐】  では,資料1を御覧いただければと思います。資料1,設置要綱でございます。簡潔に御説明いたします。
 まず,本会議の趣旨でございますが,先日取りまとめいただいた中央教育審議会の答申に基づきまして,「私立大学の振興に向けて,私立大学に期待される役割を明確化し,その役割を果たしていくための具体的な方策等に焦点を当てて検討する」というものでございます。
 また,2ポツの検討事項,五つ並べておりますが,このような形で検討をしていきたいというふうに思っております。
 資料2を御覧いただければと思います。こちらは運営要領になってございますけれども,第2条では,「検討会議は原則として公開して行う」となっております。第3条第2項では,「登録を受けた者は,座長の許可を受けて,検討会議を撮影し,録画し,又は録音することができる」とさせていただいております。また,第4条ですけれども,「検討会議資料は原則として公開する」。第5条につきましては,「検討会議の議事録を作成し,これを公開するものとする」とさせていただいております。
 どうぞよろしくお願いいたします。
【小路座長】  ありがとうございました。
 それでは,資料1と2につきまして,皆さんのほうから御質問がありましたら,お受けしたいと思いますが,いかがでしょうか。
 これについてはよろしゅうございますでしょうか。
 それでは,資料1と2については,皆さんから御了解をいただいたということで,次に進めさせていただきたいと。
 次に,議題(2)の私立大学に関する現状等につきまして,これも事務局より説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【三木私学行政課長】  この検討会議の事務局の担当課長でございます,私学行政課の三木と申します。よろしくお願い申し上げます。
 議論のベースとなります,中央教育審議会の答申や関係するデータにつきまして,私から,15分ほどいただき,御説明を申し上げます。答申のほうは大部でございますので,資料3-2の答申の概要を御覧ください。
 日本社会が直面する課題として,急激な少子高齢化により,2040年には大学進学者数が3割減ることが見通されております。このような状況の下で,高等教育の目指す姿は「知の総和」の向上であり,子供の数が減る中,教育研究の質の向上が必要であると,示していただいております。この目指すべき姿に向けた高等教育の目的として,教育研究の質の向上,高等教育全体の規模の適正化,高等教育へのアクセスの確保が挙げられております。
 2ページを御覧いただきまして,本日の議論に関係する政策の方向性をかいつまんで御説明をいたします。教育研究の質のさらなる高度化のため,学修成果を可視化するための出口における質保証や,教育の質を数段階で評価する新たな認証評価制度への移行などを御提言いただいております。
 3ページでございますけれども,高等教育へのアクセス確保として,地域の高等教育機関,地方自治体,産業界など,関係者が議論する協議体として,地域構想推進プラットフォームの構築や,大学等の連携をより緊密に行うための地域研究教育連携推進機構の導入,都市から地方への動きの促進を通じた地方創生の推進も,御提言いただいております。
 4ページ目でございますが,設置者別の役割として,私立大学について,意欲的な改革や連携を通じた機能強化や,再編・統合,縮小,撤退への支援など,規模適正化の推進が指摘され,また,国公私立大学について,設置者の枠を超えた,機能や特性等に着目した政策の重視が提言されております。
 この検討会議では,この中央教育審議会の答申をベースにしながら,この会議の検討課題につきまして,大学や地方自治体,経済界がそれぞれどのような役割や参画・協働の在り方が望まれるか,委員の皆様方から御意見をいただくよう,お願いいたします。私立大学が社会とともに歩みながら,期待される役割を果たせるように,関係省庁と連携しながら,文科省としては国の政策を実行してまいりたいと考えております。
 次に,データや,関連する資料,制度の説明をさせていただきます。資料4を御覧ください。右下に通し番号を打っております。
 駆け足で恐縮ですけれども,まず,4ページのスライドでは,進学者の将来推計を図示しております。2026年の63万人をピークに,2040年初頭には40数万人へと,ここの踊り場の数年後に急激な入学者数の減少の崖を迎えます。
 5ページは,大学・短大数や定員数の推移です。近年,大学・短大の合計数については,短大の大幅な減少を反映し,減少傾向です。内訳を見ますと,公立・私立大学の数や定員が微増しております。
 6ページは,設置者別の学生数ということで,学士課程に通う学生の8割が私立学校に通っており,学部段階では私立大学の学生が大部分を占めています。一方,修士・博士課程は国立が多く占めてございます。
 7ページは,規模別学校数や定員の割合のデータでございます。左の円グラフでは,全体の大学数の8割を小規模大学が占め,私立大学が多くを占めてございます。一方,右図で,は小規模大学に通う学生は全体の3割程度となっておりまして,大規模,中規模の大学につきましては,大学の数は多くありませんけれども,学生数で見ると多くの割合の学生が,大規模,中規模の大学に通ってございます。
 8ページの左図を御覧いただくと,規模別の私立大学の所在地を表してございます。地方に小規模私立大学が多く,大規模大学は東京や三大都市圏が大部分であることが御覧いただけます。
 飛びまして,10ページ,11ページは,私学団体作成のデータを御参考に掲載してございます。幼稚園の教員をはじめ,多くの分野にオレンジ色の私立大学が高い割合で人材を輩出してございます。11ページでも,国家公務員総合職や小学校教員の採用においても私学の学生が拡大をしておりますし,そのほか,警察,管理栄養士,社会福祉士,看護師,薬剤師など,社会機能に必要な職に私大が高い割合で人材を輩出してございます。
 12ページは,幾つかの県の設置者別で見た教員への就職者数でございまして,私立大学が教員への就職者数を多く輩出してございます。
 13ページは,地方における国公私立大学において,県内からの入学者の割合と県内就職率をまとめた資料でございます。私大が国立や公立に比して,自県内の生徒が多く入学し,多くの学生を地域の職場に送り出している傾向でございます。
 少し飛びまして,17ページは,科学技術・イノベーションに関する資料でございます。日本の理工農系の学部生の6割強を私立大学の学生が占め,理系分野の層の厚い人材育成を行っております。また,国の機能強化基金等によりまして理系分野への転換も急速に進んでおり,ここ数年で109の私立大学が転換をしてございます。
 次のページ,18ページは,科研費の推移でございます。左図に示してございますように,近年,私立大学は採択件数や配分額で増加傾向にございます。
 19ページは,大学ランキングを掲載してございます。日本の大学のトップ群は国立大学が位置しておりますけれども,それに続く分厚い層を形成している部分は黒字の国立と赤字の私立が併存してございます。これらの大学が切磋琢磨し,日本の教育研究力を向上していく環境整備が重要です。なお,本会議では,第3回に国際競争力の強化に向けた私立大学について,御議論いただく予定にしてございます。
 以上,日本の高等教育全体や私立大学が現在果たしている役割について,データを中心に見ていただきました。この後,ヒアリングで御説明いただきます日本の高等教育における国立や私立の歴史と照らして,今,御説明した私学が果たしている現状やデータを見ていただき,今後の私学の在り方,国による支援をはじめとした制度の枠組みについて,御議論いただければというふうに思います。
 次に,本日の議題に関係する,地方の大学に関するデータや資料について,御説明いたします。
 22ページを御覧いただければと思いますけれども,都道府県別の入学定員を専攻分野別にグラフにしてございます。大都市圏では,オレンジ色の人文科学・社会科学の数が多い傾向にございます。
 23ページは,都道府県別・専攻分野別に入学定員数を割合でグラフ化してございますけれども,大都市圏で青色系の理学・工学・農学分野の占める割合が低く,一方,地方では,保健,家政,教育といった,地域に必須のサービスを提供する人材を育成する分野の割合が高くなってございます。
 次の24ページでございますけれども,設置者別に学問分野別の人数や割合をまとめてございます。右側の大きな円の各分野の真ん中部分にピンク色がございますけれども,こちらは私立の割合を示してございます。
 27ページは,人口の推移として、人口減少は皆様御案内だと思いますが,特に,四国,北海道,東北,北陸で減少傾向が大きくなっていることが見てとれると思います。
 29ページは,現在の定員規模を前提にした際,2040年に見込まれる定員充足率を県別にまとめたものでございます。現在の県ごとの定員充足率が赤の折れ線でございまして,2040年が緑色でございます。ほとんどの県が8割を切り,東北や中国,四国エリアの県では6割程度と見込まれております。
 30ページは,先の中央教育審議会の特別部会での議論において有識者の方から示していただいた,2040年の青森県内の大学のシミュレーションの資料です。このシミュレーションでは,2040年の大学進学者数を51万人と置いてシミュレーションされていますので,冒頭のスライドで見ていただいたように,現在の推計ではさらに進んで40年に44万人の進学者と推計されておりますので,同様の方法でシミュレーションした場合に,地方の見通しはこの黄色や赤がもっと増えて,もっと厳しいものになることが想定されます。
 次に,32ページは,三大都市圏・地方の入学定員充足率でございます。大規模大学は都市も地方も定員を充足してございますが,中小規模では,地方は定員割れになってございます。また,小規模大学は,地方だけでなく,三大都市圏でも定員割れとなっていますが,東京ではいずれの規模も定員を充足してございます。
 33ページも,先の中央教育審議会の議論において有識者の方から示していただいた資料を掲載してございます。公立化前の私立の時のデータと公立化した時のデータを比較してございまして,私立大学が公立化することで地域内の入学者率や地域内の就職率が下がる傾向にございます。
 34ページは,私立大学の公立化による影響の1例でございます。私立大学の公立化により,公立大学への志願者が,青い線ですけれども,大幅に増加する一方で,隣県の同じ分野の学部を持つ私立大学の志願者,オレンジや緑ですが,マイナスになっており,影響を与えているというような状況でございます。
 35ページからは,銚子市において公立大学法人化を検討された会議における財務シミュレーションの資料を掲載させていただきました。36ページを御覧いただきますと,私立大学として運営した際,平均約6億円の赤字が出てございます。一方,37ページでは,財務シミュレーションの続きでございますけれども,公立大学法人化した場合,運営費交付金充当可能額として28億円が地方交付税算定額として,財務面のシミュレーションがされております。これは一つのシミュレーションではございますけれども,公立法人化した場合の公費による想定される運営費が見てとれるかと思います。
 次に,ちょっと飛びまして,42ページを御覧ください。国立と私立の授業料の推移でございます。近年,私立の大学の授業料は増加傾向にございます。
 43ページは,家庭の年間平均収入でございますけれども,一昔前に比しまして,2010年代以降,国立大学に在籍する学生の家庭の年間平均収入は私立の家庭の収入より上回りつつございます。
 44ページは国立大学の収支状況でございまして,次の45ページは私立大学の収支状況でございます。私立大学の事業活動収入のうち,約5割が学生納付金,約10%が経常費補助金,いわゆる私学助成でございます。
 最後に,私学助成の現行制度について,簡単に御説明を申し上げます。
 49ページは,私学助成の基本構造を示してございます。教職員数や学生数に応じて算定をしてございまして,ピンクの枠のところにありますように,教育や財務,情報公表などの指標により,メリハリをつけてございます。
 次のページ,50ページは,定員に関する充足状況について,補助のメリハリをつけていることを図にしてございます。充足率9割未満から補助のカットが始まり,充足率50%で不交付となります。一方,充足率が106%を超えると補助のカットが始まり,大規模校では110%を超えると不交付となっております。
 53ページは,私学助成の交付状況をまとめたもので,私立大学,約840校ある中で,交付金額上位20校で総額の約3割,上位300校までで約9割が交付されてございます。
 次の54ページでは,地方以外の地域の大学に対し総額の約8割,地方の大学に対し総額の約2割,交付されてございます。
 次のページ,55ページでございますが,文系の単科大学と比較した場合,理系の単科大学におきまして,教育活動支出は2倍程度となっている一方で,補助金は1.7倍程度にとどまっておりまして,結果として教育活動支出に占める補助割合は理系単科大学のほうが低くなってございます。
 56ページ以降では,現行の補助における理工農系学部への重点支援でありますとか,地方小規模大学への補助単価を加算し,重点支援をしている制度の概要をまとめてございます。
 以上,簡単ではございますけれども,資料の御説明をさせていただきました。次回以降も,議題に関する資料を御用意いたします。このほか,机上資料といたしまして参考資料を用意してございますので,適宜,御参照いただければと思います。
 以上でございます。
【小路座長】  ありがとうございました。
 それでは,引き続きまして,議題(3)として,有識者等からのヒアリングに移りたいと思います。冒頭,事務局より説明がありましたが,本日は3名の方に御参加いただいております。まずはお三方からそれぞれ発表をいただいた後に,意見交換をさせていただければというふうに考えております。
 それでは,早速ですけど,まず,伊藤先生から,高等教育の歴史について,発表いただければと思います。資料5ということでございます。よろしくお願いいたします。
【伊藤教授】  伊藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 資料に基づきまして,説明をさせていただきます。歴史ということですが,時間が限られますので,かなり限られた側面からということになりますことは,御勘弁をいただければと思います。
 資料のほうは……。
【片見私学行政課課長補佐】  本日,紙の資料は御用意できておりませんで,画面のほうで御覧いただければと思います。共有させていただきます。
【伊藤教授】  それでは,3枚目の資料から参りたいと思いますが,これは私立高等教育機関が……。
【片見私学行政課課長補佐】  伊藤先生,資料の共有をお願いいたします。
【伊藤教授】  お送りしていたと思うんですが,届いてませんでしたか。
【片見私学行政課課長補佐】  はい。お願いできますでしょうか。
【伊藤教授】  ちょっとお待ちください。
【三木私学行政課長】  先生,資料がこちらに届いてないので,共有いただければと思うんですが。
【伊藤教授】  ちょっとお待ちください。
 共有できておりますでしょうか。
【三木私学行政課長】  まだ共有できておりません。
【伊藤教授】  申し訳ありません。
【三木私学行政課長】  先生,メールで送っていただいても結構ですけれども。
【伊藤教授】  そうしましょうか。
【三木私学行政課長】  先生,順番を入替えさせていただいてもよろしいですか。
【伊藤教授】  申し訳ありません。
【三木私学行政課長】  じゃ,メールで送っていただいて。申し訳ございません。
【片見私学行政課課長補佐】  じゃあ,吉村先生から,お願いできますでしょうか。すみません,突然。
【吉村副学長】  それでは,ちょっと順番が入れ替わりましたが,日本文理大学で副学長しております,吉村と申します。
 早速ですが,本学の取組を御紹介させていただきます。2ページ目です。本学は,産学一致を建学の精神とし,工学部,経営経済学部,保健医療学部の3学部から成る,実学を重視した教育研究を実施しており,再来年に創立60周年を迎えます。
 3ページ目です。本学は,建学の精神を基に人間力の育成を重視した教育を展開しており,特に,2014年に文科省の大学COC事業に採択されたことをきっかけに,地域志向の教育研究に全面的にかじを切り,これが現在の本学の基盤となっております。
 4ページ目です。COC事業以来,大分県,大分市,豊後大野市の3自治体と連携し,特に少子高齢化が深刻な地域に入り,地域課題解決に取り組んでいます。現在では,取組は県内全域に及んでいます。
 5ページ目です。地域志向を高めるカリキュラム改革で大事にしたことは,初年次に地域に入る体験交流活動を置いたことです。これにより,学生たちは地域の具体的な課題を知り,また,地域から感謝される経験が学修へのモチベーションとなります。その後の,学内での知識修得,ステークホルダーとの課題解決学修という,学修サイクルを各学科の特性に応じて組んでいます。
 6ページ目です。このような取組により,学生たちのジェネリックスキルが確実に成長しています。また,学生たちの活動を直接見聞きすることで,地域からの評価も大きく向上しています。
 7ページ目になります。こちらは,現2年生の初年次のコンピテンシーの伸びを示したもので,学部の特性はありますが,それぞれしっかり伸びていることが分かります。
 8ページ目になります。各自治体とは,毎年,複数の部局の担当者が参加する連携推進会議や,部長級以上や企業の代表者が参加する年度末の評価会議を実施し,部局横断型で課題の吸い上げや成果発表を行い,連携を強固なものとしています。
 9ページ目になります。このような,大学改革,地域との連携強化の結果,2014年以降,入学者の大幅な増加・改善となりましたが,2021年以降は,18歳人口減少の影響を受け,入学生募集は厳しくなっています。
 10ページ目です。この10年で大きく変わったことは,県内からの入学者と県内就職者が大幅に増加したことです。なお,周辺県は4大進学率が低く,経済環境が必ずしもよくないことなどを背景に,国の修学支援制度や奨学金の本学での受給者率は全国平均を大きく上回っている状況です。
 11ページ目です。県内就職率につきましては,上昇傾向,横ばいの状況が続いていましたが,コロナ禍で地域活動や企業との連携が制限されたことなどから,コロナ禍以降は減少傾向になっています。
 12ページ目です。卒業生が就職した企業アンケートでは,6割の企業が「期待通り」「期待以上」と評価していただいており,具体的な声も本学がDPで設定している育てたい人材像に合致した内容となっています。
 13ページ目になります。このような取組の推進に当たっては,2014年に設置した学長室が旗振り役として学内外との調整に当たったほか,連携する自治体に対しては,地域とともに歩むという,本学の覚悟と意向を明確に伝えてきたことがポイントであったと感じています。
 14ページ目になります。ここからは,全県的に取り組んでおります,おおいた地域連携プラットフォームの取組について,御紹介いたします。
 15ページ目になります。2021年に設立しました,おおいた地域連携プラットフォームは,2015年に設立したCOC+協議会を前身として,産学官が協働して地域で活躍できる人材の育成と地域課題解決に取り組む組織として,大分大学長を会長に,旗振り役となる事業推進本部,三つの部会から成っています。本学は,副会長,教育プログラム開発部会長,協働事務局の一部を担っています。
 16ページ目になります。本プラットフォームは,県内の全ての大学,自治体,県教委,主要経済団体,企業等,全63機関で構成しています。
 17ページ,これは県内大学12校の位置図ですが,県都である大分市と隣の別府市に集中している状況です。
 18ページをお願いします。こちらは各大学の入学定員状況ですが,私立大学・短大は重要な人材供給源となっているとともに,規模の小さい私立短大も含まれ,プラットフォームとして一緒に活動することで発信力の強化にもつながっています。
 19ページです。部会ごとの主な取組を示していますが,本学は,左下の県に資金提供いただいて学生が地域に出向くフィールドワーク支援事業の運営事務局,右下の県内進学促進に向けて高校への情報発信を担うワーキングの運営事務局などを担っています。
 20ページです。こちらは,先ほど紹介した県が資金を提供している事業の,採択事業の一覧です。これらは公募型事業となっていますが,多くの私立大学が採択されている状況です。21ページに具体的な活動の様子を示しております。
 22ページです。本学が事務局を担っている県内進学促進ワーキングでは,県内大学の情報を掲載したオープンキャンパスガイドや進学ガイドを作成・ウェブ化し,県内全高校生に配布・配信する取組や,県内進学や県内就職をイメージしてもらうためのキャリア支援サイト,ユニフェス学びプログラム大分編を,卒業生や企業の御協力を得ながら公開しています。23ページに,オープンキャンパスガイドの活用状況,生徒さんが参考にしている状況ということを書いております。
24ページです。まとめになりますが本学では,学生教育だけでなく,幼少期からの郷土教育や,探究学習に大学・学生が関わることや,地域に継続的に関わり続けることも,地方大学の使命だと考えています。
 25ページです。まだまだ社会や高校の地方私立大学を見るには旧態依然としたものがありますが,地方私立大学の変革・存在が地域の持続的な未来にとって重要であることをしっかり訴え,引き続き取り組んでまいりたいと考えております。
 以上です。御清聴,ありがとうございました。
【小路座長】  ありがとうございました。
 それでは,関連をいたしますので,引き続き,木部課長様から御説明をいただければと思いますので,よろしくお願いいたします。
【木部課長】  ありがとうございます。大分県の学事・私学振興課長の木部です。よろしくお願いします。
 それでは,私から説明をさせていただきます。まず,大分県の大学連携の取組について,説明をさせていただきます。
 一枚めくっていただきまして,1ページ目です。学事・私学振興課は,本年度4月1日に設置をされました。教育政策の効果的な推進を目的に,知事と教育委員会が教育行政の諸課題について協議・調整を行う総合教育会議とが総務部にあったんですが,そこに大学や私立学校などに関する業務を集約して,学事・私学振興課を設置したというものです。大分県の佐藤知事は教育に対する思い入れが強いということも,影響しているかと思っております。
 次のページ,2ページをお開きください。大分県の概略について,説明をいたします。まず,左なんですけども,大分県の人口は110万人です。5年間の人口増減は,4万2,000人の減少。真ん中の表に移ります。ここでは,高校生の進路等について,説明をさせていただきます。18歳人口は約1万人,約9,000人が高校を卒業いたします。大学進学率は39.9%で,約4,000人が行っている。短大進学は7.1%で,約700人が進学。専門学校の進学は20.1%で,約2,000人となっております。大体,7,000人が進学して,2,000人が就職するという状況です。特徴として,大学の進学率は全国よりも低くて,短大の進学率は全国1位という状況です。真ん中の表の下の部分なんですけども,高等教育に関して,県内からの流出は3,000人なんですけども,県外からの流入が2,000人あるということになっております。右の表に移ります。県内の大学は5つありまして,大分大学,県立看護科学大学,日本文理大学,別府大学,APUというのがあります。左の下なんですけども,先ほど,流出が3,000人,流入が2,000人と申し上げました。県内に大学がある効果というのは,1万9,000人弱の若者が大分県にいるということです。大分県には18市町村ありますけども,14番目に竹田市という団体がありまして,そこは2万人,その次が1万6,000人なので,大学があることによって,若者が一団とした15番目の都市があるということも言えるかと思います。
 次のページをお開きください。上のグラフの右側なんですけども,日本人・外国人別の年代別の流入の状況です。日本人ベースでいきますと,15歳~19歳から20歳~24歳のときに7,000人が流出している。ですから,当県では若者流出が課題というふうに認識しております。
 次のページをお開きください。高校卒業生の進路を詳細に分析して,説明をいたします。緑のところに記載しているとおり,大学進学率は42.2%で,全国43位となっております。下の表は,県内高校卒業者の進学と就職の状況です。就職は,左から2番目にありますけども,全体で2,000人います。就職者は,その下に移りますと,76%,1,512人が県内に就職している。進学は,上から2段目の左から4番目ですけども,7,000人でして,右に移りまして,4,000人弱が大学に進学している。そのうち3,000人は,県外へ進学している。短大は,県内への進学が多いために,約5,000人の大学進学者のうち,2,000人が県内に進学,3,000人が県外へ進学。ここで課題を整理しますと,大学進学時と就職時で県外に流出しているので,その対策が必要。ここには記載しておりませんけども,県内高校を卒業して県内大学を進学した人の県内就職率というのは70%なので,県内大学への進学対策をするということと,就職時の県外流出を抑える取組が必要というふうに考えております。
 資料,飛びまして,6ページを御覧ください。大分県として大学連携に取り組む意義というか,効果は,連携して取り組むことは地方創生につながるというふうに考えております。まず,若年層の流出抑制とか,ここに記載しているとおりでございます。特に,大学生が地域に出向いて地域課題解決の取組をしているんですけども,その中で学生が地域と企業と一緒になって取り組んでいくということが非常に大事だというふうに考えております。
 資料は,飛びまして,8ページを御覧ください。これは,昨年9月に策定して,来年度を実行元年とする新長期総合計画でございます。右下の目標数値に入学定員充足率と県内大学等卒業者の県内就職率を掲げているというところが新しいです。この考えについては,新たなビジョンを策定するに当たっては,左上の10年後の目指す姿,ありたい姿から入りました。デザイン思考ということで,その考え方としては,県内所在の大学等の魅力が高まり,多くの進学希望者から選ばれている。2番目に,AI等の知識を学んだ学生や学び直した社会人が県内に定着し活躍しているということから考えて,設定したものでございます。
 資料,飛びまして,10ページなんですけども,これは,おおいた地域連携プラットフォームの取組でございます。三つの部会がありまして,大分県が部会長としては,次のページなんですけども,地域交流・課題検討部会というものをやっております。ここでは,地域交流・課題検討に取り組むものに対して,補助金を支出しています。これは単年度で総額1,800万円を出しております。
 最後,飛びまして,14ページでございます。まとめです。人口減少が急速に進む中で,高等教育機関で学ぶ若年者の存在意義は非常に大きい考えております。公共団体の役割,大学等の役割,企業の役割を考えて,より積極的に関与する仕組み,インセンティブを生み出していく必要があるかなと考えております。引き続き,県内高等教育機関の前向きな取組を支援していきたいと考えております。
【小路座長】  ありがとうございました。
 では,吉村先生からの地域との連携と木部課長様からの大学連携の取組は関連しておりますので,まず,私どもの理解を深めるという意味で,お二方の御説明に対して質問がありましたらお出しいただければと思いますけど,いかがでしょうか。
 どうぞ,平子さん。
【平子座長代理】  平子です。御説明,ありがとうございました。私も大分県出身ですので,自分事のように聞いておりました。
 おおいた地域連携プラットフォームの話を聞かせていただいて,まさにこういったことが必要だなと思うんですけれども,この会長が大分大学の学長だとお聞きしました。日本文理大学は地方の私立大学として地域貢献のために多大なご尽力をいただいておりますが,オール大分で考えたときに,地方の国立大学の果たす役割,あるいは私立大学から見て国立大学に何を求めるのかについて、教えていただければと思います。いかがでしょうか。
【吉村副学長】  ありがとうございます。吉村のほうから,お答えしたいと思います。
 大分県の場合は,国立大学の大分大学さんが会長校ということで,組織をきちっと取りまとめるというか,今回,県内の産学官が全て入っているという意味では,ここは国立大学さんが非常にうまいところかなと思っています。一方で,我々私立大学というのは,非常に機動力があるというところで,地域に入っていくとか,学生と一緒に入っていくというところが非常に前向きにやれますし,そういう柔軟性とか,地域に近いというところは我々私学の特徴かなと思いますので,そういう役割分担をしながら,連携は取れているかなと思っているところです。
【小路座長】  よろしいでしょうか。
【平子座長代理】  ありがとうございました。
【小路座長】  ほかにございますでしょうか。
 大森さん,どうぞ。
【大森委員】  ありがとうございました。木部課長に質問なんですけれども,プラットフォームに対して県から,あるいは各大学の取組に対して県から,私の感覚だと,結構なボリュームの県費が入れられているというふうに理解しています。本当にすばらしいなあと思うんですが,これは,例えば,議会であるとか,あるいは財政当局の理解を得るのに,そこにコンフリクトはなかったのか,皆さんスムーズだったのか,言える範囲で結構なんですけれども,すばらしい取組の背景,もし,何か予算的なことで教えていただけたらありがたいなと思います。
【木部課長】  ありがとうございます。もともと,当県,先ほど単年度で1,800万円というふうに申し上げましたけども,そこまで大きい規模ではなかったです。ただ,学生が地域でフィールドワークをするときに,その状況というのは新聞等でよく報道されるということがあります。スモールスタートしたものを徐々に広げていって予算が拡大して,理解も,新聞報道等でみんなが共有できたというのがメリットとして大きかったのではないかなというふうに考えております。
【大森委員】  ありがとうございました。
【小路座長】  よろしいですか。
 それでは,オンラインで両角委員が手を挙げていらっしゃいますので,両角さん,どうぞ。
【両角委員】  ありがとうございます。両角と申します。大変貴重な御発表,ありがとうございました。
 二つ聞きたいことがあり,一つは,今,大森先生がおっしゃったことなので,理解しました。もう一つのほうは,地域にとって,若者がきて学んだり,そこで刺激があるということが重要だというのはその通りだと思うのですけれど,それ以外の方も大事だと思います。成人の人とか,企業であったりとか,もう少し幅広い年齢層の方々が大学と一緒に何かをするというような動きというのがこういった活動で広がっているのかということについて,お聞きしたいなと思いました。よろしくお願いします。
【小路座長】  吉村先生でよろしいですか。
【吉村副学長】  吉村のほうから,お答えさせていただきます。
 本学の場合は,高齢者の地域とか,あと,小学生,中学生というところが非常に大きいんですけども,一方で企業との連携というのも当然進んでいますので,そういうところで企業さんの課題解決事業みたいなことを一緒にやるケースが増えていることと,あと,プラットフォーム全体で言いますと,もともと進学率があまり高くないという意味では,リカレント教育のところにもニーズがあるだろうということで,今,そういう取組をプラットフォーム全体で取り組んでいるところでございます。
 以上です。
【小路座長】  ありがとうございました。
 両角さん,よろしいでしょうか。
【両角委員】  ありがとうございました。
【小路座長】  ほかに,御質問等ございますでしょうか。
 どうぞ。
【角田委員】  ありがとうございます。各地方大学が漠然とした危機感を持ちながらも,なかなか行動に移せていない状況があると存じます。実際に行動に移されるとなりますと教職員の負担も既存業務に加えて発生したということで,そういった点でモチベーションを上げて行動に移された流れの作り方につきましての御苦労話や工夫について,吉村先生のほうから伺えればありがたく思います。
【吉村副学長】  ありがとうございます。本学の部分になるのかもしれないですが,本学が地域と連携した中で一番大きかったのは,学生を地域に出してみて,彼らが非常に成長するというのを目の当たりにするというところが我々教職員のモチベーションになったということで,確かに手間暇はかかるんですけども,学生のためであれば我々も汗をかきたいというところで,それを徐々に,学内に広げていった,プラットフォームに広げていったという流れかなと思っております。
 以上です。
【角田委員】  ありがとうございます。
【小路座長】  ほかにございますでしょうか。
 よろしいでしょうか。
 それでは,伊藤先生のほう,御準備ができたようですね。じゃ,伊藤先生,よろしくお願いします。
【伊藤教授】  「近代日本の高等教育」ということでお話をさせていただきます,名古屋大学の伊藤と申します。大学の歴史のことを研究しております。
 ここに目次が出ておりますが,こういうことについてお話をしたいと思います。
 次をお願いいたします。
 これは私立高等教育の場の量的な変化を見たもので,戦前期ですけども,成長が始まるのは大正時代ぐらいからであるということと,もう一つ,圧倒的に中心になったのは,大学とかではなくて,専門学校を中心とした拡大であったということ。それと,高等教育全体に占める私学のシェアというのも,やはり大正時代から増加傾向にあったというような動きがあったということになります。
 次をお願いいたします。
 これは,過去100年ほど,最近のところは抜けておりますけども,国公立と私立というふうに分けてみますと,こういうふうな割合になっている。ここでも私立を中心にした拡大が行われてきたということになります。
 次,お願いいたします。
 これは古い歴史を持った私学ということで慶応の例を挙げさせていただきましたけども,いろいろと,イベントといいましょうか,出来事があったということになります。一つは,かなり早い時期から,私塾といっても,私的なものというよりは公共性を持ったものとして,学校を考えていたということですね。これは後の法人というような形につらなっていくことになると思います。あと,これはよく知られたことですけども,慶應に限らず,当時の私学は慢性的に財政難状態にあったというようなことですね。それと,大学昇格へのかなり強い意識を早い時期から持っていたということ。さらに,当時の政府の政策というものに私学の在り方というのはかなり縛られてしまっておりまして,私学の関係者は政府に対して非常に不満を持っていたというようなこともあったということになります。
 次,お願いいたします。
 主要な類型として,こういうのがあります。よく言われていることなので御存じのようなことだと思いますけども,幾つかのタイプに分けられていて,それぞれ非常に多様な道をたどったということになります。
 次,お願いいたします。
 これは高等教育史の大御所でいらっしゃる天野郁夫先生が書かれたことで,私学の実態というものはこういうことだったのではないかということを書かれています。要するに,学生の能力的なものはかなりの幅があったということとか,中退をする学生も非常に多かったということで,そういうことに対して学校側としては,いろんな別科でありますとか,夜間部でありますとか,様々な就学形態を準備して学生を集めるというようなことをやっていたということになります。もう一つ,下のほうに書いてありますように,当時の私学というのは,例えば,初期は法学とか政治学に比重を置いていたわけですけども,だんだん商学とか経済学のほうに重点を移していくといったように,社会的なニーズというものに敏感に応える組織的性格というものを早い時期から持っていたということも,特徴かと思います。
 次,お願いいたします。
 これはよく知られたことですのであれですが,大正期になりまして私立大学というものを認めるということになってきまして,そのときの昇格の要件というものはこういうものであった。当時の私学にとっては,これはかなりハードルが高かったと思います。供託金などは相当な額のものが必要だったわけですけども,そこはそれぞれのところで非常に努力をされて,私学になっていった,大学のステータスを得ていったということがあります。これは,私立の大学史の,ドラマの盛り上がりの一つの山をつくっていると言ってもいいようなことでありました。
 次,お願いいたします。
 これは専門分野の構成でありまして,官立のほうでは理工系分野は結構なシェアを持っていましたけど,私学のほうは文系のほうが中心だったという,これはよく知られたことです。
 次,お願いいたします。
 大正時代に私立大学になることが可能になって,こういう大学が私学になっていたということが書いてあるものです。
 次,お願いいたします。
 これもよく言われていることですが,当時の私大の財政基盤というのは確固としたものではなかったということで,そのためにいろいろ戦略を考えるわけですね。専門部の別科をつくって勤労学生をリクルートいくとか,そういう人材ニーズに敏感に応えたプログラムも持っていたということとか,かなり非常勤講師に依存した,専任講師というのはあまりいないような大学が多かったりしたわけですね。一部にはかなり営利主義的な行動というものも見られたということになります。
 次,お願いいたします。
 これは私大の授業料水準でありまして,帝大も含めて見ております。ある時期までは,帝大あるいは官立の学校よりも高い授業料を取るということは,私学にはできなかったわけですね。恐らく,それをやったら,学生が来なかった。それが変わってくるのが大正時代ぐらいでして,その頃から私学が官立の学校よりも高い授業料を取ることができるようなっていったということが見てとれます。それなりに私学の基盤をつくっていったということだと思います。
 次,お願いいたします。
 これは,最後になりますが,日本とアメリカで私学のシェアというのは,これは御存じない方が多いと思いますけど,対照的なことになっています。日本の場合は,私学のシェアというものをかなり増やしていくことになっていますけども,アメリカの場合は,御存じのように,州立大学ですとか,そういうところが拡張になっていくことになっているという,かなり対照的な姿を見せているということになります。
 以上になります。よろしくお願いいたします。
【小路座長】  ありがとうございました。
 それでは,今の伊藤先生の御説明に対して,まず,一番古い慶應義塾の塾長の伊藤塾長がいらっしゃいますので,何か補足はございますでしょうか。
【伊藤委員】  今,お話しいただきましたけど,慶應義塾は旧帝大よりも前にあった学校ですので,そういう意味では,文部省ができる前から私塾を開いていて,その中で,福澤は生涯を通じて,一つ,同じことを言い続けた。それは独立自尊なのかなとか,いろいろ思うわけですけど,一言,「金がない」だったんですね。つまり,私立というものをノンプロフィット,つまり,経営的に成り立たせるというのは非常に難しい。一生懸命,『西洋事情』とか,いろんな本を売って,それによって何とかお金をもうけて,それを学校経営に全部つぎ込んでいた。海賊版が出てくると,海賊版を取り締まるような法律をつくるようにという,海賊版という単語さえ,福澤諭吉とか,みんなで一生懸命考えたぐらいですから,そういうような形でやってきますし,大学として私立大学になることが悲願である一方で,学校の中では塾生のほうから大変な反対がありました。何で文部省の言うこと聞かなきゃいけないんだ。自分たちは,自分たちの教育方法をつくっているじゃないか。それを何で一々,文部省から言われたような形に持っていかなきゃいけないんだということで,その中でも,福澤諭吉も含めて,それをやらないと将来的には慶應は正しい位置が取れないんじゃないかとか,大議論があった末に,大学令をある意味受け入れるという方向で,そういう選択をしたというようなことがあります。
 でも,その一方で,実は最近,私はIDEの『現在の高等教育』に書いたんですけども,国立大学の学費問題ということで,それに私がなぜか招待されまして記事を寄せたんですが,国立大学ができたとき,旧帝大ができたとき,模範校としての意志が相当強かったんですね。例えば,旧制高等学校というものをつくり,今で言うところの高校2年生から,できる人たちに大学教育を始めて,高校2年,高校3年,大学1年で高等教育をして,さらに,大学2年,3年,4年で専門教育をするという,6年間の大学教育を高校2年からやっていたんですよ。それが,1947年に新制大学になってから,一気に,高校は3年ですと,それから大学にしますというような形になっていくので,できる人たちが早くから始めないと大学教育というのもできなくなってきている。早くからできる形をつくった旧帝大のやり方というのは,私立は相当苦しめられたんですけども,それをまねなきゃいけないということで,私立の教育レベルもすごく上がったんですね。ですから,国費をしっかりと国立大学につぎ込んで,それは模範校であってほしいと。模範校であって,我々私立もみんな,ずるいじゃないかと言いながらも,それによって引き上げられるようなことをやってもらいたいんですけども,模範であるべき国立大学に対する補助はどんどん減っていき,アメリカ的な,経営的なものをやるようにということで,何となく私としては,迷走している気がするので,そこら辺のところも含めて,私立,国立,一緒に力を合わせて進んでいかないと「知の総和」を増やすことはできないんじゃないかと,危惧しているところでございます。
【小路座長】  ありがとうございました。
 両伊藤先生から,大変実践的なお話,また,学術的な歴史について御説明をいただきまして,私を含めて皆さんも歴史についてはかなり深まったのではないのかなというふうに思います。もしかしたら御質問があろうかと思いますけど,ちょっと時間が押してきておりますので,次の議題に移らせていただきたいというふうに思います。
 では,議題(4)の意見交換をいうところに移らせていただきまして,本日は,資料をお配りしておりますけど,主に,地域の人材育成に向けた私立大学の役割,また,関係者との協働の在り方等,具体的な方策について意見交換をさせていただければというふうに思っております。つきましては,5名の委員の方から資料を提出いただいておりますので,それぞれ,簡単に,資料についての説明をいただければというふうに思います。
 では,冒頭,尾花委員のほうから,よろしくお願いいたします。
【尾花委員】  皆さん,こんにちは。和歌山市長の尾花でございます。発表の機会をいただきまして,ありがとうございます。和歌山市としては,大学を核に据えた,まちづくり,地方創生に力を入れています。
 早速ですけど,画面のほうの資料で説明させていただきます。1ページをお願いします。
 和歌山県はもともと大学が少なく,私が市長に就任した平成26年頃は,県外大学への進学率が9割,全国ワースト1位でした。そのため,左上の図のとおり,特に10代後半から20代後半の人口の流出が多くありました。何とか和歌山に若者をとどめたい,そういう思いで大学誘致に取り組んでまいりました。
 2ページ目をお願いします。この少子化の時代に大学が来てくれるのか,学生が集まるのかという議論が非常にありましたが,看護師さんであるとか,理学療法士さん,作業療法士さん,薬剤師さん,保育士さんなど,いわゆるエッセンシャルワーカーを養成する学校が少なく,県外で学ばざるを得ず,県外で就職する人が多くおられました。この分野での有効求人倍率は非常に高くて,雇用面においては大変苦労をしていました。このため,エッセンシャルワーカーを養成する学校なら,地元で学び,地元で就職する,地学地就につなげられると考えました。
 3ページをお願いします。まず,誘致に当たり,大学側の負担を軽減するため,初期投資を抑えたいと考えました。当時,まちなかの児童・生徒数の減少により小中学校の3校が閉校となり,閉校となった校舎を活用することで初期投資を抑えることができました。また,工期も,8か月,9か月と,大幅に短縮することもできました。そういった点も大学誘致につながった要因の一つであったと考えております。
 次の4ページをお願いします。誘致大学の卒業生は,円グラフのとおり,約84%もの学生が県内に就職し,現在,地元でエッセンシャルワーカーをやってくれています。特に注目したいのは,84%のうち,8割が女性で,まさに地方の存続に係る女性の県外流出の大きな歯止めになってくれています。また,市内全体の県内就職率も,全体で約10パーセントも向上することができました。5ページをお願いします。こうした数字も非常にありがたいんですけども,まちなかに大学が存在することにより,子育て,高齢者の健康教室,祭りなど,学生が在学中から社会の大きな力になってくれています。まさに学びの場が,キャンパスだけでなく,町全体に広がっています。このように,地域社会にとっても,将来,社会と関わりの深い学生にとっても大きなメリットで,こうしたつながりも地元への就職につながっていると思います。
 以上のように,地方の大学は地域貢献が大きく,そして,地方創生につながっているというふうに思います。まだまだ不足するエッセンシャルワーカーや,高校から大学進学率が向上する中で,これからもさらに大学誘致を進めてまいりたいと思いますので,よろしくお願い申し上げます。
 説明は,以上です。ありがとうございました。
【小路座長】  ありがとうございました。
 では,続きまして,大森委員,よろしくお願いいたします。
【大森委員】  共愛学園前橋国際大学の大森でございます。今回の答申をまとめた特別部会では,副部会長として参加させていただきました。よろしくお願いします。
 張り切ってたくさんページを作っちゃったので,ページ送り,大変かもしれませんけど,よろしくお願いします。2ページ目をお願いします。
 まず,本学の御紹介です。共愛学園は,新島襄も発起人となり,明治21年にできた私学で,子ども園から,小,中,高,短大,大学を有する,総合学園です。
 3ページ目をお願いいたします。大学の特徴は地学一体で,一番右下にありますけど,学生の9割が群馬県出身,そして,7割から8割が県内に就職をしていきます。
 4ページ目お願いします。成長分野の支援を受けて2026年度に新学部を設置する予定で,加えて,短期大学部が担ってきた幼保の人材育成を引き継ぎます。幼保は決して学生募集が順調な領域ではないんですけども,地域の保育士不足は深刻なので,頑張っていきたいと思っています。
 5ページをお願いします。「地域の未来は私がつくる」をモットーに,グローカルでアクティブな学びオフキャンパスで多数展開しています。
 6ページをお願いします。学生の幸せな生涯にコミットする大学です。左下のグラフですけど,昔,定員割れを経験していますけれども,現在は過去最高の学生数となっています。学長先生たちからも評価をいただいて,教育で4位,注目する学長で3年連続1位にしていただいています。
 7ページを飛ばしていただいて,8ページです。特色ある取組として,地学一体の学びの一端を御紹介します。
 9ページ目をお願いいたします。これは2年生の必修科目ですけれども,専門が違う学生がチームを組んで,データドリブンな地域課題解決演習を行います。教員も専門が違う同士が組になって,チームティーチングを行ってまいります。
 10ページ目をお願いします。半年間,大学に来る代わりに市役所とか企業で働いてくる授業です。
 11ページ目をお願いします。山間地域の高齢者の孫になるという授業もしてきました。
 12ページをお願いします。海外研修も地学一体で,年間20以上のプログラムを走らせていますけれども,例えば,この研修は,バンコクの町に放り出されながら地元企業のビジネスミッションをこなすという,ハードなものです。
 13ページをお願いします。そのほか,地域特徴や地域課題を捉えたPBL,あるいは,14ページに参りまして,自治体や企業が大学に来て授業をしてくれるものもたくさんありますし,今日は時間の中では紹介し切れないほど,いろいろ地学一体の学びをやっています。
 15ページをお願いします。こういった授業は,DP達成のための全学共通科目として,多くは正課のカリキュラムとして位置づいています。
 16ページをお願いいたします。次に,地域連携について見ていきたいと思います。
 17ページです。本学が主導して,前橋内の大学と市役所,商工会議所で,プラットフォームをつくっています。
 18ページです。協働していろんなことに取り組んでいるんですけれども,地域課題である事業承継に向き合うビジネススクールなども,大きな取組の一つとなっています。
 19ページをお願いします。地域の大学の大きな役割に地元の初等中等教育の支援というのもありますけれども,たくさんの高校との学びの接続が展開されています。
 20ページをお願いします。左上の高校なんかでは本学が授業を実施していくということもやっていますし,個別の高校とだけではなくて,県の事業のバックヤードに本学があるということも少なくありません。ちなみに,右下,現在の群馬県の教育長は,本学の私の前の学長が務めているということになります。
 21ページをお願いいたします。地方の大学は,地域政策とも歩調を合わせていきます。
 22ページをお願いいたします。短期大学部は他の法人さんから設置者変更で引き受けたものですけれども,そのプロセスの中で,これは市の教育力に資する取組なので,市と合同で記者会見を開きました。
 23ページをお願いします。前橋市がデジタル田園都市国家構想で目指しているのは,デジタル・グリーン・シティなんですね。なので,我々はデジタル・グリーン学部をつくるというふうに,行政の施策と合わせてきました。現在,名称はデジタル共創学部に落ち着いて申請をしたんですけれども,新学部に関する記者発表なんかも市と合同でやっていくということになります。
 24,25,26ページは,常に行政や地域政策と一緒に歩みをしている事例となります。
 27ページですが,最後に,言わずもがななんですけども,私立大学の重要性と存続ということについてお話しいたします。
 28ページをお願いします。大学は,人口減のど真ん中にあるので,地方創生とは切っても切れない関係だと思います。
 29ページをお願いします。本学のポートフォリオの中身を公表するショーケースを使った採用プロセスを,複数の地元企業さんと始めています。
 30ページをお願いします。グラフのように,進学時の地元定着,そして,学びを通して本学の地元就職率は年々上昇しています。上がったり下がったりはしているんですけれども,就職時の地元定着を担っているのは私学だという自負があります。
 31ページをお願いします。先ほど市長さんからのお話もありましたけれども,もちろん,学生がいるというだけで地域活性につながってまいります。
 御清聴,ありがとうございます。
【小路座長】  ありがとうございました。
 それでは,続きまして,鶴委員,よろしくお願いいたします。
【鶴委員】  広島にあります,学校法人鶴学園の鶴と言います。どうぞよろしくお願いいたします。
 私からは,地域の人材育成に向けた広島工業大学の取組について,お話をさせていただきます。
 まず,1ページ目を御覧ください。これは学校法人鶴学園全体での人材育成の概要です。本学園は,広島工業大学を中心とした,小学校から大学まで,合計6校を擁する総合学園です。建学の精神「教育は愛なり」,教育方針「常に神と共に歩み社会に奉仕する」を基に,特色を生かした教育を展開しております。
 2ページ目を御覧ください。これは広島工業大学の人材育成の取組の概要です。本学は,長年にわたり,主として中国地方のインフラを支える基盤人材の育成に取り組んでまいりました。本学は広島県において唯一の工業大学で,卒業生は約5万3,000人,その半数近くが県内に就職し,活躍をしております。広島大学にも工学部はありますが,卒業生の数,地元への就職率を考えますと,広島県のものづくりは本学卒業生が支えていると自負をしております。デジタル人材の育成にも注力をしております。近年,業界を問わず高度情報化に対応できる人材が社会全体で求められていることから,全学部で数理AIやデータサイエンスを学べる教育課程を整備し,大学全体でデジタル社会の担い手育成に取り組んでおります。また,女性エンジニア育成にも,長きにわたり取り組んでおります。2007年に,女子学生の学生生活やキャリアアップを応援する組織として,女子学生キャリアデザインセンターを設置いたしました。
 続いて,広島工業大学の産官学連携について,具体的な取組を紹介いたします。3ページ目です。結論から言いますと,産官学の連携により,大変よい成果を上げることができました。広島県南東部にあります,府中市との取組です。人口は約3万7,000人という,小さな市です。府中市では,スポーツ振興施設を新築することになり,そこに設置する家具,具体的には,椅子やベンチ,テーブル,これらを開発するプロジェクトに本学の学生が取り組みました。府中市の主たる産業は,木のぬくもりを大切にした,府中家具の生産です。府中市の森林率は約70%であり,豊富なヒノキという資産があります。図に示したとおり,産官学にはそれぞれ,目標やゴール,メリットがあります。本学では,知見を社会に還元するとともに,学生の学びにつながる絶好の教育機会と捉え,この連携に取り組みました。学生は,空間デザインを踏まえて,教員とともに家具の開発に取り組みました。CADを使って何十枚ものデザイン案を作成したと聞いております。学生の作品は非常に高い評価を受け,複数のデザインが採用されました。それを地元企業は受入れ,企業において本製品の製作段階に入っております。学生にとってこの経験は,達成感や社会とのつながりを感じるよい機会となり,これ以上ない教育効果が出たものと判断しております。
 ただ,この取組が成功するに至るまで幾つかの課題がありました。4ページを御覧ください。まず,コミュニケーションについてです。取組を進めていくには,しっかりとした旗振り役が必要です。日程調整などの細かいところから,合意形成などの取組を進めていく上で,様々なハードルがありました。また,各セクター間での声かけがあって初めて案件が発生するものであることから,常日頃からの関係づくりが非常に重要になります。
 次に,目標の違いについてです。各セクターが異なる目標や優先事項を持っているため,連携の方向性が必ずしも一致しないところがありました。様々なケースがあると思いますが,最初から目標は完全に一致することは少なく,どのように折り合いをつけていくかというハードルがあります。
 最後に,資金及びリソース面についてです。産官学,それぞれ単独の組織では,残念ながら,資金や人的資源を十分に確保できる体制は整っていないという現状があります。この課題,特に資金については,国からの支援が必要不可欠です。そのような中,大学としては,学生に対し,地域社会とのつながりと,そこで活動する楽しさを実感できる教育機会をもっと増やしてやりたいと考えています。学生には,こういった活動を通して自治体や企業といった地域社会を知ってもらうだけでなく,それにより郷土愛・地域愛が生まれることを期待しています。学生の郷土愛・地域愛を醸成することは,地域の基盤人材育成につながる大きな要因になると思います。地方にある私立大学は,地域の基盤人材を担う学生を育てることが使命です。ただ,大学だけでは限界がありますので,産官学の連携が必要となります。
 次に,5ページ目を御覧ください。本学で新たに取り組み始めた産学連携について,御紹介いたします。この取組は,学生のやりたいことを,企業と大学で連携し,応援するというモデルです。プロジェクトの目的は,学生の自主性の活性化,そして,「電気って面白い」を学生自らが社会に発信していくことです。具体的には,小中高校生を対象とした,出張授業や工作教室の開催です。学生はどうすれば電気の魅力を伝えることができるかを考え,参加者の対象年齢を踏まえてイベントを企画し,材料の調達や実施場所の調整に取り組んでいます。企業の方には,この活動費を資金面で支援していただいておりますが,それに加えて,チームリーダーの学生に対してプロジェクトマネジメントに関する講義を実施してもらいました。また,年に2回,賛同企業の方々を大学にお招きし,学生による報告会と交流会を実施しました。企業と大学,それぞれの立場で目的や優先事項に違いはありますが,学生を中心に据え,共に人材を育成するという点でつながることにより,よい連携ができていると思います。
 6ページ目を御覧ください。これは,来月,ものづくりの楽しさを実感できる場として,広島工業大学のキャンパスにHiroshima Making Hubを開設いたします。3Dプリンターやレーザー加工機などを使って,新しいものづくりを体験できる場所です。このコーナーでは,学生だけでなく,地域の企業や住民の方々も使えるような企画を実施し,地域社会の活性化に貢献してまいりたいと考えております。
 最後に,7ページ目です。「未来の,その先をつくる」というのは,本学のパーパスです。これを基に,2025年度から学部を改組し,新しい教育,人材育成に取り組んでまいります。
 以上が,私からの広島工業大学が取り組む地域人材育成の紹介です。御清聴,ありがとうございます。
【小路座長】  ありがとうございました。
 では,続きまして,中村委員,よろしくお願いいたします。
【中村委員】  それでは,資料のほうをよろしくお願いいたします。資料11でございます。
 私のほうは大学等連携推進法人を活用しました連携事業というところでございますが,国立大学法人である本学山梨大学と,公立大学法人である山梨県立大学が設立いたしました,大学アライアンスやまなしの事例につきまして御紹介した後に,今後,地方創生を牽引する国立大学の在り方というものを考えていきたいと思っています。
 次の目次を御覧ください。今日は,このような形で,二つの柱でお話をしたいと思います。
 次に,2ページを御覧ください。まず,大学アライアンスやまなしについて,簡単に御説明いたします。地方人材育成への期待や,スケールメリットを目指しました大学運営,現状の大学運営に関する危機感を山梨大学と山梨県立大学が共有いたしまして,地域的な条件,開設学問分野(重複分野が少ない),あるいは,経営基盤というところを捉えた上で,地域大学間の連携から進めるべきという判断をいたしました。
 対応といたしましては,地域を支える人材・イノベーションの進展,地域の発展に寄与するために,令和1年5月に,山梨県,山梨県立大学,本学の三者が連携協定を締結いたしまして,令和3年3月に,全国初の大学等連携推進法人といたしまして,一般社団法人大学アライアンスやまなしを設立いたしました。
 効果といたしましては,比較的,経営面のメリットは僅かであります。主には教学上のメリットが大きくなっておりまして,学生ファースト,あるいは教育の質を上げていくというところで,かなりの成果を収めたと考えております。
 一番下の赤枠の右上に,小さい文字で申し訳ありませんけども,発足当時の令和3年度から,今年度,令和6年度までの開設科目数の変化を出しました。令和3年度は52科目でしたが,本年度は185科目,来年度,令和7年度は共通教養科目の全科目を連携推進科目としたいというふうに考えております。
 次に,3ページを御覧ください。こちらは取り組むべき課題でございますが,まだまだ共通教養のレベルで終わっておりまして,できれば,教職科目とか看護分野等の専門科目についても改革を行っていきたいと思いますし,先ほどからお話がありますが,文理融合のさらなる促進を進めていきたいというふうに思っています。そして,大学の設置形態を超えた新たな枠組み。山梨県内に,大学,短大を含めて,12大学ございます。ですから,私学の参画というものを特に考えております。学問分野のすみ分けをし,学力の違いへの対応をし,建学の精神との整合を取りながら,人件費の削減とか,支援等のメリットを明確化していきたいなと思っております。
 そして,下にございますが,対応策といたしましては,事務職員,あるいは教員のクロスアポイントメントで人事交流をすること。重複する教養科目の集約により,大学のリソースを活用し,効率化を図ること。さらには,対面事業,あるいは学生交流を促進していきたいと考えています。
 制度的な課題といたしまして,国に期待いたしますのは,財政支援を含めました,私立大学が参画しやすい仕組み,助成金等のインセンティブの構築,さらには,中央教育審議会の特別部会の答申を踏まえまして,大学等連携をより緊密に行うための仕組みの導入をお願いしたいと思います。
 それでは,4ページを御覧ください。二つ目の柱になりますが,地域の持続的な発展(地方創生)を担う人材養成の推進について,お話をしたいと思います。こちらは,昨年,中央教育審議会の特別部会のほうで,私が発表させていただいた資料でございます。今までのお話にもございましたが,産学官金で組織的に対応する必要がある。これは,地域の持続的な発展を補う,そして,急激な少子化の進行を防ぐために必要であると思っております。実は,先ほど大分県の事例を聞きまして,すごく羨ましいかったんですけども,私どもも一応,地域連携プラットフォームをつくっておりますが,ここではなかなか当事者意識が出てこないというのが,私どもの県の実情であります。問題解決に向けたスピード感には課題があるというふうに考えております。そこで,実効性のある産学官金連携のために新たな体制を構築の検討をする必要があるというふうに考えておりまして,その下の事業内容に書きましたが,まずは少数精鋭によります組織体をつくりたい。これは地方創生推進機構。このときは仮称でこういったものを述べましたが,地域の地方創生を担う地域創生の人材及び時代に即した人材,例えば,デジタル人材でありますとか,社会人のリカレントやリスキルの問題でありますとか,そういったものを機動的に養成したい。そして,大学院を強化していきたいと考えております。
 右の下に取組のイメージを書いております。ここでは地方創生推進機構というふうに書かせていただきましたが,産学官金で考えていくときに一番大事なのは,実はコーディネーターという役割の方だと思います。司令塔で,これは,実務家教員,あるいは,いろんなところを経験した方を配置したいと思っていますが,これを持続的に計画的に養成していく。こういったものも我々大学の使命だと思っております。
 それでは,最後の5ページを御覧ください。こちらのほうは,冒頭,三木課長のほうから御説明されました中央教育審議会の答申の要旨の最後のページ,7ページでございます。先ほどお話ししましたように,左側にあります地域構想推進プラットフォーム,地域連携プラットフォームは,山梨県にもできておりますが,ただ,これは年間数回の会議で終わっている。先ほどの大分さんのように部会をちゃんとつくって実際に行動しているわけではないというところで,これは,私ども大学だけではなくて,自治体,企業の方々,あるいは金融の方々からもこういった意見が出ておりまして,右のほうの地域研究教育連携推進機構というものを中教審の答申では掲げておりますが,特に右下,産官学とありますが,ここに金を私は入れたいのですが,産官学金の連携推進パターンといったものを常置的につくっていくというふうに考えております。例えば産業では,商工会議所でありますとか,経営者協会でありますとか,経済同友会でありますとか,そういう方々にもこういったことを御説明し,賛同を得ております。また,県や市町村,本学は山梨県内の7割の市町村と包括連携協定を結んでおりますので,ほぼ,自治体の首長の方々にも御賛同いただいております。さらには,地銀の中に山梨中央銀行というのがございますけれども,メインバンクでございますが,こちらのほうは地方創生の部局がございますので,ここと既にクロアポも進めておりますけども,うまく連携を取りながら,こういったパターンの機構をつくっていきたいなあと考えております。そのためには,下のほうに文部科学省と赤で囲ってありますけども,文部科学省の中に新しく設置されます地域大学振興室,文科省の中に設置されますが,そちらのほうときちんと連携を取りながらやっていきたいなあと思っています。これは国立大学として本腰を入れなきゃいけないものですから,大学の中に新たに産学官金の連携推進センターなるものを設置いたしまして,地方創生の推進をしていく部局をつくっていきたいと,これを今準備しているところでございます。
 私のほうからは,以上でございます。
【小路座長】  ありがとうございました。
 では,続きまして,田村委員,よろしくお願いします。
【田村委員】  時間も大分来ているようでございますので,簡潔に話させていただきます。文科省のほうから三つほどお題をいただいておりますが,大学が地方創生に果たす役割は,既に様々な方がお話しされていますので,省略します。自5ページを見ていただきたいと思います。
 私は,千葉科学大学の公立化の検討委員や,公立大学の関係の仕事をいろいろさせていただきました。千葉科学大学の委員会では,様々な議論がありましたけども,特に淑徳大学の矢尾板先生が委員長をされまして,非常にきれいにといいますか,論点整理をしっかりやられております。公立化ということに関して,そこに書いてあることが,ほかの大学でも応用が利くといいますか,考えるべき点じゃないかということと思います。地域に本当に必要な学部を残す形での公立化が望ましいという答申を出しまして,現在,学校法人側は検討されているようでありますが,私も委員として参画する中で,本当に市民の意見が多様であり,また,審議会の過程の中で変わっていくということも感じました。やはり,しっかりとした情報を提供する中で議論をすべきものだと思いました。
 そして,6ページ,4番目の私立大学の公立化の課題を説明します。私も長野大学の評価委員会の委員長などで関わっておりますが,確かに,公立化によって倍率が上がり,充足率は上がる。そして,財政収支が改善され,いわゆる偏差値なども上がるということがある、あるいは期待されるわけですが,他方で,公立大学をめぐる環境も非常に厳しくなっております。志願望倍率の低下ですとか,二次募集をするようなところも出ている。そしてまた,既に話もありましたが,域内入学率とか,就職率が下がっている。当然,公立化になって,外からの学生が増える。また,自治体による学校経営に対する不安もあるということで,公立化は打ち出の小づちとは言い難いだろうと。ただ,私自身は別に公立化を否定しているわけではありませんので,しっかりとした,真剣に真摯な議論が必要であるだろうと考えています。そしてまた,多様な意見があるということで,各地域でそれは冷静に議論されるべき、すなわち,結論先にありきではない議論が必要ではないかというふうに考えています。
 それを踏まえて,高等教育政策に関する自治体の課題,自治体に対しての課題ということですが,そもそも自治体は,高等教育を自分たちの仕事と考えていなかった。そもそも,そういうものだったわけですね。ですから,高等教育に関する計画や指針・方針等を持っているところは少ないですし,所管する課とか所掌事務に明確に書いているところは,県レベルでも少ない。長野県はしっかり対応しておりますが,非常に少ないということがございます。そして,公立大学を設置している自治体,特に市の中には大学の運営だけで手いっぱいというところもありますし,また,公立に限りませんが,地域社会における大学の意義や価値を自治体や地域社会がどれだけ理解しているかというのは,必ずしも同じ土俵ではないといいますか,自治体によって様々である。ということで,自治体が地域の大学を知的インフラとして大事なものだとしっかり認識し,連携を進めるべきですし,他方で大学の側も,そういうところにも欠けている部分があるかなという感じであります。トップ同士の交流とか,そういうものは大抵あるわけですが,いわゆる実務レベルでの交流が非常に弱い。大学の教員もなかなか忙しいところはあるわけですが,そういうところの自主的な連携というのがこれから本当に必要になるのではないかというふうに思われます。
 そして,最後に8ページですが,公立化に関して想定される自治体側からの懸念ということで,そもそも自治体は大学運営に関するノウハウがないわけです。特に人的な資源がないということが当然ありますし,また,自治体のトップは選挙で選ばれますので,首長の交代による方針転換の可能性も当然ある。自もちろん治体も様々なガバナンス不全が報道されますけども,一応,制度上,様々なチェック機能があるわけで,他方で,ごく一部ですが,私立大学のガバナンスの健全性については大丈夫なのかというような情報,そういうものが見えてくると,公立化ということについても慎重にならざる得ない部分もあるかと思います。そしてまた,自治体全体の財政が厳しくなって,これは国もそうですが,そういう中で,交付税措置があるといっても,公立大学協会の調べですと,超過負担といいますか,基準財政需要額,交付税で入っている額よりもかなり多く出しているところが半数以上あるということも,一方で一つの懸念材料かと思います。また,先ほどもありましたが,地元の高校生にとっての受け皿に必ずしもならない。受験が難化することによって結果的に地元の高校生が入りにくくなるということはあるわけですが,そういう様々な懸念がある中で,私立大学の公立化というのは,一つの選択肢でありますけど,真摯に慎重にいろんな意見を聞きながら議論すべきものかというふうに思います。
 取りあえず,以上でございます。
【小路座長】  ありがとうございました。
 委員の皆様方,皆様の御説明によりまして,私立大学が果たす役割の理解と,一方で課題というものが明確になってきたのではないのかなというふうに思います。
 最後になりますけど,資料13を見ていただきまして,A4縦の文字だけの資料でございますが,今日のそれぞれの皆さんの説明を踏まえまして,大野委員,大森委員,角田委員,中村委員に,今後の議論のための,「検討課題」というふうに書いてありますが,いわゆる論点整理的なものを作っていただきました。時間の関係もありますので後ほど詳細は見ていただければと思いますけども,4委員に代わりまして,私のほうから簡単に説明をさせていただきたいというふうに思います。何か補足がありましたら,4委員の方,後ほどお願いいたします。
 まず,1の私立大学が果たす役割についてということで,(1)の現状認識というのがございます。現状認識として,先ほど資料にもございましたように,国・私立大学の歴史的経緯からの役割は大きく変化をし,私立大学が主要な役割を果たしていると。こういった現状,事実ですね。そして,私立大学の特に重要な役割を4点挙げていただいております。1ページ目の下の黒点の4点ですね。高度な研究人材,グローバル人材の育成,我が国の社会・経済を支える人材の育成,地域中核人材の輩出と,同様に,中核人材を含めました,専門人材の輩出という4点について,まとめていただいております。
 また,(2)具体的な施策の方向性や論点といたしまして,次のページに記載しておりますけども,私学助成金の在り方の見直しなど,新たな支援の在り方が必要であるということ。併せまして,適正な競争環境の整備の必要性。こういったことを提示していただいております。
 次に,2の地域の人材育成に向けた私立大学の在り方についてということでございます。(1)の現状認識として,先ほども話がございましたけれども,私立大学が,エッセンシャルワーカーの輩出など,地域社会の振興・発展に大きく寄与をしていると。こうした上で,公立大学化の課題にも触れていただいております。
 また,(2)では,具体的な施策の方向性や論点といたしまして,地域で必要とされる私立大学への重点支援,また,大学間連携の強化ということ,そして,地方公共団体や産業界等の参画・協働の拡充,こういったことを提示していただいております。
 この資料の検討課題あるいは論点整理に基づいて,今後,皆様から意見をいただいていきたいというふうに思っております。今日は,あと20分ぐらいになりますので,まず,3名ぐらいの方から御意見を頂戴いたしまして,次回の日程調整をさせていただきまして,1番と2番の論点,検討課題について意見をいただくというような進め方をさせていただければというふうに思いますので,よろしくお願いいたします。
 それでは,この1と2につきまして,御自由に御意見をいただければと思いますけど,いかがでしょうか。
 どうぞ。
【阿部委員】  長野県知事の阿部でございます。私立大学の在り方,先ほどからいろいろ御意見が出ていますが,まず,我々都道府県から見たときには,率直に言ってコミュニケーションする機会は結構少ないです。どうしても,文部科学行政で,初等中等教育のところは教育委員会になっていますし,大学のところは国直轄という意識が我々都道府県レベルでは非常に強いので,そういう意味では,大学と意図的に意識的にコミュニケーションをしていかないと,なかなか機会は少ないというのが実情だと思います。ただ,先ほど田村委員からも御紹介いただきましたが,長野県は短期大学を県立の4年制大学化するということもあり,その時期に高等教育振興課なるものをつくって,さらには高等教育振興指針をつくって,長野県はかなり,高等教育にはこれまで,都道府県レベルではしっかり目を向けてきたほうだと思います。ただ,現状はやや手薄になりつつあるかなと思いますので,もう1回,そこはしっかりやっていかなきゃいけないと思っています。
 そうした中で,何点か申し上げていきたいと思いますが,まず,私大の在り方を考えていく上では,先ほど明治以来の話もありましたし,それから,伊藤塾長から,私大の側からの御意見もありました。これは,私,常に申し上げてきているんですが,冒頭の御説明にあったように,今,社会はまさに大転換期です。まさに国立大学から始まって,その後,私立大学が増えてきて,先ほどの中教審の答申が一定の方向性は出していただいているんだと思いますが,もう一度,改めて高等教育システムをどうするのかというところから,しっかり議論をしていただきたい。まさに今,我々都道府県レベルでは人口減少が最大の課題でありますが,私たちは,ある意味,ちょっと大げさな表現になりますが,新しい国家像をつくるぐらいの思いで人口減少社会に向き合わないといけないのではないかというふうに思っています。そういう意味で,文科省においても,明治以来の抜本的な教育システムの中で私大をどうするかという観点で,ぜひ検討をしていただきたいと思います。
 特に,具体的にお願いしたいことは,今日は経産省からも出席いただいていますけども,地域の人材,これから必要とされる人材は,大きく変わっていくと思います。特に,AIの時代になってきますので事務系の人間の必要性がだんだん下がって,その分,人のお世話をする人とか,あるいは手に職がある人たちとか,そういう人たちが重要になってくる中で,そもそも,このこと自体が高等教育をどうするかということと密接に関わっているというふうに思います。将来必要な人材がどういう分野でどれぐらい必要なのかというのを,実は我々都道府県レベルでも少しやっているんですが,なかなか都道府県レベルでは難しいです。ぜひこれを,文科省,経産省,あるいは関係省庁でしっかりやっていただいて,その中で,どういう人材を高等教育機関として養成すべきなのかという方向性をしっかり出していただきたいなというのが1点です。
 それから,2点目は,先ほどからデータをいろいろ見させていただいていて,大学は非常に地域偏在が大きいです。私たち長野県も大学を誘致したいなというふうに思っていますが,人口減少の中では,なかなか簡単にはできません。特に,大都市に偏在しているという状況だと,どうしても地方から若者がどんどん出ていってしまいます。先ほど和歌山市長のお話もありましたし,我々地方は一生懸命頑張るんですが,我々が頑張ると,今,子育て支援で言われていることは,地域間競争をやり過ぎだと。要するに,全体のパイが増えないのに,みんなが,うちの地域,うちの学校とかってやっていると,結局,日本全体として見ると,ただのパイの奪い合いという形になるので,まず,地域的な私大の在り方はどうするかというのは,ぜひ全国的な視点で,文科省で考えていただきたいと思いますし,先ほどの人材の話と併せて,地方私大は,福祉系,医療系とか,あるいは幼児教育とか,結構偏っていますので,学部構成の偏りもぜひ,どうするかを考えていただきたいと思います。
 それから,3点目は,財政の話,授業料の話でありますが,まさに高等教育は国レベルでしっかり財政負担をしていただきたい。これは,国立大学も含めて,思っています。我々地方としては,大学は,今日は人材の話が中心になっていますが,それだけじゃなくて,知の拠点としての重要性は非常に大きいと思っています。産業振興をやっていくにも,地域活性化をやっていくにも,大学の学生もそうですが,教員の皆さんの役割も非常に重要です。長野県立大学をつくったおかげで田村先生が来られて,長野県の宣伝をしていただいていますが,大学が大都市に偏在していると,そうした地域の産業振興とか活性化にとっても非常にマイナスになります。そういうことを考えれば,ぜひ国レベルでしっかり財政的な支援を行っていただきたいというふうに思いますし,例えば,地方の大学は人を集めづらいです。そういう意味では,修学支援新制度等も含めて,地方の大学にもう少し温かな目線を投げかけていただいて,我々も地域の産業界の皆さんと一緒に頑張って支えるようにいたしますので,トータルで地方の大学をぜひ見ていただきたい,財政支援をしっかりやっていただきたいと思いますし,あと,経済界は今,どこも人材が足りないので,例えば,もっと寄附をしやすくするとか,もうちょっと広い観点で財源のことを検討いただければありがたいというふうに思います。また,授業料の在り方も,国公私立をどうするかということと根本的に関わる話ですので,そこも含めて,ぜひ検討いただきたいと思います。
 それから,最後,我々地方から見ると,大学はまちづくりと一体だと思っています。長野県立大学も,寮を長野市の中心部に設置しましたが,それ自体が,街のにぎわい,活性化につながるという状況です。そういう意味では,今,若者がどんどん流出してしまう中で,大学は,人材育成機関として大事であるだけじゃなくて,地域の振興・活性化,そして,そもそも若者がいること自体,我々としては大変重要な価値があるというふうに思っていますので,ぜひ,そうした幅広い観点で私立大学の在り方を御検討いただければと思います。
 以上です。
【小路座長】  ありがとうございました。
 それでは,ほかに御意見ございますでしょうか。
【伊藤委員】  次回は欠席しますので,次回の議論を先に,意見を述べさせていきます。
 まず,地域の活性という意味で見ると,今日,中村委員の発表の中にあられたような,国立大学,県立大学,私立大学の協調というのは極めて重要で,それ自体が,今回,大きなポイントだと思います。そこに対する国の支援をしっかりするということが,一つ重要なことだと思います。
 その上で,例えば,国立大学生と県立大学生と私立大学生で払っている個人負担が違うと,例えば,国立大学生が私立大学に授業乗り合いで取りに行くとすると,私立大学はもたなくなるわけですね。当然のことながら,私立大学から国立大学や県立大学に授業を受けに行く人のほうがずっと多ければいいんですけども,もし同じ数の学生が国立大学から私立大学へ,そして私立大学から国立大学に行ったとしたら,それは私立大学のほうは経営がもたなくなるということですので,そういう意味では,授業料はある程度同じぐらいのレベルにしてほしいということで,実際にかかっている150万円ぐらいに国立大学は上げてほしいというふうに私が言った上で,先ほど阿部知事もおっしゃいましたが,国は温かい目をというのは,お金がない,払えないところには,奨学金,あるいは後で返すのか分かりませんけど,手厚い支援をしてほしいということです。
 それから,もう一つは,地域の大学を選ぶ人にはバウチャーを渡すようなことをして,地域を選ぶのは得だなと思われるような国の支援が必要だというのも,私が主張しているところであります。ですから,個人負担はある程度一定のところに置いて,23区ではなく長野県や山梨県で学ぶと個人負担が減るような形をつくるというのは一つなのかなというふうに思っています。
 さらに,地域での就職を促進するという意味では,最近の高校無償化の議論を聞いていても不思議だなと思うのは,高校だとなぜか,特に大都市だと思うんですけど,私立に人が集中して公立が空洞化するという議論なわけですね。大学になると,突然,その逆になるわけです。まだ,企業になると,2割から3割が大企業ということで,みんなが大企業に行きたくて,中小企業は非常に困る,地域の企業も困るということになるので,ここら辺のところをどうやって是正していくかというと,大企業が踏ん張って,最後まで採用活動を行わない。地域の企業や中小企業が先に採用活動を行い,最後の最後,卒業した後に初めて大企業が採用活動を行うようなことにすると,常に8割:2割という,大学も,企業も,産業構造もそうなっているときには,みんなが行きたいところは我慢して,最後まで静かにしている。最後まで勉強する。それによって,地域や中小企業というものがないと駄目になるわけですね。なぜそういうことを言っているかというと,私立大学は8割の学生を担っているということは,その8割は皆,よい就職をしたい。でも,よい就職は2割の大企業に入ることだと思っていたら,それは一生幸せにはなれないわけですから,そうじゃないんだ,広い意味での地域への貢献や,いろいろなところで働いていくことで,いい企業がたくさんあるんだということが分かっていかないと,8割の学生が通う私立大学の学生たちは,ハッピーにならないまま,しかも貢献できないまま,終わってしまうんじゃないかというのが私の大きな懸念点なので,そこら辺も含めて一緒に考えていければというふうに思う次第でございます。
 以上でございます。
【小路座長】  ありがとうございました。
 それでは,もう1名ぐらい,御意見ございましたら伺いたいと思いますけど,いかがでしょうか。
 どうぞ。
【福原委員】  私学事業団の福原でございます。本日は,様々な御経験を生かした御発表をいただきまして,ありがとうございました。
 総論的なものと各論的なものとを一緒に申し上げることになりますし,また,次回も敷衍させていただきたいと思うのですが,私立大学が果たしてきた役割の中で,今,人口減少下において,どのようにそれを変えていかなきゃならないかという議論が先行しがちでありますけれども,今日,伊藤先生の方から歴史を述べていただいて,これからの時代でも,そういう状況の中でも,しっかりと堅持していかなきゃならない,私学の役割というものがあるように思います。
 その一つは,国や自治体といったところで最近はいろんな取組をされていますが,そういったところにない,建学の精神を生かした,先導性というか,進取の気鋭を持って,こういう人を育てたいとか,こういう活動をしたいという,これを萎えさせてはいけません。これが設置認可の大変難しいところで,数は多くできないけれども,こういうものを大事にしたいという,そういう先導性のある私学の取組というのは大切にするべきだと思います。
 それから,多様性。地域のニーズに合った多様な役割,数があるから多様性も確保できるのですけれども,地域とともに,その多様性を維持する。それから,社会との近接性というか,地域社会と一番ニーズの一番近いところにいるのが私学だというふうに思います。そういった先導性や多様性や近接性を持っている,私学がこれまで果たしてきた役割はしっかり守った上で,少子化のための議論をすべきだというふうに思いました。
 最後に,地域人材育成に向けた私大の在り方については,本当にまとめていただいているとおりだというふうに思います。一つのアイデアとして申し上げると,私は人口減少下で苦しんでいる台湾へも韓国へも実際に行ってきて,私学が私学財団が一体どういう取組をしているのかということを見て廻った中で,設置形態を問わず,その都市に学生の寮を造っている点に興味を持ちました。そして,設置形態,大学を問わず,すなわち、大学ごとの寮じゃなくして,国立も,公立も,私立も,そこに通っている学生たちが地域で一緒に住み,そして,その地域の課題を考える,そういう仕組みを見て,これは大変いい仕組みだなというふうに思いました。地域に役立つ人をつくることはもちろん,大学在籍中も地域の活動に参加できるような仕組み,こういったようなものを取り入れていただければなというふうに思いました。
 続きはまた,私は毎回この会には出てきますので,毎回次々と発言をさせて戴きます。どうぞよろしくお願いしたい。
【小路座長】  ありがとうございました。
 それでは,時間が近づいてまいりました。私,座長としての司会進行がうまくいきませんで,時間が少なくなってしまいまして,申し訳ございません。
 次回は,検討課題のところをまとめました1と2について,引き続き,皆さんから御意見を頂戴したいというふうに思います。私も意見があるんですけども,時間もないので,阿部知事,伊藤塾長,福原さんの御意見と,それから,今日の御説明を伺って座長として感じたことを申し上げますと,やはり大きいのは,土地利用を含めてなんですが,地域の産業政策と知の拠点としての大学教育方針,これはもう,産学連携ではなくて,産学融合としてどうしていくのかというふうに進めて,検討をしていかなければいけないのではないのかなというところが一つでございます。
 それから,伊藤塾長からもお話ありました,私立大学の財政,あるいは私立大学の収入について,一方では大学収入の多様化ということも,海外大学と比べて考えていかなければいけないし,また,交付金の在り方というものも,どういう在り方がいいのかということを考えていかなければいけないと思います。米国と日本では大学収入の多様化というのはかなり違いがあるので,そこら辺も場合によっては我々の参考になるのではないのかなというふうに思いまして,二つ目はそんなところを感じました。
 それから,三つ目は,高等教育になるわけですけど,私立大学も含めて,高度専門人材をどう育成していくのか。その育成に当たっては,産業界との連携,あるいは,産業界,産業構造の変化を踏まえて,どう高度専門人材をつくっていくのかということを考えていかなければいけないのではないのかなということを感じたところでございます。
 それから,四つ目,産業界では,いわゆるメンバーシップと言われている,一括採用,終身雇用,年功序列というのが,特に大手企業ですけど,大きく崩れて,日本もいわゆるジョブ型という人事制度に移動してきています。それに伴って,この数年間,いわゆる労働移動がかなり活発になってきている。ただ,その労働移動というのは大手企業間だけであって,大手から,地域企業,中小企業に行くというのは,まだまだ少ない。そこに労働移動の日本の課題を抱えております。特に,中小企業は,御存じのように,人手不足が深刻化しております。賃上げも,労働分配率が80%にもなっておりまして,支払い能力はもう限界を超えているというのが,地域・中小企業の実態でございます。ただ,今年も大手企業中心に,今,5%強の賃上げが出されようとしております。そういった地域とか中小への労働移動をどうしていくのか。そのために,リカレントとかリスキリング,これをどう,知の拠点である大学と行っていくのか。あるデータによりますと,民間学習機関のプログラムでのリカレントというのは参加率が44%なんですけども,大学のリカレント参加率は12%,大学院に至っては,院は当然少なくなるんですが,6.5%という実態で,ここの数字の問題を解き明かして,労働移動にリカレント・リスキリングを,また,高等教育機関を通してどうやって幅広くつくってもらうかということも考えていかなければいけないのではないのかなということをちょっと感じたところでございます。
 それから,国公私立合わせて810ある大学を,今回のテーマとはちょっと違うかもしれませんけど,今後どうしていくのかということも若干考え合わせていかなければいけないんじゃないかなというふうに感じたところでございます。
 いずれにしても,様々な御意見がまだまだたくさんあろうかと思います。今日はお三方の御意見をいただきましたし,また,御説明も十分いただいて,私立大学が果たす役割,それから,地域人材との関係についても理解が深まったというふうに思いますので,次回は,私も含めまして,皆さんからさらに1と2について御意見を伺って,議論ができればというふうに思っていますので,よろしくお願いいたします。
 それでは,勝手に閉めてしまいますけど,時間がちょっと過ぎまして,申し訳ございません。本日についてはここで閉会とさせていただきますけど,最後に,事務局から,今後の会議予定について,御説明をお願いいたします。
【片見私学行政課課長補佐】  皆様,ありがとうございました。本日は,運営の不手際があり,大変申し訳ございませんでした。
 今後のスケジュールでございますが,資料14,4月中下旬に第2回ということで,本日の続きの議論と,ここで書かせていただいているように,大学経営の在り方についてという形で考えております。また,第3回ですけど,5月から6月ということで,国際競争力の強化の観点で御議論いただければと思います。その後,7月以降順次開催ということで,また後日,皆様に日程調整をさせていただければと思います。
 以上でございます。
【小路座長】  ありがとうございました。
 今日は,御多忙のところを御参加いただきまして,ありがとうございました。また,次回からも,オンラインを含めて,積極的な皆さんの御参加をお願いしたいと思いますので,よろしくお願いいたします。お疲れさまでございました。
 

―― 了 ――

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