令和7年4月24日(木曜日)15時00分~17時30分
ハイブリッド(対面・Web)開催 ※傍聴はWebのみ
(座長)小路明善座長
(座長代理)平子裕志座長代理
(委員)阿部守一、石川正俊、伊藤公平、大野博之、大森昭生、角田雄彦、田村秀、鶴衛、中村和彦、福原紀彦、村瀬幸雄、両角亜希子の各委員
浅野私学部長、森友審議官、三木私学行政課長、田畑私学助成課長、錦参事官(学校法人担当)、篠原私学経営支援企画室長、吉田高等教育企画課長、石川地域大学振興室長、菅谷私学行政課長補佐
橋本総務省地域力創造グループ地域政策課長、今里経済産業省経済産業政策局産業人材課長
【小路座長】 それでは,定刻となりましたので,ただいまより,第2回の2040年を見据えて社会とともに歩む私立大学の在り方検討会議を開催いたします。
私は,座長を務めさせていただいています小路と申します。よろしくお願いいたします。
本日の検討会議も,対面・オンラインの併用によりまして,公開で開催をさせていただきます。委員の皆様には,大変御多忙のところ,御出席を賜りまして,改めて御礼を申し上げます。
それでは,本日の出欠及び議事等について,事務局からまず説明をお願いいたします。
【菅谷私学行政課課長補佐】 本日は,遅れていらっしゃる方を含むオンライン出席の4名を含め,全体で14名の委員の皆様に御出席いただいており,欠席の委員が2名となっております。
議事及び配付資料は次第のとおりとなっております。過不足等あれば,事務局までお申しつけください。
なお,本日は,日本私立学校振興・共済事業団の吉田理事,名古屋産業大学の川崎教授,高木学園の高木理事長,英知学院元理事・法人事務局長の左近充様,関西学院大学の村田名誉教授の5名にも,議題1の議論の間,取組の説明やヒアリングのために御参加いただいております。
以上でございます。
【小路座長】 ありがとうございます。ヒアリングの関係で御参加いただいた皆様,ありがとうございます。
それでは,早速議事に入りたいと思います。まず,議題1の急激な少子化を見据えた大学経営に関する現状等についてであります。
事務局及び私学事業団より,学校法人に対する経営相談,また,経営指導及び設置審査の概要等について,まず説明をお願いいたします。
【吉田理事】 私学事業団で経営支援事業を4月から担当しております吉田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
初めに,私ども私学事業団では,大学への補助金の交付,学校法人への貸付事業,また,経営支援,共済事業など,私学振興に係る業務を総合的に行っている法人でございます。
本日は,資料1-1に基づいて,学校法人の経営の現状,私学事業団による経営相談などについて御説明をさせていただきます。
それでは,資料の2ページを御覧ください。こちらは大学の入学志願動向になります。初めに,18歳人口の動向になりますが,前年度から3万4,000人減少して,106万3,000人となりました。入学定員は前年度から増加しておりますけれども,志願者数などは減少してございます。その結果,入学定員充足率は前年度から1.40ポイント下降して,98.19%となりました。充足率が100%を下回ったのは,2か年連続,3度目となります。また,充足率が100%未満の学校数は,前年度から増加しておりまして,割合では約6割となってございます。
3ページを御覧ください。短期大学では,入学定員など,前年度からいずれも減少してございます。入学定員充足率は70.08%となり,充足率100%未満の学校数の割合は9割を超える状況でございます。
5ページを御覧ください。大学の入学者の状況を所在地ごとに集計したものになります。その地域を三大都市圏とその他の地域を比較したものが,次の6ページになります。これまで100%をキープしてきた三大都市圏においても,僅かに100%を下回る状況でございます。
次に,9ページを御覧ください。大学法人の経営状況の推移になります。ここでは,事業活動収支差額の比率の状況を御覧いただきます。マイナスの幅が大きいほど,経営が圧迫され,将来的に資金繰りが厳しくなる可能性が高くなります。大学法人では,事業活動収支差額の比率が0%未満,いわゆる単年度赤字法人は44.8%となってございます。
次に,13ページを御覧ください。私学事業団では,依頼のあった学校法人に経営相談を実施しております。経営改善計画の作成支援のほか,学校法人が抱える経営上の問題点について,現状の分析,問題点などを整理してアドバイスをしております。令和6年度は52法人に対して実施をしました。
14ページを御覧ください。令和3年3月から,学校法人の合併,学校や学部の譲渡などを希望する学校法人に紹介業務を行ってございます。大学,短期大学,専門学校を有する学校法人で,こうした御希望がある場合には,顔合わせをする機会を提供いたします。
15ページを御覧ください。経営判断指標になります。学校法人の破綻のきっかけが資金ショートであることから,こちらの指標では,キャッシュフローを重視したものとなってございます。この指標は,学校法人が自身で経営状態を大まかに把握するためのツールでございます。指標を活用することにより,教育研究活動のキャッシュフローの動向や,外部負債と運用資産の状況を通じて,経営悪化の兆候を発見・認識することができます。
ただし,留意点にありますように,経営判断指標に基づく区分は,あくまで将来の見込みを含めた現在の状況を示すものであり,法人の絶対的な評価を行うものではなく,複数の法人の間での優劣を判断するものではありません。また,学校法人の個別の事情が十分に考慮されない場合もございます。
具体的には,16ページを御覧ください。フローチャートに従いまして順番に回答することにより,学校法人の経営状態が確認できます。A1からA3は正常な状態,B1からC3は経営困難な状態に当たるイエローゾーン,D1からD3は自力再生が極めて困難な状態にあるレッドゾーンの三つに分類をいたします。
17ページを御覧ください。集計結果になります。2023年度決算ベースでレッドゾーンに分類される法人数は19法人で,割合は2.9%です。イエローゾーンに分類される学校数は155法人で,割合は23%でございます。留意点にありますように,レッドゾーンの判定であっても,数年以内に必ず経営破綻するわけではありません。また,2019年度決算ベースでレッドゾーンに該当していた21法人のうち,2023年度では10法人がB0以上に移行し,4法人がイエローゾーンに移行してございます。
18ページを御覧ください。本日お手元に御用意させていただきましたもので,私学事業団では,今後の厳しい経営環境の中で各学校法人が取り組むべき課題や具体的な手法の情報を整理したハンドブックを刊行してございます。後ほど御覧いただければと思います。
次に,20ページを御覧ください。令和6年度から,新たに理事長をはじめ経営者専用の私学経営ダッシュボードを開設いたしました。経営分析に必要なデータや資料の提供を通じて,今後の経営判断に活用していただくことを目的としております。
それでは,御参考までに,実際の画面を御覧いただきたいと思います。こちらは,経営判断指標により,A3に該当する法人を想定したもので,学校法人の状況と全国平均などと比較することができるものとなってございます。
次に,21ページを御覧ください。資産運用の概要になります。運用対象資産の規模別では,10億円以上50億円未満の法人が最も多く,約3割を占めている状況でございます。
また,次の22ページは資産の構成になりますけれども,資産規模にかかわらず,債券,現金預金に占める割合が相対的に大きい状況でございます。
最後に,24ページを御覧ください。韓国における廃校大学への取組になります。御参考までに,韓国における18歳人口の推移でありますが,2000年には約83万人でしたが,2021年度には約48万人に減少してございます。推計値では,2040年度には約26万人まで減少する見込みでございます。
それでは,韓国私学振興財団が行っている廃校大学における後続措置への支援及び管理になります。事業概要にありますとおり,廃校大学の学生及び教職員の証明書の発行支援,学事・人事などの主な記録物の移管管理,在籍生に対する特別編入学の業務支援,解散法人の清算支援などを行ってございます。
事業の規模になりますけれども,廃校大学22校の記録物,学生・教職員64万2,000人の記録物を管理してございます。
26ページを御覧ください。こちら,中教審の答申になりますけども,日本においても,破綻した場合の手続や取扱いについて,必要な取組を構築していくことが重要であると示されてございます。
私からの説明は以上でございます。
【小路座長】 吉田理事,ありがとうございました。改めまして,予測はしておりましたけど,数字に基づいたファクトベースで,大変厳しい状況が理解できました。ありがとうございました。
それでは,時間は僅かでございますけれども,ただいまの吉田理事の説明につきまして,何か皆さんから御質問が……。
【三木私学行政課長】 すみません。もうちょっと説明をさせていただきたいと思います。
【小路座長】 そうですか。
【錦私学部参事官】 文部科学省私学部参事官,錦と申します。同じ資料の28ページから,文部科学省が行っている経営指導の取組について御説明申し上げます。
学校法人運営調査委員会という,有識者の先生で構成する組織がございまして,そこと我々事務局が毎年度,全学校法人の決算を確認して,「経営指導強化指標」という指標に該当する法人ですとか,資金ショートリスクのある法人などに対して実地調査を行って,その結果も踏まえ,経営指導を行う法人を決定しております。
対象とされた法人は,先ほど御説明ありましたように,私学事業団の助言ですとか,ハンドブックを参照して,5年間の経営改善計画を策定して,我が省に提出いただくという流れになっております。
学校法人運営調査委員と我々事務方は,毎年度,そういった法人に対してはヒアリング等により,計画の進捗状況を確認した上で,指導・助言を行っております。
これにより経営が改善すれば,経営指導の対象から外れていただくということになりますけれども,うまくいかなかった経営が改善しない法人に対しては,行政指導として,経営上の判断,具体的には,不採算部門の閉鎖ですとか,場合によっては法人の解散,こういったことも含む,経営上の判断を通知でお願いするというような仕組みにしています。
29ページは,この経営指導の対象の法人数でして,最新の数字である令和7年度は42法人となっています。全部で650法人ほどありますので,全体の6%ほどが経営指導の対象になっているということです。
30ページは,こういった取組の全体像です。文部科学省のほうは,先ほど御説明した学校法人運営調査委員制度によって経営指導を行っている。一方で,私学事業団は経営相談を行っている。こういった仕組みになっており,両方力を合わせて取り組んでいるというような状況です。
私からは以上です。
【三木私学行政課長】 続きまして,私のほうから,資料1-2を御覧いただきたいと思います。
4ページでございます。近年の私立大学,学部の設置状況のデータでございます。左下丸2にありますように,近年の新設分野は,保健,工学,データサイエンスなどのその他,そして社会科学といった分野の設置が多く,その新設のうち,定員充足率が7割を満たしてないものが3割を示してございます。
5ページでは,入学定員の充足率の推移でございます。先ほど事業団の冒頭のデータと同じものでございますが,経年変化を見てございます。これまでは入学者数が定員を上回る傾向でしたけれども,令和5年度以降は入学定員が入学者を上回る傾向にございます。
6ページを御覧ください。大学の設置認可制度の概要でございます。教育面を見る大学の設置認可,緑のところと,法人の経営や体制を見る寄附行為の認可,オレンジ部分がございます。中教審の答申では,高等教育の規模の適正化の観点から,厳格な設置認可を御提言いただいております。この会議では,答申を踏まえて,具体的方向性を御議論いただきたいと思いますので,急激な少子化における大学経営の観点から,このオレンジ色の経営・体制面を審査する寄附行為の設置認可について御議論いただければと思います。
7ページは,その寄附行為審査の審議会でのスケジュールでございます。上のほうの1ポツの大学設置のスケジュールを見ていただければと思いますけれども,秋に申請を受け付けて,翌年8月に答申され,大臣が認可する間,審議会におきまして,学生確保や設置構想などの審査を行うとともに,3度にわたりまして,審査意見を申請者に伝達し,申請者から回答を得ながら,面接,実地審査を行っていただき,認可の可否の答申をいただいてございます。
8ページ,9ページは,この審査の基準の概要をまとめております。特に9ページを御覧いただければと思いますけれども,学生確保の見通しにつきましては,近年,厳格化しておりまして,既設の学部の収容定員充足率が5割を上回ることを求める基準を,令和5年に追加してございます。
なお,本資料に記載してございませんけれども,関連する今後の文科省の取り組む方向性として1点御紹介をいたしますと,大学が規模を縮小する判断が行いやすいように,一時的に定員を減少させた場合に,戻すことを容易にしやすくすることを,文科省は中教審の答申に基づき対応していきたいと考えておりますので,関連する改革事項の一つとして今御紹介をいたしました。
11ページを御覧いただければと思いますけれども,今年度の予算の概略で,中ほどメニュー2というところがありますけれども,複数大学の連携や機能の共同化・高度化の予算を計上してございまして,12ページ以降では,その具体例として,幾つかの今年度取り組まれる例について資料を用意してございます。12ページは,複数の短期大学が共有科目の設定等に取り組もうとしておりますし,13ページでは,複数大学による事務の共同化,14ページでは,地域をまたぐ大学間の教育連携の例,15ページでは,音楽大学間の連携の例でございます。
それから,16ページに,私学助成の基本的な枠組みについても,念のため資料をつけてございます。私学助成の基本構造は,教職員数や学生数に応じて算定をし,ピンク色の部分ですけれども,教育・財務・情報公表などの指標により,めり張りをつけておるところでございます。ピンク色の枠の一番下の記載にありますように,学校法人が3,000万円の寄附を支出した場合は,私学助成から減額される仕組みと,現行においてなってございます。
続いて,私立大学への寄附税制について,概略を御説明いたします。18ページにございますように,法人税につきましては,私学事業団を通じた受配者指定寄附により,寄附金全額の損金算入が可能となってございます。
実績でございますが,20ページでございまして,近年,全体として1,000億円程度で,横ばい傾向でございます。
21ページは,ふるさと納税の活用の実績でございまして,133の学校法人がふるさと納税による支援対象となってございます。
23ページ,24ページは,私立大学が建学の精神に基づきながら,高等教育のニーズをはじめ,社会の変化に合わせて学部等を設置・改組してきている実例を三つほど掲載してございます。
最後に,25ページ,26ページは,この4月から施行されました私立大学校のガバナンス強化のための私立学校法の改正の概要でございます。執行と監視・監督の役割の明確化・分離の考え方から,26ページにありますように,理事会と監事,評議員,会計監査人が建設的な協働と相互牽制を確立するよう,それぞれの機関の権限をはじめ,学校法人の管理運営制度を見直したところでございます。
私からは以上でございます。
【小路座長】 よろしいですか。
それでは,お三方から御説明いただきまして,ありがとうございました。ただいまの説明につきまして,皆様から御質問がありましたら,挙手をお願いいたします。
平子さん,どうぞ。
【平子座長代理】 平子でございます。私学事業団の説明,ありがとうございました。
一つだけ質問をさせていただきたいのですが,20ページの私学経営ダッシュボード,開設されたばかりということで,非常に有効ではないかと感じておりますが,利用対象者が学校法人の理事長及び役員,しかも最大2名ということになっています。このようなデータは機密性があるというのは重々承知の上ですが,個々の大学の経営状況がつぶさに分かりますので,もう少し対象者を広げて,気づきを増やしたほうが有効的に使われると思うのですが,いかがでしょうか。
【吉田理事】 今回,理事長及び役員の方と限定しておりますけれども,まず,経営者の方が判断していただきたいということで,これをつくってございます。それ以外の職員につきましては,別のツールでまた御案内するものがございますので,そちらを見ていただければと思います。
【平子座長代理】 分かりました。ありがとうございます。
【小路座長】 よろしいですか。
ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。
それでは,続きまして,有識者の皆さんからのヒアリングということに移らせていただきたいと思います。
冒頭事務局より説明がありました,本日,急速な少子化を見据えた大学経営の在り方について検討をするために,4名の方にヒアリングに御参加をいただいており,それぞれ御発表いただいた後に意見交換に移りたいと思います。
早速ですが,まず,川崎先生から,財務分析の観点からの現状認識,また,今後必要な取組,こういったことについて御発表いただきたいと思います。それでは,川崎先生,よろしくお願いいたします。
【川崎先生】 御紹介いただきました川崎でございます。本日は,信用格付の視点から見た学校法人の経営状況ということで御説明をさせていただければと思います。
それでは,まず,1ページ目,めくっていただければと思います。ちょっとページが抜けているようですが,申し訳ございません。
それでは,本日,財務分析の手法ということで御案内をさせていただきます。1ページ目のところは,これまで私学事業団さんでやっていらした幾つかの手法があるということです。先ほど御紹介のありました,いわゆる経営判断指標,イエローゾーン,レッドゾーンといった,これまで自分自身で絶対評価をするというタイプの財務分析であります。あとは,(3)番にありますような,マスコミが指標として提示されているようなもの,こういったものがあったということでございます。
その次をお願いします。本日は,これまでと違った財務分析手法でございまして,逆に,ステークホルダーから見た財務分析はどうかということで,市中金融機関が行っております信用格付手法,これを類推いたしまして,それを学校法人に適用したということで御案内をさせていただければと思います。
信用格付というのは,金融機関にとっては,これまで貸出審査とか,信用のリスク管理的な側面があったということでございますけれども,名前のごとく,いわゆる貸出先の信用状態,こちらを幾つかの数字とか記号でランクづけをするというものでございます。
一般的には,1格を最上位といたしまして,大体10から15段階に分けていくということでございますけれども,本日は,1格から10格までのランクづけをさせていただきました。
一般的には,4から5格というところが大体中位だと思いますけれども,一方,今回であれば7,8,9,10格といったところでございますが,こちらのほうになりますと,大学業界の環境自体が変化していきますと,その抵抗力が弱体化していって,長期的には債務履行能力が落ちていくというように解されております。つまり、信用格付けとは,自らの資金調達能力を示す代理変数といれるのではないかと思っております。
次のページをお願いいたします。すみません。その前のページですね。それで,信用格付手法というのは,大体3段階のフローで決められるというふうに考えられておりますが,今回は,第一段階の定量分析,特に財務のところだけを見た形で評価をさせていただいております。財務のみで評価をさせていただきますので,たまたま単年度で収支がちょっと悪化してしまっているといったケースもございますので,あくまでも私が類推した一つの前提条件に基づいて評価をしたというように御理解いただければと思います。
次のページをお願いいたします。今回,2024年3月期の財務データを基に格付を取らせていただきました。医歯学部設置大学などは除いています。下のほうに全国平均の比率が載っておりますけれども,このページでは,北海道から甲信越のブロックのところまでの格付でございますが下から三つ目のところに東京がございます。東京は3から5格というところ,ここが6割ぐらいを占めています。一方,北海道,東北,千葉,甲信越といったところは,逆に,四角で囲ってあるところでございますが,7,8,9,10格といったところ,こちらのほうが6割以上を占めております。とりわけ,赤丸で囲っておりますけれども,東北と甲信越,こちらのほうが,最下位の10格が3割を超えているというような状況でございます。
次のページをお願いいたします。こちらのページのほうでは,北陸から九州のブロックまで記載させていただいております。こちらを見ていただきますと,福岡,愛知,京都,大阪といったところは,相対的に格付の高い3から5というところが半分以上を占めております。反対に,北陸,中国,近畿,東海,広島といったところは,四角で囲ったと,比較的低位の格付が5割を超えているというところでございます。特に近畿は,こちらはちょっと母数が少ないんですけれども,10格が4割を超えているという状況が見て取れる状況でございます。
次のページをお願いいたします。今,お話ししました信用格付は,24年3月期のデータを使って分析を行いましたが,もう一方で,十数年前にも同じような分析を行っております。そのときから24年3月期まで,十数年たっておりますけれども,信用格付がどう変化したかということを示しております。
こちら,対象法人が346ということでございまして,十数年前,いわゆる財務情報の開示があまりよろしくないということで,かなり限定的ではあるんですけれども,こちらを見ますと,やはり改善した法人数に比べまして,悪化した法人数が多い状況になっています。
しかし,ブロック別で見た場合ですが,東京,神奈川,埼玉,愛知,京都といったところは,逆に改善した法人数が悪化した法人数を上回っているということが見て取れます。
また,関東,近畿,九州を除く,ほかのブロックでは,悪化した法人さんが相対的に増加をしているということで,やはり地域間格差が少しずつ明確になっているということが分かるかなと思います。
次のページお願いいたします。こちらが事後検証を行っているページでございます。当時,8格から10格という格付の法人さんが,その後,どうなっているのかというのを検証してみました。8から10格のところ,右のほうに実際の該当法人数を示しておりますが,おおむね3割から4割ぐらいの法人さんで,大学の閉鎖をしたり,法人合併,分離,公立化といったところの動きが見て取れるということでございますので,本日私が分析を行っています信用格付の,将来の予見可能性というのは,まあまあそれなりに高いのではないかとちょっと考えているところでございます。
その次お願いします。こういう状況から勘案いたしますと,やはり資金調達能力というところが少しずつ弱体化しているように見て取れる状況です。そういう中において,これは私の個人的な研究で行ったところでございますが,最後に資金がショートした場合,そのお金を誰が供給者としてそこに入ってもらえるのかということです。このときは私学事業団さんへの期待として,最後の貸手機能はどうなんだと聞いたところ,225法人が対象でございますが,約6割の法人さんが「はい」と答えていらっしゃる。3割が「わからない」ということでございますので,それなりに最後の貸手機能への期待感が高いというように感じております。しかしながら,私の理解では,現状では,私学事業団さんにこのような機能はないものと理解をしております。
次をお願いいたします。そういう中において,今後破綻したらどうなるのかということでございますけれども,やはり真ん中に書いておりますが,ブリッジ・仲介機関,もしくは機能を設置する必要があるのではないかと思っております。主に三つの機能があると思っておりますが,まずは学生・教職員の情報・データの管理,あとは,学生の債権管理,主に授業料債権になると思いますけれども,それと,破綻された法人さんの資産管理・運用,場合によっては,同様の法人さんを含めた共同運用ということも含むかもしれません。
あとは,右側にB法人と書いてありますけれども,譲渡される法人に対する信用供与・保証といった機能,こういったものも多分想像以上に必要になるのではないかと考えております。
こういう形で,学校法人さん,いろいろと資金調達能力の格差というのも出始めておりますが,そういう中で,昨今,政府のほうからは,学校法人をアセットオーナーと位置づけまして,今後資産運用において,アセットオーナーとしての機能強化を図るというような指針が示されております。
ちょっと進めて,2ページほど進んでいただきたいんですけれども,もう1ページ目今,アセットオーナーとしての学校法人と言われても,非常に唐突感はあるんですが,実際,アセットオーナーとして学校法人を考えた場合には,私学の共済年金も含めますと,大体15兆円ぐらいあるということで,相当インベストメントチェーンの中で大きな存在であると考えております。
こういうことを勘案いたしますと,次のページをお願いします。学校法人というのはフィデューシャリーな存在であるということで,学校法人というのは,ステークホルダーからの受託者としての,運用の責務というものがございますので,フィデューシャリーな存在として今後考えていく必要があるというように思っております。
すみません。2ページほど飛んでいただきたいと思います。もう1ページ目ですね。こういう中で,今回,政府のほうから,アセットオーナーに対する,いろいろと資産の規模だとか,運用資金の性格等は多様ではあるんですけれども,受益者の最善の利益を勘案した上で,アセットオーナー・プリンシプル,つまりアセットオーナーとしての共通原則が定められ提示されることになりました。
これに法的拘束力はないものの,次のページ以下でございますが,アセットオーナー・プリンシプルとして,五つの原則が提示をされております。ここに書かれていることは,アセットオーナーは,受益者の最善の利益を勘案しなさいということ,アセットオーナーとしての専門的知見に基づいた行動をすること,必要であれば,外部知見の活用,そして分散投資,運用を委託する場合には利益相反等を十分勘案した上で,情報開示やステークホルダーへの説明責任を果たしなさいということが書かれているということであります。
最後のページ,よろしくお願いいたします。そういう中で,現状,アセットオーナー・プリンシプルの受入先はどうかということでございますが,足元でいうと,17の法人さんが表明をされていると認識をしております。しかしながら,私は,学校法人というのは,アセットオーナー,つまり,非常に重要な受託者の責任を負っているかと思いますので,ぜひアセットオーナー・プリンシプルの受入れということがもう少し増えていくことを期待したいと思っています。そのためには,やはり運用知識とか,そういった勉強を日々研さんしてやっていくということが必要だと認識をしております。
では,これで終わりにさせていただきます。どうもありがとうございました。
【小路座長】 川崎先生,ありがとうございました。
では,引き続き4名の方に御説明いただいて,一括して御質問,質疑を進めていきたいと思います。
続きまして,高木理事長,左近充様から,学校法人の連携・統合や法人解散の実務的な課題に関する事例について御発表いただきます。
では,まず,高木理事長のほうからお願いいたします。
【高木理事長】 どうも高木でございます。よろしくお願いします。
私,国際医療福祉大学と高木学園の理事長,両方やっておりまして,最初のページにうちのグループのことが書いてございます。一般の病院だと,この近くの山王病院とか,いろいろな,約1万3,000人ぐらいの職員と,専門学校まで入れれば1万2,000人前後の学生がいるグループでございます。
それで,ちょっと次のページ,割としっかりやってきたということで,ほとんどの学科が国家試験の合格率なんかも1位か2位で,特に成田の医学部は3期生を英語で教育をして,留学生を20名以上教育するということで医科大学を成田に造ったわけでございますが,これ,今年,日本のトップの国家試験の合格率,100%になっております。
それと,ちょうど成田の医学部を造るときに,いろいろな論争があったものですから,相当問題があったとき,私の郷里の福岡のほうに百道浜という,ヤフードームの横のところに福岡の国際医療福祉大学を造るときに,高木学園という別法人でここだけは造ったということで,右下のほうに福岡国際医療福祉大学がございます。
4ページ目は,いろいろな海外のフルスカラシップの留学生が母校に帰るとか,いろいろな事業をやっていますよということが書いてあります。
それで,そういう私どもの大学が,福岡のほうの国際医療福祉大学は,場所が福岡タワーの脇にあって,非常にいい場所なものですから,私どもも,グラウンドだとか,いろいろな場所がどこかにないかということを銀行に頼んだと。今回,文科省の皆さんから,文科省が把握している現在進行形の,学校法人が学校法人を救済する唯一の例だから少し話をしてくれということで今日参っているわけでございますが,それで,そうしましたら,私のほうの銀行から,次の福岡女子短期大学を見ていただくと,3万坪の敷地があって,福岡の天神のど真ん中から20分程度で,太宰府のところにある短大でございます。
次のページを見ると,これ,120年の歴史があって,それこそ昔は高校も持っていたというようなことで,基本的には,栄養士,音楽,文化教養,保育の4学科が短大としてあったという学校でございます。
それで,ピーク時には2,000人を超える学生がいたのが,私どもに相談が来た頃は二百数十名の学生しかいなくて,それも去年の1月から協議を始めまして,ただ,私もびっくりしたんですけど,3か月後とか4月以降について,資金繰りがつかないと。ただ,ここがよかったのは,全く,事実上の無借金で,預金がゼロになって,それで運営ができなくなるという状況下で,1月に御相談がございました。
それで,結局,7ページのところに書いてございますが,女子短大の九州学園のほうでは,それこそ私学事業団のほうに相談して,提携先の公募をしたり,学校法人をいろいろなところに相談したり,また,当然,私,銀行のコンサル部門にも,この2年間,何をやっていたのかと言って,もう少し早く相談してもらえれば救う道もあったのにというようなこともお話ししたんですが,銀行のほうは,いろいろな学校法人に声をかけて,救ってくださいということで,提携してくれとお願いしたわけですが,どこも応じなかったと。
私は,そのときに,応じない理由が当然あるんで,学校法人が,今のうちみたいにいろいろな事業体を持っていれば何らかの形で対応できますけど,事実上,学校法人が学校法人を救う道はなかなか厳しいということを申し上げました。
それで,8ページが,本当に福岡女子短期大学を見ると,平成5年度には,定員が1,560名のところに2,500名近く学生がいたり,それが急速に8ページ目に学生が減っていって,令和6年度には217名,174名ということで,一応,収容定員も落としているんですけど,私どもが引き受けたときには50%を切っているものですから,何らかの形で経営再建をしようということで,ただ,私,九州学園の理事長には,福岡銀行の副頭取で経営再建の神様と言われている吉戒さんに理事長をお願いして,私も随分,知恵を絞ってやりました。
それで,前の経営陣の皆さんに,こういう5割条項があるのは分かっているんで,どうして定員を落とさなかったのかとか,いろいろ聞きましたけれども,あちらのほうでは,毎月毎月キャッシュアウトしていって,それどころじゃないということで,それで結局,私どもとして,200名の学生がいて,2か月ぐらい協議しているうちに,実際,短大の学生が二百数十名いるものですから,このまま預金がゼロになると,学生さんたちが路頭に迷うような話になってしまうということで,いろいろなところから要請を受けて,結局,学校法人からの寄附じゃなくて,うちの関連会社から大規模な寄附をして,ここの今,運営資金を出しているという状況でございます。
私,実を言うと,この短大のほうで,私学事業団さんから経営再建計画を出せとか,いろいろ言われたときに,私学事業団の方には失礼だったんだけど,基本的に一回,5割切っている短大で,一番大きいのは,修学支援金がないということですね。短大でこういう調理とか栄養とか保育に行くような家庭のお子さんは,やっぱり4分の1近くの皆さんが修学支援金を使っていると。それで,いろいろ学校説明会をやっても,修学支援金がないんだったら受けませんということで,恐らく私はそのときに,文科省と私学事業団の皆さんに,基本的にはもう5割切ったら潰れろというようなことなんじゃないんですかと。ですから,何とか経営再建する計画を出せと言うんだったら,修学支援金だけでも復活していただけなければ,学校法人に対する私学助成費のカットについては法人の問題ですからいいんですけど,やっぱり個人に関する,高校生に対してのこの制度については,あまりにもおかしいということで,私はうちの顧問弁護士団にも随分あれして,これはおかしいんじゃないかとか,いろいろなところに行って,みんなおかしいと言うんですけど,これについては,修学支援金についてのことについては,ぜひいろいろ御配慮いただければというふうに思います。
それと,いろいろな制度があるわけなんですが,当然,我々,本来であれば,学校法人から学校法人に対する寄附が認められれば,学校法人のお金を使うのが本筋だろうと思っていたんですが,3,000万以上寄附すると,私学助成費を削る可能性があるとか,文部大臣の認可があるということで,事実上,学校法人が学校法人を救うというスキームは不可能です,これについては。
それとか,先ほども申し上げたように,じゃ,すぐ合併しようじゃないかという検討をしました。それで,合併しようにも,我々の既存の学科は,福岡国際医療福祉大学は,一応,九州中で保健医療系のリクルートでも人気ナンバーワンで成功している学校ですけど,定員が割れている学科を引き取ると,既存の大学のいろいろな学科増設なんかも全てできなくなるということで,合併もできないんです,これも。ということでございます。
あとは,10ページの修学支援金の問題,これが一番大きな話だと。
それと,例えば,あと,いろいろ我々としては,調理・栄養部門だけは必要だということで,残そうと最初から決定していました。これは,今本当に私どもも医者と看護師の確保は割ときちっとしているんですけど,うちのグループの医療施設,福祉施設が調理・栄養の部門の方がいなくて閉鎖しているレストランとかそういうのがあって,ですから,我々,場合によっては,フルスカラシップをつけたり,留学生を入れても,調理・栄養部門については残そうということで考えておりました。
音楽大学は,これ,音楽学科,知らなかったんですけど,福岡県に4年制の音楽大学が1校もなくて,このままいくと,九州中でも,本当に数少なくて,音楽教育をやる場所がなくなるということで,私どもが引き取った後に,福岡県の七社会とか九大なんかを中心に,4年制の音楽大学は福岡県としてもどうしても必要なんでということで,我々も,東京芸大の澤さんを学長にして,音楽大学を造ろうと決断した。
このときも,実を言うと,本来,九州学園で造ったらどうだと言ったんですが,九州学園の校舎ですから。結局,5割切っている学校法人では無理だということで,高木学園のほうが今設置申請をして,九州学園の建物を使って音楽大学を造るという,非常にややこしいことをせざるを得なくなっております。
ですから,本来そういう,私も最後決断をしたのは,やっぱり二百数十名の学生が,この短大の学生が教育も受けられなくて路頭に迷うということで,お引き取りした。しかし,引き取った学校法人に物すごいペナルティーがかかるような今の制度というのは,何としてでも是正していただきたいということが一つでございます。
それとあと,お聞きすると,こういう修学支援金の話は,財務省と厚生省のほうで,何か最初,そういう制度の設計だったとお聞きしていますが,それ以外も,さっきの寄附税制のこともありますし,それと,不思議なのは,例えば,介護福祉士って非常に不足していまして,厚生省が百六十何万の補助金を全員に出しているんですが,それについては,日本の介護福祉士の養成校って定員40名で,どこの学校もせいぜい入っていて10名とか,本当に数少ないんですけど,それでもありがたいということで,10名でも15名でも介護福祉士を何とかしてつくりたいということで,介護福祉士については,定員が何%切ったらゼロにするとか,そういう規定もないわけでございますし,それとか,私,例えばリハビリテーションの学校協会の理事長なんかをやっていまして,視能訓練士学科というのは九州全体で昔3校あったのが,うち1校になっています。九州全域に視能訓練士がいなくなっていいのかと。そこで,定員要件とか,やっぱり毎年10名でも20名でも必要なそういう方々を育成するような,エッセンシャルワーカーなんかについての人材育成なんかも必要だと思いますし,この辺については,特に学校法人の場合……。
【小路座長】 高木理事長,かなり時間が超過しておりますので,簡潔に。
【高木理事長】 分かりました。それで,最終的にそういう,例えば,学校法人の役員が交代したときには緩和をしてもらうとか,ここに書いてございますので,いろいろな要望についてぜひ御検討いただければと思います。
【小路座長】 ありがとうございました。
それでは,続きまして,左近充様,よろしくお願いします。
【左近充様】 左近充隼人と申します。よろしくお願いいたします。
私,聖トマス大学,その前は英知大学を運営しておりました学校法人英知学院で,理事及び法人事務局長を務めておりました。
今日は,こちらの資料2-3にありますテーマで,大学の廃止と法人の清算というプロセスを経験した立場から,その背景や実務上の対応,そして,制度への提言についてお話しさせていただきます。10年ほど前の出来事ではありますけれども,私どもの経験が今後の御検討に少しでも役に立てれば幸いです。
次のページお願いします。英知学院は,カトリック精神に基づく人間教育を理念に,文学部や神学部を中心に教育を行ってきました。設立からの経緯は,こちらの資料にあるとおりです。
学生募集を停止する直前の年度の定員充足率は,44%でした。また,大学廃止前の最終学期に在籍していたのは,大学生の研究生1名のみです。
次のページをお願いします。大学の廃止並びに法人の清算に当たっては,教育,雇用,財務,ステークホルダー対応など,多岐にわたる実務的な課題に直面しました。簡単にはなりますけれども,それぞれの点について御説明さしあげます。
1点目,学生・教職員対応ですけれども,学生募集を停止して以降は,最後の学生が卒業するまで,教育の継続を最優先としました。一方,2011年度から13年度に関しては,新しい学部の設置を目指す再建の取組も同時に並行して進めておりました。ただ,大学の廃止が決まった2014年以降は,教職員との契約や退職に関する対応,また,組合との交渉などもかなり大変でありましたし,係争にもなりましたけれども,できる限り丁寧に進めてまいりました。
最後の研究生1名が卒業した2015年3月末をもって,教員は全員が退職し、職員も私を含めて残務整理を担当する6名を除いて退職しました。退職に際しては,割増し退職金に加えて,外部の人事関連業者と契約を結んで,再就職支援も行っております。
次に,資産・財務に関する対応です。借入金の返済,退職金財団への特別納付金の支払い,そして,清算が完了するまでの運営費や退職金の確保のために,校地の一部を売却しました。残された資産のうち,校地,校舎,図書館,備品,蔵書などについては,兵庫県尼崎市に寄附いたしました。
また,教室や教授棟にあった備品,カトリックに関する大切な品々,学生施設や部室に置かれていた物品などについても,一つ一つ丁寧に確認を行いまして,寄附や保存を含めて適切な対応を取りました。
三つ目,学籍簿ですけれども,隣接する百合学院にお引き受けいただきまして,大学廃止後も,卒業証明や成績書が必要な方々の御対応をいただいております。
なお,学籍簿の中で古いものについては紙で保存されていたものも多くありまして,継承に当たっては,学籍関連書類の電子化や,保管マニュアルの整備に多くの時間と労力を要しました。
関係者・地域対応ですが,廃止の決定前後には,同窓会の皆様から多くの厳しいお言葉をいただきました。閉鎖前には,学内に残っていた思い出の品々を展示して,1週間にわたるホームカミングイベントを実施して,その後,尼崎市の御配慮により,寄附した施設内に大学のメモリアル施設を設けていただきまして,同窓会の皆様が立ち寄れる,活用いただけるようになっております。
清算手続については,こちらのリストアップされているとおり,弁護士,会計士,不動産,IT関連の外部専門家などの支援も,清算完了には不可欠でした。
次のページをお願いいたします。制度への提言とありますけれども,まず,文部科学省,私学事業団による経営支援などの御支援は非常に大きな支えとなりました。厳しいお言葉をいただきながらも,すごく丁寧に御指導いただいたと思っております。
提言につきましてですけれども,冒頭に申し上げましたとおり,10年前の事例に基づいたものですので,その後,制度の見直しだったりとか,検討が進んでいる点も多いかと思います。あくまで一事例,一個人の意見としてお受け取りください。
1点目が,学籍関係書類の継承ルール整備についてですが,保存義務については明記されている一方で,保存先の確保や,その後の費用負担の在り方については十分に整理されておりませんでした。この辺が,やはり今後,こういった同じプロセスを経る学校法人さんにとっては重要なことですし,学籍関係の書類というのは,将来の留学であった,また,学校に戻るなどで必要となりますので,必要かと思います。
次,2点目,固定資産処分に関する指針や,法人清算に対する実務ガイドラインにつきまして,これらはいろいろと出ていることは理解しております。ただ,現場で実務を担う方々が,手順の確認や相談をできるような拠り所があるといいかなと,経験した者としては思います。
4番,5番につきましては,大学廃止までの教育研究体制維持であったり,清算フェーズに対応した支援制度の導入ということで,募集停止から大学の廃止,そして,残余資産,財産の帰属先が決定するまでの間に,必要な人材,教職員を安定して確保し続けるための制度的支援や,既存のルールの中で一定の柔軟性を持たせた制度運用が必要ではないかと感じました。
また,清算フェーズにおきましては,やはり非常に多くの時間と労力,そして,資金を要します。こちらに対して,様々な分野における支援制度や再体制というのが非常にありがたいのではないかと感じました。
次のページをお願いいたします。我々,兵庫県尼崎市に残余財産を寄附させていただきましたけれども,その後,尼崎市のほうで,あまがさき・ひと咲きプラザとして,様々な用途に活用していただいたり,尼崎看護専門学校のキャンパスとして使っていただいたりしております。大学の使命を終えた後も,教育資源として地域社会で活かされていることというのは非常に嬉しく思っております。
以上になります。御清聴いただき,ありがとうございました。
【小路座長】 ありがとうございました。
では,続きまして,村田先生から,設置審査の厳格化ということについて御発表いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【村田先生】 ありがとうございます。それでは,私の方から認可審査の厳格化についてお話をさせていただきます。
今日,私は法人分科会の会長をしておりまして,そこでの議論も参考にしながら,今日は個人的な意見を述べさせていただきます。
まず,いわゆる設置認可の厳格化なんですが,それに入る前に,審査体制のプロセス等々についても少し議論をする必要があるのかなと考えていますので,初めに,審査体制とプロセスの見直しについてお話をさせていただきます。
これまで大学設置・学校法人審議会の学校法人分科会の委員の構成につきましては,基本的には大学関係者から構成をされておりました。今日,皆様,委員からお話がございましたように,今回の問題は,財務の問題,いわゆる経営判断,経営手法としての財務の問題が極めて重要な問題となっておりますので,そういった意味では,逆に,経済界,あるいは公認会計士,弁護士などの,少し大学関係者以外の委員を少し増やした上で,財務状況をより厳格に見ていくことが必要なのかなということが一つです。
それから,少し細かな話にはなるんですけれども,これまでも書類審査,あるいは面接審査といったときに,それぞれの段階で委員が交代したり替わったりということがございましたけれども,一つの大学を,特に少しここの大学は危ないかなというところを,書類審査から面接というところまで首尾一貫して同じチームで見られるような審査体制にしていったほうが,審査の途中でいろいろな書類が出てきたり,変更が出てきたりしたときに,首尾一貫した形で審査ができる。そんなことも感じているところでございます。
それから,先ほど申し上げましたように,財務関係の書類を早く申請時に提出を求めています。先ほど三木課長からも御説明ありましたように,今回は学校法人分科会での議論なんですが,実は設置分科会のほうでは,教学関係の審査をやっているんですが,教学と経営というのは不可分でございまして,幾ら教学をいいものにしようと思いましても,人,物,お金がなければできない。そこのものが分離して議論されている。もちろん分離して議論しているのは,基づく法律が違うからではありますけれども,やはりどこかでちゃんとそこを両方共有した形で議論をしていく体制をつくっていくということも必要ではないかなと思ってございます。
続いて,審査基準の厳格化でございますが,これも先ほど申しましたけれども,いわゆる財務の状況が非常に重要な指標になっておりますので,経常収支差額の3か年連続マイナス,かつ,直近の外部負債が運用資産を上回っているという場合には,もう不可であると。つまり,新設の学部を認めないという形にしてはどうかというふうに思います。あるいは,申請時に保有すべき経常経費を少し1年から2年というふうにして,より持続性を担保していくということが重要ではないかなというふうに思います。
それから,これが正直言って,我々,学校法人分科会のメンバーの皆さんが,私も含めて非常にじくじたる思いがありますのが,いわゆるリスクシナリオについてです。リスクシナリオが,ある意味,本当にリスクを自覚をしたリスクシナリオになっているのかどうかという問題があります。逆に,アフターケアを行っているときに,このリスクシナリオの遵守ということに関して,なかなか明確な決断ができていない,判断ができていないという状況で,逆に言いますと,リスクシナリオを提出はするんですけれども,その提出が実行されていなくても,あまりペナルティーが緩いと言った状況もないわけではないということです。例えば,リスクシナリオが遵守されないような場合は,私学助成の不交付も含めて減額をしていくというような形が取れないのかなと。つまり,そういったことをより厳しい状況でしていくということはどうなんだろうかと。
それから,2番目のスクラップ・アンド・ビルド,再編・統合の推進に向けてなんですけれども,例えば,定員割れがある場合には,定員充足率の基準を,今0.5なんですが,0.7にまで引き上げていくということはどうなんでしょうかと。
といいますのも,具体的な現場の話を少しさせていただきますと,ある学部の定員充足率が0.6としましょう。例えば,経済学部だとしましたら,それを今度,経営学部に変えれば,改組転換をすれば増えるんじゃないかというような,ある意味,構造的に18歳人口が減ってきているときに,学部のニーズが合わないから転換をするんだという,少し大きな見込み違いをしながら改組転換を図るようなケースがないわけではありません。
そういう意味では,18歳人口が減っていく中で,大学全体としての再建,あるいは持続可能性といったものを見るような形にしていく必要があるのではないかというふうに思います。
それから,定員充足状況が厳しい大学等を統合した場合については,現行の適用されるペナルティーの措置は緩和をすべきではないか。先ほど御発言がありましたように,例えば,修学支援制度に関しましても,そこを緩和するということはあり得る。ただ,修学支援制度の基準そのものは変える必要はないと思います。まさに統合していく場合には,そういった場合は特別にペナルティーの緩和というのはありではないかと。
これは少し細かい話になるんですが,審査スケジュールに関しましては,少し前倒しでしていく必要があるのかなと。というのは,これも学生確保に関しましては,早く認可が行われれば,今でも,「現在、申請中」というのが,よく何々大学,何々学部申請中とはありますが,やはり申請中というよりも,認可となったほうが,より早く学生募集もできてくるということがありますので,少し認可の前倒しといったことも考えていくべきではないかなということだと思います。
それから,もう1点ですが,これも現場の携わっている意見としてお聞きいただければと思うんですが,今,継続審査,言ってみれば保留というものがあるんですが,今まで何回か保留して,結局,最後にこれは本当にいいよねというふうになった経験ってほとんどないんですね。そうであれば,保留はなしにして,可か不可でいいのかなと。もちろん不可になった場合に,今,取下げという制度がありますので,申請を取り下げてくるということも可能ですから,中途半端に保留という制度は設けなくていいのかなというのは現場としては思ってございます。
大体以上なんですが,あと,改正のスケジュールといたしましては,令和10年度の開設申請から適用していくというのが妥当ではないかと思ってございます。
私からは以上でございます。
【小路座長】 ありがとうございました。
ただいま川崎先生,高木理事長,また,左近充様,村田先生から,私立大学の実態を把握するに当たって大変貴重な御発表をいただきまして,改めて御礼を申し上げます。
本来,ここで多少御質問が,多少というか,かなり皆さん御質問があるんじゃないかなというふうに思いますけど,実は20分ほど時間が超過しておりまして,あとの意見交換の時間がかなり限られてしまいますので,今の御説明の4名の方の質問等につきましても,次の意見交換の中で併せて行わせていただければというふうに思いますので,御了承いただければというふうに思います。
では,引き続きまして,意見交換に移りたいと思います。この意見交換につきましては,委員の角田委員,また,平子委員,両角委員に,本日の議論のための検討課題の資料を作成していただいております。
資料3について,資料を作成していただいておりますので,僣越ですが,私のほうから簡単に紹介させていただきたいというふうに思いますので,資料3を御覧いただければというふうに思います。
まず,2040年の大学進学者数の大幅な減少が見込まれる現状認識の下で,学校法人の合併,撤退等に関するルールづくりや支援の強化,また,高等教育の規模の観点,こういったことから,設置認可の厳格化やスクラップ・アンド・ビルドによる新学問分野への転換,また,私学助成の適切な配分を掲げていただいております。
その上で,今後検討すべき具体的な施策として,一つは,経営指導の強化等ということでございます。また,二つ目は,円滑な撤退に向けた支援ということでございます。そして,3点目は,学生または卒業生の不利益を最小限にする取組,この3点を提示していただいております。
この項目ごとに後ほど御議論をいただきたい。場合によっては,時間の都合で,この3点一括して議論をいただければというふうに考えております。
これから委員の皆様による,これらについて,先ほど御説明いただいた4人の方の御説明につきましても含めて,意見交換に移りたいと思います。
まず,意見交換,皆さんおありになろうかと思いますが,キックオフとして,大野委員より,学校法人国際学院の理事長としての御経験や,学校法人運営調査委員としての知見を基に御意見をいただきたいと思います。まず,大野委員,よろしくお願いいたします。
【大野委員】 大野でございます。よろしくお願いいたします。
今,法人の経営者ということで,本当に大変な状況になっているのだというのを実感しております。その上で,先ほど事業団の吉田理事,それから,参事官から説明がありましたけれども,運営調査制度について,大変僕は有益だというふうに思っています。というのは,やっぱり学校法人自身が,自分のところのリスクといいますか,取り巻く環境について,必ずしも全ての学校法人が正確に把握し得ているかどうかということを,事業団もしくは参事官からのこういった働きかけで改めて知るというところは,ちょっと実数は分かりませんけど,結構あるんじゃないかと。
それに気づいたときに,今度は,法人の経営者は,やっぱり事実と対峙して,教職員と情報を共有して,どういうふうに改善,解決していくかというのを一つ一つできるところからやっていくということで,先ほどの資料の説明にあったように,レッドゾーンというふうに位置づけられた学校法人の中の結構な部分というふうに私は思いますけれども,そのまま駄目になっちゃうんじゃなくて,復活したというところがあったということで,大変これは有益な制度だと思います。
ただ,当時の時代,当時というか,昔の時代と,これから多分もっと厳しくなるんで,たしか今後の検討課題の具体的な施策のところで,指導対象法人の拡大が必要じゃないかという言及がありますけれども,今申し上げたとおり,なかなか自分で気づくというのはトータルでは難しいので,ぜひ文科省のマンパワーだとか資源の問題はあるかもしれませんけれども,対象を拡大していただいて,早期にそれを学校法人が理解するというようなスキームが大事だと思います。
併せてよろしいでしょうか。併せて知の総和向上答申でも,情報公表,公開,述べられていますけど,これは非常に大事で,私学経営者として,これ,私だけのメンタリティーではないと思いますが,都合の悪い情報はあまり出したくないというのは本音のところで持っています。
ところが,これが一般化すると,正確に自分たちの姿が見えないということになりますので,これはすぐというふうになると,いろいろな都合もあるでしょうから,段階的にやっぱりいろいろな情報というのを社会の人たちに分かりやすく見せていくということを進めていかないと,なかなか実態に迫ることができないという。先ほどの対象を拡大したからといっても,どうしてもやっぱりそれは外からですので,本来的には自分たちが気がついて,自分たちで直していくところに大事なポイントがあるのではないかと思います。
最後に一つだけ。先ほど修学支援に関する緩和の言及がありまして,非常に私も大事だと思っていますが,短期大学を中心に申し上げますと,置かれている状況は,18歳人口減だけではなくて,競合する専修学校は同じような資格者養成なんかもしております。これ,要件が全く違いますので,今日も私短協の総会があったんですけれども,短大関係者から,大変不合理な状況に置かれていると。実は昨日,中教審の大学分科会,13期が始まりましたが,分科会長から,「大学分科会」とありますが,「大学等分科会」で,高等教育を構成する大学,短期大学,高専,専門学校,それが全部等しく国民のためにちゃんと分かりやすく設計されるべきじゃないかというふうに思っている一人でございますので,ぜひそこも,経営の問題とすぐではないですけど,大きな設計を視野に入れて御議論いただければと思います。
以上です。
【小路座長】 ありがとうございました。
それでは,委員の皆様から御意見をいただければと思います。検討課題資料につきまして,今後検討すべき具体的な施策,三つ先ほど申し上げました。一つずつというふうに思っておりましたけれども,ちょっと時間が限られておりまして,40分ほどの時間の中で皆さんの御意見を頂戴したいというふうに考えております。
たくさん質問が,私も含めてなんですけど,おありになろうかと思いますけれども,時間を有益に使うということで,有識者の皆さんがお集まりいただいていますので,できますれば,御指摘,御意見を中心に御発言をいただくと大変ありがたいというふうに思いますので,よろしくお願いいたします。
それでは,特にこの3点について,また,先ほどの御説明について,特に区分はいたしませんので,それぞれフリーに御意見,御指摘をいただければと思います。挙手でよろしければお願いいたします。いかがでしょうか。
大森さん,どうぞ。
【大森委員】 ありがとうございます。御発表いただいた内容も含めてなんですけれども,やっぱり統合のお話の中で,うちも地域の短期大学を統合というか,引き取って,今,学部を設置しようとしていたら,そこがかなり結構厳しくてという,ペナルティーを受けそうになっているということがあってということ,でも,やっぱり短大は残すべきだったしということの思いでやっている。そんな思いは一緒でした。
それから,修学支援制度についても,全くこれはやっぱり最初から筋が違うということはみんなが言っていることで,学生支援なんであって,法人支援ではないわけですからということはしっかりと言い続けなきゃいけないというふうに思っています。ありがとうございました。
それから,村田先生のお話の中で,スケジュールの前倒し,本当に必要で,夏休みといったら,3者面談が終わっているんですよね。本当にこれは絶対必要だなというふうにも思っています。
1点ちょっとお尋ねしたかったのは,というか,その前提として,私の意見としては,いろいろなことが,定員未充足ベースでいろいろ動いていくということが今起こっていて,補助金の問題もそうだし,ペナルティーもそうだし,設置のこともそうだしなんですけれども,さっき高木理事長がおっしゃったように,例えば定員を満たしていなかった,その地域に絶対必要だよねということを頑張って,未充足でも頑張って維持しているというところにむしろ,だからこそ補助金を出すべきなんであって,定員未充足だから補助金を引き上げるというのは逆の動きだろうとさえ私は思っているということを前提とした上で,0.5から0.7といったときに,少なくともさっき三木課長がおっしゃったように,定員を戻せるものとセットのパッケージにしなきゃ絶対いけないとは思いますけれども,村田先生にお聞きしたいのは,この0.7というのは何か,今までの体験でいくと,0.7のところはこの後絶対やばくなるよねという。0.5じゃ……。
【村田先生】 経験知ですね。
【大森委員】 ええ。経験。何かデータがあるのか。
【村田先生】 例えば,昔というか,数年前まで,入学定員の80%を3年間連続して下回ると,大体財務的に厳しくなるという,これ,単なる経験則なんですよ。そういう意味では,経験則だと思うんですよね。
今,大森委員がおっしゃっていたことでいいますと,今回の知の総和答申のところでも少し私申し上げましたけれども,結局,アクセスの問題とサイズの問題はトレードオフになって,まさにこの地域で,先ほど少し話が出たかと思いますが,介護だとかそういった,これはかなりエッセンシャルな部分の高等教育がなくなると大変だといった場合には,何とかしていかないといけないわけです。アクセスと規模とはトレードオフの関係になりますから,そこは政策的にどう考えていくかということで,個々の一つ一つの大学云々,短大云々ではなくて,地域としてどう捉えるかという。地域,県も含めた都道府県,特に県の政策なんだろうなと。だから,それはここでは議論はなかなか難しいのかな,あるいは中教審の知の総和答申,あそこでも議論が難しいのかなと思っていました。
【大森委員】 ありがとうございます。答申の中でも,やっぱり個々の経営判断に任せておくと駄目だよねということも書かれているわけで,今,経営判断しなさいというのが今日の何となくちょっと議論になっていて,答申と矛盾が生じかねない議論になりかけているかなとちょっと思ったというところです。ありがとうございます。
【小路座長】 それでは,ほかの委員の皆様,いかがでしょうか。御発表された方でも。
高木理事長,どうぞ。
【高木理事長】 まさに大森先生のおっしゃるような意見だと私も思うんですけれども,ぜひ定員といった場合に,文科系の1学年200名,300名の大学と,例えば,理学療法士とか作業療法士とか保健師とか保育士とか,1学年40名とか,そういう定員が厚生省の側の指定規則で,大体そういうような育成のところとは全く事情が違うと思うんですね。
それで,恐らく地域にとってみれば,保育士だとか介護だとか,先ほど私が申し上げたような視能訓練士とか,社会にどうしても必要なところでは,極論すると,1学年10名でも毎年出てくれれば地域で助かるというような分野と,文科系の300名とか400名というのは少し議論を分けていただいて,特にここは厚生労働省との協議もしていただいて,これ,指定規則との関係も,我々,例えば定員を40から20名に落とす。15名に落とす。それでも教員の数は減らせないとか,いろいろなそういう問題がございますので,少しそこは,そういうエッセンシャルワーカーというか,医療福祉の分野なんかが特にと思いますけど,ぜひそこは文科省と厚労省の密接な協議をしていただければと思いますので,よろしくお願い申し上げたいと思います。
【小路座長】 ありがとうございます。
今のお話等で,文科省の事務局のほうから何かお話はございますでしょうか。特によろしいですか。
【三木私学行政課長】 少し申し上げますと,まさに地方と都市でそもそも集めやすさの違いがあるというのは,当初から第1回でも随分言われておりますので,そういう未充足が起こる状況の違いとか,今お話のあった機能をちゃんと見ていくという辺りは,前回の話とも引き続いておりますので,それをこの中でさらに議論をいただいて,改革に結びつけていければと思っております。
【小路座長】 ありがとうございました。
それでは,ほかの委員の皆様から御意見ございますでしょうか。
どうぞ。
【田村委員】 今,地方と都市の話が出たので,ちょっと問題提起というか,これまでも出てきましたけれども,結局,私立大学生の多い上位8都府県ですか。これ,学生数,私立大学の77%なんですね,基本調査によると。人口は日本の半分弱ぐらいだと。残りに半分,39の道府県に半分いるんだけど,そこの私立大学の学生は23%しかいないと。そうすると,人口に占める私大生の割合というのは,上位の3分の1以下なんですね。それがさらに今充足率が低くなって,完全にこれは地方の私立大学がどんどん減っていって,まさに自治体の消滅可能性というのが,大学を契機になってしまいかねないと。なかなか大規模な大学の先生方の前で言うのははばかれるんですが,大都市部の私立大学の規模の在り方も本来議論の俎上にのるべきじゃないかと。そうすると,大きい大学の先生方から非難ごうごうかもしれませんが,地方の立場からだと,そういうスケールのところもちょっと議論があるのではないか。
そういうところで,やっぱりそういう少人数でしっかり教育しているエッセンシャルワーカーを地方で支えている大学が一定程度生き残れなければ,本当に地方が壊滅するという危機感を,地方に住んでいる人間として思っております。
以上です。
【小路座長】 ありがとうございました。御意見として承っておけばよろしいですよね。
それでは,ほかに御意見ございますでしょうか。時間はまだありますので。
大森委員,どうぞ。
【大森委員】 ほかの方にと思ってあれしたけど,さっき高木先生おっしゃっていただいたのは,全くそのとおりなんです。ちょっとポジショントークになりそうだから控えていたんですけど,エッセンシャルワーカーも絶対必要だし,うちも保育士を育ててはいるんですけれども,やっぱり地域経済界のことを考えると,地域産業人材の育成というのも,これもみんなが東京に行っちゃったら戻ってこなくて,ただでさえということなんで,あんまり,エッセンシャルワーカーは絶対で,かつ,ほかはもうどうなってもいいよということでもないんじゃないかというふうにはちょっと一応言っておきます。議事録に残してもらうみたいなことはあるかもしれません。
【小路座長】 ありがとうございます。
ほかにございますでしょうか。どうぞ。
【高木理事長】 私,委員でもないんで関係ないですけど,私は幾つもの病院の経営再建をやってきた経験からちょっとお話ししますと,今のやっぱり私学事業団の皆さん,一生懸命やっていただいて,本当にすばらしい,頑張っていただいていますけど,やはりこれだけ100,200という学校法人が経営危機に陥っているような状況で考えると,この経営再建というか,何らかのそういう,昔,企業再生支援機構というのがございましたけれども,そういう学校法人の経営再建のための何らかの組織づくりというのは必要なんじゃないかと。そこにはやっぱり基本的に銀行とか,本当の意味での経営再建の経験者をきちんと並べて,これは恐らく多岐にわたって,当然,職員の皆さんの労務問題から財産分与の問題,いろいろな問題があるわけでございますので,本当に私,学校というのは地域地域で,先ほどのうちのあれでも,やっぱり地域の景観とか環境とか,太宰府で守ってきて,学校がなくなって,先ほどちゃんとまず施設を利用していただいているという話がございましたけど,地域にとって,学校のある場所とか大学のある場所というのは非常に重要な場所だと思いますし,そういう施設の跡の利用をどうするとか,結構多岐にわたるんで,そういう大学とか学校の再生のためのきちんとした組織を何らかの形で今の段階でつくっておく必要があるのではないか。当然,学生のお世話も含めて。と私は思います。
【小路座長】 ありがとうございました。
【村瀬委員】 オンラインですが,村瀬ですが,よろしいでしょうか。
【小路座長】 どうぞ。
【村瀬委員】 発言の機会をちょっといただいて,本来であれば,地域の人材ということですが,少し地域と私立大学の在り方ということでお話が出ましたので,少し私からもコメントさせていただきたいと思います。
前回,長野県知事さんや和歌山市長さんもお話しされたように,やはり地域の経済とまちづくり,私立大学というのは,ほぼ生き残りの切り札として,私立大学さんの存在が地域の切り札になっていると思っております。
その中で,エッセンシャルワーカーの話もございますが,当然,そういった人材も育てなきゃいけませんが,やはり地域経済を研究していく,あるいは地方には大変有力な地場産業がありますので,そういった技術を高度化していくというのは,地方の大学でしかできないと思っております。
また,観光分野の研究など,これからまだまだいろいろな分野がありますので,ぜひとも地方にとっての大学というのは,国際的な研究卓越と少し別枠のような形で助成していただけるとありがたいなというふうに思っております。
あと,これは私自身お聞きしたいんですが,地方の大学,私立大学さんというのは,大体,本部機能が郊外に移っておられます。駅前等の交通至便な場所にはサテライトのオフィスを持っておられるところがほとんどなんですが,ほとんどが郊外にあるということで,これから少し町なかや,やはりターミナルといったところへ回帰をするというのは,私どもの地方の行政も経済界も,また,大学の皆さんも大変熱望しておりますので,そういった誘導というのをしていただけるとありがたいなと。
そういう中で,単に移るだけではなく,大学が持っておられる土地とか不動産を活用していくということが,これからの収入の多様化には大事じゃないかなというふうに思っております。
これは私自身,金融機関にもおりましたのですが,私立大学はこんなこともできるのかと驚きとともに大変感心した例は,2017年に上智大学さんが四谷キャンパスの6号館ですか,新宿通りを麹町から四ツ谷駅に向かった左側に,いわゆる建て直されたんですが,その6号館の上に10階分ぐらいをあおぞら銀行の本店が入ったんですよね。ですから,これは私立大学,こんなこともできるのかということで,大学の不動産を活用していくということで,大学の研究に全く関係ない民間企業が私は入ってもいいんじゃないかなというふうに思っています。
それで,当時のマスコミの記事では,大学の敷地を利用した収益を得るケースで,その収入の一部は学生の奨学金や留学費用にも充てられておられたというふうに伺っておりますので,大学を移転するだけでなく,地方であれば,大学も収益を得る機会として,そういった規制緩和もあれば,地方の大学も経営収入の多様化も自立化も少しはできるんじゃないかなということで,御検討いただきたいと思います。
私のほうは以上でございます。
【小路座長】 ありがとうございました。御意見として承っておくということでよろしいでしょうか。ありがとうございました。
それでは,ほかの方の御意見もいただければと思いますけど,いかがでしょうか。
【鶴委員】 すみません。オンラインの鶴といいますが,よろしいでしょうか。
【小路座長】 鶴さん,どうぞ。
【鶴委員】 先ほどのエッセンシャルワーカーの話で私も一言申し上げたいんですが,やはり私どもは工業大学でございますので,私たちは生活基盤を支える上では,例えば,電気工学とか機械工学とかというのは非常に重要な分野だと思っております。
ところが,最近,国を挙げて情報化情報化ということになっておりまして,理系の志望の高校生が情報化のほうに圧倒的に流れていくということになっております。もちろん機械工学とか電気工学の分野においても情報化を取り入れた新しい教育をやっておりますので,そういった分野での本当のエッセンシャルワーカーを育てているつもりでございます。
ですから,時代の流れに逆らうような意見で申し訳ないんですけれども,やたら情報化情報化と言って,何か情報化がしかも大都市のほうに集中してしまうというような傾向が少し見え始めているというところはあると思いますので,本当に地方に必要な様々な人材を育てているのが私立大学であって,私立大学がそれを長年非常に取り組んできている。
また,一つのことについてきらりと輝く才能を持っている,これを育てるのが私立大学の特徴でありまして,今,共通テストが6教科8科目になっておりますけれども,それに堪えられる人材というのは,高校生の中ではごく限られた一部の優秀な高校生だと思っております。そうでない若者を育てているというのが地方の私立大学だと思います。
情報化の行き過ぎとともに,地方の私立大学が一つのことにきらりと光る人材を育てて,地方の発展に貢献していると。この2点について,皆さんに御理解いただければというふうに思いまして,発言をさせていただきました。
以上でございます。
【小路座長】 ありがとうございました。大変貴重な意見をいただきまして,ありがとうございました。
それでは,ほかの皆様から広く意見をいただければと思います。
【両角委員】 ありがとうございます。今日のこの検討課題のペーパーを出したので,一応,一言言っておきたいなと思います。先ほどから出ています,地域によって,エッセンシャルワーカーに限らず,地域の経済自体を発展していく上で私立大学の役割が大事だということは,本当にそのとおりだと思っていまして,そこに対しては,先ほど大森先生もおっしゃったように,私は定員が割れたからカットするんじゃなくて,むしろちゃんと支援していくということをしていくべきじゃないかということを強く思っていまして,一番最後の文章にそれを入れてあります。大学が本当にこのまま手を打たなければ潰れていくところが出てきたときに,事前によく何も考えておかないとそれによって被害を受けてしまうのは学生です。今回は,撤退であったり,経営支援の枠組みについてのテーマに限った意見表明ということで出しているわけなんですけれど,それと,どういう大学は本当に支援していくべきなのかということは両方をしっかり議論しなければいけないと考えて、最後にこの記述を加えました。そこは誤解をされてはいけないということで強調したく、あえて書いていることをお伝えしますし、そう考えた思いと本日の皆様から出ている意見と目指している方向は同じなのではないかなというふうに思います。
やはりその上で,本当に厳しい大学が出てきたときにどうするのかといったことについて,例えば,そういった厳しい大学を吸収した大学にまで不利益を生じるようなことは避けていかなければならないので仕組みを変更する必要があるとか,あるいは,本当に経営環境が急速に悪化していますので,避けたい事態ですが突然の閉校等が現実化してしまったときに,そこで学ぶ学生をどう保護して学びを保証するのかをあらかじめしっかり考えておきましょうという提案として書いています。
例えば,アメリカなどでもたくさん学校が潰れているのですけれど,潰れるときに,自分のところの学生さんをこの機関にお願いしますねという,ティーチアウト(teach out)ということをする機関を指定しておき,そこに学生を託す仕組みがあります。ただ,実際はそれほどうまくいっていないことも指摘されており,学生さんたちもより長く大学に行く羽目になったり,より厳しい状況に陥る,具体的に言うと在学期間が長くなることで経済的に厳しく,結局,最終的に学位が取れないままで終わっている割合が高いとか,いろいろな問題が生じています。地域で必要な人材を育てる大学をどうするのかということと同時に,本当に厳しい大学に対して,あるいは撤退やそれに伴う問題に対応するのかといったことについても議論すべきではないかと考えています。これらの二つの議論は、どちらも必要で、両立可能な議論であるということと一言補足しておきたくて発言しました。ありがとうございます。
【小路座長】 ありがとうございます。
それでは,せっかくですので,平子委員のほうからも,御意見ありましたら。
【平子座長代理】 ありがとうございます。私は産業界の立場ですので,あまり細かい話はできないのですが,この論点ペーパーの中で一つ強調しておきたいのが,既に大学の定員割れが進行している状況下で,現在健全に大学運営ができていても、2035年を過ぎると,18歳人口の急減によって相当に危機的な状況になるということを,全大学が共有しなければならないということです。
ですから,全体で考えていくべき問題だということを前提として, 5年後,10年後を見据えて,今から準備をしておくということが非常に大事で,そのためのスコープを各大学が持たなければならないのではないかと思います。
民間企業は決算によって,会社の財務状況を公表しますが,同時に業績予想を出すのが一般的です。つまり,各々の大学が未来予想をどこまで盛り込むのかが非常に大事な視点になると思います。
その場合,大学の理事会あるいは評議員会が冷静な判断によって,未来志向的に解決することがこれから非常に重要になってくると見ています。2040年以降もおそらく人口は減少し続けますので,大学が存続するためには
自助,公助,共助,すなわち自助は自分たちによる改革,公助は国からの補助金,そして共助は,あ大学同士の連携,あるいは企業との連携などですが,この三つの観点から何ができるかを追求し,実行することが大事なことだと思います。これから5年ぐらいが正念場で,各大学はこの問題を自分事としてどう考えていくのかという局面にあるのではないかなと考えております。
以上でございます。
【小路座長】 ありがとうございました。
それでは,この検討課題の資料を作成いただいたお三方の最後で,角田委員,いかがでしょうか。
【角田委員】 今,お二方から伺ったことと共通してくるところでございまして,この後,また地域の特性に関する部分の議論はあるところだと思いますが,それと同時に,やはりそういったものを守るためにも,今御指摘のとおり,民間企業,事業会社における経営のような発想という側面がどうしても出てこざるを得ないのであろうというふうに思っています。
ただ,とりわけこの経営課題がありますのは,地域の中小規模の大学となります。そうしますと,事務部門における人材としましても,なかなか経営的な発想がある方が入っている場合が少ないことが多く,教学部門を支えるという形での事務部門ということになっていると。そういった中で,理事会等を活性化するといいましても,内部職員からの登用の中では,そういった形で事業会社のような感覚での経営に関する透明化をしていって,説明責任を果たすような形というのはなかなか難しい部分があると思います。
ただ,とりわけ,今お話のありましたとおり,エッセンシャルワーカーを守るというような意味において,公的資金をより投入していくという発想になりますと,さらにそういった意味での説明責任,透明化が問われてくるというところがありまして,そういった中で,どのように地方の中小規模大学の経営者というものが確保されていくのかと。その人材というものがどういう形で給源があるのかといった点があると。そういった意味で,専門家の投入が必要だろうという話もありましたけれども,そういった点についても,より具体的なお話がこの中でも進められていけばよろしいのかなと思って,お話を伺っていた次第です。ありがとうございます。
【小路座長】 ありがとうございました。
それでは,最後に中村委員,御発言ください。
【中村委員】 山梨大学の中村でございます。今のお話をずっと聞いていて,一つは,連携とか,あるいは統合,全部の統合ではなくて,一部統合でもいいと思うのですが,それは設置者の枠を超えないといけないかなと思っています。国公私もその枠を超えて実施する必要があると思うし,一方で,地域というのを都道府県に限定せず,地域の枠も超えた統合,あるいは連携が必要だろうというふうに感じます。
一例ですけれども,山梨というのは,県内に12の大学,短大がございます。そのうち,国立は山梨大学だけなのですが,公立が3大学,それから,私立が8あります。ちょっと今の議論と逆行しているなと思ったのは,一応,コンソーシアムやまなしというのがありまして,12大学が一堂に集まる機会があったんですね。ところが,この2年間の間に,私立が4つ,やめますと。コンソーシアムを抜けていくんですね。だから,本当は連携すべき,あるいはいろいろな情報を共有すべき,ある意味,一部統合すべき状況なのに,実際には,かなり自分のところに囲ってしまっているという事実があります。
できれば,いわゆる教育,科目だけではなくて,人材の登用ですとか,先ほどもお話がありましたが,運営面の統合であるとか,あるいは機器とか,設備の共有,そういったことを積極的に設置者の枠を超えてやるべきだろうと、思います。
もう一つ付け加えますと,例えば,今,地域の企業とか,あるいは自治体がなかなかまだ認知されていないなというふうに思います。いろいろなところでお話をしても,何かちょっと他人事みたいに思っている方がいらっしゃいます。一番分かっているのは,金融機関だと思います。山梨で言うと,メインバンク,山梨中央銀行がありますが,そこは地方創生の中で,はっきり大学を残すための手腕というのを考えられているということで,大学間の中の連携認知も必要ですが,いわゆる産官金に対しての認知をするような仕組みも必要なのかなと思っています。
以上でございます。
【小路座長】 ありがとうございました。
それでは,時間も参りましたので,最後に少し私もまとめさせていただければと思いますけれども,一つは,やっぱり今日御説明あった,資金ショートした大学が大学を助けるということは現実的に非常に難しいと。こういう実態,やっぱりまず大学の理事会,評議員会で強く認識をしなければいけないんじゃないかなということが非常に強く印象に残りましたところが1点です。
それから,二つ目は,未来予想を見る理事会,評議員会の役割をということで,やはり理事会,評議員会がそれぞれの大学の中で,大学の経営と,それから大学の教務,教育,これをどういう方向に持っていくのかということをしっかりと認識していかなければいけないのではないのかなと。しかも,それは未来志向的な認識を持っていかなければいけないんじゃないかなというふうに感じたところが2点目でございます。
2点目に関連して,たしか私大法人法の改定ですか,これが行われて,今多分,私立大学で寄附行為細則等々をもろもろ改定して,評議員とか理事が兼務できなくなって,それぞれの推薦機関などもいろいろつくってやっていただいて,非常に,ちょっと私もある大学の理事をやっているんですけど,推薦書を書いたりだとか,それから,自分の所信表明を書いたりだとか,いろいろなことをやって,大変苦労して提出をしたんですけど,ある意味では,学校経営ということでの学外理事の経験者,民間企業経験者,そういった学外理事をどの程度必要な質に沿って入れていくのかということも,今後検討しなければいけないんじゃないかなと。それに対応した評議員会の役割というのもあろうかと思います。
それと併せて,ちょっと関連して言うと,やっぱりアドミッション・ポリシーとかディプロマ・ポリシー,それぞれ大学は持っているんですけれども,まだまだ学生さんたちに周知徹底されていなくて,どういう生徒さんたちを自分たちは,大学としては私立大学は受け入れたいのかということがなかなか明確になっていないと。まだまだ学校歴というか,大学名歴社会で,学修歴社会にまだ,だから,これは産業界の問題でもあろうかと思うんですけど,やっぱりどういう生徒さんに来てもらって,その生徒さんたちに間違いなく,この期間で履修をしていただければ,こういう学修歴を身につけて卒業してもらいますよと。その辺のアドミッションとかディプロマももう少し明確に打ち出していくということも必要ではないのかなということを感じました。
それから,エッセンシャルワーカー含めて,やっぱり地方の知の拠点としての地方大学,私立大学の存在価値をどう高めるかということも併せて考えていかなければいけないんじゃないかなというふうに感じました。
それに関連はしないんですけど,やっぱり米国なんかと比べると,収益の多様性,多様化ということについて,非常にまだ日本の場合は進んでいないという感じを受けますよね。やっぱり授業料と,それから受験料と,助成金と,ほぼこの3本立てで6割から7割ぐらい。逆に米国の場合は3割ちょっとぐらいで,スタートアップインキュベーションをどう育てるかとか,それから,大学の自大学ファンドの運用,それから,寄附講座とか共同開発研究,これ,非常に積極的にやっていて,そこからの収入が6割から7割ぐらいと。日本と全く逆になっているということで,私立大学といえども,大学収入の,あるいは収益の多様化ということをやっぱり考えていかなきゃいけないんじゃないかなというところを,今日のお話を聞いていても感じました。
それと,ちょっと先ほどとダブりますけど,やっぱり知の拠点としての地方の産業政策と地方の私立大学の教育方針との連携とか融合というんですか,それをどう図っていくのかと。それがうまくできれば,地方の産業としての,知の拠点としての存在価値って非常に大きいと思うんですね。産業界,企業で知を育成していくというのは,なかなかこれは難しいんで,そういった意味では,産業政策と教育方針との連携,融合ということも今後やっぱり必要になってくるんじゃないかなというふうに感じました。
それから,やっぱり法人支援ではなくて,学生支援という,これはおっしゃるとおりで,学生主体の学びの場でありますので,学生支援をどうやって行っていくかということを中心に考えていかなきゃいけないんじゃないかなと。
それから,頑張っているところに補助金を,助成金を出すべきだと。充足率云々ということではなくてということで,やっぱり助成金の基準とか在り方というのも今後見直していくということが必要なんじゃないのかなというふうに感じました。
まだまだ意見が,私も皆さんの御意見を伺って感じたところがあるんですけど,時間になりましたので,今日はこのテーマについてはこれで意見を打切らせていただきたいと。十分事務局のほうにも趣旨を伺うことができたと思いますので,次のステップに向けて検討いただければと思います。
では,もう一つテーマがございますので,次に移りたいというふうに思います。議題2ということで,座席の入替えをこの議題2についてはさせていただければと思います。御説明の皆さん,ありがとうございました。今日はお忙しいところありがとうございました。
(座席入替え)
【小路座長】 それでは,今日は最後の議題になります議題2ということで,地域の人材育成に向けた私立大学の役割や関係者との協働の在り方等具体的な方策について,前回の会議の議論の継続というか,続きを行いたいと思います。
まず,事務局より資料4-1と4-2について,前回の意見交換の説明をお願いしたいと思います。また,資料4-3として,4月15日の財政制度審議会の議論についても併せて御説明いただければと思いますので,よろしくお願いいたします。
【三木私学行政課長】 それでは,私のほうから資料の御説明をさせていただきます。資料4-1でございます。
議題1でも結構,お話をしていただきましたけれども,この資料4-1では,第1回の前回の3月10日の議論で出していただいた主な意見や今後の検討の方向性についてまとめたものでございますので,お目通しいただければと思います。第1回のときに,私立大学が果たす役割全体についてと,あと,地域の人材育成に向けた私立大学の在り方につきましてお話をいただきまして,意見の要点を書いてございます。
3ポツにつきましては,今日の議論でも,先ほどの座長のお話も含めまして言及がありましたけれども,私大への国の支援の在り方として,今後検討すべき支援の方向性を3ポツ,3ページのところでまとめてございます。すなわち,私立大学への支援の拡充が不可欠な上に,その支援は一律の配分ではなくて,取組に応じためり張りや重点化を図っていくことが重要としてございます。
その重点化の観点といたしましては,ここの中黒で五つ挙げてございますけれども,地方において,地域ニーズに応え,地域経済の担い手となる人材の輩出でありますとか,国際競争力の強化に関する観点,そして,産業を支える理工農系分野における人材の育成,そして,看護師,介護士,教師,保育士等のエッセンシャルワーカーの養成,そして,教育研究の質の向上の観点を挙げてございます。
また,先ほど座長からもお話しいただいたように,大学経営の観点から,収入の多様化が進むような検討が必要というふうに記載させていただいてございます。
次に,4-2を御覧いただければと思います。地域において高等教育の需要を考える際,参考となるデータのものについて追加的に御説明をさせていただきたいと思います。
一つ目でございますけれども,これは文部科学省のほうで調査研究をした結果のもので,令和3年のデータを基に都道府県別の基礎データをまとめておるものでございます。こちらは北海道のものだけ資料に入れておりますけれども,委員の机上には,別途,全都道府県用のものも机上に置かせていただいております。その御紹介でございます。
二つ目で,同じデータでございますけれども,8ページでございますが,2040年の予想進学者数等を県別にまとめておりますものも御参考にしていただければと思って,つけております。一番下のオレンジ部分で,現在と2040年の進学者数の差でありますとか,その一つ上の薄いグレーのところでございますけれども,入学定員充足率の推計を設置者別で記載しているといったものでございます。
三つ目の資料といたしまして,次のページは18ページからでございますけれども,これは経産省や内閣官房が提供しております地域経済分析システム,RESASと呼ばれているものの御紹介でございます。
20ページにございますように,幾つかの分析ツールではメニューがございまして,例えば,20ページの右の一番上で産業構造マップというのがございますけれども,地域の産業人材を検討するのに役立つ分析システムでございまして,一例としまして,22ページ,23ページは,広島大学が御検討されているところにRESASを使われたような分析が行われておりまして,その御紹介でございました。
次に,資料4-3を御覧いただきたいと思います。先日,財政制度等の審議会におきまして,高等教育について指摘を受けております。それにつきまして,文部科学省の見解をまとめたものでございます。
1ページでございますけれども,財政審の資料にも記載されているように,文部科学省といたしましても,最初の一つ目の丸にありますように,高等教育全体の規模の適正化とか,設置認可の厳格化,私学助成のめり張りなどの改革は,財政審の指摘のとおり,改革は必要であると認識しておりまして,まさにこの会議でも具体的な施策の方向性について御議論をいただいているところでございまして,文科省もこれらの諸点について取り組んでいきたいというふうに考えてございます。
一方,この1ページの二つ目,三つ目の白丸に書いてございますけれども,一部の大学における後期中等教育以前の学び直しについての御指摘につきましては,これは各大学で高等教育の円滑な導入のために実施されているものでございまして,学生の卒業後の就職状況や高等教育を受けた成果にも着目して議論する必要があると考えております。
また,今日も議論が行われておりますけれども,定員割れの大学への対応につきましては,定員充足率のみではなく,地域の人材需要等を踏まえた評価や支援の在り方を検討していくことが必要と考えております。
また,すみません,説明がちょっと戻りますけれども,二つ目の丸のところですけれども,また,日本語教育につきましては,基本的に留学生に対するものであるといった点も踏まえて,単に後期中等教育以前の内容を取り扱っていることだけではなくて,大学で学んだ成果にも着目して考えていく必要があるのではないかというふうに考えてございます。
本日は,前回の議論でありますとか,これらの資料も念頭に置きつつ,御議論をいただければと思います。
駆け足でしたけれども,私からの説明は以上でございます。
【小路座長】 ありがとうございました。
それでは,前回の意見交換の続きということにもなろうかと思いますけど,前回と重複しても構わないと思いますので,御意見のある方は挙手をいただいて御発言いただければと思います。それから,財政制度等審議会の議論について,御意見のある方も御発言をいただければと思います。
まず,阿部委員と思っていましたが,阿部委員がまだ参加されていませんので,阿部委員は後でということで,それでは,皆さんから御意見ありましたら,挙手をいただいて御発言いただければと思いますが,いかがでしょうか。
大森委員。
【大森委員】 いつもしょっぱなであれですけど,まず,地域大学の話は前半でかなり議論があったなという。つまり,切っても切れない問題だということが今日明らかになったということかなというふうには,経営の問題と地方大学の在り方というのは切っても切れない問題だなということが明らかになったなと思っています。
最後に中村先生がおっしゃった,地域連携の中で私学が抜けちゃうんだよという。こっちだと,私学が頑張っているんだよなんですけれども,それぞれ地域の特性があるかもしれないんですが,ただ,やっぱり連携を組むときに,ちょっと抜けますという私学さんの気持ちも分かるというのは,本当に中村先生のところ,県立大さんとすごい労力をかけてあれだけのことをされていて,すごく感動的なんですけれども,あれには相当なやっぱり人的なコストも金銭的なコストもすごくかけられて,その余裕がないというのが,実は正直なところなんですね。組んじゃってうまく回り出すと,コストが落ちていくというのは分かっているんだけど,そこまで耐え切れないという。そんなに職員がいるわけでもないしとかというところで,やっぱり地域連携プラットフォームなり,あるいは,その先の連携推進法人,地域大学振興室ももちろんできてあれですけど,そういうことを支援していこうとしたときに,そこに従来から議論があって,答申でも出ていますけど,やっぱりコーディネーターを置いていったりということが必要で,そこの制度設計で,それは費用を,例えばそれは補助なのか,あるいは国からそういうプロを派遣してもらうか,あるいは,この間ある地域で学長さんたちが集まるところで講演を頼まれてしたんですけど,そこでは,やる気になっていて,結構,あの人,コーディネーターにいいよねみたいな人まで浮上しているんだけど,それをどうやって維持していくかみたいな話になると,やおらちょっとというところがあるんで,こういう人がいるからつけますって言ったらそこに支援をするとか,何かそういう,どっちでもいいと思うんです。国から派遣してもらうのもありだと思っていて,特に文科省から来てもらえたら,地域,結構まとまるんじゃないかと思うので,それは期待したいし,もし地域でこういう人というのがいる場合には,そこに補助的に支援をしてもらうみたいなことで,本当にこの数年でやっていかないと追いつかないよというところなので,結構,そこはかなり入れていってもいいのかなと思っていますというのが1点と,それから,後半で言った文科省の見解という,財政支援に対する見解のお話ですけれども,最初の丸のところとかは,そうかなと思いながら,だから,これでいいかなと思いつつなんですけど,2番目の義務教育のところのほうは,真面目に答える対象なのかなということも思うぐらいで,特に日本語教育の話は,留学生のためにやっている授業を,あたかも日本人向けにやっているかのようにして,これって,すごく質の悪い,切り貼りの学生のレポートみたいなものですよね。それに対して採点をしてやる必要があるのかというふうに思うぐらいにちょっと質の悪いものなので,真面目に答えるレベル感なのかなとさえちょっと思っています。
それは私の個人的な感想なんですけれども,調べていただいたように,やっぱり大体,授業をつくるときには,前の週ここまでやったよねとか,前の学年でここまでやったよねという,その振り返りをしてから次の段階に入っていくというのが,教育実習に行った学生だったら誰でも教わっているような内容で,大学1年生だったら,高校まではここまでやったよね,じゃ,次はこうだよねと,それは当たり前の授業構成なんですよね。それを捉まえてと言うのは,ちょっと答えるに値しない部分だなというふうにさえ思っています。
なので,うまく言えないんですけれども,こういうふうに答えていただくのはいいんですけれども,ちゃんと真面目に答えると,そこにちゃんとこれを認めちゃっているかのようになるのかなとも思ったりして,悩みながらこれを今読ませていただいていましたという。すみません。意見にもならない意見ですけれども。
【小路座長】 大変貴重な意見で,よく理解しました。
ちょっと留学生については,また今後いろいろ文科省のほうからもお話があろうかと思いますけど,現時点で何かありますか。今のお話に関連して。
【三木私学行政課長】 今の時点では,すみません。
【小路座長】 よろしいですか。多分,留学生についても,今後,どうしていくのかということについても……。
【大森委員】 そうですね。今回の件は,留学生の授業を……。
【小路座長】 受入れ留学生ですよね。
【大森委員】 ええ。あたかも普通の授業のように取り上げているというのが,ちょっと課題なのかなと思った。
もう1点でいうと,定員割れ大学と教育のレベルを組み合わせているところにロジックにちょっと無理があって,定員割れ大学でも,レベルの高い授業をやっているところもあるし,割れていなくても,そういう振り返り授業をやっているところもあるんで,定員割れ大学に対して厳しくしたいということと,教育のレベルがどうなんですかというのは全く別の問題であるのに,これがセットになると,かえってあちらも論理矛盾を来しちゃっているんじゃないかな,ちょっと教えてあげたほうがいいのかなという感じもしています。
【小路座長】 定員割れというのは,今後少し深く検討していかなければいけないですね。大学進学率の表が出ていて,ちょっと全国平均が分からないんですけど,大体今,大学進学率,単純に全国平均だと50%ちょっと超えるぐらいですかね。
ちょっと我々も分析すると,2040年問題というのがあって,どうやっても60%ぐらいが上限なのかなというようなシンクタンクデータも出て,60%がずっと続いていくと,当然人口減少で,受験者数が減って,急激にそこから学生さんが減っていくんで,それに対応して,単純に定員割れと助成金なり,大学経営ということをどうあるべきかということは改めて深く考えていかなきゃいけないんじゃないかなということを,ちょっと抽象的ではあるけど,感じたところでございますね。分かりました。
では,ほかの方,御意見,御指摘ございますでしょうか。
阿部さん,阿部知事,お入りになられたということで,御発言どうぞ。
【阿部委員】 すみません。御指名いただきましたので,発言させていただきたいと思います。途中から参加したので,これまでの議論の成り行きがよく分からないところもありますが,まず,資料4-1の方向性には,前回,私が発言した内容等も踏まえて,整理いただいていることを感謝申し上げたいと思います。
あの後,実は県内の私立大学,あるいは短期大学の学長の皆さんといろいろ意見交換をさせていただきました。そこから出てきた意見を踏まえて,何点か私のほうから問題提起をしたいと思いますけれども,一つは,今,社会全体が大きく変革期を迎えている中で,いま一度,大学とか短大の在り方,今,県内私大の,これは全国もそうだと思いますけれども,非常に課題を抱えていますし,やはり子供たちのために未来に向けてどう転換させていこうかということを一生懸命考えていただいています。
ただ,若干上から目線的になってしまいますけれども,各大学が考えていくだけでもなかなか限界もあるのかなとも思っています。そういう意味で,例えば,海外の高等教育の好事例をぜひ文科省でもよく研究をしていただいて,そうした中で,日本の今後の高等教育の在り方として生かしていくことができるようなものについてぜひお示しをいただき,我々,地方公共団体も,それから私立大学も一緒になって考えていけるような大きな方向感を示していただければありがたいなと思います。
例えば,県内私大の学長から出た御意見として,アメリカのミネソタ州のトランスファープログラム,これ,コミュニティーカレッジとの連携みたいな仕組みとして盛り込んでいるわけでありますけれども,そうしたものであったり,あるいは,カリフォルニア州のUCシステム,UCLAだったり,UCバークレーみたいな形のような大学連携というか,大学統合というか,そうしたことも含めて考えていかなければいけない時代ではないかという御指摘もありました。
長野県では,今,人口減少下において,どうやって人口が減っても活力ある地域社会を守り抜くかということで,信州未来共創戦略というのを実は昨年末につくっておりますが,その中の一つの大きな柱が,経営革新ということを位置づけています。これはもとより企業ももちろん対象になっていますが,我々行政であったり,あるいは教育機関も含めて,基本的には人口減少下の対応というのは似ている部分があると思っていまして,例えば,組織の今まで分立していたものをより連携,共同化を進めていくであったり,あるいは,M&Aをはじめとして,やっぱりそれぞれが担っていたことを,もっと大きな組織として統合していったり,こうしたことを行わなければ、この人口減少下の社会は乗り切ることができないと長野県としては考えて,企業のM&Aの促進とか,そうしたことを進めていこうとしています。
そうした視点をぜひ,特に地方の私大について,あるいは短大も今,短大から4年制になったりしているところがありますけれども,大きな方向性をぜひ文科省において考えていただきたいというのが一つ目です。
それから,もう少し個別の話としては,やはり地域における高等教育機関,まさに存亡の瀬戸際に立っているような大学がたくさんあるわけです。であるからこそ,この検討会があると思っておりますけれども,ぜひ,地域における高等教育機関は,高等教育機関だけの問題ではなくて,前回も申し上げたように,産業であったり,暮らしだったり,そうしたものと全面的に関係する部分でありますので,ここは今はどうしても東京一極集中で,高等教育機関が大都市部に集中してしまっているという状況でありますが,地方分散であったり,あるいは,地域の学びの拠点をどう維持するかということはぜひしっかりと位置づけていただきたいと思っています。
昨日も私は全国知事会を代表して,参議院選挙に向けた各政党の公約にぜひ入れてもらいたい点を,各党の政調会長のところを回ってお願いさせていただいたところでありますけれども,そうした中でも,やはり人口減少下の中でも活力ある地域をどう維持するかという観点を,ぜひ各政党の皆さんにはしっかり持っていただきたいと申し上げていますし,そうした観点の中で,極めて重要なのは,高等教育をどうするかという話だと思っていますので,ここは前回に引き続いて強調させていただきたいと思っています。
あとは簡単にしますけれども,学長の皆さんと意見交換をすると,やはり高等教育の修学支援制度,これは経営課題がある大学等は支援対象外という形になっていますが,これは大学経営に対してのペナルティーと,それから,学生への修学支援,これ,ぜひちょっと視点を分けていただきたい。影響を受けるのが子供たちになってしまう,学生になってしまうというところは,やはり非常に問題が大きいと思いますので,まずそこは御検討いただければありがたいと思います。
最後に1点,先ほどちょっとお話に出ていたと思いますが,留学生,これ,全国どこでも海外の人たちは非常に増えています。長野県も昨年,おととしと,2年連続人口が社会増になっていますが,社会増になっている大きな要因は,外国人が増えているということであります。これから製造業はもとより,農業や林業,あるいは介護,福祉,こうした分野のことを考えると,やはり外国人材をどう確保していくかということは,地域にとって非常に重要であります。
あわせて,そうした人材,海外からもちろん連れてきて活躍してもらうわけですけれども,やはり国内の教育機関においても,もっとしっかり学べるような環境をつくっていくということが,これは人口減少下の地域経営上,非常に重要であります。かつ,各大学も,留学生の受入れについては積極的な考え方をお持ちのところもあります。ぜひ地方の私立大学における留学生の受入れ,地域との連携とか,地域における定着は我々地方公共団体もしっかり考えていきたいと思いますけれども,国においても留学生受入れの方針,方向づけをしっかり行っていただいた上で,各大学に対する支援も充実していただければと思っておりますので,よろしくお願いいたします。
私からは以上でございます。
【小路座長】 阿部知事,ありがとうございました。大変たくさん宿題を頂戴しまして,また,御意見も頂戴しまして,検討させていただくということで御理解いただければと思います。
それでは,続いて,オンラインで,慶應の伊藤塾長,御発言があるようですので,伊藤塾長どうぞ。
【伊藤委員】 ありがとうございました。前回も申し上げましたとおり,大学の80%が私立大学が担っているということで,特に地域,地方を活性化するという意味では,これは国立大学,公立大学だけでは絶対できないことでありますので,それは私立大学の参加といいますか,活躍が必須ということになるわけであります。
私,今朝,中央教育審議会の大学分科会の中に質向上・質保証システム部会というものができまして,その部会長を仰せつかりましたが,そこで活発な議論が行われました。今日,何人かのメンバーもかぶっているところでございますけれども,質保証という最初に提案をいただいたんですけど,質保証だけではなくて,質向上をどうしてもまず先に入れてほしいということをお願いして,この質向上というのが入っております。
その心は,先ほど定員充足率という話がありましたけれども,今,6割以上が18歳人口が大学に進み,さらには高専,短大等に進み,専門職大学に進みということになると,80%以上が高等教育に進んでいる状況の中ですので,当然のことながら,あらゆるほとんどの人が高等教育に進むわけです。その人たちの皆の質を向上させる教育の在り方,学びの場所ということになると,ここが特に大切なボリュームゾーンのところなんですけれども,ボリュームゾーンのところで厳しくすればするほど,場合によってはその大学は人気がなくなるという悪循環があるわけですね。卒業させない,厳しい教育を行う,とにかく鍛えますよということをやればやるほど,質を高くしようとすればするほど,場合によっては人気が落ちていくということで,これは最も難しいジレンマだと私は思っているところであります。
ある意味,楽で卒業できるほうが人気が出かねない可能性があるので,そういう意味で,どうやって全般的に質を向上させるかということを議論しなきゃいけない。そういう切り口から質向上をしっかりと目指しているところに対しては,一時的に,もちろん定員よりかも質向上で評価されるべきなんだろうなというのは私が思っているところであります。
先ほど阿部知事,阿部委員のほうからカリフォルニア大学のシステムなどの参考というのもありましたけれども,カリフォルニア大学,例えば,UCバークレーとか,UCLAといったところは,学部生82%がカリフォルニア州民でなければいけないという決まりがあります。ですので,それを割ると,州から大きなペナルティーを受けるので,今まではこれ,82%,全てのUCで,USLAとかサンディエゴとかサンタ・バーバラとかバークレーの平均でよかったんですけど,今や各校ごとに82%以上,カリフォルニアの高校を出て,カルフォルニア州民の家庭の子供を受け入れなきゃいけないということになっています。
国立大学も全ての都道府県にあるというのは,まずは恐らくそういう心があるのではないかと思います。公立大学はますますそうだと思います。
ですので,今ほど自由にどこからどこに行ってもいいですよというより,やはりある程度,山梨県民が山梨大学に進むということがまず当然のように奨励されて――笑われるところかどうか私は分からなかったんですけど,現場感覚が分かっていないので――そのときには,やはりインセンティブがなきゃいけないということで,そういう意味では,クーポンが国からしっかりと支給されて,要は修学支援制度に劣らないような,それに勝るようなクーポンが渡されることによって,各地域がしっかりと奨励されるようなシステムができるというのは,私は実は知の総和向上のところで提案していたことであります。
また,先ほど中村委員から連携という話がありました。設置を超えた連携というのがありました。そのときは,学校経営にはお金がかかります。要は,私,毎回お願いしているんですけど,個人負担は国立も公立も私立でもある程度同じにしていただかないと,私立大学はお金が入っていなくて,もし同じ数の学生が私立から国立に授業を取りに行き,国立から同じ数の学生が私立に授業を取りに来ると,私立は経営が破綻しますので,やはり経営にはお金がかかるので,国立大学が学納金プラス,国から受けている,教育にかけているために受けている額と同じようなものが,連携に参加している私立大学に入ってこないと,それは私立大学としては,地方の私立大学としては経営ができませんので,そういうような工夫も実際に必要だと思います。
その上で,国立大学にはさらに多くのお金が国民の税金として入ってきて,図書館が充実して,また,電子ジャーナル等が充実して,それが周りの私立大学が見られるとか,研究施設とか様々なものが,病院とか,そういうものは国立大学で別にしっかりと運営費交付金に入って充実することによって,結果的にその周りにある公立大学と私立大学が恩恵を受けるというような,個人負担は大体同じにしながらも,当然ながらつぎ込まれるお金というのは,私立と公立,国立では違うというのは,それこそ国立の目的だと私は思っておりますので,その辺のところをデザインしていく必要があるんじゃないかなというふうに思っているところでございます。
以上です。
【小路座長】 ありがとうございました。それでは,伊藤先生の御意見として,これも承りたいと思います。
一つ,今,伊藤先生がおっしゃった,慶應はあり得ないと思いますけど,楽して卒業した学生さんがいいかどうかというのは,私,産業界の人間の立場でいくと,企業ではまず,なかなかそういう学生さんを採用するという方向にはならないというふうに思いますので,申し上げておきます。
というのは,今,御存じように,日本の経済というのは,トランプ関税によりまして,場合によっては,GDPの成長がマイナスになるという予測がシンクタンクから多く出ておりまして,企業の新陳代謝がより進むという状況に来ております。
どっちかというと,企業も高付加価値な事業に転換をしていこうと。あるいは,量の経営から質の経営に転換をしていこう,高付加価値経営に転換をしていこうと。この高付加価値経営は,やはりいろいろなことを身につけた社員によって生まれてくるというふうに思っておりまして,また,働き手の効率化ということから働き手の高度化へというふうに経営も転換してきておりますので,やはり学歴社会から学修歴社会と言われるように,苦労をするかどうかは別にして,自らがやっぱり苦しい中にも飛び込んで,その中から身につけてきた,身につけるものを持ってきた学生さんの採用というふうに,企業の採用も少しずつ変わってきております。それは伊藤先生も十分御存じだと思いますけど,ちょっと申し添えておきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
それでは,ほかの方,御意見ございますでしょうか。
田村委員,どうぞ。
【田村委員】 今,伊藤委員がおっしゃられたことで,ちょっと関連なんですが,アメリカの州立大学の話をされましたけれども,御存じのように,アメリカの州立大学って,州民と州民以外では2倍3倍で学費が違うわけですよね。これ,あまり日本の国立,公立の議論をここでするのはどうかと思いますが,本来,日本の公立大学だって,いわゆる入学金だけじゃなくて,学費も差がついてもいいと思って,私は書いているんですけど,今のところに。なかなかそういう,多分,それ,やっても駄目じゃないんですよね。
それと,もう一つは,この間,伊藤委員が言ったところで,私は,反論ではないんですが,国立大学の学費の話もありますが,まず最初は,学部間が何で一緒なんだという。昔から特に法学部の先生方はみんな言うんですよね。医学部と何で同じ学費を国立,あれだって,今,大学間の差は少し国立もつくようになったじゃないですか。何かそこら辺があまりにも横並び過ぎるところが,国公立も含め,私立も結局,何となく国公立を参考に合わせてみたいに,やっぱりそういうところを変えていかないと,いろいろな変化に対応できないんじゃないかというふうに思います。
【小路座長】 ありがとうございました。
それでは,大野委員,どうぞ。
【大野委員】 今の伊藤委員の質向上関係と,その前の大森委員に関連してですが,かなり以前になりますが,メディアで,大学でbe動詞,四則計算という報道をされたときに,文科省は,それは学位の単位と結びつけてはいけないという,ぴしっとたしか出しているんですね。
やっぱり真正なる学位という観点でいうと,高等教育にふさわしい知識とか,そういったものを修めて,卒業させるのならいいんですけど,ここに指摘されているようなものが仮に留学生であっても横行してしまうと,日本の学位というのは何なんだという水準になってしまいますので,そこは大半が皆さん努力されていますけど,例えば,昔でいうとリメディアルだとか,今でいうとディベロップメンタルだとか,学生の学習歴や弱点に合わせてそこを補強してあげて,それは学位とは違う認定といいますか,サービスといいますか,サポートにして,学位はトラックでちゃんと乗せていくというふうにしないと質の向上にはつながらないというふうに思ったので,お話しさせていただきました。
【小路座長】 ありがとうございました。
それでは,どうぞ。
【福原委員】 本日は,私,学校法人分科会の方や,また,私学事業団の方にもいるものですから,この場では御関係の方々から報告をさせていただいて,皆さんのお話を聞くほうに回っておりましたけれども,一つだけ申し上げておきたいと思います。やはり学校法人単位でいろいろな規制ですとか,補助とか,なされているものですから,一つの学校法人,一つの大学の規模というのは,これ,必要な規模がないと成り立ちませんし,また,教育活動や何かにも支障を来すわけですから,ぜひ連携とか連合ということが必要になるのです。
そのときに,連携や連合を進めていこうとしても,補助の対象は学校法人ごとであったり,また,融資をするのも,その単位は学校法人になっておるので,こういったところ,やはりもう少し積極的に各大学の経営の合理化のためにも,私立大学にも共同利用の施設があっていいわけで,学校法人ごとに等しく設備を持っておかなくても,地方であれば,それは一つで供用すればいいですし,そういうところに,それを運営するところにいろいろな国や自治体からの支援が出てくるような,そういう新しい時代の,学校法人や大学の連合や連携が促進されて,各学校法人の負担が減るということ,そういった方向で何か制度設計ができればなということを日頃考えております。
設置認可したときの社会情勢に基づいて定員を認可しているんですけれども,実は,今の状況がそれに合っていなければ,各学校法人や学校がそれに社会に合わせてどんどんとそれを自ら変革して,最初に設置したときの定員を自らほかのところに移している,改革ある学校法人や大学であればいいんですけれども,私学全部がそういう改革をしているわけではありません。そして,定員充足率が減ってきたら,何か最少催行の人数というようなものがありますけど,やっぱり損益分岐に必要な定員というのは,各学校法人ごとに維持しろというよりは,地域全体で維持するなりして,企業でもグループ経営あるいはいろいろな連携があるのと同じように,学校法人や大学,先ほど学長からお話がありましたけれども,設置形態も超えても必要ですけど,まず,私学のそういった連携,連合,こういったものができるような仕組みに持っていかなきゃいけないなということを思いました。今日は聞き手に回るほうを務めたつもりでいましたけれども,最後に一言だけ申し上げました。ありがとうございました。
【小路座長】 ありがとうございます。
それでは,石川委員,どうぞ。
【石川委員】 前回,座長とか阿部委員が,社会がどういうふうに動いていって,それに対して高等教育全体をどういったシステムにすべきかというのが重要だというお話をなさっていて,その関連でお話をするんですけれども,社会が何を求めているかということをきちんと把握できているかという問題,それから,もっと言えば,2040年に社会はどうなっているかということを予測できているかという問題があって,我々今,一番気にしているのは,知っていること,知識を持っているということの価値がだんだん下がってきて,知識を使うことのできる人の価値が上がってきている。そうすると,知識を,これ知っていますというだけでは駄目で,知っているのをどう使うかまで,それが我々,じくじたる思いがあるのは,その能力を大学の入試では判断できていないんですよ。今度は,ましてや社会に行ったときの就職のときに,そこは判断されていないんです。これ,ちょっと金融の方をディスってしまって申し訳ない。
そこのギャップが,高等教育全体の大きなビッグピクチャーの中で大きな足かせになっているというふうに思っています。一つは,だから,初等中等教育で何を学んで,それを高等教育へどうつなげるか。それが入試という変なシステムが入っているものだから,知識のみ,知識を知っていることだけ判断させているので,つながりがないんですね。そこをどうやってつなげるかという教育上の仕組みを考えなきゃいけないことと,今度は大学で高等教育をやった後,企業に行くときに,我々,ちゃんとした,特に理科大というのは,実力主義といいまして,先ほど厳しくしていると嫌われるというんですけど,理科大はかなり厳しい。ちょっとした試験を通らないと留年させちゃうという厳しいことをやっているんですが,それでも学生はついてきていて,企業からの評価も非常に高くなっているということがあるので,大学でやったことが理解されていればうまくいくんだと思うんですけど,それが企業との間で今ギャップが非常にあるというのを肌で感じています。
企業が求める人材像,人物像というのが,大学の卒業する人物像と合っていないというところが問題で,これが2040年になると,さらに合わなくなる。そこをどうするかという問題をきちんと処理していかないと,駄目。
社会が求める人材というのが,例えば,地方であれば,地方が求める人材というのは何かというのがちゃんと分かって,その人材が欲しいのであれば,その人材に対する支援をすべきであって,単に学生が減ったとか,人口が減ったという問題ではなくて,社会が何を求めているかに合った人材をどの人数だけ育てるべきか。
これ,実は大きな大学でも,マイナーな分野をどうするかというのは,同じことが起こります。例えば,潤滑だとか切削だとかというのは非常に古い学問で,やる人がだんだんいなくなってきて,最近,流体力学もいなくなってきているんですが,そういうことが減ってしまうと,実はロボットの最先端がうまくいかないんです。切削とか潤滑。そういった,シュリンクはしなきゃいけないんだけど,残すべき案件をどうやって残すかというのは,そこに価値があるような施策をどんどん入れていかなきゃいけないので,ロボット側の企業からそれが重要だって言ってもらって,それの人数がどこかの大学が先端的にやって入れるというような形を取らなきゃいけない。
そういったもの全て,社会側の求められる人材と大学が輩出する人材のミスマッチから起こっているので,それを合わせるということの作業が必要かなというふうに思っています。地方の問題も,あるいは男女格差の問題も,みんな同じ構造を持っていて,社会が求めていることに対して,大学がちゃんと出しているつもりなんだけれども,社会が求めていることがよく見えていないということから起こるミスマッチだというふうに思っています。
【小路座長】 ありがとうございました。
それでは,たくさん御意見を頂戴しまして,ちょうど時間も参りましたので,御意見についてはこれで打切りをさせていただければというふうに思います。
私も大変申し上げたいことがたくさんあって,話し始めちゃうと時間がたっちゃって,皆さんに時間を強制しておいて自分で使うのはあれなんで,次回,私の考え方を申し上げていきたいと思います。
ただ,2点だけ申し上げたいのは,やっぱり多少,私は産業界に身を置く人間として,世界の経済成長というのは,産業構造の変化によって経済成長してきていると。こういう実態を見つつ,大学もカリキュラムなり,大学の役割,存在価値というのも,やっぱり変化,進化をしていくという認識を官民ともに持つこと,それからアカデミア,産業界ともに持つということが必要じゃないかなと。例えば,蒸気機関からEVになり,それから,メーカー中心だったのが情報産業が中心になり,社会は狩猟社会から情報化社会になっていると。そういう進化,変化によって成長するということをやっぱり認識していかなきゃいけないんじゃないかなというふうに思います。
これは,こんなことを言うと,大学の先生に批判を浴びるのを承知で言いますけど,これ,私立大学じゃないと思います。これは私が語った言葉じゃなくて,ある国立大学の総長が退任に当たって,我々の会議に出ておっしゃった言葉なんですけれども,大学が産業界とか社会に近づけば近づくほど大学の尊厳がなくなるというふうに考えている,まだ一部の先生方がいらっしゃると。この辺はやっぱり変えていかなければいけない,変わっていかなければいけないんじゃないかなということで,こういう考え方が残っていると,産学連携とか,産学融合というのはなかなかできないというふうに思いますし,これはもうないと思いますけれども,こういったところも率直に,この会議の中でも本音で話をさせていただければどうかなと思っているところでございます。
いずれにしても,大学と産業界との連携というよりは,最近は大学でも融合というふうに言っておりますので,そういう融合をしつつ,私立大学の存在価値をどう高めていくかということを考えていかなければいけないんじゃないかなと。あくまでも学生が主人公であって,学生が困るということがないというふうにしていくことが一番の究極の目的ではないのかなというふうに思っているところです。
まだまだお話ししたいことはたくさんあるんですけれども,そんなところで締めたいと思います。
事務局のほうから,日程等,お願いいたします。
【菅谷私学行政課課長補佐】 それでは,資料5にございますけれども,次回,第3回の検討会議は,6月18日水曜日,15時から17時での開催を予定しております。次回は,国際競争力の強化に向けた私立大学の役割や関係者との協働の在り方等の具体的な方策について御議論いただく予定ですので,どうぞよろしくお願いいたします。
なお,会議に先立ちまして,議論に資するような大学の御視察をいただくことについても計画をしておりますので,詳細については追って御連絡をさせていただきます。
【小路座長】 ありがとうございました。
それでは,全て終了ということでよろしいでしょうか。
では,2時間半,長時間にわたりまして議論いただきまして,大変有意義な御意見を頂戴したと思います。ありがとうございました。
第2回の会議をこれで終了したいと思います。大変お疲れさまでございました。ありがとうございました。
―― 了 ――
高等教育局私学部私学行政課