国立大学法人等の機能強化に向けた検討会(第1回)議事録

1.日時

令和6年7月30日(火曜日)10時00分~12時00分

2.場所

ハイブリッド(対面・Web)開催 ※傍聴はWebのみ

3.議題

  1. 本検討会の運営について
  2. 国立大学法人等の現状について
  3. その他

4.議事録

国立大学法人等の機能強化に向けた検討会(第1回)

令和6年7月30日

【春田国立大学法人支援課課長補佐】 それでは,定刻となりましたので,ただいまより,第1回国立大学法人等の機能強化に向けた検討会を開催させていただきます。
本日は御多忙の中,皆様お集りいただき誠にありがとうございます。会議の冒頭は,私,高等教育局国立大学法人支援課の春田が進行させていただきます。本日の検討会でございますが,対面,オンラインの併用で開催をしてございます。また,冒頭から取材,傍聴の方がおられることを御了承いただければと存じます。
このiPadは今,ビデオ用として,カメラとして利用しておりますので,誤って操作等をされた場合には,事務局までお申出いただければと思います。
さて,配付資料につきまして,次第のとおりでございますけれども,過不足等あれば,お申しつけください。
それでは,会議の開催に当たりまして,事務次官の藤原より挨拶を申し上げます。よろしくお願いします。
【藤原事務次官】 どうも,おはようございます。事務次官の藤原でございます。本日は,この会議に御参画をいただきまして,誠にありがとうございます。国立大学につきましては,平成16年に法人化をしたわけでございます。そして,その後20年が経過をいたしました。この間,経営機能の強化といったようなことに取り組みながら,産学協同がごく一般的なこととして定着をするなど,大きな変化も来してきたと思うわけでございます。しかしながら,その一方で,研究力の低下ということが昨今厳しく指摘をされております。また,取り巻く環境が大きく変化をする中で,グローバル化への対応の立ち後れといったような課題も指摘をされているわけでございます。
一方で,中教審では,少子化時代における大学の在り方ということが議論されているわけでございます。そうしたもろもろの状況を踏まえながら,国立大学が今後どういった役割を果たしていくべきなのか,また,そのためにはどういった支援方策があるべきなのかといったこと,そうしたことを含め,大所高所から幅広に,かつ集中的に御議論いただくための会議がこの会議でございます。
国立大学は我が国の発展の基盤であるというふうに考えております。今後の大きな在り方を決める重要な会議になってまいるというふうに考えております。どうぞ先生方の精力的な御議論をお願い申し上げたいと存じます。
これをもちまして開会の御挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
【春田国立大学法人支援課課長補佐】 ありがとうございます。では,本日の会議の委員の御紹介につきまして,お手元にお配りをした資料1,設置要綱の別紙にございます委員名簿をもって代えさせていただきます。本日でございますけども,福原委員は御欠席となってございます。
続きまして,本会議の座長でございますけれども,文部科学省から相澤委員にお願いをし,御了解を得ておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。
それでは,相澤座長に御挨拶をいただきますとともに,以降の進行をお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。
【相澤座長】 座座長を仰せつかりました相澤でございます。大役をお引き受けすることになり,緊張しておりますが,私のバックグラウンドという意味で,自己紹介方々,お話をさせていただきます。
私は,2001年10月に東京工業大学学長に就任いたしました。その後,国立大学協会の副会長を務めていたときに,2004年4月ですが,国立大学法人を迎えました。その年の10月には,佐々木毅会長の後任として国立大学協会の会長を務めました。
2007年には,内閣府の総合科学技術会議の常勤議員となりましたので,日本全体の科学技術政策のかじ取りに関わるという立場となりました。第3期の科学技術基本計画をどう実行するかということと,第4期の科学技術基本計画を策定するということを主導してまいりました。
2013年には,科学技術振興機構――JSTですが,に移りまして,ファンディングエージェンシーの立場から科学技術振興に関わり,国公私立大学,研究開発法人との関係を深めてまいりました。同時に,数多くの国立大学法人の経営協議会の委員,あるいは学長選考・監察会議の議長を務めてまいったところであります。
文部科学省においては,大学設置・学校法人審議会の会長を務め,そして,中央教育審議会の大学分科会の会長等も務めてまいりました。現在,指定国立大学法人部会の会長を務めております。
こういったことで,国立大学法人の真っただ中にいたということから始まりまして,様々な立場で国立大学法人とは縁が切れません。国立大学法人化20年ということでありますので,国立大学法人制度を総括するとともに,次の展望を開く本検討会の座長を務めさせていただくことになりましたので,ぜひ委員の皆様の御協力の下に務めさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。
それでは,早速議事に入りたいと思います。まず,議題1は,本検討会の運営についてということであります。事務局より説明願います。
【春田国立大学法人支援課課長補佐】 では,事務局より,資料1,資料2について御説明をさせていただきます。お手元,資料1でございます。本検討会の設置要綱でございますけれども,検討会の趣旨につきましては,1ポツに書いてあるとおりでございます。法人化の成果や課題の現状について分析を行うとともに,国立大学法人等が全体としてその機能を強化し,その役割をしっかり果たしていくことができるよう,具体的な対応策を検討するというところでございます。
また,検討事項,具体的には2ポツにございます。(1),(2)とございますけれども,(1)法人化から20年を経た以下の現状分析についてということで,4点,財務の状況,規制緩和された制度の活用状況,人事給与マネジメント改革の状況,そして,その他教育研究等の活性化に関する取組状況というところでございます。
また,(2)現状及びその分析を踏まえた今後の対応策の在り方についてということで,この検討会が設置されてございます。設置の期間でございますけれども,次の4ポツ,実施期間,令和6年7月10日から令和8年3月31日までということになってございます。
続きまして,資料2でございます。運営要領でございます。第1条,座長を置くということで,座長が不在の場合には,委員のうちから座長があらかじめ指名する者がその職務を代理するということになってございます。
また,議事の公開等でございます。第2条,第4条,第5条にございますけれども,この検討会は原則として公開で行うこととなっております。本日も公開でございます。ただし,座長が検討を公開することにより,公正かつ中立な審議に支障を及ぼすおそれがあると認める場合,その他においては,全部または一部非公開とすることができるという形になってございます。検討会の資料及び議事録についても同様でございます。
以上,運営でございます。
【相澤座長】 ただいまの説明について,御質問等ございますでしょうか。
それでは,資料2の運営要領は案のとおりでよろしいでしょうか。
(「はい」の声あり)
【相澤座長】 ありがとうございました。それでは,この要綱とさせていただきます。
そこで,この要綱にもありますように,私がやむを得ず不在となる際に,座長の役割を務めていただく座長代理を決めさせていただきたいと思います。座長代理は,森田委員にお願いしたいと思いますが,よろしいでしょうか。
【森田座長代理】 私でよろしければ,やらせていただきます。
【相澤座長】 ありがとうございました。それでは,森田委員,どうぞよろしくお願いいたします。
それでは,議題の2に移ります。国立大学法人等の現状についてであります。資料は3,それから4-1,4-2,これらを基に事務局より説明をいただきます。
なお,先ほど資料の1の説明があったときに,本検討会の検討事項の1つ目に記載されている現状分析について,まずは基本的な認識共有ができればと思います。では,よろしくお願いいたします。
【田井国立大学法人支援課企画官】 国立大学法人支援課企画官の田井と申します。お手元の資料3を御覧いただければと思います。まず,国立大学等の法人化に係る議論の経緯と背景について,簡単ではございますが,振り返りをさせていただければと思います。
2ページ目は,国立大学の法人化までの経緯でございます。国立大学の法人化については,我が国の国立大学が欧米諸国と同様に独立した法人格を持ち,自主的,自律的に運営されるべきとの観点から,1971年の中央教育審議会の46答申をはじめ,長年にわたり議論の俎上に上ってきました。そのような中,行政改革の流れの中で,1999年には国立大学の独立行政法人化について,平成15年までに結論を得ることが閣議決定されました。
2001年には,いわゆる遠山プランが発表され,同年,国立大学の法人化と民間的発想の経営手法の導入が閣議決定されました。その後,2002年の調査検討会議の最終報告を踏まえて法制化が行われ,2004年4月,国立大学法人法に基づく独自の法人制度として,国立大学法人が成立いたしました。
3ページ目は,国立大学の法人化の考え方です。法人化の目的は,自律的な環境の下で,より個性豊かな魅力ある国立大学を実現することにありました。そのために,トップマネジメントや,戦略的経営,学外者の参画,能力人事主義,事後評価等の仕組みが取り入れられることになりました。
4ページ以降は,法人化前後の制度比較でございます。まず,組織の位置づけとしましては,文部科学省の内部組織から,法律により設立される独立した法人となりました。ガバナンスについては,学長を教学,経営双方の最終責任者として位置づけ,その後,ガバナンス強化のための累次の制度改正が実施されてきました。
国の関与については,中期目標の策定,中期計画の認可や,国立大学法人評価委員会の評価と限定的なものとされました。法人評価については,第4期中期目標期間から年度評価が廃止されるなど,過度の負担にならないための改善が図られてきております。
5ページ目に移ります。会計については,渡し切りで使途の内訳が特定されない運営費交付金が交付されることとなり,翌年度への繰越しも可能となりました。人事,給与,服務については,国家公務員でなくなったことから,法人の裁量に委ねられることになりました。
6ページにかけてでございますが,他法人への出資,余裕金の運用,長期借入れ,債券発行,土地の貸付け等が可能となり,その後も対象の拡大等,規制緩和のための類似の制度改正がなされてきております。
授業料につきましては,法人化前は国が授業料を設定していたところ,法人化後は国が標準額を設定し,一定の範囲で各大学が授業料を設定する仕組みになっております。
7ページ目は,法人化の際の国会審議における附帯決議でございます。
最後に,8ページ目でございますが,法人化と,平成18年度以降の行政改革の考え方について述べております。国立大学法人化から1年余りが経過した平成18年度,骨太の方針2006において,各行政分野において厳しい歳出削減が求められる中,国立大学法人運営費交付金についても,各年度の予算額を対前年度比1%減額することが明記されました。
また,総人件費改革の中で,国家公務員の総数を5年間で5%以上削減するなどの方針が法律に規定され,独立行政法人,国立大学法人についても,人件費総額を5年間で5%以上削減することが求められました。これらの予算削減は,法人化の直後に行われたことから,法人化が原因であると論じられることがありますが,法人化の影響と政府全体の歳出削減の影響は分けて考えるべきであると考えております。この点,過去の文科省のまとめでも記載されておりますので,参考として掲載しております。
資料3につきましては,以上でございます。
続いて,資料4-1を御覧いただければと思います。国立大学法人等の現状について,概観させていただきます。まず,全体の概況について御説明いたします。
4ページ目でございますが,国立大学法人等の構成です。国立大学法人は82法人,86大学,大学共同利用機関法人は4法人となっております。
5ページ目は,国立大学の種類,規模でございます。総合大学,単科大学や,大学院のみで構成される大学など,国立大学はその規模や教育研究の分野が様々に異なっております。
6ページ目は,大学共同利用機関法人の概要でございます。
7ページ目は,国立大学の再編・統合の状況でございます。法人化前に12組24大学で統合が進み,法人化後は2組5大学で統合がなされております。また,今年の10月には,東京医科歯科大学と東京工業大学の統合が予定されております。
8ページ目は,指定国立大学法人制度についてでございます。平成29年の法改正により,世界最高水準の教育研究活動の展開が相当程度見込まれる国立大学法人を指定し,出資や資金運用等の特例措置を適用しております。
9ページ目は,国公私立大学の学生数でございます。学部段階では,私立大学の割合が8割と高く,大学院では国立大学が修士6割,博士7割と高い割合を占めております。
10ページ目は,現在の国立大学法人のガバナンスの仕組みでございます。
めくりまして,11ページ目は,現在の国立大学法人評価制度の概要でございます。
続いて12ページ目は,国立大学法人会計基準の改定の状況でございます。
続きまして,国立大学法人等の現状分析について御説明いたします。まず,14ページでございますが,現状分析の考え方をお示しさせていただいております。本資料では,法人化以降の財務状況や規制緩和等の制度の活用状況について現状分析を行っておりますが,その際,法人の規模や分野が様々であること,そのことにより,財務状況や制度の活用状況の傾向も異なることから,全体の傾向に加えまして,法人化以降,財務分析に用いているグループを活用して分析を行っております。
本グループ分けは,法人化当初の年度評価時の財務分析のため,財政規模,収支構造等に着目した客観的な要件を用いて,国立大学法人評価委員会で整理されたものでございます。それ以降も,毎年の決算時の財務分析に用いております。
また,これらのグループ分けとは別に,運営費交付金の配分のためのグループ分けも存在しますが,そちらは第3期に導入された3つの重点支援の枠組みに基づくもので,各大学がどの枠組みにより支援を受けるかを自ら選択し,第4期において,さらに細分化がなされたものになります。
今回のグループ分けの考え方と,各グループに属する大学は,本資料の下半分にお示ししているとおりでございます。以降の資料では,これらのAからIのグループ名と括弧書きの略称を表示させていただいております。なお,法人の規模や分野等により,法人化後の制度の活用状況等はおのずと異なってくることから,本分析による財務状況や制度の活用状況のみをもって,法人の活動状況を評価しようとするものではない旨,強調させていただきたいと思います。
まず,財務会計の状況について,法人の経営規模から見ていきたいと思います。16ページは,国立大学法人全体の経常収益・費用についてです。これらは法人が当該年度に実際に使った金額,経営規模を示す数字でございます。平成16年度と令和4年度を比較すると,86法人全体で約1.4倍に増加をしております。左上のグラフ,経常収益は,法人が使ったお金がどのような財源に由来するものかを示すものです。最も大きな増要因は附属病院収益で,約2倍に増加しています。また,外部資金等は約4倍に増加しています。
なお,こちらの外部資金には間接経費についても含まれております。右側のグラフ,外部資金の内訳を見ると,企業等からの受託研究をはじめ,全般的に獲得金額が増加しており,また,寄附金の受入れ件数は約2倍,受入額は約1.5倍に増加しています。なお,これらの外部資金と運営費交付金,寄附金の受入額は,法人が当該年度に受け入れた金額を表示しているため,実際に使った金額を示す経常収支とは数字が異なっております。
左下のグラフ,経常費用は,法人がどのような用途にお金を使ったかを示すものです。附属病院収益の増に比例して,診療経費は約2倍に増加しています。また,受託研究費等は約3倍に増加しており,教育経費,研究経費も増加している一方,人件費,一般管理費は微減となっております。
以上が全体の状況でございますが,17ページ以降は,先ほど御説明しました財務分析のグループ別に分析を行っております。全グループのデータを参考資料に掲載しておりますが,本資料では特徴的な点を示しております。
まず,経常収益については,全体が増加している中で,教員養成単科大学のEグループ,大学院のみのFグループ,病院がなく,AからFのいずれにも属さないHグループ,大学共同利用機関のIグループでは縮小,またはほぼ同規模となっております。
18ページに移ります。経常費用につきましても,全体として大きく増加している中で,Eグループは縮小,Hグループは小規模の増加となっております。また,人件費は全体の傾向として同規模を維持する中で,これらの両グループでは減少しており,経常費用の7割とコストの大半を占めていることが特徴です。
19ページに移ります。外部資金につきましては,大規模大学のAグループ,理工系の学生数が文科系の学生数の2倍を超えるBグループ,文科系の学生数が理工系の学生数の2倍を超えるCグループで,受託,共同研究等の金額が大きく増加しております。
一方,次のページのE,F,Iのグループではこれらの金額の増加度が低くなっております。
21ページは,目的積立金の状況です。目的積立金は,決算において人件費が残っており,翌年度以降の事業に供することが可能な額として承認されたものです。1法人当たりの承認額が最も大きいのはAグループ,小さいのはCグループとなっています。
22ページ以降は,運営費交付金の状況でございます。まず,23ページでございますが,第1期中期目標期間は,骨太の方針2006で示された方針により,対前年度1%ずつ減少しており,第2期も減少傾向にあります。平成18年度から開始した第3期以降は,前年度同額を確保しています。
続いて24ページ,25ページはその内訳でございます。
続いて,26ページでございますが,現在の第4期の運営費交付金の仕組みの概要をお示ししております。上の運営費交付金対象事業費から,下のグレー部分の授業料収入等の自己収入を差し引いた額が交付額となりますが,増収のインセンティブ確保のため,外部資金の増加については,交付金算定に反映させないこととしています。
また,運営費交付金対象事業費のうち,水色の基幹経費の中の青色部分の1,000億円は,各法人の教育研究活動の実績成果等を評価する客観的な指標に基づき配分をしております。また,黄色のミッション実現加速化経費は,各大学の組織改革や設備整備等に対して支援をしております。ピンク色の特殊要因経費は,退職手当等,国が措置すべき義務的経費の部分でございます。
続いて,27ページは施設整備費の予算額の推移でございます。
続いて,28ページ以降で財源の多様化の状況について見ていきたいと思います。
まず,29ページでございます。こちらにお示ししておりますとおり,自律的な経営環境の確保や財源の多様化に向けて,各種の規制緩和や寄附促進のための税制改正等が行われてきております。
続いて30ページでございますが,法人への寄附の状況でございます。全体で受入れ件数は約2倍,金額は約1.5倍に増加しており,特にC,Iグループは金額が,C,Eグループでは件数が大幅に増加をしております。なお,Fグループのみ受入れ件数が減少しております。また,Bグループのみ金額は減少しておりますが,一方で,本グループでは受託研究費が伸びているため,寄附からこれらの契約形態に移行したことが推測されます。
続いて,31ページは土地の貸付けの認可状況でございます。これまでに40件が認可されており,主な用途は駐車場,マンション,社会福祉施設等が挙げられます。貸付期間は用途により数年から75年まで様々,貸付額も面積や所在地により様々ですが,東京23区内では大きな収入が生じている物件も存在しています。
グループ別に見ますと,Aグループの認可件数が全体の35%を占め,最多となっています。また,1法人当たりの認可件数は,Aグループが最多で,次いでBグループとなっています。
所在地別に見ますと,全国の貸付地のうち,東京都内に所在する土地の割合は34.1%,東京都を除く3大都市圏については,29.3%,その他の都市圏については36.6%となっております。
次に,資金運用の状況を見ていきたいと思います。まず,32ページ目は制度の概要でございます。国立大学法人が実施可能な資産運用は,①に記載する独立行政法人と同様の内容に加え,②のとおり,文部科学大臣の認定を受けた場合には,よりリスクの高い運用が可能となっております。なお,下の米印に記載しておりますように,運用に充てることができるのは寄附金等の業務上の余裕金となっております。
続いて,33ページは認定の状況でございます。基準1から3が自家運用,基準4が委託運用の基準で,数値が上がるほどリスクがある運用を行い,それに必要なガバナンスが求められております。なお,指定国立大学法人については,特例により認定を受けることなく全基準による運用が可能となっております。
グループ別に見ますと,Aグループでは全法人がいずれかの基準で認定を受けており,B,E,F,Iグループでは,半数を超える法人が認定を受けていない状況になっております。
続いて,34ページは,長期借入れの認可状況でございます。これまで81件が認可を受けており,グループ別に見ると,Aグループが25件で全体の31%を占め,最多です。1法人当たりの認可件数は,Aグループが1.9件と最多,次いでBグループとなっております。
35ページ目に移りますが,借入れの用途別に見ると,寄宿舎等に要する土地の取得が53件と最多となっております。1件当たりの借入額の平均は,施設移転に充てるものが57億,寄宿舎棟が7.6億,産学連携施設が6.9億,附属動物病院が2.8億となっております。
続いて,36ページは債券発行の状況です。現在,6法人において総額1,300億円の大学債が発行されております。使途は,研究プロジェクトの実施,キャンパス整備,教育研究拠点の整備,産学連携施設の整備等が挙げられます。投資表明者は,保険会社,資産運用会社,自治体,財団法人等が各法人のホームページにおいて公表されております。
次に,出資の状況についてです。37ページは,国立大学法人が出資することができる対象を示しております。
38ページは出資認可の状況です。認可件数は累計44件となっており,大学発ベンチャーに投資支援等を行う認定ベンチャーキャピタル,ファンドへの出資認可が18件で最多となっております。また,グループ別に見ると,全認可件数のうち約8割をAグループが占めています。
39ページは,国立大学法人等における新株予約権の取得・保有の状況です。法律により,国立大学法人等が行う大学発ベンチャーの育成支援を無償とし,その際に株式や新株予約権を取得・保有できることとなっており,現在,その法人数や保有件数は増加傾向にございます。
続いて,41ページ以降は授業料についてです。法人化後の国立大学の授業料は,国が標準額を設定し,各大学は学生の教育を充実するため一定の範囲内で授業料を設定できることになっており,その範囲は標準額の20%までとなっています。現在,大学全体で標準額を上回る授業料等を設定している大学は,(1)の2ポツ目に示す7大学となっております。
続いて,42ページ,43ページは,国立・私立大学の授業料の推移です。国立大学の授業料標準額の改定は,法人化後は平成17年度が最後となっております。
続いて,人給マネジメント改革について,戦略室長の邉田より説明をさせていただきます。
【邉田国立大学戦略室長】 それでは,2ポツ,人事給与マネジメント改革について御説明をさせていただきます。邉田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
まず,45ページ目でございます。全体の概括というか,改革の流れでございます。法人化を契機に能力主義等々の導入,給与制度の弾力化といった人事給与制度の改革が求められてきているというところでございます。ただ,一方,こちらについては,当然教職員の同意の下,進めていくものということでございまして,急激にかじを切るといったことはなかなか難しいというところもありつつ,その時々においてどういう計画でやっていくかというところをしっかりと示しながら,改革を促進してきたというところが流れになります。
法人化前から能力主義,業績主義に立った新しい人事システム導入が掲げられまして,法人化後,第1期を経て第2期のときに国立大学改革プランということで,人事給与システムの弾力化というところをうたって,2015年度末までに年俸制適用者1万人目標と,目標も置きながらしっかりと促進を進めていくというところを進めてきております。
それを第3期人事給与マネジメント改革に関するガイドラインを示したり,その追補版を示したりということで,実績等々を見ながら,グッドプラクティス等々を示しながら,大学独自の取組というのを進めてもらうための政策を打ってきたというところでございます。
次のページに行っていただきまして,46ページ目でございます。こちらが,先ほど申しましたガイドラインの概要ということです。真ん中に枠囲いをさせていただいておりますけれども,これ大きく,このような柱を置いてガイドラインをつくっているというところでございます。
全学的な人事マネジメントシステムの構築ということでございまして,年代構成とか,職位構成,しっかり目標を設定して,持続可能な中長期的な人事計画をつくって運用していきましょうというところでございます。組織全体で若手の研究者のポスト確保であるとか,そういった人材の多様性の確保であるとか,そういった取組というのを進めていただいております。
下に書かせていただいているんですけれども,今日の参考資料にも参照できるような資料をつけさせていただいておると。その他,雇用財源に外部資金を活用ということで,競争的研究費,共同研究費,寄附金といった多様な外部資金を人材に充当して,しっかり若手ポストの増設とか,研究支援体制の整備などに充てる取組を進めていっていただくというところでございます。
下に行きまして,①,②,③と書かせていただいているのが,新しく制度的なものを導入したというところでございまして,それがテニュアトラック,年俸制,クロスアポイントメント制度の活用というところでございますが,それについては次から御説明をさせていただければと思います。
これは全体,人事給与マネジメントの構築というのは,下に書かせていただいておるとおり,若手が安定的に研究に専念できる雇用と,教育研究環境の確保であったりとか,国際化の推進,流動性の向上というところをしっかり狙いながら,こういう取組をどんどん進めてきているというところでございます。
次,47ページ目に行っていただきまして,こちらがテニュアトラック制の活用。これも釈迦に説法でございますので,あまり詳しくは言わないところではございますけれども,優秀な教員・研究者が一定の期間任期付きという競争的環境を経て,審査に合格して,任期のない安定的な職(テニュア)を得るという制度でございます。
特に,若手教員,研究者にとっては,しっかりと任期付きの雇用形態でありつつ,安定的なキャリアパスが可能性として明示されているところでございます。そういう優秀な教員をしっかり確保していこうという取組として進められているところでございます。
その下に,テニュアトラック制の実施状況調査ということで,少し古いところではございますけれども,令和5年度の様子というのを書かせていただいておると。大体のところで導入済みというところでございます。
続きまして,48ページ目でございます。年俸制ということで,まず年俸制を従来の月給制に加えて推進していくと,国立大学改革プラン,1万人規模で年俸制であるとか,混合給与を導入するということを提言して,適切な業績評価に基づいた給与体系の構築を目指そうということで,導入促進員を措置して,退職手当の分割前倒しを実現しながら,導入を図ってきたと。
これをどんどん広げて,もっともっと広げていく,業績を上げた方については,しっかりと給料に反映させていくというところを広げていく,より実効性のある制度を目指して,新年俸制を導入していると。追加財政措置も大きかったり,退職手当,分割で受け取った場合の税制的な問題であるとか,アクティビティーを広げて,使いやすい制度に見直して完全導入を推進していくということを進めているというところでございます。
49ページ目が,そういった年俸制の仕組みを書かせていただいておると。従来の月給制,当然,基本給があって,賞与があって,諸手当があるというところでございます。モデルとして書かせていただいておりますけれども,基本給のところは中長期的な業績を見ながら,その上に業績給としてメリハリをつけられるような,厳格なメリハリをつけて,反映できるようなものを置くというところをモデルとしております。
続きまして,50ページ目,そういった年俸制の見直しも含めて,年俸制適用教員の割合というところでございます。真ん中に書かせていただいておりますが,令和5年5月時点で42.3%が年俸制を導入というか,年俸制を適用されているというところです。真ん中の肌色のところが新年俸制ということでございまして,旧年俸制からの移行もありつつ,若手等々を確保するために,こういうような導入をして使われているというところでございます。
続きまして,51ページ目でございます。これ,クロスアポイントメント制度の活用ということでございます。機関間の協定を結んでいただいて,民間企業と大学であるとか,大学同士とあるんですけれども,それぞれの機関で職員としての身分を有して,それぞれのリソースを使いながら,必要なエフォートで業務を行うということをできるような制度として入れてございます。
期待される効果としては,人材・技術力の流動性の確保というだけではなくて,大学の教育研究活動のアクティビティーを高めて,教育研究基盤の強化・発展に寄与していくというところでございますが,中ほどにありますクロスアポイントメント制度適用教員等の推移ということで,どんどん増えてきているということでございます。導入イメージは下のとおり。
クロスアポイントメント制度の適用教員数でございます。相手機関別と専門分野別というところで書かせていただいております。大学同士が多いというところではございますけれども,受入れについては当然営利法人の方もしっかりと受け入れながら制度を使ってきているというところでございます。
続いて,52ページでございます。ここからは,このような人事給与マネジメント改革を進めていって,ツールとして使えるように広げていった結果として,全体の傾向と各グループの特徴を示させていただいております。人事給与マネジメント改革が,すぐさまこれをやったからこうなったというところではございませんけれども,今の状況を御理解いただくためにつけさせていただいているというところでございます。
まずは,任期の有無,年齢層別の教員数の推移ということでございます。下が本務教員数の推移(任期の有無別)と書かせていただいております。法人化後,任期付教員の比率というのが少し上がってきたというところでございますけれども,平成24年から大体横ばいといった形で,近年は38%程度というふうな形になってございます。
その横が年齢層別でございます。教員数自体は増えていて,ただ,40歳未満の比率を見ていただければと思いますけれども,これ平成元年からになっているので,ちょっと分かりにくいですが,平成16年から比べても30%から22%というふうに比率が下がってきているというのが見てとれるかというところでございます。
続いて53ページ目,職位別の教員数の推移ということです。本務教員数の職位別でございます。少し見にくい形になっていますけれども,教授・准教授については,法人化前,少し増加傾向だったんですけども,法人化以降はほぼ横ばいというところでございます。助教・助手については法人化以降,増加傾向というところでございます。
引き続いて,54ページ目以降は,これらのものについて,先ほども使っていました各グループで分けたときに,どういうふうな傾向が出ているかというところでございます。まずは,任期付きの割合でございますけれども,構造的に病院を持っているところ,医学のところというのはもともと任期付きが多くて,任期付きが下がったといっても,大体同じような割合で,多くの人が任期付きで働いているというところでございます。
Fグループ,院のみの大学院大学のところについては,任期なしが増えたのに合わせて,任期付きは少し減っていると,そういうような状況でございます。その他,全体では3.1ポイント増ということで,増加傾向ということでございます。下に,ある種顕著に任期付き割合が上がったグループを書かせていただいております。
続いて,55ページでございます。40歳未満の教員割合というところでございまして,全体,下がってきているというところでございます。下がり幅が大きいグループと,減少幅が比較的小さいグループというふうに置かせていただいております。教員養成系のところについては,やっぱりキャリアの中で実践経験があるというところも踏まえて取られるというところかもしれないですけれども,全体,人数は下がっておりますが,そこまで構成要素というか,40歳未満が下がっているということでもないのかなと思いますけれども,比較的減少幅が小さいグループとしてA,C,Eというふうに書かせていただいております。
最後,56ページでございます。これ,人事構成ということで,講師・助教・助手の占める割合を平成24年度,令和5年度と比較すると,全体では少し増えている中で,減っているグループと,割合が増えているグループというところで,顕著なものを書かせていただいておるというところでございます。
【田井国立大学法人支援課企画官】 続きまして,57ページ以降でございますが,学内組織の見直しの状況についてでございます。
まず,58ページは,見直しの状況についてお示しをしております。法人化後は,学科や事務組織の見直し等が自由にできるようになり,文部科学省においても,運営費交付金による組織整備の支援や「大学・高専機能強化支援事業」による支援等を通じて,教育研究組織の見直しを促進しております。
法人化後から令和6年度までに改廃された学科数は,こちらにお示ししておりますように,延べ999件となっており,法人化時からその大半が見直されております。なお,こちらについては学科の見直し状況でございますが,研究科の状況につきましては,次回までに整理をさせていただく予定でございます。
59ページがグループ別の見直し状況でございます。B,E,G,Hのグループでは,たくさんの学科が見直されている一方で,Aグループ,Cグループではその半数程度となっております。
続いて,60ページでございますが,こちらは近年の主な学部・研究科の改組の傾向でございます。大まかな傾向といたしまして,社会ニーズを踏まえた学部等の設置,組織間連携による学部等の設置,複数学科研究科の大くくり化等が挙げられます。また,法人化当初の事例でございますが,島根大学と鳥取大学のように,人材養成機能を分担した例もございます。
なお,直近では,平成6年度からの大学・高専機能強化支援事業の支援を通じて,高度情報専門人材の養成のための定員増や,改組が多く行われているところでございます。
資料4-1については,以上でございます。
最後に,資料4-2を御覧いただければと思います。資料4-1の現状データから見られる傾向と,当該傾向を踏まえて,国立大学等の機能強化策を検討していくに当たり,必要と考えられる観点をたたき台としてまとめております。
まず,第1に見られる特徴といたしまして,全体の傾向として,教育経費,研究経費への支出が増えるとともに,外部資金の増加や規制緩和を生かし,事業規模の拡大や活動の拡張を図られてきたグループもある一方で,事業規模を維持,縮小しているほか,必ずしも規制緩和の活用が図られていない法人も見られております。
この点を踏まえまして,今回のグループ分けは,各法人の教育研究の分野や規模に着目したものでございますが,それ以外にどのような点に着目して,機能強化策の検討を行うことが必要かという点の検討が必要ではないかというふうに考えております。
また,2ページ目に移りますが,第2に見られる特徴といたしまして,研究経費や受託研究費等の増加に対する財源として,外部資金等の顕著な伸びが見られておりますが,教育経費の伸びについては,対応して伸びている財源というものが見られておりません。
この点を踏まえまして,教育にかかる費用負担の在り方について,どのような観点で議論を進めることが必要か,検討が必要ではないかと考えております。
次のページに移ります。第3に見られる特徴といたしまして,附属病院を有する大学においては,収益・費用における附属病院関係の割合が高まる中で,収益の増加以上に診療経費が増加している傾向が見られております。
この点を踏まえまして,多岐にわたる役割を果たしている附属病院について,今後の持続可能な経営に向けて,どのような観点で議論を進めていくことが必要か,また,医師の働き方改革等を進めながら,機能強化を図る上で必要な観点は何か,検討が必要ではないかと考えております。
最後のページでございますが,全体として事業規模が拡大する中,運営費交付金や学生等納付金など,毎年ほぼ確実に一定額を見込むことができる収入源は伸び悩んでおります。一方で,毎年額が変動する外部資金や寄附金は伸びている状況でございます。
このような中で,機能強化のために必要な事柄に予算を投じられるよう,多様化した財源や運営費交付金の繰越しなどを活用した財務全体のマネジメントの工夫の在り方,また,これらの工夫を行っても,なお困難な事柄について整理が必要ではないかと考えます。
また,そのほか,整理が必要な事柄は何か検討が必要ではないかと考えております。
以上にお示ししましたデータから読み取れる傾向,それを踏まえて検討が必要な観点について,御意見をいただくとともに,ここにお示ししております事柄以外で,今回の分析で特に特徴があった点,その特徴を踏まえて検討が必要な観点,また,本日お示ししたもの以外に参照・分析すべきデータ等につきましても,御意見をいただきたいと考えております。
長くなりましたが,事務局からの説明は以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【相澤座長】 ありがとうございました。それでは,これから委員の皆様から,順次,御意見を伺いたいと思います。その前に,ただいま説明のありました資料の3と資料の4-1,データ関係でありますが,これらについて御質問があれば,お伺いしたいと思いますが,いかがでしょうか。
膨大なデータですから,これを即,全部理解するというのはなかなか難しいことではございますけれども,何かこの際,どういうことなのかということを御質問いただいて,もう少し詳しく説明いただくということも可能でございます。そのような観点からの御質問ということで,まずお願いしたいと思います。よろしいでしょうか。
それでは,これは資料の4に,この現状データの傾向及び機能強化の具体策の検討に当たって,必要な観点ということでたたき台としてあります。これは,事務局として策定していただいたものです。この内容も含めて,これから委員の皆様から御意見を伺いたいと思います。
本日は,第1回目でございますので,各委員から順次御発言いただきたいというふうに思います。お一人7分以内ということで,時間制限をさせていただきたいと思います。
それで,本日いきなりこの会議で皆様お集まりいただいたので,簡単な自己紹介を初めにしていただいて,どういうバックグラウンドということなのかということを御披露いただきたいというふうに思います。
それで,これはあいうえお順なのでしょうかね。柳川委員のところから,こういう順で回っていきたいと思いますが。
【柳川委員】 私が最初。そうですか。
【相澤座長】 ええ,どうぞ,そういうことで,あまり厳密な議論にいきなり入るというよりは,この全体の説明を受けて,むしろ印象的なことでも結構でございますから,御意見をいただければというふうに思います。
【柳川委員】 東京大学の経済学研究科におります柳川でございます。よろしくお願いいたします。
大抵あいうえお準だと,「あ」から始まるものですから,大分油断しておりました。「や」からということで,御指名でございますので,そうさせていただきたいと思います。私は今,経済学研究科で経済学を教えております。主に法律や制度が経済にどんな影響を与えるかということで,この話でいきますと,ガバナンスの在り方,そういうようなところがかなり研究の大きなウエートを占めていますので,そういう中での国立大学法人という,私が所属している場所でもありますけれども,そういう中でのガバナンスの在り方というのをしっかり考えて,何か御提案ができるかなというふうに思っております。
それから,もう一つは,いわゆる骨太方針をつくるということになっております。経済財政諮問会議の民間議員を,もう5年半ぐらいになりますでしょうか,努めておりますので,そういう意味では,全体の予算管理の在り方とか,あるいは政府の全体の成長戦略であるとか,経済政策の在り方というものに関しても,かなりいろんな議論をさせていただいて,文科省の方々にもいろいろ御迷惑をおかけしながら議論しているというところでございますので,そういう観点からも,少し何らかの貢献ができればというふうに思っている次第でございます。
それで,国立大学法人のいろんな検討会の在り方に関しては幾つか関与させていただいていますけれども,そういう話は省略をさせていただいてということで,自己紹介はこのぐらいでと思っております。
それで,資料を見させていただきまして,私,必ずしもこの国立大学法人の改革の経緯に全て携わっていたというよりは,どっちかというと,一部局員としてその中で働いていたということのほうが大きいことでございますので,今日,御参加の委員の皆様のほうが,いろいろこの間の経緯であるとか,御苦労はよく御存じだったり,あるいは当事者だったりの方が多いと思いますので,私はどっちかというと,外側からの議論ということになるんですけど,最初に申し上げると,この大きな改革の方向性とか動きというのは,とてもよかったことなんだろうというふうに思っております。
世の中,大きく変わっていく中で,自由度を高めて,創意工夫を各研究機関,大学がやっていくことというのは必要なことだったし,そういう意味での改革がとても重要だったということだと思います。その結果としての自由度が広がったということも,よかったと思います。私,働いている身としても,いろいろやりやすくなった部分も大分あったというふうには思っております。
その一方で,当初考えていたよりは,なかなかうまく回らなかったり,課題もあるということも見えてきた20年だったと思います。これは,あまり長くなってもあれなんですけど,経済学の側での反省でもありまして,いわゆる民営化をすれば,自然と活性化をされて,組織がうまく回っていくんじゃないかというような,民営化だとか自由化に関する楽観論というのが随分学問的にもあったんだと思うんです。
この大学法人にかかわらず,多くのほかの産業分野においても,規制緩和をして,国がやっていたものを民間がやれば,突然として成績が上がって,生産性が上がるなんていうことは,残念ながらなかったということだと思います。これを考えてみると,当然なんですけど,何らかうまくいかないから,国が関与していたり,国がやっていたわけで,それをいきなり民間に回せば,うまく回るわけでもなかった。
ただ,一方では,国が今まで関与していたけれども,民間でやれるようになったという部分もあって,全然違う分野ですけど,例えば宇宙開発なんていうのは,昔はそれは国がやらないとと言っていた話ですけど,今はスペースXのようなものが出てきて,民間でもやるようになったと。道路なんかでも,かなり自由に民間がやれるような部分も増えてきたという意味では,民間がやれる部分はやれるというものは随分大きかったんだと思います。
だから,制度を変えていって,民営化をしていくときに,何を手当てしなきゃいけないのかというのは,もう少ししっかり考えないと,単に民間のお金を入れれば創意工夫が高まるというわけではないということが分かってきたということかと思います。
一方では,民間のお金を入れて,創意工夫をつくることで相当伸びる分野もあるので,この伸びる分野をどうやって伸ばしていくのか,それから,そのときの国の関与の仕方,あるいは財政的な関与の仕方,そのためのルールづくりというのが必要だというのも分かってきたと。ここには専門家の方々がいらっしゃいますけれども,そういう意味ではPPP/PFIみたいなものも出てきて,官民連携というのは言葉はいいんだけれども,うまくやっていかなきゃいけないというのも大分分かってきたということかと思います。
そういう意味では,この国立大学法人の話も,随分そういう中でいろんな改革がずっとやられてきたということなんじゃないかというふうに思っております。その中で,改めてこれからどういう方向に行くのかと,あるいは,どういうことを単純に自由化しろというわけではない中で,どうやっていくのかということを考えていかなきゃいけないんだろうなと思っております。
あまり細かい話に入るよりは,大きな話を簡単にさせていただいたほうがいいんだと思います。1つは,細かい点から先に申し上げますと,先ほど少し御議論があったように,この国立大学法人化をしたから予算が減ったのではなくて,国の大きな方針の中で予算が減って,そのタイミングでちょうど国立大学法人をつくっていかなきゃいけなかったんだということが御説明がありました。
これは大事なポイントだと思うので,この減っていく国の予算の中で,それぞれの法人をどうやって活性化させるのかというのは,実は民営化とか,そういう話とか,実際抜きにしても,国の予算が減っていく中で,組織はどうやって生き残るのかという戦略性というのは,依然大きいんだろうなというふうに思います。この先も,国の予算がばんばん増えていかない中で,どうやって全体の組織を活性化していくのか,研究開発をどう伸ばしていくのかというのは,依然として大きな課題であるというふうに考えております。
ここの今日いただいた資料に関して言いますと,非常に詳細な分析をしてくださっていて,よく分かったという面が随分ある反面,これからの課題ということなんだと思うんですけど,じゃあ,それぞれの大学が何を目指すのか,どういう基準で,うまくいっているとか,機能強化ができているとか,できていないとかというのを評価するのかというところを,これに付け加えて考えなきゃいけないんだろうなというのを感じた次第でございます。
極端に言えば,非常にいい教育が行われ,いい研究者やいい学者が輩出されて,日本で様々なイノベーションが生まれていくという,こういうところが大きな重要なありがたい話だというのはよく分かっているわけですけど,そういうばら色のところが全て実現できるわけではないので,どういうミッションを,我々はこの国立大学法人というものに考えていかなきゃいけないのかというところは,少ししっかり考える必要があるんだろうなと改めて感じました。
やっぱり自由度を高めるという方向で来たわけですけど,自由度を高めるだけでは駄目で,ある種の民間企業でも今パーパスとか,ミッションとか,非常に重要になっているのと同じように,この国立大学法人がみんな一緒じゃなくてもいいんですけど,それぞれどんなミッションと,どんなパーパスを描いていくのかというところを考える必要があるのではないかと。
それは単に持続可能であればいいというわけでもないんだと思うので,この評価軸をどう考えていくのかというのは大きなポイントだと思います。
あまり長くなってもあれなので,そのほかのところでいきますと,これからの大きな社会の変化をどう考えるのかというところも大事だと思っています。技術革新が非常に大きく進み,先ほどスペースXの話をしましたけれども,大きな研究開発の流れも,大学や国立の研究機関から相当民間に移っています。そこで膨大なお金が,場合によると国の予算を超えるようなお金が流れていたりします。そんな中で,日本の国立大学法人が何をやっていけばいいのか,どういうふうにお金を回していけばいいのかということを,考える必要があるんじゃないか。
それから,そもそも大学という組織自体がこの先どこまで残るのかというようなところも,世界では恐らく議論がいろいろされている。これは皆さん,御専門の方がいらっしゃるんですけど。そういうふうな大きな変化の中で,これからの国立大学法人ということを考えないといけないのではないかと。あるいは,グローバルにいろんな国際的な大学が連携して,1個の組織ということとして全然なくなっちゃうようなことも含めて,いろんなことを考えていく必要があるんじゃないだろうか。
それから,教員の人材流動化みたいなことが議論されていましたけれども,国全体で,世界全体でいけば,人が様々動いていく,あるいは兼業・副業も進んでいく。こういう大きな人材育成とか,人材の動きみたいなものも踏まえて,研究者はその大きな中の一部では当然あるんだと思います。日本全体,世界全体の人材流動化であるとか,人の働き方の変化みたいなことも踏まえる必要があるのではないかという気がいたします。
最後に,ちょっとだけお話がありました,資金の多様化という話と,長期安定的な資金かどうか,資金の長期性,安定性というのは少し分けて考える必要があると。一研究者からすると,潤沢にあっても,短いスパンのお金と,少ないんだけれども,長期的に安定的なお金というのは大分違うので,この資金の長期的な安定性というのを大きなポイントとして考えていただければというふうに思います。
すみません,長くなりましたけれども,以上でございます。よろしくお願いいたします。
【相澤座長】 ありがとうございました。
それでは,平子委員,どうぞ。
【平子委員】 ANAホールディングスの平子裕志と申します。航空会社の経営を行っておりまして,2017年から22年までANAという事業会社の社長をやっておりました。今現在,縁がございまして,文科省の中央教育審議会の大学分科会並びに特別部会の委員を今やらせてもらっています。そういった観点から,企業経営の立場から,大学の経営,ガバナンスを少し意見できるかなと考え,今回の委員会に臨んでおります。どうぞよろしくお願いいたします。
柳川先生がかなり網羅的に,しかも鋭い指摘をされまして,共感するところが大きいのですが,今回の法人化の意図が,いわゆる自律的環境を確保して,より個性豊かな魅力ある大学をつくるというところに原点があるとすれば,これまで,どこまで各大学がそれに対して実行できてきたかということが大事ではなかろうかと思います。
御説明の中に大学のカテゴリー別の数字が出てきましたが,あのようにマクロの分析することも大事なわけですけれども,大学の個性がより豊かになっているこの現在,一つひとつの大学のガバナンスの在り方というのが問われているのではないかと思います。そういった意味では,民間会社も全く同じで,本当に企業ガバナンスひとつで,会社の状況は大きく変わってくるということを,過去何度も経験してきましたので,その観点から,今回の大学改革を見ていけば良いのではないかと思っています。
例えば,企業経営からすると,最近は社外役員を入れて,彼らの声を経営に反映させようという傾向がありますが,その前に,例えば社長をどうやって選ぶのかについて,社長の選び方というのは,過半数の社外役員から成る指名委員会等が各会社に設置されていて,かなりの透明性を持って社長を選ぶというプロセスが担保されてきています。
そのようにして選ばれた社長によって,執行部の選定が始まるわけです。今日いろいろと御説明があって,例えば人件費の問題とか,資金運用の問題とか,授業料,人事給与マネジメントという,非常に大事なお話もしていただいたわけですけれども,こういったものがしっかり機能するかどうかというのは,執行部の力量にかかっているわけです。透明性を持って決めていくプロセスがあるかどうかというのが重要で,大学になぞらえてみると,社員に対応するのが大学の教員や職員だと思うのですが,最終的にはそれが彼らのエンゲージメントやモチベーションに大きく関わってきます。
今日のテーマの3つ目に大学病院の話がございますが,これも航空会社の例をお話しします。大学病院のお医者様はパイロットに似ているなと思いました。パイロットも非常に専門性にたけたプロフェッショナルな人間の集まりです。それゆえに非常に自律性が高く,基本的に個人の能力で仕事をする傾向が強いわけです。個人と組織の関係をどうやって結びつけるのかが非常に大事です。彼らは非常にプロ意識が高いがゆえに,自分の健康,あるいは技術習得の挑戦に対する意識が高い。会社が組織的にサポートするという姿勢を出すことによって,個人と組織の距離は縮まります。大学病院のお医者様が,パイロットの事例と同じなのかどうか分かりませんが,そういった環境を整えていくということが重要です。
また,大学でも会社でも組織である以上先輩・後輩という関係があり,それを我々は権威勾配と呼んだりしますが,その権威勾配を極力小さくすること,例えば先輩51に対し対後輩49くらいの,ほぼフラットだが僅かに勾配をつけると組織がうまくいくのではと感じています。
今はデジタル化の時代ですから,手作業とか単純作業は自動化をするとか,本当に無駄な作業をやらせないことも必要です。もう一つ大事なことは人材の疲労リスクに対する管理が非常に大事です。どの仕事にも疲労リスクはあるわけで,生産性を落としたり,あるいは病欠につながったりします。それが組織の脆弱化を加速させますので,疲労に対するケアを,組織としてしっかり行なっていくということが大事なわけです。これによって,個人のエンゲージメント,モチベーションが向上します。
大学経営でも,企業経営でも,最終的には,個の生き方,キャリアパスあるいはウェルビーイングに直結しますので,それを担保できれば,教育の問題と研究の問題は解決するのではないかと思います。研究と教育というのは,よく二項対立的に考えられがちですけれども,結局よい教育を行えば人材が育ち,よい研究につながるということだと思いますので,その関係性を認識していけば,1つの道が開けてくるのではないかと思います。
長くなりましたが,以上でございます。
【相澤座長】 ありがとうございました。それでは,樫谷委員,お願いいたします。
【樫谷委員】 樫谷と申します。私は公認会計士です。会計士ですけど,監査もしておりましたけれども,どちらかというと,私のプライベートでは企業再生を中心に仕事をしております。政府のほうでは行政改革ということを,行政減量とか何か言いながら,生意気なことを申し上げたことがあるんですが,私は今随分反省しております。
行政改革って一体何なんだろうと。つまり,減量することなり,効率化することが行政改革なのか。それは大事なことなんですよ。それは大事なことなんですけれども,目的は,ちゃんと政策目的を達成することだということがまずあって,それをやるには,できるだけ効率とか,効果的にやっていただきたいという観点が大事じゃないかと。
実は驚いたんですけど,ここ交付金をまだ1%ずっと削減し続けているというのは異常に思えたんです。これ,独法まだやっているんでしたっけ。効率化係数みたいなのがあってね。これ,どこまで続けるんだと。ゼロになりますよね,100年後か,150年後か分かりませんけど,極めてゼロに近くなるということが正しいのか分かりませんが。これも,どこかで検討しなきゃいけないだろうと思っています。
そういうふうに,目的は何なんだと。つまり,教育をまずやって,大学は教育と,研究と,医療と言われたんですけれども,それぞれ違うんじゃないかと。医療は比較的測定しやすい,評価の測定もしやすいんですが,研究は長期にわたる。私,理研などにも関係させていただいておりまして,非常に長期にわたるとおっしゃっています。そうなんですね。だから,そうすると評価の在り方がちょっと違ってきます。
教育はどうなんだというと,教育は基盤中の基盤です。これ,成果が出てくるというのは,恐らく超長期,何十年か後の話なので,評価の在り方も全く違うだろうと。これをごっちゃにして議論することは,私はまず間違いかなと,こういうふうに思っております。
また,教育についても,私立もあり,国立もあり,これは小学校からずっとずっとあるわけですけれども,そこについても,全体感の中で大学は何をやるのと。その中で,昔は民にできることは民に,官にできることは官にというふうに言えば,教育をすると,医療をすると,研究をするというのであれば,民にできることばかりですよね。じゃあ,国立大学は要らないという論理になっちゃうんですけど,そんなことはないですよね。国立大学の役割というのはしっかりあると思います。
その役割の中でも,いろいろ特別なところと,普通のところと,下支えをするような地方のところがそれぞれあると思うので,これも一緒くたに議論しちゃいかんというふうに思っております。詳細な分析の中で,規模とか,それだけじゃなくて,いろんな条件を,今,平子委員もおっしゃっていましたけども,個々に見ながらやっていかないと,また間違う。
企業再生でも同じです。トータルの分析をしてあって,つまり,私,会計士ですから言えるんですけど,財務諸表の分析をしていても,何にもならないとは言いませんが,その中身はどうなんですかと。なぜそうなったのか,どう変えれば,どうなるか,それは改革なんですよね。改革しない限りは物事が進まないし,改革には痛みが伴います。痛みって何だと,どこまで我慢できる痛みなんだという話に突っ込んでいかないと,なかなか難しいと。
何を言いたいかということなんですけど,痛みについて,改革するにしても,また投資が要るんです。企業再生でカットします。カットしないと銀行から貸してくれないけれども,投資をしないと,実は企業というのは成長していかないんです。現状維持というのは,長期銀行と同じですよ。投資をするときに,特に大学とかを見れば,人的投資が一番重要ですよね。それから,設備投資も必要でしょうし,システム投資も必要です。その他の投資も必要かも分かりませんが,投資という感覚があまりないんですよね。
あるのかも分かりませんが,非常に単年度予算の中で決められていますので,長期的な観点というのはどう持てばいいんだというところがね。つまり,私,政府のほうの中で公会計というのをやっております。企業のほうは,長期的な戦略の中で物事を進めていくというのがあるんだけども,国が本当に長期的な戦略の中でやっているつもりかも分かりませんが,具体的な予算が単年度なので,長期的な観点と単年度の関係がなかなか整合しないというのを,何度も経験しております。
だから,私も独法の評価などもやってきましたけども,独法も実は最初申し上げましたように,減量しましょう,統合しましょう,効率化しましょうということを五,六年言い続けました。これは大事なことなので,私は間違っていなかったと思いますけども,その後どうしたかというと,やはり最初申し上げましたように,ミッションが大事だと。ミッションの達成のために,まず,それがありきで,その次に効率的,効果的にやってくださいということで,今,独法については考え方を変えました。
やっぱり国立も自律性とか,いろんなことを言われているんですけど,本当にどこまで効果がやられているのかというところをもう少しきめ細かく見ないと,この分析をしても,正直言って,ああ,なるほどなとは思ったけど,その原因も何も分からない。原因が分からなきゃ,解決なんてできませんからね。原因の究明をもう少し突っ込んでやらなきゃいけないんじゃないかと。
ここの委員会のミッションかどうかは分かりませんが,私,もうちょっと突っ込む必要がある,突っ込まないといけない。いつも,私もいろんな委員をさせていただいていまして,なかなか突っ込みができないというところが,大学というのは実習だとか,何とか,わけの分からんことじゃなくて,まともなことを言われまして,何も突っ込めないというところに問題があるんじゃないかと思います。
できれば,今回もう少し突っ込んだ上で改革をしていかないと,解決をしていかないと,結局空中戦をやっただけで終わってしまうんじゃないかということで,そういうことを申し上げておるわけでございます。
以上でございます。すみません,生意気なことを申し上げたかも分かりません。
【相澤座長】 ありがとうございました。
【伊藤高等教育局長】 1点だけよろしいですか。今の事実関係のところだけ少し,すみません。運営費交付金のところ。申し訳ございません,最初の説明を少しはしょった部分もあったかもしれませんが,資料4-1の23ページに運営費交付金の推移の話の表を載せさせていただいてございます。これは,中期目標でいうと,第1期,第2期の最初の12年間については,効率化係数ということでおおむね1%ずつ下がってきたところでございますが,第3期以降,ここでいきますと平成27年以降は,前年度同額という形で,削減はストップしてございます。
いろいろ修学支援の新制度などができた中で,運営費交付金ではなく,別の大学へのお金の入れ方をするなどで,一時的にちょっと減っているように見えるところもあるんですけれども,平成27年度以降は基本は増額という形になってございます。
もう一方,ほかの独法については,実はそれぞれの独法ごとに効率化係数のかかり方というのは違って,全体について1%削減ということはないけれども,事業費については,まだ継続して削減を求められているところもあれば,削減が止まっているというか,削減なしというふうになっているところもあり,その代わり,まだ事業費などで面倒見るというようなところもございますので,そこは実は多様でございます。
国立大学につきましては,今申しましたように平成27年度までは下がってきていたというのは事実でございますが,そこで止まっているというのは今の現状でございます。
【樫谷委員】 分かりました。これ,止まっていていいということですか。
【伊藤高等教育局長】 いや,いいわけじゃないです,事実として,すみません。
【相澤座長】 その内容については,まだ今後。
【樫谷委員】 分かりました。
【相澤座長】 それでは,森田委員,よろしくお願いいたします。
【森田座長代理】 森田でございます。現在はリタイアしましたが,40年ほど大学で社会科学,政治学,中でも行政学という科目を担当しておりました。私自身は,今は常勤職はありませんが,ここに座っている理由といいますのは,まさにこの法人制度をつくるとき,相澤先生と御一緒ですけれども,国大協,そして,この文科省の会議のほうでお手伝いをさせていただいたということです。これは,なかなか複雑な経緯を経てつくられた制度でございますので,昔のことを話せという趣旨でここに呼ばれたと思っております。
私自身,専攻が行政学だったものですから,90年代は地方分権改革もそうですし,その後の橋本行革で,特に独立行政法人制度の設計のお手伝いをさせていただきました。海外の事情であるとか,そういうことから,日本の制度はどうあるべきかということを検討し,最終的に行革の報告,そちらのほうに書かれるような内容について,いろいろ検討したということでございます。
その後,たまたまですけれども,勤めておりました東京大学で,総長補佐を務めていたこともございまして,この国立大学の法人化に関して,国大協の中で,大学の学長の先生方をサポートせよといわれ,そして,そのまま連続して文科省のほうの会議にも入りました。そちらでは,主として人事制度を担当しておりました。
どういう議論をしたかということにつきましては,もう二十数年たちまして,かなり記憶が薄れたんですけれども,たまたま途中でインタビューを受けたことがどこかの雑誌に掲載されているようですので,私もそれを読んで,ああ,昔こんなことがあったなというのを思い出しているところでございます。
その経緯はともかくといたしまして,私自身,法人化に関しましては,行政学者の観点からもそうですけども,推進をすべきであると思い,むしろ法人化がうまく機能するような形での制度の在り方というものについて発言をしていたという記憶がございます。もちろん,大学という制度の在り方についてはいろんなお考えがあったものですから,現状のままのこれまでの古きよき大学を復活して,維持すべきであるという意見も強くあったところでございます。
ただ,当時の状況は,先ほど柳川さんもおっしゃったと思いますが,自由もなければ,お金もない状態であって,両方とも要求しても,多分得ることは難しいということで,ならば,むしろ自由を獲得すべきではないかと。乱暴な言い方ですけども,そういう考え方です。むしろ,自由の中からいろいろな意味での資金の調達というものも考えられるのではないかと。制度的には,長い目で見て,そういう方向に向かっているのではないかと思います。
ただ,自由といいますのは,一面におきましては,自分たちのやりたいことができるということですけれども,やることに関して言いますと,当然ですが,責任を伴います。法人化のように独立した団体になった場合には,法の枠内ですけれども,自分たちのやりたいことを自分たちで決めてやることができるわけです。それに必要なリソースというものも,自分たちで集めてこなければいけない。これはなかなか難しかったところかなと思います。
結果として,20年たちましたけども,私自身は法人化をもっと推進すべきではないかと思っておりますけれども,今にして印象としましては,自由な環境でそれぞれの大学が個性を発揮して研究,教育ができるような,そういう仕組みにしたはずだったんですけれども,実際に大学のほうで,では,それだけの十分な自由を享受してガバナンスがうまくいったかといいますと,そこは必ずしもそうではなかったという気はしております。
理由といたしましては,1つは,これもいろいろありますけれども,簡単に申し上げますと,大学に所属していた先生が法人化をするということについて,必ずしも共有した認識をお持ちでなかったというところから,マインドセットの問題として,新しく法人化した大学がどういうものかということについて,十分に認識されていなかったというところが1つ。
もう一つは,独立行政法人制度化を検討した当初の文科省の委員会では,独立行政法人化するというタイトルの会議だったと思いますけれども,結果として,それとは似て非なる国立大学法人制度になったわけです。その制度自体の論理といいましょうか,原理が曖昧なところがあって,それがいろいろな意味で問題をつくり出しているというところもあると思います。
具体的に申し上げますと,人事制度については,この報告にあったところですけれども,財務の制度にしましても,いろいろな大学がここに9通りに分類されておりますが,それぞれについて事情はあるにせよ,例えば医学部をお持ちの大学で,しかも,それがかなりの財政,また人的な規模の比率を占めているようなところでは,多分,ほかのところと同じような形での財務運営はできないのではないかと思います。
私自身,厚労省の中医協の会長も4年ほど務めていたものですから,ちょうど2009年のときの政権交代の後ですけれども,特定機能病院である大学病院の診療報酬を大幅に上げたことがございます。そのときに病院収入が急に増えているわけですけれども,多分正確な数字は分かりませんが,そのときの増え方というのは,医学部が大きな部分を占める大学だとしたら,かなりの比率になっていたと考えられます。
そうしますと,大学の収入とは一体何なのかということです。それも考えなければなりませんし,先ほどお話がありましたように,そういう意味での病院収入が増えると同時に,診療のほうの支出も増えているということです。これが,大学の財政の中で一体として管理されているのか,大学の中の一部だけ,病院経営として別な財政の原理が動いているのか。その辺りについては,これはそういう意見もあるということですけれども,附属病院だけ切り離した法人化論も出てきているようですが,制度が非常に複雑で,きちっとした形での制度原理に基づいた設計になっていないというところがあると思います。
他にも申しあげたいことがいろいろありますが,もう二点お話しさせていただきます。一点目は,ガバメントの場合のトップの選考の在り方だと思います。これはなかなか難しい問題です。大学ですから,中の先生方の自律性というのは非常に重要ですし,そうした先生方が信頼できる人がトップに座りませんと,なかなか中のガバナンスというのはうまくいかないんです。それと,経営の責任者としての在り方というものは必ずしも一致をしないというところがあろうかと思います。
これにつきましては,非公式の場で随分議論がありました。例えばですけれども,今回の,最近の国立大学法人法の改正で反映されていると思いますけれども,理事長と学長とを分けるという考え方はどうなのか。最初から分けるべきだという議論もありましたし,いや,そうではないという意見もありました。最近になって分けてもいいという制度になったと思いますけれども。
これも,やはり経営ということを考えたときに,誰がどういう形で……。先ほど,平子委員のほうから御発言がございましたように,企業でも,言わばトップの選考の在り方と責任,そして,その人がつくるガバナンスの体制というのをどうするかというのは議論があるところだと思います。そうした検討というのは,大学という組織についてもう少しきちっとされる必要があるし,あのときもされるべきではなかったかと思います。
何となく,大学というのは特殊な組織であるというので,みんな通してしまったところがなきにしもあらずなんですけれども,何がどう特殊なのかという議論の詰めは非常に甘かったのではないかという気がします。
もう一つ,3番目になりますけれども,制度の考え方,制度のベースになっております原理原則というものについて,これはこの会議でこういうことを検討すべきではないかと思っておりますのは,やはり日本の高等教育,大学教育自体の担い手としての大学の在り方はどうかということです。
柳川先生は,大学という制度そのものも変わってしまうかもしれないとおっしゃいましたけれども,同じようなことが言えるのではないかと思います。実は,ほとんど皆さん,記憶されている方も少ないのかもしれませんが,国立大学を法人化するというときに,国で1つの法人にして――1つでなくてもいいんですけれども,その中に,複数の教育研究施設としての大学を置くという考え方もございました。
これは,同じ独立行政法人でも,国立病院機構の場合にはそういう仕組みになっております。そのほうが,統廃合,再編成,あるいは資源配分の仕方がもっと柔軟になるのではないか。それはなかなか難しいということで,各法人を法律でもって設立するという形になりましたので,これが果たしてこれから若年人口が減少していく中で,高等教育を適正かつ効率的に提供していく仕組みとしてどうなのかということも考える必要があると思います。
現在は,手を挙げられたところの統合,合併とか,そういう形になっておりますけれども,これはまたさらに言いますと,国立大学だけに限られた話ではないと思いますが,そういう視点もあるのかなという気がしております。
そういう意味で言いますと,大学という組織は何なのかということを考えたとき,これも柳川先生,平子先生のほうからもお話はあったかと思いますけれども,やはり究極のところは,優れた人材を輩出して,いい研究成果を出すということだとしますと,そのために最もふさわしい組織の形態というものを考えていく必要があるのではないか。
そのとき投入するリソースとの関係において,いかに効率化をするかというのも重要な原則ではないかと思います。もう一度,そういうシンプルな原理に立ち戻って考えてみるというのが重要ではないかと思います。特に大学の場合には,一番大事な要素というのは人材,人ですから。人について言いますと,これまた今,別のお役所で公務員制度改革のほうも担当しておりますが,そこで言えますのは,今までは,特に公務の世界も含めてですけども,人件費もそうですけども,人材をコストとして見ていたのではないか。
ところが,そうではなくて,今ヒューマンリソースと言われますように,資源として考えるならば,その資源に投資することによって,いかに多くの価値を生み出すかという観点から,人の仕組み,人事の仕組みというのを考えるべきではないかと。これ,今,民間企業は人が集まらなくなってきて,急にそういうふうに切り替えようとして苦労しているところですけれども,クロスアポイントメントにしましても,年俸制にしましても,ジョブ型にしましても,大学のほうはいち早く,そういう仕組みを取り入れているところだと思います。ただ,きちっとそうした原理に基づいてそれを入れているのか,何となくどこかでやっているから入れているのか,その辺は微妙なところがあると思いますけれども。
いずれにしましても,そういう意味での大学の在り方というのは考えてみる必要があるのではないかと思っているところです。
すみません,長くなりましたけれども,私が相澤先生と御一緒にやったときのことを大体お話ししたと思いますので,そういう形で貢献できればと思っております。よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
【相澤座長】 ありがとうございました。それでは,上山委員,お願いいたします。
【上山委員】 上山です。内閣府の総合科学技術・イノベーション会議で常勤議員をしております。自分に与えられたミッションというか,テーマは,科学技術を通してイノベーション・エコシステム,これは柳川先生とも同じような関心だとは思うんですが,その最初の課題として,大学の問題に取り組んでまいりました。
今回,井上課長から,こういう検討会をするのでというお話をいただいて,ああ,高等局がやるんだな,だったら私は高等局に対していろんなことを申し上げたいなというつもりで参りました。ちょっと耳の痛いことも言うかもしれません。
CSTIに来て,各省庁との間でいろんなことをやっていますが,比較的,高等局と我々はちょっと距離があるという気がしてきました。特に、教育をどう扱うのか、大学の教育と人的資本の関係を論じる際に若干の距離を感じてきました。実際のところ,CSTIでやっている議論の中で,「教育」というのはなかなか難しいテーマです。
新しい人的資本の創造という点から教育を考えた時、すごくポレミカルな言い方を許してもらえるなら,高等局も含めて文科省がお考えになってほしいなと思うのは,例えば現状における我が国の労働の実質賃金が増えないということに,高等局にも責任があるという言い方をしたいと思うぐらいです。
最近,学費の問題が世間をにぎわしていますけれども,大学における学費の高騰化という現象は,アメリカから始まり,ヨーロッパに広がっていった。1990年代から2000年に入って急速に学費が上昇していったわけです。その背景には,私は、高等教育で行われる教育の質的な構造が大きく変わってきたということが,最大の背景だと思っています。
すなわち,かなりクリエーティブな人間,あるいは人的資源をつくることがますます求められるようになってきた。当然ながら従来のような大講義での教育から徹底した少人数教育に向かい、また教師と学生の間の双方向の教育が不可欠になっていった。つまり,教育に関わるコストが急速に拡大していったということなんだと思います。そのコストを一体誰が払うのか?これほど高騰した教育のコストを公的資金で全て賄うことができるのかという問題です。公的支援は拡大するにしてもそれだけでは足りないコストを学費で賄わざるを得なくなってきたということだと思います。
一方で、教育の機会の平等はもちろん担保しなければならない。そうだとすれば、学費は引き上げるにしても、学生の家計の所得レベルに応じた違いを考えるとか、留学生には別の学費コースを考えるとかする一方で、かなり手厚い奨学金をつくり、学費は上がっても所得レベルによっては学費を無料にするというようなきめ細かい政策を取りながら、教育の構造的な変化に対応してきたのだと思います。
別な側面から教育=人的資本の形成を考えてみます。基本的に資本の成長率と労働の生産性を考えると,常に資本のほうが高い。だから,何もしなければ,労働の生産性に基づく賃金は資本の成長ほどには上昇しない。そのような資本主義の論理の中で、賃金上昇を適切に生み出すことができるような人的資本をどうつくっていくのかということを考えたときに,これはもちろん,初等・中等も同じなんですけども,人のつくり方に関して文科省はある面では責務があるのではないですか。しかも大学のような高等教育に関して言えば,高等局の責任は大きいのだと思います。
では各国がそれにどのように対応してきたのかというと,クリエーティブで、少人数で、双方向の教育プログラムを導入し、しかも教育の質を上げるために,アメリカでしたら,ティーチング・エバリュエーションを積極的に行って,個別の大学ごとの授業や,あるいは教員の質に関しても,個々の大学の中で対応してきました。学費は上昇しているのですから、学生も当然にいい教育を求めます。
一方、イギリスではアメリカとは違って,もっと公的な形でやろうとするので,リサーチエクセレンスじゃなくて,ティーチングエクセレンスのフレームワークをつくって,大規模なアンケート調査をして教育のレベルを測り,そして,それにおける差別化を行って,公的支援を行うというフレームワークをやらざるを得なくなってきた。
こうした新しい教育のあり方が、人的資本の形成に大きな役割を果たし、結果として賃金の上昇にまで影響を与えていると考えています。我が国においてそれができているかというと,実際のところはほとんどできていないということだと思います。これについても,やっぱり高等教育局は責任があると思います。
2点目は,我々は科学技術のところですから,ずっと科学技術の動向を見ているのですが、科学技術の生産性と労働の生産性を比べると,実は科学技術の生産性のほうがずっと高いです。現在、各国ともすごい勢いで科学技術に関して投資を拡大している。我が国も残念ながら補正予算なんですけども,科学技術関係の予算としては2倍になっています。これだけ国家投資入れると,確実に科学技術の論文数,特許数も含めて伸びていくことは間違いない。一方で,労働の生産性は上がっていかない(賃金は上昇しない)という現象が,間違いなく来ると思います。
そのギャップを何の仕組みで埋めることができるのか?もちろん人的資本を成長させることが必要なのですが、議論として難しいのは,人的資本に国家が投資をすると,高等教育を受けている人の個人的な所得に反映するので,それは個人のサポートに公的資金が使われるのではないかという嫌悪感もある。従って,公的な投資はあくまで教育機会の平等を担保するためのものとして使うべきだというのが,長年の文科省の立場だったと思うんです。恐らく高等局もそうだったと。
私の現在のクエスチョンはそれでいいのかということです。もちろん,公的な役割として,機会の平等性を担保するということが最大のものではありますけれども,私は,高等局のマインドがそこだけに閉じていたんじゃないかという気がしています。つまり,クリエーティブな人間をつくる,クリエーティブな人材からは高い労働生産性が生まれて,高い賃金が生まれてくるということも含めて,大学の政策の中でどう考えるのかということをもっと積極的に考えてもいいのではないかと思います。高等局の考えられた政策の軸が,あまりに運営費交付金をどう守るのかということに軸足を置いていたために,何らかの新しい政策軸をつくろうとすると,本来守るべき運営費交付金に傷がつくというおそれがとても強くて制作が萎縮してしまったきらいはないのか?運営費交付金なんか,絶対これ以上下がらないですよ。それで教員も職員もぎりぎり生きているわけですから。下げられないですけど,じゃあ,それ以外のフレームワークってほかにないのということですよね,高等局が考えられる政策の軸として。我々は,例えば大学ファンドみたいな全然違う軸をつくりますという形で,科学技術に関する投資を拡大しようとしましたけど,人的資本への投資に関しても何かあるんじゃないのということです。
この問題は第7期の基本計画の中でも議論をしていかなければいけないだろうなと思います。なぜかというと,人的資本の拡大なくして,最終的にはイノベーション・エコシステムの改善はないと思っているので,高等局も我々と協力して一緒にこの問題を考えてほしいなと思います。
もう一つ思うことは,この間,二,三十年の間,日本の政府は本当に小さな政府になったんだなというのを感じることがあるんですよ。大きな政府から小さな政府へのトレンドというのが,ここ30年ぐらい続いてきて,まれに見るぐらい小さな政府になっていると。
例えば役人の働き方,政策形成の在り方に関してもですが,財務的な構造的リミテーションがあるとはいうものの,先ほども柳川先生がおっしゃったみたいに,パブリックプライベートパートナーシップのフレームワークをもっと拡大をして,そして政府の役割をプライベートセクターとの連携の中でより拡大をしていくという方向をとるべきだなと思って,この点は第7期のところではかなり議論していきたいと思います。
そのようなことを申し上げましたけれども,高等局がこういった検討会を進めるときの視座として,我々のところとも一緒に議論させていただきたいなと思っているというのが,私のコメントでございます。
以上です。ありがとうございました。
【相澤座長】 ありがとうございました。それでは,川合委員,どうぞ。
【川合委員】 川合でございます。私は科学者としてトレーニングを受けて,研究,それから教育にある一定年齢まで携わっておりました。理化学研究所が最初の勤め先だったので,独立行政法人になる前後の研究所の様子を見ながら過ごしました。そして,2004年の3月16日に東京大学に本務を移しました。大学法人化の2週間前です。ですので,大学の運営の法人化前は知らないで,法人化の混乱の中から,そこそこ一定の経営ができるようになるところまでの十三,四年東京大学に勤めました。
教育行政に関する経験としては,有識者委員を幾つかの会議で務めました。安倍元首相の提案で始まった教育再生実行会議では,8年ほど有識者委員を務めさせていただいて,そこでいろんな教育行政について多くのことを学びました。
2016年に大学共同利用機関法人に所属する分子科学研究所の所長になって,6年勤めて,現在は,その機構法人,自然科学研究機構の機構長として3年目に入るところです。ですので,先ほどこの表のAからIの分類の中,AとIを知っている立場になります。
今回,この委員会に呼んでいただいて,勉強する機会をいただいていることを大変ありがたく思っております。膨大な資料が突然数日前に送られてきたので,全部は読めてはいませんが,資料4-2に検討に当たって必要な観点という紙がありましたので,これに沿って意見を整理してみました。
法人化して自由度が増えたことは,大学の経営に関しては非常にプラスだと思います。ただ,まだ完璧ではないので,現場で見ていますと,もうちょっと改善できないかなと思う点がございます。先ほど柳川先生が,これからの大学の在り方をきちっと考えることがまず第一だろうとおっしゃったのは,同感です。
特に,少子化に対面している我が国では,国産の人だけを相手に教育をするという時代はもうとっくに終わっていると思いますので,国際化をすることが大事です。先ほど柳川先生が国際的に人が還流するような新しい動きが出ることの重要性を指摘されました。私も同感です。
育てた人材は社会の資源,源でございますので,国籍を問わず,いろんな人材を我が国の大学が育てて社会に出していく。出していく先の社会は,日本国内だけにとどまらず,世界中に広がっていく,そんなイメージが大事です。えてして,大学の中での人材還流に留意しがちな大学人としては,マインドを広く持たなきゃいけないかなと思っています。
資料の4-1を拝見して,最初に,ううん,これはやばいと思ったことが1点ございます。外部資金が増えているのはそのとおりで,これは大変いいことだとは思いますが,総額で財務状況を判断するのは少し危険だと思います。理由は,外部資金というのは必ず使途目的が特定されています。そのための事業を行うので,決して経常的な資金を補完するものではありません。
ですので,大学そのものの意思で動かす必要のあるさまざまな事業に対して,この外部資金のコミットメントはそんなに大きくないと,経営者としては考えます。先ほど,お隣の上山さんが人的資源について述べられたので,私はもっとみみっちいことを申し上げますが,去年,今年と,急に経済動向が好転して,それで人件費も世の中は上がっています。国を挙げて人件費を上げるようにと民間に圧力をかけている中で,私たち,膝下の国立大学法人はどうするのという問題に直面しています。国から提供れる運営費交付金は金額で定められており,物価動向や民間の給与水準に連動する仕組みではありません.
この10年間の春闘の回答を,拝見すると,この間の10年,1%強で賃金は上がってきています。独法化当初の頃はもう少し違ったかもしれませんが,最近は人事院勧告も1%台ぐらいで,継続して上がっているはずです。10年上がれば10%上がっているはずです。そして,去年は3%の勧告が出ています。今年は春闘が5%を超えているので,公務員給与に向けての人事院勧告5%ぐらいで出てくると想像します。私たちは別にそれに従う必要はないんですけれども,従わないで大学人の給与を相対的に下げ続けるかというところまで,国立大学法人の大学は判断せざるを得ない状況に置かれています。
人件費については,かなりきつくなるかなと思っています。今日頂いた資料を見ていると,人件費はそんなに長年増えていないんですけれども,最近の10年,単価が上がっていたとすると,これはどう調整していたんだろうと。大学に勤務していた際に経験していたのは,人件費相当のポイントが各専攻に振り分けられていて,そのポイントで見合う数だけ新たな人事採用を実施していましたので,人件費単価が上がれば人の数は減るという対応をしていたはずです。
外部資金は入ってはきますし,それに間接経費が入っているだろうと言われるんですが,これは勝手になかなか使えるものではありません。毎年,外部資金は獲得できる額が保障されるわけではないので,毎年の外部資金獲得学は凸凹していて,安定な財源にはならないという,非常に苦しい状況ではありました。
教育経費について,たたき台の資料を拝見すると,あまり伸びていませんねと。それは当然で,教育目的の外部資金というのはほとんどございませんので,非常に限られています。教育資金は経常的な資金として予算措置をせざるを得ない状況になっていると思います。研究室の研究資材は非常に近代的なんですけど,東京大学においても,教育の実習に使う機械をどうするかというのはいつも頭の痛い問題でした。予算費目ごとのミシン目が超えられなかったという印象です。本来の使い方の制約が大きいことが問題なのか,大学人である私たちが自己規制していたのか,きちんと整理しないといけないのですが,不思議な感じがします。
もう一つは,自律的な経営をするためには,外部資金を自ら取りに行くということは大事なんですけれども,外部資金はいきなり取れるものではございません。それなりの基盤があって,それなりの実績があって,初めて取れていくわけです。本来でしたら,基盤機関となる法人そのものが,外部資金獲得の基盤を強化するためのお金を用意すべきですが,先ほど申し上げたように,間接経費は使途に制約があります。間接経費がついている研究等の管理のための資金であり,さらに単年度会計なので,将来に向けての基盤整備にはなかなか使えないという苦しみがございます。
また,資材だけではなく,人を育てて研究の芽出しをするようなところもなかなか簡単ではありません。もちろん,科研費がありますと言われるんですけど,科研費だって,ある程度実績がないと取れないわけで,各研究機関でもう少し本当の芽出しのところの手当てができると,自律性を発揮する上で大変助かるなと思っています。
今の制度が悪いと言っているわけじゃなくて,今後,機能強化する上に,こういうことがあったらもう少しいいだろうということで,発言させていただいています。
最後に,人材育成の考え方ですが,法人化してから大学間の競争が強くなったために,大学同士が自由に交流するという傾向が減っているように思います。特に地方大学は,これまで度重なる改革を進めた結果,強みだけを残す構成になっているので,ユニバーシティーといっても,ユニバーサルな教育をするのに大変御苦労されているのではないかと想像します。
多くの大学が結集して,ある学科の講義をするような形をとることができれば,少しユニバーサルな教育ができるんですけど,ある大学に入っちゃったから,ある部分の教育しか受けられないというのでは,人材教育としては片手落ちだと思います。この辺は,服部先生の御意見などを後でお聞きしたいと思います。
教育の課程もそうですし,博士課程の研究についても,所属している大学にある研究だけではなく,よその大学とも一緒に連携して研究を進めることによって,発展的な学位論文が書けるはずであって,そのためには学位を複数の大学が関与して授与で切るシステム,即ち,1つの学位に対して複数の大学がギャランティーする,いわゆるデュアルディグリーとか……。
【石橋大学教育・入試課長】 ジョイントディグリー。
【川合委員】 ジョイントディグリー,そういった制度を国内の大学間で自由にとれる制度は非常に有効だろうと思います。
経済財政諮問会議,柳川先生が委員をされている,今年の骨太の方針には,運営費交付金もしっかり増額しようと,明確に書いてあったのを拝見いたしまして,今年はみんなで声を上げて頑張る年なのかなと思いました。どうにか増額できるといいなということで発言させていただきました。
以上です。
【相澤座長】 ありがとうございました。大体予定した時間がどんどん迫ってきているんですが,いつもこういう順序でいきますと,最後の方に時間短縮をお願いするというパターンですが,今日は,時間制限を考えないで,むしろ皆様に自由に発言していただこうと。これだけいい御意見が出ておりますので,皆様に了承いただきたいのは,予定の12時を少し超えますが,このまま続けたいと思いますので,御協力いただきたいと思います。
ということで,永井先生,できれば短く。
【永井委員】 私は1968年の東大の入学で,まさに紛争世代です。医療問題や大学病院経営というのは,それ以来,私のサブテーマとなりました。
2003年から7年まで東大の病院長でしたが,ちょうど法人化のときでした。そこで病院長としていろいろ実験してみました。私が考えておりましたのは,国立大学病院の法人化は必須であるということです。なぜならば,国の機関である限り、国家公務員総定員法の縛りがあるからです。
当時の国立大学病院の看護師さんというのは,100床当たり欧米に比べて5分の1とか,10分の1ぐらい,教員の数も数分の1から10分の1ぐらいでした。ですから国家公務員総定員法の規制を外してもらうためにも,病院は法人化せざるを得ないということです。
いろいろ問題はありますけど,大学病院は非常に発展しました。収入が約2倍,42大学で1兆3,000億です。運営費交付金は1兆円ですから,これを超えてしまいました。ただ,大学病院の在り方というのは長い歴史があります。私は先日,「今後の医学教育の在り方に関する検討会」でも2回講演しました。その資料はホームページに出ています。
医学教育のあり方は江戸時代から始まる話です,明治以来の近代化,戦時中の軍医養成,戦後の国民皆保険制度,そういうもろもろの社会的要請を大学病院は受け止めて、運営してきました。
大学病院は教育研究の場であり,特定機能病院としての高度医療や,最近は地域への派遣というようなことが当然の使命のように思われているかもしれませんが,ここに問題があります。大学病院の使命は大学設置基準の39条というのを見ていただくと,附属病院は医学部・歯学部の教育研究に必要な病院と規定されています。教育研究のためであって,高度医療であるとか,地域への派遣というのは一言も書いてない。
でも,教育・研究の名のもとに、実際はそれらのすべて役割を担っているところに,いろいろな苦闘と悲劇が起こってわけです。特定機能病院にはなっていますが,これは各大学病院が厚労省に申請して認められるのであり,本来の使命としては位置づけられていません。
2004年の法人化のときに財投の借入金は、国立大学病院全体で約1兆円ありました。これを20年間で返済しました。振り返ってみると,大学病院の位置づけが教育研究機関であれば,私は返す必要はなかったと思います。返せというのであれば,大学病院の位置づけを診療機関としても明確にすべきでした。この問題がいまだに尾を引いています。
でも,それでもいろいろ苦労はありましたが,大学病院,世界に伍する一流の病院になったと思います。東大病院はNewsweek誌によると,国内で1位、世界で18位の病院とランキングされています。1990年頃までは池之端診療所と呼ばれ、重症患者は救急車を呼んで都内の一流病院に搬送していました。当時を思えば、法人化で診療は大変高度化しました。
教育研究のための病院というと,頭医者をつくることになります。そうはいかないので,先輩たちが苦労して一流の病院に持っていったわけです。しかし,今も教育研究の名の下で診療や労働が行われています。そこに問題があることを認識していただきたいと思います。
それから,もう一つは,大学病院経営についてです。私が見るところ,身の丈以上の病院経営・運営をしているという印象です。教育研究の名の下ですと,不採算であろうと、過重労働であろうと頑張り過ぎる傾向があります。理想の医療を求めていきますから,採算の合わないような医療も一生懸命行う。診療報酬がそれほど頂けない高額な医療ばかり行っていると,人件費も施設管理費も出ないのです。そうした現象が現に起こっています。そうすると研究どころではありません。大学病院も,国も,社会も大学病院の在り方を考えないといけないと思います。
また,大学病院自身も身の丈に応じた経営体になっていかないといけない。幾ら資金のストックがあっても,採算の合わない医療に集中すれば,倒れるに決まっています。先ほど,平子委員が医師はパイロットと似て,プロフェッショナル意識が非常に強いというお話がありました。それをしっかり支えないといけないのですが,航空会社は市場原理で動いていますから,きちんと報酬をいただける。大学病院は,適切かどうか分からないですが,航空大学校が航空会社を経営しているようなもので、かなり不採算部門を担っています。これを全て自分たちで経営している状況です。しかも使命は教育研究であって、経営は位置づけられていない。かといって施設費用の償還は求められる。そうすると教育の名の下での労働が起こり、研究時間がなくなるという無理が起こってきます。
でも,臨床はしなければならないのです。臨床医学というのは実践の学術だということなんです。頭だけではないのです。頭と実践を合わせた実践知をつくっていくのが大学病院というところです。したがってまず大学設置基準から私は見直すべきだと思います。
いつまでも教育研究の名の下で診療、教育、研究、地域派遣をしていれば,それは低賃金労働や労働時間の問題にもなる。不採算医療を重視すれば人件費,運営費が出ない。それでも研究時間中に患者さんを前にしたときに,どちらを取るかといったら,臨床医は患者さんを取ります。それはヒューマニズムの問題です。したがって、役割分担なり,しっかりした経営体制をつくってあげないといけないのです。
大学病院や臨床医学は大変な状況ですが,それでも驚くべきことに,臨床医学の論文数は,日本の学術の中で一番伸びています。臨床医学の論文が一番伸び,さらに診療レベルも高くなりました。
そういう意味では,学術の中で臨床医学の位置づけというのはかなり高くなってきたと思います。世界の分野別の論文を見ても,トップは臨床医学です。社会的にも学術でも臨床医学へのニーズは非常に高い。にもかかわらず,いつまでも大学病院が教育研究の名の下に実践的な業務を強制していてよいのかという問題です。これは,臨床医学だけではなく,日本の学術研究全体に言えることだと思います。研究のあり方も変わってきていますから。
研究はいま、非常に横断的です。自分たちの専門分野を超えて,国際化とマルチディシプリナリーになっています。何とか臨床医学も頑張ってきました。論文も増えましたが、それでも世界ランキングは落ちてきています。
先ほど柳川委員が「使命から見直すべきである」とおっしゃいました。ですからまず大学設置基準に大学病院の使命をしっかり書いていただきたい。使命があって,戦略があって,計画があります。ここが臨床医学と大学病院はミスマッチになのです。その中で頑張って伸びていけば,矛盾がどんどん膨らみ、いずれまたかつての大学紛争のようなことが起こりかねないと思います。
今,大学病院において医療者の立ち去りであったり,あるいは,経営が崩壊しつつあるというのも,別の形の紛争かもしれないのです。これは現場が大学に対して要求を突きつけているのだと思います。申し上げたいのは,まず使命をしっかり明示するということ,教育研究の名の下で現場の労働をさせないということです。
大学病院の問題は、教育研究機関と経営体というヘテロなハイブリッドの仕組みをどうつくるかということだと思います。教育研究機関としてどうするかだけではなくて,経営体という側面をもつハイブリッド型の大学のあり方に,日本はまだ対応し切れていない。ぜひこの機会にその議論を深めていただければと思います。
以上です。
【相澤座長】 ありがとうございました。それでは,最後になりますが,服部委員。
【服部委員】 私は,この4月から大学改革支援・学位授与機構に参りました。3月まで島根大学で学長を9年間していました。まず,その経験からお話しさせていただければと思います。
今,地方大学をどうしていくかというのは大きな問題で,私の意識としては,地方にある国立大学と,立地している自治体,主に県ですけども,これは一心同体であるとの意識を強く持つことが大切と考えています。というのは,地方にとって最大の課題は人口減少であり,特に社会減を減らしていくには,地域に人を集めなければいけません。
人が集まるにはしっかりした産業がその地域に必要です。地方では産業が育ちきれていない現状があります。従いまして,現在の産業をより活性化していくことも重要ですが,併せて新しい産業を創っていくことが不可欠と考えています。
そのためには,イノベーションを起こせる,それからスタートアップも含めて,新しい産業を創っていく人材を育てていくことが鍵であり,その核になるのが,その地方にある大学だと思います。大学自身は,いわゆる学問知の創造,蓄積やその継承という従来ながらの大切な機能を持っていて,それは当然維持すべきですが,今それだけでは社会がもたなくなってきています。
今,多くの大学で産学連携に取り組み,その成果も出ていますが,一方で,大学全体で現状を理解しているかというと,そこの理解はまだ浅いところもあるように感じています。全般的に,大学の教員は自分の学問研究に専念したい気持ちが強く,研究成果を社会に活かす意識が弱いので,そこを変えていかなければいけない。そのために,文科省・JSPSの地域・特色ある研究大学促進事業や,当機構で取り組んでいる成長分野をけん引する大学・高専の機能強化への支援による高度専門人材育成等の大学改革が重要と考えています。
これらの支援を上手に活用して,研究力を高め,教育研究の社会実装に向けて大学が変わっていくことを期待しています。そして,今の支援を各大学がうまく使って自学の機能を変えながらも高めていくことができているかを,見極めていく必要もあります。
一方で見極めるには時間がかかります。時間的猶予はないので,大学への継続的支援と大学改革の進捗の検証・確認は並行で行っていく必要があります。話が前後して申し訳ありませんが,成長分野をけん引する大学・高専の機能強化への支援事業に関して,本機構としては,フォローアップをしっかり実施していきたいと考えています。
フォローアップでは毎年度提出される報告書だけではなく,実地調査も綿密に行い,マンパワーはかかりますが,各大学に伴走していくことが重要と考えています。
このようにして,各大学が確実に変わっていく,そういう意識の高い大学をしっかり支援していく。改革に対する大学の考え方や取組状況,それから地域への貢献の状況等を検証・確認していくことが重要と考えています。
例が適当かどうか分かりませんが,いわゆるコミュニティーがなくなる過程で言うと,最後の段階はその地域の学校がなくなることだと思っています。市町村であれば,その地域における小学校や中学校がなくなるということが,コミュニティーが消滅していくことが決定的になる段階ではないでしょうか。これを県レベルで考えれば小中学校に相当するのがその県に立地する国立大学です。国公立大学がしっかりその県に存在して,機能を果たすことが,その自治体が存続していくための最低限の条件だと考えています。
その意味で,地方にある国立大学を地域の現状に合わせてどのように維持発展させていくかがその地域の持続可能性の大きなポイントと思っています。
先ほど川合先生のお話にありましたが,教育環境が狭められている状況は実際に地方大学において出てきています。今,各国立大学は,強みや特色をより高めることを取り組んでいます。その際,強化をすすめる特定分野に学内資源(教員,予算)を集中させます。このとき,学内で問題になるのは,それ以外の分野の先生たちからの不安や不満が出ることです。 この場合,中期・長期的に考えることが鍵になります。今はある特定の分野に学内資源を集中して研究力を強くして,外部資金を獲得するなど高い成果を創出する,外部資金をしっかり獲得できれば基盤経費としての研究費はその分野以外へ配分することができ,それによって,ほかの分野も少しずつ研究力を上げることができる。そして, 5年,10年たてば,次の強い分野を更に強化していく。これらを繰り返すことにより長期的に見れば,全体的に底上げができると思います。
他方,教育は,研究と分けて考える必要があります。教育については,教員を特定の分野に集中すると確かに学生が学ぶことができる専門分野を狭めることになります。これはある程度やむを得ないと思っていて,そうしたときには,他大学との連携であったり,それこそ先ほど話がありましたジョイントディグリーとか,ダブルディグリー制度を国内でも広めながら多様な教育を保証することが大切と考えます。
次に高等教育へのアクセスについては,高校生が,強い研究分野を持ち,特色ある教育研究を実践している地元の大学で,希望に沿って多様で幅広い学びができることが重要です。
教育に関する経費については外部資金として獲得することは難しいので,公的な支援が必要です。さらに言うと我が国全体がもっと教育,人を育てることへの意識が強くなり,教育に関する寄附が増えてほしいと願っています。
寄附の話を続けますと,島根大学ではコロナ禍のときに,寄附額は大幅に増えました。驚いたのは,卒業生や在校生の保護者などばかりでなく,学生の窮状を知った多くの一般の方が寄附して下さったことです。様々な方々から支援していただきまして,本当にありがたかったです。コロナ禍が大分収まってきた昨年度においても,コロナ禍前に比べると,寄附額は増えています。
このように学生支援・教育のための寄附が増えている状況がありますので,これを機会に寄附の機運をもっと盛り上げることができれば良いと考えております。
取り留めのない話になってしまいましたが,今述べた視点に着目しながらこの会議において皆さんの御意見を伺い,勉強させていただきたいと考えております。よろしくお願いいたします。
【相澤座長】 ありがとうございました。第1回でですけれども,皆様から非常に重要なコメントをいただきました。私は時間の関係もありますので,皆様の御意見を伺いつつ,かつ,事務局が用意した今後の論点というか,議論を進める観点,この両方を踏まえて、私の考え方を申し述べておきたいと思います。
第1は,国立大学法人化は,行財政改革とのせめぎ合いで進んだものであって,国主導ではありますが、国立大学協会との密な連携のもとで、日本の高等教育システムの大変革に挑んだ大学改革だと,このことを強く認識する必要があるのではないかと。したがって,法人化の目的として掲げている自律的な環境の下で国立大学を活性化し,優れた教育や,特色ある研究に積極的に取り組み,より個性豊かな魅力ある国立大学の実現は、各国立大学法人に託されたことであり、それぞれの法人が主体的に進める大学改革という位置付けになるのではないかと思います。
第2の視点は,国立大学法人が進める大学改革をもっと浮き上がらせることです。先ほど樫谷委員が個々のところに突っ込まないとということを言われたのは,まさしくそうだと思うんです。
今までの大学改革の調査分析は,個別の問題のところが統計的なもので処理されていて,中身が見えない。そして,もっと重要なことは,大学が本当に何をやりたいのか,その考えを引き出す,そこのところが基本的に欠けているのではないか。第2の視点として,そのことを私は強調しておきたいと思います。
第3の視点は,以上のことを総括した上で,日本の根幹を担う国立大学法人はどうあるべきかを描き出すことです。今日,非常に重要で,飛躍的な考え方が出てきました。大学,いつまで存在するのかねというような,この部分のことです。そして、国は何をするのか、大学は何をするのか、こういう切り分けというのも必要ではないか。
ということで,3つのこういう視点で,今後の進め方をまとめていったらどうかなというふうに考えます。今日頂いた皆様の御意見をきちっと整理した上で,今後の進め方を提示させていただきたいと思います。
予定時間をかなりオーバーいたしましたけれども,以上で本日の第1回会合を終了させていただきたいと思います。
事務局から,今後のスケジュールをお願いいたします。
【春田国立大学法人支援課課長補佐】 ありがとうございます。今後の会議でございますけれども,次回,第2回の会議は9月2日,月曜日の14時から16時で予定をしております。第3回以降については,また追って御連絡させていただきます。
以上でございます。
【相澤座長】 それでは,これで第1回会合を終了させていただきます。
どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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