国立大学法人等の機能強化に向けた検討会(第10回)議事録

1.日時

令和7年6月17日(火曜日)16時00分~18時00分

2.場所

ハイブリッド(対面・Web)開催 ※傍聴はWebのみ

3.議題

  1. これまでの議論の整理
  2. その他

4.議事録

国立大学法人等の機能強化に向けた検討会(第10回)

令和7年6月17日

 
 
【相澤座長】それでは,定刻になりましたので,ただいまより,第10回国立大学法人等の機能強化に向けた検討会を開催させていただきます。
 本日の検討会も,対面とオンラインの方式を取り入れております。したがって,全く公開ということで行わせていただきます。
 それでは,本日の議事等につきまして,事務局から説明をお願いいたします。
【髙橋国立大学法人支援課課長補佐】本日の議事及び配付資料につきましては,お手元の次第のとおりでございます。過不足等ございましたら,事務局までお申しつけください。
 以上でございます。
【相澤座長】それでは,本日の議事に入ります。本年1月に論点整理をまとめました。それ以後,機能強化に向けた具体的な対応策について議論を深掘りしてまいったわけであります。これまで3回にわたりまして,国立大学等からヒアリングを行ったりして,意見をまとめてまいりました。本日はこれまでの議論を踏まえ,改革の方針,これは仮称でありますけれども,取りまとめに向けての委員間での意見交換を行うことにさせていただきます。
 それでは,事務局にこれまでの議論の整理を行ってもらいましたので,まずは資料に沿って,文部科学省から説明をお願いいたします。
【北野国立大学法人支援課企画官】国立大学法人支援課の北野でございます。私のほうから,資料1に基づきまして,御説明をさせていただければと思います。
 ただいま座長から御指摘ございましたとおり,機能強化に向けた検討会におけるこれまでの議論の整理として資料1の取りまとめをした案をつくらせていただいております。まず,以下,今後取りまとめに向けて御議論いただく改革の方針(仮称)における骨子イメージが1ページ目でございます。
 まず,冒頭1,趣旨,これは検討会の趣旨を記載する方向で考えたいと思っております。
 続きまして,2ポツ,今後の国立大学法人等の機能強化に向けた改革の方向性でございます。改革の方針になってまいりますので,2ポツにつきましては,主に国立大学法人等において,改革を進めていただく内容をまとめてはどうかというふうに考えております。タイトルだけでございますけれども,まず,(1)2040年を見据えた機能強化の視点の明確化,その上で1,社会の大きな転換点における大学,2,機能強化を進めるに当たっての留意点,続きまして(2)といたしまして,ガバナンスの抜本的強化,まず1,基本的な考え方,2といたしまして,機能強化に向けた経営戦略の構築,その中でブレークダウンをして財務戦略の構築と人事戦略の構築と。また,3,規制緩和された制度の活用とさらなる規制緩和の推進,4,マネジメント体制の見直し。(3)といたしまして,ヒアリングも多々行っていただきましたけれども,機能強化の方向性に沿った組織の見直し。まず,1が教育・研究組織の見直し,2が附属組織の見直し,3,再編統合・連携等。(4)教育の質の向上に向けた取組といたしまして,1,教育のグローバル化,2,博士等の高度人材の育成,3,社会に開かれたリカレント教育の実施,4,教育の質向上に向けた大学間の連携,5といたしまして,教育の適切な位置づけと便益を受ける主体間での負担・投資の考え方・留意点。(5)といたしまして,研究力の強化に向けた取組。まず,1の研究の幅の確保,2,若手研究者の確保と国際的流動性の確保,3が研究ネットワークの強化,4,研究インテグリティ・研究セキュリティの確保,5といたしまして,研究の適切な位置付けと便益を受ける主体間での負担・投資の考え方という形といたしております。
 2ページに行っていただきまして, 2ポツのほうでは大学に改革を求める内容をまとめていく形になりますけれども,3ポツといたしまして,国としての国大法人等への支援の考え方として,5項目案を示させていただいております。
 まず,(1)が社会情勢の変化を踏まえた運営費交付金等による支援,(2)といたしまして,第5期中期目標期間における運営交付金の算定の検討に当たっての視点,(3)地方の高等教育機会を支える国立大学への配慮,(4)大学の機能強化を促進するための施策,(5)として,政府を挙げた大学支援策の検討,こういった形で取りまとめをしてはどうかというふうに考えているところでございます。
 具体的に見ていただきますと,まず,3ページでございますけれども,1ポツの趣旨でございますけれども,ここはこの検討会の経緯と方向性を記させていただいております。国立大学法人,平成16年4月に全て法人化をしたわけでございますけれども,この法人化自体は明治期の大学の創設,昭和期の学制改革に次ぐ第三の改革とも言えるべきでございましたけれども,この第三の改革が適切に行われたかどうか,法人化後20年の状況を分析するとともに,課題や今後の改革に向けた論点について,本年1月に論点整理を行っていただいておりますけれども,そういった内容をまず記載してはどうかと考えております。
 続きまして,2つ目の丸でございますけれども,この法人化後20年の状況を踏まえた上で,社会の状況,後ほど触れさせていただきますけれども,多々変わっていく中において,国立大学法人におきましては,第四の改革を今まさに行わなければいけないという断固たる意志を,これは国,国立大学法人ともに持っていくことが必要ではないかというところを書いております。
 最後のところでございますけれども,この改革の方針,この検討会で取りまとめた内容に基づいて,第5期に向けた組織及び業務全般の見直し,また,運交金の見直しを具体化することを国に要請すると,このような形で内容を骨子としてはどうかと思っています。一応この趣旨のところに書いている内容も,論点整理の内容なども参考にしながら,座長と相談の上でたたき台として示させていただいているものでございます。
 4ページでございますけれども,2ポツのまず(1)2040年を見据えた機能強化の視点の明確化でございますけれども,下に青地の部分と赤字の部分とございますけれども,青字の部分は論点整理における関連内容を抜粋したものでございます。また,赤字の箇所につきましては,これまでのヒアリングにおきまして,委員の皆様からいただいた意見の取りまとめをさせていただいておりまして,この論点整備とヒアリングにおける関連御意見を基に,たたき台という形で示させていただいております。
 まず,1の社会の大きな転換点における大学でございますけれども,論点整理でも記述があったところでございますけれども,大きな社会の転換点にあるということで,デジタル社会の到来でございますとか,グローバル化を経た複雑な国際環境,脱炭素といった地球規模の課題の顕在化,こういった未だかつてない事象が顕在化しているというところをまず記載しております。また,その上でここは本日も御議論いただければと思いますけれども,ヒアリングの際にも論点整理を1月に取りまとめておりますけれども,それ以降の大きな変化といたしまして,グローバルな地政学的な変化の中に今あるという御指摘もいただいておりますので,こういった点を入れて,この1の社会の大きな転換点における大学に追加をしていくかどうか御議論をいただければと思っております。
 また,3つ目の丸でございますけれども,こちらも論点整理に記載しておりますが,今後の20年,これまでの20年とほぼ同じと考えることはできず,時代の転換点にあると認識を持つ必要があるということを記載しております。
 また,その下でございますけれども,その上で,国大法人等全体としてのミッションとして,1でございますが,不確実な社会を切り開く世界最高水準の研究の展開とイノベーション実現,変化する社会ニーズに応じた高度専門人材の育成,3として地域社会を先導する人材の育成と地域産業への貢献,これを国立大学法人等総体として,全体として果たしていく必要があるのではないかとさせていただいております。
 続きまして5ページでございますけれども,先ほどの国大法人等全体としての役割を踏まえた上で,各国立大学法人等においては機能強化を進めていただく必要があると考えておりますけれども,その際の留意点といたしまして,こちらも下の論点整理とヒアリングにおける御意見を参考に記載をさせていただいておりますけれども,まず,最初の丸にございますとおり,様々なステークホルダーとの対話を通じて明確にしていくことが必要ではないか。また,2つ目の丸といたしまして,一法人一大学だけで様々な役割を果たしていくことには限界があるということを踏まえまして,他の国立大学や公私立大学,研発法人をはじめとした研究機関との連携を通じて社会から期待される役割を果たしていくというような視点を持つことが必要であるということを記載しております。
 その次ですけども,5ページの一番下,(2)といたしまして,ガバナンスの抜本的強化をここに記載してはどうかと思っております。こちらの内容も,基本的には論点整理の内容を基に整理をさせていただいておりますけれども,まず,ガバナンスの抜本的強化に当たりましては,6ページのところにございますとおり,まず基本的な考え方として,単なる制度改革にとどまらず,国大法人等に関わる全ての関係者の意識改革,まず,これを進めていくことが必要ということを記載してはどうかと思っております。また,その上で2以降に続く話でございますけれども,人事,財務戦略を含む統合的な経営戦略の構築,また,これを実行するに当たっての学長のリーダーシップとともに,役員自身の担務に閉じた視点ではなく,経営全体を俯瞰しつつ責任を果たすという体制が必要ではないかということを記載しております。
 続きまして,2,機能強化に向けた経営戦略の構築でございます。まず,財務戦略の関係でございますけれども,論点整理でも記載がありましたとおり,まず,法人全体でどのような財務状況になっているのか,施設マネジメントの状況も含めまして,まずは各法人において法人内の財務状況の分析を徹底的に行うことが必要ではないかということを記載しております。その次の丸でございますけれども,その上で法人内の資源配分の必要な見直しを進めること,またそれに伴って規模の見直し,教育研究組織,事務組織の在り方等について検証を行うことが必要ではないかとしております。その下,こちらも論点整理で触れておりました附属病院の関係を記載しておりますけれども,附属機関としての見直しについては,また後述をさせていただいております。その上で,財務分析を踏まえた学内の財務状況の適切な周知を行っていくことが必要ではないかということもその下に記載しております。
 6ページの一番下でございますけれども,財務戦略の構築に当たって,事務の効率化は徹底をしていくことが必要だというところも記載してございます。
 続きまして,7ページでございますけれども,7ページは人事戦略の構築として,教育研究組織と事務組織,それを支える人事給与制度,業務及び職員の配置の見直しなど,人事給与マネジメントの高度化を図っていくことが必要であるということをまず記載させていただいております。
 また,人事給与マネジメントの高度化の際には,こちらも論点整理に記載していたところでございますが,アカデミックな業績だけによるのはなく,各国大法人等のミッションに応じた教育,産学連携,社会貢献,地域貢献など,必要な視点を入れた評価の仕組みを構築すべきではないかということ。また,時間軸を持ちながらも,研究への専念,教育への専念などの分業化,エフォートの重み付けも検討すべきではないかということを記載しております。
 また,その下でございますけれども,人事戦略を構築するに当たりまして,URAなど高度専門人材の活用が各法人で進んできているところでございますが,それ以外にも財務,経営企画,法務,人事,組織運営に必要なテクノロジー,IR等の専門知識や経営マインドを有する専門性の高い人材の活用について言及をしております。
 以上が人事戦略の箇所でございまして,続きまして,8ページ,3でございますが,規制緩和された制度の活用とさらなる規制緩和の推進でございますが,こちらも論点に書いておりました,規制緩和の活用状況などを参考に案をつくっているところでございます。
 2つ目にありますとおり,「知」の高付加価値化にまず各国立大学法人としては取り組む必要があるとした上で,産学連携ガイドラインに基づく成功報酬の設定でございますとか,共同研究の価値に応じた共同研究費の設定について取り組むこと。また,その下にございますが,大学発スタートアップ創出の関係を記載するとともに,また,こういった「知」の高付加価値化に取り組むに当たりまして,専門人材が重要な役割を果たしてまいりますので,そのことを8ページの一番下のところで記載をさせていただいております。
 続きまして,9ページでございますけれども,4,マネジメント体制の見直しでございます。マネジメント体制の見直しでございますけれども,最初の丸にございますとおり,時代の変化に的確に対応していくに当たって,組織内のマネジメント体制につきましても不断の見直しが必要であるということを研究しております。
 また現状,経営と教学の分離が可能になっておりますとともに,運営方針会議の設置なども可能となっておりますので,その関係も触れております。
 また,2つ目の丸でございますけれども,学長選考・監察会議や監事,また運営方針会議などの仕組みを使ってのモニタリングを行うとともに,その結果に応じて学長・理事長をはじめ役員の責任を明確にする仕組みを構築したらどうかということを記載させていただいております。
 続きまして,10ページでございますけれども,(3)機能強化の方向性に沿った組織の見直しといたしまして,まずは1,教育・研究組織の見直しでございますけれども,こちらも論点整理のところで記載がございましたが,国立大学法人における日本人学部学生の規模の縮小は避けられないというふうに考えておりますので,現在の学部の規模や組織の在り方についても,自らのミッションや機能強化の方向性について見直していくことが必要ということを最初に書いております。
 また,2つ目のポツで,高等教育へのアクセス確保という国立大学に期待される役割に鑑み,立地する地域において,そういった状況を考慮することが必要ではないかということ。また,その次でございますが,知の総和を向上するという観点からも,大学院修了の標準化を視野に入れた検討も期待されるのではないかということを記載しております。
 その下でございますが,こちらは留学生の関係でございますが,多様な留学生の受入れを増加させていくことも有効であること。また,その際には環境構築にかかるコストの観点も考えていくべきだということを記載しております。
 その下の丸でございますけれども,こちらは特にヒアリングで御意見があったと承知しておりますが,規模の見直しによって,1つの法人や大学の規模が極端に小さくなる場合には,学生1人当たりの教育コストがかかること,また,多様な教育の提供が困難となることから,一定の規模を確保するということも踏まえた検討が必要ではないかということを記載させていただいております。
 続きまして,11ページでございますけれども,2,附属組織の見直しの関係でございます。まず,当然でございますが,大学に附属する組織様々あるところでございますが,附属病院,附属学校と,財務経営上の規模の大きいところの2つにつきまして研究をさせていただいておりまして,まず,附属病院の関係でございますけれども,持続的な病院経営を実現するということが重要ではないかということ。また,大学病院の貸借対照表の作成など,資産状況の把握の在り方を検討し,将来の地域での医療需要を見据えた設備・施設投資計画を策定するなど,改革を促す様々な方策の検討が必要であることをまず記載しております。
 また,2つ目にありますとおり,様々な事情を考慮した上で,役割・ミッション・組織の在り方をいま一度整理することが必要ではないかということを記載しております。
 また,その下,附属学校の関係に移りますけれども,こちらにつきましても,改めてその設置の目的等に照らして,法人内及び関係者で検証を行うことが必要ということ。また,それに伴いまして,附属学校の数,種類,規模につきまして,法人のミッションや機能強化の方向に沿った方向で見直しをする必要があるということに言及をしております。
 12ページでございますけれども,3が再編統合・連携の関係でございます。こちらも論点整理におきまして,一法人複数大学とかの制度改正で行う状況はどうなっているか,まず検証を行うというところを書かれているところでございますが,幾つかヒアリングをしていただいた上で,一法人複数大学など,様々な連携方策を講じられていますが,それぞれの機能強化を図るという検討の結果として有効な選択肢になっているのではないかということ。また,今後につきましても,今ある強みをさらに強化する上で,クリティカル・マスを形成するといった観点を踏まえた上で,連携・統合の効果を見込む内容を具体的に示しながら議論を進める必要性があることに言及しております。
 2つ目の丸でございますが,こちらもヒアリングで御指摘がございましたが,都道府県を超えるような連携・統合につきましては,一法人複数大学,大学等連携推進法人という仕組みが有効ではないかということを,記載をさせていただいております。
 3つ目の丸でございますけれども,こちらも経営統合や連携などに限らず,一部の機能,例えば,ここに書いておりますのが産学連携,スタートアップ創出・成長支援機能,研究基盤設備や共通事務や各種システムの共用化の観点からの連携というのも大事ではないかということに言及をしております。
 続きまして,13ページでございますけれども,こちらから教育と研究のそれぞれの内容になってまいります。
 まず,教育の質の向上に向けた取組でございますが,論点整理で並べた項目と同じような形になっておりますけれども,まずは教育のグローバル化でございまして,最初の丸にございますとおり,国際競争力・通用性やイニシアチブを維持・向上できるような機能強化を図ることが必要であること。また,外国人留学生の受入れの拡大,また,それに伴う教育コストの適切な負担というところを言及しております。
 14ページでございますけれども,まず,博士等の高度人材の育成でございますが,博士人材の社会的評価の向上と認知の拡大を進めること,博士課程における教育研究を社会のニーズの変化を踏まえて戦略的に変革していくことが重要であることに言及しております。
 3が社会に開かれたリカレント教育の実施でございますけれども,リカレント教育に必要なリソースや魅力的な環境を確保し,適切な人的,物的,資金的リソースの提供と受益者のコスト負担を求めることで,持続的な体制の構築を進めていくことが必要とさせていただいております。
 なお,教育と研究の箇所でございますけれども,冒頭も説明させていただきましたとおり,国立大学法人全体の役割を踏まえて,機能強化の方向性というのを各大学で決めていただく形になりますので,必ずしも全ての大学において求められるわけではないということには留意を払う必要があるかと思っております。
 4は教育の質向上に向けた大学間の連携でございます。こちらにつきまして,先ほど連携・統合で経営統合等の話も言及しているところでございますけれども,ヒアリングの中で,委員の皆様方から御意見ございましたとおり,より多様な教育プログラムを各国立大学で提供できる仕組みを整えることが必要ではないかということ。そのためにも,各大学において,他大学と連携して,より多くの教育コースを提供していくことも期待されるというふうにさせていただいております。
 15ページでございますけれども,最初のところは先ほどと同様の視点でございますが,それ以外にも地域の人材育成インフラのハブとしての国立大学の役割に期待とさせていただいております。
 5でございますけれども,教育の適切な価値付けと便益を受ける主体間での負担・投資の考え方・留意点でございますけれども,点線の囲みにしていただいているとおり,本日御議論をいただくことを前提に論点としてまとめさせていただいております。まず,教育や社会貢献について,投資の側面があることを明記しておくことが必要と考えますが,これについてどう考えるか。また,投資の効果を具体的かつ多様な形で便益を受ける主体や社会に示し,適切な価値付けを行っていく意義について理解を得ていく必要があるのではないか。また,それを踏まえまして,コスト増の要素をゼロにするということは難しいわけですけれども,価値付けを行うに当たっては,当該活動の維持・活性化に対する必要性への納得感と丁寧な説明が重要ではないかというふうに考えておりまして,こういった論点に基づきまして,どういった内容を記載していくかということを本日御議論いただければと思っております。
 16ページ以降でございますけれども,まず,(5)研究力の強化に向けた取組でございますが,こちらも論点整理における項目にのっとって整理をさせていただきます。まず,最初は研究の幅の確保でございますが,これは現状分析等でも明らかになったところでございますけれども,スモールアイランド型でございますとか,研究の多様性の確保の観点が,スモールアイランド型の研究が少ないというような状況も出ておりますので,研究の多様性確保の観点から,多くの分野への積極的な投資が必要ではないかということ。また,新たな学問分野や融合領域に迅速に対応する研究体制が必要ではないかということ。それ以外にも,大学や大学共同利用機関同士,他機関との連携の形成・拡充を図って取組の多様性を確保する必要があるのではないかということに言及をいたしております。
 続きまして,17ページが若手研究者の確保と国際的流動性の確保でございまして,まず,最初にありますように,各法人の機能強化の方向性に沿って,教育研究組織や教員配置の見直しを進めることが必要であること。その上で,2つ目の丸にありますとおり,若手研究者への支援強化や処遇改善,また,若手研究者に対する挑戦の後押しが必要ではないかということ。3といたしまして,国際ネットワークの強化でございますとか,企業研究者,若手研究者,女性研究者など,多様性に富んだ研究環境の構築が必要ではないかというところを記載しております。
 続きまして,18ページでございますけれども,研究ネットワークの強化といたしまして,主に大学共同利用機関,共同利用・共同研究拠点につきまして言及をしておりまして,これらの拠点について最先端の研究を行うことができる場としての機能強化をより一層進めることが必要であること。
 また,2つ目にありますとおり,大学共同利用機関につきましては,機能強化の在り方をまず検討していくことが必要だということと,共同利用・共同研究拠点につきましても,その在り方や機能強化等をそれぞれ検討することが必要であることを記載しております。
 また,3つ目のところでございますが,大学共同利用機関法人のリーダーシップの下,先端研究大規模集積・自動化・自律化・遠隔化等を図ることが必要ではないかというところを記載しております。
 続きまして,4の研究セキュリティ・研究セキュリティの確保の関係でございますが,論点整理で特に言及はなかったところでございますけれども,またちょっと相談をさせていただきまして,今後の国立大学法人等の改革を考える上に当たって必要な事項になるのではないかということで,項目として追加をさせていただいております。
 ここは1つ目にありますとおり,経済安全保障とオープンイノベーションを両立していくことがまず必要であること。その上で,19ページでございますけれども,研究セキュリティと研究インテグリティの確保に係る取組の高度化を引き続き進めていくことが必要であるということを記載させていただいております。
 5は,先ほどの教育の関係と同様でございますが,研究の適切な位置付けと便益を受ける主体間での負担・投資の考え方・留意点としまして,先ほどの教育と同様の点を記載させていただいておりますので,御議論をいただければと思っております。
 続きまして,20ページでございますけれども,3として国大法人等への支援の考え方でございます。こちらも本日主に議論いただきたいというところで,点線で囲ませていただいております。
 まず,(1)の社会情勢の変化を踏まえた運交金等による支援でございますけれども,現下の状況におきまして,物価や人件費が上昇する中で,運交金による支援の必要性について言及してはどうかということ。
 また,(2)の第5期中期目標期間における運交金の算定の検討に当たっての視点でございますけれども,2つ目のポツにありますとおり,こちらは検討会でも委員の先生から御指摘があったところでございますが,運交金の積算に当たっては,過去の経緯によるところが多く,国としてどのような機能に対して支援するのかというのは不明瞭というところもございます。このため,第5期中期目標期間における運交金の算定ルールの基本的考え方をどのように考えていくか。
 また,その次でございますけれども,第4期の中期目標機関におきましては,組織改革を促進する仕組みを運営交付金の配分ルールの中に入れ込んでおりましたけれども,この仕組みにつきまして,さらに踏み込んだ組織改革を計画的に進めるための評価と配分の在り方についてどう考えるかというところ。また,(1)とも被りますけれども,物価や人件費が上昇する中で,教育研究活動の安定性・継続性を確保する観点から,どのような工夫が考えられるかというところを論点として議論をいただければと思っております。
 また,(3)でございますが,地方の高等教育機会を支える国立大学への配慮といたしまして,冒頭,国立法人等全体として果たす役割を記載させていただいたところでございますが,地方という視点を踏まえた上でどういった配慮が考えられるかということも,御議論いただければと思っております。
 (4)が大学の機能強化を促進するための施策でございますけれども,こちらも論点整理でございますとかヒアリングでも御指摘をいただいたところでございますが,競争的資金や教育関係の補助金におきましても,その目的に応じて大学等の改革を加速する仕組みを入れることの必要性に言及したらどうか。また,萌芽的研究は研究力の源泉として不可欠でございますけれども,こういった研究を支えるという観点から,どういった予算の枠組みで支援することが適切かの議論をまず行うことが必要ではないか。また,その上で国立大学は研究のハブとしての役割を果たし,特に期待される大学につきましては,ネットワーク強化を率先して行うということに言及してはどうかというふうに考えておりまして,こちらも論点として御議論をいただければと思っております。
 また最後,(5)政府を挙げた大学支援策の検討でございますけれども,こちらも論点整理で書かせていただいておりますが,人材育成や研究成果の社会実装という分野ごとの課題を念頭に,文部科学省以外の省庁との施策の連携の指定を持つということに言及してはどうかというところを論点として記載させていただいておりまして,こちらも本日御意見をいただきまして,それに基づきまして,またこちらでたたき台を作成していければと思っているところでございます。
 長くなりましたが,私からの説明は以上でございます。
【相澤座長】ありがとうございました。それでは,これから,ただいまの説明も踏まえた上で議論に移りたいと思います。いつものように準備が整った方から名札を立てていただいて,ウェブで御参加の先生は挙手のボタンを押していただくという方式で進めたいと思います。これから御意見を伺いますが,その御準備も含めて,これからしばらくどういうところに御意見を伺いたいかということを申し上げたいと思います。
 資料を共有していただいて,先ほどの1ページ目を出していただけますでしょうか。1ページ目をお願いします。これが,これからまとめていく改革の方針の骨子であります。それで,この骨子が3つの大きな項目でまとめられております。1つ目は趣旨です。2つ目が,今後の国立大学法人等の機能強化に向けた改革の方向性というところで,これが5項目に分かれております。この中で,先ほどの説明の中に,点線で囲ったボックスに入っている部分,そこがまだ十分に御意見を伺ってないところなんです。それを具体的なところで言いますと,1ページ目の(4)の5,教育についての具体的な留意点,それから,(5)の5,研究についての留意点,こういうようなところがまだ十分に御意見を伺ってないところなので,本日はこの2つのところをまず御意見をいただけますでしょうか。
 それから資料,次のページにしていただけますか。この3ポツのところは,今までのところをさらに進めて,この検討会から提案していくような内容のものであります。国立大学法人等への支援の考え方ということで,ここが具体的なこととしては極めて重要なパートになります。それが5項目に分かれております。こういうような5項目について,それぞれこの検討会から積極的な提案をしていきたいと考えております。
 こんなようなことで,本日は,ただいま申し上げたようなところを中心に御意見をいただきたいと思います。もちろん全般について,あるいはそのほかのところについて触れていただくのは大歓迎であります。御準備はいかがでしょうか。それでは,御発言の方,名札を出したり挙手のサインを出していただければと思います。どなたからでも結構ですので,よろしくお願いいたします。樫谷委員,どうぞ。
【樫谷委員】ちょっと分からないところがあるんで,御質問したいと思います。今後の国大法人等の機能強化に向けた改革の方向性と,こういうことだと思うんですが,我々の世界では,何をやりたいのかということがあって,そのためにどういうふうに機能強化をするかということが当然議論されていくわけです。じゃあ機能強化するためにどうすればいいんだという格好になっているんですけれども,機能強化しろと言ったときに,この機能強化の方向を決めるんですが,何をやりたいか分からないのに機能強化ってできるものですかということが,ちょっとこれを見ていて疑問になったということで,何かそこについて私の思い違いがあれば言っていただければいいと思います。
【相澤座長】これは今までこの検討会で議論してきた内容を振り返っていただくと結構だと思うんですけれども,まず,国立大学法人等が置かれている現状分析をいたしました。そこで数多くの課題が提示されてまいりました。それは基本的には全て機能強化をしていかなければいけないということを示しているわけなので,ですから,何をどういう方向に向かって検討していくのかということはこの議論の中に織り込まれております。ただ,各大学がそれをやるんだというだけではこの検討会ちょっとミッションが足りないので,この検討会ではそれを進めるためにはどういう支援の仕方があるかとか,そういうようなことになってまいりますので,課題は何かという全体的なところは描かれてきたと。さらにそれを進めるのにはどうしたらいいかというのが今日出てくるようなところで,具体的に,むしろ検討会から提起するという位置づけになっているということで,いかがでしょうか。
【樫谷委員】先生おっしゃっているのはよく理解はできるんですが,ただ機能強化をしろと大学法人に言っているわけですよね。ということはもちろん全体的な観点からも必要かも分かりませんが,自分が何やりたいんだというところがまずないと,きっと機能強化といっても,つまりこういうことをやりたいんで,こういう機能を強化したいというのが普通なので,機能強化のメニューを示すのはいいとしても,少し私は何となく抽象的過ぎて,これを見ても非常にメニューたくさん書いてあるので,逆に親切過ぎるのではないかなというふうに思うぐらいでね,大学なんだから自分で考えろと,ましては国立大学なんだからというふうに私個人的には言いたいということで,ちょっと言い過ぎかも分かりませんが,すみません。
【伊藤高等教育局長】失礼いたします。まさに御指摘のとおりでございまして,最終的にはもちろん個々の大学が自らどこを強化するのかというのは考えなければいけないんですが,全体として今の資料のほうでいきますと,4ページ目のところでございますけれども,まさに2040年を見据えた機能強化の視点の明確化というところなんですが,白丸の4つ目のところで国立大学法人等全体としてのミッション,これは逆に言うと各法人が勝手に考えるのではなくて,やっぱり国立大学法人というもので,国が何をしていきたいのか,何を目指すべきなのか,これを3つ,3つに限られるわけでは当然ないわけでございますけれども,大きく3つ,まさに不確実な社会を切り開く世界最高水準の研究の展開とイノベーションの実現,変化する社会ニーズに応じた高度専門人材の育成,地域社会を先導する人材の育成と地域産業への貢献,こういう大きな3つを国立大学法人制度のミッションとして掲げつつ,その次の2になってくるわけでございますけれども,それを全法人がこの3つを目指すというのではなくて,やはりそれぞれの大学の置かれている状況と,自分たちの強みというものをよく現状分析をした上で,目指す方向というものをしっかり定めていきながら,めり張りの効いた改革をしていく。そのためにどういうような視点が必要で,どういう支援が必要なのかというような全体構成を考えているところでございますので,国が,おまえの大学はこれだという形ではなく,あくまで大学の自治を踏まえつつも,そこのところははっきりさせないと,結局何も成果が出ないようなものになってしまい,社会からもある意味見捨てられてしまうのではないかというような危機感を持って,今までいただいた御議論を踏まえてこのような形にさせていただいているところでございますので,また,引き続き御意見を頂戴できればと思っております。
【樫谷委員】自分で1,2,3の中の,全部かも分かりませんが,これを自分で考えてやれということですよね。それでいいですね。
【伊藤高等教育局長】おっしゃるとおりでございます。そこは大学と,大きな改革方針を出してもらったら,じゃあこれを踏まえてうちの大学はどういうふうにこれから改革をしていくのか,そして何を目指すのかというのを明確にしてもらいながら,それを我々はしっかり支えていかなければいけないですし,ちょっと違うのではないかということであれば,対話の中で,おたくの持っている今の強みから考えて,この方向性は違うのではないですかということもこれからしていかなければいけない。その出発点として,この報告というものを改革方針という形でまとめていただければと思っております。
【樫谷委員】理解はできました。ただ,そういうことを個別の大学がしっかり打ち出さないと,やはり例えば,経営陣だけが打ち出しても駄目なので,組織挙げてやらなきゃいけない。そのための意識改革をしっかりしなきゃいけないんですよ,先生方も職員の方も含めて。そうすると,やっぱりそこは全部で議論して出していかないと,なかなかうまくいかないということなので,ぜひ意識改革についても,ちょっと研究してればいいと,あるいは教えていればいいと,それはそうなんですけど,そこだけではないなという。つまり,今,改革をしなきゃいけない時期なんだなという意識を,先生方あるいは職員の方に持っていただくことが大事なのかなと。また,企業の改革なんかやっていまして,やはり意識の改革が非常に重要だったので,そのために,意識改革するためには,やはりミッションを明確に皆さんが理解していかないとできないんですよ。そこがどうなっているのかなということで,すみません,余計なことを聞いてみました。
【伊藤高等教育局長】いえいえ,ありがとうございます。全く御指摘のとおりだと思ってございまして,6ページ目の一番上のところはあえて単なる制度改革にとどまらずに,全ての関係者の意識改革を進めていくことが必要だというのを,これまでの御意見を踏まえてむしろ強調をさせていただいて,今までの大学改革とか教育改革全般なんですが,制度を変えれば何か改革ができたというような感じになってしまうんですけど,そうではないんだということを強く少し報告の中に入れさせていただいたところであります。
【樫谷委員】文科省,役所の悪いところですけど,制度さえ変えれば何とかなると思っているのが間違いだと思いますね。
【相澤座長】ただいま御指摘の点は,この検討会の初めの頃に随分議論があって,大学が置かれている在り方そのものが,大きな時代変化で揺らいできているんだと。そういう時代変化,それを十分に認識してということをずっと書いてある。趣旨のところからつながっているのはその姿勢で,検討会としては,各国立大学法人に呼びかけているわけです。それに基づいて何が課題かとか,何がミッションかとか,そういうようなことも展開されてきているので,それ以上個別に,さらにディテールを各大学に押しつけるような姿勢は全くないというところが,この検討会の多分,委員の皆さんも共有されているのではないかというふうに思います。
 それでは,そのほか御意見いかがでしょうか。
【平子委員】平子ですけれども,よろしいでしょうか。
【相澤座長】平子委員,失礼しました。どうぞ。
【平子委員】リモートで失礼します。4ページに国立大学の1,2,3のミッションを明確に書いていただいたことはよかったです。ただ,3つを同時にやる大学はあまりないと思いますので,各国立大学は、自分の大学のミッションはどれだろうと考えることになりますが,とにかく同床異夢にならないことが肝要です。各大学が,これから先,どのようなアクションプランに落とし込むのかということが分かるようにすることが必要なのではないかと思いますので,何らかの方向性を持てればいいと考えます。
 そこで,このドラフトに対していくつかコメントさせていただきます。1つ目は,9ページにあるマネジメント体制の見直しが非常に大事だと思っています。ここに「全ての国立大学法人が経営と教学の分離を明確にする組織体への転換を指向する」という記述があります。ここを徹底しないと国立大学は大きく変わっていかないのではないかと思うわけで,そのためにどうすればいいのかを考えるのがポイントです。
 例えば,運営方針会議の設置は現在一部の大学に限られておりますが,これを全ての国立大学に適用するような仕組みにするのはどうか。規模の小さい大学が多くありますから,東海国立大学機構のような法人の連携・統合を参考にしてもよいのではないかと思います。
 もう一つ大事なことは,学長と理事長のサクセッションプランです。現在は学長選考・監察会議がありますが,プロセスをより明確あるいは透明にする観点が必要ではないかということです。適所適材という観点から,場合によっては学外から,あるいは法人外からの登用というのも可能にするようなダイナミズムが必要なのではないかなと考えます。
 10ページの教育・研究組織の見直しの中で,これから先15年で,18歳人口が3割減少し,それ以降も減少し続けるという状況に鑑みますと,法人の連携・統合は不可避なことは,全大学が考えなければならないことだと思います。「国立大学においては学部卒業ではなくて大学院修了の標準化を視野に入れた検討」という記述がありますが,これが適用されるのは首都圏や近畿圏の一部の都府県など,多様な私立大学が多く存在して,学部教育を中心に多様な教育機会が提供されているような地域であって,逆に地方の大学は大丈夫かと思います。
 例えば,ドイツは学士号を取得するのに4年かかったところを,3年にするといった改革を行い,これによって就業時期の早期化を図って成功したと言われています。あるいは2月の答申でも学士・修士の5年一貫教育が検討の俎上に上がっていますので,修学期間の短期化を地方の大学を中心にやってみてもいいのではないかと。大学のコストの削減もできます。
 それから,今,トランプ政権で起きている高等教育に対する逆風に対して,日本も高度人材を受け入れるべきではないでしょうか?最近内閣府のプレスリリースも出ましたが,日本も国立大学を中心として,教職員と学生の国際化を一気呵成に進めるべきではないかと考えます。これに,大学ファンドを活用するという案がありますが,そうすると国際卓越研究大学,あるいは博士課程の修学支援に絞られます。私立大学も対象になりますので,対象の大学を広げられるような枠組みづくりができないのだろうかと考えます。
 17ページの若手の研究者の確保と国際流動性の確保も大事なことです。若手がこれから先,教授を目指さなくなってしまうことになってくると,高等教育の持続性という観点から大きな問題になりますので,今ある教授を頂点としたヒエラルキー構造を,よりフラットにしなくていいのか,あるいは若手研究者の創意とか自律性を引き出す仕組みがもっと必要なのではないか。すなわち,より柔軟な組織にすることによって,若手だけではなく女性,あるいは外国人の研究者が活躍できる場が増えれば,多様性・国際流動性の向上に資するのではないかと考えます。
 以上が機能強化に関することですが,もう一つ申し上げたいのは,国立大学法人の支援に関して,です。運営費交付金をどうするのかという問題は,機能強化により大きく焦点を当てるのであれば,幾つかのキーワード,例えば,「連携・統合」「産学連携」「マネジメント体制強化」「教育・研究体制の改革」「国際化,あるいは学生の多様化」「学生のエンゲージメント」,このようなキーワードに関係するタスクにKPIを設け,これを大学の中期的な計画の中で,学長がコミットメントという形で開示する。このようなことができた大学に対して,文科省も深く関わりながら運営費交付金を傾斜配分することはできないのかということです。
 21ページの,企業との関係性について,人口減少とAIの飛躍的進展は今後避けられない状況の中で,企業の研究機関と大学との連携を促すような税金の体系の在り方は,経産省と財務省を巻き込んで構築していくことが大事なのではないかと思います。
 各大学が自ら考えてアクションプランに落とし込めていけるような観点から,多々耳ざわりな点もあったかもしれませんが,あえて申し上げた次第です。以上です。
【相澤座長】ありがとうございました。重要なポイントを指摘していただいたと思います。
 文部科学省から何か。ただいまたくさんの項目を指摘されましたけども,何かここで対応していただけることはありますでしょうか。井上課長,どうぞ。
【井上国立大学法人支援課長】大変ありがとうございました。まさに議論いただいてきたところのリマインドと,あと書き足りていない部分,サクセッションプランのところなんかはちょっと書き足りてなかったなというふうに気づかされましたし,また,この会議を超えて,またそれを受けて我々はさらにデザインする運営費交付金のところについても御示唆をいただきました。恐らくその辺りについてはほかにいろいろ御意見もあると思いますので,ここに盛り込むべきことというのを今いただいた中でたくさんございましたので,改めて整理させていただきたいと思います。
【相澤座長】それでは,次にまいります。川合委員,どうぞ。
【川合委員】大分まとまった形で原案をつくっていただきまして,ありがとうございます。
 4ページのところの国立大学総体としてのミッションを書いていただいたのは大変いいと思います。何のために国立大学があるかという,いつも振出しに戻る議論があったのをこういう形で整理いただけると,議論の仕方が分かると思います。
 そして,もう一つ私が今回の新しい形を考えていただいたかなと思っていますのは,5ページの2番目の丸の記載です。今までは大学間での競争を煽る施策が多かったところ,国立大学や公私立大学,国立研究開発法人をはじめとした研究機関との連携を通じて機能を強化するということを明記していただいたことです。大学間での連携を強めることで,国立大学総体としてのミッションを成し遂げていこうという方向性が示されたのは非常に分かりやすいと思います。
 先ほど平子委員からは,18歳人口がどんどん減っていくので大学を減らす方向のお話がありましたけど,先ほどのミッションに照らしますと,社会ニーズに応じた高度人材の育成というミッションに鑑みて,我が国で産まれる人だけではなく,本当に必要な人材を育成して世に送り出していくミッションが国立大学に課せられたというふうに私は読み取りました。
 その上で, 10ページに日本人と留学生が一体感を持って学べる場所,要するに国内にいても国際感覚がちゃんと培えるような環境を整えましょうという宣言がされているのも大変いい方向だと思います。
 他にも細かいところを含め多くの視点が盛り込まれていて,アブストラクトは大変いいと思います。最後のところの国立大学法人への支援の考え方というところに少し触れたいと思います。(1)の社会情勢の変化を踏まえた支援のところですが,現在の物価の高騰はかなり深刻でして,現実的に毎年5%上がると中期目標の1期6年間の間に3割も物価は上がります。これを無視しては目標達成を語ることもできないでしょう。この点を明記していただき,問題の本質に言及していただいたことは大変良いと思います。人件費は物価と連動しているはずなので,物価連動で物事を考えれば,人件費のところにもちゃんと返ってくると思います。物価に連動して予算額を考えるという記載でよろしいと思います。いずれにしても絶対額で予算を考えることの理不尽さには言及すべきだと思います。
 その上で(2)第5期中期計画,そして中期目標期間における算定の検討に当たっての視点というところですけれども,(1)のところの視点は入れた上で,じゃあ基本となる予算額をどう考えるかという点について提案がございます。平子委員が先ほど言及されましたが,各法人それぞれの強みを伸ばせる考え方を入れる必要があるでしょう。現状では機関の運用できるお金があまりにも不足していて,独自の施策ができなくなっていることが非常に問題だと思います。機関独自の施策全てを運交金のみで実行するのは難しいとは思いますが,何らかの指標を設けてそれぞれの機関の強みを強化することを考えてはいかがでしょうか。その際に,機関ごとに指標となる点を明記して,それぞれのKPIの達成具合を調べるというのも1つの考え方ではありますが,評価される側もする側にも多くのロードがかかります。もう一つの考え方としては,公的資金を含めた競争的な外部資金額を一つの指標とすることもできるでしょう。取得する外部資金の内容から,各機関の強みを読み取ることができます。外部資金とのマッチングをするような形で,運営費交付金を追加することで各大学などの機関の強い部分に関連して財政を整えることができるのではないかと考えます。個別の評価をする上では,効率的な評価方法を組み合わせることが必須です。評価指標はシンプルにすべきという思いがございます。ということで,運営費交付金算定の検討に当たっての論点の1つとして,物価対応と,それから,外部資金に見合う何らかの追加措置を運営費交付金の考え方の基本に組こみ,そして,それを通して法人の財務を安定化させることが必要です。運営費交付金の単年度会計の考え方の基本は堅持したとしても,必要額を数年度の会計にシフトできると,年度ごとの凸凹な財政基盤を各法人の中で平均化して執行することが可能になり,計画的な資金運用に寄与できると思います。勝手なことばっかり言っているように聞こえるかもしれませんが,現実的には非常に効果があると思っております。
 21ページの大学の機能強化を促進するための施策というところも同様に,様々な補助金の間接経費を効率よく運用することによって,内在する財政をより長期的な視点を持って運用することが可能になり,そういう財源にすると実質的に各法人の機能を強化することに寄与できると思います。
 その他のところについても後ほどまとめた形でご意見させていただけると幸いです。
【相澤座長】ありがとうございました。特に運営費交付金の視点をどう捉えるかというところで,重要なことを具体的に御指摘いただきました。
 ただいまのところまでで,文科省から何かありますでしょうか。
【井上国立大学法人支援課長】大変ありがとうございます。この近年の物価,人件費の上昇を踏まえて対応というところで,非常に我々も課題を感じてきておりますので,まさに今いただいた御指摘やヒントを基に,足元での要求だったり,また新しい仕組みであったりというところでしっかり進めるように,この方針の中でも書き込んでいきたいと思います。
【相澤座長】その際に,そういう諸般の事情が緊迫化してきていて,そのことに反映して,運営費交付金を今までの扱い方ではなく,何かプラスアルファとしてアディショナルに加えていくということを主張していける根拠というものが,どうでしょうか,どういう位置づけとされているか。
【井上国立大学法人支援課長】全体的な総量みたいなものは,多分大学としては,やはり増やしてほしいというお気持ちが大変たくさんあると思いますので,そういうところを具体的に本当にどういう投資を,ある意味得られるか,国から得られるか,社会から得られるかということで,今回いただいた中に随分多くの論点が含まれておりますので,それをしっかり実行して見せながら,やっぱりより投資を得られるようにというところでやっていければと思います。
【相澤座長】今回の運営費交付金に対応することで,3ポツのところの(1)と(2)という2つの軸で運営費交付金対応をしようというわけです。ですから,(1)のところで,そこでここのところに書き込んでいって,十分にそれが説得力のあるような形にするということで,今のような状況でよろしいでしょうか。もう少しそこのところ,強めに説得力のあるような形に案を強化していくということが必要ではないかというような意味を込めてなんですが,いかがでしょう。
【井上国立大学法人支援課長】恐らくそこのところは先生方の中でさらに意見をいただけそうな先生方もいらっしゃいますので,伺って知恵もいただきながらと思います。語調を強くすれば増えるというものでは全くないものでございますから,気持ちはすごく受け止めつつ,やっぱり考え方ですとかエビデンスとかそういったものもセットでということになろうかと思いますけれども,ただ,厳然として物価上昇,人件費の上昇というのはありますので,そこはいずれにしましてもしっかり書くということで,あとはもう少し御意見いただきながら,ちょっと知恵をつけたいなというところでございます。
【相澤座長】いかがでしょうか。
【矢野文部科学審議官】文部科学審議官です。国大交付金については,初等中等教育の予算と違って,初等中等教育の人件費については人勧見合い,教員給与が減るときは自然に減って,増えるときは人勧見合いで例えば600億ぽんと増えたりするのですが,国大交付金の場合は,デフレの局面でも減らないし,インフレの局面でも増えないと。ですから,何もやらなければ多分増えないということで,ただ御指摘のとおり賃金も今上昇して,物価も上がって,しかも人勧がこなせてないところがかなり出ているというような現状認識であります。
 それで,先ほど数を減らしてとかいうのもありましたが,認識としては進学率,残念ながら先進国の中ではまだ決して高いほうではないという,むしろ大学院まで含めてもっと増やしていかないといけないというのは御指摘のとおりだと思います。次官も私も伊藤局長も全員学士で,多分ヨーロッパに行けば,こういうことは恐らくグローバルスタンダードとしてはあまりないということから考えると,量的にも減らす,もちろん減らせるところはなくはないと思いますけれども,あんまりそれを最初から考えるのは私はどうかと思います。
 ということで,先ほど平子委員から,アライアンスを組んで配分を考えたり税体系も考える,こういうのも1つやっぱり考えていかないといけないだろう,そういう時期に来ているということと,マイナスばっかりでは恐らく予算は増えない。私は給特法等,あるいはGIGAスクール構想等,最前線で取り組んできた者として,予算がなぜどういうときに取れるかというのを学んできた者としては,一皮二皮むいて,戦略的にやらないと取れないのは間違いない。
 それで,お知恵を拝借というのはありますけれども,最後は各省等とのアライアンスの中でどういうことが打ち出せるか,それはぜひ,初等中等教育のほうは一段落ついたというのもございますが,高等教育行財政,こちらのほうが今,大変問題,課題だという認識を持っておりますので,ぜひ先生方の御支援を受けながら取り組みたいというふうに思います。以上です。
【伊藤高等教育局長】1点だけ,すみません。今まさに矢野のほうから,文科省として絶対ここはというような決意を表明させていただいたところでございますけれども,お手元の参考資料というので,分厚い資料の一番後ろに参考資料6という2枚だけの紙,分厚い資料ではなくてさらにその下に置いてある2枚紙なんですけれども,こういう資料でございますけれども,これは先般閣議決定をいたしました,いわゆる骨太2025というものと,新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画という両方とも閣議決定文書でございますが,ここのところをちょっと御参考に御紹介をさせていただければと思ってございます。
 まず,骨太2025の1枚目でございますけれども,右のほうのやや下,中段より少し下のところでございますが,研究の質を高める仕組みの構築の中で,「物価上昇等も踏まえつつ運営費交付金や私学助成等の基盤的経費を確保する」という形で,従来の骨太では,必要な運営費交付金を確保するという表現は入っていたんですが,それは仕上がりの金額が必要な額ですというような形で同額の確保が目いっぱいだったところでございますけれども,今回,今の状況も踏まえて,物価上昇等も踏まえつつという文言を閣議決定で入れさせていただくことができました。これは中教審の前の答申とか,ここでの議論というものもしっかり反映をしながら,関係省庁とも調整の上,協議の上,この文言を入れられたところでございますし,もう1枚おめくりをいただきました新資本主義のグランドデザイン計画のほうでは,今,矢野のほうが申しましたように,本来的に運営費交付金は義務的経費ではなくて政策経費ということですので,物価が上がろうが絶対にそれとは連動しないよという形が今までだったんですけれども,左のほうの上から7行目,8行目のところでございますが,「取り分け,義務的経費の物価上昇分については,予算編成過程において的確な対応を行う」。この次が重要でございまして,「国立大学法人運営費交付金についても,現場の実情を踏まえて適切に対応する」。つまり,義務的経費ではないんですけれども,準じたような形でしっかり対応するという形が,今回1つ明記をされました。
 さらにこの右側の下のほう,5のところでございますが,ガバナンス強化と一体となった基盤的経費・競争的研究費の確保ということで,「人事給与マネジメント改革等の実施とあわせて,近年の物価・人件費の上昇等も踏まえつつ,科学のフロンティア開拓及び我が国の研究力強化のため,運営費交付金等の基盤的経費を確保する」という文言が閣議決定で入れることができたところでございます。
 当然世の中の物価が上がったので,自動的に何でも上げるよということではなくて,しっかり改革を行った上で,こういうフロンティア開拓や研究力強化のためということで,これがまさに国民の理解を得る改革も大学自らするから,その分の投資というものをしっかり増やしていくんだというようなことではございますけれども,まず,夏の時点ではこの文言は入れさせていただいたところでございますが,ここの文言を入れたから自動的に予算がつくわけでは全くございませんので,これも踏まえて,この報告をしっかりまたより力強い報告で後押しをしていただきながら,省を挙げて年末の予算獲得に向けて動いていきたいということで,ちょっと事務的な補足でございますけれども,説明させていただきました。
【相澤座長】補足どころか大変重要なことを明確にしていただきました。この姿勢がきちっと文科省で,しかも閣議決定されたということは極めて重要なことではないかと思います。ぜひこれに後付けになるような,強いコメントをこの検討会としても出していきたいと思います。
 運営費交付金のことについて,森田委員,何かコメントを。
【森田委員】そもそも運営費交付金というのは独立行政法人制度を作ったときに,基本的な経費というものを積み上げて配分するのではなくて,一定の枠で配分する。その代わり中の使い道は御自由ですよという趣旨で始まったもので,これは申し上げるまでもないと思います。
 国立大学法人の場合にはそれが一定の割合で削減がかかってきたので,ここでも大分御批判があったところですが,あのときの議論といいますのは,私の記憶が正しければ,これまで国立大学はお金がない,90年代に予算がだんだん減らされてきたわけですけれども,しかし,かなり無駄があるではないかという議論がありました。そのときに,なぜ無駄が出るかというと,国立大学は法律,ルールでもってかなり縛られている。それに従わざるを得ない以上,無駄が出てくるんだという反論になったわけです。それを外すためには,枠としてお金がつくけれども,それをどう使うかはそれぞれのところで考えるのがよい。そうすればかなり効率化が進むのではないかと,そういう考え方があったということです。
 何を申し上げたいかといいますと,この運営費交付金自体はどういうふうに配分するのかというときに,私の記憶では、最初から明確なルールはなかなか決められなくて,それまで配分していた予算をベースにして行いました。しかもその中で,かなりの部分を人件費が占めていたものですから,承継職員の方の人件費については,そのままの枠だけですと大変な規模になりかねない。もしその部分を,大学の裁量でどんどん増やしていくということができるということになりますと,人事管理そのもの,給与決定も法人でできる以上,その分を運営費交付金で負担するというのは無理ではないか。そのために,よく言われますのは人件費の部分だけ別にして、点線が引かれた形で運営費交付金というのが決まったということです。したがって,その場合の総枠というものは,実際には,多くが人件費で占められ,使途も含めてですけれども,自由度が結局失われてしまったのではないか。そこに削減がかかったことから,いろいろ問題が出てきたと思います。
 そういう経緯は経緯としてありますし,それが今の状態になっておりますので,これからここに点線の囲みの中で書かれているように,大きく基本的な考え方を整理して変えていくという場合も,当然激変緩和措置といいましょうか,弾力的といいますか柔軟に変えていく必要はあると思います。けれども,私自身思いますのは,なかなか多い少ない,何を基準にそういえるのかという議論を,現状をベースにしてもあまり生産的ではないと思っております。その意味でいいますと,やはり一定の安定した額で予測がつくような形で金額を決める。もちろん先ほどからお話がございましたように,物価上昇とかその他の部分は係数としてかけていくということが必要と思いますけれども,そうした形で一定の額を決めていくというやり方に接近していくのが望ましいのではないかと思います。
 参考になるのが,例えば地方交付税の場合です。地方交付税の交付金も,そういう形で決まっているはずです。実際には状況の変化によって、係数が変わってくる場合もあろうかと思います。それでも,いずれにしましても,受け取る側の予測可能性が高まるような形での配分のルールというものを検討していく必要があると思っております。
 そのときに当然できるだけ多くをというのは,相澤先生もおっしゃいましたし,期待として出てくるのは当然だと思いますけれども,その場合に1つ言えますのは,その前の教育と研究のところに関連して,ついでですからちょっと言わせていただきますと,(4)の5と(5)の5ですけど,両方とも教育と研究は,冒頭は違っておりますけれども,「適切な価値付けと便益を受ける主体間での負担・投資の考え方・留意点」というのは共通しておりまして,私も述べさせていただきましたけれども,いわゆる教育にしても研究にしても,投資という考え方を入れるべきではないか。要するに,一定の支出をする代わりにどれだけの成果,価値を生むかということを明確にして,どういうインプットに対してどういうアウトプットが出たかということをできるだけ客観的に明らかにしていくという努力が必要ではないかと思います。
 したがって,民間企業でいいますとROIなのかもしれませんけれども,投資効率が高いところについては当然支出をするという,そういう理由付けになろうかと思います。その逆もあると思いますが,そういう意味でのめり張りをつけていくということが必要だと思いますし,そういう形で,どのような大学の機能というものを自分たちそれぞれの大学が果たしているかということをきちっと理論武装をしていくという,そうした形での仕組みのつくり方というのは検討されていいのではないかと思います。
 ただ,漫然とこれが必要だからとか,物価が,というような話ですと,この御時世ですので,全ての分野で,私,医療関係とか社会保障関係もちょっと関わっておりますけれども,そこでもどこも物価が上がって人件費が足りない。物価が上がらなくても人が足りなくて人件費が上がっていくという状態ですし,先ほど人勧の話も出ましたけれども,公務員制度のほうも,ベースを上げなければ人材の確保ができないという状況になっております。このような人材不足はどこも同じですから,原資によほど余裕があるならばともかく,人材の取り合いになるわけでして,その中できちっとした形で必要額の正当性を主張していくためには,当然ですけれども,やはりそれなりの考え方というものを整理して,それを使って自分たちでマネジメントを変えて成果を上げていくという必要があるのではないかと思います。
【相澤座長】ありがとうございました。
 それでは,上山委員。
【上山委員】今,御説明があったように,閣議決定の中で物価上昇分に関する対応は概算要求の中でもやるべきだということを閣議決定の中で書かれたということは,それなりのものが出てくるだろうし,そのことを文科省としては強く期待しているということは理解をしました。
 もう一つは,先ほどから出ているような投資効果ということで,いわゆる戦略的な意味で,国立大学なるものをどう使うのかという絵を描けるかどうかによって,アディショナルな支援の資金につなげることができるかもしれないとは思います。ただ,これって結局は,どういうような役割をそれぞれの大学はするんですかというふうに大学に尋ねても,86大学全部がそれに見合うような投資効果のあるものをきちんと描けるとは,私は正直いって疑問に思います。それを文科省がちゃんと書くのであれば可能かもしれませんが,それが果たして大学の現場との間で,きちんとアグリーできる形で書けるのかどうかということは正直分からないなとは思っています。
 その意味で,自分もこの1年間,科学技術イノベーション政策の基本計画に関わろうと思ってはいますが,ずっと研究環境や教育環境の悪化の問題を,シリアスな我が国の直面する課題として議論をして,それに対する資金的な拡大ということにも汗はかいてはきましたが,卓越大学,あるいはJ-PEAKSその他で出てきたとしても,私が持っている地域の国立大学の学長さんとかの多くのネットワークの人たちと話をしていると,もうもたないという声のほうが非常に強いですね。恐らくはこの3年以内で確実にもうもたなくなるという,切迫した状況が国立大学にはあると思います。かなりシリアスにこの問題を考えている大学であればあるほどをもたないという感覚を持っているというのは感じます。
 私は個人的には,国立大学,あるいは私立,公立全部含めて総称してアカデミアという言葉で呼びたいですけれども,アカデミアに文科省以外の資金をどう導入するかということに一番の力点を置きたいと思います。それはすなわち,それぞれの省庁が持っている投資効果の考え方が違うわけで,経産省なら経産省,総務省なら総務省,あるいはその他の省庁の持っている,考えている投資の効果というものを,当然ながら大学の現場に投げかけていくわけで,それに応えられるかどうかというのは,それはそれぞれの大学が判断することであると考えています。省庁ごとの,果たしてそれが運営費交付金と呼べるかどうか分かりませんが,裁量的な経費をきちんと補えるような仕組みを導入すべきだということは,どこかでリファーしたいなと思います。しかもまた,一番そういうような資金の可能性があるものはどこなんだろうということも,いろんなシミュレーションの中で考えています。
 その意味で,競争的資金をいくら伸ばしたところで,ここの問題になっているような教員の給与とか,あるいは研究時間を改善していくようなお金にはなかなかならないので,そういう資金をどのような多様なルートからアカデミアに誘導するのかということを真剣に考えております。
 ぜひこの文章の中で,人件費問題が大変なんだということだけであれば,アカデミアにとって,何%かの人勧の分だけ伸びましたよということであって,それで果たして各大学の財務がもつかどうかってとても疑問なんです。その意味では,この報告書の中でもちょっとだけ触れられていますけれども,多様な財源へのアプローチが必要で、各省庁からの資金の供与に関して,文科省と対話できるような状態をもっとつくっていただけないかなと思います。当然ながら,文科省は国立大学,私立,公立,全体としての高等教育のグランドデザインを持っておられるわけで,また,大学に関する情報も一番持っているところなんで,逆に各省庁はあまり知らないわけです。最近、私はかなり経産省の人たちとしゃべっていますが,彼らが今(少なくとも私がCSTI来てから),これほど大学に関心を持ったことはないなと思います。ずっと大学のことを考えてくれよと言っても,彼らが考えているのは例えば半導体であったり,自動車であったり,特定の研究開発に関してそれぞれに卓越した研究者について目をつけて,ある種のプロジェクトをつくっていくという形で大学の資産を使おうという目線はあったかもしれませんけれども,それをやっている限り,大学の本体そのものがどんどん傷んでいくんだと。そうじゃない形の資金の供与の形を考えるべきだということをずっと議論して,やっとそれが,ああ,そういう構造になっていたんだ、だとすれば,大学の現場は一体どうなっているんだろうということにかなり強い関心を持つようになって,実際に大学回りをし始めている,自分の目で見ようと。そのことを私はいいことだなと思っています。これが,別の省庁でも同じようなことが起こり始めていく。
 例えば,しばしば出てきているのはサイバーセキュリティーの人材が足りないとかICT系の人材が足りないということを言っているときに,何で総務省はその人件費を出さないんだと私は強く思いますし,そんな話はしています。つまり,投資の目的に合致するかどうかというのは,個別の大学にそれを問うのは難しくて,我々が考えている投資の方向はこういうものなんだけど,それに対して手を挙げることができますかと問いかける。挙げている限りにおいては,各省庁の様々な資金を大学のアカデミアの原則に沿う形で,その原則そのものは文科省がちゃんと指導されればいいわけで,その下において資金源を多様化させていくという方向を文科省は始めるのだと強く言っていただければ,大きな対話の道が各省庁と開けていくと思います。
 まさしく例えば最近で言うと,アメリカの研究者をリクルートするためのJ-RISEって,この間いきなり1,000億みたいなお金がつくわけですよね。それは明確なミッションがあったら,走り回る政治家がいるわけですよ。本当にそれがつくかどうかは別にして,少なくとも国際的な約束として,それだけの規模のお金が出てくる。この類いのものが,様々な形であり得ると思います。そういうようなミッションを高等教育が絡んできちんと絵を描いていくときに,文科省の中だけで議論をしていたら,なかなかそれができない。そこに対するその目線が,やはりまだそこまでいかないところがあるなという気が私たちはします。
 そういうときにCSTIの中での議論を御覧になっていただくとか,あるいはルートを使って他省庁とのコミュニケーションを充実させるとか,ぜひ文科省がリードして,新しい高等教育の姿として,文科省だけのお金ではない,大きな国の全体のお金の中でやっていくんだという絵を描いていただければ,大学の現場の方たちにとってはありがたいことじゃないかなと思いますし,国際的な学力,研究力の向上にとっても,文科省がリードしているという形になるんじゃないかなと。そこをどれぐらい熱く書くかということだけは言っておきますね。
 すみません,ちょっと長くしゃべりました。
【相澤座長】ありがとうございました。ただいまの点は,上山委員がこの検討会の始まった頃から強調されてきたところでありまして,私から先ほど申し上げた議論していただきたいポイントの最後のところ,3ポツのいろいろな施策の中の最後のところ,5番目に,政府を挙げた大学支援策の検討ということに関わることではないかと思います。上山委員の御指摘は大変大きな構想につながることであるので,そう簡単に進むということでもないかもしれませんけれども,伊藤局長,どうでしょうか。ただいまの最後の多様な財源へのアプローチという視点から省を挙げて対応していくという,そこのところについてのコメントいただければ。
【伊藤高等教育局長】まさにその方向で我々もしっかりやっていかなければいけないと思いますし,文科省自身が内向きになっていては絶対にこの問題は解決しないというふうに思っております。今度,専門調査会のほうでまた,今週私,お邪魔させていただいて御指導いただきますけれども,しっかり大きく大学改革もしていくし,やっぱり我々今,大学の持っているポテンシャルもあれば,これからさらに日本を切り開くような,投資さえしてくれればその期待に応えますよということを,ちゃんと説得力を持って説明ができるかということと,それがはったりではなくて,しっかり大学もそういうふうになってくるんだということを同時に見せなければ空約束になってしまいますので,そこは我々しっかり現実を踏まえつつも,姿勢としてはそういう姿勢だということを明確に打ち出していきたいと思います。
【相澤座長】今回のこの検討会で出すものは,各国立大学法人へのいろいろな連携を検討するようにということを強く打ち出しておりますが,同時に,政府における各省の連携こそ,いろいろな施策のところの根幹であろうかと思いますので,ぜひそれを文科省,積極的な姿勢を出していただいて,最後のところをまとめていきたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。
 それでは,服部委員。
【服部委員】すみません,失礼します。少し話が戻りますけれども,まず,教育・研究組織の見直し,10ページのところに関しまして,意見を申し上げたいと思います。
 前回の委員会でも発言させていただきましたが,国立大学についてはやはり一定の規模感というのは必要と思います。これから国立大学については,18歳人口が減っていく中で,縮小化していくのはやむを得ない状況と思います。その中で一定の規模感を保とうとすると,やはり連携,統合,再編をしていくしかないと考えています。
 その中で統合が最も分かりやすい。ハードルは高いかもしれませんけれども。一方,行政単位を超えての統合は現実的には厳しいと思います。そう考えますと異なる県に設置されている大学間での統合としては,ヒアリングさせていただきました東海国立大学機構のような,一法人複数大学という経営統合が現実的だろうと思います。
 一法人複数大学の課題としては経営的には機構として1つに統合されますが,構成大学が個別の単位として残ります。これはやむを得ないことと思いながらも,もう少し大学間の枠を超えた統合のスケールメリットを生かす取り組みができればよいのではないかと思います。例えば世界大学ランキング等のデータについて機構として統合することはできないでしょうか。教員が論文を発表するときに,所属先としては大学名ではなくその機構名を書くことにより,機構としての一体感と統合したことのスケールメリットが出てくると思います。また,教育で言えば,個々の大学では教育リソースが減っていく中で,経営統合した大学間で,もう少し教育の多様性と質向上を含めた連携ができないかどうか。難しいところがあるかもしれませんけれども,経営面を超えたもう一つ先の連携の仕方というものを探っていくことも大切かと思っています。
 そういう意味で,経営統合の在り方について,規模感を大きくしたことの実際的なメリットが出てくるような経営統合ができれば良いと考えています。そして,これらの取組が国大協の永田会長から話がありました国立大学システムの構築につながることを願っています。
 次に,20ページ目にあります運営交付金の話です。先ほど森田委員から,法人化がなされるにあたっての運営交付金の算定方法について説明いただきました。なるべく大学が自由にお金を使えるように,という観点で制度設計されたことはよく理解しました。一方,運営費交付金が削減されてきた状況で各大学では人件費と教員研究費を削減してきた現状があります。特に,教員研究費については,科研費があるからということで,減らしやすかった状況があるわけですが,結果として,今の地方国立大学の状況では運営交付金からの各教員に配分される研究費というのは,10万円程度になってしまったと聞いています。理系であっても同じです。パソコンさえ研究費で買えないような状況になっています。
 そこで運営費交付金の配分の際に点線を入れ,例えば標準教員数や標準職員数,それから,教員個人の研究費として一定額を確保した上での配分,算定というのを考えていただけないかというのが2点目です。
 最後にもう1点,これは地方の高等教育機会を支える国立大学への配慮ということにも関わってきますが,18歳人口減少の中で東京近辺の一極集中の流れというのは止まりません。逆に強くなっている状況があります。この状況において,地方創生,それから地方大学の振興ということを考えますと,18歳人口が減っていくから,そのまま単純に地方国立大学の定員を減らすということは非常に厳しい。地方創生のためにも何とかして地元の高校生が地方にある大学に行く,更に都市部の受験生,高校生が地方に向かうような,そういう流れをつくっていく必要があると思います。
 1つの方法として,例えば授業料について,地方の大学と都市部の大学における授業料の標準額に差をつける。端的に言うと地方国立大学の授業料を低くしていただくことはできませんでしょうか。そうすると大学にとっては収入が減りますので,それについては,運営費交付金の中で配慮していただけないかと。そういうことによって,地方に住む高校生の高等教育への機会,アクセスの確保ということ,それから,逆に都市部の高校生が地方の大学に行くという,そういう流れはつくれないだろうかと思っています。難しい話とは思いますが,かなり思い切ったことをしないと,東京一極集中,地方への流れをつくるということは難しいと思います。地方創生に対する大学の取組として考えていただきたいと思います。
 一方で,地方国立大学は授業料を安くしてただ待っていれば学生が集まるのかというとそうではなくて,先ほど申しましたような大学間の再編,統合,それから機能強化が不可欠です。ただ授業料が安ければ受験生が集まるというものではないですよね。世界に輝く研究領域というものを各大学が持ち,さらに受験生を引きつける魅力ある教育カリキュラムを設計することが大切です。そこについては,地方国立大学がしっかりと取り組んでいただきたい。これも簡単なことではないけれども,その覚悟を持って取り組む地方国立大学に対しての授業料標準額の低減と運営交付金の補填を考えていただければと考えています。
 以上です。
【相澤座長】ありがとうございました。3つほど視点を提示していただきましたが,ちょっと私から確認をしたいんですけれども,先ほどの一法人二大学の制度の中で,現在,東海国立大学機構が動いているわけですけれども,そこを一法人一大学にできなかった理由ということも勘案されて,先ほどのような御提言ということなんでしょうか。それが何か制度の上で,あるいは規制の上でそうできなかったのか,あるいはそれがこの再編のときの東海国立大学機構の方針であったということと,どう変わるかどうかということなんですが,いかがでしょうか。
【服部委員】私は東海国立大学機構の事情は全く知りませんので,あくまで推察ですが,行政区を越えての統合は非常に難しい面があると思います。制度としては統合も恐らくやろうと思えばできると思います。しかし,統合をするためには地方の理解,協力が必要なわけで,それを得るのが難しいのではないかと思います。ですので現実として今すぐ取り組むには,経営統合という選択肢が,ベストだったと理解しています。
【相澤座長】この検討会で,各国立大学法人からヒアリングを行いましたけれども,一番初めのヒアリングですね。一法人二大学と,一法人一大学の両方がここで出てきております。いずれにしても,それらの再編,統合は,それぞれの大学の自主的な構想で進めていくということなので,そういう形で,形態としては自治体を越えてということではないかもしれませんけれども,一法人二大学ではなくて一法人一大学ももちろん。
【服部委員】もちろん。
【相澤座長】この検討会で,さらに提言するとしたらどういうことになるんでしょうか。
【服部委員】正しいのか分かりませんが,統合としては一法人一大学のほうが大学としての一体感は出ますし,スケールメリットも直接出せるので,そういう面では理想的と思います。しかし,現実的には,地域からの協力というのは絶対必要であり,それを得られるかどうかというのは各地域ごとによって全然状況は変わってきます。まさしくその地域と各大学との関係性,その中で各大学が自主的に決めていくということになると思います。
【相澤座長】検討会としてそこにコメントをすることが,ちょっと分かりにくいのではないかなと思うんです。東海国立大学機構のヒアリングをしたときに,さらに規制を緩和することが必要ですねということの問いとして出したときに,今の問題は特に出されなかったんですよね。だから,ここで自治体を越えてさらにそれを1大学にするのがいいんだということは,ちょっと自主性がどうかなという。
【服部委員】それは難しいと思います,私も。
【相澤座長】分かりました。
 そのほか。それでは,柳川委員,福原委員の順でお願いいたします。
【柳川委員】ありがとうございます。ちょっと20ページのところが大分議論があったので,そこからお話をしようと思います。
 先ほどお話があった骨太と新しい資本主義のところで,僕がどう関わったかあんまりここで言うべきではないんだと思うんですけど,いずれにしてもこういう文言が入ったのはとてもいいことだと思いますので,ここの四角囲いになっている,必要性について言及してはどうかというところでいくと,物価や人件費の上昇を踏まえたというところはここに書き込んでおいていいのではないかというふうに思います。
 ただ,要するに,大きなそもそも大学がどうあるべきかという話から始まったこの報告書の中で,突然物価上昇なんで運営費交付金がもうちょっと必要だというのだけ書き込んであるというのはバランスが悪い話で,もう少しそもそもなぜ運営費交付金の増額が必要なのか,しっかりとした財源として確保が必要なのかというところが全体の大きな流れで書かれるべきなんじゃないかというふうに思います。
 実際,骨太や新しい資本主義の中でこういう文言が書かれたのは,1つは足元で大変だというのもあるんですけど,そもそもやっぱり研究費をしっかり付けていって,大学なり教育機関のしっかりとした高度化をしていかないと駄目なんじゃないかという多くの人の思いがあったんだと思いますので,やはりここでもそもそものこれからの世の中においての大学の中での運営交付金の在り方というのをしっかり書き込んだ上で,それの増額なり,あるいは確保というのが必要だということを主張すべきなのではないかと思います。
 その観点でいくと,やはり森田委員がおっしゃったような安定的な財源の確保といいますか,安定性,将来の予測可能性の確保というのは現状でいくと非常に大事なところで,プロジェクトベースの競争的資金も大事なんですけど,それでなかなか長期的な人材の確保はできないので,なかなか苦しいというのが多くの大学のところで見ているところでございます。そういう意味では,やっぱり運営交付金も比較的自由度が高いということの結果ではあるんですけど,やっぱりそういうところが1つのメリットであるとすれば,やはり大学の中における安定的な資金の確保がどれだけ必要かというのは1つ考えておくべきポイントだろうと思います。
 もう一つは,やはりミッションがあって,このミッションを実現するためにはこういう資金なり財源が必要なんだということだと思うんですよね。結局ミッションが冒頭に書かれているわけなので。結局そのミッション実現のためにはこういうお金が必要なんだという議論がもう少し本当はできるといいんじゃないかと思います。それも各大学がいろいろ勝手にミッションを決めますのでというところだけだと,いきなりちょっと何か予算的な話になって恐縮ですけれども,じゃあそのお金本当に使われるんですかと,文科省としては,やっぱりそのお金ちゃんと責任を持って使うって言えるんですかと,やっぱりそういう話やなって来るんだと思うんですよね。そうするとやっぱり全体の大学の中でどういう形のミッションが全体として遂行され,それに結果としてどういうアウトカムが出ていくためのこういうお金が必要なんだということが,本当は少し議論できるといいのかなというふうに思います。そういう意味では最初の議論と,後でちょっともう少し申し上げますけど,ミッションをもう少しクリアにした上で,それに対してこういう資金が必要だという書き方ができるといいのかなというふうに思います。
 それから,上山議員が強調された最後の(5)のところ,これはこのとおりだと思いますので,やはりもうちょっと多様な各省庁連携の下で財源の確保というのはすごく重要なところだと思います。
 そういうわけでミッションのところなんですけれども,4ページのところで,こういう形でミッションが3つ,国立大学法人等のミッションはこの3つだというふうに書かれたのはいいことだと思っています。クリアになったと思います。じゃあ各大学がこのミッションの1つは,この3つの全てではなくて,どういうウエートの組合せにしますかというのは各大学が選んでもらうということですよね。そこをクリアにしてもらうことと,もう一つは,このミッションそれぞれ,これって多分最低限書くべきミッションであって,これをどう掘り下げますか,どうより高度化していきますが,それ具体的にどうやりますかというところを書いてこそ各大学のミッションになるんだと思うので,それが要するに,どういう深掘りをするのかというのと,どういうウエートをつけるのか,この辺りは多少やっぱり文科省の側でガイドして,これでとやることはできないんですけど,ガイドしていただくことが,先ほどのように日本全体の国立大学法人全体としてどういう方向に進んでいくのかというミッションになっていくんだと思うので,そういうのがクリアになってくると,ああ,こういうことのために,お金を使うんだということが内外いろんな方々に説得力を持って出てくるんじゃないかという,そういうつながりになってくるんだろうと思います。
 そういう意味では,そこのところが先ほどの投資という話とかなり関係していく。これは上山委員がおっしゃったことですけど,私も投資という言葉を明記するのは賛成なんですけれども,やっぱりどうしても投資というと,お金の面でのリターンがちゃんとあるのかという話になりがちなんですよね。でも,多分皆さんおっしゃっていたのは,それは要するにミッションがどれだけ達成できたかという話であって,ミッション自体は必ずしも大学がどれだけもうかりましたかという話ではないということですよね。そういう意味でやっぱりミッションに対する目標があって,そのアウトカムがしっかり見られるかどうか,実現するための投資ですと。それをちゃんと事後的にミッションが達成できたかどうかはちゃんとチェックします,アウトカムをチェックしますと,そういう投資ですというところはぜひしっかり書き込んでいただきたいなというふうに思います。最近の言葉でいけば,EBPMをしっかりチェックしていくということだと思いますけど,そういうことかと思います。
 その中の具体的なところでいくと,やっぱり皆さん御指摘になった統合と連携が相当出てくるんですよね。なので,やっぱりそういうところが全体としては,この報告書の中では,国立大学法人の統合や連携をしっかり進めていくというところなんだと思います。なんですけど,ここもやはり,とにかくそれぞれの大学が統合進めてください,連携やってくださいなというだけだとやっぱりなかなか具体的には動いていきにくいんだと思うんです。だから,どういう形の統合のやり方,どういう連携の仕方があるかとか,そのためにどれだけいろんな意味でのコストが削減できるのはどういう形かとか,そういうようなところは少しガイドがあったほうが各大学がやりやすいんじゃないか。そこは少し文科省として,国として大事なんじゃないかと思います。
 最後に細かいところですけど,平子委員がおっしゃったようなところですけれども,大学院修了の標準化のところは,私も1つはそういう方向で進めていかないと機能強化になっていかないというふうには思いますが,一方では,もう少し手前のところで社会に早く出て,その中でもう1回大学院に戻ってくるとか,様々な実は修業のルートがあると思いますので,必ずしもそれだけを1本のルートとするよりは,もう少し修業の多様化というところにウエートを置いたほうがいいんじゃないかと思いますし,その面では統合と連携も1つなんですけど,ある種の組織の柔軟化なんだと思うんです。不確実性が高まっていく社会の中で組織をより柔軟にして,それを柔軟に運営できるための制度なり,あるいはガイドラインをどれだけつくっていくかということが重要だというところになってくるんじゃないかなというふうに思います。
 少し長くなりましたけど,以上でございます。
【相澤座長】ありがとうございました。いろいろと御指摘いただきましたけれども,運営費交付金に関わることで,確かに私も先ほど説明したときにも,運営費交付金のところの対応が2つに分かれているということを申し上げました。まさしくそこのところを言われているというふうに思いまして,物価高と人件費の高騰,これだけに対応したものだけを切り出していくというのは,全体の説得性においても弱いのではないかと思いますので,これは柳川委員の御指摘のとおり,2つをまとめて,そもそも運営費交付金の在り方等々から始まって,座り心地のいい形に組み直していきたいというふうに思います。
 それから,福原委員,どうぞ。
【福原委員】ありがとうございます。もうお時間も迫っておりますので,簡潔に申し上げたいと思います。
 大変多様な意見の中でよくおまとめいただいて,その中で私,8ページに,20年前の国立大学法人の制度が導入されて,そのときの状況と比べて20年後の今日,大変大きな変化があった中で,せっかくの国立大学法人というものに期待された機能というものがまだまだ生かされ切っていなくて,今だからこそ生かせるものがあるのではないかとか,あるいはこのままではなくして,そのときには考えられなかったけれども,今のときだからこそもっとどう機能強化したらいいのかという,この問題提起は大変興味を持って拝読をいたしました。
 そういう観点で考えましたときに,1点だけ。やはり大学という,私たちにとってかけがえのない仕組みの機能を,やはり持続的に発展させていく意味では,これを担う人材,特に大学における研究に従事する人材をどのように育成するかということは,いろんな社会の高度専門人材を育成するんだ,教育するんだという大学の機能もあるのだけれども,大学そのものの中で,やはり研究という営みを人生の中に組み込む人というのをどれだけつくるか,つくっておくかということは、国や社会においては大変重要なことで,そういう研究人材がいろんな分野でいろなイノベーションの基礎をつくったり,あるいは政策立案に役立ったりということをしていくのだと思うのです。今,少子高齢化の中でそういう研究をする人材の育成機能が果たしてどうなのかと。かつては、人口増のときには,大学院の進学だとか,助手,助教の選考だとかいった競争環境の中でそういう人たちも絞り込んでいけたのですけれど,今なかなか後継者養成や高度研究人材の道に来る人たちを大学で確保するというのは難しい。大学院も外国人留学生がたいへん増えてきているわけですけれども,日本の学生の中でそういった志を持った人とか,そういった能力を持った人をもっと研究人材として誘導したいのだけれども,なかなか集まらないというのがあるのじゃないでしょうか。国立大学は,国立大学の研究人材を供給するだけじゃなくて,やはり私学や公立,いろんな大学または研究機関に研究人材を輩出していくという,この役割はやはり重要で,今回の報告書でも17ページの若手研究者の確保のところ,それから,各所にそのことが触れられているのですけど,あるいは10ページの大学院修了に向けてとかあるのですけれど,ここのところの人材というのが,社会で即活躍できる人材というだけでなく,大学での研究人材ということが忘れられてはならず,ここにやっぱり運営交付金も研究費も,そういうところに配分が必要じゃないかということをちょっと思ったものですから,そこの記述にめり張りが効かせられればいいかなというふうに思いました。
 それと,私学振興に携わる私といたしましては,国立大学だけではなくして,私学における研究人材の育成にも,運営交付金を国立大学にめり張りをつけると同時に,私学振興もお願いしたいということです。要するに大学を支える人材,それは経営人材もいるけれども、大学の研究,これがやっていけないと,大学の研究というのがしっかりなされないといけない。研究をベースに教育をすることがほかの学校種,高校までやほかの学校種と違っており,大学の教育というのは研究している人が教育するということが重要なので,その研究者の後ろ姿を見て,次の世代の人がまたそういう何か真理を追求しようという姿勢をもち,そういう姿勢を持ってくれる人を育てるというのが大学だと私は信じていますので,この機能をやっぱり国立大学がしっかりと維持していっていただきたいなという思いで申し上げた次第でございます。もう書かれていますけれども,そこをちょっとクローズアップしていただきたいなと,そういうことです。ありがとうございました。
【相澤座長】ありがとうございました。今,御意見を伺いながら,私もはっと気が付きました。実は大学の博士課程の人材育成については,かねがねアカデミアに進む人材があまりにも多いと。むしろもっとたくさんのキャリアパスを描いて,そして,人材育成するべきだということが,ずっとこれが続いていたんです。それがあまりにも強い指摘であって,それにどう対応していくかということが中心課題でありました。そこでいつの間にか,むしろ本来のアカデミアの人材どうするんだという今の御指摘を,ふとこういうようなところにもなかなか明記しないという状況になってきたのではないかというふうに思います。ぜひただいまのところは,意見反映をさせていただきたいと思います。
【樫谷委員】よろしいですか。すみません。柳川委員おっしゃったことに関わるんですけれども,投資だという観点,投資というのは2つの見方があって,親から見た投資とか,親から見た子供に対する投資という効果,それは非常に長期的な投資だと思うんです。なかなか効果がいつ出るか分からないという長期的な効果。それから,あと企業が委託研究費を出すとかいう,それは投資の効果があって,それはちゃんと金銭に関わるものだと。ところが大学の投資の効果というのは,柳川委員おっしゃったとおり,ミッションの達成だと思うんですよね。ミッション達成しているかどうかが投資の効果であって,国民に対する投資に対する説明は,ミッションを達成していますということだと思います。
 そのときに,4ページの1,2,3というミッションがあり,このとおりだと思うんですが,1,2については比較的説明がしやすい部分があるわけですよね。世界最高水準とか,イノベーションとか,高度専門人材とか比較的分かりやすいところがあるわけですが,地域社会を先導する人材の育成と地域産業への貢献と,これ,めちゃくちゃ難しいと思うんですよね。実は今,私も地域の企業の支援をたくさんしているわけですけども,地域は本当にひどいです。本当に今まで地方の国立大学だけじゃなくて大学は,地域に貢献してきたのかと思うぐらいひどいですよね。そこをどうするんだということを,やっぱり国立大学,地方大学の方は本当に考えているのかと思って,実はほとんど大学の話が出ないんですよね。まともな企業で,結構地域ではまあまあの企業と話をするんですけど,地域の国立大学の話だとか,たまに出ることはあるんですけど,なかなか難しいみたいな話ぐらいしか出ないんです。
 そういう意味では,本当にこれ,3番目というのは,今の日本の地域の状況を考えたときに,めちゃくちゃ難しいテーマを与えられているなというふうに私は考えます。ものすごい難しいテーマだと,こういうふうに思っております。実際人材を育成していても,なかなか地域にとどまらないで,ほとんど有能であればあるほど都会に出てしまう。そこで地域産業というのは衰退してしまう。衰退したところに高度な人材を,先導する人材を持っていこうといったって,誰も行かないですよね。だから,最終的な地域産業への貢献をもっと積極的にプッシュ型でやれるようにミッションにしていかないと,貢献というので待っていれば誰か行ってくれるからやってあげるような待ちの姿勢ではとてもできないので,やっぱりそこはもう少し突っ込んだような書き方をしてもらうと,貢献というと何か偉そうな感じがしないでもない。むしろ自分の存在意義を主張するんだと,存在する意味なんだということをしっかり自覚をしていかないと,地域産業への貢献なんてとてもできないというふうに思っております。単に待ちの姿勢ではできないと思っています。本当に私の地域,ほとんど北海道から沖縄までそれぞれ行くことが多いんですけど,ほとんど大学の話聞いたことないです。
 むしろ本当に聞くのは,なかなかやってくれないんだとか,なかなか何だか何とかとか,使いでが悪いとか,あんまりいい意見も1つも聞かない。こんなすばらしいことやってくれるということについては聞いたことがない。それはやっぱりミッションを果たしてなかったじゃないかと。つまり,ミッションが逆に非常に曖昧だったので,少しおろそかになっていたという側面もあることはあると思うんですけれども,明確に地域の発展に尽くすんだということを,貢献するんじゃなく尽くすんだということを言わないといけないのかなというふうに,今までの経験では感じましたことを申し上げた次第であります。
【相澤座長】ありがとうございました。このたびのこの検討会の中でも,地域創生に関わることは極めて重要ということで,いろんなところで位置付けと,それからこういうミッションという形にまとめたりということで分散しておりますので,その辺のところ,ただいまの御意見も伺いながら整理していきたいと思います。
 そのほかよろしいでしょうか。ありがとうございました。
 今日はたくさんの御意見をいただきまして,最後のまとめへの重要な一歩となったというふうに思います。次回は引き続き,今日の議論を展開していきたいというふうに思いますので,どうぞ次回までにもう一度,いろいろと御意見出していただくことをそれぞれの委員におかれては御検討いただければというふうに思います。
 それでは,大変長時間になりましたけれども,本日の検討会は以上とさせていただきたいと思います。
 次回以後について,事務局から説明をお願いいたします。
【髙橋国立大学法人支援課課長補佐】本日もありがとうございました。
 次回の会議でございますけれども,7月1日,15時から17時を予定してございます。次回ですけれども,まず,文科省のほうから,他の会議体における検討状況を御説明させていただいた後,委員の先生方の意見交換をさせていただければと思ってございます。
 以上でございます。
【相澤座長】それでは,これにて第10回の会議を終了させていただきます。長時間にわたりまして,誠にありがとうございました。
 

―― 了 ――

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