国立大学法人等の機能強化に向けた検討会(第9回)議事録

1.日時

令和7年5月12日(月曜日)16時00分~18時00分

2.場所

ハイブリッド(対面・Web)開催 ※傍聴はWebのみ

3.議題

  1. 国立大学法人等からのヒアリング
  2. その他

4.議事録

国立大学法人等の機能強化に向けた検討会(第9回)

令和7年5月12日

 
 
【相澤座長】それでは,定刻になりましたので,ただいまより,第9回国立大学法人等の機能強化に向けた検討会を開催させていただきます。
 本日の検討会も,対面とオンラインの併用により,公開で開催しております。
 それでは,本日の議事等について事務局から説明をお願いいたします。
【髙橋国立大学法人支援課課長補佐】本日の議事及び配付資料につきましては,次第のとおりでございます。過不足等ございましたら,事務局までお申しつけください。
 以上でございます。
【相澤座長】本日の議事及び配付資料につきまして,過不足等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは,これから議事に入りたいと思います。本日も前回に続きまして,1月に取りまとめた論点整理を踏まえ,機能強化に向けた具体的な対応策について議論を深掘りしていくという,そういう目的のためにヒアリングを行いたいと思っております。
 本日は,教員養成系大学の観点から東京学芸大学,国立大学全体の観点から一般社団法人国立大学協会よりヒアリングを行わせていただきます。
 それでは,ヒアリングに入る前に,文部科学省のほうから補足の説明をしていただけるということですので,どうぞよろしくお願いいたします。
【若林教育人材政策課教員養成企画室長】失礼します。この後,教員養成系大学を代表して東京学芸大学からお話がありますが,それに先立ちまして,昨年12月に中央教育審議会に諮問いたしました多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策について,諮問の背景と現在の検討状況を簡潔に説明させていただきます。資料の1-1と1-2,あと関係資料が参考資料の4になります。
 まず,資料1-1でございますが,諮問の全体の背景といたしまして,我が国の初等中等教育は,国際的な学力到達調査などで高い水準を維持している一方で,少子化が進む中,いじめや不登校,あとは日本語の指導が必要な児童生徒,特別な支援が必要な児童生徒など様々な事情を抱える児童生徒が増加しており,今後ますます子供たち一人一人に応じた丁寧な支援が必要になっておるところです。また,今日,人工知能等の先端技術が発展する中であって,学校現場においても,児童生徒一人一人に配布されております端末を有効に活用した指導や管理等が必要とされておるところです。
 さらに,学校現場を見渡しますと,年齢構成に起因する教師の大量退職や大量採用,また様々なライフイベント等で一時的に教壇を離れる先生方の増加等々によりまして,いわゆる教師不足というような課題も生じておるというところになります。こうした課題への対応が喫緊の課題というふうになっておりますが,このような中で,我が国の初等中等教育をしっかりと維持発展させるためには,教師に質の高い人材を十分に育成し確保していくことが不可欠でありまして,そのための方策を御議論いただいておるというところです。
 下の水色の丸1,丸2,丸3が主な検討の事項ということになりまして,1つ目が,社会の変化等を見据えた教職課程,教員養成課程の在り方について。こちら今御議論いただいておるところで,今後,丸2,丸3の教師の採用研修・研修の在り方であったり,多様な社会人等が教職に参入しやすくするための方策について御議論いただく予定です。
 現在の検討状況を資料1-2に基づきまして,かいつまんで御紹介をさせていただければと思います。まず,こちらが現在の検討状況で,青字になっておる枠囲みの中が有識者の主な意見をまとめたもの,黒字のところが事務局から提示している論点というような形になります。
 1枚目の一番最初なんですけど,教職課程の在り方として,例えば1つ目の枠囲みには教職課程,教員養成課程で担保すべき能力について議論されておりまして,教師は教職生涯を通じて様々な資質能力を形成していくことが重要でありますが,養成過程では,最低限の基盤的な能力をしっかり担保する必要があるというような御意見。
 2つ目の枠囲みになりますが,今後の教職課程の内容について,後ほどの説明にもありますが,教員養成フラッグシップ大学という先導的な取組を行っておる大学がありますので,その成果や知見をしっかりと踏まえて,学校現場の課題に応じた科目の充実を図る必要があるというような御意見をいただいております。
 3つ目の青字の枠囲みですが,より多くの学生が教職課程を履修しやすくするための工夫についてですが,オンデマンド教材も活用しつつ,対面授業ではしっかりと対話をし,知識を実践に結びつけるような学びのトータルデザインを構築していくことが必要というような御意見をいただいており,4つ目の枠囲みですが,各大学の創意工夫を生かした柔軟な教員養成課程を実現する上での課題といたしまして,あらかじめ決められたような項目を網羅するような学習は最低限にして,学生が自ら選択・デザインするような,そんな柔軟なカリキュラムが必要であるというような御意見であったり,大学間で共通するような事項については,例えば教養試験のような形で,しっかりと大学横断的に質保証していくことが大事だというような御意見をいただいております。
 (2)といたしまして,教員免許の在り方についてですが,免許制度の1つ目の枠囲みで免許制度の課題ということで,先ほどの御意見と少し重なりますが,学習者本位で自立した学びを自らデザインするというような,そのような教師像,そうした教員の資質能力を高めるような授業のデザインが重要だというような御意見をいただいております。
 (3)の教師人材の安定的な確保に向けた教員養成の在り方についてですが,1つ目の枠囲みですが,地域に求められる教師人材の安定的な確保に向けた方策については,教育委員会としっかりと連携した地域教員希望枠,地域で先生になりたいというような高校生をそういった枠で大学に入学させて,地域でしっかりと教員をやっていただくというような,そういった枠を活用した取組をもっと拡大していくべきだというような御意見をいただいておりまして,一番下の枠囲みですが,少子化の中で,各地域の教職課程を継続的に開設,実施するための方策として,国立の教員養成系大学が中心となって近隣の大学に,例えば免許科目の提供ができるような制度設計を求めるというような御意見もいただいておるところです。
 以上がこれまでの中教審の議論を簡単にまとめたものですが,今後も教員の資質能力の向上や確保のために教員養成の大学に対しては,先ほど言ったようなフラッグシップの大学をはじめとするような今後の教員養成課程の在り方を先導するような取組ですとか,あとは教員養成のみならず,教職大学院等を活用して現職の教員の資質を高めるような取組,あと単位互換や連携教職課程等の仕組みを使った公立や私立の大学とも連携をした地域における教員養成系の維持などについて役割を果たしていただき,我が国の初等中等教育の土台をしっかりと支えていただくということを期待しておるところです。
 以上になります。
【相澤座長】ありがとうございました。
 それでは,ただいまの検討状況を御理解の上,これから東京学芸大学のヒアリングを始めさせていただきます。それでは,國分学長から10分程度で御説明いただき,その後,15分程度の質疑応答をさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【國分学長】よろしくお願いいたします。東京学芸大学の國分でございます。本日はこうした機会をいただきまして,誠にありがとうございます。スライドお願いします。
 この目次にございますような,4つの事柄についてお話しさせていただきます。まずは,国立の教員養成系大学・学部共通のミッションでございます。まず,それには小中学校の教員養成,特に小学校の教員養成ということがございます。教員養成は戦後,開放制ということになりましたが,全ての教科を教える小学校の教員養成は開放制になじまないということがあり,国立の教員養成系大学・学部が担い,重要な使命としてまいりました。今は私立大学も参入しておりますが,現在でも我々の重要な使命と認識しております。また,入試において共通テストを課し,理系科目を必須としている点は多くの私立大学と異なっている点で,理系の素養のある小学校の教員の養成を可能としております。
 次に,教職大学院ですが,これは教員としての専門性の向上と現職教員の研修を担う専門職大学院で,国立の教員養成系大学・学部全てに設置されておりますが,私学は7校とごく僅かで,教職大学院を担っていくのも国立の教員養成系大学・学部の重要な使命と思っております。こうした小学校の教員養成及び教職大学院は多くの教員を配置する必要があり,私学で設置するのは大変に厳しいという声は中教審の部会でも私学関係者から聞かれているところでございます。
 このように我々は職業教育を行っているといえ,そのため,その成果として高い教員採用率が求められています。現在,学部新卒者では70%程度ですが,既卒者まで入れますと,我々としては85%強は教員になっていると推定しております。そして、教職大学院の新卒者の教員採用率は90%程度となっております。また,国立の教員養成系大学・学部には附属学校が設置されておりまして,その役割は大学の教育実習の受入れ,大学の教育研究への協力,実験・先導的な学校教育モデルと整理されております。
 最後に,今後のミッションに関わる意欲的な取組として,本学の取組ではございませんが,この2つを挙げておきたいと思います。お目通しいただければ幸いでございます。
 次に,本学のミッションとその成果です。本学は創立以来,有為の教育者の養成を使命としてまいりました。これはまず,小中学校を中心とする学校教育のリーダーとなる人材養成ということでございます。教員となった本学卒業生について,全国自治体の教育委員会へのアンケート調査では,60%以上の教育委員会で高い水準にあると評価していただいております。教員採用率は70%弱で,今少し高めるための取組を進めております。
 教職大学院につきましては,平成31年に大幅に改組いたしまして,学生定員210名と,我が国最大の教職大学院といたしました。本学の教職大学院は,全ての教科について学ぶことができる,国際バカロレア協会からIB教育の教員養成を行う認証を受けている,留学生を受け入れているなど,他の教職大学院にはない先端型・総合型の特色を有しております。全国の教育委員会から現職教員を受け入れ,また,都内12の国立・私立大学と連携協定を結んでおります。また,同時期に修士課程も改組いたしまして,我が国で初めて教育AIプログラムを設置いたしました。また,中韓両国とのダブルディグリーも可能な修士課程となっております。このほか,教育支援課程及び本学の博士課程については,ここに記したとおりでございます。
 こうした教員養成系大学としての蓄積によりまして,本学は令和4年3月に教員養成フラッグシップ大学に指定されました。この事業遂行のために,本学では先端教育人材育成推進機構を置き,そこに8つの研究開発ユニットを置いて,次世代教育のための基盤となる研究開発に取り組んでおります。そして,その成果を生かした学部・大学院の教職科目を開発・実施し,また,現職者研修プログラムも研究開発し,それらを多くの教育委員会,大学からなっておりますリエゾンチームによって展開していくということにしております。昨年は中間評価の年で,A評価を受けました。
 附属学校につきましては,まず,教育実習先としては,毎年1,400名の学生を受け入れております。大学の教育研究への協力では,小金井小学校で行われている「特定分野に特異な才能のある児童生徒への支援推進事業」などが特に野心的なものとして挙げられます。実験的・先導的な学校教育モデルとしては,PYPからDPまでつながる大泉地区のIB教育,竹早小・中学校の企業・教育委員会と連携した「未来の学校みんなで創ろう。プロジェクト」,また,附属学校では例のない本格的なコミュニティ・スクールとなった小金井中学校などがございます。
 次に,今後のミッションと機能強化の方向性についてです。基本的なミッションは,これまでと変わらず有為の教育者養成でございます。まず,教員養成ですが,入試改革を行い,令和10年度入試から後期日程を廃止し,本学で養成する教師人材の質の確保と,真に教職に意欲的な学生を確保することといたしました。これにより本学の教員採用率も上げることを狙っております。
 教職大学院では,先端型・総合型の取組を引き続き進め,また,現在進行中の,先ほど若林室長から御紹介のありました教員養成部会の議論を注視しつつ,必要な対応の準備をいたします。
 教員養成フラッグシップ大学の取組では,特に社会の変化に対応する2つに注力し,その発展・展開を図ります。まず,「I dig Edu」です。これは教員研修用プラットフォームで,免許更新講習が発展的に解消された現在,教員の主体的な学びのための有用なツールとして開発いたしました。講座の一部は有料で,本学の自主財源の一つです。
 もう一つは,進展著しい生成AIの教育現場での利活用に関する研究で,附属学校をフィールドとして修士課程の教育AIプログラムの教育研究とも連動させて行います。このほか教育のDX化を注視し,スピード感を持って研究開発を進めます。
 附属学校では,今ほど述べた生成AIの教育現場での利活用の研究開発のフィールドとして参画するほか,毎年1,400名の教育実習先という役割をこれまで同様,きちんと果たします。
 教育実習は,今後の教員を育てる重要な業務で,一般校で行われている課題の教育実習への寄与も附属学校の役割と考え,進めていきたいと思っております。このほか,この2月に出された「知の総和」答申の中で言われている大学間の連携共同の中心として,地域の教職課程を維持確保していくことも今後は重要なミッションになってくると思っております。
 最後に,国への要望などです。この検討会での財政分析にもありましたように,教員養成系大学では人件費比率が高く,一方,外部資金の獲得額が低いという状況にあります。これは,ここに記したような小学校の教員養成や教職大学院のために多くの大学教員を配置しなければならないというようなことなどがございます。そうした中で本学では,都内の立地を生かした土地の貸付けや,先端教育人材育成推進機構で外部人材を獲得するなどして億単位の資金の調達を図っておりますが,到底追いつかず,附属学校は環境整備が進む公立学校に見劣りするような状況にあります。そして,さらに今後,「知の総和」答申にあるような連携共同の中心という役割も担っていくとすると,それなりの財源も必要となります。そのため,財政支援を含めたインセンティブの付与をお願いできればと思います。また,科目の開設方法についての規制緩和も連携共同のためには必要かと思います。また,附属学校の経営では,私立学校のように小中学校でも授業料を徴収することはできないかというような意見も出ております。こうした点について何らかの配慮をいただけると幸いでございます。
 時間を超過しまして,大変失礼いたしました。以上でございます。
【相澤座長】ありがとうございました。
 それでは,これから質疑応答に入りたいと思いますので,委員の方々から御質問がございましたら,よろしくお願いいたします。
 樫谷委員,どうぞ。
【樫谷委員】すみません,樫谷と申します。1つ質問をしたいと思うんですが,今,教員の成り手がすごく少ないというふうに聞いております。それはいろんな諸問題があるという私ども素人でも分かる話なんですけれども,今,国立大学法人の教員養成課程の受験者数というものの推移というのは,最近どのような推移をたどっているのかどうかというのがまず1つと,それから,それに対してどういう対応を大学として,なかなか難しいと思いますけれども,されようとしているのかについて御見解を教えていただければいいかなと思っておりますので,よろしくお願いいたします。
【國分学長】よろしいですか。
【相澤座長】どうぞ。
【國分学長】教員不足ということがございまして,受験の推移ということでございますが,合格者といいますか,教員採用のほうの資料で,すみません,正確な資料がないところで申し上げるのですけれども,確かに小学校,中学校,高校ともいずれも減少していっているわけですが,合格した人間の,しかも国立だけではないのですが,全体の傾向で申し上げますと,小学校の合格者において新卒者の割合というのは1万5,000人ですかね,一定で推移してございまして,一方で,既卒者の合格者が減っておりまして,その結果,全体として減少しているというようなことになっております。中学校は新卒者,既卒者ともに減っている。高校もそうでございまして,これは恐らく国立も,そして受験者も同じ傾向にあると思っております。
 そうした中で,私はいろんなところで申し上げているのですが,小学校については,基本的にずっと新卒者の割合が一定であるということは,小学校については,小学校の教員を希望した子は,ずっとその志を維持して受験してくるというか合格してくるという,その傾向はこのところ変わらないと。ところが,そうやって採用されていくものですから,既卒者が減っていて,欠員時のリクルートできなくて教員不足が生じていると。中学校,高校は新卒者も減っておりますので,恐らくそれにはやはり教員の,いろいろ報道もされております働き方の問題とか,そういうこともあって減っていっている。これは本学のことで申し上げますと,小学校と中学校についてでございますが,大体今申し上げたのと同じような傾向になっております。
 以上でございますが,よろしいでしょうか。
【樫谷委員】ありがとうございました。私は,まず根本は教育からというふうに思っておりますので,ぜひ,ここで書いていただいているように,優秀な先生方が教員になりたいという気持ちをまず持つということが一番大事だと思っておりまして,今,各大学で解決できる問題ではない事象があちこちに起こっておりますので,ぜひその要望についても,各国立大学の先生方から,文科省だけでは解決できないかも分かりませんが,出していただいていると思いますけれども,ぜひその解決についての御要望を,先生に会いたいという人が増えるような環境整備が一番大事だと思いますので,ぜひ御要望いただけたら――いただいていると思いますけど,今後ともいただけたらありがたいと思います。よろしくお願いします。
【國分学長】どうもありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【相澤座長】それでは,川合委員,どうぞ。
【川合委員】國分先生,ありがとうございます。川合でございます。お話,大変興味深く拝聴いたしました。国立の教育系の大学の特徴の一つは,実践の場である附属の学校を持ち,教育の知識と,実践とをフィードバックも含めてできるところだと思います。教育実習生の数等は,先ほどお示しいただいた数から大変な量の人たちを教育していることを,よく理解いたしました。附属学校では先生たちが実際に教育実習生の現場でのトレーニングに当たっていることに加え,実験的な先導的な学校教育のモデルの検証をしているというところも重要な役目だと思います。この点について,もう少し成果に対するアピールがあってもいいかなという気がします。私自身が附属高校の出なので,設置された70年ぐらい前の話としてお聞きしたことで印象に残っていることがあります。当時は男女席を同じくして学ぶと頭が悪くなるという風潮を払拭するようなトライアルとして,別学にしたクラスと同数にしたクラスと両方を並走させて何か違いが出るかを検討したところ,何も変わらなかったことなどを聞いています。ほかにも,幾つかの話を聞いてはいますが,世間一般に対してそういう成果があまり見えていない気がします。
 あと,学芸大学では,附属学校の大泉が国際バカロレア校になり,小中高まで一貫して国際的な教育システムを実施されていると思いますが,その成果がどうであるなども貴重な情報だと思います。これから益々国際化が問われる時代に向けて,ここでの面白いトライアルがあまり世の中に知られていないような気もします。もう少し分かりやすい形で外の世界へ情報発信やアピールされることも必要ではないかと思います。とても大事なミッションです。その辺の成果公表について学長のお考えがあれば教えていただきたいと思います。
【國分学長】川合先生,どうもありがとうございます。御意見として,まずは大変貴重な御意見ありがとうございます。附属学校OBとしてもありがとうございました。
 それでまず,成果のことなのですが,おっしゃるように発信が弱かったかなということは確かにございます。ただし,それも大分,附属学校の幾つかの学校に特に専任の校長を入れまして,うちは昨年度は2つ,今年度からは5つになるのですが,専任の校長を入れたところ,都から来てもらった方などが高校には入ったんですけれども,そうしたところ,ネットなどの評判では,高校は大分発信がなされるようになったというか,そういう評判を私,ソーシャルネットワークサービスなどで見て,ああ,やっぱり違うのかなと。ちょっと我々,そういう意味でおっとりし過ぎていたかなと反省したような次第でございます。その点,気を……。
【川合委員】すみません,今お聞きしたかったのは,附属学校の成果は大学の一部の成果なので,大学としての発信があまり見えないように思いました。附属学校は大学がシステムとして抱える教育の実践校なので,トータルとしての教育の成果の発信がもう少し分かりやすく出ないと,単なる受験校の一部だと思われているようでもったいないです。附属学校のミッションについても,発信されたほうがよろしいかと思います。
【國分学長】おっしゃるとおりでございます。ありがとうございます。それとバカロレアのことについては,先生おっしゃるように,我々としても,大変特色ある取組として誇っているところなのですが,ただ,これも確かに知られていないとは言えないのではないかと思うのですが,他県から同じような国際の義務教育学校をつくるに当たって,現職教員を研修生で送ってくるというような,そういう県が複数ございますので,それなりの知名度は得ているものかと思っております。先生の御意見,大変貴重なものとして承らせていただきたいと思います。ありがとうございました。
【相澤座長】ありがとうございました。
 それでは,そのほか。平子委員,どうぞ。
【平子委員】平子と申します。御説明ありがとうございました。去る2月に中教審の大学分科会から知の総和の向上に関する答申があったわけですけれども,現状の高等教育の競争力が国際的に落ちているという状況に鑑みますと,初等中等教育からの接続性が重要だと改めて認識しています。環境が変わっていく中で,これからの教員に求められる資質とか能力はこれまでと何が異なるのかについて教えていただきたいのが一点。それから,日本型の教育システムは,今後持続的なのかどうかについて。先ほど,国際バカロレアの話もございましたが,このようなことを標準としていくべきなのではないかと。特に貴学はフラッグシップ大学と認定されましたので,過去の伝統にとらわれないデジタル技術などの活用も踏まえた教員育成が期待されていると思うのですが,いわゆる日本型の教育システムの持続性,あるいは限界がないのかどうか御教示願えたらと思います。よろしくお願いいたします。
【國分学長】ありがとうございます。まず,これから教員に求められる資質として私,大事だと思っておりますことは,言うまでもないことなのですが,自ら学んでいくと。自律的に学ぶというような資質かなと思っております。そして,それは教員がそうであるから,子供にも基本的な学びの姿勢としてそういうものが伝えられるというようなことなのではないかというふうに思っております。
 それと日本型の教育システムは,非常に海外といいますか,我々,OECDと共同研究する中で非常に海外においても評価が高いというふうに思いましたが,今後はやはり探究型といいますか,これはバカロレアの学習のスタイルの基本,それと重なるんですが,今の日本の科目で申し上げますと探究ですが,探究と重なっていくようなところが非常に多くて,これが一つの国際標準であり,かつ,我々日本型としてやっていく一つの方向性かなと思っているところでございます。
 以上でございます。
【相澤座長】ありがとうございました。
 それでは,私のほうから1つ質問をさせていただきます。スライドの16ページ,右下に書かれている数字なんですけど,16ページ出ますでしょうか。このスライドです。ここに国への要望ということでまとめられております。そして第1番目に書かれている国立教員系大学の財務状況ということで,本検討会でも指摘したことが書かれております。ここはこの検討会としても大変クリティカルな問題であるというふうに理解しております。ここをどうしたら,よい方向に向かえるのかということが大きな課題であるわけです。これに対して教員養成系大学としてはどういうふうに捉えているのか,少々分かりにくいような気がいたします。ずっと下のほうに,国への要望のポツの4つ目でしょうか,財政支援を含めたインセンティブの付与ということが出てくるんですね。ちょっとこれだけでは何をどうしていったらいいのかということが明確ではないので,ここについての基本的なお考えを御披露いただければと思います。
【國分学長】端的に申せば,財政支援をお願いしたいということでございます。ここに記しましたように,小学校の教員養成には人を多く配置しなきゃならない。そして専門職大学院である教職大学院も,維持運営していくためには多くの教員の配置が必要だというような,これが根本的な事柄としてありまして,この部分は何としても変えられない部分でございまして,これは教育系単科,皆同じような状況になっているかと思います。ここに加えて,あと上のほうで記したような事情があるということでございます。策もなくてお金の要求ばかりでということで大変恐縮なのではございますが,何とかお願いできないかということでございます。
【相澤座長】ただ,そういう要求というのは,あらゆるところからいろんな形で出てくるわけなので,ここのところで,本検討会で国立教員養成系大学の特殊事情として人件費率が強いと,こういうような形で特出しをしているんです。ですから,ここに対応するにはどういう施策の展開があるのかということであります。例えば,教員養成系大学の機能に特化した形で一つの枠組みをつくって,その下で,その特化された機能実現に向けて国としてこういう支援するとか,そういった類いの何か,今までの枠組みそのものを見直した上での展開ということが考えられないものかどうか,あるいはそのようなお考えはないものかどうか,そこについていかがでしょうか。
【國分学長】大変難しい御質問でありまして,そういうことで申し上げますと,先ほど申し上げましたように,策がなくてということなのではございますが,私,今の公教育のシステムについては,これはよくできているものだというふうに思っておりまして,国際的にも評価が高く,日本型教育システムというようなことになって,OECDにも評価していただいているということかなと思っておりますので,先生の今のお答えに関しましては,今のところ私は,今の学校教育のスタイルで引き続きやっていくというようなことをイメージしております。すみません。
【相澤座長】私が指摘していることは,どういう教育をするかということではなく,これは大学の経営の問題なんですね。だから,その経営の問題として捉えたときに,教員養成系大学の特殊性を考慮して,国立大学法人の中に一つのそういう特殊化された機能を実現するための大学という形の枠組みづくりみたいな,そんなようなことを検討するということは考えられないものかどうかということをお伺いしたわけです。いかがでしょうか。
【國分学長】そのことで申し上げますと,例えばこれも,財務分析でもEグループとしてくくられているわけですよね。そうした中での教員養成系大学の特徴というふうに捉えていただいているということは,そういうことかなと思います。
【相澤座長】そのEグループ云々は,これは状況を分析するための考え方にすぎません。それでは,学長からの御意見を承るのはここまでとし,私どもとしてもさらに検討を進めさせていただきます。
【國分学長】どうもありがとうございました。
【樫谷委員】ちょっとよろしいですか。
【相澤座長】どうぞ。
【樫谷委員】樫谷と申します。二度目の質問で申し訳ございません。教員養成という,私,公認会計士をしておりまして,そういう会計的な考え方から申し上げますと,実は父兄なり本人は投資をするわけですよね。授業料という形でお金を払って,4年間あるいは6年間投資をしていくと。ところが,教員になったときにどれぐらいリターンがあるかと言われると,起業家になるわけではないのでそんな大きなリターンはないだろうというふうに思うんです。そうすると,払える授業料に限度が出てくるというふうに私は理解しておりまして,そうすると投資に値するようなリターンが出ているのかどうかということと,それから,出ていないならばどこかほかに財源を求めなきゃいけないと。それは正直な話,教育投資というのは私,国の責任だと思っておりまして,その投資の効果がしっかり説明できれば,文科省はもちろんそうですけれども,お金を握っているところもしっかり対応してくれるのではないか。政治家の方も理解していただけるし,国民も理解するんじゃないかと思うんですけども,なかなか教育というのは本当に10年,20年,30年でしか成果は分からないので,その投資の効果をどうやって,これやっておけば10年後はこうですよ,20年後はこうですよというのはなかなか説明できないと思うので,その辺の何か投資だと,教育投資を皆さん,学生はしているというような理解の中で,授業料の問題と,それから国の役割ですね。
 私は国分寺に住んでおりますので,実はいつも散歩コースになっておりまして,いろいろここに書いていただいていますような,経営努力として土地の活用をされているというようなことについては外からよく分かっておるので,やっていらっしゃるなというふうに思ってはいるんですけれども,それもやっぱり限度がございますので,国の助成,補助というのは,だから国立大学になっていると思いますので,私立はなかなかそこが難しい部分ではないかと私は思っていまして,国立大学として,それは国民に対してどう説明するかということが一番大事だと思いますので,我々という感覚で言うと,投資の効果はどうなんだと。金出したときにどれだけのリターンがあるんだというようなことを,平子委員おっしゃったような,国際バカロレアの話なんかも交えて説明していただけると大変ありがたいかなというふうに思っております。
 以上でございます。私,すみません,素人で申し訳ございませんが,思ったことを申し上げました。ありがとうございます。
【國分学長】ありがとうございます。最初に申し上げましたように,我々はやはり高等教育における職業教育をやっているのだということですので,採用率や教育委員会の評判というようなもので,やはり国立大学の出身者は違うと言っていただけるようなことを目指してやっていくということで,その点については励ましていただいたというふうに受け止めさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
【相澤座長】國分学長,どうもありがとうございました。これで東京学芸大からのヒアリングを終了させていただきます。
【國分学長】どうもありがとうございました。失礼します。
【相澤座長】続きまして,国立大学協会からのヒアリングを行います。永田会長,梅原理事,お席に着いていただけますでしょうか。
 それでは,永田会長及び梅原理事,全体で10分程度に収まるように御説明いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【梅原理事】どうぞよろしくお願いいたします。我が国の将来を担う国立大学の新たな将来像について,私からは,今日,会長がいらっしゃっていますので,概要について簡単に御説明申し上げたいと思います。
 わが国の将来を担う国立大学の新たな将来像ワーキンググループが取りまとめました内容でございます。本将来像は2040年の状況を見据えた内容となっておりますが,そのためには18歳人口の大幅な減少が始まる2035年までに準備を進めていかなければならないという認識でございます。ここにございますとおり,国立大学の決意として(1)番から(6)番まであるとおりでございます。
 まず(1),学生定員の外枠化等も活用して,留学生を3割に拡大したいということでございます。
 (2)にございますとおり,博士人材を3倍にしたいということです。国立大学は我が国の博士の7割を担保してございまして,数にすると1万人ですので3倍ということで,3万人を担保したいというふうに思っているということでございます。
 それから(3),アクセスという意味で極めて重要であると思ってございます地方の大学においては,学部,大学院の構成あるいは定員を見直すということでございます。地方自治体,産業界と連携して地方創生の主導的な役割を果たし,かつ人口流出抑制に貢献していきたいというふうに思っているところでございます。
 (4)でございますが,大学附属病院ですが,極めて厳しい状況ではあるのですけれども,研究力の強化・適正化をしっかりしていかなければいけないなというところです。初中教育もしかりだと思います。
 (5),(6)にあるとおり,我々としてはもう限界ですというのは,一大学一大学が頑張ることにおいてはもう限界ですという言葉を発出したんですけども,我々としては国立大学をシステムとして考えて,強化増大をしていくというふうに理解しているところでございます。
 右下のところにあるとおり,国立大学の存在意義は社会の発展と国民の幸福にあるというふうに認識しているところでございまして,この意識を国民に理解していただき醸成していかないといけないというふうに思ってございます。もちろん財政支援というのは重要でございますけれども,国立大学の財政的基盤の確保というのは,あくまでも我が国社会の高度化につながる未来への投資であるという認識でこの将来像を策定してきたところでございます。
 私からは簡単でございますが,以上でございます。永田先生,よろしくお願いします。
【永田会長】今御説明いただいた内容をもう少し補足させていただきます。全く同じスライドですが,赤文字が増えています。具体的にどのようなことを行うのかという観点で書いています。人が減ってしまって,我が国全体の知の総合力が低くなってしまうというのが一番の問題なので,数にしろ質にしろ上げないといけないだろうということです。これをこの人口減少の中でどのように行うかが一番の問いだということです。質のほうに関しては,今梅原先生のほうから出ましたが,大学院を充実するのだということで一つ,マスで考えれば修士課程,博士課程学生を増やすことで解決する部分があります。もちろん,学士課程の教育改革も必要だと思います。
 それから,数については減る一方ですから,これを減らさない方策の前に,まずその減ったものに対して我々がどういう考え方をしているかということを申し上げると,そこにあるように,学部の定員,留学生を3割入れるということは,その分,学部の定員,日本人がいなくなっているわけなので,そのぐらいの覚悟でいるということです。ただ,3割減らしたからそのまま留学生を3割採れるかというと,これは大変難しい問題だと思いますが,ここは拡大解釈をしていて,これまでに活躍できなかった分野に人が採れるなら,それも一つの考え方としています。例えば,お茶の水女子大学や奈良女子大学が新しい工学部をつくってきました。これは一つの対処の方法で留学生とはまた別ですが,今まで活用されていなかった部分を,そういう採り方をして教育をしていくというのも一つの手だと考えています。
 それから,入学試験を変えない限り,今申し上げた問題は解決をしなくて,3割も留学生が入ってくる時代になったときに,今と同じ入学試験ではとてももたないということなので,根本的にこれを変えないといけないだろうということです。それから,大学によって,ロケーションによっても違うと思うので,中には地域の中核として県庁の人材や市庁舎の人材などを育てなければいけない,そういう大学もあるでしょうから,そういうところに関しては自分たちの身の丈で考えた定員というものが必要になります。この考え方の基本は設置基準を変えないとできませんが,大学院と学士課程の定員を流動化させていただいて,全体として自由に例えば研究大学であれば大学院の店員を増やす。それから,そうでないところは大学院の定員を減らしてでも地域を支えるというなら支えましょうという自由度を持たせないとできませんが,それぞれの大学が考えて行うべきことでありましょう。
 それから,4番目でさらっと大学院の話をしていましたが,抜本的に論文の数から何から医学の領域は結構日本は痛んでいるため,徹底的に研究志向に戻さないといけないだろうということです。その際どうするかという問題で,ここだから申し上げることなんですが,卒後研修を今の位置づけから変えてもらいたいと思います。2年どうしても行えとおっしゃるのなら,別に最初に行わなくてもいいだろうということです。最初に大学の研究室に入ってからでも十分ではないでしょうか。そうすることで例えば大学へ戻ってくる若い方の比率は増えます。それで研究力も上がります。だからといって専門医を排除しているわけではなくて,ものには順序があるだろう,熱いうちに打てというようなことも考えております。
 それからもう一つ,次のページを少し御覧ください。耳慣れない言葉として,国立大学システムというのを今回,新しい将来像で書いているわけですが,これが何かということです。大学の設置のされ方からして,共通項が多い国立大学が全体で,単体ではできなくても全体ではできることというのをしっかりとお互いに考えて,研究,教育,社会貢献を行っていこうではないかという考え方です。教育分野のところを見ていただくと,赤文字で5行ほど書きましたが,例えば留学生をリクルートするのに,それぞれの大学が一つずつで行っていたとしても効率が悪いわけですから,もっと全体でリクルートする,協働して採ってきましょう。入学試験の改革もそうでしたし。逆に採ってきた留学生への対応について,何で単科大学が日本語の先生を置いとかなければいけないのか,んだ。そういうものは全体システムで日本語や日本事情を教える教育拠点をつくって,全体の中で教えていけばいいのではないかということです。こういうところはシステムとしてできます。なぜかというと,同じような考え方を持った大学集団だからです。もちろん連携課程等もつくっていくのは必要です。
 それから,研究のほうもたくさん行うことがあって,先ほどの卒後研修もありましたが,オープンファシリティー化や,時間の問題はかなり重要な問題だと思います。オープンファシリティーというのは,各大学で小さく行っている段階ではなくて,ある地域で,共有して使えるのであれば何でも使えるようにしないといけないと思いますが,どのぐらい行うことができるのか。これは各大学が大学の形態一つで考えているとなかなか難しいことなので全体でこれを考えていくようなことも重要だと思います。
 それから,配偶者帯同雇用と書きました。これは一地域でも大分問題です。旦那さんは来るが,女性は来ることができない。逆もあって,女性は来たが旦那が来ることができない。ポジションがない。これを幾つかの複合した大学で行うのであれば,地域の環境の中でこれを達成できるのではないか。こういうことによって男女共同参画も進めていきたいと思っております。
 そのほか社会貢献については,これは逆に申し上げると,地域というのはこういうふうにできていると思うので,産業界とともに,地域にとって大切なことを仕上げていくというのは,別に単体ではなくて集団でやれるであろうということです。
 最後に,このシステム自体難しい問題で,まだかじ取りをどうするかという問題は残っているかもしれませんが,能登の地震のときに,DMATは,1月2日に国立大学から全て現地に集合しています。これは掛け声がなくても集まっているわけです。それはミッションとして自分たちがこういうときには戦わなければいけないということを知っているからでありまして,こういう意味合いでこれを今度はシステム化していくということです。少し時間はかかりますが,まず,そういうものを精神的に共有できる団体としては希望が持てるやり方ではないかと思っております。
 補足でしたが,以上にさせていただきます。ありがとうございました。
【相澤座長】ありがとうございました。それでは,質疑応答に入りたいと思います。
 どうぞ,川合委員。
【川合委員】御説明ありがとうございます。特に最後のところで永田先生がおっしゃった国立大学システムという考え方は,非常に先鋭的な大事な考え方ではないかと思っています。これまで20年間,大学間の競い合いをずっとやってきた挙げ句,協力する体制と考え方がどっかへ飛んでしまっているのをもう一回戻そうというのはすごく大事で,特に教育に関しては自前で全部できる大学も幾つかはございますけど,もうそうじゃなくなった大学もある。それは弱体化ではなく,ある分野に精鋭化した大学がたくさんありますので,そういうところがグローバルな教育ができるように,精鋭化した学術分野だけでなくより広い視野に立った教育が提供できるようにすることが求められます。どこの国立大学に入っても,我が国の国立大学に入ればジェネラルな教育が必ず受けられるという体制はすごく大事だと思います。幸いにも,コロナ禍でウェブで授業するというシステムは当たり前になっていますので,配信のほうは簡単。それを評価するのをどこでやるかというのは決めないといけないと思いますが,国大協の呼びかけがあればある程度のシステムができるように思います。
 研究についても,大学間の連携が強化されることに期待します。多くの研究分野で大学の組織を超えた共同研究が一般的になっている中で,学位授与についても一大学だけから学位が出るという形ではなく,デュアルディグリーやダブルディグリーのシステムを国内で普及させることで,協力できる先生たちが一緒に手を結んで一個のディグリーに仕上げていくことを推奨すべきだと思います。そうすることで,学生さんは一大学の中での専門性を超えて,より多くの専門性を身につけることが可能になり,これまでにない分野に出ていく可能性を増やせるのではないかと思います。そういう意味では,この国立大学システムというのは,まさにこれからの国立大学の在り方を問い,磨き上げるすごく大事な形になれると思いますので,ぜひ推進をしていただければと思います。
 地域との連携は特に大事で,先ほど配偶者帯同って,うん,帯同ねと思いながら聞いていたんですけど,複数の勤め先を同時に探すのは大学だけでは困難でも,産業界や公の役所も含めて,みんなで協力する社会現象にしていく必要があると思います。大変いい提案だと思います。ありがとうございます。
【永田会長】ありがとうございます。簡潔にお答えします。教育に関しては,四国が良い例です。四国のそれぞれの大学では,教育学部や教職課程を持っていますが,今,5大学で共通で授業を持って回しています。一つではもう支え切れないという状況です。それから,研究については今出てきましたが,考えてみると,外国の大学とデュアルディグリーとかジョイントディグリーは平気で行っているのに,日本人同士だと仲が悪いというわけのわからない状況になっています。どこぞやにお互いコラボレーターだけどコンペティターだというのが身に染み込んでしまっているのがよくないと思っています。教育を受ける側は関係なくてベストフィットさせればいいので,先生がおっしゃるように,国内だって幾らでももっとできるだろうと思います。ありがとうございます。
【相澤座長】平子委員,どうぞ。
【平子委員】永田先生,ご説明ありがとうございました。説明資料にある,教育と研究と社会貢献は高等教育の大きなミッションだと思いますが,大学教員の立場から考えたときに,なかなか人材も十分ではない中で,どうしたら魅力的な職業になるのだろうと考えました。やはり自分たちのやりたい仕事ができる環境や仕組みづくりは必要なのではないかと。つまり,自分の意思が伝わるような環境や仕組みにしていかないと,人が集まってこないのではないかと思います。自分が自ら優先順位をつけて,自己決定ができるような仕組みになれば,教員のウェルビーイングは上がっていくのではないかと思いますので,そういった仕組みにしていくのかどうかということをお聞きしたい。もう一つ,テニュア制によって数年間は非正規でしか雇用ができないという雇用の不安定さが,大学教員になる障害になっているのではないかと思いますが,雇用の安定性についてどうお考えなのか。
 女性の教員を増やすことも非常に大事だと思っています。そのためにライフイベントすなわち,出産・子育て・介護などに対する配慮を今後どう考えていらっしゃるのか。大学教員の視点から質問させていただきました。よろしくお願いいたします。
【永田会長】ありがとうございます。今御指摘いただいたのは,ほとんど一つのシステムの話です。要は今の教員業績評価のシステム自体が,多分適正ではないということに依存していると思います。まず分野が違いますから同じ指標で評価できるわけもありません。まさか人文学の先生と医学の先生を評価するのに同じ基軸ではないと思います。それぞれプロパーに分野最適になるようにまずしなくてはいけないということが1つです。その間で,それが充足されるときに多分,教員が文句を言わなくなるので,その次の段階として,インセンティブ付与と,インセンティブの逆になるかもしれませんが,選択というのを選ばないといけません。インセンティブというのは,例えば時間をあげるとか,お金をあげる,そういうことになるわけですが,より研究に例えば集中できる環境を与えることです。そうではないほうは,逆に申し上げると,能力からいってもここは教育に重きを置いてください,これは当然だと思います。
 そこの段階に持っていくにはその評価システムをきちっとしないといけません。これは多分,全世界が悩んでいる部分であって,自然科学系だけであれば比較的簡単です。文系の中ではいろいろあって,本を何冊出せばいいなど,いろいろおっしゃるのですが,これを一緒にするというのはなかなか難しいです。筑波大学のように芸術や体育があると,芸術は作品が出てこなければ意味がないので,作品と『Cell』,『Nature』,『Science』といったものをどう比べるか,それはもうほとんど不可能なわけです。私は分野適正のシステムがどうしても必要だと思います。先生を生かすことにもなるだろうし,違う道もあるだろうと思います。ちなみに,第三の職,つまり専門職というものを公募すると,比較的教員からも出てくる時代になりました。つまり,自分はこの専門のこの部分は得意であるが,社会貢献も教育も全部はやらなくてもいいというような方も出てきているので,ここからは,今申し上げたようにプロパーなエバレーションができると,素直にある程度移っていけるだろうと思っています。
【平子委員】ありがとうございました。
【相澤座長】そのほかいかがですか。
 柳川委員,どうぞ。
【柳川委員】貴重なお話,ありがとうございました。先ほどお話があった最後の国立大学システムというもののもう少し具体的な細かいイメージをお伺いしたいんですけれども,これ,国立大学を一つの単体としての組織体として考えてしまうというふうになると,当然,多様性も失われてしまうので,そういうイメージでもないんだろうと思うんですね。川合先生がおっしゃったように,共通化する部分は共通化して,個別性の独立性を持つものは独立性を持つという,こういう話だというふうにまず理解しているんですけど,じゃあ,現状の国立大学法人を全部共通化したほうがいいのか,それともその一部を,強調したいというところだけをグループ化してというイメージなのか,ちょっとその辺りがよく分からなくて,併せて公私立大学との連携も強化というお話が2ページに書かれていたので,そうすると必ずしも国立大学ではなくて,私立大学や公立大学も含んだ何か共通部分をつくるというイメージなのかなというふうに考えたり,あるいは地域でというお話もあったので,そういう意味では,国立大学に必ずしも限定せずに,例えば四国なら四国で大学で共通部分というものでもいいのかなと思ってみたり,具体的にシステムとおっしゃったときに,どういう枠組みでどういう組合せで考えているのか,かつそれを具体的に誰がどうやって組み立てていくのかというのがもう一つ難しい問題としてあるんだと思うんですけど,当然,いきなり連携にはいけないというのはよく理解しているんですけど,どういうものを目指していらっしゃるのかという,もう少し深掘りして教えていただければと思います。
【永田会長】オペレーションシステムの基盤としては,例えば入試のようなものというのは多分,一緒にこれからもやっていくだろうと思います。もちろん,個別的に個性ある入試を行うのは当然のことです。しかし,ファンダメンタルなところは一緒に行うだろうと思われます。先ほど申し上げた日本語の教育とか,日本人の教育で留学生に教養する,こういうものもほとんどニーズは同じです。例えば,国立大学であれば理系のかなりの部分を今カバーしているわけですから,同じニーズで例えば同じレベルのものを教えなければいけないというようなところはきちんと協働していけます。既にその準備はされています。
 一方で,地域はまた別なので,ここにちょうどありましたが,現在,文部科学省のほうで予定されている地域研究教育連携推進機構という,この枠組みをどうつくるかが注目されるところです。今現在,大学等連携推進法人はありますが,まだ十分に高いレベルで機能できる仕組みにはなっていません。これが今おっしゃったように,私立も公立も一緒で良いのではないでしょうか。必要があれば当然,各地域地域ではそういうものになっていっていいだろうと思うし,国立もそこで協働することを別に嫌がっているわけでもないと思います。大学等連携法人の一例では,山梨大学と山梨県立大学はもう一緒に,ある領域の教育を行っているというような事態もあるので,地域においては,その地域プロパーなものの考え方をされるべきであろうと思います。
 それで問題は,聞いていらっしゃる方にもぜひとも申し上げたいのですが,自治体,地域のガバメントが参入しないと多分うまくいかないと思います。地域にどんな産業をつくっていくかとかということを一緒に考えて人材育成しないと,多分うまくいかないわけです。ですから,そういうものを国立大学全体で行おうとは思っていませんが,例えば半導体を教育研究するときのその地域で必要なものと,基本的に半導体で絶対教えなければいけない,人材育成で行わなければいけない,というものは一緒に行えます。実際そういう動きになっていると思うのです。ですから,そこはうまく地域地域に合わせながら,全体としては,ある水準を維持してそれをお互いに供与できる,需要できるという関係ができる部分では,早々に多分このシステムが動き始めと思います。そんな簡単ではないと思いますが,やはりそういう意識で行っていくことによって補完的であり,不必要なことは行わなくてもいいだろうというふうには思っています。
【柳川委員】ありがとうございます。
【相澤座長】そのほかいかがでしょうか。樫谷委員。
【樫谷委員】ありがとうございます,御説明いただきまして。今御説明いただきました資料3-3の1ページの一番右下に,国立大学への財政的基盤の確保は,我が国社会の高度化につながる未来投資への投資であると。これはもうまさにそのとおりだと,こういうふうに思っております。ただ,我々会計士的な感覚で言うと,投資をする価値があるのかどうかというようなことを国民の目から見られるわけですよね。そこについてはなかなか難しい,本当に価値があるのかどうかについて,単なる――単なるというか,応用研究とか商品化研究と違いまして,非常に難しい部分があると思うんですけれども,ここについて少し,国立大学を否定する人は誰もいないと思うんですけど,本当にどこまで金を出せばどうなるんだということについて誰も説明できないと思うんですよね。つまり,欲しい欲しいというのは,多分足らないんでしょうね。では,どこまで足らないんだと。どこまで行ったらどういう効果が出るんだということを説明できるのかどうかちょっと分かりませんが,国民としてはできれば知りたいと思うんですけども,その辺はどうお考えでしょうかね。例えば,つまらん話ではありますけれども,経営努力をする中で,つまらん話ですが,留学生の受入れを拡大しましょうと。留学生の授業料というのは,日本国民の授業料と同じなんですかね。それとも何か差があるんでしょうか。あとは国際的に,うちの国立大学,同じ国立大学があると思うんですけど,どれぐらいどう違うのかもよく分からないので,その辺の説明もぜひ国民に対していただけるとより理解が深まるのではないかなと思いますので,よろしくお願いしたいと思います。
【永田会長】ありがとうございます。留学生の話が最後だったのでそこから始めると,例えば留学生比率というのは一体どのぐらいが現状かというと,現在,大手の大学で一番比率が高い東京大学でおおよそ16%ぐらいだと思います。次が筑波大学で15.5%程度だと思います。これが今頭打ちで,欧米の諸国と同じように25%ぐらいが適正だと思います。まだまだ世界的なレベルでのグローバル化が達成されている状況ではないと思います。
 同じ留学生に関して今度は授業料の設定を考えると,省令が変わりまして自由に設定できるようになっています。ただ,問題がありまして,行ってみて初めて分かるのは,奨学金のほうが同じだけ出ていくという大問題があります。当たり前ですが,年収というのをどう見るかというのを今徹底的に行っているはずですが,日本に家庭のない留学生の場合,年収は基本的にゼロなので,そのベースでいくと,そこを支援しなければいけないので,入った分だけ出ていってしまうというわけの分からない状況なので,これは変えないといけません。
【樫谷委員】フリーキャッシュフローはゼロということですね。
【永田会長】ひどい場合は,そういうことになりかねないわけですが,それはルールを変えていくことで変わるだろうと思います。
 それから,研究ということに関して申し上げると,多分,産業界と一致しているのは,社会でどれだけ役に立つ人材として,大学院生が出ているのかという辺りが一番の議論のポイントかと思います。先ほど申し上げましたが,博士課程の7割5分は国立から出ているので,ここからしか育たないと思っていただいて結構だと思います。ただ,今度は社会でと言われると,これも今調べている最中ですが,徐々に増えてはいますが,先生たちの頭の中がまだ博士課程イコール大学の先生というところがあるので,その部分は変えていかないといけません。産学で3か月に1回ぐらい朝食会をしながら話をしてお互いの理解度を深めているところですが,相当に両方は歩み寄れる状況までは来ていて,インターンシップにしろ,それからジョブ型雇用にしろ,もっと徹底的に拡張しようということで経団連の大手の企業がようやく動いていただいています。我々も当然,自分の同級生も9割方は企業で頑張っていたわけで,当然,企業でもっと頑張る人は出ると思います。これは僕らのほうの自覚も変えないといけない部分であるのは確かです。
【相澤座長】そのほかいかがでしょうか。
 服部委員,どうぞ。
【服部委員】国立大学の在り方について今いろいろと議論しているわけですけれども,戦後から全国各地に国立大学が整備されてきて,各県に一つは国立大学が設置され,高等教育に関する一定の幅広さと,それから専門性の高さを多くの国民が身近に感じられる,そういう存在に国立大学がなってきています。これを人口減と言いながらも壊してしまうのはもったいないし,すべきではないと思います。国立大学の機能を維持しながら,しかも効率的にしっかり活用していくことが大きな課題だと思っています。そこのところにつきましては,各国立大学もしっかり考えていただきながらも,またこの会議でも議論できればと思っています。
 その前提の下で,今回,国立大学システムの具体的な内容をお示しいただいたことについて,ありがたく思っています。一方,今大学間の連携がいろいろ行われている中で,この国立大学システムはどういう位置づけになるのか。しっかりした制度として考えておられるのか,それともいろいろな大学連携の中で,国立大学としての共通意識として考えるのか,捉え方によってかなり変わってきます。
 もう一つ気になるのは,資料を見ると,基本的には何らかの形で学生定員を見直していく,結局,削減の話だと思うのですが,あわせて教員も削減せざるを得ない状況になってきたときの在り方を考えておられるのかなと思いました。このとき,前提として先に各国立大学が自分の強みとする機能を選び,そして特化していくということも必要かと思います。このことと,国立大学システムが整備されていくことの時間差というものがあるのかないのか。2040年を見据えた取組としてもう時間的余裕がないわけで,そこをどのように考えておられるかをお聞かせいただければと思います。
【永田会長】ありがとうございます。究極の御質問だと思います。制度とするかということについては,制度にはしないと思います。制度にすることで各大学の個性や自由度がなくなるのは,これまたいかがなものかとは思っています。ただし,制度に近いことでできることというのは,定員の問題だと思います。定員をお互いどこでどう充足し合うか。つまり,学士課程の学生がいなくなっても困るわけで,大学院の定員を増やすということは,当然ながらそれだけの学士課程と留学生を増やしていかなければいけないわけですから,その分担をおのずと話合いで決めるしかない。その話合いというのは一部自由競争も入っているかもしれませんが,同じ方向を向いていることだけは確かで,つまり,何が何でもマスで知恵のある人をとにかく増やさなければいけないというコンセンサスはあります。今のままいくと,あっという間に偏差値が6点,7点下の子を採らないと充足しないわけですから,それは国立大学のプライドとして行わないことですから,その部分を一体どうするかということが多分,肝です。それがシステム全体を動かすことになります。地域で人がいなくなってしまうようなことを,逆に都会の大学は犠牲を強いてでも行わなければいけない。つまり,そちらに分配しなければいけない可能性があるというわけなので,多分,定員の問題を全総数で考えると,それなりに賢い結論になると思っています。
【服部委員】どうもありがとうございました。大体分かりました。あと1点,これは要望なんですけれども,永田先生が説明された資料の3ページ目に,「若手研究者の海外渡航,海外研究者の招聘等で地域を超えた流動性拡大」と書かれています。ここを読んで思ったのは,地方大学はなかなか人員が厳しいので,海外に行きたくても,自分が行ったら授業に穴をあけることになるから行けないという,海外に行くことを躊躇してしまうような状況があります。このような場合に例えば国立大学システムとして他大学の教員が授業を代わりにやってくれるとか,そういうことが可能になれば教員の海外研修の機会も増え研究力も上がると思いますので,御検討いただければと思います。
 以上です。
【梅原理事】しっかりこれは検討しておりまして,ワーキンググループの中では。ただ,全ての大学にコンセンサスを取るまでは行っていないと思います。しっかりとこれからコンセンサスを取っていきたいと思います。
【相澤座長】よろしいでしょうか。福原委員。
【福原委員】どうもありがとうございました。簡単に申し上げます。国立大学システムという概念,またこれを一つの概念として提示していただいたことで大変多くのことを学ばせていただいております。各都道府県別に設置されてきた国立大学というものと,それからここで全国的な国立大学システムということで提示されているわけですが,かつて別の機会に,海外の大学の規模と,それから日本の大学の規模というものを比較したときに,日本の一つの大学の規模というのが小さいのじゃないだろうかといいましたが,都道府県単位というよりはもう少し,都道府県よりも道州制をという意味ではないんですけれども,いきなり全国的な国立大学システムというよりは,幾つかの地方性を持った国立大学の連合体というようなものがもうワンステップ間に入ってくる余地はないんだろうかと思いました。いきなり全国型の国立大学システムという概念の下で機能を強化するということのステップとして,そういった地方といいますか,地域といいますか,もう少し広い意味での地域ですけど,こういった地域での国立大学システムというものが考えられないだろうかというようなことを,ほかの議論でしたことがありましたので,その点についてお考え等お聞かせいただければと思います。
【梅原理事】ありがとうございます。おっしゃるとおりでございまして,我々ワーキンググループでも,いきなり全国区ではなくて,各地域地域での国立大学システムを構築するべきということはございました。それぞれの地域で全く事情が違いますので,例えば東北地方,四国,中国,近畿,関東,全て違いますので,それぞれの多様性をしっかり生かしたようなシステム,それから全国区という階層性ですかね,ここに関してはかなり議論をしておりまして,実際そのように動いていくんだろうなというふうに思っているところでございます。
【福原委員】ありがとうございます。
【相澤座長】かなり時間が過ぎましたが,会長お忙しいようなので,最後に私からのコメントと質問を兼ねて申し上げたいと思います。
 今回,決意表明という形でまず明確にされた。これが画期的なことではないかというふうに思います。そして,国立大学システムをつくるんだと,こういうことをおっしゃった。そこまでは極めて明解であると思います。そこで永田会長は,かじ取りが問題なんだけどということをふっと言われました。私もまさしくそこが問題ではないかと。今まで機能分化とかいろんな表現で,今回,国立大学システムとして提案されている中身はこれまでも出てきていると思います。この考え方をがちっとした制度としてつくるのではなく,各国立大学の自発的な意思でつくり上げていくという,これも今まで進んできたことではないかと思います。問題は,やはりかじ取りのところだと思います。ここは決意表明に並んで,国立大学協会というものがそのかじ取りの中核として働いていくという考え方がおありなのか。あくまでもこういうことを出して文科省に問いかけて,そして文科省がどう対応するかというこういうやり取りで進んでいくのか,その辺のところの基本的なお考えをお伺いします。
【永田会長】ありがとうございます。基本的にかじ取りというのは,出来上がったものとして考えれば,そこに船長がいて,クルーがいて,全体を動かすことなのでいつかそうなるのかもしれません。しかし,ここで申し上げているのは,その方向に向けるかどうかということです。各大学がこの決意,これは一応,85大学の学長のイエスが出ている文章ではあるにしても,真の意味でここにあることを理解させるところまでは国大協のマストの役目です。それは何度もいろいろなディスカッションをして,けんかしようが何しようが,この考え方を一緒に考えたわけですから,実行していくところ,そこまでは責任を持たないといけないと思います。実際,理事会や総会の中では,これについて当然,気に入らないとおっしゃる向きもありましたが,そこは何時間かけてもこうだと議論しました。今回初めて定員のことまで踏み込んでいるわけですから,このシステムの理解だけではなくて,動かすための基本方針については責任を持たないといけないと思います。かじ取りそのものは高専機構みたいになっても少し困るとは思うので,それはまた別問題だと思います。
【相澤座長】そこまでがまた重要なことと思います。もう一歩進んでいただくことが,緊急に求められているとご理解ください。私はこの検討会の座長として,ぜひそこを明確にしていただくことをお願いしておきたいと思います。
【永田会長】ありがとうございました。当然のことながら,自分たちで立てた決意ですから,その決意を今度は具体的に行わなければいけないので,そこまでは責任があると思います。ありがとうございます。
【川合委員】ちょっと簡単な質問。
【相澤座長】ヒアリングのことで?
【川合委員】はい。
【相澤座長】では,簡単にお願いします。
【川合委員】学生数の3割相当を国外からの学生とする。もうこうなると国内問題じゃないので,国際市場の中でいい学生を集めてこないといけない。今,日本の学生の待遇は国際的に見てあまりよくないですよね。これを整えないと目指すクオリティーの人たちは集められないと。これは教員も同じです。ここはやっぱり少し上に向かってほえないといけないところじゃないかと私は思っているんですけど,それはどういうふうにこれから責任を持ってほえていく予定か。
【永田会長】学生全体のマスも大きいので,そう簡単に出してくれたといったってそうじゃないんですが,少なくとも先生のおっしゃったこと,例えば,今のトランプ政権で研究者や研究者の卵たちがアメリカに行くことをやめる,あるいは戸惑う,このときに積極的に取り入れられていません,日本は。この程度じゃやっぱり駄目で,国の議論として,こういうときに自分たちの知の総和を増やしていく一つの手段として考えなきゃいけないだろうと思うんです。そのレベルなので,可及的速やかにということは,例えばそういうところでは主張しながら,それからそういうものが動いていくためには,ファンダメンタルな僕らの学生や研究者のシステムも向上していかなきゃいけないということで,今すぐはできませんけれども,でも,意識はそういうところにあって,研究者の仲間を救うとは言いませんけど,そう言うとトランプに殴られそうですが,そういう困った状況でも我々国際社会の中の一員としてやっていけるような状況をつくるということから,一緒に国民とも話し合いながら,ぜひともそういう国にしたいと思います。
【相澤座長】それでは,随分時間をオーバーしておりますが,国立大学協会からのヒアリングはこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。
【永田会長】ありがとうございます。
【相澤座長】それでは引き続いて,委員の間の議論に移りたいと思います。国立大学協会からのヒアリングの際に,本検討会としても重要な課題が次々と出てまいりましたので,そこでの意見交換が延びたということは実質的な議論が進んだということでご理解ください。
 それでは,これから委員の間の意見交換に移りたいと思います。ご発言の方は,名札を縦にしていただくようお願いします。
 では早速,上山委員,どうぞ。
【上山委員】すみません,永田先生がおられるときにしゃべればよかったと思うんですけれど,高等局としてこの国立大学システムという国大協が出してきた考え方をどういうふうに差配をされていくのかが私としては最大の関心事です。国立大学が重要だというのは,これは論を待たないことではありますし,大学間で調整をし,様々なことを連携の中で国立大学協会が果たしていこうとする方向性はそんなに間違ってはいないと思いますけど,その調整なるものを国大協が中心となってやれると高等局としては考えてはおられないと思うんですよね,恐らく。なぜかというと,これ評価も全部しなければいけませんし,コストベネフィットも計算をしなければいけないでしょうし,要するにグランドデザインを描くということになるわけですから,グランドデザインを国大協が行うのかということの最大の疑問がやっぱりあります。
 この類いのものはガバメントなんですから,ガバンする人,ガバナンスをガバンするということです。一体どこがガバンをするのかと,このシステムなるものをですね。そこがやっぱり最大の分からないところで,ガバンをするとなれば,それは当然,それをガバンするための予算の確保を,例えば国大協がやるなら国大協がこの予算を取ってくるというぐらいの決意がなければ,このシステムは動かないなと話を聞いていて思いました。それを全体の高等教育のグランドデザインの中で,このシステムなるものをどういうふうに取り入れていくのかは多分,最終的な報告書の中で書かれるんだとは思いますが,何よりもシステムを動かす資金をどうするのかということは,やっぱり最大の疑問として感じます。これが1つです。
 国立大学がとても重要だということは私もずっと思ってはいますけど,一方で,国がやるべきことというのは,国民に対して高等教育の選択の幅を広げると。様々な選択肢を提供するということがやっぱり僕は大きいと思っていて,地域や地域の中で活動するような大学の資金源の在り方はこういうものですよと。したがって,そこの中でこういう選択が国民はできます,あるいは先端的な大学ならこういう仕組みの中でどういう大学を選ぶんですか,それは皆様がお考えになることですよという,この非常に多様な選択肢を国として国民に対して提供していく。その国民に対して提供していくための資金源はこれこれのものがきちんと用意されているという絵を描いていくということがやっぱりガバメント,ガバンする側の,むしろ文科省の決意なんだと思うんです。国大協的なシステムの上にさらにある高等教育行政のグランドデザインのシステムということに,きちんとそれぞれの個別イシューごとに資金の裏打ちがされて動かしていけるような仕組みをつくるべきなんじゃないかなとは思いました。
 永田先生は本当にエネルギッシュな方なので,やるぞみたいな感じがいつもあるんですが,多分,じゃあ,国大協がお金取ってくださいよと言った瞬間に,そんなことはできませんよねって話に恐らくはなるんだろうと。そうすると,それをじゃあどこがやるんですかというのが文科省に突きつけられているんでしょうし,運営費交付金を今後じゃあ,国立大学システムを動かすためにもっと拡大しろという議論だけで終わるのか,もっと多様な財源のところまで踏み込んでいくのかということは国大協も考えないといけないんじゃないかなというふうに思いました。
 私の意見でございます。よろしくお願いします。
【相澤座長】今,上山委員の指摘されたことは私が先ほど質問した意図と重なっていると思います。国大協としてせっかく決意表明までして国立大学システムということを出してきたものの,国大協の中でもいろいろと意見がふぞろいのところもあるということです。そこはきちっとして,国に対してはどういうことを求めるのかを明確にしていただきたい。そうでないと,文科省としても対応しにくいのではないかというふうに思います。永田会長は先ほどその筋を理解されたと思いますので,対応を待ちたいと思います。
 それでは,そのほか御意見いかがでしょうか。川合委員,どうぞ。
【川合委員】今の上山さんのご指摘によると,選択肢を与えるところが高等局のミッションであると。その選択肢の中に国立大学も入るわけですけど,じゃあ,国立大学というのは一体何なのか。国立大学に与えられているミッションは何なのかという,そこの定義が非常に曖昧に思えます。教育系大学について問うと,国立の教育系の大学のミッションは何か?教員養成のミッション,新しい教育システムの考え方を提示するなど,教育関係の様々なことを提示していくなど,本来はそのミッションを定義してあげないといけないんじゃないかと思います。國分学長はあまり御自身の口ではおっしゃらなかったですけど,座長が何度も聞いていたように,国立大学の教職課程というのはそれなりのミッションがあるはずだと思います。国立大学のミッションがあまり明確に示されていないということを私は今回この委員会に出て知り,ちょっと愕然としております。
 今後の20年,国立大学を続けていく上では,これはどういうことを担っている大学のシステムなのかというのを定義すべきではないでしょうか。先ほどの多様な選択肢の中で,私学なの,国立なの,公立なのって,何だかいっぱいありますねだけで終わってしまって,じゃあ,国立の大学というのはどういう特徴を表して,国のためになる施策をするべきところかという辺りのところまで本当は定義をすべきではないかと感じています。難しいことかもしれませんが,明治維新のときに明確にあった公僕をつくることみたいなところまでは行かなくても,何かもう少し定義があってしかるべきかと。その定義がちゃんとあれば国費を投入する意味合いも明確になるはずで,そこの軸が少し薄くなっているせいでこんな議論をずっとしてなきゃいけないのかなと思います。
【相澤座長】この辺りのところで,文部科学省としての基本的なお考えをいかがでしょうか。
【井上国立大学法人支援課長】ありがとうございます。上山先生からもお話をいただいたり,相澤先生も投げていただいたりした,今回,国立大学協会でまとめられたものというものは,永田先生もおっしゃっていましたけれども,極めてベーシックな,本当にベーシックな共通的なここは賛同できるというものだと思っておりまして,この論点整理のときにも,もう先生方にまとめていただいていたんですけれども,恐らく今後,本当にこれをどう解像度を上げて,どこをどうさらに目的に応じて構造化して,それをどの順番で時間軸でやっていくのかというのは,相当個別に整理をしていかなくてはいけなくて,そのためには論点整理でまとめていただいたように,各法人と我々のほうとで議論を非常に深掘りしていく必要があると思っております。その中で,エリアというような今日御意見とかも出ていたので,つまり,法人とだけではなくてエリアでどう考えるかといったときには,ある程度グルーピングされたところということもあるんだなということを伺って聞いておりました。
 大学の場合のガバナンスというのは,一緒に資金の出どころのことも考えると,国立については大学だけで動けるわけでもなく,当然,政府だけで動けるわけでもないので,一緒に議論してやっていくということだと思っておりますので,まさに今日いただいたヒアリングでの御発表とか先生方の御意見を踏まえて,我々のほうでまさにそれの解像度を上げて,参考資料1のスケジュールの中でどう落とし込んでいくかというのをやっていくということだと思いますので,その辺の観点がよりクリアになるような少し先を見た意見とか考え方を先生からもいただいて進めていければというふうに思っております。
【相澤座長】そのほかいかがでしょうか。
 柳川委員,どうぞ。
【柳川委員】ありがとうございます。先ほどから出ているミッションを明確にというのは,やはり非常に重要なところなんじゃないかと思います。そもそも論なので,そもそもこういう議論をしているのはそういうことだと思うんですけど,もう少し短期的に見えるような政府の言葉でいけばKPIとか,パーパスどうするのかというのを政策としては出していかないと評価ができないということなんだと思います。そのときに,恐らく国立大学というのは一つの固まりで,一つのミッションでというのは大分難しいんだと思うんですよね。結局,お金の出どころと,ガバナンスの形として一つ国立大学法人というのがあるわけですけど,お金はやっぱり私立大学のほうでも政府がお金を出しているという形からすると,要するに,株式会社ならみんなミッション一緒かというと,そういうわけじゃないわけですよね。それぞれ何をやって,何を目的としてつくられているか,何を目指すかというのは当然違っているわけで,それはさっき解像度を高くとおっしゃっていたやつは,国立大学というところだけで,じゃあミッションは何でしょうと考えちゃうと,本当に総論的な話で終わってしまうので,具体的に今何をやっていて,これから何をやろうとするのかということをもう少し一個一個,あるいはもう少しグルーピングするのかもしれませんけど,やっぱりそれはやっていく必要があるんじゃないかと思います。その一つの切り口の仕方は,物理的な地域で切るやり方ですけれども,もう少し違うグルーピングの仕方もあると思いますし。そこは少し我々としては幾つかの,どういう切り口でやるかを少し具体的に考えないと,ずっと同じところをめぐっちゃうんじゃないのかなという気がします。そのことは国立大学協会として一つのまとまった動きをするとか,国立大学システムを考えるということと必ずしも矛盾することではないと思うので,そういう一つの,我々は国立大学法人としてどうあるべきかということを最終的には一つメッセージを出すにしても,その中の個別論はかなり具体的なことを見ていくということなんじゃないのかなと。もう少しその辺りのきめの細かいグルーピングをこの後できればなというふうには思います。
【相澤座長】上山委員,どうぞ。
【上山委員】私も文科省と一緒にこの類いの話をずっとしてきたときのこの数年間の最大の思いは,高等教育の教育と研究にもっと国家投資をどういうふうにきちんと理屈のある形で導入することができるのかということで,柳川先生も同じようなことをお考えだとは思うんですが,将来のために国はここに投資すべきだといくら言っても,それはなかなか通用しない話で,そこはかなり綿密な絵姿をつくっていくことが最大に必要です。例えば,国立大学協会が出している大学システム,これは結構だとは思うんですが,私たち,僕はCSTIの常勤議員をやっていったときに文科省と一緒にやってきたJ-PEAKSというのは,これは国立大学がかなり中心ですけども,私立も公立も入った形で違うゲームをしようとしているという大学を選定しました。違うゲームをすることによって国家投資をちゃんとできるような理屈をつくっていくということであったと思うし,今でもそういうふうに思っています。ここに将来的に国が資金を入れなければ,我が国の将来に大きな禍根を残すぐらいの気持ちは基本的に文科省とも共有しているんですが,それをつくる理屈として,今日のお話をいただいたシステムとして国立大学がまとまっていきますというだけで,果たして,例えば財務省の人たちが,そうですかというふうになるとは私は思えませんね。どういう違うゲームが走り始めているのかということを具体的に見せていく。例えば博士課程人材の話も同じですけど,それをもっとリファインして,国民から見てどう考えてもここに資金を入れなければいけないという仕組みづくりをつくっていくことがやっぱり重要なんだろうと思います。私の意見です。
【相澤座長】どんどん手が挙がってまいりました。平子委員,どうぞ。
【平子委員】柳川先生からグルーピングの仕方が非常に大事だという話をしていただいたのですが,まさにそのとおりだと思いました。国大協の案は,国大システムという大きなくくりの中での議論ですが,もうちょっと細かなグルーピングをしてもいいのではないかということでもありました。前回,私も,ハブ大学とスポーク大学の話をさせていただきましたが,同じような考え方です。現在80以上ある国立大学の価値の総和を大きく高めなければならないと考えると,地方の国立大学の果たす役割は非常に大きいのですが,人口減とか人材減に苦しんでいる状況下,グルーピングの中でどうやって価値の総和を最大化できるのかを考えさせる環境づくりが必要ではないかと思います。各国立大学が自分たちで考えなければならない時期が既に来ていると思います。自分の大学の価値を高めるためにどこの大学と提携すれば価値を最大化できるのかという視点でグルーピングは決まるのが望ましく,決して固定的であってはいけないと思います。地域ごとのグルーピングは一つの案ではありますが,固定的になってしまう可能性があるので,そうならないダイナミズムを取り入れられる仕組みが必要ではないでしょうか。
【相澤座長】ありがとうございました。
 それでは,川合委員,どうぞ。
【川合委員】多分,国大協が言っている大学のシステムって,一つ一つの大学がどこの大学と組みますかという大学同士の統合の話ではなくて,事業の共有,大学としてやるべきいろんなアイテム自身を共有していくことが含まれているので,これまでの独立した一個一個の大学の壁を破って,様々な大学と事業を共有することを目指すものだと思います。だから,地域ごとにまとまりますかって,そういうものもあるかもしれませんけど,そうじゃなくて,もっとフレキシブルに大学がやるべき事業,と言うと授業と間違っちゃうんですけど,やるべき事柄を適切に,それそれぞれのアイテムについていろんな大学と組んでいくという新しいグルーピングのシステムの提案だと私は思って聞いていました。地方大学同士でくっついたって,弱いところが弱いところでまとまるだけになっちゃうんですけど,そこと大きい大学とうまく組み合わせることによってもう少し広がりができて,これまでの国立大学の一校一校を自律したものと考えて,隣とは混じらないような,政策とは全く違う新しい国立大学の在り方を提案されているんだと私は思って聞いていました。だから,これまでと全く違う発想なのでいろんな規制を解いていかないといけなくて,先ほど上山さんからJ-PEAKSが云々とかと言われたんだけど,あれをはるかに超える一体として動いていく中で新しいシステムができてくる,そういう御提案だと思っております。だから,どこと組むかというんじゃなくて,全体で組みたいところと組みながら,インテグレーションとして大きな成果になるような形を求めていく。そこに私は非常に未来を感じました。
【相澤座長】おっしゃるとおりだと思います。ただ,これは上山委員が指摘されたように,それをどうゲームチェンジするほどのプログラムというか,何かそういう施策展開につなげるかと。そこのところはまだ明確ではないので,ぜひそれを打ち出すところまでは,国大協が言い出したからにはそこの姿をもう少し明確にしてほしいと。そういうようなことではないかと思います。
 森田座長代理,どうぞ。
【森田座長代理】すみません,また20年ぐらい前に法人化をしたときの話を,今日のお話を聞いていて思い出したところもあるものですから,申し上げます。あのときにも国立大学は何なのかということと,国立大学をどうすべきかという議論がありました。法人化の狙いの一つは,やはり社会の環境が大きく変わるときに,その環境に適応していくためには柔軟に大学の在り方というものが選択できなければ駄目だろうと。それをそれぞれの大学の判断に委ねるという,その自律性を大学に発揮してもらうためには法人という仕組みがいいのではないかという議論がありましたし,それはかなり中心的な論点であったと思います。
 ただ,そのときに環境の変化というのがいろいろありまして,あのとき言われていたのは,新しい科学技術に対して,例えば新しい研究分野を担当するような部局をつくる場合であるとか,あるいは教育の中身について,社会人もそうですけれども,多様化をするということがありました。ただ,環境変化のとき,あのときも議論が少し出ていたのは,これから若年人口が減ってくる中で,これは大学院のほうにシフトするとかそういう考え方にもなっていったわけですけれども,やはり対象とする人たちが減ってくる。それがシュリンクしていくときにどういう形でそこで適応していくのかと。今までの枠組みだけですと,簡単な言い方をしますと,1人当たりのコストがかかってくることになる。それのコストをまた負担していくんだろうかと。そうではなくて,そこで効率化するためにどういうふうに仕組みを変えていったらいいのか。それの工夫というものは各大学に委ねるということがあり得るのではないか。
 そのために,果たしてあのときにと,申し上げたら失礼ですけれども,あのときそういう話があったのですが,そのときの国立大学が皆さんが集まってできるだろうかという議論がありました。そのために,国立大学の法人の主体というのをどうするかということで,現在の国立大学法人法では,それぞれの大学が国立大学法人になっていますけれども,当時の独立行政法人の考え方で言いますと,今の国立病院機構のように国全体として一つの法人をつくって,そこで財源の配分などを行う。そして,大学はそれに所属する施設として編成の仕方をもっとフレキシブルにしてもいいのではないかという議論も出ました。たしか財界関係の方からはそういう考え方が出されたと思います。しかし,国大協を含め,国立大学の方は,いや,そうではないと。あくまでも各大学だと。そのために別表でもって,全部法律でもって各法人の設立を決めることになったわけです。ただ,その後事情が変わってきて,法人統合であるとか,大学の統合もありますけれども,そうした形で法改正によって少しずつ変えていくという仕組みしかできなかったといいますか,その仕組みを選択してきたということになろうかと思います。どちらがいいということを私は申し上げるつもりはありませんが,あまりにもそれ以後の環境変化というのが大きいときに,今日のお話を聞いていて感じたのは,まだ前のときの枠組みというものを維持していけるという前提で御議論されているのかなということです。それについては,これは個人的な印象ですけれども,若干疑問に感じたところです。
 もう一つは,その中で大体,子供たちの数が減ってくるとき大学をどうするかというときに,私立大学と国立大学の違いは何かという,川合先生がおっしゃっている国立大学の特性は何かという議論もありました。結果としては,単なる設置者が違うというだけではなくて,やっぱり形態そのものも違ってくるという形になったわけです。そのときに,国立大学であることの特質は何かと。何らかの特権と,私学にはない義務といいましょうか,それを国立大学であるがゆえに担うことになる根拠は何か。抽象的にはいろいろと言えると思いますけども,具体的にどういうことがあるのかということについてもやはり詰めるべきではないかという議論があったと思いますけれども,その後は,必ずしも詰められた議論がされているとは思えません。現在,だからそのことがまた議論されているのかなという気がしております。
 これは難しいところで,柳川先生がおっしゃいましたように,国立大学,高等教育について国が責任を持つという意味では,私学にせよ何にせよ,ベーシックなところでのきちんとした資金の提供の保証と,また大学のクオリティーというものについての許認可といいましょうか,教育機関としての品質保証は国がやることですけれども,そこから先をどうするかというのは,これはまた,ある意味で制度設計の問題になってくると思います。確かに川合先生がおっしゃいましたが,昔は公務員を育てるというようなミッションがあったわけですけれども,これは例えば電気通信が電電公社でなければ,国でなければできなかったわけですが,だんだん社会が発展することによって民営化ができたと同じように,大学も同じように変化というものが考えられないのかどうか。
 ちなみに,公務員に関して言いますと,先日,人事院で私も関わって提言を出しましたが,公務員が,優秀な人材が公務にも集まらなくなってきたという。そういう環境の変化に対してどう適応するかということの問題だと思います。これはやっぱり指標として言いますと,先ほどから投資とリターンというお話がございましたけれども,こういう言い方をするとちょっと誤解を招くと困るんですけれども,1人当たりにかけるコストといいましょうか,ある意味でコストをかける以上,その人たちがどれくらいの今度は付加価値を生み出したかということが大学として,あるいは大学でなくてもそうですけれども,検討されるべきではないかと思います。どうも日本の場合には,どういうリターンがあるかというよりもコストばかり議論されているような気がするということです。
 すみません,長くなって恐縮が,もう一点申し上げたいのは,そのシステムというのは,これも先ほど申し上げましたように国立大学機構をつくってはというときからそういう議論はございました。永田先生の御説明でやっと国大協の中でもそういうお考えが出てきたということで,決意表明をされたということですけれども,既にお話がありましたが,システムの単位をどうするのかということ。これはAからGまでですか,幾つかの類型がございましたけれども,これがいろいろあって,それをどうやってシステムとして組むのかというのは,先ほどお話がありましたように,すごく難しいと思います。連携・協力するにしても,大きな大学の一部局の規模にも達しないような国立大学も幾つもあるところで,どういう形でこれを組み合わせていくのかということについては,相当難しい問題になろうかと思います。そのときに,座長がかじ取りとおっしゃいましたけれども,永田先生は上手に,かじ取りは船ができた後だというお話だったんですけれども,実は,これは上山さんがおっしゃったのかな,いわゆるガバンをするという。統治をするといいましょうか,仕切ると言ってもいいと思いますけれども,誰がそれを決めて,きちんと受け入れてもらえるのか。その主体をどうするのかというのは非常に重要なことと思います。
 ちなみに,ガバンという,私も元は政治学者ですから,統治という言い方の場合には,やはり上の権力ある人たちが下の人たちを治めていくというイメージであります。それに対しまして,政治学のほうで新しく変わってきたのは,ガバナンスという言葉で,これは言わば横の対等な人たちが自分たちで秩序をつくっていくという意味合いが含まれていると思います。コーポレートガバナンスというのを企業統治と訳すのは,したがって誤訳の気がいたしますけれども,そういう意味で言いますと,国大協が主体になってガバナンスをうまくやっていくのか,あるいはそうではなくて,難しいので文科省なり国にガバンを依頼するのか。これは大学の自治の問題も含めてですけれども,相当重要な話になると思います。あと1か月ぐらいでどういうふうにおまとめになるか難しいところだと思いますけれども,こういう根本的な論点というものは法人化のときもある程度出ていたところだと思いますし,ずっとそれがある意味で埋没していたのが出てきたのかなと思います。ただ,環境変化からいって,今やらざるを得ないと思います。
 すみません,長くなって申し訳ございません。
【相澤座長】ありがとうございます。
 それでは,福原委員と樫谷委員が挙手されていますので,簡潔にお願いできればと思います。福原委員からどうぞ。
【福原委員】ありがとうございます。やはり国立大学システムという問題提起も含んだ報告に接していろんな意見が出てきたので,私なりの理解としては,これはやはり個々の国立大学法人の果たす役割や成果というものを単純に足し算して,単純総和で国立大学というものの成果をはかるんじゃなくして,また期待するんじゃなくして,やっぱりそこにはシステムとして,シナジーもあるでしょうけれども,全国の国立大学のシステムとして捉えていこうという,この問題提起は大変私すばらしいものだというふうに思います。その際に,地域というサイズもありますけれども,やっぱり分野,専門人材を育成することによる分野についても国や社会が果たすべき役割というのがあって,国民に義務教育を必ず受けさせよと憲法で義務を課しているんですから,義務教育をしっかりと受ける体制が国を整えなきゃいけないので,そのためにやはり全国にきちっとそこを担う教員を育成する,しっかりとそういうことをするというのが必要です。一方で,健康で文化的な生活をできますよと憲法で定めておきながら,医師が偏在しているようなことでは困るので,医師や医療関係の人材というものを全国的にきちっと養成して配置するというのもやはり国の責務なんです。そういったところに専門人材を育成するという大学がどのようなコミットをするかというときに,やはり国立大学を中心に,国立大学だけじゃなくて,国立大学を中心として公立大学,私立大学がこれに取り組むという仕組みを設けておかなきゃならないという意味では,今日は教育人材について御報告がありましたけれども,大変興味深く拝聴した次第です。そのような意味で,国立大学システムという概念については,いろんな議論の余地もあろうかと思いますけれども,私の理解はそのように申し上げておきたいと思います。
 最後に1つ,教育人材ですけれども,やはり教育というのは学校教育だけではなく,今衰えてきた家庭教育や社会教育の中で人材を養成するという仕組みについて大学がどう取り組むかというのは大変重要なことで,その中で東京学芸大学が教育支援課程というものを設けて,ゼロ免コースではないんですけれども,社会における教育機能,人材育成機能を高めようとされているところ,今日ちょっと質問をし忘れたんですけれども,こういったところが時代の変化とともに教育人材の育成というところで目を向けていかなきゃならないし,こういう先端的な取組をしているということ自体が国立大学法人の優れたところ,先導的な役割ではないかというふうに思った次第であります。
 最後,見解だけ申し上げて失礼いたしますけれども,以上でございます。
【相澤座長】ありがとうございました。
 それでは,樫谷委員に締めていただければと思います。
【樫谷委員】締めるほどの見解を持っているわけじゃございませんが,私,今の森田先生などの大体大きな流れはよく理解しているつもりなんですが,国立大学というのは国策でつくっているわけですよね。国策って何なんだ。世の中の流れによって,最初の官僚をつくるということから大分変わってきているという意味ではそうなんですけれども,となるとやはり,国がガバンをしないといけないんじゃないかなと思うんですよね。ただ,いろんな意見を聞くというのがいいと思うんですけれども,やっぱり責任は国にあるというふうにこれは明確にするべきではないかなというふうに思っているんです。それがないと,だから財源もつけるわけですよね。だから国もガバンしているので,統治をしているので,国民も納得して財源をこれだけ与えることに,出すことについて了解しているというふうに私は思っていまして,それは自由に考えてくださいと言うのであれば,じゃあ,私立に財源出せばいいじゃないですかと,こういう話になってしまうので,私立にお金を出すのと,同じ金額を出すのとどこが違うのかというのを,特に私立は建学の精神が,本当にどこまで生きているのかちょっと別として,あるということなので少し違うのかも分かりませんが,いずれにしても,私立の建学の精神があるように,国策によって国立大学ができていることは事実で,これは法人化されようとされまいと同じだと思うんですよね。だからやはり,基本的に国が責任持つんだと,それについては。だから,大きな方向性はやはり国が出すべきだと。意見を聞くのはもちろんいいと思いますけど,それが学問の自由と反するのかというと,恐らく反しない。条件のつけ方によっては反するものもあるかも分かりませんが,反しないようなことが十分あると思うので,もっと国が自信を持ってしっかりガバンをしていく,統治をしていくということが大事で,国立大学協会がガバンするということ自体は,私は間違っているかどうかは分かりませんが,ちょっと違うのかなというふうに私個人的には感じておりますので,やはり国の方向をしっかり出すと。そのためのいろんな意見を聞いて議論するというのが私は正しいと思いますが。それなしに,どこかでやってくれと言っても,そんなものはできっこないと。永久に議論しているだけでなかなかまとまらないというのは,そこにあるんじゃないかなというふうに思っております。
 以上でございます。
【相澤座長】ありがとうございました。大変熱の籠もった議論が展開されてきたところですが,予定した時間も参りましたので,本日の検討会での議論は以上とさせていただきます。
 それで,今後でありますけれども,あと3回の検討会が予定されております。この3回で全体のまとめをしていきたいと思います。次回から議論の枠組み,こういうものを提示させていただきまして,御意見を伺わせていただきたいと思います。
 それでは,長時間にわたりましたが,本日の検討会はこれをもちまして終了させていただきたいと思います。
 事務局から今後の予定等についてお願いいたします。
【髙橋国立大学法人支援課課長補佐】本日もありがとうございました。次回の会議は6月17日,16時から18時を予定してございます。次回ですけれども,これまでのヒアリング内容等を踏まえまして,事務局のほうで一度整理をさせていただき,委員の先生方の間で意見交換をしていただきたく存じます。
 以上でございます。
【相澤座長】ありがとうございました。それでは,第9回の会議はこれをもちまして終了させていただきます。本日はどうもありがとうございました。
 

―― 了 ――

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