令和7年4月7日(月曜日)15時00分~17時00分
ハイブリッド(対面・Web)開催 ※傍聴はWebのみ
国立大学法人等の機能強化に向けた検討会(第8回)
令和7年4月7日
【相澤座長】それでは,定刻になりましたので,ただいまから,第8回国立大学法人等の機能強化に向けた検討会を開催させていただきます。本日の検討会も,対面,オンラインの併用によって行います。初めに,事務局に人事異動がありましたので,御紹介いただきたいと思います。
【髙橋国立大学法人支援課課長補佐】失礼いたします。事務局でございます。人事異動がございましたので,御紹介をさせていただきます。まず初めに,先生方から見て左手側から始めますけれども,研究振興局振興企画課長の山之内でございます。
【山之内振興企画課長】山之内でございます。よろしくお願いいたします。
【髙橋国立大学法人支援課課長補佐】続きまして,大学研究基盤整備課長の俵でございます。オンラインでの出席になります。続きまして,大学研究基盤整備課学術研究調整官の山村でございます。
【山村大学研究基盤整備課学術研究調整官】山村でございます。よろしくお願いいたします。
【髙橋国立大学法人支援課課長補佐】続きまして,先生方から見て右手側でございますけれども,高等教育局大学振興課長の石橋でございます。
【石橋大学振興課長】石橋でございます。よろしくお願いいたします。
【髙橋国立大学法人支援課課長補佐】続きまして,国立大学法人支援課国立大学戦略室長の柴田でございます。
【柴田国立大学戦略室長】柴田と申します。よろしくお願いいたします。
【髙橋国立大学法人支援課課長補佐】最後に私,国立大学法人支援課課長補佐の髙橋でございます。どうぞよろしくお願いいたします。以上でございます。
【相澤座長】それでは,議事に入りたいと思います。本日も前回の検討会に続きまして,1月に取りまとめました論点整理を踏まえて,機能強化に向けた具体的な対応策について議論を深掘りさせていただきます。本日は,国立大学法人から2件のヒアリングを予定しております。1件は東北大学,もう1件が島根大学であります。それでは,早速,大学からのヒアリングということで始めさせていただきます。東北大学,入室されておりますでしょうか。
【冨永総長】東北大学でございます。
【相澤座長】それでは,ただいまから10分程度で御説明いただき,15分の質疑応答を予定しておりますので,これから10分間のプレゼンテーションを行っていただければと思います。それでは,冨永総長,よろしくお願いいたします。
【冨永総長】本日は,このような機会をいただきまして,ありがとうございます。本学の機能強化に向けた取組と,国際卓越研究大学としての取組の概略を説明させていただきます。このスライドは,法人化以降における機能強化にかかるこれまでの主な取組みをしめしています。2011年に我々は東日本大震災を経験して,大学としての社会的使命を構成員が自覚し,復興アクションを含め,様々な復旧・復興に関するプロジェクトを行いました。復興に関するプロジェクトの一つとして,東北メディカル・メガバンク機構を設置し,世界に類を見ない大規模な健常者の3世代コホート調査を実施しております。災害科学国際研究所も設置されまして,ここは学際性と実践性を特徴として,実践的防災学を体系化しています。仙台防災枠組など,グローバルアジェンダを国連とともに先導しています。2012年には100%民間からの寄附によりまして,半導体研究の拠点として国際集積エレクトロニクス研究開発センターを設置いたしました。現在,学内には約150名もの半導体分野の研究者が在籍しておりまして,大型クリーンルーム等々,比類のない研究開発リソースを大学として所持しています。2023年のG7の広島サミットでは,日本を代表する1校として日米で協力して半導体人材の育成,それから,新たな研究活動の推進に関する覚書を締結しております。2013年には,学際科学フロンティア研究所を本学独自の戦略的予算を投入して設立しました。約50名の若手研究者にPIとして独立した研究環境を提供していますが,ここでは大変大きな研究成果を出しておりまして,国際卓越研究大学の計画でも,このPI制を拡大していく予定としています。2017年には,キャンパスの土地売却収入を含む自己財源で青葉山に新たなキャンパスを整備し,キャンパス移転を実現しました。そして,同じ2017年に指定国立大学法人の最初の一つに選ばれております。様々なプログラムをしておりますが,特に産学連携に関しましては,アンダーワンルーフの大型の共創拠点を構築しまして,昨今5年間では年平均10%を超えて外部資金収入が増加しております。2020年には新型コロナを契機に,本学ではいち早くデジタル化を進めまして,包括的DX体制を構築しました。そして,現在では日本で最もDXが進んでいる大学だと自負しております。2021年には,仙台防災枠組,SDGs,パリ協定,いわゆる国際社会の三大アジェンダへの貢献を目的にグリーン未来創造機構を設置しております。2023年には,大学債100億円を発行し,最先端教育研究拠点の整備を進めています。2024年4月からは,このキャンパス内に次世代放射光である3GeV高輝度放射光施設ナノテラスが稼働しております。産学連携では,共創研究所を2021年から開始し,既に約40の企業が学内に拠点を整備しており,急拡大しています。そして,これまでの取組実績等を踏まえて,国際卓越研究大学に申請し,昨年11月に認定されました。これは本学の歴史と理念ですが,「研究第一」,「門戸開放」,「実学尊重」の理念を示しています。これは体制強化計画の全体像でありまして,「インパクト」,「タレント」,「チェンジ」という三つの公約を掲げております。この詳細については,本学ウェブサイト等を御覧いただければと思いますが,認定の過程で評価をいただいた点が三つございますので,その概略を説明いたします。まず一つ目は,この体制強化計画の構造を体系的に示したということで,この表にございますように,三つの公約に対して六つの目標,19の戦略を立てて,それぞれKPIも付し,マイルストーンを明確にしました。二つ目は,新たな研究体制の確立に向けて明確な戦略が示されているということで,ここに示しましたように,先ほどお話しした学際科学フロンティア研究所の経験を基に,若手に活躍いただこうということでPI化を図り,このようなフラットな研究体制を目指すことにしてございます。これからの大学の研究力強化につきましては,やはり資源ではなくて,資本と捉える人への投資が非常に重要だと考えております。我々は大学ファンド助成金の約8割を人的資本に充てて組織を変革する予定であります。昨年10月にヒューマン・キャピタル・マネジメント室を設置しまして,各部局の戦略に沿った研究者の卓越性や将来性を確認しながら人事戦略を進めています。その他に,人への投資として,テニュア・トラックの全学展開,海外での研さん,いわゆる頭脳循環を図るということ,それから,スタッフを拡充していきます。我々のアンケートでは,現在研究に関するエフォートが34.5%ですが,これを50%引き上げることを目指しています。また,博士人材の経済支援を通じてロイヤリティー向上を図ることを進めています。このHCM室に関しましては,エビデンスに基づく透明性の高い人事評価制度と処遇体系の整備をすすめております。三つ目は,DXを活用したエビデンスデータに基づく戦略的な資源配分など,改革に向けたデータ基盤整備など,変革の理念が浸透しているということが評価されました。次は,国立大学最大規模の法人戦略財源,我々は総長裁量経費として年間100億円の戦略財源がございまして,これにファンドの助成金も加えて,戦略的な資源配分を行っています。例年,全組織を対象としたヒアリングを実施しております。2025年度に向けては,2月に49組織から合計20時間に及ぶヒアリングを行いました。この写真にあるとおりです。右上の総長裁量経費の100億円と大学ファンドの154億円を合わせて法人戦略予算としております。これは,ヒアリングの日程,スケジュールです。ここを強調したいところですが,研究力強化に向けては人への投資,つまり,人的資本経営というものが今後の研究大学にとって最重要の課題と我々は認識しております。この人的資本経営というメッセージをぜひ打ち出していただければと考えております。そのための課題が下に列記されております。給与水準ですけれども,これは一つ,運営交付金の減少や,近年の物価高,人事院勧告への対応による財政の圧迫といったところから不安定な雇用が拡大しているということで,戦略的な投資が困難な現状にあります。国際的な人材確保に関しては,皆さん御承知のように円安が進行していて,なかなか大変だということもありますし,若手研究者に関する課題としては,大学院生からその後のキャリアにつなぐ,それを後押しする仕組みが不足しています。例えば,奨学金やフェローシップ,独立環境,研究支援,コアファシリティー,海外研さん機会,テニュア・トラック,キャリア形成支援といったことをこれまでの講座・研究室の単位を超えて,法人として組織的に提供する仕組みと財源が必要であると考えていますし,専門人材に関する課題,大学経営に関する課題がありまして,我々としては,要望事項として,この3点,人的資本経営に向けた運営基盤に対する公的支援,大学と民間企業との間で高度人材の流動化を促進する支援,国立大学の持続的成長を可能にする規制緩和であります。これは,先ほどお話しした人事院勧告の影響,電子ジャーナルの影響等,今年度は29億円に上ると試算しておりまして,もちろんこれは我々の総長裁量経費から支弁しますが,こういったことが全体の戦略予算には負担になってくるということであります。これは,全国レベルで顕在化した話であります。これは,諸外国の給与ベンチマークであります。これは,日本流の大学総体の強みを発揮するにはどうしたらいいかということの提案です。日本の国立大学は質が均質で,体質が標準化されていることがありますので,このリソースを共有して,その後,各大学が独自のビジネスモデルを開発していくのがよいのではないかなと考えております。以上です。
【相澤座長】ありがとうございました。それでは,これから質疑応答に入ります。委員の方々から,どなたからでも結構です。御発言をお願いいたします。いかがでしょうか。どうぞ,樫谷委員。
【樫谷委員】すみません。御説明ありがとうございました。少し興味を持ったのは,右上に8と書いてある「国際卓越研究大学の認定にいたる評価について丸2」の「国際卓越研究大学の中心テーマは『人への投資』」と書いてございまして,まさに人への投資が重要だということはよく理解できております。ただ,企業の場合と同じ考えでいいかどうかは分かりませんが,投資をするということは,一定のリターンというか,効果を求めていると我々は考えるんです。これは,投資に対してどのようなリターン,成果,効果を求める明確な目標などはつくられているんでしょうか。それについて少しお聞きしたいと思っております。
【冨永総長】少し音声が聞き取りにくいところがあって,聞き取れなかったんですが。
【樫谷委員】では,もう一度申し上げます。すみません。今,画面に出ております「国際卓越教育研究大学の中心テーマは『人への投資』」ということで,まさに人件費というのは費用ではなくて投資だという位置づけだと思うんです。そうすると,一般的に言うと投資をするということは,民間でなくてもリターンというか,成果なり効果を求めることになると思うんですけれども,投資をするときの基準というか,ベンチマークというか,成果の目標というものをお考えになっているようなことはあるんでしょうかということをお聞きしたかったということであります。
【冨永総長】ありがとうございます。これは基準がございます。我々,今,いろいろな研究者をリクルートしているところでありますが,やはり研究力を向上させていくということが一丁目一番地でありますので,ある一定の論文等の指標を確認して,人事戦略を進めています。ただ,やはり文系と理系で違いがあるとか,部局によって,分野によって,特性があるということもございますので,それを,ヒューマン・キャピタル・マネジメント室を通じて十分選考の方針を検討した上で,実際にそういった基準に合う研究者をリクルートするということを原則にしております。よろしいでしょうか。
【樫谷委員】ありがとうございました。
【相澤座長】それでは,柳川委員,どうぞ。
【柳川委員】御報告ありがとうございました。今のに関連して,13ページで専門人材に関する課題ということを指摘されていて,私は,これは大学にとってとても必要なことだと思うんですけれども,こういうことをやられる人材は,大学で教育して育てていくことが大事だとお考えか,それともこういうものは,例えば,商社の方など,外部の民間企業で働いていた経験のある方を連れてくれば,リクルートすれば間に合うとお考えか,少しその辺りのお考えをお聞かせいただければと思います。よろしくお願いいたします。
【冨永総長】御質問ありがとうございます。我々は両方を考えております。もう既に我々のところには,外部の企業から,事務系を含めて専門人材をかなり雇用しております。それから,もう一つ,自分たちの大学の中で,特に博士人材の活用も含めて,これからURA等の人材を育てていかなければいけないと考えており,WEB上で学内から人材を募ったところ,100名を超える応募がありました。そういった方々は,研究志向だった方や,もう少し別なURAや技術者として将来やっていきたいといった方を,学内からリクルートして,育成して,今後,そういった人材を活用していきたいと考えております。ですから,企業からと,内部から育てると,2本立てでやっているところです。
【柳川委員】ありがとうございます。
【相澤座長】それでは,そのほかの御質問等ありましたら,お願いします。いかがでしょうか。
【樫谷委員】もう一回聞いてよろしいですか。
【相澤座長】はい。
【樫谷委員】すみません。今の13ページの一番下の赤い字で書いてあるところで,3ポツの「国立大学の持続的成長を可能にする規制緩和(業務範囲の再定義など)」と書かれております。まさにそのとおりで,大学だからとか,国際大学だからという事実上の規制というんでしょうか,法的な規制もあるかも分かりませんが,具体的に「再定義など」と書いてあるんですけれども,どのようなことを規制緩和していれば,より機能強化につながっていくとお考えなのか,もし例があれば,お示しいただければと思います。
【冨永総長】これは,もともと規制緩和がありまして,幾つかをお話しさせていただきますと,例えば,政府調達の対象から大学自ら獲得した資金で契約する場合を除外してほしいということがございます。あるいは大学債及び借入金使途の対象を拡大してほしいということもあります。それから,出資対象事業の拡大です。これは,かなり大学の研究成果の活用に資するもの等々の規制がありますので,これを拡大してほしいということ,それから,研究成果を活用する事業の拡大。これは,例えば,企業との共同研究による試作品まで我々の事業に含めてほしいということであります。その他としても,出資認可要件の緩和や,政府出資金及びその得られた運用金の大学裁量による使用や,留学生の起業に関する在留資格取扱いの緩和,土地・建物の売却及び貸付け等に関する規制の緩和,あとは,これは本当に切実ですが,厳格な定員管理等の緩和,特に入学定員,収容定員の緩和をぜひお願いしたいということ。それから,これから我々は寄附金を大きな財源にしなければいけませんが,個人からの寄附金全てが税額控除の対象,今は40%ということになっておりますが,それをもっと拡大していただけないかということであります。いろいろ列記して申し訳ございませんが,そのようなことを考えております。
【樫谷委員】大変ありがとうございました。よく分かりました。
【相澤座長】それでは,オンラインで平子委員が挙手されているということでありますが,どうぞ。
【平子委員】よろしいですか。
【相澤座長】はい。
【平子委員】ありがとうございます。オンラインから失礼します。平子と申します。プレゼンテーションありがとうございました。東北大学の大きな投資は,研究力向上,研究第一とおっしゃっているのですが,昨今発表された日本版のTHEのランキングでも東北大学は日本の大学の中で1位になっています。このランキングはどちらかというと教育力を測る指標だと理解しています。今日のプレゼンの中で教育力という言葉をあまり聞けなかったのですが,それは全て人への投資に包含されているという理解でよろしいのか。つまり,研究力と教育力というのは分けて考えるべきではなくて,一緒になって考えていくべきなのかどうか,御示唆をいただければと思いますが,いかがでしょうか。
【冨永総長】ありがとうございます。我々,歴史的には,一流の研究が一流の教育を生むということを我々のコンセプトにしています。ですから,教育と研究は両輪と考えておりますので,今回のプレゼンでは教育が出てきませんでしたけれども,おろそかにしているわけではありません。例えば,研究力を上げるということと教育を推進するということの両立がなかなか難しいと思うかもしれませんが,我々はできるだけ分担することにいたしまして,研究者の研究エフォートを上げるためには,入試業務が一つ負担になっている。これを,アドミッション機構をつくって,教員の入試負担を減らそう。そして,これまでの実績の中でも,かなり教育に傾注している教員がいるので,そういった方はある程度教育に専念していただいて,称号と処遇を与えることとしています。研究者に比べて教育者というのは劣るものではなくて,きちんと処遇されるシステムをつくっているところです。そういった方にはある程度教育に専念してもらいますが,一定の研究エフォートは認め,分担するということを進めています。これを今後の方針として,今,構築しているところです。実際,何人か各部局から,こういった先生方は教育にある程度専念しますということを届け出てもらっているところです。
【平子委員】分かりました。ありがとうございました。
東北大学の教育の独自性のようなものはあるのでしょうか。
【冨永総長】やはり一朝一夕にはできないので,かなりきめ細かい教育の対応が必要だと思っております。それが高校の先生方も大変評価されているところだと思いますし,あとは,入試を含め,高校側との対話を継続的に行っていることも一つあるかもしれません。
【平子委員】分かりました。ありがとうございました。
【相澤座長】それでは,そのほかの御質問なり御意見はいかがでしょうか。それでは,私から一つ質問させていただきます。御説明には現れませんでしたが,補足の資料,参考の資料として,17ページを出されているんですが,この画面に出ますでしょうか。17ページです。右上の数字が17。17を出していただけますか。ここで,大変意味ある図を出されているのではないかと思います。いろいろな法人が特色あるビジネスモデルを開拓すべきだということであります。私もこれは非常に重要なことではないかと思うんですが,この「日本流の大学総体」というのは,全国の大学法人を総括してという意味として捉えていいのかどうか。そして,もしそうであるならば,この図で示されたことをどのように具体的に実施されようとしているのか。これは,全国の牽引力となって進んでいかれる東北大学としては非常に重要なことになるのではないかと思いますが,いかがでしょうか。
【冨永総長】ありがとうございます。まず,日本の国立大学はかなり標準化されて,均質に質が担保されていることが一つ特徴だと思っています。ですから,日本の大学が研究リソースを共有して基盤をつくってやれば,今後,AI時代には,研究の生産効率を上げることができるのではないかと思っています。これがリソースに書いてある①です。②は,ID認証基盤の統合。これは教育です。社会人,教員,学生,全てにIDを振ってやれば,大学間の単位互換も非常に簡単ですし,将来の社会人の教育等々も非常によくできるので,こういったことをデジタル化して,全国の大学の統一基盤をつくってやっていくことが非常に効率化するのではないかなと思っています。そうした上で,各大学の独自モデルとして,例えば,うちの大学で言えば,地方中核都市にあって,キャンパスには余裕がありますので,ナノテラスを中心としたサイエンスパークをつくって,そこに多くの企業のR&B拠点を呼び込み,自分たちの研究所も置いて,産学共創を進めていく,これは,我々の東北大のモデルだと思いますが,ほかの大学も自分たちの条件に合ったところで,独自のビジネスモデルを開拓していくべきと考えております。
【相澤座長】ありがとうございました。大変重要なことなので,これをどうやって具体化していくかというのがさらに重要な案件になるかと思います。今後とも,いろいろとやり取りしながら,この辺のところを浮き上がらせていきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
【冨永総長】よろしくお願いします。
【相澤座長】それから,もう一点は,先ほど平子委員から指摘のありました通り,研究力の充実は研究大学として重要であるけれども,教育力というものが欠かせません。総長もバックデータとともに御説明いただきました。東北大学は,研究力の強化を重視しているけれども,研究と教育が両輪として働くことを高く掲げておられる。先ほど来の総長の御説明は,見事にそこを両輪として動かしているんだよということを示していただきました。今後も,そこのところを明確にしていただきつつ,先ほどのビジネスモデルと同じように,全国の大学の先頭に立ってそういうことを牽引していくんだということを示していただければと期待しておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。
【冨永総長】どうもありがとうございます。
【相澤座長】それでは,よろしいでしょうか。これで,東北大学のヒアリングを終了させていただきます。冨永総長,どうもありがとうございました。
【冨永総長】ありがとうございました。
【相澤座長】それでは,次のヒアリングにまいります。島根大学ですが,大谷学長,入室されておりますか。
【大谷学長】大谷でございます。よろしくお願いいたします。
【相澤座長】それでは,これから10分程度の御説明をいただきたいと思います。大谷学長,よろしくお願いいたします。
【大谷学長】島根大学の大谷でございます。本日はこのような機会を与えていただきまして,大変ありがとうございました。以下,このような順で御説明いたします。初めに,島根大学における機能強化について,まずミッションと方向性ですが,島根県では,たたら製鉄の伝統を引き継ぐマテリアル関連産業が主要産業となっておりまして,島根大学では,県と企業との産官学人材育成コンソーシアムなど,緊密な連携体制によりまして,島根県の内閣府事業,たたらプロジェクトによる次世代たたら協創センター,NEXTAをオックスフォード大学のリード教授をセンター長として迎えて設立し,人材育成の展開として,材料エネルギー学部を新設,さらに研究成果を社会実装につなぐため,先端マテリアル研究開発協創機構,以下,新機構と省略させていただきますが,これを設立しました。これらの一貫した取組により,マテリアル関連産業の発展を強力に先導し,その成果を全学,他分野へと展開して,地域産業を活性化し,島根創生の実現に貢献することを目指しております。これまでの成果のうち,研究及び産学連携について概要をお示しします。まず,たたらプロジェクトにより,世界レベルの研究成果の創出に加えて,企業との共同研究は倍増いたしました。材料エネルギー学部及び新機構の設置に当たり,前学長の強いリーダーシップにより,このリソースを集約して,学外から高い研究業績を持つ教員を合計27名招聘し,大型外部資金を含む受託・共同研究,科研費の獲得額の大幅向上,Top10%論文,Q1論文,国際共著論文比率の大幅増加などの成果が上がっております。一方,県内企業との受託・共同研究の件数はKPIを超えて増えておりますけれども,1件当たりの規模が小さく,その育成が課題となっております。次に,人材育成における成果ですが,スライド左上の図に示しますように,島根県には島根大学と島根県立大学の2大学しかありませんので,大学進学時に1,000人強の人口社会減が起こり,また,下請型の中小企業が多く,就職時のさらなる若者の都会への流出が起こります。県内初の工学部となる材料エネルギー学部では,県や産業界からの強力な支援を受けて,マテリアルとコンピューティングを融合させ,産業振興に直結する社会実装教育に取り組んでおります。スライド下に示しますように,県内からの入学者の割合,女子枠を設けて女子学生の割合も共に高く,工学系志願者の県外流出に対して一定の効果を果たしつつあります。これらの成果の全学への展開,共同研究体制の強化の状況ですが,材料科学分野の強化を進める過程でオックスフォード大学,多くの教員を招聘した東北大学などとの組織対組織の連携を強化し,競争フロアを含む材料エネルギー学部の浸透,産学協創インキュベーションセンターを整備し,産学共同研究体制を整えました。スライド左下にありますように,材料エネルギー学部の経営会議に県知事が委員として参画されるなど,基盤となる県・地域との緊密な連携が構築できております。材料エネルギー学部をロールモデルとして,スライド右下にかけて全学的に大学改革を進め,例えば,法文学部において,古代出雲の青銅器の精密分析など,考古学の文理融合の新展開を進めるなど,各学部において先鋭研究領域を創出・強化して,学部経営会議の設置や,管理業務の整理など,研究時間確保についても取り組んでおります。また,教育の展開として,全学的な学部・学科を超えたクロス教育,総合理工学部における1学科への統合など,社会実装につながる融合知の創出へ向けた教育に取り組んでおります。今後の機能強化の方向性につきましては,県経済を牽引するマテリアル関連産業の振興には,県内の中小企業の研究開発力を向上させ,産業構造を転換するような社会実装の拠点をつくること。また,それが県内にとどまらず,国内・国外にも通用するようなものであることが必要であります。これを実現する社会実装拠点として,「産々官学々連携もの創りコンソーシアム」を構想し,昨年のJ-PEAKSに応募いたしました。残念ながら不採択となりましたが,本学は今後もこの構想を推進していく方向・方針で,連携大学等からも連携・協力の継続を確認できております。この内容につきましては,次のスライドで御説明いたします。一方,県の第2期島根創生計画を踏まえ,材料科学分野の貢献に加えて,それに続く機能強化すべき領域を各学部の先端研究など総合大学の強みを生かして創出してまいります。これらを受けて,国への要望の1点目は,これまでの御支援による先進的な施設・設備・機器を,学内及び連携する国際卓越大学や,J-PEAKS採択大学などの学外の優秀な研究者が効果的に活用し,その成果を国内外の機関,企業で結んで社会実装するために,J-PEAKS申請時に計画していた研究マネジメント,高度技能職員などの支援専門人材を雇用することが,今コンソーシアムの実現に不可欠でありまして,ぜひ御支援をお願いしたいと考えております。このように機能強化を通して地域の柱となる強み・特色を創出して,地方創生への貢献に取り組む大学へ御支援をお願い申し上げます。「産々官学々連携もの創りコンソーシアム」について御説明いたします。この中心となるのが,スライド中央の多品種少量生産を実現する試作品の一貫ワンストップステーションです。近年,バーチャルな設計技術等は進化する一方で,現在,試作品は,大スケール,多額の経費でしかできず,また,その性能等を解析する一貫した体制は,国内外にもございません。この計画では,島根大学が持つ強みに,スライド左上の各連携大学の強みを組み合わせて,島根大学が国内に散逸している金属素材研究をつないで社会実装するハブとなって,新材料の設計,製造プロセスなどの設計開発,試作,試作品の性能などの評価,そして,試行のサイクルを少量生産によりワンストップで回し,新機能材料を創出するものであります。小スケールでの一貫サイクルにより,格段に経費縮減,効率化が実現し,大企業,県内中小企業ともに参画可能となります。また,県内インフラの人材が参画して,サイクルの全工程を実体験することで,企業の研究開発型への転換を先導する人材を育成できます。これにより,スライド右下のように,高付加価値の創出の対価を経て,大学の経営基盤を強化し,産業変革により地域振興に貢献する島根創生モデルを実現いたします。次に,機能強化に加えて,今後取り組むべき事柄について御説明いたします。学生定員・学問分野の見直しについては,島根大学独自の地域経済分析に基づいて,県内産業分野の現状・ニーズを精査しておりまして,自治体や産業界との協議を加えて,本学として備えるべき学問分野や定員規模の検討を始めております。
また,機能強化を進める一方で,県内唯一の国立大学として,広範な地域のニーズに応える必要がございます。持続可能な地域社会の構築には,1次産業や教育,医療・福祉などに携わる人材の養成も必要で,県内企業は後継者不足が深刻でありまして,産業構造の変革と併せて,持続的な人材輩出が必要です。また,附属病院は,高度医療とともに地域医療への貢献が必須であり,県および関係機関と連携した上で,収益と経費が見合わない医療需要へ対応する必要がございます。島根県では,人口減の一方で,進学率の増加もあり,進学者数は横ばいで,県内定員からあふれた1,000人規模の大学進学時,さらに就職時の人口社会減が続いており,いかに若者を定着できるかということが最大の課題であります。このような状況を踏まえた上で,島根創生に資する各分野を支える人材を輩出するために,中長期的な産業分野のニーズの精査に基づく学問分野や定員規模の検討が必要であります。また,本学が有する強み・特色や地方創生における国立大学の貢献,また,現在の経営状況などのステークホルダーの皆さんへの御説明・アピールによる多角的な御支援拡大への努力が必要と考えております。そこで,島根大学の課題として,物価高騰などの経済環境の変化により,幅広い人材養成の地域ニーズに応えるための人的・物的リソースの確保が困難,また地域貢献の取組を支える専門人材の獲得は,特に地方では困難,といった点があります。その解決策として,不足するリソースを県内外の他機関との連携等で補完する努力を進める一方,やはり財源の確保が必要でございます。専門人材の積極的な採用の一方,学内での人材育成及びキャリアパスの構築,また,教育・研究の専念制度の構築による質の高い教育・研究を実現するための環境を整備してまいります。これらの解決策の実現に向けて,国からは持続可能な地域社会を支える総合大学としての機能,特に附属病院の機能を維持・強化するための財政的な支援をぜひお願いいたします。また,基幹教員制度の大学院への拡充など,人的リソースの有効活用に資するような制度改正をお願いしたいと考えております。以上,どうぞよろしく御検討のほどお願い申し上げます。御清聴ありがとうございました。
【相澤座長】ありがとうございました。それでは,委員の皆さんから御質問,御意見,いかがでしょうか。どうでしょうか。それでは,皆様から声が上がるまで,私が初めに少し質問させていただきます。
【大谷学長】はい。よろしくお願いします。
【相澤座長】スライドの右下に番号がページ数が出ています。2と書いてあるところをお願いできますか。そのスライドです。ここで,材料エネルギー学部,それから,先端マテリアル研究開発協創機構を創設されて,外部人材を招聘された。これは非常にすごい数字だと思いますけれども,この方々は特別待遇で招聘されているのか,あるいはそういうことではなく,何かインセンティブを与えているのか,その辺りのところをお伺いしたいんです。もう一つは,こういう動きに対して,学内のリアクションはどんなものなのかということ。それから,学外と言われる中に海外は入っておられないのかどうか,以上の点を少し御紹介いただければと思います。
【大谷学長】 ありがとうございました。NEXTA,次世代たたらセンターが平成30年に立ち上がって,世界的なレベルの研究がだんだんできてきているという状況が皆様方にだんだん知られて,それから前学長先生の強力なダイレクトスカウトもありまして,先ほどありました東北大学様をはじめ,日本全国から優秀な方々を,こういう新しい研究を立ち上げようとしているということに賛同いただいたところで,特別に給料をアップするということよりは,新しいものを一緒につくっていこうという趣旨に賛同していただいたというところが私はメインであると考えております。それに当たっては,中期計画の中で前学長が中心になって人件費管理をされて,その中で機動的に動かせる人件費を使って,合計27名を雇用することができた。その中には数名の外国人の方も入っております。1件の募集に対して,ものすごい数の応募があったりもございました。その中から慎重に優秀な方を選ぶことができたということで,ここに示しておりますような業績を上げることができている。ただ,ポテンシャルとして書かせていただいている部分もありますので,タイムラグをできるだけ短くして,うちの大学でそういうポテンシャルを十分に発揮していただくようにつないでいくことが非常に大きな課題であると考えております。そのためにも,つなげるような支援人材を,今,非常に厳しい人件費の中で,なかなか雇うことができませんので,そういうところの御支援をぜひお願いしたいと考えているところであります。それから,学内のリアクションにつきましては,そのように厳しい人件費を切り分けて学外から雇いましたので,当然,そこに対する一定の反発はございました。ただ,地方国立大学で柱をつくることがいかに大事であるか。柱がなければ地盤沈下するだけであるということは誰しも分かりますので,柱をつくることが大事だということで,前学長から私が引き継いだときも,その点を強調して柱をつくるということが地方国立大学を存立するために非常に大事である。ただ,一方では,プレゼンでも申しましたように,持続可能な社会をつくるために県内に幅広く人材を配置する必要があるということで,うちの大学は地方大学の割にはといいますか,バランスの取れた文理,あるいは医学部・教育学部も含めたバランスを持っておりますので,ここでしっかりと人材育成するということも大事であるということで,その2本柱が大事だということを学内の皆さんにお話しして,今,大方の御理解をいただいて進めつつあるところであります。以上です。ありがとうございました。
【相澤座長】大変見事な御発展だと思います。もう一つ,先ほどの学内へのインパクトについては,学内のほかの教員への影響はどういうことになっているのかということと,それから,このようなことが見えるようになってくると,島根大学のすばらしさが外に発信されるわけです。これが学生の応募状況にも影響してくることも見られるのかどうか,その二つの点,いかがでしょうか。
【大谷学長】突出した柱をつくるということへの反発に対して,そういうものが必要で,でも,ほかのものも大事にするんだよという考え方というのは,大体御理解いただけている状況です。むしろ,ここに掲げておりますように,この方々が来られなければ,実は,中期目標計画のKPIを達成することがなかなか厳しい状況でございました。ただ,この先生方が来られて,島根大学の業績をすでに上げてくださっているということで,実は,中期目標計画についても達成ができる見通しが立ってきております。そういういい刺激ということで,それぞれほかの既存の学部の先生方も一緒になって頑張ろうという雰囲気になってきているところです。まだまだではありますけれども,全体の雰囲気としては,そういういい雰囲気になってきつつあるところだと考えております。それから,材料エネルギー学部については,立ち上げの最初の年は県内に一生懸命リクルートといいますか,高校回りをしていたんですけれども,そういう面白い取組をやっているというのが全国的に知られるようになってきて,全国からの応募が少し増えてきて,そうしますと,学力的に県内の高校生が少し押されぎみで,KPI的に県内からの人材を確保するということが逆に厳しくなっているような面もございます。そういう新しい取組以外に,うちの大学は歴史的に古代出雲や汽水域など,特徴のあるものを持っておりますので,そういうものを併せてアピールしていこうと。今のところ,全学的に倍率が上がってきているなど,そこまでの効果はございませんが,ぜひそういうものを目指して頑張っていきたいと考えております。以上です。ありがとうございました。
【相澤座長】ありがとうございました。平子委員,挙手されていると思います。どうぞ。
【平子委員】ありがとうございます。高校にリクルートしているという話はすごく新鮮で,すばらしいなと感じました。それに絡む話ではあるんですが,島根県も人口減少で大変な時代を迎えており,進学率もそれほど高くないという中で,今の島根大学があるわけです。資料の3ページに,地域の産業に合わせて,地域創生のために少し大学の定員を入れ替えてこれが功を奏したというお話がありました。これは非常にいい話だなと思っているのですが,県外からの人材をもっと引き入れたい一方で,資料の17ページにある,20代の若者が大学進学と就職をきっかけに県外に流出するほうが多いという事実に鑑みて,大学進学と就職という二つのキャリアの転機が県外流出を生んでいるとしたときに,地方の国立大学の存在意義は本当に大きいと思います。学長がおっしゃったように,魅力的な学部をつくって全国から集めるというのはすばらしいことですが,仮に,地方の国立大学の定員を増やしたときに,人口減少と相まって競争倍率が下がっていく,すなわち入学者のレベルが下がるのではないかという仮説を私は持っているのですが,そんなことはないのかどうか。あるいは,仮にそうだとしても,学内の教育で何とか持ち上げられるとお考えなのかどうか,教えていただければと思いますが,いかがでしょうか。
【大谷学長】大変いい御質問ありがとうございます。私自身も田舎出身の人間ですけれども,大学に入る時点の学力というのは,その方々のポテンシャルと必ずしも関係ないと思っております。地方では,小学校・中学校・高校の大学進学に向けてのシステムが,明らかに都会よりは弱いです。なので,大学受験のときの学力として差が出てきてしまっているという現状がございます。それを変えることもなかなか難しい。格差は広がる一方であります。ですが,その方々が持っているポテンシャル自身は,全く劣ることはないと私は思っております。ですので,むしろ,今,うちの大学では,小泉八雲の名前を取った「へるん入試」という,「学びのタネ」といいまして,自分が大学で勉強したいと思うようなものを見つけて,それを大学の中で育てるという総合受験型,AO型のものをやっておりますけれども,そういう意欲のある方に来ていただいて,うちの総合力を持ったクロス教育などを御紹介しましたけれども,そういうものを使って,俯瞰的な視野を持った社会実装的な勉強もできるような人材を育てれば,十分に通用する学生さんを育てることができると私は考えております。ありがとうございました。
【平子委員】すみません。ついでにもう一つだけ。そう考えたときに,やはり多様性は非常に大事ですよね。島根県で育った学生,高校生と,県外からの高校生と,うまくミックスしたほうがいいような気がするのですけれども,その辺はいかがですか。
【大谷学長】ありがとうございます。実際のところ,県内の高校から本学に進学するのが20%強ぐらい,7割強,8割弱ぐらいが県外から来られます。定着率は逆で,県内の高校からの方々の7割ぐらいが県内に定着して,県外から来られた方の3割ぐらいが県内に定着するという形になっております。現在,県外から来られた方も,県内定着というのがじわじわと増えている,漸増している状況であります。それは,島根の環境や文化,人の温かみといったものと,それから,企業のインターンシップ等々,早い学年から始めた方たちは,そういう相対的に島根で働くことのよさを感じてくださるようで,そういう方が残ってくださっているというところがあります。逆に,県内から入った人が県内のよさをあまりよく分からずに,就職活動が始まると,やはり県外・都会のほうが条件はいいので,そちらのほうに行ってしまおうという状況があります。県内出身者には県内のよさをもっと知ってもらう,県外から来られた方には島根の,あるいは島根大学のよさを知ってもらうということをもっと強化することで,本学に限らないと思うんですけれども,地方国立大学が地方を支えるような人材を残す必要があるだろうと思っております。
【相澤座長】ありがとうございます。
【平子委員】分かりました。ありがとうございました。
【相澤座長】それでは,川合委員,どうぞ。
【川合委員】御説明ありがとうございます。先ほど少し議論になっていた2ページのところに戻って御質問させていただきたいのですが,学外からの招聘の比率が非常に多いところ,先ほども御指摘があったところです。どのような年齢層の方たちを上手にリクルートしたのかを少しお聞きしたいと思って質問です。26人の中で19名が学外招聘というのは,新たに19名が着任されたという意味だと思って聞いているんですけれども,まず,それで正しいでしょうか。
【大谷学長】はい。そのとおりでございます。新たにお招きしたということです。
【川合委員】それで,どのくらいの年齢層の,どのクラスの専任教員が,主に先生方のリクルートに乗って応募されてきていたのでしょうか。
【大谷学長】実際採択された方は,一番若い方が30代,20代はさすがにおられなかったかと思います。30代から50代前半ぐらいまで,若手から中堅,これからどしどしやっていただける方が多く来られております。ただ,機構長や学部長などの幹部クラスの方々は60代の方々も何名かはおられます。むしろ,その方々に管理をしっかりやっていただいて,若手の方は管理のエフォートはできるだけ少なくして研究に専念していただくということで,実質的な研究を進めていただくという体制にしております。
【川合委員】そうすると,特に若手の方で,自分がPIになるためにある程度のコンディションを気にしないで,ともかく研究室をちゃんと立ち上げたいという方がどさっと来たというイメージとは少し違って,年齢層は比較的広く,いろいろな方が来られたということですね。
【大谷学長】そうですね。もちろんPI的になりたいという気持ちをお持ちの方もおられると思いますが,必ずしも皆さんがそういうタイプの方ばかりではなかったかと思います。いろいろな方が来ておられると思います。
【川合委員】ありがとうございます。この質問の真意は,有能な人材が大きな大学に偏りがちであるということがよく言われていますが,大きい大学では人が多く,昇進するのは簡単ではないとも言われています。そこで,自ら飛び出して新しい転地を求めて外に行く方が,もしこういうリクルーティングで増えているなら,国内のやる気のある若手人材の流動化を促す上でこういうシステムが活用されているのかなと想像して質問した次第です。そういう側面も多少あるというお答えだったかと思います。ありがとうございます。
【大谷学長】ありがとうございました。ただ,プレゼンでも申し上げましたように,実質化して回していくことがぜひ必要でございます。残念ながら,J-PEAKSは不採択でございましたので,これが実質化できるように,何とぞ御支援いただければ大変ありがたく存じます。
【相澤座長】それでは,上山委員,どうぞ。
【上山委員】島根大学については,伝統的な「たたら」の製造技術に基づいて,新しい材料科学ということでやってこられたということ,それが大きな意味を持っていたということは存じています。そういうエクセレンスの柱をつくろうとされてきたことに対する今の現執行部の方たちの大学の戦略についての評価をどう思って見ておられるかということが,一つ聞きたいことです。それから,同時にそれは次の質問とも関わるんですけれども,この報告中に島根地域における産業と雇用の関係のRESASを使ったデータが結構あって,これはなかなかすばらしいなと思っているんです。特に,7ページに書かれている,機能強化を進める一方で,地域ニーズに対応することの必要性が論じられています。そこのRESASにも出ている地域の産業構造と大学の今後の戦略がどのように関わっていくのか,どういうシナリオを持っておられるのか。二つの大きなニーズが書かれていて,それは1次産業や教育医療の類いの産業,それから,後継者不足ということと,もう一つ,ヘルスケアの問題です。それは,地域の産業構造で,きちんとそこが必要だということはデータでも出ていますから,そういった次の課題として,必要だということはここに書いてあるんですが,何をやろうとしているのかということをお聞きしたいということが二つ目の点です。もう一つは,時々聞こえてくる,島根大学と中国・四国地域における広域の大学間の連携の話。具体的に言うと広島大学などだと思うんですけれども,それは,今後の島根大学の経営戦略の中で,今申し上げたようなところとも関わりながら,どのようなシナリオを持っておられるのかということを聞いてみたいと思います。私からは三つの点です。どうぞよろしくお願いいたします。
【大谷学長】ありがとうございました。まず,前執行部から私どもの新執行部に移行したときの考え方は,先ほども少し申し上げましたけれども,地方の産業,あるいは人材育成の柱がないと地盤沈下に陥ってしまうということで,そもそも島根県のたたら製鉄以来の県東部にあるプロテリアルを中心とした企業群が県の産業の大きな牽引力になっておりますので,ここについて柱を立てて,世界レベルの研究,それから,それに基づく教育,人材育成,リカレントを含めてやろうというのは,もう絶対に必要であるということで,本日のプレゼンでも申し上げたように推進しているところであります。これが1点であります。御指摘のように,2本柱といいますか,ただの柱だけでは,県外の持続性といいますか,本当の意味の持続性は可能にはならないだろうと考えております。1次産業,食料安全保障は国全体の問題だと思います。参考資料の19ページあたりに書いておりますけれども,1次産業の人口は減ってはおりますけれども,やはり大事なところで,下の図で特化指数が漁業は13.6とか,農業でも4弱とか,国の平均と比べて農林水産業の割合は非常に高いものがございます。生物資源科学部という農学部系の学部がございまして,昔からしっかりとここを支えていまして,そういうところをこの大学としても持続可能なやり方,循環型の農業や農林水産業にできないかということを強化する必要がある。それから,医療についても当然ながら,参考資料の19ページのように産業の中の人口も多うございますけれども,ここは全ての基盤となる健康を支えるということで,人材育成をしていかないといけないということであります。ただ,これから何をやろう,どのようにしていくかというところは,まだまだ具体的にこれができるということは,今申し上げましたような循環型の農林水産業や,地域創生に資する医療の在り方,高齢はもちろんですけれども,産科,小児科,そういう若者のところの今後の持続可能性を考えると,若者,小さい子供たちの安全,健康がちゃんとしていれば,お母さんたちも安心して子育てができるということで,若い女性が報われることにもつながるといったことを強化していこうという方向は,今,出しつつあるところであります。ただ,人口減少,それから,産業の縮小化という波は非常に厳しいところがありますので,現状を経済分析で明らかにしたところまではやっておりますけれども,さあ,これをどうしたらいいかというところは,まだまだこれからだと考えております。最後にお話しいただきました中国・四国地域との連携ということは,今申し上げました産業の分野の協創といいますか,協力といいますか,ものづくりもそうですし,農業や水産業などもそうですし,圏域といいますか,県を越えて,地域の中で協力できるところはしていこうということで,今回提案させていただいたものづくりのコンソーシアムでは,近いところでは広島大学さんと連携を強力に結んでおります。ほかにも,隣の鳥取大学,山口大学,岡山大学等々,あるいは四国の大学とも何が連携できるかということを,教育・医療人材の件などを検討して進めていこう,そういう連携を強めていこうと考えているところであります。ありがとうございました。
【相澤座長】ありがとうございました。それでは,そのほか,よろしいでしょうか。それでは,島根大学のヒアリングは以上とさせていただきます。大谷学長,どうもありがとうございました。
【大谷学長】どうもありがとうございました。失礼いたします。
【相澤座長】検討会のほうは,引き続き意見交換に入りたいと思います。これまでのヒアリングを踏まえ,それから,論点整理の状況を踏まえつつ,多角的な議論をさせていただきたいと思います。先ほど来,既に実施していただいていますけれども,御発言のある方は,名札を立てていただき,オンラインから参加しておられる委員は挙手のサインを出していただければと思います。さて,いかがでしょうか。
【樫谷委員】よろしいですか。すみません。
【相澤座長】どうぞ。
【樫谷委員】口火で。
【相澤座長】それでは,樫谷委員,どうぞ。
【樫谷委員】すみません。いろいろ聞かせていただいて感じたことは,いろいろな努力をされているなということを感じまして,評価したいと思うんですけれども,まず,東北大学の冨永総長様からお話しになったペーパーの右上に13となっている規制緩和の件で,このようなものがまだ不足しているとおっしゃっていただいたと思うんです。この中で,今の規制というんですか,法的規制なのか何か分かりませんが,規制の中で何かできるものも結構あるような気もしないでもないんです。例えば,大学ベースではどうしても厳格な解釈を御担当としてはされてしまうので,それはできないと思っていらっしゃるのか,それとも本当にできないのか,そこについて,まず御説明いただけたらと思います。
【井上国立大学法人支援課長】すみません。失礼いたします。我々の方向性としましては,こういう大学からの要望をいただきながら,基本的にやれることは何でもやっていくという姿勢でおります。その中で,具体的にいただいた項目の中では,相当ハードルが高いことから,もう少し聞いてみたら実はできるのではないかなとか,もしできなかったらやれるかなというところが,かなり混在をしております。今日,いいきっかけをいただきましたので,具体的にいただいた御意見の内容を含めて,なるだけやっていけるという方向で,我々も施策を考えていきたいと思います。
【樫谷委員】ありがとうございます。業務範囲の再定義という言葉があったので,ぜひ再定義について規制緩和をしてくれということだと思うんですけれども,その中で,島根大学のものを聞いておりまして,やはり東北大学のような規模の大きい大学と違って,特に島根大学はそれほど大きくないと理解しております。そこで,地方創生との関係でいろいろな役割を果たさなければいけない。国立大学だから,いろいろなことがミッションとして与えられて,少ない予算と少ない人数の中で一体どうするんだ,どんなミッションまでできるんだということがあるのと,一方では,少ない人数で,少ない予算の中でやりくりするには,どうしても差別化というか,特色化というか,特別感というか,差別化して,そのような研究も含めてしていかなければいけないという側面があるわけです。つまり,人材の云々というと,本当に文科系から理科系からあらゆるものに対応しなければいけない。ただ,これをやっていると,予算・人員にも余裕がないだろう。一方,それをやるためには,比較的とがった1点に絞れば,それこそ島根だけではなくて,世界と言えるかどうか分かりませんが,全国から学生が集まってくる。その学生がまた地元に定着していただければ,より創造につながっていくというイメージを持っているんです。国立大学というと,何となく,何でもやります,総合大学ですみたいなイメージがあるんですけれども,そこはやらないといけないというミッションがあるわけです。少なくても全て学部を網羅しなければいけないというミッションというか,何か制限があるんでしょうか。
【井上国立大学法人支援課長】ありがとうございます。その点について言えば,まさにこの検討会の前半で御議論いただいたように,今,参考資料2というものに入れていますけれども,現存しているものはかなり網羅的なものが多いですが,1個1個の大学を見ると,結構特色があるものもございます。あと,現在の国立大学を取り巻く状況と,その大学ができたときの国立大学を取り巻く状況が大分変わっている。つまり,私立大学や公立大学が大分発展して,そういった中で総体的に国立大学の持っているものが変わってきているんだと思います。そういった意味で,今,映っていますけれども,2ページ目,次のページのところですけれども,前半戦で御議論いただいていたように,やはりある場所や周囲の環境も含めて,丸2の各法人のミッションはかなり違ってくるんでしょう,それぞれのミッションに応じて,いろいろなやり方や持ち方も変わってくるでしょうと思っていて,今後,そこのところをよりミッションや機能強化に向けて,特徴や強みを生かしていくという方向でどうしていくかということをここでの議論も踏まえて実施できればと思っているところです。
【樫谷委員】そういう方向で検討しないといけないということですよね。
【井上国立大学法人支援課長】そうですね。
【樫谷委員】分かりました。そうすると,とにかく,どうしてもとがった方向になると,島根大学の強みと岡山大学の強みと,あるいは鳥取大学なり,山口大学で違うと思うんです。同じだったら意味がない。そうすると,エリアの連携というのはもっと重要だと思うんですけれども,今の単位の互換も含めて,今,どのような規制になっているんですか。
【石橋大学振興課長】ありがとうございます。大学振興課長でございます。単位互換はもちろん上限がありますけれども,非常に自由にやっていただけるようにはなっておりますので,あまりそこには隘路はないのかなと思っておりますが,これは国立大学の議論でございますけれども,国立大学の立地の場所によっては,公立や私立との連携というのも今後は重要になってくるのかなと思っております。
【樫谷委員】先生のほうはどうなんですか。島根大学にいらっしゃる方が岡山で教えるとか,どこどこで教えるという,割と重要性はあるんですか。
【井上国立大学法人支援課長】そこはいろいろなやり方がありますけれども,クロスアポイントメントという形でやっているパターンもありますし,あとは,少し講師的にほかの設置者を超えていくときには兼業という形でやっていくこともあります。今,そういった制度はあるけれども,いろいろな環境の変化を踏まえて,新たな制度や,大学の組織としても,もう一歩動かなければいけないというときには,もう少し次のレベルの取組が政府側にも大学側にも多分必要になるのかなと思います。
【樫谷委員】ありがとうございます。
【相澤座長】今,御指摘の点は,この検討会の主題であります。つまり,大きな転換期に直面し大学の在り方自体が問われている。だから,大学が機能と言っている,この機能というのは一体何かということをもう一度見直す。そして,その機能を強化するという立場から,自らの組織も含め,連携すべきところ,あるいはもっと大胆に大学を超えた組織改革をするなど,いろいろな道があるであろう。そのようなことを,この論点整理の初めのところに掲げております。これがまさしくヒアリングで各大学がいろいろと言い出しておられるところです。ですから,組織を改革すべしというメッセージを文部科学省が出すというよりも,各大学法人が進めておられる改革に目を向ける。それをいかに効果的に進めていかれるかどうかということが,この検討会での議論の対象になります。そのときに,これを進めたいんだけれども,こういう規制があってなかなか難しいよということがあれば具体的に出していただく。文部科学省は個別に対応していただく。こういった筋道で今まで議論を進めておりますので,今,樫谷委員が指摘されたことは,まさしくこの検討会での主題となります。ですから,前回の大学のヒアリングでは,大学を超えた統合・再編,そして,自治体も含めた連携の3例についてプレゼンテーションしていただきました。今日は,そういう視点から,東北大学と島根大学と,かなり置かれた立場が違う大学が,それぞれ考えておられること,苦心をされておられることをのべていただきました。これから御意見をいただきたいのは,前回及び今回のヒアリングについて,そして今後のことについてです。いろいろな観点から御意見をいただければと思います。上山委員,どうぞ。
【上山委員】今年度の夏ぐらいにこの改革の基本方針を文部科学省が出されるということで,自分自身の問題,関心のことが,ここでどういう形になるのか,文部科学省の御見解を少し聞いてみたいと思っています。何よりも,高等教育行政が今のグローバルな地政学的な変化の中で大きくターニングポイントを迎えているということが,まず一つです。特にアメリカの変化は皆さんも御存じのように,明らかな一つの現象として「反知性主義」の流れが明確になってきている。アメリカの中での各政党の支持者ごとみても,科学に対する信頼性や,あるいはアカデミックな活動に対する信頼性ということに対して疑念を抱く人たちが非常に増えている。とりわけ共和党がそうですけれども,このトランプ2.0に現れているような,反知性主義の流れというのは,恐らくアメリカだけではなく,各国に様々なチャネルを通して波及していく可能性が高いだろうと思っています。それがどういう形で我が国の中で発現していくのかはまだ分かりませんが,私はまだ内閣府にいますから,危機感を持ってそのことを見ています。具体的に言うと,既に御存じのように,各研究大学,コロンビア,ハーバードも含めて,反イスラエルの活動に対する法的な対応としてという言い訳はしていますが,1,000億円,兆単位の政府資金が打ち切られようとしている。あるいは,NIHの予算そのものも危なくなり,かつ,ポジションを削減されているという非常に大きな反知性主義の流れがあり,同時に,年末に少しイギリスに行ってきましたけれども,そういう状況を踏まえた上で,流出し始めているアメリカの研究者をどのように自国に引き込むのか,あるいは,かつて自国から出ていってアメリカで教育を受けた人たちの帰国をどういう形で促していくのかという戦略を各国が検討し,そこに高等教育行政の資金が投入されようとしている。恐らく,それは桁違いのお金が入っていくだろうと思います。今日お話を聞いていた東北大学などでも,国際卓越の資金が入りましたから,既にリクルートメントを始めているとうわさは聞いていますし,そのときにはどういう人が採用できるかという話も少しずつ聞こえていますが,恐らく,国際卓越大学制度というものと国際的なリクルートメントの話は連動していく。ただ,その規模が,先ほど申し上げたようにヨーロッパ,イギリスといった国々の高等教育行政においては,投資戦略の規模が桁違いに大きくなっていくだろうなという気はしています。その中において,ちょうど令和7年度に国立大学の強化の基本方針を出されるということでありますから,そのようなグローバルな展開の中で,国立大学の今後の方向性の軸をどこに定めるのかということについては,文科省に聞いてみたいなと思いました。とりわけ,私が関係している科学技術というところでは,本当にシリアスな問題になってくるだろうと思っております。そういう話を少し聞いてみたいなと思いました。以上です。
【相澤座長】前々から上山委員から人材育成を主軸にしていくということが強調されておりました。そのときの論点といいましょうか,中心課題は,今,半導体人材が緊急課題として挙がっているけれども,その先を考えなければいけないのではないかということでした。その先の人材育成を考えると,必ずしも文部科学省がということだけでもないのではないかという指摘もいただいております。今大きな時代転換を迎えているが,特にアメリカを中心に顕在化してきた,反知性主義の動きにどう対応するかも課題ではないかとのご指摘でした。こうした緊急課題について,文部科学省としてすぐ答えてくださいと言ってもなかなか難しいと思いますが,伊藤局長,いかがでしょうか。
【伊藤高等教育局長】座長におまとめいただいたとおり,大変難しく,当然ですが,我々もそこはしっかり考えなければいけないんですが,この機能強化に向けた検討という形で,機能強化をあえて打ったところは,御案内のように,これまでも御説明させていただいてございますが,一方では,中教審のほうで今後の大学の在り方をずっと検討していく中では,当然,日本の大きな課題である少子化。これは,ある意味どんどんシュリンクしていくような状況があって,これにどう対応するかというのは,国立,公立,私立を含めた共通課題ということで取り組んできてございます。この流れは,国立も無縁ではいられないと当然思っているんですが,単純にシュリンクするのに対応するだけではなくて,いかにこの機能強化を図っていくことによって,先ほどとがっているという話もございましたけれども,どこに力点を置きながら,人口が減少していくけれども,我が国の国立大学としての機能が落ち込まないようにしていかなければいけないだろうと。これは,学部と大学院の関係もあれば,当然分野ごとの関係もあるわけです。もう一方では,地方創生や,今日,御発表いただきましたような大変重要な課題もあり,日本全体の均衡ある発展というか,そこも目配せをしなければいけないということなので,ある一方向にだけ明確に振るということは大変難しいんですけれども,そういった中で国際対応をどうしていくのかという観点では,全ての国立大学は等しく国際競争の中で,まさに今おっしゃったような形での取組を進めていくべきなのか,そうではなくて,やはり国立大学全体として,それを目指していくところもあれば,違うことを目指していく大学もありながら,トータルの国立大学としての機能強化というものを図っていくことが必要なのではないかという問題意識を持ちながら,この検討会でも様々な観点で御議論いただいているところでございます。すみません。今の段階ではそのようにいろいろなことを狙っているという感じでしか言えないんですけれども,御指摘をいただいた点は,近々のすごく大きな課題で,ぐわっと来ているなというのは感じてございますので,これまたCSTIの議論も踏まえて,また,御一緒に考えさせていただければと思っております。
【相澤座長】大変重要な問題なので,これは文部科学省がどうするということだけではなく,この検討会で真摯な御意見を出していただいて,その戦略の中に組み込めるようなものが出てくればと思っております。永井委員,オンラインで参加ですが,いかがでしょうか。
【永井委員】よろしいでしょうか。私はいつも大学病院の立場から発言させていただいております。今,医学教育在り方検討会で国立大学を中心とした大学病院の在り方を検討しておりますので,ざっとお聞きいただければ結構ですけれども,中には深刻な問題がございます。先ほどの東北大学,それから,島根大学も,一所懸命に地域への貢献ということをおっしゃっていて,非常に健気です。大学病院は地域貢献で頑張るということはよろしいんですけれども,ここにも非常に大きな問題が含まれているということをぜひ御承知いただきたいんです。大学病院というのは診療するところですけれども,文科省の大学設置基準には,大学病院というのは教育・研究のためとしか書いてありません。使命の中に,地域派遣どころか,高度医療をするということも書かれていません。その中で,研究・教育要員を臨床に動員して,さらに地域派遣に応えようということで,システム上,非常に無理があります。そもそも,今,あらゆる学術領域で論文が一番伸びているのは,臨床医学です。また、医療という現実の問題と研究の問題の難しいバランスのなかで,臨床医学領域で論文が伸びているのは私立大学です。伸び率では私立大学が向上しています。国立大学の中にはトップ10%の論文を含めて10年前よりも論文数が減っているところがある。このようなことを医学教育の在り方検討会で議論しています。大学病院の収入は運営費交付金を超えるぐらい大きな存在ですが,大学病院の位置づけが明確ではない。この際,枠組みを変えるのであれば,大学病院における医療や,あるいは地域派遣を求めるのであれば,使命にそのことをしっかりと書いていただきたいと思います。インターン制度問題のときもそうでしたけれども,教育や地域貢献の目的で人材を派遣するということは,私は労働法に違反する点があります。そういうことをしっかり整理しないで,地域貢献を軽々しく言うと,これはもう教育・研究も診療も,あるいは場合によっては労働法にも違反するという深刻な状況が起こります。どこかで大学の枠組みを変えるのであれば,ぜひ大学病院に於ける高度医療を使命として明確にする。いたずらに現場の健気な精神に依存するというのは,危ないところがあることを御承知おきいただきたいと思います。以上です。
【相澤座長】ありがとうございました。ただいまの永井委員の御指摘の点は,大学病院の検討のまとめが出た段階で,こちらにも御報告いただくということだったでしょうか。井上課長,よろしくお願いいたします。
【井上国立大学法人支援課長】失礼いたします。今,永井先生がまさに座長を務めてくださっている,そちらの検討の状況はいただくこととなっています。そこだけで解決できないようなことについては,大変大きな論点だと思いますので,にわかにということはなかなか難しいと思いますけれども,やはりこちらの枠組みと議論を重ねていくということだと思います。一義的には,病院の検討会での御議論をこちらに報告いただくという立てつけになっております。
【相澤座長】それでは,永井委員,どうぞよろしくお願いいたします。
【永井委員】よろしくお願いいたします。
【相澤座長】それでは,福原委員,どうぞ。
【福原委員】ありがとうございます。相澤座長も御指摘のように,本日,東北大学と島根大学というそれぞれの特色ある大学からお話を聞くことができまして,私自身も大変思うところが多かったのです。その中で特に絞って意見を申し上げます。東北大学に関しましては,やはり優れた取組がなされているのですけれども,その規模という意味からの国際的な競争力に立ち得る規模が東北大学にきちんと備わっているのか,そして,規模という意味からすると,むしろ,東北6県7大学連合というのが一つの大学として,規模としては機能しているのであれば,東北大学がそのセンター的な役割を果たしているということからすると,東北6県7大学の国立大学全体を,もし一つの大学としてバーチャルに捉えたら,これは国際的にすごいランクの高い大学が日本にあるということになるので,実は,国立大学法人ごとに統計を取っていたり,会計基準の下でなされている現行のものに比べて,広域連合の可能性による評価というか,指標というものを,今後,もう少し開発していく必要があるのではないかということをふと思いました。特に国立大学におけるグループ経営の視点であります。現在も大学連携推進法人や,従来の1法人複数大学,前回も御報告がありましたけれども,そういった国立大学の連携法人の仕組みがあるのですけれども,それに加えて,今,私が申し上げた連合連携の規模というものを考える,北海道は北海道なりに,東北は東北なりに,中国・四国なりにいろいろあるかと思いますので,そういったグループごとに,さらに何か活動をエンカレッジするような指標を考えてみたらどうかと思いました。もう一つ,島根大学につきましては,やはり地方創生の大変大きな役割というか,ミッションを担っておられて,一方で,材料科学研究の伝統と実績というものも大事にされておられて,島根創生モデルということが,言わば材料科学研究のハブという構造をもって述べられていましたけれども,もう少し高等教育のハブ機能として島根大学が果たされる役割を少しお聞きしたかったかなと思いました。総合大学ではありますけれども,また,独自の学部・学科を要しない分野におきましても,やはり,その地域における高等教育のアクセスのゲートウエーとして,この島根大学のキャンパスやリソースというものがもっと活用されれば,若者の県外流出ということにもならないのではないかと思います。思い切った,島根大学を中心とした地方の大学界というか,大学シティーですけれども,こういった構想を島根大学はお持ちかどうか。地方に所在する国立大学法人が果たす役割の一つを島根大学に期待したいと思います。これは,今日いただいた論点整理の③で,そのことが「知の拠点としての国立大学の果たす役割」と書いてあるので,島根大学がこういうものの拠点としての活動をぜひお願いしたい。全寮制で学生を集めるとか,コミュニティーをつくるとか,文化スポーツ活動もそこで学生ができるとか,地域と連携した奨学制度を整えるとか,外国の留学生を呼び込み,日本の社会に参加する道筋をつくるとか,あるいは国内からの国内留学生,要は島根に滞在していろいろな勉強をするという思い切った島根大学の地方国立大学としての取組というものをもう少し聞いてみたかったかなと思います。報告を聞いて,東北大学と島根大学双方について,そのように思った次第であります。私の感想といいますか,意見は以上です。
【相澤座長】ただいまのはこの検討会の重要な主題なんですが,東北大学の国際的な立場から見たときの規模感については,文部科学省として現段階で何か答えていただけることがありますでしょうか。
【井上国立大学法人支援課長】よろしいですか。恐らく,日本の国立大学の中を総じて見れば,もちろん大きいほうではございます。あと,国際的に見てどうかというところからしますと,結構,国際的に活躍していらっしゃる大学もかなり特色があって,巨大なところから割とコンパクトなところもあったりするので,国際卓越のときに東北大学もベンチマークをつくってやっておられましたので,そういったところを見ながらやっていく。必ずしも規模が小さいからとか,ある一定規模はないといかんと思っているところはありつつも,そういった点では,一歩踏み出せる体制はあるのかなと思っております。広域連合のようなところで,実は,今日あまり出ていなかったですけれども,各地域で国立大学もエリアごとの一定の緩やかな連合みたいなことは皆さんやっていらして,それが教育であったり,診療・臨床であったりというものがバックにはある。研究といった意味で,エリアというのは,私が直感的に感じていることでは,エリアに着目した研究というのは,もしかしたら川合先生がフォローしてくださるかもしれませんけれども,教育や診療といった意味では,かなりそういう面もあるかなとは思っております。
【相澤座長】これは,まさしくこれからこの検討会で議論する内容だと思います。それで,私が先ほど東北大学の質問をしたところで,参考資料に載っていた特色ある法人がいろいろとあるだろう。その特色のはっきりしているところを,むしろもっと全体の大学運営形態に結びつけられないかということを提起されているんです。ですから,そこに,今,具体的に何か連携が進んでいるんですかという質問だったのですが,これからだということであります。ですから,この検討会としても議論する必要があるのではないかと思います。ですから,今,井上課長も指摘されたように,研究といった場合には,例えば,今,東北大学が出ましたが,東北大学だから東北地方全体を広域としてまとめていくということでは,なかなか実効的にならないのではないか。むしろ,どういう強さを出していくのかという観点が重要になるのではないか。島根大学についてもそのことが当てはまるのではないかと思います。ただ単に地域が近いからということで連携を組むというのは,必ずしもそれが有効な戦略にはなり切れないのではないか。だから,そういうことをぜひここで議論していただければと思います。柳川委員,どうぞ。
【柳川委員】ありがとうございます。まずは,上山先生がお話しになったところと少し関係するんですけれども,この1週間ぐらい,内閣や政府の中で起きていることとか,世界中で起きていることと,今ここで議論していることには大分距離があるんだと思うんです。距離があるのは,ここでの議論だけではなくて,世界中でいろいろやっている議論,日本の政府の中でやっているいろいろな検討会もみんな議論に距離があって,恐らく,今,短期的にはすごくあたふたしている部分もあるので,それに引っ張られる形で右往左往する必要はないんだと思うんですけれども,やはり地政学的な大きな変化やリスク,あるいは世界のパワーバランスの変化みたいなことは,トランプ政権がどうなろうと,恐らく起きることだとみんなが認識している。恐らく,今回起こったこの1週間の出来事の前と後とでは,例えば,この政府のペーパーや,各委員会から出てくる報告書というのも大分変わったものになるのではないかと思うんです。その意味では,今回は機能強化に向けた検討会なので,ある意味で少し大きなフォワードルッキングな話ができる検討会であるとすれば,やはりそういうものを少し織り込んだことが言えると,そういう流れに沿ったというか,世界の流れに沿った動きになってくるのかなとは思います。その点で何ができるかというのはなかなか難しいんですけれども,大きく感じるところは,ずっと議論になったところだと思いますが,研究開発力,技術開発力,ほかの抜本的な強化というのが,いずれにしても日本としては求められるというところがありますので,この辺りのところは今すごく大事なところだと感じている次第です。それを具体的にどこまでできるかというのは,また個別の検討が必要ですけれども,今大きく動いている中ではそういうところを感じますというのが1点目です。それから,2点目は今,座長のお話があったように,多様性をどうやってより日本の強みにしていくかというところなんですけれども,それに関して言うと,東北大学の17ページの下の部分があって,リソース共有という土台のところを共有したらいいのではないか。ここは,私は一つの鍵だと思っています。それは,先ほどの連携をするということ,地域連合の話がありましたけれども,これとも関係するんです。これは,地域がいいのか,大学も機能ごとがいいのか,あるいは大学全体の連携や再編がいいのかというのは,それぞれの置かれている状況によるんだと思うんですけれども,別々の大学でやるのか,全く統合してやるのかという二者択一ではなくて,土台として共有できるものは共有して,全体のコストを削減するなり,効率化をした上で,上の部分で特色を出していくという発想自体は,これからかなり重要になってくることではないかと思います。その面で,上の特色の部分は,それぞればらばらだと,いろいろやっていますねという話になってしまうので,多様性の中での特色のハイライトと集約化ではないんですけれども,もう少し大きな固まりにしていくという方向性は少し考えてもいいのかなと思います。その点において,経済学的に考えると,多様性の確保の裏側にあるのは,やはり競争であったり,独自の創意工夫であったりというところであるとすれば,ここが定員の話と少し関係してくる話で,さらに言えば,私は入り口の入試のところで競争するのではなくて,出口の卒業と卒業のクオリティーというところで競争しないと,結局のところ,では,どこに何人入りましたかという話だけで終わってしまうので,いかに習得主義というんでしょうか,こちら側に移した上で競争していくのかということを中長期的には考える必要があるのかなと思います。それから,最後に,このような議論をしていく上では,規制緩和の話があって,できないことをできるようにしていきましょうということは,まず大事なことなんですけれども,各大学のお話を聞いていても多かったですが,制度的にできることと,実際やりやすいこと,やれることには大分距離があって,その意味では,法的,規制的にはできるんだけれども,実際やろうとするとなかなか大変だというところに関して,もう少しガイドライン的なものをつくってあげて,それぞれの大学がよりスムーズに,あるいは大学の幾つかの連携がスムーズにできるようなある種の道筋を,これも1個にしてしまうと,かなり単一のところに集中してしまいますので,多様性を確保するためにも,幾つかの見通しのいいガイドをつくってあげるというところが,ここの研究会,検討会でやるべきことなのかなと感じた次第でございます。以上でございます。
【相澤座長】ありがとうございました。それでは,川合委員,どうぞ。
【川合委員】今の柳川先生のお話,さすがだなと思いながら聞いていました。リソースの共有のところは確かにそのとおりで,今,全ての大学が同じものを抱えるというのはもう無理なので,大きい大学の中には全部抱えられるところもありますけれども,それも含めて上手に共有するというのが,今後,大事になると思います。その先の多様な発展のところは大学の独自の機能だと思います。独自の発想で人を育てたり,選んだりする。先ほどの島根大学の例も,上手に外からの人たちをリクルートされているとおっしゃっています。そこへ適切に費用が投入できないと,呼ぶだけで終わってしまいます。大学独自の資金を一定量もつことができていれば,その資金を大学としての意思を持って投入して,早期に研究活動をフルスロットルであげられるだけの環境を用意すること可能です。少なくともこれまでのアメリカなどの大学での人材育成は大学の基盤経費をもとに進められ,新たに雇用した人材への投資を迅速に行っていました。日本の大学ではこのような支援を実行できているところは少ないので,新規に雇用された研究者は,自ら外部資金を集めながら,5年,6年かけてフルスロットルになるまで徐々にウォーミングアップしていくというが研究のやり方でした。今求められているのは,少し先行投資するという考え方ではないでしょうか。各大学が自分の機能として人を選び,分野も選び,育て,そして,次の世代につながる人材と共に分野をつくり出していく。このような機能を持つことによって,先ほどの多様な発展のピークが出てくるのではないかと思います。今,大学自身が自由に差配できるお金が激減しています。一方で,競争的資金の研究費はそこそこ潤沢にあります。研究費は何のためにあるかというと,研究を推進するためにあるわけですから,トータルとして一定年限で最大の成果を上がることを目指すのであれば,先行して投資するという道筋も,研究開発の考え方に入れるべきではないかと考えます。先ほど,上山先生が指摘されました,半導体の次の人材をどうするのかと。何かを継続するための次の人材をどうするかという問いかけは,もう新しくないことに対する問いかけです。みんなが分かっている有用な分野ではありますが。次の新しい芽をどこから見つけるか,という問いかけに対しては,大学自身が自分らの目で人を選び,その人の担う研究分野を育てること,これを大学の責任として全うすることができれば,先ほどの地域のところに書いてあった知の拠点としてのファンクションを持つということにつながります。大学の機能として一番大事なことではないかと思います。今,申し上げているのは主に研究に関してであり,ここの大学の個性を尊重した研究分野を推進することで,地方においても一定分野での強みを実現できると思います。一方,教育に関しては,国レベルで一定の質の保障をすることが大事なので,これは前回も申し上げたような気がするんですけれども,総合大学として全ての教育分野を併せ持つことができる大学もあれば,地方の大学では自分たちの得意な特別な分野に特化した教員を有する大学もあり得ます。教育については,どの地方の大学に入っても一定の質の保証ができるシステムであるべきで,国立大学で全体のサポートをする,ギャランティーするような教育システムをつくることが大事だと思います。各大学が個別に教育する時代は終わったのではないか,一定のガイドラインを出した上で国立大学全体で取り組む教育のプラットフォームをつくることが大事ではないかと思います。最後に東北大学のプレゼンで少し気になったところがあります。ナノテラスを中心にサイエンスパークをつくって,産業誘致するというところです。類似の話は,これまで,何度も聞いたように思います。つくばに国研が全部移った1980年代,つくばのサイエンスパークとして企業を誘致することを国を挙げて声をかけました。播磨にSPring-8を設置した際にも,光の都として,彼の地に産業界を誘致するための土地をいっぱい用意しています。少しずつ埋まってきているような気もしますけれども,そんなに簡単ではないなと思います。関西は奈良先端大学の周りに京阪奈のサイエンスパーク構想がございます。繰り返し計画されているサイエンスパークですが,簡単に収益が上がる構図ではないので,ナノテラスだけで産業界を引っ張り込んでくるという構想は,少し不安に感じました。こういうもので成功している例があって,ヨーロッパのIMECです。大学が100%絡んで,産業開発のお手伝いをするという形でオープンファシリティーを動かすことで,成功に至っています。日本からも産業界の方たちが多く利用されているようです。オープンサイエンス,オープンテクノロジーとしての民間の横つながりを上手に実行した例ですが,日本ではまだあまり成功していないパターンです。大学の関与次第で新しいものになり得るものではありますが。最後のは単なる感想です。
【相澤座長】ありがとうございました。今,御指摘の点は,次回以降,議論の焦点になりますので,またそこで述べていただければと思います。それでは,平子委員,どうぞ。
【平子委員】お時間ありがとうございます。今,柳川先生,川合先生がおっしゃったことと似ているところがありますが,航空会社の経営をやった立場から,実は今回の話で合点がいった点があります。東北大学は,航空会社でいうとハブ空港の役目を負っている大学です。島根大学は,スポーク空港の役目を負っている大学と考えられます。ハブ・アンド・スポークというのは,航空会社のネットワーク,路線網のことなのですが,このシステムを構築して競争力を高めていることが,航空業界では半ば常識になっています。今日のお話を聞いていますと,今後国立大学はハブ大学とスポーク大学という2系統に分かれてくるのではないかと思います。すなわち,ハブ大学は,研究力を中心とした世界に伍する大学として,スポーク大学は,地域の産業に密着した,いわゆる静脈的な役割を果たすことになるのではないかということです。川合先生がおっしゃったように,教育こそがネットワークだということに全く同感でして,ハブ大学とスポーク大学間で教育のシステムを共有するということが大事なのではないかと思います。そう考えますと,同じ地域の中のハブ大学と連携をするのがいいのか,地域外のハブ大学と連携するのがいいのかについて,そこはスポーク大学が選べばいい,あるいはハブ大学は自らの意思によって地域外のスポーク大学と連携してもいい,つまり連携の方法に各大学自由裁量を働かせる,ということを示唆してくれたのではないかなと思います。肝腎なことは,スポーク大学との連携をベースにハブ大学同士を徹底的に競わせるということで,ここに研究力と教育力向上の源泉があるのかなと。そして,教育システムはネットワークで形成し,リソースを極力有効活用していくことが今日の示唆だったかなと感じました。以上です。
【相澤座長】ありがとうございました。今後の議論の重要な御指摘をいただきました。それでは,服部委員,どうぞ。
【服部委員】どうもありがとうございます。それでは,少し意見を述べさせていただきたいと思います。まず最初に,この会議の検討会の主テーマの機能強化ということですが,3月に国大協総会に陪席していまして,そこで国大協としては,各大学が機能分化をするんだということをおっしゃっていました。国立大学自ら,全ての機能ではなくて,それぞれが得意なパートをしっかりと育てていく。それを大学の文化として強化していこうという方向性を示しているということを考えると,やはり大学の機能とは何か,という根本的な課題になります。今,島根大学の話を聞いていまして,地方の産業を支える,地方を支えるということで,地方にしっかり向き合うということは大切なことと再認識しましたが,そのためには,研究力は欠かせません。地方に貢献するから研究はそこそこやっておけばいいんだということでは,地方創生はできなくて,研究は国際水準のしっかりしたものが必要です。ぜひそういう視点で,文部科学省も考えていただきたい。人材育成のベースには,研究力があってこそと思っています。東北大学の冨永総長は,教育と研究は一体だとおっしゃいました。その一体という意味,教育と研究の距離感は,各大学によっていろいろあると思います。必ずしも研究イコール教育ではなくて,高水準のしっかりした研究力に基づきながらも研究内容とは直接的には関連しない教育もあります。ですから,教育と研究の関連の仕方,これを各大学で判断していただきたい。その上で,先ほどの連携の話になりますが,教育で連携するのか,研究で連携するかによって連携の在り方は,実は少しずつ違ってくると思います。そうしたときに,教育と研究を全く一体化して捉えますと,どちらかを選ばなければいけなくなる。各大学で連携する大学を選択するときに判断を難しくさせてしまいます。教育と研究の在り方をどのように考えるかについて,まず各大学でしっかり議論して,その方向性を決めた上での連携だと思います。連携を考えるときに考えやすいのは,研究をベースにした連携と思います。一方で,教育もリソースが減ってきたら連携する必要が大きくなる。そのときに,研究をベースとした連携か,教育力を強化する連携かの方向性によって連携先を決めていくかは,大きな論点ではないかと考えています。これは,各大学で結構悩ましい課題ではと思っています。最後は各大学の規模感についてですが,先ほど福原委員の発言でありました,広域的に考えるとどうかという話にも関連します。国際的に見ると,全般的に日本の大学の規模は小さいですよね。この規模感でずっとやっていけるのか。特にこれからの人口減少によって規模が縮小していったときに,国際的競争力の観点からも厳しい状況になり得る。そうすると,やはり統合・再編を考えていく必要がある。そのときに,各大学の規模感の目安をある程度示さないといけないと思います。国際的競争力を考えれば,学生規模として大体何万人が想定されるといったところまで踏み込まないと,なかなか統合・再編は進まないのかなと考えています。以上です。
【相澤座長】ありがとうございました。第1点の国立大学協会の件でございますけれども,次回のヒアリングで国大協が出ていただけることが決まりました。これをスケジュールしておりまして,国大協から説明をいただきます。それから,第2点の教育と研究のことは,私も東北大学の説明を聞いて,今,服部委員が言われたように,必ずしも一体ということを言っておられるのではなく,両輪と言っておられるんです。ですから,ぜひ私は両輪であるということを強調していっていただきたいと,あそこでお願いしたわけです。研究大学というと,どうしても研究重点になりがちです。研究大学には,強い教環境が備わっている必要があります。島根大学も,実は教育のことを進めているけれども,そこで研究力がしっかりしていないといけないということを,先ほどの成功例で説明いただきました。島根大学は十分にそれを意識されて進めておられると本日のヒアリングでは受け取りました。それでは,森田委員,どうぞ。
【森田座長代理】森田です。時間が過ぎているときにすみません。簡単に印象といいましょうか,コメントをさせていただきます。私は前から法人化のときに関わったという経緯で,そのときにどのように議論されていたかという観点から,今のこの論点についてお話をさせていただいておりますけれども,法人化のときに一つ議論になりましたのは,国立大学が法人化して,言わばいろいろな意味で自由に経営ができる余地が拡大したということですが,先ほどから出ております規制緩和に関わりますけれども,当時の議論としましては,国立大学も法人化した以上は,経営の自由を拡大すべきだという意見と,いや,国立大学にガバナンスの能力があるのかどうか疑問だと,私が言ったわけではないですけれども,そういう強い意見がございました。それまでの国立大学といいますのは,国の法律の下で,法律に従ったマネジメントしかやってこなかったところで,大きな経営判断や大学の方針を決定するのに十分な能力を持っているのかという疑念です。実は,そういう問題を指摘される方は現在でもいらっしゃいます。それに対して,私も20年たちまして,国立大学も随分経営で努力され,そのノウハウも,また体制も成熟してきたものと思います。それで十分にできるかどうかは分かりませんけれども,そういう観点から見たときには,規制を緩和して,御自分で判断をする。それによって,よりよい大学をつくっていくということは重要ではないかと思っております。しかし,これは前回か,その前に申し上げたかもしれませんけれども,その場合,結果責任は経営陣が負わなければならないということは忘れてはならないところでして,そのためには,非常に明確な形での評価を仕組みとして入れて,それに耐えなければならないということは強調すべきところではないかと思います。そうでない場合には,規制緩和の要求はそれぞれごもっともだと思いますけれども,特に財政的な意味でのお金の使い道をもう少し自由にとか,調達を自由にという場合に,最終的な責任をどういう形で負うのかということについては,しっかり考えておかないと,この仕組みはうまく行かないのではないかと思います。それに関連して申し上げますと,大学が生み出すアウトプットは当然のことですけれども,研究もありますが,教育も重要です。そのことにつきましては触れられておりますし,研究と教育は両輪であるというお話もありましたけれども,教育で何を目指すのか,どういう人材をつくるのか。これも何回か申し上げましたけれども,必ずしも我が国の場合には明確にされていないと思います。つくられる人材がどういう能力を持った人たちであって,それを担保するためにどのような教育のカリキュラムや体制を組んでいるのか。これ自体も評価の対象になりますけれども,どうしても我が国の大学の場合には研究のほうが好きという印象を免れないところです。ただ,これは我が国の少子化の結果かもしれませんけれども,今,世間では人材の奪い合いになっております。高度な人材に対する需要というのは,これからも続くと思われます。そのときに,きちんとした形でのクオリティーを担保された形での人材をどうやってつくっていくのかというのはすごく重要なことと思います。その次,3点目になるかもしれませんけれども,上山さんがおっしゃいまして,柳川先生も触れられましたけれども,アメリカに始まりました反知性主義の動きというのは,非常に注目するといいましょうか,懸念をすべきことと思っております。もちろん流出した人材をどうやって受け止めるかという話に対して,多額の投資,資金を準備するということも必要かと思いますけれども,我が国の研究環境自体がその影響を受けるということが当然あり得ると思います。一方で,安全保障の問題が非常に重視されてきておりますけれども,そこで大学が何をするか,どういう研究者に何を研究してもらうのか,それに対して国際的な意味での様々な干渉や圧力が,これから生まれてくることになりかねません。これは,我が国の国立大学が,それこそ戦後ずっと築いてきたことを根底から揺るがすようなことになりかねないと思います。それに対して,もちろん向こうのほうがはるかに強力だという意味では,どうやって対応していくかというのは難しい問題ですけれども,そういうものに対してきちんと対応できるだけのタフさというものが,これも一言で言えば大学のガバナンスとして要求されるのではないかと思っています。まだ起こったばかりで,それについて考えを巡らすというところまでなかなかいかないのかもしれませんけれども,これが起きたということは過去にも経験があることですし,十分に考えて備えておく必要があると思います。最後になりますけれども,広域や連合という話は,皆さんおっしゃいましたし,そのとおりだと思います。人口減少のときに,それぞれの大学が今のユニットのままで大学をやっていくという場合に,いかに地域においていろいろなお仕事をされたとしても,相当厳しくなってくる。そのときに,大学の連携を超えて,しかし,統合であるかどうかは微妙なところかと思いますけれども,例えば,島根大学ですとマテリアルという話でしたけれども,そこに特化してしまって,ほかの部分についてはほかの大学に委ねるという,それくらいの,ある意味で言いますと連携の話,統合の話,システムをつくっていくということは,これから考えていく必要があるのではないかと思っております。特に,今はオンラインでそれがかなり可能になったと思っておりますし,実は法人化のときにも,ずっと大学の規模や学部を並べてみたときに,これはそういう形に持っていかない限り,なかなか難しいのではないかという議論もいたしました。ただし,あのときには,国立大学のユニットというものは法律できっちり書いて,これは守っていくんだという前提でやってきたと思いますけれども,やはり環境が変わってきたというところから,もう少し柔軟に考えてもいいのではないかと思います。長くなりましたが,以上です。
【相澤座長】森田座長代理にまとめをしていただきまして,ありがとうございます。今回で,前回と合わせて5件のヒアリングを行いました。各大学法人が,これだけのかなりいろいろなチャレンジをされている。これを受けて,我々はさらに議論を深めたいと思います。次回,先ほど出ました国立大学協会に来ていただいてヒアリングをする。もう一件,用意しております。その2件でヒアリングは一応終わりといたしまして,今度は夏までにまとめる改革の方針と,課題にしてあります骨格を見ながら議論を進めていきたいと思います。どうぞ,引き続き熱心な御議論をいただきたいと思います。それでは,これで本日は閉会とさせていただきます。時間を少しオーバーいたしましたけれども,今後の予定について,事務局から御説明いただきたいと思います。
【髙橋国立大学法人支援課課長補佐】本日もありがとうございました。次回の会議は5月12日月曜日,16時から18時を予定してございます。今し方,相澤座長からもございましたが,本日同様,ヒアリングを実施予定でございます。以上でございます。
【相澤座長】それでは,第8回の検討会は,これで終了いたします。皆様,御多忙のところ御出席いただきまして,誠にありがとうございました。
―― 了 ――
高等教育局国立大学法人支援課