国立大学法人等の機能強化に向けた検討会(第7回)議事録

1.日時

令和7年3月6日(木曜日)13時30分~15時30分

2.場所

ハイブリッド(対面・Web)開催 ※傍聴はWebのみ

3.議題

  1. 今後の検討スケジュールについて
  2. 国立大学法人からのヒアリング
  3. その他

4.議事録

国立大学法人等の機能強化に向けた検討会(第7回)

令和7年3月6日

【相澤座長】それでは,定刻となりましたので,ただいまから,第7回国立大学法人等の機能強化に向けた検討会を開催させていただきます。本日の検討会も,対面,オンラインの併用によって,公開で開催させていただきます。
それでは,本日の議事等について,事務局から説明をお願いいたします。
【春田国立大学法人支援課課長補佐】事務局でございます。本日の議事及び配付資料につきましては,次第のとおりでございます。過不足等あれば,事務局までお申しつけください。以上でございます。
【相澤座長】ありがとうございました。では,議事に入りたいと思います。
本検討会では,昨年,6回にわたって議論を行ってまいりました。それを総括したのが,1月に公表いたしました論点整理であります。本日は,その論点整理を柱として,それぞれの項目について議論を深めてまいりたいと思います。
まずは,この検討会での検討結果をどう反映させていくのかということについて,スケジュールという立場から,資料1に基づいて,文科省からの説明をお願いいたします。
【北野国立大学法人支援課企画官】国立大学法人支援課,企画官の北野でございます。私のほうから,資料1に基づきまして,御説明をさせていただきます。
まず,昨年末,論点整理の議論,ありがとうございました。本年1月に公表をさせていただいているところでございます。この論点整理の内容でございますけれども,このうち現行制度で対応可能な事柄や事務的に詰めることが可能なものにつきましては,直ちに実施を進めていきたいと思っております。一方,この資料を御覧いただきますと,真ん中,緑色のところで「本検討会」と書かせていただいておりますけれども,この論点整理,深掘りする点につきまして議論を進めていただきまして,今年,夏をめどに,「改革の方針」,これは仮称とさせていただいております,こういったものをこの検討会で取りまとめをお願いできればと思っております。
この「改革の方針(仮称)」が何になるかと申しますと,その下,「運交金」と「中目・中計」と書いているセルがございますけれども,毎回,国立大学法人の期またぎのときには,次期中期目標・中期計画期間における運営費交付金のルールの在り方を検討する検討会,また,国立大学法人評価委員会ワーキンググループにおきまして,組織業務の見直しにつきまして検討を行っていく形になっておりますが,こういった第5期に向けた基本的なルールに関する検討を行うに当たりまして,この検討会で御議論いただく「改革の方針(仮称)」を文部科学省クレジットの改革基本方針といたしまして,大きな方向性をここで示していくという形にさせていただければというふうに思っております。
1ページめくっていただきまして,今後の主なスケジュール,具体のスケジュールでございますけれども,先ほど申し上げました「改革の方針(仮称)」の骨子のイメージでございますが,こちらにつきましては,第5期中目・中計の運交金のルールでございますとか,組織業務見直しの大きな視点というところを盛り込むことを検討しておりまして,まず,骨子のイメージとしては,2040年,こちらは,18歳人口減少というだけではなくて,論点整理の中でもおまとめいただきましたけれども,今後20年たったときには大学という位置づけそのものが大きく変わるだろうと,そういう時代の転換点を見据えた上で,2040年を見据えた機能強化の明確化というところをマル1にさせていただいております。また,マル2の中身といたしまして,機能強化の方向性に沿った組織の見直しをどうするべきか。マル3といたしまして,徹底した経営視点の導入と財務戦略の構築というのを求める必要があるのではないか。また,マル4,教育研究の質の向上とコスト負担の見直し。大学にこういった改革を求める上で,最終的に,国からの支援の在り方として,国大法人の支援の考え方という形で,骨子のイメージを今検討しているところでございます。
こちらの骨子,中身をそれぞれ詰めていくに当たりまして,今後のスケジュールでございますけれども,まず,特に機能強化の方向性に沿った組織の見直し,こちらはすでに各大学で様々な取組が行われているところでございますので,本日は,大学統合の事例として東京科学大学,一法人複数大学の事例として東海国立大学機構,大学等連携推進法人の事例として山梨大学からのヒアリングを実施したいと思っております。本日のヒアリングを踏まえまして,特に,組織の見直し,今後の在り方でございますとか,国の支援,制度改正,ガイドライン等,どういったものが必要なのかということについて,御議論をお願いできればと思っております。
次回以降につきましては,特にマル2の観点に関係してきますけれども,法人のミッションや所属する学生の構成等の特徴を踏まえつつ,今後の機能強化に向けた考え方について,こちらも国大法人からのヒアリングを行っていきたいと思っております。
それ以降,「10回以降」と書いておりますけれども,「改革の方針(仮称)」の骨子イメージのそれぞれの内容につきまして御議論をしていきまして,夏をめどに「改革の方針(仮称)」を取りまとめるというスケジュールで進めさせていただければと思っているところでございます。簡単でございますが,私からの説明は,以上でございます。
【相澤座長】こういうような方針の下に進めていきたいと思いますが,何か,御質問,御意見,ございますでしょうか。
よろしければ,このような方向性で検討会を進めさせていただきます。そこで,本日,後半の初回は,大学改革の当事者である個々の国立大学法人が進めている大きなチャレンジ,あるいは,いろいろなお考えに注目いたします。時代の転換点といいますか,そういうようなところをどうやって乗り越えていくのかというところに論点を絞っていきたいと思います。特に,本日の中心的な課題は,大学の統合再編等を含めた組織の見直しです。これは大変デリケートな問題ですね。文科省からこういう言葉が出てくると,全ての大学は警戒心を持って,何をするのかという目で見られるのではないかと思います。ただ,これは,そういう観点から議論を進めていくことではなくて,時代の転換点を迎えて,大学の在り方自体が問われている。これまでの大学そのままを続けていくこと自体に大きな問題がある。そこをどうやって乗り越えて,大学全体の機能の強化というところに結びつけていくかであります。
既に,大学の統合,再編,自治体との連携というような形で組織の見直しが行われて,大きなチャレンジが進んでいます。今日は,それぞれについて,三つの大学から,その状況を,伺いたいと思います。事細かな,どういう改革をしているのかということもさることながら,これがどういう位置づけになっていて,そして,いろいろな独自の展開をされているわけですけれども,そういう軸の中に国としてこうすることが必要ではないかというようなことを提起していただければ,検討会としてはそういうことも含めて議論をしていきたいというふうに思います。
それでは,非常に短い時間で恐縮ですが,それぞれの大学からのプレゼンテーションと,意見交換をさせていただきたいと思います。
最初は,大学統合の事例として,東京科学大学にプレゼンテーションをお願いしたいと思います。大竹理事長,田中学長,正面の席にお着きください。それでは,10分間ということで,大竹理事長から御説明をお願いいたします。
【大竹理事長】皆さん,こんにちは。東京科学大学理事長の大竹でございます。このような機会を与えていただいて,感謝申し上げます。短時間でございますけれども,田中学長と共に,東京科学大学がどうして生まれたのかということを説明できればと思っておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。座ってよろしいでしょうか。
【相澤座長】どうぞ。
【大竹理事長】相澤先生からお話がありましたとおり,法人と大学の両者を統合した例ということで,重要だなあと思った点,それから,留意するべき点として,我々,危なかったなというところもありますので,そこを素直にお伝えできればというふうに思っております。
2ページをお願いします。2022年10月14日に基本合意書を締結したということでございまして,実は,協議を開始したのは,その2か月ほど前ということになります。ですので,かなり短時間でやってきたというところは,留意と申しますか,よくできたなというところでもありますし,この中で,学内との意見交換と,あと,ここは留意点だと思いますけれども,同窓会の方々との意見交換,そこも同時にやっています。その結果として,10月14日に一緒になりますよという記者会見をしたというのが,次のページになります。
さらにめくっていただきますと,少しビジーなスライドでございますが,統合するときに,振り返ってみますと,両学の歴史を理解することは非常に重要だと,私は思っています。東工大は1881年に東京職工学校として,東京医科歯科大学は1928年に東京高等歯科医学校として創設されていて,産業あるいは医療に密着した,そんな人材を育成してきたという共通点があります。お互いに,そういったリスペクトする関係であったと。あるいは,そういう歴史と文化を持っているところは,統合に結びついた一つの理由になろうかというふうに思っています。また,指定国立大学法人として両大学が指定されていること,さらに,右に丸が六つありますけれども,共同研究費国内1位とか,あるいは,歯科は今でも恐らく世界4位だと思いますので,そういった研究オリエンテッドな大学であることは,両者,リスペクトできる関係であったということは,必要な条件だったかというふうに思っています。
次のページに,それも含めまして,統合の背景について,まとめています。これまでの実績というのは,今申し上げた,研究オリエンテッドで,産業あるいは医療に貢献してきたということに相当します。その次にはやはり,研究力をさらに高めるために個々の大学単独でいけるかどうかというところへのクエスチョンがあったんですね。お互いにクエスチョンを持っているというのは非常に重要なところで,危機感なくして次への行動はないので,いかにその危機感を共有するかというところは,2年前に大事なところだったかなというふうに思っています。同時に,コロナ禍も一つの起爆剤になったかなあというふうに思っておりまして,こうした大きな危機があったときに,理工学だけ,あるいは人文社会科学のみ,理工,医歯学のみで対応し切れるかと。これは恐らく,今でも難しいんじゃないかと。そういった非常にじくじたる思いというのを,技術者,研究者って,感じたところがあると思うんですね。それに対して我々は,単独というよりは,一緒になったほうが対応できるだろうと,そういった強い意志がありました。
めくっていただきまして,統合形式についての図に移ります。そこで,1法人2大学の選択と,1法人1大学の選択と,この両者がありました。今,横に田中学長がいるので,田中学長が一番御存じですけど,結果的には1法人1大学を選択したということです。
理由が次のスライドにございます。二つございまして,一つは,より大きなシナジー効果ということでございます。先ほどの研究力をいかに高めるかという観点で申し上げると,グランドデザインを新しくつくることで大きなシナジー効果を生むことができるだろうと。これは後でもう少し述べたいと思います。もう一つは,大きな改革が可能であると。完全に白地図というふうにはいきませんけれども,それに近い状態で執行部を構成することもできますし,実際,こうやって2人が並んでいるというのはその証左だと思いますので,新しいものを新しい人たちでつくっていく,これが可能になったのは非常に大きいことかなあというふうに思っています。
二つめくっていただきますと,ミッションがありまして,「「科学の進歩」と「⼈々の幸せ」とを探求し,社会とともに新たな価値を創造する」。英語で言うと“for and with Society”という,そういったミッションになっています。
ここからは,少し課題というか,留意点というか,それについての説明になります。「大学統合の先にあるもの」ということで,その次のページに「統合のBig Bang」というスライドがあろうかと思います。統合の背景については申し上げたところですけれども,ある大学とある大学が統合したときに,1+1が2になるのであれば,社会あるいは統合した本人は恐らく納得しないだろうと。いかに1+1というのを2よりも大きくするかというところが重要であり,留意点であり,難しいところであるというふうに思っています。統合の目的が,研究力の圧倒的な向上であるということであり,また,新しい大学の在り方を創出することであるとすると,研究を変えるとか,教育を変えるとか,組織を変えるというところの手前のところで,恐らく,考え方,意識を変えるというところが非常に重要だと,我々は思っています。そこには2段階あるということはようやく最近気がついたことなのですけれども,一段階目は,例えば事務職同士で,お互いの職場を知る,何をやっているかを知る,違いを知る。これは,一つ,必要条件としてあると思うんですね。もう一つの意識の変え方というのは,研究者の意識をどう変えるかというところで,気づいてみると,理工系と医歯系,恐らく人文社会科学もそうですけども,ベースになっている考え方というのが違います。カーボンニュートラリティというのは理工系ですけども,2050年に達成しましょうと,こういう目標を据えます。医歯系は,2050年にこの患者をどうするということは絶対考えません。あしたどうするというふうに考えます。もし,理工系の人が医歯系の考え方を持って,思考を持って,社会に向き合う,直接向き合う,こういうことができるとすると,必ず研究テーマは変わるんです。こういった意識を変えていくという2段階目の変換というのが,この統合における非常に大きな要素になろうかと,我々は思っています。その結果として,下に研究と教育がありますけども,これが自動的に変わってくる。育成する人材も変わってくるだろうと,今,期待しているところです。あるいは,今はまだ行き着いていないところかもしれません。次のページ,お願いします。
今日,ここは主題ではないと認識していますけれども,現状の分析というのも重要なので,左がScience Tokyoですが,我々,統合したことで,かなり広い分野でTOP1%論文が出るという状態になっているので,こうした現状を分析しながら,各大学が,次のページにありますけれども,こうした未来像を描いて,ステップを踏んで,インパクトのある研究大学とか,あるいは教育を推進する大学になっていくという,それぞれの大学がそれぞれの絵を描いていくというのが非常に大事だなあというふうに思っています。この図は我々Science TokyoのStep1,2,3ということで,これをこれから詰めていく,内容を詰めていくということになります。
統合ということで,もう一つの留意点は,学内の融和でございます。それが次のページにあるタウンホールミーティングでございまして,田中学長と私は,計9回ですか,タウンホールミーティングを行ってきましたし,これからも行っていくつもりです。いろいろな意見,あるいは違いに対する指摘,厳しい御指摘もいただきますけれども,現場が提案すること,あるいは思っていることをいただくというのは,統合においては非常に重要なことかというふうに思っています。
こうした中で,研究としては,次のページにありますように,マルチスケールで,善き生活,善き社会,善き地球を考えるといった展開を皆さんに説明して,その結果として若手の教員からは新しいターゲットというのも出てくるようになって,正の循環に入っているかなあというふうに思っておりますし,教育については,次のページにありますように,教養教育,あるいは国際化,そして,統合の成果が一番出るのは恐らく多様性だと思いますけれども,理工系と医歯系,両方を卒業するような,ダブル学士プログラムについても検討を進めているところでございます。
最後に,お願いということについてもお話ししていいということでしたので,18ページを御覧いただければと思います。大学統合に当たって,国に期待すること。規制緩和,予算の措置ということで,規制緩和については,学部創設が容易になるといいなあということについては考えているところです。ここで文章にしていませんけれども,一番欲しいことは,応援の気持ちです。その気持ちがあれば,我々,頑張れるなというのが本心です。どうもありがとうございました。(拍手)
【相澤座長】ありがとうございました。
大変大きな統合化ということを極めて短時間にまとめていただきました。委員の皆様から,御意見,御質問,ありましたら,よろしくお願いします。どうぞ,平子委員。
【平子委員】平子と申します。御説明,ありがとうございました。二つの組織を一つにするというのは大変なチャレンジだと思っていまして,今回,無事に統合されたことに対しましては心から敬意の念を表します。理事長がおっしゃったように,これからが一番大事なわけですね。二つの組織が全く違う歴史的背景の中で一つになるわけですから,従来の,伝統とか,創設された背景とかに対しての執着が,逆に足かせになってくる可能性もあるのではないかと思います。イノベーションを起こすためには多様性が必要で,先ほど御説明にもございましたが,医歯系と理工系では全く違いますし,もちろん人文社会系も全く違うアプローチをしてくると思うんですが,多様性を生かすためには,それぞれ,大学におけるガバナンスの中のポジション,誰がどういうポジションに就くのかというところも非常に大事になってくると思うんですね。そう考えますと,二つの組織が互い違いといいますか,そういうようなポジション取りではなくて,適所適材の発想が必要だと思います。これから大変な苦労をされると思うんですが,お互いのリソースを最大活用することによって新しく生まれた大学に価値が創出される生まれると思いますので,それに対するお考えをお聞かせ願いたいのと,もう一つは,医歯系と理工系を掛け合わせるだけでも大変なことだと思いつつも,一つ足りないピースは,倫理とか,哲学とかがまだ足りていないのではないかと思いますが,いずれにしても,これから先のことを考えたときに,新たな価値を生み出すという観点で,適所適材の人材配置をどう考えられているのか,教えていただければと思います。
【大竹理事長】御示唆をいただいたと思っています。誠にありがとうございます。
恐らく2点,論点があって,前半のところは,産業あるいは医療といった,両大学に通底する人材育成というのが共通点にあったというところで説明できるかと思っていて,我々,違う方向を向きつつ同じ星を見ていたところもあるかなというふうに思っているんです。その中で,これまで産業を興してきたという自負がある旧東工大と,コロナ禍のときは受入れ数がナンバーワンで,そういった意味で医療を背負ってきた東京医科歯科大学は,現場を見て,あるいは現場を見ることができる,そういった医療従事者なり技術者というのを育ててきたというところがあるので,お互いに,そこの伝統を大切にすることによって,あるいはリスペクトすることによって,お互いに補完するというよりは,お互いにプラスになる関係になるかなと信じていますし,学生の中では既にそういう動きも見られるので,むしろ期待しているところではあります。
後半の,適材適所,それから,どういう多様性の中でのガバナンスをしていくのかという観点はまさに課題でありまして,今は教育という一つの事象に対して,副学長あるいは理事相当の人を2人置いています。これは非効率というふうなおっしゃり方ももっともなんですけれども,お互いに理事相当の立場で,医歯系の人が理工系を見て,理工系の人が医歯系の教育を見る,こういった期間が一定数必要だろうというふうに思っているんですね。それをお互いに理解することによって教育ということについて収れんして一つの方向にまとめることができるということで,恐らく2028年ぐらいまではそういったPost Merger Integrationの時期として大切に人材を育成していく必要はあるかなというふうに思っていて,その後に適材適所というのが来るというふうに思っています。失敗すると学生に影響するところもあるので,そこは慎重にすべきかなあというふうに思います。
それから,倫理,哲学については,私もどちらかというとそちらのほうの本を読むほうが多いので,非常に重要だし,我々に必要なことだと思っています。残念ながらというか,哲学あるいは歴史の学部を持っているわけではないですけれども,逆に申し上げると,いろいろなところと組める,一緒にやれるという立場でもあると思っていて,今日の御示唆は本当にもっともだと思いますので,そこも頑張って一緒にやっていきたい,日本あるいは世界の方々と一緒にやっていきたいというふうに思っています。
【相澤座長】ありがとうございました。柳川委員。
【柳川委員】大変すばらしい取組を御説明いただきまして,ありがとうございます。柳川と申します。
今,お話があったように,いわゆるPMI(Post Merger Integration)というのは,大学ではなくて,普通の民間企業でも相当難しい課題だというのがいろんなところで現実化していて,統合の大きなメリットはあるんだけど,それを上回るようなコストが発生してしまうと問題なので,それをどう対処していくのかというのは,民間の普通の企業でも問題なんですが,特に大学という組織をやるときのPMIの難しさであるとか,あるいは逆に易しいんだとか,そういう辺りを,何かあれば御説明いただきたい。
大きな方向性としては二つあると思っていまして,一つはコーポレートカルチャーですね。企業文化とか,大学であれば大学の文化とか大学の風土みたいなことを融合していくということをどうやっていくのかという話と,もう一つは,様々な制度的な要因があって,表面上は組織は一つになったんだけれども,それを実際として運用していくところで,もし,様々な難しさが何か,制度的なものがおありでしたら,少しお話しにくいかもしれないですが,差し障りのない範囲で,私も大学人なので,この辺りの書類を簡単にしてくれたらもう少し楽なんだろうなとかいうところも含めて,何かお話しできるところがあれば,率直にお話しいただければと思います。
【大竹理事長】ありがとうございます。私が話した後に,田中学長から追加があると思います。
Post Merger Integrationは簡単ではないかなと思っていたので,建学の精神というのをつくる作業をしました。我々2大学の人たちは,何を目指して,どういう気持ちで統合したのかと,これを文章に残して,役員会と評議会に諮ったんですね。そういった気持ちを一緒に言語化していくという作業がPost Merger Integrationでは非常に重要かなと思っていて,それは一定奏功しているかなというふうに思います。タウンホールミーティングは一環として一定の効果があるかなというふうに思いますが,おっしゃっていた制度に関しては結構,なかなかしんどいところがあります。しんどいところだけ先生にしゃべってもらうのもどうかと思いますけれども……。
【相澤座長】時間の関係もありますので,簡単にお願いいたします。
【田中学長】制度に関しては,存続法人は旧東京工業大学だということを我々旧東京医科歯科大学としては直視しなきゃいけないと思っていて,制度は旧東京工業大学に寄せていくという形を取りました。ですので,旧東京工業大学の人のほうはあまり変わってないかなというふうに思っているかもしれませんが,ただ,病院とかは旧東京工業大学にはない組織なので,そこは旧東京医科歯科大学の組織として統合しているという形です。
【相澤座長】それでは,川合委員,どうぞ。
【川合委員】大変な統合を成し遂げられて,これから成果が出てくる一歩手前かと思います。その御努力と諦めない精神力に心から敬意を表します。
私からは,2点ほどお聞きしたいと思っています。1点は,何回もお尋ねしているかもしれませんが,東京プラスアルファの関東圏に非常に強い単科大学が五,六校あって,その中の最も強い二つの大学が一緒になられたわけですけど,近隣に一橋大学,東京外大,電通大,東京芸大,など強力な単科大学があり,これまでは協力して様々な事業を実施しておいででした。これまで拝見していて,強力な複数の単科大学が上手に共同して,お互いの情報を共有し,単位互換も実施されていたかと思います。このような協力体制は,これからの大学運営の一つの在り方かと思っていたところ,上位にある二つの大学が合体されました。以前のような,ゆるく繋がった関係から転じて,全く異なるディシプリンの大学を統合して一体として経営されていくことになりますが,どちらもメリットがあると思うので,その辺の考え方の違いと良さをいま一度お聞きしたいというのが1点。
もう1点は,大学改革は20年前に法人化したとき以来ずっと叫ばれ続けていて,ほとんどの大学がすごい労力を費やして学内で改革し続けています。しかも,日本の大学は全部,研究者,教育者が主導権を持っているので,こういう改革を実践する主体はは全て教育研究をやる者であって,学校経営の素人が集まって頑張らなきゃいけないというのが現実です。今回の2大学の統合も,超一流の研究者の方々が,学長,理事長も含めてですけれど,大学統合の実務者として参画されて数年の労を取られています。この間に研究を100%できているわけじゃないので,大学改革を実施すると,研究力や教育力を削いで実践しているという側面があるかと,思っております。この辺は,今後絶え間なく大学が改革を求められるのであるとすると,少しプロを育てて,研究力を削がずにやれるようなシステムに変革する必要があると個人的にずっと思っていたものですから,実際に二,三年かけて統合されたところの経験から,何か示唆をいただければと思います。以上,2点です。
【大竹理事長】これも御教示いただいたと思っています。
前半の,我々も四大学連合を大切にしてきていて,今も大切にしています。先ほどの人文社会科学が足りないんじゃないかという御指摘はまさにそのとおりで,その中で,一橋さん,外語大さんも含めて,より強化していくというつもりで今臨んでいます。その後に何があるかというところは,また別の話というか,別の考えになるのかなというふうに思います。
後半の大学改革についてはまさにそのとおりで,研究担当の波多野理事もそうですけれども,本当に研究の第一線の人にガバナンスに入ってもらっているというところではあります。多分,次に松尾先生がお話しになるんだと思いますけど,ユニバーシティ・デザイン・ワークショップと,あるいは,これまでトップセミナーというのもあって,日本の大学に人材育成というのが入ってきたのはまだ10年ぐらいだと思うんですね,2016年から上山先生の会が始まっているので。そういう観点からいくと,アメリカのように,欧米のように,そういった経営層というのが安定して存在するという時代がもうすぐ来るんじゃないかと思うんですね。それが今はまさに過渡期なので教育研究で活躍している人がガバナンスにという状態になっているので,そういった世界を次につくっていくということが必要なのかな。つまり,ガバナンスをつかさどる人を専門的に育てていくことが必要なのかなと思います。
【相澤座長】まだいろいろと,御意見,御質問あるかと思いますけども,少し時間が押しておりますので,三つの大学のヒアリングが終わった後,委員の間では意見交換ができますので,そこのところでまた御発言いただければと思います。それでは,東京科学大学の皆様,ありがとうございました。
【大竹理事長】ありがとうございました。
【田中学長】どうもありがとうございました。
【相澤座長】それでは,次に,国立大学法人東海国立大学機構に移らせていただきます。松尾先生,オンラインで参加されていると……。
【松尾機構長】東海機構の松尾です。
【相澤座長】それでは,松尾機構長にお願いいたします。10分で説明をお願いいたします。
【松尾機構長】それでは,早速,始めさせていただきます。東海国立大学機構,以下,東海機構と言いますけれども,機構長の松尾清一です。私どもの取組と課題等々について,説明をさせていただきます。
次のページ,お願いします。まず,名古屋大学と岐阜大学の法人統合の契機は,一言で言いまして,国立大学を取り巻く国内外の環境が厳しさを増す中,大学間の壁を乗り越えて現状を変えなければ国立大学のミッションを果たせなくなるという強い危機感を共有できたことでした。その際,我々が位置する東海地域及び両大学の特性を考え,法人統合のメリットを生かして,目標として,地域創生のインパクトある貢献と国際競争力の格段の強化,これを法人として同時に達成するということを目標といたしました。
次のスライドです。一法人複数大学を選択いたしましたのは,世界有数の製造業集積地である東海経済圏におきまして,異なる役割を持つ大学が県境を越えて連携し,国立大学の新たなモデルを目指すにはこの方式が近道だと考えたからです。ここに書いてある比較はあくまで私の個人的な見解でありますけれども,大事なことは,大学の再編・統合に当たりましては,地域性,大学の特性,学内外の合意形成,将来の発展性や拡張性など,複雑な要素が影響します。したがって,大学の再編・統合の形は,画一的なものではなく,最適解は多様であるべきであると考えています。次のスライドをお願いします。
東海機構では,機構長は,各大学の総長,学長,すなわち大学総括理事を任命して,それぞれの大学の教育研究の運営権限を委任しています。機構長は,機構全体のミッション・ビジョンの実現と各大学の発展のために,機構の経営全般に責任を持つものです。両大学の円滑な意思疎通と迅速な意思決定のために,例えば,機構長,両学長,事務局長ら,機構トップによる懇談会を毎週開いておりますし,経営協議会によるキャンパスのサイトビジットを行うなど,このスライドの右に示すような諸課題に対応しています。また,昨年11月からは,国立大学法人法改正によりまして,新たに運営方針会議を設置いたしました。これを含めて,新たな体制は,参考資料の16ページ,17ページに示しておりますので,後で御覧ください。
次のスライドです。東海機構は,社会のために時代の要請に応じて常に新しいスタンダードをつくり出すという意味で,“Make New Standards for The Public”をミッションに掲げて,おおむね10年先のビジョンとして,両大学が社会の公共財として「知とイノベーションのコモンズ」になることを目指しています。機構長は,機構の基盤的事項,例えば,共通教育の推進だとか,組織の統廃合,デジタル環境の整備,機構債の発行,資金の共同運用などを行って機構運営の円滑化と効率化を図る一方で,法人が掲げたミッションを実現するために二つの大学の役割を,グローバル・コモンズとリージョナル・コモンズとして明確にしつつ,強みを生かした連携活動を支援しています。次をお願いします。
また,東海・信州地域の国立大学は危機感を共有して,現在及び将来の国立大学の在り方を考えるための連携プラットフォームを昨年1月に立ち上げました。東海機構の取組と成果ですが,これは,共通教育基盤を構築するための連携組織,アカデミックセントラルの九つの部門を示しています。各部門では両大学が共通で進めるべき課題を共有して,教育環境を整備しています。右に代表的な成果の一部を白抜きの文字で示していますが,例えば,Learning Management System(LMS)の統合とか,コンテンツを共有する。それから,学生の学修成果を見える化するステータスシステムを運用する。あるいは,連携科目の開設と拡充を行うなどであります。
次のスライドです。東海機構では,2022年度から,デジタルユニバーシティ(DU)構想として,大学のDXに取り組んできました。DU構想では,DXによってキャンパスを超え,地域全体の新しい社会づくりや人類課題解決に貢献すること。そのために,大学機能を進化させて,100万人のステークホルダーとコミュニケーションすることを目標にしています。左側の図にあるように,四つの領域,九つのサービス,そして15のシステムを整備する計画です。エンドユーザーとの接点はこのうちの15のシステムでありまして,これまで赤の点線で囲んだ五つのシステムが稼働しており,今年度中にさらに二つ,稼働が始まる予定です。
次のスライドです。東海機構では,法人統合によるシナジー効果を発揮するために,積極的に両大学の強みを持ち寄って,日本を代表し,世界と伍する研究拠点,あるいは,地域創生にインパクトを持って貢献する連携拠点をつくる取組を支援しています。現在,六つの連携拠点がありまして,このうち左上の糖鎖生命コア研究拠点(iGCORE)は,世界の学術フロンティアを先導する,フロンティア事業,Human Glycome Atlas Projectの中核を担っています。次のスライドをお願いします。
大学のベンチマーク指標の一つに大学ランキングがあり,そのデータの一部をお示しします。法人統合後,大学ランキングの顕著な変動は残念ながらありませんけれども,分野,出版年,文献タイプなどを考慮して比較したFWCIでは,名古屋大学は国内2位を維持しておりますし,また,岐阜大学におきましては,右下にありますように,附属病院を有する同じグループの国立大学の間で,タイムズ・ハイヤー・エデュケーションで見ると国内順位は,明確に上昇しています。参考までに25ページに岐大と名大と機構の連携を示しております。次のスライドをお願いします。
東海機構では,大学における種々の制約を排除しながら円滑に産学連携を進めるため,昨年度,東海機構100%出資の子会社TII(Tokai Innovation Institute)を設立いたしました。また,左下にありますように,東海機構はベンチャーキャピタルを立ち上げて,シーズから,アーリー,ミドルに至る,スタートアップ支援を開始しています。右上のTongaliは,もともと名古屋大学を中心に東海地区の五つの国立大学でスタートしたスタートアップ育成プログラムですが,現在は東海機構を中心に26の大学と二つの研究機関から成る一大プラットフォームに成長し,東海圏のスタートアップに大きく貢献しています。その中で,右下にありますように,大学発スタートアップ数は,名古屋大学と岐阜大学は東海圏でツートップを占めており,強力な牽引役になっています。次のスライドをお願いします。
法人統合時と現在の東海機構の収入規模内訳を,病院部門を除く形で比較したものです。機構全体の事業規模は拡大しており,その主な要因は,産学連携など,外部資金の増加です。今後は,この規模もさることながら,教育研究の質,運営効率,さらに社会へのインパクトなどを格段に向上させるために,法人統合シナジーの効果を最大化する工夫をさらに進めたいと思っております。
次のスライドです。ここまでが東海機構の5年間の取組と成果の一部ですが,機構発足直後にコロナ禍が直撃しまして,キャンパスの閉鎖をしました。両大学はコロナ禍でもしっかりと連携して,これまで一定の成果を上げて,今後の発展の基盤は築けたのではないかと思っています。一方で,東海機構は法人統合によりその機能を格段に高めることが国や社会から期待されています。特に,現在,名古屋大学を中心に準備を進めております国際卓越研究大学の申請では,大胆な大学改革を目指しておりまして,これに対応して一法人複数大学システムを取る東海機構としても,機構の一層の構造改革が必要だと考えています。我々が考える課題はここに挙げた四つで,第一に,大学の連携・統合の理念や目標を常に再確認することであります。第二に,各大学の役割を明確にした上で法人統合のシナジー効果を最大化する努力を継続すること。そして,第三に,それを可能にする,権限と責任,執行と監督,資源獲得と配分,意思決定の透明化と迅速化など,明確なガバナンスを確立すること。第四に,大学を含む多様なステークホルダーとの連携によって人材・資金・知の好循環を構築して,機構のインパクトを最大化することであります。これらはいずれもなかなか困難な課題ではあるんですが,未来に向けて,大学の再編・統合のモデルとなるべく,一層努力をする。
最後に,困難な時代に改革を進め,社会の進歩と革新に貢献しようとする大学のチャレンジは,大変貴重なものであるし,また,日本の将来のために必須であるというふうに考えています。しかし,一方でその形は多様であるべきであって,一法人複数大学による大学の統合というのは,その多様性の一つだと思っています。これらを支援する国の政策,あるいは,社会の政策,経済界の支援,こういったものは,資金面だけではなく,規制緩和や制度改革も含めて,画一的ではなく,多様かつ包括的であるべきだと思っております。国や社会からの御支援と御理解を心からお願いする次第です。以上でございます。ありがとうございました。(拍手)
【相澤座長】ありがとうございました。それでは,委員から,御質問,御意見ありましたら,よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。
私から,一つ質問をさせていただきます。今,松尾機構長が,大学の統合・再編にはいろいろなモードがあるということで,東海機構とされては,1法人2大学という方式を取られました。1法人2大学の設置形態と,先ほどの1法人1大学という,この二つの方式での比較といいましょうか,松尾機構長の立場からそこを比較して御覧になるとどんなふうなコメントが出てくるのかというのを期待いたしまして質問をさせていただきますが,いかがでしょうか。
【松尾機構長】ありがとうございます。大変難しい質問なんですが,簡潔に言いますと,一つは法人統合に加わる大学の特性によると思います。我々の場合には,いわゆる文部科学省が言う3類型,これは世界と戦う大学といいますか,1類型は,地域に貢献する大学と,一言で言うとそういうふうに言えると思うんですが,二つのタイプの異なる大学がそれぞれの特性を発揮しながらやっていくには一法人複数大学のやり方が適しているのではないかというのが1点と,2点目は,東京科学大学の場合には,東京という,ある意味では大変特殊というか,地方が特殊なのか分かりませんけれども,しかも,領域を全く異にした大学の統合ですので,1法人1大学というのは非常に理にかなわっているのかなと私も思っていますが,一方で,地域というのは非常に複雑な要素を持っていますし,経済のサプライチェーンというのは非常に広い範囲にわたっていますから,こういう多様性を全部包含してやるときに,1法人1大学というのは,恐らく,小回りが利かないし,地域に向くわけにいかないというふうなことで,私は,こういう広い地域を包含した大学の統合というのは一法人複数大学が向いているのではないかと。一方で,ガバナンスの問題は,一法人複数大学でありますと1法人1大学より難しい面がありますし,かつ,在り方も多様です。この辺りのところは我々もまだ考えながら進んでいるところでありまして,今日お示ししたのは,現在のところこういう形で進めておりますということをお示しいたしました。
【相澤座長】ただいまのお答えが現状としての松尾機構長の御判断だと思いますが,最後に国に期待することということで規制緩和を挙げておられますけれども,今御説明いただいたことと関連して,特に1法人2大学だからという意味での,そこの立場からの規制緩和ということが具体的におありでしょうか。
【松尾機構長】これはいろんなレベルであるんですが,一つは,先ほどの糖鎖の場合には,糖鎖の中にもいろいろ分野があるんですけれども,岐阜大学,名古屋大学とも,それぞれかなり先端的な分野を幾つか有していて,これは統合したときに非常に強力になる。これは二つの大学だけではなくて他の国立研究法人とか私立大学も入れた形の連携なんですが,コアとしては非常にうまくいったというふうに思っていますし,一方で,地域創生への貢献のところでも,岐阜大学と名古屋大学が持つ,それぞれ異なるところを持ち寄って,地域創生に貢献できる。このいい例が航空宇宙生産技術研究拠点ですけれども,これも大変うまくいっている事例です。ですから,テーマというか,課題によって連携の仕方が異なるんですが,基本的には,名古屋大学が高い研究力を生かして,その成果を持ち寄る。そして,岐阜大学は地域とのつながりを生かして,これを社会実装に持っていくという,基本的な役割分担ですね。これを進めていきたいというふうに思っていますし,一部ではそれができているというふうに思っています。
【相澤座長】特にここの規制緩和が重要な点だというところは,具体的にありますでしょうか。
【松尾機構長】言い方が難しいのですが,例えば教育なんですけど,実は岐阜大学は学生教育に非常に熱心に取り組んでおられて,先ほどちょっと紹介した学生の学修成果を見える化するステータスシステムというのを岐阜大学は1年先に実現して,それをまねてといいますか,勉強させていただいて,名古屋のほうでもやっています。ただし,このときに,レーダーチャートを描いておりますが,学生の評価の視点は,岐阜大学が進める学生の育成目標と名古屋大学の育成目標は違いますので,レーダーチャートのそれぞれの項目は違うにしても,やり方は一緒にするとか,こういう柔軟なやり方をして,システムとして一緒にやっていく。整備についての整備費なんかも共通でやっていくみたいなことをやっています。例になるかどうか分かりませんけれども,そういうふうなことをやっております。
【相澤座長】ありがとうございました。柳川委員,どうぞ。
【柳川委員】ありがとうございます。手短になんですけど,一法人複数大学の場合の一つの特徴というのは,法人の下に,今ある既存大学以外に,新たな組織をつくったりとか,出資をしたりとか,そういう展開ができやすい仕組みなんじゃないかというふうに思うんですが,それが正しいかというのと,それから,それをやる上でいろんな規制とかがあって,実は規制が理由で難しいんだというようなところがあれば,ちょっとお話しいただければと思うんですけど,よろしくお願いいたします。
【松尾機構長】国なんかが事業をされたり補助金を出したりするときに,あるときには法人で申請,あるときには大学ごとで申請,それぞれによって頂いた資金の使い方の規制が違うというような例がままあるんですね。そこのところの,すみ分けじゃないんですけど,区割り分けみたいなところを我々は大変苦労していまして,申請段階からしばしば調整が難しいことがあります。今後,いろんな形の連携が出てくると思うんですが,そのときに,国におかれては,支援をしていただくのはもちろんですが,使い方等々について柔軟な対応ができるような形にしていただくと大変ありがたいというふうに思っています。
【柳川委員】ありがとうございます。
【相澤座長】そのほか,いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは,以上で東海国立大学機構へのヒアリングを終了させていただきます。松尾機構長,どうもありがとうございました。
【松尾機構長】ありがとうございました。
【相澤座長】それでは,次に参ります。大学等連携推進法人ということで,山梨大学,中村学長から,御説明いただきたいと思います。10分間でのプレゼンテーション,よろしくお願いいたします。
【中村学長】山梨大学,中村でございます。本日は,このような機会をいただきまして,大変ありがとうございます。
それでは,資料を御覧ください。私どもは,大学等連携推進法人制度を活用してきた大学といたしまして,連携の経緯,あるいは,成果,今後の課題等につきまして,発表させていただきます。
各ページの右下に赤でページ番号を振ってありますので,まず,1ページを御覧ください。本日はこのような流れで御説明をしたいと思います。
2ページを御覧ください。大学アライアンスやまなしという名称なんですけども,大学等推進法人の制度への対応といたしまして,「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」において,各大学設置者の枠組みを超えた連携あるいは機能分担を促進する制度の創設が提言されました。令和3年2月26日に,文部科学大臣が大学等連携推進法人として認定する制度が創設されております。
本学の対応といたしましては,早期に対応が可能な点,経営統合は時間を要するということで,教学上のメリットを勘案しまして,同制度の活用を前向きに検討してまいりました。他県の国立大学との連携等も含めて多様な観点から検討いたしましたが,地域という枠組みの中での活用が最適であると判断いたしまして,山梨県,そして山梨県立大学及び本学山梨大学で,地域の発展に資することを目的に三者間連携協定を結び,大学等連携推進法人制度の活用等を含めた連携を検討してまいりました。
次に,3ページを御覧ください。設立の目的・経緯でございますが,地方大学の使命・役割が拡大,先ほど松尾先生のお話にもありましたけども,一つは地域人材育成への期待があります。そして,スケールメリットを生かしました大学運営の展開が必要だと考えました。現状の大学経営に対する危機感を,両大学,県立大学と本学で共有いたしまして,一つ目は地理的な条件。近接しているということ。二つ目は開設学問分野。重複分野が少ない。そして,三つ目は運営基盤。国立と公立の法人というところを考慮して,まずは地域大学間連携から始めるべきという判断をいたしました。
対応でございますが,教育・研究・人材育成,組織運営等を円滑にできる仕組みを構築し,地域を支える人材,イノベーションの進展,そして,地域の発展に寄与するということを実際に行ってまいりました。
一番下に効果がございます。残念ながら,まだ経営的なメリットは僅かでございますが,一番大きなメリットは,教学上のメリットでございます。学生ファースト,教育の質の向上を目指してまいりました。
次に,4ページを御覧ください。推進の方針でございますが,大学間で連携し,相互補完,あるいは地域に成果を還元するということ。そして,文理融合など,多様な教育を提供できる大学であること。三つ目は,学生ファーストをコンセプトにしまして,学びの選択肢の拡大,あるいは学生生活の利便性向上を図りまして,魅力を高めて国内外から優秀な学生を引きつけるというところをビジョンとしております。下のほうに,具体的な内容と目標を示しました。
では,5ページを御覧ください。一般社団法人大学アライアンスやまなしの教学の管理あるいは運営体制でございますが,特徴的なものとして2点ございます。総会,重要事項の決議機関でございますが,その右にあります大学等連携推進評議会,こちらのほうは主に県内の各界有識者から構成されておりまして,第三者機関として機能しております。もう一つは,総会の下にございます理事会傘下の委員会の中で,上のほう,教育の質保証委員会ということで,後でも御説明しますが,主には,一般教養,教養教育を中心としてやっておりますが,その質をきちんと保証していくというところで,こういった委員会を設けまして評価されているということでございます。
次に,6ページを御覧ください。実際の実績と効果でございますが,特例措置の活用,両大学の強みを生かした教育を提供するということで,両大学における時間割あるいは授業日程の統一化を経まして,連携開設科目につきましては一定の目的を達成したと思っております。下に表がございますけれども,開設科目数で見ますと,令和3年度,発足当時は52科目でございましたが,現在,令和6年度は185科目まで増やしてまいりました。これまでに教養科目の約80%を連携開設科目化しておりまして,来年度,令和7年度からは全教養科目の連携開設科目化に向け,改革を実施しているところでございます。
次に,7ページを御覧ください。スケールメリットを生かした,事業の質,学生や教職員の利便性や学生サービスの向上が必要でございまして,その下にありますが,教学上の特例措置を活用した,主には教養教育の見直しをしております。教員の配置の効率化,あるいは経費の削減,特に教養教育担当のおおむね5名程度減というところを達成しております。このような形で実績と効果を示しているところでございます。一番下に書きましたけども,この特例措置,スケールメリットを生かしまして,連携事業や共同調達,あるいは契約の対象を拡大することによって,大学運営の効率化にも寄与していると考えております。
最後,8ページを御覧ください。ここでは,今後取り組むべき課題と対応策というところをお示しいたしました。まず,1番,この大学等連携推進法人に関わる課題でございますが,マル1は,先ほどもお話ししていますように,現在のところは共通教育というところが中心でございます。もっともっと専門教育に踏み込んだ改革,いわゆる教職科目や看護分野等,そういったところも共通科目にしていきたいと思っております。マル2は,文理融合のさらなる促進をしていきたい。基本的に,私ども山梨大学は理系が強い大学でございまして,県立大学のほうは文系が主でございます。ですから,これを融合することによって,より学生に価値のある授業を展開していきたいと思っております。次に,マル4,大学設置形態を超えました新しい枠組みの構築というところで,今後ですけれども,県内を中心といたしました私学の参画ということを考えております。学問分野のすみ分けであるとか,学力の違いへの対応,私学がお持ちになっている建学の精神への整合,メリットの明確化,人件費の縮減,あるいは国の支援等を生かして,さらに拡大をしていきたいと思っております。
2番目は,課題への対応策でございますが,マル1といたしまして,事務職員あるいは教員のクロスアポイントメントの人事交流を促進していきたいと思っております。マル2は,重複する教養科目の集約でございます。先ほども人員整理を申しましたが,こういったことをすることによって大学の経営を楽にしていくということを考えています。マル3は,先ほどもお話あったように,コロナ禍でオンラインがかなり進んでおります。これも非常に必要なことなんですけども,できれば,両大学の持つ文化を共有してもらいたい。山梨大学の学生が県立大学に行って県立大学の様子を見る,あるいは逆もあるということで,科目によっては多少違いがありますけども,対面の授業,あるいは,もっともっと学生の交流を促進していきたいと考えています。
制度的な課題でございますが,マル1といたしまして,先ほども言いましたけども,今後,私立大学が参加しやすい仕組みをつくっていきたいと思っております。マル2といたしまして,このたびの中教審の特別部会の答申を踏まえまして,大学等連携をより緊密に行うための仕組みを導入していきたいと考えております。
資料にはございませんが,本日お配りなっています参考資料2,特別部会の答申の要旨でございますが,その3ページを御覧いただければと思います。「高等教育への「アクセス」確保」というところで,地理的観点からのアクセス確保というのが書いてございます。ここに赤字で,「地域構想推進プラットフォーム」とか,あるいは,下のほうに「地域研究教育連携推進機構」ということが書かれておりますが,今後,本学といたしましては,地方創生を目指した,産学官金連携による地域創生推進機構というものを常置的につくっていきたいと思っております。ここにはコーディネーターという方が非常に重要になってきまして,そういった方の養成もしていきたいと思っております。今度,高等教育局のほうにできます地域大学振興室と連携し,指導をいただきながら,こういった地域の機構をつくっていく。これによって,もっともっと地域の大学の価値を上げていきたいと思っております。以上でございます。
【相澤座長】ありがとうございました。それでは,委員の皆様,御質問,御意見,いかがでしょうか。どうぞ。
【服部委員】どうもありがとうございました。国立大学と県立大学,設置者の違いによる連携というのは非常に難しいかと思います。今のお話の中でも,経営面ではまだそれほどメリットが出てきてないと。これは,経営の母体が違うので,難しいことは承知しています。教育に対するメリットが一番多いと聞いていましたけれども,一つ,運営について伺いたいのですが,大学アライアンスやまなしという社団法人をつくって,両大学の学長さんがそれぞれ,代表,副代表をやっています。このアライアンスやまなしと各大学のガバナンスの関係はどうなっているのかということと,教養教育を改革されておりますけども,それにこの社団法人自身がどのように関わっているのか,その関係をお聞かせいただければと思います。お願いします。
【中村学長】ガバナンスに関しましては,両大学が持っているものをここでも一致していく,統一していくということを考えています。アライアンスやまなしの中で教養教育を統一化していっていますので,両大学の持っている科目をこちらで統括いたしまして,できるだけ共通のものは一緒にしていく。あるいは,両大学の特徴を生かしたものは,このアライアンスを通して学生に認知させていくというふうに考えています。
【服部委員】そういう話であれば,社団法人をつくらなくても,連携科目の開設は別としても,教養教育の共有化は,両大学が話し合えば,ある程度進むこともできるかなとも思います。その観点から,この社団法人の役割がもうちょっと明確に分かると今後参考になるかと思いますので,お願いいたします。
【中村学長】いわゆる一般的な単位互換とは違っていまして,今は教養科目が中心ですが,両方の大学が持っている科目をここに統括して集めていく。その上でしっかり,両大学の学生にメリットがある授業改革をしていくということを考えています。
【服部委員】分かりました。どうもありがとうございました。
【中村学長】一つだけ難しかったところは,やはり,時間割とか,学年暦とか,これを合わせるのは結構大変でございましたが,ここは両大学の理事等がアライアンスやまなしの中で解決していったということでございます。
【服部委員】分かりました。ありがとうございます。
【相澤座長】そのほか,いかがですか。どうぞ。
【福原委員】貴重な御報告,ありがとうございました。大学等連携推進という中では,今,御指摘がありましたけれども,研究分野ではそれぞれ,法人という組織を持たなくてもいろいろな形で連携はしていますし,教育分野では単位互換という意味でも法人化をせずとも進んでいるところもあるのですが,連携推進法人にすることで,大学ごとに行っていた地域連携だとか,あるいは地域の様々なリソースを教育とか学生支援に呼び込むときに,一つ一つの大学がやっていては十分にできない,そういったときに,こういう連携推進法人を用いて,学生の教育支援だとか,あるいは研究支援とか,そういった大学同士の連携のほかに,社会との連携を推進するというような意味がこの大学等連携推進の制度のメリットではないかというふうに私は思っております。これが今度の「知の総和」答申の中で新たに設置しようとしているプラットフォームだとか機構とかいったようなものが持っている大変大きな意味合いではないかと思うのです。その新たな組織づくりのためにもお聞きしておきたいのですが,山梨のほうでは,今,私が申し上げましたような,この法人を通じて,地域との連携とか,あるいは他の地域,例えば,首都圏が近いわけですから,首都圏のどこかとの連携を思い切って行うとか,あるいは海外のどこかと行うとか,大学同士の連携を通じて出来上がっている法人が研究教育のためにいろんな外部のリソースと連携をしていくという取組が大変重要かなと私は思って,この前のJ-PEAKSではそういうようなことをどんどんおっしゃっていましたので,教育面におきましては,今のところどうですか。まだ課題ということなのか,何か取組を始めておられるのか,教えていただければと思います。
【中村学長】今日の資料の5ページで,先ほどお話ししましたけども,外部の方にこのアライアンスの中に評議会として入っていただいて,知っていただくということも大事だと思います。
それから,今,先生がおっしゃったように,両大学を核にしまして,まず,地域構想推進プラットフォームはもうできておりますが,このプラットフォームそのものは,常置ではなくて,年に数回集まって意見を交わす部分なんですね。そうしますと,ありがたいというか,山梨県の例えば産業界,あるいは,観光推進機構とか,県のほうからも,これは,年間に何回集まるのではなくて,きちんと常置のものをつくっていこうという機運が今高まっております。これも,アライアンスやまなしというところでプラットフォームをつくって,その上でのことでございますので,今後は,おっしゃるとおり,両大学の連携を深めながら,さらに,地域の振興のため,地域創生のために,ここを利用していきたいと思っております。
【福原委員】ありがとうございます。
【相澤座長】それでは,平子委員,お願いします。
【平子委員】御説明,ありがとうございました。3ページの資料に,連携の三大要因として,地理的要件,重複分野がないこと,運営基盤を考慮して,まずは山梨県の中で連携を始めようと書いていらっしゃるのですが,学長が目指す今後の姿を想定しながら,もしかすると山梨県に限定しないほうがいいのではないかと思うようなことがあるのであれば,教えていただきたいのですが。
【中村学長】地域は,人材養成でありますとか,あるいは地域の産業とタイアップした共同研究でありますとか,大事な使命を持っておりまして,残念ながら,山梨県の中に短大を入れて12大学ございますが,そこにはない分野がございます。そこに関しましては,今後,地域のニーズを聞きながら,別の意味での連携を深めていって,地域に貢献をしていきたいということは考えております。
【相澤座長】いかがでしょうか。私からも,一つ質問をさせていただきます。現在は,共通科目というか,特に教養教育関係が中心だと思うんですけれども,時代が大きく変化していく中で,教養科目を革新しなければいけないという思いが強いのではないでしょうか。今回の連携の中で,共通教育の今後の姿というものが議論され,そして設定されているのか。その辺りの状況はどうでしょうか。
【中村学長】先ほどのお話と重複しますけど,地域密着型の授業というのを考えておりまして,フューチャーサーチと言っているんですが,これは,教員も複数参加して,両大学の学生がグループをつくって,いろんな自治体や地域の企業とかで学ばせていただくというものをつくっております。これは非常に価値があるものだと私は思っていまして,学生が地域の本当の姿を知って,それによって地域の活性を考えていくということになっておりますので,一つの例ですけども,こういった科目を考えておりまして,山梨大学はこれからSPARCの中で学環をつくる予定ですが,そこに向けても,そこを大事にしていきたいと思っています。
【相澤座長】今まで1大学ではできなかったような,新しい時代のリベラルアーツとして展開できれば,大変重要なチャレンジになっていくのではないかなというふうに思います。川合委員,どうぞ。
【川合委員】今の議論を聞いていて思うところがあって,御意見を伺いたいんですけど,研究と産業の結びつきという意味では地域中心というのはよろしいかなと思うんですが,教育に関しては,アライアンスやまなしに行くと,山梨辺りの特徴ある教育が受けられると。ただ,これを受ける人をその地域の人たちだけに限定していると発想も何もかもシュリンクするので,日本全国展開,教育に関しては,提供するほうは地域ローカルであっても,受けるほうは完全オープンにして,全国,世界に広げていくような,そういう国際化の在り方を模索されるといいなあと思います。そんな御検討はございますでしょうか。
【中村学長】ありがとうございます。いい示唆をいただいたと思っておりますので,ぜひ,県内にとどまらずに,県外,あるいは先ほどおっしゃった国外に向けても,そういったことを実践していきたいなと思っています。ありがとうございました。
【相澤座長】それでは,山梨大学については,以上とさせていただきます。どうもありがとうございました。
【中村学長】どうもありがとうございました。
【相澤座長】それでは,ヒアリングは以上とさせていただきまして,これから,検討会での議論に移ります。
ただいまのヒアリングでは,組織の見直しということを中心として,個別大学が進めておられる改革の実施状況と課題を開示いただきました。そこで,これからの議論では,機能強化のためにどんな組織改革をしていくべきなのかということを中心的な課題と位置づけて,ご意見を伺わせてください。もちろん,この中心課題から外れても全く問題ありません。いろいろな角度からご意見をお願いいたします。どなたからでも結構ですので,よろしくお願いいたします。川合委員,どうぞ。
【川合委員】ちょっと口火を切らせていただきます。大学の組織改革は,膨大な時間と,労力を費やします。大学統合についても,その効果も,二つを一つにすることで,どのくらい相乗効果があるのか,すぐには読めないところもあって,私は個人的には,統合や吸収などを頻繁に行うのがいいものかどうか,悩ましく思っています。ただ,例えば,ある一定の単科大学同士が,統合でもいいですし,再編でもいいんですけれど,いろんな事業を共有して,1か所だけではできないことが複数拠点に広がると言う効果は見込めると思います。特に教育に関してはそういう効果が見込めるように思います。研究と教育とどちらも同時に大学単位で改革するのは非常に難しいのですが,教育の効果と研究の効果を少し分けて考えるというのは意味があるように思います。本日伺った大学は,統合されたばかりなので,その効果を問うのは時期尚早です。しかし,山梨大学と山梨県立大学の話を聞いていて,実際に共有できる事業をうまく統合して効率化を図ることは,教育の面に関しての効果があると思います。国立大学のうち,研究大学に認定されるような総合大学で,もともと多くの研究科や専攻がくまなくそろっている大学が何校かある一方で,地方の大学では,選択と集中が進んだ結果単科大学に近いような機能を持つに至っている大学もあります。このような状況にあるのに,大学の統廃合をそれぞれの大学の意思に任せてやるのは効率がいいのでしょうか。それとも,研究大学と,何て言うんですかね。今,番号で言っているんですかね。地方貢献型とか何か……。
【相澤座長】それは全然気にされないで結構です。
【川合委員】カテゴライズしていて,地方に根づいている大学はそれなりに,研究面では地方産業と結びつく工夫はされていますが,教育については,地方に特化した教育をやっていいと私は思いません。教育だけはせめて,地方大学にあっても偏らない教育を提供する必要があると考えます。地方貢献型の大学を束ねて国立大学教育システムみたいなものをつくって,偏りのないかつ,質の高い教育を提供できるようなシステムを考えるべきではないでしょうか。要するに,どこの地方大学に入っても,教育を受ける立場からすると,遜色のない,公平な教育が受けられるようなシステムを提供することを考えるときが来たんじゃないかなと,思います。そういう意味では,各大学の自主性に任せることも大事だと思うんですけど,少し意図的に,在り方をここで論じられるといいなと思っています。
【相澤座長】ありがとうございました。大変重要な指摘だと思います。
ただ,本日は組織の見直しということを中心課題にしているので,学内の,例えば,専攻レベルの問題,研究科,その他,それから,大学を超えての,大学と大学同士だけではなく,いろいろな連携の在り方を,組織の立場から見たらどうなのか。ただし,目的が重要で,あくまでも大学の機能を強化するための組織の見直しなんだということです。そのことに留意していただき,どんな観点からも。
今日,プレゼンテーションしていただいた方が共通して言われているのは,いろいろとオプションがあるんだという位置づけで,本学はこういう方式を取っているんだという説明をされたのではないかというふうに思います。ですから,それとは違った軸で,今,川合委員が指摘されたような形で,例えば教育ということに設定したときに,そこでもっと広い視野での新たな組織をつくっていくという視点もあるだろうと。これは一つの視点の定義として重要というふうに位置づけられるかと。
【川合委員】ちょっと言葉が足りなかったかもしれないので補足すると,大学の枠を超えて事業を行う際には,現状の規制を超える必要がありますね。単位をどこであげるか。博士の学位については,一つの大学に縛られるなど,大学を超えて学位を共有することは,海外とはやれても国内ではできなかったりするわけです。これまで個々の大学を1単位として議論してきたものが,その基盤的な考え方が制約となり先に進めなくなくなっています。今,ここを改革する必要がなんじゃないかと。改革が必要なのは,研究体制より教育体制じゃないかなと私は常々思っているので,今,相澤座長がおっしゃったとおりなんですけど,一つ一つの組織改革だけを論じたのではトータルのことが見えなくなりそうな気がしたので,あえて申し上げました。
【相澤座長】そういう意味も含めて,重要な御指摘ということを申し上げました。
昨年末まで,いろいろと現状分析をして,課題を抽出してまいりました。その上で,今回,大学の在り方そのものが転換期に来ているということでありますので,教育に。それで,あくまでも目的は機能強化でありますので,そういう立場からいろいろと,まず,組織を見直すということから機能強化に結びつけられる道があるだろうと。そういうようなことで,具体的にそれを進めておられる大学の改革を今日伺ったところです。ですから,今,川合委員が言われたことも,当然,この議論の中の一つの重要な案件であります。平子委員,どうぞ。
【平子委員】今日,3つの大学の皆様の発表を聞いていまして,いろんな示唆があったと思います。機能強化の目的はその大学で新しい価値をつくることにほかならないと思っていまして,その意味で,様々な形の統合,連携の仕方があることを認識しました。連携と統合の直接的な効果は恐らく,自分のところに足りないものを補完すること。これはおそらく一次効果として認められるものですが,今日の二つ目のプレゼンテーションの東海国立大学機構は,名古屋大学がグローバル・コモンズを目指し,岐阜大学がリージョナル・コモンズを目指すという,役割の違いを一つの目標にしているのは,非常に面白い取り組みだと思いました。お互いに足りないものを補完するということもさることながら,それぞれの大学のよって立つ位置を明確にすることが機能強化そのものにつながる可能性があるということを示唆していると思いますので,そのような観点で今後の国立大学の在り方を考えていってもいいのではないかと考えます。以上です。
【相澤座長】御指摘のとおり,いろんな形が出てきましたよね。ですから,各国立大学法人もいろいろなチャレンジをされているので,そこをしっかりと受け止めなければいけないのではないかと思います。柳川委員,どうぞ。
【柳川委員】今,御指摘あったように,かなりいろんなチャレンジが出てきて,実際の選択肢もかなりいろんなものがあるということが分かったというのは,かなり大きな成果だったというふうに思います。その上で,今後,この成果をより出していく上ではということで,短く4点ほどコメントをさせていただきます。
1点目は,座長が何度もおっしゃっていることなんですけど,今後,ますます変わっていく中では,変わっていくのに合わせて,もっと大学は変えていかなきゃいけないと。そういう意味では,今後の柔軟性をどうやってもっと確保していくのかというのは,我々が考えていくべきポイントだなというふうに思いました。かなり御苦労されて統合を進めて,いろんな新しい連携の取組が必要ですけど,2年後にもっと変えようというときに,また変わるんですか,また変えるんですかというと,恐らく,実際に組織運営をやっていた方からすると,相当,疲労度が高くなると。この分をどうやって,それをできるだけスムーズにするにはどうしたらいいかということを考える必要があるだろう。それを成し遂げる上では,勝手にやってくださいって言ってもなかなか難しくて,大学側からすると,何のために統合するのか,何のために連携するのかという,今日,御説明あった3団体の方々はかなりそこは明確なんですけど,目的を明確にしてもらわないとなかなか先に進めないというのが,2点目のコメントです。
3点目は,今日,お話を伺っていても,できることは分かったんだけど,PMI,統合後にどういう形の運営をしたらいいのかというのは,とにかく工夫して頑張ってやってくださいと言う以外になくて,それは大学の経営側からすると結構ハードルの高い話で,先ほど経営のプロがなかなかいないという中でそれを考えていくことは相当難しいので,それぞれのカテゴリーごとに,運営の仕方に関するガイドラインだとか,そういうものがもし出せると,こういう形でやっていけば,統合後の,連携後のいろいろなところの難しさも乗り越えていけるんだなというふうなことができるんじゃないかなと思って,そんなに簡単にガイドラインが出せるとは思わないのですが,今日,お話を伺ったような先行事例を伺うことで,そういうようなところをよりハードルを低くすることで,いろんなチャレンジをしていく方々というのを,大学関係を増やしていくことは大事かなと思います。
4点目は,そういう意味での変革のリーダーシップを誰に持っていただくのかというのはなかなか難しいところではあって,3団体の話を伺っていると,協議会型が一番楽なんですけど,ある意味で,大きな変革をしようとすると,みんながある種のボトムアップで考えていくとなると,大きな変革のリーダーシップは取れないと。ただ,大学の組織内にいると,あんまりトップが強いリーダーシップを取られると,下のほうは,そんなこと言われてもというようなことが結構あるというところはあるんですね。全体の中の変革のリーダーシップをどうやって組織としてつくっていくのかというのは,ちょっとオープンクエスチョンなんですけど,今,ここで結論を申し上げるつもりはないんですが,課題としては考えたいなというふうに思っているところです。以上でございます。
【相澤座長】整理された形で御指摘いただき,ありがとうございます。
今日,ヒアリングいたしました3法人共通して,規制緩和が国に期待することだということで提起されました。先ほど質問した通り,規制緩和の視点は,さまざまです。今,柳川委員が指摘されたようなことで,改革を進めようとするときに,具体的にバリアになってくることが見つかるんですね。それが共通して,言葉としては規制緩和ということになってきたのではないかと思います。ですから,その規制緩和というのは,一体何が緩和されるとよろしいのか,それがこうなるとさらによくなるということにつながるのか,これは,この検討会の中でも具体的に議論を展開する必要があるのではないかなというふうに思います。そのほか,いかがでしょうか。福原委員,どうぞ。
【福原委員】もう既に御指摘があったのですが,座長からの問題提起に雑駁ながらお答えをするとして,今日,1法人複数大学として統合・連携を推進していくという東海大学機構等の取組について改めてお聞きいたしますと,これは大変,汎用性があるというか,各地においてこういう取組が進めば,各地でそれぞれ個別の1法人1大学として苦労されていることがかなり緩和されるように思われます。答申における規模の適正化の「規模」というのは,学生定員「規模」というだけではなくして,大学というものが時代に合わせてどういう規模で運用されるべきであるのか,あるいは,それを運営する法人の規模というのでしょうか,こういったようなものも同時に提起されていたのかなというふうに思います。すると,制度ができたときには「おやっ」と思いながらも,実施した例を聞きますと,大変機能しているんじゃないかなと思いました。ただ,それがもっと機能するために,今日は大変いいことをそれぞれお聞きしました。松尾先生もおっしゃっていたと思うのですけれども,例えば,補助金とか交付金のチャネルが法人や大学ごとに設定されていることが錯綜してくるので, 1法人複数大学として統合した場合には,こういったような問題をきちっと整備してほしいということや,あるいは,私,質問しそびれたんですが,教員・職員の待遇に関するコードというのが大学ごとになっているのか,法人ごとになっているのか,こういう適正規模で教育研究活動を拡張していこうとしているところにふさわしい制度とか,それを誘導する何かが必要ではないかというふうに思いました。特に,各大学があると,各大学に今まで属していた法人事項は機構に本当に全部統合できるんだろうかという疑問もあって,今日,ここは聞きそびれたんですけれども。
それから,様々な場面でありますけれども,複数大学という形を取ったときのメリットは大変大きいものだというふうに思いました。そうすることによって,例えば,どちらかのほうの大学にこういう学部・学科を吸収するとか,どちらかのほうには新しいニーズに合わせたものをつくるというか,1法人1大学ではできなかった,そういう多様性・創造性のある学部・学科の再編,時代に合わせた学部・学科の再編をしていくには,ふさわしい器づくりではないかなというふうに思っています。
それの一つとして,さらに進んだ形で1法人1大学の統合というのも,トップ大学同士が統合したことで,ほかも考えているのではないかと思いますけれども,一法人複数大学の場合の制度を整備するということは,国立大学法人の機能を強化するという意味では,一つの有力な手法ではないかというふうに思いました。
そこに至らない大学等の連携推進法人につきましては,設置者別を超えた大学の連携の取組としては大変いい仕組みでありまして,この中で国立大学がどのようなイニシアチブを取るべきかというのが,国立大学法人に投げかけられている一つの時代の要請ではないのかというふうに思いました。その中で,既に委員から言われたことで,地域の限定が必要なのだろうかとか,あるいは,そこに私学が参画した場合に,私学特有の様々な制度がそういったことを妨げてはいないだろうか。だから,この制度は,私学は私学だけでつくろうという形になってしまってはいないだろうか。せっかくの設置者別の連携をするという仕組み,これももっと使いやすいように考えていく必要があるんじゃないか。
さらに,通学を前提とした大学同士の連携ばかり言っておりますけれども,放送大学もあれば,最近は大きな通信制の大学も出てきて,オンラインのDXの中からいくと,こういった統合・再編でバネになるのはそういうDXでありますから,放送大学との連携とか,あるいは通信制の教育機関との連携によって,各国立大学法人なんかが苦労しているリソースがもっと共有できるようになれば,もっと集中してリソースを研究にかけられるということもあるのではないかというようなことを思いました。すみません,座長の問題提起に応えて,たくさん言い過ぎてしまいました。以上でございます。
【相澤座長】ありがとうございました。今,御指摘いただいたことはそれぞれ,この検討会で重要なことだと思います。それでは,上山委員,どうぞ。
【上山委員】今日はそちらに行くことができなかったので,オンライン上でお話しさせていただきます。
今日のテーマは連携・統合ということでありますけども,改めてこのテーマをどういう形で文科省がまとめていかれるんだと思って,拝聴しておりました。連携・統合というものを進めていくときに,私自身の疑問は,我が国がそれにいかなるミッションを考えているのかという視点です。統合させること,連携させるということは,実際のところ,大学の数も人口に比して多くなっているという現状への対応というよりは,それも重要なんでしょうけれども,連携と統合にどのようなミッションを与えようとしているのかということがまだ分からないかなと思っております。とりわけ国立大学という国がミッション性を付加しやすい体制を考えたときに,こういう連携をどう考えるかという議論はあろうかなと思っております。
東海大学機構の問題も,東京科学大学の問題もそうですけども,それなりに何らかの形で関わってきましたが,それぞれのある程度のミッション性というのは,当時からあったような気がします。例えば,東海大学機構の場合でしたら,名古屋大学と岐阜大学だけではなくて,かなりの数の大学を連携させることによって,中京地域における産業構造の問題に対応するという視点があったと思います。日本の代表的な製造業の集積地であるあの地域の産業政策に,連携する大学のネットワークでで入っていくことができる,そういうことを考えていたという気がいたします。それはある種の国立大学との連携の一つのミッションの形だと思って見ておりました。また,東京科学大学に関して言うと,これは単なる医工連携をやるということだけではなくて,恐らくは安全保障系の議論にも関わることができる大学の連携の在り方だというふうには思っておりました。これまで従来の国立大学では行いにくかった経済安全保障を十全に取り組みことも,ミッションとして視野に入れたことになるだろうと考えていました。国立大学のミッション性の問題と連携・統合の視点が重要ではないでしょうか。
山梨のほうは地域経済,地域社会のイノベーションというミッションからの連携ではないでしょうか。J-PEAKSをやっていたときでも,ローカルエコノミーとローカル人材育成の話をかなり念頭に置いている動きとして,幾つかのケースで国立大学と県立大学というのが連携し合うという話がどんどん出てきている。その一つの絵姿として,国家のミッション性というのがそこに見えてくるんだろうなあと思っております。そういうような国の直面するミッションというものに応える形として,どのような連携や統合の形があるのかという議論があっていいのかなあというふうには思いました。
その意味で言うと,恐らくは,今後,大学,アカデミアに関して言うと,圧倒的な形で基礎研究にもっと資金が入らなければいけない。基礎研究や,それに関わるような人材育成の在り方にもっと大きな国の資金が入るべきだと思っています。それを国家的なミッションとして是認できるような論理構造ができるのであれば,資金の投入も可能になるかなあと。あるいは,可能ならしめるような仕組みということを考えていくべきかと思います。そのときは,単なる人材育成という一言で,あるいは教育という一言でくくることが難しいぐらいの,新たな人づくりの問題を大学というところがミッションとして引き受けていくという視点が大きいんだろうと思います。これが一つの論点です。
もう一つの論点は,最近ずっと思っていることは,我が国におけるアカデミアに二つの軸があって,大学という軸と,研究開発法人という軸であります。非常に不思議なことですが,研究開発法人と大学というのがなかなかうまくクロスできないことが,この国のアカデミアの一つの問題なんだと思います。研究活動法人というのは,明確な国家的なミッション,あるいは省庁ごとのミッションかもしれませんが,それを体現している存在です。むしろミッション性をより鮮明に付加しやすいような存在として国立研究開発法人があるんですが,大学の人材育成のカリキュラムとなかなか連動し行かない。この二つの軸をどうクロスさせるのかというのは,恐らく大きな問題だと思います。
例えば,一例を挙げると,農水省の中に農研機構がありますが,非常に重要な研究開発をやっているのに,それが大学の農学部の人材育成とはほとんど連動していない。あるいは,JAXAもそうでしょうし,JAMSTECもそうでしょうし,総務省の配下にあるNICTも,サイバーセキュリティー関係で言うと間違いなく大きな役割をしていくであろうというところが,実は大学の人材育成とはなかなか連動していない。ここをクロスさせていくということが国立大学との新たなミッション性をつくる際に重要な論点じゃないかなと考えていますので,そういう視点から,国立大学の,あるいは私立も公立も含めてですが,連携という視点もあってもいいかなというふうに思って聞いておりました。
まとめて言いますと,連携と統合の問題を国家が直面する課題を解くための仕組みとしてどう考えるかというような視点がとても必要ではないかなと,私自身は考えております。ぜひともそういう議論もさせていただきたいなと,希望しています。以上であります。ありがとうございます。
【相澤座長】ありがとうございました。大変重要な御指摘をいただきました。私も今日どこかで言わなければと思っていたことをおっしゃっていただいたので大変ほっとしているところです。確かに,御指摘のように,何のための統合,再編,組織の見直しなのかというところのベースに,我が国の今の状況から考えて,国のミッションとの関わりについても,ここで議論する必要があると思います。
ただ,今まで,統合とか組織の見直しということになりますと,各大学はまず,学生定員の問題を意識すると思います。18歳人口が激減する流れの中で,定員充足の問題がますます深刻になってくる。そうすると,組織の見直しが多分きつく押し迫ってくるであろうとか,今日,冒頭に申しましたように,統合とか再編とかという言葉が出てくると,各大学はまず,組織を見直す必要があろう。こういう構築にしていきたいと思うわけです。今日,3大学が表明されたのはそれぞれの大学における大学改革の基本構想です。そこにさらに大きな目標としては,国のミッションにどう貢献していくかというものがあるだろうとの御指摘もありました。これについては,今後,議論させていただきたいと思います。
本日は,地域における活性化という問題が出てまいりました。これは国が大きく進めようとしている地域創生という問題と結びついているわけであります。そういう意味で,国が目指すところにつなげつつ,もう一つは,いろんな組織の連携,大学間だけではなく,上山委員が御指摘になった,研究開発法人と大学の連携というのは,特に国立大学の課題だと位置づけられます。ということで,何のための組織改革かということで,今後も議論を続けたいと思います。そのほかの御意見。どうぞ,服部委員。
【服部委員】今の座長の御指摘は本当に大切なことだと思います。機能強化に向けた連携・再編という話ですと,機能とは何かという話になってきて,機能の中身は何かを明確にする必要があります。大学が持っている機能というのは,教育,研究,それから,今,大切なのは,地域貢献,社会貢献,いろいろあるわけですけども,どの機能を強化していくかということを各大学は考えていかなければいけないと思います。本日,事例紹介いただきました,東京科学大学については,統合前の両大学のそれぞれの研究分野が違うことを生かした,トータルとしての機能強化を目指していると理解しましたし,また,東海大学機構については,先ほど委員からありましたように,一つはグローバルの視点から,もう一つはローカルの視点からということで,二法人を経営統合することで,この二つのミッションを一法人として取り組むことと理解しました。それから,山梨大学の取組におきましては,地域に視点を当てた教育,特に専門教育だということ。私の感覚ですが,三者とも,現行の制度の中で今できることの最大限のところをやっている。例えば,東京工業大学と東京医科歯科大学が一つの大学に統合したということはすばらしいことです。それから,松尾先生の話にありましたように,岐阜大学と名古屋大学を例えば一つの大学に統合できるかというと,大学が所在する県が違うとなかなか難しいことがあるので,法人統合ということは分かります。また,設置者が違えば,経営の在り方自身が当然違ってくるので法人統合も難しい。それぞれの状況の中で,3法人は最善の,ほぼベストに近い形で,今,再編とか統合ができている。
地方創生という観点から大学間の統合・再編を考えると,一つの壁は行政間の調整です。県をまたいで,大学を統合,あるいは経営統合したいと思ったとき,活動していく中で行政からの支援に関して課題が出てくると思います。そう考えると,現実としてできるのは東海大学機構がやっているような形が多分最大限ではないか。規制緩和で言うと,行政間を越境した大学の活動に対する支援の自由度をもっと上げていただければ,各大学がいろいろ考えられる。その中で地方創生というものが成し遂げられていくのかなと思っています。地方大学にとっては,地域貢献というより,地方創生,その地域を創っていくというイメージを持って取り組むべきで,多くの地方大学がその方向で取り組んでいます。我々はそれを後押ししたいと思います。以上です。
【相澤座長】ありがとうございました。それでは,森田座長代理,どうぞ。
【森田座長代理】時間もあまりないようですので,また昔話になりますが,法人化制度をつくるときにこの種のことがどのように議論されたのかということを思い出しましたので,お伝えしたいと思います。法人化をして大学が自律的に経営を行うようになった場合,一つ議論になりましたのは,その時点でスタートラインが同じではないので,大学間に格差が拡大していく可能性がないわけではないということです。そのときにどうするかといったときに,規模の小さな大学は,一緒になることによって強くなるという選択肢もあるのではないか。そのためにどうすればいいかという議論も少し出ましたけれども,基本的に,あの時点では,現在の国立大学の単位は変えるべきではないという意見が非常に強く,結局,法人法の別表にきちんと書くということになり,法改正を経なければ大学の再編等は行えないことになったということです。
その後,状況が変わってまいりまして,私自身がもう1回関わったのはまさに東海大学機構ができたときの法人法の改正でした。あのときには,やはり単独では難しいので,大学統合が理想かもしれませんけれども,法人統合もあり得るという形で議論いたしました。最初の法人法のときもそうでしたが,次の機構をつくるときの改革も,議論しているエネルギーの6割か,もうちょっとは,法人のガバナンスの仕組みだったと思います。要するに,理事長,学長をどういう形で選出して,その権限関係をどうするかということ。これは,正直申し上げまして,大学の経営ということを考えるときに非常に重要なポイントになってくると思っております。今日のスケジュールのイメージの2枚目でも「徹底した経営視点の導入」ということが書いてありますが,これはどういうことを意味しているのか。先ほどから議論が出ておりますように,少なくとも18歳人口が減っていく以上,学部教育のレベルで言いますと,大学は経営が大変難しくなってくる。現状のままを維持している場合には,1人当たりの学生にかかるコストがどんどん上がってくるということになりかねません。それに耐え切れるかどうかという話になってくるときに,統廃合,廃合と言ってはいけないのかもしれないけれども,統合とか連携というのは当然あり得ることだと思います。
ここからはちょっと個人的な意見になりますけれども,私自身が思いますには,これはいろんな形態があり得るのではないかと思います。ただ,いずれにしろベースになりますのはきっちりとした経営主体であって,そちらのほうが,今申し上げましたように,学生1人当たりを育てるためのコスト,研究もそうですけれども,お金と数字ばかりにこだわるわけでありませんが,そういう指標を手がかりにして物事を考えていくということが重要ではないかと思います。したがって,学費値上げの話もありましたけれども,学生に対する付加価値が高くなれば,その分だけ授業料にも連動させるということができるのではないかという議論もございましたが,そういう観点も含めて,どういう形で,統合によって効率化を進めていくかという視点があると思います。ただ,今日出ていたお話といいますか,実際に行われているところですと,そういう話もありますけれども,実質的には統合によるシナジー効果というものが非常に言われていて,そちらの価値がどういうものになってくるのかということも,一つの指標といいましょうか,そういう観点から見ていくことが重要ではないかと思っております。今,実務で求められている高度人材といいますのは,大谷翔平ではありませんが,二刀流,三刀流の学位を持っているような人たちです。そういう人たちというのは,私が見ている限りでは,世界ではかなり求められているとと思います。そういう意味でのシナジー効果というものをどう発揮できるのか,それを具体的な形で示していけるかどうかというのは,多分,これからの大学の在り方としてすごく重要なポイントではないかと思っております。
そう考えた場合に,1大学1法人まで統合するか,1法人複数大学にするか,アライアンスにするか,これは正直申し上げていろんな形態があって,もっと大学が自由に工夫できる仕組みもあっていいのではないかと思っておりまして,その意味では,規制緩和とおっしゃっても,どの法律のどこを緩和しろという御発言はなかったと思いますけれども,気持ちとしてはそういうことかなと思います。ただ,その場合には,法人化のときの議論にありましたけれども,結果責任は経営主体が負わなければならないという,その自覚が経営にとって非常に重要だということは,忘れてはならないところだと思います。
それから,最後に,地域の大学がということはありますが,私も人口関係のことも調べておりましたが,正直申し上げまして,地方大学が地方で頑張るということは重要ですけれども,これはなかなか厳しいと思います。その意味で言いますと,大学自体が,今やまさにオンライン授業もできるわけですから,地域にベースを置きながらも,全国大学に展開していく。普通,皆さん考えると,東京にとか,都市部に吸収されるというイメージが強いんですけれども,むしろ逆であって,都市部にいる学生も引きつけるような,そういう形での大学の在り方というものも考えられるのではないか。実際,海外にあるようですけれども,ある学部のある科目については,自前ではやらない。分かりやすく言うと,ほかの大学から買ってくるというような,そうした形での大学のカリキュラムの組み方もあると思います。そのときも,経営責任で,最終的に誰がその学位に責任を負うのかということがはっきりしているならば,私は,かなり自由にやってみてもいいのではないかなと思っております。長くなりました。
【相澤座長】そのほか,いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
今日は,ヒアリングを実施して,その後,ただいまの議論を展開してまいりました。このことは,冒頭申し上げましたように,組織の問題を取り上げるときには,各大学は恐らく戦々恐々として,何が議論されるんだろうという思いではないかというふうに思います。この検討会でも,調査分析を行いまして,現状はこうであるということで整理してまいりました。ただ,肝腎なところで当事者の声を聞いてなかった。だから,後半における議論のところで,各大学はどんな自主的な改革を進めておられるのかどうか,そこをまずお伺いしようということで,それぞれパターンの違った組織見直しを行って,今進んでおられるところの現状をお伺いいたしました。それで先ほど来の議論が展開されてきているので,これをまとめた上で,また次の検討会で議論を続けてまいりたいと思います。
それから,先ほど服部委員から,大学の機能とは何かということ,これが大変重要なことであります。これは,本日お示しした「改革の方針(仮称)」の骨子のイメージというところに項目が五つ挙がっていますが,その第1番にあるのは,結局,大学そのものが問われている時代なので,この激変する時代をどういう大学像を描きながら進むかということであります。ですから,大学の機能そのものについては,繰り返し,繰り返し,議論が行われるというふうな位置づけでいきたいというふうに思います。
それでは,大変長時間にわたりまして御議論いただき,誠にありがとうございました。本日の検討会は,これで終了させていただきます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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