令和6年11月26日(火曜日)14時00分~16時00分
ハイブリッド(対面・Web)開催 ※傍聴はWebのみ
国立大学法人等の機能強化に向けた検討会(第5回)
令和6年11月26日
【春田国立大学法人支援課課長補佐】失礼いたします。事務局でございます。定刻になりましたので,会議の開催をお願いしたいと思いますが,1点冒頭,事務局から御報告でございます。
現在,前回同様にオンラインでの傍聴登録と傍聴視聴ということで検討しておりましたけれども,システム障害によりまして,オンラインでの配信ができない状況になってございます。ですので,今回の会議におきましては,録画をさせていただいて,後日そのまま配信をさせていただくということで,公開をさせていただければと思っております。よろしくお願いいたします。
それでは,座長,お願いいたします。
【相澤座長】それでは,ただいまから第5回国立大学法人等の機能強化に向けた検討会を開催いたします。
先ほど説明がありましたように,ユーチューブのトラブルということがありますが,対面,オンラインの原則は崩さずに,少し時差を持って公開するということでございます。御了解ください。
本日の議事等につきまして,まず,事務局から説明をお願いします。
【春田国立大学法人支援課課長補佐】本日の議事,配布資料につきましては,次第のとおりでございます。過不足等あれば,事務局までお申出いただければと存じます。
また,本日もマイク各所に配布しておりますので,発言される際にはオンにいただき,発言が終わりましたらオフにしていただければと存じます。よろしくお願いします。
【相澤座長】ありがとうございます。
議事に入る前に,資料1に,これまでの会議における主な意見をまとめてありますので,これについても事務局より説明をお願いいたします。
【北野国立大学法人支援課企画官】事務局でございます。資料1でございますけれども,前回教育につきまして御議論いただきまして,その主な意見につきまして,追加をさせていただいております。
まず,1ポツの社会の変化の中での大学の在り方といたしまして,一番下のポツでございますけれども,高等教育につきまして,現状をどう変えるかではなく,どういう姿を目指しているかを明確にすることが必要ではないかと。また,そこに戦略的な人材育成の視点を組み合わせることが必要ではないかという御意見がございました。
また,続きまして,3ページでございますけれども,国立大学の機能強化の在り方,機能強化に必要な視点といたしまして,これまで文科省が重点的に支援してきた施策で効果を上げているものは,部分的目的だけにとどまらず,自主的な大学改革を支援することにより成功していると,こういったことで世界に開くという観点が必要ではないかという意見をいただいております。
また,続きまして,6ページからでございますけれども,こちら教育の質の向上でございますけれども,前回,教育の会でございましたので,意見を幾つか追加をさせていただいております。
まず,6ページ,上から2つ目のポツでございますけれども,教育コストの上昇に対して,今まで教員の負担を上げるということで対処してきたということが問題ではないかと。また,人材としての価値がどれぐらい高まるか,市場価値を含めてどう評価されるかという観点から教育の仕組みを考える必要があるのではないかと。また,Industrial Ph.D.のような,学生と企業が一緒に課題解決をする仕組みを効果的ではないか。また,その下にございますけれども,運営費交付金,教育と研究を切り分けて,それに応じた配分をすることも考えられるのではないかと。また,リカレントの関係でございますけれども,リカレント教育に取り組む教員をリソースとして使っていくことで,社会人と大学の双方にメリットが出るような方策を考えられないかと。
7ページでございますけれども,履修証明制度の社会的認知度を上げることが重要ではないか。また,アカデミックカレンダーについても検討をしていく必要があるのではないかといった御意見をいただいたところでございます。
簡単でございますが,以上でございます。
【相澤座長】ありがとうございました。
それでは,議事に入ります。まず,国立大学法人の現状データ,その分析及びそれらを踏まえた検討会における論点の整理,これは素案としてございますが,これについて議論を行います。資料2について,文部科学省からの説明をお願いいたします。
【北野国立大学法人支援課企画官】引き続き御説明をさせていただければと思います。資料2を御覧いただければと思います。
2でございますけれども,タイトルにございますとおり,これまで当会議におきまして,配付をさせていただいた資料に基づく現状分析,また,様々先生方から御意見をいただいておりますので,それらについて現状の状況を論点として取りまとめさせていただいたものでございます。
まず,1ポツでございますけれども,1ポツ,まず,この下に委員からの関連意見を最初につけさせていただいておりますが,先生方から,例えば最初の意見にございますとおり,大学という組織自体がこの先どう変わるかというような議論もあると。また,世の中が大きく変化をする中で,国立大学全体として果たすべき機能を明確にする必要がある。また,大きな社会の変化をどう考えるかというところも大事だという形で,大学は今後どう変わっていくか,また,それに社会がどう変わっていくか,また,それに応じて大学がどう変わっていくかというところをまず,議論をすべきではないかという御意見をいただいたところでございます。
この点につきまして,少し補足になりますけれども,座長からの御指示もございまして,資料3といたしまして,大学を取り巻く環境の変化に関する参考資料を本日配らせていただいております。資料3を御覧いただければと思います。あくまで,一部分的な説明になるかもしれませんし,これまでも配付をさせている資料も幾つかありますので,かいつまんで説明をさせていただきますけれども,まず,1ページめくっていただきますと,こちら世界の留学生数と各国シェアの状況でございます。こちらにございますとおり,留学生数,2023年640万人と,2000年の約4倍まで増加をしていると。また,下の円グラフを見ていただくと分かりますとおり,国も増えてきているという状況がございます。
また,2ページでございますけれども,こちら諸外国における留学生受入れ数でございますが,アメリカの伸びが著しいところもございますが,中国でございますとか,各国とも伸びてきているという状況にございます。
また,3ページでございますけれども,こちら留学の派遣元でございますけれども,特に中国,インドが近年伸長しているという状況がございます。
また,4ページ,こちらTHEのランキングでございますけれども,現状,THEの大学ランキングにつきましては,日本の大学数はアメリカに次いで世界2位でランキングしているところでございますけれども,ランキングが全てではないということで,国際的評価をする一助として参考までに活用と書かせていただいておりますけれども,このようなランキングでも相対的にアジア各国が増加をしている状況がございます。下にございますとおり,中国は2012年のときには,200位以内のランキングは3校であったものが,2024年では13,韓国は3校であったものが6というような形で増加をしていると。
5ページ,6ページは,こちら研究の会で提示をさせていただいたものでございますけれども,なかなか日本は研究ネットワークの中核になっていない。また,論文数につきましても,先進国と同程度の論文数規模を誇っていますが,トップ1%の補正論文数割合は低い状況にあるというデータを入れさせていただいております。
また,7ページでございますけれども,こちら,オンラインの状況でございまして,こちらも前回オンラインの状況,様々御意見いただいたところでございますが,例えばフランスにおきましては,オンラインコンテンツを無料開放し,500以上のコンテンツを30万人の学生が利用している状況にある。また,英国におきましても無制限にオンライン科目を提供している。また,アメリカのCourseraプランにおきましても,割と定額で9割以上のコンテンツを上限なく利用可能になっているという形で,各国もオンラインを活用してきているという状況にございます。
また,8ページでございますけれども,皆様御承知かと思いますが,ミネルバ大学,こちらキャンパスは持たず,講義は全てオンラインで行われるものでございますけれども,右下に世界各地の寮生活のところにありますとおり,4年間を通して世界7都市にある寮に居住し,共同生活を営むという形で,これまでにはない大学というものが,世界では今,誕生してきている状況だということを示させていただいております。
9ページ以降でございますけれども,こちらの主要国の取組事例からの示唆と,いきなり飛んだタイトルになっておりますけれど,これはもともと科学技術学術審議会,大学研究力強化委員会におきまして,JSTのCRDSからプレゼンをいただいた内容でございます。科学技術イノベーションの潮流と研究力,国際動向と主要国の取組などからの示唆という資料の抜粋でございまして,世界の研究大学がどのように変化をしているか,また,それに基づいて,我が国に対してどういう示唆があるかということを説明した資料になります。
当然ながら,全ての国立大学は研究大学になるというものではないと思いますので,あくまで研究大学の事例として御紹介をさせていただきます。最初のポツにございますとおり,主要国の研究大学,こちら時代を先取る形で新たな研究,人材育成の取組を進めていると。また,研究大学であればこそ,既存の枠組みを超えて,単なる社会ニーズの充足というところにとどまらない自由な取組が可能になるのではないかということになっております。
また,その下にミッション,ビジョンの共有と文化,価値の醸成ということで,研究大学にとって,組織の文化や価値といった面での変革も必要となるということでございますとか,リーダーシップを発揮した上で,研究者の創造性が一層向上するような新たな文化,価値を醸成することが必要ではないかというようなこと。
また,10ページでございますけれども,研究大学,組織として多様なステークホルダーが連携,共創して,多様,卓越した知識の創出,それに基づいた社会実装,様々な価値創出に取り組むことが必要ではないか。また,4)の人材の育成と活用のところでございますけれども,それを支える専門的人材が不可欠,また,専門人材の処遇や評価の面も含めた取組が必要ではないかと。また,大学や組織の枠を超えたネットワークなども構築していく必要があると。
最後,11ページでございますけれども,資金的な基盤が不可欠でございますので,こちら諸外国の事例ではございますけれども,独自基金の運用益や民間財団の支援でございますとか,様々なファンドを活用して取り組んでいく必要があるのではないかというところからなっているところでございまして,以上,資料2の1ポツの大学を取り巻く環境の変化というところの参考資料として御説明させていただきましたが,このような諸外国の事例などを踏まえながら御議論をいただければと思っております。
資料2に戻りまして,構成でございますけれども,2ポツに法人化後の現状分析というのをまとめさせていただいております。こちら,基本的には,事務局から提示させていただいた資料に基づいて現状分析,また,それに基づく委員の先生方からの意見を列挙するという形でまとめさせていただいております。かいつまんで説明をさせていただきますと,2ポツの丸1,法人化後の財務状況でございますが,まず,経常収益,費用でございますが,経常収益は約1.4倍に増加,外部資金は約4倍に増加,一方で,法人規模に応じた差異も顕在化しているという状況がございます。
2ページでございます。2ページ,外部資金の状況でございますけれども,大規模法人において,受託研究,共同研究,受託事業などの金額が大きく増加している状況が見られます。また,寄附金の状況,こちらはほぼ全ての国立大学法人において,寄附金の受入れ件数金額は増加をしております。また,授業料でございますけれども,こちらは標準額を上回る授業料を設定しているのは現在,7大学あるという状況でございます。また,運営費交付金等公的支援の状況でございますけれども,法人価値と比較をすると1,600億円超の運営費交付金が減少すると。また,施設整備補助金につきましては,令和3年以降は当初予算額と補正予算を合わせて1,000億弱の獲得にとどまっていると。一方で,基盤的経費以外の支援は増加傾向にあるというような状況がまとめております。
これにつきまして,委員の先生方からは,例えば経営の観点も相当明確に入ってきていると認識できるでございますとか,自由度が上がることで財源は多様化して,制度的にはそのような方向に向かっているという評価もいただいておりますし,一方で,研究の芽出しの部分を強化する資金を用意できる財務環境がもっと必要ではないかといった意見もあったところでございます。
丸2は財源の多様化に向けた法人化後の規制緩和の活用状況でございます。こちらも最初,土地の貸付けの関係でございますけれども,こちら,令和5年度までに40件が認可されていると。地域的には全国で活用されている状況でございます。また,余裕金の運用でございますけれども,こちらも経営規模が大きい法人において活用されている状況が見られるとしております。また,長期借入れにつきまして,こちら81件が文科大臣の認可を受けておりまして,Dグループ,医系単科大学を除く全ての法人で活用されている状況でございます。
また,4ページ,債券発行でございますけれども,さっきの6法人,AとBのグループの法人によって発行されている状況になっております。出資につきましては,出資認可件数は累計44件でございますけれども,全認可件数のうち8割をグループが占めるという形で大規模法人が主流になっております。また,新株予約権の取得,保有の状況,こちら取得,保有している法人数が増加傾向にあるということも見てとれます。
また,丸3,人給マネジメントの改革状況でございますけれども,2つ目のポツにありますとおり,テニュアトラック制については導入率が84%,次いで年俸制は全ての機関で導入されている。また,クロアポ制度につきましては,ほぼ全ての法人において規定が整備されておりますが,次のページ,5ページに行っていただきまして,一方で,国内法人から民間企業への派遣型クロアポはまだ少数にとどまるという課題がございます。また,これに対しまして,委員からの関連意見がございますけれども,いかに多くの価値を生み出すかという観点から,こういう人給マネジメントが行われているのかとか,行わないといけないというような御意見をいただいております。
また,4つ目,教育の状況でございますけれども,まず,教学マネジメント改革の状況でございます。こちら,ほとんどの大学が3ポリの達成状況を点検評価するなど,教育マネジメントに係る取組は着実に進展していると。また,アクティブラーニング,ナンバリングの実施率,履修系統図の活用率も高い水準となっていると。また,教育研究組織改革につきましても,様々社会の情勢に応じた組織見直しが行われている状況でございます。6ページでございますけれども,大学連携の関係でございますが,連携開設科目,共同教育学部等の大学連携の取組を進展していると。
次が国際化の状況でございますけれども,外国人留学生の割合は,修士,博士,いずれにおいてもOECD平均に満たないと。また,一方で,こちら教育部会でも御説明がございましたが,スーパーグローバル大学創出支援事業,SGUの採択校におきましては,語学力基準を満たす学生の割合,また,事務職員の高度化に係る指標が大きく向上するなど,大学の国際化に係る体制整備が非常に進展しているんじゃないかと。また,ジョイント・ディグリーの関係でございますけれども,こちらも今,27件が同課程を設置していると。一方で,課題としまして,その下の外国語のみで卒業できるコースの拡大でございますけれども,こちらがまだまだ少ない状況にとどまっているということになっております。
続きまして,博士人材の育成でございますけれども,こちら修士,博士を取得している数が,こちらも諸外国と比較して低水準ではないかと。一方で,大学ベンチャーにおける受入れニーズが見られるというところもございました。また,7ページに行っていただきまして,博士課程に進学する学生の経済支援でございますけれども,現状2万400人分の財源を確保してきているという状況にございます。また,こちらも前回,御説明をさせていただきましたが,博士課程教育リーディングプログラムなどの施策におきましては,就職者の割合が向上するなどの効果が見られたところでございます。
また,社会人,リカレントでございますけれども,まだまだ我が国全体として社外学習,自己啓発を行っていない個人の割合が高いという状況がございます。また,25歳,30歳以上のいわゆる社会人学生の割合も諸外国と比べて低いという状況でございます。また,リカレントにつきましては,国立大のリカレント教育を魅力的かつ安定的なものとして,どう実装させていくかが引き続き課題だということになっております。
これらにつきまして,先生方からの御意見といたしまして,学習者本位の教育の在り方に切り替えていくことが必要ではないかと。また,ジョイント・ディグリーなどが非常に有効になっていく。また,8ページでございますけれども,2つ目のポツにありますとおり,個々の大学に必要な事業に精選して科目数を減らすということで,一定のコスト削減をできるのではないか。また,教育にかかる経費の多くは安定的に入る資金で措置せざるを得ないでございますとか,先ほどの資料1でも御説明ありましたが,市場価値を含めてどう評価されるかという観点から教育の仕組みを考える必要があるのではないか。また,リカレントなどにつきましても,履修証明制度の社会的認知度を上げることが重要ではないかといった御意見があったところでございます。
続きまして,現況分析,最後は研究の状況でございますけれども,まず,論文数でございます。こちら,国別の総論文数の順位については,日本は低下傾向にあると。また,国際共著論文割合につきましては,令和2年頃から全ての学問分野で低下をしていると。こちらが論文の質の低下につながるおそれがあるのではないかという分析になっております。
また,産学連携の状況でございますけれども,9ページに行っていただきまして,共同研究受入額の1件当たりの金額が大きくなっておりますので,大型化が進展しているんじゃないかと。また,東京圏の実施件数及び収入額は着実に増加をしている。また,大学発ベンチャーの新規設立数,こちらも法人化以降,増加に転じて,令和元年度以降は着実に推移をしているという状況でございます。
研究の幅でございますけれども,こちらサイエンスマップの分析に基づくものでございますが,世界的には研究領域数が増加する中で,日本の参画領域数は微増にとどまっていると。また,研究の会におきましては,スモールアイランド型,コンチネント型という話があったかと思いますけれども,日本においては,新たな芽となる挑戦的な研究領域の参画が活発じゃない可能性があるという分析になっております。
また,研究者の状況でございますけれども,日本の企業部門,大学部門,いずれの研究者数もほぼ横ばいにあると。先ほどの大学を取り巻く環境変化に関する参考指標でもございましたが,アメリカ,欧州,中国は国際的な研究ネットワークの中核となっておって,日本はなかなかなり切れていないという状況。また,教員の研究活動時間割合を見てみますと,研究活動時間の絶対数も減少して,教育社会の社会サービスの時間割合が増加傾向にあるということが見てとれます。
また,その次,研究費の状況でございますけれども,10ページに行っていただきまして,運交金は先ほど申し上げましたとおり減少しておりますけれども,一方で,科研費が同期間において増加したものの,消費者物価指数等を考慮すれば,実質的な平均配分額は減少傾向にあると。また,大学の基金,こちらにつきましても,諸外国との差は依然大きいという状況にございます。
また,その次,研究機関の厚みでございますけれども,こちら最後のポツにございますとおり,特定分野において強みを持つ大学は多数存在しますが,上位に続く層の大学から排出される論文数は海外と比べて少ないと。なので,上位に続く大学の層の厚みを形成していくことが必要ではないかという分析になっております。
また,研究振興策の成果でございますけれども,こちら3つ目のポツにございますとおり,論文の生産性という観点からは科研費が大きく貢献している可能性があるのではないかと。また,世界トップレベル研究拠点プログラム,WPI,これによりまして,世界のトップレベル研究機関に比肩する卓越した研究成果を排出していると。また,それだけにとどまらず,法人内に研究マネジメントや国際研究環境の構築手法のグッドプラクティスが蓄積されているんじゃないかという分析になっております。
次に,大学共同利用機関,共同利用・共同研究拠点でございますけれども,11ページを見ていただきまして,一番上のところにございますが,現在,若手研究者の育成の場としての機能を果たしているのでないか。また,共同利用・共同研究拠点においては,研究成果論文の上昇,学会受入れ研究者の増加,外部資金の増加などの成果を上げているといった分析になっております。
これに基づく先生方からの御意見といたしまして,例えば間接経費についてですけれども,これはもっと上げても企業の理解を得られるんじゃないか,また,少額でも基盤的経費で研究費を支援することが必要である。また,研発法人とか研究機関も含めての高度な研究ネットワークの構築が必要ではないかと。また,論文関係の指標だけではなくて,社会課題解決やコミュニティーの貢献などの評価の観点に含めるべきではないかという御意見。また,教員による分業化の意識,また,安定した教員のポストの確保などの御意見をいただいていたところでございます。
以上,2ポツのところにつきましては,先ほど冒頭で申し上げましたとおり,我々から提示させていただいたデータに基づく現状分析,また,それに基づく先生方からの御意見という形でまとめさせていただいております。
続きまして,3ポツでございますが,こちらが今後の長期的な論点として,国内法人の機能強化に向けて,現状及びその分析,2ポツの現状などを踏まえて,今後の対応策についての方向性という形でまとめさせていただいております。
まず,丸1でございますけれども,この下,まさに先生方からいただいた御意見をまとめさせていただいておりますが,総体として,国立大学法人が全体として果たすべき役割はどうあるのかということの御意見を多くいただいたと認識をしております。例えば,最初のポツにございますとおり,どんなミッションやパーパスを描いていくのかを考える必要がある。機能強化ができているか,どのような評価軸で評価するかを考える必要があるという御意見がございましたし,日本の根幹を担う国大法人はどうあるべきかと。大学と国がそれぞれやるべきことを議論すべき必要があるのではないかと。また,財政を含め,国の関与の仕方や,そのルールづくりが必要であるというような御意見をいただいたところでございます。
こういった先生方の御意見を踏まえまして,その下に座長と相談させていただきまして,想定される論点というのを幾つか整理させていただいております。先ほどの現状分析のところでも申し上げましたけれども,特に財務などの点におきましては,大学の規模等によってかなり差異が出てきている状況になっております。こういったことを踏まえた上で,法人ごとにミッションをさらに明確にし,各法人が自身を取り巻く国内外の状況も踏まえつつ,その実現に向けて様々なリソースを振り向けると。そして,それによって機能強化を図ることが必要ではないかと思われます。
そうしますと,その次のポツでございますけれども,国からの財政支援やガバナンスの仕組みにつきましても,法人の規模や機能の特色に対応したものとしていくことが一つ考えられるんじゃないかと。また,その下,18歳人口の減少がありますけれども,キャンパスが存在する地域や各法人の機能,特徴を踏まえて,学部の規模や組織の在り方についても具体の検討を深めていく必要があるのではないかと。また,その下は再編のことでございますけれども,再編について,各法人と国がその目的を共有しつつ,よく検討しながら建設的に議論を進めていく必要があるのではないかと。また,大学共同利用機関,共同利用・共同研究拠点につきましても,その機能を最大化するための方策を考えていく必要があるのではないかというところでまとめさせていただいております。
2つ目,丸2のところは,地方における国立大学を果たすべき役割に関するものでございます。委員の先生方からの意見といたしましては,やはり地方における国立大学が機能を果たすことが,自治体が成り立つための最低限の機能であるという御意見でございますとか,地域に分けて考える視点も必要であるという御意見。また,地域の経済的事情を踏まえた授業料や交付金の在り方があってもいいのではないかといった御意見もあったところでございます。
こういった御意見に基づきまして想定される論点としてまとめておりますけれども,地方に所在する各法人を取り巻く教育研究環境の状況,及び各法人ミッションを踏まえつつ,国立大学としての役割を果たし,その機能を強化していくためにどういった方策を取っていくかという検討を始めるべきではないかという形で想定される論点をまとめております。
また,丸3でございますけれども,国内法人のガバナンスに関する意見も幾つかございました。この下にございますとおり,ガバナンスの在り方一つで組織の状況は大きく変わるという御意見でございますとか,トップの選考の在り方と,ガバナンス体制をどうするかという検討をきっちりされる必要がある。また,15ページでございますけれども,そのような御意見を踏まえまして,想定される論点として,先ほどの丸1のところでも少し触れておりますけれども,各大学の機能やミッションに応じてガバナンスが変わるということも考えられるんじゃないかと。また,特に一法人複数大学,現在3法人出てきておりますけれども,この成果や課題の整理をしつつ,ガバナンスの点から検討するべきことがあるのか確認していくべきではないかというところを想定される論点としております。
4つ目が,教育研究の振興に向けた取組に関する御意見でございます。こちら最初のポツでございますけれども,先ほど資料1でも述べさせていただいたとおり,今後の教育研究の改革の方向性といたしまして,世界に開くという観点が重要ではないかという御意見もございました。また,教育に関わるコストが現状,急激に拡大しているという状況がございます。また,このコストをどうしていくかという御意見もありました。また,運営費交付金につきましては,現状,人事院勧告に直接影響を受けておりませんが,これを変える必要があるのではないかという御意見もございましたし,イギリスのように,教育の状況について公的な形で質保証を図る必要があるのではないかと。また,教育と研究を切り分けて,運交金もそれに応じた配分をすべきではないかという御意見もございました。また,16ページでございますけれども,大学ファンドのように新しい政策軸をつくるということがないと,なかなか投資する予算も増えていかないのではないかという御意見もございましたし,5年後,10年後にどの領域に人材が必要となるか分かるということであれば,そこに公的支援を行うというような考え方もあるという御意見もあったところでございます。
これを踏まえまして想定される論点といたしまして,WPI,SGU,先ほどの分析のところでも御説明をさせていただきましたけれども,国際化でございますとか,研究力強化というだけではなくて,システム改革がかなりこの取組で進んだということで,成果を上げていると思われます。また,こういった好事例を展開にするに当たりまして,各法人や国における新たな具体策をどういったものが考えられるかと。また,質の高い教育研究,よりコストがかかるところでございますけれども,教育コスト,研究コストについて,どのような分担で賄っていくべきなのかというところを想定される論点として入れさせていただいております。また,その他にも研究力強化の関係で,システム改革や高度な研究マネジメント基盤の構築を確実,かつ継続,安定的に進めるためにはどのようにすればいいか。また,大学共同利用機関や共同利用・共同研究拠点,こちらが組織,領域を越えた連携,人材流動のハブ機関としての機能を果たすためにどのような方策が考えられるかというところも論点として入れさせていただいております。
丸5でございますけれども,こちら附属病院の在り方に関する在り方に関しましても,委員の皆様方から御意見をいただきました。例えば附属病院だけ切り離して法人化したほうがよいのではないかという御意見。17ページに行っていただきまして,教育研究の名の下の労働が行われていることが課題でございまして,大学設置基準そのものを見直すべきではないかと。また,大学病院も身の丈に応じた形態になる必要があるという御意見もあったところでございます。
こういった御意見を踏まえまして,想定される論点といたしまして,国立大学の附属病院はどのような機能が求められるのか,また,そのためには現在のように大学や法人に附属するという仕組みが適切なのかという論点を入れさせていただいております。
丸6,その他のところでございますけれども,委員の皆様方から意見としていただいたものは,評価の話があったかと思っております。特に国内法人評価の現況分析評価と大学の認証評価も,ある程度の整理が必要ではないかという御意見もございましたので,一つ,今,その他といたしましては評価の仕組みをどうすべきかと,また,資源配分と評価の連動についてどう考えるかという形で整理をさせていただいているところでございます。
以上,資料2と資料3の説明でございますけれども,前回の会議におきまして,座長からこれまで1回,2回,3回,4回と様々,テーマを絞って議論をさせていただいたところでございますけれども,不足するテーマについて何かないかというところで前回,座長と事務局で引き取らせていただいたところでございますけれども,教員養成と附属に関する取組につきまして追加で説明をするということになりましたので,その点につきまして,引き続き担当課のほうから説明をさせていただきます。
【小倉教員養成企画室長】失礼します。総合教育政策局教育人材政策課で教員養成企画室長をしております小倉と申します。国立大学法人等の現状についてということで,教員養成大学と附属学校について,補足説明させていただきます。
1ページ目をお開きください。こちらにありますように,教員養成大学・学部は現在45ございますが,ここでの教員養成大学は,いわゆる教育系単科大学11に加えて,教員養成を目的としまして,教員免許状の取得に必要な単位の修得が卒業要件となっている課程を指します。
次のページを御覧ください。全国の国立の教員養成大学・学部の設置状況でございます。
次のページを御覧ください。入学定員の推移でございますが,国立大学の教員養成学部の定員規模は,教員採用動向に対応し,採用倍率が過去最高値となった平成12年以降,新課程等への振替により1万人を切りますが,現在微増しておりまして,約1万1,000人となっております。これは平成17年度の設置,または収容定員増に関する抑制方針の撤廃,また,その後の教員需要の増加により上がっているものでございます。
次のページを御覧ください。参考となりますが,こちら公立学校の教員採用選考試験の実施状況で,平成12年に競争率の過去最高となる倍率を記録しております。また,平成16年の法人化以降,この倍率は下がり続けておりまして,令和5年には競争率が最低値3.4倍という記録をしております。
次のページを御覧ください。こちらは,公立小学校採用者に占める国立教員養成大学・学部の卒業者の割合でございます。抑制方針の撤廃に伴いまして,教職課程を有する私立大学も増加しまして,国立大学の出身者の割合は低下傾向にございます。
次のページを御覧ください。この低下傾向の背景ですが,小学校教諭一種免許状の認定課程を有する大学数の推移を見ていただきますと,私立大学が非常に増えていることが分かります。こちらは平成17年の撤廃以降増えておりますが,私立大学は地域によっては少なくて,国立大学のみという地域もあることが留意する必要があります。
次のスライドを御覧ください。その中で,国立の教員養成大学・学部卒業者の教員就職状況の推移でございますが,法人化以降,ミッションの明確化,あるいは各大学の就職率向上に向けた努力もありまして上昇傾向にありまして,令和5年度の直近では68%と,上昇傾向にございます。ただ,特にこの数年連続して改善しておりますが,高い大学は88%と9割近く教員就職率を記録しておりますが,低い大学はまだ50%台というようにばらつきがあります。なお,教職大学院の教員就職率は90%超となっております。
次のスライドを御覧ください。こちらは中央教育審議会で示されている答申ですが,現在,学校初等中等教育段階における教育課題の多様化に伴いまして,そちらの令和3年当時にございますように,子供一人一人の学びを最大限に引き出す,また,主体的な学びを支援する伴走者としての必要性,こういった教育の在り方が答申されております。これに基づきまして,令和4年では,新たな教師の学び姿の実現ということで,教師自身の学びの研修観の転換であったりとか,一番右側になりますが,教職課程の柔軟化,このような提言がなされ,一番右下になりますが,教員養成大学・学部,教職大学院の在り方として,学部と教職大学院との連携接続の強化・実質化,教育委員会との連携強化,人材育成の好循環,そして教員就職率の向上,このようなことが書かれます。
このスライドの一番上の枠囲みに戻りますが,国立教員養成大学においては,このような教育課題の多様化に対応するために,教員養成フラッグシップ大学制度,あるいは地域枠を活用した機能強化事業により,地域におけるリーディング大学としての役割を果たすことが期待されております。
次のスライドを御覧ください。こちらは初等中等教育の学校現場が抱える教育課題の状況です。不登校児童生徒数,あるいは,日本語指導が必要な児童生徒数であるとか特別支援,こういった数が増えております。
次のスライドを御覧ください。こうしたものに対応する取組として,教員養成フラッグシップ大学制度があります。こちらは少々説明細かいですが,1ポツの1行目に書いてありますように,教員養成の在り方自体の変革を牽引する役割を果たす大学について,文部科学大臣が指定を行います。
指定大学は御覧の4大学になっております。制度上の特例としては,いわゆる免許法上の特例がございまして,免許法の特例を活用しつつ,新たなカリキュラム開発,このようなことを実施することが可能になっております。一番下,スケジュールでございますが,現在令和6年度,中間評価を迎えておりまして,令和8年度に向けて各大学が取組を進めている状況です。
次のスライドを御覧ください。こちらは今,指定されている4大学の各取組です。御参考です。
次のスライドを御覧ください。フラッグシップ制度と合わせまして,予算事業となりますが,地域教員希望枠を活用した教員養成大学・学部の機能強化事業を令和6年度から実施しております。事業の概要は一番右下の少し小さな絵となりますが,ポイントは大学の入学前から教員採用に至るまでの一貫した取組をイメージするということで,本事業も活用しつつ,地域教員希望枠入試の設定であるとか,地域の課題に応じた育成プログラムの展開,このような取組を進めております。今は21機関が選定されてございます。
次のスライドを御覧ください。こういった事業も活用しまして,例えば入試改革を進めているところ,また,養成課程のカリキュラム改革を進めているところがございます。カリキュラム改革ですが,教育実習を地域の僻地に行かせるとか,そういった各地域に応じた取組を学生にしっかり提供するプログラムを構築するといった例がございます。
次のスライドを御覧ください。こちらは教職大学院との連携でございますが,学部4年間に加えまして,教職大学院,2年必要なところを,いわゆる1年短縮しまして,5年一貫で教師となるといったような制度改正も進めておるところでございます。
次のスライドを御覧ください。こちらは附属学校についてでございます。法人法上は,国立大学に附属させて設置することができるという規定でございまして,大学設置基準では教員養成に関する学部,または学科につきましては,附属学校を置くものとするという規定となっております。一番下の使命・役割のところを御覧ください。国立の附属学校としては,まずは実験的,先導的な学校教育,地域の指導的,モデル的な学校としての取組であるとか,あるいは教育実習の実施,また,一番下の大学・学部における教育に関する研究への協力を使命・役割としております。教員養成大学にとっては,初等中等教育段階の教育の現場の課題,子供の実態,状況,こういったものを把握した上で教育研究に活用できる,または教員養成カリキュラムに反映できるということで,非常に強みとなる存在となっております。両者の連携を強く求めているところです。
次のスライドを御覧ください。最後になりますが,国立の教員養成大学・学部についての主な論点でございますが,令和4年の中央教育審議会答申におきましては,教員養成大学・学部の在り方ということで,先ほど御説明したようなものが提言されております。地域における教員養成の機能の維持,これらの実現に向けて国立の教員養成大学・学部に求められることは何かというところを,事務局ペーパーとして一つ示させていただいております。
以降は参考資料となります。説明は以上でございます。
【相澤座長】ありがとうございました。
それでは,資料2,3,4という3つの資料についての説明をいただきました。これから議論に入るんですけれども,少し補足しておきますと,資料2をもう一度御覧いただけますでしょうか。資料2が,今年末までに,この検討会としてまとめていく大枠を示してあります。残る回は,12月24日というところに今年の最終回を設定しております。本日と,この次の会で,これをまとめていきたいわけであります。
資料2は3つのパートに分かれております。1つ目が大学を取り巻く環境の変化(今後の大学の在り方)です。ここについては,委員からの関連意見が列記されていて,ここはまだ十分に議論されておりません。本日は,ここの部分について,まず,いろいろな観点からの御意見をいただきたいと思います。
それから,2ポツのところは法人化後の現状分析でありますので,これは各項目について,検討を続けてまいりました。これにつきましては,これを御覧いただいて,さらにこういうことが重要ではないか,課題ではないか,そういうような御指摘等がありましたら,どうぞよろしくお願いいたします。
そして,3ポツのところが,これが,今の1ポツ,2ポツのところを踏まえた上で,これからの重要な検討の方向性になります。国立大学法人等の機能強化に向けて,現状及びその分析を踏まえた今後の対応策についての方向性ということになっております。ここでまとめられているのは,想定される論点という形で項目ごとにいろいろ出てきております。来年,こういうことを中心として議論を展開していくという立てつけになっております。
ということで,資料2を中心に本日,御議論をお願いしたいと思います。それで,毎回同じようなことですが,準備が整った方から名札を立てていただいて御発言いただきます。それからウェブで参加していただいている先生は,挙手のボタンを押していただければと思います。今日は皆さん,対面ですね。それでは,御発言の方は名札を立てていただいてと思います。どなたからでも結構でございますので,よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。平子委員,どうぞ。
【平子委員】資料3の7ページに,オンライン化がどんどん進んでいるというデータがありました。つい最近,通信制大学のZEN大学が来年の4月に開学するというニュースを読みました。定員が3,500名で東京大学よりも定員数が多く,学部は知能情報社会学部だけです。この大学は他大学との交流機会を設けて,ミネルバ大学との連携も予定しているようです。授業料は38万円ですから国立大学よりも安く,世帯収入700万円未満の学生を対象に,最大500人に授業料を全額免除,100人に特待生として50万円の給付型奨学金を支給するという計画です。このような大学が今後出てきた時に,国立大学がどういう価値提供をしていくのか,いずれ問われてくるのではないかと思います。授業料は安く,入学定員も東大以上ということで,国立大学の新しい時代のミッションをどう考えるかということです。
今日の資料にミッションの分類がされています。13ページですか。想定される論点が1から5まで書かれていますが,例えば重要な学問分野とは今後何を指すのか,これからの時代ここは議論があるところだと思います。我が国の知をリードする研究,これは国立大学としては比較的アドバンテージがあると思いますし,理工系分野も然り。地域と教育研究の拠点はオンライン大学とは異なる特徴ですが,国立大学だけの特徴ではない。リカレントや国際化,産学連携についても率先していくと書かれていますが,本当に国立大学として一番重要なポイントはどこなのかは,今一度議論をしたほうがいいのではないかと思います。
国立大学の特長は,比較的文理両方の学部がそろっている大学が多いということです。STEAM教育すなわち,文理融合教育に関しては,これは国立にアドバンテージがあるのではないかと思いますし,キャンパスを持っているという観点では,物理的な建物と空間を今後,新たな価値を生み出すものとして活用できるのかどうかについて議論したほうがいいと思います。キャンパスの価値についても,大都市部と地方とではまた意味合いが違うと思いますので,オンライン大学との対峙性という観点に加えて議論したほうが良いと思います。資料2の一番下に,注釈でAグループからIグループまで分類をして分析を行ってきております。これはこれで一つの示唆を与えるものだと思いますが,今後,国立大学の将来を語るに当たり,機能やミッション,価値提供の観点で国立大学を分類したほうがいいのではないかと思います。
再編,連携がこれから先,非常に重要なキーワードになってくると思います。再編,連携はお互いを補完し合う関係が一般的な考え方だと思いますので,先ほど申し上げたように,例えばミッションや機能で分類した場合に,同じグループ内同士の大学での再編,連携がいいのか,グループ外の大学の再編,連携がいいのかも重要な論点になってくると思います。共同研究拠点も非常に効果があり,若手の研究者の登用場所にもなっていることから,再編,連携は共同研究拠点との関係においても整理しておくことが必要なのではないかと思います。以上です。
【相澤座長】大変重要な御指摘ありがとうございました。第1に挙げられた,国立大学の価値とは何かというところは,この検討会の重要課題であるかと思います。資料2の1ポツと3ポツのところに大きく展開される内容ではないかと思いますので,これは後で整理するときに,その意識で位置づけていっていただきたいと思います。
それから,グループ分けについて,今,御質問というかコメントというものが出てきたので,ここについては,まず,グループ分けというのは,これは何なのかということを,まず文科省から説明いただけますでしょうか。
【井上国立大学法人課長】ありがとうございます。これは財務分析上,規模とか病院とか,そういう財務分析に影響大層な点に着目して行ったものでして,そういう意味では,一部機能とかぶるところもあれば,ないとこもあるという状況になっています。これは平成16年の法人化したときから継続的に追っているというものです。
先生のおっしゃった機能に着目した面という意味では,多分初回の御説明で軽く触れたんですけれども,運営費交付金の配分の中の一部に,その機能に着目した配る仕組みというのを入れていまして,それは第4期,今においては,法人からの御意見,また,すり合わせも含めて,機能に分けて配り方を変えている部分を入れているという状況でございます。今,第4期の途中ですけれども,まさに次,第5期に向けてどうするかという意味で,まさに機能に着目したというところは非常に大事な論点になってくると思いますので,ここに書いてあることは別途,そういったものについても既にあるけれども,ブラッシュアップして発展させるみたいなことは非常に大事だということで,先生の御意見を受け止めております。
【相澤座長】それでは,どうぞ。
【川合委員】川合でございます。大学の在り方ということで,根源的な問いが投げかけられております。人を育てるという機能は,結局,我が国の産業や社会を支えるよき人材を輩出する機能と考えますと, 18歳人口が減っているから,育てる数が少なくていいのかというのが,一番に考えるべきことと考えます。現状の卒業生数でも,産業が求める求人数に満たないことに鑑み,少子化を迎えている我が国は,この国の中で生まれる人だけでは社会が求める人材数に足りません。海外からいい人材を入れる必要があります。この点が大学の環境変化を決める一番大きな要因になると考えています。
そのときに,いい人材が世界集まる日本になるにはどうあるべきか,を問う必要があるでしょう。みんなが日本に来たいと思うようにするには,特に,国際的に18歳レベルの人を魅了して日本の大学に入りたいと思うようにするには,国際的な人材市場で日本が勝てる環境を用意することが大事です。現状の国立大学が国際基準のマーケットになっているか。もっと言うと,学生に生活費まで与えられているか,世界基準を満たすことを第一に考えるべきです。それから,世界に類を見ない親の収入を当てにした学費の在り方でいいのか,これも大きな問題だと思います。ということで,まず,一定数の人を海外から入れるという意味で国際化が必須でありますし,産業や社会構造を考えても,これから我が国は本当に国際化の方向に向かっていくということを考えると,日本人の学生に対しても国際的な人の流れにちゃんと入ってもらえるような大学であることが必要だと思います。
先ほどのミネルバ大学の紹介で気になることがあります。キャンパスはないけど,寮があるんです。世界中に寮があって学生は寮に入っています。これはどういう意味があるのでしょうか。大学の機能の中に,知識や経験を授ける教育の部分と,そのときに同じ時間と場所を共有する仲間がいる,これから将来の財産になる交友関係があるということかと思います。そういう観点からいうと,完全にオンライン大学ではないですね,ミネルバ大学。学生同士が空間を共有できることが大学のミッションの一つとして非常に重要なんだろうと考えました。そう考ると,今の日本の大学は国内のことだけしか目を向けていませんが,広い視野を持った国際的な環境を提供しないといけない。大学に入学する学生には世界各国から来る学生たちが混じり合って次の世界に飛び出すような環境をつくることが求められているように思います。国際的な交流関係を育てることが,大学のもう一つのミッションになるように思います。
先ほど平子委員から重要な学問分野とは何かという問いかけがありました。教育される立場に立つと,学生たちは20年,30年,40年生きていくわけですから,未来志向で専門を作れる教育を授けるべきで,現時点で必要な学問だけを提供していたのでは無駄になります。将来に向けては,広く現時点での分野の枠組みを超えた知識を与えることが必要です。そういう意味では,学部単位で教育している現状のシステムではなく,もっと広い視野を持った教え方が大事なのではないかなと思います。
機能強化の点ですけど,何を基準に考えたらいいか難しいところですが,これまで文科省の施策で私が関わった中では,WPIは非常に成功したシステムの例ではないかと思います。ここのポイントは,研究システムの強化です。研究費ではなく,組織基盤を強化する資金だけを提供しています。人件費と設備費など組織基盤が強くなったところは勝手に研究費を取りに行き,研究成果も上がって,結果的に研究機能が強化されています。WPI
で支援しているのは大学の中の小さな単位(1研究所程度の規模)ではありますが,ここでの成功体験を大学全体の機能強化に展開していくという考えは非常に意味があると考えます。
今のところ思いついたところはそのぐらいです。
【相澤座長】ありがとうございました。大学の在り方の中で,先ほどの平子委員の御指摘のオンライン大学と日本の国立大学が,今後どう在り方を変えていくかということと,ちょうど接点になるところのお話がありました。具体的な例として,キャンパスがあるなしというのは,それだけではなくて,今のような量というもので,違う側面のキャンパスに代わるような役割のものが出てきているのではないかと,これも非常に重要な御指摘だと思います。
いずれにしても,オンライン大学というのは,日本の大学設置審の中でも,この方式が出てきたのは今からもう20年ぐらい前ではないかと思いますけれども,そこで,文部科学省としては,設置審の規制緩和を実施しました。当時、私は大学設置・学校法人審議会会長を務めておりましたので覚えているのですが、株式会社も大学を設置できるという形にしたところです。一つのポイントはキャンパスをどう見るか,それから,講義室に相当するところを大学設置基準ではかなり厳しくやっていますが,それも見直す必要があるじゃないかという大きな課題を抱えながらスタートしたんですが,その時点ではなかなかうまくいかないという結果になっていたと記憶しています。今回また新たに,こういう感じで具体的に出てきているということで,これは文部科学省としても大学の在り方という議論を踏まえた上で,このことについては,いずれ設置審の設置基準と,そういうところに関わる問題ではないかとは思います。
それから,先ほどの重要分野ということは,確かに川合委員がおっしゃるように,重要分野というものを継承していくのが国立大学のミッションだというんですが,これは軽々に言えないようなところではないかと思うんです。これは,今の御意見も伺いながら整理するところで,もう一度議論していただければと思います。
それでは,そのほかいかがでしょうか。上山委員,どうぞ。
【上山委員】今,思いついていることだけ申し上げると,今後の国立大学の在り方という大きなくくりで考えたときに,転換点が来ているような気が私はしています。国立大学というよりは,税金で教育,研究をすることの意味という言い方のほうがいいかもしれませんけど,要するに,公的な資金というものが主な財源となって行う高等教育というものの在り方ということかなと思ったりはします。
そもそも歴史的に見れば,この国の高等教育はヨーロッパ型のエリート養成の形で生まれていて,これは公的資金を投入する意味があったわけです。キャッチアップしなければいけないという意味で,国が公的資金を投入して,エリート型の大学をつくっていく。それはヨーロッパの国々で形成された理想像があって,それを公的な資金で支えるという理念が存在していた。エリート型の少数の大学で始まったのですね。ところが、戦後になり産業構造が高度経済成長期に入ったために,学位を持っている人材がたくさん必要になった。ただ,それを公的な税金で支えるだけの財務基盤が当時の日本にはなかったために,建学の理念で作られ始めた多くの私立大学の設立に頼らざるを得なくなった。結果として、大学の数が爆発的に大きくなる。ですから,今でも国立大学よりも私立大学に対する支援の規模はそんなに大きくない。それが当時の大きな産業構造上の人材輩出に対する国の方針だったんじゃないかなと思います。
そのような歴史を踏まえて国立大学という存在が果たすべき役割、さらには税で支える高等教育とは一体何なのかということを考えたときに,最初に始まったエリート型でもないし,あるいは戦後に起こったような,ある種のホワイトカラーをつくるようなものでもない,私のイメージでいうと,もっと多様な,多様性のある人材の形成の仕方に公的な資金を入れる時なのかもしれないと思ったりはします。
例えばアメリカのカリフォルニアで言えば,3つの層があって、公的なお金を一番下のコミュニティーカレッジに入れるべきだという議論のほうが実は強いんです。例えばトップ層のバークレーみたいなところと,それから中間層のステートユニバーシティとコミュニティーカレッジの三つでは、一番上位の大学からはそれぞれのPhDを取っている人が生まれる,第二層からはマスターを取っている人,それから,大さんのもミュにティカレッジからは普通のプラティカルな教育を受けた人が生まれる。その三つの労働市場で最も需要が高いのが、実は第三の層なんです。PhDを持っている人って,必ずしも職が得られると限らないという層です。だから税を入れるということの意味でいうと,必ずしもトップ層だけではないということがあり,多様な役割を持つ産業構造に変化している,産業構造の変化に応じた多様な人材の人づくりの方向に税を入れるべきだという議論は一方であるとは思います。
その意味でいえば,例えば地方の国立大学が地方の中で果たしている役割というのは,その地方の独特の産業構造や社会構造の中で重要な役割をするのであるから,そこに資金を回すべきだという議論もあり得ると思います。エリート大学というのは,これはどちらかといえば,自らの力で飛翔していくべきような大学にだんだんなっていくんだろうと思います。国際卓越もそうでしょうし。そういう卓越大学においては、先ほど話が出てきたみたいなキャンパスの存在というのはとても重要で,アメリカのエリート大学では,レジデンシャルカレッジを志向しますよね。キャンパスの中に一緒に,寝食を共にして教育するというパターンが,その層のエリートのところにはすごくあって,それは独特の高位のところ,高位のレベルの高等教育がそこで行われる。
一方で,繰り返しになりますけど,産業構造がどんどん変化している。かつてであれば,大企業がいて,それに系列に下請の企業が大企業を支えていくという産業構造も大きく変わると思います。いわゆる中堅・中小企業の生み出すGDPの大きさがどんどん拡大していく可能性は大きいです。そういうところに働く人たちの能力が多様化を求めているということであれば,公的な資金に代表される国立大学の役割もそういうところにもあるかもしれないと思います。
だから国立大学とは一体何をあるべきかの「べき論」」で言えば,なぜ税金をそこに導入しなければいけないか論に立ち上ったときに,今の国立大学なるものの構造が,より多様化の方向に進んでいくというのはあるかなと思います。CSTIのところでも科学技術のことをやっていますけど,どっちかというと先端技術的なイメージがあるんですけども,先端技術のあるものも,先端の重要な領域としてトップ層だけを考えるという視座も個人的には疑問があって,そういうトップ層の大学から出てくるような新しいシーズや人材が,もっと裾野の広い産業のところに突き刺さっていく。それによって産業構造が大きく転換していくということもあるかなと思ったりはしています。
アメリカなんかで起こったのは,スタートアップがそれをやったんでしょうけど,むしろ我が国における75%の中小中堅企業,この産業の高度化,技術や人の高度化ということは,それを促進するための先端技術という目で見れば,有用な公的資金の投入先かもしれないと思っております。
その意味で,大学のような序列ができて,偏差値で輪切りされていると同じように,産業界も序列ができてしまっているという現状にも,大きな転換点がやってきていると考えた方がいいように思います。そのような視点から、税の投入を高等教育の何に使うべきかということは,高等局でもお考えになる対象なんじゃないかなと思います。どういうような多様な産業や,あるいは働き方,あるいは地域をつくっていくかというような目線で見たときに,国大大学はどういう分類があり,どういう役割,機能を果たしていくかと,そういう視点,そういう見方が必要かな考えております。以上です。
【相澤座長】国立大学の在り方自体が大きな転換点に差しかかっている,この点については,皆さんかなり共有されているのではないかと思います。そこを転換点として,さて,今後どう切り開いていくかというところで,いろいろな視点があるのではないかと思います。今,上山委員から公的資金の投入という視点から考えたときに,どういう転換点を超えていくのかというお話だったと思います。
そのほかいかがでしょうか。
【福原委員】ありがとうございます。今のそれぞれのお考えの延長になるかもしれませんけれども,今,中教審のほうでも高等教育の在り方が議論されていて,それも答申に向かって,特別部会の御議論なども収斂しつつあるようであります。教育力を前提とした教育の質の向上ということは言うまでもありません。その他に規模の適正化ということが,私学中心に言われているのでしょうけれども,国公立とて無縁ではありません。また,注目されているのは,知のアクセスをどのように確保していくのかという,少子高齢化という状況に対応するという意味でありますが,その中で,さらに設置形態別の役割ということが言われています。これはなかなか,いろいろ議論あって,今の先生の御議論で,どこに税を投入した支援を持っていくか,やるべきなのかというときに,私学にも今,かなりの税が投入されており、交付金が投入されておりますけれども,そういう一方で,国大協のほうでも議論がされていると拝聴しております。そのときには国立大学グループ全体として,全国の国立大学グループとして果たす役割,そういう国立大学が全国都道府県にあって,それが総体として果たす役割というものと,それから個々の国立大学が果たしている役割というものをしっかり見極めていく必要があるのではないかということも提起されています。
そういう中で,国立大学全体として果たす役割のときに,我が国社会に必要な人材が,それぞれの個々の大学の創意工夫ということで輩出されるだけではなくて,国全体の観点で,こういう分野の人材がこれだけ必要だと,医学分野の人材,あるいは教員とか,そういった専門分野の人材育成を最低限担うのは国立大学グループであり,全国の大学全体なのですけど,私学に身を置いてきた私の立場からいろいろな議論に参加しておりますのでよく分からないところもあるのですが,国全体が,国立大学全体で果たす役割において,それは定員政策がそれにかかるわけですけれども,そこの政策決定というのは,もうこれは文科省の高等教育局で議論されているのか,あるいは,そこはどういう国民の意見で政治的な判断がなされて税が投入されているのでしょうか。国立大学全体としてこういう人材をつくろうとか,こういうことはあまり頭ごなしにやるべきではなくて,個々の創意工夫に任せるというのが基調になっているのか,あるいは、国の議論なのか,それをお伺いしたいなと思います。すなわち、その政策決定のプロセスです。
この議論が現代社会のニーズに合わないと,国立大学の機能というか,そういったものは高度化されないなと思った次第です。国立大学に配分される定員,あるいは,その時代のニーズを見て,こういう領域のこういう人材はこれだけ必要なんだと,そういう国家の政策の意思決定のプロセスというのは,具体的にどうなっているんでしょうか。伊藤局長,どうなっていますか。すいません,勝手に尋ねて申し訳ありません。
【相澤座長】大変重要な御指摘なんですが,答えるのはなかなか難しいのではないかとは思いながらも,目が合いましたので,伊藤局長、よろしくお願いします。
【伊藤高等教育局長】ありがとうございます。本当に難しいというか,これは昭和20年代,30年代,40年代の頃と,今の状況は全く異なっております。昭和30年代では,工学人材を政府としてもしっかり増やしていかなければいけないということで,積極的に工学部の設置,または定員増というのを昭和30年代,40年代,50年代前半ぐらいまではしてまいりました。
もう一方で,御案内のように,医学の部分で言えば,無医村ではないですけど,医者,医学部がない県には医学部を設置しようという形で,国立大学として新たな単科の医科大学をつくるというような形もやっておりました。そういう意味では,個々の特定に必要な人材という観点で言うと,これまで文科省としても当然取り組んできた時期はございます。もう一方,非常に尖った大学という言い方,雑な言い方で恐縮でございますけれども,従来の大学ではないような新しい人材を養成する,新しい学問領域を切り開くというような観点で,新構想と言われるような大学をつくることを国の意思として決めて,新たにつくった大学も幾つもございますが,それは既存大学に付加するというのではなくて,新たな大学をつくるというような戦略で,昭和50年代等に取り組んできたところでございます。
そういうような形で,国としての一定の意思を示す分野もございましたし,時期もございましたが,いわゆる高等教育計画というような中で,国の意思を持って行っていた時代というのは,少なくともこの30年ほどは実はなくなってきている状況でございます。さらに,20年前に法人化をいたしましたので,法人化以降は法人化の趣旨をもって,国が直接に動く部分の関与という意味では,正直この20年間なくなってきてございます。
では,今何もやってないのかというと,そうではなくて,医学のように特定領域のことに関しては,国庫を通じて,医師の人材というのはこのくらい必要であるというようなものを示しながら,そこのところの必要数をコントロールしているというやり方が一つと,もう一つは,圧倒的に産業の変化の中で情報系の人材が我が国足りないということで,これは各大学にお任せをするだけではなくて,国として情報系の人材をたくさん養成しなければいけないということで,いわゆる3,000億円の基金化をして,国立大学においても,情報系の学部を新たに増員をするような場合には,財政的にはしっかり支援をさせていただきます。その分,定員増というものも,一定の時限でございますけれども認めてまいりますというようなこともやっておりました。
ただ,今,福原先生おっしゃったように,国全体として,文科省がこの分野が何人足りないからこういう要請をしていく。それを,各国立大学に言うことを聞かせていくという手法は,現時点において,現時点というか,しばらく取っていないですし,法人化というものと,そういう政策というものをどう考えていくのかというのも,なかなかかつての直轄国立時代とは違う手法を取らなければいけないのかなとも考えてございますので,その意味では,もう少し緩い意味での方向性を示すのは,実はこの検討会で方向性をお示しいただいた形の中で必要な制度改正というものが,考えていかなければいけないのかなと思っております。
【福原委員】よろしいでしょうか。投げたボールが返ってきたような思いがする御答弁であったのですけれど,その中で,法人化したという,国立大学を法人化したということで,個々の国立大学の法人ガバナンスだとか,教学マネジメントを強化するということを通じて実現することも必要なので,それが国立大学法人化によって,そういった全国のニーズというのが,全体としての,国立大学全体としての運営というか在り方を動かしていくことを妨げてはいけないので,逆にそれを実行する強さが向上していることが望ましいと思った次第です。その両方がやはり必要かなと思います。
あと,簡単なことで2つだけ付け加えておきますが,一つは,ここに述べられていることで今,総論のお話をさせていただいていますけれども,教育、研究,社会連携という機能が必要なので,研究力については,これをサポートする専門人材というのはよく議論されるのですが,各大学の法人運営だとか,あるいは教学マネジメントだとか,あるいは社会連携事業だとか,こういったものの機能をしっかりと支えるスタッフ,事務職員というかスタッフ,こういった国立大学のそれぞれ教員とか研究者とか学生とか,そういった人たちの活動によって成果が表れるのだけども,それを支えるサポート部門というものがどうなっているのか,時代に合っているのか,そこに専門人材が必要じゃないかということを一つ申し上げておきます。
もう一つは,キャンパスということがありましたけど,今,各国立大学には放送大学の学習センターといったような,そういう,これは今のオンライン大学ではないんですけど,放送大学なんですけれども,放送大学は国立大学ではないんですけれども,こういったような既存の,その時代の知のアクセスを担ったり,キャンパスを,単なる大学のリアルキャンパスにとどまらず,いろいろな町だとか地域だとかそういったところに学びの場を設けていこうという走りだったと思うのです。そういった既存のセンターや共同利用施設,これをもっともっと共同で利用していって,国立大学のネットワーク,私は放送大学が国立大学とうまくネットワークを組んで,どこに住んでいても近くの国立大学の学習センターに行けば,放送大学で提供される教育を活用できるというので,これ一つ前の,まだ完全じゃないけど,国立大学ネットワークを使った知のアクセスの確保だと思っております。オンライン大学は,私学のほうで設置認可が進みますけれども,国立大学が果たしてきた,そういった放送大学と共に果たしてきた役割も無視できないなと思います。それを全部私学に任せるだけではなくて,立派な講義をされている先生方には国立大学の先生が多いんですけれども,私も一部だけ,私学ですけど交えてもらってお話したことがございまして、そういうことも一つ思いました。そういう意味では,地方における役割,知のアクセスという議論に国立大が果たす役割というのもあるのではないかと思った次第でございます。すいません,長くなって。以上です。
【相澤座長】ありがとうございました。設置形態の差異について,具体的なことを踏まえた上で国立大学法人という設置形態,これはどうあるべきなのかということも大変重要な御指摘だったと思います。
それでは,そのほかいかがでしょう。上山委員。
【上山委員】2回しゃべるのはよくない……。
【相澤座長】いや,どうぞ。
【上山委員】つくづく政府の中で仕事をさせてもらっていて思うことの難しさ,特に文科省の行政の難しさというのを感じます。例えば,今いろいろな形で人材の輩出に関してどういう役割をするか議論していますが,それは文科省が全部やるべき仕事なのかは正直分からない。例えば,我々のところでも,学んできたことと働いてからのスキルとの差をいろいろやっていますし,それは経産省も一部やっていますけど,結局,人材,人をつくったときに,その人がどういう形の働き方までするのかを,行政として責務を持ってそこまで見るべきなのかというのは,正直分からないです。
例えば,TEFをやるにしても,教育のエバリュエーションをやっていけば,多分それは出てくると思います。社会的インパクトとか,あるいは,どういうところに就職をして,どれぐらいの給与を得てみたところまで測ったりはしていますけど,それを今の文科行政の中でやり切るべきだと言い切るのが正しいかどうかが,まだ正直なところ分からないです。
それをやり始めると全体像を把握しないといけなくなるので,すごく大変な仕事になっていくだろうなとは思います。これは別に教育だけではなくて,技術シーズの問題も,よく社会実装が全然つながらないというところの話と似ているところがあって,そのつながりまで全部文科省の責務だと言われると,正直それはしんどいだろうなと。ただ,そういう方向性がどんどん強まってきていることは事実なので,省庁を超えたような,ある種の全体像を把握する試みの中で,しかも,きちんとしたエビデンスを持った絵姿を描いていくということは,求められていることは事実だと思います。だけど,文科省の高等教育行政に全てそれをやれというのは,なかなか大変な作業だなとは思っています。
【相澤座長】これは日本における省庁縦割りの政策の問題点でもあり,そこに上山委員がおられるCSTI,これは関係する科学技術イノベーションについては,全省にわたる総括的な政策策定,その他をやられるところ,それにしても,今御指摘のようなところで,だんだん時代が動いているので,これまでの縦割りだけで政策策定をして,今後さらに効果的な展開ができるのかどうか,これはかなり法律的な問題を含んでいるのではないかと思いますので,重要な課題とさせていただきたいと思います。
それから,次に柳川委員,挙手されていますので,どうぞ。
【柳川委員】今の文科省だけでなくというのは大事な御指摘だと思いますので,政府全体としては,しっかり考えていく話だと思うんですけど,今,その話を私,ここでするべき話ではないと思いますので。
本題ですけれども,今後の大学の在り方の1のところで考えると,結局のところ,抽象的に言えば,オープンということなんだと思うんです。それは,海外にも開かれていくし,それからオンラインでも開かれていくし,後のほうで出てきます,リカレント教育であるとかリスキリングであるとか,こういうこともあるんだと思います。
それからもう一つ,オープンの中で重要なところは,人材が,教員とか研究者の人材の流動性が進んできて,大学にいながら別のところにいたりというようなことが起きる。学んでいる人も,さっきのリカレント教育みたいなことでいけば,働きながら学ぶというようなことが出てくると。何を意味しているかというと,要するに組織との壁が薄くなっていく。境界が,今までずっと国立大学法人はと,これだけ完全に別個の独立の何かあって,主語があって,内と外が明確だという前提で組織運営がされてきたわけですけれど,一般の民間企業でも一つの独立した,内と外が明確かというと,明確じゃなくなっているんですけど,特に大学教育においては,大学の組織においては,この内と外の壁がなくなっていくんだと思います。あるいは,むしろなくしていかないと,大学としての機能が果たせなくなると。そうすると,完全に外から隔離された法人組織があって,物理的にもそういうものがあって,それがどうやって機能したらいいかという発想から少し変えていかないと,あるいは大分変えていかないと,そうあるべき姿というのは見えてこないし,あるいは果たすべき役割は見えてこないんだろうと思います。
このときに,ぽろぽろ,ぽろぽろ境目が明確でなくて,人も出入りしているんだけれど,うちの家って何をやっていくんだっけというような話はなかなか難しい話であるわけです。昔の民家の大家族みたいなもので,隣の家の人も入り込んでくるんだけど,じゃあ,うちで御飯はどこまで出すんだっけみたいな,極端に言うとそういう話なわけです。でも,教育って本来あるべき,そういう意味では,外部性の塊であるとすると,そういう要素があるので,その中において,国立大学法人と言われているものは何をやるかというのは,すごく1としては,私は大事なポイントだと思っています。
その面でいくと,その面も加えて,国立大学法人というくくりが,そもそも少し大きくなり過ぎているので,役割が幾つか機能分化していて,それぞれの大学が実際果たしている役割も機能分化しているんだとすると,そこは少し分類をしていかないと,最初に平子委員がおっしゃったことですけども,現状に合わなくなっているんだろうと。少なくとも我々が普通にイメージしている話でいくと,広く下支えをする。ユニバーサルサービスに近いような形でしっかりと地域を支える,広く下支えをするべきだという話と,もう少しトップを伸ばしていくところに役割を果たすべきだということは,両方結構みんな期待するわけです。
このトップを伸ばしていくときに,本当に国立大学法人でなければいけないのかというのは上山先生が御指摘されたことではあるんですけど,でも,一般的にはそういうふうに期待をされていて,ただ,この2つは相当機能が違うので,ここを一緒にするとなかなか難しいんだろうと思います。ですから,機能と規模と,それからお話があったようにミッションと,この辺りで少し分類をして,それぞれ考えていく。ただし,分類は上から勝手に決めるということではなくて,各法人が自分の組織はどこに選ぶのかというような形でやっていく必要があるんだろうと思います。
この辺りが総論的な話なんですけど,大きな流れの話を全てやろうとするとなかなか変わっていかないので,ここで考えるべきは,もう少し現実的な戦略論で,今の制度をどう少し変えればこの方向に動いていくのかということを,もう少し細かく,これは3のところで,これから来年考えるということだと思いますけど,少し考えていかないといけないんだろうなと思います。
そういうことを考える上では,今,何が欠けていて,何が実現できていなくて,何が問題のポイントになっているかというのがもう少し見えてきたほうがいいのかなあと。そういう意味では,2のところでは非常に現状分析を丁寧にしていただいているので,これのところにあまり抜けている部分はない気はするんですけど,これを見ても何が欠けていて,何が問題で,どこに大きな課題が残っているのかというのがあまり見えにくいので,もう少しここは,少し大胆に,やはり今ここが問題なんじゃないかと。現状はこうで,いろいろうまくいっているところもあるけど,大きな問題がここにあるんじゃないかというところを少し整理していただいたほうが,3の今後の議論につながりやすいのかなと思います。
そこに関して,私見を多少申し上げると,もともとの法人化の意味というのは,先ほどからお話があったように国が直轄で管理をすると。だからお金も出すけど,口も出すと,こういう話になっていて,それをもう少し自由にやらせましょうと,やってくださいと,お金も出しませんけど,口も出しません,自由にやってくださいと。ちょっと言い過ぎですけど,お金出してないわけではないので。極端に言うと,少しそういう方向に動かそうと思ったわけです。ところが,現実的には,そんなに自由度だけ与えられてもうまくいかなかった。もちろんそれぞれ工夫はされているわけですけども,課題が残っていて,そういう意味では,要するに,先ほど上山先生がおっしゃったような税金の支援をどこまでして,それにもかかわらず,多様性をどういうふうに認めるか。その自由度と,あるいは,文科省として,あるいは国として税金を出す以上,こういうところは守ってくれ,ほしいですねという話と,自由度を認める話とバランスを少し考えて,その下でのお金の出し方,これをさっき申し上げたような,それぞれの分類ごとに少しつくってみるというようなことをやっていく必要があるんじゃないのかな。そうすると,もう少し多様性のある,ただし,しっかりとした支援もするし,あるいはしっかりとした創意工夫も行われるというところが,ある程度,もう少し選択肢が広がってきていいのではないかなと私,個人的には思っておりますけど,そこはまだこれからの課題だと思います。
以上でございます。少し長くなって失礼いたしました。
【相澤座長】ありがとうございました。今後のまとめのところについての具体的な御指摘をいただきました。樫谷委員,どうぞ。
【樫谷委員】委員の皆様のいろいろな御意見聞いていて,なるほどなと思うところがたくさんあるんですけど,私ども,昔から行政改革をやっていて,効果的,効率的なのはどっちかというと,官と民というと,実は民だということです。民にできることは民という,ちょっと古い言葉かも分かりませんが,ずっとそちらの方向にシフトしてきて,確かに非常に一般的に言うと効果的で,官は民にできないところをやるんだというような整理の仕方だったと,こういうふうに思うんです。
そうすると,官と民という言葉が正しいのかどうか分かりませんが,大学だと,私立と,それから国立,公立もありますけども,あるんです。同じお金を出すんだと,より効率的,効果的なのは,民間の私立に出したほうが,単純に言うと,今までの論理でいうと,民間のほうが,私立大学のほうがより効果的なんだというところがあると思うし,それならば,もっと国立を絞って民でやっていくと。ただし,本当に先端的なところは,恐らくリスクも多いので,本当のリスクテークは官でなきゃできないので,そのリスクテークのところは官がやっていくというような思想になるんですが,ただし,教育と研究ですので,そういう単純に効果的とか効率的で割り切っちゃっていいのかどうかというのは,実は私はよく分からないんです。その辺は専門家の先生に御議論いただきたいと思うんですけども,大学,要するに,基本的に教育をちゃんとするんだと,研究をちゃんとするんだということが目的で,我々民間にとってみたら,国立であろうと,私立であろうと,ある意味関係ないわけですよね。だから,それが,どちらのほうが実現できるんだという思想の中で本来やるべきかなと思うんですけども,それをやっていると切りがない。今さらそう簡単に変えられるわけじゃないし,非常に国立大学も極めて立派にやっていらっしゃるので,それを壊す必要は全くないし,それをもっと伸ばす必要があると思うんですが,ただ,どちらかというと地方においても,やはり国立は上で私立は下と,こういうようなイメージがどうしても残るんです。公立のほうが入るのが難しい。これは別に東京のど真ん中でなくても地方でも同じなんです。でもそういう構造をあまり変えないのか,変える必要がないのか。
じゃあ,極端に言えば全部,といいますのは,なぜ遠くで言っているかといいますと,義務教育はもう全部公費でやっているわけですよね,基本的に。今は高校もそうなんですか,になってきていると。これも高等教育ですよね。じゃあ,大学はどうなんだと。大学は,じゃあどうなんだと。大学だけはそうならないのかといったら,なる可能性もないわけではない。それは先ほどの議論にありましたように,大学だから,全部金持ちの人しか行けないみたいなことは問題だと思いますので,何かの補助をしていかなきゃいけないという意味では,中学,高校,小学校と大学と財源の在り方としてどう違うんだということも議論していかないと,単に今の国立大学法人は本当によくやっていらっしゃると私は思います。冷静に見て,いろいろ課題も山ほどあることはよく理解した上での話なんです。よくやっていらっしゃると。
そうしたときに,もっとそこに集中的にお金をつぎ込んだほうがいいのか。それとも,いや,そうじゃなくて,もっと制限をして,私立のほうにもっとシフトしたほうがいいのか,どっちがいいんだということを,公的資金というのであれば,そうなっていくんじゃないかと思っていまして,特に私,昔の経験で,民にできるものは民に,官はインフラというんですか,そういうところを中心にやって。ただし,リスクテークでやるようなものでなければいけないものは,これは逆に官しかできないので,先端的な教育,研究とか,教育もそうかも分かりませんが,それはパブリックでやるべきだというような整理の仕方が昔の論理からいうとできるのではないかと思いましたので,そういう発言をさせていただきました。以上です。
【相澤座長】ありがとうございました。この件につきましては,先ほど上山委員からも基本的な問題提起がございました。引き続き重要な課題として設定させていただきます。
そのほかいかがでしょうか。服部委員,どうぞ。
【服部委員】失礼します。今日,最初に大きなテーマをいただいて,考えていたのですが,そもそも我が国で大学が設置された当初は,国を強くする,富んだ国にするために国がしっかりと人材をつくるということで取り組んだと思っています。
一方、国の大学に対する取組や大学の実際の活動に対して,民間からもっと違う視点での教育観があるのではないかという立場から私立の大学ができる。それが私学の建学の理念になっていると思います。この観点から,先ほどの樫谷先生が言われたように,民でできないことを官ではなくて,最初の頃は,官でできないことを民がやってきたようなイメージを持っています。それで,それぞれ私学は建学の理念という設立者の強い思いがあって,それが今に至っている。私立大学にとってすごくそれが大切なこと。
ところが,今は逆な立場になっている側面があります。大学がこれだけ増えてきて,国立も増えて,公立も私学もたくさん増えてきて,その中でそれぞれの設置者の違いによる国立大学の役割は何かとなると,逆に,民でできないことを官でという話にもなり得ます。それが本当にいいのかどうなのか,実は分からなくて,分からないというのは,どこか自分の中で違和感があります。そこまで割り切ることにはすごく心配な部分がありますが,仮にそういう形で,国立大学のあるべき姿を考えていくときに,資料2の3ポツの想定される論点にあります,考えられる国立大学法人の役割として5つ挙がっている中で,重要な学問分野の継承,発展については,「重要な」の捉え方が難しいのですが,ある意味,私学でなかなかやりにくい,そういう分野と考えれば,国立大学の一つの役割と考えられます。
それから2番目は,我が国の知をリードする研究,今,私立大学も素晴らしい研究をされているので,これが国立の専売特許かというとそうではないのですが,それでも先端的な研究を進めるということは,国立大学の重要な役割のひとつと思います。それから理工系分野の教育については,実験設備,それから試薬とお金がかかる。経営的に考えると私学はなかなか踏み出しにくい領域と思えば,国立大学の役割だと思います。
また,地域の教育研究の拠点,これは,私立大学もできるし,実際取り組んでいますが,経営的に考えると,人口が少ない地域に私立大学が進出するというのはリスクがあると思います。そうすると,なかなか難しい。今,我が国で大きな問題は人口減少,特に地方の人口減少がすごく深刻な問題,その中で国立大学があるからこそ地域が持っている,そしてそこで産業が発展する,それが重要であるわけなので,地域の教育研究の拠点も国立大学の役割かなと。リカレント,国際化,産学連携,ここは,現状を見ても,私学のほうが進んでいるかもしれない。そこも踏まえてですけども,基本的には,今挙げた1から4までは,少なくとも国立大学の役割と思います。
上山委員がおっしゃったように,国立大学を税金,公的な財源を使うことの意義から考えますと,法人化された国立大学にとって国はある意味スポンサーになったと私は考えています。一般論としてスポンサーが意見を言うことは当然あるわけで,それに国立大学もある程度応えてきているのが現状だと思います。そういう面では,基礎的分野を含め我が国の発展に必要な分野について,ある程度教育,研究を,文科省がリードできる。逆に言うと,そういう分野を国立大学が担っていくということも大切なのかなとも思っています。
結局,自分自身で結論はまだ分からないんですけども,自分の中ではどうかなと思いながらも,民でできないことは官で,という考え方があるのかなという印象を持っています。以上です。
【相澤座長】官と民との切り分けについて,観点の違う御意見が出てきて,大変いい状況ではないかと思います。観点の違う意見をフェアに議論して,国立大学としてはどういう位置づけになるのかという議論を展開したいと思います。
それでは,そのほかの御意見いかがでしょうか。どうぞ。
【森田座長代理】よろしいですか。それでは,一言だけ言わせていただきます。私自身は法人化の時に大学の仕組みをつくることに関わりましたが,このことにつきましてはいろいろ議論があったところで,それなりの思いはございますけれども,それについて余計なことは言わないようにいたします。
ただし,設立のときの話を少ししますと,先ほどもお話がございましたように,要するに,国立大学の側としては口を出すな,金は出してくれというのが一番の要望であったわけですが,それは現実には難しいというので,金の方はともかく,口を出さない,つまり大学がより自由に活動できるようにしようとしたわけです。これは当時いろいろと議論がありましたけれども,そうした形で,新しい研究,あるいは新しい教育もそうですが,新しい分野に国立大学として取り組むことができるというのは,それまでの法律でがんじがらめになっている状態よりは,はるかに期待が持てるということだったと思います。
そして,運営費交付金の話が出てきて,それが国からの交付金,公金の支出ですが,それが少ないという議論が今でも出ているようですが,あのときは,基本的にそちらを減らす代わりに,競争的資金でもってカバーをしていく。総額で増えているのか,減っているのかどうか,そこは私はよく分かりませんけれども,いずれにしましても,大学の努力によって資金を獲得するという仕組みとセットで法人化が考えられていたことは申し上げておきたいと思います。
そのときに,当然ですが,競争ですので,努力して勝つところと,そうではないところが出てくるわけでして,そうではないところがどうなるかということについては,正直申し上げて,あまり皆さん考えず,みんな勝つとは言いませんけれども,皆さん生き残れるような形での国の政策というか手当がなされるのは当然であろうという認識があったと思っております。そこで問題になりましたのは,当然ですけれども,競争するときの初期条件が大学間でかなり違うではないかということです。今でもAからIまでカテゴリーが分けられておりますけれども,それらが同じ条件で競争するというのは幾ら何でも問題ではないかという議論がありました。それは,それぞれのところでそれぞれのやり方であるとか,競争的資金の組み方によって,いろいろ対応ができるのではないかという議論をしたことを思い出しました。
もう一つ言いますと,そうした形で国立大学が自ら,競争的資金だけではありませんけれども,ほかの寄附だとか研究費も含めてですが,自前で資金を獲得して,そして運営できるようになってくるならば,将来的には独立行政法人のスキームを借用したのかもしれませんけれども,私立の大学になるということも考えられるのではないかと。これは私立の大学も完全に自前でやるのではなくて,当然私学助成も含めた公的な資金も入りますけれども,設置運営の形態については,国立と私立と分けるという,その考え方をなくしていくというような議論もちらっとですが,あったと記憶しております。ただ,そこで出ましたのは国大協も含めてですけれども,国立大学は違うんだという強い主張でして,最終的にタイムリミットもあったので,現在の国立大学法人のような形になりました。
なぜ,そうではなくて,大学一般ではなく国立大学だけ違う形にするのかというときの説明というのは,いまだもって私も十分に理解できないのですが,国立大学の特殊性という言い方が随分されました。何が特殊であるかというのは,かなり議論した記憶がございますし,今日もそれに,そのとき聞いたような御意見も出ておりましたけれども,これはこうだからというのはなかなか言えないところです。後から考えれば当然ですけれども,先ほどもございましたように,最初に巨額の国家としての投資を必要とする時代には公費でつくって,その後,それを民営化していくというのはいろいろなケースがあったと思います。当初、国立大学もそういう形でできましたし,先ほどから大学の歴史の話がありましたけれども,戦後になって,高度成長が始まり,1960年代以降だと思いますけれども,急に経済の成長に伴って,ディプロマに対する需要が社会的にすごく高まってきました。しかし,国立大学だけではとても高等教育を供給できなくなったために,私学が参入して,それなりに大学の経営も非常にうまくいった。そういう環境があったと思います。そのときに,当然ですけどもコストのかかる理系ではなくて,文系の方が,私学に多くなった。これはある意味で,今でも続いていると思います。
そのような経緯もあって,私学と国立というのがそれとなく違っていましたし,法人化でかなりその差がなくなるような措置が取られたと思いますけれども,基本的にその段階で,それ以上踏み込んで大学の仕組みを変えるということまで議論できなかったし,時間的な余裕もなかったということです。そこで,国立大学法人という形で最終的に決まったということになっておりますけれども,特に私学の場合と大きく違いますのは,これは今日はほとんどそれについての御意見は出ておりませんが,ガバナンスの在り方というものがかなり違っていて,それが国立大学の経営の問題もそうですし,いろいろな形で違いが出てくるというところであると思っております。そのような経緯というものを踏まえて考えた場合に,これからどちらの方向に向かうのか,柳川先生もおっしゃいましたし,民がいいのか,官がいいのかという議論もありましたけれども,これからの在り方について考えたときには,一つは何といっても18歳人口が減ってきているということでして,確かに留学生であるとかリカレント教育も重要ですけれども,それで,今までの大学の,全部の大学の,大学自体の経営もそうですけども,研究,教育の量とクオリティーを維持できるのかどうか,その辺りはしっかりと見ていく必要があると思っております。
もう一つ,オンライン教育の話が出ましたけれども,これは別なところで議論したのですが,これは特にコロナ禍によりまして画期的な,といいましょうか,大きな転換が起こったと思っております。先ほど完全にオンラインだけの大学の話もございましたけれども,今の大学教育で問題になりますのは入学試験であって,18歳までの後半の高校時代のかなりの時間を大学入試にかけて,それが,今の共通試験にしてもそうですが,0.1点で入れる,入れないと,そういう人生を大学を志望する若い人たちに強いているわけです。それはなぜかといいますと,定員という枠があるからだろうと。なぜ定員があるかといったら,もちろん実験系とか実習系は当然かもしれませんが,施設のキャパシティによる制約があるのではないか。それがなくなったときに,それほどリジッドに定員というものを考えなくてよくなれば,入試の在り方も変わってくるのではないか。ただし,その場合には入学後の教育がしっかりとできるかどうかということが問題になってくるのではないか。
聞いているところでは,完全にオンラインでやる大学の場合にももちろん定員というのはありますが,その辺についてはフレキシブルに考えていく。これ自体が,柳川先生がおっしゃるところとかなり共通しているのではないかと思いますが,大学という枠そのものがかなり変わってきている。その中で,国立,私立という区別を,どういう理由でどこまで維持していくのかというのは,これからかなり大きな問題になると思っています。
法人化のときの話だけでないことをしゃべってしまいまして,申し訳ありません。
【相澤座長】ありがとうございました。川合委員,どうぞ。
【川合委員】すいません,最後にどうしても一言言いたくなってしまいました。国立大学のミッションは何かという,哲学的に白地から話すのもいいんですけど,現実として,この国の研究力の大半は国立大学の一部の大学が担っているという現実があります。50年,60年先に何するかという議論をするならともかく,この時点で,急に主役と脇役を交代,すいません,研究成果をたくさん出しているという意味での主役の大学が,急に私学とリプレイスできるわけはないので,研究力という意味では国立大学が主役であることは,我が国に関しては変わらないと思います。最初コメントでは,大学を取り巻く環境の変化,本日の話題の1ポツのところだけを申し上げました。研究力が大学の機能強化の主役であるとすれば,その議論は大事です。そ子では全ての大学が同じレベルで研究をする前提でないほうが現実的だろうとは思いますが,学生目線で見た時,教育を受ける人が,研究力を高める大学に仮に行かなかったとしても,ユニバーシティーとしての教育がちゃんと授けられる。変な言い方ですけれど,部分集合的な教育ではなくて,全体包括できな意味での大学教育が受けられる環境を整えていることは,国立大学にとっては大事なミッションだと思います。
一大学で全てを担うことができなくても,国立大学のシステムとして,教育の一定水準を保障することは今後の国立大学の機能として考えるべきではないかと思います。研究力に関しては個別論が成り立つとは思いますが,教育に関しては,システムとしての国立大学の在り方は議論しておくべきだと思います。
研究力に関してさらに付け加えますれば,自分の所属しております大学共同利用機関法人の宣伝を少しさせていただきます。これは日本独特のシステムで,分野の最先端研究を先導するシステムであると同時に,全体の底上げ底支えをする上でも有益なシステムかと思います。さっきもどなたかがお話ししてくださいましたけど,研究の機能強化として特出しで考えていただけるといいと思います。ただ,教育に関しては,国立大学全体としてシステムとして教育の質を保障する新しい方針が入ってくるべきだと思います。
【相澤座長】ありがとうございました。皆様からたくさんの御意見いただきました。そろそろ時間にもなってまいりましたので,最後に私も二,三コメントを出しておきたいと思います。
今日,資料2の1ポツのところについて,主に議論を展開していただきました。今,川合委員が少し先のことだということなんですが,これは実は,今直面している問題で,これを何とか解決していかなければいけないというところが浮き出てくるように,1ポツのところをまとめたいというのが座長としての考え方です。
その点について,実私は,この20年,つまり法人化されたタイムスケールの中で大きな時代転換があったと認識しております。その一つは,高等教育のグローバル化なんです。これは先ほど来,1990年代からのいろいろな文部科学省の教育に関する施策は大きく変わってきているんです。これは,基本的には規制緩和をどんどんしてきております。その頃までは大学への進学率,これを向上させるということが大きな目標になっておりました。これを高等教育のユニバーサル化と当時は読んでいたわけです。それが日本は,世界の中ではトップではないけれども,50%台をかなり早くからクリアしておりまして,現在もそこの辺りに来ているわけです。ユニバーサル化の点では,等しく日本の国民に教育の機会を与えるということで,機会均等というようなキーワードもたくさん使われたわけです。
そういう時代から,今日,資料の中に世界の留学生の数,これを示したところですけれども,この20年間で160万人程度の留学生の数が一挙に,2023年の時点で640万人になっているわけです。これは大変な変化でありまして,結局自分の国で高等教育を受けるということよりも,世界どこでも構わないから教育環境のいいところで教育を受けるという,これが高等教育の私はグローバル化だと思います。そうすると,日本は国立大学であれ,私立大学であれ,この大きな変化に対してどう取り組むか。この議論がないと,日本の大学の国際競争力を強めるとかということの根拠なんですけれども,これは前回にも御指摘ありましたけれども,日本の国立大学は,日本の国民を育成するというだけの目的ではなく,世界の優れた学生を日本に引きつけて,そして日本から輩出して,そして,これは結局,いろいろな形で日本の国力の強みになっていくと考える。
このような立場で考えていくと,グローバル対応というのは,先ほど柳川委員がオープンになるべきだと。それから国際的に開くべきだと,そういうようなことに通じることです。ですから,これが時代変化として,ここで上山委員が言われる転換点を迎えたという形で大きな議論の柱になるんだろうと思います。
2番目はデジタル時代になったということです。デジタル時代における大学の在り方については,議論を深める必要があろうと考えます。今までの延長だけではなく,デジタル時代によって,AIだけが今,大きな関心事になっていますが,教育のメソドロジーでの問題だけではなく,あらゆるところにデジタル時代が新たな体制と立ち向かわなければいけないとか,いろいろなことが出てきているわけです。そういう意味で,デジタル時代における大学の在り方,これはいろいろあると思うんです。そこのところに大きな課題も出てくるので,それを公的投資を含めて強化するとか,そういうような議論が展開されるべきではないかなというところであります。
先ほどのオンラインの大学というのも,デジタル時代だからこそ,こういうことが出てくるということもありますし,それから,デジタル時代の研究基盤は大きく変わってきました。さらに研究・教育基盤をサポートする図書館の仕組み,ここにも大きな変革が求められています。そういったもろもろのことを議論する必要があると思われます。
最後に3番目,これは,評価の在り方を見直すべきではないかということであります。本来評価というのは,機能化なり,あるいは目的達成への加速化とか,何かそういう目標とするところにどう到達するかということの基盤にきっちりと作用するような形でされるべきなんですが,今,具体的に,国立大学法人について,中期目標,中期計画を設定し,そしてKPIで評価する。これは法人化のときにKPIで評価するという仕組みはなかったと思うんです。今,それが,KPIが独立的に動いてきて,しかも非常に問題なのは,運営費交付金の再配分のところの評価基準に使われてきた。このこと自体はここで見直しておかないと,評価がそれぞれの大学の萎縮化に結びついているのではという問題意識を持っております。
以上3点,今後の課題として,私として指摘をしておきたいところであります。
それでは,時間も参りましたので,本日のところはこれで終了させていただきます。もう一度,次の12月24日に会議がございますので,ここで本日のように資料2,これをいろいろと再編して,ここでまた御議論いただくような形にしていきたいと思っております。
それでは,事務局から,今後のことについて,よろしくお願いいたします。
【春田国立大学法人支援課課長補佐】今後の検討会の開催についてですけれども,第5回の会議については,12月24日,16時から18時を予定しております。
以上でございます。
【相澤座長】本日はユーチューブのほうのトラブルで,今回の議論の展開を録画で皆様に公開するということで,公開するということの原則は崩れておりませんので,御了承ください。
それでは,これで本日の検討会を終了させていただきます。どうもありがとうございました。
―― 了 ――
高等教育局国立大学法人支援課