令和6年11月1日(金曜日)13時00分~15時00分
ハイブリッド(対面・Web)開催 ※傍聴はWebのみ
国立大学法人等の機能強化に向けた検討会(第4回)
令和6年11月1日
【相澤座長】それでは,定刻となりましたので,ただいまより第4回国立大学法人等の機能強化に向けた検討会を開催いたします。
本日の検討会も対面,オンラインの併用により公開で開催しております。
それでは,本日の議事等について,事務局から説明をお願いいたします。
【春田国立大学法人支援課課長補佐】事務局でございます。本日の議事及び配付資料につきましては,次第のとおりでございます。過不足等ございましたら,事務局までお申しつけください。
また,本日でございますけれども,マイクを各所に配置しておりますので,発言される際にはオンにしたままで,終わりましたらオフにしていただくようお願いいたします。
以上でございます。
【相澤座長】ありがとうございました。
議事に入る前に,資料1について,これまでの会議における主な御意見をまとめておりますので,事務局より説明をお願いいたします。
【北野国立大学法人支援課企画官】それでは,資料1を御覧いただければと思います。前回,主に研究につきまして御議論いただきましたところでございますけれども,その際の意見につきまして,主に6ページ,7ページに追加をさせていただいておりますので,かいつまんで説明をさせていただきます。
6ページ,研究力の向上ということで,まず1つ目でございますけれども,多様で厚みのある研究大学群の形成につきましてどのように進めていくかということで議論があったと承知をしております。裾野の広い大学間連携ネットワークの構築が必要という御意見もございましたし,そこに大学だけではなくて,国立研究開発法人などの研究機関も含めて高度な研究ネットワークを強化することが必要ではないかという御意見がございました。
また,人材の流動性や多動性の確保,また研究の評価につきまして,社会課題解決やコミュニティへの貢献なども評価の観点に含めるべきではないかという御意見がございました。
また,トップだけではなくて,裾野の在り方の議論が必要だという意見,現在の大学の教員,教育も研究も全て担っているわけでございますけれども,全ての先生がオールマイティにこなすというわけではなくて,分業化の意識も必要だという御意見がございました。
7ページでございますけれども,共同利用・共同研究体制の強化についてでございます。現状の支援では,共同利用・共同研究拠点につきまして,新しく研究成果を生み出すところまで行けるか難しさもあると。大学共同利用機関法人でございますとか,共同利用・共同研究拠点など,こういったところを結びつけていくことが必要ではないかという御意見がございました。
また,それぞれの機関における役割の明確化についての御意見もございました。
また,研究を支援する人材,こちら大学全体でも減っているという御意見がございましたけれども,こういったところの育成につきましても,共同利用・共同研究機関におきまして果たすべき役割があるのではないかという御意見がございました。
また,丸3,研究人材の養成・確保,頭脳循環の促進のところでございますけれども,研究人材の確保のためには安定したポストの確保が必要ではないか,また,成長産業への高度人材の供給やアカデミアの人材確保を両立することが必要との御意見があったところでございます。
また,先ほどと少し重複いたしますけれども,大学共同利用機関におきまして,人材育成の観点から果たすべき役割があるのではないかという御意見があったところでございます。
また,研究費につきましては,科研費などの自由になる研究費,これの充実が必要ではないかという御意見,また,公的な支援につきましても,応用研究だけではなくて,基礎研究などへの研究の支援が一層重要であるというような御意見があったところでございます。
簡単でございますけれど,以上でございます。
【相澤座長】ありがとうございました。
それでは,議事に入りたいと思います。本日は,国立大学法人等の教育関係の現状について議論を進めていただきたいと思います。
まずは,資料2について,文部科学省から説明をお願いいたします。
【石橋大学教育・入試課長】失礼いたします。大学教育・入試課長でございます。資料の2に基づいて御説明をさせていただきたいと思います。
今,座長からいただきましたように,今回は国立大学の教育の状況について御議論いただきたく思っております。1ページめくっていただきまして,目次を御覧いただければと思いますけれども,資料構成としては,まず,社会需要の変化の状況を御説明した上で,教育における,これまではインプット改革が基本でございましたけれども,その状況,それから国際化の状況,博士人材の育成と支援の状況,社会人,リカレント教育の状況ということを御説明させていただければと思っております。
では,3ページ目を御覧いただければと思います。3ページ目でございますけれども,2040年以降に求められる人材像ということで,これは中央教育審議会を中心に議論が進められてきているところでございますが,まず,2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)においては,ここに書かれておりますように,基礎的で普遍的な知識・理解と汎用的な技能を持ち,それを活用でき,ジレンマを克服することも含めたコミュニケーション能力を持ち,自律的に責任ある行動を取れる人材ということが示されております。
また,第4期教育振興基本計画におきましては,これは初等中等教育から高等教育まで幅広い観点からの人材育成というふうになりますけれども,持続可能な社会のつくり手になることを目指すということ,それから,2つ目の丸ですが,キーワードとしては,主体性,リーダーシップ等々,ここに書かれているようなことが資質・能力を備えた人材として期待されているというところでございます。
4ページ目に関しましては,これは経済産業省がおまとめになりました未来人材ビジョンから,企業側のいろんな観点から整理されたものになりますけれども,仕事に必要な能力等の需要変化予測ということで,2015年と2050年を比べていただきますと,問題発見力であったり,革新性,的確な決定,そういう,さきに申し上げた中教審でも目指されているような人材のスキル,それから能力ということが言われてきていて,こういうことが大切にされてきているという状況でございます。
めくっていただきまして,5ページ目でございますけれども,じゃあ,労働市場はどう変わっていくのかというところでございまして,まず,米国における職業別就職者シェアの変化と日本のが左,右で書かれておりますけれども,やはり高スキル人材というところが必要になってくるというところでございます。一方で,アメリカよりも日本のほうがそこの顕著な動きというのはまだ出ていないのかなというところでございます。
6ページ以降は,産業界のほうが何を考えているのかというところを少し資料として出させていただきましたので,また御参考に見ていただければと思います。
次に,10ページ目を御覧いただければと思います。国立大学法人化以降の教育改善に関する答申等については,まず,平成16年に国立大学の法人化がございまして,その翌年,高等教育の将来像(答申)が出て,また,先ほど申し上げましたが,グランドデザイン(答申)が出るということで,教育に関しましては,教育課程の改善や出口管理の強化というところから文理横断,そして学修の幅を広げる,学修成果の可視化というところがキーワードとして進められてきたところでございます。
めくっていただきまして,12ページ目を御覧いただければと思いますけれども,これは手法,インプットのところではございますけれども,例えば国立大学におきましては,能動的な学修,アクティブ・ラーニングを取り入れた授業を実際に行っているというところは100%に達しているところでございますし,公立,私学に比べますと,能動的学修を取り入れた授業科目の増加を図っているという状況も見てとれるかと思います。
それから,次のページ,13ページ目を御覧いただければと思いますが,これも手法のところにはなりますけれども,例えばナンバリングを実施しているというのが左下にございますが,この割合。それから,その横の履修系統図を活用している。これも非常に高い割合で国立大学は改善を進めているという状況でございます。
また,14ページでございますが,学生さんたちが学修してもらうためには,シラバスにおいて授業期間を通して課される課題であったりとか,準備学修に関する具体的な指示が出ているかということが重要でございますけれども,これも国立大学は高いレベルで改善を進めていただいているという状況でございます。また,文理横断・文理融合教育についても進んでいるという状況でございます。
次ですけれども,15ページを御覧いただければと思います。やはり手法は手法で進めてきていただいているところではございますが,人材を育む大学の機能強化という観点におきましては,文部科学省のほうで,ここに少し小さな字で恐縮ですけれども,幾つかの視点を示しまして,この形で概算要求の方向性というのを示し,これを踏まえて各大学が取組を進めてきていただいているという状況でございます。
ここに書かれたデジタル,グリーン,STEAM,地方創生等々のキーワードは社会課題解決に結びつくものになっておりまして,このような方向性を踏まえて,16ページでございますけれども,近年の主な学部・研究科の改組の傾向ということでまとめさせていただいております。ここに書かれているように,分野横断型の学部の設置,データサイエンスに係る人材養成,地域の課題解決等々,このような形で組織の見直しが進んでいるという状況でございます。
それから,めくっていただきまして,17ページでございますけれども,大学・高専機能強化支援事業ということで,令和4年度の第2次補正予算額で3,002億円を準備いたしまして,成長分野を牽引する大学・高専の機能強化に向けた基金として,各大学・高専の取組を支援するということを進めさせていただいております。
また,18ページは,国立大学法人評価で,北海道大学をはじめ,より優れた取組をされているところというのを少し事例として出させていただいております。
次に,19ページを御覧いただければと思います。大学間での教育課程上の連携というのは,これから大学が強みを生かした教育を進めていく上でも大変重要かと思っておりまして,もちろん,原則としては各大学が科目を開設しなければならないわけですけれども,例えば単位互換,それから連携開設科目,そして共同教育課程ということで,連携のレベルが深まる形で各大学で連携いただけるような制度を準備しているところでございます。
例えば20ページでは,連携開設科目を活用した取組ということで,大学等連携推進法人を設置していただくというところを土台にしながら,例えば山梨大学では,山梨県立大学と教養教育分野を中心に連携開設科目を実施しているということで,令和5年度末時点では153科目を開講しているというような状況でございます。
また,山口大学は,山口大学,山口県立大学,山口学芸大学と国公私を通じた連携推進法人をつくっておりまして,ここではそんなに科目がたくさんということではないんですけれども,例えば地域学・DX概論などで試行実施が進んでいるという状況でございます。
21ページ以降は,大学間連携のもう一つの取組として,国内ジョイント・ディグリーと考えていただければと思いますが,共同教育課程を活用した取組ということで,22ページに実例を入れさせていただいておりますけれども,学士課程においては,全て国立大学のお取組ということになっております。
次に,国際化の状況でございます。24ページを御覧いただければと思います。日本の大学におきましては,ここにありますように,これは国公私全体ということになりますけれども,日本人の留学割合は3.1%,また外国人の留学生の在籍割合も5.5%と,なかなか数字が上がってこないという状況が進んでおります。
一方で,25ページを御覧いただきますと,留学というものが対人コミュニケーション能力やチャレンジ精神を身につけるために非常に有効な手段でございまして,多くの日本人学生が留学をするということは,それぞれの成長に大変有意義であるというふうに考えております。一方で,全ての学生が留学できるというわけではございませんので,内なる国際化も重要になってまいりまして,国内のキャンパスにおいて留学生の割合が増えていくということも重要でございますが,26ページ以降にその数字を入れておりますけれども,なかなか日本の数字はOECD平均と比べても,まだそれに達していないという状況でございます。
27ページは,他国の大学の留学生の割合,また,28ページは海外出身教員の割合ということを入れさせていただいております。
また,留学生が学んでいただくためには,29ページ,英語による授業,これは日本人にとっても重要なところでございますけども,英語よる授業の実施状況というのをデータとして入れさせていただいております。なかなか英語のみで学位を取れるというところについては,増えてはきておりますけれども,このような状況というふうになっております。
それから,国際のジョイント・ディグリーということを30ページに入れさせていただいておりまして,また,海外の大学と連携した教育課程の提供は31ページに入れさせていただいております。32ページがジョイント・ディグリーの開設状況というところで,32,33ページがその状況になっております。
この国際に関しましては,SGUの実績が1つ大きなものとして出ておりまして,34ページを御覧いただければと思いますけれども,スーパーグローバル大学創出支援事業に関しましては,10年間で,これは国公私でございますけれども,483億円を支援してきたという取組になっております。この中で外国人留学生の4割,日本人留学生の3割以上というのがこの37大学で占めているということでございますし,35ページ,次のページを御覧いただきますと,やはり外国語基準を満たす学生の割合も,このSGUの大学が牽引してきたという状況でございます。
一方で,36ページを御覧いただきますと,やはり大学の国際化を進める上で整えるべき体制,環境というのは,人的にも費用の面でもコストがかかりますので,また教員の負担の増加にもつながるというところがございますので,これらの負担をどういうふうにしていくかというのは課題となっているところでございます。
次に,博士人材の育成と支援の状況ということで,38ページをまず御覧いただければと思いますけれども,我が国の大学院在籍者の6割は国立大学に在籍しておりますので,国立大学の教育を語る上で,大学院教育は非常に大きなウエートを占めるというふうに考えております。
次のページ,39ページでございますが,博士課程の入学者の推移というのは少し低下傾向にあるというところでございまして,その後,ちょっと飛ばしますけれども,42ページを御覧いただければと思いますが,我が国における修士号・博士号の取得者数というのは,海外と比べても,なかなかまだ水準が高いというふうに言える状況にはないというところでございます。
またちょっと飛ばしまして,44ページを御覧いただければと思いますが,博士課程修了後の分野別進路というところで,ほかの課程,学士・修士と比べますと,就職者のうち,専門的・技術的職業の割合はどの分野においても高いという傾向がございますが,その他というところもございまして,なかなか完全なマッチングができているという状況にはまだないというところも言えるのかなというふうに思っております。
一方で,次の傾向としましては,45ページを御覧いただければと思いますけれども,大学発ベンチャーにおける経営人材では博士経歴がある割合が高いというデータも出てきておりまして,これからこのようなところでの博士の活躍というのは見込まれていくのかなというふうに思っております。
同様に46ページにおいても,大学発ベンチャーは博士号取得者を採用したい役職があるというのは,5割以上の方に御回答いただいているという状況でございます。
次に,47ページ,48ページで支援の状況ということを御説明しております。47ページが学部から大学院,博士課程までの経済的な支援に関する全体像でございますけれども,48ページに博士後期課程学生支援の概況と目標ということを入れさせていただいておりますが,目標といたしましては,ストレートで進学する学生の7割をカバーして支援するということを目標に進めているというところでございます。
また,49ページ,50ページでございますが,大学院教育の改善につきましては,博士課程教育リーディングプログラムを平成23年から令和元年度,それからその後,卓越大学院プログラムということを進めながら大学院教育の充実を進めてきたところでございます。
また,51ページでございますが,博士人材活躍プラン~博士をとろう~ということを今年の3月26日にまとめておりまして,この方向で産業界ともしっかりと議論をしながら,博士人材の活躍を目指していきたいというふうに考えております。
では最後に,社会人,リカレントの状況でございます。53ページを御覧いただければと思います。教育振興基本計画のところを引いておりますけれども,人生100年時代というところで,同一年齢での単線的な学びや進路選択を前提とした人生のモデルから,一人一人の学ぶ時期や進路が複線化する人生のマルチステージモデルへと転換することが予測されておりまして,社会人の学び直し(リカレント)をはじめとする生涯学習の必要性が高まっているというところでございます。
また,一番最後でございますが,リカレント教育を通じた高度専門人材の育成ということで,リカレント教育を通じて複雑化・高度化する企業課題や産業ニーズに対応して自らの知識や技能をアップデートできる高度専門人材を育成していくというリスキリング的な視点も重要であるということになっております。なので,これまでの生涯学習と言ってきたところから,その位置づけ,意味合いというのが大きく変わってきているというのが現状と言えると思っております。
54ページを御覧いただきますと,リカレント教育の意義というのは,労働生産性と相関関係にあるということがここでは明らかかなというふうに思っておりまして,成人学習の参加率というのを上げていくということは,国にとっても非常に重要かというふうに思っています。
他方,55ページを御覧いただきますと,企業は学ぶ機会を与えず,個人も学ばない傾向が強いというのが我が国の状況でございまして,これは大学だけの課題ではないんですけども,個人,大学,そして企業というところが三位一体となって改革を進めていく必要があるかなというふうに考えております。
その後押しとするためには,少し飛ばしますけれども,59ページを御覧いただきますと,職業実践力育成プログラムの認定制度などを使いまして,厚生労働省の教育訓練給付金との連携なども進めておりますが,爆発的にリカレント教育が進んでいるという状況にはまだ至っていないという状況でございます。
文部科学省としては,60ページに支援の方策を設けまして,61ページを御覧いただければと思いますけれども,東京大学,三重大学,静岡大学では,このような予算も活用しながらそれぞれリカレント教育を進めるということをやっていただいておりますけれども,規模を見ていただくと,そんなに大きな規模のものができているわけではないというのが状況でございます。
以上,状況でございまして,今日御議論いただきたい論点案を62ページと63ページでまとめさせていただきましたので,御説明させていただきます。最新の国立大学の取組や学生の成長が社会により伝わるよう教育についても改革が進んでおりますので,情報発信をすることが必要ではないか。そのときにどういう情報やデータの発信が有効と考えられるかということが1つ目でございます。
2つ目でございますが,AIの技術進歩など,今後想定される社会の変化はより大きなものとなりますために,学生が卒業後必要となる様々な能力や資質を養う教育を提供する観点から,国立大学,産業界,自治体,国はどういった取組を行っていくことが必要かということが2つ目でございます。
また,3つ目でございますけども,学生が多様で魅力的な教育プログラムに参画できるよう,大学間の連携の取組等のさらなる促進が必要ではないか。そのための取組はどういうことが必要かということでございます。
4点目でございますけれども,国境を越えた教育研究活動が拡大しているというような現状でございますので,我が国の高等教育の国際通用性,競争力をより一層向上させていくことが不可欠ではないかというふうに考えております。留学による教育効果は高く,SGUなど徹底した国際化に取り組む大学の体制整備の支援により一定の成果がございましたので,さらなる国際化,留学生モビリティの拡大に向けてどのような取組を行っていくことが必要かというのが4点目でございます。
次のページでございますが,5点目といたしまして,博士の人材が活躍するということがこの国のイノベーションの創出においても大変重要でございまして,博士に進学する学生の支援,大学院教育の改善,社会で活躍する博士人材の育成を図るためにどのような取組が必要かというのが5点目でございます。
6点目は,産業界等のニーズを踏まえた国立大学にしかできない教育機会をいかに提供していくかということで,リカレント教育が魅力的かつ安定的なものとして自走するためどのような取組が必要かということが6点目でございます。
最後でございますが,このように教育をしっかりとやっていくとなりますと,必要となるリソースはそれなりの規模になるというふうに考えておりますので,どのような形でこのリソースを確保していくことが適切かということについても議論を深める必要があるのではないかということでございます。
説明は以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【相澤座長】ありがとうございました。
それでは,これから,ただいまの説明も踏まえた上で議論に移りたいと思います。御発言の方は名札を立てていただいて,それからウェブで参加していただいている委員の方は,挙手のボタンを押していただくと,こういう形で発言の御意思を示していただければと思います。
それでは,どなたからでも結構です。御発言をお願いいたします。いかがでしょうか。
それでは,樫谷委員,どうぞ。
【樫谷委員】御説明いただいて,こんなに大変なことをやらなきゃいけないのかということを一番に思いました。これやるのは大変なことですよね。物すごいリーダーシップと意識改革を十分しなきゃいけないし,体制も含めてやらないと,企業でもそうですけども,大学はもっと難しいのかなと。企業以上に難しいのかなというふうに思いまして,リーダーシップといっても,なかなかリーダーシップを取りにくい,非営利は特にそうなんですよね。環境にありますよね。
それから,物事を進めていくにはリーダーシップが必要なんだけど,そのためには皆さんの意識改革をしていかないと,恐らくこのようなことはできないというふうに思うんです。企業でも本当に意識改革があって,というのは,企業の場合はいろんな損益というか,もうけるかもうけないかがポイントなので,それをちゃんと見える化をして,そしてこれじゃ駄目だという意識改革があって初めて物事が進んでいくんですね。企業でも,倒産リスクがある企業にもかかわらず,やっぱりそういうことを見せることによってそうなるんです。
ところが,国立大学は特に,倒産リスクというのがないわけじゃないけれども,ほとんどないと。身分も安定しているという中でどうやって意識改革するんだと。これをやるにはそこをやらないと,すみません,非常に難しいことを言っているのかなというふうに私,直感的ですけど思いましたので,そういうふうに言わせていただきたいと思います。そのためには,国立大学といっても規模が相当違いますので,その規模で本当にやれるのかというところがあるのかと。そうなると,もっと決定的に,昨日でしたっけ,静岡大学と浜松医科大学の話が出ていましたけども,あれがいいのか悪いのか,ちょっと私も判断できかねますけれども,ああいうことももっとどんどんリーダーシップを持って進めていかないと,IT投資も含めて,人材も含めて,物すごい人が要るわけですよね。企業でも人手不足の中で,じゃあ,大学にそんな人を各校に1人ずつ置けるのかといったら,多分置けないと思うので,そういう観点で,どういうふうにやればこれが達成できるのかという観点で,つまり,リーダーシップを持っていただいて物事を実行していただかないと,考えていただけでは物事が進まないので,ぜひ考えるんじゃなくて,どうやったら実行できるかということについても御議論いただけるといいのかなと思います。すみません,素人の発言で申し訳ございません。
【相澤座長】それでは,まず,文科省のほうからレスポンスしていただければと思います。
【石橋大学教育・入試課長】ありがとうございます。中身とともにそういったものを実際どう動かしてしっかり進めていくかという,そういったガバナンスの観点も大事だと思いますので,おっしゃるように,そういった点も御議論いただければと思います。大学のガバナンスの観点でも,総長の,学長のリーダーシップ,プラスそれを支える役員ということを明確にした上で,ガバナンスコードの設定など様々に進めておりますけれども,それを加速化してやっていくにはどうかというところは,樫谷委員おっしゃるとおり,今の説明の進捗感のスピード感が足りないということになると,まだプッシュしないといけないんじゃないかと。少し規模感や必要な人材を含めて,恐らく統合だったり連携といった御指摘だったと思いますけれども,そういう観点もあると思いますので,そういった点もぜひ御議論いただき,我々もできるところから実行していきたいと思っております。
【樫谷委員】実は,私も文科省に長いこといろんな委員をさせていただいて,大学改革も含めて昔から言われているんですよね。1つも進んでないとは言いませんが,本当に遅いんですよね。今はもう,この前のある党の総裁選挙のときに言われましたけど,実行なんだと。どうやったら実行できるんだというところを考えていかないと,議論して考えていかないと,これ,恐らく皆さん,みんな一緒だと思うんですけど,みんながやらないと誰もできないというふうになりますので,どこからどう進めていくんだと。どういうことをやらないとこれができないのかということも,ぜひ物事を考えて,議論していただいて進めていただきたいと思います。
まず実行が大事だというのは本当に,これはどこの組織でも同じだと思いますしね。もちろん,考えないで実行だけしたらいけないんですけど,ここまで整理されているんだから,もうこれをどうやってやるんだという実行が大事なので,議論というのはもう終わっているんじゃないかと,正直な話。すみません,ここで言っちゃいけないんですけど,議論しなきゃいけないんですけど,議論よりまず実行というのが大事だと思う。ただ,実行できない環境にあるとしたら,それは実行できる環境をどうやってつくっていくか,あるいは組織の規模も含めてつくっていくかという議論をしていかないといけないかなというふうに思っております。
以上です。
【相澤座長】ありがとうございました。樫谷委員の御指摘になったことは,ただいまの説明を全部これからやることだと位置づけと、実行が困難だということをおっしゃっているのか,もう既に結果が出てますよという部分と,これからさらに強力に進めなければいけない,大きく分けるとそういう2つあるので、その仕分けをしっかりとしてスピーディに進めなさいということなのか、具体的におっしゃっていただくと,もう少し議論が進むのではないかと思います。
【樫谷委員】すみません,私も十分中身が分からずに発言しているので,とんでもない発言をしている可能性もありますので,そこは割り引いて聞いていただかなきゃいけないんですけれども,これを見ていまして,確かにいろんなものが進んでいることは事実ですけど,非常に遅いというのがまずあるんですよね。まず遅いと。やってないということじゃないです。やっているんだけど遅い。こんなんで,ほかの国はもっとスピードがあるよと。スピード競争でもあるわけですね。だから,もっと進めるためにどうすればいいんだというところが私には全く見えてこないので,確かにいろんな大学でやっていらっしゃることは認めます。何もやってないということは前々回か何か言ったことがありますけれども,そうではなくて,そういう言い方をしましたけど,やっていらっしゃることは事実だけど,決定的に遅いのではないかと。スピードに負けているんじゃないか。だから,あの評価が正しい,国際的な評価が本当にフェアなのかどうなのか,正しいのかどうか分かりませんが,だんだんだんだん落ちてきているというようなイメージがあって,そこはやっぱり,本当に国立大学の先生,皆さん立派な先生が特に多いので,そこは自覚を持って日本の国を支えているんだということの気持ちの中でやっていただかないといけないのかなと思いながら,静岡大学と浜松医科大学の中身はよく分かりませんけども,そうか,やっぱり統合駄目だったんだなと。統合の在り方の違いなのかも分かりませんけど,思いながらちょっとがっかりしてあの新聞を見ていました。
以上です。
【相澤座長】ありがとうございました。それでは,そのほかの御発言いかがでしょうか。平子委員,どうぞ。
【平子委員】ありがとうございます。今日は論点を挙げられていまして,全ての論点に応えられるかどうかわかりませんが,気になるのはやはりAI化ですね。毎日のように日進月歩に進化するAIの報道がありますが,今後AIの進化を無視した議論はできません。人間が,AIに使われる側になるのか使う側になるのかというのは大きな問題で,大学教育は,AIをしっかりと使いこなせる人材,あるいはAIに代替できない人材を育成していくことが,大きなポイントではないかと思っています。
その観点でこれから先の教育の在り方を考えていくと心配になるのが,これからの大学教員の人材不足です。少子化によって日本全体の若者が明らかに減ってくる中で,大学教員を目指す人たちがどれだけ増えてくるのかは非常に大きな問題です。大学教員は非常に多忙であると巷間言われています。研究に割く時間も教育に割く時間もなく,教育と研究以外に時間を割かなければならないという実態があります。いかに教育研究以外の仕事を効率化していくか,一部はAIによって効率化できると思います。そのようなことも考えていかないと,若者が目指したいと思う職業になるのかどうか,非常に心配です。
もう一つは,テニュア制度,雇用の不安定さです。テニュア制度によって雇用が非常に不安定なところも,若者にとってなかなか目指したいと思う職業になりにくいのではないか?そのような環境が予想される中でどのように教育の質を上げていくのかという問題です。
1つは,研究と教育,この2つは表裏一体だと思いますが,あえて人材を分けるという方法もあるかなと思います。教育と研究が対等な関係の中で教育の専門人材を作ることが必要で,場合によっては入試の運営にも関係するのかもしれませんが,そのような形で人件費を確保するという,教育と研究の人材を分けて運営費交付金の支給を考えたらいいのではないかと思います。
もう一つは,今日のテーマの中に挙がっている産業界との結びつきですが,8ページを御覧いただければと思うのですが,大学側の教員が求めるコンピテンスと,それから企業側が求めるコンピテンスが全く異なっています。この日本の実態が問題だと思っています。まず,企業と教員そして学生の求めるコンピテンスはある程度は一致したほうがいいのではないでしょうか。
コンピテンスがスキルなのか,能力なのか,あるいは資質を指すのかという問題もあります。スキルは確かに従来の教育方法でできるかもしれませんが,資質とか,能力は,一方通行型の教育では難しいと思います。ST比を上げ双方向型の教育で実践的な能力資質を高めていくことも教育の大きな役割だと思います。
実際に学生たちが資質とか能力を育成するために,キャンパスが必要なのかどうかということも議論しなければいけないのだろうと思います。
最後に,産業界との結びつきをお話しします。これから先の特に博士人材をどう活用していくのかという観点から申し上げます。大学の博士課程を目指す学生が所属大学と民間企業との合意のもと,博士研究のテーマを国に応募し,それが採用されれば国から補助金が出され,企業に雇用されると同時にPhD学生として大学院にも入学し,給与と学位の両方を受けることができるIndustrial PhDという仕組みがデンマークや欧州にあります。学生にとっては,大学と企業に半々ずつ時間を使って,最終的にはPhDの学位が与えられて,かつ給料は会社から出てくるというメリットがあります。最初から大規模には始めるのではなく,少しずつそのような制度を取り入れていってもいいのではないかと思いまして,紹介させていただきました。
以上でございます。
【相澤座長】ありがとうございました。文部科学省のほうから,まずレスポンスしていただくことはありますか。
【井上国立大学法人課長】ありがとうございます。AIの点については,論点にも出したように圧倒的に社会を変えていく要素なので,第1回目のときにも御意見いただいたように,大学が今のままの大学という形でいつまでいくのかですとか,本当に大学から主に新しい研究成果は出てきているけど,これから本当にそうなのかとか,すごく大きなスコープで考えなきゃいけない話であり,また,足元でも教育の在り方ですとか,あと今持っている,例えばキャンパスという話が出ましたけれども,そういう資産みたいなものもどれだけ持っていなきゃいけない,もしくは持っているのが適切かとか,そういった広いことを考える上で大事な視点だというふうに認識しておりまして,非常に重要な御指摘だったと思います。
あと,産業界の点も,前回,研究のところで生田課長からも紹介いただきましたけれども,樫谷先生にはトゥー・スローと言われるかもしれませんけれども,やはり出口をアカデミアだけじゃないところも意識した教育プログラムをつくるところに,それを条件にして我々も支援するというところが研究のほうでも始まっておりますし,今いただいたような新しいアイデアとかも少しずつ入れながらやっていければなというふうに思っております。
【石橋大学教育・入試課長】ありがとうございます。今,平子委員からおっしゃっていただいた大学教員の負担のところは御指摘のとおりかと思っておりまして,やはりURAとかアカデミックにもサポートできるような体制とか,そういうものをどうつくっていくのかということについては,これまでなかなか陣容が大学の中でも増やせない中で,教員と事務職というその2つの軸のみで動いてきたところがあったかと思うので,こういうふうにいろんな職種の方々が大学の中で活躍していただくことで,研究,教育により専念できるような仕組みをつくっていくのは,これは国立大学のみならず国公私全体で考えなきゃいけないのかなというふうに思っております。ありがとうございます。
【相澤座長】平子委員の御発言は,教員負担を回避するためというか,その解決策として教育と研究という主たる任務,これを切り分けるという考え方もあるのではないかということを提案された。そういうふうに理解してよろしいですね。そういうことを提案されたのは,これはなかなか議論に上がってこなかったのでは。URAはちょっと違うんですよね。教育と研究,それぞれに100%期待されると,これがなかなか難しい。AIも使ったりということでシステム改革をやることが必要であろうけれども,本来教員がやらなければというところにもそういう切り分けをするというのも1つの考えではないかという,そういうことですね。
【石橋大学教育・入試課長】ありがとうございます。そういう視点もこれまでも議論に多くいろんなところで出ておりまして,ただ,やはり大学の中で本当に全部切り分けられるのかというのは,それぞれの大学のお考えもあろうかというふうに思っています。そういう仕組みができないということではないというふうに思っていますけれども,また先生方,それぞれの研究者,教員の方々のライフステージの中で,教育に専念する時間,研究に専念するときというのもあってもいいのかもしれませんし,お一人お一人がその教育専任の教員となる,研究専任の教員となるということもあり得ると思っているんですが,それぞれの大学のミッションの中で我々が完全にこうだよ,ああだよと決めるというよりも,それぞれのミッションの中で可能ですので,何が一番いいかというのを一緒に議論する必要があるかなというふうに思っております。
【相澤座長】重要な御指摘であると思います。それから,企業と大学がコンピテンスという点でギャップがあるんじゃないかと。これも長い間の課題で,産業界ともいろいろと議論を重ねてきたところではないかと思います。ただ,時代が大きく変わっているので,この点についても改めて議論していくということで受け止めさせていただきます。
それから,最後にIndustrial PhDということですが,これは既にデンマークをモデルとして,国立大学法人の中でそれを実施しているケースもあります。その視点の検討も進んでいるということですが,改めてこれも1つの重要な論点の中に含めていただければと思います。
それでは,そのほか。上山委員。
【上山委員】すみません,今考えていることを発言させていただきます。主に3つあります。
1つは,改めてこの高等教育の全体像をこうやって拝見すると,文部科学省,特に旧文部の高等教育のカバレッジしている広さと,それから政策のターゲットについて,きちっと一つ一つ押さえておられるなということがよく分かって,その点では文科省の方向性に大変共感をいたします。
そういうことを申し上げた上でということで聞いてください。まず1つは,例えば,最初のところに書かれているグランドデザインというところで,例えば,普遍的な知識・理解と汎用的な技能を持ち,知識や技能を活用できてコミュニケーション能力がある。つまり,非常によくできた人間ということですよね。非常によくできた人間。何にでも対応できる人間ということじゃないですか。たくさんの技能やスキルも恐らくは持っているだろうと思われる人間ということですよね。この見方、日本企業の作り出す製品があまりにも機能が多過ぎて,ほとんど実は使えない。一般には使えない。もっと機能を絞っても大きな役割をする製品もあるのにという,それがゆえにマーケットが取れないという世界とちょっと似ているというのがまず1つ。
もう一つは,これを読んで改めて思うのは,私なんかはすごく反対しているんですけど,企業の方たちと議論をすると,昔はですよ,最近ちょっと変わってきたと思いますが,とにかく別に勉強は要らないと。地頭のいい人が欲しいんだと。教育に関しては企業に入ってからちゃんと訓練するので,とにかく汎用性の高い人間を出してくれたらいいんだというこういう議論が多かったです。一方で、そういう議論が企業の競争力を奪ってきたと私は思います。つまり,本当にグローバルな意味での競争力のあるような技能とは何かということをきちんと企業側,産業界側が把握することに失敗してきたんだろうなと基本的には思っています。そういうような人間の教育というか,人づくりの視点とちょっと似ていると思います。この書かれていることがですね。これが我が国における教育というもののグランドデザインであるならば,私たちがCSTIみたいなところでやっていることで求められているものと若干のずれがあるということだけ申し上げたいと思います。
例えば,リスキリングと言うならば,リスキリングで一体何のスキルはどの分野でどの程度の粒度で必要なのかということまで,果たして高等教育行政が書けるのかどうかということですね。これは非常に難しいけども,書く限りは,ポリシーメーカーとするとこれは非常に大きな責務を負うことになるわけですよね。そのようなことを霞が関の中でやることがいかに難しいかということは,改めて内閣府なんかが来てからすごく感じます。例えば,我々は基本計画なるものをつくっていますけれども,それは明らかに計画なるものを書いているわけですね。でも,しばしば確かにそうだなと思う批判があって,書かれていること,それに対する評価はいつもAs isだねという。To beの世界が見えない,見えにくいよねという批判です。例えばいろんな新しい基軸を出してポリシーをやっても,どこか国のつくる政策というのはAs isの世界なんですよね。今の状況をどうちょっと変えるかみたいな世界になってきて,それは政策から出てくる文書の力は弱くなりがちだなと思います。そういう批判に対してどういうふうに応えればいいのかというのは難しくて,いつも我々,僕なんかは胃が痛いんですよね。真摯にそれに対して向かっていこうと思うと,ここから出てくるのはどういう世界になるのかということまで言わないといけないので,それは非常にしんどい。しんどいけれども,多分,全体として求められることじゃないかなということが1点目です。
もう一つは,2番目は,こういう新しい,人づくり,教育という言葉でいいのか,私なんかはどちらかというと人づくりみたいな言葉を使いたいと思っているんですけれども,その人づくりなるもののプログラムが,現在の既存の大学のリソースや,あるいは現在の大学のカルチャーの中から自律的に生まれるものかどうかということですね。つまり,あるTo beの世界を描こうとすると,エッジの効いた人の話にどうしても行くんですけど,それを既存の大学なり既存の高等教育機関の持っているカルチャーやシステムや,あるいはカリキュラム形成能力ということだけで――これは重要なんですよ。ベースとしては非常に重要なんですけど ---- それだけで描くことができるのかと。逆に言うと,そこに,例えばSTEAM関係の人材がもっと必要だというミッションとか,様々な国が求めていくようなミッション性を織り込むことが,今の形ではどこで折り合いをつけようと高等局は考えておられるのかということです。
具体的に言って,私なども,例えばCSTIに来てから,AI戦略,バイオ戦略,あるいは量子戦略,いろんなものがあるんですけれども,いつも出てくるのは人がいないということです。先端技術に対する研究開発の投資に対してはある程度書けるんですけど,それを実際に担ってくれるような人が万人単位で足りないんですよ。ということは,そこの部分は一体誰が責務を持って人材づくりのことをやっていくのか。それはかなりジェネラルな教育の話だとなかなかすくい切れないものがあると感じます。これは別に技術開発だけじゃなくて,最近でも我々のところでよく問題になっているのは,国際標準化を取っていくということの重要性です。だけど,国際標準のルールづくりに関して背負ってくれるような人はどこにいるんでしょう。従来,企業に少しはいたんですけれども,でも企業の中だけでも解消できないようなところは,研究開発のところと一体になって標準化の戦略を担えるような人みたいなものが絶対に必要になってくるんですけど,そのような人材づくりも政府の中で頼りにするとなると、やっぱり高等教育なんだろうと思うんです。こういうミッション性のあるものと既存の教育機関のプログラムとどこでうまくバランスを取るのかということが,これがまず物すごく難しいなと思っているということ。これが2つ目です。
もう一つは,もしそういうことも含めて,ミッション性の高い人づくり戦略を描こうとすると,高等局の持っているような予算でいいのかということです。つまり,結構大きなお金が必要になるんじゃないかなと思います。いろいろなグローバル支援も含めて,SGUも,あるいは卓越大学院もすばらしい取組をされていますけど,それは既存のカルチャーの中でちょっと芽が出てるなみたいなところに応援するためのお金を出してあげるということだったですね。でも,もし2番目のところで申し上げたみたいな高い国のミッション性を担う人づくりの戦略を高等局が書こうと思えば,それは今の規模で大丈夫なんですか。それは相当大きな予算を動かさない限りできないんじゃないかな。ただ,そういうような国家投資を呼び込もうと思うと,それなりにやっぱりきちんとした分野戦略や分析や,それから先ほど申したみたいなTo beの世界につながる絵姿を描けるかどうか。それを描けないと国家予算を呼び込むことは難しいんだろうなと思います。私は,個人的にはそれをちゃんともっと呼び込むべきだと思いますけど,今書かれている文書だけで,財務当局を説得できるのだろうか?
ですから,今申し上げた3つの点は,高等教育が本来果たすべき極めて重要な役割を認識しながらも,その上で一体何ができるかということを最近すごく強く感じるようになって,ぜひ,私たちのところも高等局と一緒に議論をさせていただきたいと思っております。ありがとうございました。
【相澤座長】大変重要な指摘がありました。第1点,第2点というのは,今後の議論を続けていくところのポイントになるかと思いますが,第3点については,かなり重い指摘なので,ここでどうでしょうか,私の正面に座っておられる文部科学省の幹部の方から御発言いただければと思いますが。
【井上国立大学法人課長】すみません,次官と文科省,出席しておりますけど,局の者が,幹部が大変あれですけれども,非常に重い御指摘という座長のおっしゃるとおりでございますということと,あと上山委員からお話があったとおり,前回,研究ということでやりましたけれども,結局,高等教育と言ってしまうとすごく広い範囲になるわけですけれども,広い範囲としつつ,上山委員のおっしゃったようなところは,言わば最先端だったり,将来を見越してというところで,学校の世界だけではないというか,逆にどっちかというと,To beからのバックキャストみたいなところでこちらがどう一緒にやるかという話になるので,ここ,中ということだけでは当然なくて,広い政府の中の議論と一緒にやりながら,我々も局を超えてどうやってやっていくかということを本当に政府全体として考えていかなくてはいけないことだと思っておりますので,そういったところのよく認識を持ちなさいという,持つ必要があるねという御指摘を忘れないように,ちゃんとそれを持った上でやっていきたいと思いますけれども,少しここの中だけではないことだという認識と,あと一緒に議論しましょうといつもおっしゃっていただいていて,そこはそういう気持ちと,あと参画してやっていくということで考えております。
【相澤座長】ぜひ,今回の後,年内に2回,今年の課題を整理して,そして重要課題は何なのかという設定をしていきますので,そこでも今の議論を位置づけて,議論を進めたいと思います。
それでは,そのほかの。
【樫谷委員】ちょっとよろしいですか。我が国の教育予算はほかの国と比べて少ないとかと新聞記事なんかで見るんですが,本当に少ないんですか。としたら,どの程度少ないのか。何かデータあるんですかね。
【井上国立大学法人課長】今回のあれでは御用意していないですけれども,GDP比でどうかといったようなデータはあります。これは国によって税金の取り方なんかが大分違うので,ただ単に額を比較してどうのということは言えないかと思います。今手元にないですが,今日の会で御用意していないんですけど,もちろんあります。またお送りします。
【樫谷委員】少なかったら,何で少ないのか,どうやったら増えるか。どうやったら増えるかって難しいと思うんだけど。
【井上国立大学法人課長】そうですね。恐らく,まさに,それこそ北欧の高福祉じゃないですけど,大変税金をたくさん頂いて,その代わりサービスはあれするという考え方とか,あとは人口構造も変わってきておりますのであれですけれども,そういった全体の構造の中での比較という感じにはなるかと思います。
【樫谷委員】でも,教育がベースなので,それが少ないというのは信じられないのでね。ほかの予算も大事かも分からないけど,何で少ないのかというのは理解できないですね。
【相澤座長】これは,委員全員理解できないのではないかと思います。これも当然,今後の議論で重要になってまいります。
【井上国立大学法人課長】そうですね。もちろん,我々も基本的にしっかり獲得していくというところで毎年どこもやっておりますので,私が別に説明するのも変ですけれども,日本国内の財務構造としては,社会保障の費用が全体のかなりを占めていて,そこの自然増をどう抑えるかというのがまずあって,そこから教育費,防衛費,いろんな公共政策費等々をどうするかという,構造的にはそういうふうになっていて,ただ,未来への投資というところで,教育,研究,科学技術みたいなところは非常に重要だというので,かなりいろんな工夫をして頑張って増やしてきているというような,全体としてはそういう状況にございます。
そのことを受けて上山委員が先ほどのように,大きな予算を呼び込むためにはもっと考えなければいけないよという御指摘だという位置づけだと思います。
【樫谷委員】でも,教育というのは投資だと思うので,費用じゃないんです。投資なんですよ。どう投資するかというところが大事なんです。ぜひ戦略的に考えてもらいたと思います。
【松浦審議官】今の樫谷先生からの御指摘について,机上配布資料の中を見ますと,高等教育に対する公的財政支出対GDP比になりますけれども,これはOECD平均で言うと,おっしゃるようにこの率が低いと。これがいわゆるよく報道なんかで出されているものです。この原因としては,高等教育の費用負担を学生あるいは家計がやるのか,国を含めた公的機関がやるのかといったところの各国の政策の違いによってなっていると。他方,小中教育については,日本は義務教育,国庫負担しておりますから全く各国と遜色ないと。こういう各国の政策の違いがそういうデータとして現れているというふうに理解しております。
【相澤座長】それでは,福原委員、どうぞ。
【福原委員】既に議論が高まっているところで,もう少しブレイクダウンして恐縮ですけれども,従来,多々検討されてきたり提唱されてきた中でも,まだ時期がそぐわないのか,実現に向かっていない点においても,この少子高齢化の今だからこそ,これをもう一度再検討してみたり,実現に向けた取組をしてみてはどうかというようなところもあろうかと思います。それはここの国立大学に関する議論に限ったことではなく,設置形態を問わず,高等教育全体についても言えることかもしれませんけれども,一言申し上げておきたいと思います。
その1つは,教育内容が極めて多様化している中で,かつて9月入学も議論されたようなアカデミックカレンダーの柔軟化とか多様化,こういったようなものについて,国立大学がさらに率先して活用されることで日本の高等教育の国際化や,また教育内容のいろんな展開というものが期せるのではないかと思う次第であります。そのことは,現在,4月入学に向けたセンター試験の実施だとか,いろんな入学者選抜が行われております。また,その合否判定や入学手続きの時期等々をめぐって公立大学や私立大学では大変な問題も起こってきているわけでございまして,国立大学が3月31日まで手続きを締めきらないものだから,そこで100名以上入学定員を満たさなくなったと地方の私立大学から苦情が来まして,これをベースに補助金をカットしないでほしいという要望まで来たぐらいです。そういうことはともかく,4月の入学だけに向けて経営制度が整備されてきましたが,それを検討するのであれば,9月入学等も含めて考えていくべきではないか。
さらには,AO入試等の推進や,また企業側にとってみれば,通年採用といったようなものも増加してきていることから思いますと,高等教育,特に国立大学の学生はみんな社会で求めたいわけですから,そういう学生が入学時期,卒業時期も含めて4年間しっかりと勉強することが大事なのに,もう3年生の終わりぐらいには就職活動のほうに行ってしまって,就職に内定してしまったら,4年の時期というのは大学院に行く者にとってみても大変無駄な時間が生じてしまっているのではないか。そういう意味からすると,高等教育,大学教育,特に国立大学を筆頭に充実を期するために,もう一度アカデミックカレンダーの検討ということをしてみてもいいのではないかというのが1つ。
2つ目は,同じ教育の多様化ということでありますけれども,これはやはり社会連携で,研修とか実習とか実験というものとの間での,社会との間でのインターンシップだとか,エクスターンシップをもっと促進することが大切です。今もなされていますけども,そのことで先ほどから縷々御指摘もありましたように,企業側はどうしても具体的な雇用が目的で採用活動もしており,実務に向けた人材を必要とするんですけれども,大学はもっと普遍的で,さらに汎用的というか,そういう人材を育成しておりますので,そういったことが相互に理解し合える環境ができるのではないかというふうに思います。
リカレントというのは,そういう個別具体的な新しい時代に合った実践的職業訓練だけではなくて,そういう新しいことが今後まだ何か起こっても対応できるコンピテンスを持った資質を磨くということ。今までの職業に早く就いた人たちでも持っていて新しい時代に即応している人もたくさんいるんです。そういう人との違いは,やはりそういうコンピテンスというか,職業訓練だけにとどまらない普遍的な高等教育を受けているという,そういう人たちだと思うので,これを増やしていくべきだというふうに思っています。リカレントの在り方というものも問題。
3つ目に,教育の多様化ということで,先ほど来,問題提起もありましたけど,通信制課程というのは,これまでは通学課程の進学機会を補完するという意味合いのものでしかなかったのですが,高度情報通信社会における通信教育課程の在り方というのは,これは本格的に考えるべきだというのが大学設置学校法人審議会においても議論されていることで,そういう中で今,大規模な高度情報通信制の認可が定員を若干申請時とは減じながらも認可されようとしているわけであります。通信制の課程では,TAがいて,一教員の下にインストラクターがいて,アドバイザーもいて,そしてスクーリングもやって,レポートも書いて,レポートを何通かインストラクターの下でパスしないと,その主任教授の出した試験を受けられないという,言わばマスプロ教育で大学で授業の単位を取るよりも厳格な成績評価がなされているところが人文科学系,社会科学系であるんですね。ですから,卒業率が2割とか3割ということもある。
今こそ,この通信課程を見直し,通信制をどのように生かして,そして通信過程を活用,あるいはこれと融合したような新たな教育課程をつくっていく。特に国立大学の場合はST比率が比較的いいものですから,あまり通信制で補完するというものもないかもしれませんけれども,こういったものによって教育内容の多様化とかをしていく必要がある。これは人文科学系や社会科学系について言えることではないかというふうに思っています。せっかくいろんなアイデアが出てきているのに実現が遅いという意見もありましたけれども,そういう実現するための方法とか手段がせっかく提案されても,まだ実用されていないから遅く見えるというふうに思いますので,もう始まっているこういういろんな取組をもっと進める、進めていく必要があるのではないかというふうに思いました。
私も気がついた点だけでありますけれども,どちらかというと外部環境の点でございましたけれども,3点申し上げました。以上です。
【相澤座長】ありがとうございました。教育の多様性をいろいろな面から捉えていただきました。4月入学,9月入学,これも長い議論の歴史がありますけれども,ただいまの状況を御説明いただけますか。
【石橋大学教育・入試課長】ありがとうございます。実際,日本人の学生さんを対象としているところは4月入学が多いかと思いますが,各大学で留学生の受入れを含めて9月であったり,秋に入学するというような取組も進んでいるというところでございます。
福原委員がおっしゃってくださった入試のところは,国公私通じていろいろ議論していかなければならないというふうに思っておりますが,この18歳人口減の中でどういうふうな入試の在り方がいいのかというのは,今御指摘いただいた観点も含めた議論がこれから必要になってくるかなと思いますし,今,苦情が来ているという件については,すみません,私たちもちょっと確認をさせていただかなきゃいけないかなと思っておりますが,やはりきちんとしたマッチングの中で学生が学びたい大学に行けるようにという観点から見ていく必要があるかなというふうに思っております。
以上です。
【相澤座長】福原委員の御指摘は,教育の多様性という位置づけで,それでいろいろな御提案をいただきました。今後の論点の整理の中に位置づけさせていただきます。
そのほかいかがでしょうか。柳川委員,どうぞ。
【柳川委員】ありがとうございます。今のアカデミックカレンダーの話は,現実に教えている側としてはなかなか深刻な問題だと思っていまして,9月入学か4月入学かとかということよりは,就職活動と実際の教育の活動期間とが大分オーバーラップしてしまっているので,アブ蜂取らずになったり,場合によったら就職活動にかなり授業が浸食されているという事態があるので,ここは多分,現実的な課題なんだろうと思います。ここで直接議論する話ではないのかもしれませんけど,極端な私見を言えば,ギャップイヤー的に半年ぐらいカレンダーを止めてしまって,その期間に就職活動を集中的にやっていただくというほうが,学生あるいは企業,大学にとってもメリットがあるんじゃないかなというふうには思っております。すみません,ちょうど話が出たので。
本題なんですけれども,今日出していただいたような話って,すごくそれぞれみんな大きな大事な問題なんだと思います。そもそも高等教育の在り方というのをどういうふうに考えるのかというのは非常に大事で大きな話だと思うんですけれど,それを全てここでやることはできないし,国立大学で全て担うこともできないんだろうと思います。この会議自体が国立大学の,極端に言えば,今日は教育機能の強化ということであれば,その中で国立大学は何ができて何ができるように制度改正なり予算なりをつけるのかというところに少し焦点を絞らないと,なかなか,大きな話はしつつなんだと思うんですけど,話が先に進んでいかないのかなというふうに思っております。
それで,論点案に書いてあるようなこと,例えば国立大学の執行部,幹部の方に聞けば,大体そのとおりですと。私たち,こういうものを必死で目指していますと言うんだと思うんです。なので,そういう意味では,問題意識は共通で方向性が同じなんだけれども,なかなか進まない。先ほどお話があったようにスピードが遅いとすると,これがどういうことに起因するのかと。それを何かしらの国立大学法人というものを少し見直すことによってどこまで改善できるのかという視点が大事なのではないかというふうに思います。
その点でいくと,恐らく制度が邪魔しているような部分もあって少し制度改正が必要だと。あるいは,制度改正をすれば済むというものもあるのかもしれません。さっきのカレンダーのようなところもですね。ただ,それだけではなくて,やっぱり変えていくにはお金がかかるとかという意味で予算が必要ですし,あるいは,そもそもそういう制度の問題というよりは社会全体として,例えば入試をいきなり変えるのは,大学としてできたとしても社会が許容しないとか,そういう社会環境の問題もあるかもしれないので,少し個別の問題に関して何が進まない原因なのかと。それをどういう制度的なところで変えたら変わっていくのかということをもう少し深掘りして見せていただけるとやりようがあったり,あるいは先ほどの予算をつけて少し変えていくことができたりするのかなというふうに思います。
この中でいくと,そこの大学間連携の取組がさらなる促進が必要だというのは,具体的に,例えば大学がやろうとすればできることだと思うんですけど,これがさらなる促進というふうに書かれているんだとすると,何か促進できない理由がここにあるのか,それとも当事者が,極端に言うとやる気がないから促進されないのかの2つに関しては,何かもう少し教えていただければ教えていただきたいということです。それが一番ここの中では分かりやすい話なんですけど,いずれにしても,どういう複合課題なのかということをもう少し議論していく必要があるかなというふうに思っております。
それに加えて,これがだから国立大学法人の話ではあるんですけど,国立大学法人の既存の枠組みの中で当てはまらないんだとすると,もう少し全然違った枠組みだとか,違った制度の中で全く違った形の教育機関が必要なのかもしれないという議論も必要だと思うんです。先ほど出てきた通信制の大学だとかという話は,国立大学の枠組みでできなくはないわけですけど,もしかすると違った枠組みの中で考えて,そこと国立大学法人との補完関係をつくったほうが国立大学法人がうまくいくということもあるんだと思いますし,少しそういう制度論のところも含めて議論を深めていけるといいかなというふうに思っております。
以上でございます。
【相澤座長】ただいまの御指摘にすぐ対応していただけることがありましたら。あるいは,これこそ今後の検討課題であるというふうに位置づけるか,そこのところをちょっとお願いいたします。
【井上国立大学法人課長】ありがとうございます。柳川先生がおっしゃるように,解像度を多分上げていくということが必要だなというのはよく認識をいたしまして,お出しの仕方とかあれも工夫しなくてはいけないなと思いましたというところと,あと複合課題であることは間違いないことでございますということと,実は制度上,本当にネックになっているというところがなかなか実は,何でもできますみたいなところがあったりする中での話だからこそ余計,こうすればここができなかったのができたからできます,さあ,どうぞということにならないのでありまして,そういった意味で,少し原因分析も,制度ができていて何でできないのかというようなところをちょっと個別に深掘りした上でお出しさせていただいて御議論を深める形を何か工夫したいかなというふうに思いました。すみません。
【相澤座長】それでは,そのほか。服部委員、どうぞ。
【服部委員】ありがとうございます。服部ですけれども,今日いろいろ議論を聞いていまして,最初に樫谷委員,それから平子委員から,企業と大学の大きなギャップという話が出てきました。そのギャップがどこにあるのかなと考えると,例えばさっきのコンピテンスの話なんですが,企業側が言っておられるコンピテンスというのは,これだけ見ると,大学でやることかなと思うわけです。ここに書いてあるのは,コミュニケーションを図るとか,チームの一員として働くことができる,他人とうまく関係をつくることができる,母国語により,口語・筆記両方でコミュニケーションができる,です。
一方,大学が言っていることは,これは資料2の8ページですけども,抽象的な理論や概念を使って物事を考え,分析しまとめることができる,実際の状況に知識を適用することができる,解くべき問題を特定し解決することができる。ここにまとめていただいているスキルの話がメインになっています。そうすると,そもそも向いている方向が違っているように感じます。もちろん大学教育では上のことを目指しながらも,企業側が求めているような他人としっかり共同体制を取って働くことができるように,授業の中でもグループ討議とか,アクティブ・ラーニングをやっています。そこをなかなか企業の方に理解していただけていない。もし本当に大学の教育が,教員が言っていることではなくて,企業側が求めることだとしたら,大学教育を大きく考えなければいけない。極端に言ったら,専門なんか要らないことになります。そうではなくて,やはり大学は大学としての教育の役割というのを持っていて,それが大学が言っていることだとすると,企業側とのすり合わせがやっぱりまだうまくいっていない気はしています。
それから,大学って本当に何なんだろう,特に今,国立大学には何が求められているのか考えると色々あり,全てを大学だけで解決するのは無理で,例えばグローバル化を進めるために海外の留学生を招き入れたい。では,どうすればいいかと考える。英語でやる授業とか,教員も留学生に対応できるような教員を増やすとかテクニカルにはそれぞれの大学でできるのだけれども,我が国全体として日本に留学生が来たいと思うような,まずそういう大きなベースがあって,その上で各大学の取組がある,といったことを総合的に取り組まないと留学生はなかなか増えないと思います。
今日のテーマは教育ですけど,研究力が強くなる。各大学が研究力を高めることによって,大学院の留学生を増やしていく。さらに日本の教育力の高さが海外からしっかりと認められる。そして,日本全体がもっと活力が出てきて元気だということになれば,留学生も集まると思います。国のトータルの問題だと思います。そうではなく,留学生の受け入れだけを切り出されると大学としては少しつらいところです。では,大学の状況ですが,結構色々取り組んでいます。一方で進まないという話もありますが。もちろん大学もしっかり頑張らなければいけませんが,まず前提となる環境をつくるということも,ぜひお考えいただければと思います。
あと,リカレント教育も似たようなところがありまして,リカレント教育に対して,社会人が求めるものは本当に個人々々それぞれです。自分の職業上のスキルをもっと高めたいという場合には,かなりピンポイントでこれを知りたい,こういうことをしたいって思いが強いです。それを大学の今ある授業を使って提供するのは,無理です。無理というのは,通常の大学の授業は15コマで1つのストーリーが完結するようにできています。テーマのバックグラウンドも含めて, 15回のストーリーがある。一方,企業の方は,そんな15回も要らない。講義の一部のここだけが知りたいわけです。そうすると,極端に言うとリカレント教育は個々にオーダーメードしていくような話になってくる。
そうすると,マンパワーが足りない。これから18歳人口が減ってきて,正規の学生は減ってくる状況が来るわけです。そのときに,教員を削減するという話ではなくて,例えばリカレント教育をしっかり構築し教員をそのリソースとして活用していくとか,そういう方向性もあると思います。そういうことによって社会人の方にも,また大学にとってもメリットが出てくるように思います。
リカレント教育については,もう一言加えますと,リカレント教育を受講したとき,その履修証明を社会が認めてくれないと,受ける方のインセンティブにならないので,社会的認知度を上げることもすごく大切だと思っています。
合わせて学位,学士の重要性がはっきりしていなくて,卒業認定と学士授与の違いは何か,ということがあります。今,規則では,卒業したら学士を与えるということになっているわけですが,学士の意味は何かということです。卒業とは違うはずなんです,学士という学位を授与するわけなので。そうすると,学士を授与する意味,それから,修士,博士を授与することの意味づけを明確にすることが必要ではないかと思っています。履修証明に対する資格に準ずる形としての認知度が上がることにもつながることと思っていまして,そこについて御検討いただければと思います。
以上です。
【相澤座長】ありがとうございました。コンピテンスについては企業と大学の間のすり合わせが必要だと。これも長らく言われてきているところですので,ただいまいただいた御意見も含めて今後の課題として検討事項に挙げていきたいと思います。ただ,その中で環境づくりということで,その環境づくりはかなり幅広く社会を含んだところですので,これも課題であるということでの位置づけたいと思います。
それから,リカレント教育については,たくさんの問題点,それから今後の可能性のあるところを指摘されております。これも今後の議論の中で取り組んでいきたいと思います。
それでは,そのほかの御意見はいかがでしょうか。
【樫谷委員】今,服部先生が御発言いただきましたコンピテンスの8ページのお話ですけど,これ実は2012年なんですよね。今こういうことを言っている企業もないとは言えないけれども,もう世の中変わっているので,これはちょっと違うと思いますね。むしろ教員に近いようなことになりつつあるのではないか。完全に変わっているとは言いませんが,近くなると思います。確かに先生方と企業ともうちょっと議論していただいて,この企業で言っている1位から5位までのワンパターンのであれば,もう日本は滅びますよね,本当に。だから,むしろ教員の先生方が言ってらっしゃるようなことをやってもらわないと,企業にも変えてもらわなきゃいけないというのは本当に事実だと思いますので。ただ,これ違うと思うので,ちょっと古過ぎますよ。10年前の話なので,昭和とは言いませんが,平成の頃ですから,ぜひここは,できればもうちょい新しいのがあればよりいいですので。またこういうことをやっていただくのがいいかもしれませんね。すみません,余計なことですが。
【相澤座長】大変重要なことについて,勇気あるご発言というふうに受け取らせていただきます。ありがとうございました。
それでは,森田委員,どうぞ。
【森田座長代理】私には,法人化のときの経緯を話すようにと,最初にお話があったのですが,法人化のときに教育の制度についてはほとんど議論をした記憶はございません。そのときには大学では当然のことだという認識だと思いますし,特に国立大学だけ法人化によって教育の在り方が変わるというものではなかったと思いますので,その意味で言いますと発言を控えたほうがいいのかもしれません。けれども,今のお話を伺っておりまして,そしてまた私自身も40年ほど大学の教壇に立っていたものですから,一言,個人的な意見を言わせていただきたいと思います。
今日,この資料にございますように,大学の教育の在り方は随分変わってきていると思います。改善の努力がされてきたと思います。それによって実際に教育の質も高くなってきたと思いますけれども,ただ,こういう改革を進めてきたというのは,内在的に教育の質を高めてきたというところもありますけれども,もう一つは,外部環境の変化というのが非常に大きかったということが言えるのではないかと思います。それは何かといいますと,先ほどからお話に出ておりますように,明らかに18歳人口が減ってきている中で,どういう形で優秀な学生を自分たちの大学に集めていくかというような,ちょっと言い方がよくないのかもしれませんけれども,そうした形でできるだけ質の高い教育を提供していくという形での制度改革をしてきたと思います。
ただ,申し上げますと,そのときに質の高い教育を提供するためには,当然コストがかかるわけでして,そのコストをどういう形で負担をしていくかというのが大きな課題ではないかと思います。魅力的な名前をつけるとか,いろいろ工夫はあるんですけれども,実質的に1人の学生にかけるお金を増やすということになりますと,これは大変難しい話になると思います。それだけのものを国とか公的な資金を提供すべきであるという議論もありましたし,国立大学はそれをしやすいという環境にあったのかもしれません。ただ,実質的には財政的に非常に難しいということもあって,何が行われたかといいますと,先ほども出ましたけども,教員の負担がかなり増えました。このことは逆に言いますと,研究であるとか,教員としての本来と言っていいのか知りませんけれども,そうしたことに割くエフォートといいましょうか,時間が減ってきたとと思います。
それともう一つは,昨今もちょっと議論になっておりますけれども,そのコストを誰が負担するかというときに,当然,入学してくる学生さん,実際に誰が払うかは別ですが,学生に負担してもらうという考え方もあったかと思います。これはそれなりにじわじわと進んできたところだと思いますが,それが今問題になっているところであると思います。ただ,その結果,申し上げたいのは次の点になるんですけれども,いろいろな制度が改革されてまいりましたが,実質的にその教育を受けた人たちの能力といいますか,人材としての価値というものがどれくらい高まったのかということについて,きちんとした把握といいましょうか,評価というものがされていないのではないかというのが気になるところです。
かつてのように皆さん大学に入りたがるときには,教える側も優秀な学生を採って,あまり学生をケアしなくても自分たちで出ていった。そして出て行った後,就職することができたと思います。その後いろいろと仕組みが動いていったと思いますけれども,昨今,何が起こっているかといいますと,現在いろんな企業であるとか,そして公務員,特に国の幹部公務員について問題になっておりますけれども,優秀な人材が来なくなってきた。どこに行っても,企業も公務も人材不足であると。特に能力のある人材が不足しているという話が,というかそればかりなんですね。どうやったら優秀な人たちを集められるかということで,当然,待遇をよくして賃金を上げるということになるんですけれども,その後の問題は何かというと,転職が多い。リテンションが難しいということで,そうなってきますと,人材の考え方,雇用についての考え方が,先ほどから出ていると思いますけれども,かなり変わってきていると思います。これは完全に,これから出てくる特に優秀な学生さんにとっては,当然ですけれども,かつての労働力の買手市場から売手市場になってきている。
先日,某企業の方と話して聞いたのですが,海外にも展開している企業ですけれども,日本だと年収1,000万ぐらいで雇える人材,同じぐらいの能力を持った人材をアメリカで雇おうと思ったら,4倍人件費がかかると。全部が全部というわけではありませんが,ヨーロッパでも2.5倍かかる。それだけの年収を出さないと同じぐらいの能力の人材が来てくれなくなってきている。その差は何なんだということだと思いますし,これから,したがいまして,特に英語のできる学生さんは,日本で日本の企業に就職するのではなくて,海外で日本企業に就職したほうがはるかにいい待遇で採用される。そうした形での人材の流動性が非常に高まってきていると思います。
その中で,どういう形で大学で人材を育成していくのか,教育をしていくのかというのはこれから考えなければならないということで,私は専門ではありませんけれども,かつて幾つか海外の大学を調べたこともありますし,実際に行って話を聞いたこともあるんですけれども,そのとき彼らが言うには,要するに入学してから卒業するまでどれくらいその人に能力としての付加価値をつけることができるのか。それは客観的に数値で測定するのは難しいかもしれませんし,最終的にはそれは市場が判断するということになるんでしょうけれども,しかし,そういう観点で評価をしていってどれくらい付加価値をつけることができるのか。そういう視点でもって教育の仕組みというのを考えていく必要があるのではないかと思います。
したがって,社会に出た人は,自分の今の能力だとこれだけでしか自分は雇ってもらえない,労働者としての能力を売れないとしますと,より高く売るためには,もう一度大学で勉強する。そこでリカレントということが非常に,リスキリングにしても意味を持ってくるわけで,単にもう一度勉強するだけではなしに,そうした価値を高めるという発想がどれくらい教育の中に取り入れられていくのかと,そういうことになると思いますし,流動性が高まった場合に,その人の能力を証明する客観的な指標は何かというと,これが学位になるわけでして,博士を増やすと言われますが,どういう人材を博士としてどういうふうに考えていくのか。あまり売れる,買うという表現ばかりだと誤解を招くと困るんですが,やはりその人の能力が高く評価されてそれなりの待遇で職が得られると。そういう形で教育の仕組み全体を考えていく必要があるのではないかと考えているところです。
そうなりますと,当然のことですけれども,学生さんのほうも高い授業料を払って,アメリカの場合よく言われますけど,高い授業料を払うわけですけれども,その能力を身につけて社会に出た後,それを返しても十分な収入が得られるだけの能力というものが身につけられると,そういう考え方で仕組みができているのではないかと思います。日本の場合に,すぐにそのような状態に持っていくのは問題ですが,1つ申し上げたいのは,どれくらいそうした付加価値をつけたのか。制度をどうつくったかという話は随分あったし,あると思うんですけれども,アウトカムとしてどれくらいの能力という付加価値がつけられたのかということについての議論というのは日本で非常に少ないということと,当然それだけ高い報酬を払う以上,向こうの企業,日本でもそうあるべきだと思いますが,考えるのは生産性であって,1人当たりどれくらいの価値を生み出していくのか。そういう観点から,人材,教育も含めてですけれども,雇用の在り方というものを見ていく。その意味での意識転換といいますか,そういう認識を我が国は急速に持つ必要があるのではないかというのが昨今感じているところです。ちょっと脱線してしまいました。
【相澤座長】脱線どころか,核心をついた御指摘だと思います。これは教育のところで,この部分を相当深く議論を進めなければいけない点だと思います。この次の課題の中にきちっと位置づけていきたいと思います。
それでは,そのほかの御意見いかがでしょうか。平子委員,どうぞ。
【平子委員】ありがとうございます。今日,グローバルな話も出ておりますので,組織の多様性についてお話しさせていただきます。多様性と包摂性を意味するD&Iという言葉が最近DE&Iという言葉に置き換わったように感じています。真ん中のEはエクイティー公正,公平という意味です。スタートラインに格差がある場合は少し下駄を履かせようということですが,全員がマイノリティの組織だとそれが必要ありません。日本の大学は,歴史的に日本人学生が,あるいはジェンダーですと男性がマジョリティを占めていますが,総じて全員がマイノリティの大学はEを意識する必要がありません。立命館アジア太平洋大学がそれに該当し,マジョリティのない学生の構成ゆえに多様性が生きているというこの事例は日本の大学にとって参考になると思います。
これから先,特に東南アジアの学生は日本の大学に大きな期待を持っていると思いますが,海外の学生が日本の大学にぜひ来たいと思ってもらえるようなキャンパスづくりが必要になってくるのではないかと思います。
紹介だけですけど,以上でございます。
【相澤座長】大変重要な実例を御紹介いただきました。ありがとうございました。
私から,それでは二,三申し上げたいことがあります。文部科学省は発言をかなりセーブしながら説明しているのではないかと。それは何かというと各国立大学が文部科学省のプレッシャーの下に,コントロールされているのではないかとの批判に対する懸念です。
私が注目しているのは,文部科学省がこれをやった,こういう効果が出たという成果を説明するようになってきた変化です。
今日使われた資料の中で,スライドの34ページのものを出していただけますでしょうか。共有していただけますか。もう少し大きくなりません?それで結構です。これはスーパーグローバル大学創出支援事業,SGUと言われるプログラムで10年間480億円を資金投入してきた実績です。
文部科学省がこういうことが重要だよということを出して,各大学はそれぞれ独自の取組を提案し、競争資金の獲得という形で自主応募する。この仕組みが,私は社会に十分理解されていないのではないかと。つまり,これは各大学の自主的な大学改革を支援するものだと。ここに取り上げられた大学は,その大学が独自に考えた改革案を実施しているわけです。文部科学省がやることは,大きな方針を打ち出すことにとどめ、各大学の自主的な改革を喚起するということだと思います。この事業の重要なのは,世界に開いた教育環境をつくるというふうに理解したほうがよろしいのではないかと。日本の大学に最も欠けているのは,世界に開かれていないということなんですよね。留学生,留学生ということだけがどうも表に出てきてしまうんですが,そうではないんですよね。先ほど平子委員の説明にありました,学生が本来,多様な存在であるべきなんです。そこでここにダイアグラム方式でいろいろな成果がアイテムごとに示されています。例えば,事務職員の高度化ということで国際対応できるかどうか。こういうようなこととか,外国人の職員がどのぐらいいるのかとか,こういうところまで踏み込んでいます。決して留学生云々だけではない。
結局,今後の議論のところで,日本の教育機能をどう強化していくかというときに,1つ重要なのは,やはり世界に開かれた教育環境をつくるということだというふうに思うんです。それにはいろんなアプローチや組織改革がある。それを進めるには各大学が本当に独自の取組をいろいろ考え、進める。これが国立大学法人化で,多様な在り方,それから自主,自律,そういうようなことを打ち出した原点だと思います。
研究のところでも同じことが言えます。前回の研究のところで,WPIの成果を表示した図が出ますでしょうか。これも今まであまり文部科学省が自信を持って出さなかった点ではないかと思うんです。これ,ちょっと分かりにくいのかもしれませんけど,横軸は論文の数。縦軸がトップ10%の論文の割合。大学別に見ると,10.0近辺のところを上下している。しかし,WPIだけで見れば,その大学の中の平均値をはるかに超え、世界トップレベルに並ぶ成果が達成されている。これもWPIという研究拠点を世界に開き、さまざまなシステム改革を行い、国際的な研究環境をつくりあげたからなんです。世界に開いて,その開いた結果,例えばWPI拠点の構成員は,ほとんどが50%以上の外国人の比率になっている。もちろんサポーティング機関も国際対応になっている。
それから,ここで極めて重要なのは,結局,研究員だけがこの場で働いているわけではなくて,それをサポートする,URAとはちょっと違うサポートの仕組みをがっちりとつくっている。そして,WPIは研究費を中心に支援しているわけではなく,ここのシステム改革をするために出されていると。これも10年続いて評価を受ける。その評価は国際ボードになっているので,極めて世界に開かれた形での評価も実施されている。ですから,こういう形で,閉鎖的であった日本の大学の状況をとにかく世界に開いてしまう。そうすると,その中は必然的に多様な人の集まった中での競争環境にもなるし,それから創造的なアイデアを出す極めて重要な研究環境になるんです。こういうような仕組みが成果を挙げるようになってきた。というようなことで,私は,これからの検討課題の1つに,教育においても,研究においても世界に開かれた教育環境・研究環境をつくり上げていく。ここのところを1つ主軸にしていく必要があるのではないかと,以上が私の意見でございます。
それでは,そのほか何か。
【佐藤参事官】今,国際についてお話しいただきまして,すみません,事務局のほうから一言だけお話しさせていただきます。高等局で国際担当しております参事官でございます。
まさに,今これからの時代における会の本質というのは国際だというふうに思っておりまして,特にこの会は国立大学について議論する場ですけれども,国立大学であればなおさら世界に開く,世界とつながるという機能というものの強化というのが不可欠であるというふうに考えています。
ただ一方で,先ほど服部委員のほうからもございましたように,大学だけでどこまでやれるのか。要は,日本全体の環境をつくっていくという必要もありますし,あと上山委員のほうからも御指摘がありましたように,じゃあ,今のお金で本当にやろうとしていることができるのかといいますと,なかなかそこに関しては,国際交流やればやるほど手間とコストがかかる部分になりますので,こういったところを大学の自律的な努力と併せて,それから役所の努力も併せて一緒につくっていくというところが必要になるのかなというふうに思っております。ありがとうございます。
【相澤座長】WPIにしても,先ほどのSGUにしても,これで全てだということではなく,ここで行われたシステム改革に注目すべきだということを私は申し上げたい。ですから,この中で行われたシステム改革がよかった点,そういうものはもっと広く横展開する必要があるし,まったく別の発想でこういうような新しい構想の施策をつくったらどうかとか,そういうようなもののアイデアを出していく、重要な実施例ではないかと,そういうことであります。
それでは,そのほか御意見いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
ありがとうございました。今日も大変重要な御指摘をいただきました。それから,これだけ委員がそれぞれの視点からこういうシステムを見ていかれると,こんな考え方もあるな,あんな考え方もあるなというふうなことで,皆さんにも,それぞれの委員にも刺激になった部分もあるのではないかというふうに思われます。
それで,これで4回にわたってそれぞれのアイテムに焦点を当てて検討してきたところに1つの区切りができまして,あと年内に2回議論できる場がありますので,そこについてどういう課題があるのかということをまず整理して,事務局と私,座長と論点の整理を行いたいと思います。そして,その2回に分けて課題を整理し,その後どう展開していくべきなのかということで今年のまとめとさせていただきたいと思います。ということで,本日も充実した議論を進めることができました。ありがとうございました。
それでは,事務局から今後の予定等についてお願いいたします。
【春田国立大学法人支援課課長補佐】事務局でございます。次回の検討会でございますが,11月26日,14時から16時を予定してございます。
以上でございます。
【相澤座長】それでは,第4回会議はこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。
―― 了 ――