令和6年9月30日(月曜日)10時00分~12時00分
ハイブリッド(対面・Web)開催 ※傍聴はWebのみ
国立大学法人等の機能強化に向けた検討会(第3回)
令和6年9月30日
【相澤座長】皆様,おはようございます。定刻になりましたので,ただいまより第3回の国立大学法人等の機能強化に向けた検討会を開催いたします。
本日の検討会も対面,オンラインの併用によって公開で開催しております。
それでは,本日の議事等について,事務局から説明をお願いいたします。
【春田国立大学法人支援課課長補佐】事務局でございます。本日の議事及び配付資料につきましては,次第のとおりでございます。過不足等あれば,事務局までお申しつけください。
本日,柳川委員,御欠席となっております。また,本日ですけれども,マイク,各所に配置しておりますので,発言される際にはオンにしていただき,発言が終わりましたら,オフにしていただくよう,お願いいたします。
以上でございます。
【相澤座長】ありがとうございました。
議事に入る前に,資料1について,これまでの会議における主な意見をまとめてありますので,これについて事務局より説明をお願いいたします。
【北野国立大学法人支援課企画官】国立大学法人支援課の企画官,北野と申します。9月10日付で着任いたしました。どうぞよろしくお願いいたします。
では,資料1につきまして私から説明をさせていただきます。前回,第2回の会議の概要を踏まえまして,第2回に配らせていただいた資料に加筆する形でつけ加えております。つけ加えた部分,下線を引いておりますので,そちらを確認いただければと思います。
まず1ページ目,2ポツの法人化に関してというところでございますけれども,下から2つ目のポツのところにありますとおり,マネジメントの工夫,どういったものがなされて,うまくいったときの課題を明らかにする必要があるのではないかという点。また,その下ですけれども,スクラップ・アンド・ビルドのような観点も含めて,大学マネジメントの仕組みとして十分に機能しなかった面があったのではないかという御意見をいただいております。
また,2ページに行っていただきまして,国立大学の機能の強化の在り方,機能強化に必要な視点というところ,一番下でございますけれども,次のページにも続いておりますが,国立大学として果たすべき機能を明確にした上で,個々の大学の機能を高度化していくことが必要ではないか。また,グローバル化につきましては,学部段階から一定程度留学生を受け入れるということも必要ではないかという意見をいただいております。
また,その下,3ページ,財務基盤の在り方のところでございますけれども,コストの関係です。公的支援を増やすに当たりましては,教育コストに見合うだけの効果があるのか。また,卒業生の収入の分析などエビデンスの積み上げと透明化を行うことが重要だと。その下でございますけれども,こちらも授業,恐らく大学連携推進法人等が念頭にあると思いますが,個々の大学に必要な授業を精選して科目数を減らすなど費用負担の在り方を考えていく必要があるのではないか。最後でございますけれども,地域の経済的事情も踏まえた授業料や交付金の在り方があってもいいのではないかという御意見をいただいております。
また,次,4ページ,真ん中のところでございますけれども,こちらも地方国立大学の状況でございますが,特に大型プロジェクトの研究費を獲得できないという状況がございますので,より厳しい状況にあるのではないかという御意見をいただいております。外部資金のところでございますけれども,外部資金,今,間接経費,当然ながら,各大学で自由に設定できるような形になっておりますが,研究成果がしっかり出るのであれば割合を高めても企業の理解は得られるという御意見をいただいております。
また,その下,これは財政全体の問題かもしれませんけれども,短期の資金繰りに依拠して運営している一方で,長期の人材育成を国立大学は担うということを考えた場合に,何らかの工夫が必要ではないかという御意見をいただいております。一方,財務マネジメントのところにつきましては,ある程度かなりの大学で経営の観念も相当程度に入ってきているという御意見をいただいております。
(4)は人事給与マネジメント,こちらの途中から線が入っておりますけれども,現状の運交金,人勧の直接影響を受ける形になっておりませんが,これも変えていく必要があるのではないかという御意見をいただいております。
また,5ページの一番下から教育の質の向上でございますけれども,こちら,コメントを幾つか頂いておりますが,ある程度,日本で企業が期待するスキルと大学が提供する教育,ここに差があるのではないかという御意見をいただいております。また,国として将来の社会像を踏まえた重要研究領域を設定した上で,そこに対して重点的に公的支援を行うという考え方もあるのではないかという一方で,その下にございますとおり,特定の分野に偏り過ぎるというのも課題があるのではないかという御意見がありました。また,法人評価と認証評価の関係でございますけれども,現状,国立大学法人につきましては法人評価でかなり詳しく分析がされておりますので,認証評価等の整理が必要ではないかとの御意見があったところでございます。
また,(7)大学間連携のところでございますけれども,こちら,コストの軽減・合理化という観点だけではなくて,シナジーを生かして新たな価値を生み出す連携というのもあってもいいのではないかという御意見があったところでございます。
最後,7ページでございますけれども,附属病院の関係,こちら,附属病院につきましては,財務三表を独立させて公表した上で,経営責任に合った運営・人事の裁量権を与えること。また,病院間の連携システムというのも作っていく必要があるのではないかといった御意見があったところでございます。
私からの説明は以上でございます。
【相澤座長】ありがとうございました。
それでは,早速,議事に入りたいと思います。本日は,国立大学法人等の研究力関係の現状について議論を行うこととしております。そこで,まず資料2に文部科学省でまとめていただいたいろいろなデータがございますので,これについて文部科学省からの説明をお願いいたします。
【生田振興企画課長】振興企画課の生田でございます。それでは,資料2に基づきまして少し説明をさせていただければと思います。大学・大学共同利用機関の研究力強化に向けてということで,2ページ目,目次でございますけれども,資料の量,大部になっておりますが,構成としては,まず最初が全体の日本の研究力の概観,それに続いて本検討会の主眼であります大学等の研究力のところ,インプット,アウトプット,アウトカムの状況で,これまでの取組と成果ということで,我々,政策の動向ですとか,それによる成果,最後に今後に向けてということで論点案,あくまで事務局として,こういうこともあるのではないかというものではございますけれども,提示をさせていただいております。
それでは,3ページ目から説明させていただきます。3ページ目のところ,皆様方,御覧になったことがあるかと思いますが,主要国の論文数,それから,注目度の高い論文数,それぞれの推移となっております。日本の論文数,マスとしては増加をしているものの,TOP10%というインパクトの高い論文の数,これが下げ止まり,一時下がっておりましたが,下げ止まりの状況。
続く4ページ目のところ,こちらについては各国との比較,相対的な比較が書いてございますけれども,論文総数という意味での順位の低下,これに加えまして引用数の高いTOP10%補正論文数,これについてもよりその下落の傾向があるという状況が見受けられます。
5ページ目,今度は論文の数というものだけではなくて,その割合,TOP1%の論文の割合をY軸に,X軸に論文数,これをプロットした図でございます。これを見ていただきますと,アメリカと中国は論文数という意味では突出しておりますが,その他の諸外国と比較して論文数自体は日本もそこそこを誇っているものの,TOP1%の補正論文数の割合,これが低いという状況が今の状況として見受けられます。
6ページ目,7ページ目,これは国際共著の論文の割合の状況でございます。2020年頃から全分野で国際共著の論文数,低下しておりますし,主要国の中でも中国も低下していますが,日本も少しずつ低下してしまっているという状況が見受けられます。7ページ目,こちらが国内論文と国際共著論文の割合,どういうことかと申し上げますと,論文数,その全論文数において国際共著論文が占める割合というものを見ていきますと,TOP10%のほうが国際共著の割合が高いというのがどの国も大体見受けられる傾向になってございます。
8ページ目,これは頭脳循環の状況でございます。これはアメリカとの相手国という形で見ておりますが,中国が軒並み1位である。7分野で1位でございますのに対して,日本が存在感を少し薄めてきてしまっているという状況が見受けられます。
9ページ目,こちらはサイエンスマップというNISTEPの調査の結果でございます。ある意味,注目される領域の数の動向を示しているものでございますが,2002年から2020年にかけて,領域の数全体は919と増えてきております。その中で日本がどうかというものにつきまして,11ページ目,12ページ目,こちらを見ていただきますと,このGEOチャートというものによって4象限に分かれております。この象限,X軸が継続性,Y軸がほかのその研究領域との関係性みたいなものを示しておりますが,いわゆるコンチネント型と言われるのは,重厚で量も多く,継続されるような領域,これに対して左下のスモールアイランド型,こちらがある意味,継続性はなく,また,小さいもの。ただ,今後大きく化ける可能性があるというふうに見受けられます。この中で論文の数は当然,コンチネント型が多く,スモールアイランド型は少ない状況ではございますけれども,ある意味,コアペーパーというTOP1%の論文,これに注目をしますと,コンチネントも47%,スモールアイランドも15%,そういう状況になっております。
これに対して12ページ目を見ていただきますと,中国と日本が右端2つの棒グラフ,12ページにございますけれども,中国は2004年から2020年にかけて,どちらかというとスモールアイランド型,一番上の水色のところでございますが,ここが増えてきている。割合として増えてきている。つまり,ある意味,継続性というよりは,新しい研究の萌芽となるような可能性のあるもの,こういったところにかなり論文数を増やしてきている。これに対して日本の場合は,その隣のグラフでございますけれども,一番下の焦げ茶,いわゆるコンチネント型,継続性があって規模も大きい研究領域,相変わらずここを増やしてきていて,スモールアイランド型は逆に減ってきているというような動向が見受けられるかと思います。
こちらまでが研究力の全体の概観でございまして,14ページ目以降,ここからは大学等組織の研究力の状況の説明資料でございます。1ページ目,飛ばしていただきまして,15ページ目,こちらがまず人,研究者のことでございます。主要国の研究者の数の推移,日本の大学部門の研究者,これ,右のグラフでございますけれども,ほぼ横ばいという形でございます。日本の場合,全研究者の大体2割ぐらいが大学の研究者だと思いますけれども,数という意味では横ばいだと。その中でも博士号取得者の割合というものを見ていきますと,これも昨今よく話題になっているかと思いますけれども,諸外国が博士を取得されている方,増やしてきているのに対して,日本はなかなか横ばいの傾向だと。特に人文社会科学系が少ない。自然科学系が多いというような傾向が見受けられます。
ただ,17ページ目をいただきますと,国内の大学の博士課程入学者数,これ,一時減少傾向でございましたけれども,令和5年から回復傾向ということで,政府といたしましても博士人材活躍プランというものも設定したり,生活費相当の支援というものを拡充したりしてきた効果が少しずつ表れているのかと思われます。
18ページ目,こちらが人材の頭脳循環,流動性,左のほうは全体としての流動性,ハブになっているのはやはり欧州,中国,米国,この3か所のところに線が結ばれて交点となっているのに対し,日本は置いていかれてしまっている。それから,右側,これは高等教育段階における留学生の出たり入ったりの割合でございますけれども,日本はどちらも少ないという状況が見受けられます。
続きまして19ページ目,これは国立大学の本務教員数の推移でございます。これももう昨今,よく言われておりますが,40歳未満が約5,300人の減少,若手の割合が減ってきているという動向が見受けられます。
20ページ目,これは研究者の職務活動時間割合というものを見たFTEの調査,これで研究時間の動向が見受けられますけれども,どの分野においても大学等の教員の研究時間,これが減ってきてしまっている。特に言われるのが,保健分野においては診療の活動などの社会サービス活動,こういったものが増えてきていて,一方で研究時間が大きく減ってきてしまっているという動向が現状として認識されているところでございます。
21ページ目から,今度は財源,お金というところに着目をしたファクトでございまして,まず21ページ目は,研究開発費の推移,大学部門は2000年代に入ってきてからほぼ横ばい。その間,中国,ドイツが上回ってきているというのが見受けられます。
22ページ目,これは前回等,御覧になったかと思いますが,交付金の推移でございまして,27年と同額の予算額を維持してきているという状況でございます。
23ページ目は科研費の予算額,応募件数等々書いてございます。大体,応募件数9万件の中で,採択率3割弱というものが現行の状況かと思っております。
24ページ目では,その科研費の,円安ですとか物価高,こういったものを考慮した配分額を見てみますと,言わずもがな,実質の額というものは低下をしてしまっているという動向をこちらで示させていただいております。
続いて25ページ目,運交金と外部資金の獲得状況,これも前回のこの検討会で提示されていたかと思いますが,全86法人の合計値でございますが,運交金は減っているのに対し,外部資金というものは,この棒グラフのところにございますように,全体としては増えてきている。
この増えてきている要因を少し因数分解して見ていきますのが26ページ目以降でございまして,26ページ目は産学連携の状況,全体としては着実に増加しているものの,なかなかまだアメリカとの比較では差があるですとか,あとライセンスとか,そういったものも増えてはきているのですけれども,諸外国と比べて,もう少し頑張らなければいけない。これも政府としては組織対組織の共同研究とか,スタートアップの促進,そういったものを進めてきている動向の途中段階というものかと思われます。
27ページ目,同様に今度,基金の状況,これもなかなか日本の大学,少ないというのが前から言われておりまして,この原資となる寄附について28ページ目,やっぱり寄附金をもう少しどうやって大学として増やしていくか。この中においても国大法人の場合,個人寄附に係る税額控除の制度というものをどんどん広げてきているかと思いますけれども,この辺のお話というのが,昨今言われていた国際卓越研究大学,そこにもつながってきていた話だと思っております。
29,30ページ目,この辺は教員1人当たりで見た研究開発費がどうなのかというものでございます。これも言わずもがなでございますが,29ページのほうは運交金,1人当たりかなり減ってきてしまっているという状況。一方で,30ページ目は,これは外部資金の1人当たりの受入れ状況,これは増えてきているものの,ある意味,取れる人,取れない人の差が出てきてしまっているというのが見えるかと思われます。
続いて31ページ目以降が,今度はアウトプット,アウトカムの状況を少しまとめたものでございます。31ページ目,諸外国の大学と比較した形で,よく論文数だけではなくて,様々な指標から比較をすべきではないかということもございますので,ここに一応並べておりますけれども,いろいろな指標,研究の量,質,厚み,国際性,そういった観点からもなかなか日本の大学として厳しい状況に置かれているというのは,変わりはないかと思っております。
では,日本の大学の特徴はどんなものかというのが32ページ目以降,書いておりますけれども,これはイギリスとドイツとの比較だけでございますが,このグラフを見ていただきますと,イギリスとドイツの場合は,いわゆる第1グループ,第2グループ,これは第1,第2というのはどういうことかと申し上げますと,簡単に言うと論文数のシェアの高いところから第1で,続いて第2,第3というふうに分けております。例えば日本の場合ですと,第1グループに東大,京大とか,そういったところが入っているというふうに見ていただければと思いますけれども,イギリス,ドイツの場合は第1と第2グループ,ここの大学だけでほぼ7割以上の論文数を産出しているのに対して,日本の場合は第1,第2,第3,第4とある意味,同程度ぐらいの論文数の規模をそれぞれが出してきているというのがこの32ページ目のグラフで見受けられます。
その中身を申し上げますと,33ページ目の左のほうでございますけれども,少し小さいですけれども,分野ごとで比べたときに,日本の場合,いろいろな大学が、それぞれある分野においては,すごく特色がある力を持った大学だというのが見受けられるかと思っております。
34ページ目,一方で,これがもう少しマクロな形で見たものでございますけれども,全体のポートフォリオ8分野というもの,Web of Science,22分野,分かれておりますが,これをざっくり8分野で分けたときの色をつけてみたものでございますが,イギリスとドイツは,ある意味,この上位,上から40大学にそこそこ赤いところ,赤いというのが論文数が多いところでございますけれども,赤いのが散らばっているのに対して,日本の場合は全分野ともに上位10大学でほぼほぼ占められてしまっているというのが見受けられるところでございます。この辺から何が示唆されるかというのが我々の政策に関係してくるところかと思っております。
35ページ目,こちらは大学の中の構造ごとにそれぞれのTOP10%論文の割合とかを見たものでございまして,特に第2グループのところを見ていただきますと,研究拠点と書かれているところ,こちらが論文数の割合が軒並み突出して高くなってきております。これはどういうことかと申し上げますと,いわゆる大学に拠点というものを形成して,そこに重点配分をする。その効果が見受けられるのではないかというものが示唆されるのではないかと考えております。
こちらまでが研究成果の今の状況というものの御説明でございまして,次が36ページ目以降が,我々の政策の全体像とその効果というものを少し御紹介したいと思います。
37ページ目が,これから御説明します政策の一応,全体像を表したものでございます。下から見ていただきますと,一番ベースのところ,これは基盤的な支援,国立大学の場合は運交金ですし,私学の場合は私学助成補助金ですけれども,そういったものがまずあるかと思います。その上に立つものとして研究者,研究機関の足腰を整えるという意味で,研究者個人もしくはチームへの支援というもので科研費,戦略事業もしくは創発,そういったものがここに位置づけられております。
その上に2つ,横のものがありますが,1つ飛ばして拠点の支援というところに先に行っていただきまして,WPIですとか共創の場,いわゆる拠点形成,拠点に対して支援をする。その拠点でクリティカルマスを作り,それをより大学全体に広げるという意味で一番上のところ,2つございますけれども,昨今,新しく創設されました国際卓越研究大学,そして地域の中核・特色ある研究大学というものが上に立っております。この辺はある意味,大学の組織として強くしていくというものに対しまして,先ほど説明を飛ばしました茶色のところ,組織・分野を超えた連携の強化・拡大,いわゆる大学共同利用機関や共同利用・共同研究拠点,共共体制と言われるものでございますけれども,こういったものでそれぞれの大学を横串で連携させていく。そういう役割がある施策がこの茶色の部分に相当するかと思っております。このような全体の体系の中で,我々,現在,研究力強化に向けて組織支援等々を行ってきているところでございます。
38ページ目以降は,それぞれ個別の説明でございます。38ページ目は科研費,この辺,説明を飛ばさせていただきますが,本当に一番基本となる個人支援の基礎研究支援等を支えているものだと思っております。この科研費も歴史のある政策でございますので,昨今,様々な制度改正等々行ってきております。それが39,40ページにまたがるものでございまして,39ページ目は,これは審査の過程における改革でございます。その領域が本当に細かくなってきているもの,これを大括り化することで審査の柔軟性を持たせる,そういった改革を行ってきたりですとか,40ページ目,昨今ですとやはりお金の柔軟性を持たせるという意味では基金化,こういったことを我々は目指してきております。基金化によっては,当然,挑戦的で斬新な研究を後押しするという効果があるのに加えまして,先ほど少し御紹介しました研究時間という意味においても,やはり繰越申請手続,こういったものを省けるという意味において効果があるのではないかと思っております。
41ページ目,42ページ目,この辺は科研費の成果を表した資料でございます。41ページ目は,これはScopusという論文データベースでございますが,その平均のものがこの横棒で,赤で引っ張ってあります。これよりも科研費のこの特別推進研究,これはメニューでございますけれども,どのメニューで支援された研究課題におきましても,いわゆる平均値よりも上のTOP10%もしくはTOP1%の論文の割合,いわゆるインパクトの高い論文を出せているという結果が見受けられるものでございます。
また,42ページ目,こちらについても日本全体を1としたときに,科研費による論文は,それよりも1.5倍の引用数を得ているというような成果もこの辺は出させていただいております。
1枚飛ばしていただいて,続いて44ページ目,こちらは同じく基礎研究に対する支援でございますけれども,目的志向型と言われるような,ある意味,国がある程度,戦略目標を定め,その下で基礎研究をチームで引っ張っていく,そういったものに対する支援の事業でございます。こちらも45ページ目を見ていただきますと,成果としましては,世界三大科学誌への投稿論文を多数輩出という意味で,国内論文の中での2割程度がこの戦略事業で支援を受けたものというものがあるかと思います。また,この下の段,我が国のトップレベル研究者を多数輩出のところにも顔写真,いろいろありますけれども,ちょうど先般,クラリベイトのノーベル賞の候補者として出ていた堂免先生もこの中に支援をした相手として書かせていただいているものでございます。
続いて46ページ目,こちらは創発的研究支援事業というものでございまして,こちらは若手の研究者に,ある意味,独立前後の研究者ですが,独立することを支援し,ある程度長期的な活動を支援するという意味で,最長10年間安定した研究資金を支援するという内容でございます。また,この個人に対して研究費を支援すると同時に,大学に対しても研究者が研究に専念できる環境を作るようにということで,その環境整備費も同時に支援をしているものでございます。これによって若い研究者が研究に専念できる,そして高い成果を出していく,こういったことを目指している内容になっております。
その成果としまして,まだこちらの事業,始まって間もないものでございますが,47ページ目,少し御紹介させていただきますと,主な実績のところにございますように,創発研究者の研究活動時間割合が平均6割となっており,大体これの支援者の年齢を准教レベルと見たときに,その研究時間割合が3割ちょいなのに対して,倍ぐらいの時間を割けているということですとか,43%が昇進・昇格または3割が定年制のポストを得られているというような効果がこの施策から見受けられるかと思います。
ここまでが個人に対する研究支援でございまして,続いて48ページ目,ここからが拠点に対する支援でございます。拠点の1つ目がWPI,こちらも結構,知名度が最近高い施策として成果をたくさん出してきているものでございます。現時点では,支援先として計9拠点または支援が終わってアカデミーという意味での拠点が9拠点あるものでございます。
こちらもミッションが49ページ目に書いてございまして,大きく3つ書かれております。1つは,世界を先導する卓越研究と国際的地位の確立,2点目が国際的な研究環境と組織改革,3点目が次代を先導する価値を創造する。こういったことをWPI拠点にはミッションとして課して,これに基づき評価をしてきているものでございます。
50ページ目が,その拠点の成果というか,拠点の構造でございますけれども,見て取れるように,クリティカルマスの創造に向けて外国人の割合が高かったりですとか,PIの数も相当数,ここに集めていたり,その結果としてもTOP10%の論文数の割合,論文数ともに高い効果を出しているのが見受けられます。
51ページ目がその成果でございます。幾つか書いてございますけれども,右のところにグラフというか,丸が幾つかありますけれども,これはY軸がTOP10%の論文の割合,Q値でございます。この年数がX軸で並んでおりますが,いわゆる横に書いてございます棒グラフ,日本全体が大体8%ぐらいなのに対しまして,このWPI拠点は10%以上ないしは30%弱まで成果を出してきているというのが見受けられるものでございます。
また,52ページ目,こちらは同様にX軸が論文数,Y軸がQ値を取っているものでございますが,日本の大学,これが薄いブルーで,グリーンとオレンジが海外の大学,それに対して,WPI拠点を赤い点で書かせていただいております。見て明らかなように,拠点支援をしているところにつきましては,論文数という意味では,そんなに多くはございませんけれども,Q値,いわゆるインパクトという意味においては相当高いものを成果として出してきているというのが見受けられます。
その背景としまして53ページ目,どのようなマネジメントをしてきているのかというものでございますが,もちろん優れた研究者を糾合させる,それは当然でございますけれども,それのみならず,研究支援体制というものをしっかりと構築している。もしくは研究者が研究に専念するためのサポート,こういったところもしっかりこの施策の中では展開をしてきている。そのため,先ほど申し上げたような高い成果を出してきているのではないかと考えてございます。
続いて54ページ目,55ページ目,こちらは国際研究卓越大学の制度の説明資料でございまして,こちらの説明は少し割愛させていただきますが,現状,第1回目の公募を終わり,そして認定,認可の候補大学が決まって,大学として決まっているというようなところの状況でございます。
この国際卓越と同時に立ち上げた地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージというのが56ページ目でございます。いわゆる数大学だけではなくて,日本全体として研究力を強くしていくためにということで,このパッケージというものを策定しておりまして,これに基づいて57ページ目で,この右端の菱形,いわゆる拠点形成をしたものに対して,その力を大学全体に広げていく,それを念頭に置いた政策が58ページ目に掲載しております地域中核・特色ある研究大学強化促進事業でございます。J-PEAKSと最近言われておりますけれども,この事業が補正で立ち上がったものでございます。
こちらについては,各大学の強み,特色を強くすることで,大学全体の経営力を高め,その大学全体の研究力も高くしていく,そういったことを念頭に置いておりますけれども,現状,59ページ,60ページ目にございますように,まだこちらも始まったばかりでございます。令和5年度に,ここに掲載しております12大学を採択したという状況でございます。
ここまでが大学等に対する支援を御紹介しましたが,61ページ目からがこの大学それぞれに対する支援を横串でつないでいく仕組みに相当する部分の御説明になります。まず1点目,大学共同利用機関法人でございますけれども,こちら,「とは」のところに書いてございますように,大学の共同利用に供する法人として設置されたものとして,現状4法人,その中に17の機関がございます。
それが62ページに紹介させていただいているものでございます。ただ,こちらについて,昨今,大学共同利用というところはよく取られるのですけれども,共同研究,いわゆるどういうミッションを負っているのかのところがなかなか見えにくい状況でございまして,64ページ目のところを御覧いただきますと,単に研究設備を共用にしているだけではなくて,その過程の中で,この真ん中の部分に書いてございますように,研究者をここに糾合し,コンサルして,実際にその設備を使って実験をし,実験をする段階で,当然,やり直しだったり,そういったものも踏まえまして成果を出し,最後,発信する。そういったところまで1チームでコンサルをしていく,こういう体制を持っている。こういう機能を持っているのが大学共同利用機関でございます。ですので,単純に設備を貸すだけ,そういったことではないということを改めてここで強調したいと思います。
65ページ目,その結果としまして,先ほど研究者を糾合しと申し上げましたが,例えばこれは自然科学研究機構の例でございますけれども,教員数583名おります。ただ,その中から10年間で半数以上は入れ替わる。つまり,若い段階でこの機構に来て,育って,そして地方も含めた大学に巣立っていく,PIとして巣立っていく,そういう機能がこの大学共同利用機関にあるのではないかと思っております。その結果として,若手研究者,10年間でこの機構の研究者数の6倍の若手研究者を育成する,そのような成果も例えばこの自然科学研究機構の場合は出してきているところでございます。
ここまでが大学共同利用機関の御説明でございまして,次に66ページ目からが,いわゆる共共拠点と言われる共同利用・共同研究拠点の制度でございます。こちらは国立だけではない制度の仕組みでございますけれども,少し御紹介させていただければと思います。こちらについては,いわゆる大学の中で共同利用,共同研究に資する部分,これを文科省として,文科大臣の認定をするという形で対応しているものでございます。類型としては,右下にございます単独型もしくはネットワーク型もしくは連携型,このようなものがございまして,現状において67ページ目,少したくさんあるようにも見受けられますけれども,これだけの数の拠点が認定をされているところでございます。
この中で特に真ん中上のところにございます国際共同利用・共同研究拠点と書かれておりますものが次の68ページ目でございます。こちらは昨今新しく作った制度でございまして,特にこの国際的な連携,協力の窓口としての役割を果たしているようなところ,先ほどの日本地図の中にございましたように,東北大ですと金材研ですとか,京都大学の化学研,そういったところが認定をされているものでございます。
その結果としまして,その成果,70ページ目に書いてございます。共同利用・共同研究拠点を活用した論文数,これについては約5%,この平成28年から令和4年の間で増えているですとか,学外の研究者の受入れも43%増というような形で増やしてきている。また,外部資金の獲得という意味でも,下のグラフ,民間との共同研究では111%の増,このような成果というものを出してきている状況でございます。
ただ,この共共拠点,あと先ほどの大学共同利用機関につきまして,なかなか肝心な設備の更新,そういったところが行き届いていないのではないか。特に小規模なものは運交金とか競争的資金で支援できる。もしくは大規模なものはフロンティア,いわゆる学術コミュニティの中で優先順位をつけて支援をする。そういったところであるのですけれども,中規模のもの,超高圧電顕ですとか,NMRとか,そういったものについてなかなか更新できないということに対して71ページ目の共共システムの形成事業の最後に書いてございます大学の枠を超えた研究基盤設備強化・充実プログラム,こういったものを来年度要求の中でも組み込みをさせていただいているところでございます。
ここまでが現状の施策の展開状況を御説明させていただきました。最後,72ページ目以降は,論点案というものを少し提示させていただければと思います。その前にまず73ページ目,74ページ目,この辺は,科学技術・イノベーション政策の中で次の第7期の基本計画というものの策定に向けた準備がそろそろ始まっている状況でございます。その中でどのような議論があるかというのを少し紹介させていただければと思います。
74ページ目,こちらは科学技術・学術審議会第72回,夏,9月2日でございますけれども,開催されたときの資料でございます。書いてあることは当たり前でございますけれども,3つの柱ということで研究力,国際戦略,人材育成,こういったものを今後どのように展開していくかというのを検討していくこととしております。
また,75ページ目,こちらは学術分科会としてこの第7期の基本計画に向けた意見というものが取りまとめられておりまして,中ほどIIのところにございます。(1)(2)(3)と3つの柱に分かれてございます。1点目は研究者の知的好奇心に根差した独創的な研究の強力な後押し。いわゆる個人の研究者の研究力をどう支援するか。2つ目の柱が,今度は大学等における研究環境の改善・充実、マネジメント改革。3つ目の柱が,右上に行っていただいて,日本全体の研究力発展を牽引する研究大学群をどのように形成するか。こういった柱立てで,現状,学術分科会のほうでも議論が展開されている状況でございます。
ということで,76ページ目,77ページ目,最後,2ページでございますが,これはあくまでも1つの考え方として,これにとどまるところではございませんが,御紹介させていただきますと,論点案の1,1つはマネジメント改革,先ほどの学術分科会の柱で言うと(2)に相当する部分だと思いますけれども,我が国の大学・大学共同利用機関における研究の質・量を改善・充実させて生産性を高める。そのためには組織としての研究マネジメント改革,これが不可欠ではないか。また,個々の大学等が持つ強みやミッションを踏まえて,全体として,拠点形成をした,その拠点だけではなくて,全体としての研究力を限りあるリソースの下で最大化させる。そういったことが必要ではないかと書かせていただいております。
例えばということでございますけれども,WPIですとか,創発的研究支援事業,先ほど御紹介させていただきましたが,好事例が出てきております。こういったものを学内全体に浸透させて,持続的に基盤的な活動として定着させる仕組み,こういったものが必要ではないかというのが1つ。もう一つは,国際卓越研究大学制度ですとか,地域中核・特色ある研究大学強化促進事業,こういったものを通じて研究力のある大学同士の連携をより進めるとともに,高度な研究マネジメント基盤を構築する。さらに,そうした取組を確実,継続的,安定的に推し進めるというのは必要ではないかというのが2つ目。
続いて77ページ目,こちらは少しテーマとしては変わりまして,共同利用・共同研究体制,先ほど横串というふうに説明申し上げましたが,その部分に関する論点のイメージ案でございます。個々の大学の研究力を伸長させると同時に,厚みのある研究大学群をどう形成するかという観点において,大学の枠を超えて全国の研究者のハブとなり,コミュニティ全体の研究力向上に資する大学共同利用機関ですとか,共共拠点,こういったものについて,そのユニークな機能・役割,これを明確化して,その機能の発揮度を可視化して,その上で最大化させる。そのためにどういったことが期待されるかというふうに書かせていただいております。
例えば共共拠点につきましては,大学共同利用機関ですとか,WPI拠点,それも拠点でございますが,そういったものとの違いも踏まえて研究分野の進展を踏まえたそのミッション,そして達成目標,こういったものを明確化する。また,分野や地域のポートフォリオ戦略の下でコミュニティに対する貢献度をしっかり踏まえて,拠点に対する支援や改廃が行われる仕組み,この実効性を強めていく,こういったものを1つ目の論点案として出させていただいております。
2点目としては,大学共同利用機関につきましてでございますが,先ほど説明申し上げました単なる設備の共用にとどまらない高度な技術職員や研究マネジメント人材も含めたチームとしての強み,これを生かしてコンサル段階から論文にまとめて成果発信するまでをコーディネートして新しいサイエンスを生み出す機能,これを可視化し,強化する。こういったことが必要ではないか。ともすれば,そういう役割の特殊性というものを踏まえた基盤的な活動に対する支援ですとか,柔軟な研究領域の設定を可能とするガバナンスやマネジメント,さらにはその機能拡張を支えるような多様な財源による経営基盤の強化,こういったものも求められるのではないかとまとめさせていただいております。
以上,少し長くなりましたけれども,事務局から,あくまで本日の議論の参考という意味で,様々な資料を提示させていただきましたが,御議論のほどよろしくお願いいたします。
【相澤座長】ありがとうございました。
大変膨大な資料を極めて簡潔に説明いただきました。これから議論に移りたいと思いますが,準備が整った御発言の方は,ぜひ目の前にあります名札を立てて,私のほうに見えるようにしていただければと思います。それから,オンラインで参加の委員の方々は挙手のボタンを押していただければと思います。御発言をお考えいただく間に,本日,まず座長としてのコメントを二,三申し上げたいと思います。
ただいまの資料のスライド番号で5番目,出していただけるでしょうか。5番目です。はい。それです。この図はなかなかに目にされていないのではないかと思います。横軸は各国の国別の論文総数です。それから,縦軸はTOP1%の論文の割合。本日の説明は,ほとんどTOP10%を中心にお話しになりましたけれども,これはTOP1%です。そういたしますと,これが現在の世界の状況なんですね。これ,実の論文数の多いところに1つのグループができています。これがアメリカと中国です。ここのところで,この中国の進出が,本当のごく最近,極めて,米国と並んだかと思ったらば,あっという間に論文総数では,これだけの格差がついてきている。
しかも,TOP1%の論文比率の割合がアメリカとほぼ並んでいるということで,そして第2グループです。これは論文の総数でいくと,数千から1万数千の範囲の国です。ここに科学技術の強い国というがずっと集まってきていますね。この中に日本は入っている。そして,この中で日本は一番低い水準にいる。これが問題なんですね。横軸の論文総数を増やそう,増やそうといっても,これだけの桁違いなところに論文総数の増加を目指していくということは,そう簡単ではありませんし,現実的ではないと思います。それよりも,むしろこの論文総数がちょうど第2グループとしてまとまっている辺りのところで,この中で日本はもっと優位な位置づけにならなければならないだろうというのが私のコメントであります。
その次に,スライドの52番をお出しいただけますでしょうか。それです。これは横軸に,やはり論文総数ですが,ここに記されているのは,大学別です。それプラス赤のところはWPIなんですけれども,縦軸は,これはTOP10%のほうの割合です。こういたしますと,日本の大学が薄いブルーで書かれているところで東京大学,その他が,こうありますね。この横軸の論文総数は大体大学の規模に対応している。しかも,これはTOP10%であるとこういう形で比率は大学によっていろいろと分散している。ただ,これが日本の状況でありまして,TOP10%の割合で見ると,平均値という意味での10%のところの前後である。
しかし,海外の大学のしかるべきところというのは,これのさらに上を行っているんですね。それが20%前後のところに分散しております。これは全ての大学を網羅しているわけではなくて,横軸の論文総数が,これ,5,000で切っていますね。もっともっと大規模の大学があるわけですね。それは省いています。世界的な位置づけとして,こういうようなところで日本の大学全体がこういうような位置づけになっている。それで,これは各大学の平均値です。日本は,だから,望みがないのか。そうではなくて,先ほど説明のありましたWPI,赤印で,そうすると,そのWPIの拠点ごとで見てみると,グッと上のところに行っているわけです。そして,25%近辺のところまで来ている。
これは,日本の科学技術力が今,低下だ,低下だということだけが叫ばれている中で,日本もやり方を工夫すれば,これだけの成果を出している。しかも,WPIは先ほど説明がありましたように,いろいろなシステム改革をやっているんですね。マネジメント改革という言葉でさっき表現されましたけれども,世界に開いていて,外国人研究者,もう50%以上のところがほとんどだとか,いろいろなシステム改革をやったが上に,こういうような成果を出せるような,これは拠点ですから,しかも,10年ということで,そうすると,こういうような成果になる。ですから,これからどうしたらいいかということを考えていくときには,日本でもこういう先行例があって,その中にいろいろな改革をしていることをこれからの検討の重要な資料としていく必要があるのではないかなということで,こういうふうに,それで,本日の研究力強化,これはやはりあくまでも日本の全体の研究力が落ちている。そういうようなことを,どこを基軸にいろいろな改革を進めていったらいいかということの議論に展開していただければと思います。
以上が私のコメントでございます。
それぞれ御発言の用意ができたのではないかと思いますので,どうぞ御発言の方は,先ほどのように会場の方は名札を立てていただければと思います。そして,オンラインの方は挙手の合図をお願いいたします。いかがでしょうか。上山委員,どうぞ。
【上山委員】どなたもお手が挙がらないようですので,少し私から口火を切らせていただきます。今日,研究力を扱うということを事務方から聞きました。研究力については,これまで何年にもわたってこの問題をCSTIも文科省と一緒になって議論させていただきまして,やれること,考えられることはいろいろな形でやってきたわけですね。研究力の問題は非常に複雑で,まずやっぱりファンディング,財政的な支援をどうしていくのかが重要です。日本の大学,アカデミアの研究資金というのは,他国と比べてほとんど変わらない。ずっとコンスタントで何も変わらないという状況で,各国を見ると年ごとに増えたり減ったりしながらも,全体として伸びている。非常に高い勢いで伸びているし,先ほど相澤先生がおっしゃったみたいに,中国などは極端な形で増えている。この問題を考えてみると,一番研究力の成長点のあるところに資金を回すべきだという議論はありました。でも私どもとしてはもっと裾野の広い支援が必要だと考えております。
また,もう一つはやっぱり研究時間が非常に少なくなっているということ。研究時間をどうやって増やしていけばいいのか。これ自体もとても複雑で,例えば卑近なところで言うと会議が多過ぎるとか,あるいは学会が余りにも細かく分かれ過ぎているために,学会に対する時間を取られ過ぎているとか,入試に時間が取られすぎるという問題であったり,あるいは大学の中のガバナンスの中において,若手の人たちにしわ寄せが来ているとか,そういうことも随分議論をさせていただきました。
加えて,この研究力の問題を複雑にしているのは,単に論文の数,インパクトだけでは測れないいう認識が広がってきており、例えば私がコミュニケートしてきたMITなどは,論文という形では学者のパフォーマンスを測らないのだと。それがどのような社会的インパクト,大きな社会的な貢献をしたのか,大きなインパクトを果たしているのかということが最も重要な評価軸なのだとあからさまに言うようになってきて,論文だけではなかなか測れないという,そういう状態にもなっています。
それで,今日いただいた資料で言うと,私たちも文科省と一緒にやって考えてきた中で,どうしても拭い切れなかったミッシングスポットがあると思っています。卓越大学の議論をしたときも,これはやっぱり一番成長点の高いところに大きな重要度のある資金を回し,独自のガバナンスでやっていただくということをやりましたし,その過程の中で,卓越している一部の大学だけでいいのかという当然の話が出てきて,実際のところ,幾つかの卓越した大学だけで,あるいは卓越した研究者だけでアカデミアを支えることなんてできないわけですから,非常に豊かな裾野の広いアカデミアを作っていかないということで言えば,セカンドティア,サードティアと言われている高い研究力のあるところにどう支援をしていくべきだという話が当然出てきたわけです。結果として地域中核・特色ある研究大学の振興パッケージというものが資金的にもサポートしていただけるようになって,その仕組みを作っているというところだと思います。
ただ,若い世代の人たちが,能力のある人がアカデミアの中に次の自分のキャリア,自分の人生をかけることができるのかということで言えば,博士課程に行く人がどんどん少なくなってきている。しかも,能力の高い人ほど行かなくなり始めている。これは明らかに研究環境の劣化が原因ということになるわけですね。これは卓越大学たけではなくて幅広い研究大学でそういうことが起こっているということを考えると,当然,博士課程への支援というのが出てきたわけです。それから200億という支援のフレームが出てまいりました。しかしながら、いわゆる博士課程の学生への財政支援で,諸外国なんか,例えば,コンピュータサイエンスのような領域で言うと,年間のスタイペンが大体800万とか1,000万を超えるような大学院生の支援を行っており,かつ,それによって優秀な大学院生を奪い合うような状況が生まれているということを考えてみると,領域によっては今の博士課程支援だけでいいのかという気持ちは持っています。
卓越大学が進んでいくにつれて,卓越大学の資金から博士課程支援というのが出てくる。これは卓越の制度の中で裾野の広い博士課程の方への支援,あるいは研究会向けの支援を考えてきたからです。同時に,アカデミアに果たして進むかどうかに関して言うと,皆さん,やはり行った後のポストの問題を気になさるんですよね。安定的にどこかでちゃんとポストを得られて,そして大学人として長い間にわたって研究,教育活動をやっていくことができるのかということに対する不安が大きいということを考えると、各大学だけではできないものが相当あるということでずっと思っていました。そこのところがミッシングスポットだなと思うときに,この共同利用研究機関の話が今日取り上げられるというので,これは卓越から裾野までの幅,大きな人材の流れを作っていくところなのだろうと考えています。
例えば今日の説明にもありましたけれども,大学共同利用機関において,Ph.D.が終わった後,数年間,教育からは免除されて,そして,その研究成果を上げていって,そして自分の次のキャリアとしてやっていく期間,そのポストがそこにあるということは,恐らくは非常に重要なインセンティブになると思いますので,この仕組みは,正直言って卓越とか,地域振興パッケージをやっていたときにはどうしても手がつけられない,ミッシングスポットでした。見てみると,4つの機構に分かれていますけれども,この4つの機構の別れ方は,あまり現代的ではないなと当時から思っていました。
いわゆる人文,自然科学,情報系というふうに分かれていますけれども,それぞれの機構の中にある研究所のファンクションをきちんと現代的な意味で分析をして,そのグループづくりをやっているのかなという気持ちはありましたし,それぞれの機能,例えば研究をやってくださいというところもあれば,あるいは大型の非常に重要な機器を持っていて,それがゆえにいろいろな大学に対する研究支援を幅広く共同的にやるという,そういう役割をしているところもあると思うのですが,こういうファンクション付けがきちっとできていないなと思いました。
各大学が研究支援体制,研究支援者というのをかつては持っていたのですが,運交金の減少とともに,その部分をどんどん削っていったという歴史を考えると,この大学共同利用機関において,研究支援者の教育というか,研究支援者の育成という役割を,実際に重要な機器を持っているところでやっていくというのは,とても意味のあるファンクションだと思うんですね。そういう意味で,この大学共同利用機関の問題,今日,取り上げてくださると聞きましたので,これは文科省として全体の人づくり,人全体の問題を考えるときに,あるいは共同利用の機器の共有,その支援みたいなことを考えるときの1つのきっかけを作ってくださったと思って,ありがたいと思っております。
時間が長くなって申し訳ないのですが,我々は今,次期の基本計画をやろうとしています。まだ固まってはいませんが,その中でやっぱり大きな柱になるのは,先ほど言った研究者のポストもありますけれども,我が国における人づくり,人をどう作っていくのかという課題です。これに関して,これは基本計画とやっぱり文科省全体,高等局,特に一緒に話をさせていただいて,安心してアカデミアの中で能力を発揮できるような環境をどう作っていくのかということをぜひ議論させていただきたいと思います。
これ,単に博士課程をどうするかという問題だけではなくて,その人の全体の人生のキャリアを考えて,それぞれの研究者がいかにも人生をかけられるような,そういう人づくりを高等教育行政の中で,文科省と一緒に議論させていただきたいと思いますので,そのときの1つのきっかけとして,この共同利用機関というのはとても我々がやり切れなかった,文科省でしかできないなということだと思っていました。正直,私たち,この共同利用機関ってよく分からないんですね。ましてや共共拠点になってくると,さらに分からない。そこに踏み込まれるということであれば,これはいろいろな形で裾野の広い研究力の問題を議論できるのかなと思って,今日,来させていただきました。
少し長くなりましたが,今のいただいたお題で言うと,そういうことを考えております。ありがとうございます。
【相澤座長】ありがとうございました。重要なポイントを指摘いただきました。それでは,そのほか。川合委員,どうぞ。
【川合委員】ありがとうございます。今日,ヨーロッパからなので,暗い部屋の中から参加させていただいています。2点ほど今の発表を聞いて整理したいと思います。1つは,WPIというシステムが小さい分野に固めたものでありますけれども,かなりいい成果を上げてきています。わずか十数年でこれだけの成果を上げているということを認識することが大事だと思います。今日,説明はされなかったのですけれども,WPI拠点に投資されているお金に,研究費は含まれていません。これは拠点形成のお金なので,設備費や人件費が主であって,研究費は別途,外部資金を皆さん稼いでいるわけです。
そうやって見ますと,個々の大学の成果,成績に比べてWPI拠点が高い効率で成果を上げているというところは大いに注目すべきであって,これは拠点としてのサポートが非常に重要であるということを示していると思います。拠点としてのサポートというのは,具体的に何かというと,一研究者が研究室をつくるときに,そこの設備やポスドクなどの人を配置などの基本骨格をサポートすることによって,日本の大学でもこれだけ成果が上げられるということをわずか10年程度の間に示した貴重な成果だと思います。
WPIは,本拠点10年で終わってしまいますので,その後アカデミーになりますが,ここから先が問題です。大学がこれらの支援を全部していくことが求められるので,この先のところで何が起きていかを分析することは,今後の日本の機関サポートの非常に良い参考になるというか,示唆されるべきものが含まれると思います。このようにWPIの成功が示すものは,研究者,即ち個々人が稼いでくる研究費だけでは成果の最大化には物足りず,研究室などの基本的な枠組を整えるシステム,即ち、機関が自らの意思で研究環境を整えるための財源が不足しているというのが一番の原因ではないかと思います。
もう一つは,共同利用・共同研究その他のところについて一言申し上げます。私は現職の機構長としてその現状を把握しております。共同利用機関法人というのは,設立から50年に渡り,今の日本の研究の底支えをしている大事なシステムです。先ほど御説明のところで,設備等についての評価がなかなかできにくくなっているということを説明いただきました。まさにそのとおりで,こういう分野ごとの拠点に人が集まってくる,その求心力というのは,その拠点にすばらしい研究者がいて,一緒に議論ができること。それプラス,そこに備えられている設備が当該分野の研究を支える中核設備として整備された状態にあり,そこに行けば研究が進展するという環境が整っていることが大事です。50年前に設立された頃に比べると,少し見劣りはしていますが,今でもこの機能が維持されていることが国内の分野ごとの政策にはプラスになっていると思います。
この共同利用機関法人と同様の機能を持っているのが,国際共同拠点,先ほど御紹介があった幾つかの大学にある大きな研究所でございますが,ここが一緒になって日本の一定分野の底支えをしてきています。共共拠点のほうは,投資金額が非常に小さいので,みんなが集まるという意味では昨日はしていますが,本当にその場で新しい研究を生み出していくためには,加えての資金が必要であって,もう少し強化できるといいとは思いますが,全ての大学での研究強化を目指すには,共同利用機関法人と国際共同利用拠点を中核にして,そこに共共拠点を結びつけて連携することで,よりよい支援の形になると思います。
一応,今のその2点,WPIから学ぶこと,それと共同利用システム,後者は日本特有でございまして,世界的には中国以外はないシステムです。中国で共同利用拠点に対応するのは,国家研究所ですが,その周りに大学を造るという形で,日本で言うと大学共同利用機関法人と連携した形で総合研究大学院大学がありますが,総研大の大学院生は共同利用機関を教育研究の場として受入れられています。中国の中央集権的な研究開発施策の中で,このシステムを模倣して拡大した形で使われているということは意外と知られていないのではないかなと思いますので,御紹介いたします。
以上です。WPIの支援費には研究費は含まれないということをちゃんと説明してください。ありがとうございます。
【相澤座長】ありがとうございました。
きちっと指摘がございましたので,文部科学省のほうでも十分に認識していただければと思います。川合委員は,ちょうど共同利用機関の長をされているので,今後この議論を展開するところで,さらに具体的なところでの御意見をいただければと思います。そのほか,いかがでしょうか。永井委員,どうぞ。
【永井委員】どうもありがとうございます。先ほど上山委員,川合委員がおっしゃられたことと重複するかもしれませんが,まず,研究費のことで申し上げますと,若手研究は結構成果を生んでいます。基盤Cもそうですが,若い人にやる気を起こさせるという意味で,ぜひ科研費の中の若手用の研究費を大事にしていただきたいと思います。
それから,何よりも流動性とか,ダイバーシティ,アイディアが交流できる場の設定が重要で,そこが日本と欧米の違いだと思います。WPIそのよい例だと思いますので,システム改革をセットとして大学改革を進めていく必要があります。先ほどから共同利用機関のお話が出ていますが,自治医科大学も実はこの恩恵にあずかっています。参考資料1の57ページに御紹介いただいていますけれども,自治医科大学には,実は立派な豚の研究施設がございます。
これはもともと内視鏡手術が発展したときに,患者さんからの寄附で,内視鏡手術のトレーニングセンターとして発足した施設ですが,これは簡単には作れません。今,ここにはMRI、CT,ICUもあり、病棟と同じような環境で実験ができます。これが今,手術のトレーニングだけではなくて,基礎研究から臨床研究,再生医療,移植医療,医療機器開発の拠点となって全国の共同研究利用施設として活用されており、外部資金もかなり獲得しています。ぜひこうした共同利用施設への支援をお願いしたいと思います。
こういう施設だけではなくて,いわゆる機能としての共同利用機構みたいなものもあります。臨床で言いますと,臨床研究をするための統合的な仕組みであるとか,あるいはITの先生方との共同研究の機構などです。ぜひそういう共同研究機構への支援をこれからより強化していただければと思います。
以上です。
【相澤座長】ありがとうございました。そのほか,いかがでしょうか。
【樫谷委員】先生,ちょっといいですか。
【相澤座長】はい。樫谷委員。
【樫谷委員】私,研究の門外漢なんですけれども,相当前にいろいろな改革ということで兼務したことがございまして,その改革が正しかったのか,間違ったのか,こういうことになると思うのですけれども,間違っている部分も今聞いていてあるのかなと思っていたのですけれども,あの当時はやっぱり,上山先生がおっしゃったように,身分が安定しないと,しっかりした研究ができないということだと思うんです。おっしゃるとおりだと思うのですが,ただ,あの当時の議論としては,やはりむしろ,競争関係が大事ではないか,期限も限定すべきではないかみたいな議論が相当あって,大体,そういうふうな仕組みにシフトしていったようなことだと思うんですね。
そうすると,今,あまり競争し過ぎてもいけない。あるいは判定もさせなきゃいけないというところの中の,この微調整みたいなものをどうやってやっていくのだ,誰がやっていくのだというところがポイントになって,多分,正解というのはないのではないかと思いますので,行ったり来たりしながら,ある着地点を見つけなきゃいけないので,非常に弾力的な発想の中で物事を進めていかないと,安定はいい,不安定が悪い。あるいは競争がいい,競争が悪いというような単純な図式ではないような,私,昔のことを思い出して感じましたので,確かに不安定ではちゃんとした研究はできない。
しかし,安定し過ぎて,むしろ,本当にすばらしい人もいらっしゃいますけれども,そうでもないような方もいらっしゃったような,当時ですね。記憶もありますので,そうすると,むしろ,そういう方には,競争関係を作っていくかみたいな,どっちかというと,そっちのほうを狙っていたんですけれども,今,本当にこのような,今御説明いただきましたような研究環境の中でも,どういう仕組みを作れば,上山先生がおっしゃるようなことになっていくのかというのは,本当の原因を追求していかないと,何か解決しないのかなと思いながら,過去のことの反省も含めて申し上げました。
以上でございます。
【相澤座長】ありがとうございます。服部委員。
【服部委員】よろしいでしょうか。
【相澤座長】はい。どうぞ。
【服部委員】ありがとうございます。冒頭の座長のお話,それから,上山先生や川合先生等の話を伺って,我が国が目指すべき研究力向上の実例としてWPIが実現してきたことがわかりました。そうすると,その次,どうやってこの裾野を広げていくかということが大きな課題になってくる。そういう観点からの取組が国際卓越研究大学であったり,地域中核・特色ある研究大学をつくることかと思います。
そこで採択される大学というのは,国際卓越研究大学が数校,それから,地域中核・特色ある研究大学が上限25校となっていますから,合わせて30校そこそこです。一方,国立大学だけでも86校,また私立大学も,何百校とあるわけで,研究力が上がる大学が国際卓越研究大学や地域中核・特色ある研究大学として創出できたとして,その次,そこでもう終わるのかどうかなんですね。ほかの大学は研究力ということは二の次にして,例えば教育を中心に,しっかり行うという方針を立てるのか。それとも,その残りの大学につきましても,持っている研究力を活かしながら,我が国の発展に貢献していく,そういう組織として強化していくのかということが,まだ見えてきていない。そこのところもしっかりと考えていくことが大切と思います。
参考資料の3ですけれども,財務のところ,12ページから,国立大学のグループごとに,いろいろな財務状況の分析が示されています。そこで,経常経費における人件費の変化をざっと見てみますと,AグループとFグループでは,平成16年から令和4年の間に増額しています。Aグル―プは,国際卓越研究大学を目指すような大規模大学で,Fグループは研究中心の大学です。
一方,グループE,G,Hでは減っているんですね。また,グループB,C,Dはほぼ一定,このグループは教員養成系であったり,単科の医科大学,工学系の大学です。結局,地方の総合大学,医学部あるなしかかわらず,そのグループの大学では人件費が減ってきている。先ほどの話にありましたように,教員が減っているのか,事務職員が減っているのかという内訳については,ここだけでは見えないのですが,研究を支援する人も含めて人をしっかり配置することが研究力の向上に必要だという話がある中で,人件費が減っているということは,ここのグループの大学については研究力を現状で上げていくのはなかなか厳しい状況にある。
気をつけなければいけないのは,既に2極化が国立大学の中で始まっていることです。大学全体の研究力を上げる方策として,一挙に上げるのは難しいから,まずは大学をしぼりこんで取り組むことは,分かります。それは分かりますが,それが進み過ぎてしまうと,ほかの大学の研究力が細ってしまう。A,Fグループの大学の研究力を支えている若手,例えば大学院生の中には,E,G,Hグループの大学を卒業した学生が進学していることは多々あるわけです。E,G,Hグループの大学の研究力が弱ってしまうと,研究者を供給していく元が絶たれてしまう。従って,裾野をしっかりと広げていくという取組は,トップクラスの大学を伸ばすということと,併せて考えていかなければいけないと思います。
さて,研究時間なんですけれども,研究はお金と時間です。研究時間をどのように確保していくかということにつきましては,参考資料1にありますようにURAを始め,いろいろな研究支援がされています。一方でまだまだ大学や個々の教員の意識に課題があるように思います。大学教員は,基本的に学内における自分に関わる全てのことは自分が決めないと落ち着かない,そういう意識が強い面があります。教員の業務は研究教育,それから,地域・社会貢献,管理運営,医学部であれば診療等があるわけですが,ある程度業務を分業をする意識を持たないと厳しいのかなと。全ての先生がオールマイティに業務をこなすような時代では,もうなくなってきている。
ある意味,教員の中で,業務に応じていわゆる専門家をつくりながら,それらを組み合わせて大学として一番パフォーマンスの上がる運営を行い,その結果として研究力が上がっていくことがいいのかなと思います。その具体策として分かりやすいのは,エフォートですね。教員の時間管理をどのようにしていくのか。研究のエフォートを半分以上取るためには,教育,社会・地域貢献,管理運営,診察等の配分をどのように管理していくかについて,各大学や,各個人そして,文科省も含めて,しっかりと考えていく必要があると思っています。
あと,言いにくいところではありますが,研究時間の確保については,法人化と関連がありますけれども,教員は労働者として労働時間については厳密に管理しなければいけない。上限がしっかり決まります。一日8時間として週40時間で,その中でエフォートを考えていかなければならない。
例えば高度専門人材として,何らかの形で,労働時間の柔軟化について,特に教授,准教授クラス,自分の判断で研究を進め,自分の責任で労働管理ができる,そういう者においては,労働時間の柔軟性を検討いただきたい。今はできないということは十分承知していますし,大きな問題であることは承知しておりますけれども,研究力を上げるという観点からは,そういうことの検討も必要かと考えます。
私からは以上です。
【相澤座長】ありがとうございました。
様々な観点からの御意見ですが,最後の労基法との絡みというのが,これは文部科学省からコメントいただけますでしょうか。
【井上国立大学法人課長】ありがとうございます。学校の中にもたくさんの職種があるので,皆さんがそうということではないですけれども,教員の方については,裁量労働制というのが広く入っている部分もあって,だからといって法外にずっとというわけではないというものがある程度のフレキシビリティが確保されているということと,あと,恐らく病院のほうでは,診療だけやっていらっしゃる方の働き方は,しっかりそこはいなきゃいけないとかやっぱりあるので,大分幅はあると思いますけれども,要は一般の何時間とかというような働き方とは,そこにかっきりと縛られているということにはなっていないということはメンションさせていただいて,あとは運用の中で何か問題があったりとか,あとノウハウで広めたほうがいいとか,制度で問題があるとかいうのが御指摘もいただけましたら,そこは深堀で議論していく必要があるのかなとは思っております。
【相澤座長】それでは,そのほかの御意見,いかがでしょうか。平子委員,どうぞ。
【平子委員】ありがとうございます。今の服部委員のおっしゃったことの中で,研究時間の確保のためには,やはり分業化の意識を持つことというのは非常に私は大事なことだと思っているんですね。研究というのは1人でできるわけでなくて,それぞれ,WPIの事例がいいケースだと思うのですけれども,やはりチーム力というのをどう発揮していくのかということが非常に大事になってくるという観点からすると,トップに立つ人がチームとしてどういう行動指針を持ったり,あるいはそれに基づいて各人,個々人の体系をどうしていくのか,しっかり評価をしてあげなきゃいけないということが大事なわけで,それによって初めてチームというのが1つの行動ができる体制になるということだと思います。
人間は,基本的には自分のやりたいこと,キャリアパスとか,パーパスというのを持っていますから,そこに基づいて彼らが自分の能力を発揮できるような,そういう環境づくりをしていくということが大事で,先ほど上山先生がおっしゃったように,安心してアカデミアで能力を発揮できる,こういった環境づくりが大事なのだということ,まさにそういうチーム力が問われるときになってきているのかなと思います。これは産業界ではよくあるケースで,航空会社なんか特に典型なんですけれども,お客様を飛行機に乗っけるためにいろいろな縦割りの機能があるんですけれども,その中で横串を刺して,お客様にどうすれば一番いい経験をしてもらえるのか,こういったようなことを考えるところがあるのですけれども,そういったことをやはり大学の中でもやっていくことが非常に有効なのではないかということなので,私の経験から言うと,このWPIの経験というのは非常に,今後いろいろなところで応用できるはずだし,ぜひしていっていただきたいということであります。
それからもう1点申し上げたいのが,先ほどの御報告で気になったのが,中国の躍進ですよね。これが,研究領域がどんどん広がっていて,コアペーパー数の数でいくと,コンチネント型よりもスモールアイランド型のところで中国が増えているという,こういうのが結構,日本の相対的な劣後を導いているということからすると,もう少し研究というものに対する考え方を変えていかなければいけないのではないかなと少し思いました。今日の基本的なKPIは,論文数とか被引用数というのがバンと出てきていたりするのですけれども,果たしてその研究力というのは,それだけで測れるものなのかどうかということだと思うんですね。研究って何のためにあるのかというところに,もう少しひもといて考えますと,やっぱり地球上に人類が起こしたいろいろな問題,現象面があるじゃないですか。そういったものに対して,そういった社会課題に対して的確な解を導くようなものという,これも非常に大事なもので,それ,無数にあると思うんですね。
決して論文に表れるものではなくて,そういった社会課題解決に結果的に結びついたものというのも,これも立派な研究の成果であるのではないかなと思うので,そういった観点からすると,私も,この場でも何回か申し上げていますけれども,実際に実業をやっている産業界とこのアカデミアの中で,どういった問題があって,それに対してどういう課題解決をしていくのかという,こういったお互いの情報交換とか,意見の応酬がある中で,それを実現して社会実装するという,こういったユースケースみたいなものが,もしデータとして取れるのであれば,それも立派な研究の成果ではないかなと思いますので,そういったものも今後1つの指標にしていっていいのではないかなと思います。
そこにやはり,私は,中央の官庁並びに地方の自治体の存在が大きいと思っていて,特に今日,77ページでしたか,最初のページの中で,非常に論点案,うまく整理されていて,私は基本的に全てこれ,賛成なんですけれども,77ページの上のほうのチェックマークのところの共同利用・共同研究拠点についてというところの中段ですか,「分野・地域ポートフォリオ戦略の下で,コミュニティに対する貢献度を踏まえた拠点に対する支援や改廃が行われる仕組みの実効性」というのがありますが,まさにこういったことが,さっき申し上げたように地域の中の課題をより深堀して解を導いていくというような,こういったことも研究としては非常に大事なことだと思っていますので,そういった仕組みをぜひ産官学,3つが一緒になって考えていく仕組みを整えていけばいいのではないかなと思います。
以上です。
【相澤座長】ありがとうございました。
ただいまの御指摘の科学技術指標に基づくところは,これはもう長い間の議論の渦が巻いているところでございまして,今日,私が2つのスライドで御紹介したのは,サイテーションに基づいたジャーナルにおける点であります。これは今,世界が共通してこの指標はまず使うというところでもありました。ただし,今日,文部科学省からこの資料を説明していただいたところには,そのほかの科学技術指標もこれだけありますよということを全部網羅しているところであります。ですから,それらをどう判断し,これからの施策展開をしていくかというところは,これは今後十分に議論をさせていただきたいと思います。
それから,先ほど上山委員からMITでも,もうサイテーションだけで,論文の指標だけでやっていないよというようなこともありました。これは同時に,サイテーションだけでも組織として,全体の力というか,そういうようなことを判断するのには,先ほどのような指標が有効なんですけれども,今度は個人の評価というところについては,これは世界的にも議論がかなり進んでいて,個人評価には直接こういうものを適用しないというのが1つのスタンダードになってきていると思います。そういうようなこともありますので,評価というところについては,十分な広い視野からの検討が必要だと思います。
それで,先ほど平子委員が指摘されたことで,チーム力ということを指摘されましたけれども,大学の研究の現状はチームを形成できるかどうかということがまず1つの大きな問題かと思います。そういうようなところで,先ほどの御指摘は非常にあれだと思いますが,むしろ,拠点の形成が重要だということを私も先ほど強調いたしましたのは,拠点ということになると,そのチーム力という形で動けるような,しっかりとした基盤に支えられて研究を進めるという体制がとれるわけですね。多くの大学の個々の研究者が対峙している問題は,1人ぼっちででもやらなければという立場の人たちが圧倒的に多い。そういうところをどうするかという問題があるかと思います。いずれにしても,その視点は大変重要なことだと思います。
川合委員,挙手されました。どうぞ。
【川合委員】ありがとうございます。今,最後に先生が,座長が指摘したところなのですけれども,今日いただいている資料って,実はある一部の資料だけですよね。大学を取り巻くところだけであって,文部科学省の中で科学技術系のところの資料は何も入っていないんですね。大きな研究所が研究成果を上げるために,大学の先生たちもある程度,一定量,巻き込んでやっているので,何か共同利用研の長としては,私たちのところを宣伝したい気持ちは山々なんですけれども,例えば理化学研究所であるとか,物材機構であるとか,そういう研究所が研究力向上にも関わっているので,何かもう少し広げたところの指標も出していただく必要があるかなと思います。
なぜそんなことを言うかというと,WPIというのは拠点で示されています。主にそこの大学の研究者が関わっているんですけれども,他大学の研究者もこの拠点に入っています。だから,大学間連携という大事な要素が実はWPIの拠点運営の中には含まれているということを少し意識していただければなと思います。今,法人化してからの,後の大学の運営で,かなり厳しく問われるのはやっぱり,大学間の競争,コンペティションだったので,それぞれの大学が自分たちのところで頑張っているんですけれども,今,座長から指摘があったように,小さい大学,大変なんですね。やっぱりそこにいらっしゃる方たちが一定の研究力を維持する上で,大きなところと共同できること,実質的には共同研究,やっているんですけれども,ここには学生さんが入ってきます。
学生さんの学位をどこから出すかなんていう問題があって,もう少し大学を超えた学位を出すシステム,ヨーロッパで言えばジョイント・ディグリーとか,デュアル・ディグリー,ダブル・ディグリーとか言われているやつですけれども,複数の大学で1つの成果に対して学位をあげられるような形をとると,小さな大学にいる学生さんも,大きな大学の指導者に一定量の指導を委託できる。もう少し広い意味で大学間での高度な研究でのネットワークを強化できるのではないかと思います。ドイツの例を見ると,大学なんかだけではなく,地域にあるマックス・プランクの研究所が大学を巻き込んで研究成果を上げております。
なので,1個1個の大学や研究機関の指標だけを見ていると,そこのつながりが少し見えにくいのかなと思いますので,もう少し深堀して,なぜ我が国とほかの国とで何か指標の縦軸の成果が上がらないのかというところも調べていただけるといいかなと思います。大学間で連携をもっと強化するのは大事で,特に国際卓越の大学がこれから恐らく数校,出てくるのだと思うのですけれども,そういうところが一定の幅をきかせて,小さい大学も巻き込んで研究力を強化していくような施策は非常に大事ではないかと思っています。
以上です。
【相澤座長】ありがとうございました。
ただいま川合委員が指摘されたことは,文部科学省にデータを依頼するというところが2点ございましたが,1つは文部科学省傘下の研究機関,国立研究開発機構ですね。ここに関するデータをお願いしたいという点と,もう一つは大学間連携,ここはかなり幅広の視野になるかと思いますけれども,そういう点についてももっと積極的なデータを収集していただければと思うのですが,少し文科省から対応をお願いいたします。
【生田振興企画課長】まさにおっしゃるとおり,今日,御提示したのは,どちらかといったら,大学回りを中心とした研究力というものに閉じておりましたので,少し事務局のほうで何が提供できるか。今まで整理してきたものとかもあると思いますので,少し整理したい。また御提供できるものはしていきたいと思います。ありがとうございます。
【井上国立大学法人課長】1点,いいですか。
【相澤座長】はい。どうぞ。
【井上国立大学法人課長】平子委員から御指摘いただいた点で,生田課長からの御説明の中,論文の話が多かったものの,当然,イノベーションというのも研究力の中に広く含めて大事だという認識は施策全体の中で,CSTIのほうでも持っていただいていて,26ページに,あっさりめではありましたけれども,共同研究とか,特許とか,あと最近だとスタートアップとかもありますけれども,そういうところもしっかりやっていくというところで,必ずしも同じ人が全部やっているわけではもちろんありませんけれども,その研究力を担っている大学としては,そういうところも非常に大事なものとして認識して,政策全体の中でもしっかり見させていただいているということは付言させていただきたいと思います。
【相澤座長】ありがとうございました。それでは,そのほか。福原委員,どうぞ。
【福原委員】ありがとうございます。各先生方の御意見に私も同意ですが,研究者にはそれぞれ職務上所属する大学なり組織というのがあって,研究者がこの制度上分属しているというか,別々の組織にいるということではありますが研究活動というのは,研究者個人の意識からすると,もうそういった大学だとか組織とか,こういったようなものにとらわれないで全国レベル,全世界レベルで考えられていると思います。先ほど孤立することがないようにという御指摘はそのとおりなのですけれども,結構,学会活動やいろいろな研究活動を通じて,自由に活動をしているということがあり,そのときに所属している大学や組織における職務による制約というのはかなりあると思われます。このことは研究を重視している大学であれば理解が進んでいるのだけれども,そうでないところであれば,研究がかなり教育学内行政等の制約も受けるでしょうし,また,大学以外の組織というところに所属していれば,そこでの職務というものに制約される。
そういう研究者が今何か立っている,所属している組織の制約を超えて,やはりこの協力できる体制というか,これは制度的にも考えていかなければならないことかなと思います。例えば運営費交付金の対象となる教員とはどういうものかとか,私学であれば補助金の対象となる専任教員とはどういうものであるかとか,こういった様々な財政措置に伴う制約というものがやっぱり,研究を重視するということに向けて何か制約になっていないだろうかということも,私自身も今,点検すべきことかというふうに少し思ったところです。
それともう一つは,上山先生がおっしゃったように,人材確保という意味では,分属している博士課程に在籍しているとか,分属しているところの助教であるとか,こういう形で,さらにテニュアが得られていない状況で,この時期を過ごさなければならないということは,これは日本の今後の研究を発展させるという意味では,早急にもっと力を入れて手当をしなければならないところではないか。博士課程に進学しようとする動機や,また,助教として,そこの組織に残ろうとする意欲を削がないような手当を是非すべきである。そういう意味では,共同利用機関というところに,各々に分属しないで、一定の研究者が所属できた上で,人材育成の役割を共同利用機関がこれまで果たしてこられた大きな役割に加えて,そういった人材確保,若手研究者,あるいは女性研究者の機会を確保するというような,そういった積極的な機能,これを強化していく必要もあるのではないかと思いました。
最後に1つ,それから,これまではやはり競争的資金というのは,独立した法人化した上で競争するということでありましたが,これからはもっと協調して連携していくべきだという一同の御意見だと思うのですけれども,その競争的資金といっても様々な資金があって,文部科学省関係だけではない,各省庁からの資金といったものも用意されていますし,自治体もありますし,もちろん,企業や,それに附属する研究所からの資金というものがあって,こういった競争的資金の競争にもうヘトヘトしているというところも中にはあるので,こういったようなものがもっと合理的に,ある研究に対して投下できる,ほかの国々に負けないような大規模な資金が分属してというか,分化して集まってくるというのではなくて,一挙にあるところに集まってくるような仕組みといったようなものも必要ではないか。
その場合には大学の枠を超えたというお話がありましたけれども,その大学というのは,設置形態を問わず,国立大学,私立大学の枠を超えた競争的資金,また,さらには国際的な枠を超えた資金の獲得といったようなものが必要ではないかなということを資料を拝見して思いました。総論的ではありましたけれども,私から以上です。
【相澤座長】ありがとうございました。それでは,上山委員。
【上山委員】最初に申し上げたところで,安定したポストが必要だということは申し上げたんですけれども,それは、競争的になり過ぎているから,そのポストをどこかで作らないといけないという意味で申し上げたわけではもちろんありません。実際のところ,産業構造そのものがフロンティアのところで非常に高度知識化しているということだと思うんですね。
だから,諸外国において,アカデミアの優秀な人を産業界が取り合っているという現状です。そのことはつまり、アカデミアのポストをどうするかとか,アカデミアの環境をどうするかということだけではなくて,我が国の今後生きていくような産業構造の問題に直結している。したがって,アカデミアを安定化させ,そこに優秀な人が来るようにしなければ,産業界も立ち遅れていくだろうという意識があるということです。
ですから,ポストを作って,何とかしてあげなきゃいけませんねということでは決してないということです。だから,まさに世界の動きを見ると,極めてハイレベルな人材の取り合いは,アカデミアと産業界の間で起こっている。そういうようなアカデミアの在り方を考えたときには,その研究環境の問題をちゃんとしなければいけないということが申し上げたかったことです。
もう一つは,世界の様々な国々の科学技術政策を見ていくと,ますますファンディングのシステムがミッションオリエンテッドになっている。大きな地球規模課題も含めてですが,どのようなミッションをアカデミアが果たすことができるのかということを求められるようになってきて,そのミッションと言われた設定の中に,僕は必ずしも応用研究だけではなくて,極めて基礎的な,ベーシックな,キュリオシティ・ドリヴンの研究がそのミッションを達成するために必要とされている。ミッションに対するソリューションを提供していくときに,ますます必要になってきているという意識があります。
ですから,産業界がビジネスとして成功するのは,地球規模課題に対する具体的なソリューションを提供していくということが,産業界にとっても大きなビジネスの種になるわけですから,そういうことで言えば,アカデミアを支えている公的な資金がミッションオリエンテッドになっていくということは,これは重ねて言いますけれども,基礎研究,キュリオシティ・ドリヴンの研究も含めて,そこのところを豊かにしていかないと,恐らくは産業界もグローバルな競争の中で,グローバルマーケットを取っていくことにはならないだろうと思います。そういう意味では,研究環境の改善というのは,大学をどうするのかという問題に閉じない,とても重要な国家的な使命なのだろうなと思っていますので,必ずしもポストを作って何とかしてあげましょうという話ではないということは改めて申し上げたいと思います。【相澤座長】2つの点で大変重要なことを指摘いただきましたが,安定したポストという本来の意図するところは,こうだということで今明快にしていただきました。この点については,次回予定しております教育の問題と連動することであるかと思いますので,この点については次回以降,検討させていただきたいと思います。
それから,ただいまファンディングの在り方について,福原委員からの御提案と,それから,今,上山委員,大変重要でありまして,これも本日,文部科学省から現在行っているファンディングの全体の姿を示していただきましたけれども,ここについてもう一度,今,世界が直面しているような状況から考えて,日本のファンディングは,これでよろしいかどうかということを含めて議論させていただきたいと思います。
それでは,そのほか,いかがでしょうか。
【樫谷委員】ちょっと質問,よろしいですか。
【相澤座長】はい。どうぞ。樫谷委員,どうぞ。
【樫谷委員】上山委員からいろいろ示唆されることが多くて,最初におっしゃったように,山を高くしようと思うと,裾野を広くしなくちゃいけない。じゃあ,裾野って何なのだといったときに,卓越研究というふうに皆さんおっしゃるのですが,卓越研究するためには,やはり裾野が広くないと恐らく駄目だと思うんですね。そのときに,その卓越研究だけやっていればいいのか,成果が上がっているのかというと,中国なんかの例を見て,あれ,裾野がどうなっているのかと思いまして,本当にああいう裾野が広がっていて,ああいう卓越研究ができているのか,たまたま卓越研究みたいなところに資金だけ投下したのでああなっているのか,それは私,そういうところは邪道だと思っていまして,本当に裾野が広くなければ山は高くならないというのは,そのとおりでございまして,日本の場合,裾野を広くするための努力というのは,どういうふうに実際,今なっているんですかね。
それがちょっと聞きたいと思って,今,御質問したんです。今,特に地方の国立大学,あるいは地域の大学,研究機関もいろいろあると思うのですけれども,そこの役割というのは,何も卓越していなくてもいいような気もするのですが,そこについては,どういうふうな考え方をすればいいのか,もしこういうことについて御興味がある方がいらっしゃったら,教えていただきたいと思って質問いたしました。
【相澤座長】ただいまの御指摘は,大変難しいことでありまして,これが常々難問でぶつかってきているところで,生田課長,何か一言。
【生田振興企画課長】ありがとうございます。今日,実は御説明した資料の例えば32,33,34辺りが,我々,日本の大学の,いわゆる裾野が広いというか,様々な地方大学でも強みを持った大学が結構たくさんあるというようなところを提示はさせていただいているところでございます。ですので,現状においても,こういうところをどうやって広げていくか。
まさに,今,これ,提示している32ページ目は,イギリス,ドイツ,繰り返しになりますけれども,第1,第2グループにかなり集中しているのに対して,日本は第1,第2,第3,第4と。さらに言うと,大学の数も,まあ,いいかどうかは別として,イギリス,ドイツに比べてかなり多い。その多い大学が,それぞれそれなりの,これも論文数だけがいいかどうかは御議論あるかと思いますけれども,研究力という意味において一定の成果を出しているというのが現状認識でございますので,逆に,こういった状況を今後我々として,どういう方向に持っていくのか。
そのときに,先ほどこちらからも論点として1つ出しております大学共同利用機関とか共共拠点,連携をつなぐ仕組みが日本独自としてもありますので,そういったものをどう生かしていくのか。それから,科研費とか,戦略とか,様々なファンディング,先ほど論点として座長からも言っていただきましたが,ファンディングの在り方みたいなもの,そういうものを多分,相対的に考えていくことが必要かなと思っております。ありがとうございます。
【相澤座長】これは今後のまた課題として継続的に。
【樫谷委員】じゃあ,結構,日本はバランスがいいということですね。そういうことを言っているわけではないんですか。
【相澤座長】そういうことではないとは思いますけれども。
【樫谷委員】イギリスとか,ドイツとか,フランスとか,すごい研究のあれが高いという話なのですが,これだから高いのか。日本はこれだから低いのか,その辺もしっかり検討しないと,ここの構造が大事ではないかと思うんですけどね。この構造をどう変える必要があるのか,変える必要がないのか,そこを検討しないと,いや,非常にバランスとれていますというのは,私なんかから見て非常にいいと思うんですけれども,だから,逆に問題なのだというところもないわけではないし。
【相澤座長】そうですね。両方,御指摘のとおりだと思います。
それでは,少し時間も押してまいりましたが,森田委員からよろしくお願いします。
【森田座長代理】ありがとうございます。私の申し上げたいことは,ほかの委員の方がかなりおっしゃっているので,つけ加えることはあまりないのですけれども,少しコメントをさせていただきます。1つは,ここで論文数の評価であるとか,いろいろ出ておりますけれども,今,私も若い大学院生の方とたまに会うような機会があるのですけれども,正直申し上げまして非常に優秀な方が研究者を目指さないという,そういう状況がかなり見られると思います。これは研究者だけではなくて,実は霞が関の人材もそうであるというのは議論されているところですけれども,将来,自分の職業として研究者を選ぶということについて,やはり躊躇する者が多い。
研究は好きでやりたいのだけれども,違う道を選ぶ。これはその時点の待遇の問題もありますし,やはり将来の可能性について,彼らは期待していない。確かに研究者として残られた方は,非常に高い能力を発揮されるかもしれませんけれども,裾野の問題が指摘されておりましたけれども,ここは本当に考えなければいけないところではないか。これは次回,教育も含めて御議論されるということだと思います。それに関して申し上げますと,なぜそうなのかというときに,やはり1つは大学の人事の在り方,教員を含めいろいろな職種の構成の在り方とか,そういうものを見直す必要があるのではないかというのが1つです。
私の場合は文系ですから,ほとんど個人営業であまり関係なかったのですけれども,やはり大きな研究室,ラボをベースにしてやっているようなところで言いますと,若い人たちに対してどうしても負担がかかってきているのではないか。それは全体としての人件費が限られていて,ポストの枠が限られているときに,上のほうが重くなってきているからではないか。これは高齢化の問題もありますし,高齢者の方がいかんというわけではないのですけれども,そこのバランスもデータが出ていたかと思いますけれども,昔に比べますと若い世代が数も少ないということと,もう一つはやはり研究を支える,先ほども話がありましたけれども,人材のポストというのが少なくなってきている。
そういうことから,研究を支える体制そのものがだんだん昔と比べて劣化してきているとは申しませんけれども,変わってきているわけでして,それが若い人たちが考える,特に海外の事情を知っている若い人たちの目から見て,日本の研究環境というものの魅力をなくしていると思います。そういう意味で言いますと,全体としての大学のマネジメントの話になりますけれども,若くて優秀な方にできるだけ多くの研究費と研究時間を投入していく。そういう仕組みを考えていく。それは時間という資源だけは,お金である程度解決できますけれども,現実にはなかなかできない。その辺りまで踏み込まないと,少し指標が上がった,下がったというレベルの話ではなくて,ますます劣化が進んでくるのではないかと思います。
それともう一つ申し上げますと,そういうことをきちんと行っていくためには,どうしても評価というものを,大学の中にもっと入れていく必要があると思っておりまして,どういうふうに評価をするかは難しいところですけれども,今日のお話もそうですが,大学でのこの話になりますと,もっと財源があればもっといろいろなことができるという話になるのですけれども,国立大学法人化のとき,前回お話ししましたけれども,お金もないし自由もない状態から自由を取ったということがあって,無限に財源を増やすということを前提にして解決策を考えるというのは必ずしも現実的ではないと思います。
そのとき,評価と関連して,今日も出ておりましたけれども,競争ということが非常に重要になってくると思います。競争は確かに大きな活力を生むのですが,これ,競争ですから、一面においては,勝者がいるとともに、他面で敗者も生まれてくるということですね。その場合,その敗者の人たちをどのように処遇するのか。そこの仕組みがない限り,いわゆる新陳代謝による効率的な形での資源配分というのは働かないと言えるわけでして,抽象的で申し訳ないのですけれども,ずっとお話を伺っておりまして,人材の話も含めてですけれども,その辺りのことも頭に置きながら,国立大学だけではないと思いますけれども,大学のあり方について考えていく必要があるのではないかと感じたところです。長くなりまして申し訳ありません。
【相澤座長】ありがとうございました。
本日も森田座長代理がきれいにまとめていただきましたので,次回への展望ということでさせていただきます。今日はやはりいろいろな観点からの課題が提起されたと思います。それぞれの課題,どれも簡単に解決できる問題とは考えにくいのですけれども,でも,そういう観点を捉えてまとめに移りたいと思います。そして,次回は教育面を中心として検討させていただきたいと思います。本日の研究の話も,結局は人材が出てくるんですね。こういうようなことで,研究と教育を切り分けることはできにくいのですけれども,今までこの種の会議で研究面をこれだけ重点的に議論したのは少ないのではないかと思います。今日は,研究振興局からこれだけたくさんのデータを出していただきまして,そして,今日,さらに追加の御疑問も出てきましたので,ぜひデータの整理,分析をよろしくお願いいたします。そして,次回は教育関係のところを,このような本日と同じような形でデータを提示させていただいて,それに基づいて課題を抽出していくということを進めさせていただきます。
それでは,これで本日のところは終了とさせていただきたいと思います。事務局から次回の予定をお願いいたします。
【春田国立大学法人支援課課長補佐】事務局でございます。今後の検討会の開催ですけれども,次回,第4回については,11月1日,月曜日,13時から15時を予定しております。
以上でございます。
【相澤座長】それでは,第3回の会議をここで終了させていただきます。本日は,御多忙のところをどうもありがとうございました。
―― 了 ――