国立大学法人等の機能強化に向けた検討会(第2回)議事録

1.日時

令和6年9月2日(月曜日)14時00分~16時00分

2.場所

ハイブリッド(対面・Web)開催 ※傍聴はWebのみ

3.議題

  1. 国立大学法人等の現状について
  2. その他

4.議事録

国立大学法人等の機能強化に向けた検討会(第2回)

令和6年9月2日

【相澤座長】それでは,定刻になりましたので,ただいまから第2回国立大学法人等の機能強化に向けた検討会を開催させていただきます。
迷走に迷走を重ねた台風が,本当にこんなにもさま変わりというような状態になりました。
幸いなことに,開催が危惧された今回が無事,大部分の方々の対面参加で可能となりました。
御多忙のところ御出席いただきまして,誠にありがとうございます。
それでは,本日の検討会も,対面・オンラインの併用という形にさせていただき,同時に,当初から全面公開という形で進めさせていただきます。
それでは,まず本日の議事等について事務局から説明をお願いいたします。
【春田国立大学法人支援課課長補佐】事務局でございます。本日の議事及び配付資料,資料1から参考資料2とございますけれども,次第のとおりでございます。過不足等あれば,事務局までお申しつけください。
また,本日,発言の際にはマイクをお手元にお持ちいたしますので,よろしくお願いいたします。
以上でございます。
【相澤座長】ありがとうございます。では,議事に入る前に,本日は前回御欠席でありました福原委員,まず御挨拶いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【福原委員】御指名を賜りました福原でございます。前回は公務の重複によりまして,出席をさせていただくことができませんでした。今回から参加をさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。
現在,日本私立学校振興・共済事業団の理事長職を拝命しておりますが,私自身は研究者,大学教員の出身でございます。
中央大学におきまして総長理事や学長などを務めさせていただきまして,法科大学院制度の発足以降は,弁護士としても実務に関与させていただいております。
公務といたしましては,大学設置・学校法人審議会の委員を長らく務めさせていただきました。最近,学校法人分科会では,今回の私学法改正のための特別委員会の座長などを務めさせていただきました。
そのようなことで,私学関係の活動が多いわけでございますけれども,大学基準協会の理事や認証評価の委員,また,中教審の大学分科会の委員,また,学術振興会では,J-PEAKSの審査委員を務めさせていただいたり,さらには,就学支援の新制度の見直し,検討の委員会の座長なども務めさせていただきました。そのような意味では,設置形態を問わない機関の高等教育に関連する議論に広く加わらせていただいておりますので,今回もそうした観点で議論に加わらせていただきたいと存じます。
しかしながら,諸先生のお顔ぶれを拝見いたしますと,私がここに参加させていただくに当たりましては,どうも私学から参加させていただいているという特徴が際立つように思いますが,今申し上げましたとおり,設置形態を問わない高等教育関係の議論に深く,広く加わってもおりますので,皆様方と御一緒に国立大学等の機能強化に向けた議論に参加させていただきたいと思います。
しかしながら,設置形態別にそれぞれ進化をしてきている制度というものがございますので,そういった制度間の比較なども視野に加えることも,私のこの場での役割の1つではないかというふうに思っております。そのような意味では,ここで機能の強化という題名がうたわれておりますけれども,どういったことに向けて,どのような機能を強化するのかということを考えるに当たりましても,今申し上げた立場を大事にしたいなというふうに思っています。
そこでまた,各論においても申し上げたいことはたくさんございますけれども,前回の議論につきましては,御説明は公務出張の新幹線の中でちゃんと聞かせていただきまして,皆さん方の御意見につきましては,お送りいただきましたこの議事録で拝読をさせていただきました。同じような御意見があったことを大変うれしく思いましたし,私も意を強くしたところがございましたので,それらについては今日,発言の重複は避けさせていただきます。
ただ,1つ,この機能の強化ということを考えるときに,国立大学が果たしてきた機能も,また他の設置形態の大学の機能も,時代とともに変化してきているわけでございます。かつて国立大学だけが担っていた機能といったようなものも,自治体との連携によりまして,公立大学が多く担うようにもなってきております。また,ボリュームという点でいきますと,私学が担うということも多くなってきているのではないかというふうに思うところでございます。
そういう意味では,国立大学として,国公私立の設置形態を問わず,これを先導すると,また,その中核をなすべき機能というようなものが中心に議論されるのではないかと思います。さらに,国立大学ならではの機能というもの,公立,私立という設置形態では実現がなかなか難しいといったようなものを,どのように国立大学が,先ほど申し上げました,設置形態を問わない大学を先導し,またそれの中核となるのかという観点で議論ができればというふうに思っております。
また,国立大学でも大規模都市の立場での大学と,地方の国立大学というような形では,機能といっても大変違いが出てくるのではないかと。一律の制度や,一律の扱いではいかない。組織においてもそうかと思いますが,そういった点につきましても,私立大学においても同様の規模別,性質別の機能というものも考えてきておりますので,議論に加わらせていただければと思います。
長くなりましたけれども,そのような観点で加わらせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いをいたします。
【相澤座長】どうぞよろしくお願いいたします。今,お話しいただいたことは,この会議の設置目的にぴったりでございますので,どうぞ御貢献いただければと思います。また,後ほど具体的な御意見については伺わせていただきます。
本日も,前回に引き続きまして,国立大学法人等の現状について議論を行うこととしております。議論に入る前に,今後の検討会の進め方について認識を共有しておきたいと考えます。つきましては,資料の1を御覧いただけますでしょうか。これは,本検討会の設置要綱であります。その2番目にあります検討事項を見ていただきたいと思います。
法人化から20年を経て,以下の現状分析についてということで,財務,それから規制緩和等の制度の活用状況,人事給与マネジメント改革の状況,これが3つ一束になっております。その他ということになっているわけです。この設置要綱に基づきまして,本検討委員会としては,今年いっぱいかけて現状の分析と,それから課題は何かということに重点を置いて議論を進めていただきたいというふうに考えます。
そして,今年の年末には,中間取りまとめというような形で,それらを整理した形にしておきたいというふうに考えます。来年になりまして,それらの課題について,どう展開していくかというところに議論を移し,進めたいというふうに思います。
そして,その2つのところに検討事項をまとめてありますので,どうぞ御理解をいただければと思います。
年内のこの検討会でありますけれども,これから各回に中心のテーマは設定させていただいております。そして,本日は前回に引き続いて財務の状況,それから規制緩和の活用状況,人事給与マネジメント改革の状況に関する分析,そして,その課題,これらを中心に議論を深めたいと考えます。
次回以降は,先ほどの設置要綱の検討事項の4番目にあります,その他事項でありますが,教育・研究等に関する現状分析と課題の抽出とさせていきただきます。
議論の進め方ですけれども,国立大学を取り巻く国内外の環境の変化を踏まえて,国立大学のあるべき姿というものが,重要課題として上がってくると思います。これについては,特定の検討日を決めるわけではなく,関連するそれぞれのところで対応して出していただければと思います。このことは,全体の取りまとめのところでも重要な位置づけになりますので,ぜひ御理解いただければと思います。
それでは,以上のような進め方で対応させていただきますが,いかがでしょうか,私が今申し上げたようなことについて何か御意見等がございましたら,よろしくお願いします。よろしいでしょうか。それでは,そのような進め方をとらせていただきます。
それから,もう一つは,国立大学法人を取り巻く様々な課題については,本検討委員会以外にも関連の会議体があると存じます。それぞれの会議体が進めていることについては,どのような状況かということは,適宜,事務局より報告をいただければというふうに思います。
特に,中央教育審議会の高等教育の在り方に関する特別部会,ここにおいて議論が今展開されている状況であります。ここについては,現時点での状況を事務局から説明いただけますでしょうか。
【吉田高等教育企画課課長】失礼いたします。高等教育企画課の吉田でございます。それでは,資料2の中教審の特別部会におきます議論につきまして,簡単に御紹介を申し上げたいと思います。
こちらの議論でございますけれども,昨年9月に盛山文部科学大臣から中央教育審議会に対しまして,急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方について,諮問が行われました。その後,大学分科会の下に高等教育の在り方に関する特別部会を設けまして,これまで8回にわたって審議を重ね,8月8日に中間まとめを公表したところでございます。
それでは,資料2の概要に沿って御説明申し上げます。まず,1ページ目でございます。高等教育を取り巻く状況をまとめているところでございます。
(1)は近年の社会を取り巻く変化といたしまして,18歳人口の減少,それから生産年齢人口の減少に伴う労働供給の不足,あるいは人材需要の変化,東京一極集中も踏まえた地方創生の現状などをまとめております。特に少子化につきましては,昨年生まれた子供の数が72万7,000人と大幅に減少しているという状況がございます。このような急速な少子化につきましては,私どもの試算では,中間的な規模の大学・短期大学などが毎年90校程度減少していくような規模ということでございます。
一方で,大学進学率は右肩上がりに上昇している状況でございまして,現在約60万人ということで,1966年から考えますと倍増しているというような状況でございます。そうした状況を踏まえまして,現在の大学から専門学校までを含めた進学率は8割を超えている状況でございまして,今後さらに進学率の上昇が十分見込めない中で,今後の現在の規模を維持していくことが非常に難しい状況にあるということが,問題意識としてございます。
続きまして,(2)が高等教育を取り巻く変化という形で,8項目ほどまとめております。マル1は,初等中等教育段階の学びの変化,以下,地域間格差でございますとか,留学生やリカレントの状況などについて取りまとめております。
(3)右側ですけども,こちらは,これまでの高等教育政策といたしまして,ここ二,三十年の高等教育政策全体を振り返りながら,量に関する政策,質に関する政策,あるいは修学支援や大学運営に関する状況につきまして整理をした上で,今後に向けてというところで全体の規模の適正化や,高等教育機関間の連携,再編・統合の取組,地方の高等教育機関が果たす多面的な役割なども考慮したアクセス確保の重要性などについて,記述させていただいております。
2ページを御覧ください。第2といたしまして,今後の高等教育の目指すべき姿を示しております。(1)我が国の「知の総和」の維持・向上といたしまして,我が国において未来を担う若者が新しい価値を創造し,人類が直面する課題の解決に貢献するとともに,地域社会の持続的な発展を担っていくためには,「知の総和」(数×能力)を維持・向上することが必須としております。
その上で,(2)の高等教育政策の目的といたしまして,教育・研究の質の向上,社会的に適切な規模の高等教育機会の供給,地理的または社会経済的な観点からのアクセスの確保による高等教育の機会均等の実現を掲げております。これらの3つの目的でございますけれども,常に調和するというものではございませんので,トレードオフの関係になることもあり得るということでございます。そのため,3つの目的をバランスよく,かつ効果的に達成するための制度や資源配分の在り方を検討することが重要といたしております。
(3)は,それらを進めていく上で重視すべき観点といたしまして,8項目ほどまとめております。時間の関係がありますので割愛させていただきますけれども,教育内容の観点から,マル8のその他関係機関との接続や,連携の強化といったところまで,8項目にまとめさせていただいております。
続きまして,3ページを御覧ください。第3に,今後の高等教育政策の方向性と具体的な方策をまとめております。1つ目の柱は,教育・研究の質のさらなる高度化でございます。知識基盤社会におきましては,学生一人一人の能力を最大限高めることが必要であることとした上で,学習者本位の教育のさらなる推進,多様な学生の受入れの促進,大学院教育の改革,情報公表の推進,この4項目を掲げております。
それから,真ん中でございます(2)が学校等教育全体の規模の適正化でございます。学生数の不足などから,経営悪化によります教育・研究の質の低下の回避などのために,規模の適正化が必要とした上で,18歳で入学する日本人学生以外の受入れの拡大でございますとか,マル2にございますような高等教育全体の規模の適正化に向けた支援に関して,こちらで触れさせていただいております。特に高等教育全体の規模の適正化に向けた支援といたしましては,厳格な設置認可審査の実施等のほか,改革やチャレンジに取り組む大学への支援の強化,連携の促進や再編・統合の推進などについて進めていくこととしております。
右側,3つ目が,高等教育のアクセスの確保についてでございます。規模の適正化を図りつつ,地域における質の高い高等教育の機会の確保が必要とした上で,地理的観点,または社会的,経済的観点からのアクセス確保を掲げております。
マル1にございますように,地域の高等教育機関や地方公共団体,産業界などの各地域の関係者が,地域の人材育成の在り方について議論を行う場を構築するとともに,各高等教育機関や地域において検討を促すための仕組みの整備といたしまして,コーディネーターなどの人材の配置,地方公共団体における大学振興の担当部署の整備,国における司令塔機能を果たすための組織整備などを示しております。
最後,4ページ目を御覧いただければと思います。第4に機関別・設置者別の役割や連携の在り方でございます。(1)は機関別の役割でございまして,大学や短期大学などの機関別の役割について示すとともに,それぞれの特色に応じた高等教育を展開するということを掲げております。
(2)が,設置者別の役割というところでございます。こちらにつきまして,特に大学を念頭に,国立,公立,私立のそれぞれの設置者別の役割について触れさせていただいております。この役割や機能を踏まえつつ,各大学のミッションを見詰め直して,時代の変化に応じて刷新し,自らの行く末を定めていく必要があるというふうになっております。特にこちらの部分につきましてが,この検討会と連動してくるところかなというふうに考えているところでございます。
最後,一番下,5番目でございますけれども,高等教育機関改革を支える支援方策の在り方についてまとめております。マル1では,機関補助と個人支援のそれぞれの特徴を踏まえた公財政支援の在り方,マル2におきましては,授業料等を含みます個人・保護者負担の在り方,マル3は,企業等からの寄附金や社会からの投資の拡大等,多様な資金調達を通じた経営基盤の確立・強化の在り方,こうした3つの観点から,引き続き議論を重ねていくこととしているところでございます。
この中間まとめにつきましては,今後さらに特別部会,あるいは大学分科会におきまして審議を重ねていただき,今年度末までに一定の結論を得る予定で,引き続き議論をしていただく予定にしております。
簡単ではございますけれども,御説明,以上でございます。
【相澤座長】ありがとうございました。それでは,早速議論に入りたいと思います。まず,資料3に前回の会議における御意見の概要をまとめております。これにつきまして,事務局から説明をお願いいたします。
【田井国立大学法人支援課企画官】国立大学法人支援課企画官の田井でございます。資料3の説明に移ります前に,一言,先ほどの資料2の説明に加えさせていただきます。本検討会において御議論いただいています内容につきましても,先ほど御説明いたしました中央教育審議会の特別部会に報告させていただき,そこでの議論に,議論の要素や観点を盛り込んでいきたいと考えておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。
それでは,資料3の説明に移らせていただきたいと思います。資料3を御覧いただければと思います。第1回の会議でいただきました主な御意見について概要をまとめさせていただいておりますので,御説明いたします。下線を引いている部分を中心に御説明をさせていただきます。
まず,1ポツの社会の変化の中での大学の在り方,大学という組織の在り方につきましては,教育における国際化の重要性,優れた人材を輩出し,良い研究成果を出すために最もふさわしい組織形態を考えていく必要性,法人や大学の統合が現状では各法人の意思に頼るものになっていることが適切なのかといった点について,御意見をいただきました。
なお,関連資料といたしまして,本日の配付資料のうち,御意見に関連する箇所を参考に記載させていただいておりますので,必要に応じて御参照いただければと思います。
次に,地方国立大学の在り方については,新たな産業をつくるための人材養成という,地方国立大学の役割の重要性を踏まえ,各大学が変わっていく必要があること,そのための支援の重要性について御意見をいただきました。
次に,2ポツの法人化に関して,法人化は各大学の自由度を高めるという意味では重要な改革であり,自由とお金,両方要求しても難しいのであれば,むしろ自由を獲得すべきという考え方であったこと。また,他の行政分野を含め,単に民営化,自由化しただけではうまく回らないことも分かってきており,国の関わり方やルールづくりを考えていく必要があること。自由度が増えたことは経営においてプラスである一方,現場では改善が必要な点もあること。
2ページ目に移りますが,法人化の趣旨が十分に現場に認識共有されなかったなどにより,自由度を生かして必要なリソースを集める取組が必ずしもうまくいっていないこと,また,法人化は各大学に改革を問いかけるものであり,各大学の考え方も明らかにしながら,国立大学法人がどうあるべきかを議論することの必要性などについて御意見をいただきました。
次に,3ポツの国立大学の機能強化の在り方,(1)の基本的な考え方については,ミッションの重要性に関連して,各法人のミッションを踏まえた機能強化を評価する評価軸の重要性や,ミッション達成のために必要な資源を投じる必要性について,機能強化に必要な視点に関連して,これまでの各大学の改革の状況を踏まえて議論する必要性,国の予算が総じて増加傾向に動くとは考えにくい中で,いかに組織全体を活性化するかが課題であること,地方の教育を支えるという国立大学の役割を踏まえ,地域に分けて考える必要性等について御意見をいただきました。
3ページ目に移りますが,(2)のガバナンスの在り方については,透明性を持って執行部を決めていくプロセスの重要性,トップの選考の在り方,責任,ガバナンス体制の検討の必要性に関する御意見をいただきました。
次に,(3)の財務基盤の在り方,マル1の教育の質向上に向けた財務基盤の在り方については,アメリカなどでは国際競争力のある人材育成のための教育コストの増大に対応するため,学ぶ機会の平等を担保しつつ,学費を上げてきた状況にあることや,教育に対する公的支援の必要性,寄附金を増やす取組の必要性に関する御意見をいただきました。
マル2の研究力強化に向けた財務基盤の在り方については,4ページ目にかけて,大きな研究開発の流れが公的機関から民間に移っている中で,国立大学が他に資金を回していくべきかという点,長期安定的な資金の重要性,各法人が研究の芽出しを強化できる財務環境の重要性,地方大学における研究力強化の在り方などについて,御意見をいただきました。
また,マル3の外部資金等については,外部資金は使途目的が特定されており,間接経費も自由に使えるものではなく,将来に向けての基盤整備には使いづらい旨の御意見。
(4)の人事給与マネジメントについては,国として給与を上げる施策をとっていく中で,国立大学法人がどう考え,対応していくかが極めて重要であることなどの御意見をいただきました。
これらの点につきましては,本日,資料5として関連する資料をお示ししておりますので,後ほど御説明をさせていただきます。また,人的資源に投資し,価値を生み出す観点から人事の仕組みを考えるべきであることについても,御意見をいただきました。
5ページ目に移ります。(5)の教育・研究の評価については,本検討会における機能強化策の議論においては,成果の有無が分かりやすい研究と,そうではない研究や教育について分けて議論すべきであるという御意見。
(6)の教育の質の向上については,アメリカでは各大学の取組として,イギリスでは,公的枠組みとして,教育の質向上の取組を行っているが,日本ではこのような取組が不十分ではないかという御意見や,クリエーティブな人材養成を行うための民間セクターと連携した新しい支援の枠組みの必要性などについて御意見をいただきました。
また,(7)の大学間連携については,各大学が強みに重点化していく結果,カバーできる教育分野が減ることへの対応として,大学間連携,ジョイントディグリー,ダブルディグリーなどを国内に広めていくことが重要であるという御意見。
6ページ目に移りますが,(8)の附属病院については,大学病院の収支の管理の在り方,高度医療や地域派遣などの附属病院の使命を法令上位置づけることの必要性,教育・研究機関と経営体のハイブリッドの仕組みをつくる必要性などの御意見をいただきました。
これらの点や,また本資料に記載のない新たな観点について,引き続き御意見をいただき,本資料を充実させ,中間まとめにつなげていきたいと考えております。
また,議論に当たり,必要と考えられるデータ等につきましても,御意見をいただければと考えております。
続いて,資料4について御説明させていただきます。冒頭に,座長から言及いただきましたとおり,本日は前回に引き続き,検討事項のうち,財務の状況,規制緩和の活用状況,人事給与マネジメントの改革の状況に関する分析や課題を中心に議論を深めていただきたいと考えております。
本資料は,第1回の会議でお示しした資料に一部資料を追加したものでございます。追加した部分をお示しいたします。まず,25ページから27ページでございますが,第1期から第3期の中期目標期間における運営費交付金の仕組みの概要を追加させていただいております。
また,29ページに第4期の運営費交付金におけるグループ分けを,30ページに運営費交付金の「成果を中心とする実績状況に基づく配分」に用いられている共通事業の資料を追加しております。
また,資料が飛びますが,64ページから67ページにかけまして,前回お示しした学部学科の見直しの状況に加え,研究科・専攻の見直しの状況を追加させていただいております。資料4については,以上でございます。
続きまして,資料5を御覧いただければと思います。第1回でいただいた御意見に関連しまして,2点ほど資料に基づいて御説明をさせていただきます。まず,1ページ目を御覧いただければと思います。こちらは,前回の会議で,給与の上昇に関連する御意見をいただいたことに関連しまして,法人化以降の国家公務員の人事院勧告の状況についてまとめたものでございます。
国立大学法人は人事院勧告の直接の影響は受けませんが,国立大学法人法で準用する独立行政法人通則法では,役職員の給与等の支給基準は国家公務員や民間企業の給与等を考慮して定めなければならないとされており,各法人において人事院勧告も考慮した給与が定められているところでございます。
グラフは,法人化時を100とした場合の法人化以降の推移をお示ししております。平成21年度以降は前年度からのマイナスが続き,平成24年度に96.5まで下降した後,上昇に転じ,令和6年度は105.7となっております。なお,令和6年度勧告においては,おおむね30代後半までの職員に重点を置いた改定がなされているところでございます。
続きまして,2ページ目以降は,国立大学戦略室長の邉田より御説明いたします。
【邉田国立大学戦略室長】引き続きまして,競争的研究費及び民間との共同研究における間接経費の取扱い等について,御説明させていただきます。いろいろ取組が進んでいるところと,進んでないところがありまして,そういったところについて,現状をお示しするというところでございます。
まず,2ページ目ですけれども,こちらは競争的研究費における間接経費の取扱い等ということで,競争的研究費の間接経費の執行に係る共通指針,これ,関係府省連絡会申合せで全府庁的に使われているところでございます。そこにも間接経費の使途として例示をしてございまして,競争的研究費を獲得した研究者の研究開発環境の改善,研究機関全体の機能向上に活用するために必要となる経費に充当すると。今回,令和5年5月の改正において,その下の別表1のところが赤くなってございますけれども,将来的なところにも一部使えるようになったということを示ししているところでございます。
保有する減価償却資産の取替えのための積立を含むというところでございますけれども,減価償却引当資産等々に組み入れることによって,将来的なところにも使えるように。単年度ではなくて,将来的なところの施設整備のものも使えるようになったというところでございます。
続いて3ページでございます。こちら,競争的研究費における間接経費の使用状況,これは全府省分のものでございますが,大学に特化したものではございません。一応,令和4年度でございますので,先ほどの新しく追加されている使途というか,そういうところには対応していないところではございますけれども,実績として現状をお示ししたものでございます。
一番下を見ていただくと,管理部門に係る経費,研究部門に係る経費,その他のところでも,灰色の部分が施設整備関連経費,青の部分が人件費,その他の経費というふうな形で,間接経費から使用されているという状況でございます。
続きまして,4ページ目,5ページ目につきましては,民間企業との共同研究における間接経費等の設定状況ということでございます。一番上に産学連携による共同研究強化のためのガイドラインの策定と書かせていただいておりますけれども,こちら,文科省と経産省の連携でこういうガイドラインを策定しているところでございます。その前後というか,それが始まってすぐの状況と,今の状況をお示ししているというところでございます。
ということで,下のほう,平成29年度実績の抜粋が4ページで,5ページが令和4年度の実績の抜粋となっております。
ごめんなさい,4ページをそのまま見ていただきまして,4ページの中ほど,(2)と書かせていただいておるところなんですけれども,民間企業との共同研究に係る間接経費の直接経費に対する割合ということで,特に国公立大学等を見ていただければ,これ高専も入っているんですけれども,平成29年度実績においては,10%から15%の間接経費割合というところが大勢を占めているという状況です。
その下,戦略的産学連携経費設定状況でございますけれども,戦略的産学連携経費については,下に※を置かせていただいている,そういった経費なんですけれども,28年度6件,29年度9件ということです。
1枚おめくりいただいて,5ページ目に行っていただきまして,それが令和4年度実績というところで,各大学の取組をガイドラインも含めて,追補版等々,FAQ等々を作成させていただいて周知に努めてきた中で,各大学,しっかり取り組んでいただいています。
国立大学等のところでございますけれども,令和2年度,3年度,4年度の実績として,民間企業との共同研究に係る間接経費の直接経費に対する割合のところでは,赤いところが大勢を占めているというのが分かります。赤いところというのが30%以上で設定しているということで,この何年間においても,こういった民間企業との共同研究における間接経費の設定が大きく変わってきていると。努力してきているというところでございます。
その下,戦略的産学連携経費の設定状況もどんどん増えてきているというところでございます。
以上でございます。
【田井国立大学法人支援課企画官】続きまして,資料6の説明に移らせていただきます。こちらも,資料4と同様,第1回の会議でお示しした内容に,一部資料を追加させていただいております。具体的には,3ページ目,4ページ目でございます。法人化前後の国立大学法人の再編や,大学への支援策等に大きな影響を与えた政策として,2001年の遠山プランに関する資料を追加させていただいております。
資料6については,以上でございます。
最後に,資料7を御覧いただければと思います。先日公表されました令和7年度の概算要求の内容について,特に本検討会の御意見の中でも言及いただいております,国立大学法人の基盤的経費を中心に,御参考に御説明させていただきます。
6ページを御覧いただければと思います。令和7年度概算要求では,国立大学法人運営費交付金等として,右肩の数字の合計でございますが,対前年度370億円増となる1兆1,205億円を計上しております。具体的には,国際頭脳循環の実現や研究力強化等に向けた教育研究組織改革への支援,また,DX化に資する設備等の整備を通じた業務効率化の推進,及び教育研究等の基盤的な設備整備や,維持・継続に必要な環境整備を推進するための経費などを要求しているところです。
事務局からの資料の説明は以上になります。どうぞよろしくお願いいたします。
【相澤座長】ありがとうございました。それでは,ただいまの説明に対して御質問等ございますでしょうか。御意見については,この後,伺わせていただきます。御質問については,よろしいでしょうか。どうぞ。
【樫谷委員】資料7の中で,御説明いただいたのかも分かりません,ちょっと分からなかったので,国立大学法人の関係の予算というのは,どこに出ていましたっけ。
【田井国立大学法人支援課企画官】失礼いたしました。今,画面のほうに映させていただいております,国立大学改革の推進というところで,ここに国立大学法人の基盤的経費であります運営費交付金等につきまして,予算額をお示ししているところでございます。
先ほど御説明させていただきましたとおり,右肩の数字の部分でございますが,対前年度370億円増となります,1兆1,205億円を基盤的経費等として計上しているところでございます。
以上でございます。
【相澤座長】よろしいでしょうか。そのほか,いかがでしょうか。
それでは,御質問は以上とさせていただきまして,これから,ただいまの説明も含めて議論に移りたいと思います。先ほど説明にありました,前回の意見の概要ですけれども,非常に多岐にわたっており,個別事項から全体的な議論も出されています。この内容を積み重ねながら,年内取りまとめを行っていく予定ではありますけれども,これから議論していただきたいのは,これらについて議論を深めるということと,それから,新たな観点から論点を出していただくことです。
それでは,前回,御意見をいただいた内容について,さらに議論を深めたことでも結構ですし,新たな観点から出していただくことでも結構です。ただ,本日は,先ほど申し上げましたように,財務関係の3点のところを中心にして議論をしていただければと思います。
まず前回御欠席だった福原委員,先ほど冒頭にかなり核心的なことをお話しになられましたが,よろしくお願いいたします。
【福原委員】先ほど,自己紹介に加えて,私がこの会議に参加させていただくに当たっての所信とも言うべきものを申し述べさせていただきましたが,ただいまの説明に関して,なお少し全般的な所見を申し述べておきたいというふう思います。
まず,中教審の中間まとめにつきましては,私も大学分科会の委員の1人として加わらせていただいておりますけれども,「知の総和」という言葉が出てきておりますことに関しましては,大変魅力的であると同時に,マジックワードになってしまっておりますので,この点につきましては,単純な知の総和ではなくして,シナジーを生かした機能的な,機能の高度化という意味での総和というふうに理解をしているところであります。
それから,連携ということが随所で規定されておりますけれども,これが適正規模を目指すという意味での連携というふうに位置づけられておりますが,すなわち費用とか,負担といったようなものを軽減・合理化するという意味での連携というふうになっている。ただ,それだけではなくして,私は,連携というのは,そのことによって新たな何かの価値を生み出すというような連携でなければならないと。
とかく連携ということになりますと,私学同士,また国立同士といった連携が大学間では求められます。やはり,地域を中心として,国立大学が中心となった,設置形態を問わない大学間の連携,また自治体,その他の共同機関との連携といったようなものが視野に入るべきだというふうに,私自身は思っておりますし,今後,中教審においても,そのように発言したいなと思っております。
それから,もう一点だけ申し上げます。やはり,国立大学法人等の機能といった場合には,個々の大学の果たす機能といったようなものは,この国立大学法人化によって制度が整備され,また改善されていることによって,大きく機能が発揮できておりますし,それは自立性が高まってきたからだというふうにも,私は見ております。
国立大学全体として果たす機能というものが,時代の変化とともに発揮されているかということになりますと,ここの部分は,先ほど全体の説明がありました財源の問題ですとか,あるいは全体の配置,これも従来どおりの配置の上に考えられていますし,それから,定数の配分につきましても,所与のものとして継続されており,再検討が求められます。
全体的には,財務関係,これが今日も議論になるかと思いますけれども,それぞれの法人にとっては十分とは言い難い状態が続いていると思われます。その辺で,自立性を尊重するという形でのこれまでの成功体験というものに加えて,思い切ったアウトリーチ型の,全国的な,全体として国立大学の果たすべき機能というものを明確にした上で,個々の大学の機能を高度化していくということが必要ではないかと思った次第であります。
前回の先生方との周回遅れを取り戻そうとして懸命でございますので,以上とさせていただいて,あとは個別の論点におきましてまた述べさせていただきたいと思います。冒頭に機会をいただきまして,ありがとうございました。
【相澤座長】ありがとうございました。では,これから各委員からの御意見を伺います。各委員,対面で参加されている方は名札を立てていただけますでしょうか。それから,永井委員においてはオンライン参加でございますので,挙手のところを押していただくという形で表示していただければと思います。
ということで,どなたからでも結構でございます。御発言よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。
川合委員,御発言ありますか。どうぞ。
【川合委員】ありがとうございます。前回に幾つか申し上げた点とも共通して,中教審の中間まとめは大変よく書けています。もう一歩踏み込んで国立大学のあるべき姿を押し出していくことは必要では有りますが,大学の自律を実現するために財源を必要とすること,加えて,非常に大事だなと思いましたのは,知の総和という書き方で,質を上げつつ,数も要りますと明記されているところです。
数について私の理解では,国内で生まれてくる18歳人口の数だけでは,発展を期待するこの国の経済を支える人材数には足りないことは自明で,そういう観点からも,大学にはグローバル化が求められています。
グローバリゼーションを振興する上で,大学院だけにグローバル化を入れても,全体の質と数を向上するには弱く,学部の段階から一定比率を確保して,最終的に国内で必要とする人数を世に出していくという定量的な考察が必要だと思います.中教審の中間まとめを拝見し気がついたことを述べた次第です。
もう一点,高く評価するところは,出口の質の保証に触れているところです。大学に入ることが目的化しているこの国の考え方を転換しないと,質を保証した人材育成の実現かが遅れをとっているという思いがございます。この点も財政問題と多少関係があります.大学の教育を評価する観点を,入学者を全て卒業させるという考え方から,学習者本位の教育の在り方に転換する必要を感じております.大学入学の年齢は18歳でスカラ,すでに成人している学生に対して,本人の責任で教育を受ける権利とそれに伴う義務を与えるという考え方が大事だと思います。
言い換えると,教育の機会は,できるだけ高く与え,その結果についてもきちんと評価して,質を保証できる人材を卒業させて世に出していくという大学の在り方に切り替えていく必要があるかなと思います。
今のところはこのぐらいございます。
【相澤座長】ありがとうございました。それでは,永井委員,挙手されておりますでしょうか。どうぞ。
【永井委員】ありがとうございます。永井でございます。大学病院のことを中心にお話しさせていただきますが,大学病院が大変な状況にあるということは前回お話しいたしました。財務に関して申し上げますと,まず多くの声が出てまいりますのは,大学病院の貸借対照表をB/Sを独立させてほしいということです。大学病院の利益再投資というのが大学本部に委ねられており,損益計算書というのは公表されていますけど,大学病院の貸借対照表は公表されていないという問題がございます。キャッシュフローを含めて,財務3票をぜひ公表する体制にしていただきたい。
また,これによって,建物や機器の資産状況が明らかになってくるということでございます。病院はこれからできるだけ自立して経営責任を取っていかないといけないので,病院内の内部留保額だとか,あるいは過剰投資していないか,資金不足に陥っていないか,そういうことをしっかり社会に説明することが重要です。これがないまま大学と会計が一体化したままで,大学病院の赤字を大学が背負っていれば,理屈上,授業料値上げは,私は難しい。
そういう意味でも,しっかりと財政的な独立を担保して,経営責任に見合った運営が必要です。また人事など,病院に裁量権を与えることが非常に重要です。大学病院の医師の給与についても,大学の中で異なる体系をつくっていただきたいと思います。
それから,もう一つ,財務の共済的活用という意見がありました。これは,大学病院の再開発のタイミングが各病院で異なっています。病院経営共済事業のような形で,国立大学病院間でシステムをつくって,病院間の相互協力体制をつくっていただきたいという意見がございました。以上です。
【相澤座長】ありがとうございます。それでは,そのほかの御意見,いかがでしょうか。
それでは,樫谷委員,どうぞ。
【樫谷委員】すみません,前回,資料4の16ページ,17ページ,18ページ,19ページで,大学の収支構造を御説明いただいたので,これはこれで非常に分かりやすいんですけれども,国立大学のマネジメント,財務のマネジメントというのはどういう組織で,どういう議論をされていて,どういう対策を具体的に打とうとしているところが具体的にあったのか,ないのか,その辺について何か参考になるようなものってありますか。
具体的にこれを見て,私なんか,よく平均値で経営分析をするんですけど,あまり意味ないです。平均という意味はないんですよ,参考にはなるけれども。具体的にこの大学はこうで,ここをこう改善すると言わないと,改善になんかにならないんです。
そういう意味で,これは非常に重要な数字ですけれども,じゃあ,具体的な大学のマネジメントの中で,ここは課題で,こうしているんだけれども,なかなかこうならないんだとか,そういうような議論が具体的にあれば,教えていただきたいなと思っております。現場の声といいますか,本当の意味で。
【井上国立大学法人課長】よろしいでしょうか。樫谷委員,ありがとうございます。資料の今示してくださった15,16,17辺りの状況でございますけれども,主に伸ばす点みたいなところで,非常に議論と,あとお金も入れて,みんな努力をしてきたという点は主に2つあります。
1つは,寄附金でございます。法人化の前は,なかなか学校全体として,卒業生の方はじめ社会との関わりで,社会から応援されるというような仕組みを大々的にやりましょうというところが非常に薄うございました。そういった意味で,15ページ,件数も額も右肩に上がっておりますけれども,ここのところは,我々政府としてもこういった体制を応援するようなところに資金をつけ,また,大学もそういったコミュニティーの構築といったようなところに努力してきたというところがございます。
もう一点は,邉田のほうから説明があった,産学共同関係の資金ということでございます。この点につきましては,政策的には新産業政策とも相まって,経済産業省,あと経済団体等とも連携しながら,間接経費についてもいろいろ考え方の整理があり,お互い納得してこういった割合を上げましょうということで,上げてきたというところで,民間からの投資を増やしてきたといったようなところがあります。
そういった点では,しっかり知財の活用等をするための大学の体制の整備,こういったところも研究担当局等でしっかりそういう部分を支援しながら,大学等でも,それまで学内にいらっしゃらなかったような知財の管理ですとか,もしくは戦略的に取りに行くと,こういったような方を入れてきたという部分はございます。
今の点は結構多くの大学が取り組んできたところ。もう一つは,前回,資金運用のところについても少し御案内を申し上げたかと思います。資料で申しますと,規制緩和の取組状況等があるところでございますので,資料4の36ページ以降に少し書いてございます。寄附と外部資金等を増やしていく中で,運用といった部分についても少し考えていきましょうと。そういうようなことで,そういった専門家の方にも助言をいただきながら,増やす取組というものも進めてきたというところは,制度上の規制緩和と,あとプロフェッショナルな方に学内に入っていただいて,実際動かすといったようなところを進めてきたところでございます。
一方,ここら辺は非常に実務的な話でございますけれども,恐らく議論を若干深めていただきたいと思うのは,こういうところをやってきて,間接経費と,あと前回でも御意見いただいたように,とはいえ使えるふうになっているけれども,実際どうなのかなと掘っていくと,学校側からは,うまく使えていないんじゃないか,その辺のどういうマネジメントができていて,できていないのかというようなところは,いろいろ打っていても,そういうお声が継続的に上がってくるということは,私ども,受け止めなきゃいけない点もあります。
あと,大学側との共同作業として,お互いよりよくしていくための何かがもう一歩必要ではないかなというふうに思っておりまして,その辺りのことも御意見や御助言等も賜れれば幸いでございます。
簡単ですけれども,以上です。
【樫谷委員】すみません,ちょっと厳しいことを言うようですけれども,本当にこれを聞いていて,随分甘いんですよね。民間の感覚から言うと,めちゃくちゃ甘いんです。こんなの,どんな努力をしているのかよく分からんと。努力しても,なかなか難しい,ただ難しいということはあると思うので,そこに障害があれば,そこを改革しなければいけないと思うんです。
聞いていて,これ,本当にマネジメントしているのと。単にお金をうまく使っているだけの話だなと,配分しているだけだなというふうにしか思えないので,そこは努力,じゃあ,寄附を集めるためにどういう努力をして,どこが成功していて,どこが成功していないんだというようなことを,もうちょっと突っ込んで。
間接経費の話もありますよね。間接経費も,これ,それぞれパーセンテージが違っている。これ,何ででしょうかと。3割取ってもいいわけですね。例えば,実はその3割の話の中で,ある研究開発法人の中で議論したことがあるんです。つまり,3割取られるということについて,例えば1,000万の寄附をすると,共同研究すると,300万取られるわけです。これ,たくさんだから問題だと言っているんですけど,それは大きな間違いです。別に半分取られても,成果があれば,別に企業はいいんですよ。
だから,そういう思想も変えていかないと,3割がルールだから,3割では取れないんじゃなくて,ずっと取ったらいいんですよ。それは力があれば取れるんです。ない人は1割も取れません。そんなような突っ込んだ議論を本当に真剣にしていかないと,改革なんかできっこないし,私も企業再生をずっとやっていまして,本当に真剣勝負ですよ。これ,真剣勝負と思えない。
困った,困ったというのは分かります。よく困っていらっしゃるんでしょう,実際。じゃあ,どうすればいいんだというところがなかなか見えてこないので,もう少し本当に真剣勝負の議論を大学の方もしていただきたい。成功事例をもっとどんどん公表していただいて,まねをするということもどんどんしていかないと,これを見て,駄目だと私は思いました。
【相澤座長】ただいまの御指摘は,樫谷委員がこの前の会でも御指摘になったところで,もう少し個別大学レベルの実情が分かるようなところに踏み込むことはできないのかということに連動しているのではないかと思います。今回の資料は,全体像を示したものなので,これでは具体的なところがどうしても浮き上がってこない。
何が問題なのか,何が解決されるべきものなのかと,そういうことも浮き上がってこない,そういうようなことの御指摘だと思います。
【樫谷委員】はい,各論に細かく入っていかないと,改革になんかならないです,総論でやっていたって。
【相澤座長】ただ,これは公開資料を基にしてやっていると思いますので,この辺りは,文部科学省としては,ここまでは入り込めるとか,何かその辺の基本的なスタンス,そういうものも説明していただくと,もう少し理解していただけるのではないかと。
【井上国立大学法人課長】ありがとうございます。冒頭で座長からも少しガイドをいただきましたけれども,国立大学法人関係の様々な会議体なり,評価なりといったいろいろな仕組みがある中で,恐らくこの会議で直接取り扱っていただくことと,要はそこの会議にこういうふうにやり取り,こう受けてやっていただきたいということを我々が受け取って,そちらとパスしながら,そこでやっていくこととよく仕分をする必要があると思っております。
ここの会議で一個一個のあれをやっていただくというのは事実上なかなか難しい点があるかと思いますが,今言ったようなことは非常に大事な御意見で,それを受け止めて,我々がどこでどういうふうにやっていくかということをしっかり掘り下げて,またこちらにその状況を戻させていただいて,また助言をいただくと。
なので,いただいた意見について,今後どこで,どうしていくかということを,我々のほうにでも整理させていただきながら,必ず戻して御報告して,また助言いただけるような形で進められればと思っております。
【相澤座長】ただいまのことは,先ほど永井委員から,病院経営を,もっと公開する状況にすべきではないかという御指摘がありました。これと連動すると思いますので,ぜひ御検討いただければと。
【井上国立大学法人課長】ありがとうございます。永井先生からいただいた御意見,確かにセグメントで病院のところを公表している部分があるものの,B/Sは一緒になっていたりといった,それは先生からの前の1回目の御意見の曖昧としたところがというところとつながってくるかと思います。
病院のほうの検討会で,特に病院経営,非常に専門的な部分もございますが,一方で,非常に国立大学には大きなものを占めていきたいという,うまく連携と分担が必要と思っておりますので,医学の検討会のほうの状況ともよく分担と相談もさせていただきながら,いただいた問題について議論を深められるようにしていきたいと思います。
ありがとうございます。
【相澤座長】それでは,樫谷委員,こういうような対応をさせていただきたいと思います。
そのほか,いかがでございましょうか。上山委員,挙手されていますね,どうぞ。
【上山委員】ありがとうございます。今,樫谷委員から御指摘されたことについては,僕はちょっと違う感覚を持っています。これまで,私も大学問題に関して随分関わってきましたけど,様々な大学むけの基金ができたり,高等局と振興局が一体となって行ってきた大学改革の中で,個別の大学の対応は非常に進捗しているなというふうに思います。
実際のところ,経営という観念もかなり明確に入ってきています。もちろん,全ての大学がというわけではありませんけれども,文科省と一緒になってやっている,例えば地域中核のパッケージの中での審査の中にも,産業界の人が相当入って審査を受けているんですが,その方たちが口をそろえて言うのは,大学はこんなに変わっているのは知らなかったと,そういう感想を持たれる産業界の人は多くいます。
実際のところ,個別の大学の経営状況は,この間の各大学の対応によって,ここには資料としては全く出てきませんが,明確に改善をしているというか,現代化しているという表現をしてもいいぐらい,先鋭化していると思います。
逆に,むしろ,私なんかからすると,産業界の動きの方が疑問です。産業界がこの間,研究開発をどれほど怠ってきたのか。あるいは,グローバルマーケットに乗り出していくような経営改革を,果たしてどれぐらいやってきたのか,このことに関しては,むしろ現場のほうからも様々な反省の声があるぐらいで,それに較べて,大学のほうは非常に頑張っているのではないでしょうか。
そのことを前提としてお話しした上で,私が申し上げたかったことは,高等教育局が行うこの検討の場において,教育の問題を我々CSTIとして考えていきたい,コミュニケーションを図りたいと思っていることです。私たちは,基本的には研究開発が中心で計画を立てたりしますので,どうしても教育の問題は少し後々,後手になってきたという反省はあります。
前回のときでもお話をしましたけど,各国の教育行政はここ20年ぐらいの間,極めてクリエーティブな人材育成の政策に軸足をおくようになってきています。その結果,そのような教育のコストが極めて高くなってきているということ,これは恐らく皆さんも御理解していると思います。問題は,そのコストを誰が払うのかという問題なのだと前回も申し上げました。
各国は,そのために授業料の引上げを相当やってきたわけです。もちろん,それは手厚い奨学金等の重ね合わせの中でやってきています。翻って我が国の状況を考えたときに,各国がやってきたような授業料を倍にするとか,3倍にするとかという方向は極めて難しいというか,ほぼ不可能に近いということだけは申し上げておきたいと思います。
そうすると,それは公的なもので賄わなければいけないという側面がどうしても出てくるということだと思いますね。ただ,公的な資金によってクリエーティブな人材,新しい現代社会が求めているような教育をどのようにしていくかに関しては,これは,高等局が今後は相当責任を負わなければいけないだろうと思います。
具体的に言うならば,そういうコスト増をジャスティファイするだけの根拠を積み上げなければいけないということだと思うんです。これも各国が様々な形でやっていることは前回もお話ししました。例えばイギリスなんかは,9,000ポンドまで授業料を上げました。
それに対して,教育の質を単なる質保証というだけではなくて,具体的な大規模アンケートを卒業生に行いながら,教育のコストに見合うだけの,投資に見合うだけの効果があるのかについて調査を行っています。これは完璧ではなしもちろん難しい。教育の効果を測定するというのは難しいですから。それでも,その努力を積み重ねて,これだけのコストを支払わなければいけない根拠を積み上げてきました。そのような他国の歴史を考えると,申し訳ないけど,高等局の皆さんがそこに踏み込んでいるとは,正直思えない。
それは例えば,かなりセグメントに分けた分野ごとの教育の効果を図らなければいけないし,卒業した後のその教育に見合うだけの卒業生の収入につながっているのかという分析もしなければいけない。教育効果のエビデンスの積み上げと透明化をやらない限り,公的な資金の投入というのは難しいだろうなというふうに思います。
かつ,そういうような人材を大学で養成するときの教育のコストは,様々な分野ごとに違いがあると思うんです。それぞれの分野ごと,セグメントごとのコストは一体どれぐらいなのかもきちんと把握しなければ,これは公的資金の積み上げという議論にはつながっていかないということが高等局の皆さんと議論したいと思う点です。
もう一つは,これは別にこの場でなくてもいいんですけど,高等局のフロンティアにいる方々と一度議論してみたいなと思っていることは,この教育というコンセプトや中身を高等局はどう考えているんだろうかなということです。私は,第三者の立場から見て,高等教育行政が掲げている姿は,どちらかといえば供給サイドの論理が主流だなというふうに思います。
例えば,今回の中教審,すごくよくできているんです。極めて明確な現状分析,それから将来的な動向の把握,こういうような連携の仕方が望ましいと書かれています。しかし一方で,大学に対して,我々は高等教育の現状をこういうふうに把握しているのであるから,それぞれの大学はそれを勘案した上で,各大学は提案を出してくださいという,そういう呼びかけに聞こえるということです。
ここのところを,僕は高等局の皆さんと今後一番議論していきたいなと思うんです。教育,あるいは人づくりのフォーサイトといいますか,人材の予測が必要ではないかということです。どういう人材が今後,日本の社会の変遷の中で求められていくのかということは,どちらかといえば,こういう人材が必要になってくるのであるから,大学側はこういう人材をつくってくださいという,提案型の,プロポーザル型の高等教育も必要になってくるのではないか。前からそう思っているんですけども,これは高等教育行政の今までの歴史の中では難しいかなというふうに思っています。
それは,社会ニーズを考えた上での教育の質とは何かという,きちんとしたエビデンスに基づく提案ということでしょうか。ここは,僕はよく分からないというか,一番難しいかなと思います。我々はCSTIの中で第7期の科学技術・イノベーション基本計画をつくろうとしています。第6期のときにも,実はやろうとしたんですが,将来的な社会像を考えたときに,どういう分野が必要になってくるのかというか,分野の重要領域の設定を実はやろうとしたんです。しかしながら,第6期のときにやり切れなかった。きちんとしたエビデンスもなかったですから。できれば,第7期についてはそれにチャレンジしたいなと思っています。そのときの1つの軸は,我々は60万人の研究者のデータを持っていますので,研究のシーズのところは分かります。でも,それが具体的な我が国における産業のサプライチェーンときちんと結びついているシーズなのかどうかというところまでは分からない。これを何とかエビデンス・ベースドでつなげていきたい。もしつながっていけば,これは明確な産業化につながるので,それは日本の勝ち筋なんだと。こういう勝ち筋を持っている産業上,もちろん,今でいうともっと社会的な課題みたいなことがありますから,産業だけじゃないんですけども,そういうアウトカムとの結びつきをやった上で,これこれの領域にもっと国家は投資すべきだというプロポーザル的なものを書きたいなと思っています。
そのようなことを考えてきましたが,私がCSTIに来てからつくづく思い知らされるのは,例えば,AIの戦略が出ました。量子の戦略が出ました。バイオの戦略が出ました。いつも出てくるのは,人がいないということなんです。それを中心に実践する人が極めて限られている。
実際に,例えばサイバーセキュリティーのデータの分析をしましたけども,アメリカとかアメリカや中国にはたくさんの研究者がいるんですよ。でも日本にはほとんどいないんですよ。ということは,サイバーセキュリティーに関する人材育成に失敗してきたということは明確なわけですよね。そうすると,そのような重要研究領域を設定したときに,あらかじめ5年後,10年後にはこの領域の人材が必要であるということがはっきり分かっているのであれば,ここに先鋭的な教育の国家投資をすべきだと思います。しかし,我々がもしそのようなことを提言したとき,従来の高等教育行政のフレームワークから一歩踏み出すことになるわけです。
それが果たして許されることなのかどうか,それをやるべきなのかどうかも分かりません。ただ,我々はそういうことを提言の中に入れたいなと思っているので,この高等教育における在り方の検討会については,そういうことのお話がしたいなと思います。
だから,それは従来の高等教育行政とはちょっと違うことになるかもしれない。なるのか,ならないのか,いやいや,そんなの,我々,超えてしまっていますよ,やるんですよというなら,それで結構なんですけれども。ただ,それは先鋭にエビデンス・ベースドでそのことを捉えていかないと,教育のフォーサイトができない,そういうふうに考えております。
以上でございます。
【相澤座長】ありがとうございました。根幹に関わる重要な御指摘だと思います。後半に述べられたことは,この検討会で対応できるかどうか,これは今後の議論の展開の仕方だと思います。特に前半は,高等教育行政として,今までの人材育成にいろいろと問題点があったという立場からの御指摘です。
【上山委員】いや,問題点があったとまでは言っていません。そういう言い方はしていません。
【相澤座長】問題というよりは・・・。
【上山委員】コミュニケーション不足。
【相澤座長】そうかもしれません。ただ,これは非常に重要なことでありまして,今回,この検討会の検討事項として,4回目になりますけれども,教育についての検討をするということにしてあります。今までこの種の会議の中で,どうしても研究面が重点でありました。今回は,教育面のところを十分に議論しようという位置づけにはなっております。
でありますが,この段階で文部科学省から何かコメントをいただければ。
伊藤教育局長,お願いできますか。
【伊藤高等教育局長】ありがとうございます。御指摘のとおりだと思っております。私ども,そもそも文科省の行政自身が,御案内のように初等中等教育までの教育の制度のつくり方と,大学,高等教育のところは制度的にも全く異なるアプローチで,制度も構築していますので,学習指導要領はそれがどこまで先を見ているかどうかは別として,言わばフォーサイトを見ながら,こういう人材を育成していこうという国としての指導要領という形でつくりながら,それに向けた制度をつくってきている。
これに対して高等教育は,そもそも大学というものが,国がそれを定めるのではなくて,まさに大学人がそこのことを考えてつくっていくんだという形でつくってきている。まして,設置基準等の相当準則化をし,弾力化をすることを通じて,国がこれこれの人材を育成するということ自身を,制度的にある種放棄をしているような形でできております。
ただ,もう一方で,それで本当にいいのかとか,この国際競争社会の中で,それで立ち行きができるのかということでいうと,実は2年前から,これも上山先生,御案内かと思いますけれども,成長分野を支える人材を育成するために,国の基金をつくって学部転換を支援をしていこうと。
これは従来でいうと,タブーとまでは言いませんけれども,かつてなかったような政策で,情報系の人材ですとか,GXの人材をつくるために,学部を転換していく場合には,通常よりも財政的な支援を高めていきましょうという,やや誘導的な形,大学の位置を侵さない範囲での誘導的な政策というものを置きました。
ただ,まだそこの段階でございまして,名前で学部ができれば,それでお金は増えるけれども,その中でどういう人材をつくるかまでは,大学で御判断してくださいというような形になっております。このままずっとそれでいいのか,この少子化の厳しいパイの中,また財政状況も大変右肩上がりで伸びないような状況の中において,高等教育の人材育成として,もう一段踏み込んだものが必要なのではないだろうかという点については,我々も今の段階で当然ですが,答えを持ち合わせておりません。
ですので,御議論もいただきながら,また,御指導もいただきながら,次の教育政策としての高等教育政策として何を打っていくべきなのかというのは,我々もぜひ勉強していかなければいけないと思っております。この場でももちろんでございますし,この場以外でもいろいろ御指導賜ればというふうに思っております。
【相澤座長】ありがとうございました。この件につきましては,先ほど申しましたように,2回先のところで改めて議論をさせていただきたいと思います。
それでは,柳川委員,どうぞ。
【柳川委員】ありがとうございます。幾つかコメントをさせていただきます。今の御議論とも関わるんですけど,その前のところもお話ししたほうがいいと思いますので。まず,過去の経緯を踏まえますと,法人化をしたら直ちにいい運営,マネジメントができるというわけではなかったというところは非常に重要なところです。
最初のときには,内部に民営化すれば,法人化すれば,民間企業と同じような効率的な運営ができるんじゃないかというスタンスが少しあったような気がするんですけど,この間見えてきたことというのは,マネジメントの工夫や努力をしないと,事業の運営がしっかりできないというところで,それは樫谷委員が御指摘になったところです。これがかなりできてきたというのも事実だと思います。
ですから,少し振り返りということでいくと,御指摘があったところですけど,どういうマネジメントが工夫がされてきて,どういうところがうまくいっていて,まだ課題がどこにあるのかというのが,このデータとしてもう少し見えるといいだろうというふうに思います。
それに関連してですけれども,国立大学法人というのは,単純な民間企業,営利企業とは違うミッションを抱えていて,ここの制約を満たしつつ,どうやってマネジメントしていくのかということは相当難しくて,この難しさをどうクリアしていくのかというのは,改めて少し整理をする必要があるんだろうと思います。
ミッションの中でいくと,私の理解するところで,少なくとも2つ,相反しかねないミッションがある。1つは,世界最先端の研究教育を実現してくれというのがある。そのもう一方,こっち側には,全国の機会均等の確保という文言が先ほど,中教審のところにもありました。これは,両立するのはなかなか難しいわけですよね。
片方は,非常にある種の底上げをしっかりやってくれという話があって,それをやろうとすると,なかなか最先端のところだけにお金をどおんとつけるわけにいかないわけです。この両方を全ての公立大学法人がパーフェクトにやってくれという話にするのか,こういう国立大学法人はどっちかにかなりウエートを置きますという話にするのか。この辺りのミッションの置き方だとか,それは文科省が決めるのか,当然,各国立大学法人が選ぶことなんでしょうけど,この辺りの整理というのがもう少しあると,マネジメントの努力の仕方というのも,もう少し発展性があるのではないかというふうに思っております。
それに関連するところですけど,先ほどのこの経緯の資料6の平成13年の構造改革の方針というところで,最初に大きく字が出てくるのは,スクラップ・アンド・ビルドで活性化って書いてあったんです。これは確かに民間企業でいうとこういう話なんですけど,後ろにありましたように,実際,総合,再編というのは進んできているわけです。ただ,私が申し上げるべきことではないのかもしれませんけど,スクラップ・アンド・ビルドが活性化していくには,経営が苦しくならないといけないわけですよね。
これは樫谷先生,御専門ですけど,苦しくなるからこそスクラップ・アンド・ビルドしようとか,あそこと合併して何とか生き残ろうとか,こうなるわけです。それは何もない中で,くっつかないととか,大きくならないととか,すごく伸びていくならあれですけれども,片方ではどんどん事業収益が上がっていくという道筋もあまりない中,スクラップ・アンド・ビルドがどういう仕組みで起きるのかというと,本当は厳しい状況にならないといけないと。
ただ,やっぱり大学ですから,どんどんあちこちで厳しい大学が出てくるというのは,研究教育がそこの段階ではかなり難しくなっちゃいますので,そこまで持っていけないわけです。そこまで持っていかないんだけれども,スクラップ・アンド・ビルドというのをどうやってやるのかというのも,ここも通常のビジネスとはかなり違うことを考えないといけないので,ここはやっぱりガイドがある程度必要なんだろうと思うんです。
それは,今進められていらっしゃることではあるんですけど,ここも少し整理をして,一層の工夫があるといいのではないかというふうに思っております。
あと細かいことですけれども,前申し上げたんですけど,今のこのマネジメントの工夫の中で出てきたことというのは,先ほどお話があったように,寄附金をたくさん集めて,それで事業を回して経費を賄っていくということになってくると,どうしても短期的な資金に頼らざるを得なくなる。単年度の収支は賄えるんだけれども,基本的に単年度でようやく何とか回りましたということをやっていくと,長期の研究だとか,長期の人材育成って,どうしてもなかなか滞ってしまうんだろうと。
そうすると,先ほどの上山先生のお話にも関係するんですけど,国全体として長期の人材育成はどうあるべきかといったときに,このところを短期の資金繰りで賄っている大学がどこまでできるのかというのは,この間の法人化の中で抱えた大きな課題だというふうに感じますので,ここは工夫の余地が必要なのではないかと思います。
最後に今のお話,あるいは上山先生の議論とも関係するんですけど,この20年,過去に振り返ってということであるんですけど,この20年で経験したことというのは,世界が大きく変わった,あるいは日本の労働市場は絶対変わったということだと思うんです。だから,その大きな波を全く関係なく過ごせるわけではないので,民間企業でいくと,3年で3割,5年で5割辞めるとかというような,こういう労働市場環境の中,大学も当然無縁ではないわけです。
こういう人材が流動化していく中で,国立大学法人はどうやっていい人材を確保し,いい教育を提供しということを考えるには,今日は過去の振り返りなんですけど,そこはそれだけでは駄目で,未来に向けてどういう人材育成とか,人材確保をしていくのかということを考えなければいけないと思います。
その点でいけば,先ほどからお話があったように,今の学校法人を前提にして,各大学法人が何をやるのかということを考えることは当然重要なんですけど,もう少し世の中大きく変化していく中での国全体の人材育成の在り方とかということの中から,何が必要なのかということを議論していくことは,私も大事だと思っています。それが直接的に国立大学法人の今とか,これからのすぐの政策には結びつかないのかもしれませんけど,少し大きな視点で見ていくことによって,この国の人材育成,研究教育の在り方というのが見えてきて,そのパーツとして国立大学法人がどういうものを担っていただくかということの議論という整理が最終的にはできてくるといいかなというふうに思っております。
すみません,以上でございます。ありがとうございます。
【相澤座長】ありがとうございました。最後にまとめられた,世界が変わった,労働市場環境が変わった,これらの大きな変化に対応して国立大学法人はどうあるべきか,これが私は冒頭に申し上げたように,この検討会の大きな課題なんです。ですから,ぜひこれはここに直接関係があるかどうかではなく,まさしく,それをまともに捉えないといけないのではないかという認識でおります。大学の在り方については,その都度,ぜひ御発言をいただければと思います。
それでは,平子委員,お願いいたします。
【平子委員】ありがとうございます。産業界の立場として少しお話をさせていただきますと,柳川先生ご指摘の,国立大学法人は民間企業とは異なるミッションを持っているという,これは全く同感ではありますが,ある意味共通しているところもあると思います。それは,やはり情報公開です。
日本における企業と大学の特徴は,いわゆるメンバーシップ型の組織,社会だと言えます。大学入試で結構厳しい競争を突破し,入学するのは難しいが,卒業はそれほど難しくないという過去の歴史があり,会社も似たようなところがあって,一度会社に入れば,あとは終身雇用,年功序列で出世できることなど,こういった中で,それぞれ独特の文化が形成されています。
しかしこれによって大学と企業との間に大きな分裂が生まれたとも考えられます。私は現在,中教審の大学分科会関連の特別部会のメンバーでもあるのですが,そこである先生が出したデータには,大学が学生に対して教育しようとしているコンピタンス,能力,スキルと,企業側が求めているそれとは,日本においては大きく異なるという結果が示されていました。
欧州は比較的,大学と企業のその傾向は一致しているのですが,日本の企業と日本の大学の出しているアウトプットはそれぞれ違うということが, 1つ問題ではないかと思っています。大学で学修したアウトプットを企業がいかに活用するのかという点について,情報公開もあまりされていない中で,活用できていないのではないかという疑問と仮説です。
したがって,ここを解決していかないと,教育のコスト,国立大学では大体1人120万円ぐらいかかると言われていますけれども,これを誰が負担するのかというところに入っていかないのではないかなということです。授業料の値上げ問題が昨今出てきておりますが,値上げにもある程度の限界はあるだろうということからすると,寄附金,あるいは産学共同研究による奨学金など,こういったところにも突っ込んでいかなければならないだろうと思います。
では,誰がお金の出し手になるのかということになると,ここに企業が大きく関与してきます。企業が大学に対して大きな信頼,あるいは期待を寄せないと,継続的な資金の出し手にはならないだろうと。短期的な資金の拠出で終わってしまうことにつながりかねません。
ここの辺りをどう変えていくというのかが重要です。繰り返し申し上げますが,さきほどから出口の質の保証という話を何人かの先生方もおっしゃっていましたけれど,出口の質の見える化をどう実現するのかというのが非常に大事なことで,それは入試改革を含めて,大学の教育の中で何をやってきたのかということを見える化することに他なりません。個々の学生の見える化も然りですが,マクロで捉えても,周りから見て納得のいくようなデータを示していくことが大事なことではないかと考えます。
それを,特に国立大学が中心になってやっていくということです。なぜかというと,それは地方との関係からです。地方の産業,経済,あるいは文化の中心地点となりうるのは国立大学だと思いますので,そこに人材を集めなければならないということになります。そのような人材が集まり,それが見える化されればその地域の企業との結びつきが深まるわけです。その観点で,これから先を考えていく必要があるのではないかと思います。
ですから,授業料,あるいは教育のコストを誰が負担するのかという問題については,一律のルールではなく,中央の大学と地方の大学のそれぞれのミッションや機能を考えながら,それぞれの地域の経済的事情も踏まえて,メリハリをつけた授業料,あるいは交付金の在り方を考えてもいいのではないかと。また,運営費交付金に関しても,一律ではなくて,地域性を考慮した負担の仕方があってもいいのかなというふうに思います。以上です。
【相澤座長】ありがとうございました。この件につきましても,財務構造の問題と同時に,教育の問題を検討するところでも改めて御発言いただいて,そこでの具体的な問題点,あるいは課題,これを御指摘いただければと思います。
それでは,服部委員,挙手されていますので,どうぞ。
【服部委員】ありがとうございます。まず国立大学における財務の話です。私事になって申し訳ありませんが,学長在位中に実際に各学部等に配分する研究費は減りました。
一方で,国全体として研究費が増えているという話があって,そこに違和感があります。また,研究費が増えていながら,研究成果,成果物としての研究論文の発表数は減っている現状があります。どうも,そこのところ,何かがおかしいと思います。
先ほど樫谷先生が言われたように,細かいところに入らないと,トータルを見ているだけではどうなっているかなかなか分からない。恐らく,研究経費は,大型のプロジェクトが増えている状況があり,それを獲得しにくい地方の国立大学が厳しい状況にあるのかとも,思っています。財務面ではこの現状の改善を考えていただきたいと思います。
二つ目は,前回の会議で意見がありましたが,今公務員を含め全国的に給与が上がっている状況の中で,国立大学はどう対応していくのか。これは,恐らく今の国立大学の執行部では,非常に頭を悩ませていると思います。今年の人勧を見ても,人件費をどうするのかが大きな問題だと思います。もちろん,これまで運営費交付金については,人勧の動向にはかかわらないということで来ていますけれども,どこかでこれを変えていただかないと配分された運営費交付金が人件費だけで終わってしまうような状況になってしまうのではないかと危惧します。
各国立大学では,人件費を抑えるために,教員や事務系職員を減らしてきています。しかし,これ以上は対応ができなくなってきていますので,運営費交付金の増額について難しいことは承知していますけども,かなり困難な状況になっているということを御理解いただきたいと思います。
今日の主題の3点から外れますけれども,その他ということで,教育・研究の評価について話をさせていただきます。大学改革支援・学位授与機構では,法人化と同時に認証評価制度ができた当初から認証評価に携わってまいりました。そして,国立大学のほとんどが当機構の認証評価を受審されてきました。
各大学は7年毎に受審することになっており,今3巡目が終わろうとしています。3巡目では,内部質保証の体制整備を重点項目として評価を実施してきました。もちろん,受審した全ての大学が基準を満たしていると判定されています。
従って,教育の質の保証に関しましては,全ての国立大学で一定の進捗はしていると考えています。
また,認証評価では設置基準の確認も行っていますが,国立大学についてはそこでの問題はないと考えています。また,私立大学や公立大学についても,各認証機関で内部質保証については重点的に評価いただいているところであり,すぐアウトプット,アウトカムとして可視化できる話ではないにしても,各大学の枠組みとしての教育の質の保証,質の向上は図られていると考えています。
また,国立大学に限って言いますと,法人評価における現況・達成評価も,法人評価委員会からの要請を受けて当機構で担当しております。そこでは教育・研究に関する活動内容のかなり詳しいところまで確認しています。従って,認証評価と法人評価の役割分担に関して整理が必要ではないかと考えています。
それから,国立大学のあるべき姿は何か,特に地方国立大学が目指すところはどこかということです。これは全く私見ですが,地域の中核機関として確実に実効性を持って存在し続けていけるかどうか。逆に言うと,国立大学を中心にまちが創られるイメージが持てるかどうかがポイントと考えています。
そのためには地域における産業振興が重要で,その役割をしっかりと担うことができるかどうか,そこが地方国立大学にとっては大きなポイントと思っています。もちろん,教員養成系の大学もありますし,医科系や工科系の単科大学もありますが,それぞれの大学が特色を活かしながらも,その地域における中核となる,そして,それを地域の方からも認めていただける,そういう組織となっていくことが大事だなと思っています。
あと,先ほど上山先生の話を聞いていて,今まで大学にいた者として申し訳なく思っています。新しい産業,新しい事業分野が出てきたときに,それを担う人材を育てていないことについて大きな責任を感じています。大学における課題の一つとして,多くの大学教員は基本的に自分の研究に集中していますので,なかなかそれ以外のことに関心が向かないことがあります。もう少し敏感に大学も社会の変化を感じなければいけないし,また産業界やもちろん文科省とも話をしていく必要があるかと思います。
上山先生がおっしゃったように,コミュニケーションが大切だと思います。
最後に,前回の会議で,上山先生からの発言でありました,教育の質の転換のときのコストアップの問題です。要するに少人数教育や,対面での双方向教育を行うと当然コストがかかります。しかし,これについても一定程度は大学個々に対応できると思います。
方法の1つは,授業の科目数を減らすことです。本当に必要な授業は何かを精選して,それをきっちりやっていくのは,これは大学の責任。授業の精選の中で質の転換を図れば,コストの上昇はある程度抑えられると思います。ただし,それは一定ということであり,超過する部分については,対応を考えなければいけない。受益者が負担するのか,国が公に負担するのか,そこは検討が必要と思います。
上記について各大学で検討頂きながら,当機構でも,また大学と話をさせていただきながら,我が国の高等教育の質の向上に少しでもお役に立てればと考えています。
以上です。どうもありがとうございました。
【相澤座長】ありがとうございました。幾つかの重要な案件が出されておりますけれども,人勧の対応については,現時点で文部科学省としては,これをどう位置づけておられるかということを,確答は難しいかもしれないけれども,こういうようなと捉えているぐらいのことまではあるのではないかと思います。ちょっとそれを聞かせていただければと思います。
【伊藤高等教育局長】ありがとうございます。先ほども御説明させていただきましたように,来年度予算の概算要求では,国立大学改革の推進ということで,対前年度で見ますと3.4%増ぐらいの総額としての要求を今させていただいてございます。これ自身は,人勧とか,物価高騰とか,もろもろコストがかかるのに対して,それを十分吸収できるような金額にはなってございます。
ただし,運営費交付金というのは,そもそもの制度の趣旨からして,これが上がるから,物価連動でこれだけこっちの運営費交付金が上がりますという制度設計ではなくて,ある意味,渡し切りにしながら,法人がそれを自由に使ってくれることによって,前回も貴重な御意見をいただきましたけれども,お金も増やせ,自由もくれというのは,そういうわけにはいかないだろうと。
そういう中で,お金もなかなか増えないけれども,では,自由をくれというような形でできたのが,この国立大学法人という制度であるし,また,それを担う運営費交付金だったんだろうと。この趣旨からすると,まさに自由をある程度,皆さんにお渡しをするというような制度設計で出たものですから。これが,効率化係数等で長年にわたって減らされてしまったということは,非常にこの制度がうまく進まなかった大きな部分ではあります。
もう一方で,先ほどの御説明資料でちょっとお示ししましたけれども,この間,実は我が国はデフレの状態になっていて,物価も下がっている,また,人勧もマイナスが続いているというような状況になっても,だから運営費交付金を減らせというふうに,財政当局からも圧力がかからない構図になってきたのも事実でございます。
ですので,ここのところは,そうは言うけれども,政府がデフレから脱却をして,言わばインフレになるように日本全体で政策を持っていこうとしているんだから,従来の政策について見直すべきではないかというのも,1つの御意見としてあると思ってございます。しかし,もう一方で,運営費交付金,また国立大学法人化,このシステムがどういう思想設計でできたかというところもありますので,非常になかなか今すぐ私が答えを出せるような問題ではございません。
今,第4期の中期計画の最中でございまして,第5期に向けて,いろんな意味での見直しというものが必要なんだろうなと。この問題だけではなくて,まさにいろんな見直しが必要なんだろうということで,実はこの場を設けさせていただいた部分でもございますので,そこはすぐどうこうではございません。
ただし,来年度としては,今,積極的な予算要求もさせていただいていますので,それらも飲み込み得るというと言い方は変ですけれども,対応ができるような要求額が確保できれば,そういう形で国立大学はいろんなことにチャレンジできるのかなというふうなことで,何とかこの額を確保できるよう財政高等局と折衝していきたいというのが,すみません,今日の時点で私が言えることです。
【相澤座長】ありがとうございました。それから,服部委員の御指摘の中で,認証評価と,それから国立大学法人評価,この中に評価という言葉が2つ入っているんですが,これが全く違った観点からの評価ですので,このこと自体が大きな課題でもあるわけです。そのことが,先ほど冒頭に服部委員からありました研究成果の評価,こことも結びつくところだと思います。
これについては,評価ということが大変重要な軸でありますので,これはこの後の検討会でまた議論させていただければと思います。
それでは,川合委員,挙手されていますか。お願いいたします。
【川合委員】その他の話題になると思いますが,先ほどお隣から,産業が起きていくときに人材がいないという問題が提起されました。それは教育現場の責任ですかという点です。長いこと生きておりますと,産業の主流は20年ほどで変わることを体験します。私が学部の学生だった頃は繊維業が国内産業の主流でした,その後,電子材料分野が盛り上がっていきました。その頃の電子材料分野の産業は世界を牽引する力を発揮し,20年ぐらい産業のみならず,学術分野でも日本が世界の先端を走ることができました。
その後,情報ITが産業の主流になると少し分が悪くなり,そして今情報セキュリティーやソフトウエアが主流の時代にになって,国内に適切な人材がいないと言われます。じゃあ,大学はそういうものを先読みできるかと。できるわけないですね。大学が目指すべきはやはり,何にでも対応できる人材を輩出するべく教育のあり方を問い,世に出すということ,これが大学教育の基本だと思います。
今振り返って,過去の歴史の中で,日本の産業界の進み方と人材とが一致して走れた電子材料分野,どうしてこの時代だけ産業の振興に対応した人材を育てられたのだろうか。電気会社が非常に優秀な人を集め育てた,いわゆる中央研究所を持っていた時代です。彼らが世界の半導体材料や,材料研究を牽引していました。この民間の研究所と大学は普通に一緒に研究を推進するという関係にあって,企業が走っていく,その先を見据えた研究を大学の中でも結果的にやっていたという時代じゃないかと思います。
ですから,大学も産業の振興に見合った学生をリアルタイムで輩出していました。民間企業が中央研究所をやめてしまい,そして,自分たちから,国内から新しい産業で世界を牽引するようなものが出なくなっている。そうなると,時代に即応したポテンシャルを持つ人を探しても,国内には人がいないという現状になるのだと思います。だからと言って,高等局に何かできるかという解決策には至りませんが,産業界がもうちょっと先進的なものに目を向けられるような大学との協力関係や,協の体制がもうちょっと柔軟にに進むといいなという思いはあります。
我々が大学人が,企業から受けている研究は,こういうことをやってほしいという具体的なテーマです。それは何かというと,現状にあるもののテーマであって,これから先に何かをやろうというテーマでは決してない。
これは社会構造の問題で,日本に人材がいなければ,外から採ってくるしかない,日本の中から新しい産業を生み出すという機運の欠如なのでしょうか。たまたま電子材料産業が強かった時にだけ,日本の産業が同じ方向性を向いていたのか,分からないんですけど,産業のいく先を見る力と,そこに合わせていく大学の研究のあり方とのフェーズマッチングの問題は非常に大きいと思います。
もうちょっと言えば,国の研究力低下の一因は,企業の中央研究所がなくなったことだと思います。本当にふんだんなお金を使って,結構自由に新しい研究をやっていらした。そこの先生方が,企業での機会が少なくなり大学に移動された時代があって,大学でもいい研究をされてはいても,産業と直結していないという意味では,少しタイムラグがあるのかなという気がしています。
先ほど指摘されたように,アメリカや中国には産業の先端を支える人がいます。これ,キーですね。アメリカのシステムは,多分,起業していく人たちのシステムができているからだと思いますが,それが新しい産業を生み出す力になる仕組みは理解していません。中国の研究を見ると個々人は本当にてんでんばらばらに見えます。みんな思うように動いていて,急に新しいことにお金が出てきたりするので,自由度という意味では,コントロールされていないほど,すさまじい自由度があるように思います。
今,中国との関係を切ると,我々は取り残されそうな気がしています。余計なことを最後に言いました。構造的な問題のような気がするので申し上げました。突然今から情報人材をつくったら,その人材は20年後には職を失います。教育に関してはあまりスペシフィックに分野に偏らないほうがいいと,個人的には思っています。
【相澤座長】ありがとうございました。大変いい御指摘だったと思います。対立している意見というふうには捉えないで,むしろ,上山委員も冒頭から言われている,クリエーティブな人材をどう育成するかというところで,分野に関わるところの問題と,もう少し広い意味も含まれているのではないかというふうに思います。
ただ,問題の捉え方はお二方とも大変共通しておりますし,この検討会で大いに議論しなければいけないところだと思います。
それでは,時間も限られておりますけれども,どうぞ。
【森田座長代理】まだ発言していないのは私だけだと思いますので,一言発言させていただきます。今されている議論についてというよりも,先ほど川合先生もおっしゃいましたけれども,私もかなり長く生きているものですから,特に法人化のときに関わりましたので,そのときに出ていた話を少しさせていただきます。
もともと大学改革の場合に,90年代の設置基準の大綱化から始まりまして,そして,その後,大学院重点化であるとか,大学運営の自由化が進められてきたわけです。特に90年代には非常に経済状態の悪いときもありまして,大学は,先ほど言いましたように,もうお金がこないし,自由もないと。これは,私がこの前発言したのを使われたのかなと思いますけれども,それは本当の気持ちです。
あのとき出ましたのは,それまでの国立大学ですと,研究内容は自分で決めることができましたが,特に組織の在り方については,国ががちがちに規制をしていた状態になっていた。したがって,新しい分野で,これから学問が起こりそうであり,そこに人材を集めようと思っても,大学独自の判断でなかなかできなかった。
それに対して,大学の組織編成についてもそうですし,学内,大学としての資金の配分も合理的に行うためには,かなりの自由度が欲しいと。そこで,いわゆる独立行政法人という仕組みがいいのではないかという考え方が出たと思います。したがいまして,当初,設置された検討会も国立大学法人をつくる検討会ではなくて,大学を独立行政法人化する検討会だったわけです。
そこでの考え方といいますのは,高等教育,研究というミッションを大学という組織に与えて,そして,一定の金額の交付金を渡す。しかし,それはどう使おうと構わないし,それに基づいてどのように組織をつくるのも構わないし,さらに言えば,そこにおいて必要な人件費も,人事のシステムも,それも変えてもいいというのが,最初の目標でした。
その意味で言いますと,むしろ当時は国がこういう組織にせよ,こういう研究をせよと言っているよりも,むしろ大学の側でこういう研究をしたい,こういう人材を育てたいのになかなかできないという,そういう声があったということです。
他方,そうではないと。国立大学である以上は,国が必要な資金をつけるべきだという意見もなかったわけではありませんけれども,そうした中で法人化というものが進められてきたと思います。
前回,私もちょっと申し上げましたけれども,ややその法人化が当初のそうした期待と外れたのは,1つは大学人の言わばマインドセットがなかなかそれについていかなかったということと,もう一つは,制度設計上の問題があったのではないかということです。大学人のほうの考え方からいいますと,そういう形で大学をつくり,自由にお金が出た以上,当然のことですけれども,使えるお金を一番効率的に使って大学のミッションを達成するように,そういうふうに大学のシステムを変えていかなければならないはずだったのですが,なかなかそれがうまくいかなかったということです。
それは,先ほど柳川先生も触れられましたけれども,スクラップ・アンド・ビルドといいましょうか,非常に言い方は難しいのですが,要するに企業でいえば,生産性の低い部門から高い部門に資源をどうやって内部で移していくか,そういう形での経営判断が組織としてできるかどうか。
その仕組みが,それぞれの大学の部局の自治の問題もありますけれども,なかなかできなかったし,それを言わば動かすような大学のマネジメント,意思決定の仕組みというものが十分に機能しなかったというところがあるのではないかと思っております。少しずつよくなってきたというか,変わってきたというお話はございましたけれども,当初考えてきたときに比べますとまだまだで,それが今問題になっているのかなと思っております。
産業界との人材の問題がありますけども,本来ならば,大学の言わば最先端を行く研究者の人たちが,これから一番進むであろう先を見越して,そうした形で大学の組織というのを変えていくのがあるべき姿かと思っております。そのために何をどうすべきかということについては,また機会がありましたら発言させていただきます。
【相澤座長】ありがとうございました。森田座長代理が大変いいまとめをしていただきましたので,私が改めてまとめる必要はないかと思います。今回,私が期待しておりました課題,問題点,そういうものが次々と出されてまいりました。これを,今回と同じように前回のまとめという形で事務局で整理して,次回に提示させていただきます。
それに基づきまして,次回は,研究を中心にこの検討会を続けたいと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。
ちょうど定刻になったというところでございますので,ここでこの会を閉じさせていただきますが,次回について事務局から御説明願います。
【春田国立大学法人支援課課長補佐】事務局でございます。今後の検討会ですけども,次回については,9月30日,月曜日,10時から12時を予定しております。
以上でございます。
【相澤座長】それでは,これで閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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