今後の医学教育の在り方に関する検討会(第5回)議事録

1.日時

令和5年9月11日(月曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省(東京都千代田区霞が関3-2-2) ※対面・WEB会議の併用

3.議題

  1. 中間とりまとめ(案)について
  2. その他

4.出席者

委員

永井座長、今村委員、大井川委員(代理:茨城県保健医療部 砂押次長)、小川委員、金井委員、釜萢委員、北澤委員、熊ノ郷委員、田中(純)委員、田中(雄)委員、宮地委員、銘苅委員、諸岡委員、山口委員、横手委員、和田委員

文部科学省

池田高等教育局長、西條審議官、俵医学教育課長、堀岡企画官、永田大学病院支援室長 他

オブザーバー

厚生労働省医政局 林医事課長、文部科学省研究振興局 釜井ライフサイエンス課長

5.議事録

【永井座長】  それでは委員の皆様,お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。座長の自治医科大学,永井でございます。ただいまから第5回,今後の医学教育の在り方に関する検討会を開会いたします。
 最初に事務局から本日の委員の出欠状況と配付資料の確認,オンライン会議での発言方法について,御説明をお願いいたします。
【海老課長補佐】  事務局でございます。本日の委員の出欠状況でございますが,岡部委員からの御欠席の連絡をいただいております。また,大井川委員に代り,茨城県保健医療部,砂押次長に代理出席をいただいております。なお,熊ノ郷委員は14時頃,山口委員は14時40分頃に御退席の予定でございます。
 次に,配付資料の確認をさせていただきます。配付資料は会議次第に記載のとおりですが,お手元にございますか。なお,資料につきましては,文部科学省のホームページでも公表しております。
 続きまして,オンラインによる会議の進行に当たってのお願いがございます。御発言をされる場合には,Zoomの挙手ボタンを押していただくようお願いいたします。その後,座長から順に発言者を御指名いただきますので,御発言いただく際はマイクがミュートになっていないことを御確認のうえ,御発言をお願いいたします。以上でございます。
【永井座長】  ありがとうございます。では,会議次第に沿いまして,御議論いただきます。本日は,これまでの議論を整理して,委員の皆様からいただいた御意見を踏まえて,事務局で中間取りまとめ案を作成いただいております。後ほど改めて委員の皆様に御議論をお願いいたします。それに先立ちまして,私から前回の検討会で大学病院の歴史的な経緯等について御説明いたしましたけれども,10分ほどお時間をいただいて,補足的な話をさせていただきたいと思います。資料1を御覧になってください。
 詳細は前回説明いたしましたけれども,幾つか重要な点を申し忘れましたので,補足させていただきます。スライド2は,前回もお示しした国立大学法人化の課題とメリットです。国家公務員総定員法が大学病院,あるいは大学に適用されなくなりました。それによって医師数と看護師数は大きく増えました。法人化前は,国立大学病院では,看護師数は,1床あたり0.6人でした。1,000床あたり600人です。当時,東京の先端病院で1,000床あたり800人ぐらいでした。
 もう一つ申し忘れたのは,地方財政再建法も適用されなくなったことです。これは戦後にできた,自治体の財政を国が支援するための法律です。逆に,自治体は国の機関に,財政支援をしてはいけないことになりました。今回コロナパンデミックで自治体から国立大学病院も支援を受けられたというのは,地方財政再建法が適用されなかったためです。
 2003年,私が東大病院長のときにSARSがありました。そのときに都から発熱外来の設備を整えるようにということで,数千万円かけて整備したのですが,地方財政再建法の制約で,国立大学病院は都の財政支援を受けられませんでした。このように,大学病院は,医療機関として非常に中途半端な状況に置かれてきました。
 法人化に際して,国立大学は経営改善を求められて非常に厳しい状況に置かれました。とくに国立大学全体で9,276億円の借金,これは病院建設に要した財政投融資からの借入金です(スライド3)。国が責任を持って償還するということで借り入れていたのですけれども,国立大学が法人化されたときに,それぞれの大学病院で全額償還せよとなりました。これを国立大学病院は頑張って,ほぼ返済しました。こういう負荷を担って国立大学病院は少しずつ自立していきました。
 しかし,文科省の大学設置基準によると,大学病院は,医学部学生のための教育・研究機関であると位置づけられています。そうであるならば,約1兆円の借金を返済するのは,本当はおかしいのです。教育・研究機関には返済能力がないですし,ほかの学部は返していません。国が大学病院に借入金償還を命じたことは,国立大学病院は単なる教育・研究機関ではないことを,政府が明言したに等しいのです。しかし法律上,すべての大学病院は,いまだに「学部学生の教育と研究のための病院」とのみ位置付けられており,このことが,多くの問題を生じています。
法人化のとき,1兆円を20年で償還するのはあまりにも負荷が大きい。そこで我々は,財務省に要望に行き,再考を求めました。「これでは大学病院は潰れます」と言ったところ,財務省の担当官からは,「潰れていただいて結構です」ということでした。恐らくこのスタンスは今でも変わっていないと思います。
 この状況の中で国立大学病院はよく頑張ったと思います。しかし法人化前の財投借入金は返したのですけれども(スライド4の黄色いバー),新たに施設費貸付け事業残高が増え,6,000億円を超えています(スライド4の赤いバー)。これを本当にきちんと返せるのかどうか,国の支援が必要です。
 前回もこの図をお示ししましたが,一番最近の大学病院の収入を示すデータで,国立大学病院長会議からいただきました(スライド5)。かつて,国立大学病院の収入は,国立大学全体の運営費交付金の半分でした。ところが今は,国立大学病院の収入は,運営費交付金を超えました。ここまで頑張ったという事実を知っておいていただきたいと思います。
 次に大学病院の位置づけの問題です。大学病院は,もはや単なる教育機関ではないのです。国立大学病院に対して,国が借入れた約1兆円の借入金を,各大学病院が償還せよ,償還しないと倒産,とまで迫られたのです。これは,国立に限らず,大学病院に病院事業体としての機能を求めたわけです。もちろん,大学病院は,教育・研究のための病院であることは基本ですが,地域医療に貢献する病院,さらに特定機能病院という,少なくとも3つの役割を持っているのが大学病院であり,これは私学も同じです(スライド6)。ところが,大学設置基準には,附属病院は「医学または歯学に関する学部の教育・研究に必要な病院の機能が確保される場合」とされており,教育研究以外の役割は明記されていません(スライド7)。その一方で,国が借り入れた1兆円を,独立した大学病院に償還せよと言うわけです。教育研究機関として位置付けるのであれば,1兆円を返すことは無理です。償還を求めるのであれば,病院事業体として大学病院を位置づけるべきなのです。
 ただし政府はもっと広く考えています。平成28年に,会計検査院が,国立大学病院の役割を国会に報告しました(スライド8)。これによると,国立大学病院の役割について,少なくとも教育機関,研究機関,診療機関の3つを挙げ,さらに地域貢献,社会貢献,そして国際化,この5つの使命が国立大学病院の使命であるとしています。それに合わせて設備計画を立てるべきと国会に報告しました。したがって大学設置基準における大学病院の役割と位置づけを,ぜひ見直していただきたいと思います。実際,大学病院は,これらの5つの使命,機能,役割を踏まえて,施設整備をしないといけないという報告書が出ています(スライド9)。
 最後に,大学病院の研究力が低下し,論文が減っているように言われますが,必ずしもそうではないようです。今までの資料にもありましたけれども,法人化後に,国内における臨床医学の論文割合は倍近くに増えました。アメリカと同様に,基礎医学と臨床医学の論文が今や均衡しています(スライド10)。いかに,昔の大学病院では,臨床研究が困難だったかを,表していると思います。
一方,実数について調べると,どの分野が伸びて,どこが低下したかがわかります(スライド11)。これはJST(科学技術振興機構)で調べてもらった資料です。95年に科学技術基本計画ができて,ポスドクも増えて,しばらく日本の科学は,勢いがありました。しかし90年代後半になるともう横ばいです。よく,法人化されてから研究力が落ちたと言われますが,必ずしもそうではありません。臨床医学については,法人化されてから徐々に伸びはじめ,基礎生命科学に並びました。最近は基礎生命科学も伸びています。科学は,時代によって,領域の盛衰があります。今は,科学の中で,臨床医学と生命科学に勢いがあると思います(スライド12)。
 論文の施設別の内容です(スライド13)。トップ10%の論文割合は,国立大学も私立大学もそれなりには伸びていますが,私立大学の伸びが著明です。国立大学は1兆円の返済で疲労が蓄積しているようです。
 基礎生命科学については,私立と国立の間で,法人化前と比べて変わっていません(スライド14)。国立研究開発法人は落ちているようです。機関別にみると,企業の研究が相当落ちています(スライド16)。
次に日本の世界ランキング低下の要因をどう読むかです。97年から99年の臨床医学は,全体の論文数が13,497です(スライド17)。トップ10%,トップ1%で見ると,確かに順位が落ちています。しかし論文数は13,000が14,000になり,2017年から19年では,約2万と増えています(スライド18-19)。論文が増えたのに,国際ランキングは下がっている。
 実はアメリカの臨床医学も同様で,かつてトップ10%論文(分数カウント)のシェアが48%,トップ1%論文は56%だったのが,これが最近は35%と41%です(スライド17-19)。重要な論文の半分をアメリカが占めていたのが,最近は落ち込み,その分を他の国が占めるようになってきた。そこに日本が入り込んでいない。割合から見ると,昔も今も大体アメリカの十分の1です。国際的な競争が激しくなったということです。
 分数カウントは,共同研究でその国が主体的な役割を果たした割合です。整数カウントというのは論文の数です。これを見ると17~18年前,多くは自前主義です。自分たちの国の中で研究していたのですが,最近のアメリカ,ドイツ,カナダは,活発に国際共同研究をして論文を増やしていることがわかります。
 日本もそれなりに頑張っていますけれども,恐らく国際共同研究の波に乗れていない。世界のアカデミアで,臨床医学研究全体が非常に活性化しているのに,対応が取れていないために,ランキングが落ちているように思います。しかし単に研究費とポストを用意すれば世界に追いつけるわけではな。若い人は旅に出て,新しい領域を研究しないといけないのです。
 基礎医学についても大体似た傾向ですけれども,基礎医学のほうが国内で閉じた研究が多いように思います(スライド20-22)。こちらもランキングが落ちていますが,論文数自体としては少し伸びています。この変化をどう読むか,専門家に分析していただく必要があると思います。
 十数年前,総務省の独法評価委員として医師不足の問題を議論したときに,年齢別に,医育機関,病院,診療所の3つの区分のどこで,どのぐらいの人数が勤務しているかを,厚労省に依頼して表を作成してもらいました(スライド23,24)。私が大学を卒業した頃は,50歳前後の医師が最も多かった(スライド23)。このピークは,前回お話した軍医の養成です。戦後,医師数は減らしたのですが,国民皆保険制度の導入でまた増やし始めました。
 医師数は,2006年,そして2020年になると大きく増加します(スライド24,25)。医師は,若いときは医育機関に勤務しますが,その後は病院へ,高齢になると診療所に移動します。この割合をどうするのか,病院にいても教職を兼ねるということがあってよいでしょうし,全体については政策で考える必要があると思います。私からの補足説明は以上でございます。
 それでは,ここまでのところで御質問,御意見がございましたら,よろしくお願いいたします。よろしいでしょうか。後で御質問いただいても結構でございます。
 それでは,続いて議題の1,中間取りまとめ案につきまして,事務局より説明をいただきます。
【堀岡企画官】  医学教育課の堀岡でございます。中間取りまとめ案について,御説明させていただきます。永井先生,ありがとうございました。文科省は大学病院,潰れていいとは全く思っておりませんので,その点はぜひ皆様,御理解いただければと思っております。
 前回,議論の整理という形でお示しさせていただきましたけれども,それについていろいろ章立てをしたり,分かりやすく動かしたりといったところがほとんどでございます。その中で前回の先生方の御意見とか,あとは中間取りまとめという形にするために,「はじめに」と「おわりに」というような形でまとめておりますので,そのような変更したポイントを中心に御説明させていただくというのが最初で,その後,我々,今いろいろ概算要求をどういうふうにするのかということを,厚労省と文科省と両方で検討してきたんですけれども,概算要求,外に出せるようになりましたので,まさにこの検討会とリンクした形で概算要求,大学病院への支援,両省で考えておりますので,それについて御説明させていただく機会をいただければと思っております。
 最初に中間取りまとめ,資料2のところでございますが,「はじめに」という新たな章をつくっております。「はじめに」というところ,永井先生からも御意見いただきましたけれども,大学医学部は教育・研究に必要な附属施設として附属病院が設置されて,特に高度で専門的な医療を提供してきたと。さらに,大学病院は我が国の医療政策と連携して,教育・研究に必要な附属施設としてではなくて,それだけではなく地域医療の維持にも大きく貢献してきたと。このように大学病院の役割・機能が変化する中,近年は高度で専門的な医療機関として,大学病院で診療の比重というのが非常に高まっているということを改めて書かせていただいております。
 大学病院は地域医療に不可欠で中核的な医療機関であり,地位を保ちつつ,質の高い医療人材の輩出や優れた研究成果の創出を担う機能を維持するということが重要で,それを速やかに実行することが求められると。その方策について,この検討会での中間取りまとめをするという,「はじめに」という章を設けております。
 次の2ページでございますけれども,永井先生からも御指摘いただきましたが,大学設置基準は一方で大学病院の教育・研究及び診療に主として従事する相当数の教員を置く旨の規定が置かれております。なので,法令上,大学病院も診療を担うことは想定されていますけれども,改めてここで大学病院医学部の教育・研究に必要な附属施設としても位置づけだけではなくて,高度で専門的な医療機関としての社会的使命もあるのだということをお示しさせていただいております。
 次,5ページでございます。これについては,大学病院のキャリア形成について,教育・研究時間の減少というのを示した章の最後に,こうした教育・研究時間の減少,これは前回の議論の整理でも様々,御意見をいただいたところですけれども,改めて最後のポツでまとめて,大学病院の医師の研究を含めたキャリア形成を支えることが困難となって,医学教育・研究としての魅力が低下してしまって,若手たちが集まらなくなるということを改めて書かせていただいております。
 また,次の章が,働き方改革の適用といったところで,若干重複する記載ではございますけれども,6ページ,こうした取組を行わなければ社会的ニーズに応じて云々かんぬんということで,また若手医師が集まらなくなって,地域医療の崩壊を招きかねないことを認識する必要があるということを,改めて最後のポツでまとめていただいております。
 7ページでございますけれども,前回,様々な先生方から,国が大学病院に望むことは何なのか,また大学病院が今後示していく方針について端的に,総花的ではなくて,まとめるところをつくるべきだという御意見をいただきましたので,ここに書かせていただいております。未曾有の困難に直面する中でも,大学病院はその機能を将来にわたって維持していかなければならないと。国は,もし大学病院がその機能を維持できなければ,社会的損失が計り知れない。我が国の医療そのものの崩壊を招来しかねないということ,国は大学病院の自主的・自立的な運営を促しながらも,責任もって具体的な支援策を講じる必要があって,また,若手医師が働きたいと思えるような魅力をさらに高めるための取組も後押しすることが必要だということで,国が大学病院に求めるもの,国がやらなければならないことを明記させていただいたところです。
 また他方,大学病院においても,働き方改革を進めながら医師派遣も含めた診療維持をしながら,将来における医療人材の質を確保して,国民が新薬や新たな医療技術を享受する機会を失わないように,教育・研究に係る機能を維持するために,まず大学病院自らが,世界に伍する医育機関として大学病院の質を高めるという気概をもって,改革を進める必要があるということ。それで改革プランをたてて改革を推進し,持続可能な大学病院経営に取り組む必要があるということ,僭越ながら書かせていただいております。これについては,後ほど概算要求をからめた文科省の支援を考えておりますので,御説明させていただこうと思います。
 8ページでございますけれども,山口先生から御指摘いただいた,少し各論ですけれども,画一的な改革プランを策定することにならないようという文言,また9ページ,茨城県から御指摘いただいた,都道府県の意見も聞きながらというところの明記をさせていただいております。ほか,各論の幾つかを御説明させていただいておりますけれども,例えば10ページ,医師以外の医療関係職種で看護師が物すごくしか書いていなくて,看護師以外のそういったものが必要ないように見えるという御意見をいただきましたので,厚生労働省のタスク・シフト/シェアに関する検討会においても,現行制度下でどんどん拡大していると。様々な実施の医療行為を拡大しているという法令改正がなされていたということを入れております。
 また,11ページでございますけれども,ここで,大学院で働く勤務環境の改善ということ,改めて章立てをして,(5)ということで章立てをして,さらっと勤務環境の改善が必要であるということを書かせていただいていたんですけれども,様々な御意見,若手医師の勤務環境の改善や魅力を持った大学院をつくることが最も重要な施策の一つだという御意見をいただきましたので,改めて(5)を立てて,その中で,今回検討会で医学生から中堅の研究者までヒアリングを行いましたので,そこで書いていただいた御意見の中身を書かせていただいております。
 また,永井先生などから御意見をいただいた,例えば医師各自の労務負担などを可能な限り平等するために,大学病院の診療科ごとの診療要員なども柔軟に,院長のガバナンスの中でちゃんと見直しをして,若手医師の魅力あるもの,診療科ごとにもつくっていくことを各項の最初にお示しして,その後,ヒアリングで様々な御意見をいただきましたけれども,例として,また高い意欲で研究・診療を行う大学病院の医師がきらきら格好よく,憧れる存在にというスローガンもいただいていますので,それをはっきりと書かせていただいたりして,若手医師の勤務環境の改善などが非常に重要だということを,章の中でかなり記載を多くして,明確にしております。
 例えば12ページですけれども,地域医療を支える大学病院の機能を維持するために,その地域医療を支えるということだけで頑張るのではなくて,働き方改革を進め,若手医師が大学病院で働きたいと思えるような,世界で高く評価されて,大学病院の勤務医が憧れの存在として輝けるような環境づくりが重要であるということを記載しております。
 そのほか各論の御意見を少しずつ足したりしておりますけれども,16ページ,17ページの辺りで,「おわりに」というところで,非常に長く記載をさせていただいておりますが,前回の永井先生から御意見をいただいたプレゼンなどをベースに,大学病院の困難な様々な歴史について,「おわりに」だけを読んでもストーリーが分かるように書かせていただきました。
 例えば今回の議論を通じて「おわりに」ということですが,大学という医師養成機関における様々な歴史の大局を見渡すことができるようになったと。我が国の医療保険制度,国民がいつでも誰でも,国民皆保険制度で非常にアクセスもフリーな,WHOでも言われておりますけれども,世界に誇れるものである一方,永井先生からのプレゼンにもありましたとおり,地域の医療資源が広く薄く分散していて,特に大学病院も小さいと,ほかの外国に比べると規模が小さかったりするので,規模が小さければ非常な勤務の労働になりやすいのは当然ですので,そんな状況に置かれていると。
 病院運営費交付金の話も2つ目に書かせていただいて,一方で,3つ目で,国家公務員総定員法の枠外となったことで,非常に数を増やすことはやりやすくなったということを書かせていただいております。また,お金の話ですけれども,国立大学法人の運営費交付金の病院分,1,100億円程度が送致されていますけども,業務収益の1割に満たない額になっていますし,私立大学は私立大学等経常費補助金,1校あたりの交付額も年々減少傾向にあるところです。
 先ほど,永井先生からかなり補足の御説明をいただけましたけれども,研究力について,臨床医学はかなりそこそこ頑張れて,診療の活発化にともない頑張れているけれども,基礎生命科学分野,なんとか横ばいといったところですから,減少もしくは横ばいの傾向が見られるというところ。一方で,なんとか臨床医学についても質も向上しているという御意見もありますので,大学病院に勤務する医師が診療に多くの時間を割かれながらも,限られた時間で積極的に研究に取り組んでいるのだということをはっきりと書かせていただいております。
 17,18ページに続くところですが,教育の部分でございます。教育についても,私どもモデル・コア・カリキュラムを今年まとめましたけれども,海外の学会などでも日本のモデル・コア・カリキュラムは非常に高い評価をいただいている一方で,教育に関わる教員への評価などがなかなか難しくて,そういった評価が自己犠牲に頼ってしまっているという現状もございますので,教育に関して適切に評価されるような仕組みというものを今後,いろいろな大学でつくれないかということを検討していくことが重要だと書かせていただいております。
 本検討会,医学生から若手研究者まで様々なヒアリングで行ったけれども,世界的に高く評価されるような存在にすることが重要であるということ,またここで書かせていただいております。この検討会でも常々,御議論いただいている医師派遣機能ですけれども,医局といわれる同じ専門性をもつ医師たちが,大学病院だけではなくて地域の様々な医療機関に移動しながら,研さんを積んだりしながら,一方で地域からの診療の要請に応えて地域医療に貢献しているという現状について,ここで書かせていただいております。
 最後の3つのポツが検討会の最後にまとめになりますけれども,本検討会の議論でも明らかになっているのは,大学病院が創薬とか医療機器とか様々な論文を書いたりする未来の医療というものだけではなく,現在の医療,まさに現在の診療も支えることになっていて,大学病院が疲弊していることは明確である。様々な大学病院に関する施策は大学病院における診療や臨床研究の活性化を促したという意見がある一方で,教育・研究に非常に厳しい影響を与えたという意見も多くもらっております。国は大学病院の当事者とか有識者の意見を聞きながら,時期に応じた施策を今後も立案しなければならない。
 大学病院は今後も優れた医師を輩出し続けるとともに,臨床研究のみならず基礎研究において優れた研究成果を生み出していくためにまず国が行うべきことは,もう一度原点に,この検討会に戻りますと,大学病院に勤務する医師が十分な教育・研究にエフォートを割くようにすることができる体制を確保するということであります。
 最後に,これは文科省の検討会ではありますけれども,文科省は主に大学病院の運営や教育・研究の観点から,厚労省は主に診療の観点から,双方が国民の視点に基づいて,くり返しになりますけれども,現在の医療のみならず未来の医療を両省できちんと守っていくことが重要である。一方で大学病院においては,僭越ですけれども,社会から付託された医療機関であることを自覚し,常に透明性を確保するとともに,説明責任を果たせる組織であることが求められるということで,結ばせていただいております。
 今までの検討会で出した重要な参考資料について,その後にまとめておりますが,引き続きましてこの検討会の結論と連動した形で出している文科省と厚労省の概算要求について御説明させていただきます。
【永田室長】  それでは,医学教育課永田より,資料3につきまして御説明をさせていただきます。それでは,資料3につきまして私,永田から御説明をさせていただきます。資料3を御覧いただければと思います。こちらにつきましては,大学病院改革に関するものということで令和6年度の概算要求をまとめさせていただいております。最後に厚生労働省からの要求につきましても資料が付してございますので,そちらにつきましては後ほど,厚生労働省の林課長から御説明をさせていただきたいと思っております。
 まず,文科省の分でございますけれども,1枚目でございますが,今回,医師の働き方改革に伴う大学病院緊急パッケージと表しまして,これまで本検討会で御議論をいただいておりました内容も踏まえまして,リンクするという形で,全体で120億円を要求するというものでございます。
 こちらにつきまして,今回の課題認識といたしましては,令和6年度から医師の時間外労働時間の上限規制が適用されるということから,大学病院におけます働き方改革を進め,適正な労働環境の整備が必須であるということである一方で,診療業務に追われて教育・研究時間の確保ができないという課題も明らかになってきております。このままでは大学病院の魅力が低下し,若手医師も大学病院から離れていきかねず,地域医療を支える大学病院の基盤維持のためにも,教育・研究機能の維持というものが重要であるということを考えておりまして,そのため2035年度末の地域医療確保暫定特例水準の解消も見据えまして,働き方改革を進めながら,医師派遣を含めた診療を確保しつつ,将来にわたる医療人材の質の確保,また国民が新薬や新たな医療技術を享受する機会を失わないように,教育・研究機能を維持するための改革を一体的に進めていただく必要があるということで,これらの非常に難しいミッションを遂行していただく大学を支援したいというものでございます。
 具体的な改革イメージとしましては,次のページ,2ページ目を御覧いただければと思いますが,こちらは第3回の検討会でも御議論いただきました大学改革のガイドラインというものを国が提示した上で,各大学において大学本部とも連携した形,一体となった改革の推進とありますけれども,連携した形での改革プランを策定していただきたいというところでございます。その中で,運営改革や人員改革,または教育・研究・診療に係る業務改革を進めていただくということを考えております。
 各改革の具体的な内容につきましては,これは例示になるかもしれませんけれども,黒丸のところにそれぞれの改革の内容というものが入ってございますけれども,これらの進捗状況,また各大学の実情というのが様々異なりますので,各大学においてはそういった御事情をそれぞれ踏まえて,各大学でどのような方策を今後進めていくのか,また今現在でも既に改革を進めていただいているというところはあるかと思いますが,そういった改革の内容を御検討いただいて,こちらの改革プランに落とし込んでいただくということになるのかと思っております。
 また,今回のスキームでは厚生労働省とも連携をさせていただいておりますので,こちらの今,緑で色付けしている部分,こちらは業務運営,または教育・研究となっておりますけれども,こちらの部分については文部科学省が支援をさせていただくところで,また白抜きで,破線で書いてある部分,こちらは診療や医療提供体制の部分でございますけれども,そこにつきましては厚労省での基金等を活用した支援ということで,検討をしていただいているというところでございます。
 またこちら,本来であれば継続的な支援ができればというところでございますけれども,昨今の国の財政事情もございますので,この辺りにつきましては,これからの改革を進めていただいた結果をまた財務の構造改革につなげていただきまして,最終的には,大変申し訳ないですけれども,実装化まで進めていただきたいところでございます。
 ページが戻って恐縮です。1枚目でございますが,具体的な事業内容でございますが,資料の真ん中辺りにございますけれども,こちらが先ほど御説明いたしました改革プランの策定をして,改革に向けた取組を積極的に実施していただく大学を対象に,1大学あたり年間3億円を上限といたしまして,また支援期間を6年間ということの概算要求内容となってございます。
 続きまして3ページ目を御覧いただければと思いますけれども,こちらの大学病院改革緊急パッケージの要求のほかに,3ページ目,社会的な要請,また具体的には医療的なケア児への支援に係るもの,また改正感染症法への対応として,特にコロナ禍での必要性が顕著となりました重症患者を看られる看護師の要請に係るようなプログラム開発の補助金を,3億円という要求を出しているところでございます。
 また4ページ目は文科省の予算になりますけれども,診療参加型の臨床実施の充実を図るため,評価が難しい教育部分の教員評価の在り方,また地域枠制度の効果検証等に係る調査研究委託費というところの要求を考えているところでございます。いずれにいたしましても,昨今の国の財政状況を踏まえると非常に厳しい要求の状況となっておりますけれども,厚生労働省さんや,また各関係団体等とも連携協力をしていきながら,予算の確保に向けて対応していきたいと考えているところでございます。
 文部科学省,以上でございます。最後のページ,林課長から,よろしくお願いいたします。
【林課長】  厚生労働省の医事課長でございます。最後,5ページを御覧ください。厚生労働省のほうでも概算要求の中で医師・医療従事者の働き方改革に関しての要求を行っております。地域医療介護総合確保基金,これが95億円あまり,この医師の働き方改革に関連して要求を行ってございます。この基金の中で来年度さらに,ここに書いてございますけれども,大学病院等からの医療機関に対する医師派遣の充実,医師の労働時間短縮に取り組む医療機関に対する勤務環境改善等のためのさらなる支援を行うということで,その内容を充実してまいりたいと考えております。
 医師の働き方改革を行っていく中で大学病院,とりわけ病床数あたりの医師数もかなり多いということで,かなりこの影響が及んでいるように理解をしておりますので,そういったところに着目したような支援が行えるかどうか,今後,政府の予算案の獲得に向けて調整を図ってまいりたいと考えております。以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。これでよろしいでしょうか。それでは,これまでの説明に対して御意見がありましたら,御発言をお願いいたします。
 地域医療介護総合確保基金の話がありましたけれども,これがまさに先ほどお話しした地域財政再建法と関係があります。地域医療介護総合確保基金は,国が3分の2を出して自治体が3分の1を拠出します。それがセットにならないと支援できません。法人化前でしたら,国は自治体から支援を受けてはいけないわけですから,国立大学病院は対象になりませんでした。制度の変化によって,支援の在り方も随分変わります。
 いかがでしょうか,どこからでも結構ですので,御質問,御意見いただきたいと思います。今村委員,どうぞ。
【今村委員】  今村です。まずは中間取りまとめと予算化,本当にありがとうございます。2つほど御意見を申し上げたいと思います。まず,大学の苦悩の歴史を「おわりに」に入れていただいたことに,心から感謝を申し上げます。いかに大学が追い込まれていることをちゃんと書いていただいていたことはよかったんですけれども,私は思うんですけれども,これは「おわりに」ではなくて「はじめに」ではないかと思うんです。いかに大学が追い込まれたから,それが分かったから今回の対策を打つというような流れではないかと思います。
 私は大学病院の経営にずっと携わってきましたけれども,交付金の削減,私が東大病院にいたときに実感しました。毎年6億円ずつ減っていくんです。収入じゃなくて,これは純利が6億円ずつ減っていくので,もう莫大な影響なんですよ。これをみんなで残業して賄ったというのが今までの状況で,今回,もう残業するなと言われたために,もう20年前のツケが今戻ってきたようなことだと思います。ですので,「おわりに」の中の最後の3節ぐらいはこれからの話ですけれども,そこまでの10節ぐらいは今までの問題点を書いているものなので,どちらかというと「はじめに」や最初のほうに書くべき現状の問題点だと思います。
 2つ目ですけれども,10ページにあります大学病院のPL,BSといった財務状況を明らかにしてくださいということを書いていただいて,今回,単年度の事業全体の収支についてもちゃんと書いてくださいということを言っていただけたことは,本当によかったと思います。これは,PLだけでは本当に大学病院の黒字赤字が分からないという問題で,最終的には各大学が幾ら現金を投資していいかが分からないというのが今の現状だと思います。ですので,単年度収支を明快にしてもらって,すると幾ら再投資ができるかということが大学で分かるので,これをぜひ各大学には周知徹底してもらって,再投資に使える金額が幾らかということが分かるようにしていただきたいと思います。今村から意見,2点です。以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。山口委員,どうぞ。
【山口委員】  ありがとうございます。私は資料3について,質問をしたいんですけれども,1ページのところで今回,120億円, 1大学あたり年間3億円を上限と書かれています。約80大学があるということからすると,約半分ぐらいに相当するのかと思うのですが,これは改革プランを出していただいて,その中から例えば40ぐらいを選ぶということになるのか,選び方についても,何かもう既に想定されているんであれば,教えていただきたいと思います。
【永田室長】  それでは私から。基本的には40云々というところで決めているわけではない,今後詳細を決めていかないといけないんです。基本的には,改革プランを策定して改革を進めていただく,そういった取組をしていただく大学には,それぞれ,各大学に配分したいということを考えております。そうなりますと今,金額が120億円ですので,仮に80億円になりますと,1.5億円という形になるかとは思うんですけれども,その辺りは基本的には非常に厳しい財務状況の中で今,120億円を考えているところでございまして,もしその中で不足等があるというとことでしたら,また来年度以降も引き続き,何らかの措置を考えていきたいとは考えておりますけれども,基本的には今までの何かとがったものを引き上げるというかモデル的に支援をするものではなくて,基本的には改革を進める大学をすべからく支援したいというような位置づけと考えております。
【山口委員】  分かりました。ありがとうございます。
【永井座長】  よろしいでしょうか。釜萢委員,どうぞ。
【釜萢委員】  どうもありがとうございます。今の山口委員のこととも関連するんですけれども,大変厳しい財政状況の中でこれまでにない規模の概算要求をされることについては,大変大事なことだろうと思うのですが,それぞれの大学の困難な状況については,これまでの議論の中でも随分示されてきたのである程度は承知をしておりますが,ここに支援額として1大学あたり年間3億円を上限ということによって,具体的にはこれが改革プランをきちんと策定して,仮に適応になる大学だったとして,これをどういうふうに利用するとどういうふうに改善をするのかという,少し何かこう根拠のようなものがもうちょっと示されたほうが,より賛同が得やすくなるようにも思うのですけれども,少しこの金額の設定が漠然としているように感じますが,その辺りについてはいかがでしょうか。現状は非常に厳しい中で,もっとそれは積み増せばそれに越したことはないんだろうとは思うんですけれども,その辺りの設定の背景とか根拠等についてもう少しお示しいただけるとありがたいと思います。
【永井座長】  いかがでしょうか。
【俵課長】  ありがとうございます。医学教育課の俵ですけれども,今回,改革プランの内容としては2つ大学病院にお願いをして,それに対する支援をしたいと思っています。一つは,今回,働き方改革ということで,原則960時間以内に残業時間を収めるというのが基本になると思いますので,まず,そこに向けて取り組んでもらうというのが一つです。もう一つは,単に時間を減らしただけということになると,これも大変だとは思うんですけれども,大学病院の診療・教育・研究の機能が失われるということになると思います。なので,働き方改革,一人あたりの時間を縮めながら大学病院の機能を維持してもらうということを求めて,それに対して改革プランをつくってもらいたい。その限りで,大学病院の事情に応じた自由なプランをつくってもらいたいと思っています。
 そのときに僕らが根拠として,必要な内容として考えたのは,960時間に収めようと思ったときにどういった予算が必要になってくるか。単純に考えれば人を増やすということになると思いますが,人を増やす,あるいは仕事を分担したり効率化したり,それを含めてということになりますが,僕らがAJMCの方々にお願いして行った調査によると,大学病院の先生方5万人のうち約3割の先生方がまだ960時間を超えて残業が必要になってくると,そういう試算が出されております。
 今回のまとめの中にも出てくるかと思いますが,それは時間に表すと約1,000万時間を減らしていくことが求められると。それを考えたときに,人の確保であったり仕事の分担,あるいは効率化ということを計算していくと,1大学あたり,教育・研究に関しては3億円程度が必要なんじゃないかという試算で取り組んでいます。これに併せて厚生労働省の取組,これも含めて予算の支援を国として行っていくことで,働き方改革を進めながら大学病院の機能を維持するということに,全体で取り組んでいきたいと考えているものになります。よろしくお願いします。
【釜萢委員】  分かりました。どうもありがとうございました。
【永井座長】  続いて宮地委員,どうぞ。その前に北澤委員,どうぞ。
【北澤委員】  北澤です。私でよろしいですか。
【永井座長】  順番になっています。
【北澤委員】  北澤です。私も資料3についての質問です。資料2の,今回の中間取りまとめのところで,8ページのところの下から2番目の丸で,「国は,大学病院が教育・研究の成果を診療に還元し,高度で専門的な医療を提供していることに対する評価や,地域へ医師を派遣し……に対する評価」といった,従来から大学病院がやっているけれども十分に評価されていなかったところを評価し,支援すべきであると書いてあるんですけれども,そこに対応している部分は,資料3の2ページの右側に小さな字で「今後の対応策」と書いてあるところの,「厚生労働省において既存の診療に関する評価に加えて,医師派遣等の大学病院特有の機能を評価し支援」に相当するのかどうか,ここはお金も関係する重要なところだと思いますので質問させていただきます。
 それともう一つ意見としては,今回こういった大学病院の改革プランをつくっていただくことについて概算要求をされていて,それが実際に実現するのはいいことだと思うんですけれども,全体を伺っていますと,単に大学が改革プランをつくるだけでは足りないような,もっと根源的な問題があるように思いました。なので,この改革プランをつくって終わりじゃないよというところをぜひ,伝えていただければと思いました。以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。ぜひ,北澤委員からも具体的なポイントがありましたら,御意見いただければと思います。宮地委員,どうぞ。
【宮地委員】  ありがとうございます。私,資料2の中間取りまとめ案に関して2点,文言について発言させていただきます。6ページの4つ目の丸,赤字のパラグラフですけれども,「こうした取組を行われなければ」の文章についてです。有効な取組が行われない場合に懸念されるのが,若手が集まらないことというところに焦点が当たっていると思うんですけれども,それのみならず医学生や研修医,専修医の教育や資格付与に関する評価を担う中堅から指導医層の負担は限界を迎え,立ち去ることも今回,議論の中に出てきたかと思います,懸念されるべき点として。これは「おわりに」にも記載されている,これまで構築してきた卒前卒後の医師養成課程における質保証を支えるシステムの崩壊に直結します。
 さらに社会的ニーズに応じた教育や研究は,何も臨床医学に限ったものではないと思います。したがって,我が国の臨床医学の教育・研究・診療レベルの低下と地域医療の崩壊ではなく,我が国の医学教育・研究・地域医療の崩壊やレベルの低下と表現してはいかがでしょうか。
 2点目は,14ページ目の臨床実習指導員の話題に関してです。前回の議論で私がお願いさせていただいた点でもありますけれども,教育の負担をアウトソースされる側の医師以外の職種に対する配慮や,インセンティブについても一言,引き続きの検討課題として入れていただきますよう,改めてお願いできたらと思います。以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。まだ御発言いただいていない方,横手委員,どうぞ。
【横手委員】  ありがとうございます。本日は永井先生の御説明に始まり,そして文部科学省,厚生労働省の皆様からのお考えと,それから御支援の内容をお示しいただき,こういうことを整理していただき,また大学病院を本当に全面的に皆さんにしっかり考えて支援していただけることに,大変ありがたく思っております。画期的なことであり,また大きな苦労があったものと感謝申し上げます。ぜひ,これが少しでも100%に近い実現ができるように,お願いしたいと思います。
 一方で2点,コメントしておきたいことがあります。我々が全国の大学病院で試算した結果に照らすと,この働き方改革,すなわち時間外労働の上限規制の後,大学の診療・研究・教育を守り,そして地域医療が壊れないように維持していくためには,今回の金額と期間は圧倒的に少ないと思います。全く足りないと思うんです。これが始まりであるというお話が先ほどありました。これをきっかけとしてさらなる御支援がない限りは,例えば円安がもう少し進むとか光熱費がちょっと上がったり物価がさらに高騰するだけで,3億円,1.5億円はもうあっという間に吸収されてしまいますので,本当に焼け石に水になってしまう危険が,今の外部環境の変化からすると想定されます。ですから,これで終わりではなく,本当に医療を支えるためにどうしたらいいかということについて,ここからさらに深く,ご検討いただきたいと思います。
 それから前回の発言とも少し重なりますが,根本的な課題という,先ほど北澤先生からお話がありました。日本の医療が高度化していく中,そして大学病院が自立運営するために,本当に診療に時間を割かなければならなくなってしまった。その合間に研究・教育をするという構造のもと,日本の大学病院が行っている医療の高度さの割に,そこで働く医師たち,特に若い医師たちの給与が,国内の他病院や診療所あるいは海外に比べてもあまりに低過ぎるわけです。そのために大学離れが進む。また,収入を得なければならない医師は地域医療に行って,これまでは時間に制限がなかったので外勤をして収入を得て生活を成り立たせてきた。そしてそういう医師が来てくれるから,日本全国の地域医療が持ちこたえてきたというところがあるわけです。
 そこに今回の働き方改革で勤務時間の制限が加わりますから,これまでの仕組みのどこかにひずみが生じざるを得ない。だとすると一体何が問題なのかというところの根本を考えて対応することが必要だろうと思います。と申しますのは,大学病院改革に関する概算要求となっていますから,これだと大学病院に問題があるから改革をしなければならない,そうすれば御褒美をあげましょうというスキームになっていると思うのです。でも,本当に現在の日本の大学病院で行われていることに大きな問題があるのか。ぜひ,諸外国とも比べていただきたいと思うのですが,できることを最大限やっている結果がこの状況なのだと。もちろん,まだ効率化とか改善の余地はあるかと思いますが,問題はそれとは違う日本社会全体の医療の構造というところにあるのではないかと感じます。ぜひ,その辺り今後も,永井先生から教えて頂いた歴史も含めて反芻しながら,議論を深めていただければと思う次第です。以上でございます。ありがとうございました。
【永井座長】  ありがとうございます。田中委員,どうぞ。
【田中(雄)委員】  今回の予算を獲得されるのに大変な御苦労があるとは思うんですけれども,120億円あるいは140億円のお金というのをどういうふうに使うのが一番いいかなというふうに考えていたのですけれども,結局,恩恵にあずかれるのは半分ぐらいの大学病院というのでは,今ここで大学病院全体の構造的な問題を議論しているのと相入れないような気がするんです。
 むしろ,使い方は各大学病院,それぞれに任せて,広く採択した方がいいように思うんです。1年やってみて,予算をどういうふうに使ったかということを評価して次年度を決める。次年度のときはある程度のセレクションがあったり,めり張りがつくのはやむを得ないと思うんですけれども,今大学病院の置かれている状況,この深刻な状況ということで一応コンセンサスが得られている中で,そこに採択する病院と採択されない病院が出るということはどうなのかなというふうに思います。だから,結果で評価したほうが,次年度以降結果で評価したほうがいいのではないかと思いました。以上です。
【永井座長】  今の点,事務局,何かお答えありますでしょうか。
【俵課長】  医学教育課の俵です。さっき説明が不十分だったかもしれませんが,僕らの今回の概算要求の趣旨としては,今まさに田中先生に言っていただいたような形で,改革に取り組むところについては全てを対象にしたいということで要求を行っています。これは,どの大学病院も,まさに先生に言っていただいたように,置かれている課題として共通の課題であるということはコンセンサスだと思いますので,そういう意味で今回は競争的とかモデル的というのではなくて,全ての大学病院を対象にするということで要求を行っています。この予算編成の過程でどういうふうな動きになるかということはありますけれども,僕らとしての今回の趣旨は全部ということですし,それを主張として貫いていきたいと思っています。よろしくお願いします。
【永井座長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。ぜひ,この際,御発言いただきたい。小川委員,どうぞ。
【小川委員】  よろしいですか。
【永井座長】  はい,どうぞ。
【小川委員】  永井先生のすばらしいレクチャーがあったわけですけれども,あれは国立大学の特殊性の中で存在していると。そういう意味では,私立大学は全く違う状況にあるんだということを認識した上で,将来の検討を進めていくべきではないかと思います。要するに,大学病院は一応,大学病院で稼いでいる方々のおかげで,確かにかなりの部分が運営費交付金,減額になってはおります。しかしながら,私立大学でいえば2.6%ですから,どこでも間に合わない状況なわけです。そういう私大と,それから国立大学の違いをもとに議論をするべきではないかなと思いますが,ぜひよろしくお願いをいたします。
【永井座長】  ありがとうございます。今日は,国立大学法人化の話でしたけれども,大学設置基準における大学病院の位置づけが問題であることをお伝えしたかったのです。大学設置基準における大学病院は,学部学生の教育と研究の為であるとされていることが問題で,これは,全ての大学に適用されるのです。この法的位置づけをしっかり見直さないといけないということは,国公私立全部に共通する問題です。大学は単なる教育・研究機関ではないということ,そこをしっかり認識する必要があるということを,国立大学病院を例にとって説明したということです。
 宮地委員,御発言ありますか。
【宮地委員】  ありがとうございます。私よりも銘苅委員と和田委員が先に手を挙げていたかと思いますが。
私も追加で発言したいと思います。最後でいいです。
 
【永井座長】  では和田委員,どうぞ。
【和田委員】  よろしいでしょうか。ありがとうございます。銘苅先生が先ではなかったかと思いますが,よろしいでしょうか。ありがとうございます。永井先生の資料の御説明,すばらしかったと思います。また,今回こういった形で中間取りまとめをしていただきまして,本当にありがとうございます。何より,今回のように厚労省と,それから文科省と共同でこういった話が進んでいる。そして,資料3の2ページ目にありますように,大学病院の改革プランのイメージの中に,一枚の絵の中に両者が入って大学病院全体を考えていくというスキームができたこと,大変すばらしいことだと思っています。
 その中で,これは5年から6年にかけて,今後行くわけです。5年,6年かけるとまた時間が,将来随分,状況も変わってくると思います。ですので,一回出して終わるというよりは,それに結果,先ほど田中先生も結果という言葉が出たと思いますが,結果あるいは経過よる状況変化によってまた少し支援を厚くするとか,あるいはそこで見えてきた課題に対しての支援をしていく,この枠組みを継続していただきながら,また次の手を打つ,そういった将来に繋がるスキームも残しておいていただけると大変ありがたいと思いました。以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。では銘苅委員,どうぞ。
【銘苅委員】  ありがとうございます。琉球大学の銘苅と申します。私からは3点です。まず1点目,永井先生から非常に分かりやすく御講演いただきました。その中ですと医学研究,臨床研究の論文数が増えている。大変な中でも増えているという実態を御説明いただいたのですが,文科省から提出していただいている資料2ですと,論文は減り続けているというような文章になっています。こちらはいかがでしょうか,文章としては合っているのでしょうか,事実と。
【永井座長】  ランキングが下がっているということですね。この資料は,科学技術振興(JST)の専門の方につい最近調べてもらいました。どういうふうに区切るかということはあるかもしれませんが,臨床医学の論文はどうも日本は増えているようです。ただ,国際的地位は下がっている。
【堀岡企画官】  ありがとうございます。17ページの「おわりに」のところに書いていて,そうか,横ばいから減少に向かう傾向が迎えられる,違うデータを見ているかもしれませんので,データのほうはきちんと確認して,この辺りの表現はちゃんと直させていただきます。ありがとうございました。
【永井座長】  先ほど御説明しましたけれども,なぜランキングが下がっているかということですが,よく先ほどの論文数の表を見ていただくと,分数カウントと整数カウントがあります。その国が主体的な役割を担ったのが分数カウントの論文です。つまり整数カウントと分数カウントの差が,国際共同研究を表すと考えられます。すると,臨床医学において特徴的ですけれども,全体に占める共同研究の数が世界的に増えているのに対し,日本はこれが少ないことがわかります。
 例えば100例で行った研究について,10か国で100例ずつ集めたら,これはインパクトが大きい。そういうスタイルで世界が臨床医学研究をしているということです。日本も頑張っているけれども,世界はもっと頑張っているのです。アメリカが落ちてきたところを,EU各国と中国が埋めています。とくにEUは連係プレーで研究しています。
 そういう中で日本が閉じ籠もっていると,この流れについていけない。多分そこが最大の問題で,これは大学も,研究者自身も考えないといけない。文科省の支援も,大学の流動性を促す支援をしないといけないと思います。臨床医学の研究の枠組みが変わっているのです。
【銘苅委員】  ありがとうございます。もう2点ありますが,よろしいでしょうか。
【永井座長】  どうぞ。
【銘苅委員】  2点目が,まず資料2の11ページに書いてある若手医師の普段の,非常に日勤帯での勤務が大変で,ワークシェアリングができず当直等もできない,そういった中で給与も低いということが問題視されておりますが,例えば地方大学として,それから外科医として御意見を述べさせていただきますと,私もこの午前中もロボット手術を急いで安全に終わらせて,この会議に駆けつけているわけです。それから,週に3回から4回の手術を実際,教授という役職ですが,実際手術に入り,教育に入っていって,それからそれが終わってまた外来もありというところで,若手というふうに区切るのではなく,何なら教授も含めて皆さんで診療を一生懸命進めているわけです。
 ですので,この文言が非常に気になっていて,企画プラン,プランのほうでも処遇改善,若手医師の処遇改善といって,若手と限定されているんですけれども,実際前回横手先生からもお話がありましたように,大学病院の助教,講師,教授,准教授,全て一般病院に比べると給与が安いということを考えますと,きらきらと誰もが憧れる大学病院となるためには,その中で働く人たちの報酬がしっかりと保障されていると。そういった人権的な対応がしっかりしなければ,若手医師が憧れる大学病院にはならないのではないかと,本当にそこは強く思いますので,若手というふうに区切っているところをぜひ,医師というふうにしていただきたいと思います。
 それから3点目です。3点目に関しては持続可能なプランということを銘打っていただいているんですけれども,例えば各大学の病院長,このプランをつくるときに,6年後にこの予算が区切られてしまったら,もし今,この人件費としてあてがあったときに,6年後に何もなくなったときに,この上げてしまった人件費はそのまま減らすということになってしまうと,どうしても人件費を今,このいただく金額であてがうということがすごく勇気のあることなんだと思います。
 ですので,先ほどからありましたように,大学病院のしっかりとした評価,点数として大学病院の収入が上がりやすいような方策も同時に示していただいて,各大学の病院長が安心してこの金額を人件費にあてがう。そして,若手医師だけのみならず,全ての医師の人件費にあてがえるような文言のつくり方をぜひ,示していただけたらと思います。以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。横手委員,どうぞ。
【横手委員】  ありがとうございます。先ほどの発言では,私も特に若手をクローズアップしましたが,給与の増加はすべての年代に必要と思います。上司を見て,若手が将来こんなふうになりたいと思えるように,そういう意味で全体の底上げをしていかないと大学病院の未来はないと考えます。その意味で,今,銘苅先生がおっしゃったことに100%賛同いたします。
【永井座長】  ありがとうございます。諸岡委員,どうぞ。
【諸岡委員】  御指名いただき,ありがとうございます。まず,永井先生の御講演と,それから今回取りまとめていただきました文科省と,それから厚生労働省の皆様に御礼申し上げます。私も,先ほど永井先生からコメントがありましたように,私,工学研究者ですので臨床研究というわけではないんですけれども,例えば私の研究分野におきましても人工知能,AIを使った研究というので研究をする機関がいっぱいあるんですけれども,例えばトップカンファレンスとかに採択される基準として,現状,今もう何千万,何千という画像データを使って,そしてスパコンを使った研究成果というのはもう大体標準レベルになりつつあるんです。そういった意味では,先ほど永井先生がおっしゃったように,国際共同研究であったり,あるいは国内でも他機関でデータを集めてやれるような環境というのを,ぜひこれから進めていっていただければと考えております。
 そういった意味では,例えば資料3の2ページ目にあります財務構造改革というところの黄色の四角の黒ポツ,共同研究の推進,こういったところを国内外問わずそういった共同研究の推進というのを,もっと積極的にできるような環境,特に私,例えば画像を専門としておりますけれども,画像のデータのやり取りそのものがもう病院,あるいは医療機関の中だけでしか使えないとか,そういったような状況になっておりまして,それが法的なものなのかその病院ローカルのルールか分かりませんけれども,そういったものの縛りによってもうどんどん,例えば我々の分野においても研究が取り残されつつあるというような状況ですので,ぜひ環境も含めて,そういったところを積極的にサポートするようなものを出していただければと考えております。
 それともう一つは,同じ資料の一番最後,5ページ目にありますICTの利活用をどんどん積極的にやってほしいということがありますけれども,ぜひこういったところも臨床だけではなくて教育の現場でもそういった積極的に使って,それを例えば使っているような事例が出ていればプラス査定じゃないですけれども,先ほど結果に対する評価というところのお話が出ていましたけれども,こういった点にも評価をしていただければと思います。以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。まさに諸岡先生おっしゃるとおりで,ビッグデータというのは,ただデータが大きくなるだけではなくて,データシェアリングとか共同研究,国際共同研究という意味を含んでいるということです。日本が遅れてきたのは,そうした情報化時代に乗り遅れている。具体的には,自前主義にこだわり過ぎてきたことと関係があるわけで,これは大学自ら変えていかないといけないし,大学を支援するのであれば,そこは一つの評価ポイントになると思います。諸岡先生,そういうことでよろしいでしょうか。
【諸岡委員】  はい。おまとめいただき,ありがとうございます。
【永井座長】  ありがとうございます。田中委員,どうぞ。
【田中(純)委員】  ありがとうございました。この検討会,第5回ということですけれども,永井先生の講義も含め,課題を浮き彫りにしてきたと感じています。大学病院に勤める医師,大学病院の使命が教育だけではなくて診療も,それから研究も,それから国際貢献も,それから国際性も,5つあるというようなことを明確にして,非常にまとまりがよくなったと思っています。
 その中で,根本的な課題が解決,なかなかできないというのは事実だと思いますし,今回提言になった120億の緊急パッケージで,それで終わりというわけではないということは忘れてはいけないことで,このパッケージで今までやってきたものから新たな仕組みを考えることを提案していただいて,6年間でそれをやりながら,根本的な課題の,給与面とか,5つの使命をもって大学病院はやってきているのだということで,給与面も含めた改善を引き続きやっていくということを忘れないでいかないといけないんじゃないかと思いますので,この予算を,手を挙げたところ全部に配る,もちろん様々な取組を評価しながらやっていく。しかし,根本的な課題を忘れないで,永井先生を中心に課題を続けて,国としても課題を続けていただきたいと思っています。以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。そのほか,御発言いかがでしょうか。まだ御発言いただいていないのが,金井委員,いかがでしょうか。
【金井委員】  発言しようかしまいかずっと迷っていたんですけれども,基本的にこういう120億の資金を大学に配ってくださるということは,大学病院としてはほっとする,泉のような気がして,本当にありがたいと思います。先ほど,銘苅先生がおっしゃったのかな,根本的には医学生が大学病院から離れているという現状,この20年間,どんどんどんどん大学病院から離れていっている現状,これを何とか打破しないと,地域医療も研究もグローバル化も進まないというところで,この中間取りまとめ,拝見しましたけれども,何かそこのパンチ力が全然ないなと思って,若者が大学病院で働くことの憧れとかそういったものが感じられるようなまとめ方というのをしていただきたいと思います。
 ぜひ,根本的にはこの30年,20年,何かの理由で大学病院から人が離れていっている。これは恐らく給与の問題だったり,あるいは高度な医療をやればやるほど,あるいは診療と研究と教育と両立しながらやらなきゃいけないということに関して,若者はもうまっぴらだと。そんなハードな仕事をやってこの薄給で,どうやって大学にいる理由があるのという根本を気がつき始めているので,皆さん,大学が滅びると日本の研究も滅んでしまうということに皆さん気がつき始めているので,ここの会議で転機となって,大学病院の在り方というのを本当に厚労省の方なんかにも大学病院をサポートしていただいて,文科省だけでなく,病院の管轄は厚労省ですので,厚労省も大学病院を相当サポートしていただくような提言にしていただきたいと思いました。以上です。
【永井座長】  永井ですけれども,今の点,私の資料24ページ,25ページを見ていただきたいのですが,国立大学病院の医師は,法人化後に1.6倍増えています。それから24ページ,25ページを見ても,医育機関の医師は増えています。増えているけれども,やりがいがないのか,評価されないのか,創造的な仕事ができないのか。そのあたりをよく分析する必要があります。恐らく,忙しい割には待遇が悪い。自分の時間を持てない。あるいはクリエーティブな仕事をしにくい,などがあるのだと思いまです。そこを分析して提言に盛り込む必要があります。数だけの問題ではないということです。
 宮地委員,どうぞ。
【宮地委員】  ありがとうございます。先ほどから出ている概算要求という支援に関する評価,アウトカムの点で1点,発言させていただきます。先ほど俵課長から960時間という時間が出てきましたけれども,概算要求の支援によるアウトカムを960時間に労働時間が収まっているかという観点で評価しようとすると,どうしても時間外労働を書類上,自己研さんとするといった管理のアプローチが出てきかねないことを危惧しております。
 そもそも医師にとって教育や研究というのは,どこからが業務でどこからが自己研さんなのか,非常に線引きしがたい部分のある曖昧なものであると個人的に思っております。本来は,労働時間ではなくて何時間ちゃんと休めているかという観点で,休息を管理するほうが本質的でないかとも思っております。こちらの検討会で議論すべき内容かどうかちょっと分からないため,先ほど発言しなかったんですけれども,この概算要求の各大学病院での達成度の評価の指標を考える際に,御一考いただければ幸いです。以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。今村委員,どうぞ。
【今村委員】  今村です。今,宮地委員のおっしゃったことをぜひ,お願いしたいと思います。960時間というのは外勤も含めて960時間に抑えるという,なかなか強烈な話なんです。ただ,普通の病院,普通の企業であれば自己の企業,自分の病院だけの話だと思うので,まずは各大学の中で960時間を超えているかどうかというのは一つ,大きなポイントだと思うんですけども,外勤まで含めて一気に960時間まで落とすというようなことをすると,恐らく地域医療に対して恐ろしく大きな影響が出てくると思いますので,まずは1,860時間があって,その次に960時間があるというような考え方で,ぜひやっていただきたいと思います。実際,10年間の960時間には猶予があるわけですので,そこのところはちゃんと評価のときに基準に盛り込んでいただきたいと考えます。以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
【俵課長】  先生,ちょっとよろしいですか。今ここで議論するには多分,時間が足りないとは思うんですけれども,仕組みとして960時間に関しては,ほかの病院で働くことも含めて960時間を原則とするという仕組みだと思います。その中で無理やり960時間に収めようと思うと,例えば外で働いている医師の時間をやめて,自分の大学病院の中だけで収めるというふうにすると,まさに地域医療に影響を強く及ぼすということになると思います。
 そういうことも含めながら,厚生労働省ともどういった形が地域医療に影響を及ぼさず,あるいは維持できるようにしながらの働き方改革になるのかということを考えています。そのときの目標設定として,12年後のことも見据えた目標設定にすることは,恐らく必要なんじゃないかなというふうには思います。というのは,今まで先生方の取組で努力していただいているおかげで,まさに1,860時間以内の先生方が3割に収めていただくような計画をつくってくれているということがあると思います。
 これは,来年度からはそういうことで計画をたてていただいていて,僕らとしては12年後のことも,あるいはもともと1,860がどうしても,普通に考えたら多過ぎる時間であるとも思うので,そういう意味で原則ということになっていると思います。そのときに,目標に向けて取り組む中で,ここはどうしても超えてしまう,あるいは地域医療のことを考えたら,いわゆる今の連携B水準のようなものは維持しなきゃいけないというようなことが出てくることはあるのかとは思うんですけれども,目標としては原則である960と,その中での大学病院の機能維持というのを目標としてたてざるを得ないのかなというのが,今思っているところです。
 これは,僕らは財政当局とも相談しながらやらなきゃいけないと思っているのですけれども,ただ,僕らの根本の思いはまさにここで議論いただだいているような,大学病院のそもそもの環境をどう整えていくかというのがあるので,それがベースにはあるんですけれども,今回の当面の,僕らのこのスキームでまずはいきたいということに関して言うと,今のような目標設定を置きながら取り組むということにならざるを得ないのかなというのが,思っているところではあります。もし御意見あれば,よろしくお願いします。
【永井座長】  今村委員,よろしいでしょうか。
【今村委員】  今の960に,移行期間が過ぎたら収めなきゃいけないことは違いがないですけれども,来年からそれをすぐに収めろという話ではないので,この960時間を達成したら補助金をあげますよとしたらもう,すぐやりなさいという話になってしまうので,そういうことにぜひならないようにやっていただきたいということであります。
【俵課長】  ありがとうございます。長期的なプランの中でどういうふうに960に収めていくかということになっていくかと思いますので,来年度からすぐにということは,そういうプランのたてかたを求めることはしないようにしたいと思います。よろしくお願いします。
【今村委員】  ありがとうございます。ぜひ,お願いします。
【永井座長】  ありがとうございます。小川委員,どうぞ。
【小川委員】  ありがとうございます。話が戻りますけれども,大学に若手の医者が残らなくなってきているというお話が,先ほどありました。これは別にすべての若手の医師が少なくなっているわけではなくて,初期臨床研修医は確実に減っています。一方で専攻医,いわゆる将来専門医になりたいという方々は大学に残ってくるわけです。それでこの中の問題は,要するに大学に戻る意味は,あくまでも学位を取る,あるいは研究をするために戻るのではなくて,そして専攻医として専門医になりたいから大学に戻ってくるというスキームだと思っています。ですからこのところは,要するに専門医とそれから大学で学ぶ医者と,このへんを分けて考えないと,とんでもない間違いを犯すんじゃないかと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。
【永井座長】  ありがとうございます。よろしいでしょうか。
 先ほどの私の図の24,25ページあるいは23ページ,この色分けした図で,25歳,26歳年齢で医育機関に所属する割合,1975年は緑の部分が多いのです。それが2006年,2020年になるに従って,青の部分が多くなっています。これはまさに小川先生が言われたように,若い人たちの大学病院離れです。その辺をどう考えるかということだと思います。御指摘ありがとうございます。
【小川委員】  ありがとうございました。
【永井座長】  田中委員,どうぞ。
【田中(雄)委員】  教育・研究力の低下ということも今回の大きなテーマだったはずです。つまり研究力を上げるためには,働き方改革にどう対応するかという方策と一部重なるけれども,一部は重ならない部分があると思うんです。卒前教育からの問題が絡んでくることとともに,前にもこの議論がありましたけれども,本当に医学研究を医者だけがやるというものではないということを,もっと社会に発信していかないといけない。例えば医工連携もそうですけれども,ほかの分野ともっとコラボレーションする形で医学研究を進展させていくというようにしない限りは,結局のところこの働き方改革の取組で吸収される時間というのは,大学病院の診療に充てる残業時間です。だから,結果的には大学において働く時間は減るかもしれないけれども,それが教育や研究に回るという可能性は,残念ながらあまりないのではないかと思うんです。
 それから地域医療への影響ですけれども,それは非常に地域において深刻だと思いますけれども,外勤に行かないということは収入減にも直結する問題なので,むしろ若い人たちは,外勤は維持しつつ大学病院の残業を減らすという方向に向かうのじゃないか。そうすると,繰り返しなりますけれども,結局教育・研究に時間が回ることはないと私は思うので,研究力を上げるというのはまた別のスキームを考える必要があるのではないかと思います。
【永井座長】  ありがとうございます。先ほど国際共同研究が少ないのではないかとお話ししましたけれども,その余裕がないのだろうと思います。もう一つは,バックグラウンドの違う人たちを大学病院の中にどれだけ受け入れられるかという人事の問題。多分,両方関係していると思いますが,文科省,今の点いかがでしょうか。いろいろな話が交錯していますので,少し整理が必要で,教育・研究の在り方と働き方改革,あるところは重なるけれども,実は別の面があるという御指摘だと思います。文科省からいかがでしょうか。
【俵課長】  ありがとうございます。実はそこが僕らの今回のもともとの最大の懸念でもありまして,今回の働き方改革を進めていくと,診療時間を確保せざるを得ない状況からすると,教育・研究時間を減らさざるを得なくなって,そこに大きな影響が出るだろうということの問題意識からも,今回のような検討の取組をスタートさせたこともあります。
 本来であれば研究に関しても別のスキームをということもあるかもしれませんが,今回,厚生労働省と一緒になって取り組む,一体となって取り組むことに関して言うと,診療,厚生労働省は診療が中心になりますので,どうしても,診療のところは何かしらの支援を考えてもらうことはできるだろうということはありましたが,教育・研究に関していうと,これは文科省が責任を持って対応しなければいけないということもあって,今回のようなスキームで取り組もうということで,ここには教育・研究部分のある意味維持ということになるとは思うんですけれども,維持ができるようなスキームを共に考えたいということで,考えたものです。
 なので,根本の解決には,これはすべての先生から同じ意見をいただいていますが,根本の解決にはさらなる検討が必要なのかと思いますけれども,今回のスキームに関していうと,診療と教育・研究,それぞれの機能維持を一遍に平行して行いたいということで取り組んでいます。財政当局からは,これは診療の問題だからまず診療の問題を解決してから教育・研究を措置すればいいのではないか,そんな意見もありますが,僕らとしては平行して取り組まないとここの教育・研究が進まなくなる,その懸念は払しょくできないということで,取り組みたいと思っています。よろしくお願いします。
【池田局長】  高等教育局長の池田でございます。先ほど俵から申し上げたとおりで,今回の120億円の予算の趣旨は,働き方改革を来年度以降,きちんと各附属病院で進めていただく上で,その際に教育と研究の機能を維持する,落とさない,充実させるということが主眼にあるわけでございます。今,田中委員がおっしゃった研究力の強化や教育をきちんと充実させる,これは当然ながらこの予算だけでは対応できないわけでありまして,これは研究担当の研究振興局,この会議にもライフサイエンス課長が同席しておりますが,研究振興局とも連携しながら,別途、研究力の強化の施策というのもきちんと打ち出していきたいと思っており,この120億の予算のスキームと,それ以外の大学の研究・教育の振興策を連携させながら対応していく必要があると思っています。以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。いかがでしょうか。今の研究力の問題,私は必ずしもお金と時間だけの問題ではないと思います。魅力というのは若い人がクリエーティブな仕事ができるか,一言で言うと指導者を乗り越えられるか,そういうチャンスを与えられるかどうかだと思います。そのためにも,ヘテロな人たちとの交流が重要で,大学においてはヘテロな背景の人材をもっと入れる必要があるし,若い人はじっとしていないで旅に出て勉強する,自分の世界を切り開く。また,そういう人たちを大学は,別に母校でなくても温かく迎えることです。
 そういう環境ができれば,私は,若い人はお金よりも,大事なことを見つけるだろうと思います。ぜひ,そういう形で大学も改革していただき,また文科省も支援する。大学は自前主義や純血主義,年功序列にとらわれず,国際並みの大学運営をしないといけないと思います。
 銘苅委員,どうぞ。
【銘苅委員】  ありがとうございます。今の,若手医師をどう増やすかというところの議論に関しまして,今まさに私たちがリクルート,若手を勧誘している世代というのがZ世代になっております。そして,給料というものに関して非常にシビアに細かく調査をした上で選択をしていくという世代になっています。なので,我々の給料も非常によく見られているというところ,現実を知った上で入るかどうか検討されている。
 ただ,彼らは非常に真面目で,そして向学心も非常に強い。ですので,大学病院が本当に魅力ある教育を提供しているのであれば,安くとも,そして将来的にそこにキャリアが,ちゃんと付加価値がある,大学病院で学んだことが彼らの一つの武器になるということをちゃんと提示できれば,若手医師もしっかりと選んで来てくれるとは思うんですが,この方針化をして診療を重視になってきたという,特に地方大学において,それから前回,私からスライドを提示させていただいたように,臨床研究非拠点病院といったようなところでは,診療を重視するあまり研究の指導者というものも非常に教育されてこなかった。指導者不足というところ。
 それから,臨床研究を支援するプロジェクトマネジャーであったりCRCという,そういった体制も十分に整っていないというような現状の中で,教育者が臨床研究の,まず教育者が育ってこなかったというところがありますので,そういった少し大学間での格差,地方大学との格差というものも配慮いただいて,そういった待遇面,そして厚労省がおっしゃっているように各大学に応じた補助,支援というものが非常に重要かと思います。以上です。
【堀岡企画官】  銘苅先生,最後の30秒ほど音が途絶えておりましたので,もう一度,お願いできますか。申し訳ありません。
【銘苅委員】  文科省がおっしゃっていますように,各大学に応じた支援というものが非常に重要かと思います。ただ,最初にお話したように,各大学病院長が人件費,それから臨床研究,そういったところにしっかりとお金を投じられる,6年後にもそれが継続できるという見通しをしっかり立てていただきたいと,表示していただきたい,厚労省とともに評価をしっかりしていただきたいというところが私の意見でございます。以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。もしよろしければ,少し早めですが,意見交換を終了したいと思います。本日は活発な御意見ありがとうございました。いただいた御意見を踏まえまして,中間取りまとめ案については必要な修正を加えた上で,検討会の中間取りまとめとしたいと思います。まだおっしゃり足りないところがあればメール等でお寄せください。そして,具体的な修正につきましては座長に御一任いただけるとありがたいですが,よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【永井座長】  ありがとうございます。では,そのようにさせていただきます。
 最後に事務局から今後のスケジュールについて,説明をお願いいたします。
【海老課長補佐】  事務局でございます。資料4を御覧ください。本検討会につきましては,本日のこの第5回会議をもちまして,一旦の区切りといたしまして,中間取りまとめをおまとめいただきました上で,現時点では令和6年の1月頃に検討を再開,それから同年春頃に最終取りまとめをおまとめいただくことを想定してございます。以上でございます。
【永井座長】  ありがとうございました。それでは,本日の会議,以上で終了いたします。
【俵課長】  先生。文科省,最後一言,池田局長からお願いさせていただければと。
【永井座長】  よろしくお願いいたします。
【池田局長】  ありがとうございました。本日は大所高所からの御議論,ありがとうございました。今日,御説明したとおり,概算要求で120億円の緊急パッケージを打ち出しており,これは厚労省ともしっかり連携して,ここで御議論いただいた様々な御意見を踏まえながら,しっかりと対応していきたいと思いますので,委員の皆様におかれましては,引き続きよろしく御指導のほど,お願いいたします。どうもありがとうございました。
【永井座長】  ありがとうございました。それでは,本日の会議はこれで終了いたします。長時間,ありがとうございました。
 
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