今後の医学教育の在り方に関する検討会(第4回)議事録

1.日時

令和5年8月16日(水曜日)14時30分~16時30分

2.場所

文部科学省(東京都千代田区霞が関3-2-2) ※対面・WEB会議の併用

3.議題

  1. 今後の医学教育の在り方に関する議論の整理
  2. その他

4.出席者

委員

永井座長、今村委員、大井川委員(代理:森川保健医療部長)、岡部委員、小川委員、金井委員、釜萢委員、北澤委員、熊ノ郷委員、田中(純)委員、田中(雄)委員、宮地委員、銘苅委員、諸岡委員、山口委員、横手委員

文部科学省

西條審議官、俵医学教育課長、堀岡企画官、永田大学病院支援室長 他

オブザーバー

厚生労働省医政局 林医事課長、文部科学省研究振興局 釜井ライフサイエンス課長

5.議事録

【永井座長】  それでは,定刻となりましたので,ただいまから第4回今後の医学教育の在り方に関する検討会を開会いたします。委員の皆様におかれましては,御多忙のところ,お集まりいただきましてありがとうございます。
 事務局より本日の委員の出欠状況,配付資料の確認,オンライン会議での発言方法について御説明をお願いいたします。
【海老課長補佐】  事務局でございます。
 本日の委員の出欠の状況でございますが,和田委員から御欠席の連絡をいただいております。また,大井川委員に代わり,茨城県保健医療部,森川部長に代理出席をいただいております。
 次に,配付資料の確認をさせていただきます。配付資料は会議次第に記載のとおりですが,お手元にございますでしょうか。なお,資料につきましては,文部科学省のホームページでも公表してございます。
 続きまして,オンラインによる会議の進行に当たってのお願いがございます。御発言をされる場合には,Zoomの挙手ボタンを押していただくようお願いいたします。その後,座長から順に発言者を御指名いただきますので,御発言をいただく際は,マイクがミュートになっていないことを御確認の上,御発言をお願いいたします。
 以上でございます。
【永井座長】  それでは,議事次第に従いまして,1,今後の医学教育の在り方に関する議論の整理,2,その他ということで進めます。本日は本検討会におけるこれまでの議論について事務局において取りまとめの案を作成いただいておりますので,これを基に委員の皆様に御議論いただきたいと思います。それに先立ちまして,まず私から,大学病院が現在の状況に至るまでの歴史的経緯について,お時間をいただいて話をさせていただきたいと思います。既に資料は配付されていると思いますが,画面を共有しながら進めさせていただきます。
 大学病院の在り方を考えるうえで,歴史的な理解が大変重要です。歴史を踏まえませんと,同じような議論を繰り返し行うことになります。そういう意味では,医学教育や大学病院の在り方の議論は江戸時代に始まります。
 医学教育あるいは大学病院の在り方をめぐって,昭和40年代に大学紛争,医学紛争がありました。前代未聞といわれましたが、別に初めてのことではなくて,江戸時代から医学校はストライキをしていました。一番古くは1863年,松本良順,この方は今の厚労大臣のような方ですけども,カリキュラム改革をしようとしました。医学だけ勉強せよと言ったら兵学を学べなくなる,これは大名家に行くとよいアルバイトになっていたんですが,それができなくなるということで,校長排斥運動がありました。その翌年,長崎医学校の前身ですけども,館長の排斥運動,これはまさに現在の問題に近い待遇改善や環境改善が課題でした。明治7年に東京医学校で校長の排斥運動,これは医学校の運営方針でした。次が、昭和40年代の医学部紛争です。
 こういう歴史を今見なおすと、結構参考になることがあります。長崎の医学校の院長排斥運動は,松本良順が仲裁に長崎まで行くんですけども,そのときの記録が残っております。「塾中の畳殆ど表面なし,自ら座臥するところにして此の如きは,豈不体裁ならずや,見る所恰も豚小屋に等し」と。その後,学生たちの聞き書きも残っています。「私たちを代診に使ひ書生に追ひ使ひ,月謝を出せの畳代を出せ」「ご覧の如き豚小屋に住まはせて」とか,通訳もあまりよいのがいない。大体院長は,「松本先生のお出にならるる事を聞かれて学則掲示を一昨日はがして了った位の卑怯な行為をなさるのです」と,まさに医学校のガバナンスや透明性の問題は,実は150年前の先輩たちが議論していました。
病院附属医学校か医学校附属病院かという議論がありますが,これは明治2年に,医学校附属病院に決まりました。当時は医学の学術がありません。そこで,きちんと学術をつくらないといけないということで,医学校をしっかりつくって主体とし、病院は従にするということになりました。当時の大学病院,東大病院の前身ですけども,1日50人程度の外来診療で,あとは在留外国大使館員や省庁の官吏の診察をしていたようです。それを見て,順天堂医院,まだ学校ではないですけど,病院をつくった佐藤尚中先生という方が,「旧大病院(東大病院の前身)は医学を主にし,治療は傍らにし」ということを新聞広告に書いたそうです。ですから,当時の医学校というのは,あくまでも教育が中心で,あるいは官庁の手伝い,そんなところから始まったようです。
 明治時代に,大きな問題として出てきたのは軍医の養成です。松本良順は維新後,陸軍軍医総監になるのですけども,「医学校の官費に与るは陸海軍の医官を教育するが為なり」といいます。公的な医学教育を受けさせるのは,陸海軍の医官をつくるためだと主張しました。実際はそのとおりにはなりませんでしたけども,現実には明治初期の東大の医学部卒業生,まだ卒業生が年間30人くらいの時代のうち,約20%が軍医になっています。日露開戦の時代,明治37年ですけども,約100名近い学生のうち、成績優秀で大学に残るものは7名だけ,各教室1人いるかいないか。ほとんどは陸軍委託学生と海軍軍医学生になります。大正時代は少し減ったかもしれませんけど,昭和から終戦までは,ほとんど軍医養成,あるいは国内、外地の医療の維持が、医師養成で重要になりました。
 ですから,大学は研究するところといっても,当時の卒業生はよほど豊かな家庭出身でないと勉強は続けられない。ほとんど無給医になるわけです。有名な話ですが,ドイツ語で3つのG,「Geld」「Gesundheit」「Gluck」,お金と健康と運がないと教授になれないという話も長く言われていました。そうした戦前の大学の教室の状況を書いていらっしゃるのが日野原重明先生,今から20年以上前の内科学会雑誌です。教授1,助教授1,講師2,助手3名程度で,この人員で臨床、教育、研究を担っていたということです。それから,教授は研究志向で教育にはほとんど関心がなかったようです。ですから,助手3人と無給医で臨床を回すわけです。例えば東大の産婦人科は戦前,お産は1年に3,000件で、東洋一でした。恐らく数名の助手と多くの無給医局員で診療していたのだと思います。日野原先生は,新設医大でも内科の教授が3名程度しかいないと指摘しています。これは文部省,医学部教授会に責任があると書かれています。20年前です。
 その人数ではやっていけませんので,戦後間もなく、各大学に病院助手が配置されました。国立大学の話ですけど。組合活動と連携して要望したところ増えたと聞いたことがあります。例えば東大のナンバー内科ですと,1教室で十数名病院助手が増えました。地方大学で数名でした。また大学院重点化で、内科の教授数は微増しました。このような経緯で少しずつマンパワーが増えてきました。ただ,新設医科大学設立に当たっては,既存の大学の技術系職員の定員が相当数削減されたということも聞いております。
この図は20年ほど前,法人化の直前のときの内科の教授,助教授,講師,助手の数ですが,東大は確かに多かったのです。病院助手が多かったということによりますが,大学によって差があります。しかし,東大といえども,下の段を見ていただくと,ハーバード大学,ジョンズ・ホプキンス大学,ミシガン大学と比べると、桁が違います。このくらい違う中で,日本の大学のスタッフ数には制約がありました。これは後で申し上げる国家公務員総定員法と関係があります。海外の大学のスタッフが多い1つの理由は,関連病院にたくさんの臨床教授や准教授が配置されています。医学教育を全て自前の大学病院でやっているわけではありません。関連病院で教育していますので,そのためのスタッフが相当必要だということです。
 大学病院の在り方に一番大きな影響が出たのは,まず皆保険制度です。それから国家公務員総定員法による制約です。国民皆保険制度は、昭和36年にスタートしましたけども,患者数が激増しました。医師は足りない中でどうするか。まず医科大学をつくりました。1県1医大構想です。開業医の先生たちは,医師優遇税制ということで必要経費72%が認められました。大学病院は結局,インターン生と多数の無給医局員を診療に動員するということでしのいだわけです。医療費は不足していますから,大学病院の若手医師の人件費は,抑制されました。
 もう一つ,昭和44年に国家公務員総定員法が制定されて,公務員数の上限が決まってしまいました。ですから,法人化前の東大病院の看護師数,1,200床に対して740名,これ以上増やすことはできません。法人化後は,1,226床に対して1,395名です。いかに国家公務員総定員法が、国立大学病院や国立病院の医療環境に限界を与えていたかということがお分かりいただけると思います。
 昭和36年に国民皆保険制度が始まりまして,医療費は御覧のように,急速に伸びました。当時のGDP当たりの医療費,2.5%ぐらいでしょうか,これが今,8%になっています。医療資源のない時代に,国民皆保険制度を始めたというのはすばらしい理念に基づいていたのだと思いますが,現場には相当無理がかかりました。問題は,医療費が対GDPで8%まで増えているにもかかわらず,大学病院の若手の医師の環境,待遇は改善されたかとはいえません。これに対して,文部省と厚生省が手をこまねいていたわけではありません。
 こういう資料があります。両省の了解事項です。文部省から厚生省の保険局長宛てに,皆保険制度が始まるに当たって,大学病院が教育研究上支障のないよう,文部省と協議の上,必ず適当な措置を講ずることに努めるものとするということを、厚生省は約束してほしいということを昭和33年,文書で交わしました。これに対して厚生省からも,要望に関しては法律事項にはしないが,今後文部省と協議の上,「必ず適当な措置(必要に応じ省令の改正,制定またはその他の措置)を講ずることに努めるものとする」ということでした。何とかこれで折り合って,大学病院は保険診療に参加したという経緯です。私は,この了解事項というのは今でも生きていると思います。まさに実行を求めてよい時期に来たのではないかというのが私の個人的な考えです。
 そうこうしているうちに,昭和40年代にインターン闘争,あるいは医学部紛争が激しくなりました。インターン闘争の背景は,ほとんどの方,御存じないんですが,私がある先輩から聞いたのは,昭和23年,豊島病院でインターン生が腸チフスで亡くなったという事件でした。ところが,当時のインターン生は身分がない,そのため補償できないという事件があって,それ以来,インターン闘争がだんだん激しくなってきたということです。
 まず昭和28年,参議院厚生委員会で,数年前に亡くなられた,鹿児島大学学長の井形先生がまだ学生時代です。参議院の厚生委員会で証言されていまして,インターン制度は教育であるにもかかわらず,医師の下働きをやっているにすぎない,あるいは無給の医師として赤字病院の経営に貢献している場合があるということを,学生の立場でこういう発言をされています。
 それから,小池敬事先生,千葉大学の学長先生は同じ会議で,もし医師が非常に公的職業で,しかも命を預かる重い役目があるから,強いて実地修練をさせるのがインターンであるとするならば,これは司法官試補,司法研修生ごとく,相当の待遇をすべきであると述べています。我が国ではインターン生は学生にあらず,医師でもない身分であって,診療は言わばもぐりの状態でやっていると見るべきであろうという証言をされました。これは昭和28年で,まだその当時はそれっほど運動は激しくなかったのですが,1966年,東大医学部の学生が1日ストライキをします。彼らの要求はまず,インターン生の待遇改善が主でしたけども,同時に質の高い研修をさせるよう求めています。当時はまだしっかりした教育病院が大学病院くらいしかなくて,大学病院は入局制限をしていました。これに対し学生は、全員の大学病院での受入れを要求しています。今は大学病院以外に立派な病院がたくさんありますので,卒業生はそちらへ移ってしまって,大学病院の魅力があまりないのかもしれません。
 1967年,インターン生は研修医として,ここが1つポイントなのですが,その身分は「大学院の研究生」としました。臨床研修を労働として認めなかったのです。こういうところに大きな問題がありました。東大の医学部長がこれに賛成したということで,火の手が上がってきました。当時の研修生の給与,1日600円です。当時、学生食堂のランチが120円ぐらいのときです。ランチ5回分ぐらいで,臨床研修生の診療協力謝金が支払われていました。ただ,制度改正に伴って,全国の医学部で講師100名,あるいはさらに講師65名,助手10名が増員がされました。ところが,大学側の問題もいろいろありまして,若手医師,先ほどのように大学院生の身分にしようとしたなど,労働としてしっかり位置づけてない。あるいは,患者中心医療の視点が本当にあったのか,あるいは施設,カリキュラムが十分でない。それから,無給だったのはインターン生だけではないのです。1967年当時,国立大学病院全体で、無給医局員が8,000名おりました。ですから,インターン生だけの待遇改善の問題では済まなかったということ。また,各診療科,講座が独立しており,看護婦、検査技師,レントゲン技師は各医局に所属し,中央部門はありませんでした。ばらばらで診療を行っていたということです。
 そういう問題が積もり積もって,大学紛争になりました。少し話はそれますけど,大学紛争を収めるときに,東大で学生側と大学が協定書を結びました。10項目の確認書です。その際に、問題になったのは産学連携の項目です。大学における研究が資本の利益に奉仕するという意味では,産学協同を否定するとあります。結局東大はこれを批准しなかったのですけども,産学協同に非常に否定的な雰囲気が続きました。ベルリンの壁が崩れるまで,そのような感じだったと思います。このために日本の臨床研究が遅れてしまったように思います。
 もう一つ,医療安全にも問題がありまいた。非常にショッキングな事件で,私もよく覚えているのですけども,昭和44年,安田講堂事件の少し後に,東大病院の高圧酸素治療タンクが爆発して,患者さんお2人と医師2名が亡くなりました。これは,脳外科の手術の後に高圧酸素治療をして,患者さんの眼底写真を大気下と高圧酸素下で撮影しようとしたのです。本当に必要な検査だったかどうかという議論はあると思います。問題は,安全基準,安全装置,安全教育が全くない。内部の電源がないものですから,外から穴を通してコードを引っ張ってきて,2股コンセントを手作りで接続,上からテープを巻いていました。ストロボ撮影はよかったのですが,ストロボの充電のときに大量に電流が流れる。テープが燃えて,可燃性のガスが出て,高圧酸素下で爆発したという経緯です。この程度の安全管理もないままに診療が行われていました。今は,大学病院の安全基準,非常に厳しくなりました。それにきちんと人も配置されるようになったのですが,かつては残念ながらこうした医療事故がありました。ですから,今でも東大病院,高圧酸素治療を行えませんので、この事件が影響を残しています。
 大学紛争の後,この赤い線は東大病院の稼働率です。かつては96,7%ありました。これが大学紛争で落ち込み,その後,いろいろな変動がありました。国家公務員総定員法、ドルショック,円高,バブル崩壊。稼働率が戻ったのは約30年後です。大学病院が一度崩壊すると,このくらいの影響があります。
 どのように戻ったかというと,一つはバブル崩壊後の病院再開発です。財投による施設整備,これで息を吹き返しました,多くの大学病院で建物が建ちましたが、この財政投融資の借金は国の責任で償還されるということで,それぞれの大学病院には責任はありませんでした。ところが,法人化によって,これは全部各大学病院の責任で返すということになり,一気に財務が悪化しました。国立大学の法人化問題はまさに経営の問題でもありました。運営費交付金は、大学は1%ずつ,病院は2%ずつ削減と言われたのですが,これは裏があって,病院は医療収入の2%です。ですから,東大病院でいうと,毎年約8%ずつの削減という極めて厳しい措置でした。
 よかった点は,国家公務員総定員法が適用されなくなったことです。そうすると,自己責任で増員できます。国立大学病院の法人化は避けられなかったと思います。かつて私どもは、東大病院に何度か救急車を呼んだことがあります。東大病院には集中治療の部門も施設もないために,東大病院が救急車を呼ぶという、情けない思いをして臨床をしていました。実際、看護師数は、1200床に対して740人でしたが、増員できるようになったのです。
 ただ労働基準法と労働衛生安全法の対象になる。これは今の働き方改革につながるわけですが,まさに2004年の法人化のさいに、それは問題になっていました。それをきっちり対応してこなかったために,働き方改革になったということかと思います。
 法人化問題に対してどういう議論があったか。私はその場にはいませんでしたけど,東大の医学部がゴーサインを出しました。これで一気に弾みがついたと言われています。ただ,どこまで病院や大学全体の問題を議論したかは、わかりません。むしろこのときに,大学病院と大学の在り方についてしっかり議論をしておけばよかったというのが今思うところです。
 全国の大学病院は、診療用の運営費交付金が580億円あって,これが10年後にはゼロになりました。年間11%の削減です。それに対して,大学病院は猛烈に頑張りました。6,000億円から,今は1兆2千億円の病院収入です。国立大学の運営費交付金全体は年間1%ずつ緩やかな減少をたどっていますが,大学全体で減った分をまさに医学部附属病院,病院が猛烈な勢いで頑張って支えたということです。これは私がちょうど東大の病院長をしているときでしたけども,診療用の運営費交付金が数年で30億円減り,財投の償還額がどんどん増えていくという苦しい時期に,とにかく診療を頑張ることで借金を返すということをしていきました。
 ところが,私が最近知ったのは,この間の資料にもあったんですけども,病院の運営費交付金ゼロになったと思ったら,また別の形で復活しています。こういうところは透明性が重要です。色々な運営費交付金があるということです。そうであれば,国立大学病院はきちんと運営費交付金について,どういう種類があって,どれだけ支援してもらっているかということを明示すべきと思います。しかしこのオレンジの部分,大学病院の頑張り具合が、はっきりとお分かりかと思います。
 法人化してよかったかという話ですが,私の個人的な資料で,明治以来の東大の第三内科の循環器の患者さんの数をレーダーチャートで10年分ずつ調べたことがあります。この面積が10年間の循環器の患者さんと思っていただければよいのですが,法人化したときに同じスケールでみると,左は10年分です。法人化後に私が東大の循環器の教授をしていたときは1年でこのぐらいの数の患者さんが入院していました。物すごい勢いで診療が活性化しました。この数は,1970年度に比べれば10倍以上ですが,法人化直前と比べると大体3.4倍ぐらいです。確かに法人化によって,大学病院の臨床医学は一気に息を吹き返し,ある程度、世界に伍するレベルに達しました。それを反映しているのだと思いますが,臨床医学の論文割合が増えています。日本全体で論文が減っていると言われていますが,臨床医学は着実に伸びています。かつては基礎医学が主でしたけども,この図で見ると,臨床医学の研究が力を発揮していることがわかります。それだけ臨床医学に対するニーズがあるということと,底力があるのだと思います。研究時間が減った,あるいは労働環境が悪くなったと言われつつも,患者さんが増えて,研究論文に関しては実は臨床医学は力をつけている。環境がよくなればもっと伸びるだろうとは思います。こういうことも事実として見ておいていただければと思います。
 法人化後にスタッフは増えたかということですが,青い線が医師の数です。法人化されてしばらく,あまり増えませんでした。これは,大学病院は大変だといううわさが若い医師たちに伝わって,ほとんど戻って来ませんでした。ところが,看護師の数がだんだん伸びていき,例の7対1看護体制,これで一気に大学病院の看護師さんが増えました。それを見て、外にいた医師も戻りはじめ,次第に増えていきました。
 私が東大の病院長のときに、7対1体制に対応するため、看護師さんを集めるいろいろな動きをしましたけども,私たちは厚労省に慎重にすべきである,延期せよと要望しました。そこで何と言われたかというと,東大病院が7対1取るのは無理でしょう,悔しかったら7対1取ってごらんと言われたのです。では,始めますよということが、例の7対1騒動なのです。その際に,大学病院をきちんと組み込んだ医療体制を、厚労省も考えていなかったことがよくわかりました。看護師さんをしっかり大学病院が集めたことにより,大学病院は,日本の医療体制の中で大きなプレゼンスを示せるようになったと思います。
 財務状況ですけども,先ほどお話ししたように,この黄色い部分が病院の収益です。グリーンが大学全体の運営費交付金,これはずっと減ってきています。しかし大学全体の財政状況でみると,年間の経常収益は130%に伸びています。これをほとんど支えてきたのは大学病院の収入です。183%増、今は恐らく200%になっていると思いますけど,こういうことをしっかり世の中に示していただきたい。ところが,大学は連結決算になっていますから,外からは分かりません。ある意味では,運営費交付金減少のカムフラージュをしているようなところもあります。私は,大学病院のセグメントとして,会計状況,財務状況をしっかり明示すべきであると思います。
 もう一つ,これが大きな問題ですけども,増収したのに減益になったということです。これは非常に深刻な話で,普通,2倍に増収すれば収益も2倍残るはずです。それによって待遇を改善したり,人を増やしたりして働き方を改善します。減益になるというのは問題です。これでは研究時間も減るし,病院のスタッフは消耗します。大学病院の診療報酬体系の中に収益が上がらない構造的な課題があるのだと思います。それは日本の医療政策の中で決まってくるのでしょうけど,それこそまさに昭和33年の了解事項が復活すべきです。ある意味では,逸失利益が生まれているわけですから,それは国がきちんと大学病院に対して、その分を支援しないといけないというのが私の考えです。
 大学病院を加えると法人全体の財政規模は、非常に拡大しているように見えますけど,病院を除くとそれほど増えていません。東京大学は僅かに,病院を除いても少し増えていますが,京都大学は減り始めています。筑波大学,金沢大学,福井大学,ほとんど伸びていません。大学が大学病院に依存しているということでもあるし,大学病院と大学がうまく連携して共存共栄関係をつくっていかないといけないのだと思います。働き方改革が必要な状況の中で、大学病院の負担はもう限界と思います。とくに,増収減益というのは非常に深刻な問題です。
 もう一つの問題は医療計画です。2003年当時から日本は在院日数が長くて,1,000人当たりの病床数が,アメリカの4-5倍,ヨーロッパの2倍ぐらいあります。医師の数,看護師の数もアメリカの5分の1,ヨーロッパの半分ぐらいです。これを改善しないといけないということで,それなりに努力してきました。最近のデータを20年前と比較して見ていただくと,在院日数は、随分短くなりましたし, 100床当たりの医師数も看護師数も増えました。随分よくなったんですけども,しかし,驚くべきことに,欧米はもっと集約化しています。ベッド数を減らして,100床当たりの医師数と看護師数は,20年前の2倍近くまで集約している。恐らく医学が進歩して,そうしないと高度医療ができない時代になっている野だと思います。この辺り,日本はどうするかということも考えないといけない。
 この問題は、栃木県の県南部でも同じです。今,高度急性期病床2,269と言っています。でも,県の見積りは687です。なぜ多いかというと,獨協医科大学と自治医科大学,2つの大学病院があります。ということは,今後,栃木県県南部に限らず、それぞれの大学でも,高度急性期病床として何床必要なのか,自分たちで考えないといけないのです。これはまさに,地域医療構想を大学としてどう受け止めるかという問題でもあります。
随分前の新聞記事ですけども,病床を減らして人員充実をということは昔から言われており,欧米は推進してきましたが,日本はまだ十分ではないのです。これも長い歴史の話になるのですけども,西南戦争の後の財政危機が関係しているという話が、猪飼周平先生の『病院の世紀の理論』という本に書かれています。西南戦争の後,まず府県立医学校の地方税の支出が禁止されて,各県の大学が閉鎖されました。同時に公的病院が減って,私立病院が約8割になりました。この体制が今も続いています。随分後になりますが,平成5年,特定機能病院制度が始まり、大学病院は別に扱ってもらうようになりました。しかし、現在は大学病院以外も特定機能病院に指定されます。そうすると,大学病院の位置づけは何なのかということも,改めて議論が必要になります。
 そうした背景があり,私はぜひこの際,大学病院への公的な支援が必要だと思います。しかし,大学病院ももっと改革しないといけない。それは,医療の質,例えば3時間待ち。当たり前のように言いますけども,これを改善するのは簡単です。待たせる医師というのは, 30分や1時間枠に大勢予約を入れて,来院した順で診るわけです。12時まで予約していても午後2時まで診る。であれば2時まで1列に並べて,1人ずつ予約枠を取ればいい。長くかかる人は枠を2つ取ればよいし,想定外のことが起こると思えばブランクをつくっておけばよいのです。こういうことをすれば,3時間待ち診療はあっという間に改善します。10年前に自治医科大学で行いましたけれども,それまで50分だった待ち時間が一月で30分になりました。今,20分ぐらいです。ですから,こういうことをきちんと大学病院が自ら改革しないといけないのです。これは東大病院のときに私が行った改革ですけども,各科,講座の縦割りではなくて,機能的な集団や組織を作るというものです。
 そもそも講座と診療科は違います。科長,部長は1年任期,病院長が任命する。医局を病院の制度にしない。単なる同窓会の組織です。こういう改革を考えるべきです。一種の病院事業体として大学病院も動かないといけない。講座と診療科というものはまず違う概念だということ,横断的にいろいろな教育制度,システムをつくっていかないといけないのです。
 それからもう一つ,働き方改革で大変と言うけども,各科の忙しさは3倍くらい違うのです。ですから,診療科の定員見直しということをすべきなのです。これはアンタッチャブルと言われていますけども,これをすると大学病院の機能は簡単に変わります。こういうことをまず,大学病院は自らすべきです。そう考えますと,大学病院に求められる基本ですが,まずは実践の学術として臨床医学の場をつくる,これは大学病院の責務です。大学病院はそこに勤務する人たちのものではなく,国民から負託されたシステムであるということ。そうすると、当然,透明性や説明責任が求められます。地域医療とも連携が必要ですし,持続的な医療提供体制の構築です。大学病院も医療政策に参加していると思ってもらわないと困るわけです。それから,指揮命令に基づいて拘束される診療は労働である。だから労働基準法を守らないといけない。その上で,教育・研究活動の在り方を追求するということ。裁量労働・変形労働制であっても労働基準法を守る。そのために,必要な人員は確保しないといけない。
 そうすると,いろいろなアイデアが出てきます。大学病院に求められる改革の例ですけど,病院としてのガバナンス,事業体としての体制を明確にする。地域の中での役割も明確にする。それから,今回問題になっている若手医師の研究時間を確保できる体制,環境をつくる。でも,こうした体制を作っても研究時間は絶対に足りません。ですから,若手は旅に出ないと駄目です。時期によって,臨床を一生懸命する,研究したければ研究の留学をする。研鑽を積んで,自分の領域を開拓するように努める。こういう勇気を持って自分の世界を開拓するようにしないといけない。大学はそういう旅に出た人たちをオープンに受け入れる人事をしないといけない。タコつぼをつくって,中にずっといる人だけ,あるいは同門の卒業生だけで構成するような大学病院は決してオープンではないし,研究も発展しないと思います。
 先ほどお話ししたポストの数ですが、定期的に再配置すべきです。国民目線できちんと医療の質を改善しているか,外来患者を待たせてないか,診療能力の低い科長を交代させられるか,こういうことは,大学病院は講座制を離れてすべきことです。
 それから,身の丈に応じた運営,再開発が大事です。無謀な再開発をして,経営困難に陥っている例があります。それを大学内で穴埋めして,十分に学内外に説明をしていない,そういう例を私はよく知っています。そういうことでは,公的支援を求めるといっても,まずすべきことがあるわけです。それから,タスク・シフト/タスクシェア,特定行為研修の履修促進,それから,大事なことは経営状況の分かる財務諸表,病院セグメントとしてキャッシュフロー,BS,PL,いわゆる学校法人でいう帰属収支に相当する経営状況をきちんと示す。特に国立大学病院は,法人化後の病院の財務状況の変化を開示しないといけないと思います。長期にわたる財政計画,また資産の管理体制を整備する,こういうことは公的支援を求める上では必須です。こういうぱっと見て分かる病院セグメントの財務状況を明示すべきで,今は多くの国立大学病院は大学全体の連結決算になっており,どこでどういうお金が使われているかよく分からない,そこをきちんと明示すべきです。
 こういうことがきちんとできるようになったうえで,高度医療・研究のための増員,あるいは看護師・コメディカルスタッフの増員,給与改善,労働している人たちの給与体系を少し変えていただきたい。それから施設費,医療機器もかなり早急に対応,整備が必要です。そのほか,診療報酬で是正されないような控除対象外の消費税負担,公的支援をお願いしたいと思います。ただ,それを無条件で行うのではなくて,大学病院の在り方をしっかり研究していただきたい。今日お話しした資料も,ほとんどの方は御存じないと思います。こういうものをしっかり歴史として残して,大学病院に伴走しつつ,改革と病院の要望をチェックする仕組みが必要です。そのなかで,これからの大学病院の新たな設置形態も検討したらよろしいと思います。ですから,公的支援は大学病院の改革への取組の確認とセットでないといけない。これはよい機会だと思います。苦しい状況はよく分かりますので,ぜひ文科省には支援をお願いしたいと思うし,それは1年だけではなくて継続的な支援が必要で,厚労省にも考えていただきたい。昭和33年の了解事項は決して古証文ではないということをもう一度確認していただきたいと思います。
 私は、JST(科学技術振興機構)のCRDSという研究センターの上席フェローをしております。2018年に世界の大学病院を回って調査をしてもらいました。アメリカ,ドイツ,オランダ,イギリス,韓国です。この報告書はネットで御覧になれます。スタンフォード大学はどうなっている,予算規模はどうか、ゲッチンゲン大学やソウル大学病院は,東大病院よりもはるかに規模が大きいことがわかります。これらを比較したのがこの図ですけれども,この比率を見ていただくとお分かりのように,今までの在り方ではもう限界があると思います。このあたりもよく考えて,これからの大学病院の設置形態についても考えていただければと思います。この資料は、「JST,大学病院」で検索すると出てきますので,ぜひお読みいただければと思います。
【小川委員】  ありがとうございます。ただいまのお話と多少かぶるところもあろうかと思いますけれども,資料2の「大学・大学病院の現状と課題」を御覧いただきたいと思います。
 まず1ページ,これは,つい先々週発表された科学技術指標の2023年のデータでございますが,トップ10論文で日本は過去最低を更新した、13位に落ちたということでございます。順位の右側に括弧がついているのは2022年のデータでございまして,2022年に日本は実は12位で,昨年,韓国に抜かれました。今年はイランにも抜かれたという状況でございまして,毎年過去最低を更新して,年々順位を落としています。
 かつては世界第2位の論文輩出国だった日本がこんなていたらくになってしまったのかということでございますが,2ページ目を御覧いただきますと,日本の高等教育への公的支出はOECD加盟国中最低でありまして,平均の半分以下,圧倒的に低い。要するに,対GDP比0.432%。ついせんだってまでも0.5%だったわけですから,これはOECDの「Education at a Glance 2020」から作成したものでございますが,どんどん高等教育に対する公財政支出は減っている。減っているから,当然研究力が落ちているということでございます。
 3ページを御覧いただきたいと思います。研究力低下の原因の一つは運営費交付金の減額,私大では経常費補助金の減額でありまして,左側にあるのが国立大学への運営費交付金の予算額の推移でどんどん減っています。右側にありますのは私立大学経常費補助金予算額推移で,これもどんどん減っております。
 その次のページを御覧いただきたいと思います。この左側に丸がついているのは,大学共同研究機関法人を含む93法人のものでございます。これは収入を表しているわけでございますから,要するに,収入の50%強が運営費交付金でありまして,ここの左側の附属病院収入というのを御覧いただきますと,附属病院を持つ国立大学42大学の場合,運営費交付金の割合は経常収益の26.8%であります。
 これに対して,下にございます協会加盟の私立医科大の場合,経常費補助金の割合は事業活動収入の2.5%しかありません。したがって,以前から私立医科大学では附属病院収入に頼ってこざるを得なかったというのが現状でございます。
 次に,こちらは,先ほど先生のお話にも出たものでございますけれども,国立大学病院における収入は,このように法人化以降,どんどん増えております。病院収入は増えたと。しかしながら,問題は医療経費率なんです。要するに今,高額薬剤費が大問題になっておりまして,現在,1人当たりの最も高額なお薬は,1億6,000万円です。1人ですよ。1人の患者さんに1億6,000万円のお薬を使っている。これを買わなければ治療はできないわけですから,私立大学も同様の状況でございます。この間,私,理事長の下にも1億6,000万円の支出をしてもいいですかという決裁が来ました。やむを得ないことですが、ただ,途中でその患者さんが治療不可能な状況に陥ったときに,1億6,000万円プラス1,600万円の消費税,これは大学負担になってしまうんだからな,その辺のことはちゃんとルール化をして買いなさいということを指示しております。2番手に来ているのが1人当たり5,000万円ぐらい,3番手,4番手あたりが三千何百万円,10番手あたりに数百万円というような値段ですから,一生懸命大学の教員が大学病院で稼いでも,その稼ぎはどこに行っているかというと,薬屋さんに持っていかれているわけで,決して大学の増収にはなっていない。ですから,これは確かに業務収益ですから収益は上がった。収益は上がったけれども,利益は下がったということを示しているわけでございます。
 その次のスライドは,大学病院の医師は診療に従事する時間が最も長い。特に今後我が国の教育,研究の主力を担う助教の15%は全く研究を行っていない。50%は週当たりの研究時間が5時間以下だというのが事実でありますから,要するに,何をしているかというと,国立大学も私立大学でもそうですけども,大学の運営に協力するために,若手の医師は診療に必死になって,そして研究も高度な教育もやれていないということを示しているわけです。
 その次のページを御覧いただきますと,これが大学病院勤務医の給与,概算でございますが,大学病院は30代男性で800万円未満,これはアルバイトも含みます。その他の病院は1,300万,クリニック1,600万。40代になると,このぐらい多くなる。アルバイト,副業込みの年収中央値で,大学病院で1,300万,その他の病院で1,500万,クリニックで1,800万。こういう状況では,大学に働く医師は,結婚して子どもも育てなければなりません。その子どもの教育費も捻出しなくちゃいけない。確かに医師不足地方では,地域医療の維持や医療崩壊の阻止の意味もありますけれども,家族の生活や教育維持の意義も大きいわけでありまして,おぼつかないということであります。
 研究の主力である若手医師が研究,教育に割く時間はない。診療を引っ張ることは病院収入の増収にはつながるが,医療経費の増加に追いつかないで,増収減益になっている。すなわち,大学は大変な状況になっている。大学病院の何が特殊かというと,一般病院の中ではできないがんや特殊疾病など高額医療が中心になっていることです。高額医療には高額な薬品,医療材料、高額な診断治療機器が必要なので,これらには消費税がかかっています。結局消費税に取られて,大学の経営は行き詰まっているということです。消費税法というのは,医療,教育,福祉では大学法人等が消費税を負担する。もともと最終消費者ですから,本来は患者さんがその税額を負担するのが自然なんですけども,大学ではこういうルールで,消費税が組まれました。その結果,下にありますように,令和3年度で,これ,私立医科大学協会のデータですけども,1大学当たり34億2,500万円の控除対象外消費税を国にお支払いしている。国立大学も同じなんです。国立大学も苦しいんです。これをゼロ税率にすべきだと思います。医療法上病院の類型には,一般病院,特定機能病院,地域医療支援病院,精神病院,結核病院があります。特定機能病院は,当初大学附属病院を規定する病院類型ができたと思って喜んだんですけども,実際にはナショナルセンターや公私立のがんセンターなどが加わって,雑多な状況になっています。
 他の病院と全く異なる極めて特殊なミッションを持つ大学病院が,医療法上の独立の規定がないところに問題がある。大学病院を医療法上,独立した類型にすべき,その上で消費税の特例を認めていただきたいというのが私の切なる願いでございます。教員の処遇改善をしなければ,有能な研究者は外に出ていきます。そして,大学経営は不安定化する,安定化しない。そのためには,高等教育への公財政支出を他のOECD加盟国並みにしてほしい。運営費交付金,経常費補助金の増額,そしてもう一つ,一番大事なのは,大学病院の類型を大学病院と独自の類型として設定していただいて,そこで理不尽な消費税が払わされているわけですから,大学病院においては,他の病院とは違うゼロ税率,あるいは軽減税率への転換を図って,そして国立大学も私立大学も健全な経営ができるような状況にしていただきたいというのが私の今日のお話の内容でございます。
 ちょっと時間が超過して申し訳ありませんでした。どうもありがとうございます。
【永井座長】  どうもありがとうございます。ちょっと押していますけども,もし御質問があれば幾つかお受けしたいと思いますが,よろしいですか。また後で総合的な議論をする時間はあろうかと思いますが。
 今村委員,どうぞ。
【今村委員】  今村です。永井先生の発表について,私,永井先生が東大病院におられたときの経営部長をしておりましたので,この問題,一緒に解決してきた一人であります。その中で,46ページで永井先生が財務状況のことを書いていただいているんですけども,東大病院のときに,東大病院が赤字か黒字かというのを,国立大学病院の損益計算書,見ることができなかったという問題がありまして,通常,私学であれば,帰属収支という形で出している決算,それを見れば本当に黒字かどうか分かるんですが,今,各大学病院がPLで示している黒字,赤字というのは本当に信用できないものですので,通常,大学病院の黒字というのは3億か4億ぐらいなんですが,大学病院の損益計算書には見返り金とか,見えないバーチャルな利益が乗せられるような構造になっていまして,それを足し合わせると,黒字だった病院が赤字のようになったり,赤字の病院が黒字のようになってしまって,それを累積すると余計難しくなってしまうという問題があって,永井先生が書いていただいている学校法人法でいう帰属収支に当たるようなものは,ぜひ大学から出していただいて,本当に黒か赤かということが分かるようにしていただきたいと思っておりますし,東大のときも,毎月キャッシュベースの財務諸表,帰属収支を出しておりましたので,そういったことが各大学で取り組まれることがまず必要なんじゃないかと思うんです。
 今村から以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 田中委員,どうぞ。
【田中(雄)委員】  ありがとうございました。小川先生のお話を伺うと,私立大学は2.5%しか国からお金は来ないのに,26%もお金が来ている国立大学病院が何でこんなに苦しいのかとちょっと考えていたんですけれども,まず1つは,今日の差し替えになった資料3の2ページを見ると,2005年度以降,毎年度の附属病院収入を2004年度,今から20年前の附属病院の収入額の2%を増額することが求められたということで,だからこれが経営改善係数で,要するに,今から20年前に幾ら稼いでいたかということが基礎数字になって,その2%分を毎年毎年,つまり,今は20年たっていますから40%増額することが求められているという,そういう理解でよろしいかどうかを確認したいということと,2ページの注釈に,附属病院運営費交付金は平成25年度以降,どの法人にも配ってないと書いてありますが,これも間違いないかどうかということをお伺いして,その場合に,永井先生や小川先生の表にあった病院に対する運営費交付金が何で出てくるのかという話なんですけど,恐らく大学本部からの支給額だろうと思うんですけれど,結局それでも何でかという。
 例えば東京医科歯科大学の場合,病院に本部が,私,本部にいる側ですけど,支給しているお金というのは,たったの6%,病院収入の6%しか病院に回せてないんですね。ただ,教員のタイムスタディで,大学附属病院の,要するに,人件費の半分を持っているということで,多分こういう数字が出てくるんだろうと思いますけど,永井先生もおっしゃっていたように,何となく不透明感が漂うんですよね。結局お金が随分なくなった,なくなったと言うけれども,それはほかの形で補塡しているという説明になるんですけど,病院を持っている側の人間として言えることは,病院の新築に対して債務償還は,平成24年までは肩代わりしていただいていたけれども,それ以降は国立大学病院は一切ないだろうということを最後に確認したいんですけど,いかがでしょうか。
【永井座長】  2%の経営改善ですが,先生がおっしゃるとおりです。毎年2%ずつ改善すれば,大体40%増収することが期待されたわけです。それで運営費交付金の削減をカバーしてくれということでした。しかし実際は100%伸びたんです,2倍になりましたから。しかし減益になって手元に残らないところがそもそも問題だと思います。ただ今も運営費交付金があるのは、私も知りませんでした。これはむしろ事務局から御説明いただきたいと思うのですけど。
 堀岡さん,いかがですか。
【堀岡企画官】  この辺り,かなり制度が複雑なので,もし私が間違っていたら,どなたか補足もしていただきたいんですけど,まず,附属病院収入額の2%増額を求めて,その分,附属病院運営費交付金を減額するお話だったのは国立病院を独立法人化した1期の計画でして,つまり最初の5年は2%なんですけど,その後はそのまま改善の係数というのは求められていないと。一方で,附属病院運営費交付金というのは,要は赤字的なものを埋めるお金として設定されていたので,それをなくして,基幹経費化して,それとほぼ同額分は病院分に残すんだというような全体の運営費交付金を基幹経費化して,その分の教育・研究部分として1,000億程度の,先ほどあった,多少減額されていますけど,それについては一定額ずっと病院分として確保されていたというのがこの流れだと思います。そういう意味で,2%増額というのが,まるでずっと求められているかのような書きぶりなので,ちょっと書き方は工夫したいと思いますけれども,事実としてはそういう形だったと認識しています。
【永井座長】  ありがとうございます。いずれにしても,透明性が大事ですね。ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。最後に総合討論の時間がありますので,またそこでも御議論いただければと思います。
 それでは,資料3,これまでの議論の整理(案)について事務局から説明をお願いいたします。
【堀岡企画官】  それでは,資料3について,今までの議論の整理というものを事務局のほうでまとめさせていただいておりますので,それについて少しだけお時間をいただければと思っております。これについては事前にお送りをさせていただいておりまして,各委員の方々,読んでいただいておりますので,私からの説明は簡単にさせていただければと思っております。
 1ページ目がございますけれども,最初に大学病院の役割と機能の大学病院に求められている大所高所のものをまとめております。大学病院,小川先生からもいろいろ御意見をいただいておりますけれども,大学設置基準で文科省の法律で求められているものでございまして,その中の大学設置基準にありまして,医学部の教育研究に必要な附属施設として規定されています。2つ目のポツですが,教育機関としては医師の育成に重要な役割を果たしているのは当然のことです。3つ目としては,研究の側面において,日本においては大学が本当は科学研究の中心でございますので,基礎研究の成果を生かした難治性疾患の原因や新しい治療法など,我が国の医学研究を牽引しています。
 一方で,4つ目のポツですが,これ,世界によって大分違います。日本特有の事情でもありますが,地域の医療提供体制を維持する上で欠かせない中核的な医療機関として重要な役割を果たしていて,医師の派遣といったものでの地域貢献も行っているところでございます。一方で,大学病院,アカデミアの一翼を担う機関ですので,地域医療を担うような現在の医療というものだけではなくて,専門性の高い人材の養成,質の高い研究を通じて,未来の医療を支える重要な役割を担っていただいていると認識しております。
 今まで資料などで出してきた「大学病院改革の基本的な考え方」に続きます。2ページの2でございますが,制度を複雑に変更してありますので,この辺り,もうちょっと分かりやすく書き換えますけれども,平成16年,国立大学が法人化されて以降,いわゆる赤字を埋める的なものであった運営費交付金というものは基幹経費化されて,下の3行ですが,毎年度の附属病院収入を2%分増額することを求めて,その分の削減をした一方で,教育・研究部分を一部措置するということが行われてきたわけでございます。
 その後,DPCなどでも制度も導入されて,大きな大学病院変革がございましたので,独法化とDPC制度というような同時の制度変更が大きくなって,結果として,附属病院収入3つとして,平成16年,6,000億から令和3年度には1兆2,000億という形で大幅に増額しておりますが,医師数は3倍,看護師も2倍ということで大幅に増加しております。下から2つ目のポツですけれども,そのように大きく収入が増えているにもかかわらず,経常利益は年々減少していて,大学病院としては増収減益の傾向が顕著となっております。今,非常に厳しく,永井先生からも小川先生からも御指摘いただいていますけれども,多職種・多診療科での連携が必要な高度な専門的な医療の提供とか,先ほど小川先生からも指摘があった超高額薬剤の投与が必要な患者などは大学病院に集まってしまうということなどが大学病院の特徴でございますけれども,現状の診療報酬体系下でこうした機能は十分に評価されていないという指摘を様々なところからいただいていると思っています。
 次のページですけれども,コロナ禍にあってますます増収減益の中で,目の前のキャッシュを残すために施設整備というものを遅らせるというのは,そういう行動を取ってしまいますので,施設整備に対して十分な投資ができていなくて,老朽化,機能の陳腐化が懸念されているところであります。これについては,今までもさんざん参考資料などで,減価償却などが非常に滞っていると,非常に原価率が下がっているというようなことをお示ししているところでございます。
 3ページの真ん中からが教育・研究時間の減少についての記載でございます。2つ目のポツから御説明しますが,医師の研究時間,経年的に減少しています。小川先生からも御指摘いただきましたが,助教の研究・教育時間の割合は2割程度にとどまり,15%は研究時間がゼロ時間,50%の先生は週当たりの研究時間,5時間以下というような深刻な状況までなっております。そのような中で来年度,働き方改革,時間外・休日労働の上限規制,適用されるので,ますます厳しい状況になると考えております。
 次のスライドですけれども,これは永井先生からも御指摘いただいていましたが,自己犠牲によって長時間労働することでその機能を維持されてきたんだと考えております。適切な労働環境を整えることが必要だと思っております。これ,どれぐらい深刻かということですが,万が一今の医師の特例水準がなくなった場合,約1,000万時間分の労働時間を削減しなければならないと。それぐらい長時間労働の医師が大学病院には様々にいるということでございます。
 4ページ,下から2つ目ですけれども,業務多忙で他の病院に比べ給与が低いというのは,実はみんな知っているわけでございます。一方で,大学病院の魅力というものがある意味あったから,ある程度,医師というものが来ていただいていたわけで,それを守らないといけないと思っておりまして,高度で専門的な医療とか臨床研究の実践,これらの実践が進められるように,勤務環境とか設備などの整備を進めて,若手医師が大学病院に集まらなくなることを防止していきたいと思っております。もし万が一そのようなことができなければ,結果として,医師が集まらなければ医師派遣もできなくなるわけで,地域医療を支える基盤を失ってしまうのではないかと書いております。
 (1)の最後のポツですけれども,もうさんざん言われておりますけれども,令和17(2035)年度末を目標とする地域医療確保暫定特例水準,いわゆる医師の特例がなくなることを見据えて,各大学病院が改革を実行して,教育・研究機能の維持に取り組むことが喫緊の課題であると思っております。
 基本的な考え方でございます。医療需要が拡大する地域で,関係者の合意がある場合とか,地域で大学病院に抜本的な集約化を行う場合を除けば,今後さらなる拡大というのは現実的ではない状況があると考えております。一方で今,大学病院は全国の医療機関に5万9,000人もの常勤医師を派遣しております。働き方改革をきちんと乗り越えられなければ機能を維持することは困難ですので,大学病院が持続可能な運営体制であることが,地域における医療体制の維持にもつながるということでございます。
 最後のポツですが,国は大学病院が今後も我が国の医学研究及び研究を牽引して,併せて高度で専門的な医療を提供し続けるために,必要な支援の在り方について,文科省のみならず,関係省庁が連携して,あらゆる方策を検討すべきだと。文科省だけじゃなくて,みんなできちんと考えていこうと書いております。
 3番からが少し具体的な話になっております。その在り方でございますけれども,1つ目,医学部における教育・研究に資することを前提とした診療を行っていますが,一方で,そういう教育・研究に資することはどんどん拡大していて,地域の医療提供体制を維持することが中核的な役割の機能を担うまでとなっていると認識しています。
 1つ飛ばしますけれども,大学病院が教育・研究成果を診療に還元して,高度で専門的な医療を提供していることや,地域への医師派遣で医療を維持していることに対する評価など,大学病院が果たしている機能を適切に評価し,国は支援すべきであるとまとめております。また,永井先生からも御指摘ありましたが,地域の医療資源を効率的に活用することが,大学病院の維持にも不可欠であると思っておりまして,その辺り,厚生労働省とも連携して検討すべきだと書かせていただいております。
 その際に,大学病院それぞれの改革として,数は少ないですが,今後の地域の医療需要が増加するような地域については,地域の医療機関と積極的に協議を行って,例えばですが,診療機能のみならず,教育機能も含めて役割分担を推進することができないか,また,大多数はこちらでございますけども,今後の医療需要が減少していく地域では,地域の医療機関の集約化が必要ということは待ったなしだと思っております。その場合,大学病院において教育・研究に従事する人材を確保するためにも,都道府県とともに大学病院がその中心的な役割を果たすことも必要だと考えております。
 次のページですけれども,大学病院の運営,人員,教育・研究・診療,財務など,その実情に応じた改革を進め,持続可能な大学病院経営に取り組むことが必要。そのために国は,大学病院が本部とも一体となって,その実情に応じた改革プランを策定することを促すとともに,そのような検討項目を示した改革ガイドラインを策定できないかと考えております。もちろんその際,地域の医療需要とか医療資源,人材の育成状況は様々に異なっておりますので,各大学が策定する改革プランはそれらの個別の事情を有するものであり,自主性,自律性を制限するようなものとならないよう,画一的なものを文科省が示すのではなくて,各大学で十分にそのようなものを自分で考える一方で,自主性,自立性を尊重したものとするようなこと,また,そのプランに応じた支援を国として行うことができるように,いろんな仕組みを考えていくことが重要であると書かせていただいております。
 ここからは少し,個別の球について説明させていただきます。今までが全体像みたいな形です。(2),まずは財務・経営の改善でございますが,小川先生からもありましたけれども,医薬品費・診療材料費,特に国立大学については少し,公立大学はもっとですが,高い状況がございます。共同交渉を進めるなど,あらゆる支出の削減や収支の改善を図るべきである。2つ目ですが,経営改善を担当する人材,また外部人材なども活用することができるような仕組みを整えるべきだと。3つ目,先ほどから,これ,かなり指摘いただいておりますけれども,大学病院の経営状況,真ん中辺りですが,単年度でなく複数年で捉えて,かつ資産の状況を把握するために,附属病院セグメントの財務状況について,損益計算書と貸借対照表両方の開示を検討すると。当面の対応として,また,そういったことがあまり行われないので,ひょっとしたら進行したかもしれない,老朽化した医療機器の更新のための対応を,国としても支援も含めて考えていきたいと思っております。
 次のポイントですが,これ,ひょっとしたら最も重要なポイントだと思っておりますが,大学病院で働く医師の勤務環境の改善が必要。その際に,一方で適切な診療の前提となる病理学とか法医学といったところは,利益と直結はしない部門であります。ところが,そういったものがなければ犯罪を発見することもできませんし,大学病院以外では正直できない役割がありますので,そういったことを引き続き確保することは必要だと思っておりまして,ここに書かせていただいております。そういった改革の横一線の取組を推進するためには,永井先生の分かりやすいスライドでもありましたけれども,病院長がリーダーシップを発揮できる体制をきちんと整えていただくことが重要だと思っております。
 大学病院における人材確保,タスク・シフト/シェアでございますが,2つ目,特定行為研修に定められているような高度な看護実践を行うために,看護師の養成課程においてその一部を修得するようなことができるようにできないか。また,医学部を置く大学でも,実は一部,特定行為研修制度の指定研修機関になっていない大学がございます。そういったところについては,自らが指定研修機関となることを目指していただくということを書いております。
 次が,今回,感染症,コロナでいろいろございましたけれども,ECMOや人工呼吸器に対応できる看護師,非常に不足しておりました。そういったものを養成するのは大学病院が最も重要なファクターですので,大学病院においてそういった重症患者の対応可能な看護師を養成するような教育プログラムをつくる。また,個々の研究費を使って,研究者に対する支援というものは行われておりますけれども,そういったことでなく,組織としても臨床研究などを推進,活性化するときに,CRCや生物統計家の配置を促進するようなことを進めたい大学があれば,そういったことも支援していきたいと考えております。
 次のスライドですが,9ページですが,最後の2つです。女性医師について,ワークシェアの推進,保育サービスの提供など柔軟な支援ですとか,また,東京医科歯科大学などで行われていると聞いて書かせていただいておりますが,教育,研究,診療いずれかで特筆すべき業績があって,将来が期待されるような女性教員について,一時的に上位職への登用を公募して,その間に様々な支援を行って,登用期間中に業績があった場合,たとえ育休で少しその前が業績がなかったとしても,登用期間中に業績がちゃんと上がれば,テニュアのあれにするというような取組が行われておりまして,そういったもので女性のキャリアアップを支援するような取組を積極的に推進するということを書かせていただいております。
 4つ目が教育・研究の充実です。2つ目のポツからでございますけれども,教育についても,非常に負担が増えていると聞いております。共用試験などでも認定評価者の要件が厳格化されたり評価者の確保が難しかったりといったところがございまして,教育もより一層効率的に行わなければならないと思っております。その中で,先ほども少し教育の地域との分担というものをお話ししましたけれども,地域の病院で行う実習の週数をさらに増やすことを検討するとか,シミュレーション教育について,宮地先生から御意見をいただいたところですが,専門性を生かした他の医療職種によって教育の協力をいただくことなどを書かせていただいております。こういった各大学における,特に医行為のことを書かせていただいておりますけれども,実習の指導体制の優良事例などを調査して,その充実方策を検討していこうと思っております。
 また,臨床実習については,臨床研修と異なって,指導医というような仕組みはございません。今まで実習に関わる教員の研究実績に比べて,教育の成果を評価することは難しいということ,常々指摘されております。なので,これは一つの方策ですけれども,例えば臨床実習指導医というような称号を付与したりして,指導者としての教員の実績を評価するような方向に進めたり,また,一部の大学,これ,田中純子先生などから御指摘いただきましたけれども,教育に対する業績を,診療とか研究と同じように客観的な指標で評価するようなことをしている大学もあると聞いております。そのような事例の収集を行って,ほかの大学に共有したりして,教育に対しても成果を評価することがしやすいような仕組みというものを整えたいと思っております。
 ここから下は学生の部分でございますけれども,例えば,学部入学後,研究室に配属したりして,6年生まで研究して,研究に触れる工夫を行っていたり,また,アントレプレナーシップのようなものですが,を積極的に教育の中でやっていただいている大学があると聞いておりますので,そういったことが重要だと書かせていただいております。
 次に,大学院博士課程の魅力向上でございますけれども,専門医制度が非常に人気があるというものは有名な話でございます。一方で,大学院,横ばいもしくは減少傾向でございますので,どうやって魅力を向上していくのかということを書いております。
 2つ目のポツですけれども,まずは専門医制度の中で,今まで臨床研究医コースというもの,7年間かけないと専門医とPh.D.が取れなかったわけですが,これについて5年間で取れるような制度変更をしていただいておりまして,これは積極的に推進していきたいと思っております。
 次に,臨床研修についても今,制度の見直しが行われておりますが,一部,基礎研究医プログラムに所属するような学生について,初期研修の2年目からでも,その人の熱意によっては博士課程に進学して,並行的に履修を行うことができるようにしてはどうか。また,各学会の専門医の取得について,論文投稿とかポスター発表とか何でもいいですので,一定の研究活動を求めるようなことをしてはどうか。また,大学については,ジョイントディグリー,ダブルディグリーなどのキャリア形成を支援することとしてはどうかといったことを書かせていただいております。
 12ページでございますけれども,今,研究医枠というものは僅か数十人,20人程度でございますけれども,あります。研究医枠に所属する学生は非常に優秀な学生が多くて,医学研究を引っ張るような方が多いと聞いておりますので,近年,研究医養成の重要性に鑑みて,医学部定員全体の範囲内において増員することも検討してはどうかと考えております。最後に,医療DXなども推進して,そういった人材を養成したらどうかとなっています。
 最後に医学研究力の向上でございますけれども,研究力の低下,小川先生から御指摘もいただいていますが,本当に喫緊の課題だと思っております。2つ目のポツですが,医学分野以外の研究者が,医師とともに分野横断的な研究を推進できる環境整備を進めることなど重要だと思っております。また,各大学において,令和2年から認められた制度でございますけれども,バイアウト制度とか競争的研究費の直接経費へのPIの人件費などについて認められておりますけれども,今ほとんど実施されていない状況にあります。やはり研究に一番集中が難しい診療というものがある医学分野の研究者において,最も普及促進することが必要な分野の一つであると思いますので,これを普及促進していきたいと思っております。こういったことも勤務環境の改善につながることだと思っております。
 また,これ,テーマとしては小さなテーマですけれども,宮地先生などから御指摘いただきましたが,大学病院を移ったり,ほかの医療機関に派遣されている期間とか,あとは,育児などで非常勤に移った場合に研究者番号が継続して付与されなかったりする例が散見されております。そういった例は非常に不適切な運用でございますので,研究費の応募資格,各大学においてそういったことをしないようにということを地道にきちんと広げていこうと思っております。
 最後に,引き続き検討すべき課題でございますけれども,医師総数の在り方,また,地域偏在・診療科偏在の課題への対応などは,改めて抜本的な検討が必要という御指摘をいただきましたけれども,厚生労働省とも連携して,社会のニーズにどのように応えていくのかについては,引き続き検討していきたいと考えております。
 早口で大変恐縮でしたが,以上でございます。
【永井座長】  ありがとうございます。それでは,残った時間,御意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。
 今村委員,どうぞ。
【今村委員】  今村です。御説明ありがとうございました。今,案として出していただいている文にそれぞれ意見を申し上げたいと思うんですが,まず3ページの今回の労働基準法の適用に伴う医師の処遇改善なんですけども,一番大きな影響があるのはやっぱり当直の話だと思うんです。当直の本来,その方々に勤務していただくための財源というのは,まだ準備されていない。それを大学としては,文部省としても準備してほしいんですけども,本来は診療報酬の中で,医師が当直していた分を夜勤手当なりで出していなければいけなかった部分だと思いますので,処遇改善の財源を文科省から出していくことを考えていただくのか,それか,診療報酬の中で夜勤加算のようなものを,本来ついてなかったものをつけてもらうのかということを考えていただく必要があるのかなと考えております。
 続いて6ページですけども,今回,医療構想に絡む部分として,医療需要が増えるところ,減るところというところでお話しいただきましたけども,増えるところは大都市なんです。東京,大阪がほとんどです。横ばいというのは県庁所在地か大きな都市で,地方都市,恐らく日本の3分の2以上の県では減少していく状況であります。ですから,増えるところと減るところ,全く状況が違っていて,それも大学病院が所在するところが県全体として増える,減るとは限らないという,2次医療圏別に見たときには,そこは実は減るところだけども,県全体で見たら増えるというケースがあって,地域によって全然状況が違うということです。それの調整をしているのは都道府県なので,国立大学や私立大学も,県とここを連携して調整をしていただくような仕組みがないと,私,奈良県立医大なので,これは連携せざるを得ないからやるんですけども,国立大学や私立大学はどうやって医療構想の調整に県と連動を取るかということが重要だと思います。そこの筋道がつくように調整をしてもらえるような仕組みをつくってほしいと思います。
【永井座長】  手短にお願いします。
【今村委員】  分かりました。7ページ,こちらは経営改善を担当する人材の育成ということを書いていただいて,それは大変ありがたいんですけども,大学病院の経営の財務基準というのは,今までの会社の基準とは全く別物でして,国立大学の基準と私立大学の基準と公立大学の基準は全然別のものなんです。その専門家というのは世の中にいませんで,自分ら自身で勉強するしかなかったという状況なのです。ですから,そういった特殊な会計であるということをぜひ理解していただいて,それもそれぞれ大学病院は同じではなく,3つ違う基準であるということを考えて,ぜひ施策を打っていただきたいと思うんです。
 今村から以上です。
【永井座長】  それでは,宮地委員,どうぞ。
【宮地委員】  ありがとうございます。まず,まとめてくださった事務局の御尽力に感謝申し上げます。しかし,まず総論として,5ページの(2)の「基本的な考え方」の表現にあるように,これらの問題を解決すべき主体は大学病院で,国はそれを支援するという構造。そして,短期的戦略として,各大学や大学病院の自助努力を求めるというだけでは,この検討会の議論がまだ十分に生かし切れていないのではないかと感じました。各論として3点,具体的な修正の御提案を申し上げます。
 まず,同じ5ページの「基本的な考え方」ですが,主体性を持った対応を求められるのはまず,大学よりも先に国ではないかと思います。そのためには,関係省庁間で連携して検討していくという表現のレベルから,ぜひもう一歩踏み込んで,国としてどのような社会をつくっていくかを主体的に講じられるような構造,例えば,省庁官を超えて問題に関する全体像を把握して,問題の解決に対して連絡,協議していく体制の構築などにまで,より具体的な提言ができないでしょうか。併せて,大学病院に対してガイドラインに沿った改革プランをつくることを求めるのであれば,国も自らの改革プランを作成して提示すべきではないかと思います。その両輪を短期的戦略に据えられないでしょうか。国として検討すべき事項としては,この議論の整理の文中でも幾つか言及されておりますように,金銭的援助の対象やその方法についての検討であったり,今後問題になる時間外労働と自己研さんの使い分けが新たな自己犠牲を生む構造となっていないかなどの実態調査,様々なステークホルダーへの影響の包括的な評価といったエビデンスを今後どのように収集しながら政策を進めていくのかといった点について,この議論の中から具体的にまとめて挙げていけるかと思います。
 第2に,大学病院のガイドラインの目的をもう少し明確にできないでしょうか。7ページに,プランに応じた支援について言及いただいていますけれども,例えば学外実習を増やす仕組みをつくる大学に対して予算を出して,その実習を受けてくださる地域の病院の金銭的・人的支援につながるような根拠とするといったように,もう少し具体的に言及できるかを御検討いただけたらと思います。
 最後です。教育のインセンティブの内容と対象に関してです。医師以外の医療者として,ここで看護師だけが教育負担の分担の矛先としてやや大きく取り上げられ過ぎているように感じました。看護師以外にも,臨床工学技士,院内救命士,心理士など,医師の教育をお願いできるかもしれない専門職は多岐にわたりますし,既に実例もございます。模擬患者さんもそうですし,患者さんを含めた一般の市民の方の医学教育の参画についての実績や教育的効果については,既に国内外で蓄積があります。また,研修医や上級生の医学生が医学生の教育に参画しながら自ら学ぶ,ピアラーニングやニアピアラーニングも,診療参加型実習の促進の一環として意義があるかと思います。
 このように,研究や教育に携わることができる人材をより広く捉えていく議論と同時並行で,大学や大学病院の医師の負担を軽減するために,誰にどのような負担をさらに強いることになるのかについての配慮や,医師の教育に関わることへの心理的安全の確保,インセンティブについての検討をぜひ入れていただきたいと思います。特にお金以外のインセンティブとしての職位や称号の付与や昇進の条件化などは,医師以外の専門職でも重要な議論になると思いますので,ぜひ臨床実習指導医の議論に加えていただけたらと思います。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございました。
 山口委員,どうぞ。
【山口委員】  ありがとうございます。山口でございます。
 まず2ページのところですけれども,最後のポツのところに,大学病院が,高額薬剤のお話が書いてありますけれども,先ほど小川委員からの御発表があったように,かなり消費税の負担が重くなっているという大きな問題があると思いますが,それに全然触れられていないので,そのことに触れていただく必要があるんじゃないかと思いました。
 それから,7ページのところですけれども,(2)の1つ上の丸のところですが,先ほど堀岡さんから,画一的なものにならないようにという御説明の中でお言葉があって,その言葉がとても分かりやすかったので,そういう表現をここに入れたほうがいいんじゃないかと思いました。
 続いて8ページですけれども,一番上の丸のところで法医学のことに触れられているんですけれども,こういったことはやっぱり大学病院特有の問題だと思います。ですので,こういうことがあるからこそ,大学病院特有の類型が必要になってくるんじゃないかなと思いました。
 それから,(3)の2つ目のところに,看護師の特定行為の研修が大学で受けられるようにということが書いてあって,医師の働き方改革が始まる中で,特定行為の研修を受けた看護師をもっともっと増やしていく必要があることからすると,ここはぜひ進めていきたいところだなと患者の立場からも思いました。
 そして,10ページ,前のページから始まっているところで,医学教育のところで,「人手の少ない中で教育に充てる時間を確保し,効果的・効率的に取組を進めることについても検討が必要である」と書いてあるんですが,特に教育者の人手の少なさというのは物すごく地方に偏りがあるように聞いております。例えば,認定評価者になるための研修を受けることについても,限られた予算の中で研修を受けることにも制限があって,成り手も少ないと。募集しても教員が来ないというようなことで,地域差が非常に出てきている問題だと思いますので,地域差があるというようなことに少し触れていただくことも重要ではないかと思いました。
 最後に,同じ10ページの4つ目のところで,「臨床実習指導医(仮)」というような称号が書いてありますけれども,これから参加型臨床実習ということが,さらに医行為もできるということで増えていく中で,こういった実習の指導医ということを称号を与えてということは非常に重要なことではないかと思っています。そんな中で現在,臨床研修指導医講習会というのが行われていますけれども,あっちもこっちもというような講習会にならないように,例えば臨床研修指導医講習会とこういった実習の指導医とさほど変わらないと思うんです,講習することは。そういったことが同時に,1つの講習会を受けることによって2つ取得できるような方策も考えていくことが大事なのではないかと思いました。
 以上でございます。
【永井座長】  ありがとうございます。
 田中委員,どうぞ。
【田中(雄)委員】  ありがとうございました。とてもよくいろいろ整理していただきましたが,メジャーなこととマイナーなことが少し混在しているように思います。人間というのは,10あるうちの7つ達成すればいいやみたいな感じになったときに,着手容易なことからやっていって,何となく7つやったからいいねみたいになりがちなのですが,実は一番大事なことが3つ残ってしまっていました、みたいなことでは改革にはならないと思うんです。それで,宮地委員が言われたように,努力する大学病院を応援しますというような,そういうことじゃなくて,やっぱり国の問題だということが一番大事なことだと思うんです。
 今日も厚生労働省の課長が来ておられるのはすごくありがたいことだと思うんですけども,医療計画や診療報酬といったら、厚生労働省の管轄の問題だと思います。が教育が研究となると,研究の一部は厚生労働省が関与しますし,研修も厚生労働省が関与していますけれど,やっぱり文部科学省の管轄の部分が大きいと思うんです。例えば、薬学部なんかは,黒字か赤字かとかいったことは問われないと思うんですよ。もちろん授業料で稼いでいるかもしれないけれども,基本的には収益の問題ではなくて,教育・研究の問題として,そこはコストセンターであるという認識で通っていると思うんです。ところが,医学部に関しては,なぜか病院の収益の中に組み込まれていて,赤字だ,黒字だという話になって,赤字になっているわけです。ですから,やっぱりセグメントを分けて,研究と教育に関する投資は分離するということを,かなり難しい面はありますけど,そういう努力をすべきだと思います。今、助教の人たちが70%診療しているということは,事実上,診療専任なんですね。ということは,この人たちが研究とか教育を将来,今も担っていますけど,将来主に担っていかなければならないわけですけれど,そういう人材はいなくなるということを意味していて,今年,イランに抜かれて13位って言いますけれども,それ以上にどんどん,どんどん落ちていくのはもうほとんど間違いないことだと思って,非常に危機的に感じています。
【永井座長】  ありがとうございます。
 釜萢委員,どうぞ。
【釜萢委員】  私からは小川先生に御質問を申し上げたいのですが,先生の御主張の中で,大学病院の消費税のゼロ税率の御提言がありました。ゼロ税率ですから,今,国に入っている消費税の分が国が税金を取れないということになるんだろうと思いますが,このことによって,国全体として,大学病院がゼロ税率になった場合の予算の規模,大体どのくらいの費用が国の減収になるのかということについての試算がおありであればお示しいただきたいと思います。
 以上です。
【永井座長】  小川委員,どうぞ。
【小川委員】  すみません,そこまでの試算はしておりません。今度逆に,釜萢先生にちょっとお伺いしたいんですけども,これだけ特殊な診療をやっている大学病院が,診療報酬改定の委員会に大学関係者が入ってないということは極めておかしいと思うんですけども,その辺はいかがお考えでしょうか。
【釜萢委員】  釜萢ですが,今の小川先生の御質問に対しては,これまでのいろいろな歴史的な経緯もあって今日の形になっているわけで,確かに大学病院の果たしておられる役割を踏まえた上で,今後の議論をどういう構成メンバーで考えるべきかという議論は,今後改めていくべきところがあれば改めるべきだろうと思います。
 ついでに,先ほど田中先生が御指摘になった件にちょっと触れたいと思いますけども,やはり医師を1人養成するために必要な費用を全部,学生あるいは保護者が支払うということができない中で,国民に対して医師が果たすべき役割の中で,養成に対して国費が支払われてきたという大原則があるわけでありまして,国費の投入額が現状で持続可能性のある形できちんと算定されているかどうかというところが,今回しっかり議論をしなければいけない点だろうと思います。これは,医療関係の他の職種ももちろん関係がありますけれども,特に医師の養成には多額の費用がかかるというのはもう昔からずっとそうであって,それを国費も補い,また,附属病院の診療報酬からも上げてきたという経緯があるので,この辺りのところをしっかり今回の検討の中でもできるだけ明らかにしていく必要があるんだろうと思っております。
 以上です。
【永井座長】  よろしいでしょうか。ほかに御発言いかがでしょうか。
 森川委員,どうぞ。
【大井川委員代理(森川部長)】  ありがとうございます。今日,知事が出席できなくて申し訳ありませんでした。
 1点だけ,6ページの下から2つ目の丸のところです。原案から「都道府県とともに」という文言を入れていただいて,ありがとうございました。今村委員の御意見とちょっと重なるところもあるんですが,都道府県とともに大学病院がというと,両者が対等な感じでそれぞれが役割を果たすと読めてしまうので,「都道府県の意見を聞きながら」とか「都道府県と連動して」とか,もうちょっと都道府県も大学病院に意見を言えるような,そういった表現にしていただけたら幸いです。よろしくお願いします。
【永井座長】  ありがとうございます。
 厚労省,林課長,お願いいたします。
【林課長】  ありがとうございます。先ほど消費税についての御議論がありましたので,厚労省を代表するわけではないんですけれども,ちょっと補足をさせていただきたいと思います。平成26年4月と令和元年10月だったと思いますけれども,消費税の税率の引上げに伴って,診療報酬改定をさせていただいております。その際,もちろん最終的な診療報酬は非課税なわけですけども,医療機関の仕入れに係る消費税が発生するということでありまして,それをどうするかということについて議論になりました。取らせていただいた対応は,最終的な診療報酬を少し引き上げることで,仕入れに係る税額分が診療報酬に転嫁できるようにしようという対応を取らせていただいたところでございます。平成26年4月のときの5%から8%になったときの補塡の仕方が,恐らく大学病院にとって少し不利な形になっていたというふうに,公式に言っているかどうか分からないんですけども,私の目からも思っておりまして,そうしたことも含めて,令和元年10月に8%から10%になるときに,一度5から8に上げたときの部分を元に戻した上で,改めて5%上げ直すという対応を取らせていただいて,そのときに一定程度補正をさせていただいたということでございまして,平成26年4月のときに,恐らく大学病院で補塡不足だということが非常に問題になりましたので,その印象が今もかなり続いているのかなとは感じておりますけども,そこの部分については,令和元年の秋に補正をさせていただいたところでございます。
 どうしても薬価の引下げと消費税の分を乗せるということを同時にやるので,なかなか乗せているという実感が伴わないという印象がもしかしたらあるのかも分かりませんけれども,補塡のところについては,厚労省としては今申し上げたような考え方で対応させていただいてきたということだけ補足で御説明させていただければと思います。
【永井座長】  銘苅委員,どうぞ。
【銘苅委員】  よろしくお願いいたします。琉球大学の銘苅と申します。すみません,事務局から資料を少し掲示していただいてよろしいでしょうか。少しだけお時間をいただきたいと存じます。簡潔にまとめます。こちらのほうは,私からは,女性医師の研究者が不足しているという現状を少しお話しして御提案をさせていただきたいと思います。こちらは,日本産婦人科医会から毎年,勤務医の待遇関連と女性医師の環境ということでアンケート調査を報告されているものです。
 こちらは全国の分娩取扱い病院966施設が対象となり,回答率68.7%となっております。様々な施設の分娩を取り扱っている施設の項目が示されておりますが,施設当たりの分娩数は大学病院が最も多いです。さらには,急変,重篤な母体の搬送を受け入れている内容というものも,施設当たり大学病院が最も多いということ。さらには,そういった重篤な妊婦,新生児の処置が必要な妊婦さんというものは帝王切開が緊急で24時間体制で必要となってきますが,そういったものが大学病院は非常に高いということから,やはり分娩を取り扱う周産期医療というものに関しては,大学病院の診療貢献は非常に不可欠な現状を示しています。
 一方で,大学病院内で行っている当直は4.4回ですけれども,やはり収入の確保という意味,それから地域での医療貢献という意味で,外部での当直もこなさなければいけない,それから,いつでもオンコールがあるという体制で,医師,非常に苛酷な現場で働いているし,自分の収入のために外部で当直をしているという現状がうかがえます。
 特に女性医師の勤務状況を確認いたしますと,常勤医師,皆さん御存じのように,産婦人科においては特に女性医師が非常に増えておりまして,常勤医師も実は14年前の1.9倍まで全部の分娩取扱い施設で増えております。さらには大学病院でも,助教以上の常勤医師が45%,非常に増えてはいるんですけれども,全国の病院教授を含めた女性教授は僅か6名という割合になっております。
 もう一つ,こちら,見ていただきたいのは,育児中の女性医師に対する当直免除であったり時短勤務といったような配慮を行っているのは最も大学病院が多いということで,大学病院というところは女性の就業支援をしつつ,さらには育児復帰後の就業支援,復帰支援もしていることがうかがえる1枚となっております。現状を見ますと,大学病院における,もちろん今,助教の先生方の研究時間が減っていますが,特に女性は,研究者さらに指導者が非常に必要とされているという現状があるかと思います。
 したがって,特になんですけれども,地方大学,かつ臨床研究の非中核病院において,女性の研究者,そして指導者が不足していると感じておりまして,こういった方々のための研究支援体制を充実しなければいけないのではないかということを提案させていただきます。
 背景としては,今お話ししたとおりになりますが,計画としてはこのように,もう本当に一人でも構わないので,毎日,生活の保障された助教レベルの給与を確保した,診療に忙殺されないような女性枠の研究員を3年間,各地方大学においてその枠をつくっていただいて,さらには非中核病院においても,このような臨床研究支援を行う支援体制を整えて,女性医師を継続的に支援していく,育てていく,そしてこの方々が各講座に戻って,または,臨床研究支援センターで今度は指導者として育っていくというようなことを,毎年1名ずつでもいいので,そういった枠,そういった視点でシステムをつくっていただけたらなと御提案させていただきます。
 私からは以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 今村委員,どうぞ。
【今村委員】  先ほどの消費税の議論について,少しコメントさせていただきたいと思います。先ほど厚労のほうから御説明いただきましたけども,実は平成26年から令和元年までの間の損分は返ってきてないという状況があって,大体うちの病院で,大学病院で大体2億ぐらいは出ていますから,6年間で12億ぐらい,各大学が大体10億ぐらい損をしている。まさに税率というところの損をしている。ですので,そこは穴埋めしてほしいと,かねてから思っていることですし,小川先生から指摘のあったゼロ税率は,もともと消費税を非課税にというか,ゼロ税率課税にしてほしいという話だと思います。それがあったら,そういう事件は起きなかったと考えております。あと,総額でどれぐらいの損税になるかということがありましたが,昔計算したことがあります。大体3,000億円ぐらいになるんじゃないかと思います。
 今村から以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。ほかに。
 金井委員,どうぞ。
【金井委員】  慶應の金井です。田中先生御指摘のように,今回のおまとめの文章はいささか総花的で,何が目玉なのかなというのをやっぱり強調したほうがいいんじゃないかと思っています。その目玉の中で,私もこの会の冒頭でお話ししたと思うんですけれども,若い医師がこのおまとめを読んだときに,あれ,大学病院は変わるぞという何か目玉を強調して,若い人たちが大学病院って魅力的だなと思うようなまとめ方をしていただきたいなと思っています。
 そんな中,僕,数回前に若い方たちが自らプレゼンしたときのあれがすごく印象的で,彼らがどうやってああいう確率,ああいう人たちの確率を高くするというのが研究力を上げる一つの鍵なんじゃないかと思っています。でも,全ての人たちにそういうチャンスがあるわけではないので,そこにはやはり競争原理で,アプリケーションして,競争原理で,何か特別な枠,研究員の枠というもの。その方たちは生活にも困らないような,研究員になっても安心して子育てができながら,研究職というものに魅力を感じてやっていく大学病院の姿も目玉として入れていただきたいなと思いました。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
 北澤委員,どうぞ。
【北澤委員】  北澤です。ありがとうございました。私は医療従事者ではありませんが、先ほどから御意見も出ているとおり,大きなことと小さなことが一緒に書かれていて,これで結局何が変わるのかというのがいま一つ読み取れない。詳しく読めば書いてあるのですが,何がポイントなのかが分かりにくいと思いました。表現なのか,それとも中身なのか分からないんですけれども,結局どこが変わるのかということを,もう少し明確に書いていただくようにできないかと思っています。ありがとうございます。
【永井座長】  ありがとうございます。
 横手委員,どうぞ。
【横手委員】  ありがとうございます。大変よくまとめていただきまして,また,これまでの議論で出尽くされたところがあると思いますが,一つだけコメントさせていただきます。従来,大学病院,大学は研究,教育,診療というものを担って,永井先生の御発表にありましたように,かつて私が入局した頃まで,まだ診療というのは研究,教育の一環として行っているような部分があったと思います。ところが,国立大学の場合ですけれども,法人化の後,診療がなくてはならないことになって,これが独立して,例えば,このお盆の連休中にも,千葉大では呼吸器外科の人たちが,脳死肺移植の手術を休日返上,本当にボランティアというような状況で,薄給の下行ってきたということがございます。これはもう本当に使命としてやっているわけです。
 また,地域医療については,これは本来,大学が求められていたというよりも,地域の必要に応じて,これもまた,その機能を大学として自主的に補うために,また若手の給与を補うために行って,それが結果的に日本の医療を津々浦々もたせているところがあると思います。ですので,今日のお話にもありましたように,まず大学病院がしっかりと無駄を省き,また必要な改革を行って,自分たちの機能を高めていくという努力は今後も続ける必要がまず第一にございますけれども,やはり国として大学にどうあってほしいのか,大学病院にどのように研究,教育を高め,日本の医療を支えてほしいのかという国のお考えの下に,教育・研究部分は文部科学省,そして,診療部分は大学病院の診療と地域の診療も含めて厚生労働省,そして都道府県に大学病院の投資をしていただきたいと思う次第でございます。それに対する責任は,我々,しっかりと果たしていく考えでございますので,そのような形で,今回の検討会の内容を,次に夢のあるものとして進めていただければ大変ありがたいと思いました。
 以上でございます。
【永井座長】  ありがとうございます。私も今の横手先生の御意見に全く同感で,大学設置基準を見ると,いまだに大学病院というのは,学部,学科の教育,研究に必要な施設になっています。これは確かに必要条件ではあるんですが,十分条件ではないのです。それは何かというと,国民の負託に応えられる臨床機能を果たす病院を備えて,それをきちんと担うということがあって初めて大学病院の存在意義が出てきます。特に法人化後,さらに経営ということまで求められてきた。実際,大学病院は頑張ったわけです。国立大学は,2倍収入を上げて減益になったのは一体どういうことか。これは,若手の労働と研究時間削減,あるいはマンパワーの動員で果たしてきたわけです。やはり大学設置基準に書かれてない部分をしっかり書いていただいて,それはそれでしっかり支援すること。とにかく増収減益でやってきて,かつ経営改善を求められて,財投借入金を大学病院は返済してきた、これは国が求めたわけです。それをきちんと約束どおりやってきたわけです。しかし減益になるんだったら,それはしっかりと,国公私立問わず,支援する。そこをスタートとして,教育,研究をさらに充実させるためにどうするかであって,その業務が書いてないがために,書いてない部分,まさにUnwritten contractです。書かれてないところに若手が動員されてしまって,教育,研究ができてないという,もう極めて単純な構図ですね。やはりそういう仕事のあることをしっかり書き込んで,次の手をどうするかということを,ぜひまとめに入れていただきたいと思います。いかがでしょうか。事務局,いかがでしょうか。そもそも大学設置基準,今の時代に合ってないです,昭和31年の基準ですから。
【堀岡企画官】  ありがとうございます。おっしゃるとおり,最初にこの議論をするときに,事務局でもいろんな法令を確認したりして,やっぱり一丁目一番地の作業から始めるわけですけれども,確かに今の世の中における重要性とか果たしている役割と,単純な大学設置基準の中の附属施設というのは物すごく乖離があることは我々も感じています。そういった面も含めて考えてみますので,また皆様方にお送りしますので,また御意見をいただいて,次回の検討会までに提示しようと思います。ありがとうございました。
【俵課長】  医学教育課の俵です。今,堀岡企画官からあったとおりで,中でも議論はしているんですけど,設置基準の中でどういうふうに扱うか。これは文部科学省の中の医学教育課だけでも決められないところもありますので,ただ,解離しているなというのは僕らの共通認識なので,それを踏まえて,どういったことがいいのか省内で考えたいと思いますので,よろしくお願いします。
【永井座長】  やはり臨床活動というものをしっかり位置づけないと,勉強のためだろうということで動員されてきたわけです。それは皆保険制度のときもインターンもそうだったわけです。インターン生の身分は最初,大学院の研究医として位置づけられたんですから。そういう歴史をちゃんと踏まえれば,大学病院における臨床というものをしっかり位置づけて,身の丈に応じた運営をしていただき,そして教育,研究にさらに力を注ぐというのが本来あるべきだと思います。そういうことでも書いていただければ,方向性としては随分大きな意味があると思います。これがないと何だか,いろんなことが散らばっているだけで,何がどう変わるか,持続性はどうなのかというところで,甚だ皆さん分かりにくいと思います。いかがでしょうか。
【俵課長】  歴史と実態に合った形を踏まえて,どれがふさわしいかと。
【永井座長】  そうですね。悲しい歴史があるわけです。みな,教育,研究という名の下に安く働かされてきたわけです。そこはちゃんと反省しないといけないですね。
【俵課長】  ありがとうございます。
【永井座長】  よろしいでしょうか。まだこの議論は続くと思いますので,次回,さらに議論を深めたいと思います。それでは,大体予定の時刻になりましたので,ここで終了いたします。
 最後に事務局から,今後の開催スケジュールについて説明をお願いいたします。
【海老課長補佐】  事務局でございます。今後のスケジュールでございますけれども,次回,第5回の会議につきましては,9月11日の13時から15時の日程で開催をさせていただければと存じます。よろしくお願いいたします。
【永井座長】  ありがとうございます。それでは,本日,これで終了いたします。どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――


 

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