今後の医学教育の在り方に関する検討会(第3回)議事録

1.日時

令和5年7月12日(水曜日)12時30分~14時30分

2.場所

文部科学省  ※対面・WEB会議の併用

3.議題

  1. 大学病院改革と医学教育の充実について
  2. 大学病院改革ガイドライン(仮称)について
  3. その他

4.出席者

委員

永井座長、今村委員、大井川委員(代理:茨城県保健医療部 砂押次長)、岡部委員、小川委員、金井委員、釜萢委員、北澤委員、熊ノ郷委員、田中(純)委員、田中(雄)委員、宮地委員、銘苅委員、諸岡委員、横手委員、和田委員

文部科学省

池田高等教育局長、西條審議官、俵医学教育課長、堀岡企画官、永田大学病院支援室長 他

オブザーバー

厚生労働省医政局 林医事課長、文部科学省研究振興局 奥ライフサイエンス課長(代理:廣瀨課長補佐)

5.議事録

【永井座長】  では,時間になりましたので,ただいまから第3回今後の医学教育の在り方に関する検討会を開会いたします。
 委員の皆様には,御多忙の折,お集まりいただきまして,ありがとうございます。
 最初に事務局より本日の委員の出欠状況,配付資料の確認,オンライン会議での発言方法について説明をお願いいたします。
【相原課長補佐】  医学教育課の相原でございます。
 本日の委員の出欠状況でございますけれども,本日は,山口委員から御欠席の御連絡をいただいております。
 なお,田中純子委員は14時頃に御退席の予定でございます。
 また,大井川委員の代理として茨城県保健医療部,砂押次長に代理出席いただいております。
 次に,配付資料の確認をさせていただきます。配付資料は,会議次第に記載のとおりでございますが,お手元にございますでしょうか。なお,資料につきましては,文部科学省のホームページでも公表しております。
 続きまして,オンラインによる会議の進行に当たってのお願いがございます。御発言される場合には,Zoomの挙手ボタンを押していただくようお願いいたします。その後,座長から順に発言者を御指名いただきますので,御発言いただく際はマイクがミュートになっていないことを御確認の上,御発言をお願いいたします。
 以上でございます。
【永井座長】  では,議事に従いまして,最初に「大学病院改革と医学教育の充実について」,次に「大学病院改革ガイドライン(仮称)について」,「その他」について御議論いただきます。
 まず,議題の1でございます。大学病院改革と医学教育の充実について,事務局より説明をお願いいたします。
【堀岡企画官】  医学教育課の堀岡でございます。資料1「大学病院改革と医学教育の充実について」に沿って資料の御説明をさせていただきます。
 1枚おめくりいただきまして,今までこの検討会,2回開催してまいりましたけれども,客観的な資料についての御提供ということを事務局からはさせていただいておりました。今回,若干抽象的ではございますけれども,幅広い分野で事務局的な,提案的なもの,出させていただいておりますので,御議論,また,コメント等いただいて,次回以降の様々な議論の整理に向けて御発言いただければありがたいと思っております。
 1つ目,1ページおめくりいただきまして,まず大学病院の運営についてでございます。これは後ほど資料2で事務局提案させていただいております大学病院改革ガイドラインとも関係するところでございますけれども,大学病院の運営について,令和6年度から働き方改革による時間外・休日労働の上限規制が適用される中,非常に様々な危機感を我々も共有しております。その中,個々に様々に異なる実情等を踏まえて,大学病院に求められる役割を再定義するとともに,その役割を発揮するための運営体制を確保する体制が,必要があるのではないか。また,国は,その役割を再整理して働き方改革に資するよう,各大学病院において検討すべき項目を示すこととしてはどうかとしております。
 2つ目でございますが,大学病院の財務・経営についてでございます。1つ目は診療における地域の医療機関との連携・役割分担を進めるということ。2つ目,様々な先生からも御議論いただいておりますけれども,大学病院で高度かつ最先端の医療を提供して,複数の疾病を併発する重症患者を多く受け入れること。また,小川先生から高額の薬剤についての管理が非常に難しいことなどいただいております。また,医師の派遣というものも地域において重要な機能であるとされている一方で,そのようなこと自身が,経営の改善が困難な一因であるという指摘をいただいております。もちろん,厚生労働省とも連携いたしまして,大学病院の多岐にわたる機能を適切に支援する仕組みが必要ではないかといただいております。
 3つ目でございますけれども,前回,国立病院長事務長会議の塩﨑様からも御指摘いただきましたけれども,共同調達による支出の削減や経営改善を担うことのできる人材の活用・育成を進めるべきではないかということを書かせていただいております。
 次のページでございます。大学病院の財務・経営についてでございますけれども,医療機器が老朽化していることは皆様御指摘のとおりでございます。少し細かい提案でございますけれども,3行目のところ,附属病院セグメントの財務情報というものは今でも出ているものでございますけれども,既に開示されている損益計算書ベースの収支の状況に加えて,貸借対照表ベースの収支の開示を検討しないと,総合的な国立病院の財政というものが見えなくなってしまうのではないかというふうに,その検討をしてはどうかということを提案させていただいております。また,余りに老朽化した医療機器の更新について対応が必要ではないかということ。また,2つ目では,前回,若手の先生からも様々な意見をいただきましたけれども,大学病院で働く医師の勤務環境の改善が必要ではないかというテーマを出させていただいております。
 次,4ページでございます。大学病院における人材確保,タスク・シフト/タスク・シェアについてでございますけれども,例えば大学病院の高度な医療を支えるために医師がやる職種も,高度な医療で支えることはもちろん重要なわけでございますけれども,例えば特定行為研修に定められているような高度な看護実践の基盤となるような知識を看護師の養成課程を持つ大学の養成カリキュラムにおいて一部獲得することを目指すことを主としてはどうかといったことを出させていただいております。
 2つ目,CRC,生物統計家,研究補助者など,なかなか確保できないという実情も示しております。各大学病院における研究体制の整備を促進すべきではないか。3つ目,コロナでも指摘がございましたけれども,エクモや人工呼吸器といった患者さんの対応のネックになるのは,対応可能なナースの数が足りないことなどにございます。重症患者の対応が可能なナースを養成するための教育プログラムが必要ではないかといったところを出させております。下の2つについては,前と同じですので割愛させていただきます。
 次に5ページでございます。診療参加型臨床実習の充実,今般,医師法を改正して医学生にも医行為をすることが正面からできるように改正しているところでございますけれども,実習の趣旨や期待される行為の内容などについて,一層の理解を図ることが必要だと考えております。実習に係る教員の実績を視覚化したり,教員の教育エフォートと実績を適切に評価する方策を,もちろんその実習に関わる先生方の負担に最大限配慮しつつ,検討することとしてはどうかと考えております。
 2つ目,3つ目,少し細かい話題になりますけれども,リサーチマインドを育成するために6年生まで継続して研究に触れる教育プログラムが必要ではないか。3つ目でアントレプレナーシップのようなベンチャーやスタートアップのための起業家教育など,そういった課題を解決するための人材も育成する必要があるのではないかという話題を出させていただいております。
 5つ目でございますけれども,これ,少し分かりづらいので,後ほど参考資料にもまとめておりますけれども,大学や博士課程における取組の充実についてとして,専門医研修は非常に今の若手の先生方に魅力があるというのは,もう既に決まっているところでございます。専門研修と博士課程を両立するようなプログラムを拡大すること。また,大学院の魅力を高めるためにジョイントディグリーやダブルディグリー,また,海外留学などによるキャリア形成の支援が必要ではないか。そして3つ目として,AIや医療データなどを活用するような人材の養成も推進する必要があるのではないかとしております。
 最後,字でまとめている6ページ,最後のところでございますが,研究力の向上について,MD以外の研究者が医師とともに研究を担うことができるような環境整備を進めるべきではないか。前回,熊本大学の馬場先生からも御指摘いただきましたけれども,研究者に対する研究エフォートの確保や基金の造成による研究費の支援といった研究の活性化に向けた取組を一層進める必要があるのではないか。また,大学院修了後のポスト確保など研究者としてのキャリアパスの支援が必要ではないか。
 また,専門医の取得要件,今,一部の学会を除いて臨床の条件だけになっておりますが,一定の研究活動を求めることを各学会に依頼することとしてはどうか。また,前回,田中先生から御指摘いただいて,私どもも研究いたしましたけれども,研究になかなか捻出する時間が難しい。医学研究においてバイアウト制度や競争的研究費の直接経費における研究代表者の人権支出を大きく促進することとしてはどうかといった話題を出させていただいております。
 また,その他といたしまして,最初に大井川知事から御指摘いただいたところでございますけれども,医師が不足する地域の現状を鑑みれば,医師の総数や診療科偏在の課題も踏まえ,関係省庁と連携した人材養成の検討が必要ではないかといった提案をさせていただいております。これらについて様々な意見をいただければと思いますが,参考資料を御説明させていただければと思います。
 8ページ,9ページは,今,文字で御説明して,なかなか分かりづらいところでございますので,まとめておりますけれども,例えば1つ目,これは専門医機構,また,金井先生にも御尽力いただいたところでございますけれども,専門医制度においては,シーリングの対象とならない臨床研究医コースというものが約40名程度設定されておりますが,前回,昨年度まで専攻医が終わるまで大学院に入れないという,7年間,固定されたキャリアであるという制度になっておりまして,非常に人気がなく,臨床研修医というものを選ぶインセンティブが非常に少ない状態になっておりました。これを専門医機構の協力も得ながら,専攻医と大学院というので並行して履修できるようなプログラムに変えていただいております。
 また,2つ目でございますけれども,これは現状でも厳密には可能でございますが,例えば臨床初期研修医の2年目から大学院に入ったり,また,専攻研修医から,3年目から大学院に入ったりというようなこと,なかなか進んでいない実情がございます。そういったものをより進めることとしてはどうかと考えております。また,3のところで,例えば専門医の取得要件について一定の研究活動を先ほど御説明しましたが,求めることとしてはどうかといった取組の提案をさせていただければと思っています。
 次のページでございますけれども,キャリアをどうやって作っていくのかという問題でございますけれども,現在,医学部には地域枠だけではなく,研究医枠というものがございます。これ,今,研究医枠を作るためには必須要件として左の条件,任意要件として右の条件があるのでございますけれども,なかなか任意要件というのは満たされていないところも多いところでございます。優れた研究医を養成するために,例えば右の任意要件で海外研修とか,また,常勤のポストを確保するまではどうかと思いますけれども,例えば研究医としてのキャリア支援といったもの,そういったこともございますので,そういったものも必須要件にして研究医枠,これ,今,研究医で応募されている研究医の方々が安心してキャリアを歩めるように制度を改正してはどうかということを提案させていただいております。
 ここから先ですが,医療DXについて非常に重要な論点ではあるものの,なかなか事務局として資料を出せていなかったところでございます。今般,個別の例で恐縮なのですが,幾つかの大学で医療DXを使った取組をやっていることを御紹介させていただいて,その後,諸岡先生から現場の軸足を置いた医療DXの経験について少しだけ御説明いただければと思っております。これ,例えば名古屋大学でございますけれども,これはVRを用いて,今までのシミュレーションではなくて,VRとかARを使ったシミュレーションで,例えば腹腔鏡手術などをやっている。これ,歯科でもこういうものがあるようでございまして,私も視察などで見させていただきましたが,かなり現実感を持ったシミュレーションでありまして,教育において,今,こういうことが進んでいるとなっております。
 次,千葉大学,11ページでございますけれども,千葉大学においては,例えば模擬患者とマネキン両方で拡張現実の聴診訓練,つまり,現実の模擬患者は目の前にいるんですけれども,全然違う聴診音を出して,それによって教育とか試験に使うというような取組などが進んでいるという例でございます。
 次が研究におけるDX推進でございますけれども,これも千葉大学における取組でございますけれども,地域における病院全て研究データ,ある一定の疾病に罹患している患者の研究データを集めた後に,年齢,性別,身長,体重,全てハッシュ化して,複数の断片データにした後に,そのハッシュ同士で分析をすることによって,完全な匿名化して分析を行うようなAIを開発するというような取組が行われておりまして,次のページでございますけれども,例えば様々なデータを使って,個人情報と関係なく,例えば抗生物質の使用量とか,使用の範囲を見て,左側でございますけれども,薬剤耐性菌の出現率を地域ごとに可視化するということによって,処方の見直しにつなげるというような研究などが行われておりまして,医療DX,このようなことも例がある中で,どんな支援ができるかということも議論できればなと思っております。
 すみません,岡山大学などの取組について,諸岡先生,追加で御発言いただければと思います。
【諸岡委員】  はい。分かりました。諸岡ですけれども,もう今から始めてよろしいんですかね。
【永井座長】  どうぞ。
【諸岡委員】  はい。分かりました。熊本大学の諸岡と申します。岡山大学の取組をこれから紹介するのですけれども,私,5月まで岡山大学にいて,6月から熊本大学に異動したもので,こういった形で御紹介させていただくことになりました。
 まず,最初に通し番号でいきますと15枚目ですか,違う。16ですね。これですね。このプロジェクトは,文科省の保健医療分野におけるAI研究開発加速に向けた人材養成,産学共同プロジェクトというプロジェクトに採択されたものでして,これ,具体的に何をしますかというと,医学部の博士後期課程に医学生がAIを使った研究で博士号を取得する。取得できるようなコースを作って,それでAIを用いた研究を行える医学博士を育てて,例えば医療とAIを組み合わせたベンチャーをつくるとか,あるいは医療系の企業でのエンジニアとして働くとか,そういった人材を育成しようということでできたものです。体制としては東北大学が主幹校,それから,北海道大学と岡山大学が連携校として,それぞれ拠点を作っております。また,各大学の周辺大学が協力校として参加しておりますし,さらには,理研のAIPセンターであったり,企業なども連携研究機関として参加しているところです。
 この図の左側にありますけれども,第1段から第3段というのがありますけれども,これは大まかに言うと,各博士後期課程の学年,だから,第1段が1年生,第2段が2年生,それから,第3段が3年生という形で対応しているものと御理解いただければと思います。
 説明の順番が前後しますけれども,次の次の資料を表示していただけますか。これがその具体的な教育システムになっていまして,まず第1段が博士後期課程1年で取り組むところになりまして,これはオンデマンド講義によってAIに関する基礎知識の習得を目指すものになっております。その講義内容としては,昨今のAIというだけではなくて,もっと基礎的な数学のところから学んでいくというようなことをやっております。このオンデマンドの講義なのですけれども,先ほど申しましたように3拠点で行っているのですけれども,3拠点共通の内容もありますし,それぞれの大学の独自の取組というのもありますので,したがって,その共通の内容においては,その共通のオンデマンド講義を使って,それから,各大学の強みを見せるところにおいては,独自の講義においてはそれぞれの大学で講義をしているということになっております。
 ですので,この資料で言うと,右下のところになるのですけれども,青三角とか赤三角とかありますけれども,ズームして見ていただければお分かりかと思いますけれども,各大学のAIのコースとか,そういった形で選択できるようになっております。2年目になりますと,今度は実践という形で,例えば公開されているデータセットを使ったプログラミング実習であったり,あるいは外部講師によるハンズオン実習とか,具体的な研究を取り組むための実践のような技術を学んでいくという流れになっております。
 また,基本的に博士後期課程に入ってくる学生の方は,既に科に所属されていて,そこでテーマというものを既に持っていらっしゃる学生の方もいらっしゃいます。そのときには,そのテーマを教員と議論していくのですけれども,その教員というのが岡山大学の場合は専任の教員,具体的に言いますと,医学部の出身の先生で,なおかつプログラミングもできるという先生が常に常駐しているということ。それから,その研究の内容に対応する工学系の教員が,要するに3人で一緒になって研究テーマをどうやって進めるとか,どのように最終的に持っていくかというのを議論していくというようなことで進めております。そして,3年目に向けて実際に研究を行って,最終的には論文化して博士号を取得するといったような流れになっております。
 先ほど出ていた,例えば教員の教育エフォートの実績を適切に評価するという中で,例えば先ほど御紹介した専任の教員の先生,医学部の先生なのですけれども,やっぱり教育というところに重きを置いて行っておりますので,こういったコースには必要な先生でして,そういった先生を評価できるような仕組みというのは必要ではないかなと私は個人的に思っているところです。例えばハンズオンの実習なのですけれども,ZoomかTeamsか分かりませんけれども,動画,スクリーンショットの横に何か書いてあると思いますけれども,御覧いただくと分かるように数式がバーッと出ていると思うんですね。このように数学も実際に学んでいるといった形になっております。
 順番,戻りまして1つ前のスライドに戻っていただけますか。実際にここに出ているのは,岡山大学に置いている博士後期課程,先ほど御紹介したコースにおける入学者数を示しておりまして,当初,定員3名ということにしていたのですけれども,それを超えるような学生が入学しています。また,どの科から入学しているのかというと,その表,スライドの右側に出ているこちらが,どこから来られているかというのをお見せしているのですけれども,様々な科から入学しているのがお分かりになるかと思います。
 それから,博士後期課程のコースだけではなくて,岡山大学のほうではインテンシブコースというのを設けております。これは岡山大学の学生,教員だけではなくて,学外の方からもこういった講義が,オンデマンド講義が聴講できるような仕組みというのを作っておりまして,年に2回ほど募集をして受講できるようになっているのですけれども,ここでトータルとして今月の頭の時点で235名の方が受講されているといったことになっております。
 次の次のスライドに進んでください。実際にどんなことをやっているのかというのが,こちらに示してございまして,現時点では2年目とか3年目の学生の方が実際にどういう内容で,それから,どこの工学研究院とか,あるいは医療と共同研究をしているのかといったところをお見せしているところです。ここに岡山大学工学研究院と書いてありますけれども,これの太文字のところは,実は私が関係しているところでして,実際に医学部のところと一緒に研究を進めています。こういった形でAIや医療データを活用して,高度な実践的な研究と,それから,そういった創薬とか医療機器の開発ができる人材を推進するというところの中では,こういった岡山大学の取組というのは,それに応えられている枠組みではないかなと考えておりますが,一方,ベンチャーの設立とかスタートアップとかいうよりは,起業家の育成というところにはまだまだもう少し工夫が必要かなというのは考えているところです。
 ざっとですけれども,御紹介させていただきました。
【永井座長】  ありがとうございます。
 それでは,ただいまの説明に御質問等ございましたら,御発言をお願いいたします。いかがでしょうか。
 今村委員。
【今村委員】  では,幾つか,今出していただいた資料の中で,資料1で御提案いただいたことについて少し意見を述べさせてもらいたいと思います。まず,2ページの最後に共同調達ということを言っていただいていますけれども,私は,これはぜひ進めてもらいたいと思います。実際にたくさん一気に購入できると安くなるというのは,もう自明のことなので。ただ,今度,物すごく頑張って値切っているところは,共同購入すると高くなるので,そのいいとこ取りができるような共同購入ということをぜひ考えてほしいと思います。うちの大学も結構安く買っているので,共同購入すると総額で言うと高くなるのですけれども,部分的に言うと安くなるので,部分取り,なかなかさせてもらえないので,そこが少し難しいところではないかと思っています。
 それと,2つ目の3ページ目にある大学の財務・経営についてということで,今回,貸借対照表も出してはどうかということで,これも大賛成で,それは運営状態を見るためにはP/LとB/S両方とも見ないといけない。私からは,国立大学病院の損益計算書は,実態を反映しているとは言い難いところがあるので,実際の現金の授受で考えたら,帰属収支と言われているものがございますので,その帰属収支をやっぱり見て,本当にインとアウトで赤字なのか,黒字なのかということが見れるようにしたほうがいいと思います。私も国立大学病院の会計をやっておりましたけれども,見返り金などが入っていて,本当は赤字なのに黒字になったり,黒字なのに赤字になったりする会計だと思うんですね。ですから,本当のところのこの会計が,黒字か赤字かが分かるということがすごく大切だと思いますので,そこはぜひ考えていただきたいと思います。
 あと,大学病院を実際に運営して,私,今,公立の大学におりますので,この場合,県からの補助金というのを我々はもらうことができるのですけれども,国立大学の時代には県からの補助金というのはもらえなかったんですね。ですから,医療の,特化するという意味では,都道府県知事の範囲で本来やらなければいけないことというのがあって,そういったことを都道府県から頼まれてやるようなことは,大学病院で補助金をもらってやるのが筋だと思うんです。多くは文科省からの直接の補助金がありますけれども,かなり網羅できていない部分がありますので,これを県からの補助金を,せっかく法人化したので,その法人化した大学病院などにももらえるようにしてもらうということが大切かなと思っています。
 あともう一つだけ,4ページで,コロナ禍で重症患者さんが診れる看護師さんの養成ということを書いてもらったのは,本当にありがたいと思っています。その上で,実際,コロナのときには,この経験者を,数が足りなかったということで,養成される人があるんですけれども,その方々をストックするようなシステムがないと,現実にはオペ室から引き剥がすと,そのオペ室が動かなくなったり,ほかのICUから引っぺがすと,ほかのICUが動かなくなって,一般の医療への影響が非常に大きかったんですね。大人数の人間を抱えるとしたら,やっぱり大学病院ぐらいしかできないと思いますので,これ,養成して危機管理に備えるような人材,看護師さんの人材をストックできるような,そういう試みというのがあったほうが,これとセットで必要なものではないかと思います。
 今村からは以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。田中委員,どうぞ。
【田中(純)委員】  こんにちは。まとめていただいて,ありがとうございます。私も幾つかページに沿ってコメントさせていただきたいと思います。2ページ,3ページ目の大学病院の財務・経営なんですけれども,前回も御発表がありましたし,今も御発表があった,まとめて購入というのは非常にいいと思うのですけれども,広島での経験を見ると,SPDセンターにもともと企業,機器会社,あるいは試薬会社のおられた割とやりとりを病院とやっていたような方を雇用するということで,お互い同業者でやりとりができるということで,価格の適正化とか,見積りの適正化とかいうことができて,非常に億単位での軽減につながっている実績があるので,やはり各病院で,そういう方の人材を経営のSPDのところに入れていくというのは1つの案ではないかなと思います。
 それから,4ページのところのCRCとか生物統計家とかいうふうな人材を整備すべきではないか,研究力を高めるためにということなのですけれども,もちろんそうだと思いますけれども,前回のアンケートでも,そろっているところは恐らく臨床中核を持っていらっしゃる,あるいは目指しているような病院は充足しているけれども,そうでないところはないということなので,やはり臨床中核を目指しているようなところは,そういう人材がいるけれども,そうでないところも,こういう整備ができるような支援が必要ではないかと思います。
 それから,5ページの医学部の教育の充実についてなのですけれども,なかなか教育,あるいは研究に担当する診療医についての評価がないので,なかなかできないということなので,この教員の実績を視覚化することには非常に賛成です。教員活動評価ということで,年ごとに研究,教育,診療の評価を大学では行っているところですけれども,そこでやったことを評価できるシステムをして,その本人のキャリアアップなどでも加算ポイントになるというようなことがあればいいかなと思います。また,研究医長というのを設けていて,研究力を診療科の中で高めるための医長を設けるということをやっていますので,それもコメントとして申し上げたいなと思います。
 それから,6ページの前回の熊本大学の研究支援のプロジェクトには,ちょっと額も多くて,とてもまねができないなと思ってびっくりしたのですけれども,研究力を上げるために4つ目のポツの各学会に専門医の取得要件に研究活動を求めるのを検討したらどうかというのは,これはとてもいい方策ではないかなと思いますので,専門医を取るということが優先されるという現実の中で,その中に研究をどのように盛り込んでいくかというのが1つの案ではないかなと思います。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 岡部委員,小川委員,釜萢委員の順でお願いいたします。
【岡部委員】  はい。分かりました。幾つかあるのですけれども,まず1番目は,看護師さんに関するいろいろな教育プログラムのことを書かれていたと思います。まず,東大病院等では,看護師さんの募集をするとなかなか集まらないということがあって,それは大学病院,どうしても高度医療をするので,看護師さんに要求されるいろいろな技術水準が高いだろう,あるいは勤務時間もかなり長いだろうということで,人が逆に集まらないというところもあると思うんですね。今後も方策として高度化医療に対応する人材を育てることも重要なのですけれども,多分,分業化とか,それぞれの看護師さんの役割の明確化とか,そういうことをしていかないと,その人手不足解消というところになかなかつながらないのかなということを感じています。それが1点目です。
 それから,2点目は,研究の活性化ということで,卒業後の大学院と,それから,専攻医,そこのミックスという形で提案していただいて,多分,これは決まったパターンを提示するのではなくて,なるべくフレキシブルにいろいろなパターンで卒後の自分のキャリアを考えられるという,多分,そこが重要なのだと思います。うちの大学の学生に聞いてみると,このコースに行きたがらない大きな理由が,卒業したところで論文をパブリッシュするということがかなり義務化されているというところが躊躇するのだと言うんですね。
 というのは,学生のほうは大きな仕事をしたい。研修医をしながら大学院もやって,そこである程度の結果が出るんだけれども,必ずしもそれが大学院修了時までには論文にならない可能性があるので,そこで必ず出せと言われてしまうと,それは困るという,そういうことを言うので,そういった,ここが一種のキャリアとして通過するのだけれども,そこで必ずしも論文業績だけを求めるのではなくて,何かほかの方法でその結果を見るということも考えたほうがいいのかなと思っています。それが2点目。
 それから,3点目は,いろいろなDXのことですね。これは非常に重要な課題だと思います。研究の分野でも診療の分野でも,多分,これがどんどん比重が増えていって,データサイエンスが分かるということが教育,研究,臨床全てに必要になると思うんですね。ただ,一方で,今のAI技術って進歩が速いので,5年たってしまうと,多分,過去の知識,技能があまり役立たない分野でもあると思います。そういう意味では,卒業してからこういうものをもう1回学び直したいという方が,もう一度大学のほうに戻ってくるという,いわゆるリカレント教育,そういったことが活発になるとすごくいいなと思っていまして,東大でもそういうことはしているのですけれども,大学生,それから,研修医だけではなくて,もう少しキャリアを積んだ方がもう1回大学に戻ってきて,そういった教育を現場で受けるということは重要かなと思います。
 あと,AIの分野の方に聞いてみると,AIの分野って人材不足なので,とにかく人手が欲しい。自分たちのところに来て手伝ってくれる人が欲しいということは強く言われますので,そういう意味で,医学部を出ている学生さん,優秀な方が多いと思いますので,そういう人がAIのラボにしばらく行って,インターン的なことをして戻ってくるという,そういうシステムも動けば恐らく多くの方が参加して,AI側の人にもメリットがあると思います。
 私からは以上です。
【永井座長】  小川委員,どうぞ。
【小川委員】  共同購入のことなのですけれども,確かに共同購入してやりたいという考えはあります。しかしながら,地方で,果たして可能なのかと。東京であれば,複数の大学があって,その地域,例えば東京という地域で卸等にある程度自由度がある。ところが,地方で,例えば県が違うと卸が違う。この商習慣を完全に地方で変えるということは,要するに中小企業に潰れろと言っているようなものですから,だから,現実にはなかなかできないのではないかなと感じております。可能な地域ではできるけれども,地方ではなかなか難しいと思っています。その辺がちゃんと商習慣として解決してくれれば,ぜひ共同購入をやりたいところでございます。
 それからもう1点,参考資料の1枚目ですけれども,臨床研修制度が始まったときに,実は文部科学省と大分議論をさせていただきました。その内容といたしましては,大学で夜間大学院を開校するから,臨床研修医が昼間,普通に臨床研修をやって,夜に大学に来て研究できないかと申し上げたわけです。けれども,そのときには,臨床研修医は9時-5時だから,それ以外の時間に勉強するなんてとんでもないと言われたわけです。
 一方で,将来,自分が海外に行って研修をしたいという臨床研修医が夕方5時以降に駅前の英語教室に行って勉強するのは良いのに夜間大学院は駄目だというのは矛盾していると言うことで大分議論させていただいて,10年前に一応,臨床研修医が夜間大学院でも学ぶことは構わないよということになって,ちゃんと大学院の規定の中に,夜間大学院というのを規定していると思うのですけれども,この辺は文部科学省としては,どういう扱いに現在なっているのでしょうか。
【堀岡企画官】  お答えいたしますけれども,これ,別に今できなくて,こうしようというのではなくて,確かに初期研修医導入のときに先生の御尽力があったという話,先生からもお聞きしたのですけれども,現実には今,岩手医大のところみたいなところはあまり少なくて,初期研修医の間,大学院に入ることを認めなかったり,もっと厳しいところだと,後期研修が終わるまで大学院の入学を認めなかったりという大学が多数あるようです。なので,それは柔軟にするということを,より推進するというのがこの2の趣旨でございますので,文科省としても可能であれば,そのハードルを低くしたいと思っております。
【小川委員】  分かりました。はい。ありがとうございます。
【永井座長】  釜萢委員,どうぞ。
【釜萢委員】  ありがとうございます。今日の資料1の最初のほうから,沿って少し意見を申し述べたいと思いますが,まず2.の大学病院の財務・経営についてでありますが,大学病院は非常に多く,また,様々な役割を担っておられる。それぞれの役割がしっかり,さらに高みを目指していただくということが必要であるにもかかわらず,これまでにお示しいただいたように非常に経営の改善が困難であるということです。具体的にここに共同調達等が挙げられていまして,それは取り組むべき課題だけれども,それによってそんなに収支が改善するだろうかというと,なかなかこれは難しい部分があるだろうと思います。その中で,この2.の2つ目の四角に書いてあるように,やはり関係省庁と連携して大学病院の多岐にわたる機能を適切に支援する仕組み,この新たな支援の仕組みというのがぜひ必要で,ここをしっかり踏み込んで検討すべきだろうと強く思います。
 それから,その後,次の3ページですけれども,最後のところですね。大学病院で働く医師は,非常にいろいろなところに頑張らなければいけない中で,また,診療に多くの時間を割いている。それに見合った処遇がなされていないということで,この大学病院で働く医師の勤務環境の改善というのは,これはもう喫緊の課題であって,ここに何とか今回の検討を通じて改善が図られる必要があるというふうに強く思います。
 それから,その次のページ,3.で,もう既に御指摘が出ていますが,看護師等のタスク・シフト/シェアの関係で,特定行為研修というところが新たに大きく取り上げられています。これはこの方向を目指すべきだと思いますが,まず,その大学病院で特定行為研修の指定研修機関になっていないところがまだあると伺っており,これは早急に指定研修機関にしっかりなっていただく必要があるだろうと思います。そして,例えば自治医大などでは,本当に多くの研修修了者を生んでいただいておりますが,大学で働く看護師さんもそうですけれども,地域において必要な看護師さんの研修を支えて進めていただくということについて,ぜひ大きく取り組んでいただきたいと思います。
 特に今後,必要とされる在宅,あるいは訪問看護等における研修の修了,必要な項目の研修の修了という方を増やしていく必要があるので,地域におけるそういう研修を目指される方が受講しやすいような取組をしっかりやっていただきたいと思います。それで,この大学の学部の養成カリキュラムにおいて,それが特定行為研修の共通科目の履修とひもづけられるという検討については,今後,検討を進めるべきだろうと思いますが,具体的にどういう内容が合致するのか,あるいは今後それを増やしていくとすれば,どういう可能性があるのかというようなところを具体的に丁寧に見直していくことが必要だろうと思っております。
 最後になりますが,5ページの医学部における教育の充実でありますが,この診療参加型臨床実習のための実習を指導する教員,これは非常に重要な役割を担っています。臨床研修において指導医の講習というのは,かなり行われて,実際に研修を修了しておられる医師の数も随分積み上がってきていますが,この臨床実習においても,その経験も役立ちますけれども,臨床実習の指導医に対する取組が必要であることと,それから,そういう実習に関わる教員の実績の見える化というのは,これはぜひ必要で,そのことがきちっと評価されて,やる気が出てくるようにしていただくということが極めて重要だろうと感じました。
 私から意見を以上のように述べさせていただきました。
【永井座長】  ありがとうございます。
 田中委員,その後,宮地委員,続いて銘苅委員,お願いします。田中委員,どうぞ。
【田中(雄)委員】  私でいいですか。
【永井座長】  はい。
【田中(雄)委員】  重複を避けて2点ほどお話しさせていただきます。1つは共同調達の件ですが,これは,大学病院の一番大きな買物というのは電子カルテ,医療情報システムなんですね。本当は医療情報システムを共同調達するのはいいと思うのですけれども,現実的には非常にカスタマイズの問題が大学病院はあって難しいということと,それから,購入の時期がずれているので難しいという問題があります。ただ,医療情報などで横の連絡をとって,そういうことを考えるというのは,額が大きいだけにインパクトは大きいだろうというのは,一つ思うところです。
 また,やはり高額機器,ダヴィンチとか,そういったものは,先ほど小川先生から商習慣の問題があるという御指摘もありましたけれども,ダヴィンチだと,さすがに商習慣はあまり,大きな会社なのであまりないかなと思いますので,例えば日赤は,ダヴィンチを共同調達しているんですね。いろいろな全国の日赤の病院。ですから,そういうようなものを選んでやったらいいのではないかなと思います。
 それからもう一つは,大学院の教育,それから,学士課程の教育もそうなのですけれども,今,オンラインの授業も増えているし,オンデマンドの授業も増えているので,それはシェアできると思うんです。ただ,これ,言うのは簡単で,なぜあまり実行されないかというと,学生が自由にとるというふうにするのはあまり現実的ではないんですね。やはり例えば大学院のコースワークを作る責任者が,全体のプラットフォームの中でシェアできるものは何かというふうに見て,それをカリキュラムの中にはめていく,コースワークの中にはめていくというのが現実的なやり方だと思います。
 それをするためには,大学院のコースワークを担当している人の横のつながりが重要で,大学院の場合ですね。学部は学部で,実際に教育を担当している人たちの横のネットワークは既にあるのですけれども,その中にオンデマンド型の授業をシェアするというコンセプトを入れることが重要で,それは多分,文科省が主導されるのが――主導というか,リコメンドされるのがいいのではないかなと思います。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 続いて宮地委員,お願いします。
【宮地委員】  ありがとうございます。私,まず3.に関してですけれども,特定行為を看護の卒前教育課程に入れることに関しては,看護教育の専門家の意見を踏まえて議論をしたほうがよいのではないかと思いますが,少なくとも看護師の役割が変われば,医師に求められる多職種連携能力も変わる必要がありますので,令和4年度改訂版のモデルコアカリキュラムのコンピテンシーの1つである多職種連携能力に関して,医学教育をどう変革させていく必要があるかという観点をここに同時に盛り込むのはいかがでしょうか。
 続いて,4.の1項目め,お願いいたします。私,今まで臨床実習など,教育の場を大学病院から地域の教育病院や地域の教育診療所へもっと移していってはどうかという御提案をさせていただいてまいりましたけれども,その流れで2点,発言させていただきます。
 1点目は,臨床実習に関わる指導医の教育の業務の視覚化,見える化の議論が必要なのは,大学病院の教員だけではなく,実習に関わる全ての教育病院,教育診療所の指導医も対象に含める必要があると思います。2点目は,その医師の教育に対するインセンティブを誰が負担するかという点です。例えば医学生を月に30人引き受けている病院と全く引き受けていない病院とで限られた労働時間内に医師が診療に従事できる時間や診ることができる患者さんの数は変わってきますが,この2つの病院を同じ診療報酬体系で評価してよいのかということです。
 研究に関しても同じことが言えると思います。しかし,これらを例えば教育加算,研究加算という形で,患者さんからいただくお金で補填しようとすると,教育や研究を盛んに頑張っている医療機関に受診するほどお金がかかるということになってしまいます。そのほうが医療の質が高いと思われる方や,教育や研究にお金を払ってもいいという方もおられるかと思いますが,同じ診療を受けるのであれば,やはり安いほうに行くという方も少なくはないと思います。したがって,教育や研究に力を入れていればいるほど減収になり得るというやり方になってしまいます。こうならないために,医療機関の種別に加えて研究をしているかどうかや教育をしているかどうかの種別も加えた上での分類で診療報酬体系を立てるということが可能なのかどうかや,その補填を国がどれほど担えるかといったところが,ぜひ,私,診療報酬のシステムについて十分に勉強できておりませんので,ほかの先生方の御意見を伺わせていただきたいところです。
 続けて4.の2ポツ目です。御存じのように,先ほど申し上げたモデルコアカリキュラムの改訂で,研究者の養成,科学的探求というものがコンピテンシーの1つとして据えられています。この教育的意図は,もともと研究についての資質,能力というものが研究室の中だけで,研究室の人だけがセットで教えて,それでおしまいという従来の科目ベースの縦割りを超えて,6年間の基礎医学,臨床医学,社会医学の様々なカリキュラムの中で,学生自身がそれらに関して学んでいったことを統合していって,最終的に卒業時にアウトカムとしてこの資質,能力が獲得できるようにという観点からカリキュラム全体を考えることになります。すなわち,どの教員も一度は自分が関わるカリキュラムで,このコンピテンシーをどう扱い得るかを考えてみることがまず望まれています。したがって,リサーチに特化したプログラムの設置だけではなくて,教員に対するコアカリ及び科学的探求のコンピテンシーの周知,FDの重要性についてもここで触れてはどうかと思います。
 長くなって申し訳ありません。最後,6点目について一言,発言させてください。現状として,大学や大学病院の常勤でないと研究しにくいという仕組みがあって,それは研究者の絶滅危惧につながっているのではないかと私は思っています。地域の病院や診療所でももちろん,研究はできますが,倫理委員会を組織内に持たない場合に,どこで倫理審査を受けるか、大学の倫理委員会に学外から審査をする際の高額の申請費などのハードルがあります。大学や大学病院の常勤職員でないと申請できない科研費などの研究費も多々あります。それら,大学や大学病院に所属することの特権であり,魅力であったと今まで思いますけれども,とはいえ,プライベートや研修などの様々な理由で大学や大学病院での勤務を選べない若手から中堅の潜在的な研究の芽吹きを阻んでいるのではないかといった点を危惧しています。
 したがって,研究ができる裾野を広げることなく,大学病院だけを研究の核とするということが日本全体でのリサーチの生産性に歯止めをかけ続けるのではないかという点が懸念されます。卒前教育から大学病院,地域の病院,診療所と身分や勤務する施設が代わっても研究を始められる、シームレスに研究活動を継続できるような研究者資格制度や非常勤でも取れるような大型研究費であったり,大学や大学病院の常勤職員でなくても大学病院のラボを共有できるといった組織を超えた研究環境が整うことで,若手が生涯を通じて日本全体で研究活動を促進していくということにつながるのではないかと思います。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 銘苅委員,どうぞ。
【銘苅委員】  ありがとうございます。琉球大学の銘苅と申します。簡単に,3ページ目の2.です。やはり皆さんおっしゃっているように診療に多くの時間を割いているが,それに見合った処遇がなされていないというところが本当に全くそのとおりだと思うのですけれども,その大きな原因として,まず1つは経営状態を維持するために診療をせざるを得ないというところがあるのですが,にもかかわらず,待遇が教官というところがありますので,教官としての待遇しかもらっていないのに診療に多くの時間を割かないといけないというところがある。我々は教官としての立場で働いている。ただ,医師不足,医師の偏在というところを見ると,我々は多分,医師としてカウントされているのではないかと思うんですね。
 なので,地域において医師の数に入れられているにもかかわらず,立場は教官である。もし我々が教官としてカウントされていて,医師の数がもし地域で,我々大学教官が教官になって医師としてのカウントが減るのであれば,もっとさらに地域では医師が足りないということになるのではないかと思いましたので,その医師不足,地域偏在というところの医師のカウント,大学病院の教官はどのようにカウントされているのか。そこをぜひ確認いただきたいと思います。もし,やはり教官が医師としてカウントされており,それを減らして医師が地域において足りないというのであれば,それに見合った医師としての確保が必要なのではないかと思います。
 それから,6ページ,6ポツです。医学分野の研究力向上についてということで,大学院修了後のポストの確保など研究者としてのキャリアパスの支援が必要ではないかということ,本当に非常にそう思います。そもそも今,若い子たちは,まず専門医というところを目指して学位は要らないというふうに皆さんおっしゃいます。例えば就職をする,市中病院に就職をするといったときも,専門医で履歴書を見て就職,医師を活用するときの専門医は見ますが,学位の有無というのは,ほとんどそれで,学位を持っているから採用しようというところはほとんどないです。
 だから,学位がどれぐらいキャリアパスとして価値あるものなのかというところが,まずアウトカムの部分も大事になると思いますし,もう一つ,先ほど岡山大学の非常に魅力的なプランを出していただきましたが,やはり大学病院でもそういった魅力的な研究をさせてあげたいけれども,そもそも人がいないし,手が回らない,時間がない,診療に時間を割かれざるを得ないというところがありますので,やはりその辺りの人材不足といったところをぜひ検討していただきたいなと思います。
 その次の各学会における専門医の取得要件,一定の研究活動を求める,これも非常に大賛成でございまして,やはり学会に,専門医によっては論文を必要としないという専門医もありますので,その辺りをぜひ論文が必要だと,研究活動も求めるというところになっていただけたらなと思いますし,そのために一度大学病院に,医師の一生のうちに必ず何年かは大学病院に属する必要があるというような,今,臨床研修制度が始まって,全く大学病院に属さないという方々も増えている中で,そういったある一定期間は研究を学ぶという時間が必要であるというようなことを,文言等,検討いただけたらなと思います。
 以上です。ありがとうございます。
【永井座長】  ありがとうございます。
 先ほどの医師としての教官というのは,医師に数えられていますね。
【堀岡企画官】  はい。
【銘苅委員】  そうなんですね。分かりました。ありがとうございます。
【永井座長】  ただ,問題は医師を増やせば問題が解決するかということもあるのです。
 それと,私から3番の特定行為研修,看護師さん,先ほど釜萢委員からもお話がありましたが,まず大学病院が指定研修機関になっていただきたいのと,3年目以降の大学病院の看護師さんたちにできるだけ共通科目ぐらいは受講するように積極的に働きかけていただきたいと思います。
 以上でございますが,よろしいでしょうか。北澤委員,どうぞ。それから,その後,熊ノ郷委員,手短にお願いします。
【北澤委員】  北澤です。私は医師でないので,具体的に医師の仕事について分かっているわけではないと思うのですけれども,先ほどの宮地先生の御意見にとても賛成です。特に医学の分野は,医学博士を持っているから,あるいは大学病院に勤務しているから研究をするというようなことではないと思います。実際に一般の市中病院,あるいは診療所で働いておられる先生方も,それぞれの診療に根差した研究課題をお持ちで,実際に研究をしておられると思います。
 ですけれども,今の制度だと,大学病院に勤めていて,しかも,常勤のポストでないと大きな研究はやりにくいとか,研究費を得にくい,あるいは研究に必要ないろいろな助力が得られないということで,本当は研究マインドがあるのに,それが阻害されているというのが現状ではないでしょうか。ですので,文科省には,そういった仕組みのほうを工夫していただきたいと思います。研究力を増すというのは,医学博士を持っている人を増やすのが目的ではなくて,研究を増やすことが目的だと思うので,その辺りを検討してもらいたいと思いました。宮地先生の御意見にとても共感します。
 以上です。
【永井座長】  熊ノ郷委員,どうぞ。最後に。
【熊ノ郷委員】  私,この検討会に参加させていただいているのは,先生方と同じような思いで,日本の研究力を強化していくためには,その一丁目1番地のプラットフォームである基盤となる大学病院の機能を強化していかないといけないということと,それから,現況の中で卒前,卒後を含めた医学研究を,その中で充実させていかないと,研究力強化という意味で参加させていただいているのですけれども,その中で先ほどからの先生方の本当に貴重なコメント,そうだ,そうだと思いながら拝聴させていただいております。
 ですので,追加することはないのですけれども,1点,教員,教官の,今,現場の負担という意味で,この4番の医学教育の充実における最初の文言のところなのですけれども,一層の理解を図ることが必要ではないか。また,実習に関わる教員の実績を視覚化することを通じて,この後半の部分の文言は本当に先生方もコメントされているように私も賛成で,この視覚化,その教育の実績もちゃんと評価してあげるということも大事だと思うのですけれども,ただ,これがこの感じの,資格の視覚化になってはいけないと思っていて,実際,プレオスキーの制度が導入されて,学生さんの評価だけではなくて,評価者自体も評価されて,認定制度みたいな形が出てきて,しかも,それもせっかく評価者で,いろいろなところで講習を受けても,その評価が厳しいという状況になっているということ。
 それから,国際認証が始まっていて,ラウンドが最初,セカンドラウンドにこれからなっていくときに,そこも厳しい厳しい評価になっていって,その教育の現場自体が本当に首締め状態というか,自分で自分の首を締めているような標準化みたいな路線になってしまっているので,だから,この最初のところの「一層の理解を図ることが必要ではないか」というところの前半の文言が独り歩きしてしまって,また,その教員に資格とか,認定なのか,その範囲を狭めてしまうようなことにならないように,また,地域の実習生を受け入れている先生方にとっても,それを受け入れるためにはまた資格が必要だというふうな,この資格が,資格化にならないようにということだけ,この最初の文言だけ独り歩きしないようにお願いしたいなと思っています。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 時間の都合で次に参りたいと思います。議題の2,大学病院改革ガイドライン(仮称)について,事務局から説明をお願いします。
【堀岡企画官】  様々な御意見,ありがとうございます。意見を通じて次回,御議論の整理に努めてまいりたいと思います。
 資料2について御説明させていただければと思います。資料2,大学病院改革ガイドラインというものをお示しさせていただいております。最初に,その幾つか,結構,大学病院ごとに教育,研究,診療,どういうような,今,状況にあるのかというもの,今回,かなり文科省として初めてですけれども,整理をしてお示ししております。また,最後のほうに,地域の医療の需要とか,そういったものもかなり異なる部分があるのだということを御紹介して議論につなげたいと思っております。
 最初に2ページを御覧ください。最初,これ,国立大学の教育に関しての指標でございます。青が初期研修医,オレンジが後期研修医,グレーが専門医・認定医の資格新規取得者数でございますけれども,御覧のとおり,多分,先生方の感覚と全く一緒だと思いますけれども,青のその初期研修医というものは各大学,苦戦しております。一方で,オレンジの専門研修コースに関しては,実は大学,かなり多くなっておりまして,国立大学だけでも,これ,全部で3,600人,私立大学を入れると恐らく5,000人,6,000人という形が,実は3年目,大学に戻ってきているという状況にはございます。例えば初期研修医が最も多いのは東京大学で103人でございますけれども,専門研修3年目では大阪大学238人というのが最も多い結果となっております。
 なお,その専門研修3年目以降で6,000人近く,国立,私立合わせると戻ってきておりますけれども,大学院に今入っているのは前回の資料でお示ししたとおり3,000人以下ぐらいでございますので,半分以下ぐらいしか大学院に入学はしていないという状況でございます。
 次の3ページでございますけれども,これ,教育のほかの面でございますが,ほかの職種でございます。例えば,これはオレンジがナースとか薬剤師の研修,ブルーがナースとか薬剤師の実習の受入れ人数でございますけれども,例えば名古屋大学は研修をすごい人数受け入れていて,大阪大学は実習をすごく受け入れているといった地域ごとの特色がかなりございます。
 次のスライドでございます。研究でございますけれども,研究の1つ目の指標として,今回,治験を御紹介しておりますけれども,青が企業治験,オレンジが医師主導治験でございますけれども,例えば北大,大阪大学,東北大学といったところ,企業治験,非常に多くの治験を受けております。北大に関しては,医師主導治験も全国1位でございます。これ,医師の数で割り返しているわけではございませんので,そういう意味ではかなりアクティビティが大学によって異なるところが見られます。
 次のスライドでございますけれども,次は,これ,論文数とインパクトファクターのデータでございますけれども,例えば京都大学は,これ,オレンジが研究論文数,青がインパクトファクターでございますけれども,論文数,かなり少ないですけれども,インパクトファクターはかなり高い。東京大学は論文数1位でございまして,インパクトファクターも1位でございます。例えば千葉大学なども3位でございますけれども,かなりインパクトファクターが高く,かなり大学によって特色がある分野でございます。
 次のスライドですけれども,診療についてもかなり大学ごとにばらばらなデータでございまして,オレンジが外来,ブルーが入院患者でございますけれども,九州大学が外来患者では最も多く,約80万人近く外来患者を受け入れております。入院患者も九州大学が1位ということでございます。
 次のスライドですけれども,例えば手術数でございますが,手術数もすごい差がございます。日本で一番多いのは大阪大学,手術数は東京大学,名古屋大学,九州大学辺りが多くて24室という形で,手術室についても福井大学の2倍以上ありますので,ほかの東京大学など,かなり差がありますけれども,手術室だけではなくて手術件数もかなりの差が出ております。
 次のスライド,一方で,外来,入院単価はあまり大きな差はなくて,外来については約2万円,入院に関してはちょっとばらつきがありますけれども,8万円から10万円というようなところでございます。
 次のスライドからが公立私立大学のデータでございますけれども,公立大学,国立と同じようなことでございますが,全体的にあまり入院患者,外来患者,そんなに多いわけではありません。私立大学はかなり大学に差がありまして,藤田医科大学,順天堂大学がかなり多目というような結果となっております。
 次のスライド,診療の手術件数でございますけれども,手術件数については関西医大が一番多くて,次が順天堂というような形になっております。
 一方で,診療の3でございますけれども,国立と私立で少し差があるとすると,外来単価,入院単価,かなり国立よりもばらつきが大きいです。特に例えば慶應大学,極めてどちらも高くて単価が非常に高いといったところでございます。この辺り先生方の感覚と合っているかどうかなどもありますけれども,このような客観的なデータとしては分析となっております。
 一方で,また12ページ以降に医療の需要についてかなり地域ごとの差をお示ししてあります。これは厚生労働省の資料でございますけれども,例えば入院患者はまだしばらく全体として急性期,慢性期医療も含めると微増する。日本全体だと微増するということでございますけれども,地域ごとだとすごい差がございます。例えばこれ,右側の日本地図で見ていただくと,赤い部分はもう既に2015年以前に医療需要が最大になってしまっていて,今すごい勢いで医療需要が減少している地域でございます。ピンクももう既に減少していて,黄色も来年にもピークを迎えるというところでございますので,東京や大都市圏と地方圏と大きく医療需要が異なってくる。さらに大きくこの差は開いてくるというのが,これでも分かるところだと思います。2035年までにピークを迎えて減少に向かうのは,260で,ほぼ4分の3ぐらいの医療圏でございます。
 次のスライド,外来はかなりあれでございまして,もう既に3分の2以上の医療圏でピークを迎えております。2015年以前に最大となっているのが日本地図のほとんどの赤い部分でございますので,本当のごく一部,東京など以外は,もう既にすごい勢いで医療需要が減少しているというところでございます。また,地域ごとだけでもなく,両方の側面で見ないといけないわけでございますが,データが難しかったので一部しか取っていませんが,特に大学病院に関係するところは,普通は急性期医療だと思いますので,消化器がん,また,右は虚血性心疾患のデータだけ取っておりますけれども,例えば消化器がんだと2025年から65歳以上人口が減少する医療圏だと,青が入院患者,赤が手術件数ということで,どちらも急性期医療については医療需要全体よりさらに大きく減少するということがこれでも示唆されると考えております。
 次のスライド,15ページでございますけれども,それを踏まえて大学病院改革ガイドラインというものを作成してはどうかということで提案させていただいております。趣旨・目的でございますけれども,大学病院全体では増収減益となってしまっていて,教育・研究時間の減少著しいこととなっております。4つ目のポツでございますけれども,教育・研究,医師の派遣及び診療の大学病院の役割・機能を再整理して,働き方改革を推進することが必要ではないかと。5つ目で,その取組といたしまして,自ら設置する大学病院,もちろん大学病院によって非常に役割が違いますので,置かれている実情を踏まえて分析をしていただいて,再定義をしていただく。それで,役割・機能を十分発揮するためにどのような運営体制が必要なのかということを考えていただくようなプランを策定するということはどうかというように考えております。
 プランのイメージでございますけれども,4つ大きくございまして,役割・機能の再定義,例えば医学部の教育・研究に必要な附属施設として役割・機能,どうなのか。例えば2つ目でございますけれども,教育・研究機能の充実では,教育・研究を支援する人的支援策として,どのようなことが考えられるのか。3つ目でございますけれども,例えば連携の強化による医療ニーズ等を踏まえた診療の推進では,4つ目の医師少数地域を含む地域医療機関に対する医師派遣をどういうふうに大学全体として考えていくのか。また,4つ目として,先ほど少し共同調達など話題になっておりますけれども,経営の効率化などどのように行っていくのかということを考えていただくこととしてはどうかと考えております。
 次のスライドに,まだ,これ,大変恐縮ですが,骨子なので,目次レベルで恐縮でございますけれども,少し字が多くて恐縮ですが,このような目次で,もちろんこれだけ書かれても,何を書けばいいのかよく分からないと思いますので,次回以降,もう少し細かく本文なども書かせていただいた上で,先生方に御議論いただこうと思いますけれども,現時点で骨子でございますけれども,全体像,また,考え方について御意見等いただければ幸いでございます。よろしくお願いいたします。
【永井座長】  ありがとうございます。
 では,この議題2について,この後,一般社団法人全国医学部長病院長会議会長の横手委員から,また,日本医療法人協会副会長,太田圭洋様,また,一般社団法人日本病院会会長,相澤孝夫様から御意見を伺いたいと思います。最初に横手委員,お願いいたします。発表は10分以内でお願いいたします。
【横手委員】  スライドを用いた御発表をさせていただくということでよろしかったでしょうか。
【永井座長】  はい。お願いします。
【横手委員】  それでは,資料の御供覧,これは事務局のほうでお願いできますでしょうか。よろしくお願いいたします。
 千葉大学,横手でございます。大学病院における医師の働き方改革に関する調査研究報告の概要をお示しするようにと申しつかっておりまして,発表させていただきます。
 次のスライド,お願いいたします。いよいよ来年の4月から医師の時間外労働の上限規制が始まる。一般社会から遅れること5年ということでございますが,一般の360時間,720時間とは違って960時間のA水準,それから,1,860時間以内のB,連携B水準,そしてC1,C2水準があるわけでございますけれども,大学病院では先ほど来お話のありますように診療,研究,教育,それから,地域の医療というのを担っております。大学病院の実情,それから,医師個人へのアンケート等を取った結果の概要をお示ししたいと思います。
 次のスライド,お願いいたします。これは昨年の夏及び暮れに追加ということを全国81の国公私立大学で行ったものです。回答率が67.3%ということで,3分の2の方々から回答をいただき,男性,女性の比率は,このようになっておりますし,30代,40代,50代,それから,教授,准教授,講師,助教,それから,もっと若い方たち,満遍なく聞いた形にはなっております。
 次のスライド,お願いいたします。今回のアンケートでは,医師の労働時間の短縮,上限規制が教育・研究に与える影響が大きいという結果が80%以上の大学病院から回答を得ています。また,研究力の低下が深刻視される中,この時間外,あるいは休日労働時間の上限規制に伴い,さらに研究に打撃が加わるということが非常に懸念されまして,日本の今後に影響を及ぼしかねない。そうすると,これまで担ってきた業務というものの効率化も大事ですけれども,時間外労働が規制される中,やはり医師,あるいはメディカルスタッフの増員が不可欠だろうと思いますし,ICT化,特にペーパーレス化も含めて必要だろうと思います。
 次のスライド,お願いいたします。人的支援について,若手医師の大学病院離れ,大学の魅力がなくなる,そしていなくなる。そして,診療,研究,教育を担えなくなる。地域医療も担えなくなるということが懸念され,最後にお示ししますが,医師の給与というものも大学病院において引き上げることが必要ではないかということ。そして,やはり財源という意味では,医師,あるいはメディカルスタッフの雇用というところにもっと投資が必要ではないか。そして,特定看護師も含めた高度な看護師の補充,それから,医師事務作業補助者の導入ということも必要でしょうし,ICT化についてはペーパーレス化,医療DXということが叫ばれておりますけれども,なかなかまだ現状に追いついていない。
 そして,臨床研究も,かつてに比べて非常に手間がかかり,作業が多い。EDCシステム,臨床試験支援のシステムなどの導入も必要ですし,また,バーチャルリアリティを活用する,先ほどもお話のありましたような実習,あるいは研究の機器というものも必要だろうと。さらに,大学は経営の厳しさというところから,なかなか機器の更新が進まない。大学病院は立派な設備を使って高度な医療をしているだろうと思いきや,町の病院,診療所などに比べても古い機器を使わざるを得ないというところもあり,その辺りの更新にも懸念があります。
 次のスライド,お願いいたします。これは非常に意味合いが大きいと思うのでありますけれども,左側の図は,それぞれの大学病院の医師がどのような業務に時間を割いているかというところでございます。かつては,研究・教育,自由自在にできた時代がありました。今は病院の実績収入を上げなければいけないということで帯グラフの黄緑色の部分,ほとんどの職種は診療にその時間の大半を割いています。まだ教授,准教授は四,五十%でありますが,助教は70%が平均すると診療,教育に10%弱,研究に10%というのが全国の平均の値でございます。
 右のスライドを御覧いただきますと,最も実績を上げ,そして今後に活躍が期待される助教では,何と15%の人が1週間に1時間も研究ができていない。ゼロ時間と回答しています。そして、49.7%が5時間以内の研究時間ということで,その方たちのキャリアもさることながら,今後日本の研究力がどうなっていくのか。これは働き方改革のまだ前のデータでございますので,来年以降,ここに更なる打撃が加わるのではないかということ。何とか手を打たないと日本の研究は立ち行かなくなるのではないかということが懸念されるわけです。
 次のスライド,お願いいたします。そして,左は労働時間短縮により研究,教育にどういう影響が与えられると思うか。授業の,教育の質が落ちるですとか,時間が,個別指導の確保ができなくなる。そして,臨床実習の十分な時間が確保できず質が落ちる。研究の時間が減り,研究成果が落ちるということをもう80%,90%の方たちが言っています。そして,教育も大事ではありますし,どんどん質を高め,多くの手間を要するようになっています。しかし,それをサポートする人材というのが全くいないと答えた大学が42とか46大学,右の図であります。研究支援スタッフも多く抱えている大学もあるものの,ほとんどはゼロ名というところですね。昔ながら,医師が何もかも全てをやっているということ。そして、診療,研究,教育と言いながらも,大半の時間診療に割かざるを得ず,残りの時間を目一杯,この新しい基準で求められる質の高い教育に与えるというと,人間は,できることが限られていますし,1日24時間しかありませんので,もうどう考えても無理があることは自明であるのではないかと思います。
 次のスライドをお願いいたします。そして,医師業務のタスク・シフト/シェアです。診療録の代行入力,各種の記載など,多くの大学で実施されているものもありますけれども,まだ入院時のオリエンテーションをタスク・シフトできていない。院内での患者移送や誘導,タスク・シフトなどもできていない。道半ばなものも多々ございます。そして,右が特定行為研修の修了者の配置状況でありますけれども,多くの,82大学中73大学でこれを実施しているものの,まだ人数は十分でなく,術中麻酔などは32大学で行われていますが,救急,外科基本領域などはまだまだこれからで,これらが充実していくのにはあと数年かかるだろうと思われるわけです。
 次のスライドをお願いいたします。そして,この設備です。まず左側のグラフ,教育用教材開発の設備です。十分であると答えたのは半数以下です。不十分,半数ですね。そして臨床研修支援のための設備も「十分である」と「不十分」が半々。そして右側です。機材,MRI,CT,手術室の設備,あるいはもっと内視鏡に至るまで,こういうものの更新が進まないため,いわゆる価値残存率が年々低下し,下げ止まっている。すなわち,もう5分の4ぐらいの機器が古い。本来,5年で替えるべきところを10年使っている。いつ壊れてもおかしくないというようなギリギリの状態で行われている大学病院が日本中に少なくないという現状がございます。そこにまでお金を回せないということですね。
 次のスライド,お願いいたします。労働時間の管理,勤務時間の管理,これもコロナ禍の影響で遅れましたけれども,みんな頑張って追いつきつつあるところです。既に勤怠管理システムを企業のように導入しているところが過半数,53%,そして導入を予定であるというところが3分の1,これは昨年の調査でありますので,今はもっと進んでいると思いますが,こういうものの導入にもお金がかかる。これまでの診療報酬では,そういうことを考えられていなかったわけであります。
 次のスライド,お願いいたします。そして,特例水準です。左側は申請予定の特例水準,大学はB水準,連携B水準を40%から85%導入しようとしていますから,地域医療を担うという強い意思を持っているわけであります。これからも地域医療を支えていきたいと思っているわけですね。各右側は医師ごとの水準,申請予定でありますけれども,半数がA水準,960時間に収まるであろう。一方,3分の1以上,連携B水準,B水準ということで,これらの医師は1,862時間以内で行いますが,10年後には,このB,連携Bはなくなる予定ですから,今後どうやって短縮していくか。本来,裁量労働制をとって自由に自分で時間を決め,研究もできるということが望ましいと考えられましたが,「裁量」が必要ですから当直,あるいは外来日が決められているというような医師には適用されませんので,主として教授や准教授にとどまり,全体では20%弱のみが裁量労働制というふうになっています。
 次のスライドをお願いいたします。そして,職位ごとの労働時間制,令和4年11月に調べたときには,教授,准教授,講師,こういうふうになっています。一般労働制,青が比較的多いのでありますけれども,本来は変形労働制,オレンジ色というのがこのぐらいの比率,それから,専門業務型裁量労働制が40%という見込みでありました。実際,ふたを開けてみると,令和6年4月見込みでは,一般労働制が減少し,変形労働制が増加の見込みです。そして,当初,活用が期待されて,専門業務型裁量労働制はすでに述べましたように助教,講師などを中心に限定的な運用になっている。この辺り,大学病院の医師により適した労働制というのが今後あり得ないのかどうかというのは,引き続き検討の余地があるのではないでしょうか?
 次のスライドをお願いいたします。これが用意した最後のスライドなのですけれども,本日もすでにお話がありました大学病院における医師の給与の問題でございます。大学病院の医師は教員,すなわち教職扱いなんですね。文学部や教育学部の先生方と同じです。つまり、診療行為に対する報酬が支払われていないのです。ですから,開業医さんはもとより,国立病院機構の医師よりも給与が低いです。大体同じような年齢で教授と部長,准教授と医長と比べると400万から700万の差があります。この低い給与分を地域へ外勤,アルバイトに出かけることで稼いで穴埋めし,その医師によって地域医療が担われているという複雑かつ微妙なバランスのもとに日本の医療は成り立ってきたということであります。そのような状況でも、研究や高難度医療に自由に携わることが出来る魅力から、これまでは大学に人が集まっていましたが、その「魅力」が失われてしまったら、どうなるでしょう。何だ,そんな希望のない大学に若手は行くのだろうかということで,大学離れが進んだら,診療,教育,研究は回らなくなり,また,地域医療も崩壊しかねないということであります。ここ抜本的なにメスを入れないと日本の医療や医学研究は成り立たないのではないか。
 今日は資料を出しておりませんが,国立大学病院は全国9,500の病院にアルバイトの医師を派遣しています。私立大学もそれに準じています。そういう医療がこれらの人たちによって担われているということを考えると,大学病院の医師の待遇改善は不可欠と思います。かつては,給料は少なくても自由なことができる。今や診療でがんじがらめになり、好きな研究も自由にすることができない。そして、給料も安いといったら,賢い若者は残らないというのが自然な流れになってしまう。そこに何とか手を打たないと,これから10年,20年先はもたないのではないかということを大学病院の立場から発表させていただきました。以上でございます。ありがとうございました。
【永井座長】  ありがとうございます。
 続いて,一般社団法人日本医療法人協会副会長,太田圭洋様からお願いいたします。
【太田氏】  民間病院の集まりである日本医療法人協会の副会長の太田です。資料をよろしくお願いします。地域の民間病院の立場から,今後の大学病院に期待することを述べさせていただければと思います。
 おめくりください。私が運営する名古屋記念病院です。400床規模の地域の2次救急を支える急性期病院です。臨床研修指定病院,地域医療支援病院として名古屋南東部の医療を支えております。新型コロナ対応では,民間病院ではありますが,流行初期の第一波から帰国者接触者外来,また,コロナ患者の入院を受け入れております。
 次,お願いいたします。民間病院からのお話として,日本の医療提供の現状に関して少し述べさせていただきたいと思います。病院は設立母体により公立,公的,民間などあります。また,大学病院も国立,公立,私立など様々な病院が地域で医療を提供しているかと思います。民間病院は公的な補助もほとんどない中,診療報酬に主に支えられ,地域のニーズに応えております。民間病院は公的と比較し,規模が小さな病院が多いですが数は多く,日本の医療のかなりの部分を支えているという現状があります。全国では病院数の8割,病床数の7割,救急搬送受入件数の6割は民間医療機関が対応しており,特に大都市を要する都道府県において民間病院が地域医療を支えている割合が高い状況にあります。そのため,大学病院の今後を考える上においては,地域を支えている市中の病院,民間病院への影響も考え,御検討いただければと思っております。
 次,お願いいたします。これが名古屋東部地区の地図になります。愛知県には大学病院が4病院ありますが,私ども名古屋記念病院は,それらの病院に囲まれた地域に存在します。一番近い3次救急の病院は,赤十字社の名古屋第二病院ですが,名古屋市立大学病院,愛知医大病院,藤田医大病院ともほぼ同距離にあり,その間に存在する名古屋南東部の救急医療を支えています。年間救急搬送受入れは6,000台を超えております。我々としては,大学病院を含む,高次機能病院と協力の上,役割分担をして今後の地域医療を守っていきたいと思っております。
 次,お願いします。名古屋記念病院は,これら近隣の大学医局からほぼ全ての診療科で医師の派遣を受けております。1つの大学に偏っておらず,診療科により大学医局が異なります。また,基幹型の臨床研修病院ですが,大学病院と協力して初期研修医の研修も実施しております。研修医の多くは,それぞれの大学医局に入局し,移動していくことが多いです。また,医学部学生の教育実習や看護学生の実習もほとんどボランティアに近いですが,研修医募集の効果も考え,積極的に協力しております。また,様々な診療科で大学が行う臨床研究に参加しております。診療においては,当院の診療機能はやはり限られますので,例えばコロナにおけるエクモ症例など高度な医療が必要な症例や希少な症例に関して,大学病院と機能分化して対応しております。
 次のスライドです。今後の都市部の医療需要の変化に関してのスライドです。今後,都市部においては,高齢者,特に75歳以上の高齢者が急増することが予想されています。それも単身世帯や老老の2人世帯であり,これらの高齢者をいかに支えていくかが地域の課題となっております。急激に増加することが予想される症例は,高齢者に特有の肺炎や心不全,脳血管疾患,大腿骨頸部骨折などが想定されます。当院でも救急搬送症例の患者の高齢化が進行しており,80歳以上の患者が増加しておりますが,今後,それが加速すると予測しています。
 また,地方部と比較すれば,なだらかではありますが,今後,生産年齢人口の減少が予想されており,働き方改革の進展により医療スタッフの確保はますます困難になると思っております。そのため,地域において効率的な医療提供体制を構築していくことが求められており,地域の病院が会議を行い,地域医療構想策定,各医療機関の役割分担に関する話し合いが行われています。地域における医療体制を維持していくためには,今後の地域の医療需要の変化や,医療従事者の確保を考え,大学病院も含め,役割分担を行い,効率的な医療提供体制を考えていくことが重要だと思っております。
 次,お願いします。しかし,大学病院も厳しく経営を考えなければいけない状況に追い込まれ,余裕がなくなっていると聞いています。大学病院は,その置かれた状況の厳しさから,地域における役割分担の議論になかなか積極的に関与していただけていないように感じています。私は,名古屋大学の出身ですが,名大病院を見ていても平成16年の国立大学病院の法人化以降,経営を成り立たせることが最優先され,前回,検討会で資料が出されておりましたが,新規患者数の増加,病床稼働率の維持に注力しなければ生きていけない状況と伺っております。大学病院は経営を維持するため,年々収益を伸ばしておりますが,その分,様々なコストも増加し,利益は減少傾向にあるとのことです。高度な医療や最先端の医療だけでは経営は成り立たず,医療収入を上げるため,市中の病院で対応可能な症例も積極的に大学病院が確保しようとする動きさえあります。
 もちろん,地方部においては,地域の医療提供体制維持のため,症例集約化の中心に大学病院がならざるを得ない地域もあるかと思いますが,都市部においては,この動きは地域医療の効率を考えた場合,疑問に思います。また,大学病院がその分院を積極的に拡大しようという動きも出てきています。これも市中の病院との役割分担を考えた際に,それが本当に必要か疑問に思っています。大学の先生方は医師の働き方改革への対応でも,地域医療確保の要請にも応えなければならず,様々悩んでおられます。
 医師の働き方改革では,市中病院から見て医師の引き上げにつながらないかが大きな懸念なのですが,医師を大学病院が引き上げる一番の理由は,大学病院の診療を維持するためです。医師の働き方改革を考えた場合,本当にその診療が,大学病院が行う必要があるのか,一度,大学病院の使命,求められる役割に立ち戻り考える必要があるのではないかと思っています。医局員の診療の負荷は明らかに増加しており,大学の現場の医師は大学病院に期待される高度な医療,希少な疾患や様々な研究に注力したいと希望しているものの,現状は彼らの希望とは大きな乖離があるように思います。
 最後のスライドです。我々,市中の民間病院が大学病院に期待している一番の機能は,やはり地域医療の最後のとりでとして高度な医療や希少難病など,我々市中の病院が対応できない医療を支えていただきたいということです。また,最先端の医療や研究などを通じて未来の我が国の医療をよりよくするため御尽力いただきたいと思っております。さらに,今後の我が国の医療需要の変化に応えられる医師,看護師,コメディカルなど医療者の教育を我々市中病院と協力して行っていただきたいと思っています。しかし,前回の資料にも出ておりましたが,大学病院の教官は日常の診療に追われ,研究,教育の時間が十分確保できない状況にあることに危惧を覚えます。
 また,医学研究のレベル,量とも他国と比較して徐々に弱くなってきているというデータを前回検討会資料で見せていただき,残念に思っています。今の状態が今後も続いていった場合,今後,大学病院が地域で急増する高齢患者対応に追われ,大学の現場がさらに疲弊してしまうのではないかと危惧します。大学病院にも都市部,地方部,国立,公立,私立などあり,一律に言うことは難しいとは思いますが,やはり大学病院が本来あるべき機能を担うことができるよう,大学病院の置かれている状況を改善していただきたいと思います。大学病院が求められる使命・役割を果たすためには,また,地域で求められる症例の対応に特化することができるよう,診療の規模を縮小しても経営が成り立つ体制や制度の確立が必要だと思います。大学病院は地域医療のセーフティーネットであり,皆が支えるべきものだと思います。大学病院の経営には,それのための配慮が必要で,補助金による制度,診療報酬での対応など方法は様々あるかと思いますが,大学病院があるべき姿に向かうことができるための方策をぜひ御検討いただきたいと思います。
 現在,日本の医療提供体制の改革では,機能分化と連携がキーワードになっています。地域医療構想という全国の病院の役割を再検討し,将来の生産年齢人口が減少する局面でも地域の医療に対応できるよう,全国の医療関係者が現在話し合いを行っていますが,大学病院に市中病院で対応すべき症例まで集約しようと大学病院が躍起になっている状況は,将来の地域医療のためにもよくないと思います。患者は,その患者に適した医療機関で対応すべきです。大学病院は市中の病院との機能分化・連携をさらに強化し,医学教育においても市中病院とさらなる連携を図ることで,より効率的な大学病院の運営を考えていただければと思っております。
 以上です。ありがとうございました。
【永井座長】  ありがとうございます。
 もう一方,日本病院会会長の相澤孝夫先生,お願いいたします。
【相澤氏】  ただいま御紹介いただきました日本病院会会長の相澤です。どうぞよろしくお願いいたします。日本病院会は,日本各地に様々な病院を会員として抱えています。特に今,大きな問題になっているのは,地方の人口が減少していき,人口密度が薄くなってきている。そういう地域でどうしていくのか。特に大学病院の在り方をどうしていくのかということが話題になっていますので,少しお話をさせていただきたいと思います。
 人口密度が薄くなっているということは,当然,その地域では働き手世代の人口が減少するということに伴う人口の減少が起こり,人口構造は大きく変わってきています。その結果として患者数,特に入院患者さんの数が大きく変わるとともに,その入院してくる患者さんの医療もかなり今激変しつつあるというのが現状であるかと思います。したがいまして,そういう中でどういうふうにしていくのかということが大きな話題になっているということです。
 このスライドの右のほうの人口密度の高いところから,左側の人口密度の低いほうに行ったときは,一体どうなるのか。右側のほうは,それなりの数の大学病院があっても成り立つでしょうし,それなりの一病院での診療,研究,教育の全てを行うことができるかと思いますが,左側のほうに移動していったときに,果たしてこの人口で,その大学にとって十分な診療,研究,教育の全てが成り立つのかどうかということは,甚だしく疑問を感じざるを得ないというところでございます。そうしますと,診療,研究,教育の全てが十分に成り立つ人口規模とはどうなのかということを今後,我が国では考えていかなければならないのではないかなと思います。
 そうなった地域においては,大学病院単独では成り立つとは思えず,そこの地域にある一般病院と診療,あるいは研究等をやはり連携して行っていく。連携という,その緩やかなものよりは,むしろ,協働して行っていくという仕組みも講ずるということが今後必要になってくるのではないかと思います。その中で,今,その大学病院は,その一般病院の診療科が足りないと,その診療科ごとに医師を派遣するという機能で地域の医療を支えようとしてくださっていまして,これはありがたいことなのですが,果たしてこの人口減少が起こっている地方においては,それで十分に機能するかということを考えたときに,多分,医師の派遣機能だけでは十分に機能しない。大学病院の一部の機能を一般病院に移設する,あるいはそこにお願いするということによって,共同体としてやはり診療,研究,教育等を担っていくということが必要になってくるのではないかと思います。そういう意味では,診療科ごとに医師を派遣していくという機能だけでは,今後,不十分になってくる。抜本的にありようを考えていかなければいけないだろうと思います。
 さらに,人口密度がどんどん薄くなれば,今度,大学病院がカバーする圏域を広げざるを得なくなってきます。そうしますと,1県1大学という構想はなかなか難しい地域が生じてくるということは,もう目の前に来ているのだろうと思います。こちらのこの地域だけでは十分な診療,研究,教育ができないとすると,圏域を広げることによって,そこの圏域の人口を増やし,その中でどうやっていくかを考えなければいけないとするならば,こちらのほうにある,その大学病院が,あるいはこちらのほうの大学病院と共同,連携をしなければいけないだろうと思います。そうなったときに,もう一つ考えなければいけないのは,今,医療に対する患者,あるいは社会のニーズは大きく変わってきているということです。単に急性期医療を行って治療をするだけではなく,健康の増進とか,あるいは疾病の予防とか,あるいは医療,介護の連携とか,あるいは在宅医療とか,あるいはその地域で暮らし続けることのできる地域づくりはどうするのかというふうに多様化しています。
 では,それも全て大学の病院で担っていくのか。これはもう無理と私は言わざるを得ないと思いますし,先ほどの話のように,それが全て大学病院で行うべきこととは思いません。そうしますと,その一部を一般病院に移譲し,そして,その一般病院と病院が一緒に働いて,教育,研究,診療等を行っていくという,そういう連携法人のようなものをつくっていくということが必要ではないかと思います。今行われているのは,大学病院のミニチュア病院をつくっていく,そこに大学病院から専門の医師を診療科ごとに派遣するということで,その地域医療を守っているというような言い方をされますが,果たして,それは本当に守っていることになるのだろうかということの疑念を感じざるを得ないということになるかと思います。
 人口減少が続く我が国では,大学病院が従来の医療を行う,大学病院の医療圏内では医療需要が減少し,診療,研究,教育に対する症例を確保することすら難しくなってきているのではないかと思います。そうしますと,その十分な症例を確保するという,その圏域をやはり拡大しなければいけない。拡大をしていくときに,場合によっては,そこにある大学病院と大学病院が統合をしていくということ,あるいはその役割分担をしながら協働していくということ。そして,先ほど申しましたように,場合によっては大学病院と一般病院が協働していくという,そういう仕組みを今後考えていかなければいけないだろうと思います。そうすることによって医師の働き方改革に,私は大きなインパクトを与えていくと思います。これまでどおりのやり方でもって,その医師を増やそうとしていくことは,もう限界に来ているのではないかと私は思います。
 したがいまして,この大学病院の在り方,一般病院との役割分担,あるいは連携をどうするのか。そして,この人口が減少していく,その地域の大学病院にとっては,お隣の県との大学病院の統合,あるいは協働というものを考えていかないと,今後,その大学病院1つでは診療,それから,研究,そして教育というものが担っていくことができなくなるというような危機感を感じております。ぜひこの大変な時期を迎える少し手前だからこそ,今からどういう仕組みを講じていくのかという議論をぜひ進めていっていただきたいということをお願いしたいというのが私の主張したいことであります。どうもありがとうございました。
【永井座長】  ありがとうございます。
 それでは,残った時間,皆様から御意見を伺いたいと思います。いかがでしょうか。今村委員。
【今村委員】  今村,幾つか御意見を申し上げます。
【永井座長】  手短にお願いします。
【今村委員】  はい。まず,データの,今回,12ページから医療構想のデータを示していただきましたけれども,この資料を作るのに私もお手伝いさせていただいております。ただ,これ,地域の医療格差が非常に大きいということをぜひ改めて申し上げたいと思います。
 まず,年齢構成そのものが違っていますので,ピークを迎える時期というのは都道府県によって全然違います。多くの大学病院はまだ増える地域にいて,一部の大学病院はこれから減っていく地域が既にいるというような状況で,地域によって全然違います。その上で,人口構成だけではなくて,医療の内容も随分違います。実際に骨折で見ても都道府県別には物すごく格差があって,事故の率が高い県があるとかというような話ではなく,多分,医療の問題だと思います。そのような中で,この地域に格差があるので,全国一律に同じようなことをすることはできないということが地域医療構想で,各地域で,調整会議で相談して役割分担を決めてくれという話になっているというような背景があると思います。
 それと,今,働き方改革で,大学病院に,これ以上,お医者さんに働くなということを言うと,教育,研究も破綻するかもしれませんし,地域医療も破綻するかもしれない。各大学に自由に方針を決めてくれというガイドラインは賛成なのですが,どんな支援を周りからしてもらえるかということが分からないと,それぞれの大学も作れないと思うんですね。教育,研究と教育,研究に関わる臨床的なものというのはやっぱり文科省からどんな支援ができるかということを考えていただくべきですし,特定機能病院的な医療に関することは,診療報酬の中でちゃんと考えていただくというようなことが必要だと思います。私,働き方改革,うちの病院でやっている中で,当直をとれない,夜勤に代わる問題が一番大きくて,そこだけで考えても医師の夜勤の分で,1ライン夜勤にするとやっぱり3人は必要になってきます。そういったことを診療報酬で,例えば医師夜勤加算のようなものを作るとか考えていただきたいと思っています。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございました。
 田中委員,どうぞ。
【田中(雄)委員】  私,大学を運営する立場でもあるので,その立場から申し上げますと,大学病院というのは,どこの大学においても,特に私学などでは大学の予算の90%ぐらいを占めているところもありますし,医科歯科大学でも60%,総合大学でも30%から40%は占めるんですね。そうすると,大学病院の赤字を埋めるというのは,大学全体から見ると大変なことで,ちょっとした赤字が出ても,大学病院ってもともと規模が大きいので,ちょっとした振れが大学にとっては非常に大きな衝撃になるということで,逆に病院長には常に経営的な圧力が大学からかかるという状況にあると思います。したがって,さっき横手委員が言われたように,例えば機器更新を抑えてでも黒字にしていくというか,見かけ上の赤字を減らしていくという状況があって,これは危機的状況にあることは全くそのとおりだと思います。
 私,お伺いしたいのは,相澤先生とか太田先生にお伺いしたいのですけれども,大学病院の役割と一般地域中核病院,あるいは一般病院の役割を分担すべきだ。それから,大学病院は人口減少社会においては,今の在り方では無理だということは全くそのとおりで,私,共感するのですけれども,ただ,一般病院も例えば高度医療をやろうと,例えばアブレーションをやるとか,ダヴィンチを買うとか,そういう動きも結構あるように思うんですね。これは別に病院を責めているわけではなくて,そうしないと大学から医師の派遣がないとか,そういう問題もあってなかなか,絵に描くことはできます。大学病院と一般病院の役割分担をですね。ただ,現実に医師派遣という機能を大学病院が担っているときに,専門的なことを勉強できないところには行きたがらないという現実もあります。ここの解決をどう考えたらいいかというのを相澤先生や太田先生に病院の立場でお伺いしたいのですけれども。
【永井座長】  相澤先生,いかがでしょうか。
【相澤氏】  1つは,恐らくその機器を見た場合に大学病院だけで全てをやっていくというのは難しいので,大学病院がそういう専門医を派遣しなければいけない,あるいは専門医を派遣することによって大学病院とコラボをしていく病院というのは,私は必要になるのだろうと思いますし,そこはやっぱり大学病院とその病院とが一緒になって育てていくということが必要だと思います。
 ただ,全ての病院が,全ての,ある程度,その地域を支えていく,例えばその地域医療支援病院ですとか,あるいはある程度高度な医療をやっている病院全てがそういう具合にならなければいけないかというと,私は少し違うのではないかという具合に思っていまして,そこもある程度,その選択をしていくというのは,1つ大学病院の医療,あるいはその地域の病院をどうしていくのかというところに必要で,私は,大学病院は,そういう病院を積極的に育てていくということも必要なのではないのかなと思います。
 一方で,では,そうではない病院に大学病院から派遣をしていくのかということになったときに,むしろ,それは先ほど少しお話ししたような,一般病院と連携する,そこのところから,今度は逆にそういう病院以外のところに派遣をしていくという仕組みを作ることによって,一方的に大学病院からだけどんどん医師を派遣していく,そこの医療を担っていくということを少しやめるというか,制限をするということをある程度していかないと,このままでは,多分,大学病院も,その地域で頑張ろうとしている高度の医療を進めていこうという一般病院も恐らく共倒れになっていく可能性が,私はすごく強いなと感じております。
 以上でお答えになったでしょうか。
【永井座長】  よろしいでしょうか。
【田中(雄)委員】  ありがとうございました。カスケードを作っていくということですね。
【相澤氏】  そうです。そうです。おっしゃるとおりです。
【永井座長】  では,横手委員,手短にお願いします。
【横手委員】  ありがとうございます。大学病院改革ガイドラインについて発言させていただきます。非常に綿密な資料を,様々にお示しいただいて,大学ごとの差異とか達成しているところ,あるいは課題とかが分かってくると思います。この一覧だけからでも見られるように,本当に地域によって,その大学の性質によって,その機能や達成できていることがまちまちだと思うんですね。それを何とかよい方向へと導くべく,文部科学省で考えていただいたことの意義は大変大きく,感謝申し上げる次第なのですけれども,このガイドラインを作り,そしてそれぞれに各大学が自分のプランを作って文章化して提示するということでしたが,その目的,すなわちアウトカムとして何を目指しているのか、が見えません。
 それぞれの大学で総花的に作って書き上げることで,果たして大学が本当に良くなるのでしょうか。それができるのであれば,すでに四苦八苦しながら努力しているどこの大学病院ももっとうまくいっていると思いますし,もう少しこのガイドラインや大学病院に求める再定義等というものの本当の目的,目指すところ,それがなされると,どんなことが期待されるのかを示して頂く必要があると思います。そして,この4つの柱がありますけれども,どの大学もみんな同じように行っていくのか,その辺りをしっかり詰めていただかないと,現状ですでに厳しい大学病院に、より多くの労力を課して,結局,物がなし遂げられなかったということになりかねないことを懸念いたします。果たしてこれができることで,更なる予算的な措置とか補助金,診療報酬の向上というのがなし遂げられる,そういう期待があるのであれば,みんな頑張りますけれども,その辺りの現実的な面をもう少し詰めていただけるとありがたいと思い,一言コメントさせていただきました。
 以上でございます。
【永井座長】  ありがとうございます。
 それでは,和田委員,どうぞ。
【和田委員】  ありがとうございます。金沢大学の和田と申します。大学病院改革ガイドラインについて,私も一言お話しさせていただければと思います。今ほどお話もございましたように,この委員会の検討そのものが医学教育の質を向上して,いい医師を育てていく,そして研究能力の向上,そして診療の質を上げていく,そういう方向に向かっていくということだと僕も思っています。その中で,この処遇の改善をしていくとか,大学病院の改革を進めていくという方向は皆さん一致した意見なのだろうと思います。
 先ほどのコメント,熊ノ郷先生や横手先生のコメントと非常に私自身も似たコメントをさせていただきます。方向性として,この大学病院の改革ガイドラインということを示す,これはもうよろしいかと思います。その中で,文言でありますとか方向性について,先ほど言葉が独り歩きしないという言葉があったと思います。全体として,よりよい方向に持っていくという全体の方向性の下で,論調としてお書きいただくということがありがたいなと思っています。先ほどのアウトプット,アウトカムについても同様かと思います。
 以上です。どうぞよろしくお願いいたします。
【永井座長】  ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。私の印象をお伝えしたいと思います。問題点をいろいろお聞きしましたが,多くの問題は,もう何十年間も指摘されてきたことです。改革すべきことはする必要がありますが,ガイドラインで対応すれば本当によくなるのか。これは今,横手先生,和田先生がおっしゃったことで,やるべきことはやろうと。しかし,相澤先生がおっしゃったように,大学病院の置かれている立場とか位置づけ,人口減社会の中でどうするかという,社会システムとして大学病院の在り方をどう考えるかということをぜひ皆様また御意見をいただきたいと思うんですね。
 既に事務局から御案内があったと思うのですけれども,私,海外の大学病院,調査したことがございます。JSTでまとめた大学病院における研究システムの海外事例比較という相当詳細な資料がございますので,それを見ていただくと,いかに日本の大学病院が特殊な形態になっているかがお分かりいただけると思います。海外のようにすればよいわけではないのですけれども,足元の問題を解決しつつ,在り方,システム全体も考えるという両方が求められるのではないかと思います。
 いかがでしょうか。
【俵課長】  医学教育課の俵ですけれども,大学ガイドラインに関して御意見,ありがとうございます。今,先生方から御意見がありました,1つは,その方向性をきちんと,この大学改革ガイドラインを示して,各大学病院にプランを書いてもらう,その目的と方向性,これをきちんと明確にして示さないと,作業だけをお願いする形になって実現できないのではないかという御意見だったかと思います。その点,僕らもこれ自体が単に書いて終わる,あるいは作業をお願いして終わるではなくて,働き方改革を実施しながら,かつ地域の求め,あるいは大学病院としての機能が実現できるものが何かということを大学病院の中でも議論いただいて進めていくようなことが推進できるようなガイドラインにしたいというところがあります。
 そのためには目的をきちんと明確しなければいけないと思うので,そこをやるということと,これは今の段階で明確に言えないのですけれども,その取組に対して一定の支援ができるようなことは,これは僕らでも,あと厚生労働省等にも協力をお願いしてやっていきたいなとは思っています。ただ,ここはまだ具体的に示せないというところがあるのが不安感にもつながるのかもしれませんが,そういうことで大学の病院の取組を促したいということと,そこに一定のサポートができるようなことは考えたいと思っています。
【永井座長】  銘苅委員,どうぞ。
【銘苅委員】  時間がないところ,すみません。手短に。先ほど大学病院が本当に地域医療,地域貢献をしているのか疑問があるということをおっしゃっていたところはあるかと思います。一部,やはりそれを疑われても仕方がないなというところはあるかと思いますが,やはり大学としては医局員の収入,ちゃんと社会生活を送れるだけの収入を得るためにやはりバイトに派遣をせざるを得ないという現状もあります。ですので,何度もお伝えしていますように,やはり医師,大学病院で働く医師がそれに見合った収入があれば,行かなくてもいいところには派遣はしなくていい。本当に必要な地域医療の貢献に向かうことは可能だと思います。
 しかも,日中,地域医療貢献のためにというか,バイトのためにいない時間というのもやはり大学は人手不足に陥っていますので,そこに派遣しなくてもいい医師が,そこでいることがあればちゃんと人員が拡充されて,大学病院としての研究,教育もできるということになると思いますので,やはり無駄なとは言いませんが,必要のない,削れるだけの,そこまで行かなくてもいいような地域医療に,バイトというものを減らすためにも,大学で働いている医師が自分の仕事に見合った給与をいただけるということが非常に重要かと思います。
 以上です。ありがとうございます。
【永井座長】  田中委員,どうぞ。
【田中(雄)委員】  では,1分で終わらせますけれども,医療というのは非常に複雑系なので,大学病院だけを動かしても大きな影響が思わぬところに出てきます。ですから,現実にはとても文部科学省だけでやることはできない問題で、結局のところ,内閣のレベルの問題だと思っています。ただ,議論するのは,この検討会で十分議論できるはずで,しかし,議論するときの枠を文部科学省ができる範囲というふうに設定すると,多分,議論は非常に小さいものになって終わってしまうかなと思っています。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 ぜひ改革ガイドラインについて考えていただくと同時に,政府に対していろいろな要望を出していくべきだと思います。例えば大学病院ならではの高度医療は、かなり赤字になります。一方で,健全経営も求められるわけですから,それは大学病院に対して非常に厳しい対応を政府がとっているということだと思います。そういうことも含めて,自ら足元の問題を解決しつつ,要望もどんどん出していかないといけない。あまり個別の細かい話に議論が行ってしまっては,本当の改革にはならないのではないかという気がいたしますので,引き続きこの検討会で御議論,よろしくお願いしたいと思います。
 大体,時間になりましたが,よろしいでしょうか。事務局から何か連絡事項等ございますでしょうか。
【相原課長補佐】  事務局でございます。今後の開催スケジュールでございます。資料4でございますけれども,次回,第4回が8月16日,14時30分から16時30分を予定しております。どうぞよろしくお願いいたします。
【永井座長】  それでは,本日はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。
 
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