今後の医学教育の在り方に関する検討会(第14回)議事録

1.日時

令和7年5月21日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省(東京都千代田区霞が関3-2-2) ※対面・WEB会議の併用

3.議題

  1. 医学研究の人材確保と産学連携の取組
  2. 大学病院の会計情報について
  3. 第三次中間取りまとめ骨子(案)
  4. その他

4.出席者

委員

永井座長、今村(知)委員、今村(英)委員、大井川委員(代理:茨城県保健医療部 丸山部長)、岡部委員、北澤委員、熊ノ郷委員、相良委員、炭山委員、田中(純)委員、田中(雄)委員、宮地委員、銘苅委員、諸岡委員、山口委員、横手委員、和田委員

文部科学省

伊藤高等教育局長、奥野審議官、日比医学教育課長、堀岡企画官、多田大学病院支援室長 他

オブザーバー

東京科学大学医療イノベーション機構 飯田機構長、国立大学病院長会議 塩﨑事務局長
厚生労働省医政局 西嶋医事課長、厚生労働省医政局医事課医師等医療従事者働き方改革推進室 和泉室長、厚生労働省医政局地域医療計画課医療安全推進・医務指導室 松本室長、文部科学省研究振興局ライフサイエンス課 村越課長補佐

5.議事録

【永井座長】  それでは,第14回今後の医学教育の在り方に関する検討会を始めさせていただきます。
 お忙しいところをお集まりいただきまして,ありがとうございました。
 最初に,委員の出欠状況,配付資料の確認,発言方法等について,事務局から説明をお願いします。
【宮沢課長補佐】  医学教育課課長補佐の宮沢でございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。
 本日の委員の出欠状況でございますが,金井委員から御欠席の連絡をいただいております。
 また,大井川委員に代わって,茨城県保健医療部,丸山部長に代理出席いただいております。
 また,本日は有識者として,飯田香緒里東京科学大学医療イノベーション機構機構長・教授及び塩﨑英司国立大学病院長会議事務局長にも御参加いただいております。ありがとうございます。
 次に,配付資料の確認をさせていただきます。配付資料は,会議次第に記載のとおりですけれども,資料1から資料5及び参考資料1と参考資料2がございます。もし不足等あれば,事務局までお知らせください。
 なお,資料につきましては,文部科学省のホームページでも公表しております。
 続きまして,オンラインによる会議の進行に当たってのお願いがございます。御発言される場合には,Zoomの挙手ボタンを押していただくよう,お願いいたします。その後,座長から順に発言者を御指名いただきますので,御発言いただく際は,マイクがミュートになっていないことを御確認の上,御発言をお願いいたします。
 以上でございます。
【永井座長】  ありがとうございました。
 それでは,本日の次第ですが,最初に,医学研究の人材確保と産学連携の取組,大学病院の会計情報,そして第三次中間取りまとめ骨子(案),その他ということでございます。
 最初に,医学研究の人材確保と産学連携の取組につきまして,昨年度の文部科学省委託事業で全国医学部長病院長会議が行った調査研究の結果を御紹介いただきます。熊ノ郷委員より御説明をお願いします。
【熊ノ郷委員】  おはようございます。大阪大学の熊ノ郷です。早速,資料を共有させていただきます。
 それでは,始めさせていただきます。
 文部科学省からの昨年度の委託事業で,大学,大学病院の魅力向上,人材確保のための調査研究,これをAJMC(全国医学部長病院長会議)のほうで行いました。本日も御出席の相良会長の御指示,御指導の下で,実は今から1年ほど前に,パイロットスタディーの形で,12大学で今回と同様の調査研究を行った経緯もありまして,この中の私が委員長を務めた研究・医学部大学院のあり方検討委員会で私は委員長をしておりますけれども,その中で,今度は全国の病院,そして医学部の中で調査を行いました。本日は,その結果について,その抜粋を情報共有させていただきます。
 まず,今現在の大学院博士課程への入学者の内訳と推移ですけれども,このグラフを見ていただいて分かるように,大学院への進学者は,その定員を満たすような形で4,000人から4,500人でおおむね横ばいであります。ただし,ポイントは,医師免許を保有している保有者の割合は減少傾向にあるということ,それから,その中でも社会人大学生の割合が,これは臨床系ですけれども,6割程度を占めているということであります。
 後でも紹介しますけれども,定員はこのように満たしているんですけれども,地方の大学においては外国人留学生で定員を満たしているというような状況があるというのが見えております。後の資料でも提示させていただきます。
 大学院の博士課程への入学者の内訳とその推移,これは2つ目の資料になりますけれども,これは予想どおりでありますけれども,従来から,大学院生,定員は保たれているんですけれども,臨床医学系大学院への進学者数が大学院進学者数全体の多くを占めている。つまり,卒業して,初期あるいは後期専門の課程で臨床研修を終えた後に,医局人事の形で大学に戻して,そこで大学院生として定員を満たしているという形になります。
 基礎医学系の大学院への進学者数は,このグラフのとおり,見た目は,このようにやや増加傾向にあるんですけれども,医師免許を持っている取得者の割合は,年々,このように減少傾向にあります。ですので,基礎系の大学院というのは,一応定員の数自体はやや増加傾向にあるんですけれども,その内訳は外国人の留学生の方で埋めている,特に地方の大学でその傾向が顕著であるというのがこちらのほうのグラフでも見えてきているかと思います。
 これを見ていただいたら,これは外国人留学生の大学院への進学者数は増加傾向にあるわけですけれども,特に基礎系の医学者がこのように増えている。臨床系は横ばいの傾向があるというところであります。
 これは,今から1年半ぐらい前も提示させていただいたんですけれども,それは12大学のデータだったんですけれども,4年の大学院の修業年限の間に学位をどれだけ取得できるかという率を示したものであります。
 特に実験系に限らず,最近はジャーナルにアクセプトされるまでなかなか時間がかかってしまう。各ジャーナル,特に雇われエディターのジャーナルで顕著なんですけれども,なかなか正式のアクセプトを出してくれないということもありまして,4年の範囲の中で学位を取得できる率は年々下がっているような傾向にあります。
 特に,基礎系よりは,むしろ臨床系で,4年の範囲で取れる率が下がっているということが,これは前回の12大学のパイロットスタディーのところでも見えておりまして,大学によっては臨床系は2割を切るような大学も出てきているという状況があります。それは,恐らく臨床系の大学院生は臨床にもエフォートを割いているというようなこと,それから,最初の1年目は病棟医の形で診療とか病棟業務に携わっている,外科系などは2年ぐらい携わって,実質研究できる時間あるいは年数の確保ができていないというようなことがある。
 また,そのときに議論されたのは,どうしてもある特定の指導層に,学生の指導であるとか,初期研修医,専攻医の指導であるとか,そして大学院生の指導とか,ある特定の層に負担がかかっているので十分な指導が行き届いていないというような面も,修業年限での学位の取得率が臨床系で特に低いという傾向が見えているのではないかということであります。
 今は学位の審査の方法ですけれども,多くの大学が,ジャーナルにアクセプト後,正式のアクセプトの通知が出た時点で公聴会を開くなどして学位を認めている。
 ただ,15の大学で,これは両方並行しているところも含めてですけれども,いわゆるシーシスで学位審査を実施している大学も,出てきておりまして,これは学位をどう考えるかというのは,それぞれの大学の教授会の見識でありますので,取得率が多いのがいいのか,悪いのかという議論は置いておいて,ただ,減少傾向にある。4年の範囲の中でなかなか取れないという状況が生じているというのも事実であります。
 こちらは大学病院における新規採用の状況ですけれども,医員,専攻医,研修医は自大学出身者が半数程度でありますけれども,助教は自大学出身者が6割程度である,こういった背景があります。
 その中で,各大学病院が医師を確保するためにどういったような取組をしているのかというところですけれども,働き方改革もありましたけれども,例えば宿日直手当の増額とか,研究時間を自己研鑽から労働に移行して考え方の見直しをしている,それから,夜勤明け勤務の廃止・縮小,給料増,それから,短時間雇用制度を導入する,あるいは,臨床研究のコーディネーターを増やす,有給休暇の取得拡大,こういった形で大学病院における医師の確保の取組が全国の大学病院,医学部附属病院で行われているという結果が出ております。
 こういうふうな取組を我々は行っているわけなんですけれども,それが医学部生や,あるいは若手の初期研修医,専攻医,そういった方々にどういうふうに受け止められているのかという結果が,ここからの提示になります。
 まず,これは対象は医学部の5年生,6年生になりますけれども,医学生への大学院進学に関する個人調査の結果であります。
 5年生,6年生の中の大学院への進学希望者は,この時点で,これは全国の平均になるんですが,大体4割程度であります。どの時期に大学院に進むことを希望しているのかという問いかけに関しては,大体は,これも予想どおり,データでも出ているんですけれども,卒後3年目,卒後6年目に,特に6年目に大きなピークがありまして,初期研修,専門の後期研修を終えたところで大学院かなという受け止め方をしているようです。
 ただ,専門研修,後期の研修の中に大学院を組み込むような形の取組のことはまだ意識されていないので,そこが入ってくれば,もう少しこの辺りも早めに,前倒しに改善されていくのではないかなというふうに思います。
 では,どうして6割近くの医学部生たちが大学院への進学を希望していないかというと,その理由としては,ずばり大学院に魅力を感じない,研究に魅力を感じない,経済的な負担が大きい,これは専門医制度のこともあるのかもしれませんけれども,学位取得の必要性を感じないというような理由が挙げられているところであります。
 そのほかの理由としては,これは昔からですけれども,臨床を長期間離れることへの不安,大学院が何をする場所かよく分からない,また,地域枠などの制度上の制約があるというような回答がありました。
 それから,こちらが医学生への大学病院勤務に関する調査でありまして,先ほどは大学院に進学したいのかという調査だったんですけれども,こちらは大学病院で勤務したいかと,大学院に魅力があるかという調査項目になるかと思うんですが,結構これは悲しいことなんですけれども,大学病院で勤務したいというのは,5年生,6年生の中の調査では,大体3割程度という結果が出ております。研究や教育に魅力を感じている医学部生は,その中で,さらに2割から3割程度しかいない。また,それはどうしてなのかというと,やはり大学病院以外のほうが給与が高い,労働環境がよい,そして前向きなものでは,地域の医療機関で勤務したいというような項目が挙げられています。
 一方,この3割の大学病院で勤務したい理由の中には,やはり地域医療に貢献したいということ,それから,大学という専門機関の中で高度医療を学ぶ中で専門医を取得したいというニーズは,やっぱりしっかりとある。高度な医療技術を身につけたいというニーズが,しっかり大学病院で勤務したい理由の中に挙げられているということであります。
 ただ,その中には,加えて研究力を向上させたいであるとか,学生の指導等の教育にも関わりたいというのも,25%程度いるということであります。
 続いて,これは大学院生への研究時間に関する個人調査を行っております。
 2年ぐらい前に大きな問題になったのは,若手の医師のスタッフ,研究時間は週5時間未満というのが50%いて,ゼロの医師が15%いた。
 それについての調査結果では,またこれは別の調査になりますけれども,2年前に比べてそのパーセンテージが増えているというような結果が出ているんですけれども,こちらは大学院生への研究時間に関する個人調査になります。
 ここでは大学院生であっても研究時間が10時間未満の医師が35%以上いる。ここです。大学院生であっても,研究時間,週10時間未満の医師が35%以上いる。分野別では,基礎医学系では2割程度,臨床系,社会医学系では4割強から5割弱で研究時間を確保できていないという見方ができるかと思います。
 ただ一方で,基礎系,確かに10時間未満というような基礎系の大学院生はいるのですが,やっぱり予想どおりですけれども,研究時間は基礎系の大学院生のほうが,臨床系あるいは社会医学系に比べると確保できているという実態が見えてきております。
 次に,先ほどまでは医学部生,それから大学院生だったんですけれども,こちらは,現在,大学病院に勤務している医師への将来の勤務先に関する個人調査になります。
 そうすると,大学病院に勤務している医師で,引き続き大学病院に勤務したいと考えている医師は,大体39%,4割程度おるということであります。残りは,将来,大学病院以外の医療機関で勤務したいと。今現在,大学病院で勤務しているんだけれども,引き続き大学病院で勤務したいと言っている人の理由の内訳は,研究力を向上させたい,高度な医療技術を身につけたい,そして,学生の指導等の教育に関わりたいというのが上位の3つであります。
 では,大学病院以外で,今は大学病院に勤務しているが,大学病院以外の医療機関に勤務したい理由は,やはり労働環境がよい,給料がよい,そして地域の医療機関で勤務したい,こういった理由が挙げられておりました。
 続いて,現在,大学病院に勤務している医師への,その後,大学院に進学したいのかと,実際に大学病院,大学を見ているわけですけれども,その環境に身を置いているわけなんですけれども,その後,大学院に進学したいかどうかという調査が行われています。これは既に在学中あるいはまた修了した医師を除いた形になりますけれども,大学病院に勤務している医師の2人に1人は大学院進学を希望していないという実態が出ています。
 その理由としては,大学院に魅力を感じない,あるいは学位取得の必要性を感じない,また,研究への魅力を感じないというような理由が挙げられております。
 これは最後のまとめになりますけれども,医学系の博士課程の進学者は一応横ばいなんですけれども,医師の免許を持っている取得者の率は保たれてはいるんですが,留学生でそれを補っているという状態にあります。
 また,修業年限での学位の取得率は,やっぱり5割を切る,4割前後に今なっておりまして,特に臨床系で低い。これは,臨床系で診療エフォートの増加によって十分な研究時間を確保できていないということが認められている。
 また,学位の取得に関しては,論文のアクセプトが大半の大学ですけれども,15の大学でシーシスを学位審査として認めているところがあるというようなことであります。これは近年,論文雑誌のアクセプトがなかなか審査に時間をかけられないということを踏まえた配慮がなされているというふうに考えております。
 また,大学では,手当の増額や研究の労働時間への計上など,いろいろな取組を行っているんですけれども,医学部生だけではなくて,今現在,大学病院に勤務している医師も,大学院進学や学位,研究に魅力を感じていないという回答が多く見られたという調査結果が出ました。
 また,勤務先については,労働環境の処遇の観点から,大学病院以外の医療機関を選択したいと考えている医師,医学部生が多く見られたというようなことでありまして,今後,大学院生の確保だけではなくて,いかに研究のすばらしさ,重要性を伝えていくかという,学部の教育だけではなくて,大学,大学病院の魅力を高めて人材確保に取り組んでいく必要があるというような調査結果。
 以上,抜粋になります。
【永井座長】  ありがとうございます。
 御質問,いかがでしょうか。
 岡部委員,山口委員,田中委員,お願いします。
【岡部委員】  御説明ありがとうございました。大変詳しい調査をされて,非常に参考になりました。
 確認なんですけれども,9ページの資料で,大学院生の研究時間を調べられていますけれども,これは大学院生であっても研究時間が週10時間未満の医師が35%以上いるというふうに書かれていて,これ,対象になったのは医師免許を持っている大学院生ということになるんでしょうか。
【熊ノ郷委員】  これは多分,調査を出したときは,医師免許に限らず出していると思いますね。
【岡部委員】  そうなんですね。
【熊ノ郷委員】  はい。
【岡部委員】  基礎系でも結構研究時間が短い方がおられて,これが医師の方と医師ではない方で,どういうふうになっているのかを少し知りたいなと。
【熊ノ郷委員】  これは多分,調査を出しているときはそこで分けていないと思います。
【岡部委員】  では,それ全体を含めてこういう傾向があるということ。
【熊ノ郷委員】  はい。
【岡部委員】  あともう一つ感じたのは,これ,非常に多くの大学を調べられているので,今,大学はそれぞれかなり多様化していますので,そういった地域特性ですとか,その大学がどういう方向を向いているということで,そういうばらつきも非常に重要な情報かなと思ったんです。そういう点については,何か調査で気づかれたところがおありでしょうか。
【熊ノ郷委員】  まず,割合,研究にエフォートを割けるような大学12大学をピックアップして,先生の御協力をいただいたところですけれども,行ったパイロットのところと,傾向としてはあまり違いがなくて,地方の大学は留学生で定員を確保しているというところが大きな違いとして見られるのではないかなと思います。
【岡部委員】  分かりました。では,課題としては,大体どの大学も同じようなところになっているというふうに理解してよろしいですね。分かりました。ありがとうございます。
【永井座長】  続いて,山口委員,どうぞ。
【山口委員】  御説明どうもありがとうございました。
 7ページと8ページのところに,医学生に対しての個人調査の結果が出ているんですけれども,最近,若い方たちの価値観や志向性などが非常に大きく変化してきていると感じているんですけれども,ここに書かれている大学院への進学希望とか,大学病院で勤務したいということ以外に,そういった価値観や志向性みたいなことが見えてきた部分があるんでしょうか。また,先ほども地域差があるかというお話があったんですけれども,大学院への進学希望とか,大学病院で働きたいということに地域差はなかったんでしょうか。その2点をお願いいたします。
【熊ノ郷委員】  ありがとうございます。まず1点目ですけれども,最近の若い学生の志向なんですけれども,1つは,大学院,研究よりも専門医をしっかり取っていくという,そこの志向になっていて,卒後,2年の初期研修のその後,3年の内科専門医になるとか,外科専門医になるとか,そちらの専門医を取る。さらに,そこを取った後に,それぞれの診療科のさらに専門医を取っていく,そちらに結構みんな関心がいくというような傾向があるのではないかなというふうに思います。
 それから,各大学,やはり研究の重要性を伝えるべく,基礎配属とか,学部の学生のときから,こういった基礎の教室に出入りするような制度を多くの大学が設けているんですが,ただ,学生の間に,我々の時期にはなかったCBTとか,あるいは最近導入された実習前のPre-OSCEとかが導入されて,やはり学生さんたちは,我々教員のほうはそういった制度を,研究の重要性を伝えるような制度をそれぞれの大学がそれぞれの工夫をしていけているんですけれども,どうしても間に国家試験みたいなものが入ってきているので,そちらにやっぱり大学院生たちのエフォートが割かれるという実態があるのではないかなというふうに思います。
 それから,2つ目の御質問で,地方大学とか何かこの調査を取った中で傾向が見えたかというところなんですけれども,これは,ちょっとそこまでの解析がまだできておりませんで,そこは正確に答えられないというような実態があります。
 ただ,12大学のハイマットのエフォートをやったときは,やはり東京大学の学生さんたちは,結構その後,研究に携わりたいというふうな方々が多いというふうな傾向がありました。それは結構突出した調査結果だったと記憶しております。
 以上です。
【山口委員】  ありがとうございました。
【永井座長】  田中委員,どうぞ。
【田中(純)委員】  まず,調査の御報告,ありがとうございました。先生がおまとめになっていらっしゃるように,大学院に魅力を感じないとか,何をするところか分からないといったご意見。また,医学研究実習をやっていても,学部では,現在はCBTとかOSCEがあるので研究に興味を持ってもらうには限界があるというお話だったと思います。卒後もさらに研究の魅力を感じ,大学院に進みたくなるよう,大学院での研究生活のようなものを積極的に伝えることが必要ではないかと思いました。ありがとうございました。
 それから,4ページですけれども,学位審査の方法のところで,聞き逃したかもしれないんですが,シーシスで学位請求ができる大学が増加傾向と言われたのでしょうか,それとも減少傾向と言われたのでしょうか,が一つ質問です。
 それから,大学院生の数では,最近,大学院学費や経費に対し国の支援もありますので増えてきているが,医師免許を持っていて大学院に進む人たちの割合は減っているという報告だったと思います。そこのところをもう一度確認をお願いします。
【熊ノ郷委員】  シーシスの率が増えているかどうかというところなんですけれども,15大学で実施されているだけで,阪大も2年前に導入したんです。東京大学も数年前に多分導入したのではないかなというふうに思うんですけれども。
【田中(純)委員】  併用ということですか。
【熊ノ郷委員】  大阪大学の場合は併用です。併用の大学と,それだけの大学が両方混在しているという実情があります。
【田中(純)委員】  増加傾向かどうかは分からないということでしょうか。
【熊ノ郷委員】  分からないです。ただ,やっぱり今のジャーナル側のアクセプトとかの実態と,4年という年限の実情が合わなくなってきているというのは事実で,論文を投稿してから査読に回るか,回らないは,判断自体が,多分エディターがすごく忙しくなっているのかもしれませんけれども,二,三か月,平気で待たされたり,あるいは,最近はなかなか正式なアクセプトを出してくれないんです。【田中(純)委員】  実験系は特にですよね。
【熊ノ郷委員】  あとは,データサイエンスなどは,アクセプトがほぼアクセプトになっているんだけれども,正式にパブリックなところにデータをデポジットした上でアクセプトが出るような形になっていて,そこ自体でまた待たされるという,待ち時間がかなり延びているというような状況もあるのではないかなというふうに思います。
【田中(純)委員】  大学院生の数は,国の施策もありまして,減少は止まって増えているかもしれないけれども,医師免許を持った大学院生の数は減っているというふうに読んでよろしいんでしょうか。
【熊ノ郷委員】  そうですね。ただ,臨床系はまだ何とか維持している形なんですけれども,基礎系はもうほぼ減少傾向にあるというのは見えていると思います。
【田中(純)委員】  ありがとうございます。
【永井座長】  では,北澤委員,どうぞ。
【北澤委員】  北澤です。御説明ありがとうございました。
 今日の調査結果の説明で,大学院に魅力を感じなければ進学を希望しないというのは,ある意味,当たり前かなと思ったんですけれども,この大学院に魅力を感じないというところをもう少し深掘りしていただけたらと思います。単に時間がないとか,お金がかかるとか,そういう話なのか,それとも,もうちょっと研究自体や研究体制の話なのか,その辺り,なぜ大学院が魅力を感じないところになっているのかについて,先生のお考えをお聞かせ願えたらと思います。お願いします。
【熊ノ郷委員】  まず,大学院で戻っても,例えば臨床系の場合に,やっぱり臨床を割かざるを得ない。せっかく戻ったとしても臨床業務をかなりさせられてしまうという場合。それから,そこの大学院に戻る年数が長くなっているんです。5年目,6年目で戻るような形になります。そうなると,卒後5年目の医師だったら,年収で言って,多分1,000万円を超えたりもするぐらい,教授の給料を超えるぐらいで,そこでまだ無給のところに戻るかというふうな面もある。しかも,戻った後,授業料を払いながら4年で学位を取れないのであれば,やっぱり魅力は感じなくなるということもなかなか否めないのではないかなというのが感想であります。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 では,相良委員,どうぞ。
【相良委員】  熊ノ郷先生,ありがとうございました。
 私は,ちょっとまとめといいますか,追加になりますけれども,今,質問があった内容に少しかぶりますが,一つは大学院の魅力が少し落ちているというのは,そもそも4年間で卒業できている人たちが結構少なくなっているというところが魅力が落ちているところなのかなと思いますし,それから,社会医学系あるいは臨床医学系のほうでは,やはりそちらの臨床系の仕事がかなり多くなってきている中でやらなければいけないという面での負担が大きいというところもございます。
 あと,6ページを見ていただくと分かると思うんですけれども,ここの一つは大学病院における医師確保の取組ということで,大学病院に残る人たちが非常に厳しくなってきている。その一つとしては,働き方改革が始まる中で,宿日直がなかなか厳しいという状況の中で,ある一定の,例えば助教クラスに負担が結構かかり過ぎてしまっている。それが負のスパイラルになって,例えば臨床系,あるいは研究も,全部そこに負担がかかっているということがあって,動かなければいけない人たちがなかなか動けない状況になっているところを,そういう厳しい状況を見てしまっているので,なかなか大学病院に残るというところが少なくなっているとも思います。
 あとは,やはり研究に対してのお金といいますか,財政面も厳しいと思いますけれども,アカデミアとしての魅力がなかなかそういう意味で生かされていないというところかと思いますし,そこに対しての財政面の支援がやはりないというところを考えますと,そこら辺のところが今後の課題になるのかなと思います。
 以上でございます。
【熊ノ郷委員】  ありがとうございます。
【永井座長】  田中委員,どうぞ。
【田中(雄)委員】  時間もないので,9ページにある大学院生の研究時間に関する個人調査ですけれども,もともと3分の2は社会人大学院ですよね。社会人大学院の学生も一緒にデータを取ったら,こういうデータになるのはほぼ予想されることのような気がしますが,大学にいる大学院生はどうなんでしょうか。
【熊ノ郷委員】  全国の調査になっていますので,そこを細かく細分化しておりませんので,今後その辺りも調査していく必要があるというふうに思います。
【田中(雄)委員】  ありがとうございます。お願いします。
【永井座長】  和田委員,どうぞ。
【和田委員】  大変考えさせられる内容を御説明いただきまして,ありがとうございます。
 先ほどもシーシスの問題があったと思います。恐らくこれは,質保証という点でも随分皆さん工夫をされているのではないかと思います。このシーシス以外に,例えば審査においても外部審査委員などをどうされているのかなど,質保証について何か工夫などありましたら,お教えいただけますでしょうか。
【熊ノ郷委員】  なかなか外部を入れるというところは少ないんですが,大学によっては,ダブルで,一度スクリーニングのところの審査をして,そこで全評価を丸した段階で通常のところに上げてくるとか,様々な質保証,質が大事ですので,そこが乱発しないような形の工夫はそれぞれの大学でされているのではないかなというふうに思います。
【和田委員】  ありがとうございます。
【永井座長】  よろしいでしょうか。私から一つコメントさせていただきますけれども,研究の魅力というのは,論文を書くことだけではないと思います。指導者を超えて自分の領域を確立する,これが研究の魅力で,そのために研究者は旅に出るわけです。ヨーロッパの職人をアプレンティスとかジャーニーマンというのはそういうわけで,そうした旅に出て自分の領域を開拓させることを支援することが大事です。大学はその研究者を旅に出たり,自立できるように支援する。そのためには旅と研究者交流と自由な精神が必要です。ですから大学院の魅力と言ったときに,やっぱりそこをしっかりしておかないと,若い人は閉塞感を感じてしまうのではないかと思います。
 もう一人,産学連携の取組を飯田香緒里東京科学大学イノベーション機構機構長からお願いすることになっておりますので,続けてお願いいたします。またその後で御意見をいただきたいと思います。
【飯田先生】  では,御紹介させていただきたいと思います。改めまして,東京科学大学の飯田と申します。よろしくお願いいたします。
 本日は,「医療系産学連携の現状と課題」ということで,医療の高度化,社会課題の取組に,大学病院の財源の多様化といった観点から産学連携の期待が高まっていると実感しておりますが,実際の医療系産学連携の現状がどうなっているのか,調査結果も踏まえながら御紹介しました上で,東京科学大学の医療イノベーション戦略について御紹介をさせていただこうと思います。
 まず,課題のところからお伝えしたいのですが,医療系の分野に関しては,他の分野にはない特有の制度的,構造的な制約が存在し,医療系アカデミアは,産学連携の要請が非常に強い一方で,長期的かつ高コストな開発体制が障壁となるなど,薬事対応を含めて,産学連携,イノベーション活動には複合的な困難が伴うと認識しております。
 では,実際,産学連携の状況がどうなっているかというと,これは毎年文部科学省が実施されている実施状況調査の抜粋になるのですが,1件当たりの共同研究の受入額が高い上位30大学のうち,10校が医療系の単科大学が占めているということが分かっております。医療分野における共同研究が特に大型案件において重要な地位を占めているということがこうした結果からも解釈できるかと思います。
 これは共同研究に限らず,特許,ノウハウ,研究成果有体物であるマテリアルを含めて,知的アセットの企業への技術移転という面においても,医療系大学は,全国の国立大学の平均を大きく上回るような実績を上げており,社会実装力のポテンシャルというものがあるということが示唆されていると拝察しております。
 その一方で,こういった産学連携,技術移転のアクティビティを支える体制がどうなっているかというところに目を向けてみますと,これは医学部を有している31機関に調査を行った結果になるのですが,全体の半数の機関が,医療系専門の特許担当者を置けていない。あるいは,そういった経験がある人を置けていないと答えた機関が約半数あったということが明らかになっております。
 この点,特許の活用実績が高い機関と,特許活用実績が低い機関を比較してみますと,医療系の専門の特許担当者が置けている大学のほうが,活用実績が高く,低い大学に比べて2倍以上の開きがあるということも確認されていますので,やはり専門人材を配置する重要性を示す結果と理解しております。
 これは特許担当者にとどまらず,共同研究の組成,推進に伴う機能であるとか,広報,情報発信といった産学連携を支える基盤的な機能についても不足しているということが分かっておりますので,この辺りは重要な課題と認識しております。
 医療系の産学連携においては,冒頭に申し上げましたとおり,開発のプロセス,あるいは特殊性に加えて,臨床現場を担う医療系研究者の特有の立場,あるいは,それに伴う研究時間の確保の困難さといった構造的な課題があると同時に,医療系の産学連携の支援機能に関しても,特殊なスキルが必要になってくるため,特殊性を踏まえた支援体制,実務機能の整備が不可欠であると認識する必要があると理解しております。
 医療系アカデミアは,実装力に優れた知の源泉であることは間違いないというふうに言えますので,的確な支援体制の構築によって,そのポテンシャルをしっかり引き出していくことが重要と考えております。
 そこで,東京科学大学の取組を御紹介したいと思います。
 まず1つ目ですが,これは産学連携の機会を高めるための戦略ということで,大学に存在する知的アセットをフル活用するという取組になります。
 これはまさに田中学長が日々おっしゃっておられる言葉なんですが,社会に開かれた大学,社会に開かれた病院になっていこうということで,その言葉を踏まえて,大学の研究力だけではなくて,臨床力,教育力,さらにはフィールド自体も企業の方たちにどんどん使っていただこうという形で行っている取組になります。
 今日は時間がないので,一つだけ象徴的なところを御紹介したいんですが,これは病院を360度企業様に見ていただこうというような取組です。これは企業に限らず,ほかの学問領域の方たちにも見ていただいて,イノベーションのニーズを探していただいて,新たなプロジェクトを立ち上げるきっかけ作りの取組になります。
 既に病院見学の提供は行われていますが,それらは基本的に医療現場の見学が中心と思います。この点,本学では,患者さんの動線,バックオフィス,食事がどのように作られているのか,医療材料の管理,ごみ処理等々を含めて,病院全体を多角的に見ていただくということで,薬,医療機器に限らず,ヘルスケアの観点,介護看護の観点で,医療者のみならず,患者さん,社会,環境の視点で病院の在り方の変革につながるプロジェクトを増強するために,このような取組をしています。
 この活動,昨年の9月からスタートしているんですが,20社の方が見に来られていて,既に3社がプロジェクト化しているので,一定の効果があると捉えています。
 2つ目は,大学が社会課題解決に本格的に取り組むための方策として行っている産学連携スキームです。
 これはオープンイノベーション共創制度というもので,現在,15社と取り組ませていただいているんですが,単なる共同研究を行うにとどまらず,研究開発,そして事業化のための人材育成,企業に対する人材育成,企業と一緒になってスタートアップを立ち上げる等々,企業と大学が共通のゴールに向かって,多角的な取組を行うスキームです。
 全学的な協定を結ぶことによって,学内外,企業と大学が持つ相互の知的アセットを活用して,継続的に長期的に共創する仕組みになっています。
 これら活動の効果としては,これまで医療分野に参入されていない異業種の企業様との共創がスタートしています。
 見ていただくと分かるとおり,警備保障会社とか,保険会社とか,デベロッパーとか,ちょっと毛色の違った企業さんが入ってこられて,新しいヘルスケア,新しい医療機器の開発を目指しています。
 もう一つの効果としては,学内の研究者にとって,これまで産学連携にあまり縁のなかった方はじめ,多様な分野の先生方が参画される,そういった機会になっています。これら企業との新規プロジェクトを見出す目的で学内公募をかけると,若手の先生方からも手が挙がるようになって,産学連携人口増につながっています。
 またこのスキームでは,共同研究で論文を書いて終わりではなく,企業が取り組む事業のところに対しても,大学としてエビデンスを出すということで貢献していこうということで,社会実装にコミットすることも目指しています。
 実際,このような形で,NECとは健常者に対する一次予防という観点で,新しいヘルスケアのビジネスを科学的なエビデンスを持って動かしていくというビジネスモデルの構築もしており,ALSOKとは,科学的に看護・介護サービスの実現に向けて会社を設立して取組を始めております。
 3つ目の戦略は,研究者のイノベーションマインドを高めるといった取組になります。
 こちらは,イノベーションプロモーター教員制度というもので,2019年から,東京医科歯科大学の時代からやらせていただいているものなんですが,准教授以下の若手の先生方に,自薦・他薦で全部局から数名ずつ選抜をしています。医学部に関しては,今年度から,全診療科から一人以上ずつ出していただいているんですが,学長の名前で,任期は2年で任命しています。彼等のミッションは,企業から大学に寄せられるニーズ,こんなことをやってくれる人いませんかとか,こういうことをやっている先生いませんかといったようなニーズに対して,部局あるいは診療科に展開する役割を担っていただいています。これは若手研究者の柔軟な発想とかネットワーク力,先端的な知見を活かすもので,医療現場,あるいは研究現場を産業界とつなぐ知のインターフェースだというふうに認識しております。また,彼等自身がこの役割を通じて,産業動向に触れマッチングを行うことで,イノベーションマインドの醸成に繋がるのではと願っています。産学のマッチングをし,また御自身がやっている研究ニーズ,産学連携ニーズを,インタビュー記事あるいはイベントなどで発信するという形のイノベーション大使的な役割も担っていただいています。
 これまで80名がプロモーターを経験されたのですが,想像していなかった効果として,プロモーター教員による彼ら起点の新しい産学連携契約がこれだけの数,毎年増えています。
 さらに,特許出願件数も増えています。
 さらに,1期目,2期目の64名中26名が学内外でキャリアアップをしているので,こういったロールモデルも出現しているということも効果になっています。
 若手の研究者のネットワークを介して,学内へのイノベーション関連の情報発信・アウトリーチが容易になったことで,社会実装を志向する,あるいは社会課題に対する貢献を志向する研究者の増加につながっていることも実感しております。
 企業とのコラボレーションの機会なども提供することで社会価値の創出といったようなイノベーションの観点だけではなく,キャリアアップが実現しているという結果から,学術の深化という観点でも一定の効果が伺えております。
 最後に,研究現場,医療現場を起点にしたイノベーションコミュニティについて御紹介したいと思います。
 これは医療・ヘルスケアスタートアップへの挑戦が生まれて育つ仕組みということで,三菱地所と共同で運営しているコミュニティになります。医療系の先生方はお忙しいので,大学の外で行われているイノベーション勉強会になかなか出て行く時間もないとの声が多いので,スタートアップ,企業,研究者がネットワーキングできる拠点を作ったものになります。
 具体的には,共創のためのスペース,大学が持っているラボであるとか,実験機器,実証環境などのハードと,毎週水曜日に研究者のピッチであるとか,あるいは伴走支援ネットワーキングイベントなどをソフトの両面からイノベーションを後押しするという仕組みです。
 2年ぐらいたった中で,会員数,正式にお金を払っていただいている会員数が330名ほど,開放しているラボに関しても,契約率は96%,ほぼ埋まっているような状況で,ニュースレターに対してのアプローチは5,000名を超える方ということで,毎週やっているイベントも100人以上の方が参加いただいているような状況です。
 こういった活動を学内でやることによって,産学連携プロジェクトがこのコミュニティを起点に,2年ほどで145件増えていますし,スタートアップも5年間で,もともとのベースが少なかったということもあるんですが,160%増という形で一定の効果が確認できているところになります。
 こちら,最後のスライドで私見になって恐縮なのですが,繰り返しになりますが,この医療系アカデミアというのは,ほかの学問分野にはない臨床と研究の融合を強みに社会課題の解決であるとか,産業創出に資する大きなポテンシャルを保有していると理解しております。そのポテンシャルを最大化し,高度医療の実装と大学病院経営の安定化を支えるためには,イノベーション基盤を強化することが重要と考えます。 そして,何より重要なのがイノベーションマインド・風土・文化の醸成というところで,大学の役割を広げるということで,研究者のみならず,大学に構成される多様な人材がイノベーションを生み出すマインドと文化をしっかり醸成していくということが重要で,「挑戦できる環境」の整備,イノベーションというのは不確実性が大前提になってきますので,「失敗を許容する文化」,あるいはキャリアの越境を可能とするような「人材の流動性」,「循環型キャリアパス」の構築,そして,次世代を牽引するような,若手の研究者でもこんなことができるということの可視化をすることで,次に挑戦する方たちも出てくるのではないかと考えているところになります。
 本日は本学の事例を御紹介させていただきましたが,各大学でいろいろな取組があると思うので,事例を共有しながら私たちも学んでいきたいと思いますので,今後とも御指導のほど,よろしくお願いいたします。
 以上になります。御清聴ありがとうございました。
【永井座長】  ありがとうございました。
 それでは,御質問をお願いいたします。
 今村委員,どうぞ。続いて,銘苅委員。
【今村(知)委員】  今村です。大変役に立つ発表をありがとうございました。
 私どもの東大病院や奈良医大で産学連携してきて,非常に大きな問題として抱えていることがあって,同じような取組をしているんですけれども,産学連携の相手が,微妙な案件ほどお金が高いという問題があって,どこまで踏み込んで相手方と手を組むかというところが一番大きな問題になっているんです。これ,手を組んだらどうかなという,本当に効くのかなというようなことを誰がどんなふうに取捨選択しているのかということと,最終的に大学の名前だけ使われて逃げられてしまうという,研究の失敗は許容するべきだと思うんですけれども,組む相手の失敗をどう防ぐかということを,取組があれば教えていただければと思います。
 以上です。
【飯田先生】  ありがとうございます。組む相手の選定に関しては,与信調査などもさせていただいております。
 研究の内容に関しましても,企業さんからの提案をそのままのむわけではなくて,軌道修正しながら,学術的な成果が出せるのかということを最初の段階から決めておくということと,大学の名前が勝手に使われないように,そこは契約で約束するということは気をつけているところになります。
【今村(知)委員】  ありがとうございます。ぜひまたノウハウがあれば教えていただきたいと思います。
 以上です。
【飯田先生】  ありがとうございます。
【永井座長】  銘苅委員,どうぞ。
【銘苅委員】  すばらしい御発表,ありがとうございました。
 先ほど熊ノ郷先生からの御発表にもありましたように,やはり大学院に行くということの魅力として,卒業することによる,取得することによるキャリアパスにならないということが,一つ大きな入学しない原因になっているということがあると思います。
 今回,取組に関しては,キャリアパスになるというふうなことをおっしゃっていたということがあります。どのようなキャリアパスになるかということと,やはりもう一つは,永井先生がおっしゃっていたように,大学に入ることが,研究をすることが,わくわくする,夢を見せる,夢があるというところをまだ見せられていないんだなということと,アカデミアが社会にどのように貢献できるかというところもまだまだ見せられていないということに関しては,今回,東京科学大学さんの取組は,すごく魅力的,魅力を学生さんに伝えられているんだろうなというふうに感じました。
 そういった意味で,産学連携の中で大学院生がどれぐらいその研究に携わっているのかというところを教えていただきたいと思います。
【飯田先生】  まず,キャリアパスの観点からいうと,学部の学生さんと大学院生さんに,本学で行っている実際の実例で,こういったことが社会実装につながったとか,これで収益がここまで上がったんだみたいな具体的な事例,ロールモデルをお示しすることを重視し,取り組んでおります。
 そのような取組によって,大学院に入る学生さんが増えていくといいなという願いも込めてやっています。先ほど御紹介したような包括連携には大学院生は基本入らないんですが,メンターとなる教員の先生とセットで入っていただくということはあります。ロールモデルの可視化が鍵と思っております。
【銘苅委員】  キャリアパスとは,どのようなキャリアパスでしょうか。
【飯田先生】  キャリアパスは,大学院に入って,その後,教員として活動すること,アカデミアの研究環境で研究をして,産学連携研究を通じて産業を学ぶ機会を得る。ちょっとお答えになっているか分からないんですが。
【永井座長】  よろしいでしょうか。
【銘苅委員】  はい。
【永井座長】  諸岡委員,どうぞ。
【諸岡委員】  まず,すばらしい発表,ありがとうございます。
 私ども,地方にいますので,先生がいらっしゃる関東とかだと,かなり大きな企業と組みやすいというところがあるかと思うんですけれども,そういった地域的な差がありつつも,それはなくして,いかに企業とうまく取り組むかというところのコツを教えていただきたいのと,もう一つは,最終的に企業と組むとなると,どうしてもビジネス,やっぱり企業は利益を追求しますので,そのビジネスと医学部の先生方が持っているシーズがうまくかみ合えばいいんですけれども,そこのところをどうやってされているのかなという,その間のギャップをいかに埋められているかということについてコメントをいただければと思います。
【飯田先生】  ありがとうございます。まず,今日御紹介したものは大きな企業さんが中心になるんですけれども,そうではなくて,実際,今日御紹介した医療現場を開放するというところには,地域の企業さん等も加わっているので,まず,大学を開くということが鍵になるのではないかと考えています。それはどんな地域であっても,その地域の課題であるとか,地場の企業さんに開放するというところからスタートできるのではないかと思います。
 ビジネスとシーズのギャップのところは本当におっしゃるとおりなんですが,シーズを押しつけるという観点ではなくて,逆に企業さんとの関係では2つ軸があると思っていて,シーズをつなげる場合もあれば,企業さんの技術的な課題とか解決したい社会課題という観点で,一緒に何ができるのかと考えるところから,シーズを一緒につくり出すことからスタートすること,ゼロからつくるところに注力しているのが先ほど御紹介したようなスキームですので,時間はかかりますがそのようにしていくと,ギャップは生まれにくいのではないかと考えます。
【諸岡委員】  ありがとうございます。いろいろと参考にさせていただきます。また何かありましたら,いろいろと教えていただければと思います。ありがとうございます。
【飯田先生】  よろしくお願いいたします。
【永井座長】  では,横手委員,どうぞ。
【横手委員】  大変魅力的な内容を分かりやすく御発表いただき,ありがとうございました。2点お尋ねしたいと思います。
 この取組は,やはり臨床系がメインのようにお聞きしたのでありますけれども,基礎系のシーズ発掘とか,基礎部門との連携というところでも機能しているのかどうかということが第1点。
 もう1点は,貴学にも臨床試験センター,要は,臨床試験を推進する組織があるかと思います。これもおそらく各診療科や部門と連携しながら行っていると思うんですが,この臨床試験センターとの関係性は全く独立しているのか,連携しているのか。その2点を教えてください。
【飯田先生】  ありがとうございます。今日御紹介したものは,どちらかというと臨床系の話なんですけれど,基礎系は,やはり製薬企業などは常にアンテナを張ってくださっているところですので,そちらとのマッチングは個別にやらせていただいています。各製薬企業がターゲットに置いている疾患は何か等,我々のほうで情報収集しながら,逐次,基礎系の先生方にアプローチをしてつなげられないかというような取組をしているので,アプローチの仕方は異なります。
 ARO組織との関係なんですけれど,我々のところ,今回,大学統合で組織を,AROを病院の中に入れてしまったのでちょっと距離ができたんですけれど,私共の組織とAROは一体的に動いてきたので,臨床研究に近そうなものを含めて,特許出願の段階からAROにも見ていただいているので,間断ないサポートを目指しています。
【横手委員】  分かりました。ありがとうございました。
【永井座長】  相良委員,お願いします。手短でお願いします。
【相良委員】  革新的な取組だなと思って感心して聞いておりました。ありがとうございました。
 その中で,組織風土を変えていくというのは非常に重要だと思います。先ほども少し話が出ていましたが,企業と連携していくという面での情報がどういう形で正確なものが入ってくるのかということはやはり気になるところです。そこのすみ分けというものをどういうふうにしてやっていらっしゃるのかというのが一つです。あとは,やはり臨床系が非常に多くなってきますので,ある程度,豊富な人材がないとちょっと厳しいのではないかと思います。その2点をお願いいたします。
【飯田先生】  ありがとうございます。基本的に,企業さんからのアプローチに関しては,ワンストップ窓口という形で,我々の組織,医療イノベーション機構が窓口になるということを前提にしています。そこである程度スクリーニングをすることもさせていただいています。冒頭の御質問のもあったとおり,ちょっと危ないものに関しては慎重に検討することもしています。安全な産学連携が実現する仕組みづくりということを心がけたいと思っております。
 人材のところ,おっしゃるとおりで,診療科によっては人が足りないところとかもありますので,できるだけ企業さんと共同研究するときに,人材,人件費も含めて,カバーをしていただくとか,あるいは企業の人材をアサインしてもらって人材不足をカバーすることもしています。
【相良委員】  ありがとうございました。
【永井座長】  よろしいでしょうか。
 では,最後に,田中委員,お願いします。
【田中(雄)委員】  私は補足をさせていただきます。
 飯田教授が八面六臂の大活躍だからできていることですけれども,まず,キャリアパスについての銘苅委員からの御質問ですが,やっぱり露出度が上がりますので,そのことによって高い学科からのリクルートなどもあるという,普通,助教はあまり露出度が上がることはないんですけれども,こういう産学連携の活動をすることによって,社会的な露出度が上がって,そこからリクルートが来るということが一つあります。
 それから,どこと組むかというのは,16ページにtipというのがありますが,三菱地所との共同研究なんですけれども,三菱地所は広いネットワークを持っているので,そこのネットワークからいろいろな企業の御紹介をいただいているということもあります。ですから,そういう企業からのネットワークでいろいろな業種,いい業種との連携ができているということがあると思います。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございました。
 それでは,次に参ります。どうもありがとうございます。
 では,続いて,大学病院の会計について,塩﨑英司国立大学病院長会議事務局長からお願いします。
【塩﨑事務局長】  国立大学病院長会議の塩﨑でございます。
 今回の報告は,今までの本検討会の議論を受けて,病院の財務はどうなっているかということを文部科学省から課題をいただきまして,検討事業を受託した報告でございます。
 最初のページでございます。
 まず,制度の説明の前に,国立大学病院の経営の現状を少し御報告させてください。
 ページ2の上のグラフは令和5年度の決算収支です。これはキャッシュベースです。現金があるか,ないかということで,各大学42大学をそれぞれ棒グラフにしています。左の青いグラフの大学病院は若干お金が残った,赤いグラフの大学病院がお金が足らなかったというところでございます。
 令和5年度はプラマイで,全体では収支均衡となっていたんですけれども,令和6年度決算収支の速報が4月25日に集まりまして調べましたところ,各国立大学病院全体が沈んでいるということが分かってございます。令和6年度は,全国立大学病院を合計すると,213億円の赤字だというところが分かっています。
 この状況の理由として,次の3ページを御覧ください。
 国立大学病院が増収減益傾向であることは以前から申し上げているところですけれども,今回は収益から費用を差し引いた原価計算をさせていただきました。3ページのグラフは令和元年と令和6年度を比較しています。コロナの前後で原価計算結果はどう変化したかということを比較しているということでございます。
 この原価計算結果は,令和元年度と令和6年度の4月から12月の9か月分です。現時点で令和6年度の原価計算が可能なデータが入手できましたのが9か月分しかございませんので,それをそれぞれ比較しています。青いグラフが令和元年,令和6年度が赤でございます。
 グラフの縦軸は症例数でございまして,横軸は中心をプラマイゼロで0円なんですけれども,右にいくほど利益が出ている患者さんの数,左側のほうは,逆に損失が出ている数というところでございます。9か月間で約50万件の全国のデータを分析したところでございます。
 次の4ページを御覧ください。
 この元年度と令和6年度の2つのグラフを重ね合わせてみますと,収益患者数が減少しているというよりも,実は損失が出ている患者数が増えているということが分かってございます。
 重なりのグラフで右のほうの利益が出ている患者数はそんなに大きな変化はないですが,左の損失が出ている患者数の令和6年度分の赤い患者数が増えています。これはつまり,損失が出ている患者数が全体的に増えているという状況です。
 ちなみに,1入院当たりの平均の利益でございますけれども,これは令和元年度は4万5,000円ぐらいありましたけれども,令和6年度は実は1万3,000円ぐらいしか残らないというところでございます。これは売上ではなくて利益でございますので,利益が約3分の1以下になっているという状況です。この9か月分を年換算すると,全体の患者数で70万件ぐらいございますので,失われた利益約3万2千円を掛けますと,200億円ぐらいのお金が損失になっているところでございます。大学病院では,外来は赤字になる傾向ですので,なかなか厳しい経営状況だということでございます。
 これより本題でございますけれども,こういった経営状況の中で,今,病院はどのように決算の報告をさせていただいているかというところでございます。
 5ページの左側の3つの図を赤い点線で囲まれているところが大学全体で決算として公表している財務諸表でございます。
 資産状況と負債のバランス及び現金が幾らあるかということが分かるのがBSでございます。
 それから,右側の下のPLですが,これは各年度1年間で収益(入金+これから入る予定のお金),費用(支払ったお金+これから払わなければならないお金),この収益と費用を比較して赤字か黒字かということが分かるのがPL(損益計算書)でございます。
 一方,PLはキャッシュとは違いますので,左下にCSがございます。これは,実際にお金がちゃんと回っているかどうか,増えたのか,減ったのかということを分析する資料でございます。
 企業会計ベースでこの3つがなければ事業継続はできないと言われておりますけれども,この財務三表を大学本体は全体としてちゃんと説明しながら,経営の見える化を図っているところでございます。
 実は全国の病院を有する大学の中では,大学の全体の収益のうち病院収益が60%になっているところもたくさんあります。その病院部分の決算は公表資料にどれぐらい出ているかというところでございますけれども,5ページの左のようにピンク色の色がついたところが病院の決算の公表資料部分です。全学のPLの内訳として,病院部分の収益と費用(売上と費用)が出て,利益が出ているのか,損失かという情報,それと,これに基づいて簡易的に作っております当該年度に現金がどれぐらい増えたか,減ったかというのが出ているのが資金収支の状況でございます。
 以上から,単年度のお金の出入りに近似している数値はある程度分かる。また,それと各年度に利益が出ているかどうかは分かるんですが,元々の資産がどれほど減価償却したかというのが分からないということが大きな問題でございます。
 次の6ページをおめくりください。
 この病院の決算状況を家計に例えてございます。分かりやすくするために,例えば,毎月毎月のお給料を頂いて,その手持ちの資金を家計簿で管理している,これは病院が一生懸命管理しているわけでございますけれども,赤字傾向なのでお金が足りていません。結果として何を我慢するかというと,エアコンとか冷蔵庫とか洗濯機とか,いろいろな機器資産の更新を我慢しています。ただひたすら増収しつつ借金を払っているというところでございます。
 このモデルの問題点は,右上に「本部からの借入金等」という家がありますが,これは言わば実家(全学)でございます。お金が今月足らないので,実家から何とかお金を融通しましょうということを言ってくださる優しいお金の余裕がある実家もあれば,大学自体もお金が厳しいので,これは必ず返してねということで借金をしているというところもございます。このようなお金の,言わば補填状況というのが見えない。結果として,穴埋めの後の結果が,現在のPLの内訳になっています。
 ですので,本当に病院がどれだけ苦しいか,実はこういった機器資産がどれほど劣化しているかというのは,今の公表されている財務諸表上からは見えてこないところでございます。ここが大きな問題かなと思います。
 次の7ページを御覧ください。
 このような中で,これまで国立大学病院も増収努力を重ねてまいりましたけれども,資金不足で,非常に中長期的な経営の計画が実現できませんでした。お金がないので資産の更新を抑制してやってきていますけれども,昨今,医薬品とか材料の高額化や医師の働き方改革,また,物価,賃金の高騰が続いておりまして,いよいよ経営は限界に達していると考えています。
 大学全体としてBSは作っていますけれども,病院の現預金は,先ほど言いましたとおり,実家である本部で一括されています。ですので,その現金不足の実態が分かりにくい。先ほどお金が足らなくなったと申しましたけれども,国立大学病院全体で1年間に1兆4,000億円ぐらいの病院収益(売上)が発生しています。この活動のためには,必ず運転資金が要ります。理論上で計算すると,1,600億円ぐらいのお金がないと事業は継続できないところでございます。病院経営の特性を考慮しても,最低でも1,200~1,300億円のお金がないと事業は続かないはずなんですけれども,その運転資金が増えているのか,減っているのかというと,分からない。全体としては,大学管理の資金の中で何とか泳いできたというのが今までの状況かなと思っています。
 このように今まで努力したところでございますけれども,これからは,やはり病院のキャッシュが本当に回っていくのか,回っていかないのか,先ほど言いましたように,令和6年度の単年度で200億円消えるということは,事業継続に必要な1,200億円程度の運転資金が200億ずつ減っていくと,もうあっという間に資金ショートして回らなくなってしまう可能性が十分あるのではないかと危惧しております。
 厳しいからこそ,しっかりと病院の現金を管理していく必要があるのではないかと考えているところでございます。
 あわせて,教育・研究・地域貢献と様々な活動をされていますので,そのために必要な財源は幾ら要るのかということもやっぱり明示していく必要があるのかなと思っています。
 今後幾つか,できましたら,特に危機的な状況になっているような大学病院のBSを作成する必要があると考えます。このために必要なのは,法人化当初から病院の運転資金等は分かれていないため,お金は本部で一括されているので,どこかで病院管理の資金を分けなければいけない。例えば,中期目標計画の開始年度を起点にして,分けてみて,まず病院のBSを試作してはどうか。その結果,病院事業がどこまで継続していくか,本当に資金は回っていけそうなのかどうか検証するべきではないかと考えます。病院BSに伴って病院の資金充足度は可視化されると思います。この試作により実際に経営改善につながるかどうかを検証して,これが有効だとなりましたら,ぜひ全国の国立大学病院でお金の流れを明確にしてはどうかと思っています。
 最後の8ページでございます。
 こういう病院の経営の見える化について,左上に書かせていただいておりますけれども,大学本来の機能は,やはり教育研究ですが,病院は高度な診療もございます,地域医療貢献もございます。ですので,大学を超えた部分がかなりあります。そこには当然財政支援が必要だと思っています。
 令和6年度は教育研究に関しまして,文部科学省が,今回,大変増額していただきました。あと,安全安心な高難度医療を展開する以上,やはりそれなりの医療部分の評価もしていただきたいと思っています。また,自治体に予算措置されている様々な基金もございます。必要な財政支援をお願いしていくしかないと思っています。
 今後の経営についてですけれども,今まではお金が足りないから何とか我慢するというのはもう限界ですので,そうではなくて,実際に教育研究に必要なのは幾らなのか,高度医療を実践するために幾ら必要なのか,地域医療貢献するにはどれぐらいお金が要るのか,それをぜひ各大学病院が稼ぎ出しているもの以外に,どれぐらい投資すればいいのかということをしっかりと見える化できないと,そういう財政支援をお願いできないと思っています。
 その効果を実際に出して,最終的には,国際研究の競争力の回復とか,また,医療機能の生産性向上による収益の確保とか,地域貢献の経済効果をしっかりと見える化していく必要があるのではないか。
 右の上に書いていますとおり,病院経営の見える化が必要かと思っています。病院BSと病院キャッシュフロー,そして病院PLがしっかりと明示できて,投資効果を説明できたらどうかと考えます。
 資料説明の後に,参考資料を2つほどつけております。最初にありました原価計算結果を細かく分析しますと,大学病院に特徴的な症例においても元年度と令和6年度で利益の差があるという資料です。またお時間があるときに御覧になっていただければと思っています。
 以上でございます。
【永井座長】  ありがとうございます。
 いかがでしょうか。これは前からいろいろ指摘されているところですが。
 今村委員,どうぞ。
【今村(知)委員】  今村です。御発表ありがとうございます。
 私も塩﨑先生おっしゃるように,BSをぜひ義務化するべきだと思っています。
 先ほどの発表の中で,キャッシュベースで200億円減っているというのは,なかなか衝撃だったと思います。今まで損益計算書で赤字が出ても,実際には現金が残っていることが大半だったと思うんですけれども,現金が残っていない大学がこれだけあるというのは,まさに倒産へのカウントダウンをしているということだというふうに思います。2ページ目にあるこれだけの病院が,割と短期間にキャッシュがショートする。要は倒産するということが明確になっているということが非常に大きな問題だと思います。
 これ,実際には,先ほど冷蔵庫が古くなっているというお話がありましたけれども,病院の機器を新しく買い直して再投資しないと収益は伸びていかないという状況があって,幾ら使えるかが分からないというのが今の問題ですし,幾らお金が足りないというのが分からないということが問題だと思っています。そのためにも,ぜひ病院が独立して貸借対照表(BS)を作っていく必要があるというふうに思っています。
 その上で言うと,塩﨑委員に質問なんですけれども,今回,中期計画を起点にBSを作るべきだということですけれども,本来,法人化から計算すると,結構なお金がキャッシュで残っているはずなんです。今回,赤字になってから計算すると,すごく底をついているんですけれども,もっと前,20年前からの分を足すと結構お金が残っていると思うんですけれども,そこから作るというのは,やっぱりかなり難しいんでしょうかということを教えていただければと思います。
 以上です。
【塩﨑事務局長】  ありがとうございます。仮想的にちょっと作ってみましたが,やっぱりかなり現状と合わないところがございます。というのは,当初からあったらこれぐらいのお金が残っていたのではないかというお話と,現状,実は本部から様々な御支援もあったりとかしながら,全体としては最適化を目指しているわけでございます。計算的には正しくても,それが今の実感とは全く合わなくなるので,実は,最初からだとこれくらいの現金があったのではないかという推論は可能ですが,各大学病院と本部との間での経営感覚として,あまり現実的ではないかなと思っています。
【今村(知)委員】  ありがとうございます。本来だったら,各病院200億円ぐらいキャッシュが残っているはずで,退職引当金以外の部分の引当金は使えるお金があったはずなんですけれども,それが見えなくなっているので再投資ができないという問題が根本的にはあるというふうに思っています。
 とはいえ,とりあえず,BSがあれば,短期間の間でもどれぐらいキャッシュが底をついているかも分かるようになるので,ぜひそこは各病院でもやっていくべきだというふうに考えております。
 以上です。
【塩﨑事務局長】  ありがとうございます。
【永井座長】  田中委員,どうぞ。
【田中(雄)委員】  すばらしいと思うんですけれども,一つ質問は,人件費をバランスシートで表現するのはなかなか難しいと思うんですけれども,それは例えば,実際に我々の問題としては,例えば承継職員の人件費,教員の人件費は大学が持つなどという大学もありますし,半々で大学病院と大学本部が持つというケースもありますし,いろいろ様々なんですけれど,このバランスシートにしたときに,人件費が隠れてしまうということはないんですか。
【塩﨑事務局長】  ありがとうございます。多分,各大学において,今,セグメント情報に計上する場合に,教育研究部分はどれぐらいあるのかということを,一応,会計検査院からの御指摘もあって,現在の計上の方法を採用していると思います。現状は,まずその方法から進めるべきかと思っています。
 ただ,今,田中先生からお話がありましたとおり,各大学の違いが多少あるので,それを統一的なルールにした場合にどうなのかということで比較検証していくと,自分のところの大学の状況も分かりますし,改善点も見えてくるかなと思いますので,そこはやはり,ある程度話合いで決めていくしかないかなと思っています。
【田中(雄)委員】  よろしくお願いいたします。
【永井座長】  相良委員,どうぞ。
【相良委員】  今お話が出たように,大学病院の経営は非常に難しい状況に置かれていると思います。国立大学病院の結果をお話しいただきましたけれども,私立医科大学でもやはり同様だと思いますし,大学全体として考えていかなければいけない問題と思います。
 人件費に関しましても,委託費も含めて人件費という形で捉えていかないといけません。そういう面では収入減というところも踏まえて,非常に大きな問題かというふうに思います。
 それで,国立大学においても,私立大学に関しては,いわゆる土曜日,あるいは,場合によって日曜日もやっている大学がほとんどであります。そうすると,診療実日数でいいますと,国立大学病院と比べると,私立医科大学に関しては非常に多く仕事をして,それで財源をある程度確保していくというところになっています。国立大学のほうでも,一部では,いわゆるハッピーマンデーも仕事を始めなければいけない状況下になっているというところを踏まえると,大学経営は非常に厳しくなってきていると考えています。
 そういう意味で,大学病院の一つはやはり不採算部門,それをやっているというところは理解していただかなければいけないということと,それから,国立大学と私立の大きな違いというのは,まずは運営交付金が国立大の場合は出ていて,私立医科大学の場合には,経常費補助金で出ていますけれども,なかなか少ない経常費補助金ですので,その中でどうにかうまく運営していっているというのは,そこにやはりかなりの職員に対して負担がかかっていると思います。
 そういう中で,地域医療をしっかりと支えていかなければいけませんし,そういう面での貢献度を全体的に考えていかなければいけないと思います。今,皆様方が御議論いただいている内容は,ぜひしっかりと捉えていただいて,今後協力していただければと思いますので,よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
【塩﨑事務局長】  ありがとうございます。
【永井座長】  炭山委員,どうぞ。
【炭山委員】  今,相良君が話したとおり,私立医科大学の場合には,自分たちで経営を立て直さない限り,大変なことになる。令和5年度の決算では,30法人中11法人が既に赤字でありました。令和6年度はまだ決算報告がございませんが,予測としては,さらに悪化しているだろうという可能性があります。
 一つは,令和6年の診療報酬改定で,やはりいろいろな材料費等を含めた物価高に対応できていなかったということが最大の原因だろうと思うし,それから,人件費としては0.88プラスだったと言っているんですけれども,それでも私立医科大学の平均値を見てみますと,やはりそれだけでも足りないということがあります。
 それと,疾病構造の変化に伴って,例えば高難度手術が結構減ってきているということ,これも大きいのではないかと思っています。
 先日,私立医科大学の懇親会で,13名ほどの国会議員の先生方が来られましたが,今の状況を放っておくと,一般病院,あるいは全ての病院が大変な状況になると,パブリックサービスである医療が崩壊するのではないかということで,期中改定あるいは補正予算等のことを話しておられました。これをやはり文部科学省,厚生労働省から強く財務省に言っていただいて,国会でも審議していただき,どちらか,期中改定あるいは補正予算等で何とか補填していただけるようにお願いしたいと思います。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 よろしいでしょうか。
 私からも一言。大学病院の経営は要する,不採算医療をどうするかという問題が根本にあります。医療費を見直すのか,補助金を増やすのか。あるいは国立大学に固有の問題があるのか,経営の問題なのか,それが分からないとなかなか手も打てないと思います。そういう意味で,先ほど塩﨑局長が言われたように,決算関係書類の透明化,本部からの借入れ,病院の現預金,これらを透明化しないと次の議論へ進まないと思います。ぜひそこは進めていただきたいと思います。
 では,続いて,第三次中間取りまとめ骨子(案)について,事務局からお願いします。
【堀岡企画官】  医学教育課の堀岡でございます。
 今般,第三次中間取りまとめに向けた議論を進めていくということで,前回は論点整理という形で出させていただきましたが,今回は骨子案という形で,前回のヒアリングを踏まえて,書き足している部分,また,前回の場でいろいろ御指摘いただいた部分を修正し下線を加えた形でお示ししております。
 お時間もございませんので,変更した部分だけ御説明いたします。まず1つ目,1ページ目でございますけれども,これは文部科学省が全大学病院の院長と意見交換させていただきましたので,そのことを分かりやすくフィーチャーしています。
 簡単に言えば,全ての大学病院が教育・研究・診療の3つの機能を必ず担うということは重要だけれども,大学によって,エフォートや役割分担というのは大きく違うだろうということです。それは医師個人でも同様で,多様な価値観でいろいろな方々が,例えば研究中心の医師,診療中心の医師,また,時期によっては,今は診療中心だけれども,来年は留学に行って研究に集中するなどといったこともあると考えています。その際,各役割・機能に最低限必要な人材とかエフォートを確保する方策とか,誰がどの役割に,この時期だと特に重点に取り組むのかみたいな調整とか,公平な人事評価の仕組みへの懸念というものが各大学病院の御懸念でございましたということを追加しております。
 次,2ページ目でございますけれども,前回の総合診療のヒアリングを踏まえて,医師偏在がある中,総合的な診療能力を有する医師の育成などが重要であるということを書かせていただいております。
 ここまでが前文的なものであります。
 ここから先は,課題と対応方策に分けて整理しています。
 前回,総合診療についてプレゼンいただいて書き足しております。
 医師の地域偏在が解消されない中,総合的な診療能力を有する医師が求められている課題に対して,対応方策でございますけれども,大学病院が多様な医療資源を活用しながら,総合的な臨床能力を有する医療人材の育成を促進すべきと。その際に,common diseaseに対応する経験を増やすといった経験から,島根大学や筑波大学からもお話しいただきましたけれども,大学病院内での実習だけではなく,地域の医療機関や僻地の医療機関での実習を充実させるというようなことも重要だと思っておりまして,厚生労働省だけでなく,文部科学省もそういったことを支援していくということが重要であるということで対応方策に書かせていただいております。
 4ページでございますけれども,熊ノ郷先生からプレゼンいただいた内容をあらかじめ書かせていただいております。
 プレゼンいただいたのは,医学生のうち大学病院に勤務する医学生は3割で,勤務したい理由は,診療を頑張りたいと。研究は34%にとどまっている。一方で,勤務したくない理由は,圧倒的に処遇のことが多いというような内容でございました。
 また,専門医としてのキャリアが優先される傾向にあるというアンケート結果が出ております。
 そういったことを踏まえて,人材確保のためにどのようなことを行っていくかということを下に書かせていただいております。
 現在,魅力が低迷している研究の観点でも,医師が大学病院の勤務に対して魅力を感じられるような方策,また,専門研修期間中にも,次のページでございますけれども,博士課程への進学を両立させる臨床研究医コース研究プログラム,専門医機構の御協力で,今,両立できるようになりましたので,これについて,さらに推進していくということが重要だと考えております。
 次の課題でございますけれども,シーシスの話や,長期間の大学院生の経済的負担の増大といった課題を挙げさせていただいております。
 シーシスについては,熊ノ郷先生からも御紹介いただきましたけれども,一定の合理性があるというふうに対応方策で書かせていただいております。
 結果として,できる限り標準修業年限内での学位取得が可能になれば,大学院進学の動機づけにはなると考えております。シーシスによる学位審査を必ずやらなければならないという趣旨ではございませんけれども,一定の合理性があると考えられるという記載にしております。
 また,後段,先ほど処遇の話もございましたけれども,文部科学省でも医学系の研究者の研究費や研究に専念できる環境整備に係る支援を進めておりますけれども,研究者の人件費の上乗せや,研究や診療といったエフォートをさらに肩代わりする研究支援人材の雇用などに活用できる人件費も出せるような予算も含めて,さらに大学病院の医師の処遇改善,医学部・大学病院の研究環境改善がさらに進むよう支援していくことが必要であるということを重ねて書かせていただいております。
 また,次のところですけれども,今日,飯田先生からプレゼンいただきましたけれども,様々な大学のやり方があると思っております。対応方策の現時点の案では,「産学連携を促進するために各大学等が独自に行う取組事例を周知するなど,各大学におけるイノベーションマインドを涵養する取組を推進していく必要がある」というふうに書かせていただいております。この辺り,例えば,例などを追加してもいいというふうに思っておりまして,もし可能であれば,御意見などをいただければと思います。
 5ページの下でございますけれども,前回,医療DXについて厚生労働省からプレゼンもいただいたところです。6ページに対応方策として書かせていただいておりますけれども,厚生労働省の医療DXの推進の制度改正を踏まえて,大学病院もそれに協力していくということ,また,地域の医療機関と薬剤情報なども含めて円滑な共有ができるようにしていくということを大学病院も進めていきたいというふうに考えております。
 課題の一番下の部分でございます。繰り返し処遇の話を書かせていただいておりますけれども,ここでも記載しております。横手先生などから御意見をいただいて,さらに強める形で6ページに書かせていただいておりまして,大学病院の医師の給与体系について,「他の医療機関と比較して,その業務量や社会的な役割に見合った見直しの検討が必要」と書かせていただいております。
 人材の確保として,広島大学のプレゼンでもお話しがあったように,諸手当など処遇改善を進めていただいていると思いますが,その原資となる安定的な財源を確保するということは重要で,国としても引き続きその方策を検討していきたいと思っております。
 その下は,文言を整理したところでございますけれども,特定機能病院の見直しについては,座長からも御指摘いただきましたので,「地域医療構想とも整合した地域貢献」という言葉で統一させた形で,大学病院の機能の今後認められる機能について書かせていただいております。
 また,8ページでございますけれども,やはりいろいろな病院長の方と意見交換する中で,なかなか,特に国立大学,組織の構造上,病院長がリーダーシップを発揮できることが非常に難しいという御意見を多々いただいております。そのため,我々,大学病院の院長が,医療資源の再配分とか,院内の人的配置など,さらにリーダーシップを発揮できるようにマネジメント体制を構築することが重要だと思っておりまして,このように書かせていただいております。
 前回の論点整理から変更した部分を中心に説明させていただきました。以上でございます。
【永井座長】  ありがとうございます。
 いかがでしょうか。
 今村委員,どうぞ。
【今村(知)委員】  今村です。今回の改正に加えて,6ページで,運営,財務・経営のところですけれども,塩﨑さんが発表していただいたように,病院のBSをぜひ作ってほしいということを明記してほしいというふうに思っています。ほかの医療機関と比較できるようにするという表現だけでは十分な意味が伝わらないと思うので,これにBSを作るのは結構労力がかかる話なので,ぜひここで明確に打ち出してほしいというふうに思っております。
 あと,7ページで,特定機能病院の見直しで,今回,「地域医療構想とも整合した地域貢献」という言葉を入れていただいているので,せっかくここまで書き込んでいただくのならば,地域医療構想では手術の集約化などを言っておりますので,事例としては,手術の集約化とかをするとしたら大学病院だと思いますので,そういう事例として集約化を担うことができる機能が求められているということもぜひ書いてほしいというふうに思います。
 2点,意見です。
 以上です。
【永井座長】  相良委員,どうぞ。
【相良委員】  非常にきれいにまとめていただいて,ありがとうございます。
 その中で,まず一つは,5ページのところですけれども,診療のところです。(地域医療への貢献を含む)というところがありますけれども,「今後も国として必要な支援を検討する」というところがありますけれども,やはりこういう面では財政面の支援をぜひお願いしたいなというふうに思います。
 あとは,運営,財政・経営のところ,6ページになりますけれども,一つは,物価高騰,先ほども塩﨑さんのほうからもお話がございましたけれども,なかなか病院の経営に関しましては厳しい状況にありますので,そちらのほうの賃上げも含めた中で,ぜひ考慮していただければというふうに思いますし,医師の給与体系のところも記載していただいていますので,これをぜひお願いしたいというところであります。
 それから,7ページの特定機能病院の見直しについてというところでも,地域医療構想のところも書いてありますけれども,一つは,派遣のところなんですけれども,派遣をどう捉えるかです。例えば,大学病院から派遣をしている,派遣しているところで常勤医として派遣をする,そこが例えば大学病院を退職して,そこでいる人たちが大学病院から派遣されているという形で計上されてしまっているところもありますので,派遣の定義をしっかりしていただきたいと思います。
 ですから,そういう面で,例えば,退職した人たちを,実際に我々の大学から行っているから,ではそれを派遣として採っているところが結構あるので,そうではなくて,実際にその大学の中から行っている人たちを派遣として捉えるべきなのかというところを踏まえて,その定義づけをしっかりしていただきたいなというふうに思いますので,よろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【永井座長】  宮地委員,どうぞ。
【宮地委員】  私は,2ページ目の大学病院の機能等別の課題と対応方策等の教育に関する2つ目から4つ目に関して,1点,意見をしたいと思っております。
 大学病院への人材確保は重要なんですが,ずっと引き止めておくのは無理だと思いますし,むしろいろいろな人が流入して循環しながら維持していくということを目指した人材確保が必要ではないかと思います。
 その観点から,今,派遣の定義の御提言がありましたけれども,大学と地域の医療機関,研究機関などとの兼務がしやすいシステムや,共同雇用の制度などの推進など,医師が複数の場で活躍できる仕組みを検討するということを入れてはどうかと思います。
 また,今回の取りまとめではなく,次回の取りまとめ案に向けた話題として,2点,提案させてください。
 1点目は,生成系AIと医療及び医学教育に関してです。生成系AIの進化と臨床や教育の実践への導入,普及の速さも皆さんお感じになられるとおりかと思いますし,加速度を増しています。知識の詰め込み量ではなくて,それを生かす能力,新しい知識をつくる能力が求められていくように社会や医療が変わっていく。その一方で,大学のみならず,国レベルでの教育や評価の仕組みを変えることには非常に時間がかかると思っています。今の時点で生成系AIの普及を前提として,国として医学教育をどう変えるべきかということを議論し始める必要があるのではないかと思います。
 2点目が,働き方改革に関する提言です。現在の働き方改革が全ての人が健全に働けることを目指す一方で,勤務時間の制限というアプローチを取った結果,医学教育の現場では,研究や教育の時間がますます圧迫される。この検討会で限られたリソースの中でタスク・シフト/タスク・シェア,人材確保の工夫によってこの課題にどう対処するかを議論してきたわけですけれども,大学病院同様,一個人が教育,研究,臨床という三重の責任を全て担い続ける働き方というのはやはり限界があるでしょうし,それが大学病院破綻の一因ともなっていると思います。
 それで,教育,研究,臨床,それぞれに重きを置いたトラック制の導入と,それに応じた業務配分の見直しとともに,そもそも勤務時間の制限が本当にこの目的の達成に資するのかという点も再考されるべきではないかと私は思っています。なので,勤務時間を管理するということよりも,きちんと休めることを保障するということが制度の中心ではないかと。そのことを踏まえて,働き方はトラックごとに異なっていいと思いますし,だからこそその違いを前提に制度設計を最適化するということを今後のこの検討会の議題として御検討いただけたらと思います。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 山口委員,どうぞ。
【山口委員】  まず,5ページの産学連携のところですけれども,今日の飯田教授の御発表を伺っていて,いかに成果を見せることで魅力的に感じて参画する人を増やしていくのかがとても重要だなと思いましたので,この対応方策のところ,もう少しそういったことが分かりやすいように,具体的に加えていただくといいのかなと思いました。
 今,宮地委員もおっしゃったんですけれども,私は,生成AIが急速に今,広まってきているというか,使う場面が増えてきている中で,学びということと作業ということを分けないと,学ぶということができなくなっている,そういう問題が出てきているのではないかと思っています。そういったことも医学教育の中でどう位置づけるのかというようなことが,重要な問題ではないかと思いますので,そういったことも何か中に位置づけて文章化していただくということが必要かなと思いました。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございました。
 北澤委員,どうぞ。
【北澤委員】  北澤です。私は,一つコメントと,一つ質問です。
 3ページの今回追加していただいた中で,総合的な診療能力を有する医師をさらに育成すると書いていただいたこと,大変重要なことだと思います。医学部は,やっぱり医育機関として,患者さんをよりよく診察できる医師の養成ということをこれまで以上に努めていただきたいと願っております。
 もう一つ,質問なんですけれども,これは7ページのところで加えていただいたところですけれども,真ん中辺で,持続可能な病院経営のところで,加えた部分が「医療資源の再編・見直しを推進するなど」と書いてあったんですけれども,これがどういうことなのか,いま一つ分からなかったので,ここが何を意味するのかについて教えていただきたいと思います。
【堀岡企画官】  よろしいでしょうか,座長。
【永井座長】  はい,どうぞ。事務局,お願いします。
【堀岡企画官】  口頭では申し上げたのですが,ここの医療資源の再編というのは地域の医療資源とは違う意味でして,例えば,診療科ごとのベッドの数を院内で調整したり,大変な診療科があったら,そこに優先的に病院内の人的資源を配分したりというようなことは非常にマネジメントとして重要だと思いますので,そういうことをより推進できるようにするという意味で書かせていただいております。
【永井座長】  よろしいでしょうか。
【北澤委員】  ありがとうございました。これだけだと意味が伝わりにくいかもしれないと思いました。
【堀岡企画官】  分かりました。
【永井座長】  ありがとうございます。
 和田委員,どうぞ。
【和田委員】  大変よくまとめていただいて,分かりやすく御説明いただいたと思います。ありがとうございます。
 3ページ目のところで,課題に下線が引いてございます。その中で,「自治体,大学医学部・大学病院,地域の医療機関が一体となって,人材育成に取り組むことが必要である」というコメントが書いてあります。これはおっしゃるとおりで,人材育成のみならず,この連携というのがとても重要だと感じています。ですので,今後は,経営を含めて,国も一緒になって情報共有する仕組みがあると大変ありがたいなと思っています。この視点もこの辺りに書き込んでいただければと思います。
 以上です。ありがとうございます。
【永井座長】  ありがとうございます。
 そういう意味で,経営状況まで含めて透明性が大事だと思います。ぜひ考えてください。
【熊ノ郷委員】  はい,分かりました。
【永井座長】  横手委員,どうぞ。
【横手委員】  すばらしい文案をどうもありがとうございました。
 今回,この特定機能病院の見直しに関して,大学病院が,研究のみならず,地域医療構想とも整合した地域貢献というところが明記されたというふうに思いますが,それを求めるだけでなく,しっかりと評価され,その評価に応じて,やはりしかるべき財政支援を,手当てをいただくということが不可欠ではないかと思っています。地域医療介護総合確保基金あるいは診療報酬なども含めて,そのようなことがなされることを強く要望する次第でございます。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 続いて,ほかに。炭山委員はよろしいでしょうか。
【炭山委員】  「大学病院からの派遣」という言葉です。これは機能係数に影響する部分ですが,横手先生もおっしゃったように,何らかの形で地域医療貢献をやっている場合,もともとの文章は「医師派遣機能」と書いてあったんですけれども,これによって点数化されているわけです。私学の場合には,令和6年6月が0.47だったのが,今回,0.46と下がっていました。国立大学は0.72から0.74と増えているんです。私学の場合には,本院30に対して分院が57ありますので,この分院も,医師少数区域につくっている分院がたくさんあります。これは本院からそういう医師を派遣して分院は成り立っているわけですから,そういうことがこの定義の中に果たしてカウントされているかどうかということがちょっと心配です。したがって,私学の場合は,ほとんどこれ,下位に入っていまして,こういうことに関する評価がどうなのかということです。
 それから,中医協のホームページからちょっと見ますと……。
【永井座長】  ちょっと落ちてしまいましたか。
 では,その間にどなたか御発言の方はいらっしゃいますか。
 岡部委員,どうぞ。
【岡部委員】  5ページのところで産学連携の課題が新しく追加されていて,これは非常に重要だと思ったんですけれども,多分もっといろいろな取組事例を挙げられたほうがいいと思いますので,例えば,今,J-PEAKSで採択されている大学が,多分20以上あると思いますので,そういった中で,医学部,医学病院が中心になっているような,そういう事業があれば紹介いただくといったことも可能性があるかなというふうに思いました。よろしくお願いします。
【永井座長】  いかがですか,今の点,事務局。
【堀岡企画官】  地域中核でどのような取組をしているかとかを踏まえて,どのような具体例を書けるか,今,山口委員からも御指摘いただいたので,具体的に幾つか挙げて,記載を充実させたいと思います。
【岡部委員】  よろしくお願いします。
【永井座長】  銘苅委員,どうぞ。
【銘苅委員】  取りまとめ,ありがとうございました。
 魅力向上というところで産学連携ということで書かれていたかと思いますけれども,本日,調査の報告でもありましたように,やはり社会人枠の大学院生がかなり診療にエフォートをかけているがために,物すごく疲弊している。その状況は私たちも身につまされる思いですけれども,そういったせっかく大学院の社会人枠で入った方々の処遇改善,待遇改善をやはりどこかにしっかり書き入れていただくということと,もう一つは,それによって,その後,博士号を取ったことがキャリアパスになるというようなシステムの構築,今ちょっと思いつかないんですが,そういった今後,博士号を取ることによるキャリアパスになることを検討していくなりの何らかの記載をしていただけると,やはり若手医師にとっては,大学院,大学病院の魅力向上に非常に大きくつながると思いますので,御検討のほど,よろしくお願いいたします。
【永井座長】  ありがとうございます。
 今村委員,どうぞ。
【今村(知)委員】  今村です。先ほどから「派遣」という言葉が議論になっていると思いますので,ちょっと私なりの派遣の理解を確認したいと思いますけれども,派遣は,労働者派遣法の派遣と医学部がやっているような派遣というのは全く業務内容的には別のもので,労働者派遣法とか派遣業法とかの派遣ではないということは明らかだと思うんです。もともと大学は職業あっせんができるんです。卒業生を次の就職先にあっせんするということで,あっせんの一種なんですけれども,今働いている人をほかの病院にあっせんするというのは,再雇用のあっせんなんです。だから,再雇用のあっせんという概念をどうするかということだけではなくて,大学がやっているところと,同窓会がやっていたり,同門会がやっていたりしているところがあって,任意団体がやっているような再就職のあっせんというものをどう定義するのかということを考えていくと,非常に定義が難しい問題だということを思います。
 ですので,特定機能病院の機能としての派遣というのは,総称的ないわゆる派遣ということと考えていますけれども,それを定義していくとなると,なかなか難しい面があって,今回ここで使わなかったのは正解ではないかというふうに思います。
 もし今の認識で違うようならば,文部科学省から指摘してもらいたいと思います。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 私,前から医師派遣の問題にこだわっていて,法律家とも相談しました。先生がおっしゃるように,大学病院の派遣は労働法の話に触れないと整理されているということです。であれば「いわゆる医師派遣」などというあいまいな言葉ではなく,きちんと労働法に準じた言葉を使うべきです。そうしないと,派遣される医師の立場は改善されず,思わぬメッセージが既成事実化します。この問題については,平成14年に厚生労働省の職業安定局長から通知が出ています。自由意思に基づいて当該関連病院に就職するのならば,職業安定法の派遣には該当しない,違法ではないということです。もし自由意思でないということであれば,厚労大臣の許可が必要です。また継続的に行っていれば,それは違法なのです。ですから,医師派遣などという法律的に危うい言葉を軽々に使うべきではないのです。また今村先生が言われたように,医師派遣は大学病院が行っているわけでは必ずしもない。ほとんどの場合,医局という同窓会組織が行っているのです。それは大学病院とは別組織ですし,任意団体です。医局によっては同窓会が社団法人になっている場合もあります。ですから,いわゆる医師派遣ではなく,きちんと定義していないということが危ういわけで,それが大学病院の医師派遣機能ということで形成事実化され,拡大解釈というか,非常に大きな誤解を招くことになりかねない。
 そもそもこの表現には事実誤認もあります。大学病院はほとんどの場合,派遣していません。医師が地域の病院で働くのは,地域医療のためということもありますが,生活のためという面もあります。大学病院の労働環境が悪いから地域の病院に出ている面があるのです。
 例えば,文部科学省でも厚生労働省でも,長時間労働が続き労働環境は決してよくないと思います。それを官庁の持つ長時間勤労機能とは言わないと思います。それを言われたら職員は迷惑だし,そうした状況がこうした言葉で既成事実化してしまう恐れがあるのです。
 そもそも医局という組織は大学病院の外の組織です。私は東大病院の院長のときに,医局を規程から外して外に置いたわけです。医局というのは,場合によっては大学の運営,教授会の方針とか,病院の運営の方針と対立することがあると。だから,外出ししているわけです。言わば親睦団体です。そういう親睦団体がやっていることを大学病院の医師派遣機能と言われると,甚だミスリーディングだし,もしそこに強制力が伴ったり持続的にやっていると,今度は大学病院が職業安定法違反になってしまうという,そういう重大な話なんです。
 今回の報告書,取りまとめ案にも,まだ7ページとか5ページに,「医師派遣」という言葉が残っているんです。だから,こういう言葉は極力やめてほしいということ。可能なのは,例えば大学病院に在籍のまま出向というような形であれば,多分メッセージに近いのではないかと思うので,その辺のシステムをどうやって充実させていくかということだと思います。
 大事なことは,因習として使われてきた古い医師派遣という概念を,制度だとか報告書に取り込んではいけないということです。これをすると,労働法の体系と合わなくなるんです。ですから,厚生労働省も,昨年12月の報告書についても,やはり見直すべきだと思います。これは非常に問題のある報告書だと思います。
 ですから,地域医療への貢献とか,責任ある経営の体制とか,こういうことをもうちょっと概念として至明に位置づけるべきなので,医師派遣というのは結果として起こってくることであって,手段が目的化してはいけないはずですよね。ぜひそこを皆さんよく御理解いただいて,この際,もっと近代的な言葉で語ってほしいということです。
 よろしいでしょうか。
 では,諸岡委員,どうぞ。
【諸岡委員】  まず,取りまとめいただき,ありがとうございます。
 先ほどからコメントが出ていた生成AIとの付き合いとか,あるいは博士号の魅力というのは,医学に限らず,大学のどの分野でも問題となっておりますので,そういったところを共通的な問題としてぜひ取り組んでいただければと思います。
 特に博士号の魅力に関しては,私は工学系なんですけれども,欧米の場合だと,博士号を取ったからこそ就けるポジションとか職種があって,要するに,キャリアパスとして,例えば社会で修士号を取って出た後に博士号を取りに一旦大学に入って,それを取ることによって給与をアップするとか,そういったことが普通にやられている状況なので,そのような博士号取ることによる魅力というものもぜひ検討していただければと思います。これは医学というわけではなく,全体として検討していただければと思います。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 炭山委員,先ほどホームページを御覧になっていたところから落ちてしまったんですが,何か続きはございますでしょうか。
【堀岡企画官】  先生のお話,「中医協のホームページを見ると」というところまで聞こえておりました。その後を御発言いただければと思います。【炭山委員】  中医協のこの医師派遣機能というところに書いてあるのは,これが点数化されてしまっているという話はしましたね。
 令和6年と令和7年を比べますと,私学の場合は0.01ポイント落ちていて,国立は0.72が0.74と2ポイント上がっているんですが,この機能係数が,医師少数区域へ常勤医として半年以上派遣している医師数,当該病院に3年以上在籍している者に限ると,1ポイントを基準値41.0%と書いてあるんです。これを基準にしたときに,私どもの私立医科大学は,本院が30に対して分院が55ですから,当然のことながら,地域少数区域へも分院を建てているわけで,それは本院からの医師派遣,こういうものも実際は地域貢献していることになるんです。国立大学は分院がございませんので,そういうことからすれば,果たしてこの計算の仕方のベースになるものが,いいかどうかということを検討していただきたい。
 特に国立大学のほうでは,すごい数の人たちが出ているんです。200人出ていたりとか,340人出ている。これは一旦退職した後,どこかの機関病院に就職している人たち,そういうものをカウントしているのかどうか。そうでなければ,こんなに医局員がいるわけがないので,そのことと,我々私立医科大学の分院とのカウントの仕方というものが,私たちから見て非常に曖昧だということが私立医科大学の三役会で話題になったので,先ほどそういう発言をいたしました。
 よろしいでしょうか。
【永井座長】  そういう意味でも,この医師派遣というのが全く定義が不明で,何をカウントしているのか。定義も,それから派遣というのだから主体があるはずですけれども,その主体も全く見えない,正直言って,いいかげんな言葉です。それに基づいて医療政策が決められては困るということですね。きちんと定義してほしいということです。
 医療機能評価もそうですし,労働法にもマッチした表現でないといけないはずで,難しいから,いわゆる医師派遣で使っていますということは許されないと思います。うちの大学は医師派遣していますと軽率に言ってしまうと,大学病院が職業安定法に問われることになります。それが医療費にまで反映されるとなると,これは重大な話です。
【炭山委員】  東邦大学大森病院も,今,私どもの参与をやっている小山が病院長時代は,そういう医師派遣業を取るための資格を持った人間が1人育てられたわけです。ところが,それは立ち消えになりまして,現在の状況では,本院,分院ともそういう派遣機能を持っている医師は置いておりません。
 したがって,それぞれの医局単位で地域医療貢献に対して人を出している。それはお互いのアルバイト先,あるいは地域の医療からすれば,当直医を含めて,どうしても医者の数が欲しいということのお互いの関係を継続する,それは医局単位でやっていることです。病院ごとでそういうふうなことをやっていることではないということを確認いたしました。
【永井座長】  それは任意団体がしているということで,大学病院の派遣とみなしているのか,みなしていないのか,どう計算しているのかということですね。この辺,厚生労働省の方,今日お見えではないですか。
【日比課長】  文部科学省の医学教育課,日比でございますけれども,今,御議論いただいている言葉の使い方や定義の問題等々につきまして,今,座長から御指摘をいただいているところですので,改めて座長の御指導の下,厚生労働省と一緒に検討させていただきますので,よろしくお願いしたいと思います。
【永井座長】  現実的にも使える言葉が必要です。それをこの際,しっかりと定義することが,これからの検討に非常に重要だと思いますので,よろしくお願いいたします。
 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 御発言がなければ,それでは,事務局から,今後のスケジュールについて,よろしくお願いいたします。
【宮沢課長補佐】  皆様,資料5を御覧ください。今後の開催スケジュールですけれども,次回の日程は,6月24日火曜日を予定しております。引き続き,どうぞよろしくお願いいたします。
 以上となります。
【永井座長】  ありがとうございました。
 それでは,本日についてはこれで終了いたします。どうもありがとうございました。
 
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