今後の医学教育の在り方に関する検討会(第13回)議事録

1.日時

令和7年4月23日(月曜日)14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省(東京都千代田区霞が関3-2-2) ※対面・WEB会議の併用

3.議題

  1. 総合的な診療能力を有する医師等地域に必要な医療人材の養成
  2. 医療DXについて
  3. 議論の整理(案)
  4. その他

4.出席者

委員

永井座長、今村(知)委員、今村(英)委員、北澤委員、熊ノ郷委員、相良委員、炭山委員、田中(純)委員、田中(雄)委員、宮地委員、銘苅委員、諸岡委員、山口委員

文部科学省

伊藤高等教育局長、奥野審議官、日比医学教育課長、堀岡企画官、多田大学病院支援室長 他

オブザーバー

筑波大学医学医療系臨床医学域 前野教授、島根大学医学部附属病院 白石総合診療医センター長
厚生労働省医政局 西嶋医事課長、厚生労働省医政局医事課医師等医療従事者働き方改革推進室 和泉室長、厚生労働省医政局地域医療計画課医療安全推進・医務指導室 松本室長、文部科学省研究振興局ライフサイエンス課 倉田課長

5.議事録

 
【永井座長】  定刻となりましたので,これから,第13回,今後の医学教育の在り方に関する検討会を始めます。
 委員の皆様には,お忙しいところをお集まりいただきまして,ありがとうございます。
 事務局から,委員の出欠状況,配付資料の確認,オンライン会議での発言方法等について,説明をお願いいたします。
【宮沢課長補佐】  4月1日付で医学教育課に着任いたしました,課長補佐の宮沢でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず,新たに検討会の委員に就任いただいた委員を御紹介させていただきます。
 昭和医科大学病院長及び全国医学部長病院長会議会長である,相良博典委員でございます。よろしくお願いいたします。
【相良委員】  ただいま御紹介いただきました,全国医学部長病院長会議の会長,昭和医科大学病院長の相良でございます。本日から委員として参加させていただきますので,よろしくお願いいたします。
【宮沢課長補佐】  ありがとうございます。
 続いて,委員の出欠状況でございますが,本日は,大井川委員,岡部委員,金井委員,横手委員,和田委員から,御欠席の連絡をいただいております。なお,田中雄二郎委員は遅れて御出席の予定でございます。
 また,本日は,有識者として,白石吉彦島根大学医学部附属病院総合診療医センター長,前野哲博筑波大学医学医療系地域医療教育学教授にも御参加いただいております。ありがとうございます。
 さらに,厚生労働省医療情報参事官室より田中彰子参事官に御出席いただき,現在,厚生労働省で検討されている医療DXの推進に係る取組について,御紹介いただきます。
 続きまして,事務局として,4月1日より,日比医学教育課長,多田大学病院支援室長,赤岩医学教育課課長補佐が着任しておりますので,代表して医学教育課長の日比より,一言,御挨拶申し上げます。
【日比課長】  4月1日付で俵の後任で医学教育課長に着任をいたしました,日比でございます。これからどうぞよろしくお願いいたします。
 医学教育課は私も含めまして比較的多くの職員が異動で入れ替わっておりますけれども,この新たな体制で,先生方の御指導もいただきながら,しっかりと仕事を進めていきたいと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。
【宮沢課長補佐】  それでは,次に,配付資料の確認をさせていただきます。配付資料は,議事次第に記載のとおりですが,資料1から6,また,参考資料1から3がございます。もし不足等あれば,事務局までお知らせください。
 なお,資料につきましては,文部科学省のホームページでも公表しております。
 続きまして,オンラインによる会議の進行に当たってのお願いがございます。御発言される場合には,Zoomの挙手ボタンを押していただくよう,お願いいたします。その後,座長から順に発言者を御指名いただきますので,御発言いただく際は,マイクがミュートになっていないことを誤確認の上,御発言をお願いいたします。
 以上でございます。
【永井座長】  ありがとうございます。
【永井座長】  では,次第に沿って,今日は,総合的な診療能力を有する医師等,地域に必要な医療人材の養成,医療DXの推進について,議論の整理(案),その他について,御議論いただきます。
 最初に,議題1,総合的な診療能力を有する医師等,地域に必要な医療人養成について,事務局より説明をお願いいたします。
【堀岡企画官】  よろしくお願いいたします。文部科学省医学教育課の堀岡でございます。本日,白石先生,前野先生からお話をお伺いするところでございますが,その前段階として,文部科学省の取組と今後の方向性という形で,総合的な診療能力を有する医師の養成,文部科学省の取組などを御紹介させていただければと思っております。
 まず,1枚目でございますけれども,医学教育モデル・コア・カリキュラム,新しくなっておりますが,その中でも,基本的な資質・能力という一番大きなくくりの中でも,「GE:総合的に患者・生活者をみる姿勢」というものが新たに追加されております。また,学修目標の中でも,総合的な診療能力を有する医師の重要性というものを様々な視点から記載させていただいておりまして,このページにまとめております。
 2ページ目でございますけれども,必ずしも総合的な診療能力を有する医師というのは総合診療科だけではございませんが,総合診療科を有する大学病院,また,総合診療の専門研修プログラムを有する大学病院がどれぐらいあるかということをまとめております。総合診療科を標榜している大学病院は45,総合診療の養成プログラム持っているのは67というところであります。
 次のページでございますけれども,地域枠の中にも診療科選定地域枠というものが多くございますが,その中で総合診療科はどういう位置づけになっているかと申しますと,左下のグラフでございますけれども,一番人気があるのは産婦人科で41大学が設置しております。総合診療科は39大学で設置されておりまして,右側,これは複数の診療科から選ぶような地域枠となっておりますので,必ずしも,その人数そのものが全部,単科の診療科となるわけではございませんけれども,総合診療を選び得る地域枠として347という数がございます。
 次のページでございますけれども,今までも文部科学省は,ポストコロナ時代の医療人材養成拠点ということで,コロナの反省を踏まえて感染症や総合診療といったものを養成するプログラムを予算立てしておりまして,5ページでございますが,様々な国立大学や私立大学で連携して,総合診療を黄色く塗っておりますけれども,総合診療や感染症対策の医師の養成プログラムというものを各大学で推進しているところであります。
 今般検討しているものは次のページの地域の医療需要に対応するための医療人材の養成というスライドでございますが,左上に「総合的な診療能力を有する医療人材の養成と地域医療への貢献」というテーマが書かれております。これ,要は地域医療の環(わ)と人材育成の環ということで二つの環を事業の中でつくっておりますけれども,地域医療の環として,文部科学省ができることとして,例えば,医学生で,低学年も含めて,臨床実習の環を地域の病院や診療所でできるだけやっていただくという形を我々は進めておりますが,さらに進めて,医療人材を実際に,例えば,2週間や,長ければ,2か月,3か月といった形で,地域の病院や診療所,また,在宅や介護施設に出すということをより推進して,それをもって,人材養成の環という形で仮に書かせていただいております。例えば,訪問看護や訪問薬剤といったものも一緒にそういう場に行くようなことによって,人材養成に資するようなこともしてはどうかということを考えております。
 次のスライドは,御参考でございますけれども,追加の御発言あれば後ほど厚生労働省からもいただければと思いますが,厚生労働省でも総合的な診療能力を持つ医師の養成をやっておりまして,いろんな大学で総合診療医センターを設置して,様々なことに予算が使えるような予算事業というものをつくっていただいているところではございますけれども,文部科学省でも新たに様々な取組というものを検討するということを考えております。
 文部科学省からの情報提供は,以上でございます。
【永井座長】  続いて,白石先生,前野先生から,お願いします。
【白石先生】  白石からでよろしいでしょうか。
【永井座長】  お願いします。
【白石先生】  島根大学の総合診療医センターの白石です。10分ほどでお話ということでしたので,話をさせていただきます。
 島根県は,皆さん御存じだと思いますけども,離島があって,かつ,東西230キロあって,人口規模としては64万人,65万人を切りまして,予算も地方税が17.6しかないというようなところで,しかも,新幹線がなくて,高速道路の管理がない。離島までは,フェリーで2時間半程度,50キロ離れているという状況の中にあります。実際,自治体が19個あるんですけど,11個は1万人を切るような人口というところで,そこで,どういった病院,どういった医療を残していくか,どういう医療者が必要かということで,総合診療医センターというのが厚生労働省の総合的な診療能力を持つ医師養成の推進事業というところで2020年からスタートして,実際は,本格稼働は2021年からという形になります。
 その中で,コロナのさなかに始まったんですけど,例えば,島根大学はもともと奨学金生が大体20%ぐらい,20人ぐらいいるんですが,いわゆる松江・出雲以外の地域枠の子たち,それから,県内定着枠と緊急医師確保枠,その子たちが高校生の時代に島根の医療機関で5日間の医療体験をするということが受験条件だったんですけども,コロナのときになくなってしまっていて,2020年はなかった。例えば,地域定着枠だと東京とかからも来るんですけど,島根の状況を知らずに島根大学に入っても困るだろうということで,オンラインで体験実習を2日間。これは入る前なので完全にボランティアなんですけど,島根総合診療医センターがらみの地域の医療機関がこういう形でやりました。学生は現地には来ずに,それこそZoomとかGoProとか使って診察を見ながら,チャット機能を使いながら,高校生が医師の後ろに立って見学していても,やっていることの意味が分からないと思うので,Zoomということもあるので,今,何でこんな質問したか分かる? とか,あるいは,ACPって知っている? みたいなことをチャット上でいろいろ話をしながら,解説をする。医師の手が一つ余分に要るんですけども,そういうことをしたりしました。それから,地域住民とも話してもらって,地域の医療機関が何を期待するかとか。あるいは,他職種から,こんな総合診療医は嫌だみたいな話をしてもらったりしました。ちなみに2021年は,51人参加して,40人受験して,17人入学しています。次の年はもう少し少なかったです。
 こんなことがあって,コロナが終わったので,もうオンライン体験じゃなくてリアル体験に戻ってたんですが, 5日間となると,高校3年生にとって非常に負荷が強い。やっているほうからすると,明らかに地域医療の解像度が上がって,面接なんかでもきちんとした言葉でしゃべるんですけど,でも,高校生の教員のほうも,勉強をしないといけないときに現場に5日間入れるのはというところもあって,実際,R6なんかは,10枠ある地域枠の子たちが,結局,2人しか入れなかった。受験者数も減るし,当然,学力も減るしということで,残りの8枠を一般枠に回さざるを得なかった。R7に関しては7人入っていたりはするので,そういう問題がありましたということがあります。実は,大学のほうで受験者数が減ると質が保てないということで,残念ながらR7からはなくなるという決断をしてしまったという状況があります。僕は,地域のほうからすると,絶対やったほうがいいんじゃないかなと思ったりしています。
 それから,地域の総合診療医をつくるのに,普通,いわゆる大学病院に地域の総合診療医っていないですよね。地域の総合診療医が大学に教育に来るということをモットーに総合診療医センターは活動していて,とにかく総合診療医を養成して僻地・離島を含む住民たちに持続可能な医療を提供するということをモットーに一応やっていることになります。実習前に,今現在,25コマあるんですけど,症候学の授業を一手にいただきまして,僕がやるわけではなくて,地域の総合診療医が20人程度,授業に来る。本来なら大学の授業に来るいわれのないというか,地域で実際やっている人たちなので,それを大学のメンバーと一緒にやりながら,地域の実践知を実習前の4年生の人たちに伝えるということをやっています。その中で,ガイドラインではこうなっているけど,うちはMRIがないので,実はこういうふうに運用しているんだよみたいな話もしたりしています。
 その症候学の授業を受けた子たちが,4年生のときに地域実習ということで,17個の医療機関を選定して,その17個の医療機関に,これはうちのウェブサイトに出してあるんですけど,3分間の紹介動画,うちに来るとこんなことが実習でできますよみたいなことを見せて,学生たちはそれを見て,質疑応答をした上で,11人のグループで,誰がどこに行くかと。全部で17の受入れがあるので,不人気のところは年に1人ぐらいしか来なかったり,あるいは,人気があるところは非常に競ったりというようなことでやっています。それを5年生全員が9クール,1年かけて回る。自分たちが選んだところに行って4週間やるんですけど,4週間行ったきりになるんですが,その中で,配信系のもので,ルンド大学に協力してもらって英語による医療面接をやってもらっていたり,大学院の前医学部長にプロフェッショナリズムの講演をしてもらったり,それから,下の2つは,患者中心の医療,地域医療のACCCAという,いわゆる総合診療とか地域医療のコアになるような物の考え方を,大学病院からではなくて,地域の在野にいる家庭医の先生方に講義をしてもらっている。
 それ以外にも,毎週木曜日に3人の大学の教員が1人20分ずつフィードバックをしながら,それこそ,虫が出て困ってないかから始まって,夜眠れていますかとか言いながら,少し余裕がある子だと,準夜帯まで当直に就いてみたらとか,あるいは,入院患者を担当しましたとなると,1分,プレゼンしてみるかみたいな話をしながら,フィードバックをしています。最後の金曜日に全員が帰ってきて,3時間かけて全体の発表会をするということになっています。このときに,地域の先生方もZoomで入っていただいて,フィードバックをもらったりしています。この3時間の中で,最後終わったときに,後輩から,17個の病院のうち,どこへ行ったらいいかという質問が来たときに,自分が行ったカリキュラムをリコメンドする人って聞いたら,ほぼ,8割,9割の人が手を挙げて,この4週間で医師としての人生が変わったと思う人って聞くと,3分の1ぐらいの人が手を挙げるというようなことで,かなりのインパクトを持って地域の実習を行うことができるんじゃないかなと思います。だから,全員が総合診療医になるわけではもちろんないですけど,正しく地域の総合診療を理解するということには非常に役に立ってんじゃないかなと。
 ただ,一方で問題は,4週間,島根県内の隅々のところまで行きますので,松江とか出雲近辺だとお金はほとんどかからない場合もあるんですけど,旅費の問題と,4週間いるので,滞在費の問題ですね。病院の宿舎であるとか,町営住宅であるとかが安く借りられればいいんですけど,なかなかそうもいかない場合があって,普通に考えると,20日間だったとしても,ホテルに素泊まり6,000円で,それだけで12万円かかってしまうので,滞在費の問題と,それから,受入れしてもらっているところへの実習謝金の問題というのが発生してくるなと。実習謝金に関しては,数年前まで学生が1人当たり1日3,000円払っていたんですけど,1,000円にしてと言って,3分の1にしてもらっています。滞在費に関してもできるだけ,先ほど言いましたように,官舎とか,お金がかからない,あるいは少なくて済むところをお願いして,何とかR7は学生から徴収しなくて済んでいるんですが,R8に関しては,もしかすると学生から負担金みたいなものをもらわないとこの方法では運営できないかもしれないということが,医学部長マターとして,今,挙がっています。旅費に関しては,なぜか知らんけど,島根大学は昔から同窓会がお金払ってくれるということで,一応,今,旅費は払っています。
 それ以外にも,高度総合診療力修得コースという時間外の授業をやっていて,これも一応,大学,教授会で認めてもらって,単位を発行する。必須じゃないんですけど,単位発行してもらうということで,AコースからEコースまである中で,Aコースは,座学をした後,現場へ行って,症例のポートフォリオを半年かけて書いて発表する。Bコースは身体診察と臨床推論。Cコースは,正常所見の所見が全部書けるぐらいのということで,エコー技術修得コース。Dコースは,研究・論文コースで,実際,医学生が国際学会で発表したり,論文を書いたりというようなことをしています。Eコースは胸部レントゲン。こういうようなことをやりながら,普通だったら大学にいない地域の総合診療医が大学の教育に絡むというところで,学生さんたちが,総合診療医ってどんなの? 地域の総合診療医はどんなの? ということが分かるような形で,今,真ん中にある列が県内の専攻医の数,左側が総合診療医の数ですが,10%を超えるような形で,この中に総合内科は入ってないので,総合内科まで入れるとパーセントが20に近くに上がるかなと思うんですけど,島根の実情に合ったような形での総合診療医がかなりいい形で養成されてきたなというのが,この4年間の取組かなと思っております。
 私のほうからは,以上です。
【前野先生】  筑波大学,始めてよろしいですか。
【永井座長】  お願いします。
【前野先生】  今回は,貴重なお時間いただき,ありがとうございました。筑波大学の前野と申します。私が今まで取り組んできた,「筑波大学における総合診療医養成の取り組み」ということで,10分間という短い時間ですので,かいつまんでお話をしたいと思います。
 最初に,当たり前のことなんですけれども,総合診療医養成という観点から,大学はどういう立ち位置なのかということを,ちょっとおさらいをしたいと思います。正直申し上げまして,大学病院だけでは総合診療医の養成は完結しないというふうに,私は思っております。その理由は,特定機能病院だからです。特定機能病院というのは,特定の機能をする病院ですので,患者を総合的に診る姿勢が求められるのは診療科によらず同じだと思いますし,全ての専門家がそろっているという意味では非常にいいんですけれども,このスライドにありますように,困ったことがあったら,すぐに何でも気軽に相談に乗るとか,病状が落ち着いてからもずっと定期的に通院するとか,慢性期も含めた健康問題を1人の人がまとめて診るとか,家族も診るとか,在宅ケアとか,あるいは健康予防活動というものは,どちらかというとやってはいけないといいますか,それは業務ではないので地域にお願いしてくださいということをお願いしなければいけない病院だと思っております。
 ほとんどの医学生がここで臨床実習をします。そして,医学部の教員というのは特定機能病院の現役の臨床医でもあると思いますので,こういう部分の教育というのは,いろんな意味で難しいというふうに思っております。ただ,その一方で,大学はやらなくていいかというと,そうではなくて,全ての医学生は,当たり前ですが,卒前のときは大学に所属しているわけですね。地域枠も増えてきています。将来は,9割の卒業生は大学病院以外で勤務するわけなので,そのキャリアの第一歩を全ての大学がデザインする義務があるんじゃないかと,私は個人的に思っております。また,大学は豊富なネットワークと選択肢を持っていますので,例えば,大きな病院と小さな病院,そういったところを回しながら研修をしていくというような意味では最もやりやすいところですし,あと,研究とかを含めたアカデミックキャリアを提供するというメリットもすごくあると思っています。また,地域発の,地域からエビデンスを発信していく,そういうリサーチもやっていかないといけないと思っております。総合的な力を養成した後,例えば,病院で働く,診療所で働く,一時期,研究に従事する,そういったトータルのキャリアデザインをコーディネートするという意味では大学の役割というのは非常に大きいですし,また,子供が生まれたので少しペースダウンをしてというようなところもかなりコーディネートしやすいというメリットはあると思います。なので,特定機能病院という医療機関だけではなかなか完結しないですけど,やはり大学がコアになっていく必要があるというふうに思っております。
 このようなコンセプトに基づきまして,ここまで筑波大学でコーディネートをやってまいりました。その取組を少し御紹介したいと思っています。
 基本コンセプトは,「地域で活躍する医師は,地域で育てる」ということになります。大学は教育リソースを持っていますけれども,フィールドは持っていない。地域は,フィールドは持っていますけれども,教育リソースは十分とは言えない。それをうまくマッチさせるという仕組みづくりに取り組んでまいりました。
 模式図でお示ししますと,筑波大学が教育資源や指導医の派遣といったものを担当する。地域はフィールドを提供する。それと,先生方も御存じのように,今,大学病院は経営状態が非常に厳しくて,地域医療に貢献しても,それで病院の収入が増えるわけではないですし,教員自体は,定員削減とか,様々な中で,新規にリソースを投入するというのは非常に難しい現状にあります。ですので,実際,展開するフィールドである地域から寄附講座などの支援をいただいて,こういった好循環を回していく。それを行政や医師会に支援していただく。こういうようなモデルを考えまして,もう20年近くになりますけども,動かしてまいりました。
 幾つかあるんですけども,今日は時間もありませんので,その中の一番メインの取組である,寄附研究部門,地域総合診療医学というものを御紹介したいと思います。これは,文部科学省のGP,2013年から2018年に頂いたGPをベースに,GPが終わった後,自立する取組として走り始めたものです。茨城県は,御存じのように非常に医師不足県でして,医者が足りない地域をたくさん抱えております。その中でも特に医師不足が顕著なところの自治体,市町村単位の自治体ですとか,医療機関とか,そういった様々なところ,8者から寄附金を頂きまして,教員を14名雇用しております。この教員が,大学と地域をつなぎ,教育に当たっているというような仕組みを構築いたしました。
 これは我々筑波大学総合診療科の主な教育関連施設になりますけれども,ここでお示ししている水色のところ,これがいわゆる医師少数地域に当たります。星がついているのは,家庭医療専門医という,総合診療では一番ㇾベルの高い専門医を持っている者でして,家庭医療専門医を持っている常勤の指導医がいるところに――大学に教員がすごくたくさんいるように見えますけれども,この水色は,地域で2日,大学で2日というような形で,両方で仕事をする,寄附講座の教員になります。こういう教員が,いわゆる教育の実際のマンパワーにもなりますし,現地とのつなぎにもなりますし,大学で教えていた先生が地域でも教える。あるいは,地域で在宅をやっている現役の先生が大学でも教える。そういうような仕組みを構築しております。例えば,神栖とか北茨城は本当に医師不足地域で,筑波大学としてもなかなか,ほかの科は派遣が難しいところなんですけど,ここにこれだけの医師を派遣して,教育を行っております。ここで働く医師のほとんどは,地域枠とか,そういうのでもなくて,茨城県出身でもない医師もたくさんおります。こういう総合診療のきちんとした教育診療拠点を形成すれば,人はある程度動くというようなことを感じております。
 こういったリソースを利用しまして,卒前教育にも取り組んでおります。地域医療教育プログラムとして1年生から6年生まで様々な教育を実践しておりますけれども,特徴としては,ほとんどの研修が必修であるということです。例えば,1学年,約140人の学生がおりますけど,140人の学生がほぼ1か月,地域に滞在して,地域を見たり,在宅医療を経験する。なので,常時20人近い学生の,地域の実習のコーディネートをやっております。こういったもの,あるいは低学年からの早期体験実習を含めたものには非常に強力なコーディネートが必要で,そこに地域との連携で得られたリソースというものを活用して,そういう仕組みで取り組んでおります。ただ,先ほど白石先生もおっしゃっていたとおり,行く学生の交通費とか,特に県として行ってほしいところというのは鉄道が通ってないところだったりするので,どうやって行って,どうやってそこに泊まるのか。そういった部分に対する支援というもの,それから,こういった複雑なものをコーディネートするためのマンパワー,そういったリソースというようなものは,先ほど申し上げたように,なかなか大学本体からは出てきづらいので,そういったところを戦略的に考えていく必要があるんじゃないかなと思います。あと,これからは,オンライン診療とか,この後話題になる医療DXとか,そういった新しい時代の地域医療,そういったところの教育も必要になってくると思いますので,そういったところの投資も必要になるんじゃないかなというふうに思っております。
 今申し上げたような活動を通して,これはホームページに載っているもので,ちょっと古いんですけれども,うちの現状ですが,これまでの流れの中で,実際に専攻医数,これは75ですけど,今,82名が修了して,58名が家庭医療専門医を取得しております。過去に在籍していた者を含めると,全国に1,200人いる家庭医療専門医のうち,85人が筑波総診にいたことがある人ということになります。こういったリソースは,今日はメインのテーマではないですけど,研究というところでも生かされておりまして,我々,年間約60本の英文原著論文を出しております。このような形で地域と大学が一体になって,お互いにとってメリットのある形というものをつくっていきたいと思っておりますし,それには,行政,それから,大学からの戦略的な支援も必要ではないかというふうに思っております。
 以上,私のお話を終わらせていただきます。どうも,御清聴,ありがとうございました。
【永井座長】  ありがとうございます。
 それでは,ただいまの御発表に,御質問,御意見をお伺いしたいと思います。どなたからでも結構でございます。いかがでしょうか。
【山口委員】  山口ですけど,よろしいでしょうか。
【永井座長】  どうぞ。
【山口委員】  御発表,どうもありがとうございました。お二人に一つずつ質問があるんですけれども,まず,白石参考人には,他県の人たちは島根県の現状が分からないから高校生のときに5日間の体験をするということで,やはり,何も知らずに島根県に行くよりは,体験する,実際に自分の肌で感じるというのはすごく大事なことではないかと思いました。実際,51名のうち40名が受験をして,17名が入学された。この17名の方というのは総合診療に関心があっての入学だったのかということを教えていただきたいのと,残念ながら体験をやめられるということなんですけれども,やめられることによってどういう影響が予想できるのかということを聞かせていただきたいと思いました。
 それから,前野参考人には,最後に「数字で見る「筑波総診」」という成果を見せていただいたんですけれども,これは,地域で教員とかを派遣してという体制づくりをされて,何年間ぐらいの成果の結果なんでしょうか。どれぐらいの期間でこれだけの成果が出るのかというのがちょっと分からなかったので,その辺りを教えていただきたいと思います。
 以上です。
【永井座長】  いかがでしょうか。
【白石先生】  御質問,ありがとうございます。地域の現場というか,東京の電車に乗っている人たちと,虫がいて,田んぼがいて,官舎に虫が出るのは当たり前だよって,全然,生活が違うので,そこで行われている生活も見てもらわないとというところがあって,絶対要るんじゃないかなと。実際,かなりの確率で統合診療に興味があって島根まで来ているので。ただ,入ってから学部生の中で学んでいく中で,だんだん興味・関心が変わっていくということはもちろんあると。ただし,かなりいろんなところのタイミングで総合診療・地域医療を見るタイミングがあるので,先ほども言いましたけど,正しく理解して,自分のやりたいことは,最初はこれだったけど,こちらかなというようなことはあるのかなと。ただ,普通の一般入学に比べると,明らかに関心は高いと思います。我々が2021年に活動を始めるまでは,入学のときに興味を持っていても,その後,かなり努力しないと地域の総合診療医と出会えないという状況でしたので,そうするとやっぱり,入るときには,例えば100人のうち80人が総合診療・地域医療に興味があると言っていても,出るときには3人ぐらいになっている。しかも,それが島根で学べないので県外の有名病院に行っちゃうみたいなところがあったのが,明らかにムードは変わったなと思います。
 今,チャットに入りましたけど,同じように,大学のことだけではなくて,日本全体のことを考えたときに,学力のある子たちが東京・大阪に集まっていますよね,今。その子たちに地域医療の体験をさせて,あわよくばじゃないけど,島根大学の県内定着枠を受けてもらえんかなという思いもありながら,実はTouch the Futureという社団法人で活動も一応やっておりまして,これは,島根だけではなくて,利尻から平戸まで日本全国で。ただ,病院が高校生を受け入れるって,なかなか意味が分からないですよね。医学生や看護学生だと青田刈りとかあるんですけど,高校生を受け入れるというところと,ある程度丁寧にしないといけないので,Touch the Futureの活動ということで言うと,医学生を帯同させて,振り返りとかを実際に興味がある医学生にやらせるという形で,今,運用をしています。5万円頂いています,1週間に。
【永井座長】  ありがとうございます。
 前野先生,いかがでしょうか。
【前野先生】  私のほうから,御説明したいと思います。御質問,ありがとうございました。
 今出しましたけど,大学の総合診療科ができたのが2002年,それから,大学と地域を回る仕組み,地域医療教育ステーションというのを設置したのは2006年です。GPを頂いて,その後,寄附講座を設置してということになりますので,2006年からだと19年,総合診療科の設置からだと23年ということになります。ただ,これは認識が今ほど広がってなかった頃の取組なので,今,この取組を始めれば,かなり早くできるんじゃないかなというふうに思っております。
 以上です。
【山口委員】  どうもありがとうございました。
【永井座長】  では,宮地委員,どうぞ。
【宮地委員】  ありがとうございます。お二方に同じ質問を2点お願いしたいと思っています。
 私も,大学の中で働く家庭医療専門医として,以前働いていた大学でこのような地域医療や総合診療の実習を担当していた経験があるんですけども,大学や大学病院から学生や研修医の受入れを継続的にお願いする,金銭以外のインセンティブとしては臨床教授などの称号の付与というのが一般的に多いかと思うんですが,多くの場合は総合診療や地域医療への熱意に頼っているというような状況があるのではないかと思っております。
 なので,1点目の質問としては,称号付与以外に有効だと感じられているインセンティブとしての取組があれば教えてください。
 2点目としては,教育の質の担保として,コーディネートする大学側として,実習に参加してくださる施設に対する教育,ファカルティディベロップメントの取組をされているか。されているようであれば,教えていただきたいと思います。
 以上です。
【白石先生】  じゃあ,島根のほうから,お答えします。
 実習費を1人当たり1,000円くれるということはあるんですけども,インセンティブというのは特にないんですね。それよりも,島根の,みんな同じような状況で困っているところに緩やかなコミュニティーをつくったというのが一番大きかったのかなというふうに思っています。要するに,小さな病院で,50床の病院で5人の医者がやっているけども,よそで何やっているか分からないというのが,今,ビジネスチャットツールのSlackというのを使っていますけど,島根県,二千二,三百人の臨床医がいる中で,総合診療あるいは総合診療的に働いている300人が登録されていて,150人ぐらいがActiveメンバーという形で,1週間に1回,何かの発信をしているという中で,その大きな緩やかなコミュニティーの中で,教育だったりとか,情報交換だったり,当然,そこでやり取りがあると,オフ会じゃないけれども,講演会とか,いろんなことをしたときにも,顔がつながっているというのが一番大きいのではないのかなというふうに思っています。
 先ほどの二つ目の質問で,FDというのもそういう形で,例えば,先ほど数字を出したのは総合診療専攻医にエントリーした数だけ出したんですけど,当然,その後,教育が要りますから,それは地域のたたき上げの総合診療医だけだと難しいところがあって,家庭医療系の人たちもそのグループの中にいるので,全県下をまたいでのFDをするということ。さらに,総合診療専門医を取った後,病院ごとの広報だったりとか,人材管理だったりとか,地域を絡めて,あるいは,病院の問題を,病院祭りをつくる形で支援をしたりというような形で,オンザジョブの形で地域の総合診療医がやるべきことというのを支援しているというのが,総合診療医センターの活動になります。
 以上です。
【前野先生】  じゃあ,前野のほうから,お答えします。
 まず,称号の付与というのはあんまりインパクトがないかなと個人的には思っているんですけども,茨城県は大変な医師不足県ですので,医師の安定確保というのが最大のインセンティブだと思っております。特に,総合診療をキャリアの中心に据える方というのは,地域のニーズにぴったりマッチする。しかも,我々は専門医レベルの医者と専門医を目指す専攻医を送りますので,クオリティーという意味では非常に評価が高いんですね。ですから,教育研究経費を御支援頂きますけども,それ以上に,質が担保された医師が確実に長く来る。そうすることによって,医療機関は,部屋を増やしたりとか,投資ができるんですね。それはお互いにウィン・ウィンの形になっていると思います。いわゆる医師派遣というのは,例えば医師派遣会社に頼むと,リベートを取られるわけですね。そのリベートというのは将来の質保証には使われないわけですけども,我々は出した拠点というのはほとんど引き上げたことがなくて,5年,10年単位で複数の専門医レベルを確実に送るということの担保でもあるので,そういう意味で非常に大きなインセンティブになっているかなと思います。
 それから,二つ目の御質問のFDですけれども,先ほどお伝えしたように教員そのものが毎週そこに行っていますので,大学でこうするようにしようと。そして,地域医療教育という専門家集団でもありますので,教育技法とか,そういったものを大学の中でしっかり高めて,それを持ち寄る。そして,大学で集まるので,専攻医が地域をまたいで動いていっても,統一方針でずっと,ポートフォリオの指導とか,ほかの施設の分もやったりとか,そういうような,多様だけど一体感のある,質の高い教育のクオリティーというものを実現したいというふうに思っています。
 以上です。
【宮地委員】  ありがとうございました。
【永井座長】  北澤委員,どうぞ。
【北澤委員】  北澤です。御発表,どうもありがとうございました。
 私も,白石先生,前野先生に同じことを伺いたいんですけれども,今後,他県でも同じような仕組みをつくるとした場合に,どういったサポートが必要なのか。先ほどのお話では,学生さんの滞在費だとか,そういったところでお金が必要だというお話もあったんですけれども。,ネットワークをつくると一口で言っても,いろいろ難しい面もあるんじゃないかと,お話を聞いてて思ったんですが,例えば,国が何かをサポートするとするならば,何が必要だと思われますでしょうか。お願いします。
【白石先生】  難しいですね。そこに,ニーズというか,本当に必要だと思っている地域があるのかどうなのかということじゃないのかなというふうに思うんですね。島根の場合,先ほど言いましたように,19個ある自治体のうち,11個が1万人を切るか切らんかぐらいのところで,恐らく人口が1万人を切ると100床の病院ってほぼキープできなくなって,6,000人とかになると,50床の病院になるんですね。そうすると,そこに何科の診療科をそろえるかとなったときに,内科と,子供が産まれるから小児科,年寄りのじいさん・ばあさんがおるから整形外科というと,結構,みんな罰ゲームな感じになっちゃうんですけど,運動器が診れて,子供が診れて,内視鏡とエコーができる総合診療医が5人いれば,これは勝ちパターンというか,みんな喜んで行くようになるわけですね。そういうところが島根の最も特徴で,本来は地域枠の子たちもそういうところに行かなかったのが,今,人が集まり始めると,みんな喜んで行くようになって,何なら,県外に出ちゃっていた子たちが,最近,島根はにぎやかだなということで,帰ってくるということが起こり始めています。だから,県によって,そういう何でもできる総合診療医を求めているところもあれば,そうじゃなくて,いわゆるホスピタリスト,300床の病院の救急と入院を見てくれる人が欲しいという県もあると思うので,ニーズによって大分違うんじゃないのかなという感じがしております。
【前野先生】  私のほうから。お金は必要ですが,お金だけじゃ駄目だと思います。これまで,文部科学省のGPとか,厚生労働省の総合診療医センターとか,様々な形でそういう事業は行われていますけれども,全てがうまくいっているわけではありません。やはり,理念を理解して,中長期的なプランで地域としっかりとしたネットワークを構築して,そういうものをずっと示し続けていけるような人材と組織,それから,地域の支援体制とセットでなければ,補助金の奪い合いになって,期限が来たら終わりで何も残らないという前例はたくさんあるんですね。ただ,先ほど強調したように,今,大学の経営が厳しくて,定員が削られる中で,大学は独自に新たな資源を割くのが難しいというのも事実です。ですから,その呼び水になるような投資はぜひお願いしたいんですけども,それが付け焼き刃で終わらないように。実際,運営してすごく感じるのは,最後,続けてくれるのは地域なんですね。なぜならば,地域は受益者だからです。受益者なので,いいことがあれば,続けてくれます。ですから,地域が,これはいいと,これは自分たちがしっかり続けたいと思えるようなものを見せる,その初期の立ち上げの部分,そこをしっかり計画的に投資をして,そして,それがお金もらって終わりにならないような,コントロールする仕組みをつけた投資が必要だと思います。
 あと,ついでに申し上げたいんですけど,総合診療医養成って,大学によるばらつきが物すごく大きい領域です。ですから,不幸な大学に入学したら,総合診療を知らないまま,卒業してしまいます。82大学全部にというのが現実的でないのであれば,そういったモデルを置いて,そして,そのモデルから,例えば,設備投資するからには必ず横展開することを義務づけるとか,あるいは長期休みに全国の学生を受け入れるような機会を必ず義務づけるとか,そういうような仕組みもあるとより広がるんじゃないか。そうすると,それがまた新たな種になって,その大学にも根づいていくんじゃないかなというふうに思っています。
 以上です。
【北澤委員】  ありがとうございました。
【永井座長】  ほかにいかがでしょうか。
 続けるには理念の理解が大事だということを前野先生はおっしゃいましたけど,そういう意味でこれを続けるのであれば,大学病院の理念として明記すべきだと思います。一部の人の善意だけでやっていては続かない。大学病院というのはそう仕事をする場であることを明確にすべきです。地域の医療需要に対応するための医療人材の養成というのは,さっき文部科学省の説明にありましたけど,単に教育・研究機関としてではなく,こうした使命を明記するというのは,社会や学内の理解を得るために非常に重要なことだと思います。
 今村委員,どうぞ。
【今村(英)委員】  今,いろいろなお話と御質疑等を聞いていて,非常に勉強になったところです。ありがとうございます。
 本日は,総合的な診療能力を有する医師等の人材養成の中で,特に総合診療医を取り上げて御説明いただいたということかなと思います。島根と筑波でも,それぞれが養成される総合診療医の姿というのは違うのかなと。先ほど少し言及がありましたが,例えば,離島・僻地で必要とされる総合診療医の姿と,都市型,もしくは,大都市から小さな都市まで,いろいろな都市がありますけども,そこで必要とされる総合診療医の姿というのは違うものなのか。先ほどホスピタリストというお話もありましたけれども,1点目の質問は,総合診療医像というのがある程度確立しているのか,それとも地域によって必要となる総合診療医の姿は変わるのか。
 2点目の質問として,先ほど,医師派遣がうまく回っていくと,そこに複数の先生方が増えて,複数の先生方が増えてくると,またそこに応募してくださる先生方も多くなるというお話は伺ったんですが,例えば,そういった先生方というのがずっといるのが理想かもしれませんけれども,現実は恐らく,ある意味のローテートというか,何年かで替わっていくと。ただ,替わっていっても必ず複数の先生方がいらっしゃるということなのかなと思うんですが,そうすると,周期といいますか,少しでも長くいていただきたいんでしょうけれども,現実の姿として,何年ぐらいそこにいていただいて,派遣という形にすると,今,御報告いただいたような形がうまくいくのか,そこはある程度数字が出ているものなのかというところが質問です。
 あと,3点目として,今度の新たな地域医療構想で大きなテーマの一つとして取り上げられているのが,医療と介護の連携だと思います。医学教育の中では当然,医学教育をメインでやっていくわけですけども,地域医療を考えると,例えば,介護保険のある程度の仕組みを知らずに高齢者の医療ができない。介護と医療,両方必要な高齢者が非常に増えていますし,これからも増えていく。そうすると,そういった地域医療を提供するのに必要な社会資源に関する教育もしくは知識も,こういった総合診療を教育する中で入ってくるんでしょうか。もしくは,今後,そういった部分というのは必要になってくるんでしょうか。
 ちょっと長くなりましたけれども,3点,御質問です。
【永井座長】  いかがでしょうか。
【白石先生】  順番を変えて,前野先生からしゃべられますか。
【前野先生】  分かりました。じゃあ,今度は私から。
 まず,地域により総合診療医の像が変わるかということなんですけど,ある意味,どの地域でも対応できるような専門医を育てたいと思っています。在宅をやっていても急性期に対応できる力は必要ですし,病院で働いていても,退院した後のケアをイメージする医者になってほしいと思っています。ただ,実際,そうやって育てても,育てた後に,それなりに,病院が好き,地域が好き,都会が好き,田舎が好きって分かれていくんですけれども,専門医レベルの教育をしておけば,どこに行ってもある程度は対応できるんじゃないかなと思っております。もちろん,地域によるニーズの違いはあるかなあと思いますけども,そういうふうに私は考えております。
 それから,周期はどれぐらいかという御質問ですが,うちは結構様々で,10年ぐらいいる人もいれば,3年ぐらいで替わる人もいますけど,1年じゃ短いので,私の主観的な感覚ですが,3年ぐらいかなというふうに思っています。
 それから,三つ目の質問の新地域医療構想の話と介護連携の話なんですけど,私は,そこは総合診療医のコア中のコアだと思っています。地域を診る。それから,病気のときだけじゃなくて,病気の前,病気になった後,そして,患者だけじゃなくて家族,家族だけじゃなくて地域までトータルで診れるというところが総合診療医の専門性の本質だと私は思っているので,そこはしっかりと研修するというポリシーでやっております。
 以上です。
【白石先生】  じゃあ,島根のほうから。
 総合診療の姿ですけども,結局,大学病院で普通に既存の形で養成されたお医者さんたちって,300床ぐらいの病院だったら,それなりに診療科がそろっていて,すぽっと入れるわけですよね。ところが,先ほど言いましたように,50床,100床の病院となると,それだけではとてもカバーできないというところで,島根の場合は意図的に地域の総合診療をつくっているというような形になっています。だから,県によって必要なものって違うだろうなというふうには,すごく思っています。
 それから,ずっといるかどうかということに関しては,一つのキーは,実は,島根の総合診療医センターって,常勤の医師は助教が1人いるだけなんですよ。今年,60人ぐらいに謝金を払っているんですが,要するに,地域の総合診療医が大学に,タッチ・アンド・ゴーじゃないけれども,僕自身も月火水は隠岐に今もいて,木曜日と金曜日だけ大学に行って教育と地域のマネジメントをするというような形を取っているので,月火水に関しては,ほかの地域の病院から1日だけ来てもらうというような形を取っています。そうすることによって,僻地の病院でも,行ったきりではなくて,大学に絡むということで教育にも絡むし,県全体の総合診療,あるいは地域医療のことの情報が得られて,かつ,お医者さんは患者さんを診るということはすごく勉強するんですけど,問題点が見つかったときに,どうチームビルディングして,どういうふうに解決していってということを習わないんですよね。そういう意味で,大学の総合診療医センターに例えば月に1回来てくれている人もいるし,1週間に1回来てくれている人もいるし,2回来てくれている人もいるんですけど,そういう中でマネジメントみたいなことをすると,地域に行ったきりということはないので,かなり長く,気持ち的にも余裕を持ちながらいられるのかなと。行ったきりってなった場合には,僕も前野先生と同じぐらいで,3年ぐらいいてくれると,地域のことも分かるし,地域でやるべきことも分かるというふうに思ってたりもします。
 最後,医療と介護のことですが,絶対に総合診療医がキーなんですけど,総合診療医だけでは駄目で,今,医療・介護の中で,いわゆるビジネスチャットツールみたいなものを,LINEWORKSとか,Mattermostとか,Slackとか,そういうものを使いながら患者情報を共有するというところが,まだなかなか完全に国のほうが,いわゆる自分のスマホを使ってどこまでやるというところのガイドライン,第6.0版が出たと思いますけど,実際,現場としては,患者さんの情報をビビッドに医療・介護の中でシームレスにやり取りしたいということが一つと,圧倒的に足りないのは看護なんですね。島根県自体は,450ぐらい看護の養成枠があるんですけど,400人しか入ってないんですね。スタートの時点で1割足りてないです。実際,地域で医療・介護の連携をする中で,訪問看護なんかの確保がきちんとできる。かつ,それが総合診療医とつながる。さらに,総合診療医の二次病院の救急につながるみたいな形のネットワークがちゃんとないと,総合診療医だけいてもできないんじゃないかなというふうなことを思いながら,総合診療医センターでも,サイドビジネス的に,今,看護師エコーで,排せつエコーとか,血管穿刺とか,そういうことを支援しながら,看護師のスキルアップ,かつ,ネットワークみたいなことを今やったりしています。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
【白石先生】  ごめんなさい,もう1個だけ。
 先ほど座長先生が言われたように,こういうことをするときに,いろんな人がいろんなことをやるときに,絶対にミッションが一番大事で,大学はこういうことをやるということももちろんそうだし,総合診療センターも,うちの総合診療センターはこれをミッションにするということを掲げないと,いろんな人が出たり入ったりするときに恐らくうまくまとまらないんじゃないのかなと思っています。
 追加で,以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 炭山委員,どうぞ。
【炭山委員】  前野先生とは医学教育振興財団でいつも御一緒しているので,先生に御質問させていただきます。
 欧米ではGPの存在が物すごく大きいですよね。ゲートキーパー的な役目で,そこから振り分けをして,専門医に紹介する。こういう役目をしているわけですが,今日の文部科学省の資料でも,81大学病院中,総合診療科を有する大学病院が45しかないということですね。これはちょっとびっくりしました。
 それと,あえて追求していきますと,実践的な総合診療医を養成できれば,地域に対する,いろいろな人材養成おける働きができると思うんですけども,大学によっては教育に特化しただけの総合診療科もあるというふうに聞いているんですが,前野先生,例えば,総合診療領域での専門医制度は,プライマリ・ケア連合学会,日本病院総合診療学会,こういう二つの学会があって,この両方が今のようなことにも絡んでいるのかどうかということなんですが,この辺りはいかがでしょうか。
【前野先生】  貴重な御質問,ありがとうございます。私が先ほどのプレゼンの冒頭に申し上げたとおり,特定機能病院であるというところは,いろんな意味で大きな影響があると思っております。私自身は,筑波では,大学病院は特定機能病院に特化すべきなので,むしろ教員を地域に持っていくというやり方で,学生をそこへ持っていくというやり方をやっています。大学によっては,その中でも総合診療部門をつくって,そこで直接教育しているというところもあります。それは大学のポリシーにもよるので一概には言えない部分はあるんですが,ただ,大学の学生にとって,卒業までに総合診療にちゃんと触れることができる環境を全部の大学に整えるということは大事だと思うんですけど,いいか悪いかは別にして,その戦略は大学及び県とかの置かれている状況によってかなり異なっているというのが現状です。
 それから,総合診療医の養成に関して,プライマリ・ケア連合学会,病院総合診療学会,それから,最近,地域医療学会というのもできて取り組んでいるところですけども,専門医機構が直営で運営している総合診療専門医制度ですので,学会運営と条件がいろいろ違うので,それなりの制約はあるというふうに思っています。なので,そういったところはしっかりとコミットして学生とか研修医にアピールしていくというような働きかけは必要だと思っていますし,私も,学会の立場もありますので,今後,そういう働きかけをしていきたいと思っているんですけど,ぜひ,大学側もそういう認識を持って,そして,学会と連携して,一体になって当たっていくというような,そういう仕組みづくりができると大変ありがたいなと,両方の立場を兼ねている私としては思っております。
 御質問,ありがとうございました。
【炭山委員】  先ほど都市型と地域型という御質問があったと思うんですが,私どもは東京にある大学ですので,順天とか,そういうところも持っている関係上,都市型は都市型のこういう養成機関であっていいんじゃないかと思っているんですね。私どもの診療科は,総合診療・救急(急病)センターという名称になっています。都市型に特有の救急車が物すごく多いので,一・二次救急は全部,総合診療が診るんですね。救命救急センター,これは三次救急ですけども,ここはもっと重症の患者を診るというような振り分けをやっております。そういう点についても,先生,いかがでしょうか。
【前野先生】  ありがとうございます。大学としては,そういう位置づけもあるかと思います。ただ,なぜ我々はそういうのを取らなかったかというと,一度,診療部門を持つと,今度は,オンコールを置いたり,病棟を維持するところに労力を割いたりという優先順位が一番上に来てしまう。そうすると地域に展開するという選択肢がかなり狭められてしまうという茨城県の事情がございまして,それで我々はそういう形を取りました。実際,今,炭山先生が言われるような形で総合診療を展開している大学も幾つか存じ上げております。それは,総合診療というコアを共有した上で,大学の独自色。全部の大学が同じようにやる必要は全くないと思いますので,先ほど白石先生が言われたように,ミッションを明確にした上で育てる。そうすると,それに共鳴した人が入ってきて,それぞれ納得してキャリアを重ねていく。そして,日本トータルとして見れば,必要な総合診療医がきちんと輩出されていく。そういう仕組みが大事なんじゃないかなというふうに思います。
【炭山委員】  ありがとうございます。
【永井座長】  よろしいでしょうか。
 それでは,ちょっと時間が押してきましたので,次に参ります。
 厚生労働省から,医療DXに係る取組について,説明をお願いいたします。
【田中参事官】  この検討会の中でも,医療DXについては,タスク・シフトとか,業務の効率化という観点で御意見を頂戴していると承知しておりまして,現在,厚生労働省のほうで取り組んでおります医療DXの推進について,一部,大学病院などにも関与いただいている内容がございますので,本日,御紹介をさせていただきたいと思います。
 1枚おめくりいただきまして,そもそも,医療DXについては,令和5年6月に,医療DX推進本部という,総理を本部長とする会議において工程表が定められ,この工程表に基づいて,現在,取組を進めているところでございます。基本的な考え方としては,目的を5点定めておりますが,国民のさらなる健康増進,切れ目なく質の高い医療等の効率的な提供,医療機関等の業務効率化,システム人材等の有効活用,医療情報の二次利用の環境整備を,セキュリティを確保しつつ,進めていくということでございます。大きく三つの柱立てをしておりまして,まず,全国医療情報プラットフォームの構築。この中で,今回,厚生労働省のほうで医療法の一部を改正する法律案を提出しておりまして,そちらに関係する事項については黄色でハイライトをしております。
 1枚おめくりいただきまして,電子カルテ情報の標準化等。電子カルテは最初は各医療機関の診療科を超えて情報を共有することで導入されてきましたが,今後は,業務の効率化や質の高い医療のためには医療機関等を超えて情報を共有するということで,情報の標準化・規格化が必要になるということでございます。併せて,二つ目の丸ですが,診療情報については,電子カルテがまだ普及していないということもございまして,標準的な医科診療所向けの電子カルテについては,現在,厚生労働省とデジタル庁において開発を進めているところでございます。これらの取組を踏まえて,遅くとも2030年にはおおむね全ての医療機関において必要な患者の医療情報を共有するための電子カルテの導入を目指すということを掲げているところでございます。
 また,2年に1回の診療報酬に伴うベンダーと医療機関側のシステムの改修の負担が非常に大きいということがあります。診療報酬改定DXということで,分かりやすく言えば,診療報酬,2年に1回,国がルールを決めているルールに基づいた計算機能を国が開発することで,その計算機の機能を包含したレセプトコンピューターの機能をベンダーさんが提供することで,2年に1回の更新のタイミングでベンダーと医療機関の負担を軽減するというようなことを目指しています。また,併せて,2月に告示が出てから,実際の請求,1回目の請求までの期間が非常に短期間であることから,ベンダーさんの負担,医療機関の負担も非常に大きいので,そこに人材を投入していかなきゃいけない。そのため,ふだんであれば要らない人材を常にプールしていく,確保していかないといけないということがコストを上げているという御指摘もございまして,そのため,令和6年の診療報酬改定から,施行時期の後ろ倒しを,医科については6月から後ろ出しをして実施しているところでございます。
 医療DXの進捗主体を定めてしっかりと進めていくという観点から,診療報酬支払基金を医療Xの実施主体とするということも書いているところでございます。
 1枚おめくりいただきまして,全国医療情報プラットフォームのイメージでございますけれども,左側にありますが,医療情報基盤というのが,今,医政局を中心に取り組んでいる内容が含まれている基盤でございます。まず,オンライン資格確認の仕組み,それから,電子処方箋については,既に実装されておりまして,赤枠で囲っております電子カルテ情報級サービスというのが,今回,新しいサービスとして現在構築をしています。レセプトの情報や処方箋の情報は既に共有できますが,カルテの情報の一部を共有しようというものでございます。また,新型コロナウイルス感染症のときには,医療の中だけではなくて,介護の施設の情報,それから,自治体にあるような,予防接種,母子保健の情報というものを共有されたほうがよりよい政策の立案に必要だったということもございまして,真ん中辺に赤で囲っておりますけれども,行政・自治体情報基盤というところと情報連携,必要な情報を共有できる仕組みを今つくろうとしています。それから,全体を点線で囲っておりますが,この情報基盤,介護を含めた情報基盤の情報を二次利用できるような整備をすることで,下段のほうの赤枠,二次利用基盤をつくっていくというようなことで,今国会で必要な法改正を行っていこうとしております。
 1枚おめくりいただきまして,申し上げた法律案の概要でございますけれども,改正の趣旨としては,「高齢化に伴う医療ニーズの変化や人口減少を見据え,地域での良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制を構築するため,地域医療構想の見直し等,医師偏在是正に向けた総合的な対策の実施,これらの基盤となる医療DXの推進のために必要な措置を講ずる」ということで,改正の概要の三つ目のところに医療DXの推進ということで記載をしております。大きくは三つの柱立てでございますが,一つは,先ほど申し上げた,電子カルテ情報共有サービスの情報共有を進めるというお話。二つ目は,医療情報の二次利用の推進のために,厚生労働大臣が保有する公的なデータベースの仮名化情報の利用や提供を可能とするというお話。そして,三つ目は支払基金の改組のお話でございます。
 次のページにお進みいただきまして,電子カルテ情報共有サービス自体は,3文書6情報という,カルテの中の限定的な情報ではございますが,診療情報提供書,健診結果報告書,退院時サマリー,そして,6情報は,傷病名,薬剤・その他アレルギー,感染症,検査,処方の情報を共有する仕組みでございます。医療機関から,今申し上げたような文書については,上段のほうの青い矢印になりますが,支払基金にある電子カルテ情報共有サービスに文書を送付していただき,これを紹介先の医療機関で閲覧することが可能になるという仕組みでございます。一方,6情報と言われる情報につきましては,下段の緑色の部分になりますけれども,既にレセプトの情報の中の特定健診の情報などについて,オンライン資格確認の仕組みを使って閲覧ができます。ここに,同様に先ほど申し上げた6情報と健診の文書のデータベースを構築して,御本人の同意の下,右側にありますが,全国の医療機関が閲覧できる,もしくは御本人がマイナポータルで御自身のデータを確認することができる。健診結果の報告書については,特定健診の部分について,医療保険者のほうで閲覧ができる。今,こういうような仕組みを構築しているところでございます。
 6ページにお進みいただきまして,これは,患者さんから見ると,医療機関が支払基金にデータを出すことは医療情報の第三者提供に当たりますので,法律を改正して,個人情報保護法,法制度上の措置があるものは例外とされていますので,そういった手続をしないと,申し上げた情報を共有するために,逐一患者同意が必要になってしまいます。なので,現在,今申し上げた構築しているシステムが現場の運用の中でどれぐらいの負担になっているのか,もしくは,そのシステムがしっかりと動くのかということを確認するために,モデル事業というのを始めております。こちらに書いてある全国10か所で開始をする予定にしておりまして,青字のところは既に始まっているところでございます。大学病院では藤田医科大学のほうで,現在,限定的な,1文書1情報から運用が開始されているところでございます。それ以外にも,大学病院では,千葉大学,浜松医科大学,三重大学,宮崎大学,金沢大学なども,このモデル事業への参画について,現在,一部御検討いただいていたり,もしくは,既に開始をの予定している病院がございます。
 1枚おめくりいただきまして,大学病院,研究の利用ということも,研究の推進上,非常に重要だと思っておりますが,現在,厚生労働大臣が保有する公的なデータベースについては匿名化情報しか提供ができないということでございまして,必要に応じて医療データの領域の改変などが行われております。そういう状況だと研究者のニーズになかなか応えられないということもございまして,今回の法改正では,仮名化情報の提供を可能にする法改正を実施する予定でございます。また,仮名化情報だと,匿名化に比べて本人同定のリスクが上がるというようなこともあり,クラウドの情報連携基盤の上で解析を行い,データ自体を利用者に提供しない仕組みを現在考えておりまして,左側の図の中にありますが,情報連携基盤の構築ということも併せて目指す予定にしております。
 次のページにお進みいただきまして,これは大学病院も関わることだと思うんですが,非常に人口減少や高齢化が進む中で,効率的な医療提供体制を構築していく必要があります。しかし,一方で,今まさに物価高とか人件費の高騰で病院の情報システムの関連経費がかなり上昇して,病院経営を圧迫しているというお声がたくさん出ています。これ自体は,病院で採用されているオンプレ型のシステムにそれぞれの病院ごとに独自のカスタマイズを重ねた結果,更新のときにシステムの高騰につながっているということが一つあります。今後,申し上げたような医療DXの取組を進めていく上でも,それから,生成AIなどの新たな最新技術を業務の効率化などにも使うためにも,オンプレ型では一定の制約があると考えておりまして,厚生労働省のほうでは,病院の情報システムに関する今後の方向性ということで,次のページにお進みいただきまして,電子カルテ,レセコン,部門システムを一体的に,モダン技術を活用したクラウド型のシステムに移行することを方針としてお示しをしています。このために必要な標準仕様をまずは小規模な病院やグループ病院等から普及を図ることを目的に,2025年度を目途に標準仕様を作成する予定でございます。この標準仕様に準拠した情報システム,これはインフラからアプリケーションまで共同利用できるようなシステムを考えておりまして,カスタマイズを極力抑制するとともに,システム対応の負荷軽減,システム経費の上昇抑制,こういったことを目指していきたいと思っています。こういうことをやるためには,医薬品とか検査のコードやマスタ,こういったものを維持管理する体制をしっかりと整備していくことも併せてやる必要がありますので,そういった取組も国として進めていきたいと思っています。
 以降は参考資料になっておりまして,具体的な3文書6情報の概要であるとか,今回の取組,電子カルテ情報共有サービスへの補助,それから,電子カルテ普及率などについて,参考資料をつけておりますので,お時間がおありの際に御覧いただければと思います。
 厚生労働省からの説明は,以上でございます。
【永井座長】  ありがとうございます。
 それでは,御質問,御意見,いかがでしょうか。
 今村委員。
【今村(知)委員】  今村ですけども,よろしくお願いします。医療DXの説明,ありがとうございました。厚生労働省が大変苦労して進められていることはよく理解していますけど,今日は大学病院の立場から少し質問をさせていただきたいと思うんですが,情報システムの全てのベースになるのは,現在,病院情報システムですけども,これの導入費用が物すごく高くなっていて,1,000床ぐらいの病院ですと,前のリプレースのときには30億円ぐらいだったと思うんですが,今,大体50億から60億という倍になっていまして,これの償却費がどこからも出ないというふうな問題があります。病院全体の電カルをつくろうということは分かるんですけども,そちらのめどが立つまでの間,このペースでリプレースをやっていくと病院の経営が成り立たないというふうな状況があって,特に富士通がGXのサポートをやめるということで,一斉に今,多くの病院で病院情報システムがリプレースになっていて,その分,さらに割高になっているという,なかなか難しい問題があって,ぜひ,日本全体の電カルの完成までの間,診療報酬なり国からサポートがないと,かなり厳しい状態です。
 そして,最後に御説明いただいた,全国標準の,オンプレ型ではない,クラウド型のシステムのこともぜひ状況をお聞かせいただきたいんですけども,200床,300床ぐらいの病院まではクラウドで走ると思うんですが,1,000床クラスの大学病院のようなところになると1分間のアクセスが100万アクセスとかというようなものが,それも月曜日の朝9時とかには日本中の大学病院が動くんですね。お医者さんの25%がいてるのが大学病院で,そこから一斉に送信されたときに,そんなものが耐え得るようなクラウドというのがすぐにできるのかというのはかねてから疑問に思っていまして,その辺のところの見込みなども,もし分かれば教えてもらいたいと思います。見込みが立つんだったら,それに向けてオンプレ型をやめていくような段取りも取れると思うんですけど,その辺のところ見通しはいかがなものでしょう。
【田中参事官】  御質問,ありがとうございます。今,非常に価格が高くてやっていけないというお声は,我々のところにも届いております。今回,8ページ,9ページでお示ししている話は,おっしゃるように,300床ぐらいじゃないと全ての仕組みをクラウドにすることは難しいというふうに思っています。一方で,全てをクラウドにしない限り価格の上昇が抑制できないかと言われると,必ずしもそうではないと思っていて,例えば,ベンダーを替えるときの引っ越し費用というか,データ移行のための費用であるとか,それから,いわゆる外の部門システムとの連携,そういったものに伴う,接続のための費用みたいなものも非常に上がっている中で,一定程度,国の中で,データ移行のための互換性の確保であるとか,それから,標準交換規格を定めて,ほかのシステムとのデータ連携の機能,こういったものをできるだけ安くつくれるようにルールを決めていこうというのを並行してやろうとしています。これは大学病院にも同じように適用されて,比較的,今みたいな青天井に価格が上がっているということを一定抑える可能性はあると思っています。
 クラウドについては,先生おっしゃるように,全国,全部の大学病院がクラウドに上げて大丈夫なのかというところについては,現状,我々として,大丈夫ですと申し上げられるような検討までは行っていませんというのが正直なところです。なので,全部の大学病院までを含めて,我が国において全てがクラウドシステムを活用した医療情報システムになるのかどうかについては,今,明確なことを申し上げることはできないというところでございます。ただ,一部のシステムについてはクラウドを活用することはできると思いますし,今でも,例えばバックアップとか,そういうものの一部はクラウドを活用しているとか,そういうこともあると思いますので,申し上げたような,ルールを徹底することにより費用を下げるということについては,大学病院にもメリットはあると思っています。
【永井座長】  よろしいですか。
【今村(知)委員】  1点だけ。大学病院の特徴として,部門システムだと思うんですね。各大学には70とか80とかの部門システムがぶら下がっていて,それを共通のカルテなりにくっつけたりするというのは高いですし,富士通が値段を高く言ってきているのも,部門システムを入れたときは,ただで入れてくれているんですけど,リプレースのときには1か所2,000万とか言ってくるわけですから,そこら辺のところは大学病院ならではの問題だと思うので,ぜひその辺の御考慮をいただきたいと思います。
 以上です。
【永井座長】  では,田中委員,どうぞ。
【田中(雄)委員】  私は別の観点から。これは革命みたいなことで,すばらしいと思いますが,二次利用の点で,4ページですけれども,私も二次利用の推進はすべきだという立場ですが,「厚生労働大臣が保有する医療・介護関係のデータベースの仮名化情報」と書かれています。これはどの範囲のものを言うんでしょうか。6情報とか,そういう範囲なんでしょうか。
【田中参事官】  7ページに資料がございまして,いわゆるレセプトの情報を集めているような,ナショナルデータベースや介護のデータベース,DPCのデータベースなどと,それから,病気ごとのデータだと,がん,難病,そういったデータベースでございます。今後,先ほど申し上げた3文書6情報についても,新たに電子カルテのデータベースというものを構築する予定にしておりまして,これも今回の法案の中で制度上担保するというものでございます。こういった厚労大臣が保有する法律に位置づけたデータベースと,そういう対象になっております。
【田中(雄)委員】  それは無料で提供されるものなんでしょうか。有料で提供されるんでしょうか。
【田中参事官】  今もこれらのデータは実費分を研究者の皆様にお支払いいただいているという認識でございます。
【田中(雄)委員】  ということは,例えば,海外で利用したいという人が現れた場合はどうなんでしょうか。
【田中参事官】  基本的には,利用の目的や内容に応じて審査を行って,適切な審査で相当の公益性があると認められた場合,提供をするということにしております。現状でも,例えば,広告とか,患者さんに広告を配るためにデータを使うとか,そういうことについては認められておりませんし,相当の公益性というところで利用目的の審査をするということにしております。
【田中(雄)委員】  私はむしろ,研究とか,いろんな目的で海外のデータが有償で提供されていることを考えれば,日本もそうしたほうがいい。予防データから考えると,かなり有用性のあるデータ,国際競争力のあるデータが取れると思うんですね。これが厚生労働省のポケットに入ってくることによって,診療報酬とか以外にいろんな収益が入ってくると保険医療がやりやすくなるじゃないかなというふうに思っていますので,無償ということにあまりこだわらないほうがいいと思います。
 以上です。
【田中参事官】  ありがとうございます。
【永井座長】  諸岡委員,どうぞ。
【諸岡委員】  ありがとうございます。私も,今,田中先生がおっしゃったのとまさに同意見でして,例えば,イギリスにUK Biobankというのがあるんですが,そちらのほうは,患者さんじゃないんですけど,健常者の画像データもそうですし,生体データとか,あるいは,喫煙歴とか,飲酒歴とか,様々な情報で,あと,遺伝子の情報もセットになって,私が今使っているのは,例えば数千人ぐらいのデータを1年間60万円で提供しますよという形で,ただし,例えば,イギリスの研究者と共同研究をするというのが前提になっているとか,あるいは,毎年FDを受けるとか,そういった資格はちゃんとした上で提供していただくという枠組みがありますので,そういった二次利用基盤のところも,私としては無料なのが理想なんですが,そうではなく,有償化して,例えば,システムのメンテナンスにそれを生かすとか,そういったことがあるといいんじゃないかなというふうに,聞いていて思いました。
 コメントみたいな形になっていますけど,以上です。
【永井座長】  北澤委員,お願いします。
【北澤委員】  北澤です。この検討会で質問すべきことかどうか,ちょっと迷ったんですけれども,7ページのところで,仮名化情報にすることによってデータを使えるようにするという改正を,今,まさに進めておられるということなんですが,こうした改正が行われようとしているということについて,医療を受ける患者・国民に知られてなさ過ぎるんじゃないでしょうか。この改正によりどういうメリットがあって,逆に懸念されることがあるとすれば,その対策として国はどういうことをやっているんだということについて,医療を受ける患者は国民全員ですので,ちゃんと説明して,こういうことだから皆さんのデータを使ってよりよい医療にするということを,もっと国は,訴えるというか,説明するべきなんじゃないかと,聞いてと思ったんですけれども,いかがでしょうか。
【田中参事官】  御指摘,ありがとうございます。私どもの今回の取組については,複数回にわたって厚生労働省の審議会で議論をさせていただいておりまして,その中には山口構成員も文部科学省のほうにお入りいただいていますが,患者代表の方にも構成員にお入りいただいています。ただ,それだけでは普及として皆様に知っていただくという取組としては不十分だということは当然承知をしておりまして,御意見をいただいているところでございますので,御指摘いただいたように,広く国民の皆様にどのようにこういう情報を伝えていくかということは,今後,しっかりと検討してまいりたいと思っております。
【永井座長】  よろしいでしょうか。
 それでは,どうもありがとうございました。この議論は,また機会あれば,引き続きお願いいたします。
【田中参事官】  どうもありがとうございました。
【永井座長】  では,続いて事務局から,今後の医学教育の在り方に関する検討会取りまとめに向けた議論の整理(案)をお願いいたします。
【堀岡企画官】  ありがとうございます。医学教育課,堀岡でございます。次回,次々回と,第三次中間取りまとめに向けて議論を深めていこうと思っておりますけれども,今までの議論の整理という形で取りまとめております。ごく簡単に御説明させていただきます。
 1ページ目でございますけれども,様々な機能の重点化といった議論をされております。例えば,我が文部科学省でも,大学病院改革プランという中でもそのような議論をいただきましたし,厚生労働省の「新たな地域医療構想に関する取りまとめ」でも,大学病院本院が担う,広域な観点での診療などを医療機能として位置付けるというようなことが,今,議論されております。また,特定機能病院の在り方に関する検討会では,特定機能病院の見直しというものが,今,議論されているところであります。文部省,厚生労働省,両方で様々な大学病院の機能の重点化や特色化というものを進めておりまして,重点化の取組を適切に推進していくということが望ましいと思っておりまして,本検討会で示した論点に関する今後の方針というものを示すために議論の整理をしていきたいと思っております。今までもかなり,一次,二次で議論をされ尽くしておりますので,今般,教育,研究,診療,運営という論点で様々書かせておりますが,対応方策のところを中心に,簡単に御説明させていただければと思います。
 2ページ,教育の部分でございますけれども,まず,一つ目,本日,総合的な診療能力を有する医師の養成という観点でもヒアリングさせていただきましたが,多職種連携の観点も含めて,低年次から多様な実習の実施,地域の医療への関心を高めるような実習をさらに推進していくことの重要性について,書かせていただいております。
 その5行ぐらい下,対応方策というところでございますが,前回の取りまとめにも書きましたけれども,今回,さらに一歩進んでおりまして,今,JACMEに「臨床実習指導医(仮)」の称号付与の仕組みを具体化するべく、調査研究事業を文部科学省にて実施する予定です。また,医学教育モデル・コア・カリキュラムに基づいた教育手法などのプラットフォームの整備といったものに取り組んでいきたいと考えております。
 次の対応方策のところでございますが,これも皆様に度々議論いただきましたけれども,専門研修期間中に大学院への進学をできるだけ両立するというような臨床研究医コースなどの推進といったものや,若手の大学院生のTA・RAへの充実の推進といったことを書かせていただいております。また,地域枠の学生が大学院に入る際に義務年限が終わるまで躊躇するというようなことも,時々,文部科学省のほうには声が届いておりまして,下の5行,「なお」以下でございますけれども,厚生労働省も御配慮いただき,「キャリア形成プログラム運用指針」の中で,大学院で研究に集中する場合はプログラムを一時中断する理由ということも例示していただいておりますので,国は具体的な課題の抽出とか対応策の検討などをさらに推進していきたいというように考えております。
 次からは研究でございます。3ページ,対応方策の部分でございますけれども,原理や病態解明とか,非常に波及効果の高い,総合的な研究力の向上を目指すような大規模な研究大学というものは,研究について多くの資源を有しているというように考えております。一方で,これまでも御指摘いただいたように,特定の分野・領域のみに強みを持っていたり,例えば,前回御紹介しましたが,熊本大学における感染症関連の研究のように,地方の国立大学で特色のある取組を実施しているというものは,たとえ多くの研究資源がない場合でも,非常に重要な研究をやっているというところはあると思っております。そのような大学に関しても,機関間でのネットワークを活用して多くのデータや知見を共有するように連携しながら,一律の支援ではなく,それぞれの特徴を生かした支援というものを今後とも行っていく必要があると思っております。
 次の対応方策ですけれども,医師は,研究に割くことのできるエフォートが非常に厳しいという状況です。その中で,経済的,また,エフォートを支援するためにも,バイアウト制度やPI人件費制度というものをさらに推進していくということを書かせていただいております。
 次の対応方策でございますが,永井先生から常々指摘いただいておりますけれども,研究者としての自由な発想がより活性化されるように,分野,組織,国境等の垣根を越えて,多様性を持って研究を進めるということが重要でありまして,一方で,なかなかこれは解決策が難しい問題でもありますので,課題の整理に取り組むという形で書かせていただいております。
 次からは診療でございます。まず,タスク・シフトでございますが,勤務環境の改善などのために,我々,特定行為研修を受けたナースをできるだけ増やし好事例を展開していくということをやってまいりましたけれども,現在はほぼ全ての大学病院で特定行為の研修を行うことができるようになったところであります。また,看護学のモデル・コア・カリキュラムにおいては、特定行為研修のいわゆる座学部分と一部関連する事項が含まれておりますので,今後,モデル・コア・カリキュラムの普及とともに,特定行為研修制度の更なる普及に向けた環境整備を進めて,より特定行為ナースの育成にも繋げていきたいというふうに思っております。
 運営,財務・経営の部分でございますけれども,大学病院特有の役割・機能に着目して,国は診療も含めた大学病院の位置づけを明確化していくということ,また,それを踏まえた財政的な支援の在り方について検討していく必要があるというふうに思っております。昨今の物価高騰が大学病院の経営に非常に大きな影響を与えていると思いますので,文部科学省,厚生労働省とで連携して,様々な取組を行うことについて検討していきたいというふうに考えております。
 次の対応方策でございますけれども,高度な医療を提供できる人材や,所在する地域で必要とされる人材の養成には,医療機器の整備というものが重要でございます。今,大学病院の医療機器は,どんどん老朽化してきておりますので,継続的かつ計画的な支援というものを,これは診療というより教育に必要な医療機器ということで,文部科学省においても取り組んでいきたいというふうに考えております。
 次は,人材確保についてでございますけれども,大学病院の給料が低いことなどの処遇についても今般明らかになっているところでございますが,諸手当等処遇改善の原資となる安定的な財源を確保する方策について,文部科学省としても検討していきたいと考えております。
 次の5ページでございますけれども,今まで病院長を含む幹部職員やその候補者などにも,文部科学省はできるだけ経営に関する必要な知識などの研修などをやってきたところであります。一方で,例えば旧帝大など非常に大きな大学では,大学本部と病院とでかなり職員が分かれていたりしますので,大学本部の経営に係る幹部職員にもそのような知識を研修することもやってはどうかというようなことを書かせていただいております。ほかにも,診療科ごとの収支を経年で比較したり,きちんと経営の中で議論をしたり,管理会計システムを活用して実態把握などを行ったりするというようなことも重要だと思っておりますので,そのような運営などの改善についても書かせていただいております。
 今村先生から常々ご指摘いただいているPL・BSのことについても,次回以降,この検討会で取り上げることも検討していきたいと思います。それに併せて,この記載ぶりも,取りまとめに向けてさらに書き足していきたいたいというふうに考えております。
 最後に,大変恐縮ですけど,厚生労働省で見直しを検討していただいている特定機能病院の在り方についての提言というような形で,厚生労働省さんに参加していただいておりますので,まとめさせていただいております。今,基本的な考え方と発展的な基準というものが議論されておりますけれども,今はまだ厚生労働省のほうに具体的な基準のほうをお示しいただいているわけではありませんので,文部科学省でも,全体的な考え方として,教育・研究に資するような影響をどのように捉えるかという考え方で,基本的な考え方,医療提供についての考え方,教育について,研究についての考え方ということで,それぞれ書かせていただいております。これについても,今後,具体的な議論などの検討を厚生労働省で始めていただきましたら,文部科学省でも様々な検討をさせていただければというふうに思っております。
 以上でございます。
【永井座長】  ありがとうございます。
 それでは,御質問,御意見,お願いいたします。いかがでしょうか。
 今村委員,どうぞ。
【今村(知)委員】  今村です。御説明,ありがとうございます。
 PL・BSの件,次回やっていただけるということで,4ページの運営,財務・経営のところの中で,大学病院の運営って非常に特殊で,今回特に特定機能病院として医療の提供施設として位置づけてもらえるんだったら,診療報酬の中でも特殊な機能であるということは評価してほしいと思いますし,また,大学病院としての教育機能ということは文部科学省からも御支援いただきたいところでありますので,財政の支援というところに関しては,特殊な機能を持っていて,今までボランティア的にやっている部分が多いと思いますので,ぜひ,そこの部分の評価というのはお願いしたいと思います。
 その中で,先ほどBSの話が出ましたけども,特に国公立大学は,現金で幾ら使っていいというのが,実はよく分からないんですね。それをちゃんと計算できるようにするためには,今,PLだけじゃなくて,貸借対照表として,現金として大学病院の部分に再投資できるお金がどれだけあるかということを明確にしてもらうことが何よりも設備投資の面では重要だと思いますので,ぜひ,御検討いただきたいと思います。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 宮地委員,どうぞ。
【宮地委員】  ありがとうございます。私からは,1ページ目の最後の教育の課題についてです。医行為の習得率の向上は,診療に参加することによって学ぶという一つの形にすぎないんですが,参加の度合いを見える指標にするという意味では重要ですので,まず,これに焦点を当てるということには賛成です。ただ,医行為をさせるということが参加型にすることの全てであるという誤解を招いてはならないと思いますし,また,多職種連携というキーワードとの関連性が少し分かりにくいように感じましたので,それを踏まえた御提案です。診療参加型臨床実習の推進には多職種連携教育は不可欠であり,また,タスク・シフト/シェアの推進という観点からも,医行為のシミュレーション教育の指導や評価を多職種の教員が行うことや,多職種とともに学ぶ機会の増加も重要であるというような観点を加えることを御提案させていただきたいと思います。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 田中委員,どうぞ。
【田中(雄)委員】  ありがとうございます。私も4ページの運営,財務のところなんですけれども,対応方策のところで,大学病院特有の役割・機能に着目して財政支援を検討していくというのは非常に合理的だと思うんですが,そうは言いつつも,その次のパラグラフは,財務・経営を自律しながら,持続可能にするように,好事例を共有して努力すると書いてあるんですね。これは前段と後段が相矛盾しているような感じがするので,意図を御説明いただければありがたいです。
【堀岡企画官】  ありがとうございます。例えば,国立大学病院は運営費交付金という形で大学病院セグメントの中にもお金が入っているわけですけれども,そういった財政的な支援はある一方で,いわゆるPL的なもので大きな赤字が出ていることがあるわけで,そうなれば大学法人のほうにも影響が出ますので,そういった形で,病院セグメント,今はPLだけでBSがないというのは度々指摘されておりますが,病院単体の中でもある程度自律するようなことが重要だということを書いているものであります。国の支援は不要であるという趣旨ではございません。
【田中(雄)委員】  ありがとうございました。
【永井座長】  銘苅委員,どうぞ。
【銘苅委員】  ありがとうございます。今,田中先生がおっしゃったことは私も全く同感でして,病院(音切れ)みたいな感じの印象を与えるような文言ではなくて,ぜひ,財政支援をしていただけるような書きぶりにしていただければなというふうに思います。
 もう1点は,2ページ目の「「臨床実習指導医(仮)」の称号を付与する仕組み」というところなんですが,既に多くの大学病院で,病院助教であったりとか,臨床教授であったりとか,そういった称号はつくっているけれども,現時点で教育に係る魅力みたいなものがまだ十分できてないというところがありますので,「臨床実習指導医」というような称号を付与することが教育に対するモチベーションに本当になるかというと,あまり効率的ではないように感じます。やはりここは,お金の話ばっかりで申し訳ないですけれども,インセンティブという形の文言をぜひ入れていただければなというふうに思います。
 それから,全体的な印象なんですけれども,今回,この検討会自体は,助教の研究時間が非常に少ないということから発した検討会であり,どうしたら教育時間・研究時間を確保できるかというところが課題だったかと思うんですが,本日のお話とかからすると,総合診療医をつくってくださいとか,もちろんそれは高齢化社会においては非常に重要なことで,やるべきだとは思うんですけれども,どちらかというと教育と診療をさらに増やしてくださいというようなメッセージと受けかねないような今回の検討会だったので,そうすると,今以上にさらに,役割も増え,機能も増え,だけれども財政支援は十分でなくという印象を受けました。ですので,もちろん重要であり,全大学で総合診療医を育成していく,介護も勉強していくことは非常に大事だと思いますし,やりたいというふうには感じますが,それと同時に,じゃあどういったことが必要なのかということも,ぜひ,実効性のある支援の書きぶりにしていただければなというふうに思います。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 相良委員,どうぞ。
【相良委員】  一つは,大学病院としては,いろんな形で不採算部分をやっているというところは認識していただきたいというふうに思います。
 あと一つは,大学院を魅力的な形に持っていくというのは非常に重要だと思うんですけれども,そこにおける指導医がそこに対しての時間が取れないような状況になっているというのも事実であります。
 もう一つは,いわゆる専門医,大学院と専攻医との並行研修というのがなかなか厳しくなっていて,そこをどう捉えていくかということを考えておかなければいけないんじゃないのかなというのがあります。
 あとは,先ほどちょっと出ていた特定機能病院における考え方というのはこれから構築されていくだろうというふうに思います。その中で,5ページの対応方策のところの,診療科ごとの収支を比較するというのは非常に重要なポイントかとは思います。例えば,収支を見たときに,実際に益として出てきているものなのかどうかということを考えていくと,例えば循環器内科で言うと,かなりの額の収入になっているように思いますけど,出ていくことが多くて,結局,プラスなっているのはほとんどないというところがありますから,そこを含めて,今後の課題になると思います。ですから,そういうところを踏まえて,どういう形で見ていかなければいけないのかに関しては,いろいろと重要なポイントはあるかなと思いますし,そこところをもう少し深掘りしていく必要性があるんじゃないかなというふうに思いました。
 以上でございます。
【永井座長】  事務局,いかがですか。銘苅委員が言われたように,これは,忙しくなるだけで研究できないと思いますが,その辺り,いかがでしょうか。
【堀岡企画官】  ありがとうございます。銘苅先生からいただいた点も,今,座長からいただいた点も,本当にそのとおりでありまして,お答えできることとすれば,臨床実習指導医の称号を付与するだけでは意味がなく,ここが意味するところは,例えば,称号を付与することで教育に資する先生たちの評価を高めたりするようなことができるような仕組みの具体化をしないといけないなというふうに思っております。例えば,第二次中間取りまとめのときに錦織先生から議論いただきましたが,例えば,教育に係るものをうまくポイント化して,それを高く評価したり,昇進の条件にしたりしている例をお示しいただきましたが,その中の一つとして,例えば臨床実習指導医を持っているようなことを使ったりして,教育熱心な先生がちゃんと評価されるようなことに各大学で使いやすくするようなことをしないとおっしゃるように意味がないというように思います。
 また,お二人がおっしゃった,負担を減らすことというのは,この検討会の重要なテーマの一つで, 3ページ目の真ん中の対応方策のところはバイアウト制度だけのことではなくて,もちろんバイアウト制度もある程度負担を減らすことではありますが,我々は今まで,去年も21億円の予算を確保したり,今年も医学系研究プログラムということで大きな予算をライフサイエンス課と協力して取っておりますが,その本質は,研究支援をより進めたり,若手の研究者に対しての人件費をRAとかの経費としてやることで,負担を軽減しながら研究成果を出すというようなことであります。そういったこともこの対応方策のところで書いておりまして,もちろん負担が増えてしまうこともあるかもしれませんけれども,それはちゃんと財政的な支援をしないといけませんし,本当に負担を減らす,研究支援とか,タスク・シフト/シェアとか,そういったこともより進めなければならず,大学病院に求められるものは本当に多いものですから,きちんと研究エフォートが保てるような形で,かつ,望まれている役割を果たしていくという,非常に難しい問題ですが,文部科学省としても取り組んでいきたいと思っています。
【永井座長】  私は,研究支援が大事だと思います。1ページに臨床研究が不可欠であるということをうたっているわけですけど,これは先ほどの厚生労働省の御説明とも関係するのですが,医療情報は大学病院にとっては非常に重要な資産で,それを本当に無償で提供してよいのか,もう1度考えていただきたいと思います。研究者が研究を続けられなくて,研究者以外が自由に無料で使えるようなことが起こるんですね。銘苅先生が言われた,研究をどのように活性化するかは,大学病院の在り方の問題に関わります。少ない人でみんなが同じようにやっていたら中途半端になるわけで,場合によっては,人による分業とか,時間による分業という体制をつくらないといけないわけです。大学病院の設置形態,あるいはその使命に基づいて,これからどういう形に持っていくかをどこかできちんと議論していただきたいですね。
 そのうえで,3ページにある地域医療への貢献を含む診療体制の強化ということになるわけで,繰り返し申し上げますけど,大学病院の設置基準というのは,医学部の教育と研究のためで,地域医療のことは書いてありません。それはそれで問題で,地域医療への貢献というのは使命としてしっかり書くべきと思います。
 その点で今回ちょっと踏み込んでいるのは,4ページ中ごろの「国は,診療等も含めた大学病院の位置付けを明確にするとともに」という一節です。これはかなり重要な意味があると思いますが,これを一体どこに書くのかです。できれば設置基準にこういうところまで書いた上で,大学病院の在り方を考えるべきだと思いますけど,これはどこに書こうとされているのか。そこはしっかりと皆さんで議論すべきだと思います。
 それと,5ページにある医師派遣です。この派遣という言葉は,医局とか役所の使い方と,民間の使い方が違うところがあります。民間では,派遣は職業安定法で原則刑事罰をもって禁止されているということを聞いたことがあります。派遣法に規定された業種と手続の要件を満たしたときのみ適法である。そうすると,派遣という言葉はそう簡単に使うべきではなくて,出向なのか転籍なのか,あるいは医師に出向をお願いするときには,合理性とか,必要性とか,そういうところまでしっかり押さえておかないと,軽々に派遣という形で人を動かすというのは問題になると思います。ですから,この辺もしっかりした議論が必要ではないかと思います。
 銘苅委員,どうぞ。
【銘苅委員】  度々,すみません。もう1点なんですけれども,これは厚生労働省の方々に言いたいことではありますが,特定機能病院として大学病院の機能を割り振るということになった場合に,もし診療報酬に反映していただけるということになるとしたら,反映いただいた診療報酬分を,各大学の裁量に任せるということはもちろん重要ではありますけれども,その中に必ず,医師の処遇を改善するといったような規定をつくっていただきたいと思います。看護職員の処遇改善事業であったような前例もありますので,今回の診療報酬増加分は必ず医師の処遇改善を前提とするといったようなことも検討いただきたいというふうに思います。
 以上です。
【永井座長】  いかがでしょうか。
【堀岡企画官】  先生,事務局から1点よろしいでしょうか。
【永井座長】  お願いします。
【堀岡企画官】  先生がおっしゃった医師派遣という言葉に関して,厚生労働省において医局の医師派遣についての派遣業法との整理というのは既になされており,医局による医師派遣というのはあくまでも派遣法上のものと抵触しないという解釈が出されていると認識しております。また,一般的に用いられている言葉でもありますし,ある程度,法的な整理もなされていますので,言葉としては問題ないのかなというふうに思っております。
【永井座長】  しかしこれは,強制なのか,自主的な意思なのか,籍はどうするのか,体制の中に組み込むのであれば,それなりの議論は必要です。これは本人がノーと言ったらどうなるんですか。
【松本室長】  よろしいですか。
【永井座長】  はい。
【松本室長】  厚生労働省ですけども,厚生労働省の検討会の中でも,これはいわゆる医師派遣という形で言われているものですので,今の永井先生と同じような御指摘はございましたので,それも含めて整理するということであります。堀岡企画官にも御指摘をいただきましたけれども,実態としてというか,どういうものを企業として求めるのかという話だと思いますので……。
【永井座長】  教育・研究の名の下に派遣が行われることは,歴史的に繰り返してきたわけですよ。そういうことを反省して,よほどの法的な根拠の下に動かしていかないといけない。逆に,本人がノーと言ったときに,システムとして破綻しないようにしないといけない。それから,派遣する側にしても,派遣される病院の妥当性とか,運営の在り方とか,地域医療構想における位置づけとか,そういうことも議論しないといけない。
【松本室長】  おっしゃるとおりだと思います。
【永井座長】  ただ,人が必要だから人を出してくれと言われるだけでは,大学病院の在り方を揺るがす,大きな問題になってしまいますよ。
【松本室長】  おっしゃるとおりで,大学側がということもありますし,都道府県も含めて,地域医療構想との整合の中でやるということを特定機能病院の中でも議論しておりますし,ここにも地域医療構想との関連ということで記載をしていただいているものだと思っております。
【永井座長】  それを全部きちんと丁寧に説明しないと,いわゆる医師派遣で,労働法とは関係ありませんと言うだけでは,説明は不十分です。
【松本室長】  そうですね。役割であるとか,意味合いというのも含めて,御説明をしていきたいと……。
【永井座長】  本人の自由意思というのはどこまで尊重されるかですね。
【松本室長】  ここは人事権みたいなものがどこまであるのかみたいな話は直接含まれないかもしれませんけれども,運用上のところでどういうふうになっているかとかも含めて,御議論いただくものかと思っております。
 あと,先ほど診療報酬の話があったんですけれども,誤解のないように申し上げておきますが,特定機能病院の部分の診療報酬,現時点でかなり高い基本料として反映されておりますし,次回の改定でどのような議論になるかということも,厚生労働省の担当部局としても適切に,データの整理であるとか,データの加工などして,実態を分かりやすく議論できるようにというふうには考えておりますけれども,よく言われる,診療報酬の中の使い方を規定してほしいというような御議論もありますが,中医協の中でも,処遇改善加算などの分と,そうではない基本料の分というのはいろいろな形で議論されていることだと思いますので,中医協のほうでしっかり議論いただくにせよ,様々なステークホルダーがいるお話ですので,やはり中医協の中でしっかり議論していただくものかなというふうに,医政局としては考えいるものであります。
 以上です。
【永井座長】  あとは,最初に私が申し上げた,大学病院の在り方の見直しというのをどこに書くかですね。これは非常に大きな問題で,明治以来の大学病院の位置づけを変える作業になります。どこに書こうとされているか。
【堀岡企画官】  大学設置基準というお話ありましたけれども,整合性も含めて,どういうところにどのようなことで書くべきなのかというのは,別途議論させてください。
【永井座長】  ここは皆さんで議論が必要だと思います。
 それでは,銘苅委員,最後にどうぞ。
【銘苅委員】  度々,すみません。それから,御回答,ありがとうございます。
 今,既に十分な金額が下りているということでございましたけれども,それでも足りなくて……。
【松本室長】  いや,十分とは申しておりません。それなりの額がという意味で申し上げました。
【銘苅委員】  じゃあ,十分ではない,それなりの額がということですが,それでも足りなくて,今,このような議論がされていると思いますので,ぜひ,引き続き御検討をお願いいたします。
 もう1点なんですけれども,1ページ目の下から2カラム目の「大学病院が大学本部や所在する地域の自治体とともに連携して」ということなんですが,これは都道府県ですごく差があるように思います。沖縄県は特に,自治体との連携というのが最近ようやく始まったばかりで,県のほうに聞きますと,大学病院の経営がそんなに圧迫しているということを全く知らなかったというような御議論をいただきました。ですので,そういった,大学病院は困っているよというのも,ぜひメッセージを出していただいて,協力をする,連携をするということを強く国のほうからも伝えていっていただければ,こちらも非常にやりやすくなると思いました。
 以上です。
【永井座長】  大体時間になりましたが,いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは,本日予定した議事は,以上でございます。
 連絡事項等,事務局,お願いいたします。
【宮沢課長補佐】  資料6を御覧ください。今後の開催スケジュールですけれども,次回は,皆様にお知らせしておりますとおり,5月21日,10時から12時を予定しております。次回以降につきましては,また改めて皆様に御連絡させていただきますので,引き続き,どうぞよろしくお願いいたします。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 それでは,これで終了いたします。どうもありがとうございました。
 
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