今後の医学教育の在り方に関する検討会(第11回)議事録

1.日時

令和7年2月6日(木曜日)14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省(東京都千代田区霞が関3-2-2) ※対面・WEB会議の併用

3.議題

  1. 大学病院の機能と研究支援の在り方
  2. 令和6年度補正予算及び令和7年度予算案について(報告)
  3. その他

4.出席者

委員

永井座長、今村(知)委員、今村(英)委員、大井川委員(代理:茨城県保健医療部 砂押次長)、金井委員、北澤委員、熊ノ郷委員、炭山委員、田中(純)委員、田中(雄)委員、宮地委員、銘苅委員、諸岡委員、山口委員、横手委員、和田委員

文部科学省

伊藤高等教育局長、奥野審議官、俵医学教育課長、堀岡企画官、永田大学病院支援室長 他

オブザーバー

香川大学医学部附属病院 門脇病院長、昭和大学病院 相良病院長
厚生労働省医政局医事課 西嶋課長、厚生労働省医政局地域医療計画課医療安全推進・医務指導室 松本室長、文部科学省研究振興局ライフサイエンス課 釜井課長

5.議事録

【永井座長】  これから第11回今後の医学教育の在り方に関する検討会を始めます。委員の皆様には,お忙しいところお集まりいただきまして,ありがとうございます。
 それでは,事務局から委員の出欠状況,事務局の異動,配付資料の確認,オンライン会議での発言方法等について説明をお願いいたします。
【海老課長補佐】  事務局でございます。
 本日の委員の出欠状況でございますが,本日は岡部委員から御欠席の連絡をいただいています。また,大井川委員に代わりまして茨城県保健医療部,砂押次長に代理出席をいただいております。なお,北澤委員は15時頃,中座の予定でございます。また,本日は厚生労働省の特定機能病院及び地域医療支援病院の在り方に関する検討会に委員として出席されております,門脇則光香川大学医学部附属病院長,相良博典昭和大学病院長にも御参加をいただいております。さらに,厚生労働省医政局地域医療計画課より松本医療安全推進・医務指導室長らに御出席をいただきまして,現在厚生労働省で検討されております医療政策の動向について御説明をいただきます。
 続きまして,前回の本検討会開催後の事務局の異動といたしまして,高等教育局長が伊藤学司に交代をしてございますので,一言,御挨拶を申し上げます。
【伊藤局長】  昨年7月に高等教育局長に就任をいたしました,伊藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 本検討会は令和5年より始まりまして,これまで10回にわたり大学病院,医学教育,医学研究,また地域医療といった様々な課題について御議論をいただくとともに,2度にわたり取りまとめ文書をおまとめいただいたと伺ってございます。大変ありがとうございます。文部科学省といたしましても,本検討会の委員の皆様方の後押しをいただきながら,厚生労働省とも連携をし,大学病院改革に向けた支援とし,令和5年以降,補正予算も含めましてしっかりと支援予算を確保することができた状況でございます。
 私も着任して以来,大学病院や医学教育の関係者の皆様と様々な意見交換,またお教えをいただいているところでございますが,医師の働き方改革が始まりまして,厚生労働省における新たな地域医療構想の議論,特定機能病院制度の検討など,大学病院や医学部を取り巻く環境が本当に大きな変化を今,しているところでございます。そうした中で本検討会におきまして,今後の医学教育の在り方に関し活発な御議論を引き続きしていただきたいと思ってございます。御議論いただいた内容につきましては,今後の医学教育に関する政策の検討,また令和8年度以降の予算の検討に役立てていきたいと思ってございますので,引き続きの御指導,何とぞよろしくお願いいたします。
【永井座長】  ありがとうございます。では事務局,お願いします。
【海老課長補佐】  それでは次に,配付資料の確認をさせていただきます。配付資料は会議次第に記載のとおりでございますけれども,お手元にございますでしょうか。なお,資料につきましては,文部科学省のホームページでも公表しております。
 続きまして,オンラインによる会議の進行に当たってのお願いでございます。御発言をされる場合にはZoomの挙手ボタンを押していただくよう,お願いいたします。その後,座長から順に発言者を御指名いただきますので,御発言をいただく際にはマイクがミュートになっていないことを御確認の上,御発言をお願いいたします。
 以上でございます。
【永井座長】  ありがとうございます。
 続いて,会議次第に沿って,まず大学病院の機能と研究支援の在り方,続いて令和6年度補正予算及び令和7年度予算案,そしてその他について御議論いただきます。
 最初に,大学病院の機能と研究支援の在り方について,事務局より説明をお願いいたします。
【堀岡企画官】  資料1を医学教育課の堀岡から御説明させていただきます。かなり膨大な資料でございまして,事前に委員の方にお送りもしておりますので,かいつまんで御説明させていただきます。
 先ほど少しお話しいたしましたけれども,昨年度,第二次取りまとめの後,本検討会は一度休止していたわけですけれども,その間,厚生労働省のほうで大きな,様々な改革の議論がなされて,特定機能病院の見直しや地域医療構想での大学での機能の在り方などを議論していただいておりました。本日,厚生労働省からも御出席いただいて,大学病院の在り方についてどのようなものがよいか,文部科学省でも御議論いただこうということで,開催しております。
 それでは,まず文部科学省から御説明させていただきます。1枚おめくりいただきまして,医師の働き方改革施行後の大学院の現状と課題についてでございます。前回までの第二次取りまとめの議論の中で,大学病院改革ガイドラインをつくっていただくという形で取りまとめをさせていただきましたけれども,今回,全ての大学病院から改革プランの提出をいただいたところであります。それに沿って御説明させていただきます。
 2ページ目,3ページ目でございます。今後の大学病院の在り方について,大学病院改革プランとともに,私ども,今の時点でほぼ全部の大学病院の院長の方々,また指導部の方々と意見交換をさせていただきました。それで,このような意見を中心に御意見をいただきましたので,御紹介いたします。まず全体についてでございますけれども,まず大学病院は,2つ目のポツのところでございますけれども,診療・教育・研究というもの全て重要だけれども,その中で一部重点化するというようなことも考えられたりするというような御意見をいただいております。
 4ページでございますけれども,例えば診療・教育・研究全てが重要でございますけれども,その中では少し教育に重点化しているといったところが,例えば77大学のうちの今25大学,研究に重点化しているというところが14,診療に重点化するというところが39大学ございます。全部の大学が教育・診療・研究全てをやらなければならないということには一貫しておりますけれども,重点化をするというようなこともあってよいのではないかという意見が大勢でございました。
 次に,7ページを御覧ください。これは既に取りまとめで議論した内容でございますけれども,大学病院改革プランは教育・研究・診療,また運営や財務・経営に関する取組が記載されているという形でお願いいたしました。この下の概要のところが各診療項目の目次のようなものでございますけれども,このようなものを国でお示しして,その中で,大学院の中で現場に即した意見をまとめていただいて,つくっていただいたところであります。そのまとめていただいた改革プランや我々との意見交換で出た意見について,それぞれ教育・研究・診療,また運営改革の各項目で重要なものや論点について挙げさせていただければと思っております。
 8ページは意見でございますが,9ページ以降,データからお話をしたほうが分かりやすいと思うので,御説明いたします。まず9ページでございますが,教育に関しては多くの大学病院の先生方が,診療参加型臨床実習の実質化が非常に難しいという御意見をいただいたところです。例えば,これは平成30年厚生労働省にやっていただいたデータでございますけれども,医学部5年生に対して,診療参加型臨床実習をやっている途中の学生でございますけれども,どのような医行為を今までにやって,自信を持って行える医行為は何かと聞いたところ,非常に医行為の実施率が低くて,例えば最も高いものは皮膚消毒で,それでも35.9%の学生しか自信を持ってできないとお答えをしているような状況でございます。
 一般的な,例えば採血とか注射といったものは非常に低くて,診療参加型臨床実習,少なくとも平成30年の時点ではあまり進んでいなかったということが見て取れます。この後,あまりデータがございませんので今年,私ども,OSCEなども公的化したところでございますので,今,診療参加型臨床実習でどのような医行為を経験していただいているかさらに調査を進めておりまして,調査結果が出次第,この検討会でもお示ししたいと考えております。
 11ページでございます。さらに,教育を行う医師に対する評価が足りないのではないかというような御意見もたくさんございました。なので我々,臨床実習指導医を養成するための調査研究というものを予算事業で立てておりまして,この中で臨床実習指導医というものにどのような要件が必要なのかといったことを今,研究していただいております。その研究の中で,先ほど申し上げた医行為の実施状況についても調査をさせていただいているところでございます。
 次に12ページでございますけれども,大学院の入学者数は,医学部の定数は若干増えておりますけれども,大体,一番多いときで4,000人を超えたところをピークに,大体4,000人から3,500人の間で横ばいから少し減少傾向でございます。この12ページのデータ,青が基礎系のMDとNon-MD,黄色と薄いブルーが臨床系のMDとのNon-MDですが,この割合も正直あまり変わっていないところであります。
 13ページが大学別の数でございます。一番左が臨床研修の実施前,左から2番目の赤が臨床研修後,緑が専門研修の制度化前,一番右が最近の専門研修の開始後というような,4つの時期で比較をしております。御覧のとおり,大学によって非常に様々でございまして,増えている大学,減っている大学というのがございます。なので,総数としては横ばいでございますが,大学ごとにはかなり増減が激しいというのが大学院の今の状況だと考えております。
 14ページ以降でございます。これは厚生労働省の制度でもございますけれども,大学病院で働く初期研修医は減少の一途をたどっております。国立大学はこれだけですけれども1,500人から1,100人,一方,専攻医の採用人数は増加しておりまして,国立大学だけでも,昔2,800人ぐらいだったのが今3,600人をピークに3,000人は超えておりまして,私立大学も合わせると専攻医に関しては相当な数が大学に残っているという状況が見て取れます。
 次のページでございます。これは大学別に全て分解したものでございます。上が初期研修,下が専攻医でございますけれども,初期研修についてはほぼ全部の大学で大きく下がっているという状況がございます。一方で専攻医についてはほぼ多くの大学で増加しておりまして,増加の幅に違いはあれどもある程度,専攻医は大学に戻る流れというものがあるといったところであります。
 論点でございます。16ページですけれども,診療参加型臨床実習についてシームレスな医師養成を行うために,医行為の取得率を向上させる方策が必要なのではないか。実習を指導する医師について,教育に専念する時間や指導医の評価制度の充実に講じる必要があるのではないか。また,教育に関わる業務の効率化を図る方策を検討する必要があるのではないか。リサーチマインドを持った医師の養成のためにも,大学院に進学するような方策を講じる必要があるのではないか。4つ目,若手医師が大学病院に魅力を感じるような方策を講じる必要があるのではないかという,4つの論点を挙げさせていただいております。
 次に研究でございます。研究についてもデータからお話させていただければと思っています。18ページでございますけれども,研究については後ほど俵課長からも御説明いただきますけれども,全体としては非常に世界的な地位が低下しているというところであります。その中で18ページ,臨床医学分野における大学の存在感でございますけれども,大学が約7割の論文を出しているというところであります。これは結構諸外国によって違いまして,国立の研究所などが論文をたくさん出している国もありますけれども,日本においては大学が主力ということはここでも見て取れるかと思います。
 19ページ以降,大学別の数についてたくさん資料を出しております。例えば19ページは臨床医学分野の論文の総数が青のバー,オレンジがTOP10%論文の数でございます。いわゆる国際的な大学の質を示す数値としてQ値というものが結構一般的でございますけれども,そういったところを見ますと意外とばらばらで,一部,規模が大きい大学と同程度の値となっている規模の小さい大学もありまして,質的に優れた研究成果を上げている地方大学もあると考えております。
 20ページ,これは公立・私立大学も同じでございまして,非常に人的,財政的な規模の大きい大学が論文数自体は大きい一方,Q値など,TOP10%論文を見ると規模の小さな大学でも出しているところもあるということをお示ししております。
 21ページ,22ページでございますけれども,今度は競争的研究資金をどのように獲得しているかという大学別のデータをお示ししています。これは新規の獲得なので結構ばらつきがあって,2年分の平均でしかないので,どこまで言えるのかというのがございますけれども,少なくとも令和4年,5年の平均ではこのような状況になっておりまして,これも人的財政規模の大きな大学が新規獲得数も総体的には多いというところでございます。
 22ページ,公立・私立大学も同じ傾向であります。
 23ページですけれども,一方で中小規模の大学でも科研費の採択状況では非常に優れた研究を出しているところもございまして,例えば熊本大学,血液および腫瘍内科学の関連では多くの採択をしていたり,感染症でも長崎や熊本といったところ,麻酔では群馬といったところで,非常に地方大学でも健闘している状況がたくさんございます。
 24ページ,25ページは企業治験及び医師主導治験の件数でございます。これは比較的臨床研究中核病院が多い傾向がございます。大阪大学,北海道大学を筆頭に非常に臨床中核拠点病院に採択されている病院が,非常に多くの治験をこなしているというところでございます。
 25ページが私立の状況でありますが,私立も近畿大学が,でも一番でございますけれども,臨床中核拠点病院に指定されている大学が健闘しているといったところであります。
 26ページ,27ページが,いわゆる研究支援センター,AROの研究支援体制についてまとめております。留意していただきたいのはSMOを用いて外部の研究支援体制を利用しているものはその人数に含まれておりませんで,いわゆる内製化している研究支援の体制でございます。これについても,いわゆる旧帝大や臨床研究中核病院に指定されている病院というのはある程度充実しており,そうでないところはなかなか少ない人数で研究を頑張っていただいているところでございます。27ページも同じでございます。
 28ページ,研究に専念できるための環境整備といたしまして,前回の検討会の取りまとめで,バイアウトやPI人件費制度についても大学でできるだけ推進していくという方向性をお示ししました。今回,どのような大学でどれぐらい使われているかということも調べましたけれども,大体半分ぐらいの大学ではバイアウト制度,PI人件費も活用可能にはなっているという結果でございます。ただし現場のお話を聞くとあまり,実際には数人しか使っていなかったりというような事例はあるようで,活用には課題があると思っております。これについても後ほど御意見をお伺いしたいと思っております。
 30ページでございます。また,臨床研究分野の特に医学に関しては,研究者の多様性と流動性に課題があるということを,様々な分野の先生からも御指摘いただいております。確かに,30ページの右下でございますけれども,本学本務教員における自校出身者の占める割合という形で,保健は48.1%という結果になっておりまして,特にそういった分野が非常に高く自校出身者が占めているもので,教員を占めているという結果がございます。
 次のページ,論点でございます。人的,財政的に必ずしも規模が大きくなくても優れた研究成果を上げている大学病院もあって,研究についても大学病院の役割に応じた多様な支援が必要。研究支援の体制をさらに充実させることが必要。バイアウト制度やPI人件費に関する制度をさらに活用できるようにはどのような施策があるのか。また,Ph.D.を含む異分野の研究者や多様な人材の確保はどのような取組を検討すればよいか。また最後に,複数の機関が臨床データを共有する際には誤った分析結果が氾濫するようなこともあるので,きちんとアカデミアと議論をしながら使う必要があるのではないかといった論点を出させていただいております。
 次に,診療についての御意見等をいただければと思います。33ページ,34ページでございますけれども,特例水準に申請した医師は40%で,前回に比べて少し増加しているところであります。一方で厚生労働省の調査などでも労働時間自体は減少しているというのは明らかでありまして,中身はどうかというのが34ページでございます。前回の検討会でも調査をして,診療に取られているエフォートが非常に大きいということを出しましたけれども,今回,新たに令和6年4月でのデータを取りましたけれども,緑の部分の診療のエフォートは相変わらず大きくて,あまり大きな,1年なので当たり前ですけれども,変化はない。これについては継続的に取っていかなければならないと思っております。
 35ページ,36ページでございますけれども,国立大学で4万6,000人,私立大学で4万3,000人もの医師派遣をしていただいていて,37ページでございますけれども,今回の働き方改革で医師派遣がどうなったかというところでございますけれども,国立大学病院長会議でお調べいただいたデータですけれども,青が大学病院の自院における勤務時間,オレンジが派遣先での勤務時間であります。全体的に自院の働き方改革を進める一方で,派遣先は僅かでありますけれども多くなっておりまして,自院を働き方改革で減らしても地域医療に対する配慮というものが必要だということは一貫して変わらない状況でやっているというところであります。
 また,診療科ごとに非常に労働時間に差があるという結果がありまして,38ページ,39ページは厚生労働省の資料でございますけれども,外科についての集約化・重点化などを通じて外科医師の働き方改革の改善を図ることが重要だということを,厚生労働省でも方向性を打ち出していただいております。このような方向性と大学病院も協力していきたいと思っております。
 40ページ,41ページは,手術難易度が高いものや難病患者は大学病院がたくさん診ているというデータでございます。また42ページ,43ページ,44ページも,ある地方医大でどれぐらい高難度のものを集約化しているのかという具体的な例を出してみたものでございまして,もうこの検討会の先生方は皆さん,十分御理解いただけていると思いますけれども,データとしてもきちんとそういったものが出ております。
 次に45ページ,大学病院の中でどうやって診療エフォートを減らしているのかの取組例を出していただいておりますけれども,例えば特定行為研修やその他の医療職種でも今回,厚生労働省が法改正して様々な医行為をさらにできるように拡大していただきましたけれども,そのような医行為に反応してやらせるという方向性も,いろいろな大学病院で出ていることが今回,分かりました。
 一例として46ページ,47ページに特定行為の看護師数の大学ごとの数を出しておりますけれども,これについても大幅に最近増加しておりまして,国立大学は浜松医大の45人が最大というところであります。私立大学はもっと多くて,次のページございますけれども,関西医大の106人を筆頭に,私立大学はさらに大きな人数の特定行為ナースをつくって,タスクシフトに努めていただいていると認識しております。
 48ページ,今までのお話の論点まとめておりますけれども,例えば大学病院,高難度の外科手術や難治性疾患の治療など高度な医療のほか,医師派遣をしていたり,また全ての診療科をそろえた総合的な医療提供体制が重要であります。こういったことを踏まえて特定機能病院の在り方を見直す必要があるのではないか。また,多くの医師を派遣して地域医療に貢献していて,それは今も変わってないけれども,今後も維持できるように支援することが必要ではないか。また,例えば特定行為研修修了した看護師や,またヒアリングではナースプラクティショナーを医師と同じチームの中に入れて,大きく医師の労働時間を削減するような取組に成功した例なども我々,聞いております。そのような医療人材を養成することで,タスクシフトなどをさらに推進する必要があるのではないかという論点を出させていただいております。
 最後に運営の課題についてでございます。50ページ,今,国立大学の現状経常損益は非常に厳しい状況になっていて,令和4年度まで辛うじて少し黒字があったものの,いよいよ完全な赤字に転落したといったところでございます。これは次のページ,51ページ,公立病院,私立病院も同じような状況でございます。
 53ページ,今まで国立大学の病院セグメントの中身の運営交付金との関係についてはあまり資料を出してきませんでしたけれども,53ページにまとめておりまして,一番左が広島大学,右が千葉大学で,一番左が経営がいい,一番右が赤字が大きい大学で,どれぐらい運営交付金が投入されているのかというものを一覧で出したものでございます。大体7%ぐらいの運営交付金がどの病院にも入れられているといったところであります。経営状況でございますけれども,55ページでございますが,医薬品・診療材料費・給与費など全て105%,つまり5%ほど大きく増加しておりまして,この経費増が全ての黒字を消しているといったところであります。
 56ページ,診療報酬による収入増と人件費増の比較をしておりまして,多くの大学で診療報酬の収入増が今回大きくあったんですが,それを超える人件費増があるといったところをお示しいただいております。
 58ページでございます。今回,厚生労働省の医師派遣や働き方改革の新たな確保基金の措置をしていただいたところでございますけれども,千葉大学や浜松医大,神戸大学といった非常に多くの基金を都道府県からいただけた県と,一方で一円もいただけていない大学もあって,医師派遣にはこれらのもらえていない大学も十分貢献しておりますので,こういったデータを踏まえて各大学,都道府県と御議論いただければと思っております。
 ここから先,59ページ,病院ごとの業務損益,先ほど申し上げた一番いい広島大学,一番右が千葉大学といったところであります。
 その他,参考的な資料をずっとつけておりまして,63ページでございます。これについても前回の検討会で少し出したところでございますけれども,もうちょっと詳細なデータというところで,医師の年間支給額の比較ということで,大学病院と労災病院,国立病院,JCHO病院といったものの比較をしております。
 最後に64ページ,65ページをお示しいただきますと,これは診療科別の収支をどのようにしてつくっていくかという状況で,少しシャビーなお話になりますけれども,例えば国立大学一部では診療科のコストを見るのが非常に難しいので,収益とコスト両方を見ていないような所も時々ございます。例えば,これはある大学の例でございますけれども,診療科ごとにコストと収入を分解して経営の改善につなげることで,さらに経営の改善ができるのではないかといった例として出させていただいております。
 最後に論点でございますけれども,大学病院,収益と費用が見合わない医療事情であっても対応が求められることもあって,こういった医療の提供を維持できるように支援することが必要。建築費等の高騰により地域医療の提供体制の再編などを断念せざるを得ない可能性も考慮して,対応を検討する必要があるのではないか。また,医療機器が老朽化することで教育・研究の質が低下することがないよう,診療報酬でカバーできないような教育・研究に必要な医療機器を支援することが必要ではないか。給与体系について,業務量や社会的役割に見合った見直しが必要なのではないか。例えば診療科,病院全体の運営状況をさらによくするために,診療科ごとの収支を経年で比較するなど,さらなる細かな実態把握や分析が必要なのではないかといった論点を挙げさせていただいております。こういった議論を踏まえて,どのような大学病院の在り方が必要か,御議論いただければと思います。
 次に,資料2をお願いいたします。
【俵課長】  ありがとうございます。医学教育課の俵です。研究支援についてお話ししたいと思います。今日も釜井ライフサイエンス課長が参加をしています。僕らはライフサイエンス課と一緒に大学病院の研究支援について議論をしてきました。釜井課長には先ほど堀岡企画官から紹介のあった大学病院との意見交換にも参加をしてもらい,その意見も踏まえながら議論をしています。今回,コンパクトではありますけれども,まとめてみました。資料2,お願いします。
 1ページ目,これは昨年度の11月に出た論文ですけれども,『Nature』に記載されたものですけれども,「JAPANESE RESEARCH IS NO LONGER WORLD CLASS—HERE’S WHY」というものが掲載をされました。これは日本全体の論文のことではありますけれども,最初の丸,とりわけトップ10%論文の国際シェアは20年間で6%から2%まで低迷をしていると。2番目の丸,この一因としては大学への研究開発投資が米国やドイツが80%増,フランス40%増,韓国4倍,中国10倍,日本は10%増にとどまっている,こんなことも記載をされています。
 3番目の丸,研究時間のことが書いてありまして,2002年から2018年の間で研究に充てられる時間が47%から33%まで減少と,特に医学分野では若い研究者が診療に多くのエフォートを割いている実態があると。研究支援人材について,日本の大学は他国に比べて少なく,研究者20人に対して技術者が1人しかいない,こういったことも記載がされています。
 2ページ目になります。医学系研究を取り巻く課題と対応ということで,2番目の丸に書いていますけれども,先ほどの堀岡企画官からの話にもありましたが,研究時間の確保と多様性の流動性の向上,この両面から医学研究の研究力強化をしていくことが大事だろうと考えています。次のページ,お願いします。
 これは,この医学教育の在り方に関する検討会でも研究支援について議論をいただきました。また,ライフサイエンス課で主導している委員会でも議論をいただき,こういったことも踏まえながら在り方,支援について議論をしています。次のページ,お願いします。
 これらの議論も踏まえながら,補正予算として3年間の基金という形で134億円の予算を確保しています。左側の下のほうに事業スキームを書いています。研究費というふうになっていますが,大学・大学病院から先生方を選抜いただいて,その先生方に対する研究費の支援と,あと大学・大学病院で行う環境整備に対する支援,これは例えば研究支援者の雇用経費であったり,研究DXに必要な設備であったり,こういったものとの一体的な支援を行いたいということを考えています。右側に総合型,特色型というふうにありますが,大学,大学病院,役割がそれぞれ違い体制も違うので,それぞれの体制,役割に応じた支援をしていく必要があるだろうということで,総合型,特色型と少し分けながら支援をしていく,そんなことを考えています。次のページ,お願いします。
 より具体的には,ここでの議論も踏まえながら,運営に関する検討会議というものをつくって,ここで議論いただきながら,3月を目指した公募に向けて具体的なスキームをさらに整理してつくっていきたいと考えています。次のページ,お願いします。
 最後,大学病院の研究支援の在り方として期待することということで,大学に期待することを5つほどに分けて書いてみました。研究に専念するための環境整備,研究者の多様性の推進,研究者の流動性の確保,それと他機関との連携,最後に研究推進構想,こういったものをつくっていただいて,研究者が最大限研究に取り組むことができるような促進策,こういったことに期待して取り組んでいきたいと思っています。
 釜井課長,ありますか。いいですか。ありがとうございます。以上です。
【永井座長】  ありがとうございました。それでは,ただいまの御説明に御質問等があれば,随時お願いいたします。どの課題からでも結構です。いかがでしょうか。
 最初に私からよろしいでしょうか。今の大学研究支援,結構な施策なんですが,これは入学試験が2月1日以降でないと応募できないという縛りがあって,一言で言えば国立大学を意識した公募になっています。
最初の資料,資料1の18ページを御覧ください。臨床医学分野の論文数,これは私も前にもお話ししましたが,決して伸びていないわけではないのです。かなり伸びている。海外に比べて伸び方が鈍いということです。だから,相対的に落ちている。これをよく見ると,伸びていないのは国立大学です。私学は伸びています,この分析はされていますでしょうか。
【俵課長】  先生,ありがとうございます。
 今の議論に関して,ライフサイエンス課と一緒に考えている研究支援に関しては,入試の縛りというのを設けることは考えていないです。
【永井座長】  私学の多くは2月1日以前に入学試験を行っています。受験生を確保するということでもあるし,ある意味では受験の機会を多く与えています。しかし政府の方針としては2月1日以前に入試はしないでほしいということです。高校教育に影響が出るからということがあると思うので,それはそれなりに理解できるのですが,数日早いからといって研究費に応募できないというのであればいかがかと思います。
【釜井課長】  すみません。ファクトだけ端的にお答えしますけれども,今,俵課長から御説明ありました134億円の基金につきまして,私学が応募できないなんていうことはありません。AMEDの基金の事業のスキームとしてそういうことはございませんので。
【永井座長】  この前文部科学省から出た応募には出せなかったですが。
【伊藤局長】  すみません,高等教育局長の伊藤です。文部科学省もいろいろな補助金を持っておりまして,大学改革を推進する高等教育局の補助金に関して,様々な大学同士もしくは大学団体等と調整をして決めたルールというものに従っていただいているということを,応募する要件の一つにしているという事業がございます。これについて,入試日程が高校関係者,大学関係者で相互に話し合った上で,2月1日以降に一般入試はしようということを決めていただいていますので,高等教育局の組織としてやっている仕事の部分に関する公募事業については,入試要項を守っていただいているということを一つの要件とさせていただいてございます。
 多くの私学の入試は2月1日以降なんですが,一部医学部関係で1月の終わりぐらいにやっているという声があって,ここが何とかならないかというような御指摘はいただいているところでございまして,これは今,全く別の問題なんですが,とある大学が相当早く一般入試に近いものをやったということもございまして,2月1日以降としているルールというものが本当に適切かどうかというのは,高校関係者と大学関係者の協議会の場で議論していただこうということはやってございますので,その際に医学の関係の皆様から,前から御指摘いただいてございます,例えば1月の最終週というようなものはいいのではないかと。こういうようなことも論点としてしっかりお示しをした上で議論していただきたいと思ってございますが,例えば今回公募しようとしている研究事業ですとか,科研費などはもちろんでございますけれども,これは入試のルールとは何ら関係なく,私学も含めて御応募いているということでございます。
【永井座長】  これは出せるということですね。それはそれとして,論文の私学の伸びと国立の低迷というのはどう分析されるのでしょうか。何か国立固有の問題があるのではないかと思いますが。
【俵課長】  すみません。そこは僕らの中でまだ分析ができていないところです。
【伊藤局長】  一つは国立大学が法人化をこの間した中で,法人化に伴い様々な新たな業務が出てきたり,もしくは運営費交付金が伸びない中で非常に厳しい状況にあるということは,医学分野だけではなくて国立大学の研究全般に関して,十分いいパフォーマンスを上げられていないというような点は,指摘をされてございます。ここの部分に対して特にという部分については,もう少ししっかり分析をさせていただきたいと思います。
【永井座長】  ぜひ,これをよく見ていただきたいのですが,国立の論文の伸びが悪くなったのは98年,99年に始まっています。2004年以降ではないです。法人化とは別の固有の問題がここに隠れているはずです。何もかも法人化のせいにしてしまっては現実が見えなくなるし,分析ができないと思います。そういう意味でぜひここはしっかり分析していただきたい。また一方で私学がなぜ伸びているか,これはいろいろな改革をしているからです,国立大学には財源の問題がありますが,他にいろいろな問題があるのことを思わせると思うんです。ぜひ,よろしくお願いします。
 それでは田中先生,お願いします。
【田中(雄)委員】  全然違う観点なんですけれども,よろしいでしょうか。
【永井座長】  どうぞ。
【田中(雄)委員】  医学に限らず一般で言うと,日本は研究費の総額とかは例えばドイツよりもまだ上なんだと言われています。ところが,博士課程の人数はもう全然少なくて,イギリスに比べてもさらに少ないと言われているんです。これは医学の,さっき大学院の博士課程の人数は変わらないんだというデータが示されてたんですけれども,医学の分野に限って言えばほとんど博士課程の人数は変わっていないという理解でよろしいですか。
【堀岡企画官】  そのとおりだと思います。ちょっとだけ付け加えさせていただくと,先生がおっしゃるとおり,ほかの国は人口当たり博士課程の人数がかなり伸びていますので,そういう意味で横ばいというのは別にいいわけではないとは思っております。
【田中(雄)委員】  それで,なぜ伸びないかということなんですけれども,結局,私が周りの情報から得た個人的なインプレッションに過ぎないんですけれども,博士課程の待遇が諸外国に比べて悪いような印象があるんです。これは,何かぜひデータ化して,別に全世界のデータを取っていただく必要はないんですけれども,少し代表的な国と比べていただきたいんですけれども,博士課程のサポートは一応十分だというのが政府の公式見解なんですけれども,恐らくサポートの度合いがG7の国とかの中では相当少ないのではないかという印象を持っているので,もし何かデータがあれば教えていただきたいんですけれども。
【堀岡企画官】  ありがとうございます。分かりました。どのようなものが出せるのか,研究3局とも協力しながら出していこうと思います。
 先生,申し訳ございません。議論がかなり始まってしまったんですが,我々の資料とともに年末の厚生労働省の改革についても厚生労働省から,実は御説明してから議論を本格展開しようと思っておりまして,座長,申し訳ございません,厚生労働省から御説明いただく機会をいただいてもよろしいでしょうか。すみません。
【永井座長】  はい。では,手短にお願いします。
【堀岡企画官】  申し訳ないです。
【松本室長】  よろしくお願いいたします。厚生労働省の医政局地域医療計画課でございます。私,医療安全推進医務指導室長の松本と申します。特定機能病院の所管をしておりますので,地域医療構想とともに御説明していきたいと思います。
 おめくりいただきまして,メニューですけれども,地域医療構想と医師偏在,それから今申し上げた特定機能病院ということになります。まず,地域医療構想から御説明したいと思いますけれども,スライドがもし共有できればお手元の資料とともにお願いしたいんですけれども,3ページを御覧いただければと思います。
 資料3です。厚生労働省から青い帯の資料を出させていただいておりますが,3ページでございますけれども,まず地域医療構想とは何かということなんですが,10年ぐらい前から,平成29年からやっていまして,2025年に向けた人口構造の変化,団塊の世代の皆さんが後期高齢者に突入するのが2025年付近と言われていましたけれども,これに対応するような医療体制をつくるということで,地域医療のニーズの質・量の変化を見据えて医療機関の役割分担,機能分化,連携を進めていくというものであります。
 それで,今年までということでやってきたんですけれども,4ページでございますが,今後また10年,15年という長期の地域医療構想,新たな地域医療構想として取り組んでいこうということで,年末まで厚生労働省の検討会で1年弱,検討を重ねてまいりました。4ページ以降,その新たな地域医療構想の枠組みを説明していきたいんですけれども,4ページですけれども,今度は10年後には団塊の世代が85歳になりまして,2040年頃には団塊ジュニアも高齢化してくるので医療需要がピークを迎えますので,この辺りをターゲットに体制をつくっていくというのが新たな地域医療構想の考え方です。
 4ページですけれども,85歳以上になるとさらに要介護率が増えるということであったり,5ページ,救急搬送の中でのシェア,在宅医療のニーズなどが増えていくという状況でございます。6ページでございますけれども,これはちょっと変わった資料で,病院の経営状況ということで大学附属病院の経営も非常に厳しいということが先ほど文部科学省さんからもありましたけれども,トレンドで見たときに一番左,医療は固定費が多い分野で労働集約的な部分があるという一方で,真ん中のところ,病床の利用率が長期トレンドで低下をしているということで,低下がかなりいってしまうと,一番右です,利益率に非常に大きな影響になっているということで,固定費が大きい分野ですので,先を見据えて様々な改革を織り込んでいかないといけないような部分があるということでございます。
 7ページですけれども,これは二次医療圏別に,臓器別に2040年までに手術がどうなるかということなんですが,大半の医療圏で手術が減る,赤いところが大体減るイメージなんですけれども,真ん中辺りに耳鼻科ですとか胸部,乳腺が入っています。この辺りはほとんどの医療圏で減少するということで,少子高齢化,生産年齢人口の減が非常に大きいということでございます。
 それで8ページが,年末に取りまとめて通常国会に法案を出しますけれども,新たな地域医療構想の枠組みでございます。大きな考え方としましては,1つ目,一番上の四角を御覧いただきたいんですが,先ほど申し上げたように85歳以上の高齢者,それから生産年齢人口の大きな減を見据えて,持続可能な体制をつくるということです。1ポツ目にありますように「治す医療」と「治し支える医療」,役割を変えていくということでございます。
 何をするかということで下にメニュー表がございますけれども,基本的な考え方は今申し上げたとおりなんですが,(2)というところで,今まで病床機能ということで病棟ごとの機能を報告していただいて将来とのギャップを見据えていただくということで,機能分化を促してきたんですけれども,回復期という機能があったんですが,ここに高齢者救急などを入れて包括期というふうに,高齢社会に向けたバージョンアップをするということと,2です,病棟だけじゃなくて医療機関単位の機能をつくっていこうというようなことであったり,右側にございますけれども基金の使い方,それから知事の権限などのバージョンアップをしていくということ。それから(5)ですけれども,85歳以上の高齢者が増えていきますので,今までは病床に着目した改革だったんですが,外来,それから在宅,介護との連携などを地域医療構想の中に明確に位置づけていきたいと考えております。その中で,市町村の役割というのも明確にしていきたいと考えておりまして,調整会議等にも入っていただくということを打ち出していきたいと考えております。
 飛んで10ページを御覧いただきたいんですけれども,今,医療機関単位でも機能を明示していくということでございまして,詳細は法案等と,あとガイドラインレベルの検討会でも議論してまいりますけれども,地域ごとの機能,10ページの真ん中にありますけれども,今申し上げた高齢者救急であるとか,その2つ下,24時間手術できるようなイメージですけれども,急性期の拠点を例えば区域に1個は持ちましょうとかそういうふうな考え方を整理していくんですが,下のところ,より広域な医療機関機能というものを議論しております。
 広域な機能としましては医育機能,それから広域診療機能ということで,医師の派遣なども含まれますけれども,これはもう大学病院本院が担うような機能を明示して,都道府県と連携をしてということを,この医療法に基づく地域医療構想の中で明示をしていくという方針で取りまとまっているところでございますので,まさに今から説明する特定機能病院,それから今,文部科学省さんで取り組まれている改革とも歩調を合わせていきたいと考えております。
 11ページですけれども,これが今後の予定でございますが,先ほど申し上げましたように,今年の法案が通った後,2025の青のところ,ガイドラインの検討をさせていただきまして,来年の4月から都道府県で様々な新たな地域医療構想の都道府県単位のビジョンを定めていただいて,その次の年度から実際に走るというような段取りで考えているということでございます。
 次のページからは医師偏在対策ということでありまして,医師確保の中西室長から御説明させていただきます。
【中西室長】  よろしくお願いいたします。医師偏在の是正についてというところでございます。お手元の資料,13ページ目と14ページ目です。昨年末に取りまとめを行いました医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージというところで,御説明させていただきたいと思います。
 先生方も既に御案内のとおり,医師偏在対策,既に従前から取り組んでいただいているところでございます。医師養成課程における対策というところと,平成30年の医療法改正を受けて都道府県が医師確保計画を策定し,その中で地域の実情に応じて医師の確保対策を行うというところでございました。いろいろ養成課程の地域枠の取組等を含めまして,主に若手の医師を中心に医師少数区域等で勤務する若手医師の割合が,地域によっては少しずつ上がってきたところで,一定の効果が見られているというところでございました。
 ただ,そういった中で依然として地域によっては医師確保に大きな課題を抱えているところもございましたし,今後,2040年に向けて急激な人口構造の変化,医療需要の変化,そういったものに対応すべく,しっかりと医師偏在是正への対策を強化,加速化せよということで4月以降,取り組んできたところでございます。昨年8月に対策パッケージの骨子案を武見前大臣からお示しいただき,その後,審議会,検討会等での議論を経て昨年末に取りまとめさせていただいたところでございます。
 主な基本的なコンセプトにつきましては13ページ目のところでございます。様々な対策を複合的に組み合わせて総合的に実施していくということでございまして,こういった総合的な医師偏在対策につきましては,2つ目のポツでございますけれども,医療法に基づく大臣の告示,基本方針に位置づけるというところで,外形的にもさらにバージョンアップさせることでより対策を強化していくということでございます。
 基本的な考え方は主に3つございます。これだけをやって医師偏在対策は全て解決するという,なかなか一つの取組では解決が難しゅうございますので,様々な対策を組み合わせて総合的に行っていくというところ。これまでは主に若手医師を中心に施策がなされてきたところ,若手医師以外の中堅・シニア世代,全ての世代の医師をスコープに置いてアプローチをしていこうというところでございます。
 一番右側でございますけれども,古くから国及び県において,僻地に対しては補助金等を充てながら医師確保の対策をやってきたところでございますけれども,僻地以外の地域について,主に今後人口の減りに対して医療資源の減少の程度が主に早いというところの範囲も含めまして,僻地対策を超えた取組ということでございます。国,地方自治体,医療関係者,保険者等の全ての関係者が協働して,力を合わせて取り組んでいくということでございます。
 一番下のところでございます。こういったいろいろな対策を今回併せてやっておりますけれども,一部法改正事項も含めまして,現在必要なみなしも含めて取組を行っていこうというところでございますけれども,効果につきましては施行後5年を目途に検証し,十分な効果が生じていない場合にはさらなる対策を検討していこうということでございます。他方で現在,医師確保計画は3年スパンで,タームでやっておりますけれども,そういった3年間のサイクルに沿った取組を推進していくということでございます。
 具体的な項目につきましては14ページ目でございます。横軸に若手,そして中堅・シニア世代ということで,各世代に応じてより強弱はございますが,主に5本柱で項目を書かせていただいているところでございます。左上の医師養成課程を通じた取組につきましては,従来どおり医学部の定員でありますとか地域枠といったところでより卒後,地域医療に従事していただける学生の養成をやっていただいているところでございます。臨時定員につきましては別途,医政局の検討会の中で主に検討を進めておりまして,引き続き地域の関係者の意見を十分聞きながら必要な対応を進めていくところでございます。他方で,定員……。臨床研修につきましては……。
【堀岡企画官】  偏在対策は参考でございますので,1個1個説明しなくても大丈夫でございます。すみません。
【中西室長】  承知いたしました。今回,新たに右上の重点医師偏在対策支援区域というところで,従来の医師偏在指標だけにとらわれず幾つかの指標,尺度を使って支援区域を設定し,優先的,重点的に対策を進めて,こちらに対して経済的インセンティブを充てていくということでございます。インセンティブの内容につきましては真ん中のところでございまして,主に診療所の承継・開業支援でありますとか,これにつきましては先般の補正事業のところで積ませていただいているところでございます。
 お時間の都合上,雑駁でございますが,以上でございます。
【松本室長】  16ページ以降で特定機能病院のところ,時間の関係がございますので駆け足で恐縮ですが,御説明してまいります。
 17ページを御覧いただきまして,特定機能病院は平成4年からある制度ですけれども,医療施設機能の体系化ということが趣旨でありまして,次の真ん中の役割というところ,高度医療,それから開発・評価,研究ですね,それから研修,つまり教育と,あと医療安全の4本柱でやっていただいております。大学附属病院本院で特定機能病院じゃないのは女子医大,国際医療福祉大,東北医科薬科という3,それ以外は全て認められているところでございますけれども,18ページを御覧いただきまして,昨年の3月にこの承認をやっている社会保障審議会の医療分科会というところから意見書が出ておりまして,見直しをしてはどうかということであります。
 3点ありまして,1つ目は附属病院の扱い,医学教育,卒前卒後教育,医師派遣をやっているところがほかのところとは違うんじゃないのかということで,分院含めて整理をしてほしいということが1点。2点目が,高度医療がいろいろなところでできるようになってきて,必ずしも大学でなくてはできないということはないのではないかと,医療以外の軸も考えたらどうかというのが2点目。3点目は,がんセンターなどを所管している特定領域型という特定機能病院,これは大学病院とはかなり違うのではないかということで,整理をしてほしいということでございます。
 今までそれから3回の特定機能病院の検討会をしておりまして,19ページが7月のまとめですけれども,下から2ポツ目,大学附属病院本院は医療・研究・教育いずれも高度に行っているということで,ほかと切り分けて議論したらどうかという提示がされまして,20ページでございますけれども,11月に,これが最新の検討会ですが,その前までのまとめがこれですけれども,2ポツ目の後半にあるように少数県,都市・地方の違いにも着目した議論が必要ではないか。それから,医師の派遣に関しても検討してはどうかというようなところ。それから,下から3つ目のポツですが,附属病院本院を自動的に見るのではなくて,しっかりと役割を果たしていただける条件設定をしてはどうかということを御指摘いただいています。
 めくっていただきまして21ページでございますが,研究とかの観点ですけれども,2ポツ目,本院と分院は役割がかなり違うのではないかということであるとか,その次のポツ,附属病院の本院の役割として県唯一の専門研修などをやっていることが多いので,そういういわゆるマイナー化の問題などもしっかり見ること,その次ですけれども,今,論文数だけ見ておりまして,ケースレポートなどもカウントしていますけれども,もう少し重点化等してはどうかという御意見がございました。
 22ページですけれども,先ほど申し上げましたが,地域医療構想の中でも大学附属病院の役割,下のところ,医師派遣・医育機能・広域診療機能ということが指摘されているということでございます。
 23ページですが,DPCデータになりますけれども,特定機能病院の実績の中で脳腫瘍を出しています。大学附属病院本院の一番左の実績は確かに高めなんですけれども,箱ひげ図の下のほうに実績がゼロのところがあるということで,一番右,特定機能病院以外の400床以上の病院と大差がなくなってくる部分があるのではないかということでございます。
 24ページ,ちょっと読みにくい資料ですけれども,同じ県の中に附属病院本院よりも実績,DPCの臓器とかの幅の広さと数を比べたときに,附属病院本院よりも実績が高い病院があるケースが27,1県1医大でも6あるということでございます。
 25ページですが,これは医療に関する論点ですけれども,一番下のポツ,一般病院と大学病院の,もちろんそれ以外のところもありますが,重複している部分が出てきているということで,医療以外の軸で特定機能病院の中での大学の軸ということが,議論が必要ではないかということでございます。
 一つあるのは26ページで,医師派遣機能,これは附属病院本院のかなり重要な機能として,今,要件に入っていないんですけれども,取り上げられております。特に下,左側を見ていただくと1県1医大と2医大と3医大ということで取り出してみますと,1県1医大の,若干ですけれども派遣が多いということで,右側,医師少数県への派遣を見ると1県1医大のところにかなり頑張っていただいているというところがございます。
 27ページを見ていただきまして,医師少数区域への派遣等がばらついているので,よく見る必要があるという御指摘がありますけれども,承認要件の中に入れることも含めて検討するというステータスになっております。
 28ページ,研究に関してですが,これも重要な御指摘でありますが,割愛いたしますけれども,例えばファーストオーサーになれない共同研究などへの貢献も見ていく必要があるのではないかというような御指摘などがございます。
 29ページを御覧いただきまして,教育の部分ですけれども,19領域の診療科を全てカバーしていたりですとかサブスペシャリティーなど,大学でなければできない教育等があるということが指摘されております。
 30ページ,これらのポイントをまとめたものでございますけれども,地理的なところでこういった実績に不可抗力的なものであったり,研究よりも医師派遣を優先させざるを得ないような場合などがあるので,地理的なところもしっかりグループ分けなどを行いつつ議論する必要性が指摘されているところでございます。
 おめくりいただきまして31ページですが,これら全体を通しまして,まだ議論中で3月までに取りまとめていきたいと考えておりますけれども,一番上のポツ,附属病院本院がかなりほかの病院と異なる機能を発揮していただいているということで,しっかり切り分けて議論するということ,それから2ポツですけれども,都市部と地方部等で前提条件が異なっているのでそういうところに配慮した議論,3ポツ目にあるような類型を分けることも含めて検討を深めていってはどうかということでございまして,最後のポツにございますように要件も含めて見直していったらどうかという議論を行っているところでございます。
 以上でございます。
【俵課長】  最後,すみません,1分だけ時間をいただいて,医学教育課の俵です,補足させてください。この検討会には文部科学省も大学病院の現状と課題ということで説明する時間をいただきました。その資料が参考資料3になります。35ページにまとめということで,最後,お話をさせていただきました。
 35ページの一番最後の丸だけ見ていただいて,今回の見直しが大学や大学病院の教育・研究機能とともに,地域の医療提供体制の維持のため,全ての診療科をそろえた総合的な医療提供体制の確保や,医師派遣等による地域貢献の機能など,ほかの専門病院等とは異なる大学病院の診療等の機能への評価につながる検討をお願いしたいということで,説明とともにさせていただきました。参考ですけれども,よろしくお願いします。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 それでは,お待ちの今村先生からお願いします。
【今村(知)委員】  ありがとうございます。特定機能病院の御説明をいただいたので特定機能病院のお話と,それから病院・大学病院の運営のお話について,コメントと意見を申し上げたいと思います。
 まず,特定機能病院と地域医療構想の関係から言わせていただきますと,20年から15年ぐらい前に大学病院は一般の病院と同じだという扱いを受けて,独立採算でちゃんと利益を上げろという話もありましたし,医療構想の中でも一般の病院と全く同じなので,大学病院という区分はつくらずに一般の病院と医療区分を同じにしてやっていくということで,進んできたと思います。今回,新たな医療構想では,医育機能というのは別だということで,大学病院を切り離してもらったので,ぜひ今後の議論でもそこは拡充していってほしいと思うんです。
 確かに医育機能というのは独立したものですけれども,今までの説明にありましたように研究や,特に難しい疾患でややこしいのは大学に来ることが多くて,そういう患者さんを診る組織だというのが,特定機能病院の議論の中で充実してほしいと思いますし,それは文部科学省からも,俵課長からもありましたけれども,ぜひそういう機能があるということを議論として詰めていってほしいと思います。
 2つ目,前半の大学の教育・研究・運営ということで,運営について私,コメントさせていただきたいと思いますけれども,先ほど研究の論文が減っているのはなぜかということで,94年からということで法人化のせいではないという話もありましたけれども,実際法人化して国公立,独立採算を求められているというのが,補助金はありますけれども,その上で赤字が出ないようにということで動いています。実は私,多くの大学病院の経営に携わっていて,赤字が出たら何をするかというと当然,頑張って働いてくださいということを言うわけです。
 頑張って働いてくださいというのをもともと研究も頑張っている人に言うと,どうしても診療に割く時間が多くなってしまうということがあって,自分も研究をしている立場から非常に言いにくいことながら,大学全体にもっと稼いでくださいということを言わざるを得ないというのが,各病院,黒字になってきたらそういうことを言わなくなるというような状況で,赤字になるたびにぐっとブレーキがかかるというような,そんな状況だと思います。なので,財政面の安定というのは何より重要なことだと私は思っています。
 その上で,大学の運営について今回コメントしていただいている中で,各大学が赤字だと言っている内容が損益計算書,PL上の赤字を赤字だと言っていることが結構多くて,それは本当の赤字,企業会計上赤字なんですけれども,実は現金赤字というのがその下のレベルでありまして,現金赤字が出てくると本当に倒産のカウントダウンができるんですけれども,その現金赤字が出ない間は赤字と言ってもちょっと頑張れば何とかなるという話の範囲だと思うので,私は現金の決算が各大学病院で明確になるように,決算を考えるべきだと思っています。
 一番象徴的なのはBS,貸借対照表です。これがセグメントとしての大学病院で独立してあるということが重要であると思っていまして,あれでいくと現金が幾ら減ったか増えたかというのが各決算のたびに出てきますので,これが危ない赤字なのかまだ待てる赤字なのかということが分かるだけでも大きいと思いますし,それがちゃんとたまってくれば,再投資できる金額もはっきり分かりますので,そういうことが必要ではないかと思っています。
 それと各診療科別の収支を出すべきだということ,私も賛成ではあるんですけれども,多くの病院が赤字ですので,診療科別収支をすると赤字は頑張っている診療科に集まります。極端に言うと,病院長の人件費をどこに振りますかというと頑張っているところに振らざるを得ない。そうすると,赤字の原因が一番頑張っている診療科になってしまうという,赤字の経済学という特殊なことが発生します。それを見せると,大学でもう大論争が起こって,私は何回も殴られ役をやったんですけれども,そこで耐え切れないともう死んでしまっているんですけれども,耐え切ると,先ほど書いてあるように継続的に見ていくには非常にいいものなんです。
 ですから,つくるべきだというのは全くそのとおりなんですけれども,各大学がつくろうとして多分失敗しているところが多くあると思うので,それに対しての支援体制を組んでいただくということが重要なのではないかと思います。
 意見としては以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 では山口委員,どうぞ。
【山口委員】  ありがとうございます。山口でございます。私は一般の立場ですけれども,大学病院のほかの病院との違いということでいうと,診療・研究はもちろんですけれどもやはり教育の部分だと思うんです。もちろん研修医だとか専攻医ということでは大学病院以外のところでもおこなわれているわけですけれども,医師になる前の教育ということでいうと大学病院の担う役割が大きいと思っています。ただ,模擬患者を養成して派遣を複数の大学にしていますけれども,教育の体制が大学によって違うと感じていまして,特に診療参加型臨床実習前の共用試験のCBTやOSCEが公的化したことによって,少し体制が変わってくると期待はしているところです。
 そんな中で特に診療参加型臨床実習ということで,これが,まだ参加型ということが見えてこない現状があると思っております。以前,この会議で私,申し上げたかもしれないんですが,隣にいらっしゃる相良病院長の昭和大学の話を私がするのは変なんですけれども,非常に昭和大学医学部のカリキュラムが劇的に変えられたことに私,注目していまして,その中でも2年生になるとすぐに看護実習と多職種実習をされていて,2年生の後半からは週に1回,1人で病棟に行って実習をされています。はじめはシャドウイングで,2巡目からは本当に医療者の一員として実習するということで,医行為をどこまでされているかというのはお聞きしてはいないんですけれども,非常に医学生が自主的に,そして常に患者を頭に入れながら実習,週に1回というのを義務化されているということを伺っています。
 それによって大きな変化が起きてきているということもお聞きしているんですけれども,それを拝見したときに,抜本的な改革をしないとカリキュラムを変えることができないということを感じていまして,何よりも病院のスタッフの方たちの協力と理解,これがないとできないということを感じています。ですので,JACMEができてもう10年になろうかとしていますけれども,それによってカリキュラムが変えられて,認められていっているんですけれども,本当に診療参加型臨床実習になり得ているのかどうかというところを,まず検証しないといけないのではないかということと,それがもしできていないとしたら何がネックになっているのか。
 ただ,国民はまだ,こういう診療参加型臨床実習が始まっていることを全然知らないです,医師法の改正によって今,医行為もできるようになっていて,そこには患者の協力ことが医学教育の中で欠かせないんだということを,病院だけではなくて国からもしっかりメッセージを送っていただくということが大事ではないかと思っています。まず,そういったことを調査するのと,原因を調べていただきたいというのが文部科学省へのお願いです。
 一つ質問したいと思いましたのが資料1の58ページのところで,地域医療介護総合確保基金の措置状況というのが書かれているんですけれども,活用されているところと全く活用していないところがあって,こういうばらつきが起きるのは知らないのか,どこが機能していないから使えていないのかというところが私,分からなかったので,もしこれを使うことによって,今,財政的に厳しいと言っているところが,何かできることが増えてくるんだとしたら,もう少しうまく活用できるような案内があってもいいのではないかと思うんですけれども,このばらつきの原因というのがもしお分かりであれば教えていただきたいと思います。
【永井座長】  いかがでしょうか。
【堀岡企画官】  文部科学省です。まとめて今村先生のお話もお答えさせていただきます。今村先生からPLベースのお話がありますけれども,特に国立大学は今セグメント収支というものを出しているわけですけれども,もう少しPF・BSに近いものが出せないかということは,二次取りまとめでもその内容は議論されましたし,どのようなことができるか文部科学省でも検討中でございます。
 2つ目の診療科ごとの,今,コストの多分,割り振りのお話だと思います。我々もいろいろな大学病院にこの診療科のお話を聞いたときに,コストの割り振りをどうするのかで診療科の先生からもうすごく怒られて,絶対できないというのは重々聞いております。一方で,普通の民間会社だったらそういうことがあっても部門ごとに収支して競わせるというか,そういうことは当たり前でして,大学でもコストの分け方は難しくても,経時的な変化,同じコストの計算の仕方の中で経時的な変化は見られるものだと思っていますので,我々としてもできるだけ運営をやりやすいように,別に赤字だから悪いわけではない部分も,大学病院はございますので,きちんとそういった誤解がないように,赤字だから悪いという誤解がないようにしながら,少しそういった取組もおすすめしていきたいと思っております。
 山口先生からいただいた診療参加型臨床実習ができない理由は本当に我々も難しくて,前回の調査では全大学でできていないのでそもそも論だったのかもしれませんけれども,今回の新しい調査では,少し仮集計までしていますけれども,少し医行為の実施状況が上がってきているということがありますので……。
【山口委員】  ぜひ,相良病院長から生の声を……。
【堀岡企画官】  そうですね。ありがとうございます。あとで調査結果の中でもいろいろな分析してみようと思いますので,相良先生からもお教えいただいて,いろいろな取組を参考にしていきたいと思っております。
 基金の活用については極めてコメントが難しいんですけれども,すみません。ありがとうございます。
【西嶋課長】  厚生労働省医政局医事課長です。基金についての御質問ですけれども,この基金については今年度から初めて地域医療体制確保加算を受けている大学病院でも使えるようになったんです。ですので,これまではどちらかというと中小病院などを念頭に置いた基金になっていたので,新たな事業区分を創設した初年度だということもあるんだと思います。来年度以降は必要なところにきちんと基金を活用していただくことが大事だと思いますので,基本的には大学によく認識をしていただいて,大学と県でよく話し合っていただく必要がありますので,我々としても,県にも周知をしたいと思いますし,機会があれば文部科学省とも連携して大学にもお伝えしたりしていきたいと思っています。
【山口委員】  大学と県がうまく連携しているところが使っているということですね。
【西嶋課長】  そうですね。そういうところが多いと思います。
【永井座長】  よろしいでしょうか。
 では,宮地委員,どうぞ。
【宮地委員】  ありがとうございます。今,山口委員からも御提案のあった参加型の件に関して,私も述べさせていただきたいと思います。参加型臨床実習の推進の一つの指標として医行為の実施率,取得率を向上させるということの必要性はもう本当にそのとおりだと思います。ただ,その必要性を指導医や患者さん,国民に理解してもらうことと,医行為をやらせられるという保証としての共用試験OSCEの合格というのは基本的に必要だと思うんですが,方策としてそれだけではやはり不十分であろうというふうにも思っています。この方策に少し踏み込んで鍵となり得る点を2点,挙げたいと思います。
 一つは,シミュレーションでよいので医行為に対する学生のレディネス,気持ちや知識,スキルの準備状態をできる限り高める経験を臨床実習中にちりばめておくということです。共用試験に合格してもやらなければ忘れますし,自信もなくします。実際に医行為をやらせられるチャンスが巡ってきたとしても,指導医はその学生がやったことがあればやらせられると思いますが,やったことがないですとかやったけど忘れた,あるいは自信がないと言われてしまえばためらいます。
 また,監督下で医行為をさせるのに適した状況が巡ってくるかどうかも偶発的ですし,学生全員に同じ学習機会を保障するということも,臨床現場では不可能です。しかし,臨床実習だからといって学生をずっと病棟に引き止めておかなければならないというわけでもありません。臨床現場での教育の偶発性を補うためにも,シミュレーションセンターなどでのスキルの実習を随時組み込んでおくことを推進するべきだと思います。そうするとシミュレーションセンターの教員の補充は必要にはなるんですが,指導医の負担を減らすことができ,結果として医行為の実施につながると思います。
 2点目は以前この検討会でも議論されたと思うんですけれども,全ての科を細切れで回ることよりは,1つの科での実習期間を延ばすということです。実力を評価する時間もなくて去っていく学生に,医行為を含めて何らかの役割を任せるということは難しいことです。また,高度な先進医療技術の求められるような大学病院よりもより多様でコモンな医療ニーズに対応する地域の病院や診療所のほうが,学生に医行為をさせる機会には恵まれているかもしれません。この2点を強みとして併せ持つ教育の枠組みに,地域に一定期間身を置いて長期で臨床実習を行う,Longitudinal Integrated Clerkship,LICといいますけれども,そういうやり方があります。
 細切れのブロック研修よりもLICで学んだ学生のほうが知識や臨床スキルの評価で成績がよかったというエビデンスもありますし,またLICで学んだ学生は有為にその地域に残ってプライマリーケアに従事しやすいという研究も最近出ていますので,医師偏在への対策としてのヒントも得られると思っています。既にLICをモデルとして臨床実習に導入している大学は国内にもありますので,ぜひ参考にしていただけたらと思います。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 続いて炭山委員,どうぞ。
【炭山委員】  私,私立医科大学協会会長としての話をさせていただきたいと思います。
 永井先生から御質問があったように,国立大学に比べて私学は意外と研究論文数とかを頑張っているということで,それに対する国立大学側の説明は経営が法人化して大変だということなんですが,資料1の61番を見ていただくと分かるんですけれども,附属病院本院プラス分院の平均が令和4年度,収支マイナス校が11校だったのが,令和5年度はもう既にマイナス校が20校になっているんです。黒字の附属病院と医学部だけを合わせたものというのは,20校が既にマイナスなんです。だから,赤字の幅がどんどん広がっているという状況の中で,なぜこういうふうに私学の研究伸びているかというと,私学は教育も研究も医療も医師派遣も全て本院と分院が競争してやるんです。これは大きな違いだと思うんですが,分院を持っている私立医科大学だけが大きな競争原理が働いているのではないかと思います。
 それから特定機能病院の見直しの,厚生労働省から御説明がありました。これも私立では分院がトータルで57あるんです。本院が30,トータル87なんですが,本院に対する30病院の特定機能病院は今後,改善が見られるという御報告,大変うれしいんですけれども,一方,分院に対しては何らかの経済的なインセンティブをつけていただかないと,先ほどのようないろいろな機能が十分に果たせないので,これに関してはぜひお願いしたいと思います。
 それから堀岡先生のお話の中で,初期臨床研修に関しては戻りが悪い。だけど,専攻医は大学には戻るということの実質ですが,ここで大きな問題が,シーリングがかかっているんです。このシーリングによってなかなか帰れないということがございます。それと大学院に行くパスウェイがないんです,キャリアパス。すなわち,ほとんどの臨床研修医は専攻医を取りますので,そうしますと大学院に行かないで専攻医の課程を取ろうとしますから,そこを文部科学省で何か工夫をしていただいて,大学院に行けるイコール専攻医も取れるというようなそういうプロセスが,パスウェイがあってほしいというのが願いです。
 私からは以上です。永井先生,以上です。
【永井座長】  よろしいでしょうか。ありがとうございました。ぜひ,今の御発言,事務局でも御検討ください。
 続いて諸岡委員,お願いいたします。
【諸岡委員】  ありがとうございます。私は今までとは違う点で意見を述べさせていただければと思います。資料1の,右下のページで言うと29ページになりますけれども,医学研究分野における研究の多様性という,あるいは流動性という観点で申し上げますと,横断的な研究,例えば医学部と工学部,ここにも出ていますけれども,私は情報学を専門としておりますが,そういったところとの連携であったり,あるいは国内外の医療機関との交流の促進ということをここで挙げられていらっしゃいますけれども,実際今,研究の流れとしてはそれがもう主流になってきておりまして,例えば基盤モデルというのがございます。
 これは,例えば一つの臓器の腫瘍を検出というシステムではなくて,何か画像を入力すると部位とか臓器に依存せずに腫瘍を例えば抽出するとか,そういった汎用性の高いモデルをつくるというのが,今もうほとんどいろいろなところでできています。そのようなものをつくろうとすると膨大な数のデータを集める必要がありまして,そうすると例えば海外の研究だと国のデータだけではなくていろいろな国,本当に世界中にまたがった形でデータを集めているというのが行われております。私の経験からすると,なかなかそういったものを日本でやろうとすると,今のところまだ大学単位の研究であったり医療機関単位の研究で行っているんですけれども,それだとなかなか今後の研究の主流に乗っていくのは難しいと思っております。日本でも例えば日本医学放射線学会を中心とした日本医療画像データベース,J-MIDというのがあるんですけれども,そういった形で膨大な画像を集めて研究をするという土壌はだんだんできつつあるんですけれども,より推進していくような何か方策であったり,そういったものができればいいかと考えております。
 もう一つ私,JSTのCRESTで細胞診を支援するシステムを開発するというプロジェクトでPIを担当していたんですけれども,そういった医療機器というか医療支援システムなんかをつくろうとしたときによく海外の知人から言われるのは,日本のデータだけでつくっても日本でしか適用できない,使えないよねというふうなことをよく言われるんです。ですので,国内に問わず国外,海外との交流をどんどん積極的に進めていただいて,そこでシステムとしてつくったものが日本だけではなくて海外でも使えるようなものができるような,そういった研究の方向性というのは一つこれから進めていくべきではないかと思った次第です。
 それからもう一つ,この資料の1つ前のページにありますけれども,28ページです。バイアウト制度に関してなんですけれども,私もバイアウト制度を活用したいとは思っていて,取り組もうとしたんですけれども,行き着くところで問題となるのは,これを活用するときに相手方というか,その人をなかなか見つけにくいというのがあります。学内で見つけることができればよろしいんですけれども,なかなかそうでないと,学外で見つけていくとなると特に若い研究者にとっては厳しいシステムだと思っております。ですので,例えば人材データベースではないですけれども,そういった情報源がありまして,そこで検索して見つかればマッチングみたいな感じになりますけれども,それでバイアウト制度を活用していくという,何かそういったバイアウト制度を促進,積極的に使えるような枠組みとか改正というのをぜひ,大学だと難しいかもしれませんので,国でできればつくっていただければと思っております。
 以上になります。
【永井座長】  ありがとうございます。
 横手委員,どうぞ。
【横手委員】  ありがとうございました。今日は詳細な御説明を文部科学省,厚生労働省からいただきまして,大変よく分かりました。ありがとうございます。医師の働き方改革が昨年の4月からスタートし,そして地域医療の問題,あるいは医師の労働時間をしっかりと把握することに伴って,また人件費が増加するというようなことがあって,そこに合わせて地域医療構想とそれから医師の偏在対策,いわゆる三位一体の対策をしっかりと厚生労働省で御検討いただいているということを大変心強く思いました。また文部科学省との連携のもとで,特定機能病院の中で大学病院の取扱いを考えていただけるということも,これまで当たり前のように行ってきたこの医育機能,それから医師の派遣機能,研究というところに着目していただけたことは,本当にすばらしい一歩だと思います。
 一方でこれは新たなスタートだと思います。今,物価高,それから人件費の高騰,光熱費の高騰などで,本当に今の診療報酬の中では高度機能を行う大学病院はランニングコストを賄うだけで精いっぱいになってしまう。特に再開発を進めてきた国立大学においては非常に大きな借入金を抱えて,その返済に手が回らなくなってきている。これまで国立大学は,いわゆる内部留保を置くことができませんでしたので,借入金に大きく頼らざるを得ませんでした。ですから,今赤字でない,収支とんとん,あるいは黒字のところも,これからさらに建設費などが高騰している中で再開発を行うと,大変なことになってくるということが予見されます。したがって,今後もしっかりと国民の生命を守り,研究力を高めていく,そして地域医療を守るために,大学病院がしっかりと医療を続けられる,そういう体制をこれを機に改めて確立し,スタートとして考えていただければと思います。
 もう一つ,地域医療についてですが,医師派遣については,特に地方の国立大学を中心としてすでに若手医師の,大学病院離れが進んでしまっていますので,それだけでは地域医療を担っていくことが難しいように感じます。すなわち,20年前に臨床研修制度が新しくなってから,大学病院離れが進み,もはや大学病院に頼るだけでは今後の地域医療を支え切れない可能性がありますので,ぜひ,今日御提示になった医師偏在の対策などを強力に並行して進め,手後れにならないように進めていただくことが大事だと思い,発言させていただきます。
 以上でございます。
【永井座長】  ありがとうございます。
 今村英仁委員,どうぞ。
【今村(英)委員】  本日は主に大学病院側からの御意見ということで,多く出ているかと思います。日本医師会の代表として出させていただいておりますけれども,日本医師会としても今回の大学病院の位置づけ,医育機能プラス医師派遣で大変重要な役割を果たしていらっしゃるということで,こういった部分を新たな地域医療構想の中に入れていただくこと,それから医師偏在対策の中においても非常に重要な役割を果たすということで,この見直しに賛成しているところです。
 一方で,現場から少し不安の声というのも上がっております。それは,先ほど炭山委員から本院と分院が切磋琢磨するから,非常に研究も含めて業績が上がるんだというお話がございました,しかし,場合によってはそういった分院などが,地域の医療機能の中で,今まで地域の病院が主に担っていた部分にまで進出してくることもあるということで,そこら辺が懸念材料として挙げられることもあります。
 いずれにしろ,日本医師会としては大学病院の,特に本院の在り方というものを非常に大事に考えておりますが,一方で先ほど横手委員からも出ましたけれども,医師派遣の話も含めて,地域医療への影響が非常に大きく出てくる可能性があります。そういったところはぜひいい形で地域医療に貢献していただくということ,何らかの形で地域医療への貢献の部分を第三者に評価していただくなり,もしくは地域の医療についてはその地域の医師会が一番よく分かっておりますので,地域医師会の声というものもしっかりと聞いていただきながら,今後の大学病院の在り方をしっかり御検討いただければと思っているところです。よろしくお願いいたします。
【永井座長】  ありがとうございます。
 それでは,銘苅委員,どうぞ。
【銘苅委員】  よろしくお願いいたします。琉球大学の産婦人科医をしております,銘苅と申します。私からは地方大学として,それから女性医師の活躍推進ということをずっとやってきた者としての発言とさせていただきたいと思います。
 全てにおいてまず何よりもお願いを申し上げたいのは,大学病院で働く医師の待遇改善です。働き方改革を女性自身という立場からずっとやってきましたが,何よりも,女性でなくても,大学で働くことの給与がほかの病院よりもかなり少ないということで,どんなに働き方改革,変形労働制宿日直許可,様々な手を使っても,給与が少ない限り外勤せざるを得ない。大学病院で働いているのに,そこからの給料よりも外勤先での給料がなければ生きていけない。すごくアンバランスというか,物すごく責任を持って高度医療であったり様々な教育・研究をやっていても,評価されるのは教官としての評価というところが,非常にバランスがとれていないというか,もう理不尽であると,現場の者は多くの者が感じております。
 ですので,我々,大学病院で働いている医師は,医師として働いているという自覚なんです,多くの者は。教育者として働いていますとか,研究者として働いていますという大学病院の医師は,多くはないのではないかと思っています。例えば先ほどから医行為を教育すると,それから大学院生を教育すると,それはもちろん我々の使命だと分かっています。だけれども,大学病院に入りたい,大学病院で学ぼうと思ったときに入る人たちは,ほとんどは医師としての使命を全うしたい。医師になる者全て,患者さんの命を救いたいと思ってなっている人たちが,大学病院に行くときに学生を教育したいから大学病院に入りますという人が一体どれぐらいいるのかと,私は疑問に思います。
 私は今,教官としてやっていますので,若手の先生方に研究の大事さも伝えますし,学生さんたちには一生懸命伝えるし,医行為も行っていただくんですけれども,そこには責任を伴いますので,教官としてというよりは医行為を行っていくこと自身も医者としての責任感を持って行っている。であれば,教官としてではなく,大学病院で働く医師に対しては医師としての待遇をお願いしたいと強く思います。これが改善すればもう多くのことは改善されるので,人材確保であったり,今,一生懸命働いている教官の先生方の待遇改善によって,外勤先での仕事を減らして,給与が取れ,働き方改革につながる,それだけで多くのことが改善できます。ですので,これは本当にぜひともお願いいたします。
 具体的に言えば,私の後輩の先生方は女性医師が多いですけれども,これまでも物すごく教育・研究,それから育児,そして収入確保のために身を削って働いてきていただいているんですけれども,もうバーンアウトされます。ですので,バーンアウトされてしまったら,これまで一生懸命育ててきた先生方はまた1からリクルートして,教育していかないといけないんですけれども,もう今の世代の先生方は,いやいや私たちは医師になりたいんです。医師として働きたいんです。それから,医師としての待遇をしっかり求めますということで,非常にリクルートすら難しい状況です。ぜひ,この時代の流れということもサーチしていただいて,もし本当に大学病院を継続していきたいという国のお考えがあるのであれば,そこに関しては非常に注力していただきたいと思います。
 それからもう一つ,大学病院で働く医師の見えづらい一つのお仕事として,学会でのお仕事をほぼボランティアで行っているということがあります。病院でやっている仕事以外に,時間外に学会の,例えば私は産婦人科ですけれどもガイドラインの作成,それから専門医の試験問題の作成,様々な雑誌の執筆,そういったところは全てボランティアで行っていることが多いです。ですので,学会への支援ということもぜひ一つの方策として行っていただき,学会のお仕事をされている多くの大学病院の先生方に学会から,ボランティアではなくそういった報酬もしっかりと支払われるような待遇改善ということも,一つの方策としてぜひ検討いただきたいと思います。
 私からは以上です。長くなりましたけれども,願いは一つです。よろしくお願いいたします。
【永井座長】  ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。田中委員,その後相良委員,どうぞ。
【田中(雄)委員】  銘苅委員に補充で短くお話ししますと,待遇改善で,診療報酬で今見てくださっている部分というのは,非常勤医師は対象にならないので,医員とか若い人たちは対象になっていないんです。そうすると,それを何とかしなければいけないということで,何とかするためには大学病院ないしは大学が支出するしかないということで,ますます経営状況が悪化するという現実があることも指摘しておきたいと思います。以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 相良委員,どうぞ。
【相良先生】  先ほどの追加で少しお話をさせていただきますけれども,山口先生がお話をされていた件ですけれども,一つは昭和大学の現状といいますか,教育に関して少しだけ話しをさせていただきます。先ほどお話しされていたいわゆるM2,2年生のときからやる臨床実習を行っているということで,当初,昭和大学自身も実際,2年生から臨床実習を始めて大丈夫なのかというところもありましたし,それから実際に病棟に行ってそこに対しての指導医がどういう形で対応しなければいけないのか,非常に多くの労力を使いますので,そこは協力なしではできなかったということがございます。
 実際にM2から病棟を週に1回,回るようになって,それからあと後半では臨床実習といいますか,いわゆる教育も含めて,例えば一番最初に始まるのは呼吸器内科から6週間,それから循環器内科から6週間ということで,メジャー内科から始まる。実際にそれが大丈夫なのか最初は怖かったんですけれども,実際に1週,2週,3週,4週,Body Interactも含めて全部,私も含めて見ていきましたけれども,最終的に6週終わったときに,各グループ分けでやるんですけれども,かなりすばらしいものが出来上がるということで,これは例えば4年,5年がやるのよりもむしろすごいのではないかというものが出来上がってきて,これはうまくいっていると思いました。
 実際にそういう診療科だけということではなくて,例えば呼吸器ですと呼吸生理とか,あるいは解剖含めて全ての今まで縦割りだったものが横の診療科,あるいは基礎系とうまく連携をとって,そういう意味では非常にいい研究体制が取れたと思っています。むしろそういう面ではこれが教育のあるべき姿ではないかと実感した次第でございます。そうすると,医学部に入ってきて実際に自分たちが例えば実際の臨床に行くまでにかなり時間がかかってきて,先ほどの琉球大学の先生ではないですけれども医師として,医師になりたいということでやってきた,そこが実際に早い段階から,アーリー・エクスポージャーの段階から経験できるので,そういう面ではいいのではないかと私は思っていますので,ぜひそこのところは先生方含めて経験していただければと思います。
 それと,あとお話ししたいのは,例えば大学病院に医師がなかなか残りづらいというのは,確かに給与体系というところもありますけれども,研修医は外に出ていって,3年目の専攻医からは戻ってくる。それは何なのかというと一つ,専門医を取るという面では症例数を集めなければいけない。そうすると,大学病院に戻ってきて症例数を稼がなければいけないということがありますので,そういうところから大学病院にばあっと集まってくる。実際,専門医を取るとわあっと辞めていくということがあって,大学病院をそういう場として,逆に悪い言い方をすると利用しているというところがあるので,そういうところをもう少し大学で働くことのインセンティブを与えてあげるような形でやらなければいけないとは考えています。
 それで,あとはシーリングの問題もそうなんですけれども,当然ながら医師の偏在対策をしっかりやっていかなければいけないというところもありますので,例えば東京あるいは大阪等々踏まえて医師が多く集まってくるところにシーリングをかけることによって,シーリングがかかっていないところにうまくドクターが行っているかというと,実はあまり行っていないところがありますので,そういう面では逆にシーリングをかけないで,多く集まっているところのあふれたところは地域のほうに行かなければいけないという形でとっていくと,うまく地域のところは確保できるのではないかと思いますので,それを踏まえてそこの対策を少し考えるといいのではないかとは思いました。
 どうしても給与体系ということでいいますと大学病院の給与体系は低いので,その辺りはどうするかということも考えなければいけませんし,それからあと大学院生が今,残念ながら激減してきている。それは,一つは給与体系というところで,逆に払わなければいけないということになりますので,そういう面で減ってきているというところと,それからあとは専攻医の制度が入ってきているので,なかなかダブルボードでできないというところがありますから,そこがなかなか難しい。実際,専攻医が終わってから大学院に入るとかそういうことをしないと実際,専攻医のところを中途で辞めなければいけないということになりますので,かなり長く時間がかかってしまうというところが問題なのかとは考えていますので,いろいろ問題がたくさんありますけれども,そういうところを踏まえて考えていく必要性があるのではないかと思います。
 それから,あと特定機能病院のところは非常に重要ではないかと思いますけれども,特定機能病院としてやっているところの問題というのは卒後教育だけではないということがありますので,卒前教育も含めてしっかりやっていますので,そこに対しての時間はかなり労力を注がなければいけませんので,それも踏まえて特定機能病院はどういうところが重要なのかに関しては,高度な医療をやっているというところだけではなくて,卒前卒後の教育もしっかりやり,それが研究にもつながっているのだというところを評価対象にしていただくということが重要かと思います。ありがとうございました。
【永井座長】  ありがとうございます。
 門脇委員,どうぞ。
【門脇先生】  香川大学の門脇です。いろいろな出たお話で大学病院の教員の待遇とか,いろいろな研究体制を整えたり教育体制を整えて,それも非常に厳しい病院の経営の中でということになって,結局,もうつまるところ全てお金が必要なわけです。そのお金をどうやって大学に持っていくかという,結局,そこに尽きると思うんですが,こういう検討会でお話ししてそういうことになると思うんですけれども,国を,財務省ということになるかもしれませんが,どうやって動かす方向に,大学病院にお金を持ってくるかという方策としていろいろ文部科学省の方とお話をしても,例えば国民の声を動かすというか,国民の理解を得るということが一つの重要な策というお話がありますけれども,確かに大学が困っているということを普通の国民,一般の国民は全く理解しておられないと思います。
 それを理解してもらうのに,多分それぞれの大学で,例えばいろいろな高度な医療の市民講座とか,ロボット手術とか,そういうものを開催したりとかして大学の取組を紹介したりとか,いろいろなアピールをされていると思いますけれども,そういうことをしても,例えば大学病院の経営の改善に根本的にどれぐらい,お金の獲得にどれぐらい結びつくかというのは分からないところがあります。なので,こういう私たちの努力をどうやって大学病院全体に予算を回していく方向に向けられるかという,非常にこれは根本的に大きな問題になって,それは難しいと思うんですが,そこに向けたアイデアとして,それを私たちで考えていく必要があるのではないかと思います。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 和田委員,続いて金井委員,そろそろ時間が押してきましたので,手短にお願いします。
【和田委員】  ありがとうございます。長い議論をいただき,おまとめいただきまして,本当にありがとうございます。大学病院の持つ独特の機能というところにフォーカスが当たっており,私もそのとおりだと思います。その独特の機能のうちプラットフォーム,基盤的なところと,独特をさらに伸ばすという方向の,2つの議論があるような気がします。プラットフォームとして,基盤としてとすると,これは診療報酬だけではカバーできない部分も含めての補償,手当てというのが必要なのではないかと思います。その上で,競争的資金にする必要があるのかという議論も必要なのではないかと思いました。
 それから,全体的に独特の機能を伸ばしていくときには,医育機能としての教育,あるいは研究と大学病院にはいろいろなものがあると思います。共通しているものは時間なんだろうと思います。時間を考えると,研究の支援人材であるとか,あるいは共通の事務処理などのDX化というのは,多分全国で共通部分というのもあるのではないかと思います。その部分を共通化したプラットフォーム,例えば研究の申請などは共通化できるものは全部プラットフォーム化するとか,少し構造的なものも変えていくような必要があるように感じています。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 続いて,金井委員。
【金井委員】  先ほど大学病院の教員の待遇改善というお話がありましたけれども,本当にそれは実現したほうがいいとは思います。しかし,もう財源がないので,僕もそれを言いたいんだけれども,結局無理だと思います,財源がないので。第1回の会議で私,過激な意見を申し上げました。厚生労働省の予算の3兆円だけ,文部科学省に3兆円を移してくだされば大学病院の教員の改善は多分できるんだと思うんですが,それができないとこの間言われたので,多分大学病院での待遇改善はなかなか難しいのかと思います。
 ただ一つ角度を変えて申し上げると,大学病院の教員に起業するチャンスを整備してほしいと思います。昨今,大学病院でも起業して,随分成功して,物すごい収入を持っている大学の教員もいます。そういった形で,大学病院の特徴としてシーズを持っているわけですので,起業するということをサポートしてくれるような仕組みは文部科学省の予算でできるのではないかと思っています。ぜひそれはお願いしたいと思います。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 銘苅委員,どうぞ。
【銘苅委員】  少し後回しでお願いします。
【永井座長】  よろしいですか。
 堀岡企画官,どうぞ。
【堀岡企画官】  事務局からすみません,時間のない中。多くのことを御指摘されたんですけれども,特に待遇のことをたくさんの先生から御指摘いただきましたので少し,厚生労働省も文部科学省もいる場ですので,我々が何も言わないわけにいかないと思ってお話しさせていただきますと,この検討会が始まって,恐らく大学病院の待遇が悪いということは,みんな薄々は知っていたわけですけれども,初めてAJMCも調査として出してくれましたし,我々も検討会でもう表から取り上げるという形で,少しでも待遇を改善したいという思いでおります。それで,厚生労働省ともいろいろ頑張って,我々も,不十分ではありますけれども,いろいろな形での予算を取って,厚生労働省も大学病院に大分,診療報酬でもつけていただいたと思っております。
 ここで,一文部科学省の担当者として,待遇を改善することの抜本的なことは言えないわけですけれども,つかさつかさで,僕らも,もちろん厚生労働省にもすごく頑張っていただいていますし,本当に教育・研究・診療に携わって,すごく社会的にも役割の高い先生方にできるだけ報いるような,できることがしたいと思っております。すみません,こういうようなことしか言えませんけれども,お話しさせていただきます。
 以上です。
【永井座長】  では,最後に銘苅委員,どうぞ。
【銘苅委員】  すみません,時間が押しているところ。今,難しいだろうという御意見をいただきましたけれども,現場としてはもう恥ずかしくても医師として本態ならば奉仕の精神でやっている,お金を求めてはいけないという教育を受けたものであれば,これを言うのは非常に心苦しくはありますけれども,ただし下の後継者を育てる,継続的に医療を続ける大学病院がもし必要だと国が判断していらっしゃるのであれば,これは伝えていかなければ,世代が変わっていく中で大学病院に入っていただける方はもういなくなるだろうと,本当に切に危機感を抱いておりますので,恥を忍ぶというか,発言させて,継続して訴えさせていただきます。そうでなければもう基本的にはストライキ等をして,大学病院がなくなったときに,本当に要らないんだと思うのか,私自身がそれは納得できるものなのか,それともないと困るものなのだと国民の皆さんに気づいていただけるのか,ただし国家公務員ということであればストライキはできないわけですけれども,そういったことで何らかの対応が必要,訴え続ける,私の使命としてはもう訴え続けるしかないということ。
 それから,この20年で何が変わったかというと,多くの女性医師が働いている。男性がいわゆる育児・家事を多く家庭のものを任せた上で,フルで働いて担ってきていただいたこの大学病院の仕事を女性医師が半分担ってくると非常にひずみが出てきて,多くの負担が女性医師以外のスタッフにもかかっているし,女性医師も生きづらいということもありまして,そういった変化にも対応できるように,最も重要なのは待遇改善だと考えています。申し訳ありません,少し言葉が過ぎたところもあったかと思いますけれども,どうぞ御配慮いただきますよう,よろしくお願いいたします。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 押していますけれども,次に事務局より,令和6年度補正予算,令和7年度予算案について説明をお願いいたします。
【永田室長】  ありがとうございます。大学病院支援室長の永田です。資料につきまして,私から御説明させていただきます。時間があまりなく,かなりはしょった説明になると思いますので,大変申し訳ございませんがよろしくお願いします。
 1枚おめくりいただきまして1枚目,これは大学病院関係施策全体整理したものでございます。上のピンクのところは文部科学省,それから下のブルーのところが厚生労働省からの支援ということで,整理をしております。大学病院の機能である教育・研究,それから診療・地域医療,各機能を軸といたしまして,真ん中辺りから左側のところがこれまでの支援,右の部分が令和7年度に向けた検討事項ということになっておりますが,そのうち右上部分が今年度補正予算で支援するものでございます。
 1枚おめくりいただきまして,令和6年度の補正予算ですが,右側の医学系研究支援プログラムにつきましては,先ほど資料2でも説明させていただきましたので,割愛をさせていただきます。それから,左側が高度医療人材養成事業というもので,大学病院のいわゆる教育・研究でも活用できる最先端の医療設備機器の整備ということで,事業化したものでございます。昨年度も同様の形で医療機器の整備の支援をさせていただきましたけれども,昨年度は,新型コロナ禍後の診療参加型の臨床実習の充実を目的としまして事業化したものでございますが。一方,今年度の補正予算案につきましては,,問題となっている医師等の偏在対策をいかに解消していくかということで,文部科学省でも何か支援ができないかという観点から事業化を進めていたところでございます。
 具体的には後ろ,4ページを見ていただいたほうが分かりやすいかもしれませんけれども,左側に支援対象イメージというところがございますが,これはこの検討会の第二次取りまとめの中でもお示しさせていただいた,大学が養成しようとする医師像の構想する教育プログラムが必要ではないかという提言を踏まえて,各大学の実情に応じて,必要とされる医師の養成に係る教育プログラムを構築,実施していただき,その養成に活用できる医療設備機器を整備するための支援事業ということになります。
 具体的なイメージは右側でございますけれども,例えば医師不足地域を含む地域における医療を担う医師を養成するというところから,遠隔医療が今後重要になってくるということもございますので,遠隔ICUを導入しながら将来的に求められるような人材を養成するプログラムを実施するとか,また,特定の診療科に関して,例えば外科でございましたら,外科の養成をするために手術支援ロボットを整備して,実践的な技能を習得させるためのプログラムを実施するとか考えられるのではないかということでございます。また,例えば研究でしたら,ハイスペックなCT装置を入れることによって,より精緻化したデータを取れるというところにつながり,そのような研究データを活用することにより研究が高度化し,研究マインドの醸成につながるようなプログラムを実施するとか,そういったイメージをつけてございます。
 基本的には医師養成のプログラムは必須になっておりますけれども,一方で地方では薬剤師や看護師不足などの実情もあると聞いておりますので,この医師養成プログラムに連携するような形で薬剤師や看護師養成のプログラムも構築し,その中で医師以外の要請に必要な医療設備機器にも活用できるというような建付にしてございます。
 高度医療人材養成事業につきましては先般,1月30日に公募は締め切られておりまして,先ほど永井先生からも少し御指摘がございましたけれども,条件によっていくつか申請できないという大学もあったかと思いますが,全体で73大学から御応募をいただいております。1件2億円を上限に25大学程度まで絞らせていただき,全体50億の事業となっており,おおむね2月下旬には選定したい考えております。それから,それ以降のところは参考でございますけれども,これまで既に支援している補助金等についても,来年度も引き続き支援できるようにということで,おおむね前年度予算額と同額の確保ができているところでございます。
 また,一番最後のところ文部科学省として行う調査研究の経費も一部,新たに措置いただいているところでございます。今回,この検討会の中間まとめ等も踏まえて,教育コンテンツの共有化ですとか,あとは大学病院の人事制度や組織運営体制等についての在り方の検討といったものなど,今後の多角的な検討に資するための材料を集めるという観点で,調査研究も進めていくということを考えています。このような大学病院等への支援につきましては,今後本検討会の御意見も踏まえまして,引き続き,厚生労働省とも連携しながら進めてまいりたいと考えております。
 以上,急ぎで恐縮でございますが,以上でございます。
【永井座長】  以上で議事は終了でございますが,よろしいでしょうか。もし御発言なければ,事務局からよろしくお願いします。
【海老課長補佐】  事務局でございます。次回,第12回ですけれども,令和7年3月21日を予定してございます。
【永井座長】  それでは,これで終了いたします。本日はお忙しいところ,ありがとうございました。

―― 了 ――

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