今後の医学教育の在り方に関する検討会(第8回)議事録

1.日時

令和6年3月18日(月曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省(東京都千代田区霞が関3-2-2) ※対面・WEB会議の併用

3.議題

  1. 医学研究の充実・大学・大学病院の魅力向上について
  2. その他

4.出席者

委員

  永井座長、今村(知)委員、大井川委員(代理:茨城県保健医療部 森川部長)、金井委員、釜萢委員、北澤委員、熊ノ郷委員、田中(純)委員、田中(雄)委員、宮地委員、銘苅委員、諸岡委員、山口委員、横手委員、和田委員

文部科学省

  池田高等教育局長、西條審議官、俵医学教育課長、堀岡企画官、永田大学病院支援室長 他

オブザーバー

  厚生労働省医政局 林医事課長、文部科学省研究振興局 釜井ライフサイエンス課長

5.議事録

【永井座長】  それでは,定刻となりましたので,検討会を始めさせていただきます。皆様にはお忙しいところをお集まりいただきまして,ありがとうございます。
 会議を始める前に,既に御承知と思いますけれども,3月3日,学校法人岩手医科大学理事長でありました小川彰委員が御逝去されました。ここに故人の御冥福をお祈りし,一分間の黙祷を捧げたいと思います。
(黙祷)
【永井座長】  ありがとうございました。黙祷を終わります。
 それでは,第8回今後の医学教育の在り方に関する検討会を始めます。事務局より委員の出欠状況,配付資料の確認,オンラインでの発言方法について説明をお願いいたします。
【海老課長補佐】  事務局でございます。
 本日の委員の出欠状況でございますが,本日は岡部委員から御欠席の連絡をいただいております。また,大井川委員に代わり,茨城県保健医療部,森川部長に代理出席をいただいております。なお,横手委員,金井委員は遅れて御出席の予定。金井委員は14時頃,宮地委員は14時45分頃に御退席の予定でございます。
 次に,配付資料の確認をさせていただきます。配付資料は会議次第に記載のとおりですけれども,お手元にございますでしょうか。資料につきましては,文部科学省のホームページでも公表しております。
 続きまして,オンラインによる会議の進行に当たってのお願いでございます。御発言される場合には,Zoomの挙手ボタンを押していただくようお願いをいたします。その後,座長から順に発言者を御指名いただきますので,御発言いただく際はマイクがミュートになっていないことを御確認の上,御発言をお願いいたします。
 以上でございます。
【永井座長】  ありがとうございます。
 では,次第に沿って,医学教育の充実・大学・大学病院の魅力向上について。2.がその他を議題といたします。資料1について,事務局より説明をお願いします。
【堀岡企画官】  よろしくお願いいたします。医学教育課の堀岡でございます。資料1,医学教育の充実・大学・大学病院の魅力向上についてという資料を御説明させていただきます。
 一枚おめくりいただきまして,年末に取りまとめさせていただいた中間取りまとめの抜粋でございます。この抜粋の内容に基づきまして,今回,事務局のほうで2ページ,論点として大きく3点,挙げさせていただいております。この論点に基づいたデータ,資料等,後ほどつけさせていただいておりますので,御議論いただければと思います。
 まず,1つ目でございますけれども,研究医枠について,医学生の研究マインドの涵養に一定の効果があると考えられると思っております。より教育効果の向上を図るために,研究医枠に関する要件の見直しや,充実を図ってはどうかというのが1つ目でございます。
 2つ目が,研究医枠,本来的な目的に鑑みて,様々な大学で様々な取り組みをしていただいておりますが,設置大学の見直しの中で,幅広い大学で養成するということを検討してはどうかというような形で,医学部定員全体の方向性を踏まえつつ,研究医養成に特化した枠の設置を促進するというようなことを,その範囲内において研究医を増員するような方策を検討してはどうかという論点を出させていただいております。
 3つ目でございますけれども,大学病院の魅力の向上でございます。大きく真ん中下のポツ3つ,言っておりますけれども,初期研修などの中で,大学病院と協力型臨床研修病院のたすき型研修を推進して,臨床研修の充実を大学病院は図ってはどうか。また,臨床研修や専門研修と両立して大学院進学が可能なプログラムの履修者増の方策を講じてはどうか。また,3つ目は,今までも何度も議論に出ておりますけれども,大学院に進学,博士号取得に対しインセンティブを付与できないかという論点でございます。
 次のページでございます。地域枠全体の数でございますけれども,失礼しました。地域枠研究医枠の。医学部定員全体が今,9,403という定員の中で,地域枠,いわゆるこれは臨時定員の増加している分の地域枠に対して,978という赤いグラフでございます。一方,研究医枠は青のグラフでございまして,今,27人というところでございます。
 次のスライド,4ページでございますけれども,一方で,研究医枠と地域枠というのは性質が違うところがございまして,4つ目のポツにございますけれども,当該定員の入試制度と直接紐づける必要はございません。つまり,地域枠ですと,地域枠の学生がその地域枠の奨学金に基づいてどうするかということがメインの施策になりますけれども,研究医枠については,研究医枠を持つような大学がきちんと他大学と連携して,基礎医学及び社会医学に関する優れた研究者の養成を重点的に担おうというコースをつくったりする事の取組を評価するという枠でございまして,必須要件と任意要件というものに分かれております。
 左側で必ず必須でやっていただく枠としては,複数の大学で連携して研究医の養成拠点を形成すること。特別な教育コースを設けること。奨学金を設けることといったところでございます。また,右側の任意要件としては,専用の入所枠を設けることとか,予算措置を行うこと。当たり前ですけれども,学会や論文発表の指導や機会の提供を行うこと。研究活動が中断されないよう配慮すること。研究医として常勤ポストを用意すること。海外研修の機会を提供することといったような任意要件をはめておりまして,現在,左下でございますけど,27人,16大学の枠がございまして,右側に任意要件をどのようなことを設定していただいているかということをまとめております。
 5ページ目でございますけれども,ではそれではどれぐらいの方が,そういった研究医養成コースに入っていただいているかというところでございますけれども,合計大体416名の方々が修了しております。このような方々,次のページですけれども,例えばですけれども,どんな取り組みをしていただいているか分かりづらいところもあると思いますので,まとめております。
 例えば,研究医養成コースというのを大学院との一体的な取組としてやっているもので,MD,Ph.D.両コースをつくっていただいている大学がございます。例えば,医学部6年を終わった後,初期研修をやらずに博士課程にそのまま入っていただいたり,もしくは医学部の途中で博士課程を専攻してとっていただいて,MDとPh.D.を同時にとるというような例もあったりしまして,かなり特殊な基礎医学などを中心とした学生が所属していると聞いております。
 2つ目としては,医学部のうちに,大学院でも行われている授業の一部を学科外で参加していただき,大学院にそのまま入った場合に,そのコースを免除すると。その単位を免除するというような取り組みをしています。もしくは,これは文科省でも何度も議論しておりますけれども,臨床研修などとの大学院の並行履修をして,例えば,臨床研修の2年目に,臨床研修でも基礎研究プログラムとして,基礎研究に配慮しているプログラムを厚生労働省のほうでつくっていただいておりますけれども,そのようなプログラムに参加しながら博士課程に参加して,できるだけMDをとった後,早くPh.D.をとっていただくというようなコースをやっていただいたりというような取り組みをしていただいております。
 7ページでございますけれども,研究医養成コース,いろいろな大学で置いていただいておりますけれども,信州大学のように300人を超えるような方を入っているところもあれば,例えば東京大学のように2人といったところのコース在籍にしていたりして,考え方は様々でございます。例えば,学年みんなに基礎医学の良さを知ってもらって,学科外に希望者が参加するようなコースをつくっているような大学。信州大学や順天堂大学といったコースですけれども,もあれば,東京大学といったところのように,一定のコースの方々に手厚い支援をするというようなコースの大学もございまして,様々な取り組みをしております。様々な取組の例,8ページなどでいろいろまとめております。
 9ページでございますけれども,研究医養成のための教育上の工夫として,どのような取り組みをやっているかということで,様々な取り組みをやっていただいております。例えば,学内における研究成果の発表の場の設定とか,優れた業績を有する学生の表彰といったもの。また,効果的と考える取組としては,大学のほうからのアンケートとしては,学部・大学院での一貫した取組,研究活動の支援,奨学金の設定といったものが多数で挙げられております。また,個々の大学からの自由記載では,研究医養成のための効果的な取組として,他大学との定期的な交流の会の設置ですとか,研究に必要な施設とか整備の整備など,研究時間の確保など様々な取り組みをやっていただいておりまして,かなり大学ごとに特色の出たものでございます。
 10ページですけれども,研究医枠や,そういった研究プログラムに参加するような大学も横の連携をとっていただいておりまして,研究医枠でもこういった取組を推進しておりますけれども,今,東日本・西日本で大きく,参加している研究医枠等が参加している大学で優秀な学生の発表などを取り組んだり,交流会などをやったりしていただいております。かなり多くの学生が参加しているということで聞いております。
 そのような研究医枠やコースの取組で11ページでございますけれども,初期研修や専門研修など養成の制度が変わることで,大学院生の数に変化があるとよく言われておりますけれども,これは濃い青が臨床研修前,濃い赤が臨床研修後,緑が新専門研修前,紫が専門研修後というようなところで,どのように大学院が推移したか,平均をとっております。大学等の平均でございますけれども,赤い星の大学が研究コースなどをつくっていただいている大学で,そういった大学は,大学院生の数がそれなりに保たれている,もしくは増加している傾向にあると考えられます。東北大学などの,こういった旧帝国大学が中心でありますけれども,例えば順天堂大学や慶應大学といったところで大学院生が急増している大学もございまして,大学院生,こういった研究医マインドの養成に関するコースが非常に効果を上げていると我々は考えております。
 12ページ以降は少しまた議題が変わるのですけれども,我々は去年の夏にAGMCの調査中心に,教員の方の研究時間,教育時間が非常に減少しているというデータをお示しさせていただきました。今回,臨床や基礎,また,それぞれの職種ごとにもう少し細かく分けたデータをお示しさせていただいております。
 12ページ,13ページ,臨床医学の教員の推移でございまして,濃い青が診療の時間,薄い青が教育,オレンジが研究でございますけれども,御覧のとおり,去年の夏にお示ししたデータと同じように臨床医学に関しては大幅に診療が増えていて,薄い青,オレンジの時間がどんどん短くなっているという傾向が見られます。
 一方で,14ページ,15ページは基礎医学の教員でございまして,基礎医学の教員は実は薄い青,オレンジ共に保たれておりまして,臨床医学よりはるかに研究活動の時間が確保されている傾向にございます。ずっと予算事業でも話題になっていて,我々が処遇改善に努めている大学院生のデータでございます。
 16ページ,今,臨床医学の教員が非常に研究教育時間が短くなっているというお話をさせていただきましたが,16ページの大学院生だけに限って見てみますと,臨床医学,夏には助教の65%が5時間以下しか労働研究時間をとっていないというデータをお示ししました。大学院生に関しては,これは濃い青が自分の論文等の研究活動,オレンジが研究室などでの研究活動への参加,グレーが研究活動以外の大学院生の活動。ここで恐らくほとんど臨床だと思いますけれども,臨床。オレンジが学外で行っている労働。恐らく臨床医学系だとMDですので,いわゆる外にバイトだということだと考えられますけれども,この何とか大学院生に関しては青とオレンジで半分程度の時間を確保していまして,大学院に入るとそれなりに研究時間を確保できているということが今回,新たに分かっております。
 また,17ページでございますけれども,一方,この臨床医学の部分,大学院に入っていない局員というもので分析しておりますけれども,それだとこのグレーの部分が76.7%に及んでおりまして,濃い青,オレンジはほとんど非常に短く10%程度でございますので,やはり特に臨床医学の講座に関しては,大学院に所属していただくということが研究活動に参加するということの大きな重要なポイントだと我々は考えております。
 19ページ,今後4月から働き方改革が始まるわけでございますけれども,研究時間確保に関する取組というものをいろいろ聞いております。現在,どんな取り組みをやっているかという上の質問では,ベッドフリーの時間をつくっているとか,病棟業務の免除,当直の免除などが大体2割ぐらいの大学でございます。今回,働き方改革に向けて研究時間を確保するために,新たに取組というものありますかと聞いたところ,日勤隊におけるベッドフリーをつくると。さらにつくるというところが37.5%などございますけれども,あまり働き方改革で多く,新たな施策を検討しているわけでもない状況がございまして,こういったところは文科省としても推進していかないといけないと考えております。
 20ページ以降は,また議題が変わりますけれども,大学病院の魅力向上の論点でございます。20ページ,初期研修医の推移でございますけれども,今回,医学教育課のほうで集計しましたが,平成16年以降,この薄い,一番下の青の部分が大学病院で実際に研修した数でございます。4,216人いましたが,今,3,213人ということで,濃い青の斜線が埋まっていない定員というところでございます。御覧のとおり,平成16年から定員,実数ともにずっと減少を続けておりまして,定員自体も非常に大きく減っていると。最初1万1,000人の定員の中で,6,000人ぐらいが大学であったはずですけれども,今1万800人,大体1万1,000人定員の中で,大体4,200という定員になっていて,実数も定数も下がっているという状況でございます。
 また,21ページでございますけれども,実数だけではなく,第一希望とする大学,病院での初期研修,第一希望とするという方も減っておりまして,現在24.2%しか大学病院で第一希望の学生はいないというところでございます。
 2ページ,同地域ごとのデータなどをつけております。
 24ページ,臨床研修医の給与についても,大学病院の給与,低い傾向にありまして,非常に厳しい状況になっております。
 そのような中で25ページ,今回様々な調査でたすき掛けプログラムをやっている大学に,どのような活動内容とどのような成果があるのかということをまとめております。右側の成果の部分を御覧いただけるとあれですけれども,どの大学でも大学院本院だけのプログラムよりも,たすき掛けのほうが人気があると。マッチ率も高いというお声をいただいておりますので,文部科学省としてもたすき掛けプログラムを,より今後は大学病院の中でも中心としてはどうかと考えております。そのような中で,たすき掛けのほうで,より初期研修に向いているような症例なども外の病院で経験していただいて,魅力的なプログラムを用意するというようなことを重要かと思っております。
 27ページでございますが,一方で,初期研修医が非常に少ない中で,専門研修は実は大学院は検討しております。実はこの専門医制度の前後と比べてほとんど人数の増加,減少はなくて,大体5,500人,今でも5,500人程度が大学病院に所属して専門研修を受けております。
 一方で,29ページでございますけれども,大学院に入る数は横ばいから減少傾向でございまして,大体3,000人程度しか大学院には入っていないというところでございます。なので,5,500人から6,000人近く,専門研修で所属することもありますけれども,その半分程度,半分以下しか大学院には入っていないという傾向がございます。
 30ページは再掲でございますけれども,各大学の大学院生の数でございます。
 このような中で31ページ,文科省として,理系の中でも医学部というものは学部卒業後,中心はそのまま博士,修士課程に行くわけではございませんので,もちろんそういった方もいらっしゃいますが,1という学部卒業後,博士課程にそのまま行くのは約100人程度で,あまり多いキャリアでございません。で,丸2,丸3といった形で専門研修をやっている途中もしくは終わった直後に,臨床をやりながら大学院に通ったり,もしくは外の病院で働きながら論文博士をとるといった丸2,丸3のキャリアが中心的なキャリアですので,やはり32ページでございますけれども,大学院の進学,博士号の魅力向上のために専門医制度との連携というものを今までも進めておりますけれども,今回も,今後も進めていきたいと。今回,我々は内科学会や外科学会,専門医機構などともお願いや,今回の検討会の趣旨など御説明させていただいておりまして,さらなる大学院生のインセンティブについて,現在各学会で検討していただいている途中でございます。
 最後に少し話題が変わりますけれども,中間取りまとめでも推進していたバイアウト,PI人件費に対する制度の構築でございます。今回,全大学に調査をいたしましたけれども,例えば左,バイアウト人件費については,実は半分以上の大学で活用可能という結果になりました。我々も少し意外だったのですけれども,制度自体は各大学,つくっているところが多いと聞いております。一方で,いろいろな研究者と意見交換をさせいただきますと,この制度を利用した研究者が非常に少ないようでございますので,今後,制度はあっても使われていない,またもしくは検討していないと答えている大学が25大学ありますので,こういったところに我々のほうでも周知をしていきたいと思っております。
 また,右側,宮地先生などから問題提起されましたけれども,非常勤職員の研究費の応募資格,どのように取り扱っているかというのを聞いておりますが,3分の2程度は学長が認める場合など応募可能というお答えをいただいております。原則認めないとしている大学なども一部ありますけれども,このような大学にも,場合によっては柔軟な対応を文科省としても求めていきたいと考えております。
 最後,また35ページに再掲でございますけど,論点案として出させていただいておりますので,事務局からの資料提示は,このようにさせていただきたいと思います。
 熊ノ郷先生のほうから引き続き御説明いただけると幸いでございます。
【熊ノ郷委員】  分かりました。そしたら,私のほうから。
 全国医学部長病院長会議のAJMCで横手会長から,ちょうどこの委員会と同じ時期にワーキングをつくって研究力強化,特に人材育成の面で何ができるかということでワーキングを設定して,ここに挙げています12の大学の医学部長,あるいは病院長の先生方と何度か議論を重ね,またアンケートなどをとってまいりました。この場でも議論をされているところなのですけれども,なるべく,この委員会との議論と重複しないような形でコンプリメンタリーに,総合的になるような形でアンケートを今とったりしながら議論を進めているような背景があります。
 その中で,ここでも議論されていることなのですけれども,研究医を育てていくということは,従来は基礎の研究医を意味していたわけですけれども,もう今やフィジシャンサイエンティストもアカデミックサージャン,臨床の領域においても,なぜかと問いかけるようなことができる医師を育てていくことが,なかなか枯渇している,難しい状況にあって,それを克服するためには三本柱,三本の矢が必要だろうという先生方の議論になっています。
 1つは,学部の教育,学部学生の間に研究に触れさせてあげるということで,これに関してはアンケートをとりますと,基礎配属やMD-Ph.D.コースとかリトリートの活動とか,本当にどの大学も国際認証の前倒しの,いろいろなカリキュラムの厳しさがある中で,本当に基礎の先生方,そして臨床の先生方も,それぞれの大学の中で結構涙ぐましい取り組みをしているという状況がありました。
 それと,2つ目の柱は,ここで昨年1年間議論されてきた附属病院の強化・支援,魅力をどうやって高めていくかというところで,これは本当に永井先生のリーダーシップの下,本当に1つの形になったということで,ありがたいことだとは考えております。
 それと三本目は,卒業した後,いくら学部で一生懸命頑張っても初期研修,後期研修の中で卒後の教育システムがないと,なかなか,せっかく植え付けたものを生きてこないというようなことがある。だから,この三本の矢,三本柱をうまく三位一体で回していかないと,なかなか難しいよなということになっています。
 その中で1つ,ではそうやって大学病院の魅力を高める,あるいは大学院に帰ってきてもらったときに,実際4年間できちんと学位をとらせてあげているのかという疑問があります。それでここに挙げました12の大学で,一体4年間で,そうやっていろいろな取り組みをして大学病院の魅力を高めて,大学院のインセンティブを今,議論されているところですけれども,戻してきたときに,では彼らのキャリアデザインの中で学位をとらせてあげられているのかというので,12の大学でアンケートをとってみますと,この1つの数字からは,いろいろなことが読み取れるのです。
 例えば,結構なかなか厳しい状況にあって,大学によってばらつきがあるのですけれども,せっかく戻してあげているのだけれども,なかなかしっかりとらせてあげられていないのではないかということと,それから,1つめくっていただきます。
 この学位の取得の悪さというのは,我々,アンケートをとる前は,どうしても基礎の先生方のほうがハードルが高くて,求めるレベルが高いので,基礎系の学位の取得者のほうが率のほうが悪いのではないかなという予想だったのですけれども,実はそうではなくて,臨床系が悪いということが分かってきました。
 特に京都大学,また,我々の大阪大学もそうなのですけれども,基礎系に比べて臨床系のほうが学位の取得率が悪くて,これは多分,この中でもプレゼンがありましたけれども,せっかく大学院に戻ってきても臨床業務に,大学院生,外科であれば2年,内科系でも1年とられて,2年や3年の中で仕事をまとめないといけないという背景であったり,また,その若手の,実際に大学院を指導する若手の教員の層の負担が大きくなっていて,例えば,学部の教育で国際認証のこともあるので,実習の4年,5年,6年の実習生が回ってくるということ。それから,初期研修医の指導,専門医の指導,J-OSLERもそうですけれども,大学院の指導,臨床業務と。ある若い層に,いろいろなカリキュラムが走るのはいいのですけれども,全て指導の負担がかかっているという状況があって,だからなかなか屋根瓦式で大学院生を指導できないというような背景があるのではないかということです。
 それともう1つ読み取れるのは,大学間で結構学位の取得率に差がありまして,これはThesis(シーシス)を取り入れているかどうかということがあります。多くの大学,従前は英文雑誌に論文がアクセプトされるのを1つの目安としていたのですけれども,現在,東京大学,また大阪大学でも2つの取得の方法,トラック1,トラック2の形で並行させているようなシステムを始めているのですけれども,英文雑誌に論文が通るか通らないかではなくて,教授会が,この子がしっかりと学位に値するのだと認定した場合には認めていこうというThesisというシステムが始まってまいりました。東京大学が1つのモデルケースになると思うのですけれども,今,こういう背景もあるのではないかなと思っています。先ほどの表というのは,幾つかのデータの意味することは幾つかの面から読み取れるわけですけれども,Thesis,それから従来,書き上げ論文のところが今議論になっているというところも,少し情報提供の形で挙げさせていただきました。
 まず,ここまででよろしいでしょうか。
【永井座長】  ありがとうございます。非常に重要な点を御説明いただいたと思います。
 それでは,本日は時間が十分にございますので,これから1時間あまり,ただいまの御説明に対して御質問等があればお願いしたいと思います。どこからでも結構ですが,いかがでしょうか。
 私から,では。今の熊ノ郷先生の資料についてなのですが,これは昔から議論になっているところで,私がアメリカに行ったときに,やはりThesisなのですね。かなり分厚いThesisで,東大もそれに倣っていると思います。ただ,研究の基盤の弱い大学で,大学院が終わった後にすぐに臨床に戻らないといけない場合に,Thesisですと英文の論文にならないという実態が実際にございます。
 その辺をどうするかということで,論文の提出を必須として,でも猶予は認めて,何年間のうちに必ず書きなさい,それでも書けなければ大学の学内紀要に英文で出しなさいと。自治医科大学はそのようにしていません。確かに,論文を書き上げずに現場に戻って,どうしても時間がとれないという方はいるのですね。そういう場合には,もう指導者が総がかりで何とか仕上げるということが行われているのですが,その辺は各大学の事情によるのだと思います。その辺り,皆さんの御意見を伺えればと思います。
 何についてでも結構ですので,いかがでしょうか。田中委員,どうぞ。
【田中(雄)委員】  そもそも学位をどう定義するかということなのだと思うのです。大学院生が減っているとか,特に今,臨床系の研究時間が少ないという分析はデータとしてあるわけで,大学院に行っても研究できないのであれば,といっても大学院生は逆に,研究時間がある程度確保されているという現実もあるのですね。そうすると,大学で学位をとることの意義というのを若い人たちがどれぐらい感じるかということだと思うのです。
 海外では,学位というのはその人の知的な,考え方がきちんとできる,そして課題を解決する能力があるという証明みたいなものになっています。だから例えば,行政とか企業でも博士号を持っている人が優遇されるし,採用される。逆に言うと,だからこそ学位をとろうというモチベーションにもなるということだと思うのです。
 だから,大学院を充足するために学位をとりやすくするというのではなくて,学位というものをレベルアップする。つまり学べることがレベルアップすることのほうが本質的な問題で,レベルアップしたものをどう評価するかというのを,アウトカムでは論文で評価するのか,Thesisで評価するのかという,そういう順序で考えたほうがいいのではないかなというのが私の意見です。
【永井座長】  ありがとうございます。山口委員,どうぞ。
【山口委員】  ありがとうございます。2つほど質問がございます。
 まず,熊ノ郷委員にお聞きしたいのですけれども,先ほどの御説明いただいた資料2の2ページに学位取得者数について書かれています。先ほど御説明にもあったのですけれども,この学位を取得する条件というか基準のようなものが,大学によって結構異なっているというお話があったと思います。実際にこの数字,この前のページですけれど基礎と臨床とに分かれて数字が出ています。それを拝見したときに,例えば,もしお調べになった中で出ているとしたら,どういった基準のところが取得率が高くなっていて,どういった基準のところが厳しくなっているのかというようなことが,何か特徴があるようであれば教えていただきたいと思います。
 もう1つが,基礎研究が日本の中でかつては盛んに行われていたのが,そちらに進む人たちが減ってきて,そこに初期研修とか専門医制度が始まったことでさらに拍車がかかっているのではないかと,将来的なことを考えると非常に危惧します。そういったことから言いますと,この研究医枠設置大学というところでは,大学院生が増えているということは,基礎に行く人も自然と数が増えるのではないかと思うのですけれども,お聞きしたところによると,この研究医枠の設置大学がある程度固定されていて,今,新たに申請することができない状況だと伺っています。
 この実態について,もう少し詳しく教えていただきたいことと,できれば枠を広げないと広まらないのではないかと思います。大学によっては,研究医枠をつくりたいのに,最初に手を挙げなかったことでできないでいるというところもあるのかどうか,そういう声が聞こえているのかどうか。これから研究枠を広げるとすれば,どういったことが必要になってくるのかということを,こちらは事務局にお尋ねしたいと思います。
 以上です。
【熊ノ郷委員】  そうしたら,最初の1つ目の点について私のほうから。大学によってこの違いは何かというところについては,私のほうから答えさせていただきます。
 やはりThesis,書き上げ論文を導入しているか導入してないかというところが1つは大きくて,従来は英文雑誌に論文がアクセプトされるとそれを1つの目安にして,公聴会を開いて学位を認めているという大学が多かったと思うのですね。ところが,今,実験系の論文というのはすごく時間がかかるようになってきまして,特にいろいろな論文を発表するジャーナルが電子化されて,サプリメンタルなデータを,通常のフィギュア以外に補足のデータをたくさん要求されるようになって,本当に1つの仕事をまとめるのに4年なり,あるいは5年,6年はもう当たり前のようにかかるような状況になっています。
 一方,書き上げ論文の場合には,1つその大学院生が指導教官の下,ジャーナルにアクセプト,アクセプトをされないに関係なく,1つの仕事を英文なりでまとめるというのが1つの目安になっていて,それはそれで学内での教授審査会の中で審査を受けて,そこで認められるという背景があるので,これを導入しているか導入してないかでかなり大きな差が出ているというのが現状ではないかなと思います。
 2つ目の点に関しては,文科省のほうからお願いできますでしょうか。
【永井座長】  事務局,いかがでしょうか。
【堀岡企画官】  ありがとうございます。2つ目のお話については,研究医枠については4ページにお示ししているとおり,今,27人・16大学なのですけれども,そもそも実は毎年,新たに研究医枠をどうしますかというのを全く新しく聞いて,とっているものなのですね。なのですけれども,一方でその中で我々が既存の大学で持っているところにしか認めていないので,今,山口先生から御指摘いただいたとおり,既存の大学にしかこの27というのは認めていないという現状があります。
 一方で,先ほど御紹介した7ページですけれども,研究医枠にかかわらず,研究医養成コースというのは置いています。例えば,広島大学なんて研究医枠は持っていませんけれども研究医養成のコースを置いていて,特にMD,Ph.D.コースを置いていたりして,しかも非常にそれに参加する学生,優秀な学生がいると聞いております。新設の希望といたしましては,ほかに19大学,広島大学のようなところがあるということは聞いてはおります。一方で,研究医枠というの医学部定員ですので,医学部全体の方向性とも調整しなければならないと認識しております。
【山口委員】  分かりました。
【永井座長】  よろしいでしょうか。
【山口委員】  了解いたしました。
【永井座長】  今村委員,どうぞ。
【今村委員】  今村です。研究医枠のことと,書き上げ論文のことで御意見を申し上げたいと思います。
 まず,研究医枠ですけれども,奈良医大の研究医枠は非常に特徴のある取り組みをしておりまして,編入試験と抱き合わせでやっています。ですので,他学部から研究医として来ていただいて,基礎系に基本的に配属してもらう。その代わり,奨学金を受け取ってもらって,奨学金をもらった期間の1.5倍,従事していただくというような取組の中で,ほぼ確実に基礎系の研究医になっていただいています。
 我々公衆衛生もその恩恵にあずかっていまして,その中の特徴として,公衆衛生医師というのは非常に不足しているので,行政系,例えば厚生省の医系技官に行った場合にはその義務年限に対象にしてもらえるので,その分,研究医枠で来た人も活躍の場としては,純粋な研究者だけではなくて,そういう行政的な立場でも活動できるというようなメリットにつながるようなシステムをつくっております。実際に何人か今,厚生省にも奈良県庁にもその枠を使った人が行って働いていてもらって,大学自身の活性化にも非常に役立っていただいているという状況があります。こういったことも今の研究医枠の制度の中で活用できるのであれば,各大学でも取り組んでいただけると,幅が広がるのではないかなと思います。
 もう1つ,今度,熊ノ郷先生の書き上げ論文のお話ですけれども,お話しされた東京大学の書き上げ論文を私,30年前にここで書き上げ論文を書いて学位をとりましたもので,その当時から東大の方針としては,投稿前のほうが望ましいというようなことで書かせていただきました。ただ,結構な量になりまして,多分150ページぐらい書いたと思うのですけれども,実際に学位をいただいてから,3つぐらいの論文に分けて投稿していくというぐらいの量を研究させていただきました。そして論文化はしていったのですけども,1つの研究を始めから終わりまでをまとめるとかなりの量になって,何本か分の論文の分をつくることになるのではないかという面で,これは自分の興味のあることなのでいくらでも深化できる,深くやれるから面白いのですけれども,作業的には自論文を通すほうが多分楽なのではないかなと,実感として感じるところがあります。
 以上2点,意見です。もし何か文科省のコメントがあれば,お願いできると。
【堀岡企画官】  ありがとうございます。我々も書き上げ論文が楽に学位がとれるというようなニュアンスでというものでもなくて,今回熊ノ郷先生ももちろん違うと思いますけれども,先ほど熊ノ郷先生からも御指摘がありましたけど,特にウエットな研究とかだと,4年間でパブリッシュまでいかないようなものもすごくあるという実態のお声も聞いています。その場合は,そもそもパブリッシュできようがない研究にある場合もあるのではないかと思っています。そういうときにも一旦区切りとして,先ほど永井先生から御指摘があったとおり,論文を書けない逃げ,書かないで逃げるというのがあるという問題がありつつも,そういう道もつくるというのは,学位の4年間での予見性が高められるというところはいい点があるのかなと思って,今回,検討会でも取り上げさせていただいているところです。
【熊ノ郷委員】  この次の資料を出していただけますかね。補足資料の形で少し。
 議論がずれてしまってはいけないのですけれども,今,英文雑誌アクセプトの学位取得の現況と,それから書き上げ論文で学位の取得というときの懸念点について,AJMCでのワーキングの中でいろいろなパターンの議論が出ましたので,これを見ていただいたら。議論がずれてしまうと,本質からずれてしまうとよくないので,こちらばかりに偏ってしまうとよくないのですけれども,見ていただくとよく分かるのではないかなと思って出させていただきました。
 1つは,英文アクセプトに頼っていると,大学院の4年間の学位取得率が低下しているということ。特に,別途の研究において論文がアクセプトされるまでの時間が大幅に伸びていると。それから,これはちょっとオープンの場では出せないのですけれども,各ジャーナルで,正式なアクセプトの文言が最近出ないのですね。プリンシパルアクセプトとか,プロビジョナリーアクセプトというような文言を多用しているジャーナルが幾つかありまして,それの,ほぼアクセプトなのになかなかアクセプトが出ないという年月,どれぐらい期間がかかるのか。それから,そのときにエディターが使う文言も全て実は集めていて,特にエディターが従来の学会誌ではなくて,エディターが雇われエディターと就職の採用試験を受けてキャリアップしていくような,そういったエディターがハンドリングしているようなジャーナルの場合には,なかなかアクセプトという文言を出してもらえないということが,実は見えてきています。
 それから,ここは1つ矛盾なのですけれども,実は大きな仕事,例えばネイチャー,サイエンスとか,ネイチャーメディスンとか,大きなテーマにチャレンジしている大学院生ほど学位が遅れてしまっているという矛盾が生じていたり,それから6,7年かけてアクセプトされても,もうその時点で燃え尽き症候群になってしまっていて,結局いいですという人たちがいるということ。
 それから,ただPI,教授にとっては学位取得に採用される小粒の論文よりも,自分のライフワークになるようなまとまった仕事を,時間をかけてでも一流誌に通していきたいというモチベーションがありますし。あとは,臨床系の大学院の入学が初期研修,後期研修で,だんだん先延ばし,後になってきたので,これでやっと取得が,学位がとれたとしても,留学などなかなか次のステップに進む余力がなくなってしまう,年齢的に厳しいという背景があるということ。
 それから,英文雑誌でアクセプトなのですけれども,結局学位の評価を外注してアウトソーシングして丸投げしているということになって,最近ハゲタカジャーナルなんかも出てきているので,英文雑誌のアクセプトで本当にいいのかという議論であったり。それから,本来は教授会の見識として学位というものは出すべきというのが本筋だということが,そもそも論。
 それから,医学系研究科の大学院の定員充足率というのは,阪大の場合は6,7割は臨床系の大学院生で,いわゆる医局人事で戻していて,彼らには附属病院のある程度臨床業務を担ってもらっている担い手であるという背景もあると。
 それから,時間がかかってしまうとせっかく関連病院から大学院生として大学に戻しても,入れ替わりの人員を計画的に関連病院に出せないという問題点があるということでした。
 一方,Thesisの書き上げ論文での懸念点としては,質の問題,いかにして質を担保するか。乱発にならないかということ。それから,従来は審査はジャーナルでやっていたのは査読者がやってくれていたわけですけれども,結構,3人の審査会とか5人の審査会とか,教員の負担がどうしても増えてしまう面があると。
 それからThesis,それから英文雑誌に最終的に出すのであれば,両方から追加実験を求められる負担はどうするのかということ。
 それから,学位を取得してしまうと,本当は指導者としては雑誌に通してほしいのだけれども,もうそれで安心してしまって,言葉は悪いですけれども,トンズラしてしまう例が結構あるという話ということ。
 それから,4年終わって単位取得退学になった後,関連病院で勤務しながら勤務の後に戻ってきて,残りの研究,実験なりをすると,なかなか,これは頑張るのが大変だということ。
 それから,Thesisの場合に,一旦何らかの形で出てしまうと,その論文を実際に英文雑誌に使い回せないという背景が,データの使い回しができないという。今はウェブで出てしまうので,その辺りをどうするかというようなこと。
 それから,学位取得後,公開という形の文科省側の条件,これほかの学部との兼ね合いもありまして,その辺りがワーキングの中で出た議論です。
 ここばかりに焦点が当たってしまうと,議論が擦れ違ってしまうかもしれないのですけれども,英文雑誌アクセプトの現況と,Thesisの学位取得での懸念点について出た議論を,ここで補足資料として出させていただきました。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。ほかに。金井委員,どうぞ。
【金井委員】  ありがとうございます。熊ノ郷先生,詳しくありがとうございます。
 先ほど,医科歯科の田中先生がおっしゃったことに僕もすごく深く同感していて,今回の議論は,日本の医学博士の数を多くして日本の国力がV字回復したように見せるというのが目的ではなく,医学博士をとると価値が見いだされて,医学博士をとるとしっかりした技量とか考え方の能力というのがつくという,価値のある医学博士をつくるほうが先なのではないかなと思っています。と申しますのも,各大学によって医学博士がとりやすい大学ととりにくい大学が現在あって,あそこの大学の医学博士は6年も7年もかかるよと言って,むしろ避けてしまって,簡単にとれる大学に行ってしまうという本末転倒な現象が起きてしまうこともあります。やはり何よりも,日本の医学部の医学博士をとったからには,相当なPIとしての能力が備わったような人物なのだという価値を見いだすほうが,私は優先なのではないかなと思います。
 その中で解決策として,医学博士を全国で5,000人の人が1年間にとったとした場合に,それを何というか国なり,権威ある機関が,トップの300名とかを表彰するとか,あるいはそういう方たちにフルブライトというような形で海外に留学するような何か特典がないと,今の若い人たちは非常に敏感ですので,研究志向あるのは間違いないのですけども,やはり頑張ったからにはその人たちを持ち上げるような何かこう仕組み,御褒美をあげないと続かないのではないかなというのが私の意見です。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。北澤委員,どうぞ。
【北澤委員】  北澤です。私は博士号を持ってないので,発言していいか戸惑っていたのですけれども,質問させていただきます。今の議論は,医学研究を充実するということが目標なのか,それとも医学部を卒業した人が医学研究をもっとやるということが目標なのか。その辺りが分かりにくくなっているので,整理をしてもらいたいと思っています。
 というのは,この会議でも最初のほうに永井先生がおっしゃったと思うのですけれども,今の医学研究というのは,必ずしも医学部を卒業した医師だけが行っているものではなくて,ほかの学部の卒業者とか,あるいはその医学部を卒業しても改めて公衆衛生の大学院で学んだり,ほかのことも学んだりした人と一緒に行う研究が増えていると思うのです。そういう中で,医学研究というものを全体としてもっと進め,最終的にはそれが患者にいい形で還元されるためにはどうするかが重要だと思います。
 最終的によりよい医学,よりよい医療が患者に提供できるような研究を進めてほしいと思っているのですけれども,それが必ずしも,医学部を卒業した医師免許を持っている人だけで進めているものなのか,その辺り,考え方を整理していただけたらと思います。よろしくお願いします。
【永井座長】  事務局いかがでしょうか。
【堀岡企画官】  資料の29ページを出しながら御説明させていただければと思うのですけれども,まさに今,御指摘いただいたとおりで,医学研究というのはMDだけではないですし,むしろnon-MDと統合した研究のほうがすごくすばらしいものもできていると思っています。
 確かに前段の研究医枠のお話とかはかなり医者のほうのお話なのですけれども,後段,熊ノ郷先生にも論点を提示していただいた学位については,MDもnon-MDにも関わる論点だと思っています。ここはいろいろな御意見があると承知しておりますけれども,幅広い方に博士号をとっていただくと。もちろん質が悪かったら意味もないのですけれども,幅広い方にMDの方に博士号を取っていただいて研究に触れていただくということも,私どもは重要だと思っておりますし,また,学位などについていろいろな議論をして,Thesisなどの議論もして,non-MDの方々も医学博士に入っていただくと。
 といった2つ両方とも論点だと思っていまして,医学博士が増えることと,医学の研究が増えるとよくなるということは,両方ともかなり関連した論点だと思っています。
【永井座長】  いかがでしょうか。北澤委員,いかがでしょうか。
【北澤委員】  ありがとうございます。医師の資格を持っている方ももちろんそうなのですけれども,より幅広いほかのバックグラウンドを持つ方々との協働によって,新たな方面の研究もより一層進むのではないかなと,そういう期待を持って発言させていただきました。
【永井座長】  田中委員,どうぞ。
【田中(雄)委員】  専門医制度とか,あるいは臨床研修制度との兼ね合いで,MDが,医学部卒の人が大学院に入るタイミングというのは,すごく難しくなっていると思うのですね。もちろんライフイベントがその間にある方も多いので,そうすると男女を問わず,やはり大学院に入るタイミングというのはすごく難しくなっていて。金井先生がおっしゃったように質が重要であることは間違いないし,それを例えば,どうやって担保するかという,いろいろな方法もありますけれども,もう1つ大事なことは,研究に興味がある人が,それを諦めるということのないようにすべきだと思うのですね。
 その方法としては,やはり経済的な保障が一番だと思います。要するに,企業と違うのは,医師というのはあまり1つの機関で継続して勤務するということに,少なくとも今はないわけです。流動性がある程度あるということなのですね。ですから,逆に大学院に行っている期間,収入が大幅に減ってどうにもならない,今の生活設計を変えないと成り立たないというようなことのないような,奨学金を用意するということが重要だと思います。そうすれば,本当に研究したい人が,例えば専門医をとった後,あるいはライフイベントを挟んである程度,子供が保育園とか幼稚園とかに行けるようになってというような時期に,研究を10年ぶりに再開するということがあってもいいと思うのです。
 実際,アメリカなどでもそういうことが起こっているので,例えば,卒業してから時間が空いてしまったから,もう一切研究をやれないということでは決してないはずなので,そういうことを考えたほうがいいのではないかなと思います。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。田中純子委員,どうぞ。
【田中(純)委員】  いろいろな資料を提示いただき,ありがとうございます。私は大学病院の魅力をどう高めるかということについて,ほかと違うのは,研究ができるということだと思うのですよね。それで,医師だけではなくて,いろいろな分野の方といろいろな融合的な研究ができる場が提供できて,そのときやはり経済的支援があるとか,いろいろなこともあると思うのです。
 医学博士がもらえるということは,古い言い方かもしれませんけれども,ある程度研究者としてスタートを切ってもいいというようなお墨つきをもらったということで,研究者にとったらすごく魅力的だと思うのですね。それが最近減っているというのは,学位をもらうまでの年数が長くなっているということもあるかもしれませんけれども,研究の魅力というのを伝えることが乏しくなってきているのではないかなと思うのですね。
 そういう意味では,最初に議論になった研究医という,学部のうちから研究マインドを受容するというような,多くの大学で医学研究実習期間を設けて,3か月,4か月研究授業をやるということも取り組まれていますけれども,そういう取り組みをすることで研究へのモチベーションを若いうちに持って,そうなると専門医など終わった後でも,また研究に戻ってくるような状況がそろっていれば,戻ってくる。そこに大学の魅力を持たせるというような仕組みが大事なのではないかなと思っています。
 学位をとる期間を,私も医科歯科の田中先生の意見と同じなのですけれども,あまり早く短く出すほうに注力するというのはちょっとどうかなと思うので,質を担保した医学博士を出せる大学の魅力というのを推進していくべきではないかなと思います。
【永井座長】  ありがとうございます。では銘苅委員にお願いします。
【銘苅委員】  ありがとうございます。琉球大学の銘苅です。よろしくお願いいたします。
 先ほどから質の担保についてのお話が出ているのですけれども,今回,この医学教育の委員会が立ち上がった一番の理由は,研究者,研究する医師が非常に減っている。で,研究時間が減っている。それをどうするかといったところに,裾野を広げるために大学院に行く,大学で研究する人を増やすということが多分,議論のはじめだったのではないかなと思うのです。質の担保というのはもちろん重要なことではあるのですけれども,議論を1つというか,目標を1つに定めるのであれば,やはり今は裾野を広げるという視点で,どうやってその臨床研修制度が始まってから大学に入らなくなった医師たちを大学に戻ってきてもらって研究させるのかというところが,ひとつ私たちが今考えないといけないのかなと感じました。
 その上で,先ほど資料を出していただいたところでの,まず1つの質問としては,平成22年から始まっている研究医枠,416名が卒業されているということですけれども,その方々がどんなふうに今過ごされているのか。アウトカムがどうなっているのか,研究をしっかりされているのかというようなところが,成果として見えるのかどうかというところが1つです。
 それからもう1つは,たすき掛けの推奨というお話が出ていたのですけれども,臨床,大学病院とそれ以外の関連病院というもののたすき掛けというのも,多くの大学病院で,多くの施設でやられていることかと思うのですけれども,たすき掛けをしたとしても長くて半年,1年ぐらいではないかなと私は理解しています。その中で,研究をどんなふうにさせられるのかというところ,それが本当に研究員の裾野を広げるということにつながるのかどうか,どのようにお考えなのかというのが1つ。
 それから,先ほど少しちらっと出ていたかと思うのですけれども,大学院を卒業して博士号をとったときのインセンティブを考えないといけない,若者に見える形でインセンティブをどうやって考えていくかというところが1つ。
 もう1つ,この臨床研究制度が始まってからの,若手医師が大学に戻らなくなったということの事実を,厚労省は現状を見て,臨床研修制度をもう少し何か改善していくような議論が始まっているのかどうかという意見をいただきたいというところです。4つ質問させていただきました。よろしくお願いいたします。
【永井座長】  事務局,いかがでしょうか。
【堀岡企画官】  ありがとうございます。文科省から最初の3点,答えさせていただきたいと思います。
 これは非常に,最初の質問は非常に難しい質問でして,お答えしづらいところがあるのはなぜかと。5ページをお示ししたいのですけれども,これは例えば,地域枠みたいに別枠入試でとっていて,その人たちだけが,基本的にはその人たちがどう残っているのかが,いわゆるKPI的なものになるものでもない。あと,実は22年からこれが始まっていて,例えば22年の人というのは,今やっと専門医研修を終わって2年とか3年みたいなところなのですよね。なので,この416名が今終了はしているものの,例えば令和4年の人はこの53人,基本的にはほとんど全員初期研修をしているので,だから今どうなっているのかというのは非常に難しい質問なのですけれども,一応データとしてはとっております。
 例えば,いろいろ言えるのは,その416名のうちの,今はっきりと所在が分かっている方は216名ですけれども,216名のうち140名が何らかの形で大学に残っています。あとは,臨床医として残っているのは,いろいろな病院も含めて,はっきり臨床医だと結果答えているのが,またそれと別枠組みですけれども143名いて,基礎医学の研究医にはっきりとなっていると答えている人が19名。社会学が6名,臨床医学の研究医が1名で,その他56名という集計になっているのですよね。
 ところが,例えば恐らくは44人と53人,令和3年度,令和4年の卒業生の計100人は今初期研修中だったりしますし,そのうちの150人ですね,45足す51足す51の人たちは,恐らく専門研修を今やっているので,なかなか現時点で評価が難しいのですけれども,現時点でもし横串に評価を言おうとすれば,今つらつらと申し上げたデータのとおりです。
 あとは,たすき掛けの目的ですけれども,たすき掛けはいろいろな大学が確かにやっています。先生がおっしゃるとおりいろいろなプログラムがあって,半年ぐらいしか大学本院にいないのもあれば,1年半ぐらい本院にいて半年ぐらい地域に行くというような,たすき掛けというか,ちょっと地域に出すというだけのようなプログラムもございますけれども,どちらかというとこのたすき掛けで,我々はその研究をより進めようという事ではなくて,たすき掛けのほうがかなり初期研修にも向いている疾患を受け入れたりするという声も大きいので,たすき掛け研修を進めたりして魅力的なプログラムを大学に用意して,何らかの形で初期研修のときに大学にまだ関わってもらうという,母数を増やすという地道な取り組みをここではするのかなと思っています。
 最後に,3つ目に,博士号のインセンティブについて,本当に本質的な御意見をいただいてしまったのですが,これはなかなか文科省だけでお答えするのも難しいところで,これは長年の課題で,経産省も厚労省も文科省も含めて博士号,例えば,博士号取得者の企業でのインセンティブを高めるとか地道な取り組みはやっていますけれども,なかなかこれについては日本社会全体,企業も含めた形でのインセンティブとやらないといけないと思っています。医者の中でのインセンティブという意味では,今お示ししている資料の,専門医をとりやすくするとかそういったことがきくかもしれませんけれども,これが本質的な解決でないということは我々も認識しております。
【林課長】  4点目は厚労省のほうからということで,医事課長でございます。
 臨床研修において,大学に人が戻ってくるような見直しを考えているかという御質問であるとすると,なかなか臨床研修の制度について,大学にもっと人に戻ってもらおうという形で,そういう視点での検討をしているとは言い難いところかなと思っております。
 御承知のとおり,臨床研修の目標としては,医師としての人格の涵養,そして社会的役割を認識していただきながら,一般的な診療において頻繁に関わる疾病,負傷に適切に対応できるように基本的な診療能力を身につけていただくということを最大の目的としております。そういう観点から,どういうやり方がよいかということを厚労省で検討してきたということでございまして,結果的に大学で臨床研修を受ける方が少なくなっておられるということに関しては,実態としては,そういうことになっているわけでございますけども,今度は大学においてもそうした研修,魅力ある研修ができるように,切磋琢磨して頑張っていただきたいというところだろうと思っております。
【永井座長】  よろしいでしょうか。では,和田委員,お願いします。
【和田委員】  ありがとうございます。金沢大学の和田でございます。今までの議論がございましたように,もともと,そもそもこの検討委員会ができたものは,医学・医療の質の向上をどうしたらいいのかという大きな目的意識があったのではないかと思います。そのためにも医師であったり,研究者であったり,こういった方々の質の向上,価値という言葉も出ました。こういったところを向上させていく。こういった方々を育てていくのが,例えば研究力であったり,あるいは大学病院の魅力をどうやって高めるかとか,そしてそれらを育てていく医学教育をどう改革していくのかという方向に議論がなったのだと僕も理解しています。
 その中で,この学位というのは,あくまでも医師や研究者あるいは大学病院の質の向上,あるいは価値をとる,高めるための手段,通過点のような感じはしています。学位をとること自体が目的ではないのではないかなと思います。実際,学位をとったような方々,あるいはそういう研究力のある方々がさらに研究をして,大学に戻ることによって大学の価値を高めたり,あるいはその方々が教育に携わることによって教育の価値も,あるいは質も向上していく。そういったうまい循環をさせるような大きな方向性みたいな議論が必要なのだろうと思っています。
 そういう点では,先ほどの6ページ目のところに,この研究医養成コースの取組例,学部,大学院で一貫した取組,これが少し面白いのではと思っています。先ほどからございましたように,一番下のところで,研究医枠や研究医養成コースがある大学は大学院生が多い。大学院生が多いところは,研究時間が保たれている傾向にある。しかも臨床研修をたすき掛けにやっている,つまり大学を必ず経過する人というのが,いろいろな意味で効果的である。この3つを考えると,一番下の医学,研修,博士課程,これが三位一体となったような,何かこう,新たな方策が必要になってくる。
 そのときに若手の,先ほどからもございましたように,インセンティブという言葉がございました。僕も,何らかの承認欲求であったり,そういう認めてあげるような仕組みというのをつくって,ここに中心的な役割を果たせるような,三位一体かつ若手という仕組みを少し入れないかという議論があるといいなと思います。そういう点からも,何かよいグッドプラクティスみたいなものがあれば,ここで共有して議論を進めたら1つのアイデアになるのではないかなと思います。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。熊ノ郷委員,何か今までのところお聞きになられて,御発言はございませんか。
【熊ノ郷委員】  先ほど銘苅委員が言われたように,いかにして裾野を増やしていくか。これは全国医学部長病院長会議の中での資料なので,医学部の医学部生というか,医師の中でそういった裾野をどう増やしていくかというためのアンケートなので,そのことを御理解いただいて資料を見ていただいたらいいと思うのですけども,先だって鈴鹿医療大学のトヨダ先生のほうからお話があって,選択と集中にしているところは,なかなか全部難しくなっている。どの国も選択と集中にするより裾野が大事だという話もあって,いかにそこの裾野をどうやっていくか。せっかくこれだけいろいろな,もともと入学のときにはモチベーションが高くて優秀な方たちを集めているので,その方たちをどうやってこの裾野をつくっていくかというのが重要だなあと改めて思っております。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。釜萢委員,どうぞ。
【釜萢委員】  ありがとうございます。もう既に多くの皆様からいろいろな御発言があり,そのとおりだなと思いながら聞かせていただきましたが,そもそも平成16年に新たな卒後の臨床研修の仕組みを導入して,その目的については,先ほど厚労省の医事課長さんからもお話がありました。そのようなやり方を全国に導入して,そして2年間,卒後2年間の医師の身分が保障される,給与も出てくるということが非常に大きな変化だったわけですが,その仕組みを導入したことによって,我が国の医学の研究のレベルが仮に下がったのであるとすれば,これは大いにそこを改善しなければならないなということが,そもそもの問題意識として,あっただろうと思います。
 これは一概にそうも言えないだろうとは思いますが,一方で,現象としては大学における臨床研修をする人は大幅に減ったので,そのことによってその後の研究につながりにくくなったというような御懸念が既に今,出されているところだと思いますが,卒後の臨床研修の仕組みというのを大切にしながら今後もやっていかざるを得ないと思うので,今回も出ているように進み方の柔軟性とか,研究に進むためのハードルが高くならないようにするということが,今回の議論の中でしっかり打ち出されてくることが大事だと思います。
 既に事務局から出されている案の中に,そのような趣旨がかなり出ていますけれども,進み方が1種類でないと駄目と,例えば極端に申しまして,臨床研修をやって,そして専門医,専攻医の研修を済ませて,それから大学院に行くということしか選択できないのだと,これは非常に足かせが強くなり過ぎると思います。したがって,そこを柔軟にしていこうという方向性をぜひ今回は強力に打ち出して,それが進むようにすべきだと思います。
 それと,既にお話が出ていますけれども,大学院に行った場合の,今度はその身分保障というか奨学金,そこのところが極めて大事で,そのことについてかなり不安が解消されることによって,そちらのほうに進む人が増えてくることを強く希望いたします。もちろん早く博士号をとればよいとか,安易にとればよいということでは決してないわけでありまして,しっかり質が担保されたものはぜひ必要ですけれども,今申し上げたようなコースのいろいろな柔軟性と,そして大学院としての身分保障というようなところに,さらに力を入れていくことが非常に大事ではないかなと感じました。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。銘苅委員,どうぞ。
【銘苅委員】  ありがとうございます。厚労省の方より,臨床研修制度の目的に沿ってそのまま進めていかれるということであれば,今回の目的である,まず臨床研修制度が始まってから若者が大学に入ってこなくなったという事実。そして,大学が法人化することによって診療業務を非常にしなくてはいけない状況で,若手の方々がみんな診療中心で研究が非常にできなくなっているという事実。人が減り,研究の時間も減りという状況でシステムを変えないということであれば,何らかの大きな変化というのがすごく大事で,今私たちはそれをずっと議論しているわけです。
 けれども,まだ,例えば文科省が大学病院に予算をとってきていただいたということであったり,厚労省が医師派遣のための,大学病院での一床当たりの金額は幾らということで助成金枠をつくっていただいたということもございますが,支援していただいたのは非常にありがたいのですけれども,それをしてその後,若手医師をどうやって入れて,彼らが研究に向かっていくというこの道筋にはなっていないように思います。
 特に,地方の大学においては,本当に若手の方々が大学に入っていただくとか,研究をしていただくというのはとても困難さを感じております。例えば,非常に都市部での,何十人も1つの医局に入るような状況を聞いたときに,私たちとは全然話している世界が違うのだろうなという印象を受けます。人がいない,時間がいない,給与が低いという状況で,どうやって若手の先生たちが大学に入っていただくかというときに,今,専門医は大学病院でなくてもとれるということで外に出ていったということもあるかと思います。
 先ほど少し文科省の方がおっしゃっていましたが,専門医の中に研究の要素,    というものをひとつ積極的に入れていただいて,若手もその基幹施設,専門医を育てている大学院ではない,大学病院ではない施設のレベルも向上していく研究とかそういう教育のレベルも,医師も大学院だけではなく,大学ではなくてそういった専門医を育てているところのレベルを上げていくような道筋みたいなところをつくっていける方策みたいなものは考えていただけないだろうかと感じました。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。田中雄二郎委員。
【田中(雄)委員】  すみません。裾野を広げるというのは理想は理想なのですけれども,現実問題としては難しいのではないかなと思います。それはそもそも,そういうことを志向する人の数が少なくなってきているということと,今度そういう人を指導するというのはすごいエネルギーが要るわけです。それで,そこへ持ってきてさらに審査もするということになると,結局のところは全体としての研究量が本当に上がるのかということだと思うのですね。
 ですから,繰り返しになりますけれども,研究に向かう時間というのは,卒前に増やしたほうがいいと思います。そこで研究の面白さを知るということはすごく大事なことです。ですから,それが人生のどこかで,そんなに先ではないけれども,卒業してすぐとか,そういうことだけに限定しないで戻れるような仕組みを各大学がつくるのがいいと思いますし,それを経済的にサポートするのは国家の責務ではないかなと思います。
 以上です。
【永井座長】  今村委員,どうぞ。
【今村委員】  今村です。先ほどの銘苅委員からの御指摘とかぶると思うのですけども,博士課程と専門医の取得過程とのオーバーラップというのをぜひ考えてほしいと思っています。実際,我々は大学院生を受け入れていても,臨床と研究両方やりたいという先生が多いです。その中で我々は社会医学ですので,社会医学的な社会問題に取り組みたいという先生は結構おられるのですね。でも,それぞれの専門医をとっていくのに,公衆衛生の大学院に入ったら専門医がとれませんというようなところもたくさんあって,とれるところもあって。取りあえずそこの先生は自分の専門医をとりつつ,公衆衛生の大学院に入ってもらえるのですけれども,そこがとれないというときには,そこの臨床系の大学院に入って,うちの公衆衛生が預かるという,ちょっといびつな形になっていってしまいます。
 それ自身がハードルになるということもあって,ぜひこの専門医をとっていくということと,研究をしたい,特にその基礎系の研究をしたいという,2つの熱意を持った人が両立できるようにシステムをつくってほしいと思います。それは専門医機構と各学会がつくっている調整が必要なことですし,大学院としてもそういうことが望ましいということを,文科省からもアプローチしていただいて,調整をしていただきたいと思います。そういうことも,先ほどの資料の中でも少しありましたけれども,そういう考えが厚労省,文科省の中にどれぐらい強い思いとしてあるか教えていただければと思います。
【永井座長】  厚労省,いかがでしょうか。
【俵課長】  すみません,文科省の医学教育課の俵です。先ほど資料で見ていただいたような形で既に仕組みを変えるような働きかけを,これは文部科学省からもやって,去年の5月か6月ぐらいに仕組みが整いました。そういう意味で,今,先生から言っていただいたような,こういう両立を目指す方々が目指せるように仕組みを整えていきたいということも文部科学省としてもやりたいと思って,こういった仕組みを整えることもやっているので,ぜひ進めていきたいと思っています。
【林課長】  厚生労働省医事課でございますけれども,先ほどから議論されているように,医療をよくしようということで厚労省が今まで取り組んできた取組によって,何か例えば研究ということだと思いますけれども,表面的に出ないところでいろいろやりにくくなっている部分があるのではないかという御指摘だと理解をしております。私たちは直接,その研究を推進するという価値を推進する役所ではないわけでありますけれども,そうした我が国にとって重要な価値を毀損してないかということについては,十分思いを馳せていく必要があると思いますし,こうした場でも議論をさせていただいて,必要な取組を検討していきたいとは考えております。
【今村委員】  ありがとうございます。ぜひ実務的にできるように調整をお願いしたいと思います。
 以上です。
【永井座長】  諸岡委員。
【諸岡委員】  ありがとうございます。熊本大学の諸岡と申します。まず,今回の資料を取りまとめていただいた文科省の方,それから熊ノ郷先生,ありがとうございます。
 私はこの資料の中で気になったというか興味を持ったのは,PI人件費の支出とかバイアウト制度,これをもっと活用できるような,あるいはそういった制度をもっと利用しやすいような仕組みというのが必要かなと考えております。実際に,例えば研究費の問題であったり,あるいは時間が足りないとか,あるいは人手が足りないといったところを,こういった例えばバイアウトの制度を利用して研究時間を確保するとか,そういったことが,短期的にはこういった制度を利用することで解決できるのではないかと考えております。
 ただ,例えば私は熊本大学におりますけども,熊本大学にもこういった制度はあるのですけれども,では実際に制度を使ってみようかというと,なかなか事務的な手続が煩雑そうであったりとか,あるいはバイアウト制度を使って,例えば講義を誰かに代わりに担当してもらうといっても,ではどういった方に依頼すればいいかとかですね。そういったところに,なかなか実際にこれを使おうというところでハードルが高いところがありまして,そういったところをもう少し大学,あるいは大学外の機関とも連携して,この制度を利用しやすくなるような,特に若い研究者の方が積極的に使えるような環境とかあるいは制度とか,そういったところをぜひ,しっかりと文科省の方のほうからサポートしつつ,大学でもつくっていただければと考えております。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。続いて宮地委員。
【宮地委員】  ありがとうございます。途中中座しておりまして,ほかの委員の御発言と重なるようでしたら申し訳ありません。
 まず,1点目専門医の取得条件に,研究を取得条件にするということであれば,その専門医の更新や指導医の資格についても研究業績を考慮するということを求めてはどうかなと思いました。併せて,その大学や大学院に所属していなくても倫理審査がもっと受けやすくなるような仕組みですとか,倫理審査費用の引下げなども検討して,そういった層の研究の取り組みがしやすくできるといったことも必要かと思います。
 2点目,学位の授与に関して発言させていただければと思いますが,学位の授与自体は,私は大学によってスタンスが異なってよいと思っているのですけれども,日本からのリサーチの発信によって科学全体の発展に寄与するという観点ですとか,日本の研究の国際的な競争力を上げたいという目的を考えると,期限を延ばしていただいてでも学術誌のパブリッシュを条件として,それを審査した上で学位を与えるというプロセスは重要ではないかと思いました。
 最後,田中雄二郎委員の御指摘のように,大学院生活を成り立たせるための,この世代への金銭的補助というのは非常に重要だと思います。また,多くの補助金は年齢制限が設けられているのですが,医学部を最低24歳で卒業して,その後臨床をしてある程度お金を貯めて,それから大学院に行くと考えると,あっという間に30歳を超えてしまいまして,アプライできる奨学金や研究費の年齢制限も超えてしまっているという状況もあります。研究の柔軟性を高めるという観点で,これらの年齢制限を引き上げていただくということを検討することも御提案できたらと思います。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
 では,私から印象をお話ししたいと思います。こういう問題は我々が学生時代からずっと議論しているのですね。昔は大学院は不要であるということで,長く大学院ボイコットという時代も続きました。個人的には私は研究者,研究の経験,学位というのはあったほうがいいと思っています。それは研究者になるためというのもあるのですけれども,それ以外に合理的な思考とか科学的思考,そのための技術,こういうことを経験するのは大学院でなくてもいいのですけれども,大学における研究と学位取得というのは非常に重要だと思います。
 日本はこうした科学研究,西洋の文化なわけですね。これが弱いと思います。我々,私もアメリカに長くいましたけれども,カルチャーとしてこういう科学的思考,合理的思考というのは弱い。どうしても人情とか集団的な協調に引っ張られて,個人個人はおかしいと思っても言えない,言わない。そういう社会は昔も今も変わらないと思います。ですから,ぜひ若いうちに,こうしたキャリア形成として学位であるとか研究の経験,それをエンカレジするべきだと思います。
 裾野の問題も,私はかなり長く科学研究のための日本語教育というのをずっとやっているのですけれども,残念ながら,これは必ずしも大学で学べることではない,大学の偏差値ともあまり関係ない。もっと基本的な合理的に書く,あるいは人に説明する日本語と,そこからやっていかないといけないのだということ。ですから,臨床医の場合には両方の経験をしてほしいのですけれども,それをするとしたら非常に長い時間と期間がかかる。これは間違いないですよね。両方やらないといけないわけですし,外国の,例えばアメリカのドクター,MDの場合,そんなに研究していません。でも,科学的思考は文化として身についています。ですから,日本の医師になる方もぜひ,そうしたトレーニングがあったほうがいいと思います。
 ですから,いきなり全部解決しなくても,田中委員がおっしゃったように,その気のある人を伸ばすということは最低限していかないといけないと思います。奨学金等いろいろな仕組みでやっていかないといけないのですが,そういう目の前の問題と,長期的に考えないといけない問題,2つあるのだということだと思います。では,なぜ昔は研究していたかということなのですが,昔は,はるかに熱気があって研究していたと思います。それは,時代が追いつき追い越せの時代であったということが1つ。もう1つは,臨床医学があまりにもプアだったということなのですよ。
 東大病院でも私は何度も救急車を呼んで,一流病院に連れて行きましたけれども,臨床医学の研究はほとんどできない。症例も集まらない。分野によってはできましたけれども,非常に労力の要るシステムの必要な臨床医学はできなかった。ですから,基礎研究をしたり,学位を取得してキャリア形成をしていたわけです。ところが,今は状況が変わって大学病院も一生懸命臨床をやるようになっている。でも,診療をすれば責任を伴うのですね。医療安全もそうですし,いろいろなことで責任を伴う。そうすると一人一人の若い医師の場合には,やはり責任感が強いですから,そちらにどうしてもシフトせざるを得ないわけです。
 ところが,前からお話ししているように,大学設置基準で,大学病院というのは,医学部学生の教育と研究のためと明記してあって,高度医療のためとは書いていないわけです。ですから,どうしてもマンパワーが教育研究を割いて臨床に向かわざるを得ないと,そういう背景があるかと思います。そういうことはあるのですけれども,ただ足元で,もっともっと改革しないといけないところがあると思います。これは非常に,臨床と研究両方やるにはかなりの経歴があって,自分自身も研究の経歴があって臨床もきちんと分かると。そういうリーダーを迎えないといけないと思いますね。大体サイエンスというのは自前主義では駄目なので,他学部卒であるとか他大学の人を優れた人だったらどんどん迎えるという風通し,アカデミアの自由というのですかね,そういうことをもっと各大学はしないといけないのだろうと思います。
 そういう意味で,いろいろな改革,今日も話が出ましたけれども,これ全てすばらしいと思うのですね。それで,きちんとやるべきなのですけれども,それだけでは済まないという構造的な問題があるのだということです。そこへ持ってきて,もう海外に学ぶことがないみたいな話が出てくると非常にまずいわけで,やはり若い人にはどんどん外へ出て研究とか臨床の経験を積む,また,そういう人たちを迎える風土ですね。よく見れば,ほとんどの多くの大学が自校出身者で教育職を務めているわけですよ。それはそもそもおかしいわけで,自前主義を排するということからやっていかないといけないわけです。
 そういう点から,大きな歴史的な視点とか,サイエンスも変わったわけです。ライフサイエンス,molecular biologyが起こったときは,1人,2人でも結構いい仕事ができたわけですけれども,今,ビッグサイエンスになっていますから,そうしたサイエンスの変化,歴史的な変化ということも考えつつ,この問題をみんなで考えるべきではないかと感じました。
 それから,臨床医の問題ですね。これも,その両方する人を求めるのであれば,急いで専門医をとらなくてもいいということを,もっとシステム化すべきだと思います。多分,その専門医制度の中に,自分たちの領域に専念してくれる若い人を抱え込むという動機が制度を動かしている側にあるのではないかと思うのですね。もっと風通しをよくして,自由に出入り自由にして,そして社会全体で専門医を養成するのだと。どこかに草鞋を脱がないと専門医になれないというのはおかしいわけで,そういう意味ではもう少し緩やかな体制をつくるべきではないかと思います。
 以上です。
 いかがでしょうか。どなたか。宮地先生,いかがですか。これは,もう非常に昔からある問題なのですよ。昔はこういうことでも血が流れたのですね。先輩たちはさんざん闘ってきた。でもその当時は,皆さん大学病院で研修とか研究をさせてくれと言ったのですね。でも,大学院はないほうがいいと。それは,大学病院のレベルが市中病院より高い面がいろいろあったわけです。でも,もはやそういう状況ではありませんから,そうしたら若い人たちは,それぞれ自由に行動していくということだと思います。
 宮地先生,いかがでしょうね。何か先生から御覧になって。
【宮地委員】  いや,今,本当に先生のお話を伺うと,時代とか状況が変わっても,ある程度このプロフェッションといいますか,この職業にまとわりつく本当にコアな問題を議論しているのだなというのを,改めて感じました。新しい観点などの意見にならなくて申し訳ないのですが。
【永井座長】  いや,なかなか奥が深い問題だと思います。特に最近,海外に留学する若い人が減ってしまったということを,日本でも研究ができるという声もよく聞くのですけれども,それはある開拓した領域は日本でも研究できると思うのですけれども,サイエンスがどんどん動いて新しい局面がどんどん出てくるときには,日本にとどまっているだけでは新しいことは必ずしも分からない。やはり若い人はどんどん旅に出て,いろいろな経験をして人と触れ合い,そういったいろいろなところでひらめきを得て,そこで自分で領域を開拓して,またそういう人を迎える風土があれば,何とか今の問題というのはもっと見通しがきくのではないかという気がいたしますけれどもね。
 あとは他学部の方々,これは前にも諸岡先生が御発言いただきましたけれども,自前主義ではなくて,医学部の人が医薬研究をするのではなくて,他学部出身の方がどんどん医学研究をしていかないと,もう絶対数として間に合わない。それから,ビッグサイエンス化しているわけですから,とても人が足りないというのは計算すれば分かるわけですね。でも,それをそれぞれで縦割りの中でやっていたら,それは破綻すると思いますね。
 諸岡先生,いかがでしょうね。
【諸岡委員】  まず,先生のお言葉を聞いて,すごく歴史のある中でこういう会議を,議論をしているのだなというのを改めて理解させていただきまして,ありがとうございます。
 そうですね。先生がおっしゃるように,今は1つの病院,1つの研究機関だけではなくて,国内でも他機関,あるいは国際的な連携研究というのがたくさん行われていて,その中でたくさんのデータを集めて,いかに新しいアイデアとかイノベーションを出すかという傾向になってきていますので,ぜひ日本でもそういった枠組みが積極的に行われることを期待しております。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 堀岡さん,事務局,お願いします。
【堀岡企画官】  どうしても僕らは役所なので,そういったものをどうやって施策に落とし込むのかというのは,今,先生のお話とか議論を聞きながら思ったのです。今,研究医枠の,例えば4ページにいろいろな研究医枠と言いながら,各大学でどんな基礎研究をより推進するためのコースをつくるかみたいなことで,こういう要件とかで行政というのは引っ張っているわけなのです。
 例えば,non-MDの人がよりそういったことに興味を持っていただいたりするような大学とかの取組というのは,どのようなことをこういう要件として書けば,そういったことを各大学にインセンティブになったりするのかなというのが,いまいちなかなか難しいのです。例えば,東京医科歯科大学とかがかなり,そういったnon-MDが入ったりするという取組とかも,いろいろやっていると聞くのですけれども,どんなことをすればnon-MDの方に入っていただくような取組につながるのでしょうか。
【永井座長】  いかがでしょうか。田中先生,いかがでしょうか。
【田中(雄)委員】  そんなにたくさんnon-MDなど入っていないと思うのですけれども,要するに,non-MDであろうと何であろうと,経済的な支援が必要です。要するに,大学院にお金を払って入る国というのは,今はもう世界では珍しいという現実を我々は認識すべきで,non-MDであろうとMDであろうと,大学院に入るときに何かを断念しなくてはいけないという,そういう構図になっていると,価値観がこれだけ多様化している中で,それは難しいと思いますね。
 永井先生がおっしゃることは,私も年代的には永井先生に近いのですごく共感するのですけれども,あまりにも環境が今,例えば働き方改革もそうですし,また,民間の給料は非常に上がり始めていて,これがまた研究医を,大学院を志向する人を増やそうという目標に照らして考えると,悪条件と言うとよくないのですけれども,そういうことを実現するためには周りの環境は変わり過ぎていると思うのですね。
 ですから,何はともあれ,やっぱり一番,今すぐできることで,それは財政的に厳しいことは承知していますけれども,奨学金を出して,職業としての大学院というのを日本につくることだと思います。繰り返し申し上げますけれども,裾野を広げるということは,1人当たりのパイが減るということになりますので,予算は相場はありますから,そこもよくお考えいただきたいと。
【永井座長】  そうですね。結局,また設置基準の話になりますけれども,多くの研究のポストというのは数が少ないわけですよね。それを臨床に回さざるを得ないと。だから本当に臨床をガンガンやるポストを増やしたっていいと思うのですね。どこのポストを増やすかによりますけれども,でも総枠を増やすということが,まず基本だろうと思いますね。
 金井委員,どうぞ。
【金井委員】  先ほどから裾野を広げるほうがよいのか,あるいは選択と集中がよいのかという議論がなされています。日本の医学部というのは,1学年100人あるいは120人,全ての大学がそういうふうに統一されています。一方,イギリスなどはオックスフォードは500名で,ケンブリッジは300名で,別の大学は100名でということで,やはり,選択と集中しているのですね。で,100人の医学生を教育するためのスタッフだけで全てを研究するのは,多分無理なのではないかなというのがあって,ハーバードも1学年定員が260人ぐらいです。それなりの,要するにスタッフを集めて,そして研究もしているという状況の中でどうやって海外と戦っていくのかというのは,すごく選択と集中というのと裾野を広げるというところにおいて,大学院教育というのをどうこの国が進めていくのかなということも,ぜひ議論していただきたいなと思います。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 ぜひ,文部科学省さんには今出た御意見を参考にされて,とにかく絶対数が足りないのですね。小さい面積の三角形の底辺を高くするか,頂点を高くする。底辺を広げるか,頂点を高くするかといっても,所詮限界がある話なのだということだと思います。
 よろしいでしょうか。それでは,この後,事務局より報告事項をお願いいたします。
【永田室長】  それでは,私のほうから御報告事項です。大学病院改革ガイドライン,それから,令和5年の補正予算の状況につきまして,御報告をさせていただきます。
 まず,資料3でございますけれども,大学病院の改革ガイドラインにつきましては,委員の皆様に御意見をたくさん賜りまして,ありがとうございました。最終的に前回,今村委員よりも御指摘いただきました新制度に当たる人材等の社会的な要所に当たるところの人材確保ですとか,また,田中委員より御指摘のありました外部資金の収入の確保等の点。また,一部,平仄を整えまして修正を行いました。御一任いただきました永井座長にも御了解をいただいたものを資料3に御用意をさせていただいております。
 ページ数で言いますと9ページですとか14ページの部分でございますけれども,詳細のほうは御一任ということでしたので割愛をさせていただきますけれども,本ガイドラインの内容を最終的なものとさせていただいております。なお,本ガイドラインにつきましては,明日の夕方,オンラインによる各大学に対して説明会を開催する予定としております。各大学が内容をよく御理解した上で,大学病院の改革プランを策定をいただけるようにしたいと考えております。
 また,資料はございませんけれども,令和5年の補正予算につきましては,教育研究にも活用できる医療設備を整備できるようにするための予算ということで,こちらの検討会でも御報告させていただいておりますけれども,今般,委員会による審査を経まして,77大学を採択させていただいております。本日,公表をさせていただきました。多くの大学病院で手術用ロボットですとか,MRI,またCT,放射線治療装置など購入する予定となっておりまして,これによりまして医師,行政の教育研究,教育環境の充実に向けた取り組みが進むことを期待しているところでございます。
 続きまして,令和6年度当初予算につきましては,菊池のほうから御報告をさせていただきます。
【菊池課長補佐】  医学教育課の菊池です。次のページを開いていただけますか。この事業のポイントだけ御説明しますけれども,この事業は当初予算で21億円ということで高度な臨床・研究能力を有する医師養成促進事業ということで,主に人件費の支援を目的としています。
 右下の事業スキームを御覧いただきたいと思いますけれども,医学生ですとか大学院生に対するTA・RA経費ですとか,右側の研究支援者,教育支援者への支援ということを考えております。
 次のページを御覧ください。左下の事業の概要のところで,補助上限額のところに丸1,丸2とありますけれども,2つに分けて支援を考えておりまして,丸1番のほうは臨床・基礎融合研究基盤人材養成拠点で,8,000万円の10件程度。丸2番が特色臨床研究基盤人材養成拠点で,4,000万円の25から30件程度を考えております。その下の補助期間ですけれども,令和6年から11年度の6年間としております。
 その右側のほうに申請要件とありますけれども,要件としては,医師の働き方改革を進めながらというところもありますので,まず1つ目としては文科省が確定,公表する先ほど御説明のあった大学病院改革ガイドラインに基づいた改革プランを策定して,ウェブサイトで公表すると。2つ目は,本事業に採択された取組を大学病院改革プランに反映させると。3つ目は,診療参加型臨床実習の充実に向けた計画を策定し,これも大学病院改革プランに反映させることというのを要件にしております。
 その下のスケジュールですけれども,公募開始が3月7日から開始しておりまして,4月26日締切りで,6月下旬に公表。改革プランのほうはガイドラインの公開が3月14日されておりまして,プランの公表が6月めどを考えております。
 次のページですけれども,この事業の背景ですけれども,まず,1つは日本の医学研究力が諸外国に比して相対的に低下しているということ。あと2つ目としては,医師の時間外上限規制により,教育・研究時間がさらに削減されることが懸念されるということで,こういった背景もありますので,この事業では3つ大きな柱がありまして,まず,医学研究力を向上させるということ。それから2つ目としては,医師の働き方改革に対応すると。3つ目としては,国が進める人への投資というのを進めるという,この三本柱を目的に事業を実施したいと思っております。
 次のページですけれども,この事業の支援スキームでございますけれども,2つに分けて,左側の赤いほうと青色のほうと2つに分けて支援をすると。左の赤色のほうは,臨床・基礎研究基盤人材養成拠点ということで,基礎医学研究の実績も活用し,基礎医学と一体となった体制で大学全体の診療領域の臨床研究をさらに活性化すると。こちらが10拠点程度で,こちらは全国のブロックも考慮して各ブロックに1つか2つぐらいの配置を考えております。右側の青色のほうは,特色臨床研究基盤人材養成拠点ということで,特色ある診療領域の体制を強化して,特色領域の臨床研究をさらに活性化するということです。その下の緑色のところがありますけれども,取組例としては,国の健康医療戦略の重点分野として掲げられているような生活習慣病ですとか,精神・神経疾患,老年医学・認知症,難病・希少疾患等の臨床研究の推進というところを目指すというところでございます。
 難病・希少疾患とありますけれども,この辺もなかなか民間企業が参加しない,症例数が少ないということで開発が進んでないというところもあるので,国としてもこの辺も支援したいと思っております。
 説明は以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。どなたか御質問,御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 そういたしますと,本日,少し予定よりも早いのですが,大分重い議論がなされましたので,この辺りで会議を終了したいと思います。
 ぜひ皆様方に今日の議論を踏まえて,いろいろとお考えを深めて,また次の会議で御意見をいただければと思います。
 では最後に,今後のスケジュールを事務局からお願いいたします。
【海老課長補佐】  事務局でございます。今後の開催スケジュールについてですけれども,第9回を令和6年4月18日に開催することとしたいと存じます。
 以上でございます。
【永井座長】  それでは,これで終了いたします。どうも長時間ありがとうございました。
―― 了 ――

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