今後の医学教育の在り方に関する検討会(第6回)議事録

1.日時

令和6年1月24日(水曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省(東京都千代田区霞が関3-2-2) ※対面・WEB会議の併用

3.議題

  1. 有識者ヒアリング
  2. 大学病院改革ガイドライン(案)について
  3. その他

4.出席者

委員

  永井座長、今村委員、大井川委員(代理:茨城県保健医療部 森川部長)、小川委員、金井委員、釜萢委員、北澤委員、熊ノ郷委員、田中(純)委員、田中(雄)委員、宮地委員、銘苅委員、諸岡委員、山口委員、横手委員

文部科学省

  池田高等教育局長、西條審議官、俵医学教育課長、堀岡企画官、永田大学病院支援室長 他

オブザーバー

  厚生労働省医政局 林医事課長、文部科学省研究振興局 釜井ライフサイエンス課長(代理:廣瀨課長補佐)

5.議事録

【永井座長】  時間になりましたので,ただいまから,第6回,今後の医学教育の在り方に関する検討会を始めさせていただきます。
 それでは,初めに,資料の確認,オンライン会議での発言方法等について,説明をお願いいたします。
【海老課長補佐】  ありがとうございます。事務局でございます。
 本日の委員の出欠状況でございますが,岡部委員,和田委員から,御欠席の連絡をいただいております。また,大井川委員に代わり,茨城県保健医療部,森川部長に,釜萢委員に代わり,日本医師会,角田副会長に,代理出席をいただいております。なお,田中雄二郎委員は遅れて御出席,熊ノ郷委員は17時半頃に御退席の予定でございます。
 次に,配付資料の確認をさせていただきます。配付資料は会議次第に記載のとおりですが,お手元にございますでしょうか。なお,資料につきましては,文部科学省のホームページでも公表しております。
 続きまして,オンラインによる会議の進行に当たってのお願いがございます。御発言される場合には,Zoomの挙手ボタンを押していただくよう,お願いいたします。その後,座長から順に発言者を御指名いただきますので,御発言いただく際は,マイクがミュートになっていないことを御確認の上,御発言をお願いいたします。
 以上でございます。
【永井座長】  ありがとうございます。
 では,議事次第に従いまして,本日は,有識者ヒアリング,大学病院改革ガイドライン(案),その他という順で進めてまいります。
 前回9月の検討会後に中間取りまとめが公表されて一旦区切りとなっており,今回から再開ということでございます。
 本日は,議題1について,鈴鹿医療科学大学学長,豊田長康先生から御意見を伺いたいと思います。
 では,早速,豊田先生,お願いいたします。
【豊田氏】  今日は,「日本の[医学]研究競争力を低下させないために」ということで,私自身が行いましたデータ分析に基づいて,お話をさせていただきたいと思います。
 では,スライドに沿って,説明いたします。スライド枚数が多いので,時間の関係上,かなりはしょらせていただきますことを御了承願いたいと思います。
 今日は,まず,日本の研究競争力の急落状況,そして,特に2008年以降の日本の医学研究力の現状について説明した後,因果推論に基づくEBPM(Evidence Based Policy Making)の重要性,そして,研究の質×量を決める原因,日本の研究力競争力低下の原因,日本の(臨床)医学研究についてということで,お話をさせていただきたいと思います。
 今回分析しました方法(データの入手元)は,以下のスライドのようなものでございます。
 今日の発表で,いろんな指標が出てまいります。ちょっとややこしいものですが,研究力の量の指標は論文数ということになります。年度によって,論文のカウント法が異なるものを用いさせていただいております。次は研究の質ですが,質の指標,ちょっとこれもややこしいものですが,一つは被引用度。これは1論文当たりの被引用数。ほかの論文にどの程度たくさんその論文が引用されたかということで測るわけです。それを基にしまして,各種の指標がございます。相対被引用度ですね。これは分野とか発行年で調整をした被引用度ということになります。Top10%論文率は,被引用度が上位10%の論文の割合ということになります。Q1論文率は,ジャーナル・インパクトファクターというのがございまして,これは学術誌につけられた評価指標ですが,これもまた被引用数で計算されているわけですけれども,上位4分の1に掲載された論文の割合ということになります。そして,質×量の指標としまして,Top10%論文数,Q1論文数などを用いております。それから,競争力としまして,一応,G7から日本を抜いた,米,英,独,仏,伊,加の6か国に対する比率を用いております。ちょっとややこしいんですけどね。
 論文指標の注意点としましては,分析しておりますのはあくまでデータベース上の論文でございまして,実際の論文数からのずれがあるということ。それから,質的指標ですが,質とは無関係の部分もありますし,質的指標では測れない質もあるんです。そういう中で,本当の質を反映する部分を見極めることが大事だというふうに考えております。論文指標の見方は大変難しい部分がございまして,実はたくさんの注意点がありまして,この辺りにたくさん書いておりますが,省略させていただきます。
 そして,Top10%論文(質×量の指標)は,左のグラフにお示ししますように,そうでない論文に比べまして,特許に引用される率も高いわけです。10倍ほど高いということが分かります。それから,Q1論文,ジャーナル・インパクトファクター,評価の高い学術誌,上位4分の1に掲載された論文は,やはり特許にも約4倍引用されやすいということになります。したがいまして,このようなTop10%論文数とかQ1論文数は,この二つは特性に違いはあるのですけれども,おおむね正相関いたしまして,両方ともイノベーションへの貢献度が高いと考えられます。
 これは,昨年,ニュース等,報道でにぎわいました,科学技術指標のデータですね。日本のTop10%論文数(質×量の指標)ですが,過去最低の13位になったと。イランよりも下になったということで,結構,新聞で報道されました。これを人口当たりで計算しますと実は37位になっておりまして,こういった指標を見る場合,国民1人当たりGDPと同様に,人口当たりの研究力,Top10%論文数の順位というのは非常に大事だと考えております。つまり,競争力を見ているわけですが,資源の少ない日本がイノベーションで生きていくためには,相手国よりもイノベーションで優れていないと買ってもらえないわけなので,相対的に強くなる必要があるということですね。韓国は,実は人口当たりのTop10%論文数でドイツを追い抜いております。日本は,非常に低いレベルで,開発途上国レベルということになります。
 日本の論文数(量の指標)が減り始めたのは,2004年頃でございます。中国が他を圧倒しておりまして,インド,韓国が非常に急進をしているという状況でございます。分野別では,青で示しました理工系,それから,基礎生命系,バイオ関係が大きく減少しておりまして,臨床医学につきましては,実は,一時期停滞をしていたのですが,2010年頃から増加に転じております。こういう,分野による違いがございます。G6に対する比率(競争力)を見てみますと,全体の論文数ですけれども,2004年頃から比べて,3割ほど差をつけられているということでございます。我が国で最も競争力の高かった理工系は,約4割,競争力が落ちたということでございます。臨床医学は,一時期落ちたのですが,今は維持もしくは若干上昇ぎみということになります。
 Q1論文数(質×量の指標)では,G6に対する競争力は,左のグラフで見ていただきますと,2004年を境に急激に低下しまして,4割減ったということになります。理工系は5割減っていますね。
 ですので,量も3割減って,質×量にしますと4割減っておりますので,量も質も,両方,競争力が落ちたということになります。
 そんなことで,日本の先進諸国に対する研究競争力(質×量)は,2004年頃を境に約40%低下した。質の高い論文はイノベーションへの貢献度が大きいが,日本は人口当たりで開発途上国レベルとなっています。理工系・基礎生命系の競争力低下が著しいのですが,臨床医学は,一時期低下したものの,その後,現状維持から,やや回復傾向にあります。
 次に,2008年以降の日本の医学研究力の現状ですが,これは責任著者カウントというカウント法で論文数を調べておりますけれども,臨床医学は3位を維持しております。人口当たりの臨床医学論文数では25位ということで,それほど高いわけではありません。Top10%論文数(質×量の指標)では,人口当たりは26位となっております。Top10%論文率というのが質の指標になるのですが,これですと36位という位置ですね。
 基礎医学のほうでは,先ほどの臨床医学より,順位が若干低くなっております。
 特に,非常に急速に低下しておりますのが薬学ですね。Top10%論文数ですが,かなり急減をして人口当たりで39位となっておりまして,これも開発途上国レベルになっております。Top10%論文率(質)で見ますと,49か国調べておりまして,47位ということになっております。
 社会医学につきましても,人口当たりではかなり低い値ですね。
 新型コロナの論文でも,まあまあ低い値となっております。
 それから,ランダム化比較試験,これは臨床医学では非常に重要な研究になるわけですが,これにつきましては,人口当たりで26位ではあるのですけれども,世界中で増加傾向にあるのですが,日本も増加傾向にあります。増加をしておりますね。ランダム化比較試験のTop10%論文率(質)は21位ということで,これはほかの分野の順位に比べるとまだいいほうであるということになります。
 そんなことで,臨床医学につきましては,かろうじて競争力低下を防いでいるものの,人口当たりTop10%論文数は26位と,先進国で最低の部類です。基礎医学については,人口当たりTop10%論文数は28位と,先進国で最低の部類でありまして,引き続き競争力低下が続いております。特に薬学につきましては,競争力低下が著しくて,人口当たりTop10%論文数は39位と,開国途上国レベルであります。社会医学,疫学,新型コロナウイルスについても,競争力は低いということになります。ランダム化比較試験(RCT)につきましては,人口当たり論文数は26位ですが,徐々に増えつつあります。
 次に,因果推論に基づくEBPMの重要性について,お話をしたいと思います。これは,内閣府が平成30年度に示しております,EBPM取組方針です。EBPM,根拠に基づく政策立案ということになりますが,それをしっかりとしたエビデンスに基づいてやりなさいということを内閣府が言っております。つまり,因果関係の分析をしなさいということで,質の高いエビデンスの目安としまして,レベル1から4まで挙げております。1はランダム化比較試験になるわけですが,そのほかに,差の差分析とか,あるいは,その下,重回帰分析とか,そういった分析が挙げられております。
 なぜ,因果推論が重要なのか? これは釈迦に説法ということになりますが,Xを増減すればYも増減する場合に,Xを原因と言い,Yを結果と言います。ただ,因果関係の定義はほかにもございますが,一応,一番分かりやすい定義はこれだと思います。そして,効果量の大きい原因に資源を投入すれば,期待される結果が得られるということであります。逆に言えば,効果量の小さい原因に資源を投入しても,期待される結果は得られないということになります。因果関係を実証するゴールドスタンダードはランダム化比較試験なのですが,政策分野では困難であります。ただし,近年,自然実験など,RCTによらない実証方法が認知されるようになってきております。
 因果関係と相関関係の違いを皆さんに理解していただくために,国際共著率を取り上げたいと思います。今,学術論文では国際共著論文が非常に急速に増えております。日本も,世界の中ではそれほど高いとは言えませんが,着実に増えております。国別に横軸の国際共著率と縦軸の相対被引用度(質の指標)を取りますと,このように正の相関が認められます。これはアメリカの大学だけで調べておりますが,横軸の国際共著率が高い大学ほど被引用度(CI)が高くなる,正の相関が認められております。この相関関係から,国際共著率を20%から40%,つまり2倍にすれば,この回帰直線から計算しますと,相対被引用度は20から35に上がるというふうに計算されるわけですが,本当に上がるのかどうかということでございます。実は,そうとはならないということです。国際共著率は,先ほどの総論文の被引用度と正の相関をするわけですが,回帰係数は0.6なんですけど,国内論文の被引用度で層別化をしますと,つまり,グループに分けて相関を見てみますと,回帰係数は約10分の1に低下をいたします。つまり,国内論文の質が同程度の大学,国内論文の質が低い大学同士,あるいは高い大学同士で国際共著率を比較しますと,それほど上がらないのですね。ここで国内論文といいますのは,国際共著以外の論文で,データベースに登録された論文でありますので,日本の場合は,日本語で書かれた論文を意味するのではなくて,国内で生産された英語の論文ということになります。実は,国内論文の被引用度の高い大学ほど国際共著率も高いという相関図も得られまして,この解釈としましては,国内論文の質が高い大学はもともと研究力の高い大学であろうと考えられまして,そのような力のある大学ほど国際共著率も高めやすいということを示していると解釈しております。
 そんなことで,これは単純な因果構造のモデルなんですが,国内論文の質と国際共著率が総論文の質を高めるモデルを描いてみました。どちらが原因でどちらが結果かということにつきましては,各要因の性質(因果ストーリー)から,原因と結果の関係を表す矢印の方向を推定しております。総論文の質を高めるためには,国内論文の質を高めるのが最も有効と。95%は国内論文の質で決まるということになります。国際共著率が影響するのはたかだか5%であると,そういう計算になるのですね。
 左は,国際共著論文のTop10%論文率,世界の比較ですが,日本は,国際共著論文だけ取り上げても,低い値でずっと低迷していると。右は国内論文の質ですが,日本は他の国に比べまして国内論文の質がどんどん下がっているという状況になります。
 そんなことで,エビデンスに基づく政策立案,これは日本政府が非常に重要視しておりまして,因果関係の実証を求めているわけです。効果量の大きい原因に資源を投入すれば期待される結果が得られますが,効果量の小さい原因に資源を投入しても,期待される結果は得られない。事例として,国際共著率は総論文の質と正の相関をするが,因果効果は従来考えられていたほど大きくはなくて,国内論文の質でほとんど決まるということが分かります。
 次に,研究の質×量を決める原因について,お話をしたいと思います。研究競争力(質×量)に寄与すると考えられる要因はたくさんあります。研究の質といいますのは,例えば,新規性,独創性,信頼性,社会的価値というようなことがあろうと思います。こういうことを伴った論文,文献をいかにたくさん生産するかということになります。あと,こういった研究競争力を高めるために,ヒト,モノ,カネ。ヒトにおきましては,研究者の能力ももちろん関係するでしょうけれども,研究者の数とか,支援者数,研究チーム,研究時間,あるいは,研究組織,雇用形態,キャリアパス等も関係すると思います。モノは,研究材料,データ,施設・設備。カネは,研究費ということになりますよね。人件費,材料費,施設・設備費。それから,ネットワーク,情報ですね。それと,政策的にはマネジメントということになろうかと思います。
 例えば,主要国における政府支出大学研究費と論文数の相関を見てみますと,これはきれいに正の相関をしまして,政府が大学に多くの研究費を出している国ほど,論文数が多いと。非常に単純な結果ですね。だから,日本はそれなりの研究費しか大学に出していないので,それなりの論文数しかないと,極めて明確な答えが出てまいります。
 臨床医学論文で取ってみますと,左の人口当たり論文数というのとQ1論文率(質)も相関することが分かっております。右の国際共著率とQ1論文率も相関すると。それから,左の企業共著率とQ1論文率も相関いたします。そしてまた,RCT(ランダム化比較試験)の論文に占める割合も,Q1論文率(質)と相関いたします。こんなデータが得られております。いろんなことが研究の質と量に影響するということですね。
 そういったたくさんの研究競争力を決定する要因の中で最も基本的で効果量の大きい原因は何だろうかというのが私の問題意識でありまして,作業仮説といたしまして,研究者が思う存分研究に専念できる,良き人的研究環境の広がりの大きさ,この規模が最も基本的で効果量の大きい原因であるということを作業仮説といたしまして,いろいろ分析をいたしました。代理変数としまして,人口当たりFTE研究従事者数を用いまして,いろいろ分析をしました。研究従事者数というのは,研究者数+テクニシャン数。これは,OECDでそういうデータがございますので,それを用いました。FTEというのはFull Time Equivalentという言葉の略でありまして,フルタイム相当の研究従事者数ということになります。つまり,研究時間が50%の大学教員は2分の1人として計算します。研究人件費も,それに応じ,て2分の1として計算します。要するに,研究に携わる人×時間です。ただ,研究者の定義とかも国によっていろいろ違っておりますし,大学院生についてどの程度研究者としての数に数えるかということも国によって違っておりまして,ちょっと誤差が多くて国際比較は難しいという点もございます。そういうことで,かなり誤差はあるのですが,人口当たりFTE研究従事者数という指標が多い国・高い国は,良き人的研究環境の広がりが大きい国であると推測いたしまして,この代理変数を用いました。
 人口当たりFTE研究従事者数を横軸に取りまして,人口当たり論文数(量の指標)を縦軸に取りますと,このようにきれいな正の相関が認められます。日本は,それなりのFTE研究従事者数ですので,それなりの論文数であると。このときの因果関係の方向性は,論文数を増やしたから研究者が増えるということはちょっと考えられないので,研究者が原因であって,研究者を増やせば論文数が増えると考えるのが妥当かと思います。
 そして,左のグラフですが,人口当たりFTE研究従事者数は,国内論文の質指標Top10%論文率をほぼ直線的に高めます。量だけじゃなくて,質も直線的に高くなる。右は,実は人口当たり論文数と同様に国内の論文の質を見ているのですが,これも正の相関をするのですね。これは,数学的には当然といえば当然で,先ほどFTE研究従事者数は論文数と正の相関をしましたから,人口当たり論文数も質と相関するはずなんですね。そういうことで,こういうデータが得られます。
 そうしますと,人口当たりFTE研究従事者数は,今度はTop10%論文数という質×量の指標の相関を取りますと,直線的じゃなくて,尻上がりになります。人口当たり論文数もそうなります。つまり,数学的に質×量という指標なので,FTE研究従事者数を2倍にすると,量も2倍になり,質も2倍になれば,質×量は4倍になるんです。この回帰線の数式からは,大体1.7~2乗程度になるというふうな計算に一応なります。
 ただ,先ほど右側の図で人口当たり論文数を増やせば質も上がるというデータだったのですが,FTE研究従事者数当たりの論文数と国内論文の質の相関を取りますと,これは,ちょっと不良,あまりいい相関ではないのですね。つまり,人口当たり論文数を増やす方法としましてFTE研究従事者数を増やす方法とFTE研究従事者数はそのままで論文数だけ増やす方法の二通りが考えられるわけですが,論文数だけを増やした場合の質の指標の押し上げ効果は小さいというふうに推定されます。
 左の図は,日本の大学でこの10年間,論文数を多く増やした大学で質がどうなったかということを調べたグラフなんですが,横軸は各大学の論文の増加率,縦軸に相対被引用度の増加率を取りまして相関図を取りますと,逆相関します。つまり,論文の数を多く増やした大学ほど質が低下しているというデータが得られますね。ですので,人的研究環境を改善せずに論文の数だけ増やしても,質は向上せず,むしろ低下する可能性があるんじゃないかと。ですので,論文を増やすために,忙しい先生方にたくさん論文を書けと言うんじゃなくて,FTE研究従事者数,人的研究環境を良くして,論文を増やしなさいと言うべきだというふうに考えます。実は,右の図は韓国のデータでありまして,韓国ではこういう現象は見られません。実は,韓国は物すごくいい研究費を大学に投入しておりまして,日本をあっという間に追い抜きまして,今,人口当たりで計算しますと日本の1.8倍ほどですかね。これは金額で計算しますと約1兆円の差があるということになります。ですので,韓国レベルまで日本のレベルを上げようと思いますと,プラス1兆円,大学に研究費を投与しないと韓国レベルにならないということになります。
 実は,日本以外にも研究力を低下させた国が幾つかございます。これは理工系とバイオ系の国内論文のTop10%論文数を調べておりますが,このグラフを見ていただきますと,赤は日本でどーんと40%低下しておりますが,カナダ,スペイン,台湾で一過性の低下が見られております。カナダを緑,スペインをピンク,台湾をライトブルーで示しましたが,一時期低下をして,最近は回復傾向。それから,紫色で示しましたフランスは,どかーんと低下しておりまして,まだ回復しておりません。これはかなり深刻ですね。日本と同様に,下がったきり。こういう現象が日本以外の国で見られます。この場合,こういった増減,増えて,減って,増えたという変化がFTE研究従事者数の変化で説明できれば,FTE研究従事者数が原因であるということはかなり確からしくなります。
 カナダの場合ですが,2013年頃からFTEが減りまして,また回復しております。政府が大学へ投与する研究費も同じように,増えて,減って,また増えたと。直近ではまた減っておりますけど,こういう変化をしております。
 スペインの場合も同じように,FTE研究従事者数は,増えて,減って,増えた。全く同じように,論文数が,質×量の指標が動いております。これも政府の研究費ときれいに相関をしております。
 台湾の場合も,台湾では実は工学系の大学院生がかなり激減したのですね。それで,大学が過剰であるという政府の判断で大学縮小政策が取られまして,右のグラフですが,FTE研究従事者が2013年から減らされております。論文数も2013年から減ったと。まだ十分には回復していないようなのですが,ただ,2018年から政府からの大学研究資金が増やされまして,人件費も増やされております。そういうことで,今は回復基調になっているのかなというふうに考えております。
 フランスの場合は,政府からの大学院の研究資金,あるいは研究所も含めた研究資金が減らされております。ただ,OECDのデータでは,FTEは減っておらず,むしろ増えているデータになっておりまして,このデータにもおかしなところがありまして,今後,これはさらに検討しないといけないと考えております。FTE研究従事者数のデータに,やや矛盾があるんですね。しかし,FTEは増えているけれども,研究力は低下したという可能性も否定はできません。フランスでは,今,大変な状況になっておりまして,一言で言えば,フランス政府が新自由主義的なニューパブリックマネジメントとか,大学の統合とか合併で大学の格差が非常に拡大しまして,大学に直接定期的に交付される資金が減額されて競争的資金に移行されまして,構造的不平等化の悪化で,選択と集中政策,成果に基づく資源配分,終身雇用ポストを削減しまして,約60%削減したということですね。プロジェクトに伴う短期雇用。こういった政策,いわゆるニューパブリックマネジメントが行われたわけです。これは,国立大学の法人化以降,日本政府が行っている政策と類似していますね。
 そんなことで,Top10%論文数増加の因果構造モデルを描いてみました。一応,ここでは人口当たりFTE研究従事者数を原因といたしまして,人口当たり論文数は中間変数として描いておりますが,それが,国内論文の質,総論文の質を高めると同時に,量も高めまして,人口当たりTop10%論文数を非常に効率よく高めると。ただ,FTE研究従事者数を増やさずに中間変数の人口当たり論文数を増やしても効果は小さいというふうに考えております。
 ということで,良き人的研究環境の広がりの効果量は極めて大きく,要するに研究の質×量を1.7~2乗で高めますので,これは乗数効果と考えていいと思うんですけど,この棄損による研究力低下を他の施策やマネジメントによって補完することは極めて困難であろうと考えております。
 日本の研究競争力低下の原因に移ります。そもそも日本が支出する大学研究費は先進国で最低でありまして,他国との差は拡大しております。GDP当たりでも同じですね。ですので,競争力が低いままであるのも,やむを得ないというか,当然といえば当然ということになろうかと思います。これは文科省のデータですけど,人口当たりFTE研究従事者数は,実は2002年から2008年にかけて低下しているのですね。先進国で最低レベルです。
 左の図ですが,人口当たり博士課程学生数も先進国で最低レベルです。右は日本だけのデータですが,保健系は博士課程が増えているのですが,理工系は減っているというデータですね。
 自然実験ですね。2021年のノーベル経済学賞は,自然実験の研究で受賞しております。自然実験と同じような分析ができないかということで,やってみました。これは差の差分法と言われる方法ですね。ある施策がなされた群と,なされなかった群。なされなかった群は平行して指標が動いていくわけですが,低下した場合,施策がなされたときにそれが変化する,この差を因果効果と。平行トレンド仮定と言うんですけど,そこから下がった部分が因果効果であるというふうに分析をする方法です。
 2004年頃から急激に日本の研究競争力が低下しているわけですが,この頃になされた政策はどういう政策だったかと思い出してみますと,まずは,2004年から始まっておりまして,国家公務員総定員法,あるいは大学院重点化。特に地方は国立大学の教員数が減っているのですね。それから,2004年の国立大学法人化。公立大学も行われております。それから,新医師臨床研修制度。これは,2004年に行われまして,国公私立を問わず,医学部附属病院に適用されております。また,診療報酬マイナス改定も2002年と2004年に行われておりまして,この影響も否定できないかもしれません。それから,もう一つ,薬学部6年制の導入ですね。これは2006年。これは,国公私立を問わず薬学部に適用されておりますが,薬学部は私立大学に多くて,しかも6年制を導入した大学の割合は私立に多いので,私立に大きく影響した可能性があります。
 こういう施策がなされなかった大学群を対象にしないといけないわけですが,そういう大学群があるかということを調べてみますと,要するに,私立大学であること,医学部がないこと,薬学部がないことですね。早稲田大学以下,幾つかの大学がございます。この15大学を選んで,分析をしてみました。そうしたところ,これは大学群別の全分野のQ1論文数のG6比率を見ておりますが,早稲田大学等の医学部・薬学部のない私立大学は,G6に対する競争力は全く落ちていません。一番上の青のグラフですが,全く落ちていない。ところが,国立大学は落ちたと。特に,国立中小は2004年以前から,頭打ちというか,低下し始めています。
 これは,臨床医学論文だけを切り取りまして,Q1論文数のG6比率を見ております。私立,公立,国立大学の上位校と地方国立大学を見ておりますが,国公私立とも全部,一過性に低下をしております。回復は,私立と公立が一番よく回復していると。国立は遅れているわけですが,特に国立中小大学は,2004年以前から低下を始めておりまして,2004年にどかんと低下して,回復が一番遅れていると。こういう結果になっております。
 これは,薬学部・医学部の有無による大学群別私立大学の全分野Q1論文数を見ております。見てほしいのは一番下の黄色の曲線で,これは医学部がなくて薬学部のある大学18ですね。主に単科の薬科大学を中心に見ておりますけど,2004年からちょっと遅れてどーんと低下して,最も論文数が低下していると。
 これは文科省の非常に有名なデータですが,2002年から2008年にかけて大学教員の研究時間が減少していると。つまり,人×研究時間が減少したということですね。右のグラフですけど,そのデータで教員数がどうなったかというのを私は計算しておりますが,保健系はかなり増えています。ほかの分野は教員数が減っているのですね。保健系が増えた原因は,看護系等の医療系大学が急増しておりますので,その影響かなと思っております。
 国立大学の常勤教員数は,実は大学基本調査では全然減っていないんです。減っていないのだけど,右の分析で,医学部のある大学は増えているといいますか,医科大学は典型的に増えている。医学部のない大学は減っているんですね。工科大学とか,あるいは文系の大学とかは減っているので,附属病院以外の部局で常勤教員数が減ったというふうに考えております。
 これは,東京工業大学以下,工科大学ですが,左のグラフで一時期,2004年以降,教員数が減っておりまして,しかし,右のグラフは博士課程の学生数の変化ですが,それほどは減ってないのです。博士課程の学生は徐々に減ってきておりますので,2004年のどかーんという研究力低下は,教員数の減少,FTEの減少かなというふうに見ております。ただし,その後の研究力低下は博士課程の学生の減少も効いているというふうに考えております。
 そんなことで,この四つとも日本の研究力低下の原因になっているという判断でありまして,その四つに共通する項目としては,全てFTE研究従事者数に何らかの形で影響を与えているというふうに考えております。
 この辺は省略しますね。
 ということで,2004年頃を境に日本の研究競争力が激減した原因は四つの政策が一応考えられまして,その共通項は,研究従事者数×研究時間,良き人的研究環境の縮小と考えます。ですので,良き人的研究環境を縮小するどのような政策でも,容易に研究競争力を大きく低下させてしまう可能性はあると思います。日本の良き人的研究環境の広がりは,先進国で最低です。
 最後に,日本の(臨床)医学研究について,ちょっと調べたデータをお示しいたします。臨床研究を大学群別に見ておりますが,私立大学,公立大学は,非常に回復力はいいと。旧帝大もまずまず。それから,次のクラスの国立大学,7校見ておりますが,これもまずまずなんですね。地方国立大学はちょっと悪いということになります。
 これは国立大学群別の医師数の増加ですね。医師数は,これは2009年以降のデータですが,各大学群とも増えております。ただし,地方国立大学の増え方はやはり少ないということになります。旧帝大と次のクラスの国立大学は結構増えているわけですね。
 左のグラフは医師数増加数と論文数増加数で,これは数で見ているのですが,医師数が増えた大学では,その数に比例して論文数も増えているというデータです。右は,博士課程の学生数も調べているのですけど,医師数が増えた大学ほど,博士課程の入学者数も増えています。医者が博士課程に行くわけですから,医者が増えれば博士課程の学生も増えるというのは,納得できると思います。
 これは日本の医学系研究科の博士課程入学者数の推移です。これは医師と医師以外がいるわけですが,左の図,全体で見ますと,2020年頃までは維持してきたのですが,最近,ちょっと減っています。2020年以降,コロナ以降ですね。医師で博士課程に進む人がちょっと減っています。臨床系に行く医者が多いわけですけど,非臨床系もこの程度,博士課程に入学している。右は大学群別ですね。ライトブルーの地方国立大学が一番,ずっと減り続けているという感じになります。旧帝大も,最近はちょっと減っていますね。私立も,2020年頃までは維持しているのですけど,コロナ後は減りかけています。公立と次のクラスの国立大学は,まあまあ維持しているかなと。こんな感じになりますね。
 そして,博士の数と論文数にはきれいな相関が得られまして,これは国公私立全部合わせておりますが,博士課程の学生が多いほど,それに比例して論文数が増えております。
 これは国立大学群別の診療機能を見ておりますが,左のグラフは各大学群とも病院収益が伸びていると。右は手術件数を見ておりますが,手術件数も伸びております。どの大学群が一番伸びているかというと,地方国立大学です。
 国立大学群別の診療負担を推測してみました。左は医師1人当たりの手術件数で見ておりますが,これは地方国立大学が一番高いわけです。つまり,地方国立大学は診療負担が大きいと。旧帝大は診療負担が一番少ないわけですね。こういう感じになっています。医師プラス博士で計算しますと右のグラフになりますして,さらに差が開くと。旧帝大は博士が多いですから,医師プラス博士当たりの診療負担は,地方国立大学は非常に多いということになります。
 そして,Q1論文率という論文の質を見ておりますが,左の図は医師1人当たり手術件数が多い大学ほど医師1人当たり論文数も少ない傾向になりまして,右のグラフは質を見ておりますが,医師1人当たりの手術件数が多い大学ほどQ1論文率が低くなっております。やはり,診療負担が大きいと,量も質も低くなりやすい。
 これは,国立大学だけで見ておりますが,医師数と博士の関係ですね。左の図は,横軸に各大学の医師数をプロットしまして,縦軸に博士の学生数をプロットしておりますが,これは入学生ですかね。上位大学と下位大学では段差があるのですね。上位大学では格段に博士課程学生数が多く入学していると。それと一致するように,医師数を横軸に取って,論文数を縦軸に取りますと,論文数にもその段差とよく似た差がございます。ただ,臨床医学論文数につきましても,多く論文を増やした大学ほど質が下がるというのは,全分野の論文数のデータと同じです。
 これは2008年以降の臨床医学のTop10%論文数(質×量の指標)の増加を見ておりますが,一番上の私立大学が一番大きく増えております。公立大学も伸び率が非常に高いですよね。国立が低いわけですが,これ,地方国立大学も伸びていないわけですけど,東大・京大が意外と伸びていないなというデータになっております。こんな図が得られます。つまり,公立大学と私立大学が非常に貢献している。なぜかなということですけど,国立大学は,法人化以降は非常に,予算等も削減されて,交付金も削減されて煕煕攘攘にあったりすることがあるわけですが,それに加えて……。
 この図は,Top10%論文率と論文数の関係を見たグラフです。横軸が論文数で,縦軸がTop10%論文率(質)ですので,右の緑の論文数の多い大学というのは旧帝大です。ライトブルーが次のクラスの国立大学,黒が地方国立大学,ピンクの四角が私立で,茶色の三角が公立大学になっておりますが,旧帝大クラスと同程度,あるいはそれを凌駕する大学が,私立大学とか公立大学,あるいは一部の地方国立大学に見られます。この理由はなぜかということですが,先ほどのように法人化の影響を受けていないということもあるわけですけど,もう一つ気がついたことは,RCT(ランダム化比較試験)の論文率を計算してみますと,結構,私立大学と公立大学,あるいは一部の地方国立大学で高い大学があるんです。旧帝大よりかなり高い大学がたくさんあって,これが私立大学と公立大学のTop10%論文率が高い要因の一つではないのかなと。もちろん,法人化の影響を受けていないということが大きいと思うんですけど,そういうことが考えられます。
 そんなことで,今回のこの検討会では働き方改革に伴って大学病院の研究力が低下するのを何とか防ぎたいということが目的だと思うのですが,単純に私が考えて,総診療負担は変わらないと仮定しまして働き方改革をした場合,私が心配するのは,今,診療を中心にエフォートしている人材と,研究と診療と両方やっている人材があるわけですよね。診療を担っている人材が働き方改革で診療エフォートを縮小した場合にその余分の負担は誰がカバーするかということになるわけですが,研究と診療の両方を一生懸命やっている人たちがカバーしないといけないとなると,研究者の研究エフォートが減っちゃうわけです。私も若い頃は,毎日,午前様でやっていました。昼間は教育と診療をやりまして,夜に研究をやるわけですけど,毎日,午前様でやってきたわけですが,そういう研究と診療の両方をやっている先生方についても,そんなに夜遅くまでいるなということになりますと,さらに研究エフォートが減ると。そうしますと,働き方改革で臨床医学の研究力がかなり減る懸念があるんじゃないかなと,私自身は思っているわけです。これは何とか防がないといけない。
 そんなことで,これを低下させないためには,良き人的研究環境の広がりを何とか維持する。できれば向上する。そのためには海外諸国並みの研究者と研究支援者を確保する。研究時間を確保する。それを何とか制度的に,システム的に,何かかちっとするシステムをつくらないと,ずるずるとさらに研究力が低下してしまうんじゃないのかと。そのためには公的資金を海外諸国並みぐらいにしてもらわないと研究競争力は維持できないのではないのかなというふうに思っております。そもそも,働き方改革を命じないといけないほど,皆さん働いているわけですよね,日本人は。そういう日本人の公務員・教員・医師等にこれまで以上に競争的環境を厳しくして選択と集中とかやっても,生産性が向上する余地はかなり小さいんじゃないのかなと思うわけです。
 そんなことで,皆さんの今後の検討に少しでもお役に立てればと思います。
 以上で,私のプレゼンテーションは終わらせていただきます。御清聴,ありがとうございました。
【永井座長】  どうもありがとうございました。
 実は,私も似たような分析をいたしました。去年の9月11日のこの検討会の資料をぜひ先生にも御覧いただきたいのですが,解釈は少し異なります。
【豊田氏】  そうですか。
【永井座長】  私は1980年代から分析しました。1980年頃から日本の論文はずっと伸びていたのですが,科学技術基本法によって,論文数は1996年から1999年にかけて,猛烈に伸びました。ところが,1999年から伸びが止まってしまいました。確かに法人化後に少し減少しているのですが,それはほとんど揺れのうちです。その後,少なくとも臨床医学については徐々に伸びています。1990年代前半に随分,国立大学をはじめ全国の大学に投資が行われました。その成果が1996年から1999年の伸びに反映されたように思います。しかし,ちょうどその頃から,日本人の留学生が減りました。日本の研究者が非常に内向きになったのは実は法人化前からだったのではないかというのが,私の考えです。その後,臨床医学については,2007年から2009年を基準にすると,2017年から2019年,10年間でTop10%論文が大体64%伸びています。Top1%は180%伸びているんです。しかし,国際的なランキングは下がっています。ですから,日本も,特に臨床医学はそれなりには頑張っているのだけども,世界はもっと活発に動いている。そのためランキングが落ちているます。ほかの領域も,やはり落ちています。ですから,臨床医学については,もう一度,1980年代ぐらいから,先生の分析をしていただけるとよいと思うんです。見方によって考え方が随分変わるように思います。基本的には,先生がおっしゃるとおり,臨床医学以外は相当落ちていて,臨床医学も相対的には頑張っているけども,世界はもっと頑張っていると思います。
【豊田氏】  ありがとうございます。
【永井座長】  ぜひ,9月11日の資料を御覧いただければと思います。
【豊田氏】  ありがとうございます。勉強させていただきます。
【永井座長】  それでは,皆様から御意見を伺いたいと思いますが,いかがでしょうか。
【今村委員】  今村ですけども,すごい分析,ありがとうございました。先生が最後におっしゃったように,働き方改革の影響が最も起きるのは地方の国立大学で医学部を持っているところだと考えますけども,先生,このまま行くとどういうことが起きるというふうにお考えになっているかということと,もう一つは,先ほどのスライドの中で,医学部を持っている地方の大学ほど,ほかの工学とか薬学が一緒にがーんと落ちているように見えたのですが,それは医学部の中の交付金の削減とは別の時限の話と考えていいのか,そこら辺はどう整理されているか,教えていただければと思います。
【豊田氏】  1点目は,働き方改革で地方国立大学が一番大きな影響を受けるんじゃないかと。私も,地方国立大学は今までも診療負担が大きいわけですから,働き方改革が文字どおり実行されますと,一番大きく影響,まず影響が出てくるのは地方の国立大学かなというふうに考えております。それは,もともと研究環境がほかの上位校に比べると悪いわけですので,それが一層悪くなると,論文指標も一層,極端に悪くなってくる可能性があると。それを一番懸念しておりますね。
 それから,2点目の,医学以外の学部と医学部とでどう違うのかと。地方国立大学でも,実は医学部はほかの学部に比べますと頑張っている。永井先生もおっしゃいましたように,そういうことで,そしてまた,先ほどのデータでもありましたように,旧帝大とかと比べても,地方国立大学でも質のレベルで結構同じようなレベルにある大学はたくさんあるわけです。そんなことで,医学部については,大学間の格差はほかの学部に比べるとかなり小さいのではないかと。結構,地方国立大学でも頑張っているし,優秀な先生方もいっぱいいらっしゃると。だから,やり方によっては,研究環境さえ与えてやれば,かなり対等に競争できるのではないかというふうに考えているわけです。そんなふうに考えておりまして,何としてでも人的研究環境を悪化させないようにすることが一番大事であろうと。
 交付金の問題につきましても,附属病院については,法人化第1期では附属病院運営費交付金は急激に削減されましたが,その後も運営費交付金を削減されたとしても,医学部附属病院の場合は,ほかの学部に比べると予算額に占める運営費交付金の割合は低いので,運営費交付金の削減の影響は少ないんですね。そういうことで,そこが大きな違いだと思います。ほかの学部はその直撃を受けますので,交付金を削減されたり,あるいは成果に基づく資源配分で,今回,科研費の獲得額とかでさらに交付金が配分されますと,マタイ効果というのが出てきて,さらに格差が拡大しますね。そうすると,地方国立大学はかなり苦しい大学が出てくると。医学部はそれほどでもないというふうに考えております。
【今村委員】  分かりました。
【永井座長】  山口委員。
【山口委員】  かなりショックを受けて,お話を伺いました。私,地方の国立大学も含めて講義に伺うことが多くて,地方の国立大学で悲鳴みたいなことを聞くことが非常に多いです。特に,働き方改革ということはもちろんですけれども,診療にもかなり割かれることに加えて,現在は光熱費等の高騰で,研究費から割いてそちらの方にお金をもっていかれている。さらに,臨床実習の中で医行為ができるようになったことで臨床実習前のOSCEが公的化されたことで,その評価者などにも人を割かないといけない。そこに加えて,いくら募集をしても教員がやってこないというような,本当に何重にも苦があるというようなことをお聞きしていますので,どうやって回復することができるのだろうかと,悲観的な思いでお聞きいたしました。具体的にどんな対策があるのか,お話の中でもあったんですけど,その辺りを少しプラスして教えていただきたいということと,薬学部が6年制になってからがくっと落ちているというのは,4年制のときには研究者になる人がいたのが,6年制になったことで博士課程に行くような人が減ったということが大きな原因ではないかと思ってお聞きしたのですけど,その辺りはその理解でいいのかどうかということを教えていただきたいと思います。
【豊田氏】  スライドの中では詳しく説明しませんでしたが,おっしゃるように,1点は大学院生が減ったということです。6年制になりまして,それまで修士課程と博士課程があったのが,修士課程をなくして,医学部と同様に4年制の博士課程一本にしたんですね。そのために大学院生が急減しました。それが一つの大きな要因です。ただし,4年制と6年制を併用している大学もありまして,国公立はほとんど並行しておりまして,私学の有力校も並行しております。そういう大学では6年制一本よりも大学院生をまだ確保できておりまして,多少ましということになります。
 もう1点は,教育の負担増ですね。これは,文科省の科学技術・学術政策研究所が定点調査というのを毎年やっておりまして,全国の研究者にアンケート調査をしているのですが,薬学部の先生方の書き込みを見ますと,研究時間がない,忙しい,せっかくいいアイデアがあるのに国家試験対策のために時間を割かれてできないという悲鳴がいっぱい上がってまいります。ですので,二つの要因がありまして,一つは大学院生の減少,もう一つは,教育の負担が非常に大きく急激に増えておりまして,研究時間が減っている。この二つのダブルパンチを受けている。ですので,あれだけの急激な研究力低下が数値として表れていると考えております。
【山口委員】  最初に申し上げた,地方の医学部のほうも負担がますます増えていると思うんですけど,その辺りというのはいかがですか。
【豊田氏】  医学部の負担ですね。私も三重大学の医学部におりまして,地方の大学の医学部の負担は非常に大きいわけですね。そもそも診療負担が大きい上に,さらに,今,いろんな負荷があるんですね。先ほどおっしゃったような負荷がかかってくるとますます,要するに余裕がない状況でやっておりますので,ちょっとした負担が研究力にすぐ直結してくるということはあると思いますね。これは自己努力で何とかしろといっても無理だと私は考えておりまして,やはり何らかの公的支援をしていただかないと防げないんじゃないかというふうに考えております。
【山口委員】  ありがとうございました。
【永井座長】  どうぞ。
【銘苅委員】  ありがとうございます。琉球大学の銘苅と申します。一つは,先生のおっしゃっていたFTEの中に医員が入っていたのですけれども,今の働き方改革では,医員はほぼ診療を行う職種というふうにカウントされる,そもそも裁量のない働き方だということでカウントされるので,ほとんど研究というよりは診療に属していると思われるのですが,大学内では,特に琉球大学のような地方大学では教員よりも医員のほうが数は多いので,それらが全部,フルタイムの研究員としてカウントされているとすると,現実的にはもっと悪い待遇・環境ではないのかというふうな印象を持ったのが一つ。
 もう一つは,先生が,時代の流れの比較と,変化と,その中で起きたイベント,それから,各国との比較をしたことにおいて見いだされる,今,若い医師が大学の研究者に魅力を持っていただくにはどんな方策があるのかというところですね。例えば,韓国とかがすごく上げているのであれば,それはどうしてそういうなったのか。人が魅力を持ってその機関に入るということなんだと思うのですけれども,今はほとんど大学に来てくれない,若い人を集めるのは本当に大変なので,どのようにして先生の解析の中から絵が見えるのだろうなというところをぜひ教えていただきたいなというふうに思いました。
【豊田氏】  1点目は,日本の研究者の数は国が調べているわけですが,日本の場合は,その中に医局員というのを何人か書くというのが昔からありまして,そうすると研究者数を過大にカウントしてしまう可能性があるんじゃないかというふうに,私も以前からずっと思っています。そんなことで,OECDの国際比較においても,そういうデータを用いますと日本はどうしても研究者を過大にカウントしてしまうので,研究者当たりの論文数とか生産性を計算した場合に低く出ちゃうので,海外に比べると非常に低いというデータが出てしまいます。2019年に私が書いた本の中で分析していますが,特に臨床系では低いというデータが出てきます。臨床系以外の分野ではそれほど生産性は低くないというデータが出るのですが,臨床系はすごく生産性が低いというデータが出てしまいます。それは,先生がおっしゃる御指摘のとおりで,研究者のカウントの問題。研究者の定義というのが国際的に随分と違っておりまして,日本は医局員まで含めるのですが,韓国は講師以上の教員をカウントするということが科学技術指標に書かれております。全然,カウント法が違うんですよね。だから,その数字だけで生産性の国際比較をされてしまうと,日本の場合は生産性が低いじゃないかと。だから,もっと厳しくやらないといけないと,こういうことになっちゃうわけです。それが1点目ですね。
 2点目は,難しいんですけど,韓国のようにふんだんに資金をつぎ込めば,それなりのことがいろいろとできるんじゃないかというふうに思うんですね。それと,今,日本の場合,臨床医学の場合,特に専門性が導入されて多くの方々が臨床志向になってしまって,研究をやってもそれほどメリットはないんじゃないかと。昔は博士号を取るということは非常にメリットがあったわけですが,博士号の価値というものが非常に低くなってしまったということですね。ですので,今,銘苅さんは一生懸命考えておられると思うのですけど,何らかの形で,博士号を取ることのメリット,インセンティブを具体的に仕組みとしてつくっていただく必要があるのではないかというふうに思っております。
【銘苅委員】  ありがとうございます。
【永井座長】  よろしいでしょうか。時間の関係で,豊田先生との意見交換はここまでとしたいと思います。
 続いて,大学病院改革ガイドライン(案)について,また,関連する令和5年度の補正予算を,令和6年度予算案を含めて,事務局から説明をお願いいたします。
【俵課長】  ありがとうございます。医学教育課の俵です。この後に大学病院改革ガイドラインについて議論いただきたいと思いますが,それにも関連しますし,また,中間取りまとめの内容も踏まえた予算と予算案について整理をしましたので,最初に説明をさせていただきたいというふうに思います。
 資料3を見ていただいていいでしょうか。次のページをお願いします。
 ここに,今日は林課長も来ていただいていますが,厚生労働省の取組も含めて,主な予算の内容を三つ書かせていただいています。中間取りまとめの段階では,概算要求として,大学病院に働き方改革を進めながら,診療・教育・研究の機能をどうやって維持していくのか,その改革プランをつくっていただいて,予算の上限を決めて,あとはできるだけ実情に応じた自由なプランに対して支援をしたいというふうに考えています。そういった包括的な支援が予算の協議の中ではできなかったので,今回,厚生労働省も含めて説明をさせていただきますと,まず,補正予算で,これは国会でも審議済みですけども,最先端の医療設備の整備を支援するもの,これをまず支援したい。もう一つ,その下に書いてある人材養成拠点形成事業については,人件費を支援したいということで,アンダーラインのところをちょっと見ていただいて,人件費の中でも,一つは,今,議論にもなりました,大学院生が研究をしたり,あるいは教育のアシスタントをする,TA,RA,SAの経費を支援できるようにしたい。もう一つは,これも先ほど議論いただいていますが,教育・研究支援者の人件費を支援できるようにしようということで,設備整備と,あと,これはこれから国会審議になりますが,人件費の支援をしたいということが,文部科学省の予算になります。
 後で林課長にも説明いただきたいと思いますが,厚生労働省のほうから,これも中間取りまとめの中で議論いただいた,大学病院がほかの病院への医師派遣を行っている。これを評価して支援しようということは中間取りまとめの中にも取り上げていただきましたが,これを基金で支援をしようというのが,厚生労働省の取組になります。
 それぞれ,改革プランに関しては,実情に応じて,運営,教育・研究,診療,財務・経営という大きな四本柱の内容をつくってもらうように,ガイドラインを今検討しています。これは後で議論いただきますが,このそれぞれの予算に関しても,改革プランと連動するような形で改革プランに反映していただくような,そういう形で文部科学省も厚生労働省も進めていきたいというふうに考えています。
 僕からは,簡単ではありますが,以上になります。
 林課長,お願いします。
【林課長】  続きまして,厚生労働省の関係の分を御説明させていただきます。同じ資料の7ページになりますけれども,地域医療介護総合確保基金の事業区分VIというものの中で,大学病院等への支援を念頭に置きながら,新たな事業メニューの追加をさせていただく運びとなっております。
 左側でありますけれども,医師派遣等の推進事業ということでございまして,長時間労働が行われている医療機関への医師派遣等を行う医療機関に対する支援を行うというものでございます。派遣する医療機関側に,派遣による逸失利益に相当するような額の補助をするという考え方でございます。
 右側につきましては,教育研修体制を有する医療機関の勤務環境改善支援ということでございまして,大学病院はほぼ含まれると思うのですけれども,大学病院は医師が非常に多いということ,また,臨床研修や専門研修を非常に多くの科で取り組んでおられているというところに着目いたしまして,補助を行うものでございます。これまでは,この基金での補助というのは,7ページの右下にありますけれども,診療報酬との役割分担で救急搬送が2,000台未満の場合に限られていたわけで,それを満たす大学病院というのは少なかったのですが,こういう考え方とは別に,研修基幹施設に対しましては補助ができるということであります。1床当たり13万3,000円が標準単価で,更なる労働時間短縮の取組,こういった改革ガイドラインにあるような取組をやっていただけるような場合には,さらにこれに加算するということでございます。いずれも都道府県の負担がある事業でございまして,右上に国の予算は95億円とありますけれども,都道府県が3分の1を負担することによって全国で143億円分使えるということになりますので,大学病院においては,ふだんから都道府県と関わりを持っていただいて,また,いろいろな医療のニーズにも応えていただきながら,困り事を都道府県と相談いただくというような,そういった関係を築いていただくということも,お伝えさせていただきたいというふうに思っております。
 厚生労働省からは,以上でございます。
【堀岡企画官】  ありがとうございます。
 引き続き,大学病院改革ガイドラインを御議論いただきたいと思っておりますので,医学教育課の堀岡から御説明させていただきます。資料2-1の大学病院改革ガイドライン(案)の概要について,御覧いただければと思っております。
 位置づけでございますけれども,今後12年間,働き方改革に対する解消,連携B水準,B水準の暫定水準の解消が見込まれるまで12年ですので,まずはその前半部の6年間に向けて取り組む内容を「大学病院改革プラン」として策定を促すこととしております。先ほど課長のほうからも御説明いたしましたけれども,働き方改革の中で,教育・研究・診療という役割について,大学病院の役割・機能を維持していくというガイドラインとしたいというふうに思っております。この四つのプランの概要については次のページでいたしますので,策定プロセスなどについて御説明させていただきますと,大学だけではなく,自治体,医療機関,医師会など,地域の関係者とも意見交換を行って策定することが望ましいということ。病院のウェブサイトで公表していただくこと。自己点検をしていただいて,改革プランの推進に努めること。また,先ほど課長のほうから御説明いたしましたけれども,厚生労働省や文部科学省の補助金などの取組の実施に応じて,適宜,プランに反映をしていただくということをお願いしたいと思っております。また,改革プラン策定から4年目及び7年目には,文科省のほうで進捗状況を確認するというプロセスはさせていただきたいと思っております。
 中身でございますけれども,次のページ,2ページ目でございます。大きく,運営改革,教育・研究改革,診療改革,財務・経営改革という四つのファクターに分かれております。本文については資料2-2のほうにございますけれども,まずは大枠を御説明させていただきますと,運営改革として,自院の役割・機能の再確認ということ。医学部の教育研究に必要な施設であるというようなこと。同時に,専門性の高い高度な人材を養成する役割があること。医学研究の中核として,また,地域医療構想等と整合した,診療する医療機関としての役割というものを再確認していただくということが,まず一つでございます。二つ目,中間取りまとめの中でもかなり議論になりましたけれども,病院長のマネジメント機能の強化というものを出させていただいております。例えば,診療科ごとの人員配置とか,ベッドの業務に応じた標準化といったものを病院長のマネジメント機能の強化の下で改革をできるような体制を整えていただくということ。三つ目としては,当たり前ですが,大学本部,医学部など,関係部署との連携体制の強化。四つ目といたしまして,人材の確保と処遇改善という,大きな柱を立てていただいております。先ほど,文部科学省,厚生労働省のほうから予算についてのお話をいたしましたけれども,これとは別に40歳未満の医師の処遇改善の診療報酬などが今議論されておりますので,そういった内容とこの運営改革の人材確保と処遇改善の部分がリンクした形で,プランについては書いていただきたいというふうに考えております。
 次に,教育・研究改革の部分でございますけれども,検討項目としては,こちらに書いているものでございます。主なものといたしまして,教育・研究改革の四つ目,教育・研究を支援するための体制整備というようなことで,例えば,先ほど申し上げた予算に関するようなこと,大学院生に対するRAとかTAといった人的・物的支援の制度の整備や活用方法について,体制整備はどのように大学として考えていくのかということを書いていただいたりするというようなことを考えております。
 また,右側,診療改革におきましては,医師少数地域を含む地域医療機関に対する医師派遣というものが新しく項目として出ております。診療科ごとに地域の医療機関はどのような体制で医師派遣をするのか,病院長のマネジメントの下でどのような実績があって,どのような考え方で行くのかというようなことを書いていただいて,これと,先ほど厚生労働省のほうから御説明いただいた医師の派遣ですとか,また,今,中医協のほうで議論いただいている診療報酬のものとリンクをした形で,ここについても国として後押しをしていきたいというふうに考えております。
 四つ目,財務・経営改革でございますけれども,これについては,中間取りまとめまでに様々な御指摘をいただいた,例えば,機器の整備計画ですとか,今,非常に高額になっている,医薬品,診療材料に係る支出の削減といったもので,例えば共同購入するというようなこととか,そういった地道な取組を書いていただいて,今も,各大学,非常に経営改革を進めていると思いますが,そのような内容をさらに今回のガイドラインに基づいて検討していただいて,書くというようなことをお願いしたいというふうに考えております。
 資料2-2の本文について,今の重要なポイントのところだけ,かいつまんで御説明させていただければと思っております。
 まず最初に,9ページでございます。先ほど御説明した人材の確保と処遇改善の部分でございますけれども,上の部分,「他方」の部分でございまして,10行目ぐらいのところですが,「特に若手医師をはじめとした同じ職種が大学病院外で雇用される場合に得られる給料との開きが大きい医療人材の給与面の向上や,勤務環境の整備など,職員の処遇改善が必要不可欠である。」というふうに書かせていただいた上で,「以上を踏まえ」というところですが,「例えば,手当の新設や増額等による所得増,家事・育児・介護等に対する柔軟な勤務環境の構築,研究に専念できる勤務日等の拡充」など,様々な大学で考えていただいている取組を検討していただいて,ここに記載していただくということ。また,これに応じて,今検討中の診療報酬など,そういったものが国としてリンクしていくということを考えております。
 次に,10ページでございますが,先ほど申し上げた教育・研究を推進するための体制整備という,下3行でございますけれども,我々の当初予算で要求しているものと関連しますが,人的支援について言えば,「例えば,医学教育支援センターやシミュレーションセンター等への職員・スタッフの配置や,研究支援部門へのCRC,生物統計担当者等の研究支援者の配置,RAやTAの配置」などといった,制度の導入などについて記載していただき,2)の制度の整備と活用の部分にございますけれども,そういった経費の充実といったことも書かせていただいております。これについても,当初予算,どのような制度設計で大学に配るかというものはまだ検討中でございますけれども,そういった予算と連動して,このプランに反映していただくということを考えております。
 最後に,13ページでございます。診療の部分でございますけれども,真ん中の部分に医師少数地域を含む地域医療機関に対する医師派遣というものがございます。病院長のマネジメントの下で,真ん中の部分でございますけれども,「地域医療機関に対する自院の医師の派遣を効率的に行うため,診療科ごとの派遣状況を適切に把握する仕組みの構築について検討し,現在の状況を将来にわたる医師派遣の基礎情報として具体的に記載」をお願いしたいというふうに考えております。
 その他,15ページ,多岐にわたりますので,全部については逐語的には御説明いたしませんけれども,主にはこういった内容でございます。御意見などをいただければありがたいと思っています。よろしくお願いいたします。
【永井座長】  ありがとうございます。
【俵課長】  1点だけ,補足していいですか。
【永井座長】  はい。
【俵課長】  資料2-1の2ページ目をちょっと見ていただいていいでしょうか。これ,それぞれ検討項目というふうに書かせていただいているのですが,中間取りまとめまでの議論の中で,ガイドラインあるいは改革プラン自体は大学病院の自主性・自律性が大事だという御意見がありました。今回のガイドラインでは,運営,教育・研究,診療,財務・経営という四つの柱に対して,大学病院に,これからやってもらうこと,あるいはこれまでやってきたことを計画として書いてもらうというのが一つあります。ここに書いてある検討項目自体は,基本的には項目の例として書き,その項目の内容も参考になるように事例として書いています。ただ,左の運営改革は「自院の役割・機能の再確認」というふうに書いていますが,この役割と機能に関しては,改めて確認をいただいて,この改革プランの基本方針として示してもらいたいということで,ここは,ある意味,必須の項目として書いてもらいたいというふうに考えています。
 1枚戻っていただいていいですか。今の内容を,すごく簡単になんですけど,2番目の箱の中の最初の丸のガイドラインの内容のところに,自主性・自律性を阻害することがないように,改革プランを策定する際の参考として,検討する必要があると考えられる項目と内容を示すと。さっきの役割のところは,必須項目として,基本方針として,書いていただくようにしたいというふうに考えています。
 以上です。よろしくお願いします。
【永井座長】  ありがとうございます。
 それでは,残った時間,御意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。
 今村委員。
【今村委員】  今回,大学改革のプランをつくるインセンティブについて確認したいのですけれども,今までの話だと,120億ほどの自由度のある予算を確保してもらって,よい改革プランをつくってもらったところに傾斜配分するという話だったと思うのですが,今,厚労省の基金とか診療報酬だと,各大学病院はこれを使わなくても必ずやることだと思うんですね。だから,その配分に関しては多分,傾斜は事実上なくて,21億の予算の分だけがインセンティブとして残るような形になると,これを頑張ってつくろうというインセンティブにそんなにならなくなってしまったような気がするんですけれども,そこら辺はどうお考えですか。
【俵課長】  ありがとうございます。医学教育課,俵です。文部科学省の予算に関しては,既に成立した補正予算に関しても,設備の整備を,これは単年度限りですけど,今後の整備計画も含めて書いていただいて,それを,改革プランをつくって反映してもらうということを,一つの要件というか,条件的なものにしているので,これが一つ,インセンティブというか,改革プランをつくって反映してもらいたいということが一つです。
 もう一つは,今の人件費の部分は,これもその内容を改革プランに反映してもらいたいということになります。
 厚生労働省のほうも改革プランと連動するような形でのことを考えていただいているので,林課長から。
【林課長】  先ほどの説明の中で若干触れさせていただきましたけども,標準単価の加算,1床当たり13万3,000円から26万6,000円まで可とするというところの中にガイドラインをつくっていただいたということの要件も一つ入れられないかということを検討しておりますので,つくっていただいたことがくたびれもうけにならないようにということは主張させていただいております。
【今村委員】  つくるのはつくれると思うんですが,いいものをつくってもらうと傾斜配分という話がインセンティブだったと思うんですけれども,多分,つくるのは,予算獲得のためにも,あと,実際,働き方改革が入って研究を維持しようと思うと,各大学,5億円ぐらいは要ると思うのですが,それを確保するためにできるものがそれぞれの立場であるとは思うんです。だから,つくれと言えば,つくれると思うのですが,それに対してのインセンティブ,より頑張ったほうがメリットがあるというインセンティブは随分減ってしまったような気がするのですけども,つくったら要件に一つ入れるということであれば,つくる分には,それぞれの大学はされているから,つくれるとは思うのですが,最初の,より頑張ったところに自由度の高いお金をという話がなくなった分,これをつくろうという熱意が下がってしまうんじゃないかというのを危惧しますけど,そこを。
【俵課長】  ありがとうございます。もともとは,できるだけ自由度の高いものをつくってもらいつつ,そこの内容,上限だけを決めて支援したいというふうに思っていましたが,インセンティブなり,熱意なり,あるいは,やらなきゃいけないということでもあるので,そこは,自主性・自律性に委ねるというか,頼ってプランをつくってもらうというふうに考えています。
【今村委員】  物すごく頑張ってくださいということを強く言っていかないと,なかなかそれぞれの大学でアクセルがかからないと思うので,そこはぜひ頑張って言っていただく必要はあるかと思いました。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。
 山口委員,どうぞ。
【山口委員】  私も,改革プランをつくるというのも,また新たなエネルギーをかけないといけないことになるのかなと思いながら,今日,読ませていただいてきました。もちろん,ガイドラインの内容として「大学病院の自主性・自律性を制限・阻害することなどがないよう」と書いてあるのですが,例えば,12ページのICTや医療DXの活用による業務の効率化等といったところで,結構,大学の中でもこの分野において先駆的な取組をしていらっしゃるところ,時間を捻出するためにDXをこんなにうまく使っていらっしゃるなというような大学の取組をほかの検討会で聞いたことがあるんですね。そういった先駆的な,好事例といいますか,参考になるようなこともガイドラインにプラスしてお示しするようなことというのができないだろうかと思いました。こういうふうにすればここが改革できると示唆するような,参考になるようなものがあれば,一から考えてくださいと言うだけではなくて,こんなことをやったらうまくいきましたというようなものを紹介でもしていただけると,プランをつくるときの参考になるのではないかと思いました。
 もう一つは,患者の立場からのお願いなんですが,14ページの保険診療外収入の拡充のところに差額ベッド代が書いてあるのですけども,実は,私たちは長年にわたって差額ベッド料のことを明確化する活動をしてきまして,岩波ブックレットから2度にわたって「差額ベッド料Q&A」というブックレットを出しています。差額ベッド料の御相談は非常に多いです。直近の調査で,個室の差額ベッド料の全国の平均額と東京の平均額は倍違うんです。全国平均額は1万円をちょっと切っているんですけれども,東京は1万9,000円弱なんですね。東京に次いで,神奈川,大阪が高いのですが,これが患者の経済的負担を非常に圧迫しているところがありますので,これはもっと拡充しなさいみたいに見えてしまうので,書きぶりのところで患者の経済的負担をあまり強い過ぎないようなことを少し入れていただきたいと思います。特にコロナで,コロナかもしれないというようなことで,今はまだPCRで出てないけれども,何日間は個室に入ってもらって,その間も請求しますという大学病院の相談が複数届きました。これまでルールがなかった内容の請求まで出てきていますので,これだと,ここで努力しなさいみたいに見えてしまうので,その辺りはちょっと工夫していただきたいという,お願いでございます。
【堀岡企画官】  分かりました。できるだけ分かりやすく具体例を書くなど,前半の部分は検討させていただきますけど,この部分は多分二つの話があって,今,山口委員がおっしゃったようなのは,差額ベッドの仕組みとして,そもそも差額ベッドってアメニティーなので,患者さんが個室で治療したいと思ったときに取れるもので,医療上の必要の下で個室に入ったときに……。
【山口委員】  医療上の必要は請求できないことは分かっています。ほかに空きベッドがないというのが一番,相談で多いんです。
【堀岡企画官】  そうですね。きちんとした選定療養,個室ベッド代の運用をしないといけないんだというようなことを書かせていただくということでよろしいでしょうか。
【山口委員】  そうしていただけると助かります。
【堀岡企画官】  我々としては,もしアメニティーであれであれば,別に高く取っても,患者さんが御希望するのならば,それは拡充すればいいという趣旨で書いていますので,そのような場合に患者さんに請求されないように書かせていただきます。
【山口委員】  救急で運ばれて,空きベッドがなくて,十分な説明がなく,知らないうちに同意書を出していたというのが,トラブルで一番多いんですね。
【堀岡企画官】  分かりました。
【俵課長】  前半は堀岡からあった形で少し考えますけども,今回,大学・大学病院と直接,意見交換をする機会もつくって,そこでよく分かったのは,既に大学病院でもいろんなことを考えて取り組んでいただいていることが改めて分かりました。それも含めて改革プランに書いていただきたいということがあります。そのときに,12年後を見据えてというのは,まだそこまで行けていないので,これまでの取組を含めて,少し視野を延ばして,12年後に向けた最初の6年間としてどうかというのを考えてもらいたいということと,あとは,それをみんなで共有できるように公表してもらいたいということが大きいところかなと思います。なので,できるだけ負担なく,今までやってきたことをできるだけ公表してもらうよう,ガイドラインにして取り組んでもらいたいというふうに思っています。
【永井座長】  いかがでしょうか。
 小川委員,どうぞ。
【小川委員】  小川ですけども,先ほどの豊田先生の分析は,全くそのとおりだというふうに感じました。その中で,日本の研究競争力低下の原因は,日本政府が支出する大学研究費が世界最下位にあるということ,それから,これは大きなことではないかもしれませんが,新医師臨床研修制度の導入というのも一つのファクターとして挙げられているところがございます。それで,文科省・厚労省が非常に頑張って,こんなに頑張った文科省・厚労省を今まで見たことないのですけど,それだけのお金を国から取ってきて,そして,いろんな改革をしようとしているという気持ちは極めてよく分かるわけですが,例えば,こういうミッションをして,それにお金をつけたということをしても,今,大学で何が問題なのかというと,自分の大学を存続させる,要するに赤字にならないように,大学の職員は研究なんかやっている暇がない。病院で朝から晩まで,やりたくないとは言わないですけども,診療をやって診療報酬を稼がないと大学そのものがやっていけないという状況にあるわけです。特に,最近の薬価は今までとは全く違って,1人に,1回にかかる薬価が1億数千万円という薬価もあるわけでございまして,そういう薬価を稼ぐために大学の職員が診療に従事している。結局,診療に従事して,大学の存続をどうにか維持をしているということであります。
 それから,そこでもう一つ問題になるのは,これはどうにか変えていただかないとどうしようもないのですけども,消費税ですね。先ほどの薬価に関しましても,例えば,1人当たり1億数千万円かかる薬代の消費税は大学が払っているわけです。1億数千万円ですから,1,500万円の消費税を大学が大学のお金で払っている。そういうことになっているわけであります。それから,高度医療が必要な病院というのは,一般病院ではありませんで,大学病院がそういう患者さんを扱わざるを得ないのだけども,とてもじゃないけどそういう高額な医療費を消費する患者さんを面倒見切れない状況にまで今は押し込まれているわけでございますから,そういう意味では,何らかのミッションをつくってお金をばらまくという方法もあるのでしょうが,もうちょっと大きな目で今の医療をめぐる法的な問題を問題にしない限り,この問題は解決しないんじゃないかなというふうに思っておりますので,ぜひ,そこまで問題点を広げて御議論いただければありがたいなと思っております。よろしくお願いいたします。
【永井座長】  ありがとうございます。
 それでは,宮地委員,どうぞ。ちょっと時間が押していますので,手短にお願いします。
【宮地委員】  ありがとうございます。3点,手短に発言いたします。
 まず,ガイドラインについてですが,ホームページで公表というだけでは,どこでどういうことが行われているかを各大学病院が全てリサーチする手間も大変なものですので,そういう,言わばグッドプラクティスといいますか,有効な手だてを集約して大学病院間でシェアできる仕組みがあればと思いました。
 2点目は,臨床実習の指導医資格についてです。人や時間,お金についてリソースが限られた中ですので,有効活用するためにも,教育や研究,教育に携わろうと努力すればするほど,やるべきことが減るという構造がつくれないかと考えております。例えば,臨床研修指導医と併せて臨床実習指導医資格を取ると何らかの,例えばOSCEの評価者講習ですとか,これらの資格を有する人たちが受けなければならないもので,内容が重複するかもしれない受講の一部が免除されるといった形で,負担が減るというインセンティブは設定できないか,ぜひ検討できたらと思います。
 3点目,最後ですが,資料3の5ページ目,高度医療人材養成拠点形成事業について,再度,事務局に確認させていただきたい点がございます。事業スキームでの説明に関してです。特に臨床医学の教育では,指導医が研修医を教え,研修医が医学生を教える,上級の医学生は下級の医学生を教えるという,屋根瓦式の構造というものが既にあります。教育の充実のためにそれを促進するのは非常に重要だと思います。一方で,RA,TA,SAにしても,新たに人を雇い入れるということは難しいと思いますが,学部生や大学院生が教育や研究に参加すればお金を払うということになるのでしょうか。また,同様に,右下のほうの教育支援者は,医師だけではなくて,検査技師や看護師など,多職種が想定されていると思いますけども,教育のために新たに雇い入れるとなると,6年間という期限付の雇用では,それほど確保できないのではないかと思います。この場合,その大学病院で既に雇用されているスタッフが教育に参加するとお金が払われるということになるのでしょうか。また,これらの医学生の医行為は,大学病院よりは,むしろ地域での病院ですとか診療所で教育として行われやすいという傾向がありますけれども,大学病院に所属する教育支援者を派遣するお金として使用するということが想定されているかを併せて伺わせてください。
 以上です。
【永井座長】  事務局,いかがでしょうか。
【俵課長】  ありがとうございます。俵です。今のスキームに関しては,ここにも書いてありますが,大学院生あるいは学部生のTA・RAの経費と教育・研究支援者の経費で,どういった形でこの経費を支援するかに関しては,今いる人にさらにこういう支援をして,例えば大学院生にこういう支援をして研究時間をよりつくってもらうような形であったりとか,教育・研究支援者に関しても,今,恐らく人が足りないので雇用してもらうということを念頭には置いていましたが,大学・大学病院の中でどういった形でこの経費を活用することで,大学病院としての研究の時間だったり,あるいは研究力を高めていく,維持していくかというのを考えてもらって提案してもらうというふうに,今考えているところです。
 それと,もう一つ,さっき説明するのを忘れてしまったので,予算の資料,資料3の6ページを見ていただいていいでしょうか。今,先生から臨床実習指導医に関することの提案をいただきました。これは,予算額としては少ないですが,非常に重要なものだと思っていまして,700万円という予算もうまく活用して,指導医の資格であったり,あるいはコンテンツの作成であったり,こういったものに取り組む調査研究をやりながら,指導医の評価であったり,あるいは,どういうふうに指導医の認定の内容として負担を減らしながらやっていけるか,そういったことも併せて考えていきたいというふうに思っています。
 以上です。よろしくお願いします。
【永井座長】  よろしいでしょうか。
 それでは,北澤委員,お願いいたします。
【北澤委員】  北澤です。2点,意見を言いたいと思います。
 1点目は,先ほど山口委員もおっしゃった,14ページの保険診療外収入の拡充というところで,これは人間ドックとか自由診療をもっと増やせというふうに読まれかねないと思います。日本の医療が国民皆保険で成り立っていることから考えて,自由診療をどんどん増やすのはどうなのか,基本的に疑問に思うので,ここのところは書きぶりをもっと考えてほしいと思いました。
 2点目は,12ページのタスク・シフト/タスク・シェアのところですけれども,これは,前半の豊田先生のお話にもあったとおり,医師がもっと研究する時間を確保するためには,医師以外の多職種へのタスク・シフト/タスク・シェアが欠かせないと思うんです。「推進が必要」と書いてありますが,これをもっと大胆に進めるためには,今まで日本ではやってこなかったようなものも含めて考える必要があるのではないかと,私は考えます。たとえば大学病院の特区みたいな形で,実際にやってみてどうだったという研究も兼ねて,積極的なタスク・シフト/タスク・シェアのための提案を大学病院から求めたい,そういった取組も入れていただければと思います。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 横手委員,お願いします。
【横手委員】  ありがとうございます。コメントでございます。
 大学病院は,コロナ禍の洗礼を受け,その後は働き方改革や物価・光熱費・医薬品費の高騰など次々に試練を迎えています。これらを乗り越えていくためには変わっていく必要があり,今までと同じことをしていては存続できないという危機にあると思いますので,このようなガイドライン,目安ができることは意義があり,また,それが文部科学省及び厚生労働省の支援と連動してくるということは画期的なことと感じています。
 一方,本会は今後の医学教育の在り方に関する検討会ですが,今日,豊田先生のお話を伺い,本当に考えなければいけないのは,むしろ日本の「科学研究の在り方」や,「大学の在り方」というところになるのではないかという気がいたしました。今回,働き方改革のために本当に必要だった通常予算の120億円の概算要求は,当初はほとんど認められず,まずは5億円,次いで13億円,最後に21億円となりました。このようなプロセスであれば,根本解決にはほど遠いのかなと。一体どうしたら,先ほどのフランスや日本でなく,他の海外の国々のように日本の研究力がしっかりと伸びていくようになるのか。どのような思考プロセスと,どういう仕組みと,如何なる意思決定を経れば,そういうことが実現できるのか。ぜひ,今後,中央官庁の皆様にも御意見を伺いたいと思う次第です。全国医学部長病院長会議,国立大学病院長会議としても,努力をしていきますので,引き続きの御指導と情報交換をお願いしたいと思います。
 
【永井座長】  ありがとうございます。
 田中雄二郎委員,どうぞ。
【田中(雄)委員】  この検討会でどの範囲のものを議論するかということだと思うんですね。例えば個室料金の問題とか保険外診療の問題ということを議論するかというと,本来の目的は医学教育を充実させるということだと思うんです。でも,現実は,大学病院はかなり追い詰められていて,好きで個室料金を徴収しているわけでもないし,予防医学は重要ですけれども,人間ドックをどんどん拡大することを好きでやっているかどうかというのは疑問もあるんです。根本的には,小川先生が言ったような消費税の問題,あるいは,大学は大学病院を持つべきなのか。要するに別法人にして自治体と組むような形に持っていくという,かつて岡山大学がチャレンジして実現しませんでしたけども,そういうベースになる議論が一つ必要だと思うんです。その議論なしに今の状況で医学教育を充実させるというのは,ほとんど不可能なことを議論しているような感じがします。21億円も重要ですけれども,正直,焼け石に水みたいな感じなんですね。だから,21億円はスタートではあっても,ぜひ,これを拡充していくようなメッセージをここから発信する必要がある。それから,繰り返しになりますけど,構造的な問題に踏み込まないと解決はできないと思っています。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 田中純子委員,どうぞ。
【田中(純)委員】  私も短くですけれども,今日,いろいろお話を伺って,韓国などで研究者の定義が日本と違うというようなお話もありましたし,研究力が上がった・下がったというときの定義の仕方から,一から考えないといけないということもあります。それから,ナガタ先生が,検討会の一番最初の,前半のほうでありまして,今日の参考資料の今までの在り方に関する検討会のまとめとかにもありますが,今の田中先生のお言葉にも重複しますけど,大学病院の機能,教育と研究と診療をやっていると。これで大学病院はいいのかというような根本的な考え方を一度議論することを忘れないで,その上でいろんな制度設計をしていく必要があるんじゃないかなというふうに思っています。
 以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 諸岡委員,どうぞ。
【諸岡委員】  ありがとうございます。この会議で毎回申し上げているのですが,私は工学研究者でして,もともとこの会議は医学教育の在り方について検討する会なんですけれども,工学研究者の立場としても,医学に限らず,大学全体の問題として,今回の豊田先生のお話を大変参考にさせていただきたく,また,そういったところを,文科省の方は,今回は医学教育に関わる方がいらっしゃいますが,ぜひ,大学全体の問題として捉えていただければというふうに思っております。
 簡単ではございますけど,コメントは以上です。
【永井座長】  ありがとうございます。
 じゃ,ちょっと手短に。
【大井川委員代理(森川部長)】  茨城県なんですが,地域医療に対して,大学病院の皆さんの配慮をいろいろ書いていただいて,ありがとうございます。
 1点だけ教えていただきたいのですが,本文の5ページのところで,自治体と「意見交換を丁寧に行うとともに」と書かれているのですけど,丁寧に行うということは,望ましいの一つなのか,それとも,必要性があるよとか,そういうニュアンスなのか,そこら辺を教えていただきたいのですが。概要を見ると意見交換を行うというのも「望ましい」となっているので,もう少し,必要性があるよぐらいに書いていただけるとありがたいなと思ったのですが。
【堀岡企画官】  望ましいというのは,別に弱いイメージで書いたつもりはなかったのですが,確かに概要は「望ましい」が前に出ていますけれども,本文では「所在する都道府県等の自治体や連携協力関係にある医療機関や医師会等の関係者との意見交換を丁寧に行うとともに,その他の学識経験者や専門家等の知見も広く活用することが望ましい。」と書いていますので,誤解を招く書きぶりということであれば,ちょっと書きぶりは考えさせていただきます。
【大井川委員代理(森川部長)】  ありがとうございます。
【永井座長】  ありがとうございます。
 池田局長から……。
【池田局長】  高等教育局長の池田でございます。今日はいろいろ,医学教育の在り方にかかわらず,広い,大学の在り方に関する御意見もいただきまして,ありがとうございました。この4月から始まる働き方改革に関しては,今日出た御意見も踏まえて,ガイドラインなどをお示ししてしっかり対応していかなければいけませんけれども,前半の豊田先生の御指摘は,非常に耳の痛い話もあり,非常に示唆に富む御提案をいただきましたので,これもしっかり受け止めて,今日,研究振興局の担当も同席していますし,これは多分,この会議以外のもう少し広い場でもしっかり受け止めて,議論をしていきたいと思います。
 個人的には,10年ほど前に,デュアルサポートシステム,基盤的経費をしっかりと確保した上で競争的資金を伸ばすというような方針を出してはいますが,今は国の厳しい財政事情の下で残念ながら,トータルで減らないようにはなっていますけど,やや,基盤的経費の充実ということはできなかったり,それから,これは病院もそうですが,個々の研究者の方々が研究に専念する時間がかなり厳しい状況になったり,課題は非常にありまして,これをやれば解決というのはなかなか見いだしにくいところではありますけれども,現場の研究者の方々の声も聞きながら,しっかりと連携をしながら対応をしていきたいと思いますので,引き続き,よろしくお願いいたします。
【永井座長】  ありがとうございます。
 最後に,座長から一言。先ほどの田中先生の根本的問題を考え直すべきという指摘については,ぜひ9月11日の私の資料を御覧いただきたいと思います。要するに,大学設置基準では,大学病院というのは,医学部学生の教育・研究のために設置されているのです。ですから,高度な医療は教育・研究の名の下に行わなければならず,十分な予算が措置されていない。そこをどう考えるか。教育・研究機関であれば,ほかの学部と同じで施設建築費は国なり大学が面倒見てよいはずですが,国立大学病院は法人化後に1兆円の返済を求められたわけです。この問題がきっちり整理されていないことが,現在の矛盾として現れているので,これは一朝一夕には解決できません。若い世代の方々は,問題の本質がここにあるということをぜひ認識しておいていただきたいと思います。
 大体,時間となりましたので,今日の検討会はこれで終了したいと思います。
 今後のスケジュールについて,よろしくお願いします。
【海老課長補佐】  事務局でございます。今後の開催スケジュールについてでございます。資料4でございますが,次回以降ということで,5月にかけて4回程度開催をしていくという予定としてございます。次回の第7回は2月14日,次々回の第8回は3月18日,春頃に取りまとめをする予定で,現在考えてございます。
 以上でございます。
【永井座長】  それでは,どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――

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